JP2017197149A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】タイヤの氷上性能あるいは雪上性能を向上できる空気入りタイヤを提供すること。【解決手段】この空気入りタイヤ1は、複数のブロック5をトレッド面に備える。また、ブロック5が、相互に異なる深さ方向の立体形状を有することにより相互に異なる容積を有する複数種類の凹部8(81、82)を接地面に備える。また、1つのブロック5の接地面をタイヤ周方向に三等分して一対の端部領域を定義するときに、一方の端部領域ER1における凹部8の容積率Ve1と、他方の端部領域ER2における凹部8の容積率Ve2とが、Ve1<Ve2の関係を有する。【選択図】図3
Description
この発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、タイヤの氷上性能あるいは雪上性能を向上できる空気入りタイヤに関する。
一般的な新品タイヤでは、薬品がトレッド表面に付着しているため、摩耗初期におけるブロックの吸水作用およびエッジ作用が小さく、氷上制動性能が低いという課題がある。このため、近年のスタッドレスタイヤでは、浅く微細な複数の細浅溝をブロックの表面に備える構成が採用されている。かかる構成では、摩耗初期にて、細浅溝が氷路面とトレッド面との間に介在する水膜を除去することにより、タイヤの氷上制動性能が向上する。かかる構成を採用する従来の空気入りタイヤとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
また、近年のスタッドレスタイヤでは、タイヤ使用初期における氷路面および雪路面でのタイヤ性能を向上させるために、トレッド踏面に微細かつ多数の突起部を形成した構成が採用されている。かかる構成では、タイヤ接地面の表面粗さが増加して、突起部間の空隙が氷路面とトレッド面との間に介在する水膜を除去し、また、突起部により路面とトレッド面との摩擦力が増加する。これにより、タイヤ新品時における氷上性能および雪上性能が向上する。かかる構成を採用する従来の空気入りタイヤとして、特許文献2に記載される技術が知られている。
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、タイヤの氷上性能あるいは雪上性能を向上できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、この発明にかかる空気入りタイヤは、複数のブロックをトレッド面に備える空気入りタイヤにおいて、前記ブロックが、相互に異なる深さ方向の立体形状を有することにより相互に異なる容積を有する複数種類の凹部を接地面に備え、且つ、1つの前記ブロックの接地面をタイヤ周方向に三等分して一対の端部領域を定義するときに、一方の前記端部領域における前記凹部の容積率Ve1と、他方の前記端部領域における前記凹部の容積率Ve2とが、Ve1<Ve2の関係を有することを特徴とする。
この発明にかかる空気入りタイヤでは、ブロックのタイヤ周方向の前後の端部領域が相互に異なる接地特性を有することにより、タイヤの使用状態(特に、タイヤの回転方向)に応じて、タイヤの雪上性能あるいは氷上性能が向上する利点がある。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。また、同図は、空気入りタイヤの一例として、乗用車用ラジアルタイヤを示している。
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。また、同図は、空気入りタイヤの一例として、乗用車用ラジアルタイヤを示している。
同図において、タイヤ子午線方向の断面とは、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。また、符号CLは、タイヤ赤道面であり、タイヤ回転軸方向にかかるタイヤの中心点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいう。
この空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(図1参照)。
一対のビードコア11、11は、複数のビードワイヤを束ねて成る環状部材であり、左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を構成する。
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチールあるいは有機繊維材(例えば、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で80[deg]以上95[deg]以下のカーカス角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの繊維方向の傾斜角として定義される)を有する。
ベルト層14は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143とを積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。一対の交差ベルト141、142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で20[deg]以上55[deg]以下のベルト角度を有する。また、一対の交差ベルト141、142は、相互に異符号のベルト角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角として定義される)を有し、ベルトコードの繊維方向を相互に交差させて積層される(いわゆるクロスプライ構造)。ベルトカバー143は、コートゴムで被覆されたスチールあるいは有機繊維材から成る複数のコードを圧延加工して構成され、絶対値で0[deg]以上10[deg]以下のベルト角度を有する。また、ベルトカバー143は、交差ベルト141、142のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側にそれぞれ配置されて、リムフランジに対する左右のビード部の接触面を構成する。
[トレッドパターン]
図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。同図は、スタッドレスタイヤのトレッドパターンを示している。同図において、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸周りの方向をいう。また、符号Tは、タイヤ接地端である。
図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。同図は、スタッドレスタイヤのトレッドパターンを示している。同図において、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸周りの方向をいう。また、符号Tは、タイヤ接地端である。
図2に示すように、空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21、22と、これらの周方向主溝21、22に区画された複数の陸部31〜33と、これらの陸部31〜33に配置された複数のラグ溝41〜43とをトレッド部に備える。
周方向主溝とは、摩耗末期を示すウェアインジケータを有する周方向溝であり、一般に、5.0[mm]以上の溝幅および7.5[mm]以上の溝深さを有する。また、ラグ溝とは、2.0[mm]以上の溝幅および3.0[mm]以上の溝深さを有する横溝をいう。
溝幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝開口部における左右の溝壁の距離の最大値として測定される。陸部が切欠部や面取部をエッジ部に有する構成では、溝長さ方向を法線方向とする断面視にて、トレッド踏面と溝壁の延長線との交点を基準として、溝幅が測定される。また、溝がタイヤ周方向にジグザグ状あるいは波状に延在する構成では、溝壁の振幅の中心線を基準として、溝幅が測定される。
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面から溝底までの距離の最大値として測定される。また、溝が部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
例えば、図2の構成では、ストレート形状を有する4本の周方向主溝21、22がタイヤ赤道面CLを中心として左右対称に配置されている。また、4本の周方向主溝21、22により、5列の陸部31〜33が区画されている。また、陸部31が、タイヤ赤道面CL上に配置されている。また、各陸部31〜33が、タイヤ周方向に所定間隔で配置されて陸部31〜33をタイヤ幅方向に貫通する複数のラグ溝41〜43を備えている。また、セカンド陸部32が、タイヤ周方向に屈曲しつつ延在する周方向細溝23を備えている。そして、各陸部31〜33が、周方向主溝21、22、周方向細溝23およびラグ溝41〜43に区画されてブロック列となっている。
なお、図2の構成では、上記のように、周方向主溝21、22が、ストレート形状を有している。しかし、これに限らず、周方向主溝21、22が、タイヤ周方向に屈曲あるいは湾曲しつつ延在するジグザグ形状あるいは波状形状を有しても良い(図示省略)。
また、図2の構成では、上記のように、各陸部31〜33が、ラグ溝41〜43によりタイヤ周方向に分断されてブロック列となっている。しかし、これに限らず、例えば、一部のラグ溝41〜43が陸部31〜33の内部で終端するセミクローズド構造を有することにより、一部の陸部31〜33がタイヤ周方向に連続するリブであっても良い(図示省略)。
また、図2の構成では、空気入りタイヤ1が、左右点対称なトレッドパターンを有している。しかし、これに限らず、空気入りタイヤ1が、例えば、左右線対称なトレッドパターン、左右非対称なトレッドパターン、タイヤ回転方向に方向性を有するトレッドパターンを有しても良い(図示省略)。
また、図2の構成では、空気入りタイヤ1が、タイヤ周方向に延在する周方向主溝21、22を備えている。しかし、これに限らず、空気入りタイヤ1が、周方向主溝21、22に代えて、タイヤ周方向に対して所定角度で傾斜しつつ延在する複数の傾斜主溝を備えても良い。例えば、空気入りタイヤ1が、タイヤ周方向に凸となるV字形状を有すると共にタイヤ幅方向に延在して左右のトレッド端に開口する複数のV字傾斜主溝と、隣り合うV字傾斜主溝を接続する複数のラグ溝と、これらのV字傾斜主溝およびラグ溝に区画された複数の陸部とを備えても良い(図示省略)。
[ブロックのサイプ]
図3は、図2に記載した空気入りタイヤの陸部を示す説明図である。同図は、ショルダー陸部33を構成する1つのブロック5の平面図を示している。なお、ショルダー陸部33は、最外周方向主溝に区画されたタイヤ幅方向外側の陸部として定義される。
図3は、図2に記載した空気入りタイヤの陸部を示す説明図である。同図は、ショルダー陸部33を構成する1つのブロック5の平面図を示している。なお、ショルダー陸部33は、最外周方向主溝に区画されたタイヤ幅方向外側の陸部として定義される。
