図1は本発明による実施例の車両の制御システムのブロック図を示している。図1を参照すると、車両の制御システムは外部センサ1、GPS受信部2、内部センサ3、地図データベース4、記憶装置5、ナビゲーションシステム6、HMI(Human Machine Interface)7、種々のアクチュエータ8、状態センサ9、複数の働き掛けデバイス10、及び電子制御ユニット(ECU,Electronic Computer Unit)20を備える。
外部センサ1は自車両の外部又は周囲の情報を検出するための検出機器である。外部センサ1はライダー(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダー(Radar)、及びカメラのうち少なくとも1つを備える。本発明による実施例では図2に示されるように、外部センサ1はライダーSO1、レーダーSO2、及びカメラSO3を備える。
ライダーSO1はレーザー光を利用して自車両が走行している道路や外部の障害物を検出する装置である。図2に示される例では、4つのライダーSO1が車両Vの四隅においてバンパーにそれぞれ取り付けられる。ライダーSO1は、自車両Vの全周囲に向けてレーザー光を順次照射し、その反射光から道路上及び道路周辺の障害物までの距離を計測し、自車両Vの全周囲における道路及び障害物を三次元画像の形で検出する。ライダーSO1により検出された道路及び障害物の三次元画像は電子制御ユニット20へ送信される。一方、レーダーSO2は、電波を利用して自車両Vの外部の障害物を検出する装置である。図2に示される例では4つのレーダーSO2が車両Vの四隅においてバンパーにそれぞれ取り付けられる。レーダーSO2は、レーダーSO2から自車両Vの周囲に電波を発射し、その反射波から自車両Vの周囲の障害物までの距離を計測する。レーダーSO2により検出された障害物情報は電子制御ユニット20へ送信される。カメラSO3は図2に示される例では、車両Vのフロントガラスの内側に設けられた前方カメラを備える。前方カメラSO3は自車両Vの前方をカラー撮影し、前方カメラSO3によるカラー撮影情報は電子制御ユニット20へ送信される。別の実施例(図示しない)では前方カメラはモノクロ撮影する。なお、上述したようにライダーSO1及びレーダーSO2は自車両Vの周囲の障害物までの距離を計測し、したがってこれらの一方又は両方は測距センサとも称される。
再び図1を参照すると、GPS受信部2は、3個以上のGPS衛星からの信号を受信し、それにより自車両Vの絶対位置(例えば自車両Vの緯度及び経度)を検出する。GPS受信部2により検出された自車両Vの絶対位置情報は電子制御ユニット20へ送信される。
内部センサ3は、自車両Vの走行状態を検出するための検出機器である。自車両Vの走行状態は、自車両の速度、加速度、及び姿勢のうち少なくとも1つにより表される。内部センサ3は、車速センサ及びIMU(Inertial Measurement Unit)の一方又は両方を備える。本発明による実施例では内部センサ3は車速センサ及びIMUを備える。車速センサは、自車両Vの速度を検出する。IMUは例えば3軸のジャイロ及び3方向の加速度センサを備え、自車両Vの3次元の角速度及び加速度を検出し、それらに基づいて自車両Vの加速度及び姿勢を検出する。内部センサ3により検出された自車両Vの走行状態情報は電子制御ユニット20へ送信される。
地図データベース4は、地図情報に関するデータベースである。この地図データベース4は例えば車両に搭載されたHDD(Hard disk drive)内に記憶されている。地図情報には、例えば道路の位置情報、道路形状の情報(例えば、カーブと直線部の種別、カーブの曲率、交差点、合流点及び分岐点の位置など)などが含まれる。
記憶装置5には、ライダーSO1により検出された障害物の三次元画像及びライダーSO1の検出結果に基づき作成された自動運転専用の道路地図が記憶されている。これら障害物の三次元画像及び道路地図は常時又は定期的に更新される。
ナビゲーションシステム6は、HMI7を介し自車両Vのドライバによって設定された目的地まで自車両Vを案内する装置である。このナビゲーションシステム6は、GPS受信部2により検出された自車両Vの現在の位置情報と地図データベース4の地図情報とに基づいて、目的地に至るまでの目標ルートを演算する。この自車両Vの目標ルートの情報は電子制御ユニット20へ送信される。
HMI7は、自車両Vの乗員と車両の自動運転制御システムとの間で情報の出力及び入力を行うためのインターフェイスである。本発明による実施例ではHMI7は、文字又は画像情報を表示するディスプレイ、音を発生するスピーカ、及び乗員が入力操作を行うための操作ボタン、タッチパネル、又は音声認識装置(マイク)を備える。
