以下、本発明を適用した画像形成装置の実施形態として、電子写真方式で画像を形成するプリンタについて説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタの概略構成図である。このプリンタは、像担持体たる中間転写ベルト51を有している。また、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kが中間転写ベルト51の上部走行面に沿って配設されたタンデム作像部も有している。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、互いに使用するトナーの色が異なる点の他は同様の構成になっているので、図2を用いて一つの画像形成ユニット1についてのみ説明する。なお、この際、各色を示す添え字(Y,M,C,K)は適宜省略する。
図2に示されるように、プリンタ本体に対して着脱可能に構成された画像形成ユニット1は、潜像担持体たるドラム状の感光体11、帯電装置21、現像装置31、クリーニング装置41などを備えている。
感光体11は、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成された外径60[mm]程度のドラム形状のものであり、駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。
帯電手段たる帯電装置21は、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体11に接触あるいは近接させながら、帯電ローラと感光体11との間に放電を発生させることで、感光体11表面をトナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧と交流電圧とを重畳したものを採用している。なお、帯電ローラを用いる方式に変えて、帯電チャージャによる方式を採用しても良い。
図1において、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの上方には、帯電装置21によって一様に帯電せしめられた感光体11表面に潜像を書き込む、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいて、レーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体11Y,11M,11C,11Kの表面を光走査する。この光走査により、感光体11Y,11M,11C,11Kの表面上に、Y,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体11の一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所が、他の箇所(地肌部)よりも低電位の静電潜像となる。
なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、ポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体表面に照射するものである。また、LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって、光書込を行うものを採用してもよい。
図2において、現像装置31は、トナーと磁性キャリアとを含む現像剤が収容される収容容器内に、現像剤担持体たる現像スリーブ31a及び現像剤を攪拌しながら搬送する2本のスクリュー部材31b,31cを具備している。なお、現像装置31としては、磁性キャリアを含まずにトナー粒子を主成分とする一成分現像剤を用いるものを採用することも可能である。
後述する一次転写ニップを通過した後の感光体11表面をクリーニングするクリーニング装置41は、クリーニング部材たるクリーニングブレード41aやクリーニングブラシローラ41bを具備している。クリーニングブレード41aは、感光体11の回転方向に対してカウンター方向から感光体表面と当接している。また、クリーニングブラシローラ41bは、感光体11の回転方向とは逆方向に回転しながら感光体表面と接触している。そして、クリーニングブレード41aとクリーニングブラシローラ41bとにより、感光体表面をクリーニングする。
図1において、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの下方には、無端状の中間転写ベルト51を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写手段としての転写ユニット50が配設されている。この転写ユニット50は、中間転写ベルト51の他に、駆動ローラ52、二次転写対向ローラ53、クリーニングバックアップローラ54、4つの一次転写ローラ55、二次転写ローラ56、ベルトクリーニング装置57などを有している。また、ローラクリーニング装置58なども有している。
中間転写ベルト51は、そのループ内側に配設された駆動ローラ52、二次転写対向ローラ53、クリーニングバックアップローラ54、及び、4つの一次転写ローラ55Y,55M,55C,55Kによって張架されている。そして、駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ52の回転力により、中間転写ベルト51は図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。
中間転写ベルト51の特性は、次に説明する通りである。即ち、厚みは、20[μm]〜200[μm]、好ましくは60[μm]程度である。また、表面抵抗は、9.0〜13.0[LogΩ/cm2]、好ましくは10.0〜12.0[LogΩ/cm2]である。この値は、三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT45、HRSプローブにて、印加電圧500[V]、10[sec]値の条件で測定したものである。体積抵抗率は、6.0〜13.0[LogΩcm]、好ましくは7.5〜12.5[LogΩcm]、より好ましくは約9.0[LogΩcm]程度である。その値は、三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT45、HRSプローブにて、印加電圧100[V]、10[sec]値の条件で測定されたものである。ベルト基体は、PI(ポリイミド)、PVDF(フッ化ビニルデン)、ETFE(エチレン−四フッ化エチレン共重合体)、PC(ポリカーボネート)等からなるものである。このベルト基体に、何らかの層を積層してもよい。例えば、離型促進層を積層してもよい。離型促進層の材料としては、フッ素樹脂が好適である。フッ素樹脂としては、ETFE(エチレン−四フッ化エチレン共重合体)、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)、PVDF(フッ化ビニルデン)、PEA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂)等を例示することができる。また、FEP(四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体)、PVF(フッ化ビニル)等でもよい。中間転写ベルト51の製造方法としては、注型法や遠心成形法などがあり、必要に応じてその表面を研磨しても良い。なお、中間転写ベルト51の抵抗率は、カーボンブラック等の導電性材料をベルト部材中に分散させて調整することが可能である。
一次転写ローラ55Y,55M,55C,55Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト51を、感光体11Y,11M,11C,11Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト51のおもて面と、感光体11Y,11M,11C,11Kとが当接するY,M,C,K用の一次転写ニップが形成されている。
一次転写ローラ55Y,55M,55C,55Kには、一次転写電源によってそれぞれ一次転写バイアスが印加される。これにより、感光体11Y,11M,11C,11K上と、中間転写ベルト51との間に一次転写電界が形成される。感光体11Y,11M,11C,11K上のY,M,C,Kトナー像は、一次転写電界やニップ圧の作用によって中間転写ベルト51上に一次転写される。これにより、中間転写ベルト51上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
