以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例である電子写真方式のカラープリンタ(以下、単に「プリンタ」という)の概略構成を示す図である。この図に示すプリンタは、中間転写方式を採用したカラー画像形成装置であり、中間転写体としての無端状ベルト(中間転写ベルト51)を有している。その中間転写ベルト51の上部走行辺に沿って、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色トナー画像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kが並設され、タンデム作像部を構成している。
各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは扱うトナーの色が異なるのみで構成は同一であるため、図2を参照して一つの画像形成ユニットについてのみ説明する。図2に示すように、画像形成ユニットは、像担持体としての感光体ドラム11、感光体ドラム11の表面を帯電ローラによって帯電する帯電装置21、感光体ドラム11上の潜像を可視化する現像装置31、感光体ドラム11から中間転写ベルト51にトナー像を転写させる一次転写手段としての転写ローラ55、感光体ドラム11表面をクリーニングするクリーニング装置41等を備えている。本実施形態では、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、プリンタ本体に対して脱着可能に設けられている。
本例の感光体11は、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成された外径60mm程度のドラム形状のものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転駆動される。帯電装置21は、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体ドラム11に接触あるいは近接させながら、帯電ローラと感光体11との間に放電を発生させることで、感光体表面を一様帯電せしめる。本実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラを用いる方式に変えて、帯電チャージャによる方式を採用しても良い。
現像装置31は、トナーとキャリアからなる2成分現像剤が収容される収容容器内に、現像剤担持体としての現像スリーブ31a及び現像剤を攪拌しながら搬送する攪拌部材としての2本のスクリュー部材31b,31cを備えている。なお、1成分現像剤を用いる現像装置を採用することも可能である。
クリーニング装置41は、クリーニングブレード41aと、クリーニングブラシ41bを備えている。クリーニングブレード41aは、感光体ドラム11の回転方向に対してカウンタ方向から感光体ドラム11と当接している状態で、クリーニングブラシ41bは感光体ドラム11と逆方向に回転しながら接触している状態で感光体ドラム11表面をクリーニングする。
図1に戻り、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体11Y,11M,11C,11Kを光走査する。この光走査により、感光体11Y,11M,11C,11K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体11の一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、ポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの下方には、無端状の中間転写ベルト51を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット50が配設されている。転写ユニット50は、像担持体たる中間転写ベルト51の他に、駆動ローラ52、二次転写裏面ローラ53、クリーニングバックアップローラ54、4つの一次転写ローラ55、ニップ形成ローラ56、ベルトクリーニング装置57、電位センサ58などを有している。
中間転写ベルト51は、そのループ内側に配設された駆動ローラ52、二次転写裏面ローラ53、クリーニングバックアップローラ54、及び4つの一次転写ローラ55によって張架されており、駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ52の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト51としては、次のような特性を有するものを用いている。即ち、厚みは20[μm]〜200[μm]、好ましくは60[μm]程度である。また、体積抵抗率は1e6[Ωcm]〜1e13[Ωcm]、好ましくは1e7.5[Ωcm]〜1e12.5[Ωcm]、より好ましくは約1e9[Ωcm]程度である(三菱化学製ハイレスター、UP MCP HT45、HRSプローブにて、印加電圧100V、10sec値の条件で測定)。また、材料は、PI(ポリイミド)、PVDF(フッ化ビニルデン)、ETFE(エチレン−四フッ化エチレン共重合体)、PC(ポリカーボネート)等を単層または複数層に構成したものを使用することも可能である。なお、必要に応じてベルトの表面に離型層をコートしても良い。コートに用いる材料としては、ETFE(エチレン−四フッ化エチレン共重合体)、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)、PVDF(フッ化ビニルデン)、PEA(パ−フルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP(四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体)、PVF(フッ化ビニル)等のフッ素樹脂が使用できるが、これに限定されるものではない。ベルト製造方法は注型法、遠心成形法等があり、必要に応じてその表面を研磨しても良い。また、ベース層、弾性層及びコート層の3層構造となっているベルト材(無端ベルト)を用いても良い。3層構造のベルトの場合、ベース層は、例えば伸びの少ないフッ素系樹脂や、伸びの大きなゴム材料に帆布などの伸びにくい材料を組み合わせた材料で構成されている。また、弾性層は、例えばフッ素系ゴムやアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムなどで構成され、ベース層の上に形成される。また、コート層は、弾性層の表面に、例えばフッ素系樹脂がコーティングされることで形成される。なお、抵抗率はカーボンブラック等の導電性材料を分散させて調整している。
4つの一次転写ローラ55は、無端移動せしめられる中間転写ベルト51を感光体11(Y,M,C,K)との間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト51のおもて面と、感光体11(Y,M,C,K)とが当接するY,M,C,K用の一次転写ニップが形成されている。一次転写ローラ55には、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ一次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体11(Y,M,C,K)上の各色トナー像と、各色一次転写ローラ55との間に転写電界が形成され、転写電界やニップ圧の作用により、感光体11上から中間転写ベルト51上にトナー像が一次転写される。Yトナー像上にM,C,Kトナー像が、順次重ね合わせて一次転写されることにより、中間転写ベルト51上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
