JP2017210677A - 金属腐食抑制剤及びそれを用いた金属腐食抑制方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献3の反応型脱臭剤は、アンモニア等の脱臭には使用することができない。
このため、十分な腐食抑制機能を持ち、種々の悪臭の消臭機能を併せ持つ金属腐食抑制剤の開発が望まれていた。
本発明の金属腐食抑制剤は、酸化亜鉛(A)とN−アシルアミノ酸(B)を有機溶媒中又は無溶媒中で(A):(B)=1:5〜1:20の質量比で反応させて得られる反応物である。
上記範囲内の炭素数であると、酸化亜鉛(A)とN−アシルアミノ酸(B)の反応性が十分となり、また、得られる金属錯体の油溶性が高くなりやすい。
炭素数の観点から、中でも、N−ラウロイルサルコシン、N−ミリストイルサルコシン、N−パルミトイルサルコシン、N−オレオイルサルコシンが特に好ましい。
更に、水性溶媒中においては、金属錯体の近傍にある余剰のN−アシルアミノ酸分子が、水と乳化し、金属表面と水との接触を最小化することにより腐食が抑制されると推定される。
該有機溶媒として、より好ましくは沸点が70℃以上の、特に好ましくは沸点が90℃以上のイソパラフィン系溶媒又はノルマルパラフィン系溶媒等の炭化水素系溶媒;沸点が100℃以上のアルコール系溶媒、エーテル系溶媒又はグリコールモノエーテル系溶媒;等が好ましい。
酸化亜鉛(A)自体は水及び有機溶媒に難溶性であるが、N−アシルアミノ酸(B)との反応により金属錯体(亜鉛錯体)を形成し、有機溶媒に溶けるようになる。上記範囲内であると、十分に錯体形成し、均一な溶液が得やすくなる。また、上記範囲内であると、金属錯体の近傍にある余剰のN−アシルアミノ酸分子の量が十分となり、金属錯体の窒素化合物、低級脂肪酸(特に水難溶性のイソ吉草酸やカプロン酸)、硫黄系悪臭ガス等の様々な悪臭ガスを捕捉しやすく、優れた消臭効果を発揮しやすい。特に、アミン類、アンモニア、硫化水素が効率よく捕捉され高い消臭効果を発揮しやすい。
本発明において、混合した酸化亜鉛(A)とN−アシルアミノ酸(B)は、化学量論的に反応しているとは限らない(反応している状態には限定されない)。
よって、本発明の金属腐食抑制剤の化学的な形態(構造)は、直接特定することが不可能であるか又はおよそ実際的でなく、本発明の金属腐食抑制剤は製造方法でしか特定することができない。
本発明の金属腐食抑制剤の別の態様は、「N−アシルアミノ酸(B)とアルカノールアミン(C)とを(B):(C)=3:1〜1:3のモル比で反応させて得られる中間反応物(D)」と酸化亜鉛(A)を有機溶媒中又は無溶媒中で(D):(A)=30:1〜5:1の質量比で反応させて得られる反応物である。
上記水性溶媒の例として、エタノール、エタノールと水の混合物、プロピレングリコール等が挙げられる。
工業的に使用される水性液媒体には、添加剤等の作用により、悪臭の発生源となる場合がある。本発明の態様2の金属腐食抑制剤を、かかる水性液媒体に添加することで、金属との接触による金属の腐食を防止しつつ、悪臭の発生を防止することができる。
また、反応時間も特に限定はないが、10分〜2時間が好ましく、20分〜1時間が特に好ましい。
上記範囲内であると、中間反応物(D)と酸化亜鉛(A)を反応させて得られる反応物が、水性溶媒に十分に溶解するようになりやすい。
該有機溶媒として、より好ましくは沸点が70℃以上の、特に好ましくは沸点が90℃以上のイソパラフィン系溶媒又はノルマルパラフィン系溶媒等の炭化水素系溶媒;沸点が100℃以上のアルコール系溶媒、エーテル系溶媒又はグリコールモノエーテル系溶媒;等が好ましい。
よって、態様2の金属腐食抑制剤の化学的な形態(構造)は、直接特定することが不可能であるか又はおよそ実際的でなく、態様2の金属腐食抑制剤も製造方法でしか特定することができない。
本発明は、前記金属腐食抑制剤を、金属と接触する液媒体に添加して、該金属の腐食を防止することを特徴とする金属腐食抑制方法でもある。
例えば、作動油には耐摩耗性、酸化防止剤、さび止め剤等が添加されている。金属加工油(切削油)には極圧剤、油性向上剤、さび止め剤等が添加されている。工業用潤滑油の一種であるタービン油等には酸化防止剤、さび止め剤が添加されている。
さび止め剤としての化合物としてはカルボン酸、スルホネート、リン酸塩等が挙げられる。
極圧剤としては、有機硫黄化合物、有機ハロゲン化物等が使用されている。