アクチュエータ8は、電子制御ユニット20からの制御信号に応じて自車両Vの走行操作を制御するための装置である。車両Vの走行操作には車両Vの駆動、制動及び操舵が含まれる。アクチュエータ8は、駆動アクチュエータ、制動アクチュエータ、及び操舵アクチュエータのうちの少なくとも1つを備える。駆動アクチュエータは、車両Vの駆動力を提供するエンジン又は電気モータの出力を制御し、それにより車両Vの駆動操作を制御する。制動アクチュエータは、車両Vの制動装置を操作し、それにより車両Vの制動操作を制御する。操舵アクチュエータは、車両Vの操舵装置を操作し、それにより車両Vの操舵操作を制御する。
自動運転が可能な状態において、HMI7において乗員により自動運転を開始すべき入力操作がなされると、電子制御ユニット20に信号が送られて自動運転が開始される。すなわち、車両Vの走行操作である駆動、制動及び操舵がアクチュエータ8により制御される。一方、自動運転中に、HMI7において乗員により自動運転を停止すべき入力操作がなされると、電子制御ユニット20に信号が送られて自動運転が停止され、車両Vの走行操作の少なくとも1つがドライバにより行われるマニュアル運転が開始される。言い換えると、自動運転からマニュアル運転に切り換えられる。なお、自動運転時にドライバにより車両Vの走行操作が行なわれたとき、すなわちドライバがステアリングをあらかじめ定められたしきい量以上操作したとき、アクセルペダルをあらかじめ定められたしきい量以上踏み込んだとき、又は、ブレーキペダルをあらかじめ定められたしきい量以上踏み込んだときにも、自動運転からマニュアル運転に切り換えられる。更に、自動運転中に自動運転が困難と判断されたときには、HMI7を介してドライバに対しマニュアル運転が要求される。
状態センサ9はドライバの状態及びドライバの周囲の状態の一方又は両方を検出するための検出機器である。ドライバの状態は例えば、ドライバの外観及び内部状態の一方又は両方により表される。ドライバの外観は例えば、ドライバの視線、ドライバの瞼の状態、ドライバの顔の向き、ドライバの姿勢、ドライバがセカンドタスクをしているか否か、ドライバがステアリングを把持しているか否か、ドライバが車両Vの座席に与える圧力(着座圧)の分布、ドライバ用座席の調節量のうちの少なくとも1つにより表される。ドライバの姿勢は、腕組みしているか否か、ドライバの手の位置などによって表わされる。セカンドタスクは、車両Vの走行操作以外の行動、例えば携帯電話の操作などを含む。ドライバ用座席の調節量は、ドライバ用座席の位置、座席の背もたれ部分の角度など、ドライバにより調節可能な状態量によって表わされる。一方、ドライバの内部状態は例えば、ドライバの心拍数、血圧、皮膚電位のうちのような生理的指標により表される。
ドライバの状態がドライバの視線、ドライバの瞼の状態、ドライバの顔の向き、ドライバの姿勢、ドライバがセカンドタスクをしているか否かなどにより表される場合には、状態センサ9は、例えば車両Vの内部に取り付けられたドライバカメラを備える。このドライバカメラはドライバを撮影する。ドライバの状態が、ドライバがステアリングを把持しているか否かにより表される場合には、状態センサ9は例えば、ステアリングに取り付けられた接触センサを備える。この接触センサは、例えばドライバが両手でかつステアリングをあらかじめ定められた設定把持力よりも高い把持力でもって把持しているか否かを検出する。ドライバの状態が着座圧の分布により表される場合には、状態センサ9は座席に取り付けられた着座圧センサを備える。この着座圧センサは着座圧の分布を検出する。ドライバの状態がドライバ用座席の調節量により表される場合には、状態センサ9は、座席に取り付けられた座席調節量センサを備える。この座席調節量センサはドライバ用座席の調節量を検出する。ドライバの状態がドライバの内部状態により表わされる場合には、状態センサ9は、例えばステアリングに取り付けられた内部状態センサを備える。この内部状態センサは例えばドライバの生理的指標を検出する。
一方、ドライバの周囲の状態は例えば、車両Vの乗員室内の状態により表される。乗員室内の状態は例えば、乗員室内の音レベル、並びに、乗員室内に入射する光の向き及び強さのうちの少なくとも1つによって表わされる。ドライバの周囲の状態が乗員室内の音レベルによって表わされる場合には、状態センサ9は例えば、乗員室内に取り付けられたマイクを備える。このマイクは乗員室内の音レベルを検出する。ドライバの周囲の状態が乗員室内に入射する光の向き及び強さによって表わされる場合には、状態センサ9は例えば、乗員室内に取り付けられたカメラを備える。このカメラは乗員室に入射する光の向き及び強さを検出する。
