JP2017186645A - 高強度冷延鋼板、高強度溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

高強度冷延鋼板、高強度溶融亜鉛めっき鋼板 Download PDF

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道高 経澤
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Abstract

【課題】引張強度980MPa以上の高強度領域において、高降伏比であり、延性、および曲げ性に優れた高強度鋼板を提供することを目的とする。【解決手段】C、Si、Mn、P、S、Al、Ti、およびBを含有し、下記(1)で定義されるXが8.0以下であり、下記(2)で定義されるYと前記Xの差の値Y−Xが45以上53以下であり、残留オーステナイトの体積率が2%以下である高強度冷延鋼板である。(1)Xは、[0.40×(IQmax−IQmin)+IQmin]以下である測定点数の合計を全測定点数で除して100を掛けた値であり、(2)Yは、[0.75×(IQmax−IQmin)+IQmin]以下である測定点数の合計を全測定点数で除して100を掛けた値であり、IQは電子線後方散乱回折パターンの鮮明度を意味し、上記IQmaxは全測定点中のIQの最大値であり、上記IQminは全測定点中のIQの最小値である。【選択図】図1

Description

本発明は、高強度冷延鋼板及び高強度溶融亜鉛めっき鋼板に関し、より詳細には、延性、曲げ性に優れ高降伏比である引張強度980MPa以上の高強度冷延鋼板、または高強度溶融亜鉛めっき鋼板に関する。以下では、これら高強度冷延鋼板と高強度溶融亜鉛めっき鋼板をまとめて、単に高強度鋼板と呼ぶ場合がある。
近年、自動車用鋼板や輸送機械用鋼板等の部材の高強度化に伴い、延性、曲げ性といった加工性が低下しており、複雑形状の部材をプレス成形することは困難であった。よって、高強度鋼板であっても、上記加工性に優れた技術の提供が求められている。
また、自動車用鋼板は、車体構造用部材に適用した場合、同じ引張強度では降伏比が高い程、衝撃吸収エネルギーが優れる。一方、降伏比が高すぎる場合、スプリングバックが大きくなる等、成形した際の形状凍結性が悪化する。従って、YR(Yield Ratio)で表される降伏比が、例えば90〜95%程度である鋼板が求められている。なお前記YRとは、0.2%耐力であるYS(Yield Strength)を、引張強度であるTS(Tensile Strength)で除して100をかけた値である。
上記要求特性のうち、高強度鋼板の加工性向上技術として、下記特許文献が提案されている。特許文献1では、マルテンサイト、ベイナイト、もしくはそれらを複合させたミクロ組織とし、且つ、鋼板の表層を軟質として、強度−曲げ性バランスを向上できることを示している。しかし、特許文献1は、高強度化および上記成形性について検討されているに留まり、降伏比、伸びについては、考慮されていない。
特許文献2では、Ti、Nb、Vから選択される一種以上の元素を添加し、且つBの添加を必須とし、ベイナイト、マルテンサイト主体の組織とし、且つベイナイトの平均結晶粒径を7μm以下に制御し、高い降伏比と優れた伸びを確保した、高強度鋼板が示されている。しかし、上記特許文献2では、降伏比が70%台であり、且つ、曲げ性も考慮されていない。
特開2014−237887号公報 特開2013−147736号公報
上記特許文献では、引張強度、降伏比、伸び、曲げ性について、全てを満足するような検討はされていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、引張強度980MPa以上の高強度領域において、高降伏比であり、延性、および曲げ性に優れた高強度鋼板を提供することにある。
上記目的を達成した本発明は、
質量%で、
C :0.12〜0.19%、
Si:0%超、0.4%以下、
Mn:1.80〜2.45%、
P :0%超、0.020%以下、
S :0%超、0.0040%以下、
Al:0.015〜0.06%、
Ti:0.010〜0.035%、および
B :0.0025〜0.0040%
を含有し、残部が鉄および不可避不純物であり、
下記(1)で定義されるXが8.0以下であり、下記(2)で定義されるYと前記Xの差の値Y−Xが45以上53以下であり、
全組織に対する残留オーステナイトの体積率が2%以下であり、
引張強度が980MPa以上である高強度冷延鋼板である。
(1)Xは、[0.40×(IQmax−IQmin)+IQmin]以下である測定点数の合計を全測定点数で除して100を掛けた値であり、
(2)Yは、[0.75×(IQmax−IQmin)+IQmin]以下である測定点数の合計を全測定点数で除して100を掛けた値であり、