実施形態に係るプリンタは、モノクロ画像を形成する場合に、転写ユニット50におけるY,M,C用の一次転写ローラ55Y,55M,55Cを支持している支持板を移動させる。これにより、一次転写ローラ55Y,55M,55Cを、感光体11Y,11M,11Cから遠ざけて中間転写ベルト51の張架姿勢を変化させることで、中間転写ベルト51を感光体11Y,11M,11Cから離間させる。但し、感光体11Kに対しては、引き続き中間転写ベルト51に当接させてK用の一次転写ニップを維持する。この状態で、4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kのうち、画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像を感光体11K上に形成する。
一次転写ローラ55は、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなり、その外径は16[mm]であり、芯金の径は10[mm]である。体積抵抗は6.0〜8.0[LogΩcm]、好ましくは7.0〜8.0[LogΩcm]である。この体積抵抗の値は回転測定によるものである。具体的には、10[N]/片側の加重を加え、一次転写ローラ軸に1[kV]のバイアスを印加し、1分間に一次転写ローラ55を1回転させながら複数回に渡って抵抗値を測定し、その平均を求めたものである。オームの法則(R=V/I)に基づいて算出したスポンジ層の抵抗Rは、1E6[Ω]〜1E9[Ω]、好ましくは約3E7[Ω]である。
このような一次転写ローラ55に印加するための一次転写バイアスを出力する一次転写電源は、一次転写バイアスを定電流制御で出力する。なお、一次転写ローラ55に一次転写バイアスを印加する一次転写方式に代えて、転写チャージャや転写ブラシなどを用いた一次転写方式を採用してもよい。
転写ユニット50の二次転写ローラ56は、中間転写ベルト51のループ外側に配設されており、ループ内側の二次転写対向ローラ53との間に中間転写ベルト51を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト51のおもて面と、二次転写ローラ56とが当接する二次転写ニップが形成されている。
なお、転写ユニット50において、二次転写ローラ56と二次転写対向ローラ53とで中間転写ベルト51が挟み込まれた箇所が、中間転写ベルト51上から記録シートP上にトナー像が転写される二次転写部である。
二次転写ローラ56は電気的に接地されているのに対し、二次転写対向ローラ53には二次転写電源200から出力される二次転写バイアスが印加される。これにより、二次転写対向ローラ53と二次転写ローラ56との間に、トナーを二次転写対向ローラ53側から二次転写ローラ56側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。なお、二次転写ローラ56に二次転写バイアスを印加するとともに、二次転写対向ローラ53を電気的に接地しても良い。
転写ユニット50の下方には、記録シートPを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。この給紙カセット100は、紙束の一番上の記録シートPに給紙ローラ101を当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録シートPを給紙路に向けて送り出す。
給紙路の末端付近には、レジストローラ対102が配設されている。このレジストローラ対102は、給紙カセット100から送り出された記録シートPをローラ間に挟み込むと、すぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録シートPを二次転写ニップ内で中間転写ベルト51上のトナー像に同期させ得るタイミングで、レジストローラ対102の両ローラの回転駆動を再開して、記録シートPを二次転写ニップに向けて送り出す。二次転写ニップで記録シートPに密着せしめられた中間転写ベルト51上のトナー像は、二次転写電界やニップ圧の作用によって記録シートP上に一括二次転写される。このようにして表面にフルカラートナー像またはモノクロトナー像が形成された記録シートPは、二次転写ニップを通過すると、二次転写ローラ56や中間転写ベルト51から曲率分離する。
二次転写対向ローラ53は、ステンレス鋼やアルミニウム等からなる芯金に抵抗層を積層したものである。抵抗層は、ポリカーボネートやフッ素系ゴムやシリコン系ゴム等に、カーボンや金属錯体等の導電粒子を分散させたもの、あるいは、NBRやEPDM等のゴム、NBR/ECO共重合のゴム、ポリウレタンの半導電性ゴム等よりなる。その体積抵抗は、6.0〜12.0[LogΩcm]、望ましくは7.0〜9.0[LogΩcm]である。
二次転写ローラ56は、ステンレス鋼やアルミニウム等からなる芯金上に、導電性ゴム等からなる抵抗層と表層とを積層して形成してある。その外径は20[mm]であり、芯金は直径16[mm]のステンレス鋼である。抵抗層は、NBR/ECOの共重合体よりなる硬度40〜60度[JIS−A]のゴムである。表層は、含フッ素ウレタンエラストマーからなり、その厚みは8〜24[μm]が望ましい。その理由としては、ローラの表層は塗装工程により製造されることが多いので、表層の厚みが8[μm]以下では、塗布ムラによる抵抗ムラの影響が大きく、抵抗の低い箇所でリークが発生する可能性があり好ましくない。また、ローラ表面にシワが生じて、表層がひび割れるという問題も生じ易い。一方、表層の厚みが24[μm]以上に厚くなると抵抗が高くなり、体積抵抗率が高い場合には、二次転写対向ローラ53の芯金に定電流を印加したときの電圧が上昇することがあり、定電流電源の電圧可変範囲を超えるので目標の電流以下の電流になる。また、電圧可変範囲が十分高い範囲の場合には、定電流電源から二次転写対向ローラ53の芯金までの高圧経路や、二次転写対向ローラ53の芯金が高電圧になることによるリークが発生し易くなる。また、二次転写ローラ56の表層の厚みが24[μm]以上に厚いと硬度が高くなり、記録シートPや中間転写ベルト51との密着性が悪くなる。二次転写ローラ56の表面抵抗は6.5[LogΩ/cm2]以上であり、二次転写ローラ56の表層の体積抵抗は10.0[LogΩcm]以上、より好ましくは、12.0[LogΩcm]以上である。
二次転写ローラ56としては、表層を積層しない発泡タイプのローラとすることも可能である。この場合の二次転写ローラ56の体積抵抗は、6.0〜8.0[LogΩcm]、好ましくは7.0〜8.0[LogΩcm]である。なお、二次転写ローラ56及び二次転写対向ローラ53の体積抵抗の測定方法は、上述した一次転写ローラ55の場合と同様の回転測定法によるものとする。
二次転写ニップの図中右側方には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録シートPは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録シートPは、定着後搬送路を通って機外へと排出される。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト51の表面には、記録シートPに二次転写されなかった若干量の転写残トナーや、紙粉などが付着している。それらは、ベルトクリーニング装置57によって中間転写ベルト51の表面から除去される。
ベルトクリーニング装置57は、クリーニング部材たるクリーニングブレード57a、クリーニングブラシローラ57b、ステアリン酸亜鉛からなる固形潤滑剤57cなどを具備している。片持ち支持された状態で、自由端側を中間転写ベルト51に当接させているクリーニングブレード57aは、転写残トナーや紙粉をベルト表面から掻き落とす。また、駆動手段による駆動を受けて回転駆動するクリーニングブラシローラ57bは、その毛先を、中間転写ベルト51と、バネによって自らに向けて付勢される固形潤滑剤57cとの両方に当接させている。そして、回転駆動に伴って、固形潤滑剤57cから潤滑剤粉末を掻き取りながら、掻き取った潤滑剤粉末をベルト表面に塗布したり、クリーニングブレード57aで除去し切れなかったトナーや紙粉をベルト表面から掻き落としたりする。潤滑剤粉末が中間転写ベルト51に塗布されることで、ベルト表面からのトナー離型性を向上させて、二次転写効率を向上させたり、クリーニングブレード57aとの摩擦に伴うベルト表面の劣化を抑えたりすることができる。
二次転写ニップを通過した後の二次転写ローラ56の表面には、紙粉や飛散トナーなどの汚れが付着している。それらは、ローラクリーニング装置58によって二次転写ローラ56の表面から除去される。