図3に示される例では、状態センサ9は、ドライバに向かうように乗員室PAS内のインストルメントパネルIPにそれぞれ取り付けられたドライバカメラSC1及びマイクSC2を備える。状態センサ9により検出された状態情報は電子制御ユニット20へ送信される。
働き掛けデバイス10はドライバに対する働き掛けを行うことが可能な装置である。ドライバに対する働き掛けは、例えば、視覚的働き掛け、聴覚的働き掛け、及び体感的働き掛けのうちの少なくとも1つを含む。ドライバに対する働き掛けが視覚的働き掛けの場合、働き掛けデバイス10は、ドライバが視認可能な表示部を備える。表示部は例えば、ディスプレイ、ランプなどの少なくとも1つを備える。ディスプレイには例えば、車両Vのインストルメントパネルの上部に取り付けられたヘッドアップディスプレイ、インストルメントパネルに取り付けられたメータディスプレイ、HMI7のディスプレイ、左右のAピラー周りに設けられた電子ミラー、などが含まれる。メータディスプレイは例えば、車速、エンジン回転数、燃料残量、などを表示する。HMI7のディスプレイは、ナビゲーションシステム6が目標ルートの表示や、目的地までのガイド(次の交差点を左折するなど)を表示するのに用いられる。電子ミラーは、サイドミラーの代わりに、車両Vの側部又は後方を撮影するカメラの画像を表示する。働き掛けデバイス10がディスプレイを備える場合、働き掛けデバイス10は、ディスプレイに働き掛け用の文字情報又は画像情報を表示することにより、ドライバに働き掛けを行う。一方、ランプには例えば、ステアリングに取り付けられたLED(発光ダイオード)が含まれる。働き掛けデバイス10がランプを備える場合、働き掛けデバイス10は、ランプを点灯又は点滅させることにより、ドライバに働き掛けを行う。
一方、ドライバに対する働き掛けが聴覚的働き掛けの場合、働き掛けデバイス10は例えば、スピーカを備える。働き掛けデバイス10がスピーカを備える場合、一例では、働き掛けデバイス10は、スピーカから音声を発することにより、ドライバに働き掛けを行う。別の例では、働き掛けデバイス10は、スピーカからブザー音又は警報音を発することにより、ドライバに働き掛けを行う。
ドライバに対する働き掛けが体感的働き掛けの場合、働き掛けデバイス10は例えば、ドライバに振動を与える振動器、ドライバ用座席の角度又は位置を変更するドライバ座席調整器などの少なくとも1つを備える。振動器には例えば、ドライバ用座席に組み込まれた振動器、ドライバ用座席に組み込まれたエア注入式マッサージ器、ステアリングに組み込まれた振動器、などが含まれる。働き掛けデバイス10が振動器を備える場合、働き掛けデバイス10は、振動器を作動させることにより、ドライバに働き掛けを行う。働き掛けデバイス10が座席調整器を備える場合、働き掛けデバイス10は例えば、ドライバ用座席の背もたれを水平から垂直に近づけ又は座席をステアリングに近づけることにより、ドライバに働き掛けを行う。
図3に示される例では、働き掛けデバイス10は、インストルメントパネルIPにそれぞれ取り付けられたヘッドアップディスプレイUV1、メータディスプレイUV2、及び、HMI7のディスプレイUV3、左右のAピラーAPにそれぞれ取り付けられた電子ミラーUV4,UV5、ステアリングSTRに設けられたLEDランプUV6、AピラーAPにそれぞれ取り付けられた一対のスピーカUA1、並びに、ドライバ用座席DSTに組み込まれた振動器UB1を備える。
電子制御ユニット20は、双方向性バスによって相互に接続されたCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたコンピュータである。図1に示されるように、本発明による実施例の電子制御ユニット20は、ROM及びRAMを有する記憶部21、自動運転制御部22、信頼度算出部23、用心度算出部24、判断部25、利用可能デバイス決定部26、最優先デバイス決定部27、及び働き掛け制御部28を備える。
自動運転制御部22は、車両の自動運転を制御するように構成されている。図4は本発明による実施例の自動運転制御部22のブロック図を示している。図4を参照すると、本発明による第1実施例の自動運転制御部22は、複数の制御部、すなわち自己位置同定部22a、障害物検出部22b、動的/静的識別部22c、トラッキング部22d、統合認知部22e、信号機状態認識部22f、及び、判断/進路生成部22gを備える。次に、図5を参照して自動運転制御部22の機能を説明する。
図5を参照すると、自己位置同定部22aには、自車両Vのおおまかな位置及び姿勢の情報がGPS受信部及びIMUから入力されると共に、自車両Vの周辺の物標点の情報が測距センサから入力される。自己位置同定部22aでは、これらの入力と、記憶装置5内に記憶されている自動運転専用の道路地図とに基づいて、自車両Vの位置及び姿勢が補正される。一例では、測距センサから入力された物標点の位置が、道路地図内の物標点の位置に一致するように、自車両Vの位置及び姿勢が補正される。すなわち、補正済みの自車両Vの位置及び姿勢の情報が自己位置同定部22aから出力される。