上記(1)、(2)におけるIQは、電子線後方散乱回折パターンの鮮明度を意味し、IQmaxは全測定点中のIQの最大値であり、IQminは全測定点中のIQの最小値である。
本発明の高強度冷延鋼板は、更に、質量%で、(i)Cu:0%超、0.3%以下、Ni:0%超、0.3%以下、Cr:0%超、0.25%以下、Mo:0%超、0.1%以下、V:0%超、0.05%以下およびNb:0%超、0.08%以下よりなる群から選ばれる1種以上を含有することや、(ii)Ca:0%超、0.005%以下を含有することが好ましい。
本発明は、上記高強度冷延鋼板の表面に亜鉛めっき層を有する高強度溶融亜鉛めっき鋼板も包含する。
本発明によれば、鋼中成分および残留オーステナイト体積率およびIQ(Image Quality、イメージクオリティ)が適切に制御されているため、延性、曲げ性に優れた引張強度980MPa以上、且つ、高降伏比の冷延鋼板、および溶融亜鉛めっき鋼板を提供することができる。
図1は、本発明で規定するIQの要件を説明するための模式図である。 図2は、本発明の高強度鋼板を得るために推奨される焼鈍工程の構成を模式的に表したグラフである。
本発明者らは、引張強度が980MPa以上で、且つ、高降伏比である高強度鋼板であって、延性、および曲げ性(以下、加工性と呼ぶことが有る)に優れる高強度鋼板を提供するため、鋼中成分、残留オーステナイト体積率、IQ(イメージクオリティ)に着目して鋭意検討を重ねてきた。その結果、鋼中成分、残留オーステナイト体積率、IQ(イメージクオリティ)を、それぞれ以下の範囲に調整すれば良いことを突き止めた。なお、本明細書において高強度とは、引張強度が980MPa以上であることを意味するものとする。
まず、本発明を最も特徴付けるIQについて詳細を説明する。IQとは、EBSD(Electron Back Scatter Diffraction、電子線後方散乱回折)パターンの鮮明度である。IQは結晶中の歪量に影響を受けることが知られており、具体的にはIQが小さいほど、結晶中に歪が多く存在する傾向にある。よって、例えば、高転位密度のマルテンサイトは結晶構造の乱れを含むためにIQ値が低下し、フェライトは低転位密度のため、IQ値が高くなる傾向にある。そのため、従来では、IQ値の絶対値を指標として、例えばIQ値が4000以上の組織をフェライトと判定する方法などが提案されている。しかしながら、本発明者らの検討結果によれば、IQの絶対値に基づく方法は、組織観察のための研磨条件や検出器などの影響を受け易く、IQの絶対値が変動し易いことが分かった。そこで、鋼板中の歪の分散状態、すなわちEBSDパターンの鮮明度であるIQの分布状態が降伏比、延性、曲げ性に与える影響を調査した。その結果、IQが後述する要件を満足することが、良好な延性、曲げ性及び高降伏比のいずれをも達成するために重要であることを見出した。IQの測定方法の詳細は後述する実施例の欄で説明する。
本発明では、下記(1)で定義される値Xが8.0以下であり、下記(2)で定義される値Yと前記値Xの差の値Y−Xが45以上、53以下である。
(1)値Xは、[0.40×(IQmax−IQmin)+IQmin]以下である測定点数の合計を全測定点数で除して100を掛けた値であり、
(2)値Yは、[0.75×(IQmax−IQmin)+IQmin]以下である測定点数の合計を全測定点数で除して100を掛けた値であり、
上記(1)、(2)におけるIQは、電子線後方散乱回折パターンの鮮明度を意味し、IQmaxは全測定点中のIQの最大値であり、IQminは全測定点中のIQの最小値である。
値Xと値Yによって特定される事項を図1に模式的に表す。図1の横軸はIQ値であり、縦軸は各IQ値を示す測定点の個数割合(%)を示す。値Xとは、IQ値が[0.40×(IQmax−IQmin)+IQmin]以下となる測定点の、全測定点に対する個数割合であり、値YとはIQ値が[0.75×(IQmax−IQmin)+IQmin]以下である測定点の、全測定点に対する個数割合である。従って、値Xが8.0以下であるということは、IQ値が[0.40×(IQmax−IQmin)+IQmin]以下となる測定点の、全測定点に対する割合が8.0%以下であるということであり、またY−Xの値が45以上、53以下であるということは、IQ値が[0.40×(IQmax−IQmin)+IQmin]を超え、且つ[0.75×(IQmax−IQmin)+IQmin]以下である測定点の、全測定点に対する割合が45%以上、53%以下であることを意味する。
Xの値が8.0を超えると降伏比が低くなり、曲げ性も劣化する。この理由は必ずしも明確ではないが、Xの値が大きくなることは、歪みの多い結晶が増えることを意味し、歪の多い結晶が増えることにより、可動転移が増加し、降伏比が低下すると考えられる。曲げ性劣化については、歪の多い結晶の周辺で破壊の起点となるミクロクラックが増加したことに起因すると考えている。Xは、好ましくは6以下であり、より好ましくは5以下である。Xの下限は特に限定されないが、例えば0.5である。