ローラクリーニング装置58は、クリーニング部材たるクリーニングブレード58a、クリーニングブラシローラ58b、ステアリン酸亜鉛からなる固形潤滑剤58cなどを具備している。片持ち支持された状態で、自由端側を二次転写ローラ56に当接させているクリーニングブレード58aは、紙粉等の汚れを二次転写ローラ56の表面から掻き落とす。また、駆動手段による駆動を受けて回転駆動するクリーニングブラシローラ58bは、その毛先を、二次転写ローラ56と、バネによって自らに向けて付勢される固形潤滑剤58cとの両方に当接させている。そして、回転駆動に伴って、固形潤滑剤58cから潤滑剤粉末を掻き取りながら、掻き取った潤滑剤粉末を二次転写ローラ56表面に塗布したり、クリーニングブレード58aで除去し切れなかった汚れを二次転写ローラ56表面から掻き落としたりする。潤滑剤粉末が二次転写ローラ56に塗布されることで、クリーニングブレード58aとの摩擦に伴う二次転写ローラ56表面の劣化を抑えることができる。
図3は、実施形態に係るプリンタの電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、二次転写バイアスを出力する二次転写電源200には、プリンタの各機器の駆動制御を司る制御部300が接続されている。制御部300は、演算手段たるCPU、一時記憶手段たるRAM、記憶手段たるROM、フラッシュメモリなどを具備している。
二次転写電源200は、直流電圧を出力する直流電源201と、交流電圧を出力する交流電源202とを具備している。そして、二次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものと、直流電圧と交流電圧とを重畳した重畳電圧からなるものとを適宜切り替えて出力することができる。制御部300は、二次転写電源200から直流電圧だけからなる二次転写バイアスを出力させる場合には、二次転写電源200における直流電源201及び交流電源202のうち、直流電源201だけに制御信号を出力する。また、二次転写電源200から重畳電圧からなる二次転写バイアスを出力させる場合には、直流電源201及び交流電源202の両方に制御信号を出力する。
二次転写電源200からどのような特性の二次転写バイアスを出力させればよいのかについては、中間転写ベルト51の特性と、使用される記録シートPの特性との組み合わせに応じて異なってくる。具体的には、中間転写ベルト51として、ポリイミド等の経時延びの少ない材料からなるベルト基体のおもて面側に、ゴム等の弾性に富んだ材料からなる弾性層を積層していないベルト(以下、硬質ベルトという)からなるものを用いるとする。この場合、例えば、記録シートPとして、和紙のような表面凹凸に富んだ凹凸紙を用いると、硬質ベルトの表面を二次転写ニップ内で凹凸紙の表面の凹凸にならわせて柔軟に変形させることができない。このため、硬質ベルト表面と凹凸紙の表面凹部との間に隙間を発生させて、表面凹部に対するトナーの二次転写不良による画像濃度ムラを発生させ易くなる。そして、その画像濃度ムラについては、極性を周期的に反転させる重畳電圧からなる二次転写バイアスを採用することで、発生を抑えることが可能である。
このように画像濃度ムラを抑えることが可能になるのは、次に説明する理由による。即ち、前述のような重畳電圧を二次転写対向ローラ53に印加すると、二次転写ニップ内で、硬質ベルト表面上のトナーを硬質ベルト表面と凹凸紙の表面凹部との間で複数回に渡って往復移動させる。その往復移動の過程で、凹凸紙の表面凹部から硬質ベルト表面に戻ったトナー粒子が、それまで硬質ベルト表面上に吸着していたトナー粒子にぶつかることで、そのトナー粒子の硬質ベルト表面上からの離脱を促す。この作用により、トナーの往復移動回数が増加するにつれて、凹凸紙の表面凹部内に転移するトナー粒子の数が増加して、最終的に二次転写ニップから排出されて紙面上では、表面凹部に十分量のトナーが転移するからである。
一方、極性を周期的に反転させる重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いて、二次転写ニップ内でトナーを往復移動させると、画像部の周囲にトナー粒子を飛び散らせる転写チリと呼ばれる現象を引き起こし易くなる。転写チリと、凹凸紙の表面凹凸にならった画像濃度ムラとを比較すると、後者の方が画質低下に大きく寄与する。このため、硬質ベルトからなる中間転写ベルト51を用いて、凹凸紙に画像を形成する場合には、極性を周期的に反転させる重畳電圧からなる二次転写バイアスを採用することが望ましい。これに対し、硬質ベルトからなる中間転写ベルト51を用いて、凹凸紙ではない記録シートPに画像を形成する場合には、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを採用して、転写チリの発生を抑えることが望ましい。
図4は、硬質ベルトからなる中間転写ベルト51を用いて凹凸紙に画像を形成する場合に適した重畳電圧からなる二次転写バイアスの波形の一例を示すグラフである。同図において、オフセット電圧Voffは、重畳電圧の直流成分の値である。また、ピークツウピーク値Vppは、重畳電圧の交流成分のピークツウピーク値である。この重畳電圧の波形は正弦波であることから、重畳電圧の時間平均値はオフセット電圧Voffと同じ値になる。同図においてVtで示されているのは、ピークツウピークにおける2つのピーク値のうち、二次転写ニップ内でトナーをベルト表面側からシート表面側に向けて転写方向により強く移動させる方のピーク値(以下、転写ピーク値という)である。また、同図においてVrで示されているのは、もう一方のピーク値(以下、逆ピーク値という)である。この重畳電圧は、図示のように極性を反転させるので、逆ピーク値は転写ピーク値とは極性が異なっている。時間平均値と同じオフセット電圧Voffがトナーの帯電極性と同じマイナス極性になっていることから、トナーを往復移動させながら、相対的には中間転写ベルト側から記録シート側にトナーを移動させて記録シートP上に転移させることが可能になる。
なお、交流電圧としては、正弦波形状の波形のものを採用しているが、矩形波状の波形のものを用いても良い。また、交流成分のうち、トナーをベルト表面側からシート表面側に移動させる時間と、トナーを記録シート側から中間転写ベルト側に戻す時間(本実施形態ではプラス側)とを、異ならせてもよい。
図5は、矩形波状の重畳電圧における波形の一例を示すグラフである。この重畳電圧では、交流成分の1周期において、トナーを中間転写ベルト側から記録シート側にトナーを移動させる転写方向側の時間Aを、記録シート側から中間転写ベルト側にトナーを移動させる戻し側の時間Bよりも大きく設けたものである。
硬質ベルトからなる中間転写ベルト51を用いて、凹凸紙に画像を形成する場合には、図示のように、時間Aを戻し時間Bよりも長くしたものを採用することが望ましい。こうすることで、それら時間を同じにする場合に比べて、転写ピーク値Vtをより小さな値にしても凹凸紙の表面凹部にトナーを十分に転写することが可能になるので、転写ピーク値Vtを大きくし過ぎることによる白点の発生を抑えることができる。なお、その白点は、転写ピーク値Vtをベルト表面と紙面との間の放電開始電圧よりも高くして二次転写ニップ内でベルト表面と紙面との間に放電を多発させることによるものである。
硬質ベルトからなる中間転写ベルト51を用いる例について説明したが、ベルト基体に弾性層を積層したベルト(以下、弾性ベルトという)からなるものを用いる場合には、硬質ベルトを用いる場合とは、適切な二次転写バイアスの特性が異なってくる。具体的には、弾性ベルトを用いる場合には、二次転写ニップ内で凹凸紙の表面凹凸にならわせてベルト表面を柔軟に変形させることが可能なので、ベルト表面と凹凸紙の表面凹部との間に隙間を発生させ難い。このため、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを採用しても、凹凸紙の表面凹部内に十分量のトナーを転移させて、表面凹凸にならった画像濃度ムラを殆ど発生させることがない。これに対し、記録シートPとして、表面コート紙のような表面平滑性に優れたものを用いると、ベルト表面から隆起しているトナー像を柔軟に変形させたベルト表面で包み込んで、トナーに逆電荷を注入し易くなる。そして、それにより、トナー帯電量(Q/M)不足による二次転写不良を引き起こし易くなる。
かかる二次転写不良については、重畳電圧からなる二次転写バイアスを採用することで、その発生を抑えることが可能である。具体的には、前述した逆電荷の注入は、二次転写ニップ内のトナーに対して、ベルト表面側からシート表面側に向かう電界を作用させ始めた後、一定のタイムラグをおいて発生し始める。重畳電圧からなる二次転写バイアスを採用すると、逆電荷の注入を開始させる前に、前述の電界の強度を弱める(極性が反転しない場合)か、あるいは前述とは逆方向の電界を発生させる(極性が反転する場合)かする。これにより、二次転写ニップ内におけるトナーへの逆電荷の注入を抑えることで、二次転写不良の発生を抑えることができるのである。