図2および図3に示すように、この空気入りタイヤ1では、すべての陸部31〜33のブロック5が複数のサイプ6をそれぞれ有する。これらのサイプ6により、陸部31〜33のエッジ成分が増加して、タイヤの氷上性能および雪上性能が向上する。
サイプは、陸部に形成された切り込みであり、一般に1.0[mm]未満のサイプ幅および2.0[mm]以上のサイプ深さを有することにより、タイヤ接地時に閉塞する。なお、サイプ深さの上限は、特に限定がないが、一般に主溝の溝深さよりも浅い。
サイプ幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、陸部の接地面におけるサイプの開口幅の最大値として測定される。
なお、サイプ6は、両端部にて陸部31〜33の内部で終端するクローズド構造、一方の端部にてブロック5のエッジ部に開口して他方の端部にてブロック5の内部で終端するセミクローズド構造、および、両端部にてブロック5のエッジ部に開口するオープン構造のいずれを有しても良い。また、陸部31〜33におけるサイプ6の長さ、枚数および配置構造は、当業者自明の範囲内にて適宜選択できる。また、サイプ6は、タイヤ幅方向、タイヤ周方向、およびこれらに傾斜する方向の任意の方向に延在できる。
例えば、図3の構成では、ショルダー陸部33が、最外周方向主溝22および複数のラグ溝43(図2参照)に区画されて成る複数のブロック5を備えている。また、1つのブロック5が複数のサイプ6を備えている。また、これらのサイプ6が、タイヤ幅方向に延在するジグザグ形状を有し、また、タイヤ周方向に所定間隔をあけて並列に配置されている。また、タイヤ周方向の最も外側にあるサイプ6が、両端部にてブロック5の内部で終端するクローズド構造を有している。これにより、タイヤ転動時におけるブロック5の踏み込み側および蹴り出し側のエッジ部の剛性が確保されている。また、タイヤ周方向の中央部にあるサイプ6が、一方の端部にて周方向主溝22に開口し、他方の端部にてブロック5の内部で終端するセミクローズド構造を有している。これにより、ブロック5の中央部の剛性が低減されて、ブロック5のタイヤ周方向の剛性分布が均一化されている。
[ブロックの細浅溝]
図4は、ブロックの踏面を示す拡大図である。図5は、凹部の深さ方向の断面を示す説明図である。これらの図において、図4は、サイプ6、細浅溝7および凹部8の位置関係を示し、図5は、細浅溝7および2種類の凹部81、82の深さの関係を示している。
図4は、ブロックの踏面を示す拡大図である。図5は、凹部の深さ方向の断面を示す説明図である。これらの図において、図4は、サイプ6、細浅溝7および凹部8の位置関係を示し、図5は、細浅溝7および2種類の凹部81、82の深さの関係を示している。
この空気入りタイヤ1では、ブロック5が、複数の細浅溝7を接地面に備える(図3参照)。かかる構成では、タイヤ接地時にて、細浅溝7が氷路面とトレッド面との間に介在する水膜を吸い取って除去することにより、タイヤの氷上制動性能が向上する。
複数の細浅溝7は、長手形状を有すると共に相互に並列に配置される(図4参照)。かかる構成では、細浅溝7が長手形状を有することにより、細浅溝7に吸収された水膜を細浅溝7の長手方向にガイドして排出できる。また、後述する凹部8がかかる長手形状を有する複数の細浅溝7に跨って配置されるので、凹部8が吸収された水膜の溜まり場となり、ブロック5の吸水性が向上する。これらにより、タイヤの氷上制動性能が向上する。
細浅溝7は、0.2[mm]以上0.7[mm]以下の溝幅および0.2[mm]以上0.7[mm]以下の溝深さHg(図5参照)を有する。このため、細浅溝7は、サイプ6よりも浅い。また、複数の細浅溝7が、ブロック5の全面に配置されている。
例えば、図3の構成では、複数の細浅溝7が、ショルダー陸部33のブロック5の接地面の全域に渡って配置されている。また、細浅溝7が、直線形状を有し、タイヤ周方向に対して所定の傾斜角θ(図4参照)にて傾斜して配置されている。また、複数の細浅溝7が、相互に所定間隔P(図4参照)をあけつつ並列に配置されている。また、図4に示すように、細浅溝7が、サイプ6と交差しており、サイプ6により長手方向に分断されている。
なお、図3のように、複数の細浅溝7が長尺形状を有して相互に並列に配置される構成では、細浅溝7の傾斜角θ(図4参照)が、20[deg]≦θ≦80[deg]の範囲にあることが好ましく、40[deg]≦θ≦60[deg]の範囲にあることがより好ましい。また、細浅溝7の配置間隔P(図4参照)が、0.5[mm]≦P≦1.5[mm]の範囲にあることが好ましく、0.7[mm]≦P≦1.2[mm]の範囲にあることがより好ましい。これにより、細浅溝7による水膜除去作用が適正に確保され、また、ブロック5の接地面積が確保される。なお、細浅溝7の配置密度は、特に限定がないが、上記の配置間隔Pにより制約を受ける。
細浅溝7の配置間隔Pは、隣り合う細浅溝7、7の溝中心線の距離として定義される。
[ブロックの凹部]
図2および図3に示すように、この空気入りタイヤ1では、すべてのブロック5が、複数の凹部8を接地面に備える。かかる構成では、タイヤ接地時にて、凹部8が氷路面とトレッド面との間に生ずる水膜を吸い取ることにより、氷路面に対するブロック踏面の密着性が向上する。これにより、タイヤの氷上制動性能が向上する。また、凹部8によりブロック5のエッジ成分が増加して、雪路における雪柱剪断力(いわゆる掘り起こし力)が増加する。これにより、タイヤの雪上性能が向上する。
図2および図3に示すように、この空気入りタイヤ1では、すべてのブロック5が、複数の凹部8を接地面に備える。かかる構成では、タイヤ接地時にて、凹部8が氷路面とトレッド面との間に生ずる水膜を吸い取ることにより、氷路面に対するブロック踏面の密着性が向上する。これにより、タイヤの氷上制動性能が向上する。また、凹部8によりブロック5のエッジ成分が増加して、雪路における雪柱剪断力(いわゆる掘り起こし力)が増加する。これにより、タイヤの雪上性能が向上する。
凹部8は、ブロック5の接地面に形成されたクローズドな窪み(接地面の境界に開口していない窪み。いわゆるディンプル)であり、ブロック5の接地面にて任意の幾何学的形状を有する。例えば、凹部8が、円形、楕円形、四角形、六角形などの多角形を有し得る。円形あるいは楕円形の凹部8は、ブロック5の接地面の偏摩耗が小さい点で好ましく、多角形の凹部8は、エッジ成分が大きく氷上制動性能を向上できる点で好ましい。
また、凹部8の開口面積が、2.5[mm^2]以上10[mm^2]以下の範囲にあることが好ましい。例えば、円形の凹部8であれば、その直径が約1.8[mm]〜3.6[mm]の範囲にある。これにより、凹部8の開口面積が適正化される。すなわち、凹部8の開口面積が2.5[mm^2]以上であることにより、凹部8のエッジ作用および吸水性が確保される。また、凹部8の開口面積が10[mm^2]以下であることにより、ブロック5の接地面積が確保される。
凹部8の開口面積は、ブロック5の接地面における凹部8の開口面積であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。
また、凹部8の深さが、0.10[mm]以上2.0[mm]未満の範囲にあることが好ましく、0.2[mm]以上1.5[mm]以下の範囲にあることがより好ましい。すなわち、凹部8の深さが、タイヤ接地面に施される表面粗さレベルの加工よりも明らかに深く、また、一般的なサイプ(例えば、線状サイプ6や円形サイプ(図示省略)など)の深さよりも明らかに浅い範囲に設定される。上記数値範囲の下限により、凹部8の機能が適正に確保され、また、上記数値範囲の上限により、陸部31〜33の剛性が適正に確保される。
また、凹部8の壁角度α(図5参照)が、−85[deg]≦α≦95[deg]の範囲にあることが好ましい。すなわち、凹部8の内壁がブロック5の接地面に対して略垂直であることが好ましい。これにより、凹部8のエッジ成分が増加する。
凹部8の壁角度αは、凹部8の深さ方向の断面視にて、ブロック5の接地面と凹部8の内壁とのなす角として測定される。
また、図4に示すように、凹部8は、サイプ6から離間して配置される。すなわち、凹部8とサイプ6とは、ブロック5の接地面にて相互に異なる位置に配置されて、交差しない。また、凹部8とサイプ6との距離gは、0.2[mm]≦gの範囲にあることが好ましく、0.3[mm]≦gの範囲にあることがより好ましい。かかる構成では、凹部8とサイプ6とが相互に分離して配置されるので、ブロック5の剛性が確保されて、タイヤの氷上制動性能が向上する。
また、図4に示すように、凹部8は、細浅溝7に交差して配置されて、細浅溝7に連通する。また、凹部8が、相互に分離した隣り合う複数の細浅溝7、7に跨って配置される。言い換えると、相互に分離した隣り合う複数の細浅溝7、7が、1つの凹部8を貫通して配置される。これにより、隣り合う複数の細浅溝7、7が、凹部8を介して接続されて相互に連通する。また、凹部8が、隣り合う複数の細浅溝7、7の間に介在して、細浅溝7の容積を部分的に拡大する。すると、タイヤ接地時にて、凹部8が水の溜まり場となり、氷路面の水膜が効率的に吸収される。これにより、タイヤの氷上制動性能が向上する。
相互に分離した複数の細浅溝7とは、サイプ6および凹部8を除外した細浅溝7のみの配置パターンにて、相互に交差することなく延在する複数の細浅溝7をいう。したがって、複数の細浅溝7が相互に交差する配置パターンは、除外される。
例えば、図3の構成では、直線形状を有する複数の細浅溝7が、タイヤ周方向に対して所定角度で傾斜しつつ所定間隔でブロック5の全面に配置されている。このため、図4に示すように、隣り合う細浅溝7、7が、相互に平行に配置されて一方向に併走している。また、凹部8が、隣り合う2本の細浅溝7、7に跨って配置されて、これらの細浅溝7、7を接続している。言い換えると、併走する2本の細浅溝7、7が、1つの凹部8を一方向に貫通している。なお、上記に限らず、3本以上の細浅溝7が、1つの凹部8を貫通しても良い(図示省略)。
また、上記の構成では、1つのブロック5の接地面にて、隣り合う複数の細浅溝7、7に跨って配置された凹部8の数が、この接地面における凹部8の総数に対して70[%]以上あることが好ましく、80[%]以上あることがより好ましい。これにより、上記した凹部8の水の溜まり場としての機能が効果的に発揮される。例えば、図3の構成では、すべての凹部8が、隣り合う2本の細浅溝7、7に跨って配置されている。しかし、これに限らず、一部の凹部8が、単一の細浅溝7に交差しても良いし、あるいは、細浅溝7に交差することなく隣り合う細浅溝7、7の間に配置されても良い(図示省略)。
また、図3の構成では、ブロック5が、細浅溝7を区画する複数のサイプ6を接地面に備えている。また、サイプ6により区画された1つの細浅溝7の部分が、複数の凹部8を貫通することなく延在している。すなわち、複数の凹部8が、サイプ6により区画された1つの細浅溝7の部分に対して重複して配置されないように、分散して配置されている。このため、1つの細浅溝7の部分には、最大1つの凹部8のみが配置される。
