JP2017209064A - 脂質の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させる、脂質の製造方法を提供する。【解決手段】下記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子の発現を促進させた形質転換体を培養して脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質を生産させる、脂質の製造方法。(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシルキャリアープロテイン活性を有するタンパク質。【選択図】なし

Description

本発明は、脂質の製造方法に関する。また、本発明は当該方法に用いる形質転換体に関する。
脂肪酸は脂質の主要構成成分の1つであり、生体内においてグリセリンとのエステル結合により生成するトリアシルグリセロール等の脂質(油脂)を構成する。また、多くの動植物において脂肪酸はエネルギー源として貯蔵され利用される物質でもある。動植物内に蓄えられた脂肪酸や脂質は、食用又は工業用として広く利用されている。
例えば、炭素原子数12〜18前後の高級脂肪酸を還元して得られる高級アルコールの誘導体は、界面活性剤として用いられている。アルキル硫酸エステル塩やアルキルベンゼンスルホン酸塩等は陰イオン性界面活性剤として利用されている。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルやアルキルポリグリコシド等は非イオン性界面活性剤として利用されている。そしてこれらの界面活性剤は、いずれも洗浄剤や殺菌剤等に利用されている。同じ高級アルコールの誘導体であるアルキルアミン塩やモノ又はジアルキル4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤は、繊維処理剤、毛髪リンス剤、殺菌剤等に日常的に利用されている。また、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩は殺菌剤や防腐剤等に日常的に利用されている。さらに、植物油脂はバイオディーゼル燃料の原料としても利用されている。
このように脂肪酸や脂質の利用は多岐にわたり、そのため植物等において生体内での脂肪酸や脂質の生産性を向上させる試みが行われている。さらに、脂肪酸の用途や有用性はその炭素原子数に依存するため、脂肪酸の炭素原子数、即ち鎖長を制御する試みも行われている。
一般に、植物の脂肪酸合成経路は葉緑体に局在する。葉緑体ではアセチル−アシルキャリアープロテイン(acyl carrier protein、以下「ACP」ともいう)を出発物質とし、炭素鎖の伸長反応が繰り返され、最終的に炭素原子数18程度の脂肪酸が合成される。この脂肪酸の合成経路においてACPは、脂肪酸の担体としての機能を果たしている。
これまでに、脂肪酸の生合成において、脂肪酸の炭素原子数(鎖長)の制御にACPを利用する方法が提案されている。例えば、タバコの葉緑体ゲノム又は核ゲノムに導入した、オリーブ由来のACPをコードする遺伝子(以下、「ACP遺伝子」ともいう)を過剰発現させることで、炭素原子数18の不飽和脂肪酸の生産性を向上させる方法が非特許文献1に記載されている。また、ナズナ(Arabidopsis)由来のACP遺伝子をナズナで過剰発現させることで、炭素原子数18の不飽和脂肪酸の1種であるα−リノレン酸の生産性を向上させる方法が、非特許文献2に記載されている。
このように、ACPを利用して炭素原子数18程度の長鎖脂肪酸の生産性を向上させる方法については知られている。しかし、ACPを利用して炭素原子数10〜14程度の中鎖脂肪酸の生産性を向上させることについては、未だ報告がされていない。
近年、持続可能な社会の実現に向けて再生可能エネルギーに関する研究が推し進められている。特に光合成微生物は、二酸化炭素の削減効果に加えて、穀物と競合しないバイオ燃料生物として期待されている。
特に近年、バイオ燃料生産に有用であるとして、藻類が注目を集めている。藻類は、バイオディーゼル燃料として利用可能な脂質を光合成によって生産でき、しかも食料と競合しないことから、次世代のバイオマス資源として注目されている。また、藻類は、植物に比べ、高い脂質生産・蓄積能力を有するとの報告もある。藻類の脂質合成メカニズムやそれを応用した生産技術について研究が始まってはいるが、未解明な部分も多い。
Francesca De Marchis,et al.,Transgenic Research,2016,vol.25(1),p.45-61 Jill K.Branen,et al.,Plant Physiol.,2001,vol.127(1),p.222-229
本発明は、中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させる、脂質の製造方法を提供することを課題とする。
また本発明は、中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させた形質転換体を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意検討を行った。
本発明者らはまず、中鎖脂肪酸の合成に関与する酵素として、藻類の1種であるナンノクロロプシス属の藻類のACPを新たに同定した。そして、このACPの微生物内での発現を促進させた結果、生産される中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性が有意に向上することを見出した。
本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
本発明は、下記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子の発現を促進させた形質転換体を培養して脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質を生産させる、脂質の製造方法に関する。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシルキャリアープロテイン活性を有するタンパク質。
また本発明は、前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子の発現を促進させて、形質転換体の細胞内で生産される中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させ、生産される全脂肪酸中又は全脂質中の脂肪酸又は脂質の組成を改変する、脂質の組成の改変方法に関する。
さらに本発明は、前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子の発現を促進させた形質転換体に関する。
本発明の脂質の製造方法によれば、中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させることができる。
また本発明の形質転換体は、中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性に優れる。
本明細書における「油脂」は、中性脂質(トリアシルグリセロール等)、ろう、セラミド等の単純脂質;リン脂質、糖脂質、スルホ脂質等の複合脂質;及びこれらの脂質から誘導される、脂肪酸、アルコール類、炭化水素類等の誘導脂質を包含するものである。
また本明細書において、脂肪酸や、脂肪酸を構成するアシル基の表記において「Cx:y」とあるのは、炭素原子数xで二重結合の数がyであることを表す。「Cx」は炭素原子数xの脂肪酸やアシル基を表す。
さらに本明細書において、塩基配列及びアミノ酸配列の同一性は、Lipman-Pearson法(Science,1985,vol.227,p.1435-1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Winのホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
また本明細書において「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook,David W.Russell.,Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられる。例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
さらに明細書において、遺伝子の「上流」とは、翻訳開始点からの位置ではなく、対象として捉えている遺伝子又は領域の5'側に続く領域を示す。一方、遺伝子の「下流」とは、対象として捉えている遺伝子又は領域の3'側に続く領域を示す。
アミノ酸配列及び塩基配列のBlast(Basic Local Alignment Search Tool)の結果から、前記タンパク質(A)及び(B)(以下、「ACP2」、又は「NoACP2」ともいう)はACPの1種であり、脂肪酸の生合成経路において脂肪酸の担体として機能するタンパク質である。配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス属に属する藻類であるナンノクロロプシス・オキュラータ(Nannochloropsis oculata)NIES2145株由来のACPの1種である。
ACPは脂肪酸の生合成反応(脂肪酸の伸長反応)の足場(担体)として機能する。脂肪酸のアシル基は、ACPのセリン残基に結合したホスホパンテテイン基とチオエステル結合を形成する。この状態で脂肪酸が伸長される。
前記タンパク質(A)及び(B)はいずれも、アシルキャリアープロテイン活性(以下、「ACP活性」ともいう)を有する。本明細書において「ACP活性」とは、脂肪酸のアシル基とチオエステル結合を形成することで脂肪酸の伸長反応の足場として機能する活性を意味する。
前記タンパク質がACP活性を有することは、例えば、ACP遺伝子欠損株に、宿主内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAを導入し、脂肪酸合成能を相補させることで確認することができる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAを宿主細胞へ導入し、導入した遺伝子が発現する条件下で細胞を培養し、宿主細胞内又は培養液中の脂肪酸の生産量や組成の変化を常法により分析することで確認できる。あるいは、前記タンパク質を、Dall’aglio, et al., Biochemistry, 2011, vol. 50(25), p. 5704-5717等の文献を参考にして、補酵素A(CoA)と適当なACPシンターゼ(ACP synthase)(ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ(phosphopantetheinyl transferase))と反応させ、ホスホパンテテイン基が結合したholo-ACPを形成させることで確認することができる。あるいは、Rock, Garwin, The Journal of Biological Chemistry, 1979, vol. 254(15), p. 7123-7128等の文献を参考にして、前記holo-ACPを脂肪酸及び適当なアシル-ACPシンセターゼ(acyl-ACP synthetase)と反応させ、アシル基が結合したacyl-ACPを形成させることで確認することができる。
後述の実施例で示すように、前記タンパク質(A)をコードする遺伝子の発現を促進した形質転換体では、炭素原子数が10〜14の中鎖脂肪酸の生産性が向上する。なお本明細書において「中鎖」とは、アシル基の炭素原子数が6以上14以下、好ましくは炭素原子数が8以上14以下、より好ましくは炭素原子数が10以上14以下、よりさらに好ましくは炭素原子数が10、12、又は14、であることをいう。
前記タンパク質(B)において、ACP活性の点から、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列との同一性は75%以上が好ましく、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がさらに好ましく、93%以上がより好ましく、94%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また、前記タンパク質(B)として、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上36個以下、好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上24個以下、より好ましくは1個以上18個以下、より好ましくは1個以上12個以下、より好ましくは1個以上9個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上7個以下、より好ましくは1個以上6個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1個以上2個以下、より好ましくは1個)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