よって、弾性ベルトからなる中間転写ベルト51を用いて凹凸紙に画像を形成する場合には、二次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを用いることが望ましい。また、弾性ベルトからなる中間転写ベルト51を用いて凹凸紙ではない記録シートP(特に表面コート紙)に画像を形成する場合には、二次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを用いることが望ましい。なお、この場合、硬質ベルトを用いて凹凸紙に画像を形成する場合とは異なり、重畳電圧の極性を周期的に反転させる必要は必ずしもない。交流成分の位相にかかわらず、転写方向の電界を形成する極性を常に維持する重畳電圧であってもよい。また、硬質ベルトを用いて凹凸紙に画像を形成する場合とは逆に、転写方向の時間Aよりも、戻し時間Bを長くすることが望ましい。
以上のように、プリンタに搭載した中間転写ベルト51の特性や、使用する記録シートPの特性に応じて、適切な二次転写バイアスの特性が異なってくることから、実施形態に係るプリンタでは、次のような処理を実施するように制御部300を構成している。即ち、ユーザー設定テーブルの各設定値に基づいて、適切な二次転写バイアス及びプロセス線速を選択する処理である。そのユーザー設定テーブルは、記録シートPの銘柄(商品名及び規格)と、二次転写バイアスの特性と、プロセス線速と、ショックキャンセル動作の有無とを関連付けたものである。工場出荷時のデフォルトの状態では、各銘柄に対して、メーカー推奨の二次転写バイアスの特性と、プロセス線速と、ショックキャンセル動作の有無とが関連付けられている。
なお、プロセス線速は、中間転写ベルト51や感光体11の線速であり、これはプリント速度と同意である。実施形態に係るプリンタでは、プロセス線速として、標準速(415mm/s)、及び低速(176.4mm/s)の二通りの中から、任意の一つを選択する仕様になっている。また、ショックキャンセル動作については、後に詳述する。
ユーザーは、タッチパネルや各種キーからなる操作表示部に対する入力操作を行うことで、ユーザー設定テーブルにおける二次転写バイアスの特性やプロセス線速を変更することが可能である。例えば、硬質ベルトからなる中間転写ベルト51をプリンタに搭載している場合に、入力操作により、ユーザー設定テーブルにおけるレザック66という凹凸紙の銘柄に対し、重畳電圧からなる二次転写バイアスと、低速とを関連付けることが可能である。低速にすることで、二次転写ニップ内でトナーを確実に必要な回数だけ往復移動させて、往復移動回数の不足によるシート表面凹部へのトナーの転移不良を抑えることが可能になる。
実施形態に係るプリンタにおいては、必要に応じて、ショックジターを低減するためのショックキャンセル動作を実行することが可能である。ショックジターは、記録シートpが二次転写ニップに突入するときや抜けるときに、中間転写ベルト51や二次転写ローラ56に負荷をかけて、中間転写ベルト51の線速を一時的且つ急激に低下させたり増加させたりする現象である。記録シートPとして比較的厚みのあるものが用いられる場合に発生し易い現象である。ショックジターが起こると、それに同期した画像濃度ムラが発生してしまうので好ましくない。
図6は、中間転写ベルト51と二次転写ローラ56とを接離させる接離機構60を示す模式図である。二次転写ローラ56と二次転写対向ローラ53とは、中間転写ベルト51を挟んで二次転写ローラ56が下側で二次転写対向ローラ53が上側に位置するように対向配置されている。二次転写ローラ56には、付勢手段であるバネ67によって二次転写対向ローラ53に向かうような付勢力が加わっている。
中間転写ベルト51と二次転写ローラ56とは、ステッピングモータ63や偏心カム61などで構成された接離機構60によって一定範囲内で自由に接離させることができる。二次転写対向ローラ53の軸方向両端部には、二次転写対向ローラ53と同軸上に偏心カム61が設置されている。
二次転写ローラ56の軸方向両端部には、二次転写ローラ56の回転を妨げないように玉軸受62が取り付けられており、この玉軸受62に偏心カム61を突き当てるような構成となっている。偏心カム61が取り付けられているカム軸61aがステッピングモータ63からの回転駆動力により回転すると、偏心カム61も同じタイミング且つ同じ角度で回転するよう、偏心カム61とカム軸61aとがDカットの溝などで嵌め合わされて取り付けられている。
偏心カム61の形状として、偏心カム61の回転中心と外形部とを結んだ距離が最も短い部分は、二次転写対向ローラ53の直径よりも短くなっている。また、偏心カム61の回転中心と外形部とを結んだ距離が最も長い部分は、二次転写対向ローラ53の直径よりも長くなっている。
カム軸61aは、ステッピングモータ63により自由に回転を制御でき、ギヤ64,65とタイミングベルト66を介することによって、ステッピングモータ63の回転駆動力がカム軸61aに伝達される。ステッピングモータ63は、ステップ角1.8[°]で回転の制御が可能であり、記録シートPが二次転写ニップに突入(進入)する前にステッピングモータ63からの回転駆動力によって偏心カム61を回転させる。
以下、「偏心カム61の回転中心から偏心カム61の玉軸受62との接触部を結んだ距離+玉軸受62の半径」を距離L1と定義する。また、「二次転写対向ローラ53の半径+中間転写ベルト51の厚さ+二次転写ローラ56の半径」を距離L2と定義する。
偏心カム61は玉軸受62に突き当てられており、偏心カム61を回転させることによって、距離L1>距離L2の関係を満たすと、二次転写ローラ56はバネ67からの付勢に抗して中間転写ベルト51から離間する方向に押し下げられる。そして、シート先端が中間転写ベルト51と二次転写ローラ56との間を通過し始めたら、再びステッピングモータ63によって偏心カム61の回転を開始する。そして、距離L1<距離L2の関係を満たすと、中間転写ベルト51と二次転写ローラ56とが接触し、記録シートPに対して所定の転写圧が付加される。
ショックキャンセル動作を実施する場合には、接離機構60により、二次転写ニップへのシート突入時には中間転写ベルト51と二次転写ローラ56とを離間させ、シート突入時の衝撃や、中間転写ベルト51のプロセス線速変動(速度変動)を抑制することができる。また、記録シートPが二次転写ニップから抜けるときも同様に、ステッピングモータ63によって偏心カム61を回転させ、記録シートPの後端が二次転写ニップを通過する前に二次転写ローラ56と中間転写ベルト51とを離間させる。これにより、記録シートPが二次転写ニップから抜けるときの衝撃も減少させることができる。
図7は、二次転写ローラ56と二次転写対向ローラ53とをギャップ量Aで離間させた状態の二次転写ニップ周囲を示す図である。図8は、二次転写ローラ56と二次転写対向ローラ53とをギャップ量Cで離間させた状態の二次転写ニップ周囲を示す図である。図9は、二次転写ローラ56と二次転写対向ローラ53とが当接した状態の二次転写ニップ周囲を示す図である。なお、図7及び図8は、記録シートPが二次転写ニップに突入する前の状態を示しているのに対し、図9は、中間転写ベルト51から記録シートPにトナー像を転写しているときの状態を示している。
偏心カム61にはカム位置A、カム位置B、カム位置Cと3箇所の停止場所が存在する。そして、図7に示されるように、偏心カム61の位置がカム位置Aの場所で停止している場合には、二次転写ローラ56と二次転写対向ローラ53とをギャップ量Aだけ離すような構成になっている。
また、図8に示されるように、偏心カム61の位置がカム位置Cの場所で停止している場合には、二次転写ローラ56と二次転写対向ローラ53とをギャップ量Cだけ離すような構成となっている。
また、図9に示されるように、偏心カム61の位置がカム位置Bで停止している場合には、(偏心カムの回転中心からB地点での偏心カム61外周までの偏心カム半径+玉軸受の半径)<(二次転写対向ローラ53の半径+二次転写ローラ56の半径)となっている。このため、二次転写ローラ56と二次転写対向ローラ53とは接触状態となっている。そして、上述したように中間転写ベルト51から記録シートPにトナー像を転写する際に必要な転写圧がバネ37によって付与される。
偏心カム61は、制御部300でステッピングモータ63を制御して伝達される回転駆動力によりカム軸61aを中心に回転することで、カム位置C−カム位置B−カム位置A−カム位置Cへと連続的にカム位置を変化させることができる。
図10は、記録シートPが二次転写ニップに突入するときのショックキャンセル動作を説明するための突入時二次転写ニップを示す模式図である。ショックキャンセル動作が行われる場合、記録シートPが二次転写ニップに突入するときには、接離機構60によって中間転写ベルト51と二次転写ローラ56とを離間させ両者の間にギャップ(隙間)が確保されている。また、このときには、中間転写ベルト51と二次転写ローラ56とが離間しているため転写圧は生じていない。