本発明では上記した通り、値Xが8.0以下であると共に、Y−Xの値が45以上、53以下である。Y−Xの値が45未満となると、降伏比が低下する。一方、Y−Xの値が53を超えると、降伏比が高くなりすぎ、且つ、延性が低下する。Y−Xの値が大きくなりすぎると降伏比が高くなり延性が低下する理由は、必ずしも明確ではないが、Y−Xの値が大きくなるに従い、鋼板中の歪分布が均質となり、降伏比が増加し延性が低下したと考えられる。Y−Xは、好ましくは46以上、52以下であり、より好ましくは47以上、51以下である。
また、本発明では、全組織に対する残留オーステナイトの体積率を2%以下とする。残留オーステナイト体積率が大きくなると、降伏比が低下する。残留オーステナイト体積率は、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下であり、最も好ましくは0%である。残留オーステナイトの体積率は、後記する実施例でも記載する通り、ISIJ Int.Vol.33.(1933),No.7,P.776に記載の方法によって測定される値である。
本発明の高強度鋼板のミクロ組織は、基地組織がベイナイト組織であり、少量のマルテンサイト組織を含む。全組織に対するこれら組織の合計割合は、例えば95面積%以上である。
更に、本発明では上記のようにイメージクオリティと残留オーステナイト体積率を制御することに加えて、鋼板中の化学成分を下記の通り制御する必要がある。なお、本明細書において、化学成分はいずれも質量%を意味する。
C:0.12〜0.19%
Cは、鋼板の強度を確保するために必要な元素であり、C量が不足すると、引張強度が低下する。そのためにC量の下限を0.12%以上とする。C量の下限は、好ましくは0.13%以上であり、より好ましくは0.14%以上である。しかし、C量が過剰になるとIQの値に基づいて算出される上記X値が高くなり、降伏比、曲げ性が低下する。そこで、C量の上限を0.19%以下とする。C量の上限は、好ましくは0.18%以下であり、より好ましくは0.17%以下である。
Si:0%超、0.4%以下
Siは固溶強化元素として知られており、延性の低下を抑えつつ、引張強度を向上させることに有効に作用する元素である。更に、曲げ性を向上させる元素でもある。このような効果を有効に発揮させるため、Si量は0.01%以上が好ましく、より好ましくは0.1%以上である。しかし、Siを過剰に添加すると、IQの値に基づいて算出される上記X値が高くなり、降伏比が低下する。そのためにSi量の上限を0.4%以下とする。Si量の上限は、好ましくは0.3%以下であり、より好ましくは0.25%以下である。
Mn:1.80〜2.45%
Mnは鋼板の高強度化に寄与する元素である。このような効果を有効に発揮させるために、Mn量の下限を1.80%以上とする。Mn量は好ましくは1.9%以上であり、より好ましくは2.0%以上である。しかしながら、Mn量が過剰になると、IQの値に基づいて算出される上記X値が高くなり、降伏比、曲げ性が低下する。そのため、Mn量の上限を2.45%以下とする。Mn量の上限は、好ましくは2.35%以下であり、より好ましくは2.25%以下である。
P:0%超、0.020%以下
Pは不可避的に含まれる元素であり、粒界に偏析して粒界脆化を助長する元素であり、曲げ性を劣化させるため、P量はできるだけ低減することが推奨される。そのため、P量の上限は、0.020%以下とする。P量の上限は、好ましくは0.015%以下であり、より好ましくは0.010%以下である。なお、Pは鋼中に不可避的に含まれる不純物であり、その量を0%にすることは工業生産上不可能である。
S:0%超、0.0040%以下
SもPと同様に不可避的に含有する元素であり、介在物を生成し、曲げ性を劣化させるため、S量はできるだけ低減することが推奨される。そのため、S量の上限は、0.0040%以下とする。S量の上限は、好ましくは0.0030%以下、より好ましくは0.0020%以下である。なお、Sは鋼中に不可避的に含まれる不純物であり、その量を0%にすることは工業生産上不可能である。
Al:0.015〜0.06%
Alは脱酸剤として作用する元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、Al量の下限を0.015%以上とする。Al量の下限は、好ましくは0.025%以上であり、より好ましくは0.030%以上である。しかしながら、Al量が過剰になると鋼板中にアルミナなどの介在物が多く生成し、曲げ性を劣化させることがあるため、Al量の上限を0.06%以下とする。Al量の上限は、好ましくは0.055%以下であり、より好ましくは0.050%以下である。
Ti:0.010〜0.035%