アミノ酸配列に変異を導入する方法としては、例えば、アミノ酸配列をコードする塩基配列に変異を導入する方法が挙げられる。変異を導入する方法としては、部位特異的な変異導入法が挙げられる。具体的な部位特異的変異の導入方法としては、SOE-PCRを利用した方法、ODA法、Kunkel法等が挙げられる。また、Site-Directed Mutagenesis System Mutan-SuperExpress Kmキット(タカラバイオ社)、Transformer TM Site-Directed Mutagenesisキット(Clonetech社)、KOD-Plus-Mutagenesis Kit(東洋紡社)等の市販のキットを利用することもできる。また、ランダムな遺伝子変異を与えた後、適当な方法により活性の評価及び遺伝子解析を行うことにより目的遺伝子を取得することもできる。
前記タンパク質(A)及び(B)は、通常の化学的手法、遺伝子工学的手法等により得ることができる。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータから単離、精製等することで天然物由来のタンパク質を取得することができる。また、配列番号1に示すアミノ酸配列情報をもとに人工的に化学合成することで、前記タンパク質(A)及び(B)を得ることができる。あるいは、遺伝子組み換え技術により、組換えタンパク質として前記タンパク質(A)及び(B)を作製してもよい。組換えタンパク質を作製する場合には、後述するアシルキャリアープロテイン遺伝子を用いることができる。
なお、ナンノクロロプシス・オキュラータ等の藻類は、私的又は公的な研究所等の保存機関より入手することができる。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株は、国立環境研究所(NIES)から入手することができる。
前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子(以下、「ACP2遺伝子」ともいう)の一例として、下記DNA(a)又は(b)からなる遺伝子(以下、「NoACP2遺伝子」ともいう)が挙げられる。

(a)配列番号2で表される塩基配列からなるDNA。
(b)前記DNA(a)の塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列からなり、かつACP活性を有するタンパク質をコードするDNA。

配列番号2の塩基配列は、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列である。
前記DNA(b)において、ACP活性の点から、前記DNA(a)の塩基配列との同一性は75%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、94%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(b)として、前記DNA(a)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上108個以下、好ましくは1個以上90個以下、より好ましくは1個以上72個以下、より好ましくは1個以上54個以下、より好ましくは1個以上36個以下、より好ましくは1個以上29個以下、より好ましくは1個以上25個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上18個以下、より好ましくは1個以上14個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上7個以下、より好ましくは1個以上3個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつACP活性を有する前記タンパク質(A)又は(B)をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(b)として、前記DNA(a)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつACP活性を有する前記タンパク質(A)又は(B)をコードするDNAも好ましい。
前記ACP2遺伝子の発現を促進させる方法としては、常法より適宜選択することができる。例えば、前記ACP2遺伝子を宿主に導入する方法、前記ACP2遺伝子をゲノム上に有する宿主において、当該遺伝子の発現調節領域(プロモーター、ターミネーター等)を改変する方法、などが挙げられる。なかでも、前記ACP2遺伝子を宿主に導入し、ACP2遺伝子の発現を促進させる方法が好ましい。
以下本明細書において、目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進させたものを「形質転換体」ともいい、目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進させていないものを「宿主」又は「野生株」ともいう。
本発明の形質転換体は、宿主自体に比べ、中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性、特に、生産される全脂肪酸中又は全脂質中に占める中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の割合が有意に向上する。またその結果、当該形質転換体では、脂質中の脂肪酸組成が改変される。そのため、本発明の形質転換体は、特定の炭素原子数の脂質、特に中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質、好ましくは炭素原子数6以上14以下の脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質、より好ましくは炭素原子数8以上14以下の脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質、より好ましくは炭素原子数が10以上14以下の脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質、より好ましくは炭素原子数が10、12、若しくは14の脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質、より好ましくは炭素原子数が10、12、若しくは14の飽和脂肪酸(カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸)又はこれを構成成分とする脂質、より好ましくは炭素原子数が12の飽和脂肪酸(ラウリン酸)又はこれを構成成分とする脂質、の生産に好適に用いることができる。
なお、宿主や形質転換体の脂肪酸及び脂質の生産性については、実施例で用いた方法により測定することができる。
前記ACP2遺伝子を宿主に導入して前記遺伝子の発現を促進させる方法について説明する。
前記ACP2遺伝子は、通常の遺伝子工学的手法により得ることができる。例えば、配列番号1に示すアミノ酸配列又は配列番号2に示す塩基配列に基づいて、ACP2遺伝子を人工的に合成できる。ACP2遺伝子の合成は、例えば、インビトロジェン社等のサービスを利用することができる。また、ナンノクロロプシス・オキュラータからクローニングによって取得することもできる。例えば、Molecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook,David W.Russell,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)]記載の方法等により行うことができる。また、実施例で用いたナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145は、国立環境研究所(NIES)より入手することができる。
本発明で好ましく用いることができる形質転換体は、前記ACP2遺伝子を常法により宿主に導入することで得られる。具体的には、前記ACP2遺伝子を宿主細胞中で発現させることのできる組換えベクターや遺伝子発現カセットを調製し、これを宿主細胞に導入して宿主細胞を形質転換させることにより作製できる。
形質転換体の宿主としては通常用いられるものより適宜選択することができる。本発明で用いることができる宿主としては、微生物(藻類や微細藻類を含む)、植物体、及び動物体が挙げられる。製造効率及び得られた脂質の利用性の点から、宿主は微生物又は植物体であることが好ましく、微生物であることがより好ましく、微細藻類であることがさらに好ましい。
前記微生物は原核生物、真核生物のいずれであってもよく、エシェリキア(Escherichia)属の微生物やバシラス(Bacillus)属の微生物、シネコシスティス(Synechocystis)属の微生物、シネココッカス(Synechococcus)属の微生物等の原核生物、又は酵母や糸状菌等の真核微生物を用いることができる。なかでも、脂質生産性の観点から、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、赤色酵母(Rhodosporidium toruloides)、又はモルチエレラ・エスピー(Mortierella sp.)が好ましく、大腸菌がより好ましい。
前記藻類や微細藻類としては、遺伝子組換え手法が確立している観点から、クラミドモナス(Chlamydomonas)属の藻類、クロレラ(Chlorella)属の藻類、ファエオダクティラム(Phaeodactylum)属の藻類、又はナンノクロロプシス属の藻類が好ましく、ナンノクロロプシス属の藻類がより好ましい。ナンノクロロプシス属の藻類の具体例としては、ナンノクロロプシス・オキュラータ、ナンノクロロプシス・ガディタナ(Nannochloropsis gaditana)、ナンノクロロプシス・サリナ(Nannochloropsis salina)、ナンノクロロプシス・オセアニカ(Nannochloropsis oceanica)、ナンノクロロプシス・アトムス(Nannochloropsis atomus)、ナンノクロロプシス・マキュラタ(Nannochloropsis maculata)、ナンノクロロプシス・グラニュラータ(Nannochloropsis granulata)、ナンノクロロプシス・エスピー(Nannochloropsis sp.)等が挙げられる。なかでも、脂質生産性の観点から、ナンノクロロプシス・オキュラータ、又はナンノクロロプシス・ガディタナが好ましく、ナンノクロロプシス・オキュラータがより好ましい。
前記植物体としては、種子に脂質を高含有する観点から、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、西洋アブラナ(Brassica napus)、アブラナ(Brassica rapa)、ココヤシ(Cocos nucifera)、パーム(Elaeis guineensis)、クフェア、ダイズ(Glycine max)、トウモロコシ(Zea mays)、イネ(Oryza sativa)、ヒマワリ(Helianthus annuus)、クスノキ(Cinnamomum camphora)、又はヤトロファ(Jatropha curcas)が好ましく、シロイヌナズナがより好ましい。
遺伝子発現用プラスミドベクター又は遺伝子発現カセットの母体となるベクター(プラスミド)としては、目的のタンパク質をコードする遺伝子を宿主に導入することができ、宿主細胞内で当該遺伝子を発現させることができるベクターであればよい。例えば、導入する宿主の種類に応じたプロモーターやターミネーター等の発現調節領域を有するベクターであって、複製開始点や選択マーカー等を有するベクターを用いることができる。また、プラスミド等の染色体外で自立増殖・複製するベクターであってもよいし、染色体内に組み込まれるベクターであってもよい。
本発明で好ましく用いることができる発現用ベクターとしては、微生物を宿主とする場合には、例えば、pBluescript(pBS) II SK(-)(Stratagene社製)、pSTV系ベクター(タカラバイオ社製)、pUC系ベクター(宝酒造社製)、pET系ベクター(タカラバイオ社製)、pGEX系ベクター(GEヘルスケア社製)、pCold系ベクター(タカラバイオ社製)、pHY300PLK(タカラバイオ社製)、pUB110(Mckenzie,T.et al.,1986,Plasmid 15(2),p.93-103)、pBR322(タカラバイオ社製)、pRS403(ストラタジーン社製)、及びpMW218/219(ニッポンジーン社製)が挙げられる。特に、宿主が大腸菌の場合は、pBluescript II SK(-)、又はpMW218/219が好ましく用いられる。
