以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1には、本発明の一実施形態である電磁式アクチュエータ10を備えた、自動車用の能動型制振装置12が示されている。かかる能動型制振装置12は、主振動系となる制振対象部材である自動車ボデーなどに固定的に取り付けられるアウタハウジング部材14に対して、マス部材16が収容状態で配設されて、弾性部材としての一対の板ばね18,20で弾性連結されることにより、副振動系となるマス−バネ系が構成されている。また、アウタハウジング部材14には固定子22が取り付けられている一方、マス部材16がインナ軸部材24と可動子26とを含んで構成されているとともに、インナ軸部材24には磁石部材としての可動子26が取り付けられており、固定子22(アウタハウジング部材14)に対して可動子26(インナ軸部材24)が、軸方向に相対変位可能な状態で内外挿配置されている。以下の説明において、特に記載がない限り、上下方向および軸方向とは、電磁式アクチュエータ10の駆動作用方向であって、能動型制振装置12による能動的制振効果が発揮される振動の入力方向となる、図1中の上下方向を言う。
より詳細には、アウタハウジング部材14は、大径の略円筒形状とされたアウタ筒部材28を備えている。アウタ筒部材28の下側の開口縁部には下方に延びるかしめ固定部29が設けられており、カップ形状の底金具30の開口縁部がかしめ固定部29においてかしめ固定されることによって、アウタ筒部材28の下側開口部に対して底金具30が組み付けられている。また、アウタ筒部材28の上側の開口部には、厚肉円板形状の蓋部材32が嵌着固定されている。
このようにして、アウタ筒部材28の軸方向両側の開口部が、底金具30と蓋部材32で覆蓋されることにより、収容領域を内部に備えたアウタハウジング部材14が構成されている。
また、アウタ筒部材28の内周面には、固定子22が取り付けられており、アウタハウジング部材14に収容されている。固定子22は、全体として厚肉の略円筒形状を呈しており、アウタ筒部材28における軸方向の略中央部分に位置して内周面に沿って固定的に組み付けられている。
詳細には、固定子22は、上下二段に配されたコイル部材34,34を備えている。コイル部材34は、樹脂製のボビン36に導電性の金属線材を巻回してなるコイル38に対して、アウタヨーク40が組み付けられた構造とされている。
アウタヨーク40は、鉄などの強磁性体で形成されており、コイル38を軸方向外面から外周面にわたって覆うように重ね合わされた第一のヨーク42と、コイル38の軸方向内面を覆うように重ね合わされた第二のヨーク44とを備えている。
また、コイル38の軸方向両面に重ね合わされた第一のヨーク42と第二のヨーク44の各内周縁部は、コイル38の内周面を覆うように上下両方からそれぞれ所定長さで軸方向に延びている。そして、コイル38の内周面上で軸方向の上下から接近して配された第一のヨーク42と第二のヨーク44の各端部は、軸方向に所定距離を隔てて対向せしめられている。
これにより、上下の各コイル38の周囲には、コイル38への通電によって生じる磁束を導く磁路が、第一及び第二のヨーク42,44を含むアウタヨーク40によって形成されている。また、かかる磁路上には、コイル38の内周面側に位置して、第一のヨーク42と第二のヨーク44の軸方向対向面間に磁気ギャップ46が形成されている。かかる磁気ギャップ46は、略一定の間隔で周方向の全周に亘って連続して広がっている。
そして、外部からコイル38,38に給電されることにより、コイル38,38の周囲に磁束が発生すると共に、発生した磁束がアウタヨーク40,40で構成された磁路によって導かれて、磁気ギャップ46,46の軸方向両側に磁極が形成されるようになっている。
なお、本実施形態では、上側のコイル部材34のコイル38と、下側のコイル部材34のコイル38は、巻線材がボビン36,36に対して互いに逆向きに巻回されており、通電によって逆向きの磁束を生じるようになっている。上下のコイル部材のコイルは、相互に連続した線材で構成されていても良い。
また、本実施形態では、上下のコイル部材34,34の巻線材に給電するためのリード線が、コイル部材34,34から上方に延びており、蓋部材32の内部に埋設状態で設けられた給電端子48に接続されている。蓋部材32には、外周側に突出する接続コネクタ50が一体形成されており、この接続コネクタ50に対して外部から給電コネクタが連結されることにより、接続コネクタ50内の給電端子48に対して外部の給電線が導通されるようになっている。
