JP2017196897A - バガス繊維によるコンポジット成形材の製造方法 - Google Patents

バガス繊維によるコンポジット成形材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、サトウキビ特有の甘い臭気が除去された、表面が滑らかなコンポジット成形材を提供することを課題とする。【解決手段】バガス繊維を、無水酢酸に浸漬させて加熱することでアセチル化(バガス繊維の水酸基をアセチル基に変換)した後、ポリプロピレンと混練してコンポジットを射出成形または熱プレスすることで、表面の平滑性を維持しつつ、サトウキビ特有の甘い臭気が大幅に減臭されたコンポジット成形材を得られることを特徴とするバガス繊維によるコンポジット成形材の製造方法。【選択図】図2

Description

本発明は、サトウキビの搾り残渣であるバガス繊維とポリプロピレンを混錬したコンポジット成形材の製造方法に関する。
近年、サトウキビの搾り残渣であるバガス繊維とポリプロピレンを混練してコンポジットペレットを作製後、射出成形あるいは熱プレスすることで得られる植物繊維複合材の生産が行われている。
バガス繊維は、高強度、軽量でありながら、安価に大量に入手でき、また、ポリプロピレンは、汎用性の高いプラスチックの中で最も比重が小さく、耐熱性、耐久性に優れ、これも安価で入手できることから、バガス繊維とポリプロピレンによる複合材は、安価なコンポジット成形材として様々な分野での利用が期待できる。
しかし、粗水性であるポリプロピレンと親水性であるバガス繊維は、もともと混練しても馴染みは良くない。
そこで、無水マレイン酸によりグラフト重合された変性ポリプロピレンをバガス繊維とポリプロピレンに混練して繊維と樹脂の密着性を改善して、バガス繊維とポリプロピレンによるコンポジット成形材の剛性、強度および衝撃値を増加させる方法が知られている(特許文献1)。
ところが、乾燥状態のバガス繊維、ポリプロピレン、変性ポリプロピレンを混練するには、200℃前後という高温の加熱処理が必要であり、さらに、混練時に繊維同士の接触や、繊維とポリマー間、繊維と金属表面間の摩擦に起因した摩擦熱が発生する結果、バガス繊維が局所的に更に加熱されて熱分解を生じ、炭化したり、ポリマーが着色するなどして、金型を汚染するほか、不快な臭気を発するなどの問題があった。
そこで、本発明者は、バガス繊維に残留している糖分を温水により除去することで、金型の汚染を低減させ、コンポジット成形材の耐熱温度を50℃以上増加させる方法を見出した。
しかし、その方法によっても、サトウキビ特有の甘い臭気が残留してしまうほか、空気中の水分を吸湿して表面に凹凸が生じ、平滑性の劣化を低減できないことから、例えば、自動車の内装部品などの身近な製品に利用されるまでには至っていない。
特許第4370416号公報 特開2015-13916号公報
本発明は、上記観点からなされたものであり、サトウキビの搾り残渣であるバガス繊維とポリプロピレンを混練して成形したコンポジット成形材であって、表面が滑らかで、サトウキビ特有の甘い臭気が除去されたコンポジット成形材を提供することを課題とする。
なお、特許文献2には、植物繊維に樹脂材を複合させた植物繊維強化熱可塑性樹脂材の着色の進行および異臭の発生を防ぎ、金型表面に付着するヤニ状成分を低減する発明が開示されているが、当該発明における植物繊維とは、果実や油分が除去された後のパームヤシ果房の残渣の繊維のことであるから、本願発明が目的とするバガス繊維とは、搾汁後に残留する油分あるいは糖分等の化学組成の点で異なる。
つまり、特許文献2に係る発明において目的としている異臭の低減とは、植物繊維強化熱可塑性樹脂材の製造過程における「焦げ」に起因して発生する異臭を対象とするものであり、本願発明が目的とするバガス繊維のように「残留する糖分」に起因して発生するサトウキビ特有の甘い臭気とは異なる。
本発明に係るバガス繊維によるコンポジット成形材の製造方法は、
バガス繊維を、
無水酢酸に浸漬させて加熱することでアセチル化(バガス繊維の水酸基をアセチル基に変換)した後、
ポリプロピレンと混練してコンポジットを射出成形または熱プレスすることで、
表面の平滑性を維持しつつ、サトウキビ特有の甘い臭気が大幅に減臭されたコンポジット成形材を得られる
ことを特徴とする。
1)本発明に係るコンポジット成形材は、従来の植物繊維複合材に比べ、吸水が抑制されることで、表面粗さ(Rz)の経時的な増加が抑えられ、平滑性の劣化を低減できる。
2)本発明に係るコンポジット成形材は、アセチル化処理の前にアルカリ処理を行うことで、従来の植物繊維複合材に比べて、経時的な機械的性質の劣化が抑制され、更なる機械的性質を向上できる。
3)本発明に係るコンポジット成形材は、従来のバガス繊維複合材に比べ、その物性を損なうことなく成形材表面の平滑性が維持されるとともに、サトウキビ特有の甘い臭気を大幅に緩和し、刺激臭も抑えられることから、居住空間や人が触れる製品(例えば建材や自動車の内装部品など)への利用も可能になる。
実施例1に係るコンポジット成形材の重量増加率を示したグラフ 実施例1に係るコンポジット成形材を撮影した写真 実施例1に係るコンポジット成形材を撮影した写真 実施例1に係るコンポジット成形材の表面粗さを示したグラフ 実施例1に係るコンポジット成形材の表面粗さを示したグラフ 実施例1に係るコンポジット成形材の時間経過毎の表面粗さ及び吸水率の測定結果を示したグラフ 実施例1に係るコンポジット成形材の機械的性質の変化を示したグラフ 実施例1に係るコンポジット成形材の機械的性質の違いを示したグラフ コンポジット成形材の表面を撮影した顕微鏡写真 コンポジット成形材の表面を撮影した顕微鏡写真 コンポジット成形材の表面を撮影した顕微鏡写真 コンポジット成形材の表面を撮影した顕微鏡写真 コンポジット成形材の表面を撮影した顕微鏡写真 コンポジット成形材の表面を撮影した顕微鏡写真 コンポジット成形材の表面を撮影した顕微鏡写真 コンポジット成形材の表面を撮影した顕微鏡写真 臭気官能試験の結果を示した表 臭気官能試験の結果を示した表 実施例2に係るコンポジット成形材の水分減少率を示したグラフ 実施例2に係るコンポジット成形材の重量増加率を示したグラフ 実施例2に係るコンポジット成形材の重量増加率を示したグラフ 実施例2に係るコンポジット成形材の機械的性質の変化を比較したグラフ コンポジット成形材の表面を撮影した顕微鏡写真 コンポジット成形材の表面を撮影した顕微鏡写真 コンポジット成形材の表面を撮影した顕微鏡写真 コンポジット成形材の表面を撮影した顕微鏡写真 コンポジット成形材の表面を撮影した顕微鏡写真 コンポジット成形材の表面を撮影した顕微鏡写真 臭気官能試験の結果を示した表 臭気官能試験の結果を示した表 臭気官能試験の結果を示した表 臭気官能試験の結果を示した表 臭気官能試験の結果を示した表
(実施例1)
1.本発明に係るバガス繊維によるコンポジット成形材の製造方法を、以下のとおり説明する。
(1)バガス繊維の篩い分け
バガス繊維を、メッシュ18(平均繊維長:3.00mm、平均繊維幅:0.4mm)を使って篩い分けた。
(2)脱糖処理
篩い分けたバガス繊維を、繊維重量の20倍量の水(イオン交換水、80℃)に10分間浸漬させて洗浄した。
これを2回繰り返すことで、バガス繊維に含まれる残留糖分を除去することができる。
その後、バガス繊維を、80℃の定温乾燥機(強制対流方式)で、24時間乾燥させた。
なお、この脱糖処理は、常温の水よりも高温の水(熱水)に浸漬させて行うほうが脱糖の効果は高い。
また、本実施例では、脱糖処理は、後記するアセチル化処理の前に行っているが、アセチル化処理の後に行うこともでき、その場合でも脱糖の効果は同様に得られる。
(3)アセチル化処理の前処理
乾燥させたバガス繊維を、繊維重量の20倍量の酢酸(80℃)に1時間浸漬させ、酢酸から取り出したバガス繊維を常温の無水酢酸に1分間浸漬させた。
(4)アセチル化処理
バガス繊維を無水酢酸に浸漬させた状態で120℃に熱し続けた(以下、この加熱処理を「アセチル化処理」という。)。
本実施例における「アセチル化」とは、水酸基をアセチル基に変換することを意味し、ピリジン、塩化亜鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ジメチルホルムアミド、トリフルオロ酢酸等の触媒を用いることもできる。
また、バガス繊維の水酸基をアセチル基に変換できれば、本実施例における「アセチル化処理」以外にも、エステル化、カルバメート化、ホルマール化、エポキシ化、アルデヒド化、無機質複合化などの種々の処理によっても代用できる。
なお、アセチル化処理の処理時間(加熱時間)は、加熱時間とバガス繊維の重量変化との関係を調べるため、0、0.5、1、2、3、4時間に設定してそれぞれ行った。
アセチル化処理の後、水(イオン交換水)で洗浄し、定温乾燥機(強制対流方式)で24時間乾燥した。
乾燥後、バガス繊維の重量を測定し、アセチル化処理の前後の重量変化から重量増加率を算出した。
バガス繊維のアセチル化処理による重量増加結果は次のとおりである。
図1は、アセチル化処理の加熱時間毎の重量増加率を表したグラフである。
グラフの縦軸はバガス繊維の重量増加率を示し、横軸は加熱時間を示している。
この結果から、加熱時間を長くするほどバガス繊維の重量増加率が上昇する傾向にあることが判明した。
しかし、加熱時間が2時間のときのバガス繊維の重量増加率は、アセチル化処理前の乾燥バガス繊維と比較して15%を上回っているが、加熱時間が3時間、4時間のときと比べても大差がないことが判明した。
さらに、アセチル化処理の前処理である、無水酢酸による常温での浸漬を1分間ではなく数時間にした試料「A」や、アセチル化処理の加熱時間を21時間にした試料「B」についても、バガス繊維の重量増加率に大きい変化は見られなかった。
アセチル化することでセルロース中の水酸基がアセチル基に置換されるため、分子量の違いからバガス繊維の重量は増加すると予想していたが、加熱時間が2時間を超えてもバガス繊維の重量増加率に変化が見られなかったのは、セルロースの3つの水酸基全てがアセチル基に置換される結果、トリアセチルセルロースとなり、これ以上反応することができなくなったためだと推測される。
この結果から、バガス繊維のアセチル化処理(官能基を置換させるための処理)に必要な、バガス繊維を無水酢酸に浸漬させた状態での加熱時間は、2時間以上必要であり、2〜4時間が適当であるといえる。
(5)複合ペレットの作製
乾燥させたバガス繊維を、混練機でポリプロピレンペレットと混練(温度210℃、バガス繊維とポリプロピレンの混合比率は40wt%)し、複合ペレットを作製した。
なお、バガス繊維を混錬させる母材は、本実施例ではポリプロピレンを用いたが、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂であれば好適に使用できる。
(6)コンポジット成形材の作製
複合ペレットを、プレス成形機でプレスし、直径30mm、厚さ1mm程度の円形コンポジットを作製した。
プレスは、温度200℃、圧力50kgf/cm2で1分間、その後100kgf/cm2に圧力をあげて4分間行った。
その後、水で5分間冷却した。
なお、本実施例では、コンポジット成形材を熱プレスによって作製しているが、射出成形など種々の方法でも作製できる。
2.作製したコンポジット成形材に対する各試験の説明と試験結果は、次のとおりである。
(1)表面粗さ試験
コンポジット成形材の表面粗さに関する経時変化を観察した。
図2は、バガス繊維を脱糖処理のみ行い、アセチル化処理をしなかったコンポジット成形材を撮影した写真であり、図3は、バガス繊維を脱糖処理後にアセチル化処理したコンポジット成形材を撮影した写真である。
また、図2及び3の「(A)0day」は、コンポジット成形材の作製当日に撮影した写真であり、図2及び3の「(B)7th day」は、コンポジット成形材作製後7日目(1週間目)に撮影した写真である。
写真は、コンポジット成形材の表面に光を当てて、表面の状態が分かるように撮影した。
バガス繊維を脱糖処理のみ行い、アセチル化処理をしなかったコンポジット成形材は、作製後1週間でバガス繊維が表面に大きく露出していることが確認できた。
それに対して、バガス繊維を脱糖処理後にアセチル化処理したコンポジット成形材は、作製後1週間経過しても表面に大きな変化は見られなかった。
アセチル化処理によって表面の凹凸変形が抑制できていることが肉眼でも明確に確認できた。
図4及び5は、コンポジット成形材の、作製直後と、作製後12週間水に浸漬させたときとで、表面粗さを比較したグラフである。
特に、図4は、バガス繊維を脱糖処理のみ行い、アセチル化処理を行わなかったコンポジット成形材に対する結果であり、図5は、バガス繊維を脱糖処理後にアセチル化処理したコンポジット成形材に対する結果である。
バガス繊維を脱糖処理のみ行い、アセチル化処理をしなかったコンポジット成形材は、図4のとおり、水に12週間浸漬させると表面が粗くなるのに対し、バガス繊維を脱糖処理後にアセチル化処理したコンポジット成形材は、図5のとおり、水に12週間浸漬させても表面の粗さに殆ど変化は無かった。
図6は、コンポジット成形材を水に浸漬させた後の時間経過毎の表面粗さ及び吸水率を表したグラフである。
グラフの左縦軸は表面粗さ(Rz)を示し、右縦軸は吸水率を示す。
アセチル化処理を全くしていないコンポジット成形材(「Acetylation 0h」)と、アセチル化処理を4時間したコンポジット成形材(「Acetylation 4h」)との結果から、アセチル化処理をしたことで、表面粗さ(Rz)は約75%、吸水率は約58%、それぞれ抑制できることが分かった。
これは、アセチル化処理によってセルロース中の水酸基がアセチル基に置換される結果、細胞壁のポリマーによる水素結合が抑制され、細胞壁中の水分の吸着が減少した結果、吸水率が抑制されたと推測される。
また、水分の吸脱着による細胞壁の膨張・収縮の可逆変化が減少したことで繊維そのものの寸法安定効果が生じ、同時に吸水によるスプリングバックの発生が減少したため、表面粗さ(Rz)が低減されたと推測される。
(2)曲げ試験
図7は、コンポジット成形材の時間経過に伴う機械的性質の変化を表したグラフである。
グラフの左縦軸は曲げ弾性係数、右縦軸は曲げ強度を示している。
コンポジット成形材を、作製直後から水に浸漬させ、1週間、12週間経過した時の機械的性質について試験した。
アセチル化処理を全くしていないコンポジット成形材(「Acetylation 0h」)と、アセチル化処理を4時間したコンポジット成形材(「Acetylation 4h」)との結果から、アセチル化処理をしたことで、機械的性質の劣化を抑制できることが分かった。
しかし、アセチル化処理をしても、水に12週間浸漬させると機械的性質が劣化することも確認できた。
図6の吸水率の試験結果のとおり、アセチル化処理を4時間したコンポジット成形材は、アセチル化処理をしなかったコンポジット成形材に比べて、水に浸漬させてから約400h(約16日)の間、約6%吸水率が増加した状態が続いていることから、アセチル化処理を4時間することで、水に浸漬させてから400h経過するまでの間、吸水による繊維の膨張やスプリングバックが発生していたと推測される。
それによってバガス繊維が変形し、母材(本実施例では「ポリプロピレン」)とバガス繊維との接着性が弱化することで機械的性質が劣化したと推測される。
しかし、アセチル化処理を4時間したコンポジット成形材は、アセチル化処理をしなかったコンポジット成形材と比べると、表面粗さ(Rz)の増加は約75%少ないことから、バガス繊維の変形も、アセチル化処理をしなかったコンポジット成形材と比べると微少であったと推測される。
このことから、アセチル化処理をすることで、機械的性質の劣化が抑制されることは明らかに認めることができる。
図8は、バガス繊維に対する処理の違いがもたらすコンポジット成形材の機械的性質への影響を示したグラフである。
試料の違い(バガス繊維に対する処理の違い)は、次のとおりである。
(A)脱糖処理のみ行い、アセチル化処理をしなかったコンポジット成形材
(B)脱糖処理後、アセチル化処理を4時間行ったコンポジット成形材
(C)脱糖処理後、アルカリ処理のみ行い、アセチル化処理を行わなかったコンポジット成形材
(D)脱糖処理後、アルカリ処理したうえで、アセチル化処理を4時間行ったコンポジット成形材
本実施例における「アルカリ処理」とは、バガス繊維と水酸化ナトリウム水溶液5%を1:20の重量割合で混ぜ、45分間100℃で熱したうえ、水で洗浄する処理を3回繰り返した工程を意味する。
なお、「アルカリ処理」の目的は解繊であるため、水酸化ナトリウム以外に、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウムを代用することもできる。
また、ミルサーやウォータージェット等の機械的な力で粉砕、粉砕したり、爆砕する方法(例えば、バガス繊維を圧力釜の中で180〜230℃の水蒸気で一定時間、加熱加圧した後、瞬時にバルブを開けて水蒸気とともに釜から放出させる方法)も使用できる。
(B)、(C)、(D)のいずれも、(A)と比較して、機械的性質が向上していた。
さらに、(D)は、(A)と比べて、曲げ弾性係数が約1.25倍、曲げ強度が約1.5倍、それぞれ上昇した。
これは、アルカリ処理によってセルロース繊維間を強固に吸着しているリグニンが除去され、解繊により、バガス繊維が細繊化されたことで、バガス繊維とポリプロピレンの界面接着性が改善し、機械的性質が向上したと推測できる。
アセチル化によって親水性を有する水酸基が疎水性を有するアセチル基で置換されるため、水に対する親和性が低下してバガス繊維同士の凝集力が弱化し、機械的物性に悪影響を及ぼしていたバガス繊維同士の塊が減少する結果、バガス繊維とポリプロピレンとの分散性が増し、機械的性質が向上したと推測される。
また、アルカリ処理により解繊されたバガス繊維がアセチル化処理により疎水変性することで、凝集することなく均一に分散したため、機械的性質が更に向上したと推測される。
(3)顕微鏡観察
図9乃至12は、バガス繊維を脱糖処理のみ行い、アセチル化処理をしなかったコンポジット成形材を、その作製後12週間水に浸漬させて、表面を複数個所撮影した顕微鏡写真である。
図9の写真からは、バガス繊維は表面に露出しておらず、バガス繊維とポリプロピレンが接着していることが確認でき、図10の写真からは、バガス繊維が表面に露出しており、バガス繊維とポリプロピレンとの間に間隙が生じていることが確認できる。
また、図11及び12の写真からは、1本のバガス繊維が線状に裂けている様子が確認できる。
図11及び12の写真のような状態になったのは、バガス繊維が吸水によって膨張し、表面に露出すると同時に、ポリプロピレンによって固定されたバガス繊維が膨張する力に耐え切れず、裂けてしまったのではないかと推測される。
これらの観察結果から、バガス繊維は吸水すると膨張し、コンポジット成形材の表面に露出して表面粗さを増加させる原因になっていることが分かった。
また、撮影した箇所によって表面の状態に違いが見られたのは、混練・プレス成形時にポリプロピレンに偏りが生じたためだと推測される。
つまり、ポリプロピレンが多い箇所では、コンポジット成形材の表面がポリプロピレンに覆われることでバガス繊維の吸水が阻まれ、バガス繊維の膨張が抑制されたために図9の写真のようにバガス繊維が表面に露出せず、逆に、ポリプロピレンが少ない箇所では、ポリプロピレンがバガス繊維の吸水を阻むことができなくなるため、吸水したバガス繊維が膨張して図10乃至12の写真のようにバガス繊維が表面に露出したと推測される。
図13乃至16は、バガス繊維を脱糖処理後にアセチル化処理をしたコンポジット成形材を、その作製後12週間水に浸漬させて、表面を複数個所撮影した顕微鏡写真である。
図13乃至16の写真中、バガス繊維に沿って間隙が生じている箇所が幾つかあるが、これはバガス繊維の膨張によってバガス繊維とポリプロピレンとが剥離して間隙が生じたためであると推測される。
また、図15の写真は、バガス繊維が表面に露出しているが、同図の写真の他の箇所や図15以外の写真には、バガス繊維の露出は確認できなかった。
また、図13乃至16の写真からは、バガス繊維が線状に裂けている状態は確認できず、いずれの図の写真からもバガス繊維がポリプロピレンと接着していることが確認できた。
これらの結果から、バガス繊維を脱糖処理後にアセチル化処理をしたコンポジット成形材は、バガス繊維を脱糖処理のみ行い、アセチル化処理をしなかったコンポジット成形材と比べ、吸水によるバガス繊維の膨張が少なかったために、コンポジット成形材の表面にバガス繊維が露出することが少なく、コンポジット成形材の表面粗さが抑制されていることが分かった。
(4)臭気官能試験
作製したコンポジット成形材の臭いを評価するため、臭気官能試験を行った。
臭気官能試験は、次の表1(臭気強度表示法)、表2(快・不快度表示法)、表3(特徴ごとの臭い強度)の3つの表の基準に基づき行った。
臭気官能試験に用いた試験片は、作製してから約3週間経過したコンポジット成形材を、次の2とおりの条件にしたがって加熱したものを用いた。
(ア)初期
試験片を、容器に入れて蓋を閉めた密閉状態で、80℃で1時間加熱した後、室温まで冷ました。
(イ)経時
試験片を、容器に入れて蓋を開けた開放状態で、80℃で98時間加熱した後、容器の蓋を閉めて密閉状態にしてから、更に1時間80℃で加熱した後、室温まで冷ました。
図17及び18は、臭気官能試験の結果を示した表であり、図17は「(ア)初期」の試験片を、図18は「(イ)経時」の試験片を用いた試験結果である。
各表中、「強度」は臭気強度表示法による評価を、「快・不快度」は快・不快度表示法による評価を、「におい特徴」は特徴ごとの臭い強度による評価を、それぞれ示している。
また、各表中、「未処理」は脱糖処理もアセチル化処理もしていないコンポジット成形材を、「脱糖処理」は脱糖処理のみして加熱乾燥し、アセチル化処理をしていないコンポジット成形材を、「アセチル化処理 真空乾燥」は脱糖処理したバガス繊維をアセチル化処理(加熱時間は4時間)したのちに真空乾燥したコンポジット成形材を、「アセチル化処理 水洗い→加熱乾燥」は脱糖処理したバガス繊維をアセチル化処理(加熱時間は4時間)したのちに水洗い洗浄して加熱乾燥したコンポジット成形材を、それぞれ示している。
この結果から、「未処理」、「脱糖処理」、「アセチル化処理」の順で「強度」、「快・不快度」が共に大幅に低減していることが分かる。
また、「におい特徴」は、「未処理」は非常に甘い黒糖のような臭いが強く、全体的に吐き気のする不快な臭気であったが、未処理バガス繊維を「脱糖処理」することで甘い臭いや吐き気のする臭いが軽減され、さらに「アセチル化処理」することで甘い臭いをはじめとした臭い全体が低減したが、刺激臭のような臭いが僅かながら感じられた。
しかし、「アセチル化処理 水洗い→加熱乾燥」の結果から、アセチル化処理後にバガス繊維を水洗いすることで刺激臭が消失することが確認できた。
バガス繊維には、セルロース48%、ヘミセルロース25%、リグニン12%がそれぞれ含まれるが、これらの熱分解温度は、セルロースが315〜400℃、ヘミセルロースが160〜900℃、リグニンが220〜315℃であり、コンポジット成形材成形時の温度が約200℃〜220℃であることから、成形時にヘミセルロース、リグニンが熱分解されている可能性があると考える。
ヘミセルロースは、熱分解されるとキシロース、アラビノース、グルコース、ヒドロキシメチルフルフラール、フルフラールになり、フルフラールは甘い臭いを放出する原因となる可能性がある。
リグニンは、熱分解されるとメトキシフェノール及びその誘導体であるグアイアコール、シリンゴールになるが、シリンゴール、グアイアコールは成形時の焦げの発生による黒色化や焦げ臭さの原因となる可能性がある。
「脱糖処理」の試験片に甘い臭いや焦げ臭さが感じられたのは、ヘミセルロース及びリグニンが熱分解により、臭いの原因となる成分を放出したためだと考えられる。
バガス繊維は、セルロースやヘミセルロースに水酸基をもつことから親水特性を有するため、乾燥終了後の混練やプレス時の僅かな時間で吸湿して、成形時には、細胞壁に吸着した水分が蒸気となって熱分解を促進した可能性があると推測される。
また、アセチル化処理によりバガス繊維中の水酸基がアセチル基に置換され、疎水変性したことで水分の吸着が抑えられ、蒸気による熱分解の促進が抑制されたことから、甘い臭いや焦げ臭さが緩和されたのではないかと推測される。
また、アセチル化処理によって発生した刺激臭は、アセチル化処理後の水洗いによって緩和されたことから、アセチル化処理に使用された酢酸成分がバガス繊維に残留していたことが原因であると考えられる。
3.まとめ
以上のとおり、バガス繊維をアセチル化処理することで次の結果が得られた。
最大で約58%の吸水抑制効果が得られ、コンポジット成形材の表面粗さ(Rz)の経時的な増加が抑制される(最大約75%)。
経時的な機械的性質の劣化が抑制され、アルカリ処理後にアセチル化処理を行えば、更なる機械的性質の向上効果が得られる。
脱糖処理後のアセチル化処理を段階的に行うことでバガス繊維とポリプロピレンとのコンポジット成形材成形品の臭いが緩和され、さらにバガス繊維をアセチル化後に水洗いすれば刺激臭も抑えられる。
したがって、バガス繊維をアセチル化処理することで、従来のバガス繊維複合材料の物性を損なうことなく吸水性を抑制することが可能であるため、コンポジット成形材成形体の表面を平滑に維持しつつ、サトウキビ特有の甘い臭気を大幅に低減できることから、例えば、自動車の内装部品などへの利用も可能になる。
(実施例2)
1.本発明に係るバガス繊維によるコンポジット成形材の製造方法を、以下のとおり説明する。
(1)バガス繊維の篩い分け
バガス繊維を、メッシュ18(平均繊維長:3.00mm、平均繊維幅:0.4mm)を使って篩い分けた。
(2)乾燥処理
バガス繊維を、80℃の定温乾燥機(強制対流方式)で乾燥させた。
乾燥時間による重量増加率を調べるために、乾燥時間を適宜変えて乾燥させた。
(3)脱糖処理
バガス繊維を、繊維重量の20倍量の水(イオン交換水、80℃)に10分間浸漬させて洗浄した。
これにより、バガス繊維に含まれる残留糖分を除去することができる。
(4)アセチル化処理の前処理
脱糖させたバガス繊維を、繊維重量の20倍量の無水酢酸に1分間浸漬させた。
(5)アセチル化処理
笊を用いてバガス繊維から無水酢酸をきり、無水酢酸がバガス繊維にしみこんでいる状態で、オイルバス(120℃)で加熱した。
加熱時間による重量増加への影響を調べるため、加熱時間を適宜変えて加熱した。
なお、アセチル化処理には、無水酢酸とともにピリジンを用いることができ、その場合、加熱温度を下げることができる。
ピリジンは、約1.0%以下の添加割合でも十分効果があるが、添加割合が少ないとアセチル化されるまでの加熱時間が長く必要になる。
(6)洗浄処理
アセチル化処理後、バガス繊維をイオン交換水で洗浄し、定温乾燥機(強制対流方式)で24時間乾燥させた。
(7)湯漬け処理
乾燥後のバガス繊維を、80℃のイオン交換水に最大2時間浸してバガス繊維に残った無水酢酸を除去したあと、定温乾燥機(強制対流方式)にて24時間乾燥させた。
乾燥後のバガス繊維の重量を測定し、アセチル化処理の前後の重量変化をもとに重量増加率を算出した。
重量増加率は、次式により算出する。
W1=((Wafter−Wbefore)/Wbefore)×100(%)
W1:重量増加率(%)
Wafter:アセチル化処理後のバガス繊維の重量(g)
Wbefore:アセチル化処理前のバガス繊維の重量(g)
(8)複合ペレットの作製
乾燥させたバガス繊維を、混練機でポリプロピレンペレットと混練(温度200℃、バガス繊維とポリプロピレンの混合比率は40wt%)し、複合ペレットを作製した。
なお、バガス繊維を混錬させる母材は、本実施例ではポリプロピレンを用いたが、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂であれば好適に使用できる。
(9)コンポジット成形材の作製
複合ペレットを、プレス成形機でプレスし、直径30mm、厚さ1mm程度の円形コンポジットを作製した。
プレスは、温度200℃、圧力100kgf/cm2で5分間行い、その後、水で5分間冷却した。
なお、本実施例では、コンポジット成形材を熱プレスによって作製しているが、射出成形など種々の方法でも作製できる。
上記工程で作製したコンポジットを幅15mm程度の矩形状にカットし、三点曲げ試験による強度評価を行った。
曲げ応力の実測値は、次式で計算した。
矩形断面試験片の曲げ応力を以下に示す。
σ=3FmaxL/2bh3
Lは支点間距離(21mm)であり、b及びhは作製したコンポジットの幅及び厚みである。
Fmaxは、破断直前の最大荷重である。
曲げ弾性率の実測値は、次式で算出した。
単純支持梁の中央に1点集中荷重がかかった場合の曲げ弾性係数を以下に示す。
E=(L3/4bh3)×(ΔF/ΔS)
ΔF:荷重増加量
ΔS:変位増加量
2.作製したコンポジット成形材に対する各試験の説明と試験結果は、次のとおりである。
(1)乾燥実験
図19は、アセチル化未処理のバガス繊維を、定温乾燥機(80℃)で乾燥させ、時間経過による水分減少率(={(乾燥前の重量−乾燥後の重量)÷乾燥前の乾燥重量}×100)を表したグラフである。
グラフの縦軸は、バガス繊維に含まれる水分の減少率を示し、横軸は乾燥時間を示している。
12時間乾燥させるとバガス繊維全重量中の水分が10%減少していることがわかった。
また、乾燥を始めてから1時間までに全重量中の水分の8%が減少した。
(2)乾燥時間ごとのバガス繊維のアセチル化反応率
図20は、1回目の乾燥時間を1時間毎に最大6時間乾燥させたバガス繊維と、12時間乾燥させたバガス繊維を用いて、アセチル化処理時間を2時間に固定し、各乾燥時間の重量増加率(={(アセチル化処理後の乾燥重量−アセチル化処理前の乾燥重量)÷アセチル化前の乾燥重量}×100)を測定した結果を表したグラフである。
なお、この測定に用いた試料は、脱糖処理をアセチル化処理後の洗浄処理と同時に行っている。
グラフの縦軸は、重量増加率を示し、横軸は乾燥時間を示している。
未乾燥バガス繊維の重量増加率が2.25%と、他よりも低い値を示した。
これは、未乾燥状態で無水酢酸に浸漬させたことで、バガス繊維中の水分が無水酢酸と反応してアセチル化が阻害されたためであると考えられる。
1時間以上乾燥させたバガス繊維に対する重量増加率に1%以上の変化はみられなかった。
これは、上記(1)の乾燥実験の測定結果も踏まえると、1時間以上乾燥させたバガス繊維に含まれる水分量に大きな差がなかったためであると考える。
(3)アセチル化処理時間ごとのバガス繊維の重量変化
バガス繊維を12時間乾燥させたあと、アセチル化処理を1時間毎に6時間までと、さらに6時間(計12時間)行った結果の重量変化を調べた。
図21は、上記(2)の実験と同様に、脱糖処理を洗浄処理と同時に行い、各アセチル化処理時間ごとのバガス繊維の重量増加率を測定した結果を表したグラフである。
グラフの縦軸は重量増加率を示し、横軸はアセチル化の処理時間を示している。
アセチル化の処理時間が長くなるにつれて重量増加率が高くなる傾向にある。
アセチル化処理をすることによって、バガス繊維に含まれるセルロース中の水酸基がアセチル基に置換されることによって重量が増加していると考えるが、4時間の処理時間を境に、重量増加率に1.25%以上の変化が見られないのは、セルロース中の水酸基がすべてアセチル基に置換したためと推測する。
また、12時間の重量増加率と、2時間から6時間までの各重量増加率とは、その差は2.25%以内であった。
この結果から、脱糖処理を洗浄処理と同時に行っても、2時間以上アセチル化処理をしたバガス繊維の重量増加率には、大きな変化がみられないことが分かった。
(4)各臭気抑制処理プロセスごとのコンポジットの機械的性質の変化
図22は、各臭気抑制処理プロセスごとに異なるコンポジット成形材(試料1〜3)の機械的性質の変化を比較したグラフである。
グラフの左縦軸は曲げ弾性係数を、右縦軸は曲げ強度を示し、横軸は試料を示している。
試料1〜3の各処理プロセスは、次のとおりである。
試料1:脱糖処理のみ
試料2:脱糖処理後、アセチル化処理
試料3:アセチル化処理後、脱糖処理
試料1は、脱糖処理のみを行い、試料2は、脱糖処理後に、アセチル化、湯漬け処理を行い、試料3は、アセチル化後に脱糖処理、湯漬け処理を行ったものである。
アセチル化処理(4時間加熱)、脱糖処理は、全ての試料で同じ条件にした。
なお、図22の試験における「脱糖処理」とは、バガス繊維を重量比20倍のイオン交換水(80℃)に3回湯漬けした(各回30分)ことを意味する。
図22から明らかなように、試料1よりも試料2および試料3の機械的物性が高くなった。
これは、アセチル化処理したことにより、バガス繊維に含まれるセルロースが修飾され、アセチルセルロースに変化したためであると考える。
すなわち、アセチル化されたバガス繊維とポリプロピレンのような疎水性ポリマーとの界面接着強度は、親水性のバガス繊維のそれよりも増加したことが推測される。
試料3の、最初にアセチル化した試料が、脱糖処理後にアセチル化した試料2よりも機械的物性が高かった理由は明らかではないが、スクロースのような水溶性可溶性分がアセチル化され、その後に行った湯漬け処理後もバガス繊維に残留し、何らかの理由でポリプロピレンとバガス繊維の界面接着の改善に繋がったことが推測される。
(5)コンポジット表面の顕微鏡観察
図23〜25は、上記(4)の実験の試料1のコンポジット成形材の表面状態を顕微鏡で撮影した写真である。
バガス繊維が表面に露出している部分は見られず、バガス繊維とポリプロピレンが接着している様子が確認できた。
また、観察を行った場所によって、バガス繊維とポリプロピレンの量に違いが見られた。
これは、プレス成形時、溶けだしたポリプロピレンがバガス繊維の少ない部分に流れ込んで成形されたことが原因だと考えられる。
図26〜28は、上記(4)の実験の試料3のコンポジット成形材の表面状態を顕微鏡で撮影した写真である。
試料1と同様、バガス繊維が表面に露出している部分は見られず、バガス繊維とポリプロピレンが接着している様子が確認できた。
また、試料1と同様、観察を行った場所によって、バガス繊維とポリプロピレンの量に違いが見られた。
(6)臭気官能試験
作製したコンポジット成形材の臭いを評価するため、臭気官能試験を行った。
臭気官能試験は、実施例1に係る表1(臭気強度表示法)、表2(快・不快度表示法)、表3(特徴ごとの臭い強度)の3つの表の基準に基づいて行った。
臭気官能試験に用いた試験片は、ポリプロピレンのみ、アセチル化未処理バガス繊維、各処理プロセス毎のバガス繊維を用いたコンポジットの各試料を作製し、98時間80℃で加熱したものを用い、これを容器に入れて蓋で密閉して80℃で1時間加熱し、室温に戻したあと、臭気官能試験を行った。
図29〜33は、臭気官能試験の結果を示した表である。
図29のポリプロピレンのみで作製したコンポジット成形材は、におい強度、快・不快度、におい特徴の全てにおいて値が0(無臭)であった。
図30の未処理バガス繊維を用いたコンポジットにおいては、におい強度が1.81と、臭気官能試験中、最も高い値を示した。
脱糖処理もアセチル化処理も行わず、バガス繊維中に糖分が残留していたために、におい強度値が最も高かったのだと考える。
図31は、脱糖バガス繊維で作製したコンポジットの臭気官能試験の結果である。
脱糖処理を施すことによって、図30の未処理バガス繊維コンポジットよりも、におい強度値が約半分の0.54倍の値を示した。
図32は、実施例1の臭気抑制処理を施したバガス繊維コンポジットの臭気官能試験結果であり、図33は、実施例2の臭気抑制処理を施したバガス繊維コンポジットの臭気官能試験結果である。
図32、33ともに、アセチル化処理を施すことにより、におい強度は1以下を示し、におい特徴においても、甘さで0.1以下を示した。
この結果から、アセチル化処理を施すことにより、バガス特有の甘い臭気が緩和されることが分かった。
また、図33の結果から、実施例2のバガス繊維コンポジットは、におい強度が0.17、快・不快度0、におい特徴は焦げ以外0の値を示し、ほぼ無臭であるといえる。
3.まとめ
バガス繊維に含まれる水分量が少ないほど、アセチル化処理を施した際の重量増加率が増える傾向にある。
脱糖処理を洗浄処理と同時に行っても、アセチル化処理2時間以降で重量増加率に2.25%以上の変化がみられなかったことから、アセチル化処理時間は約2時間で十分である。
脱糖処理をアセチル化処理後に行うことで、弾性係数が増加した。
洗浄処理と2回目の乾燥処理を省いて、脱糖処理を湯漬け処理と同時に行っても、曲げ強度は1.7MPa以上の変化がみられなかった。
臭気官能試験の結果より、実施例2の処理プロセスによるコンポジット材は、実施例1の処理プロセスによるコンポジット材よりも、臭気を抑えられた。
以上の結果より、実施例2の処理プロセスによるバガス繊維複合材は、実施例1の処理プロセスによりバガス繊維複合材の物性を損なうことなく臭気を抑制することが可能であり、居住空間や人が触れる製品(例えば建材や自動車の内装部品など)への利用も可能になる。

Claims (6)

  1. バガス繊維を、
    その水酸基をアセチル基に変換させたうえで、
    ポリプロピレンと混練してコンポジットを射出成形または熱プレスすることで、
    表面の平滑性を維持しつつ、サトウキビ特有の甘い臭気が大幅に減臭されたコンポジット成形材を得られる
    ことを特徴とするバガス繊維によるコンポジット成形材の製造方法。
  2. バガス繊維を、
    無水酢酸に浸漬させた状態で2時間以上加熱してアセチル化(バガス繊維の水酸基をアセチル基に変換)したうえで、
    ポリプロピレンと混練してコンポジットを射出成形または熱プレスすることで、
    表面の平滑性を維持しつつ、サトウキビ特有の甘い臭気が大幅に減臭されたコンポジット成形材を得られる
    ことを特徴とするバガス繊維によるコンポジット成形材の製造方法。
  3. バガス繊維を、
    アルカリ処理によって解繊したのち、
    無水酢酸に浸漬させた状態で2時間以上加熱してアセチル化(バガス繊維の水酸基をアセチル基に変換)したうえで、
    ポリプロピレンと混練してコンポジットを射出成形または熱プレスすることで、
    表面の平滑性を維持しつつ、サトウキビ特有の甘い臭気が大幅に減臭されたコンポジット成形材を得られる
    ことを特徴とするバガス繊維によるコンポジット成形材の製造方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項の、バガス繊維の水酸基をアセチル基に変換させる処理の前に、
    バガス繊維を乾燥させることで、
    表面の平滑性を維持しつつ、サトウキビ特有の甘い臭気が大幅に減臭されたコンポジット成形材を得られる
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のバガス繊維によるコンポジット成形材の製造方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項の、バガス繊維の水酸基をアセチル基に変換させる処理の後に、
    バガス繊維を、水に浸漬させて脱糖と洗浄をすることで、
    表面の平滑性を維持しつつ、サトウキビ特有の甘い臭気が大幅に減臭されたコンポジット成形材を得られる
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバガス繊維によるコンポジット成形材の製造方法。
  6. 請求項1乃至4のいずれか一項の、バガス繊維の水酸基をアセチル基に変換させる処理の前に、
    バガス繊維を、水に浸漬させて脱糖したうえで、
    請求項1乃至4のいずれか一項の、バガス繊維の水酸基をアセチル基に変換させる処理の後に、
    バガス繊維を、水に浸漬させて洗浄することで、
    表面の平滑性を維持しつつ、サトウキビ特有の甘い臭気が大幅に減臭されたコンポジット成形材を得られる
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバガス繊維によるコンポジット成形材の製造方法。
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