モノクロ画像を形成する場合には、転写ユニット50におけるY,M,C用の一次転写ローラ55Y,M,Cを支持している支持板を移動せしめて、一次転写ローラ55Y,M,Cを、感光体11Y,M,Cから遠ざける。これにより、中間転写ベルト51のおもて面を感光体11Y,M,Cから引き離して、中間転写ベルト51をK用の感光体11Kだけに当接させる。この状態で、4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kのうち、K用の画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像を感光体11K上に形成する。
一次転写ローラ55は、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなり、本例では次のような特性を有している。外形は16[mm]である。また、心金の径は10[mm]である。ローラの体積抵抗は回転測定によるもので、5[N]/片側の加重を加え、転写ローラ軸に1[kV]のバイアスを印加し、1分の測定間にローラを回転(ローラ回転数は例えば30rpm)させながら抵抗値を測定し、その平均値を体積抵抗とした。オームの法則(R=V/I)に基づいて算出したスポンジ層の抵抗Rは、1e6Ω〜1e9Ω、好ましくは、約3E7Ωである。このような一次転写ローラ55に対して、一次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、転写ローラに代えて、転写チャージャや転写ブラシなどを採用してもよい。
転写ユニット50のニップ形成ローラ56は、中間転写ベルト51のループ外側に配設されており、ループ内側の二次転写裏面ローラ53との間に中間転写ベルト51を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト51のおもて面と、ニップ形成ローラ56とが当接する二次転写ニップが形成されている。ニップ形成ローラ56は接地されているのに対し、二次転写裏面ローラ53には、二次転写バイアス電源200によって二次転写バイアスが印加される。これにより、二次転写裏面ローラ53とニップ形成ローラ56との間に、トナーを二次転写裏面ローラ53側からニップ形成ローラ56側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。
本実施形態では、二次転写部周囲の温湿度を検出する環境検知手段としての温湿度センサ106が設けられている。
転写ユニット50の下方には、記録紙P(記録材)を複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。この給紙カセット100は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ101を当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録紙Pを給紙路に向けて送り出す。給紙路の末端付近には、レジストローラ対102が配設されている。このレジストローラ対102は、給紙カセット100から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙Pを二次転写ニップ内で中間転写ベルト51上のトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを二次転写ニップに向けて送り出す。二次転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト51上のトナー像は、二次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙P上に一括二次転写される。このようにして表面にフルカラートナー像またはモノクロトナー像が形成された記録紙Pは、二次転写ニップを通過すると、ニップ形成ローラ56や中間転写ベルト51から曲率分離する。
二次転写裏面ローラ53は、ステンレスやアルミニウム等からなる芯金に抵抗層を積層したものである。抵抗層は、ポリカーボネート,フッ素系ゴム,シリコン系ゴム等にカーボンや金属錯体等の導電粒子を分散させたもの、あるいはNBRやEPDM等のゴム、NBR/ECO共重合のゴム、ポリウレタンの半導電性ゴム等よりなる。その体積抵抗は106〜1012[Ω]、望ましくは107〜109[Ω]である。また、硬度20度〜50度の発泡タイプでも、ゴム硬度30度〜60度のゴムタイプでもよいが、中間転写ベルト51を介してニップ形成ローラ56と接触するので、小さな接触圧力でも非接触部分が生じないスポンジタイプが望ましい。中間転写ベルト51と二次転写裏面ローラ53の接触圧力が大きいほど、文字や細線の中抜けが生じ易いので、これを防止するためである。
また、ニップ形成ローラ56は、ステンレスやアルミニウム等からなる芯金上に導電性ゴム等からなる抵抗層と表層を積層して形成してある。本例では、ローラの外径は20[mm]、芯金は直径16[mm]のステンレスである。抵抗層はNBR/ECOの共重合体よりなる硬度40〜60度[JIS−A]のゴムである。表層は、含フッ素ウレタンエラストマーからなり、その厚みは8〜24[μm]が望ましい。その理由としては、ローラの表層は塗装工程により製造されることが多いので、表層の厚みが8μm以下では、塗布ムラによる抵抗ムラの影響が大きく、抵抗の低い箇所でリークが発生する可能性があり好ましくない。また、ローラ表面にシワが生じて、表層がひび割れるという問題も生じ易い。一方、表層の厚みが24μm以上に厚くなると抵抗が高くなり、体積抵抗率が高い場合には二次転写裏面ローラ53の芯金に定電流を印加したときの電圧が上昇することがあり、定電流電源の電圧可変範囲を超えるので目標の電流以下の電流になったり、電圧可変範囲が十分高い範囲の場合には定電流電源から二次転写裏面ローラ芯金までの高圧経路や二次転写裏面ローラ芯金が高電圧になることによるリークが発生し易くなる。また、ニップ形成ローラ56の表層の厚みが24μm以上に厚いと硬度が高くなり、記録媒体(紙等)や中間転写ベルトとの密着性が悪くなるという問題もある。ニップ形成ローラ56の表面抵抗は106.5[Ω]以上であり、ニップ形成ローラ56の表層の体積抵抗は1010[Ωcm]以上、より好ましくは、1012[Ωcm]以上である。
ニップ形成ローラ56は表層を積層しない発泡タイプのローラとすることも可能である。その場合のニップ形成ローラの体積抵抗は6.0logΩ〜8.0logΩ、好ましくは7.0logΩ〜8.0logΩとなる。このとき、二次転写裏面ローラ53は発泡タイプ、ゴムタイプ、もしくはSUSなどの金属ローラを使用することも可能であり、その体積抵抗はニップ形成ローラより低い、6.0logΩ以下とすることが好ましい。ニップ形成ローラ56、二次転写裏面ローラ53の体積抵抗測定方法は上記一次転写ローラ55の場合と同様に回転測定によるもので、5[N]/片側の加重を加え、転写ローラ軸に1[kV]のバイアスを印加し、1分の測定間にローラを回転(ローラ回転数は例えば30rpm)させながら抵抗値を測定し、その平均値を体積抵抗とした。
電位センサ58は、中間転写ベルト51のループ外側に配設されている。そして、中間転写ベルト51の周方向における全域のうち、接地された駆動ローラ52に対する掛け回し箇所に対して、約4[mm]の間隙を介して対向している。そして、中間転写ベルト51上に一次転写されたトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、そのトナー像の表面電位を測定する。なお、電位センサ58としては、TDK(株)社製のEFS−22Dを用いている。また、電位センサは、トナー像検知センサとすることも可能である。トナー像検知センサは、1発光2受光タイプの光学センサであり、受光した出力を付着量に換算することで、中間転写ベルト上に一次転写されたトナー像の付着量検知を行う。
二次転写ニップの図中右側方には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録紙Pは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
なお、ニップ形成ローラ56に代えて、図3に示すような、無端状の二次転写ベルト36を有する二次転写ユニット41を用いる構成も採用可能である。図3の二次転写ユニット41は、二次転写ベルト36と、二次転写ローラ400と、支持ローラ401,402,403と、を備える。二次転写ベルト36は、二次転写ローラ400、支持ローラ401,402,403に支持される。二次転写ローラ400は電気的に接地されている。二次転写ベルト36と中間転写ベルト51との間には二次転写ニップNが形成される。
本実施形態のプリンタが備える二次転写バイアス出力手段としての二次転写バイアス電源200は、直流成分を出力する直流電源と、直流成分に交流成分を重畳したものを出力する交流電源(重畳電源)とから構成されており、二次転写バイアスとして、直流電圧(以下、直流バイアスと称す)と、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたもの(以下、重畳バイアスと称す)とを出力することができる。
図4は、直流バイアスと重畳バイアスとを切り替えて二次転写部(本例では二次転写裏面ローラ53)に印加する様子を示す模式図である。この図において、二次転写バイアス電源200は、直流電源201と交流電源(重畳電源)202とから構成されている。
さて、同図(a)では直流電源201から直流バイアスを印加し、同図(b)では交流電源202から重畳バイアスを印加する様子を示している。なお、図4では直流電源201と交流電源202の切り替えを概念的に示すためにスイッチで切り替えるように示しているが、図5に例示する具体的な構成例では、2つのリレーを用いて切り替えるように構成している。また、図6に例示するように、切替手段を設けない構成も可能である。
図5は、2つのリレーを用いて直流バイアスと重畳バイアスを切り替える構成例である。この図に示すように、直流電源201はリレー1を介して直流バイアスを二次転写裏面ローラ53に印加する。また、交流電源202はリレー2を介して重畳バイアスを二次転写裏面ローラ53に印加する。2つのリレー(リレー1、リレー2)は、リレー駆動手段205を介して制御手段300によって接続と遮断が制御され、二次転写バイアスとしての直流バイアス又は重畳バイアスが切り替えられる。直流電源201は電圧検知手段203を有しており、検知したフィードバック電圧を制御手段300に入力している。
図6は、リレーを設けずに直流バイアスと重畳バイアスを切り替える構成例である。この図に示すように、バイアス電源200は、直流電源201と交流電源202´を備えている。交流電源202´は交流バイアスを二次転写裏面ローラ53に印加する。また、直流電源201は交流電源202´を介して直流バイアスを二次転写裏面ローラ53に印加する。二次転写バイアスとして直流バイアスを二次転写裏面ローラ53に印加するときは、直流電源201に直流バイアスを出力させ、交流電源202´の出力はオフにする。二次転写バイアスとして重畳バイアスを二次転写裏面ローラ53に印加するときは、直流電源201に直流バイアスを出力させるとともに、交流電源202´に交流バイアスを出力させる。これにより、バイアス電源200は、直流バイアスに交流バイアスが重畳された重畳バイアスを、二次転写裏面ローラ53に印加する。直流バイアスと重畳バイアスの切り替えは、制御手段300によって制御される。直流電源201は電圧検知手段203を有しており、検知したフィードバック電圧を制御手段300に入力している。
なお、転写用電源と電圧供給の形態(構成)はここに例示したものに限らず、様々な形態が可能である。それらについては後に例をあげて説明する。
次に、図7の波形図を参照して重畳バイアスの作用について説明する。
同図において、オフセット電圧Voffは、重畳バイアスの直流成分の値である。また、ピークツウピーク電圧Vppは、重畳バイアスの交流成分のピークツウピーク電圧である。重畳バイアスは、オフセット電圧Voffとピークツウピーク電圧Vppとを重畳したものであり、その時間平均値はオフセット電圧Voffと同じ値になる。図示のように、重畳バイアスは正弦波状の形状をしており、プラス側のピーク値と、マイナス側のピーク値とを具備している。Vtで示されているのは、それら2つのピーク値のうち、二次転写ニップ内でトナーをベルト側から記録紙側に移動させる方(本例ではマイナス側)のピーク値である。また、Vrで示されているのは、トナーを記録紙側からベルト側に戻す方(本例ではプラス側)のピーク値である。直流成分を含む重畳バイアスを印加してその時間平均値であるオフセット電圧Voffをトナーと同じ極性(本例ではマイナス)にすることで、トナーを往復移動させながら、相対的にはベルト側から記録紙側に移動させて記録紙上に転移させることが可能になる。交流電圧としては、正弦波形状の波形のものを採用しているが、矩形波状の波形のものを用いても良い。
図7では対称な波形のものを示しているが、交流成分のトナーをベルト側から記録紙側に移動させる時間とトナーを記録紙側からベルト側に戻す時間を異なる時間とした波形のものを用いることもできる。実施形態では、後者の波形のものを採用している。
ここで、直流電圧(すなわち時間平均電圧Vave)に交流電圧(すなわちピークツウピーク電圧Vpp)を重畳した重畳バイアスにおけるデューティ(Duty)について、図8及び図9を参照して説明する。なお、重畳バイアス(重畳電圧)を用いた転写を「AC転写」と称する。
重畳バイアスの中心電圧値Voffと電圧の時間平均値Vaveとの関係を示す値として、交流波形全体に占める中心電圧値Voffよりも戻し方向側の面積の割合を、戻し時間[%]と設定した。すなわち、交互に切り替わる電圧波形の1周期の中に占める、中心電圧値(Voff)よりも戻し方向側の面積をA、中心電圧値(Voff)よりも転写方向側の面積をBとしたとき、A/(A+B)×100[%]を
デューティ(Duty)と定義する。
別な表現をすると、交互に切り替わる電圧波形の1周期の中に占める中心電圧値(Voff)よりも転写方向の電圧と逆極性側の電圧(トナーを戻す側の電圧)が出力される時間の割合をデューティ(Duty)と呼ぶこともできる。
図8の波形はデューティ(Duty)が50%未満であり、図9の波形はデューティ(Duty)が50%よりも大きい。本明細書では、デューティ(Duty)50%未満のものを低デューティ、デューティ(Duty)が50%を超えるものを高デューティと称する。
低デューティの重畳バイアスを用いる低デューティAC転写モードにおいては、二次転写バイアスの交流成分における電圧の時間平均値(Vave)が、中心電圧値(電圧の最大値と最小値の中心値)Voffよりも転写側であることを必須としている。それを実現するためには、交流成分の中心電圧値Voffを挟んで転写方向側の面積よりも、戻し方向側の面積のほうが小さい波形にする必要がある。時間平均値とは、電圧の時間平均値であり、これは電圧波形の1周期にわたる積分値を、1周期の長さで割った値である。
これを達成するための一形態として、例えば図8に示すように、戻し方向側の電圧の立ち上がり及び立下りの傾きを、転写方向側の電圧の立ち上がり及び立下りの傾きよりも小さくする台形状の波形の形態が考えられる。
なお、波形の形態としては、台形状の波形に限定されるものではなく、三角形状となる波形、矩形状の波形、あるいはこれらを組み合わせた波形でもよく、波形の形状を限定するものではない。
低デューティを達成するための別形態としては、例えば図10のような波形でも良い。図10の波形の場合、戻し方向側の時間と、転写方向側の時間を調整することで、低デューティとしている。すなわち、図10において、周期:T、戻し方向側の時間:t1、転写方向側の時間:t2である。図示例ではt1<t2であり、戻し側面積A<転写側面積Bとなる。すなわち、デューティ(Duty)=A/(A+B)×100[%]、は50%以下の低デューティとなる。
和紙調の用紙やエンボス加工が施された用紙など、表面の凹凸の大きい記録紙(表面凹凸が所定値よりも大きなもの)を用いる場合には、図8や図10に示すような低デューティの重畳バイアスを印加することにより、上述のように、トナーを往復移動させながら相対的にはベルト側から記録紙側に移動させて記録紙上に転移させることで、用紙凹部への転写性を向上させ、転写率の向上や中抜けなどの異常画像を改善させることができる。なお、表面凹凸の大きい用紙とは、最大凹凸深さが60μm以上の用紙、例えば、レザック、エンボス、リネン等を含む。
低デューティの重畳バイアスとしては、トナー像を記録材(用紙)へ転写する方向へ作用する極性(本実施形態ではマイナス極性)とその逆極性(本実施形態ではプラス極性)とが交互に切り替わるものを用いることが好ましい。このようなバイアスを用いることで、用紙表面(特に凹部)と中間転写ベルト51の表面との間でトナーが静電的に往復運動し、用紙凹部への転写性を向上させることができる。重畳バイアスとして低デューティのものを用いることで、デューティが50%や高デューティのものを用いる場合に比べて、(i)転写方向の電圧ピーク値(Vt)を大きさを抑制し、かつ、(ii)戻し方向のピーク値(Vr)を大きくするという条件を満たしつつ、時間平均電圧(Vave)の絶対値を大きくすることができる。これにより、転写方向の電圧ピーク値(Vt)を大きくしすぎることによる放電の発生を防止でき、戻し方向のピーク値(Vr)によって十分にトナーを往復運動させることができる。時間平均電圧(Vave)の絶対値を大きくすることで、トナー像を十分に用紙へ転写することができる。
高デューティの重畳バイアスを用いる高デューティAC転写モードにおいては、二次転写バイアスの交流成分における電圧の時間平均値(Vave)が、中心電圧値(電圧の最大値と最小値の中心値)Voffよりも戻し側であることを必須としている。それを実現するためには、交流成分の中心電圧値Voffを挟んで転写方側の面積よりも、戻し方向側の面積のほうが大きい波形にする必要がある。
これを達成するための一形態として、例えば図9に示すように、戻し方向側の電圧の立ち上がり及び立下りの傾きを、転写方向側の電圧の立ち上がり及び立下りの傾きよりも大きくする台形状の波形の形態が考えられる。
なお、波形の形態としては、台形状の波形に限定されるものではなく、三角形状となる波形、矩形状の波形、あるいはこれらを組み合わせた波形でもよく、波形の形状を限定するものではない。
高デューティを達成するための別形態としては、例えば図11のような波形でも良い。図11の波形の場合、戻し方向側の時間と、転写方向側の時間を調整することで、高デューティとしている。すなわち、図11において、周期:T、戻し方向側の時間:t1、転写方向側の時間:t2である。図示例ではt1>t2であり、戻し側面積A>転写側面積Bとなる。すなわち、デューティ(Duty)=A/(A+B)×100[%]、は50%より大きい高デューティとなる。
図9や図11に示すような高デューティの重畳バイアスを印加することにより、転写方向に作用する電荷を少なくし、二次転写ニップ内での電荷注入によるトナー帯電量Q/Mの低下を抑えることが可能になる。これにより、トナー帯電量Q/Mの低下に起因する二次転写性の低下による画像濃度不足の発生を抑えることができる。なお、デューティが50[%]を超えていても、次のようにすることで、トナー像の二次転写が可能になる。即ち、0[V]を基準にしたプラス側のグラフ箇所の面積を、マイナス側のグラフ箇所の面積よりも小さくすることで、平均電位をマイナス極性にして、トナーを相対的にベルト側から記録紙側に静電移動させることが可能になる。
高デューティの重畳バイアスとしては、トナー像を記録材(用紙)へ転写する方向へ作用する極性(本実施形態ではマイナス極性)とその逆極性(本実施形態ではプラス極性)とが交互に切り替わるものを用いてもよいし、その極性が反転しない(本実施形態ではマイナス極性のまま)のものを用いてもよい。いずれの場合であっても、直流成分のみからなるバイアス、すなわちマイナス極性側に高い電圧が維持されるバイアスを印加する場合にくらべて、トナー帯電量Q/Mの低下に起因する二次転写性の低下による画像濃度不足の発生を抑えることができる。
本実施形態では、重畳バイアスを用いるAC転写モードとして、図8や図10に示すようなデューティが50%以下の低デューティAC転写モードと、図9や図11に示すようなデューティが50%よりも大きい高デューティAC転写モードとを有しており、両者を切替可能に構成している。そして、通紙する用紙の種類に応じて、転写モードを低デューティAC転写モード又は高デューティAC転写モードに切り替えることで、凹凸の小さい用紙および凹凸の大きい用紙のどちらにも良好な画像転写を行なうことができる。
なお、通紙する用紙の種類や温度湿度などの所定条件に応じて、転写モードを、低デューティAC転写モードと高デューティAC転写モードと直流転写モードとで切り替えてもよい。図1や図3に示すカラープリンタは、給紙カセット100に対向して設けられた光学センサ600を備える。光学センサ600は、給紙カセット100に積載された用紙の表面へ向けて光を照射する発光部と、用紙の表面から反射した光を受ける受光部と、発光部と受光部とによって検知された用紙表面の形状(断面曲線)にもとづき用紙表面の凹凸を判別する判別部と、を備える。光学センサ600は、給紙カセット100に積載された用紙の所定の長さ(たとえば20mm)の領域に向けて光を照射し、光を受光することにより、用紙表面の形状(断面曲線)を測定する。判別部は、断面曲線の最大断面高さPt(JIS B 0601:2001)を求める。本実施形態では、最大断面高さPt(μm)を用紙の表面凹凸と定義する。用紙表面の転写モードの切り替えは、光学センサ600の判別部によって判別された用紙の表面凹凸の情報にもとづいておこなわれる。表面凹凸が所定値以上の場合は、低デューティAC転写モードを選択する。表面凹凸が所定値未満の場合は、高デューティAC転写モードを選択する。なお、転写モードの切り替えは、用紙種類の設定(すなわち、凹凸紙であるかどうかの設定)により自動的にモードが切り替わるようにしても良い。
あるいは、ユーザが転写モードを指定できるようにしても良い。これらの設定は、画像形成装置の操作パネル500(図1と図3を参照)上から設定可能に設ける。ユーザが操作パネル500上から転写モードを指定する場合は、たとえば操作パネル上に「凹部優先モード」と「ハーフトーン画像優先モード」とを選択可能に設けることが好ましい。制御手段300は、「凹部優先モード」が選択された場合は低デューティAC転写モードで画像を用紙へ転写し、「ハーフトーン画像優先モード」が選択された場合は高デューティAC転写モードで画像を用紙へ転写するように、電源200を制御する。
すなわち、画像形成装置は、バイアスとしてデューティが50%未満のものを用いてトナー像を中間転写ベルト51から用紙へ転写する凹部優先モードと、バイアスとしてデューティが50%より大きいものを用いてトナー像を中間転写ベルト51から用紙へ転写するハーフトーン画像優先モードと、のうちのいずれかを選択するための操作パネル500を備える。そして、制御手段300は、操作パネル500でユーザによって選択されたモードにおうじて、バイアスとしてデューティが50%未満のもの、または、デューティが50%より大きいもののいずれかを出力するように、電源200を制御する。
用紙の種類にかかわらず用紙の表面には凹部が存在し、また、用紙の種類にかかわらずハーフトーン画像を含む画像を出力することがある。ユーザは、任意の種類の用紙へ画像を転写する際、その用紙の凹部の転写性をより優先したいのか、ハーフトーン画像の転写性をより優先したいのかによって、操作パネル500上から転写モードを選択することが可能である。制御手段300が選択されたモードに応じた重畳バイアスを出力することにより、ユーザのニーズに適した画像を簡易な方法で出力することができる。
またあるいは、ユーザが操作パネル500上から記録材の種類(紙種)を選択できるようにしてもよい。この場合、制御手段300は、操作パネル500で選択された記録材の種類に応じて、バイアスとしてデューティが50%未満のもの、または、デューティが50%より大きいもののいずれかを出力するように二次転写バイアス電源200を制御する。制御手段300は、ユーザによって選択された記録材の表面凹凸が所定値以上の場合は、低デューティAC転写モードを選択する。記録材の表面凹凸が所定値未満の場合は、高デューティAC転写モードを選択する。このような構成でも、ユーザのニーズに適した画像を簡易な方法で出力することができる。操作パネル500上から記録材の種類(紙種)を選択するための構成としては、記録材の銘柄を直接選択する構成としてもよいし、記録材が凹凸紙であるかどうかを選択する構成としてもよい。
二次転写部の構成として、図1の形態では二次転写裏面ローラ53に直流成分に交流成分を重畳したもの(重畳バイアス)を印加する構成であるが、直流バイアスと交流バイアスのいずれか一方を二次転写裏面ローラ53に印加して他方をニップ形成ローラ56に印加する構成、あるいは、直流成分に交流成分を重畳した重畳バイアスをニップ形成ローラ56に印加する構成でも良い。図3に示す形態では二次転写バイアス電源200が二次転写裏面ローラ53に二次転写バイアスを印加する構成としたが、二次転写ローラとしてのローラ400に二次転写バイアスを印加してもよい。これらの場合、使用するトナー及び印加するバイアスの極性を、各構成に対応させる必要がある。なお、普通紙のような表面凹凸の小さなものを用いる場合には、転写バイアスとして直流成分だけからなるもの(直流バイアス)を印加してもよい。一方、表面凹凸の大きな用紙を用いるときには、転写バイアスを、直流成分だけのものから重畳バイアスに切り替えることが好ましい。
次に、二次転写バイアスについて詳しく説明する。なお、本実施例(実施例1)では、二次転写バイアスの直流成分(DC成分)は定電流制御、交流成分(AC成分)のピークツウピーク(Peak to Peak)電圧は定電圧制御を行っている。
なお、図5に示す形態の場合、交流直量重畳電源202は、直流成分(DC成分)を出力する直流出力部と、交流成分(AC成分)を出力する交流出力部を備える。直流出力部は直流成分として時間平均電圧Vaveを出力する。交流出力部は、交流電圧を出力する。交流直量重畳電源202は、時間平均電圧Vaveに交流電圧を重畳することで、図7から図11に示すような重畳バイアスを生成し、これを二次転写部へ印加する。
一方、図6に示す形態の場合、直流電源201は直流成分として時間平均電圧Vaveを出力する。交流電源202は、交流電圧を出力する。電源200は、時間平均電圧Vaveに交流電圧を重畳することで、図7から図11に示すような重畳バイアスを生成し、これを二次転写部へ印加する。
以下では、時間平均電圧を直流成分(DC成分)と定義し、時間平均電圧に重畳される交流電圧を交流成分(AC成分)と定義する。
重畳バイアスは、DC成分、AC成分とも、各々の標準値に対してそれぞれ、装置環境に応じた補正(環境補正)、装置の印刷速度に応じた補正(線速補正)、用紙条件に応じた補正(紙サイズ補正と称す)、すなわち用紙の主走査方向幅、用紙の厚みに応じた補正、転写部の抵抗に応じた補正、を掛け合わせて出力値を計算している。
トナー像を担持する像担持体(中間転写ベルト51)として、多層構造を有する弾性ベルトを用いたものにおいて、記録材として、普通紙やコート紙のような表面平滑性の良いものを用いると、二次転写不良による画像濃度不足を引き起こし易くなってしまうことがわかった。そして、その原因について鋭意研究を行ったところ、次のようなことが解ってきた。二次転写ニップにおいては、中間転写ベルトを挟み込んでいる当接ローラと裏面ローラとの間で二次転写電流が流れる。中間転写ベルトとして、多層構造のものを用いると、その二次転写電流を層と層との間の界面でベルト周方向に回り込ませながらベルト厚み方向に流してしまう。これにより、二次転写ニップにおいて、ニップ圧が最も高くなるニップ中心位置だけでなく、ニップ入口付近や出口付近にまで二次転写電流を回り込ませて、二次転写ニップ内でベルト上のトナー像に対して長時間に渡って二次転写電流を流してしまう。すると、トナーに対してその帯電極性とは逆極性の電荷を多量に注入して正規極性でのトナー帯電量Q/Mを低下させてしまうことから、二次転写性を低下させて画像濃度不足を引き起こしてしまうことが解った。
本発明者らは、二次転写バイアスとして、デューティが50[%]を超えるものを出力することで、二次転写ニップでトナーに逆電荷を注入してしまうことによるトナー帯電量Q/Mの低下を抑えることができ、トナー像を良好に二次転写して画像濃度不足の発生を抑えることができることを見出した。
しかし、このような高デューティの転写バイアスを用いる場合、高温高湿であるほど交流電圧のピ−クツウピークおよび時間平均電圧を強くかけないと効果が出ない。一方,凹凸紙への転写性を高めることを目的とした低デューティの転写バイアスを用いる場合、高温高湿時は交流電圧のピ−クツウピークおよび時間平均電圧を弱くしないと放電が発生し白抜けが発生する。つまり、転写バイアスのデューティが高い場合と低い場合で補正の方向が異なるため、単一の補正ではなくそれぞれ別の補正をおこなわなければならないことがわかった。また,ローラ抵抗の変化や線速(印刷速度)の変化に対しても、バイアスのデューティによって必要な補正が異なっていることがわかった。
なお、以上では、多層構造を有する像担持体を用いた場合の課題としてトナーへの電荷の注入を説明したが、これは一例にすぎない。多層構造を有さない像担持体を用いた場合であっても、二次転写ニップNの幅(用紙搬送方向における幅)が大きい場合、転写ニップ圧が高めの装置の場合、二次転写部において中間転写ベルトが二次転写部材(ベルトやローラ)に所定量巻き付いている場合、線速が遅い装置の場合、などにも、同様に画像濃度不足を引き起こすことがある。また、使用するトナーの種類や像担持体(ベルト)の材料などによっても同様に画像濃度不足を引き起こすことがある。
しかしながら,低デューティAC転写モードと高デューティAC転写モードでは必要とする補正値が異なる。例えば、上記高デューティAC転写モードは、高温高湿であるほど交流電圧のピ−クツウピークおよび時間平均電圧を強くかけないと効果が出ない。一方、凹凸紙対策の低デューティAC転写モードは、高温高湿時は交流電圧のピ−クツウピークおよび時間平均電圧を弱くしないと放電が発生し白抜けが発生するため、単一の補正では十分な効果を得ることは出来ない。
[実施例1]
本実施例における、各補正の算出方法を以下に記載するが、これら算出方法は一例であり、なんら限定するものではない。また、本実施例では後述する3つの補正を全て使用しているが、それら3つを全て使用することを前提とするものではない。例えば、後述する3つの補正のうち、1つないし2つのみ使用しても十分な効果を得ることは可能である。
まず、環境補正は、温度又は/及び湿度に基づく環境区分が予め設定してあり、装置本体に設置された環境検知手段としての温湿度センサ106(図1、図3参照)によって検知した温度又は/及び相対湿度より環境区分を判定し、判定された環境区分に応じて補正値を決定する。表1に、温度および相対湿度に基づいて設定した環境区分の一例を示す。あるいは、絶対湿度に基づく環境区分を設定しておき、温湿度センサによって検知した温度および相対湿度から絶対湿度を計算し、計算された絶対湿度により環境区分を判定して補正値を決定してもよい。表2に絶対湿度に基づく環境区分の一例を示す。表1,2における環境区分:MMは常温環境(常温常湿環境)、LLは低温環境(低温低湿度環境)、HHは高温環境(高温高湿度環境)である。たとえば、23℃50%RHのときは常温常湿環境、10℃15%RHのときは低温低湿度環境、27℃80%RHのときは高温高湿度環境、とそれぞれ判定される。
本実施形態における温湿度センサ106は温度および相対湿度を検出するものだが、センサの種類はこれに限らない。温湿度センサ106にかえて、温度のみを検出可能な温度センサを用いてもよい。また、温湿度センサ106にかえて、相対湿度のみを検出可能な湿度センサを用いてもよい。
線速補正は装置の印刷速度に応じて決定される。本実施例では標準速、中速(標準速の70%)、低速(標準速の50%)の3線速を有している。
紙サイズ補正は、大きく分けて、用紙の主走査方向幅、用紙の厚み、二次転写部の合成抵抗の3つを判定項目とし、表3〜表5に示すように、いずれも3水準設けている。本実施例では、用紙の主走査方向幅および用紙の厚みは、給紙トレイ設定条件から求めている。
二次転写部の合成抵抗(図1の形態においては、二次転写裏面ローラ53、中間転写ベルト51およびニップ形成ローラ56を含む電流経路の抵抗である。図3の形態においては、二次転写裏面ローラ53、中間転写ベルト51、二次転写ベルト36および二次転写ローラ400を含む電流経路の抵抗である。)は、製造時あるいはサービスマンによる調整動作、あるいは印刷時などの自動調整動作において一定電流(本実施例では−50μA)をながしたときの出力電圧を計算し、その計算結果から抵抗区分を決定している。図5、図6に示す抵抗検知手段203は、一定電流を二次転写部(二次転写ニップN)へ流した時の出力電圧を検知する。そして、電流と電圧との関係により二次転写部の抵抗を検知する。二次転写部の合成抵抗は、二次転写ニップNに用紙を挟まない状態で算出される。表5におけるR−Lは合成抵抗が低いこと、R−Mは合成抵抗が標準であること、R−Hは合成抵抗が高いことを示す。
続いて、本実施例における各補正値を以下に示すが、この補正値も一例であり、なんら限定するものではない。なお以下では、標準値に対するパーセント(%)で補正値を示すものとする。標準値の具体的な仕様(電圧、電流等の数値)は、装置構成に応じて適宜設定されるものである。
本実施例での環境補正値は、上記環境区分に応じて表6のようになる。
制御手段300は、温湿度センサ106によって検知された温度および湿度のうちの少なくとも一つと、デューティの値と、におうじて、DC成分およびAC成分の大きさを変更するように、電源200を制御する。
本実施例で使用しているトナーはマイナス帯電であり、低温環境になるほど帯電量は絶対値で大きくなる(例:−25μC/g→−40μC/g)ことから、低デューティAC転写モードではDC成分、AC成分ともに、常温環境(MM環境)に対して低温環境(LL環境)である場合には標準値より大きくなるように(プラス方向に)補正する。これにより、用紙の凹部での濃度不足を防止することができる。逆に高温環境であるほど、トナー帯電量は絶対値で小さくなることから、DC成分、AC成分ともに、常温環境(MM環境)に対して高温環境(HH環境)である場合には標準値より小さくなるように(マイナス方向に)補正する。これにより、トナーの放電による異常画像の発生を防止することができる。
一方、高デューティAC転写モードでは、低温環境(LL環境)下ではトナー帯電量が高いため補正はおこなわず、交流電圧のピ−クツウピーク(AC成分)および時間平均電圧(DC成分)は常温環境(MM環境)と同じ、すなわち標準値のままとする。これにより、低温環境(LL環境)下において転写に必要なバイアスを確保し、転写性を向上することができる。一方、高温環境(HH環境)下では交流電圧のピ−クツウピーク(AC成分)および時間平均電圧(DC成分)を標準値よりも大きくなるように補正する。すなわち、高温環境(HH環境)下では常温環境(MM環境)に比べて交流電圧のピ−クツウピーク(AC成分)および時間平均電圧(DC成分)の絶対値を大きくする。このように補正することで、戻し方向のピーク電圧値Vr(図9および図11を参照)の値は、プラス極性側すなわちトナーを用紙へ転写する極性とは逆の極性側に、より大きくなる。高温環境(HH環境)下では常温環境(MM環境)に比べてトナーの帯電量が小さいが、Vrの値をプラス側に大きくすることでトナーへトナーと同極性の電荷の注入が促進され、トナー帯電量Q/Mの低下をより確実に抑えることができる。これにより、高温環境(HH環境)下で用紙上の画像濃度不足の発生をより確実に防止できる。
なお、低温環境(LL環境)下においては、交流電圧のピ−クツウピーク(AC成分)および時間平均電圧(DC成分)を標準値よりも小さくなるように補正してもよい。転写に必要なバイアスが確保される程度であれば、交流電圧のピ−クツウピーク(AC成分)および時間平均電圧(DC成分)を小さくしてもよい。
また、温度および湿度に応じてバイアスを補正する際、時間平均電圧(DC成分)は温度および湿度に関わらず一定とし、交流電圧のピ−クツウピーク(AC成分)のみを上記で説明したように補正してもよい。
次に、本実施例での線速補正値は上記装置の印刷速度に応じて、表7のようになる。中速は標準速に比べて70%の速度、低速は標準速に比べて50%の速度である。なお、印刷速度は、二次転写ニップNを通過する用紙の搬送速度である。
制御手段300は、電源200および用紙の印刷速度を制御する。用紙の印刷速度は、レジストローラ対102が送り出す用紙の速度などを制御することにより制御される。
制御手段300は、印刷速度と、重畳バイアスのデューティの値と、におうじて、DC成分およびAC成分の大きさを変更するように、電源200を制御する。
低デューティAC転写モードではDC成分は定電流制御であるため、標準速に対して印刷速度が遅くなる場合には標準バイアスより小さくなるように補正している。AC成分は定電圧制御であることから、印刷速度に応じた補正は必要なく、標準速と同じ設定となっている。なお、転写性に影響しない範囲であれば、印刷速度に応じてAC成分の値を補正してもよい。
高デューティAC転写モードでは、基本的な補正の考え方は同一であるが、低速になるほどトナーが転写ニップ内に滞在する時間が長くなるため、その分トナーへ電荷注入される時間も長くなる。つまり、二次転写バイアスがトナーの帯電量に影響を与えやすくなる。そこで、本実施形態では、遅い印刷速度(中速や低速)で画像を転写するときは、標準速のときに比べて絶対値で小さくなるようにDC成分を補正するとともに、低デューティAC転写モードに比べてDC成分がより小さくなるように補正する。
たとえば、低デューティAC転写モードかつ低速で転写をするときはDC成分を50%に補正するのに対し、高デューティAC転写モードかつ低速で転写をするときはDC成分を40%(すなわち50%よりも小さな割合)へ補正する。換言すると、デューティが50%より大きいときにおける印刷速度に応じたDC成分の減少率(表7の高duty転写モードにおいて標準速と低速とを比較したとき、DC成分の減少率は、100%−40%であって60%である。)は、デューティが50%未満のときにおける印刷速度に応じたDC成分の減少率(表7の低duty転写モードにおいて標準速と低速とを比較したとき、DC成分の減少率は、100%−50%であって50%である。)よりも大きい。
このようにバイアスを制御することにより、遅い印刷速度で画像を転写するとき、転写バイアスの戻し方向のピーク値Vrは、よりプラス側の値となる。これにより、トナーに対してトナーの帯電極性とは逆極性の電荷が注入されることが防止され、画像濃度不足の発生を防止できる。
次に、本実施例での紙サイズ補正値は上記検出方法に応じて次の表8〜表13のようになる(低デューティAC転写モード:表8〜表10、高デューティAC転写モード:表11〜表13)。
低デューティAC転写モード、高デューティAC転写モード共に、DC成分は、用紙の主走査方向幅が小さい場合、用紙の厚みが厚い場合、合成抵抗が低い場合、に補正を大きく(補正%を大きく)する。これは、DC成分が定電流制御であるため、上記いずれの条件においても用紙領域外に漏れてしまう電流が多くなることから、用紙への転写に必要な電流を確保するために各条件に応じて補正を大きくしている。
AC成分については,定電圧であるために用紙領域外への漏れの影響はないことから、用紙サイズ、厚みに対しては関係なく同じ補正となる。
用紙の主走査方向幅の補正のAC成分とDC成分の補正を同じにして、仮にDC成分の補正をAC成分に適用してしまうと、AC成分は過補正になり放電による白抜け画像が発生してしまう。なお、転写性に影響しない範囲であれば、印刷速度に応じてAC成分の値を補正してもよい。
ただし,AC成分の合成抵抗に対する補正に関しては,低デューティAC転写モードは、合成抵抗が低い場合は印加するバイアスが小さくなる(基準値より小さくなる)ように補正し、合成抵抗が高い場合は印加するバイアスが大きくなる(基準値より大きくなる)ように補正する。これは、トナーを用紙に転写する際の二次転写ニップで必要な電圧は合成抵抗にかかわらず同じとするため、合成抵抗(特に二次転写裏面ローラの抵抗)が高い場合には、電圧降下を考慮して高い電圧が必要となるためである。
一方、高デューティAC転写モードでは、合成抵抗が低い場合、交流電圧のピ−クツウピークおよび時間平均電圧を強くしないと効果が出ないため、合成抵抗が低い場合には補正を大きくし、合成抵抗が高い場合には補正を小さくする。
合成抵抗に応じた補正は、紙厚や紙サイズに応じた補正と独立しておこなってもよい。この場合、表8〜10に示すように、低デューティAC転写モードでは、合成抵抗が高いほどAC成分を大きくする。一方、表11〜13に示すように、高デューティAC転写モードでは、合成抵抗が低いほどAC成分を大きくする。
これにより、温度及び湿度に応じてDC成分とAC成分とを補正する場合と同様に、低デューティAC転写モードにおいては、合成抵抗が高いときの用紙の凹部での濃度不足を防止でき、また、合成抵抗が低いときの放電による異常画像の発生を防止することができる。一方、高デューティAC転写モードにおいては、合成抵抗が高いときの転写性を向上することができ、また、合成抵抗が低いときのトナー帯電量Q/Mの低下をより確実に抑えることができる。
ここまで説明したように、いずれの補正も低デューティAC転写モードと高低デューティAC転写モードで異なった設定とすることで、各条件に応じて最適なDC成分およびAC成分で画像転写を行なうことができる。
また、交流成分の補正は、記録紙の厚みが小さい場合の転写部抵抗が大きくなるときの変化量より、記録紙の厚みが大きい場合の転写部抵抗が大きくなるときの変化量の方が少ない、補正率とすると好適である。これにより、各記録紙の厚み、抵抗に応じて最適なDC成分およびAC成分の出力を行なうことができる。
本発明と比較するため、転写バイアスにおける低デューティAC転写モードと高デューティAC転写モードに同じ補正を適用したものを比較例1として以下に示す。なお、装置構成、各種補正の検出方法は実施例と同様であるため、記載は省略する。
[比較例1]
比較例1は高デューティAC転写モードの環境補正係数のAC成分、DC成分の補正値を低デューティAC転写モードの補正値と同一とした場合であり、その補正値を表14に示す。環境補正以外の設定は実施例1と同様(表7〜13)である。
実施例1と比較例1で、以下の条件で画像印刷を行い、効果確認を行った。
装置の印刷速度:標準速
二次転写合成抵抗区分:R−M
環境:10℃15%(環境区分:LL)、23℃50%(環境区分:MM)、27℃80%(環境区分:HH)
用紙の主走査方向幅:A4横(297mm:サイズ1)
用紙1:レザック66、連量:100kg(坪量:116gsm)(紙厚1)
用紙2:PODグロスコート100(坪量:100gsm)(紙厚1)
チャート:全面ベタ画像(ブルー色)、全面ハーフトーン画像(シアン色)
転写モード:レザック66では低デューティAC転写モード、PODグロスコートでは高デューティAC転写モードを使用
効果確認結果を表15に示す。表15での「○」は異常画像なし、「×」は異常画像あり、である。
なお、「レザック」、「PODグロスコート」はともに商品名である。また、PODグロスコートは、表面がコーティングされたコート紙である。PODグロスコートの表面凹凸は、レザック66の表面凹凸に比べて小さい。
実施例1(低デューティと高デューティで異なる補正テーブルを持つ)の場合では、各環境において異常画像の発生はなかったが、比較例1(低デューティと高デューティで同じ補正)の場合では、低デューティAC転写モードの補正に統一したため、レザック66に対しては異常画像の発生は無かったが、PODグロスコートに対してはHH(高温高湿)環境で補正が足りずトナーが電荷注入されたことによる転写率低下が発生し、転写不足による白抜けが発生した。これにより、低デューティAC転写モードと高デューティAC転写モードで異なる環境補正テーブルを持つ効果が確認できた。
[比較例2]
比較例2は高デューティAC転写モードの線速補正係数を低デューティAC転写モードの補正値と同一とした場合であり、その補正値を表16に示す。線速補正以外の設定は実施例1と同様(表6、表8〜13)である。
実施例1と比較例2で、以下の条件で画像印刷を行い、効果確認を行った。
装置の印刷速度:下記“用紙”項目参照
二次転写合成抵抗区分:R−M
環境:23℃50%(環境区分:MM)
用紙の主走査方向幅:A4横(297mm:サイズ1)
用紙1:レザック66、連量:130kg(坪量:151gsm)(紙厚2:中速印刷)
用紙2:PODグロスコート128(坪量:128gsm)(紙厚2:中速印刷)
用紙3:Conqueror製、LAID Unwatermarked Hi White 300gsm(紙厚3:低速印刷)
用紙4:MagnoStar 300gsm(紙厚3:低速印刷)
チャート:全面ベタ画像(ブルー色)、全面ハーフトーン画像(シアン色)
転写モード:用紙1,3では低デューティAC転写モード、用紙2,4では高デューティAC転写モードを使用
効果確認結果を表17に示す。表17での「○」は異常画像なし、「×」は異常画像あり、である。
なお、「LAID Unwatermarked Hi White」、「MagnoStar」はともに商品名である。
実施例1(低デューティと高デューティで異なる補正テーブルを持つ)の場合では、各印刷速度において異常画像の発生はなかったが、比較例2(低デューティと高デューティで同じ補正)の場合では、印刷速度:中速、低速いずれの場合も高デューティAC転写モードを使用した際、DC成分が不足するため、電荷注入防止の効果が薄く,転写不足による白抜けが発生した。これにより、低デューティAC転写モードと高デューティAC転写モードで異なる線速補正テーブルを持つ効果が確認できた。
[比較例3]
比較例3は抵抗区分:R−L、紙厚1で紙サイズ補正の用紙主走査方向幅の補正において、補正値を低デューティAC転写モードの値に統一した場合であり、その補正値を表8(既出)に示す。紙サイズ補正以外の設定は実施例1と同様(表6〜13)である。
実施例1と比較例3で、以下の条件で画像印刷を行い、効果確認を行った。
装置の印刷速度:標準速
二次転写合成抵抗区分:R−L
環境:23℃50%(環境区分:MM)
用紙の主走査方向幅:A4横(297mm:サイズ1)、A5縦(148.5mm:サイズ3)
用紙1:レザック66、連量:100kg(坪量:116gsm)(紙厚1)
用紙2:PODグロスコート100 坪量100gsm(紙厚1)