なお、記録シートPが二次転写ニップに突入するときの中間転写ベルト51と二次転写ローラ56との間のギャップ量をY1とし、このギャップ量Y1の大きさが上述したギャップ量Aとギャップ量Cとの2水準に設定されている。ギャップ量Y1は、記録シートPが二次転写ニップに突入した際の衝撃を低減するために確保されており、記録シートPの厚さ以上の大きさを確保するのが望ましく、記録シートPの厚さに応じてギャップ量Aとギャップ量Cとが適宜設定される。
また、このギャップ量Y1を記録シートPの厚さ以上にいくら大きくしても、記録シートPが二次転写ニップに突入する際の衝撃は変化しないが、ギャップ量が大きければ大きいほど、中間転写ベルト51に対する二次転写ローラ56の接離に必要な動作が大きくなってしまう。そのため、ギャップ量Y1は記録シートPの厚さと同等よりもわずかに大きい程度確保するのが望ましい。
図11は、記録シートPの先端部が二次転写ニップに進入した後における中間転写ベルト51と二次転写ローラ56との間のギャップ量を説明するための進入後二次転写ニップを示す模式図である。二次転写ローラ56を中間転写ベルト51から離間させたままであると、二次転写ニップ圧を不足させて二次転写不良を引き起こしてしまう。このため、ショックキャンセル動作が行われる場合であっても、シート先端部が二次転写ニップに進入した直後には、二次転写ローラ56をベルトに近づけて必要な二次転写ニップ圧を確保する必要がある。図示のように、中間転写ベルト51上のトナー像Tを記録シートPに転写するときの中間転写ベルト51と二次転写ローラ56と間のギャップ量をY2と定義する。このギャップ量Y2は、中間転写ベルト51上のトナー像Tを記録シートPに転写するのに十分な転写圧が確保されるだけのギャップ量である。なお、記録シートPの先端が二次転写ニップへ突入した後、接離機構60によって二次転写ローラ56を中間転写ベルト51に向けて移動させる接触動作を行うため、中間転写ベルト51と二次転写ローラ56との間のギャップ量Y2はギャップ量Y1以下となる。
良好な印刷結果を得るためには、記録シートPが二次転写ニップへのシート突入時である図10の状態から、シート先端部に形成された余白が二次転写ニップを通過するまでの間に、図11の状態へと遷移させなければならない。なお、「余白」あるいは後述する「余白部分」とは、記録シートPの印刷面にあって、画像が形成されない部分または画像を形成させない部分を言う。
図10の状態から図11の状態へと遷移するのが遅れると、中間転写ベルト51上のトナー像を記録シートP上へ転写する際に転写圧不足となり転写不良が発生し、色抜けが発生してしまう。一方、二次転写ニップへのシート突入時に、中間転写ベルト51と二次転写ローラ56との間にギャップ量Y1が確保されていないと、二次転写ニップへのシート突入時の衝撃が大きくなる。そのため、二次転写ニップへのシート突入時の衝撃によるショックジターが悪化してしまう。シート先端部に形成された余白のシート先端からの余白量をX、プロセス線速をpとすると、余白部分が二次転写ニップを通過する時間tは、「t=X/p」となる。また、記録シートPが二次転写ニップに突入するときに必要なギャップ量はギャップ量Y1であり、余白部分が二次転写ニップを通過し、中間転写ベルト51上のトナー像を記録シートPに転写するときに必要なギャップ量がギャップ量Y2である。
よって、良好な転写結果を得るには、接離機構60によって「V=(Y2−Y1)/(X/p)」以上の速度で、中間転写ベルト51に接触する方向(近づく方向)に二次転写ローラ56を移動させる必要がある。この接触動作の速度Vは、運動エネルギーとなり、中間転写ベルト51と二次転写ローラ56とが接触した際の衝撃となりショックジターの原因となる。そのため、可能な限り速度Vを遅くすることで中間転写ベルト51と二次転写ローラ56とが接触した際の衝撃によるショックジターを低減させることができる。
図12は、記録シートPの先端に形成された余白の余白量と、それに対応する二次転写ローラ56と中間転写ベルト51とのギャップ量との好適な関係を示すグラフである。このグラフの縦軸は、二次転写ローラ56と中間転写ベルト51とのギャップ量を示している。図中「Y1」は前述したように記録シートPが二次転写ニップに突入するときに必要なギャップ量であり、図中「Y2」は前述したように中間転写ベルト51上のトナー像を記録シートPに転写するときに必要なギャップ量である。グラフの横軸はシート先端からの位置を示しており、図中「X0」、「X1」はそれぞれ余白量を示している。また、余白量X1の余白のほうが余白量X0の余白よりも余白が広いことを示している。また、このグラフの傾きは、中間転写ベルト51に対する二次転写ローラ56の接触動作速度を表しており、グラフの傾きが急であるほど、前記接触動作速度が速いことを示している。
図示のように、余白が広い(余白量が多い)ほど、ギャップ量Y1からギャップ量Y2にギャップ量を変更する際のグラフの傾きがなだらかとなり、ギャップ量Y1からギャップ量Y2にするのに最低必要な前記接触動作速度が遅くなる。そのため、余白が広い(余白量が多い)ほど、制御部300によりステッピングモータ63を制御して、前記接触動作速度を遅くすることで、中間転写ベルト51と二次転写ローラ55との接触時の衝撃を低減させることができる。
逆に、余白が狭い(余白量が少ない)ほど、ギャップ量Y1からギャップ量Y2にギャップ量を変更する際のグラフの傾きが急になり、ギャップ量Y1からギャップ量Y2にするのに最低必要な前記接触動作速度が速くなる。前記接触動作速度が速くなるほど、中間転写ベルト51と二次転写ローラ55との接触時の衝撃が大きくなるため、その衝撃によるショックジターが発生する。
なお、余白量がX0のときに、中間転写ベルト51と二次転写ローラ55との接触時の衝撃によるショックジターが顕像化しない前記接離動作速度が得られるような最小先端余白となる。そのため、余白量がX0よりも狭い余白の場合には、前記接離動作速度が速すぎて、中間転写ベルト51と二次転写ローラ55との接触時の衝撃によるショックジターを低減させることが難しくなる。余白量がX0よりも狭い余白の場合に、中間転写ベルト51と二次転写ローラ55との接触時の衝撃によるショックジターが顕在化しないような、ギャップ量Y2よりも多いギャップ量とすることが考えられる。しかしながらこの場合、中間転写ベルト51上のトナー像を記録シートP上へ転写する際に転写圧不足となって転写不良が発生し、色抜けが発生してしまう。
そこで、制御部300は、余白量がX0よりも狭い余白の場合に、余白量がX0以上の余白の場合よりも、転写バイアスの立ち上がり目標電圧を大きくすることで、転写時の転写電界を強めて、転写圧不足による転写不良が生じないように転写性能を補う。X0=2.0[mm]としている。そして、余白量が2.0[mm]よりも狭い余白の場合に、余白量が2.0[mm]以上の余白の場合よりも立ち上がり目標電圧を大きくすることで、先端濃度ムラや転写圧不足を抑制し、且つ、ショックジターも低減させることが可能となる。
ユーザーは、ユーザー設定テーブルにおいて、例えば厚紙の銘柄に対して、ショックキャンセル動作ありという情報を関連付けて記憶させておけば、その銘柄の記録シートPが用いられる場合に、ショックキャンセル動作を実施させることが可能である。
なお、実施形態に係るプリンタには、給紙カセット100がプリンタ本体の正しい位置にセットされていることを検知するカセット装着検知センサーが設けられている。制御部300は、このカセット装着検知センサーが給紙カセット100を検知しなくなった後、再び検知されるようになった場合に、給紙カセット100の脱着操作(給紙カセット100への記録シートPの補充)があったものとみなす。そして、ユーザーに対して、「新たにセットした記録シートPの銘柄を入力して下さい」というメッセージとともに、銘柄一覧表を操作表示部に表示させる。ユーザーは、そのメッセージに従って、入力キーを操作して、銘柄一覧表の中から、給紙カセット100にセットした記録シートPと同じ銘柄を選択する。これにより、制御部300は、給紙カセット100にセットされている記録シートPの銘柄を把握することができる。銘柄を把握すると、フラッシュメモリに記憶しているセット銘柄情報を把握結果と同じものに更新する。
また、実施形態に係るプリンタは、プリンタ本体に正しくセットされている給紙カセット100の紙束押さえ板の位置を検知する押さえ板位置検知センサーを有している。ユーザーは、記録シートPを給紙カセット100にセットするときに、シートサイズに応じて、紙束押さえ板をスライド移動させて、紙束押さえ板でシートの端をしっかり押さえるようにする。制御部300は、押さえ位置検知センサーによる検知結果に基づいて、給紙カセット100にセットされた記録シートPのサイズを把握することができる。
プリントジョブを開始した直後の制御部300は、基本的には、次のような処理を行って、適切な二次転写バイアスの特性と、プロセス線速と、ショックキャンセル動作の有無とを特定する。即ち、フラッシュメモリからセット銘柄情報を読み込んだ後、その銘柄に関連付けられた二次転写バイアスの特性と、プロセス線速と、ショックキャンセル動作の有無とを、ユーザー設定テーブルから特定する。
かかる構成では、記録シートPの種類にかかわらず、良好な画像を形成することができる。しかしながら、重畳電圧からなる二次転写バイアスを採用した場合に、所定の画像形成条件を満足させた状態で画像を形成すると、ベルトクリーニング装置57やローラクリーニング装置58において、ブレード捲れ(クリーニングブレード57a,58aの捲れ)を引き起こし易くなることが本発明者らの実験によって判明した。なお、ブレード捲れは、ベルトクリーニング装置57よりもローラクリーニング装置58の方が発生し易かった。
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
本発明者らは、実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリンタ試験機を用いて、様々な画像形成条件でテスト画像を連続プリントするプリントテストを実施して、ローラクリーニング装置58におけるブレード捲れの発生の有無を調べる実験を行った。画像形成条件としては、二次転写バイアスの特性(直流電圧、重畳電圧のどちらなのか)、紙種、紙サイズ、二次転写ローラ56の劣化度合い、ショックキャンセル動作、及びプロセス線速の六項目に着目した。そして、二次転写バイアスの特性としては、直流電圧だけからなるものと、重畳電圧からなるもの(波形は図4と同じ)との二通りで切り替えた。また、紙種としては、普通紙と、凹凸紙と、コート紙との三通りで切り替えた。また、紙サイズとしては、A3サイズと、A3未満のサイズ(B4サイズ)との二通りで切り替えた。また、二次転写ローラ56の劣化度合いとしては、小(累積走行距離が15万枚のプリント動作に相当する値よりも小さい)と、大(累積走行距離が前記値以上)との二通りで切り替えた(ローラを取り替えた)。また、ショックキャンセル動作については、ありと、なしとの二通りで切り替えた。また、プロセス線速については、標準速(415mm/s)と、低速(176.4mm/s)との二通りで切り替えた。
様々な画像形成条件の組み合わせで、テスト画像を複数の記録シートPに連続プリントしていき、累積で2万枚のプリントを終えた時点において、ローラクリーニング装置58におけるブレード捲れの有無を調べた。この実験における一部の実験結果を次の表1に示す。
表1では、A3未満のサイズの記録シートPを用い、二次転写ローラ56として劣化度合いが「小」であるものを用い、且つショックキャンセル動作を「なし」に設定した実験の結果だけを示している。表1における各実験は、二次転写バイアスの特性と、紙種と、プロセス線速との組み合わせが互いに異なっている。表1における実験番号1から12までの12の実験のうち、ローラクリーニング装置58におけるブレード捲れが発生したのは、実験番号10の一つだけである。この実験番号10と、ブレード捲れが発生しなかった実験番号9とを比較すると、両者で異なっている画像形成条件は二次転写バイアスの特性だけである。具体的には、実験番号10では重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いているのに対し、実験番号9では直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いている点だけが、両者で異なっている。よって、重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いると、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いる場合に比べて、ローラクリーニング装置58のブレード捲れを発生させ易くなることになる。
その理由について鋭意研究をした結果、それは次のようなものであることが判明した。即ち、重畳電圧からなる二次転写バイアスは、直流電圧だけからなる二次転写バイアスに比べて、二次転写ニップ内において、中間転写ベルト51の表面上の潤滑剤粉末や、二次転写ローラ56の表面上の潤滑剤粉末に対して、強いストレスを与える。これにより、重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いる場合には、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いる場合に比べて、潤滑剤粉末の潤滑性を低下させて、中間転写ベルト51や二次転写ローラ56の表面摩擦抵抗を高くして、ブレード捲れを発生させ易くなる。特に、中間転写ベルト51よりも周長が大幅に小さい二次転写ローラ56は、中間転写ベルト51に比べて1枚プリントにおける二次転写ニップ進入回数が遙かに多くなることから、表面摩擦抵抗の低下が顕著になる。このため、ベルトクリーニング装置57よりもローラクリーニング装置58の方がブレード捲れを発生させ易くなるのである。
表1において、ローラクリーニング装置58のブレード捲れが発生した実験番号10と、発生しなかった実験番号12とを比較すると、両者で異なっている画像形成条件はプロセス線速だけである。具体的には、実験番号10では標準速を採用しているのに対し、実験番号12では低速を採用している点だけが、両者で異なっている。よって、プロセス線速を比較的速くすると、比較的遅くする場合に比べて、ローラクリーニング装置58のブレード捲れを発生させ易くなることになる。これは、プロセス線速を速くするほど、中間転写ベルト51や二次転写ローラ56と、クリーニングブレードとの摩擦力が大きくなるからである。
また、表1において、ローラクリーニング装置58のブレード捲れが発生した実験番号10と、ブレード捲れが発生していない実験番号2や実験番号6とを比較すると、両者で異なっている画像形成条件は紙種だけである。具体的には、実験番号10ではコート紙を採用しているのに対し、実験番号2や実験番号6ではコート紙とは異なる記録シートPを採用している点だけが、両者で異なっている。よって、コート紙を使用すると、コート紙とは異なる記録シートPを使用する場合に比べて、ローラクリーニング装置58のブレード捲れを発生させ易くなることになる。
その理由について鋭意研究をした結果、それは次のようなものであることが判明した。即ち、表面、裏面の何れも表面コーティングされているコート紙では、その優れた表面平滑性が作用して、中間転写ベルト51の表面上の潤滑剤粉末や、二次転写ローラ56の表面上の潤滑剤粉末を自らの表面に転移させ易くなる。このため、コート紙を用いる場合には、コート紙とは異なる記録シートPを用いる場合に比べて、中間転写ベルト51や二次転写ローラ56の表面摩擦抵抗を高くして、ベルトクリーニング装置57やローラクリーニング装置58のブレード捲れを発生させ易くなる。プリント1枚あたりにおける二次転写ニップ通過回数が中間転写ベルト51よりも遙かに多くなる二次転写ローラ56は、中間転写ベルト51に比べて、コート紙に持って行かれる潤滑剤粉末の量が多くなる。このため、ベルトクリーニング装置57よりもローラクリーニング装置58の方が、ブレード捲れを発生させ易くなる。
表1とは異なる画像形成条件の組み合わせを採用した各実験を次の表2に示す。
表2では、A3サイズの普通紙を記録シートPとして用い、二次転写ローラ56として劣化度合いが「小」であるものを用い、且つショックキャンセル動作を「なし」に設定した実験の結果だけを示している。表2における各実験は、二次転写バイアスの特性と、プロセス線速との組み合わせが互いに異なっている。表2における実験番号13から16までの実験のうち、ローラクリーニング装置58におけるブレード捲れが発生したのは、実験番号15の一つだけである。この実験番号15と、ブレード捲れが発生しなかった実験番号2(表1参照)とを比較すると、両者で異なっている画像形成条件は紙サイズだけである。具体的には、実験番号15ではA3サイズの普通紙を用いているのに対し、実験番号2ではA3未満のサイズ(B4)の普通紙を用いている点だけが、両者で異なっている。よって、A3サイズの記録シートPを用いると、A3未満のサイズの記録シートPを用いる場合に比べて、ローラクリーニング装置58のブレード捲れを発生させ易くなることになる。
その理由について鋭意研究をした結果、それは次のようなものであることが判明した。即ち、二次転写ニップを通過した中間転写ベルト51の表面には、僅かながら地汚れトナーが付着している。地汚れトナーは、感光体11や中間転写ベルト51の非画像部に付着するトナーであり、トナー帯電量が基準よりも少なくなっていたり、逆帯電してしまったトナーが地汚れを引き起こし易い。地汚れトナーは、中間転写ベルト51の表面摩擦抵抗を下げる作用を発揮する。また、二次転写ニップ内に記録シートPが進入しておらず、中間転写ベルト51と二次転写ローラ56とが直接接触しているタイミングでは、中間転写ベルト51上の地汚れトナーの一部が二次転写ローラ56の表面上に転移してローラの表面摩擦抵抗を下げる。このように、地汚れトナーは、中間転写ベルト51や二次転写ローラ56の表面摩擦抵抗を下げる作用を発揮するが、二次転写ニップを通過した中間転写ベルト51の全域のうち、二次転写ニップで記録シートPに密着していなかった領域にしか付着していない。A3サイズの記録シートPを用いると、A3未満のサイズの記録シートPを用いる場合に比べて、二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト51に付着している地汚れトナーの量が少なくなる。このため、中間転写ベルト51や二次転写ローラ56の表面摩擦抵抗をより高くして、ブレード捲れを発生させ易くなるのである。
表1及び表2とは異なる画像形成条件の組み合わせを採用した各実験を次の表3に示す。
表3では、A3未満のサイズの普通紙を記録シートPとして用い、二次転写ローラ56として劣化度合いが「大」であるものを用い、且つショックキャンセル動作を「なし」に設定した実験の結果だけを示している。表3における各実験は、二次転写バイアスの特性と、プロセス線速との組み合わせが互いに異なっている。表3における実験番号17から20までの実験のうち、ローラクリーニング装置58におけるブレード捲れが発生したのは、実験番号19の一つだけである。この実験番号19と、ブレード捲れが発生しなかった実験番号2(表1参照)とを比較すると、両者で異なっている画像形成条件は二次転写ローラ56の劣化度合いだけである。具体的には、実験番号15では劣化度合いが「大」である二次転写ローラ56を用いているのに対し、実験番号2では劣化度合いが「小」である二次転写ローラ56を用いている点だけが、両者で異なっている。劣化度合いの比較的高い二次転写ローラ56を用いると、劣化度合いの比較的低い二次転写ローラ56を用いる場合に比べて、ローラクリーニング装置58のブレード捲れを発生させ易くなることになる。これは、二次転写ローラ56の劣化度合いが高くなるにつれて、二次転写ローラ56の表面摩擦抵抗が高くなって、ブレード捲れを発生させ易くなるからである。
表1、表2、及び表3とは異なる画像形成条件の組み合わせを採用した各実験を次の表4に示す。
表4では、A3未満のサイズの普通紙を記録シートPとして用い、二次転写ローラ56として劣化度合いが「小」であるものを用い、且つショックキャンセル動作を「あり」に設定した実験の結果だけを示している。表4における各実験は、二次転写バイアスの特性と、プロセス線速との組み合わせが互いに異なっている。表4における実験番号21から24までの実験のうち、ローラクリーニング装置58におけるブレード捲れが発生したのは、実験番号23の一つだけである。この実験番号23と、ブレード捲れが発生しなかった実験番号2(表1参照)とを比較すると、両者で異なっている画像形成条件はショックキャンセル動作だけである。具体的には、実験番号23ではショックキャンセル動作を「あり」に設定しているのに対し、実験番号2ではショックキャンセル動作を「なし」に設定している点だけが、両者で異なっている。よって、ショックキャンセル動作を行うと、行わない場合に比べて、ローラクリーニング装置58のブレード捲れを発生させ易くなることになる。
その理由について鋭意研究をした結果、それは次のようなものであることが判明した。即ち、ショックキャンセル動作が行われると、行われない場合とは異なり、二次転写ニップに記録シートPが進入していないタイミングでも、中間転写ベルト51と二次転写ローラ56とは直接接触しないことになる。前述のタイミングでは、二次転写ローラ56が中間転写ベルト51に当接しない位置まで待避させられるからである。すると、記録シートPが二次転写ニップに進入していないタイミングにおいて、中間転写ベルト51から二次転写ローラ56への汚れ(トナーや紙粉)の転移が行われなくなる。二次転写ローラ56の表面に付着した汚れは、二次転写ローラ56の表面摩擦抵抗を下げる作用を発揮する。このため、ショックキャンセル動作が行われる場合には、行われない場合に比べて、二次転写ローラ56の表面摩擦抵抗が高くなって、ローラクリーニング装置58におけるブレード捲れを発生させ易くなるのである。
表1〜表4を参照すると、重畳電圧からなる二次転写バイアス、及び標準速の組み合わせに加えて、次に列記する画像形成条件の何れか一つを採用すると、ローラクリーニング装置58におけるブレード捲れを発生させてしまうことがわかる。即ち、コート紙、A3サイズ、劣化度合い「大」の二次転写ローラ56、及びショックキャンセル動作「あり」のうちの何れか一つである。重畳電圧からなる二次転写バイアスと、コート紙、A3サイズ、劣化度合い「大」の二次転写ローラ56、及びショックキャンセル動作「あり」のうちの何れか一つとの組み合わせを採用しても、次のようにすれば、ブレード捲れの発生を回避し得ることも解る。即ち、プロセス線速として低速を採用するのである。
そこで、制御部300は、プリントジョブを開始して記録シートPの銘柄に関連付けられた二次転写バイアスの特性と、プロセス線速と、ショックキャンセル動作の有無とをユーザー設定テーブルから特定した後に、以下のような処理を実施するようになっている。
制御部300は、プリンタ本体にセットされている二次転写ローラ56の劣化度合いについて、「小」、「大」の何れであるのかを把握している。具体的には、二次転写ローラ56の累積表面移動距離に相関する所定のパラメータであるローラ未交換累積プリント枚数をフラッシュメモリに記憶している。このローラ未交換累積プリント枚数は、二次転写ローラ56が新しいものに交換されない状態で行われたプリントの累積プリント枚数であり、制御部300はシート1枚に対するプリントジョブを行う毎に、その値を一つずつカウントアップする。そして、未交換累積プリント枚数が15万枚以上である場合に二次転写ローラ56の劣化度合いを「大」であるとみなす一方で、15万枚未満である場合には、劣化度合いを「小」であるとみなす。
ユーザー設定テーブルでは、銘柄に対して、コート紙であるのか、コート紙とは異なる記録シートPであるのかを示す紙種情報が関連付けられており、この紙種情報については、ユーザーが入力操作で変更できないようになっている。制御部300は、銘柄に関連づけられた紙種情報をユーザー設定テーブルから読み込んだ結果に基づいて、給紙カセット100にセットされている記録シートPについて、コート紙であるか否かを把握する。また、押さえ位置検知センサーによる検知結果に基づいて、給紙カセット100にセットされた記録シートPのサイズを把握する。更に、銘柄に関連付けられたショックキャンセル動作の有無と、二次転写バイスの特性とをユーザー設定テーブルから読み込む。
このようにして各データを読み込んだ制御部300は、次に、画像形成条件について、二次転写バイアスの特性が重畳電圧であることに加えて、次のような要件を満足するか否かを判定する。即ち、紙種がコート紙である、紙サイズがA3以上のサイズである、二次転写ローラ56の劣化度合いが「大」である、及びショックキャンセル動作の設定が「あり」であるのうち、少なくとも何れか一つを満足するか否かを判定する。そして、何れか一つを満足した場合には、たとえユーザー設定テーブルにおいて銘柄に関連付けられているプロセス線速が最高線速としての標準速であっても、強制的に低速に設定してプリントジョブを行う。これにより、ローラクリーニング装置58におけるブレード捲れの発生を抑えることができる。
図13は、制御部300によって実施されるプリントジョブ処理の処理フローを示すフローチャートである。プリントジョブを開始した制御部300は、まず、セット銘柄情報と、ユーザー設定テーブルとに基づいて、ユーザー設定テーブルにおいて給紙カセット100内の記録シートPの銘柄に関連付けられている各種の画像形成条件を特定する。具体的には、銘柄に関連付けられている二次転写バイアスの特性、紙種、ショックキャンセル動作の有無、及びプロセス線速を特定する(ステップ1:以下、ステップをSと記す)。次いで、押さえ位置検知センサーによる検知結果に基づいて、給紙カセット100にセットされた記録シートPのサイズを特定した後(S2)、ローラ未交換累積プリント枚数に基づいて二次転写ローラ56の劣化度合いを特定する(S3)。そして、以降のプリントジョブで採用する二次転写バイアスについて、重畳電圧からなるものであるか否かを判定する(S4)。重畳電圧からなるものではなく、直流電圧だけからなるものである場合には、紙種、紙サイズ、二次転写ローラ56の劣化度合い、ショックキャンセル動作の有無、及びプロセス線速にかかわらず、ブレード捲れの発生が抑えられる。このため、制御部300は、以降のプリントジョブで採用する二次転写バイアスが直流電圧だけからなるものである場合(S4でN)には、プロセス線速を銘柄に関連付けられた値に設定する(S9)。その後、二次転写バイアスを銘柄に関連付けられた特性のものに設定し、且つ必要に応じてショックキャンセル動作の設定をオンにしてプリントジョブを開始した後、全ての頁をプリントすると(S10でY)、プリントジョブを終了させる。