これら添加剤は酸化劣化や高温下にさらされた状況では焼き付きやスラッジ、サビの発生がみられる。特に水溶性切削油の場合は油の酸化劣化に伴い、添加剤である有機硫黄が微生物の影響や高温下により分解し、切削油自体が黒く変色するとともに、硫化水素が発生しやすい。
油性液媒体の具体例としては、金属に直接接触する切削油、潤滑油、作動油、炭化水素油(一般に炭素数6〜18)等が挙げられる。
水性液媒体の具体例としては、水は勿論、水溶性切削油剤、産業用冷却水、ボイラー等金属と接触する水性液媒体、グリコール系作動油等が挙げられる。
上記下限以上であると、腐食抑制機能及び消臭機能が十分に発揮される。また、上記上限以下であると、コスト的に有利である(上記上限以上の量を添加しても、腐食抑制機能及び消臭機能は、それ以上向上しない)。
本発明における金属腐食抑制作用のメカニズムは、その詳細が必ずしも明らかではない部分もあるが次のように考えられる。
N−アシルアミノ酸のN−アシル基(−N−CO基)と酸化亜鉛が反応し、亜鉛錯体が生成している可能性が高い。この亜鉛錯体と、近傍に存在するN−アシルアミノ酸により腐食抑制作用が発現すると考えられる。
すなわち、金属表面に亜鉛錯体が固着被覆され、近傍に存在するN−アシルアミノ酸についても油溶性でかつ金属腐食抑制作用を発揮すると思われる。
金属表面に水が存在することにより腐食の原因となるため、金属表面に固着被覆されているN−アシルアミノ酸亜鉛錯体により、更に余剰のN−アシルアミノ酸と水とで乳化し、金属表面に水の存在を最小化して腐食原因を排除して、腐食を抑制していると考えられる。
[溶液の調製]
調製例1
酸化亜鉛1g、N−オレオイルサルコシン10g(日油株式会社製)及びIPソルベント2028(イソパラフィン溶剤初留213℃、出光興産株式会社製)90mLを、還流冷却器を備えた200mL丸底フラスコに入れ、油浴120℃で撹拌下3時間加熱反応行い、「溶液1」を得た。溶液1の外観は、濃茶色粘稠溶液だった。
「N−オレオイルサルコシンを10g」の代わりに「N−ラウロイルサルコシンを20g」使用した点、及び、IPソルベント2028の量を80mLに変更した点以外は、調製例1と同様にして、「溶液2」を得た。
N−オレオイルサルコシンの量を5gに変更した点、及び、IPソルベント2028の量を95mLに変更した点以外は、調製例1と同様にして、「溶液3」を得た。
酸化亜鉛を使用しなかった点以外は、調製例1と同様にして、「溶液4」を得た。
試験例1(鉄板(圧延鋼板)の腐食抑制試験)
試験片として、10mm(幅)×70mm(長さ)×2mm(厚さ)の圧延鋼板(旧JIS規格 SS−41(一般圧延鋼板))を用意した。
上記試験片をNo.100番の紙ヤスリで磨き、次いでNo.240番の紙ヤスリで磨いた後、アセトンで洗浄して脱脂し、溶媒(株式会社ジャパンエナジー製、CACTUS SOLVENT F-2(主成分:2−メチルペンタン及び3−メチルペンタン))に浸漬して保存した。
保存した試験片は、試験時にピンセットで取り出し、乾燥させてから試験に供した。
次いで、室温に静置後、試験片を規格ビンから取り出し、目視で錆の状況を判断した。
結果を図1〜2及び表1に示す。
試験片として、試験例1で使用した圧延鋼板と同じ寸法の銅板を使用して、試料液として、表2に示す添加溶液を表2に示す量添加した(比較例4は、添加溶液を添加していない)5%NaCl水溶液を使用して、試験例1と同様にして65℃の恒温槽に3時間静置し、室温に静置後、試験片の錆の状況を目視で判断した。
結果を表2に示す。
表2の結果から、本発明の金属腐食抑制剤を添加した場合(実施例2)、明らかに銅板においても腐食抑制効果がみられることがわかる。
試験片として、16mm(幅)×50mm(長さ)×0.3mm(厚さ)のアルミニウム板を使用して、試料液として、表3に示す添加溶液を表3に示す量添加した(比較例6は、添加溶液を添加していない)5%NaCl水溶液を使用して、試験例1と同様にして65℃の恒温槽に3時間静置し、室温に静置後、試験片の錆の状況を目視で判断した。
また、試験片を軽く水洗後、乾燥させ、乾燥後質量を測定した。
結果を表3に示す。
試験例4(鉄板(圧延鋼板)の硫化水素ガス消臭試験)
試験例1で使用したのと同じ試験片を洗浄後乾燥させ、表4に示す溶液を刷毛で塗布し、消臭試験に供した。
次いで、消臭剤を塗布した試験片をセパラブルフラスコ内に吊るした後、各経過時間後の硫化水素ガスの濃度を検知管により測定し、下記式(1)により消臭率を算出した。