更にまた、固定子22の軸方向両側には、それぞれ薄肉の円板形状を有する上下一対の板ばね18,20が配設されている。板ばね18,20の軸方向内方に位置する上下のコイル部材34,34には、アウタヨーク40,40における各軸方向外側の外周縁部から軸方向外方に突出する環状の支持突部52,52が形成されている。そして、これら支持突部52,52に対して、板ばね18,20の外周縁部が重ね合わされることにより、アウタヨーク40,40から軸方向外方へ離れて、両側の板ばね18,20が軸直角方向に広がって配設されている。
また、上側の板ばね18の軸方向外側には、アウタ筒部材28に内挿された円環板形状の上側押え金具54が重ね合わされている。上側押え金具54は、アウタ筒部材28の周壁に設けられた切起し片56に係止されて軸方向で位置決めされており、板ばね18の外周縁部が、コイル部材34の支持突部52と上側押え金具54との間で挟まれて、アウタ筒部材28に対して固定されている。
また一方、下側の板ばね20の軸方向外側には、アウタ筒部材28に内挿されたスペーサリング58を介して、略円環板形状の下側押え金具60が重ね合わされている。下側押え金具60は、アウタ筒部材28と底金具30とのかしめ固定部位で位置決め支持されている。これにより、板ばね20の外周縁部が、コイル部材34の支持突部52と下側押え金具60との間で、スペーサリング58を介して挟まれて、アウタ筒部材28に対して固定されている。
なお、下側押え金具60の表面には被着ゴム層62が加硫接着されている。この被着ゴム層62により、アウタ筒部材28と底金具30とのかしめ固定部位がシールされていると共に、スペーサリング58との間に介在されて、上側押え金具54と下側押え金具60との間で挟持される固定子22の軸方向寸法誤差が吸収されるようになっている。
一方、インナ軸部材24は、アウタハウジング部材14の中心軸上を同軸的に上下方向へストレートに延びる略ロッド形状とされている。そして、アウタハウジング部材14に組み付けられた固定子22で囲繞された領域に配される可動子26が、インナ軸部材24に対して固定的に組み付けられている。
可動子26は、永久磁石64の上下両側に一対の環状ヨーク部材としての上ヨーク66と下ヨーク68を重ね合わせた構造のアーマチャとされている。また、上下ヨーク66,68における軸方向の各外側には、板ばね18,20が配されている。
永久磁石64と上下ヨーク66,68および上下の板ばね18,20には、何れも中央に貫通孔70a,70b,70c,70dが形成されている。そして、かかる貫通孔70a,70b,70c,70dに対してインナ軸部材24が挿通されている。換言すれば、インナ軸部材24の外周上で、環状の永久磁石64の軸方向両側に環状の上下ヨーク66,68が重ね合わされることで可動子26(磁石部材)が構成されている。
また、インナ軸部材24には、上下両端部分に雄ねじ部が形成されており、螺着された上下の締付ナット72,72により、永久磁石64と上下ヨーク66,68および上下の板ばね18,20に対して重ね合わせ方向の締付力が及ぼされている。即ち、本実施形態では、インナ軸部材24に螺着された上下の締付ナット72,72によって、可動子26をインナ軸部材24へ固定する締結部材が構成されている。
更にまた、上下の締付ナット72,72によって、上下の板ばね18,20の内周縁部が上下ヨーク66,68の各軸方向外側面に対して固定されている。これにより、インナ軸部材24に固定された可動子26が、軸方向両側部分において、軸直角方向に広がる板ばね18,20を介して、アウタハウジング部材14に対して弾性的に連結支持されている。なお、上下の板ばね18,20は、例えば径方向中間部分を渦巻き状に延びるスリットが形成されることにより、軸方向のばね特性が調節されている。
ところで、本実施形態では、インナ軸部材24における下側の雄ねじ部が、可動子26よりも下方へ延び出している。そして、下方に延び出したインナ軸部材24の下端部分に対して、付加ばね部材74と付加マス部材76が取り付けられている。
付加ばね部材74は、中心孔78を有する小径ブロック状のインナ固定金具80と、大径筒状のアウタ固定金具82とが、径方向に延びる複数のスポーク状部分を備えた連結ゴム弾性体84によって弾性連結された構造を有している。