藻類又は微細藻類を宿主とする場合には、例えば、pUC19(タカラバイオ社製)、P66(Chlamydomonas Center)、P-322(Chlamydomonas Center)、pPha-T1(Yangmin Gong,et al.,Journal of Basic Microbiology,2011,vol.51,p.666-672参照)、又はpJET1(コスモ・バイオ社製)が挙げられる。特に、宿主がナンノクロロプシス属に属する藻類の場合は、pUC19、pPha-T1、又はpJET1が好ましく用いられる。また、宿主がナンノクロロプシス属に属する藻類の場合には、Oliver Kilian,et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,2011,vol.108(52)の記載の方法を参考にして、目的の遺伝子、プロモーター及びターミネーターからなるDNA断片(遺伝子発現カセット)を用いて宿主を形質転換することもできる。このDNA断片としては、例えば、PCR法により増幅したDNA断片や制限酵素で切断したDNA断片が挙げられる。
植物細胞を宿主とする場合には、例えば、pRI系ベクター(タカラバイオ社製)、pBI系ベクター(クロンテック社製)、及びIN3系ベクター(インプランタイノベーションズ社製)が挙げられる。特に、宿主がシロイヌナズナの場合は、pRI系ベクター又はpBI系ベクターが好ましく用いられる。
また、前記発現ベクターに組み込んだ目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を調整するプロモーターの種類も、使用する宿主の種類に応じて適宜選択することができる。本発明で好ましく用いることができるプロモーターとしては、lacプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、T7プロモーター、SpoVGプロモーター、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によって誘導可能な誘導体に関するプロモーター、Rubiscoオペロン(rbc)、PSI反応中心タンパク質(psaAB)、PSIIのD1タンパク質(psbA)、カリフラワーモザイルウイルス35SRNAプロモーター、ハウスキーピング遺伝子プロモーター(例えば、チューブリンプロモーター、アクチンプロモーター、ユビキチンプロモーター等)、西洋アブラナ又はアブラナ由来Napin遺伝子プロモーター、植物由来Rubiscoプロモーター、ナンノクロロプシス属由来のビオラキサンチン/クロロフィルa結合タンパク質遺伝子のプロモーター(VCP1プロモーター、VCP2プロモーター)(Oliver Kilian,et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,2011,vol.108(52))、及びナンノクロロプシス属由来のオレオシン様タンパクLDSP(lipid droplet surface protein)遺伝子のプロモーター(Astrid Vieler, et al., PLOS Genetics, 2012;8(11):e1003064. doi: 10.1371)が挙げられる。本発明で宿主としてナンノクロロプシスを用いる場合、ビオラキサンチン/クロロフィルa結合タンパク質遺伝子のプロモーターや、ナンノクロロプシス属由来のオレオシン様タンパクLDSP遺伝子のプロモーターを好ましく用いることができる。
また、目的のタンパク質をコードする遺伝子が組み込まれたことを確認するための選択マーカーの種類も、使用する宿主の種類に応じて適宜選択することができる。本発明で好ましく用いることができる選択マーカーとしては、アンピシリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ブラストサイジンS耐性遺伝子、ビアラフォス耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、パロモマイシン耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、及びハイグロマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子が挙げられる。さらに、栄養要求性に関連する遺伝子の欠損等を選択マーカー遺伝子として使用することもできる。
目的のタンパク質をコードする遺伝子の前記ベクターへの導入は、制限酵素処理やライゲーション等の常法により行うことができる。
また、形質転換方法は、使用する宿主の種類に応じて常法より適宜選択することができる。例えば、カルシウムイオンを用いる形質転換方法、一般的なコンピテントセル形質転換方法、プロトプラスト形質転換法、エレクトロポレーション法、LP形質転換方法、アグロバクテリウムを用いた方法、パーティクルガン法等が挙げられる。宿主としてナンノクロロプシス属の藻類を用いる場合、Randor Radakovits, et al.,Nature Communications,DOI:10.1038/ncomms1688,2012等に記載のエレクトロポレーション法を用いて形質転換を行うこともできる。
目的遺伝子断片が導入された形質転換体の選択は、選択マーカー等を利用することで行うことができる。例えば、薬剤耐性遺伝子が、形質転換時に目的DNA断片とともに宿主細胞中に導入された結果、形質転換体が獲得する薬剤耐性を指標に行うことができる。また、ゲノムを鋳型としたPCR法等によって、目的DNA断片の導入を確認することもできる。
前記ACP2遺伝子をゲノム上に有する宿主において、当該遺伝子の発現調節領域を改変して、前記遺伝子の発現を促進させる方法について説明する。
「発現調節領域」とは、プロモーターやターミネーターを示し、これらの配列は一般に隣接する遺伝子の発現量(転写量、翻訳量)の調節に関与している。ゲノム上に前記ACP2遺伝子を有する宿主においては、当該遺伝子の発現調節領域を改変して前記ACP2遺伝子の発現を促進させることで、中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させることができる。
発現調節領域の改変方法としては、例えばプロモーターの入れ替えが挙げられる。ゲノム上に前記ACP2遺伝子を有する宿主において、当該遺伝子のプロモーター(以下、「ACP2プロモーター」ともいう)を、より転写活性の高いプロモーターに入れ替えることで、前記ACP2遺伝子の発現を促進させることができる。例えば、ゲノム上に前記ACP2遺伝子を有する宿主の1つであるナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株においては、配列番号37に示す塩基配列からなるDNA配列の直下にNoACP2遺伝子が存在しており、配列番号37に示す塩基配列からなるDNA配列中にプロモーター領域が存在している。この配列番号37に示す塩基配列からなるDNA配列の一部又は全部をより転写活性の高いプロモーターに入れ替えることで、前記ACP2遺伝子の発現を促進させることができる。
ACP2プロモーターの入れ替えに用いるプロモーターとしては特に限定されず、ACP2プロモーターよりも転写活性が高く、中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産に適したものから適宜選択することができる。
宿主としてナンノクロロプシスを用いる場合には、チューブリンプロモーター、ヒートショックプロテインプロモーター、上述のビオラキサンチン/クロロフィルa結合タンパク質遺伝子のプロモーター(VCP1プロモーター、VCP2プロモーター)、又はナンノクロロプシス属由来のオレオシン様タンパクLDSP遺伝子のプロモーターを好ましく用いることができる。中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性向上の観点から、ビオラキサンチン/クロロフィルa結合タンパク質遺伝子のプロモーター又はLDSP遺伝子のプロモーターがより好ましい。
前述のプロモーターの改変は、相同組換えなどの常法に従い行うことができる。具体的には、標的とするプロモーターの上流、下流領域を含み、標的プロモーターに代えて別のプロモーターを含む直鎖状のDNA断片を構築し、これを宿主細胞に取り込ませ、宿主ゲノムの標的プロモーターの上流側と下流側とで2回交差の相同組換えを起こす。その結果、ゲノム上の標的プロモーターが別のプロモーター断片と置換され、プロモーターを改変することができる。
このような相同組換えによる標的プロモーターの改変方法は、例えば、Besher et al.,Methods in molecular biology,1995,vol.47,p.291-302等の文献を参考に行うことができる。特に、宿主がナンノクロロプシス属に属する藻類の場合、Oliver Kilian,et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,2011,vol.108(52)等の文献を参考にして、相同組換え法によりゲノム中の特定の領域を改変することができる。
本発明の形質転換体は、前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子に加えて、アシル−ACPチオエステラーゼ(以下、「TE」ともいう)をコードする遺伝子(以下、「TE遺伝子」ともいう)の発現も促進されていることが好ましい。
TEは、β−ケトアシル−ACPシンターゼ(β-Ketoacyl-acyl-carrier-protein synthase、以下「KAS」ともいう)等の脂肪酸合成酵素によって合成されたアシル−ACPのチオエステル結合を加水分解し、遊離の脂肪酸を生成する酵素である。TEの作用によってACP上での脂肪酸合成が終了し、切り出された脂肪酸は多価不飽和脂肪酸の合成やトリアシルグリセロール等の合成に供される。
そのため、ACP2遺伝子に加えてTE遺伝子の発現を促進することで、脂質の製造に用いる形質転換体の脂質の生産性、特に脂肪酸の生産性を一層向上させることができる。
本発明で好ましく用いることができるTEは、アシル−ACPチオエステラーゼ活性(以下、「TE活性」ともいう)を有するタンパク質であればよい。ここで「TE活性」とは、アシル−ACPのチオエステル結合を加水分解する活性をいう。
TEは、基質であるアシル−ACPを構成するアシル基(脂肪酸残基)の炭素原子数や不飽和結合数によって異なる反応性を示すことが知られている。よってTEは、生体内での脂肪酸組成を決定する重要なファクターであると考えられている。また、TEをコードする遺伝子を元来有していない宿主を用いる場合、TEをコードする遺伝子の発現を促進させることが好ましい。また、中鎖アシル−ACPに対する基質特異性を有するTE遺伝子の発現を促進させることにより、中鎖脂肪酸の生産性が向上する。このような遺伝子を導入することで、中鎖脂肪酸の生産性を一層向上させることができる。
本発明で好ましく用いることができるTEは、通常のTEや、それらと機能的に均等なタンパク質から、宿主の種類等に応じて適宜選択することができる。
例えば、Cuphea calophylla subsp. mesostemon由来のTE(GenBank ABB71581);Cinnamomum camphora由来のTE(GenBank AAC49151.1);Myristica fragrans由来のTE(GenBank AAB71729);Myristica fragrans由来のTE(GenBank AAB71730);Cuphea lanceolata由来のTE(GenBank CAA54060);Cuphea hookeriana由来のTE(GenBank Q39513);Ulumus americana由来のTE(GenBank AAB71731);Sorghum bicolor由来のTE(GenBank EER87824);Sorghum bicolor由来のTE(GenBank EER88593);Cocos nucifera由来のTE(CnFatB1:Jing et al. BMC Biochemistry 2011, 12:44参照);Cocos nucifera由来のTE(CnFatB2:Jing et al.,BMC Biochemistry,2011,12:44参照);Cuphea viscosissima由来のTE(CvFatB1:Jing et al.,BMC Biochemistry,2011,12:44参照);Cuphea viscosissima由来のTE(CvFatB2:Jing et al.,BMC Biochemistry 2011,12:44参照);Cuphea viscosissima由来のTE(CvFatB3:Jing et al.,BMC Biochemistry,2011,12:44参照);Elaeis guineensis由来のTE(GenBank AAD42220);Desulfovibrio vulgaris由来のTE(GenBank ACL08376);Bacteriodes fragilis由来のTE(GenBank CAH09236);Parabacteriodes distasonis由来のTE(GenBank ABR43801);Bacteroides thetaiotaomicron由来のTE(GenBank AAO77182);Clostridium asparagiforme由来のTE(GenBank EEG55387);Bryanthella formatexigens由来のTE(GenBank EET61113);Geobacillus sp.