一方、障害物検出部22bには、自車両Vの周辺の物標点の情報が測距センサから入力されると共に、補正された自車両Vの位置及び姿勢が自己位置同定部22aから入力される。障害物検出部22bでは、これらの入力と、記憶装置5内の道路地図とに基づいて、自車両Vの周囲の障害物が検出される。一例では、測距センサにより検出された物標点と、道路地図内の物標点との差分に基づいて、障害物が検出される。別の実施例(図示しない)では、測距センサにより検出された物標点の形状があらかじめ記憶されているテンプレートの形状と一致するか否かに基づいて、障害物が検出される。すなわち、自車両Vの周囲の障害物の情報が障害物検出部22bから出力される。
動的/静的識別部22cには、自車両Vの周囲の障害物の情報が障害物検出部22bから入力される。動的/静的識別部22cでは、この入力と、記憶装置5内の道路地図とに基づいて、障害物が動的障害物であるか静的障害物であるかが識別される。動的障害物は他車両、歩行者のように移動可能な障害物であり、静的障害物は建築物のように移動不能な障害物である。すなわち、動的障害物の情報及び静的障害物の情報が動的/静的識別部22cから出力される。
トラッキング部22dには、動的障害物の情報が動的/静的識別部22cから入力される。トラッキング部22dでは、この入力に基づいて、動的障害物の動きが追跡され、平滑化される。すなわち、平滑化済みの動的障害物の動きの情報がトラッキング部22dから出力される。
統合認知部22eには、補正済みの自車両Vの位置及び姿勢の情報が自己位置同定部22aから入力され、静的障害物の情報が動的/静的識別部22cから入力され、平滑化済みの動的障害物の動きの情報がトラッキング部22dから入力される。統合認知部22eでは、これらの入力に基づいて、自車両Vの外部環境の種々の情報が互いに統合された統合車外環境情報が形成される。統合車外環境情報には、例えば、動的障害物の特定情報(例えば、動的障害物が車両であるか歩行者であるか)や、静的障害物の特定情報(例えば、静的障害物が静止している車両であるか、建築物であるか)などが含まれる。すなわち、統合車外環境情報が統合認知部22eから出力される。
信号機状態認識部22fには、前方カラー画像が前方カメラから入力される。信号機状態認識部22fでは、自車両Vの前方の信号機の情報が特定される。信号機の情報には、自車両Vの前方に信号機が存在するか、信号機が青信号であるか、などの情報が含まれる。すなわち、信号機の状態の情報が信号機状態認識部22fから出力される。
判断/進路生成部22gには、補正済みの自車両Vの位置及び姿勢の情報が自己位置同定部22aから入力され、統合車外環境情報が統合認知部22eから入力され、平滑化済みの動的障害物の動きの情報がトラッキング部22dから入力され、信号機の状態の情報が信号機状態認識部22fから入力される。判断/進路生成部22gでは、これらの入力と、記憶装置5内の道路地図と、ナビゲーションシステム6により演算された目標ルートとに基づいて、種々の判断が行われると共に、自車両Vの目標進路の情報が生成される。すなわち、自車両Vの目標進路の情報が判断/進路生成部22gから出力される。
判断/進路生成部22gから出力された目標進路の情報、すなわち自動運転制御部22の出力はアクチュエータ8に入力される。アクチュエータ8では、自車両Vが目標進路に従って走行するように、自車両Vの走行操作が制御される。
再び図1を参照すると、信頼度算出部23は、自動運転制御部22の出力の信頼性の度合いを表す自動運転出力信頼度(reliance)を算出するように構成されている。なお、自動運転出力信頼度は連続的又は段階的に変化する数値の形で算出される。
用心度算出部24は、自動運転に対するドライバの用心の度合いを表すドライバ用心度(vigilance)を状態センサ9により検出されたドライバの状態に基づいて算出するように構成されている。なお、ドライバ用心度は連続的又は段階的に変化する数値の形で算出される。
判断部25は、車両Vの自動運転中に、ドライバに対する働き掛けが必要か否かを判断するように構成されている。
利用可能デバイス決定部26は、ドライバに対する働き掛けが必要と判断されたときに、ドライバ又はドライバの周囲の状態に基づいて、複数の働き掛けデバイス10のなかから利用可能な働き掛けデバイス10を決定するように構成されている。
最優先デバイス決定部27は、利用可能な働き掛けデバイス10のなかから最優先の働き掛けデバイス10を決定するように構成されている。