また、付加マス部材76は、中心軸上に装着孔86が形成された円環ブロック形状を有しており、装着孔86の上側開口縁部には、内周に突出する環状固定片88が形成された構造を有している。
そして、付加ばね部材74のインナ固定金具80と付加マス部材76が、インナ軸部材24の下側の雄ねじ部に対して外挿されて重ね合わされており、インナ軸部材24に螺着された締付ナット72と固定ナット90との間で締め付けられることにより、インナ軸部材24の下端に固定されている。
なお、付加マス部材76の周囲には、底金具30や連結ゴム弾性体84等の他部材との間に所定の隙間が設けられており、それによって、付加マス部材76が、インナ軸部材24によって連結された可動子26などと一体的に、軸方向で往復移動可能とされている。
また、付加ばね部材74と付加マス部材76が内部に配設された底金具30には、開口部から下方に向かって延びる筒状のストッパ金具92が設けられている。ストッパ金具92の上端縁部は外フランジ状に広がっており、アウタ筒部材28のかしめ固定部29に対して底金具30および下側押え金具60と共にかしめ固定されている。
そして、かかるストッパ金具92に対して、付加ばね部材74のアウタ固定金具82が圧入固定されている。これにより、インナ軸部材24とアウタハウジング部材14とが、付加ばね部材74の連結ゴム弾性体84によって弾性的に連結されている。
更にまた、ストッパ金具92の下端部には、内周側に突出する当接部94が形成されている。一方、付加マス部材76の上端面には、プレート状の当接金具96が固着されており、付加マス部材76と当接金具96との重ね合わせ面間には、外周面上に開口して周方向に延びるストッパ用溝98が形成されている。そして、このストッパ用溝98に対して、ストッパ金具92の当接部94が、所定の隙間をもって差し入れられている。
これにより、付加マス部材76が底金具30内で軸方向や軸直角方向に大きく変位した際に、ストッパ用溝98内でストッパ金具92の当接部94が打ち当たって、付加マス部材76の変位量を制限するストッパ機構が構成されている。なお、ストッパ金具92の当接部94におけるストッパ用溝98内への打ち当り面には緩衝部材100が設けられている。
さらに、図2にも示されているように、可動子26を構成する永久磁石64は、上下両面が軸直角方向に広がる平面とされた略円環形状を有しており、軸方向に着磁されることで上下両面にN/Sの各一方の磁極が形成されている。なお、永久磁石64は、フェライト系磁石やアルニコ系磁石なども採用可能であるが、好適には希土類コバルト系磁石が採用される。
上下ヨーク66,68は、磁路を形成する鉄などの強磁性体で形成されており、本実施形態では、互いに同じ部材が用いられている。また、上下ヨーク66,68は、永久磁石64への重ね合わせ面が、永久磁石64に対応した平坦面形状とされており、永久磁石64の軸方向の両端面に対して、実質的に全面に亘る広い面で略密接状態に重ね合わされるようになっている。
さらに、上下ヨーク66,68の貫通孔70a,70bは、永久磁石64と反対側に位置する軸方向外側部分において、略一定の内径寸法の円筒形状をもって軸方向所定長さで延びる当接内周面102a,102bを有している。また、貫通孔70a,70bの内周面のうち、当接内周面102a,102bよりも永久磁石64に近い部分は、永久磁石64に向かって次第に拡径する円形のテーパ状内周面104a,104bとされている。かかるテーパ状内周面104a,104bの最大径は、永久磁石64側の開口端に位置しており、永久磁石64の内径寸法と略同じとされている。
また、上下ヨーク66,68は、外径寸法が軸方向外方に向かって次第に小径となる外周面形状とされており、即ち上下ヨーク66,68のそれぞれが軸方向外方に突出する周壁形状とされている。これにより、上下ヨーク66,68が軸方向に変位せしめられた際の板ばね18,20への干渉が回避されるようになっている。なお、特に本実施形態では、軸方向外方に向かって段階的に外径寸法が小さくされた階段状の外周面形状とされている。
また、上下ヨーク66,68の外周面のうち、永久磁石64側の軸方向端部は、略一定の外径寸法で軸方向に延びる円筒形状の磁極形成面106,108とされている。磁極形成面106,108の外径寸法は、磁極を効率的に形成し得るように、永久磁石64の外径寸法よりも僅かに大きくされていることが望ましい。