由来のTE(GenBank EDV77528);Streptococcus dysgalactiae由来のTE(GenBank BAH81730);Lactobacillus brevis由来のTE(GenBank ABJ63754);Lactobacillus plantarum由来のTE(GenBank CAD63310);Anaerococcus tetradius由来のTE(GenBank EEI82564);Bdellovibrio bacteriovorus由来のTE(GenBank CAE80300);Clostridium thermocellum由来のTE(GenBank ABN54268);ココヤシ由来のTE(配列番号40、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号41);ナンノクロロプシス・オキュラータ由来のTE(以下、「NoTE」ともいう)(配列番号36、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号27);ゲッケイジュ由来のTE(GenBank AAA34215.1、配列番号38、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号39);ナンノクロロプシス・ガディタナ由来のTE(配列番号42、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号43);ナンノクロロプシス・グラニュラータ由来のTE(配列番号44、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号45);シンビオディニウム・ミクロアドリアチカム(Symbiodinium microadriaticum)由来のTE(配列番号46、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号47)、等が挙げられる。
また、これらと機能的に均等なタンパク質として、上述したいずれかのTEのアミノ酸配列との同一性が50%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上)のアミノ酸配列からなり、かつTE活性を有するタンパク質も用いることができる。
上述したTEの中でも、中鎖アシル−ACPに対する基質特異性の観点から、ココヤシ由来のTE(配列番号40、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号41)、NoTE(配列番号36、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号27)、ゲッケイジュ由来のTE(配列番号38、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号39)、ナンノクロロプシス・ガディタナ由来のTE(配列番号42、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号43)、ナンノクロロプシス・グラニュラータ由来のTE(配列番号44、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号45)、シンビオディニウム・ミクロアドリアチカム由来のTE(配列番号46、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号47)、又はこれらのTEのアミノ酸配列との同一性が50%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上)のアミノ酸配列からなり、かつ中鎖アシル−ACPに対するTE活性を有するタンパク質が好ましい。
タンパク質がTE活性を有することは、例えば、大腸菌等の宿主細胞内で機能するプロモーターの下流にTE遺伝子を連結したDNAを脂肪酸分解系が欠損した宿主細胞へ導入し、導入したTE遺伝子が発現する条件で培養して、宿主細胞又は培養液中の脂肪酸組成の変化をガスクロマトグラフィー解析等の方法を用いて分析することにより、確認することができる。
また、大腸菌等の宿主細胞内で機能するプロモーターの下流にTE遺伝子を連結したDNAを宿主細胞へ導入し、導入したTE遺伝子が発現する条件で細胞を培養した後、細胞の破砕液に対し、Yuanらの方法(Yuan L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995,vol.92(23),p.10639-10643)によって調製した各種アシル−ACPを基質とした反応を行うことにより、TE活性を測定することができる。
さらに本発明の形質転換体は、前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子に加えて、KASをコードする遺伝子の発現も促進されていることが好ましい。
KASは、アシル−ACPとマロニルACPとの縮合反応を触媒し、アシル−ACPの合成に関与するタンパク質である。そのため、ACP2遺伝子に加えてKASをコードする遺伝子(以下単に、「KAS遺伝子」ともいう)の発現を促進することで、脂質の製造に用いる形質転換体の脂質の生産性、特に脂肪酸の生産性を一層向上させることができる。
本発明で好ましく用いることができるKASは、β−ケトアシル−ACPシンターゼ活性(以下、「KAS活性」ともいう)を有するタンパク質であればよい。ここで「KAS活性」とは、アセチル−ACPやアシル−ACPとマロニルACPとの縮合反応を触媒する活性をいう。
KASはその基質特異性によって、KAS I、KAS II、KAS III、KAS IVに分類される。例えば、KASの1種であるKAS IVは主に炭素原子数6から14の伸長反応を触媒し、中鎖アシル−ACPを合成する。そのため、ACP2遺伝子に加えKAS IVをコードする遺伝子の発現を促進することで、中鎖脂肪酸の生産性を一層向上させることができる。
また、KASの1種であるKAS IIIは炭素数2のアセチル−ACP(又はアセチル−CoA)を炭素数4のβ−ケトアシル−ACPに伸長する反応を触媒し、短鎖又は中鎖脂肪酸の合成を促進する。そのため、ACP2遺伝子に加えKAS IIIをコードする遺伝子の発現を促進することによっても、中鎖脂肪酸の生産性を一層向上させることができる。
本発明で好ましく用いることができるKASは、通常のKASや、それらと機能的に均等なタンパク質から、宿主の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータ由来のKAS IV(以下、「NoKASIV」ともいう)(配列番号48、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号49)、ナンノクロロプシス・オキュラータ由来のKAS III(以下、「NoKASIII」ともいう)(配列番号50、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号51)等が挙げられる。また、これらと機能的に均等なタンパク質として、前記NoKASIVのアミノ酸配列との同一性が50%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上)のアミノ酸配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質も用いることができる。
さらに本発明の形質転換体は、前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子に加えて、アシル基転移酵素をコードする遺伝子の発現も促進されていることが好ましい。
「アシル基転移酵素」(以下、単に「AT」ともいう)とは、グリセロール3リン酸、リゾホスファチジン酸、ジアシルグリセロールなどのグリセロール化合物のアシル化を触媒するタンパク質である。遊離脂肪酸にCoAが結合した脂肪酸アシルCoA、又はアシルACPは、各種ATによってグリセロール骨格へと取り込まれ、グリセロール1分子に対して脂肪酸3分子がエステル結合してなるトリアシルグリセロール(以下、単に「TAG」ともいう)として蓄積される。
そのため、ACP2遺伝子の加えてATをコードする遺伝子(以下単に、「AT遺伝子」ともいう)の発現を促進することで、脂質の製造に用いる形質転換体の脂質の生産性、特に脂肪酸の生産性を一層向上させることができる。
ATは、基質である脂肪酸アシルCoA又は脂肪酸アシルACPを構成するアシル基(脂肪酸残基)の炭素原子数や不飽和結合数によって異なる反応特異性を示す複数のATが存在していることが知られている。よってATは、生体内での脂肪酸組成を決定する重要なファクターであると考えられている。また、AT遺伝子を元来有していない宿主を用いる場合、AT遺伝子の発現を促進させることが好ましい。また、中鎖脂肪酸アシルCoA又は中鎖脂肪酸アシルACPに対する基質特異性を有するAT遺伝子の発現を促進することにより、中鎖脂肪酸の生産性が向上する。このような遺伝子を導入することで、中鎖脂肪酸の生産性を一層向上させることができる。
本発明で用いることができるATは、アシルトランスフェラーゼ活性(以下、「AT活性」ともいう)を有するタンパク質であればよい。ここで「AT活性」とは、グリセロール3リン酸、リゾホスファチジン酸、ジアシルグリセロールなどのグリセロール化合物のアシル化を触媒する活性を意味する。
本発明で用いることができるATは、通常のATや、それらと機能的に均等なタンパク質から、宿主の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータ由来のAT(以下、「NoAT」ともいう)(配列番号52、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号53)等が挙げられる。また、これと機能的に均等なタンパク質として、前記NoKASIVのアミノ酸配列との同一性が50%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上)のアミノ酸配列からなり、かつAT活性を有するタンパク質も用いることができる。
さらに本発明の形質転換体は、前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子に加えて、アシル−CoAシンテターゼをコードする遺伝子の発現も促進されていることが好ましい。
「アシル−CoAシンテターゼ」(以下、単に「ACS」ともいう)とは、生合成された脂肪酸(遊離脂肪酸)にCoAを付加し、アシル−CoAの生成に関与するタンパク質である。
そのため、ACP2遺伝子の加えてACSをコードする遺伝子(以下単に、「ACS遺伝子」ともいう)の発現を促進することで、脂質の製造に用いる形質転換体の脂質の生産性、特に脂肪酸の生産性を一層向上させることができる。
本発明で用いることができるACSは、アシルCoAシンテターゼ活性(以下、「ACS活性」ともいう)を有するタンパク質であればよい。ここで「ACS活性」とは、遊離脂肪酸とCoAを結合させてアシル−CoAを生成する活性を意味する。
本発明で用いることができるACSは、通常のACSや、それらと機能的に均等なタンパク質から、宿主の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータ由来のACS(配列番号54、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号55;配列番号56、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号57;配列番号58、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号59)等が挙げられる。また、これらと機能的に均等なタンパク質として、前記ナンノクロロプシス・オキュラータ由来のACSのアミノ酸配列との同一性が50%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上)のアミノ酸配列からなり、かつACS活性を有するタンパク質も用いることができる。
前述のTE、KAS、AT及びACSのアミノ酸配列情報、並びにこれらをコードする遺伝子の配列情報等は、例えば、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information, NCBI)などから入手することができる。
また、TE遺伝子、KAS遺伝子、AT遺伝子、ACS遺伝子の発現を促進させた形質転換体は、常法により作製できる。例えば、前述のACP2遺伝子の発現を促進させる方法と同様、前記各種遺伝子を宿主に導入する方法、前記各種遺伝子をゲノム上に有する宿主において当該遺伝子の発現調節領域を改変する方法、などにより形質転換体を作製することができる。