働き掛け制御部28は、最優先の働き掛けデバイス10を制御してドライバに対する働き掛けを制御するように構成されている。
さて、上述したように、自動運転出力信頼度は自動運転制御部22の出力の信頼性の度合いを表している。本発明による実施例では、自動運転制御部22の出力は、判断/進路生成部22gの出力、すなわち目標進路の情報であるので、自動運転出力信頼度は目標進路の情報の信頼性の度合いを表している。すなわち、例えば、目標進路の情報が正確であるときには、目標進路の情報が不正確であるときに比べて、自動運転出力信頼度は高い。
図5を参照して説明したように、自動運転制御部22の出力、すなわち判断/進路生成部22gの出力は、上述した複数の制御部22a,22b,22c,22d,22e,22fの出力に基づいて求められる。したがって、自動運転制御部22の出力の信頼性の度合いである自動運転出力信頼度は、制御部22a,22b,22c,22d,22e,22fの出力の信頼性の度合いに依存する。そこで、本発明による実施例では、複数の制御部22a,22b,22c,22d,22e,22f,22gのうち少なくとも1つの出力の信頼性の度合いに基づいて自動運転出力信頼度が算出される。
具体的には、例えば、自己位置同定部22aの出力、すなわち自車両Vの位置及び姿勢の情報が正確であるときには、この情報が不正確であるときに比べて、自己位置同定部22aの出力の信頼性の度合いは高く、したがって自動運転出力信頼度は高い。この場合、例えば、信号を受けているGPS衛星の数が多いときは、信号を受けているGPS衛星の数が少ないときに比べて、自己位置同定部22aの出力は正確である。あるいは、信号を受けているGPS衛星が分散して位置しているときには、信号を受けているGPS衛星が集まって位置しているときに比べて、自己位置同定部22aの出力は正確である。あるいは、測距センサから入力された物標点の情報の数が多いときには、当該物標点の情報の数が少ないときに比べて、自己位置同定部22aの出力は正確である。あるいは、測距センサにより検出された物標点の位置と道路地図内の物標点の位置との誤差が小さいときには、当該誤差が大きいときに比べて、自己位置同定部22aの出力は正確である。
あるいは、障害物検出部22bの出力である障害物の情報が正確であるときには、この情報が不正確であるときに比べて、自動運転出力信頼度は高い。この場合、例えば、測距センサにより検出された物標点の位置の数が多いときには、当該位置の数が少ないときに比べて、障害物検出部22bの出力は正確である。あるいは、測距センサにより検出された物標点の位置と、道路地図内の物標点の位置との差の平方の和が小さいときには、当該和が大きいときに比べて、障害物検出部22bの出力は正確である。あるいは、測距センサにより検出された物標点の形状とテンプレートの形状との一致点の数が多いときには、当該一致点の数が少ないときに比べて、障害物検出部22bの出力は正確である。
動的/静的識別部22cの出力である動的障害物の情報もしくは静的障害物の情報が正確であるときには、この情報が不正確であるときに比べて、自動運転出力信頼度は高い。この場合、例えば、道路地図に記憶されている静的障害物であって、自車両Vの位置から検出可能な静的障害物の数に対する、実際に検出された静的障害物の数の割合が高いときには、当該割合が低いときに比べて、動的/静的識別部22cの出力は正確である。あるいは、所定時刻前に検出された動的障害物の形状、体積などと、現在検出された動的障害物の形状、体積などとの一致の程度が高いときには、当該一致の程度が低いときに比べて、動的/静的識別部22cの出力は正確である。
トラッキング部22dの出力である平滑化済みの動的障害物の動きの情報が正確であるときには、この情報が不正確であるときに比べて、自動運転出力信頼度は高い。この場合、例えば、検出された動的障害物の情報に基づき、動的障害物の位置が推定され、動的障害物の実際の位置に対する推定された位置の偏差が小さいときには、当該偏差が大きいときに比べて、トラッキング部22dの出力は正確である。
統合認知部22eの出力である統合車外環境情報が正確であるときには、この情報が不正確であるときに比べて、自動運転出力信頼度は高い。この場合、例えば、自己位置同定部22aの出力、障害物検出部22bの出力、動的/静的識別部22cの出力、及びトラッキング部22dの出力の整合性の程度が高いときには、当該整合性の程度が低いときに比べて、統合認知部22eの出力は正確である。例えば、障害物検出部22bが或る障害物を歩行者であると検出し、動的/静的識別部22cが当該障害物を静的障害物であると検出する場合がある。このような場合に、障害物検出部22bの出力と動的/静的識別部22cの出力との整合性の程度が低いと判断される。なお、当該障害物が人の写真を含むポスターである場合に、このような不整合が生ずるおそれがある。