一方、永久磁石64と上下ヨーク66,68に挿通されるインナ軸部材24は、外径寸法が軸方向で異ならされた外周面を有している。特に永久磁石64が装着される軸方向中央部分の外径寸法D1(図2参照)が、上下ヨーク66,68が装着される軸方向両側部分の外径寸法D2(図2参照)よりも大きくされることで、軸方向中間部分が膨らんだ形状とされている。なお、インナ軸部材は、永久磁石64の磁束の短絡を防止するためにアルミニウム合金やステンレスなどの非磁性材で形成されており、上記材質による一体成形品とされることが好適である。
具体的には、インナ軸部材24は、永久磁石64が外挿される軸方向中央部分が、永久磁石64の内径寸法と同じか僅かに小さい外径寸法で軸方向に延びる大径部としての中央当接部110とされており、当該中央当接部110の外周面が円筒形状とされている。そして、この中央当接部110の外周面に対して、永久磁石64の内周面が当接することにより、永久磁石64がインナ軸部材24と同一中心軸上に位置せしめられてセンタリングされるようになっている。
また、インナ軸部材24において、中央当接部110の軸方向両側に位置して上下ヨーク66,68が外挿される両側部分は、上下ヨーク66,68の貫通孔70a,70bの内周面形状に対応した異形の外周面形状とされている。
すなわち、インナ軸部材24において中央当接部110から軸方向両側にそれぞれ所定距離だけ離れて位置する部分には、上下ヨーク66,68の当接内周面102a,102bと同じか僅かに小さい外径寸法で軸方向に延びる小径部としての外方当接部112a,112bとされており、当該外方当接部112a,112bの外周面が円筒形状とされている。そして、この外方当接部112a,112bの外周面に対して、上下ヨーク66,68の当接内周面102a,102bが当接することにより、上下ヨーク66,68が、それぞれ、インナ軸部材24と同一中心軸上に位置せしめられてセンタリングされるようになっている。
また、インナ軸部材24において中央当接部110と両側の外方当接部112a,112bとの軸方向間における外周面は、軸方向外方に向かって次第に外径寸法が小さくなる円形のテーパ状外周面114a,114bとされている。すなわち、中央当接部110の軸方向両側面が、軸方向外方に向かって中央部分が突出するテーパ状外周面114a,114bとされている。
本実施形態では、インナ軸部材24のテーパ状外周面114a,114bが、上下ヨーク66,68のテーパ状内周面104a,104bと略同じ傾斜角度で形成されている。そして、永久磁石64の軸方向長さよりも中央当接部110の軸方向長さが僅かに小さくされていることによって、インナ軸部材24のテーパ状外周面114a,114bが、上下ヨーク66,68のテーパ状内周面104a,104bよりも軸方向内方に僅かに控えて位置せしめられている。すなわち、軸方向外方に突出する周壁形状とされた上下ヨーク66,68が、インナ軸部材24のテーパ状外周面114a,114bを外方から覆うように配設されている。その結果、テーパ状外周面114a,114bとテーパ状内周面104a,104bとの間には、全体に亘って広がる隙間116,116が形成されている。本実施形態では、周方向の全周に亘って連続して延びる円環状の隙間116,116が、中央当接部110の軸方向両側と上下ヨーク66,68との軸方向対向面間に略一定の隙間寸法をもって設けられている。
従って、永久磁石64と上下ヨーク66,68は、互いに軸方向に重ね合わされているものの、永久磁石64において磁極面とされた軸方向両側面に対してだけ上下ヨーク66,68が当接するようになっている。また、永久磁石64と上下ヨーク66,68は、何れの内周面もインナ軸部材24に対して軸方向で当接されていない。なお、本実施形態では、永久磁石64と上下ヨーク66,68の内径は、中央当接部110と外方当接部112a,112bの外径より僅かに大きくされており、永久磁石64や上下ヨーク66,68の内周面が、インナ軸部材24に対して、軸直角方向で当接することでセンタリングされて、同一中心軸上に位置決めされるようになっている。