本発明の形質転換体は、中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性が、前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子の発現が促進されていない宿主と比較して向上している。したがって、本発明の形質転換体を適切な条件で培養し、次いで得られた培養物又は生育物から中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質を回収すれば、中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質を効率よく製造することができる。
ここで「培養物」とは培養した後の培養液及び形質転換体をいい、「生育物」とは生育した後の形質転換体をいう。
本発明の形質転換体の培養条件は、宿主に応じて適宜選択することができ、その宿主に対して通常用いられる培養条件を使用できる。また脂肪酸の生産効率の点から、培地中に、例えば脂肪酸生合成系に関与する前駆物質としてグリセロール、酢酸、又はグルコース等を添加してもよい。
宿主として大腸菌を用いる場合、大腸菌の培養は、例えば、LB培地又はOvernight Express Instant TB Medium(Novagen社)で、30〜37℃、0.5〜1日間培養することができる。
また、宿主としてシロイヌナズナを用いる場合、シロイヌナズナの培養は、例えば、土壌で温度条件20〜25℃、白色光を連続照射又は明期16時間・暗期8時間等の光条件下で1〜2か月間栽培することができる。
宿主として藻類を用いる場合、培地は天然海水又は人工海水をベースにしたものを使用してもよいし、市販の培養培地を使用してもよい。具体的な培地としては、f/2培地、ESM培地、ダイゴIMK培地、L1培地、MNK培地、等を挙げることができる。なかでも、脂質の生産性向上及び栄養成分濃度の観点から、f/2培地、ESM培地、又はダイゴIMK培地が好ましく、f/2培地、又はダイゴIMK培地がより好ましく、f/2培地がさらに好ましい。藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上のため、培地に、窒素源、リン源、金属塩、ビタミン類、微量金属等を適宜添加することができる。
培地に接種する形質転換体の量は適宜選択することができ、生育性の点から、培地当り1%(vol/vol)以上が好ましい。また、その上限値は50%(vol/vol)以下が好ましく、10%(vol/vol)以下がより好ましい。接種する藻類の量の数値範囲は、1〜50%(vol/vol)が好ましく、1〜10%(vol/vol)がより好ましい。培養温度は、藻類の増殖に悪影響を与えない範囲であれば特に制限されないが、通常、5〜40℃の範囲である。藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上、及び生産コストの低減の観点から、10℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましい。またその上限値は35℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。培養温度の数値範囲は、好ましくは10〜35℃であり、より好ましくは15〜30℃である。
また藻類の培養は、光合成ができるよう光照射下で行うことが好ましい。光照射は、光合成が可能な条件であればよく、人工光でも太陽光でもよい。光照射時の照度としては、藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上の観点から、100ルクス以上が好ましく、300ルクス以上がより好ましく、1000ルクス以上がさらに好ましい。またその上限値は、50000ルクス以下が好ましく、10000ルクス以下がより好ましく、6000ルクス以下がさらに好ましい。光照射時の照度の数値範囲は、好ましくは100〜50000ルクスの範囲、より好ましくは300〜10000ルクスの範囲、さらに好ましくは1000〜6000ルクスの範囲である。また、光照射の間隔は、特に制限されないが、前記と同様の観点から、明暗周期で行うことが好ましく、24時間のうち明期は8時間以上が好ましく、10時間以上がより好ましい。またその上限値は、24時間以下が好ましく、18時間以下がより好ましい。明期の数値範囲は、好ましくは8〜24時間、より好ましくは10〜18時間、さらに好ましくは12時間である。
また藻類の培養は、光合成ができるように二酸化炭素を含む気体の存在下、又は炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩を含む培地で行うことが好ましい。気体中の二酸化炭素の濃度は特に限定されないが、生育促進、脂肪酸の生産性向上の観点から0.03%(大気条件と同程度)以上が好ましく、0.05%以上がより好ましく、0.1%以上がさらに好ましく、0.3%以上がよりさらに好ましい。またその上限値は、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましく、1%以下がよりさらに好ましい。二酸化炭素の濃度の数値範囲は、0.03〜10%が好ましく、0.05〜5%がより好ましく、0.1〜3%がさらに好ましく、0.3〜1%がよりさらに好ましい。炭酸塩の濃度は特に限定されないが、例えば炭酸水素ナトリウムを用いる場合、生育促進、脂肪酸の生産性向上の観点から0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。またその上限値は、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。炭酸水素ナトリウムの濃度の数値範囲は、0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜2質量%がより好ましく、0.1〜1質量%がさらに好ましい。
培養時間は特に限定されず、脂質を高濃度に蓄積する藻体が高い濃度で増殖できるように、長期間(例えば150日程度)行なってもよい。3日以上が好ましく、7日以上がより好ましい。またその上限値は、90日以下が好ましく、30日以下がより好ましい。培養期間の数値範囲は、好ましくは3〜90日間、より好ましくは3〜30日間、さらに好ましくは7〜30日間である。なお、培養は、通気攪拌培養、振とう培養又は静置培養のいずれでもよく、通気性の向上の観点から、通気攪拌培養が好ましい。
培養物又は生育物から脂質を採取する方法としては、常法から適宜選択することができる。例えば、前述の培養物又は生育物から、ろ過、遠心分離、細胞の破砕、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、クロロホルム/メタノール抽出法、ヘキサン抽出法、又はエタノール抽出法等により脂質成分を単離、回収することができる。より大規模な培養を行った場合は、培養物又は生育物より油分を圧搾又は抽出により回収後、脱ガム、脱酸、脱色、脱蝋、脱臭等の一般的な精製を行い、脂質を得ることができる。このように脂質成分を単離した後、単離した脂質を加水分解することで脂肪酸を得ることができる。脂質成分から脂肪酸を単離する方法としては、例えば、アルカリ溶液中で70℃程度の高温で処理をする方法、リパーゼ処理をする方法、又は高圧熱水を用いて分解する方法等が挙げられる。
本発明の製造方法において製造される脂質は、その利用性の点から、脂肪酸又は脂肪酸化合物を含んでいることが好ましく、脂肪酸又は脂肪酸エステル化合物を含んでいることがさらに好ましい。
脂質中に含まれる脂肪酸又は脂肪酸エステル化合物は、界面活性剤等への利用性の観点から、中鎖脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物が好ましく、炭素原子数が6以上14以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物がより好ましく、炭素原子数が8以上14以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物がさらに好ましく、炭素原子数が10以上14以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物がさらに好ましく、炭素原子数が10、12、若しくは14の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物がさらに好ましく、炭素原子数が10、12、若しくは14の飽和脂肪酸(カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸)又はその脂肪酸エステル化合物がさらに好ましく、炭素原子数が12の飽和脂肪酸(ラウリン酸)又はその脂肪酸エステル化合物がさらに好ましい。
脂肪酸エステル化合物は、生産性の点から、単純脂質又は複合脂質が好ましく、単純脂質がさらに好ましく、トリアシルグリセロールがさらにより好ましい。
本発明の製造方法により得られる脂質は、食用として用いる他、可塑剤、化粧品等の乳化剤、石鹸や洗剤等の洗浄剤、繊維処理剤、毛髪リンス剤、又は殺菌剤や防腐剤として利用することができる。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の脂質の製造方法、生産される脂肪酸の組成を改変する方法、形質転換体、及び形質転換体の作製方法を開示する。
<1>下記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子の発現を促進させた形質転換体を培養して脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質を生産させる、脂質の製造方法。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、好ましくは93%以上、より好ましくは94%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつACP活性を有するタンパク質。
<2>前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子の発現を促進させ、形質転換体の細胞内で生産される中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させる、脂質の製造方法。
<3>前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子の発現を促進させて、形質転換体の細胞内で生産される中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させ、生産される全脂肪酸中又は全脂質中の脂肪酸又は脂質の組成を改変する、脂質の組成の改変方法。
<4>前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子を宿主に導入して前記遺伝子の発現を促進させる、前記<1>〜<3>のいずれか1項記載の方法。
<5>前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子を導入した形質転換体を培養して脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質を生産させる、脂質の製造方法。
<6>前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子を導入した形質転換体を培養し、生産される中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させる、脂質の製造方法。
<7>前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子を導入した形質転換体を培養し、生産される中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させ、形質転換体の細胞内で生産される全脂肪酸中又は全脂質中の脂肪酸又は脂質の組成を改変する、脂質の組成の改変方法。
<8>前記タンパク質(B)が、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上36個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上24個以下、より好ましくは1個以上18個以下、より好ましくは1個以上12個以下、より好ましくは1個以上9個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上7個以下、より好ましくは1個以上6個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1個以上2個以下、より好ましくは1個、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<1>〜<7>のいずれか1項記載の方法。
<9>前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子が、下記DNA(a)又は(b)からなる遺伝子である、前記<1>〜<8>のいずれか1項記載の方法。
(a)配列番号2で表される塩基配列からなるDNA。
(b)前記DNA(a)の塩基配列と同一性が70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、好ましくは93%以上、より好ましくは94%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつACP活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<10>前記DNA(b)が、前記DNA(a)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上108個以下、より好ましくは1個以上90個以下、より好ましくは1個以上72個以下、より好ましくは1個以上54個以下、より好ましくは1個以上36個以下、より好ましくは1個以上29個以下、より好ましくは1個以上25個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上18個以下、より好ましくは1個以上14個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上7個以下、より好ましくは1個以上3個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつACP活性を有する前記タンパク質(A)若しくは(B)をコードするDNA、又は前記DNA(a)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつACP活性を有する前記タンパク質(A)若しくは(B)をコードするDNA、である、前記<9>項記載の方法。
<11>前記形質転換体において、TEをコードする遺伝子の発現を促進させた、前記<1>〜<10>のいずれか1項記載の方法。
<12>前記TEが、中鎖アシル−ACPに対する基質特異性を有するTEである、前記<11>項記載の方法。
<13>前記TEが、配列番号40、配列番号36、配列番号38、配列番号42、配列番号44若しくは配列番号46に示すアミノ酸配列からなるタンパク質、又は当該タンパク質のアミノ酸配列との同一性が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、のアミノ酸配列からなり、かつ中鎖アシル−ACPに対するTE活性を有するタンパク質である、前記<11>又は<12>項記載の方法。
<14>前記形質転換体において、ATをコードする遺伝子の発現を促進させた、前記<1>〜<13>のいずれか1項記載の方法。
<15>前記ATが、配列番号52に示すアミノ酸配列からなるタンパク質、又は当該タンパク質のアミノ酸配列との同一性が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、のアミノ酸配列からなり、かつAT活性を有するタンパク質である、前記<14>項記載の方法。
<16>前記形質転換体において、KAS及びACSからなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進させた、前記<1>〜<15>のいずれか1項記載の方法。
<17>前記KASが、配列番号48若しくは配列番号50に示すアミノ酸配列からなるタンパク質、又は当該タンパク質のアミノ酸配列との同一性が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、のアミノ酸配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質である、前記<16>項記載の方法。
<18>前記ACSが、配列番号54、配列番号56若しくは配列番号58に示すアミノ酸配列からなるタンパク質、又は当該タンパク質のアミノ酸配列との同一性が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、のアミノ酸配列からなり、かつACS活性を有するタンパク質、である前記<16>項記載の方法。
<19>前記形質転換体が微生物又は植物である、前記<1>〜<18>のいずれか1項記載の方法。
<20>前記微生物が微細藻類である、前記<19>項記載の方法。
<21>前記微細藻類がナンノクロロプシス属に属する藻類、好ましくはナンノクロロプシス・オキュラータ、である、前記<20>項記載の方法。
<22>前記微生物が大腸菌である、前記<19>項記載の方法。
<23>前記植物がシロイヌナズナである、前記<19>項記載の方法。
<24>前記脂質が、中鎖脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、好ましくは炭素原子数が6以上14以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素原子数が8以上14以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素原子数が10以上14以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素原子数が10、12、若しくは14の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素原子数が10、12、若しくは14の飽和脂肪酸(カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸)又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素原子数が12の飽和脂肪酸(ラウリン酸)又はその脂肪酸エステル化合物、を含む、前記<1>〜<23>のいずれか1項記載の方法。
<25>f/2培地を用いて前記形質転換体を培養する、前記<1>〜<24>のいずれか1項記載の方法。
<26>前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子の発現を宿主の細胞内で促進させた形質転換体。
<27>前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子、又は当該遺伝子を含有する組換えベクターを宿主に導入してなる、形質転換体。
<28>前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子、又は当該遺伝子を含有する組換えベクターを宿主に導入する、形質転換体の作製方法。
<29>前記タンパク質(B)が前記<8>項で規定するタンパク質である、前記<26>〜<28>のいずれか1項記載の形質転換体又はその作製方法。
<30>前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子が、前記DNA(a)又は(b)からなる遺伝子である、前記<26>〜<29>のいずれか1項記載の形質転換体又はその作製方法。
<31>前記DNA(b)が前記<10>項で規定するDNAである、前記<30>項に記載の形質転換体又はその作製方法。
<32>前記形質転換体において、TEをコードする遺伝子の発現を促進させた、前記<26>〜<31>のいずれか1項記載の形質転換体又はその作製方法。
<33>前記TEが、中鎖アシル−ACPに対する基質特異性を有するTEである、前記<32>項記載の形質転換体又はその作製方法。
<34>前記TEが、配列番号40、配列番号36、配列番号38、配列番号42、配列番号44若しくは配列番号46に示すアミノ酸配列からなるタンパク質、又は当該タンパク質のアミノ酸配列との同一性が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、のアミノ酸配列からなり、かつ中鎖アシル−ACPに対するTE活性を有するタンパク質、である、前記<32>又は<33>項記載の形質転換体又はその作製方法。
<35>前記形質転換体において、ATをコードする遺伝子の発現を促進させた、前記<26>〜<34>のいずれか1項記載の形質転換体又はその作製方法。
<36>前記ATが、配列番号52に示すアミノ酸配列からなるタンパク質、又は当該タンパク質のアミノ酸配列との同一性が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、のアミノ酸配列からなり、かつAT活性を有するタンパク質である、前記<35>項記載の形質転換体又はその作製方法。
<37>前記形質転換体において、KAS及びACSからなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進させた、前記<26>〜<36>のいずれか1項記載の形質転換体又はその作製方法。
<38>前記KASが、配列番号48若しくは配列番号50に示すアミノ酸配列からなるタンパク質、又は当該タンパク質のアミノ酸配列との同一性が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、のアミノ酸配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質である、前記<37>項記載の形質転換体又はその作製方法。
<39>前記ACSが、配列番号54、配列番号56若しくは配列番号58に示すアミノ酸配列からなるタンパク質、又は当該タンパク質のアミノ酸配列との同一性が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、のアミノ酸配列からなり、かつACS活性を有するタンパク質、である前記<37>項記載の形質転換体又はその作製方法。
<40>前記形質転換体又は宿主が微生物又は植物である、前記<26>〜<39>のいずれか1項記載の形質転換体又はその作製方法。
<41>前記微生物が微細藻類である、前記<40>項記載の形質転換体又はその作製方法。
<42>前記微細藻類がナンノクロロプシス属に属する藻類、好ましくはナンノクロロプシス・オキュラータ、である、前記<41>項記載の形質転換体又はその作製方法。
<43>前記微生物が大腸菌である、前記<40>項記載の形質転換体又はその作製方法。
<44>前記植物がシロイヌナズナである、前記<40>項記載の形質転換体又はその作製方法。
<45>脂質を製造するための、前記<26>〜<44>のいずれか1項記載の形質転換体、又は形質転換体の作製方法により得られた形質転換体の使用。
<46>前記脂質が、中鎖脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、好ましくは炭素原子数が6以上14以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素原子数が8以上14以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素原子数が10以上14以下の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素原子数が10、12、若しくは14の脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素原子数が10、12、若しくは14の飽和脂肪酸(カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸)又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくは炭素原子数が12の飽和脂肪酸(ラウリン酸)又はその脂肪酸エステル化合物、を含む、前記<45>項記載の使用。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。ここで、本実施例で用いるプライマーの塩基配列を表1〜3に示す。
Figure 2017209064
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実施例1 ナンノクロロプシス・オキュラータ由来ACP遺伝子をナンノクロロプシス・オキュラータへ導入した形質転換体の作製、及び形質転換体による脂質の製造
(1)ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドの構築
ゼオシン耐性遺伝子(配列番号3)、及び文献(Randor Radakovits,et al.,Nature Communications,DOI:10.1038/ncomms1688,2012)に記載されている、ナンノクロロプシス・ガディタナCCMP526株由来チューブリンプロモーター配列(配列番号4)を人工合成した。
合成したDNA断片を鋳型として、表1に示すプライマー番号5及びプライマー番号6のプライマー対、並びにプライマー番号7及びプライマー番号8のプライマー対をそれぞれ用いてPCRを行い、ゼオシン耐性遺伝子及びチューブリンプロモーター配列をそれぞれ増幅した。
また、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株(独立行政法人国立環境研究所(NIES)より入手)のゲノムを鋳型として、表1に示すプライマー番号9及びプライマー番号10のプライマー対を用いてPCRを行い、ヒートショックプロテインターミネーター配列(配列番号11)を増幅した。
さらに、プラスミドベクターpUC19(タカラバイオ社製)を鋳型として、表1に示すプライマー番号12及びプライマー番号13のプライマー対を用いてPCRを行い、プラスミドベクターpUC19を増幅した。
これら4つの増幅断片をそれぞれ制限酵素DpnI(東洋紡株式会社製)にて処理し、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。その後、得られた4つの断片をIn-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて融合し、ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドを構築した。
なお、本発現プラスミドは、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順に連結したインサート配列と、pUC19ベクター配列からなる。
(2)ナンノクロロプシス・オキュラータ由来ACP遺伝子の取得、及びACP遺伝子発現用プラスミドの構築
ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株の全RNAを抽出し、SuperScript(商標)III First-Strand Synthesis SuperMix for qRT-PCR(invitrogen社製)を用いて逆転写を行ってcDNAを得た。このcDNAを鋳型として、表1に示すプライマー番号14及びプライマー番号15のプライマー対をそれぞれ用いてPCRを行い、配列番号2の塩基配列からなるNoACP2遺伝子断片を取得した。
また、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株のゲノムを鋳型として、表1に示すプライマー番号16及びプライマー番号17のプライマー対、並びにプライマー番号18及びプライマー番号19のプライマー対をそれぞれ用いてPCRを行い、LDSPプロモーター配列(配列番号20)及びVCP1ターミネーター配列(配列番号21)を取得した。
さらに、前記ゼオシン耐性遺伝子発現プラスミドを鋳型として、表1に示すプライマー番号22及びプライマー番号13のプライマー対を用いてPCRを行い、ゼオシン耐性遺伝子発現カセット(チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列)及びpUC19配列からなる断片を増幅した。
NoACP2遺伝子断片を、LDSPプロモーター断片、VCP1ターミネーター断片、ゼオシン耐性遺伝子発現カセット及びpUC19配列からなる断片と混和した。そして、これら4つの増幅断片を、前述の方法と同様の方法にて融合し、NoACP2遺伝子発現用プラスミドを構築した。
なお、本発現プラスミドはLDSPプロモーター配列、NoACP2遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列と、pUC19ベクター配列からなる。
(3)ACP遺伝子発現用カセットのナンノクロロプシス・オキュラータへの導入
前記NoACP2遺伝子発現プラスミドを鋳型として、表1に示すプライマー番号10及びプライマー番号16のプライマー対を用いてPCRを行い、NoACP2遺伝子発現カセット(LDSPプロモーター配列、NoACP2遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列からなるDNA断片)を増幅した。
増幅した各DNA断片を、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。なお、精製の際の溶出には、キットに含まれる溶出バッファーではなく、滅菌水を用いた。
約1×109細胞のナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株を、384mMのソルビトール溶液で洗浄して塩を完全に除去し、形質転換の宿主細胞として用いた。上記で増幅したNoACP2遺伝子発現カセット約500ngを宿主細胞と混和し、50μF、500Ω、2,200v/2mmの条件でエレクトロポレーションを行った。
f/2液体培地(NaNO3 75mg、NaH2PO4・2H2O 6mg、ビタミンB12 0.5μg、ビオチン 0.5μg、チアミン 100μg、Na2SiO3・9H2O 10mg、Na2EDTA・2H2O 4.4mg、FeCl3・6H2O 3.16mg、FeCl3・6H2O 12μg、ZnSO4・7H2O 21μg、MnCl2・4H2O 180μg、CuSO4・5H2O 7μg、Na2MoO4・2H2O 7μg/人工海水1L)にて24時間回復培養を行った。その後、2μg/mLのゼオシン含有f/2寒天培地に塗布し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2〜3週間培養した。得られたコロニーの中から、NoACP2遺伝子発現カセットを含むナンノクロロプシス・オキュラータ株をPCRにより選抜した。
(4)形質転換体による脂肪酸の生産
選抜した株を、f/2培地の窒素濃度を15倍、リン濃度を5倍に増強した培地(以下、「N15P5培地」という)20mLに播種し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて3〜4週間振盪培養し、前培養液とした。それぞれ独立した2ラインの形質転換体の前培養液2mLをN15P5培地18mLに植継ぎ、25℃、0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて12日間振盪培養した。なお、陰性対照として、野生株であるナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株についても同様に実験を行った。
(5)脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析
培養液1mLに、内部標準として1mg/mLの7-ペンタデカノン(メタノール溶液)50μLを添加後、クロロホルム0.5mL、及びメタノール1mLを培養液に添加して激しく攪拌し、10分間放置した。その後さらに、クロロホルム0.5mL及び1.5%KCl 0.5mLを添加して攪拌し、3,000rpmにて5分間遠心分離を行い、パスツールピペットにてクロロホルム層(下層)を回収した。
得られたクロロホルム層に窒素ガスを吹き付けて乾固し、0.5NのKOHメタノール溶液を0.7mL添加し、80℃にて30分間恒温した。さらに、14%三フッ化ホウ素溶液(SIGMA社製)1mLを添加し、80℃にて30分間恒温した。その後、ヘキサン0.5mL、及び飽和食塩水1mLを添加して激しく撹拌し、室温にて10分間放置し、上層であるヘキサン層を回収して脂肪酸メチルエステルを得た。
下記に示す測定条件下で、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィー解析に供した。
<ガスクロマトグラフィー条件>
分析装置:7890A(Agilent technology)
キャピラリーカラム:DB-1 MS(30m×200μm×0.25μm、J&W Scientific社製)
移動相:高純度ヘリウム
オーブン温度:150℃保持0.5分→150〜220℃(40℃/分昇温)→220〜320℃(20℃/分昇温)→320℃保持2分(ポストラン2分)
注入口温度:300℃
注入方法:スプリット注入(スプリット比:75:1)
注入量:1μL
洗浄バイアル:メタノール・クロロホルム
検出方法:FID
検出器温度:300℃
脂肪酸メチルエステルの同定は、同サンプルを同条件でガスクロマトグラフ質量分析解析に供することにより行った。
ガスクロマトグラフィー解析により得られた波形データのピーク面積より、各脂肪酸のメチルエステル量を定量した。各ピーク面積を、内部標準である7-ペンタデカノンのピーク面積と比較することで試料間の補正を行い、培養液1Lあたりの各脂肪酸量を算出した。さらに、各脂肪酸量の総和を総脂肪酸量とし、総脂肪酸量に占める各脂肪酸量の割合を算出した。
その結果を表4に示す。なお、以下の表において、「TFA」は総脂肪酸量を、「脂肪酸組成(%TFA)」は総脂肪酸の重量に対する各脂肪酸の重量の割合を示す。また、「n」は0〜5の整数であり、例えば「C18:n」と記載した場合には、組成がC18:0、C18:1、C18:2、C18:3、C18:4及びC18:5の脂肪酸の総和を表す。
Figure 2017209064
表4に示すように、NoACP2遺伝子発現カセットを導入した形質転換体(NoACP2遺伝子導入株)は、野生株(NIES2145)と比較して、脂肪酸組成に大きな変化が確認できた。具体的には、長鎖脂肪酸、特にC16:0(パルミチン酸)及びC18:nの割合が大きく減少した。そして、中鎖脂肪酸(C12:0(ラウリン酸)及びC14:0(ミリスチン酸))の割合が顕著に増加した。
以上の結果から、NoACP2遺伝子は中鎖脂肪酸の生産性の向上に好適に用いることができるということが明らかになった。
実施例2 NoACP2遺伝子及びNoTE遺伝子をナンノクロロプシス・オキュラータに導入した形質転換体の作製、及び形質転換体による脂肪酸の生産
(1)NoTE発現用プラスミドの構築
実施例1で作製したナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株由来のcDNAを鋳型として、表2に示すプライマー番号23及びプライマー番号24のプライマー対、並びにプライマー番号25及びプライマー番号26のプライマー対を用いてPCRを行い、配列番号27の262位〜864位までの塩基配列からなるアシル−ACPチオエステラーゼ遺伝子断片(以下、「NoTE遺伝子断片」ともいう)、及び配列番号28の塩基配列からなるVCP1葉緑体移行シグナル断片を取得した。
これらの増幅断片を、実施例1と同様の方法で作製したLDSPプロモーター断片、VCP1ターミネーター断片、ゼオシン耐性遺伝子発現用カセット、及びpUC19配列からなる断片と混和し、実施例1と同様の方法にて融合し、NoTE遺伝子発現用プラスミドを構築した。なお、本発現プラスミドはLDSPプロモーター配列、VCP1葉緑体移行シグナル配列、NoTE遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列と、pUC19ベクター配列からなる。
作製したNoTE遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、表2に示すプライマー番号29及びプライマー番号30のプライマー対を用いてPCRを行い、増幅断片を実施例1と同様の方法にて精製及び融合し、NoTE改変体(以下、「NoTE(V204W)」ともいう)遺伝子発現用プラスミドを構築した。なお、本発現用プラスミドでは、配列番号36に示すアミノ酸配列からなるNoTE(配列番号27に示す塩基配列からなるNoTE遺伝子がコードするNoTE)のうち、204位のバリン(V)がトリプトファン(W)に置換されている。
(2)NoTE発現用プラスミドのナンノクロロプシス・オキュラータへの導入
構築したV204W遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、表1に示すプライマー番号10及びプライマー番号16のプライマー対を用いたPCRを行い、NoTE(V204W)遺伝子発現カセット(LDSPプロモーター配列、VCP1葉緑体移行シグナル配列、NoTE(V204W)遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列からなるDNA断片)を増幅した。この増幅断片を、実施例1と同様の方法にて精製し、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株に形質転換した。以下、NoTE(V204W)遺伝子を導入した株を「NoTE(V204W)株」ともいう。
(3)NoTE(V204W)株へのNoACP2遺伝子の導入
実施例1で構築したNoACP2遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、表2に示すプライマー番号31及びプライマー番号32のプライマー対を用いてPCRを行った。また、人工合成したパロモマイシン耐性遺伝子(配列番号33)を鋳型として、表2に示すプライマー番号34及びプライマー番号35のプライマー対を用いてPCRを行った。
これら2つの増幅断片を実施例1と同様の方法にて融合し、NoACP2遺伝子発現用プラスミド(パロモマイシン耐性)を構築した。なお、本発現用プラスミドは、LDSPプロモーター配列、NoACP2遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、パロモマイシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列と、pUC19ベクター配列からなる。
得られた前記NoACP2遺伝子発現用プラスミド(パロモマイシン耐性)を鋳型として、表1に示すプライマー番号10及びプライマー番号16のプライマー対を用いてPCRを行い、NoACP2遺伝子発現カセット(LDSPプロモーター配列、NoACP2遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、パロモマイシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列からなるDNA断片)を増幅した。
得られた増幅断片を実施例1と同様の方法にて精製し、前記NoTE(V204W)株に、精製した断片をエレクトロポレーションにより導入した。実施例1と同様の方法にて回復培養を行った後、2μg/mLのゼオシン及び100μg/mLのパロモマイシン含有f/2寒天培地に塗布し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2〜3週間培養した。得られたコロニーの中から、NoACP2遺伝子発現カセットを含むナンノクロロプシス・オキュラータ株をPCRにより選抜した。
(4)形質転換体による脂肪酸の生産、脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析
選抜した株を、N15P5培地20mLに播種し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて3〜4週間振盪培養し、前培養液とした。前培養液2mLをN15P5培地18mLに植継ぎ、25℃、0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて14日間振盪培養した。なお、陰性対照として、NoTE(V204W)株についても同様の実験を行った。
得られた培養液を用いて、実施例1と同様の方法にて脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析を行った。その結果を表5に示す。
Figure 2017209064
表5に示すように、NoTE(V204W)株にNoACP2遺伝子を導入した形質転換体(NoTE(V204W)+NoACP2)でも、NoTE(V204W)株と比較して、脂肪酸組成に大きな変化が確認できた。具体的には、C16:0(パルミチン酸)やC16:1(パルミトレイン酸)などの長鎖脂肪酸の割合が大きく減少した。そして、中鎖脂肪酸(C10:0(カプリン酸)及びC12:0(ラウリン酸))の割合が顕著に増加した。
このことから、NoACP2遺伝子は、中鎖アシル−ACPに対する基質特異性を有するTEをコードする遺伝子と併用することで、中鎖脂肪酸の生産性をさらに向上させることができる。
実施例3 NoACP2遺伝子及びNoAT遺伝子をナンノクロロプシス・オキュラータに導入した形質転換体の作製、及び形質転換体による脂肪酸の生産
(1)NoAT発現用プラスミドの構築
実施例1で作製したナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株由来のcDNAを鋳型として、表3に示すプライマー番号60及びプライマー番号61のプライマー対を用いてPCRを行い、配列番号53の塩基配列からなるアシルトランスフェラーゼ遺伝子断片(以下、「NoAT遺伝子断片」ともいう)を取得した。
この増幅断片を、実施例1と同様の方法で作製したLDSPプロモーター断片、VCP1ターミネーター断片、ゼオシン耐性遺伝子発現用カセット、及びpUC19配列からなる断片と混和し、実施例1と同様の方法にて融合し、NoAT遺伝子発現用プラスミドを構築した。なお、本発現プラスミドはLDSPプロモーター配列、NoAT遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列と、pUC19ベクター配列からなる。
(2)NoAT発現用プラスミドのナンノクロロプシス・オキュラータへの導入
構築したNoAT遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、表1に示すプライマー番号10及びプライマー番号16のプライマー対を用いたPCRを行い、NoAT遺伝子発現カセット(LDSPプロモーター配列、NoAT遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列からなるDNA断片)を増幅した。この増幅断片を、実施例1と同様の方法にて精製し、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株に形質転換した。以下、NoAT遺伝子を導入した株を「NoAT株」ともいう。
(3)NoAT株へのNoACP2遺伝子の導入
実施例2で構築したNoACP2遺伝子発現用プラスミド(パロモマイシン耐性)を鋳型として、表1に示すプライマー番号10及びプライマー番号16のプライマー対を用いてPCRを行い、NoACP2遺伝子発現カセット(LDSPプロモーター配列、NoACP2遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、パロモマイシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列からなるDNA断片)を増幅した。
得られた増幅断片を実施例1と同様の方法にて精製し、前記NoAT株に、精製した断片をエレクトロポレーションにより導入した。実施例1と同様の方法にて回復培養を行った後、2μg/mLのゼオシン及び100μg/mLのパロモマイシン含有f/2寒天培地に塗布し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2〜3週間培養した。得られたコロニーの中から、NoACP2遺伝子発現カセットを含むナンノクロロプシス・オキュラータ株をPCRにより選抜した。
(4)形質転換体による脂肪酸の生産、脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析
選抜した株(それぞれ独立した3ライン)を、f/2培地の窒素濃度を5倍、リン濃度を5倍に増強した培地(以下、「N5P5培地」という)に播種し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて3週間振盪培養し、前培養液とした。前培養液1mLをN5P5培地19mLに植継ぎ、25℃、0.3%CO2雰囲気下、12h/12h明暗条件にて14日間振盪培養した。なお、陰性対照として、NoAT株及びNIES2145株、並びに参考例として、実施例1で作製したNoACP2遺伝子導入株(以下、「NoACP2株」ともいう)についても、同様の実験を行った。
得られた培養液を用いて、実施例1と同様の方法にて脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析を行った。その結果を表6に示す。
Figure 2017209064
表6に示すように、NoAT株にNoACP2遺伝子を導入した形質転換体(NoAT+NoACP2)でも、NoAT株と比較して、脂肪酸組成に大きな変化が確認できた。具体的には、C16:0(パルミチン酸)などの長鎖脂肪酸の割合が大きく減少した。そして、中鎖脂肪酸(C10:0(カプリン酸)、C12:0(ラウリン酸)及びC14:0(ミリスチン酸))の割合が顕著に増加した。
このことから、NoACP2遺伝子は、中鎖アシル基に対する基質特異性を有するATをコードする遺伝子と併用することで、中鎖脂肪酸の生産性をさらに向上させることができる。
以上のように、本発明で規定するACP2遺伝子の発現を促進させることで、中鎖脂肪酸の生産性を向上させた形質転換体を作製することができる。そしてこの形質転換体を培養することで、中鎖脂肪酸の生産性を向上させることができる。

Claims (20)

  1. 下記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子の発現を促進させた形質転換体を培養して脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質を生産させる、脂質の製造方法。
    (A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシルキャリアープロテイン活性を有するタンパク質。
  2. 下記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子の発現を促進させ、形質転換体の細胞内で生産される中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させる、脂質の製造方法。
    (A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシルキャリアープロテイン活性を有するタンパク質。
  3. 下記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子の発現を促進させて、形質転換体の細胞内で生産される中鎖脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させ、生産される全脂肪酸中又は全脂質中の脂肪酸又は脂質の組成を改変する、脂質の組成の改変方法。
    (A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシルキャリアープロテイン活性を有するタンパク質。
  4. 前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子を宿主に導入して前記遺伝子の発現を促進させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子が、下記DNA(a)又は(b)からなる遺伝子である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
    (a)配列番号2で表される塩基配列からなるDNA。
    (b)前記DNA(a)の塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列からなり、かつアシルキャリアープロテイン活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  6. 前記形質転換体において、アシル−ACPチオエステラーゼをコードする遺伝子の発現を促進させた、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  7. 前記形質転換体において、アシル基転移酵素をコードする遺伝子の発現を促進させた、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
  8. 前記形質転換体が微生物である、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
  9. 前記微生物が微細藻類である、請求項8記載の方法。
  10. 前記微細藻類がナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類である、請求項9記載の方法。
  11. 前記脂質が中鎖脂肪酸又はその脂肪酸エステル化合物を含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
  12. 前記脂質がラウリン酸又はその脂肪酸エステル化合物を含む、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
  13. 下記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子の発現を促進させた形質転換体。
    (A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシルキャリアープロテイン活性を有するタンパク質。
  14. 下記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子、又は当該遺伝子を含有する組換えベクターを宿主に導入してなる形質転換体。
    (A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシルキャリアープロテイン活性を有するタンパク質。
  15. 前記タンパク質(A)又は(B)をコードする遺伝子が、下記DNA(a)又は(b)からなる遺伝子である、請求項13又は14記載の形質転換体。
    (a)配列番号2で表される塩基配列からなるDNA。
    (b)前記DNA(a)の塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列からなり、かつアシルキャリアープロテイン活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  16. アシル−ACPチオエステラーゼをコードする遺伝子の発現を促進させた、請求項13〜15のいずれか1項記載の形質転換体。
  17. アシル基転移酵素をコードする遺伝子の発現を促進させた、請求項13〜16のいずれか1項記載の形質転換体。
  18. 前記形質転換体が微生物である、請求項13〜17のいずれか1項記載の形質転換体。
  19. 前記微生物が微細藻類である、請求項18記載の形質転換体。
  20. 前記微細藻類がナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類である、請求項19記載の形質転換体。




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