また、図3に示すように、凹部8は、細浅溝7と比較して、疎に配置される。具体的には、1つのブロック5の接地面の全域における凹部8の配置密度Daが、0.8[個/cm^2]≦Da≦4.0[個/cm^2]の範囲にあることが好ましく、1.0[個/cm^2]≦Da≦3.0[個/cm^2]の範囲にあることがより好ましい。これにより、凹部8の配置密度Daが適正化される。すなわち、0.8[個/cm^2]≦Daであることにより、凹部8の配置数が確保されて、凹部8の機能が適正に確保される。また、Da≦4.0[個/cm^2]であることにより、ブロック5の接地面積が適正に確保される。
凹部8の配置密度Daは、1つのブロックの接地面の面積に対する凹部8の総数として定義される。
接地面積は、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に対応する負荷を加えられたときのタイヤと平板との接触面にて、測定される。
[凹部の配置]
ここで、図3に示すように、1つのブロック5の接地面おいて、タイヤ周方向の端部領域ER1、ER2を定義する。図3の破線は、各端部領域ER1、ER2の境界線を示している。
ここで、図3に示すように、1つのブロック5の接地面おいて、タイヤ周方向の端部領域ER1、ER2を定義する。図3の破線は、各端部領域ER1、ER2の境界線を示している。
タイヤ周方向の端部領域ER1、ER2は、ブロック5の接地面をタイヤ周方向に三等分したときの両端部の領域としてそれぞれ定義される。また、凹部8の中心が上記の端部領域ER1、ER2にあれば、凹部8が上記の端部領域ER1、ER2に配置されているといえる。
1つのブロック5の接地面は、2.0[mm]以上の溝幅および3.0[mm]以上の溝深さを有する溝により区画された接地面として定義される。具体的には、1つのブロックの接地面が、上記の溝幅および溝深さを有する周方向溝およびラグ溝により区画された接地面として定義される。また、例えば、ブロック5内で終端するクローズド構造の細溝、ブロック5に形成された部分的な切り欠き(例えば、後述する図7の切欠部311)、タイヤ接地時に閉塞するサイプやカーフなどは、ブロック5の接地面を分断しないため、上記の溝に該当しない。また、ショルダー陸部33では、上記連続した接地面が、タイヤ接地端Tにより区画され得る(図3参照)。
タイヤ接地端Tとは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を加えたときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置をいう。
また、連続した接地面の角部を含む5[mm]四方の領域を、陸部の角部として定義する。陸部の角部は、主溝およびラグ溝により区画された陸部の部分のみならず、陸部に形成された切欠部(例えば、後述する図7の切欠部311)により区画された陸部の部分を含む。また、凹部の中心が上記領域にあれば、凹部が陸部の角部に配置されているといえる。
また、陸部31〜33が複数のブロック5から成るブロック列を備え、且つ、各ブロック5がタイヤ幅方向に延在する複数のサイプ6を有する構成では、複数のサイプ6が、タイヤ周方向に並列に配置されてブロック5をタイヤ周方向に複数の区間に区画する。これらの区間を、ブロック5の区間として定義する。ブロック5の区間は、各ブロック5について定義できる。また、サイプ6は、オープン構造を有しても良いし、クローズド構造あるいはセミクローズド構造を有しても良い。
図3の構成では、ショルダー陸部33のブロック5が、矩形状の接地面を有している。また、ブロック5が複数のサイプ6によりタイヤ周方向に区画されて、複数の区間が形成されている。また、ブロック5のすべての区間が、少なくとも1つの凹部8を有している。また、タイヤ周方向に隣り合う任意の3つの区間の少なくとも1つが、タイヤ幅方向の中央部50[%]の領域に凹部8を有している。また、タイヤ周方向に隣り合う任意の3つの区間の少なくとも1つが、タイヤ幅方向の左右の端部25[%]の領域に凹部8をそれぞれ有している。これにより、凹部8が、ブロック5内で分散して配置されている。
ブロック5のタイヤ幅方向の端部領域、特に、周方向主溝22側の端部領域では、タイヤ接地時にてブロック5の中央部領域よりも大きな接地圧が作用する。このため、氷路面の走行時にて接地圧により路面の氷が溶け易く、水膜が発生し易い。したがって、凹部8がブロック5の端部領域に配置されることにより、踏面の水膜が効率的に吸収されて、タイヤの氷上制動性能が向上する。
特に、ショルダー陸部33は、タイヤの制動性能に対する影響が大きい。そこで、図3のように、ショルダー陸部33のブロック5が、凹部8をタイヤ幅方向の端部領域に備えることにより、凹部8による氷上制動性能の向上作用が顕著に得られる。
また、図3の構成では、ブロック5のタイヤ周方向の両端部の区間が、凹部8をブロック5の周方向主溝22側の2つの角部にそれぞれ有している。特に、鋭角な(すなわち90[deg]未満の)接地面をもつ角部に、凹部8が配置されることが好ましい。例えば、図3の構成では、ブロック5が最外周方向主溝22と一対のラグ溝43、43との交差部にそれぞれ角部を有し、図中左下の角部が鋭角な接地面を有し、図中左上の角部が鈍角な接地面を有している。
ブロック5の角部、特に鋭角な接地面をもつ角部には、タイヤ接地時にて大きな接地圧が作用する。このため、氷路面の走行時にて接地圧により路面の氷が溶け易く、水膜が発生し易い。したがって、凹部8がブロック5の角部に配置されることにより、踏面の水膜が効率的に吸収されて、タイヤの氷上制動性能が向上する。
また、図3の構成では、サイプ6が、ラグ溝43に平行ないしは若干傾斜して配置され、また、タイヤ接地端Tからタイヤ幅方向内側の領域にのみ配置されている。また、細浅溝7が、タイヤ接地端Tを越えてショルダー陸部33のタイヤ幅方向外側の領域まで延在している。また、凹部8が、タイヤ接地端Tからタイヤ幅方向内側の領域にのみ配置されている。
図6および図7は、図2に記載した空気入りタイヤの陸部を示す説明図である。これらの図において、図6は、セカンド陸部32を構成する1つのブロック5の平面図を示している。また、図7は、センター陸部31を構成する1つのブロック5の平面図を示している。なお、セカンド陸部32は、最外周方向主溝22に区画されたタイヤ幅方向内側の陸部として定義される。また、センター陸部31は、タイヤ赤道面CL上にある陸部31(図2参照)、あるいは、タイヤ赤道面CLを挟んで隣り合う陸部(図示省略)として定義される。
図2の構成では、セカンド陸部32が、1本の周方向細溝23によりタイヤ幅方向に分断され、さらに複数のラグ溝42によりタイヤ周方向に分断されて、複数のブロック5が区画されている。また、セカンド陸部32のタイヤ幅方向内側の領域には、タイヤ周方向に長尺なブロック5が形成され、タイヤ幅方向外側の領域には、短尺なブロック5が形成されている。
また、図6に示すように、セカンド陸部32のタイヤ幅方向外側にある1つのブロック5が、矩形状の接地面を有している。また、ブロック5が複数のサイプ6によりタイヤ周方向に区画されて、複数の区間が形成されている。また、ブロック5のすべての区間が、少なくとも1つの凹部8を有している。また、タイヤ周方向に隣り合う任意の3つの区間の少なくとも1つが、タイヤ幅方向の中央部50[%]の領域に凹部8を有している。また、タイヤ周方向に隣り合う任意の3つの区間の少なくとも1つが、タイヤ幅方向の左右の端部25[%]の領域に凹部8をそれぞれ有している。また、ブロック5のタイヤ周方向の両端部の区間では、凹部8が、ブロック5の周方向主溝22側の角部にそれぞれ配置されている。これにより、凹部8がブロック5内で分散して配置されて、タイヤの氷上制動性能が高められている。
特に、短尺なブロック5を有するセカンド陸部32では、ブロック5の剛性が低いため、車両制動時にて、ブロック5の倒れ込み量が大きい。また、ブロック5が複数のサイプ6を有する構成では、その傾向が顕著となり、タイヤの氷上制動性能が低下し易い。さらに、セカンド陸部32は、タイヤの制駆動性能に対する影響が大きい。そこで、かかる短尺なブロック5が、サイプ6で区画されたすべての区間に凹部8を有することにより、踏面の水膜が効率的に吸収されて、タイヤの氷上制動性能が確保される。
また、図2の構成では、センター陸部31が、複数のラグ溝41によりタイヤ周方向に分断されて、複数のブロック5が区画されている。また、ブロック5が、セカンド陸部32のラグ溝42の延長線上に、切欠部311を有している。また、ブロック5が、矩形状の接地面を有している。
また、図7に示すように、センター陸部31のブロック5が複数のサイプ6によりタイヤ周方向に区画されて、複数の区間が形成されている。また、ブロック5のすべての区間が、少なくとも1つの凹部8を有している。また、タイヤ周方向に隣り合う任意の3つの区間の少なくとも1つが、タイヤ幅方向の中央部50[%]の領域に凹部8を有している。また、タイヤ周方向に隣り合う任意の3つの区間の少なくとも1つが、タイヤ幅方向の左右の端部25[%]の領域に凹部8をそれぞれ有している。また、ブロック5のタイヤ周方向の両端部の区間では、凹部8が、ブロック5の周方向主溝21側の角部にそれぞれ配置されている。また、切欠部311を含む区間が、切欠部311の近傍に凹部8を有している。これにより、凹部8がブロック5内で分散して配置されて、タイヤの氷上制動性能が高められている。
なお、上記の構成では、少なくとも一部の凹部8が、タイヤ成形金型(図示省略)のベント孔に対応する位置に配置されることが好ましい。すなわち、タイヤ加硫成形工程では、グリーンタイヤをタイヤ成形金型に押圧するために、タイヤ成形金型内の空気を外部に排出する必要がある。このため、タイヤ成形金型が、陸部31〜33の接地面を成形する金型面に、複数のベント装置(いわゆるベントレスモールドを備えたベント装置。図示省略)を有している。また、ある種のベント装置は、加硫成形後の陸部31〜33の接地面に、ベント跡としてのベント穴(小さな窪み)を形成する。そこで、このベント穴を上記の凹部8として用いることにより、ベント穴を有効に利用し、また、陸部31〜33の接地面における無用な窪みを低減して陸部31〜33の接地面積を適正に確保できる。
特に、タイヤ加硫成形工程では、残留空気が陸部31〜33の角部に溜まり易いという課題がある。このため、陸部31〜33の角部が凹部8を有し、この凹部8がタイヤ成形金型のベント孔に対応する位置に配置されることが好ましい。これにより、ベント穴を凹部8として利用しつつ、角部の残留空気を効果的に低減できる。
[タイヤ周方向における凹部の容積率の偏在]
図2に示すように、この空気入りタイヤ1では、陸部31〜33が、複数種類の凹部81、82を備える。同図では、白丸と黒丸とが相互に異なる種類の凹部8を示している。また、これらの凹部81、82が、相互に異なる深さ方向の立体形状を有することにより、相互に異なる容積を有する。
図2に示すように、この空気入りタイヤ1では、陸部31〜33が、複数種類の凹部81、82を備える。同図では、白丸と黒丸とが相互に異なる種類の凹部8を示している。また、これらの凹部81、82が、相互に異なる深さ方向の立体形状を有することにより、相互に異なる容積を有する。
凹部の容積は、陸部の踏面と凹部の内壁面とに囲まれた空間の容積として定義され、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。
深さ方向の立体形状は、凹部の深さ方向にかかる寸法および形状として定義され、特に、後述する凹部8の深さHdおよび内壁面形状(図8〜図12参照)を含む概念である。
また、ブロック5のタイヤ周方向の一方の端部領域ER1(図3参照)における凹部8の容積率Ve1と、他方の端部領域ER2における凹部8の容積率Ve2とが、Ve1<Ve2の関係を有する。すなわち、タイヤ周方向の前後の端部領域ER1、ER2における凹部8の容積率Ve1、Ve2が相互に異なる。また、凹部8の容積率の比Ve2/Ve1が、1.50≦Ve2/Ve1の関係を有することが好ましく、3.00≦Ve2/Ve1の関係を有することがより好ましい。比Ve2/Ve1の上限は、特に限定がないが、凹部8の深さ、立体形状、配置密度、開口面積などの数値範囲との関係により制約を受ける。
陸部の接地面は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を加えたときのタイヤと平板との接触面にて定義される。
凹部の容積率は、所定領域に配置された各凹部の容積の総和と当該領域の接地面積との比として定義される。凹部と領域の境界線とが交差する場合には、凹部の中心点が領域内にあれば当該凹部が当該領域内に配置されているといえる。
領域の接地面積は、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に対応する負荷を加えられたときのタイヤと平板との接触面にて、測定される。
また、陸部がタイヤ周方向に配列された複数のブロックから成る場合(図2参照)には、1つのブロック列を構成する70[%]以上、好ましくは80[%]以上のブロック5が、上記した凹部8の容積率の条件Ve1<Ve2を満たすことが好ましい。したがって、一部のブロック5(特に、凹部8の配置数を適切に確保できないような小ブロック)の凹部8が、上記条件を具備しなくとも良い。また、トレッド全体では、少なくとも1列の陸部のブロック列が上記条件を満たせば足りる。
各領域ER1、ER2における凹部8の容積率Ve1、Ve2は、各領域に配置された凹部8の深さ方向の立体形状(例えば、後述する深さ、内壁面形状など)により調整されることが好ましい。すなわち、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1にある凹部8のグループと、タイヤ周方向の他方の端部領域ER2にある凹部8のグループとが、相互に異なる深さ方向の立体形状を有することにより、各領域ER1、ER2における凹部8の容積率Ve1、Ve2に差が形成される。
上記の構成では、ブロック5のタイヤ周方向の前後の端部領域ER1、ER2が相互に異なる接地特性を有することにより、タイヤの使用状態に応じて、タイヤの雪上性能あるいは氷上性能が向上する。
例えば、図3におけるタイヤ周方向の第一側がタイヤ回転方向である場合には、第一側の端部領域ER1がタイヤ転動時の踏み込み側となり、第二側の端部領域ER2が蹴り出し側となる。このとき、ブロック5の蹴り出し側の端部領域ER2における凹部82の容積率Ve2が大きいので、ブロック5の雪柱剪断作用および排雪作用が増加して、雪上制動性能および雪上加速性能が向上する。
また、例えば、図3におけるタイヤ周方向の第二側がタイヤ回転方向である場合には、第二側の端部領域ER2がタイヤ転動時の踏み込み側となり、第一側の端部領域ER1が蹴り出し側となる。(1)一般に、ブロック5の踏み込み側のエッジ部では、タイヤ接地時の接地圧が蹴り出し側よりも大きいため、氷路面の走行時にて接地圧により路面の氷が溶け易く、水膜が発生し易い。このとき、ブロック5の踏み込み側の端部領域ER2における凹部82の容積率Ve2が大きいので、水膜が発生し易い踏み込み側の踏面の吸水性が向上し、氷路面に対するブロック踏面の密着性(凝着摩擦力)が向上して、タイヤの氷上制動性能が向上する。また、(2)ブロック5の蹴り出し側の端部領域ER1における凹部81の容積率Ve1が小さいので、ブロック5の蹴り出し側の接地面積が確保されて、氷上制動性能および氷上加速性能が向上する。
なお、タイヤ回転方向とは、タイヤ使用時にて使用頻度が高い回転方向をいい、例えば、車両前進時における回転方向をいう。タイヤ回転方向は、空気入りタイヤ1の回転方向表示部(図示省略)により表示される。この回転方向表示部の表示を基準として、ブロック5の踏み込み側(接地先着側あるいはトゥ側)および蹴り出し側(接地後着側あるいはヒール側)が定義される(図2参照)。踏み込み側は、指定された回転方向へのタイヤ転動時にて先に接地する側であり、蹴り出し側は、踏み込み側に対するタイヤ周方向の逆側である。なお、回転方向表示部は、例えば、タイヤのサイドウォール部に付されたマークや凹凸によって構成される。
また、上記の構成では、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1における凹部8の開口面積率Se1と、タイヤ周方向の他方の端部領域ER2における凹部8の開口面積率Se2とが、0.90≦Se2/Se1≦1.10の関係を有することが好ましく、0.95≦Se2/Se1≦1.05の関係を有することがより好ましい。したがって、凹部8の開口面積率Se1、Se2がタイヤ周方向の前後の端部領域ER1、ER2の間で均一化される。これにより、タイヤ周方向の各端部領域ER1、ER2の接地面積を均一化しつつ、各端部領域ER1、ER2の凹部8の容積率Ve1、Ve2に差を形成できる。
凹部の開口面積率は、所定領域に配置された各凹部の開口面積の総和と当該領域の接地面積との比として定義される。凹部と領域の境界線とが交差する場合には、凹部の中心点が領域内にあれば当該凹部が当該領域内に配置されているといえる。
また、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1における凹部8の配置数Ne1と、タイヤ周方向の他方の端部領域ER2における凹部8の配置数Ne2とが、0.90≦Ne2/Ne1≦1.10の関係を有することが好ましく、0.95≦Ne2/Ne1≦1.05の関係を有することがより好ましい。したがって、凹部8の配置数Ne1、Ne2が一方の端部領域ER1と他方の端部領域ER2との間で均一化される。かかる構成では、凹部8の配置密度がタイヤ周方向の各端部領域ER1、ER2で均一化されるので、凹部8の容積率Ve1、Ve2の偏在に起因する陸部の接地特性の過剰な変化を抑制できる。
凹部の配置数は、所定の領域にある凹部の中心点の数としてカウントされる。したがって、凹部の一部が領域からはみ出している場合であっても、凹部の中心点が領域内にあれば、凹部が当該領域に配置されているといえる。
また、連続した接地面に配置された凹部8の開口面積の最大値A_maxと最小値A_minとが、1.00≦A_max/A_min≦1.10の関係を有することが好ましく、1.00≦A_max/A_min≦1.05の関係を有することがより好ましい。したがって、各凹部8の開口面積が1つのリブあるいはブロック内にて均一化される。これにより、凹部8の開口面積のばらつきに起因する陸部の接地特性の過剰な変化を抑制できる。
したがって、この実施の形態では、各領域における凹部8の容積率Ve1、Ve2が、主として、後述する凹部8の深さあるいは内壁面形状により調整される。
[タイヤ周方向における凹部の深さの偏在]
例えば、図2の構成では、2種類の凹部81、82が1つのブロック5に混在して配置される。これらの図では、白丸が浅底の凹部81を示し、黒丸が深底の凹部82を示す。そして、これらの2種類の凹部81、82により、各領域における凹部8の容積率Ve1、Ve2が調整される。
例えば、図2の構成では、2種類の凹部81、82が1つのブロック5に混在して配置される。これらの図では、白丸が浅底の凹部81を示し、黒丸が深底の凹部82を示す。そして、これらの2種類の凹部81、82により、各領域における凹部8の容積率Ve1、Ve2が調整される。
具体的には、各陸部31〜33のブロック5が、相互に異なる深さを有することにより相互に異なる容積を有する2種類の凹部81、82を備える。また、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1における凹部8の深さの平均値Hde1と、タイヤ周方向の他方の端部領域ER2における凹部8の深さの平均値Hde2とが、Hde1<Hde2の関係を有する。すなわち、タイヤ周方向の前後の端部領域ER1、ER2における凹部8の深さの平均値Hde1、Hde2が、相互に異なる。また、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1における凹部8の深さの平均値Hde1と、タイヤ周方向の他方の端部領域ER2における凹部8の深さの平均値Hde2とが、1.50≦Hde2/Hde1の関係を有することが好ましく、3.00≦Hde2/Hde1の関係を有することがより好ましい。比Hde2/Hde1の上限は、特に限定がないが、凹部8の深さ、立体形状、配置密度、開口面積などの数値範囲との関係により制約を受ける。
凹部の深さの平均値は、所定領域における凹部の深さの総和と当該領域における凹部の総数との比として定義される。
また、陸部31〜33がタイヤ周方向に配列された複数のブロック5から成る場合(図2参照)には、1つのブロック列を構成するブロック5の70[%]以上、好ましくは80[%]以上が、上記した凹部8の深さおよび容積率の条件Hde1<Hde2かつVe1<Ve2を満たすことが好ましい。したがって、一部のブロック5(特に、凹部8の配置数を適切に確保できないような小ブロック)の凹部8が、上記条件を具備しなくとも良い。また、トレッド全体では、少なくとも1列の陸部のブロック列が上記条件を満たせば足りる。
上記の構成では、ブロック5のタイヤ周方向の前後の端部領域ER1、ER2が相互に異なる接地特性を有することにより、タイヤの使用状態に応じて、タイヤの雪上性能あるいは氷上性能が向上する。
例えば、図3におけるタイヤ周方向の第一側がタイヤ回転方向である場合には、第一側の端部領域ER1がタイヤ転動時の踏み込み側となり、第二側の端部領域ER2が蹴り出し側となる。このとき、凹部8の平均深さHde2がブロック5の蹴り出し側の端部領域ER2で深いので、ブロック5の雪柱剪断作用および排雪作用が増加して、雪上制動性能および雪上加速性能が向上する。
また、例えば、図3におけるタイヤ周方向の第二側がタイヤ回転方向である場合には、第二側の端部領域ER2がタイヤ転動時の踏み込み側となり、第一側の端部領域ER1が蹴り出し側となる。(1)一般に、ブロック5の踏み込み側のエッジ部では、タイヤ接地時の接地圧が蹴り出し側よりも大きいため、氷路面の走行時にて接地圧により路面の氷が溶け易く、水膜が発生し易い。そこで、凹部8の平均深さHde2がブロック5の蹴り出し側の端部領域ER2で深いので、水膜が発生し易い踏み込み側の踏面の吸水性が向上し、氷路面に対するブロック踏面の密着性(凝着摩擦力)が向上して、タイヤの氷上制動性能が向上する。
また、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1に配置された凹部8の70[%]以上(好ましくは80[%]以上)が、細浅溝7の溝深さHg(図5参照)に対して50[%]以上150[%]以下の深さHdを有することが好ましく、80[%]以上120[%]以下の深さHdを有することが好ましい。すなわち、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1では、大半の凹部8の深さHdが細浅溝7の溝深さHgに対して略同一に設定される。これにより、タイヤ摩耗進行時にて、一方の端部領域ER1における大半の凹部8が、細浅溝7と同時期に消滅できる。
さらに、タイヤ周方向の他方の端部領域ER2に配置された凹部8の70[%]以上(好ましくは80[%]以上)が、細浅溝7の溝深さHg(図5参照)に対して120[%]以上の深さHdを有することが好ましく、180[%]以上の深さHdを有することが好ましい。すなわち、タイヤ周方向の他方の端部領域ER2では、大半の凹部8の深さが細浅溝7の溝深さHgよりも大きく設定される。したがって、タイヤ摩耗進行時にて、他方の端部領域ER2における大半の凹部8が、細浅溝7の消滅後も残存する。なお、上記に限らず、すべての凹部8が細浅溝7の消滅と同時あるいは消滅前に消滅しても良い。
なお、上記の構成では、各細浅溝7の溝深さHgが上記0.2[mm]以上0.7[mm]以下の範囲にあるため、一方の端部領域ER1に配置された大半の凹部8の深さが、実質的に0.10[mm]以上1.05[mm]以下の範囲にある。また、上記したように、陸部に配置されたすべての凹部8の深さが、上記0.10[mm]以上2.0[mm]未満の範囲にあることを要する。
また、タイヤ周方向の他方の端部領域ER2に配置された凹部8の70[%]以上、好ましくは80[%]以上が、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1における凹部8の深さの平均値Hde1よりも大きい深さを有することが好ましく、150[%]以上の深さを有することがより好ましく、300[%]以上の深さを有することがさらに好ましい。すなわち、タイヤ周方向の他方の端部領域ER2では、大半の凹部8の深さが一方の端部領域ER1の凹部8の深さよりも大きく設定される。これにより、他方の端部領域ER2における深い凹部8の設置数が確保されて、深い凹部82の機能が適正に確保される。
例えば、図3の構成では、ショルダー陸部33の1つのブロック5が接地面内に合計16個の凹部8を有し、また、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1と他方の端部領域ER2とが6個の凹部8をそれぞれ有している。また、各凹部8が、同一の開口形状および同一の開口面積を有している。具体的には、各凹部8が、円形の開口形状(図4参照)を有し、また、均一な外径Dd1、Dd2(図5参照)を有している。また、図5に示すように、1つのブロック5が、相互に異なる深さHd1、Hd2を有する2種類の凹部81、82を備えている。また、一方の端部領域ER1には、相対的に浅い深さHd1をもつ凹部81のみが配置され、他方の端部領域ER2には、相対的に深い深さHd2をもつ凹部82のみが配置されている。このため、一方の端部領域ER1における凹部8の深さの平均値Hde1が、Hde1=Hd1であり、他方の端部領域ER2における凹部8の深さの平均値Hde2が、Hde2=Hd2である。これにより、各領域における凹部8の深さおよび容積率の条件Hde1<Hde2かつVe1<Ve2が同時に満たされている。また、左右のショルダー陸部33、33(図2参照)にて、すべてのブロック5の凹部8が、上記の条件をそれぞれ満たしている。
また、図3の構成では、図5に示すように、浅い凹部81の深さHd1と細浅溝7の溝深さHgとが、均一に設定されている。また、深い凹部82の深さHd2が、浅い凹部81の深さHd1よりも大きく設定されている。このため、摩耗進行時には、一方の端部領域ER1の浅い凹部81が細浅溝7と同時期に消滅し、その後に他方の端部領域ER2の深い凹部82が消滅する。
同様に、図6の構成では、セカンド陸部32のタイヤ幅方向外側にある1つのブロック5(図2参照)が、接地面内に合計12個の凹部8を有し、また、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1と他方の端部領域ER2とが4個の凹部8をそれぞれ有している。また、各凹部8が、同一の開口形状および同一の開口面積を有している。また、一方の端部領域ER1には、相対的に浅い深さHd1(図5参照)をもつ凹部81のみが配置され、他方の端部領域ER2には、相対的に深い深さHd2をもつ凹部82のみが配置されている。これにより、各領域における凹部8の深さおよび容積率の条件Hde1<Hde2かつVe1<Ve2が同時に満たされている。また、周方向細溝23に区画されたセカンド陸部32の左右のブロック列(図2参照)の凹部8が、上記の条件をそれぞれ満たしている。
同様に、図7の構成では、センター陸部31の1つのブロック5が、接地面内に合計30個の凹部8を有し、また、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1が9個の凹部8を有し、タイヤ周方向の他方の端部領域ER2が合計9個の凹部8を有している。また、各凹部8が、同一の開口形状および同一の開口面積を有している。また、一方の端部領域ER1には、相対的に浅い深さHd1(図5参照)をもつ凹部81のみが配置され、他方の端部領域ER2には、相対的に深い深さHd2をもつ凹部82のみが配置されている。これにより、各領域ER1、ER2における凹部8の深さおよび容積率の条件Hde1<Hde2かつVe1<Ve2が同時に満たされている。また、センター陸部31では、すべてのブロック5の凹部8が、上記の条件を満たしている。
なお、図3、図6および図7の構成では、上記のように、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1には、浅い凹部81のみが配置され、他方の端部領域ER2には、深い凹部82のみが配置されている。しかし、これに限らず、浅い凹部81と深い凹部82とが同一の領域に混在して配置されても良い(図示省略)。
また、図3、図6および図7において、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1における凹部8の深さの平均値Hde1よりも大きい深さを有する凹部82が、他方の端部領域ER2にてタイヤ周方向の最も外側に配置されている。すなわち、一方の端部領域ER1の平均値Hde1よりも深い凹部82が、他の浅い凹部81よりもタイヤ周方向のエッジ部寄りに配置される。ブロック5のエッジ部は、接地圧が高く、氷路面の走行時にて水膜が発生し易い状況にある。したがって、深い凹部82がブロック5のエッジ部に配置されることにより、踏面の水膜が深い凹部82により効率的に吸収される。
また、図3、図6および図7において、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1における凹部8の深さの平均値Hde1よりも大きい深さHd2を有する凹部82が、ブロック5の角部に配置されている。具体的には、周方向溝21〜23とラグ溝41〜43との交差位置(図2参照)に形成されたすべてのブロック5の角部に、深い凹部82が配置されている。さらに、センター陸部31に形成された切欠部311の角部にも、深い凹部82が配置されている(図7参照)。ブロック5の角部は、接地圧が高く、氷路面の走行時にて水膜が発生し易い状況にある。したがって、深い凹部82がブロック5の角部に配置されることにより、氷路面の走行時にて、踏面の水膜が効率的に吸収される。
[タイヤ幅方向における凹部の内壁面形状の相異]
図8〜図12は、凹部の内壁面形状を示す説明図である。図8〜図12では、図示された立体形状が凹部8の内壁面形状を示し、また、立体形状の図面下方の底面がブロック踏面に対する凹部8の開口部を示し、図面上方の底面あるいは頂部が凹部8の底部を示している。図13は、細浅溝および凹部の深さ方向の断面図である。
図8〜図12は、凹部の内壁面形状を示す説明図である。図8〜図12では、図示された立体形状が凹部8の内壁面形状を示し、また、立体形状の図面下方の底面がブロック踏面に対する凹部8の開口部を示し、図面上方の底面あるいは頂部が凹部8の底部を示している。図13は、細浅溝および凹部の深さ方向の断面図である。
上記のように、凹部8は、ブロック5の接地面にて円形あるいは楕円形を有しても良いし、四角形、六角形などの多角形を有しても良い。このとき、凹部8は、ブロック5の内部にて任意の内壁面形状を有し得る。具体的には、凹部8の内壁面形状が、柱形状、錐台形状、錐形状あるいは半球形状などの立体形状を有しても良いし、凹部8の底部を窄めた柱形状の立体形状を有しても良い。
例えば、図4のように、凹部8がブロック5の接地面にて円形の開口部を有する場合には、凹部8の内壁面形状が、円柱形状(図8)、円錐台形状(図9)、二段円柱形状(図10)、凹部8の底部を円錐台状に窄めた円柱形状(図11)、凹部8の底部を球面状に丸めた円柱形状(図12)、半球形状(図示省略)などを有し得る。かかる内壁面形状を有する凹部8は、その加工が容易であり、また、凹部8の機能を適正に確保できる点で好ましい。
また、底部を窄めた柱形状の凹部8では、図10〜図12に示すように、凹部8の深さHdが凹部8の最大深さ位置を測定点として測定され、また、図13に示すように、凹部8の壁角度αが凹部8の開口部におけるブロック5の接地面と凹部8の内壁面とのなす角として測定される。また、凹部8の壁角度αが、−85[deg]≦α≦95[deg]の範囲にあることが好ましい。
ここで、凹部8の容積は、凹部8の内壁面形状により調整できる。例えば、図8に示す円柱形状の凹部8の容積は、凹部8の深さHdが同一であっても、図9〜図12に示す底部側を窄めた形状の凹部8の容積よりも大きい。したがって、相互に異なる内壁面形状をもつ複数種類の凹部8を用いることにより、ブロック5のタイヤ幅方向の各領域ER1、ER2における凹部8の容積率を調整できる。一般に、凹部8の開口面積および深さHdが一定であれば、柱形状の凹部8の容積が、凹部8の底部を窄めた形状の凹部8の容積よりも大きい。
例えば、図2、図3、図6および図7の構成では、上記のようにブロック5が相互に異なる深さを有する2種類の凹部81、82を備え、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1における凹部8の深さの平均値Hde1とタイヤ周方向の他方の端部領域ER2における凹部8の深さの平均値Hde2とがHde1<Hde2の関係を有することにより、凹部8の容積率の条件Ve1<Ve2が満たされている。
しかし、これに限らず、ブロック5が、相互に異なる内壁面形状を有することにより相互に異なる容積を有する2種類の凹部81、82を備え、比較的小さな容積を有する凹部8がタイヤ周方向の一方の端部領域ER1に配置され、比較的大きな容積を有する凹部82がタイヤ周方向の他方の端部領域ER2に配置されることにより、凹部8の容積率の条件Ve1<Ve2が満たされても良い。また、タイヤ周方向の他方の端部領域ER2に配置された凹部8の70[%]以上、好ましくは80[%]以上が、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1における凹部8の容積の平均値Veよりも大きい容積を有することが好ましい。したがって、一部のブロック5(特に、凹部8の配置数を適切に確保できないような小ブロック)の凹部8が、上記条件を具備しなくとも良い。また、トレッド全体では、少なくとも1列の陸部のブロック列が上記条件を満たせば足りる。
上記の構成では、ブロック5のタイヤ周方向の前後の端部領域ER1、ER2が相互に異なる接地特性を有することにより、タイヤの使用状態に応じて、タイヤの雪上性能あるいは氷上性能が向上する。
例えば、図3におけるタイヤ周方向の第一側がタイヤ回転方向である場合には、第一側の端部領域ER1がタイヤ転動時の踏み込み側となり、第二側の端部領域ER2が蹴り出し側となる。このとき、大きい容積率Ve2の凹部82がブロック5の蹴り出し側の端部領域ER2に配置されるので、ブロック5の雪柱剪断作用および排雪作用が増加して、雪上制動性能および雪上加速性能が向上する。
また、例えば、図3におけるタイヤ周方向の第二側がタイヤ回転方向である場合には、第二側の端部領域ER2がタイヤ転動時の踏み込み側となり、第一側の端部領域ER1が蹴り出し側となる。(1)一般に、ブロック5の踏み込み側のエッジ部では、タイヤ接地時の接地圧が蹴り出し側よりも大きいため、氷路面の走行時にて接地圧により路面の氷が溶け易く、水膜が発生し易い。そこで、大きい容積率Ve2の凹部82がブロック5の踏み込み側の端部領域ER2に配置されるので、水膜が発生し易い踏み込み側の踏面の吸水性が向上し、氷路面に対するブロック踏面の密着性(凝着摩擦力)が向上して、タイヤの氷上制動性能が向上する。
例えば、1つのブロック5が接地面内に上記2種類の凹部81、82を備える構成(図2、図3、図6および図7参照)において、第一の凹部81が円錐台形状(図9参照)、二段円柱形状(図10参照)または円柱形状(図11あるいは図12)などの底部を窄めた立体形状を有し、第二の凹部82が、円柱形状(図8参照)を有する。また、各凹部8が、同一の開口形状および同一の開口面積を有する。具体的には、各凹部8が、円形の開口形状を有し(図4参照)、また、均一な外径Dd1、Dd2を有する(図13参照)。また、図13に示すように、各凹部81、82が、均一な深さHd1、Hd2を有する。このため、第一の凹部81の容積が、第二の凹部82よりも小さい。また、一方の端部領域ER1には、小さい容積をもつ凹部81のみが配置され、他方の端部領域ER2には、大きい容積をもつ凹部82のみが配置される。これにより、各領域ER1、ER2における凹部8の容積率の条件Ve1<Ve2が満たされている。
また、図13に示すように、2種類の凹部81、82の深さHd1、Hd2と細浅溝7の溝深さHgとが、均一(具体的には、±10[%]以下)に設定されている。このため、摩耗進行時には、ブロック踏面にある各凹部81、82と細浅溝7とが同時期に消滅する。
なお、上記の構成では、ブロック5に配置された凹部8の70[%]以上、好ましくは80[%]以上が、柱形状あるいは凹部8の底部側を窄めた柱形状の内壁面形状を有すると共に、−85[deg]≦α≦95[deg]の範囲にある壁角度αを有することが好ましい。すなわち、ブロック5に配置された大半の凹部8が、ブロック5の踏面に対して略垂直な内壁面形状を有する。これにより、凹部8のエッジ作用および吸水性が効果的に向上する。
また、上記の構成では、2種類の凹部81、82が、相互に異なる内壁面形状を有する一方で、相互に均一な深さHd1、Hd2を有している(図13参照)。しかし、これに限らず、2種類の凹部81、82が、相互に異なる内壁面形状を有し、同時に、相互に異なる深さHd1、Hd2を有しても良い(図示省略)。また、その結果として、各領域ER1、ER2における凹部8の容積率の条件Ve1<Ve2と深さの平均値の条件Hde1<Hde2とが同時に満たされても良い。これにより、タイヤの氷上制動性能が効果的に高まる。
[変形例1]
図14〜図20は、図4に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図は、サイプ6、細浅溝7および凹部8の位置関係を示している。
図14〜図20は、図4に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図は、サイプ6、細浅溝7および凹部8の位置関係を示している。
図4の構成では、細浅溝7が、タイヤ周方向に対して所定角度θで傾斜して配置されている。かかる構成では、傾斜した細浅溝7により、タイヤ周方向およびタイヤ幅方向の双方へのエッジ成分が生じる点で好ましい。
しかし、これに限らず、細浅溝7が、タイヤ周方向に平行に延在しても良いし(図14参照)、タイヤ幅方向に平行に延在しても良い(図15参照)。
また、図4の構成では、細浅溝7が、直線形状を有している。かかる構成では、細浅溝7の形成が容易な点で好ましい。
しかし、これに限らず、細浅溝7が、ジグザグ形状を有しても良いし(図16参照)、波状形状を有しても良い(図17参照)。このとき、図16および図17のように、複数の細浅溝7が相互に位相を揃えて配置されても良いし、図18のように、相互に位相をずらして配置されても良い。また、図19に示すように、細浅溝7が、屈曲あるいは湾曲した短尺構造を有しても良い。このとき、短尺な細浅溝7が、相互にオフセットしつつ連なって配列されても良いし(図19参照)、マトリクス状に整列して配置されても良い(図示省略)。また、細浅溝7が、円弧形状を有しても良いし(図20参照)、S字形状などの湾曲形状を有しても良い(図示省略)。
また、図16〜図20においても、図4、図14および図15の構成と同様に、細浅溝7が、タイヤ周方向に対して所定角度θで傾斜しても良いし、タイヤ周方向に平行に延在しても良いし、タイヤ幅方向に平行に延在しても良い。なお、細浅溝7がジグザグ形状あるいは波状形状を有する場合には、細浅溝7の傾斜角θがジグザグ形状あるいは波状形状の振幅の中心を基準として測定される。
図21および図22は、図4に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図は、サイプ6、細浅溝7および凹部8の位置関係を示している。
図4の構成では、細浅溝7が、所定方向に延在する線状構造を有している。かかる構成では、細浅溝7が、ブロック5の接地面の全域に渡って連続的に延在できる点で好ましい。
しかし、これに限らず、図21および図22に示すように、細浅溝7が、環状構造を有し、相互に所定間隔をあけて配置されても良い。例えば、細浅溝7が、円形状(図21)あるいは楕円形状(図示省略)、矩形状(図22)、三角形状、六角形状などの多角形状(図示省略)を有し得る。また、かかる構成においても、凹部8が、相互に分離した隣り合う複数の細浅溝7、7に跨って配置される。
図23は、図5に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。同図は、細浅溝71、72および凹部8の深さ方向の断面図を示している。
図5の構成では、すべての細浅溝7が、同一の溝深さHgを有している。
これに対して、図23の構成では、一部の細浅溝71の溝深さHg1が、基準となる細浅溝72の溝深さHg2よりも浅く設定される。かかる構成では、タイヤの摩耗進行により、浅い溝深さHg1を有する細浅溝71が先に消滅し、その後に深い溝深さHg2を有する細浅溝72が消滅する。これにより、すべての細浅溝7が同時に消滅することによるブロック5の性状変化を抑制できる。
図24〜図27は、図4に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図は、サイプ6、細浅溝7および凹部8の位置関係を示している。
図4の構成では、すべての細浅溝7が相互に平行に配置されている。このため、細浅溝7が相互に交差することなく、縞状に配置されている。
しかし、これに限らず、図24〜図27に示すように、細浅溝7が相互に交差あるいは連通して配置されても良い。例えば、図24〜図25のように、複数の細浅溝7が網目状に配置されても良い。このとき、細浅溝7が、タイヤ周方向およびタイヤ幅方向に対して傾斜して配置されても良いし(図24)、タイヤ周方向およびタイヤ幅方向に対して平行に配置されて良い(図25)。また、一部の細浅溝7が、例えば、円弧状、波状など湾曲して配置されても良い(図26)。また、細浅溝7が、環状構造を有して相互に連通して配置されても良い(図27)。例えば、図27の構成では、細浅溝7がハニカム状に配置されている。また、これらの構成においても、凹部8が、相互に交差しない2本以上の細浅溝7に交差して配置される。
[変形例2]
図28は、図2に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。同図は、トレッドパターンの平面図を示している。
図28は、図2に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。同図は、トレッドパターンの平面図を示している。
図2の構成では、上記のように、空気入りタイヤ1が、1つのセンター陸部31、左右一対のセカンド陸部32、32および左右一対のショルダー陸部33、33を備え、各陸部31〜33が複数のブロック5から成るブロック列を有している。また、図3、図6および図7に示すように、すべての陸部31〜33のブロック5が複数の凹部8を有し、ブロック5の一方の端部領域ER1における凹部8の容積率Ve1が小さく、他方の端部領域ER2における凹部8の容積率Ve2が大きく設定されている。
このとき、図2の構成では、すべての陸部31〜33のブロック5が、凹部8の容積率Ve1を小さくした一方の端部領域ER1(図3、図6および図7参照)をタイヤ周方向の第一側に向けて配置されている。このため、ブロック5のタイヤ周方向の接地特性が、トレッド全域でタイヤ周方向の一方向に揃えられている。かかる構成では、所定のタイヤ回転方向に対して、タイヤの氷上性能あるいは雪上性能を効果的に高め得る点で好ましい。
これに対して、図28の構成では、タイヤ赤道面CLを境界とする第一側(図中右側)の領域では、セカンド陸部32およびショルダー陸部33のブロック5が、凹部8の容積率Ve1を小さくした一方の端部領域ER1をタイヤ周方向の第一側に向けて配置されている。逆に、タイヤ赤道面CLを境界とする第二側(図中左側)の領域では、セカンド陸部32およびショルダー陸部33のブロック5が、凹部8の容積率Ve1を小さくした一方の端部領域ER1をタイヤ周方向の第二側に向けて配置されている。このため、ブロック5のタイヤ周方向の接地特性が、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ左右の領域で相互に逆方向に構成されている。かかる構成では、タイヤ幅方向の一方の領域が雪上性能を高める方向に作用し、他方の領域が氷上性能を高める方向に作用する。これにより、タイヤの氷上性能および雪上性能が両立する点で好ましい。
[細浅溝の省略]
図2の構成では、すべての陸部31〜33のブロック5が、複数の細浅溝7を踏面に備えている。しかし、これに限らず、これらの細浅溝7が省略されても良い。
図2の構成では、すべての陸部31〜33のブロック5が、複数の細浅溝7を踏面に備えている。しかし、これに限らず、これらの細浅溝7が省略されても良い。