なお、隙間116,116の大きさは、特に限定されるものでないが、インナ軸部材24と可動子26とから構成されるマス部材16のマス質量を効率的に確保するには、できるだけ小さいことが望ましい。また、部品寸法誤差などに基づいて、意図せずインナ軸部材24のテーパ状外周面114a,114bと上下ヨーク66,68のテーパ状内周面104a,104bとが当接して、永久磁石64の磁極面から上下ヨーク66,68が離隔してしまうことが回避される程度の大きさに設定することが好適であり、部品の大きさや寸法精度等に応じて、例えば0.5〜2mm程度の大きさの隙間寸法に設定することができる。
このような可動子26を備えたインナ軸部材24は、一対の板ばね18,20と付加ばね部材74によってアウタハウジング部材14に弾性連結されて組み付けられた状態下、上下ヨーク66,68の磁極形成面106,108に対してN/Sの各一方の磁極が設定されて、固定子22の磁極に対して径方向に対向配置されている。すなわち、永久磁石64の軸方向厚さ寸法が、固定子22における上下の磁気ギャップ46,46の軸方向間距離と略同じとされており、可動子26の上下ヨーク66,68における磁極形成面106,108が、固定子22の磁気ギャップ46,46に対して径方向で隙間を隔てて対向配置されている。
これにより、固定子22のコイル38,38への通電によって上下の磁気ギャップ46,46に磁界が生ぜしめられると、上下一方のヨーク66(68)の最外周部分118(120)に対して軸方向の磁気吸引力が及ぼされると共に、上下他方のヨーク68(66)の最外周部分120(118)に対して軸方向の磁気排斥力が及ぼされるようになっている。これらの磁力の作用に基づいて、可動子26には、固定子22のコイル38,38への通電方向に応じて、何れかの軸方向への駆動力が作用せしめられるのであり、コイル38,38への通電間隔や通電方向を制御することにより、所定の周期で可動子26ひいてはインナ軸部材24に対して軸方向の加振力を及ぼすことができる。
なお、本実施形態では、上下の板ばね18,20の弾性により、可動子26が固定子22に対して軸方向の初期位置に保持されており、外部からの給電による駆動力が解除された際には速やかに初期位置に戻るようになっている。
このような構造とされた電磁式アクチュエータ10は、主振動系たる制振対象部材に対してアウタハウジング部材14が固定的に取り付けられて装着されることにより、能動型制振装置12を構成する。そして、かかる装着状態下、固定子22のコイル38,38への給電を、軸方向の制振すべき振動に対応して制御することにより、副振動系を構成する可動子26およびインナ軸部材24を加振変位せしめて目的とする制振効果を得ることができる。
ここにおいて本実施形態の電磁式アクチュエータ10では、永久磁石64をセンタリングする中央当接部110が、インナ軸部材24において中央当接部110の軸方向両側に位置する外方当接部112a,112bに対して大径とされている。それ故、永久磁石64の外径寸法を確保しつつマスひいては永久磁石64の実質的な必要量を小さくできる。また、可動子26の全体質量も、大径化された中央当接部110等によって十分に確保することが可能である。
しかも、永久磁石64をセンタリングする中央の当接部110と一対の環状ヨーク部材(上下ヨーク66,68)との軸方向間に隙間116,116を設けたことで、中央当接部110と上下ヨーク66,68が当接して上下ヨーク66,68と永久磁石64とが離隔することが防止されることから、永久磁石64と一対の環状ヨーク部材66,68とが確実に当接状態で重ね合わされて締結部材(締結ナット72,72)により固定され得る。
それ故、永久磁石64と一対の環状ヨーク部材66,68とにおける磁束の漏れが抑えられて磁気効率が良好に確保されると共に、部材間での軸方向のガタツキや打ち当りも防止されて異音や損傷も防止され得る。
さらに、インナ軸部材24や可動子26(磁石部材)における製造時の寸法のばらつきも隙間116,116で吸収されることから、インナ軸部材24に対して永久磁石64や一対の環状ヨーク部材66,68が一層安定して組み付けられ得る。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えばインナ軸部材において永久磁石をセンタリングする軸方向中央の当接部などを構成する大径部分を、略一定の外径寸法で延びるロッド部材に対して別体形成して、圧入固定などにより固着することで、外周面が軸方向で異形状とされたインナ軸部材を構成することも可能である。