信号機状態認識部22fの出力である信号機の状態の情報が正確であるときには、この情報が不正確であるときに比べて、自動運転出力信頼度は高い。この場合、例えば、自車両の現在位置と道路地図とに基づき、自車両の現在位置から検出されると予測される信号機の寸法が算出され、当該寸法と前方カメラにより実際に検出された信号機の寸法との偏差が小さいときには、当該偏差が大きいときに比べて、信号機状態認識部22fの出力は正確である。
別の実施例(図示しない)では、例えば、車両が目標進路に従って走行できなかったと仮定したときの車両の危険性が算出され、当該危険性が低下又は維持される場合には、当該危険性が増大する場合に比べて、目標進路の信頼性、すなわち判断/進路生成部22gの出力の信頼度は高い。
更に、図5に示されるように、自動運転制御部22の出力は、測距センサ、GPS受信部、IMU、及び前方カメラの出力に基づいて求められる。したがって、自動運転制御部22の出力の信頼性の度合いは、測距センサ、GPS受信部、IMU、及び前方カメラの出力の信頼性の度合いにも依存する。そこで、本発明による実施例では、測距センサ、GPS受信部、IMU、及び前方カメラのうち少なくとも1つの出力の信頼性の度合いに基づいて自動運転出力信頼度が算出される。
更に、自動運転出力信頼度は、車両が走行する道路の形状(例えば、カーブと直線部の種別、カーブの曲率、交差点、合流点及び分岐点の位置など)や、車両の周囲の状況(例えば、車両が交差点内にあるか否か、車両が駅前にあるか否か、など)にも依存する。すなわち、例えば、車両がカーブを走行する場合には、車両が直線部を走行する場合に比べて、自己位置同定部22aの出力が不正確になる可能性が高く、したがって自動運転出力信頼度が低いと推測される。あるいは、駅前には多数の歩行者及び車両が存在していると考えられるので、車両が駅前にある場合には、そうでない場合に比べて、障害物検出部22bの出力が不正確になる可能性が高く、したがって自動運転出力信頼度が低いと推測される。そこで、本発明による実施例では、例えば、自動運転出力信頼度が、地図データベース4内の地図情報又は記憶装置5内の道路地図と関連付けて記憶され、自車両が走行する地図上の位置に基づいて自動運転出力信頼度が算出される。
また、本発明による実施例では、車両が実際に走行したときに、車両が走行した地図上の位置に、このとき算出された自動運転出力信頼度が関連付けて記憶される。次いで、車両が当該位置を走行したときには、当該位置と関連付けられている自動運転出力信頼度がこのときの自動運転出力信頼度として算出される。
なお、上述したように、自動運転が困難であると判断されたときは、ドライバに対しマニュアル運転が要求される。本発明による実施例では、自動運転出力信頼度があらかじめ定められた一定の下限値よりも低いときに自動運転が困難と判断され、ドライバに対しマニュアル運転が要求される。
一方、ドライバ用心度は上述したように、自動運転に対するドライバの用心の度合いを表している。すなわち、ドライバ用心度は、自動運転時にドライバがどの程度マニュアル運転に対する準備ができているかを表している。具体的には、ドライバのマニュアル運転に対する準備が十分であるときには、この準備が不十分なときに比べて、ドライバ用心度は高い。
このドライバ用心度は上述したドライバの状態に基づいて算出される。具体的には、例えば、ドライバの視線が車両Vの前方に向いているときには、ドライバが脇見をしているときに比べて、ドライバ用心度は高い。あるいは、ドライバの視線が車両Vの前方を向いている時間が長くかつドライバが電子ミラー又はバックミラーを見る頻度が高いときには、ドライバの視線が車両Vの前方を向いている時間が短いとき又はドライバが電子ミラー又はバックミラーを見る頻度が低いときに比べて、ドライバ用心度は高い。ドライバの視線が障害物、特に動的障害物に向いている時間が長いときには、この時間が短いときに比べて、ドライバ用心度は高い。ドライバの瞬きの頻度が高いときには、ドライバの瞬きの頻度が低いときに比べて、ドライバ用心度は高い。ドライバが腕組みしていないときには、ドライバが腕組みしているときに比べて、ドライバ用心度は高い。ドライバがセカンドタスクをしていないときには、ドライバがセカンドタスクをしているときに比べて、ドライバ用心度は高い。なお、ドライバ用心度は、ドライバが行っているセカンドタスクの種類又は時間にも依存する。ドライバがステアリングを把持しているときには、ドライバがステアリングを把持していないときに比べて、ドライバ用心度は高い。ドライバの着座圧の分布の偏りが小さいときには、分布の偏りが大きいときに比べて、ドライバ用心度は高い。あるいは、ドライバの着座圧の分布のあらかじめ定められた基準分布に対する偏差が小さいときには、当該偏差が大きいときに比べて、ドライバ用心度は高い。一例では基準分布は一定である。別の例では、基準分布は個々のドライバに応じて設定される。ドライバ用座席の背もたれ部分の向きが垂直に近いときには、背もたれ部分の向きが水平に近いときに比べて、ドライバ用心度は高い。ドライバの心拍数が高いときには、ドライバの心拍数が低いときに比べて、ドライバ用心度は高い。