チャート:全面ベタ画像(ブルー色)、全面ハーフトーン画像(シアン色)
転写モード:レザック66では低デューティAC転写モード、PODグロスコートでは高デューティAC転写モードを使用。
効果確認結果を表18に示す。表18での「○」は異常画像なし、「×」は異常画像あり、である。
実施例1(低デューティと高デューティで異なる補正テーブルを持つ)の場合では、いずれの紙サイズにおいても異常画像の発生はなかったが、比較例3(低デューティと高デューティで同じ補正)の場合では、レザック66では異常画像が発生しなかったが、PODグロスコートではAC成分が不足となり、ベタ,ハーフトーンで転写不足による白抜けが発生した。これより、紙サイズ補正のうち用紙主走査方向幅の補正を低デューティAC転写モードと高デューティAC転写モードで異なる補正テーブルを持つ効果が確認できた。
以上で説明したように、重畳バイアスを出力する電源の構成および制御手段による電源出力の補正方法は、以下のようなものである。時間平均電圧Vaveに、所定のデューティ(Duty)および所定のピークツウピーク電圧Vppを有する交流電圧を重畳した重畳バイアスを、電源が二次転写部に出力する構成である。すなわち、電源は、時間平均電圧Vaveを出力する直流電源と、交流電圧を出力する交流電源と、を有し、直流電源と交流電源とは直列に接続される。そして、制御手段は、デューティ(Duty)の大きさに応じて時間平均電圧Vaveおよび交流電圧の大きさVppを変更するように、電源の出力を制御する。
一方、これにかえて、中心値(Voff)に、所定のデューティ(Duty)および所定のピークツウピーク電圧Vppを有する交流電圧を重畳した重畳バイアスを、電源が二次転写部に出力する構成であってもよい。すなわち、電源は、中心値(Voff)を出力する直流電源と、交流電圧を出力する交流電源と、を有し、直流電源と交流電源とは直列に接続される構成である。そして、温度湿度、紙厚、紙サイズ、転写部の抵抗などに応じて、中心値(Voff)と交流電圧とを補正するとともに、デューティ(Duty)に応じて中心値(Voff)と交流電圧との補正の方法を異ならせる構成である。このような構成であっても、上記で説明した形態と同様の効果を得ることができる。
ここまで説明したように、本発明の画像形成装置によれば、多様な条件に応じて最適な直流成分および交流成分のバイアスで画像転写を行なうことが可能なため、良好な転写画像を得ることができる。
また、装置内の環境状態を検知する環境検知手段を有し、前記制御手段は、前記環境検知手段の検知結果に応じて前記直流成分および前記交流成分の大きさを変更するように、前記転写バイアス出力手段を制御することで、環境状態にかかわらず、良好な転写画像を得ることができる。
また、バイアスの電圧の時間平均値(Vave)が、前記中心値(Voff)よりも前記転写する側にあるとき、前記環境検知手段で検知した温度又は/及び湿度が低いほど、前記バイアスを標準値より大きくなるように補正することで、低温環境であっても、転写に必要なバイアスを確保することができる。
また、バイアスの電圧の時間平均値(Vave)が、前記中心値(Voff)よりも前記転写する側にあるとき、前記環境検知手段で検知した温度又は/及び湿度が高いほど、前記バイアスを標準値より小さくなるように補正することで、転写バイアスを、高温環境でのトナー帯電量に適したものとすることができる。
また、バイアスの電圧の時間平均値(Vave)が、前記中心値(Voff)よりも前記戻す側にあるとき、前記環境検知手段で検知した温度又は/及び湿度が所定の低温環境にある場合、前記バイアスを標準値のままとすることで、転写バイアスを、低温環境でのトナー帯電量に適したものとすることができる。
また、バイアスの電圧の時間平均値(Vave)が、前記中心値(Voff)よりも前記戻す側にあるとき、前記環境検知手段で検知した温度又は/及び湿度が高いほど、前記バイアスを標準値より大きくなるように補正することで、高温環境でも重畳バイアスの効果を発揮することができる。
また、印刷速度に応じて前記直流成分および前記交流成分の大きさを変更することで、印刷速度に対応した最適な転写バイアスによる良好な転写画像を得ることができる。
また、印刷速度が標準速から遅くなるほど、前記バイアスの前記直流成分を標準値より小さくなるように補正するとともに、前記バイアスの前記交流成分は標準値のままとすることで、直流成分を定電流制御する場合において、印刷速度に対応した最適な転写バイアスによる良好な転写画像を得ることができる。
また、バイアスの電圧の時間平均値(Vave)が前記中心値(Voff)よりも前記戻す側にあるときの印刷速度の低下に応じた前記直流成分の補正量を、前記バイアスの電圧の時間平均値(Vave)が前記中心値(Voff)よりも前記転写する側にあるときの印刷速度の低下に応じた前記直流成分の補正量よりも大きくすることで、転写部における電荷注入の影響を抑制することができる。
また、記録材の条件に応じて前記直流成分および前記交流成分の大きさを変更することで、記録材の条件によらず最適な転写バイアスによる良好な転写画像を得ることができる。
また、記録材の主走査方向幅が小さくなるほど、前記バイアスの前記直流成分を標準値より大きくなるように補正するとともに、前記バイアスの前記交流成分は標準値のままとすることで、用紙への転写に必要な電流を確保し、良好な転写画像を得ることができる。
また、記録材の厚さが大きくなるほど、前記バイアスの前記直流成分を標準値より大きくなるように補正するとともに、前記バイアスの前記交流成分は標準値のままとすることで、用紙への転写に必要な電流を確保し、良好な転写画像を得ることができる。
また、転写部の抵抗値が小さくなるほど、前記バイアスの前記直流成分を標準値より大きくなるように補正するとともに、前記バイアスの前記交流成分は標準値のままとすることで、用紙への転写に必要な電流を確保し、良好な転写画像を得ることができる。
また、記録材の表面凹凸が所定値より大きなものを用いる場合にバイアスとして、低デューティなものを用い、記録材の表面凹凸が所定値より小さなものを用いる場合、前記バイアスとして、高デューティなものを用いることで、凹凸が大きな用紙にも小さな用紙にも良好な転写画像を得ることができる。
また、像担持体は、基層と、該基層の上に積層された弾性層とを含む複数層からなることで、転写ニップ内で弾性層がその弾性によって柔軟に変形し、表面凹凸の大きな用紙と像担持体との密着性が向上し、表面凹凸の大きな用紙に対するトナー像の転写性を更に向上させることができる。
以上、本発明を図示例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。転写部及び電源の構成は適宜な構成を採用可能である。
また、画像形成装置の構成も任意であり、タンデム式における各色作像ユニットの並び順などは任意である。また、4色機に限らず、5色以上のトナーもしくは3色のトナーを用いるフルカラー機や、2色のトナーによる多色機、あるいはモノクロ装置にも本発明を適用することができる。中間転写体を備えず、感光体などの像担持体から用紙へ直接トナー像を転写する装置、いわゆる直接転写方式の装置にも本発明を適用することができる。もちろん、画像形成装置としてはプリンタに限らず、複写機やファクシミリ、あるいは複数の機能を備える複合機であっても良い。
二次転写バイアスとして、その直流成分が定電圧制御されたバイアスを用いてもよい。同様に、二次転写バイアスとして、その交流成分が定電圧制御されたバイアスを用いてもよい。
以上の実施形態では、表6に示すように温湿度に応じて二次転写バイアスのDC成分及びAC成分をそれぞれ3段階に変化させる例を説明したが、2段階のみに変化させてもよいし、4段階以上で細かく変化させてもよい。印刷速度に応じてDC成分及びAC成分を変化させる場合についても同様である。転写部の抵抗に応じてDC成分及びAC成分を変化させる場合についても同様である。