また、例えば図3に示されているように、インナ軸部材124において、永久磁石64をセンタリングする大径の中央当接部124を、永久磁石64よりも大きな軸方向長さとしても良い。この場合には、一対の環状ヨーク部材としての上ヨーク126および下ヨーク128の永久磁石64側の開口端部に、中央当接部124に外嵌されてセンタリングされる大径の当接内周面130a,130bを形成することも可能である。
更にまた、例えば図4に示されているように、インナ軸部材132において、永久磁石64をセンタリングする大径の中央当接部134を、軸方向両側にテーパ状部分を設けない厚肉円環形状とすると共に、一対の環状ヨーク部材としての上ヨーク136および下ヨーク138の軸方向端面139a,139bも軸直角方向に広がる平坦面形状とすることで、永久磁石64と環状ヨーク部材136,138との軸方向重ね合わせ面間において軸直角方向に広がる隙間140,140を形成することも可能である。
なお、上述の図3及び図4では、理解を容易とするために、前記実施形態と同様な構造とされた部材および部位について、図中に、前記実施形態を同じ符号を付しておく。
また、永久磁石や環状ヨーク部材をインナ軸部材に対して当接してセンタリングする中央当接部や外方当接部の外周面も、前記実施形態のように円筒面形状とする必要はない。例えば周上で部分的に突出する複数の当接突起を形成し、それらの当接突起の先端面によって、永久磁石や環状ヨーク部材の内周面に当接してセンタリングする当接面を構成することも可能である。さらに、中央当接部と環状ヨーク部材との間に設けられる隙間は、前記実施形態のように全体に亘って略一定の隙間寸法とされる必要はなく、部分的に狭幅や拡幅されていてもよい。
更にまた、例えば固定子の具体的構造についても、前記実施形態のように固定子22を構成するコイル部材34,34を上下二段に重ね合わされて設けた構造に限定されず、1つだけが設けられていても良いし、3つ以上を軸方向に多段に重ね合わせることも可能である。また、前記実施形態における上下のコイル部材34,34では、互いに逆巻きのコイル38,38が採用されていたが、同じ方向に巻かれた上下コイルを採用することも可能である。
一方、可動子についても、採用される固定子の構造に応じて、コイル部材への通電によって生ぜしめられる磁力作用で軸方向の駆動力を生ずる各種構造が採用可能である。例えば、複数段に永久磁石と環状ヨーク部材を重ね合わせて複数段の磁極を設定することも可能である。
さらに、前記実施形態では、アウタハウジング部材14が制振対象部材に固定されることでコイル部材34,34が固定子22を構成する一方、インナ軸部材24が軸方向で移動可能とされて永久磁石64が可動子26を構成していたが、それとは逆に、インナ軸部材を軸方向に突設して制振対象部材に固定することで永久磁石で固定子を構成する一方、アウタハウジング部材を軸方向に移動可能としてコイル部材で可動子を構成することも可能である。
また、前記実施形態で採用されていた付加マス部材76や付加ばね部材74などは、要求特性などを考慮して必要に応じて設けられるものであり、本発明において必須ではない。
更にまた、前記実施形態では、本発明に従う構造とされた電磁式アクチュエータ10を能動型制振装置12へ適用した態様を例示したが、例えばエンジンマウントやボデーマウントなどとして用いられる能動型防振装置への適用も可能である。具体的には、例えば特開2000−337427号公報に示されている公知の能動型防振装置におけるアクチュエータとして、上述の如き電磁式アクチュエータ10を適用することによって実現され得る。即ち、流体封入式防振装置本体は、内部に非圧縮性流体が封入された流体室を備えていると共に、かかる流体室の壁部の一部が圧力変動を及ぼす加振部材とされる。それ故、前記実施形態に記載の電磁式アクチュエータ10において、例えばアウタハウジング部材14を流体封入式防振装置の取付部材へ固定することで、インナ軸部材24に及ぼされる軸方向の加振駆動力を流体封入式防振装置の加振部材に及ぼすことができる。より具体的には、例えば、前記実施形態に記載の電磁式アクチュエータ10において、付加マス部材76や付加ばね部材74に代えて、インナ軸部材10と一体的に設けられて軸方向に延びる出力部材を採用し、かかる出力部材を軸方向外方に突出させて駆動力を外部に取り出すことにより、流体封入式防振装置本体の加振部材を加振駆動せしめることが可能である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものである。