JP2017192722A - 低風速ガス系消火システム - Google Patents
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Abstract
Description
美術館、博物館などでは、定期的もしくは不定期に展示物を変更し、多種多様な嗜好を持つ人間の閲覧要望を満足させることで入場者を獲得している。
そして、火災が発生した場合、屋内消火栓設備を起動させ、火災発生部分に対して放水することで消火することになるが、火災発生部分に展示物が含まれる場合には、消火はできたとしても放水による水圧や不清浄な水そのものにより貴重な展示物が損傷、損壊される場合がある。
また、火災発生部分の近辺に放水の障害となる物体、例えば、展示物を陳列する架台や展示物そのものが障害となり、火災発生部分に十分に放水できず火災が拡大し初期消火に失敗する場合がある。
放水により消火に至らしめた場合、放水された水は、燃焼生成物や防護区画そのものの汚れを含み、火災発生部分以外の範囲も汚染する結果となり、清掃などを含め、復元には多大な時間と費用が発生する。
防護区画が複数ある場合には、貯蔵容器を共用するために火災が発生した該防護区画だけの配管経路を構成するため、貯蔵容器と各防護区画に至る配管の途中に選択弁を設け、選択弁開放用に起動用ガス容器を設ける。
火災が発生した該防護区画用の起動用ガス容器が開放されることにより、起動用ガス容器内の起動用ガスが該防護区画用の選択弁を開放するとともに貯蔵容器の容器弁に設けられた容器弁開放装置を作動させて貯蔵容器を開放する。
窒素ガスを用いる消火設備は、窒素ガス消火設備と称される。
風速が高い場合、貴重な展示物で、例えば、掛け軸や絵画などは大きく揺れ、固定位置から脱落する危険がある。また、風速により舞い上がる埃や塵による汚れの付着、直接的かつ間接的に発生する振動も展示物にとってはダメージとなる。
また、貴重な展示物にとっては、その風速により直接的かつ間接的に発生する揺れや振動、舞い上がる埃や塵による汚れの付着など発生するダメージは軽減されてはいるものの、皆無にはならないため、さらなる風速を低減させる措置を実施する必要があった。
なお、上記対策によって低減させた風速を、さらに低減させるためには、噴射ヘッド10A、10B、10Cによる対策以外に風よけ板を設置するなどの措置が考えられるが、展示物が変更となった場合に陳列位置が変わること、噴射ヘッドは天井裏などに敷設された鋼管と接続するため容易には設置位置が変更できないこと、また、噴射ヘッドは性能上、設置位置や方向の変更には制限があることなどから、これらの措置を実施することは困難を伴うことが多かった。
また、消火に必要な消火剤量は、防護区画の容積により算出され、かつ規定時間内で放射する必要があり、放射流量をオリフィスで調整することから、放射流量により本発明で用いる噴射ヘッドを防護区画に適宜複数設置して、消火に必要となる消火剤量によらず展示室に発生する風速を好適に抑制することができる。
また、風速抑制手段として風速抑制器を噴射ヘッドに配設することにより、風速抑制のために噴射ヘッド1個あたりの消火剤ガスの放出流量を低減させる必要がないことから、風速抑制のために噴射ヘッド1個あたりの消火剤ガスの放出流量を低減させた場合に必要となる噴射ヘッドの設置個数の増加を抑制することができ、これにより、低風速ガス系消火システムの構築コストを低廉にできる。
この低風速ガス系消火システムに用いる噴射ヘッド1Aは、消火剤ガスが供給される配管4に接続された噴射ヘッド1Aにオリフィス2を備えるとともに、その先端側に風速抑制器3Aを配設し、この風速抑制器3Aを介して消火剤ガスを防護区画に放出するようにしている。
この風速抑制器3Aは、消火剤ガスの持つ運動エネルギーを弱めて、消火剤ガスが放出される際に発生する風速を低減するようにしたものである。
すなわち、噴射ヘッド1Aのオリフィス2を通過した消火剤ガスを直接大気中に放出すると、消火剤ガスの持つ運動エネルギーがほとんど減衰しないため、それに伴って高い風速が発生することとなるが、本実施例の噴射ヘッド1Aにおいては、消火剤ガスの流路となる内管31の周面に多数の透孔31aを形成し、その外周を外管32で覆う構造としているため、オリフィス2を通過した消火剤ガスが内管31を通過する間に徐々に運動エネルギーは減衰し、消火剤ガスが内管31の先端に形成された開口31bから大気中に放出される際に高い風速が発生することを低減することができる。
また、内管31と外管32との間に形成した空間33には、必要に応じて、グラスウール、ロックウール、スチールウール等の金属製ウール、合成繊維や天然繊維の不織布、無機材料(金属、金属の酸化物、金属の水酸化物を含む。)からなる多孔体(焼結体や粒状体を含む。)、合成樹脂発泡体、ハニカム構造の整流器等の気体が流通可能な繊維状又は多孔性の気流の乱れをなくす材料を充填するか、あるいは空間のままにすることができる。
また、外管32を焼結金属製のもので構成することもできる。
この風速ガス系消火システムに用いる噴射ヘッド1Bは、消火剤ガスが供給される配管4に接続された噴射ヘッド1Bにオリフィス2を備えるとともに、その先端側に風速抑制器3Bを配設し、この風速抑制器3Bを介して消火剤ガスを防護区画に放出するようにしている。
この風速抑制器3Bは、消火剤ガスが持つ運動エネルギーを弱めて、消火剤ガスが放出される際に発生する風速を低減するようにしたものである。
すなわち、噴射ヘッド1Bのオリフィス2を通過した消火剤ガスを直接大気中に放出すると、消火剤ガスの持つ運動エネルギーがほとんど減衰しないため、それに伴って高い風速が発生することとなるが、本実施例の噴射ヘッド1Bにおいては、消火剤ガスが、消火剤ガスの流路となる内部流路34から放射方向に放出されるように、中心部に内部流路34と連通する孔部35aを有する複数の円盤形状の板材35を、スペーサ(図示省略)によって間隔をあけて、ボルト37によって固定することにより、消火剤ガスが放射方向に放出される放出流路36が形成される構造としているため、オリフィス2を通過した消火剤ガスが放出流路36を通過する間に徐々に運動エネルギーは減衰し、消火剤ガスが放出流路36から大気中に放出される際に高い風速が発生することを低減することができる。
この低風速ガス系消火システムに用いる噴射ヘッド1Cは、消火剤ガスが供給される配管4に接続された噴射ヘッド1Cに横方向に開口する複数個(本実施例においては、4個)のオリフィス2を備えるとともに、その外周を覆うように風速抑制器3Cを配設し、この風速抑制器3Cを介して消火剤ガスを防護区画に放出するようにしている。
この風速抑制器3Cは、消火剤ガスの進行方向を多方向に変えながら運動エネルギーを減衰させ、最終的に一軸方向に消火剤ガスが放出されることで発生する風速を低減するようにしたものである。
すなわち、噴射ヘッド1Cのオリフィス2を通過した消火剤ガスを直接大気中に放出すると、各オリフィスが受け持つ消火剤の運動エネルギーがほとんど減衰しないため、それに伴って高い風速が発生することとなるが、本実施例の噴射ヘッド1Cにおいては、消火剤ガスの流路となるオリフィス2の外周を筐体38で覆うとともに、この筐体38の開口部38aに充填材39aを配設した構造としているため、オリフィス2を通過した消火剤ガスが筐体38、さらには、充填材39aを通過する間に徐々に運動エネルギーは減衰し、筐体38の開口部38aから大気中に放出される際に高い風速が発生することを低減することができる。
また、充填材39aが飛散等しないように、充填材39aの材質等に応じて、パンチングメタル、エキスパンドメタル、焼結金属製の板材、ハニカム構造の整流器等からなる挟持板39b1、39b2によって挟持した状態で配設することができる。
また、風速抑制効果を一層高めるために、必要に応じて、筐体38の内周及び/又は外周をさらに運動エネルギーを減衰させる材料を用いて被覆したり、筐体38を焼結金属製のもので構成することもできる。
ところで、上記第3実施例の低風速ガス系消火システムに用いる噴射ヘッド1Cの充填材39aなどの配置形態は、同実施例に記載したものに限定されず、以下に記載するような種々の形態を採用することができる。
この低風速ガス系消火システムに用いる噴射ヘッド1C1において、風速抑制器3C1は、横方向に開口する複数個(本実施例においては、4個)のオリフィス2の外周囲に設けけられた、消火剤ガスの流路となる開口部38aを形成した筒状の筐体38と、オリフィス2の横方向を向く開口の外周を若干の空間を設けて覆うようにして筐体38内に配設した有底の充填材39a1とで構成するようにしている。
すなわち、噴射ヘッド1C1のオリフィス2を通過した消火剤ガスを直接大気中に放出すると、各オリフィスが受け持つ消火剤の運動エネルギーが大きく、それに伴って高い風速が発生することとなるが、本実施例の噴射ヘッド1C1においては、消火剤ガスの流路となるオリフィス2の外周を充填材39a1を介して筐体38で覆う構造としているため、オリフィス2を通過した消火剤ガスが充填材39a1を通過する間に徐々に運動エネルギーが減衰し、筐体38の開口部38aから大気中に放出される際に高い風速が発生することを低減できる。
また、図4(b)に示すように、オリフィス2と充填材39a1との間に形成された空間の下部に気体が流通しない有底筒状の遮蔽体39cを配設することができる。
これにより、噴射ヘッド1C1のオリフィス2を通過した消火剤ガスを、一旦遮蔽体39cで受け、その後、充填材39a1を通過させることによって、消火剤ガスの圧力によって充填材39a1が損傷を受けることを防止し、消火剤ガスが充填材39a1を円滑に通過させることができる。
この低風速ガス系消火システムに用いる噴射ヘッド1C2において、風速抑制器3C2は、下方向に開口する複数個(本実施例においては、6個)のオリフィス2の出口に円板形状(又は図8(b)に示すような円錐形状)のデフレクタ(偏向部材)5を設けて横方向に偏向させた開口の外周囲に設けられた、消火剤ガスの流路となる開口部38aを形成した筒状の筐体38と、オリフィス2の横方向を向く開口の外周を覆うようにして筐体38内に配設した有底の充填材39a1とで構成するようにしている。
すなわち、噴射ヘッド1C2のオリフィス2を通過した消火剤ガスを直接大気中に放出すると、各オリフィスが受け持つ消火剤の運動エネルギーが大きく、それに伴って高い風速が発生することとなるが、本実施例の噴射ヘッド1C2においては、消火剤ガスの流路となる下方向に開口するオリフィス2の出口部に気体が流通可能な繊維状又は多孔性の気流の乱れをなくす材料を配設するとともに、横方向を向く開口の外周を充填材39a1を介して筐体38で覆う構造としているため、オリフィス2を通過した消火剤ガスが、気体が流通可能な繊維状又は多孔性の気流の乱れをなくす材料及び充填材39a1を通過する間に徐々に運動エネルギーを減衰させ、筐体38の開口部38aから大気中に放出される際に高い風速が発生することを低減できる。
また、消火剤ガスの流路となる下方向に開口するオリフィス2の出口部に配設する気体が流通可能な繊維状又は多孔性の気流の乱れをなくす材料には、グラスウール、ロックウール、スチールウール等の金属製ウールや形状保持性能の高い無機材料(金属、金属の酸化物、金属の水酸化物を含む。)の焼結体からなる多孔体を好適に用いることができる。
なお、カバー部材39dには、気体が流通可能な繊維状又は多孔性の気流の乱れをなくす材料の材質に応じて、パンチングメタル、エキスパンドメタル、焼結金属製の板材、ハニカム構造の整流器等を用いることができるが、気体が流通可能な繊維状又は多孔性の気流の乱れをなくす材料の材質によっては、省略することもできる。
これにより、噴射ヘッド1C2のオリフィス2を通過した消火剤ガスを、一旦噴射ヘッド1C2のオリフィス2と充填材39a1との間に形成した空間に放出することによって拡散させ、消火剤ガスが充填材39a1を円滑に通過するようにすることができる。
なお、噴射ヘッドやオリフィスの形式は、本実施例のものに限定されるものではない。
このように、風速抑制手段を、オリフィス2の出口部に配設した気体が流通可能な繊維状又は多孔性の気流の乱れをなくす材料7で構成することにより、風速抑制手段を簡易な構造とし、噴射ヘッドをコンパクトに構成でき、既存の設備にもそのまま適用することができる。
次に、図7(a)に示す噴射ヘッド1Lと、図8(b)に示す従来の噴射ヘッド10Bをそれぞれ用いて比較試験を行った。
試験は、図10に示す試験室で、各噴射ヘッド及び風速センサを用いて実施した。
試験結果を、表1に示す。ここで、各風速は測定した最大値を示している。
次に、同様に、図7(a)に示す噴射ヘッド1Lと、図8(b)に示す従来の噴射ヘッド10Bをそれぞれ用いて、より多くの地点(噴射ヘッドから水平方向及び垂直方向に所定距離だけ離れた地点)で風速(m/s)の測定を行った。
試験は、噴射ヘッドから40m3/minの消火剤ガスが放出される際に発生する風速の大きさを風速センサを用いて実施した。
試験結果を、表2(実施例:噴射ヘッド1L)及び表3(比較例:噴射ヘッド10B)に示す。ここで、各風速は測定した最大値を示している。
これにより、消火に必要な消火剤量の大小に関係なく、展示室に発生する風速を好適に抑制することができる。
また、展示物が掛け軸等の風速に敏感なものである場合、従来の噴射ヘッドでは噴射ヘッド1個あたりの放射流量を少なくするために複数の設置が必要であったが、本発明の低風速ガス系消火システムでは大幅に改善された噴射ヘッドの性能により、1個あたりの消火剤ガスの放出流量を低減させる必要がないことから、風速抑制のために噴射ヘッド1個あたりの消火剤ガスの放出流量を低減させた場合に必要となる噴射ヘッドの設置個数の増加を抑制する(例えば、従来の噴射ヘッドでは、数十個の設置が必要であったケースで、数個の設置で対応できるようにする)ことができ、これにより、低風速ガス系消火システムの構築コストを低廉にできる。
1B 低風速ガス系消火システムに用いる噴射ヘッド
1C 低風速ガス系消火システムに用いる噴射ヘッド
1C1 低風速ガス系消火システムに用いる噴射ヘッド
1C2 低風速ガス系消火システムに用いる噴射ヘッド
1I 低風速ガス系消火システムに用いる噴射ヘッド
1J 低風速ガス系消火システムに用いる噴射ヘッド
1K 低風速ガス系消火システムに用いる噴射ヘッド
1L 低風速ガス系消火システムに用いる噴射ヘッド
2 オリフィス
3A 風速抑制器
3B 風速抑制器
3C 風速抑制器
3C1 風速抑制器
3C2 風速抑制器
4 配管
5 デフレクタ(偏向部材)
6 ホーン(拡散部材)
7 気体が流通可能な繊維状又は多孔性の気流の乱れをなくす材料
7a 空隙の孔径が大きな金属多孔性材料
7b 空隙の孔径が小さな金属多孔性材料
Claims (6)
- 消火剤ガスを使用するガス系消火設備において防護区画に消火剤ガスを放出するために設置される噴射ヘッドに、消火剤ガスの風速抑制手段を備えたことを特徴とする低風速ガス系消火システム。
- 前記風速抑制手段が、噴射ヘッドに配設した風速抑制器であることを特徴とする請求項1記載の低風速ガス系消火システム。
- 前記風速抑制手段が、オリフィスの出口部に配設した気体が流通可能な繊維状又は多孔性材料からなることを特徴とする請求項1記載の低風速ガス系消火システム。
- 繊維状又は多孔性材料の空隙の孔径を、気体が流通する方向に変化させるようにしたことを特徴とする請求項3記載の低風速ガス系消火システム。
- 繊維状又は多孔性材料の空隙の孔径を、気体が流通する方向に小さくしたことを特徴とする請求項4記載の低風速ガス系消火システム。
- 繊維状又は多孔性材料の端面に円板形状のデフレクタを設けてなることを特徴とする請求項3、4又は5記載の低風速ガス系消火システム。
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