図29〜図34は、図2に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図において、図29は、空気入りタイヤ1のトレッド面の平面図であり、図30は、図29に記載したショルダー陸部33のブロック5の平面図であり、図31は、図30に記載したブロック5の踏面の拡大図を示し、図32は、図31に記載したブロック5の踏面のB−B視断面図である。また、図33は、ブロック5の踏面に施された表面加工部7の平面図を模式的に示し、図34は、表面加工部7の高さ方向の断面図を模式的に示している。
図29および図30に示すように、陸部31〜33のブロック5が、図2の細浅溝7に代えて、1[μm]以上50[μm]以下の算術平均粗さRaをもつ表面加工部9を接地面に備えても良い。また、算術平均粗さRaが、10[μm]以上40[μm]以下の範囲にあることが好ましい。かかる構成では、突起部間の空隙が氷路面とトレッド面との間に介在する水膜を除去し、また、突起部により路面とトレッド面との摩擦力が増加する。これにより、タイヤ新品時における氷上性能および雪上性能が向上する。
算術平均粗さRaは、JIS B0601(2001年)に準拠して測定される。また、算術平均粗さRaは、陸部に形成されたサイプ6、凹部8、切り欠き、細溝などを除外して測定される。
例えば、図29の構成では、各陸部31〜33のすべてのブロック5の接地面に、図33および図34に示す表面加工部9が施されている。また、表面加工部9が、微細かつ多数の半球状の突起部を接地面の全域に点在させた構造を有する。また、突起部の最大高さHp(図34参照)が、1[μm]以上50[μm]以下の範囲にあり、また、突起部の最大外径Dp(図33参照)が、1[μm]以上50[μm]以下の範囲にある。また、隣り合う突起部の頂部の平均間隔が、5[μm]以上100[μm]以下の範囲にあることが好ましい。
突起部の最大高さHpおよび最大外径Dpは、図33および図34に示すように、突起部の外輪郭線(突起部の外表面とブロックの平面部との交点により定義される。)を測定点として、例えばマイクロスコープを用いて測定される。
なお、図33および図34の構成では、上記のように、表面加工部9の突起部が、半球状を有している。しかし、これに限らず、表面加工部9の突起部が、裁頭半球状、裁頭円錐状、裁頭角錐状などの断面台形状を有しても良いし、円柱状、角柱状などの断面矩形状を有しても良い(図示省略)。
また、図29の構成では、上記のように、各陸部31〜33のすべてのブロック5が、上記した表面加工部9を踏面の全域に有している。しかし、これに限らず、陸部31〜33のブロック5の一部あるいは全部が、あるいは、ブロック5の踏面の一部あるいは全部が、表面加工部9を有なさいプレーンな領域を有しても良い。プレーンな領域は、1[μm]未満の算術平均粗さRaを有する領域として定義される。
ここでは、50[μm]以下の算術平均粗さRaをもつ領域をフラットな領域として定義する。このフラットな領域は、上記表面加工部9をもつ領域および上記プレーンな領域の双方を含む概念である。
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、複数のブロック5をトレッド面に備える(図2参照)。また、ブロック5が、相互に異なる深さ方向の立体形状を有することにより相互に異なる容積を有する複数種類の凹部8(81、82)を接地面に備える(図3参照)。また、1つのブロック5の接地面をタイヤ周方向に三等分して一対の端部領域を定義するときに、一方の端部領域ER1における凹部8の容積率Ve1と、他方の端部領域ER2における凹部8の容積率Ve2とが、Ve1<Ve2の関係を有する。
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、複数のブロック5をトレッド面に備える(図2参照)。また、ブロック5が、相互に異なる深さ方向の立体形状を有することにより相互に異なる容積を有する複数種類の凹部8(81、82)を接地面に備える(図3参照)。また、1つのブロック5の接地面をタイヤ周方向に三等分して一対の端部領域を定義するときに、一方の端部領域ER1における凹部8の容積率Ve1と、他方の端部領域ER2における凹部8の容積率Ve2とが、Ve1<Ve2の関係を有する。
かかる構成では、(1)ブロック5が凹部8を接地面に備えるので、タイヤ接地時における凹部8の吸水作用により、氷路面に対するブロック踏面の密着性が向上する。これにより、タイヤの氷上制動性能が向上する利点がある。また、凹部8によりブロック5のエッジ成分が増加して、雪路における雪柱剪断力(いわゆる掘り起こし力)が増加する。これにより、タイヤの雪上性能が向上する利点がある。また、(2)ブロック5のタイヤ周方向の前後の端部領域ER1、ER2が相互に異なる接地特性を有することにより、タイヤの使用状態(特に、タイヤの回転方向)に応じて、タイヤの雪上性能あるいは氷上性能が向上する利点がある。また、(3)凹部8が、サイプ(例えば、線状サイプ6や円形サイプ(図示省略))と比較して浅いので、ブロック5の剛性が適正に確保される。これにより、タイヤの氷上制動性能が確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、一方の端部領域ER1における凹部8の容積率Ve1と、他方の端部領域ER2における凹部8の容積率Ve2とが、1.50≦Ve2/Ve1の関係を有する(例えば、図3参照)。これにより、各領域ER1、ER2における凹部8の容積率の比Ve2/Ve1が確保されて、凹部8の容積率の偏りによる作用が適正に得られる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、一方の端部領域ER1(例えば、図3参照)における凹部8の開口面積率Se1と、他方の端部領域ER2における凹部8の開口面積率Se2とが、0.90≦Se2/Se1≦1.10の関係を有する(例えば、図3参照)。これにより、各領域ER1、ER2の接地面積を均一化しつつ、各領域ER1、ER2における凹部8の容積率Ve1、Ve2に差を形成できる。
また、この空気入りタイヤ1では、一方の端部領域ER1における凹部8の配置数Ne1と、他方の端部領域ER2における凹部8の配置数Ne2とが、0.90≦Ne2/Ne1≦1.10の関係を有する(例えば、図3を参照)。かかる構成では、凹部8の配置密度が各領域ER1、ER2で均一化されるので、凹部8の容積率Ve1、Ve2の偏在に起因するブロック5の接地特性の過剰な変化を抑制できる。
また、この空気入りタイヤ1では、連続した接地面に配置された凹部8の開口面積の最大値A_maxと最小値A_minとが、1.00≦A_max/A_min≦1.10の関係を有する(例えば、図3を参照)。これにより、凹部8の開口面積のばらつきに起因するブロック5の接地特性の過剰な変化を抑制できる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、ブロック5に配置されたすべての凹部81、82の容積の平均値よりも大きい容積をもつ凹部82が、他方の端部領域ER2にてタイヤ周方向の最も外側に配置される(例えば、図3を参照)。これにより、異なる容積をもつ凹部81、82を偏在させたことによる作用を効果的に得られる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、ブロック5が、相互に異なる深さHd1、Hd2を有することにより相互に異なる容積を有する複数種類の凹部8(81、82)を備える(図5参照)。また、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1における凹部8の深さの平均値Hde1と、タイヤ周方向の他方の端部領域ER2における凹部8の深さの平均値Hde2とが、Hde1<Hde2の関係を有する(例えば、図3を参照)。かかる構成では、各領域ER1、ER2における凹部8の深さの平均値Hde1、Hde2が異なることにより、各領域ER1、ER2における凹部8の容積率の条件Ve1<Ve2を効率的に設定できる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1における凹部8の深さの平均値Hde1と、タイヤ周方向の他方の端部領域ER2における凹部8の深さの平均値Hde2とが、1.50≦Hde2/Hde1の関係を有する。これにより、各領域ER1、ER2における凹部8の深さの平均値の比Hde2/Hde1が確保されて、凹部8によるタイヤの雪上性能あるいは氷上性能の向上作用が適正に得られる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1に配置された凹部8の70[%]以上が、細浅溝7の溝深さHgに対して50[%]以上150[%]以下の深さHdを有する。かかる構成では、タイヤ摩耗進行時にて、一方の端部領域ER1における大半の凹部8が、細浅溝7と同時期に消滅する。これにより、トレッドゴムの接地領域の表面が摩滅して十分な機能を発揮する状態となったときに、トレッド部の接地面積を十分に確保できる利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ周方向の他方の端部領域ER2に配置された凹部8の70[%]以上が、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1における凹部8の深さの平均値Hde1よりも大きい深さを有する(例えば、図3参照)。これにより、他方の端部領域ER2における深い凹部8の設置数が確保されて、深い凹部8の機能が適正に確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、ブロック5が、相互に異なる内壁面形状を有することにより相互に異なる容積を有する複数種類の凹部8(81、82)を備える(図13参照)。また、タイヤ周方向の他方の端部領域ER2に配置された凹部8の70[%]以上が、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1における凹部8の容積の平均値Ve1よりも大きい容積を有する。これにより、他方の端部領域ER2における大きな容積の凹部8の設置数が確保されて、深い凹部8の機能が適正に確保される利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、ブロック5の接地面に配置された凹部8の70[%]以上が、柱形状(例えば、図8では円柱形状)あるいは凹部8の底部側を窄めた柱形状(例えば、図10の二段円柱形状、図11および図12の底部側を円錐台形状あるいは半球形状に窄めた円柱形状)の内壁面形状を有すると共に、−85[deg]≦α≦95[deg]の範囲にある壁角度α(図13参照)を有する。これにより、凹部8のエッジ作用および吸水性が効果的に向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、凹部8(81、82)の深さが、0.10[mm]以上2.0[mm]未満の範囲にある。これにより、凹部8の深さが適正化される利点がある。すなわち、上記数値範囲の下限により、凹部8の機能が適正に確保され、また、上記数値範囲の上限により、ブロック5の剛性が適正に確保される。