一方、以降のプリントジョブで採用する二次転写バイアスが重畳電圧からなるものである場合(S4でY)には、その他の画像形成条件によっては、ローラクリーニング装置58においてブレード捲れを発生させてしまうおそれがある。そこで、以降のプリントジョブにおいて、重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いることに加えて、所定の画像条件を満足させた状態になるか否かを判定する(S4〜S8)。具体的には、次に掲げる4つの条件のうち、少なくとも何れか一つでも満足させた状態になるか否かを判定する。
(1)紙種がコート紙である。
(2)紙サイズがA3以上である。
(3)二次転写ローラ56の劣化度合いが「大」である。
(4)ショックキャンセル動作を行う(あり)。
これら4つの条件のうち、少なくとも何れか一つでも満足する場合(S5でY、S6でY、S7でY、又はS8でY)には、ローラクリーニング装置58におけるブレード捲れを発生させ易くなってしまう。そこで、この場合、制御部300は、プロセス線速を、銘柄に関連付けられた値にかかわらず、強制的に低速に設定する(S11)。これにより、紙種、紙サイズ、二次転写ローラ56の劣化度合い、及びショックキャンセル動作の有無にかかわらず、ローラクリーニング装置58におけるブレード捲れを発生し難くする。その後、二次転写バイアスを銘柄に関連付けられた特性のものに設定し、且つ必要に応じてショックキャンセル動作の設定をオンにしてプリントジョブを開始した後、全ての頁をプリントすると(S10でY)、プリントジョブを終了させる。
以降のプリントジョブで採用する二次転写バイアスが重畳電圧からなるものであり、且つプロセス線速が最高速度たる標準速であっても、次のような状態の場合には、ローラクリーニング装置58におけるブレード捲れが発生し難くなる。即ち、上述した4つの条件を何れも満足しない状態である。そこで、この状態の場合(S8でN)には、プロセス線速を銘柄に関連付けられた値に設定する(S9)。その後、二次転写バイアスを銘柄に関連付けられた特性のものに設定し、且つ必要に応じてショックキャンセル動作の設定をオンにしてプリントジョブを開始した後、全ての頁をプリントすると(S10でY)、プリントジョブを終了させる。
なお、二次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを用いる場合に、上述した4つの条件の何れか一つでも満足した場合にプロセス線速を強制的に低速に設定する例について説明したが、満足するか否かを判定する条件を3つ以下にしてもよい。例えば、上述した4つの条件のうち、満足するか否かを判定する条件を1つだけにし、その1つについて満足した場合だけ、プロセス線速を強制的に低速に設定するようにしてもよい。
また、ローラクリーニング装置58におけるブレード捲れの発生を抑えることに着目した例について説明したが、ローラクリーニング装置58を設けていない場合には、ベルトクリーニング装置57におけるブレード捲れの発生を抑えることに着目してもよい。この場合、重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いるときに、次に掲げる3つの条件のうち、少なくとも何れか一つでも満足するか否かを判定すればよい。
(A)紙種がコート紙である。
(B)紙サイズがA3以上である。
(C)中間転写ベルト51の劣化度合いが「大」である。
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、像担持体(例えば中間転写ベルト51)と、前記像担持体に当接して転写ニップを形成するニップ形成部材(例えば二次転写ローラ56)と、前記転写ニップ内に挟み込まれた記録シートに対して前記像担持体上のトナー像を転写するための転写バイアス(例えば二次転写バイアス)として、直流電圧及び交流電圧の重畳による重畳電圧からなるものを出力することが可能な電源(例えば二次転写電源200)と、前記像担持体の駆動、及び前記電源からの転写バイアスの出力を制御する制御手段(例えば制御部300)とを備える画像形成装置(例えば実施形態に係るプリンタ)において、転写バイアスとして重畳電圧からなるものを電源から出力するときにm、所定の条件を満足する場合には、所定の線速(例えば標準速)よりも遅い線速(例えば低速)で前記像担持体を駆動するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
かかる構成において、転写バイアスとして重畳電圧からなるものを採用しつつ、記録シートとして表面コート紙や大サイズ紙を用いるなど、クリーニング部材の捲れを発生させ易くなる所定の画像形成条件を満足させた状態で画像を形成するとする。この場合、制御手段は、ユーザーの命令にかかわらず、像担持体を最高線速よりも遅い線速で駆動して画像を形成することで、像担持体を最高線速で駆動する場合に比べて、クリーニング部材に加わる摩擦力を低減する。これにより、クリーニング部材を捲れ難くすることで、クリーニング部材の発生を抑えることができる。
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記転写ニップを通過した後の前記像担持体の表面、あるいは、前記転写ニップを通過した後の前記ニップ形成部材の表面に当接してその表面をクリーニングするクリーニング部材を設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、像担持体の表面をクリーニングするクリーニング部材(例えばクリーニングブレード57a)、あるいは、ニップ形成部材の表面をクリーニングするクリーニング部材(例えばクリーニングブレード58a)の捲れの発生を抑えることができる。
[態様C]
態様Cは、態様Bであって、前記クリーニング部材が前記ニップ形成部材の表面をクリーニングするもの(例えばクリーニングブレード58a)であり、且つ前記所定の条件が前記ニップ形成部材(例えば二次転写ローラ56)の累積表面移動距離又はこれに相関する所定のパラメータ(例えばローラ未交換累積プリント枚数)を所定の閾値(例えば15万枚弱)よりも大きくするという条件であることを特徴とするものである。かかる構成において、ニップ形成部材の表面をクリーニングするクリーニング部材について、重畳電圧からなる転写バイアスを用いつつ、劣化度合いの比較的大きなニップ形成部材を用いるという捲れを発生させ易い条件で画像を形成するとする。この場合でも、ニップ形成部材を像担持体と同様に最高線速よりも遅い線速で駆動することで、そのクリーニング部材の捲れの発生を抑えることができる。
[態様D]
態様Dは、態様Bであって、前記クリーニング部材が前記像担持体の表面をクリーニングするもの(例えばクリーニングブレード57a)であり、且つ前記所定の条件が前記像担持体の累積表面移動距離又はこれに相関する所定のパラメータを所定の閾値よりも大きくするという条件であること特徴とするものである。かかる構成において、像担持体の表面をクリーニングするクリーニング部材について、重畳電圧からなる転写バイアスを用いつつ、劣化度合いの比較的大きな像担持体を用いるという捲れを発生させ易い条件で画像を形成するとする。この場合でも、像担持体を最高線速よりも遅い線速で駆動することで、そのクリーニング部材の捲れの発生を抑えることができる。
[態様E]
態様Eは、態様A〜Dの何れかであって、前記所定の条件が前記記録シートとして所定の種類(例えばコート紙)のものを用いるという条件であることを特徴とするものである。かかる構成では、重畳電圧からなる転写バイアスを用いつつ、コート紙に対して画像を形成するというクリーニング部材の捲れを発生させ易い状態で画像を形成しても、クリーニング部材の捲れの発生を抑えることができる。
[態様F]
態様Fは、態様A〜Eの何れかであって、前記所定の条件が前記記録シートとして所定サイズを超えるものを用いるじょう条件であることを特徴とするものである。かかる構成では、重畳電圧からなる転写バイアスを用いつつ、所定サイズを超える記録シートに対して画像を形成するというクリーニング部材の捲れを発生させ易い状態で画像を形成しても、クリーニング部材の捲れの発生を抑えることができる。
[態様G]
態様Gは、態様A〜Fの何れかであって、前記所定の条件が前記転写ニップのニップ圧を標準よりも低くするという条件(ショックキャンセル動作を行う状態)であることを特徴とするものである。かかる構成では、重畳電圧からなる転写バイアスを用いつつ、ニップ圧を標準よりも低くするというクリーニング部材の捲れを発生させ易い状態で画像を形成しても、クリーニング部材の捲れの発生を抑えることができる。