上述したドライバに対する働き掛けが行なわれると、ドライバ用心度が上昇する。一方、ドライバに対する働き掛けが行われないときには、ドライバ用心度を上昇させる行動をドライバが自発的に行なわない限り、ドライバ用心度は時間の経過と共に低下する。したがって、ドライバに対する働き掛けを制御することにより、ドライバ用心度を制御することができる。
さて、本発明による実施例では、判断部25は、車両Vの自動運転中において、ドライバ用心度が下限用心度よりも低いときにドライバに対する働き掛けが必要であると判斷し、ドライバ用心度が下限用心度以上のときにドライバに対する働き掛けが不要であると判断する。その結果、ドライバ用心度が下限用心度よりも低いときにドライバに対する働き掛けが行われ、したがってドライバ用心度が下限用心度以上に維持される。
図6は、下限用心度の一例を示している。図6に示される例では、下限用心度は、自動運転出力信頼度が低くなるにつれて高くなる。このようにすると、自動運転出力信頼度が高いときには、低いドライバ用心度が許容される。このようにしているのは、自動運転出力信頼度が高いときには、自動運転が継続される可能性が高く、マニュアル運転に切り換えられる可能性が低いからである。その結果、ドライバが過度に緊張するおそれがない。一方、自動運転出力信頼度が低いときには、ドライバ用心度が高く制御される。このようにしているのは、自動運転出力信頼度が低いときには、自動運転が継続される可能性が低く、マニュアル運転に切り換えられる可能性が高いからである。したがって、ドライバが過度にリラックスするおそれがない。したがって、自動運転出力信頼度が高いときにも低いときにも、ドライバのマニュアル運転に対する十分な準備を確保しつつ、ドライバを適切な状態に維持することができる。
したがって、図6に示される例では、判断部25は、ドライバ用心度及び自動運転出力信頼度を算出し、自動運転出力信頼度に基づいて下限用心度を算出し、算出されたドライバ用心度と下限用心度とを比較し、ドライバ用心度が下限用心度よりも低いときに、ドライバに対する働き掛けが必要であると判斷する。別の実施例(図示しない)では、下限用心度は自動運転出力信頼度に関わらず一定である。なお、下限用心度は自動運転出力信頼度の関数として、マップの形であらかじめ記憶部21のROM内に記憶されている。
ドライバに対する働き掛けが必要であると判断されると、利用可能デバイス決定部26は、ドライバの状態又はドライバの周囲の状態に基づいて、利用可能な働き掛けデバイス10を決定する。すなわち、働き掛けデバイス10が例えばディスプレイを含む場合、ドライバの視線が当該ディスプレイに近いときには当該ディスプレイは利用可能な働き掛けデバイスであると判定される。逆に、ドライバの視線が当該ディスプレイから離れているときには当該ディスプレイは利用不可能な働き掛けデバイスと判定される。あるいは、ドライバから見てディスプレイの先に眩しい箇所が存在することにより当該ディスプレイが見難いときには、当該ディスプレイは利用不可能な働き掛けデバイスと判定され、それ以外は当該ディスプレイは利用可能デバイスと判定される。働き掛けデバイス10がステアリングに設けられたLEDランプを含む場合も同様である。
働き掛けデバイス10が例えばスピーカを含む場合、乗員室内の音レベルが低いときには当該スピーカは利用可能な働き掛けデバイスであると判定され、当該音レベルが高いときには当該スピーカは利用不可能な働き掛けデバイスと判定される。
働き掛けデバイス10が例えばドライバ用座席に組み込まれた振動器を含む場合、ドライバの着座圧の分布により表されるドライバの姿勢が、振動がドライバに効果的に伝わる姿勢であるときには当該振動器は利用可能な働き掛けデバイスであると判定され、ドライバの姿勢が、振動がドライバに効果的に伝わる姿勢でないときには当該振動器は利用不可能な働き掛けデバイスと判定される。あるいは、働き掛けデバイス10が例えばステアリングに組み込まれた振動器を含む場合、ドライバがステアリングを両手で把持しているときには当該振動器は利用可能な働き掛けデバイスであると判定され、ドライバがステアリングを両手で把持していないときには当該振動器は利用不可能な働き掛けデバイスと判定される。
利用可能デバイス決定部26は、このようにして少なくとも1つの利用可能な働き掛けデバイス10を決定する。
次いで、最優先デバイス決定部27は、利用可能な働き掛けデバイス10のなかから最優先の働き掛けデバイス10を決定する。本発明による実施例では、ドライバが特定の行動を行うよう働き掛けデバイス10によりドライバに対する働き掛けが行われてから、ドライバが当該行動を完了するまでに要する時間、すなわち反応時間に基づいて、働き掛けデバイス10の優先度が決定される。ここで、反応時間は、例えばドライバがステアリングを把持するようにドライバに対する働き掛けを行った場合には、当該働き掛けが行われてからドライバがステアリングを把持するまでに要する時間である。あるいは、例えばドライバの視線が特定の方向を向くようにドライバに対する働き掛けを行った場合には、当該働き掛けが行われてからドライバの視線が当該方向を向くまでに要する時間が反応時間である。その上で、本発明による実施例では、より短い反応時間を与える働き掛けデバイス10の優先度が、より長い反応時間を与える働き掛けデバイス10の優先度よりも高いと判定される。したがって、反応時間が最も短い働き掛けデバイス10が、最優先の働き掛けデバイス10に決定される。
図7は、車両の制御システムが5つの働き掛けデバイスDVCi(i=1,2,3,4,5)を備える場合の、反応時間を示すマップである。図7において、tRjは第jの働き掛けデバイスDVCjのみが用いられた場合の反応時間を、tRjkは第jの働き掛けデバイスDVCj及び第kの働き掛けデバイスDVCk両方が用いられた場合の反応時間を、それぞれ示している(j,k=1,2,3,4,5)。
本願発明者らによれば、単一の働き掛けデバイスを用いるよりも、複数の働き掛けデバイスを用いると、反応時間を短縮できる場合があることが確認されている。そこで本発明による実施例では、ドライバに対する働き掛けを行うために、1つ又は2つの働き掛けデバイスが用いられる。なお、反応時間は自動運転出力信頼度の関数として、マップの形であらかじめ記憶部21のROM内に記憶されている。
ここで、例えば、第1の働き掛けデバイスDVC1、第3の働き掛けデバイスDVC3及び第4の働き掛けデバイスDVC4が利用可能な働き掛けデバイスであると決定された場合、言い換えれば、第2の働き掛けデバイスDVC2及び第5の働き掛けデバイスDVC5が利用不可能であると判定された場合を考える。図8では、図7の表のセルに斜線を付することによって、第2の働き掛けデバイスDVC2及び第5の働き掛けデバイスDVC5が利用不可であることが示されている。
この場合、反応時間tR1,tR12,tR13,tR14,tR3,tR34,tR4のなかで、最短の反応時間を与える働き掛けデバイスが、最優先の働き掛けデバイスに決定される。例えば、反応時間tR34が最短の場合には、第3の働き掛けデバイスDVC3及び第4の働き掛けデバイスDVC4の組み合わせが最優先の働き掛けデバイスに決定される。あるいは、反応時間tR4が最短の場合には、第4の働き掛けデバイスDVC4のみが最優先の働き掛けデバイスに決定される。
なお、別の実施例(図示しない)では、より高い正確性を与える働き掛けデバイス10の優先度が、より低い正確性を与える働き掛けデバイス10の優先度よりも高いと判定される。ここで、正確性は、ドライバが特定の行動を行うようドライバに対する働き掛けが行われたときに、ドライバが当該特定の行動を正確に行う程度を表している。更に別の実施例(図示しない)では、より小さい煩わしさを与える働き掛けデバイス10の優先度が、より大きな煩わしさを与える働き掛けデバイス10の優先度よりも高いと判定される。ここで、煩わしさは、ドライバに対する働き掛けが行われたときに、ドライバが感じる煩わしさの程度を表している。
次いで、働き掛け制御部28は、最優先の働き掛けデバイス10を制御してドライバに対する働き掛けを行う。その結果、ドライバに対する働き掛けを確実にかつ効果的に行うことができる。
図9は、本発明による実施例の働き掛け制御部28で行われる処理を示すルーチンを示している。このルーチンはあらかじめ定められた設定時間ごとに繰り返し実行される。図9を参照すると、ステップ100ではドライバに対する働き掛けが必要であるか否かが判別される。ドライバに対する働き掛けが不要であると判別されたときには処理サイクルを終了する。ドライバに対する働き掛けが必要であると判別されたときには次いでステップ101に進み、利用可能な働き掛けデバイス10が決定される。続くステップ102では、最優先の働き掛けデバイス10が決定される。続くステップ103では、最優先の働き掛けデバイス10を用いてドライバに対する働き掛けが実行される。