また、この空気入りタイヤ1は、タイヤ回転方向を示す表示部(図示省略)を備え、且つ、一方の端部領域ER1(凹部81の容積率Ve1が小さい領域。図3参照。)がタイヤ回転方向の踏み込み側にあることが好ましい。かかる構成では、ブロック5の蹴り出し側の端部領域ER2における凹部82の容積率Ve2が大きいので、ブロック5の雪柱剪断作用および排雪作用が増加して、雪上制動性能および雪上加速性能が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ回転方向を示す表示部を備え(図示省略)、且つ、タイヤ周方向の一方の端部領域ER1(凹部81の容積率Ve1が小さい領域。図3参照。)がタイヤ回転方向の蹴り出し側にあることが好ましい。かかる構成では、ブロック5の踏み込み側の端部領域ER2における凹部82の容積率Ve2が大きいので、水膜が発生し易い踏み込み側の踏面の吸水性が向上し、氷路面に対するブロック踏面の密着性(凝着摩擦力)が向上して、タイヤの氷上制動性能が向上する利点がある。また、(2)ブロック5の蹴り出し側の端部領域ER1における凹部81の容積率Ve1が小さいので、ブロック5の蹴り出し側の接地面積が確保されて、氷上制動性能および氷上加速性能が向上する利点がある。
図35および図36は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)雪上制動性能、(2)雪上加速性能、(3)氷上制動性能および(4)氷上旋回性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ195/65R15の試験タイヤがリムサイズ15×6Jのリムに組み付けられ、この試験タイヤに230[kPa]の空気圧およびJATMA規定の最大負荷が付与される。また、試験タイヤが、試験車両である排気量1600[cc]かつFF(Front engine Front drive)方式のセダンに装着される。
(1)雪上制動性能に関する評価では、試験車両が雪路試験場のスノー路面を走行し、駆動性能および走行速度40[km/h]からの制動距離が測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
(2)雪上加速性能に関する評価では、試験車両が雪路試験場のスノー路面を走行し、完全停止状態から走行速度20[km/h]に至るまでの加速タイムが測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
(3)氷上制動性能に関する評価では、試験車両が所定の氷路面を走行し、走行速度40[km/h]からの制動距離が測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
(4)氷上旋回性能に関する評価では、試験車両が所定の氷路面を半径6[m]の円に沿って旋回走行して、その走行タイムが計測される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
図35および図36において、実施例1〜7、9〜15の試験タイヤは、図2のトレッドパターンを備え、図3、図6および図7に示すように、各陸部31〜33のブロック5がサイプ6、細浅溝7および凹部8をそれぞれ有する。また、図4に示すように、直線状の細浅溝7がタイヤ周方向に傾斜しつつ平行に配置されてブロック5を貫通する。また、細浅溝7の配置間隔が、P=1.2[mm]である。また、トレッド面にあるすべての凹部8が、円形の開口部を有し、また、一定(3.2[mm^2])の開口面積を有する。また、すべてのブロック5にて、タイヤ周方向の端部領域ER1における凹部8の配置数Ne1と端部領域ER2における凹部8の配置数Ne2とが、等しい(Ne1=Ne2)。また、トレッド全域における凹部8の配置密度Daの平均値が2.0[個/cm^2]である。また、すべての凹部8が、円柱形状(図8参照)の内壁面形状を有する。このため、各領域ER1、ER2における凹部8の容積率比Ve2/Ve1が、各領域ER1、ER2における凹部8の深さの平均値の比Hde2/Hde1に等しい。また、実施例8、16の試験タイヤは、実施例2、10の構成において、ブロック5の踏面が、細浅溝7に代えて、20[μm]の平均算術粗さRaをもつ表面加工部9(図29〜図34参照)を備えている。なお、表中の「ER1」は、小さい容積率Ve1をもつ一方の端部領域ER1を示し、「ER2」は、大きい容積率Ve2をもつ他方の端部領域ER2を示している。
また、図359の実施例1〜8では、試験タイヤが、タイヤ周方向の第一側(図2参照)をタイヤ回転方向に向けて試験車両に装着される。このため、タイヤ転動時にて、小さい容積率Ve1をもつ一方の端部領域ER1(図3、図6および図7参照)が踏み込み側となり、大きい容積率Ve2をもつ他方の端部領域ER2が蹴り出し側となる。そして、この装着状態にて、(1)雪上制動性能および(2)雪上加速性能に関する評価が行われる。
一方、図36の実施例9〜16では、試験タイヤが、タイヤ周方向の第二側をタイヤ回転方向に向けて試験車両に装着される。このため、タイヤ転動時にて、小さい容積率Ve1をもつ一方の端部領域ER1が蹴り出し側となり、大きい容積率Ve2をもつ他方の端部領域ER2が踏み込み側となる。そして、この装着状態にて、(3)氷上制動性能および(4)氷上旋回性能に関する評価が行われる。
従来例の試験タイヤでは、実施例1、9の構成において、ブロック5がサイプ6および細浅溝7のみを有し、凹部8を有していない。比較例の試験タイヤは、実施例1、9の構成において、ブロック5のタイヤ周方向の前後の端部領域ER1、ER2(図3参照)における凹部8の容積率比が、Ve2/Ve1=1.00である。
試験結果に示すように、実施例1〜16の試験タイヤでは、タイヤの氷上性能あるいは雪上性能が向上することが分かる。
1:空気入りタイヤ、21、22:周方向主溝、23:周方向細溝、31〜33:陸部、311:切欠部、41〜43:ラグ溝、5:ブロック、6:サイプ、7:細浅溝、8:凹部、9:表面加工部、11:ビードコア、12:ビードフィラー、13:カーカス層、14:ベルト層、141、142:交差ベルト、143:ベルトカバー、15:トレッドゴム、16:サイドウォールゴム、17:リムクッションゴム
Claims (15)
- 複数のブロックをトレッド面に備える空気入りタイヤにおいて、
前記ブロックが、相互に異なる深さ方向の立体形状を有することにより相互に異なる容積を有する複数種類の凹部を接地面に備え、且つ、
1つの前記ブロックの接地面をタイヤ周方向に三等分して一対の端部領域を定義するときに、
一方の前記端部領域における前記凹部の容積率Ve1と、他方の前記端部領域における前記凹部の容積率Ve2とが、Ve1<Ve2の関係を有することを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記一方の端部領域における前記凹部の容積率Ve1と、前記他方の端部領域における前記凹部の容積率Ve2とが、1.50≦Ve2/Ve1の関係を有する請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記一方の端部領域における前記凹部の開口面積率Se1と、前記他方の端部領域における前記凹部の開口面積率Se2とが、0.90≦Se2/Se1≦1.10の関係を有する請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記一方の端部領域における前記凹部の配置数Ne1と、前記他方の端部領域における前記凹部の配置数Ne2とが、0.90≦Ne2/Ne1≦1.10の関係を有する請求項1〜3のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
- 前記連続した接地面に配置された前記凹部の開口面積の最大値A_maxと最小値A_minとが、1.00≦A_max/A_min≦1.10の関係を有する請求項1〜4のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
- 前記ブロックに配置されたすべての前記凹部の容積の平均値よりも大きい容積をもつ前記凹部が、前記他方の端部領域にてタイヤ周方向の最も外側に配置される請求項1〜5のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
- 前記ブロックが、相互に異なる深さを有することにより相互に異なる容積を有する複数種類の前記凹部を備え、且つ、
前記一方の端部領域における前記凹部の深さの平均値Hde1と、前記他方の端部領域における前記凹部の深さの平均値Hde2とが、Hde1<Hde2の関係を有する請求項1〜6のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。 - 前記一方の端部領域における前記凹部の深さの平均値Hde1と、前記他方の端部領域における前記凹部の深さの平均値Hde2とが、1.50≦Hde2/Hde1の関係を有する請求項7に記載の空気入りタイヤ。
- 前記ブロックが、複数の細浅溝を備え、
前記一方の端部領域に配置された前記凹部の70[%]以上が、前記細浅溝の溝深さに対して50[%]以上150[%]以下の深さを有する請求項7または8に記載の空気入りタイヤ。 - 前記他方の端部領域に配置された前記凹部の70[%]以上が、前記一方の端部領域における前記凹部の深さの平均値Hde1よりも大きい深さを有する請求項7〜9のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
- 前記ブロックが、相互に異なる内壁面形状を有することにより相互に異なる容積を有する複数種類の前記凹部を備え、且つ、
前記他方の端部領域に配置された前記凹部の70[%]以上が、前記一方の端部領域における前記凹部の容積の平均値よりも大きい容積を有する請求項1〜10のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。 - 前記ブロックの接地面に配置された前記凹部の70[%]以上が、柱形状あるいは前記凹部の底部側を窄めた柱形状の内壁面形状を有すると共に、−85[deg]≦α≦95[deg]の範囲にある壁角度αを有する請求項1〜11のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
- 前記凹部の深さが、0.10[mm]以上2.0[mm]未満の範囲にある請求項1〜12のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
- タイヤ回転方向を示す表示部を備え、且つ、前記一方の端部領域が前記タイヤ回転方向の踏み込み側にある請求項1〜13のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
- タイヤ回転方向を示す表示部を備え、且つ、前記一方の端部領域が前記タイヤ回転方向の蹴り出し側にある請求項1〜13のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
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-
2016
- 2016-04-28 JP JP2016091900A patent/JP2017197149A/ja active Pending
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