結果を表4に示す。
除去対象ガスとして、硫化水素ガスの代わりにアンモニアを使用し、表5に示す初期濃度となるようにした以外は、試験例4と同様にして、各経過時間後のアンモニアの濃度を測定し、消臭率を算出した。
結果を表5に示す。
除去対象ガスとして、硫化水素ガスの代わりにトリメチルアミンを使用し、表6に示す初期濃度となるようにした以外は、試験例4と同様にして、各経過時間後のトリメチルアミンの濃度を測定し、消臭率を算出した。
結果を表6に示す。
2つの共栓付き三角フラスコに、長時間使用して黒変(腐敗)が起こっているエマルジョン状態の切削油を10gずつ入れ、それぞれのヘッドスペースの硫化水素濃度を検知管にて測定した。
1時間後に開栓し、それぞれの三角フラスコヘッドスペースの硫化水素濃度を検知管にて測定した。
結果を表7に示す。
[溶液の調製]
調製例5
N−オレオイルサルコシン10g及びIPソルベント2028(イソパラフィン溶剤、出光興産株式会社製)86gを、還流冷却器を備えた200mLナス型フラスコに入れ、次いで2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール2.6gを添加し、30分間室温で撹拌した。次いで酸化亜鉛0.5gおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテル10gを添加し、110℃で3時間加熱撹拌することにより、黄褐色透明溶液である「溶液5」を得た。
すなわち、本発明の態様2の金属腐食抑制剤は、水に溶解することが確認された。
試験例8(鉄板(圧延鋼板)の腐食抑制試験)
黒変(腐敗)が起こっている水溶性切削油20gに対し、上記「溶液5」0.5gを添加し、試験例1で使用したのと同じ試験片(圧延鋼板)を浸漬した。
1週間室温で静置後、目視観察したところ、錆の発生は見られなかった。
浸漬前に測定していた試験片の質量は10.877gであったのに対し、浸漬後の試験片の乾燥質量は10.878gであり、試験前後で質量は1mg増加したのみであった。
試験例9(腐敗切削油から発生する硫化水素ガス消臭試験)
長時間使用して黒変(腐敗)が起こっている水溶性切削油20gを共栓付き三角フラスコに入れ、ヘッドスペースの硫化水素濃度を検知管にて測定した結果、9ppmであった。
すなわち、消臭率は78%であった。
Claims (8)
- 酸化亜鉛(A)とN−アシルアミノ酸(B)を有機溶媒中又は無溶媒中で(A):(B)=1:5〜1:20の質量比で反応させて得られる反応物であることを特徴とする金属腐食抑制剤。
- 「N−アシルアミノ酸(B)とアルカノールアミン(C)とを(B):(C)=3:1〜1:3のモル比で反応させて得られる中間反応物(D)」と酸化亜鉛(A)を有機溶媒中又は無溶媒中で(D):(A)=30:1〜5:1の質量比で反応させて得られる反応物であることを特徴とする金属腐食抑制剤。
- 上記アルカノールアミン(C)は、2−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール及びトリスヒドロキシメチルアミノメタンからなる群より選ばれた1種以上の化合物である請求項2に記載の金属腐食抑制剤。
- 上記N−アシルアミノ酸(B)は、ラウロイルサルコシン、ミリストイルサルコシン、パルミトイルサルコシン及びオレオイルサルコシンからなる群より選ばれた1種以上の化合物である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の金属腐食抑制剤。
- 消臭機能を有する請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の金属腐食抑制剤。
- 請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の金属腐食抑制剤を、金属と接触する液媒体に添加して、該金属の腐食を防止することを特徴とする金属腐食抑制方法。
- 請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の金属腐食抑制剤を金属の表面に塗布することにより、該金属の腐食を防止することを特徴とする金属腐食抑制方法。
- 上記金属は鉄、銅、亜鉛若しくはアルミニウム又はこれらの合金である請求項6又は請求項7に記載の金属腐食抑制方法。
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