Tiは、炭化物や窒化物を形成して強度を向上させる元素である。また、Bの焼入れ性を有効に活用するための元素でもある。詳細には、Ti窒化物形成により鋼中Nを低減し、B窒化物の形成を抑制し、Bが固溶状態となり、有効にBの焼入れ性を発揮できる。このように、Tiは焼入れ性を向上させることにより、鋼板の高強度化に寄与する。このような効果を有効に発揮させるために、Ti量の下限を、0.010%以上とする。Ti量の下限は、好ましくは0.013%以上であり、より好ましくは0.015%以上である。しかしながら、Ti量が過剰になると、Ti炭化物やTi窒化物が過剰となり、曲げ性を劣化させ、且つ、降伏比も低下する。Ti量の上限を0.035%以下とする。Ti量の上限は、好ましくは0.030%以下である。より好ましくは0.025%以下である。
B:0.0025〜0.0040%
Bは焼入れ性を向上させて鋼板の高強度化に寄与する元素である。このような効果を有効に発揮させるために、B量の下限を0.0025%以上とする。B量の下限は、好ましくは0.0027%以上である。より好ましくは0.0029%以上である。しかし、B量が過剰になると、その効果が飽和し、コストが増加するだけであるため、B量の上限を0.0040%以下とする。B量の上限は、好ましくは0.0035%以下である。
本発明の高強度鋼板の基本成分は上記の通りであり、残部は実質的に鉄である。但し、原材料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる不可避不純物が鋼中に含まれることは当然に許容される。不可避不純物としては、上述したP、Sの他、例えば、N、Oなどが含まれ、これらはそれぞれ以下の範囲であることが好ましい。
N:0.01%以下
Nは不純物元素として不可避的に存在し、曲げ性を劣化させる。Nの上限は0.01%以下が好ましく、より好ましくは0.006%以下であり、更に好ましくは0.005%以下である。N量は少なければ少ない程好ましいが、0%にすることは工業生産上困難である。
O:0.002%以下
Oは不純物元素として不可避的に存在し、曲げ性を劣化させる。Oの上限は0.0020%以下が好ましく、より好ましくは0.0015%以下であり、更に好ましくは0.0010%以下である。O量は少なければ少ない程好ましいが、0%にすることは工業生産上困難である。
さらに本発明では、必要に応じて以下に示す範囲で、Cu、Ni、Cr、Mo、VおよびNbの1種以上を含むことや、Caを含むことが好ましい。
Cu、Ni、Cr、Mo、V、およびNbはいずれも強度向上に有効な元素である。これらの元素は、夫々以下に示す範囲で、単独でまたは適宜組み合わせて含有させても良い。
Cu:0%超、0.3%以下
Cuは、更に鋼板の耐食性向上に有効な元素であり、必要に応じて添加しても良い。このような効果を有効に発揮させるために、Cu量の下限を、好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.05%以上とする。しかし、Cu量が過剰になると、その効果が飽和し、コストが増加するだけである。そのため、Cu量の上限は、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下、更に好ましくは0.15%以下である。
Ni:0%超、0.3%以下
Niは、更に鋼板の耐食性向上に有効な元素であり、必要に応じて添加しても良い。このような効果を有効に発揮させるために、Ni量の下限を、好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.05%以上とする。しかしながら、Ni量が過剰になると、その効果が飽和し、コストが増加するだけである。そのため、Ni量の上限は、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下、更に好ましくは0.15%以下である。
Cr:0%超、0.25%以下
Crの高強度化の効果を有効に発揮させるために、Cr量の下限を、好ましくは0.015%以上であり、より好ましくは0.03%以上、更に好ましくは0.05%以上とする。しかしながら、Cr量が過剰になると、不めっきを発生させることがあるため、Cr量の上限は0.25%以下が好ましく、より好ましくは0.20%以下であり、更に好ましくは0.10%以下である。
Mo:0%超、0.1%以下
Moの高強度化の効果を有効に発揮させるために、Mo量の下限を、好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.05%以上とする。しかしながら、Mo量が過剰になると、その効果が飽和し、コストが増加するだけである。そのため、Mo量の上限は0.1%以下が好ましい。
V:0%超、0.05%以下
Vの高強度化の効果を有効に発揮させるために、V量の下限は0.003%以上が好ましく、より好ましくは0.005%以上である。しかしながら、V量が過剰になると、その効果が飽和し、コストが増加するだけである。そのため、V量の上限は、0.05%以下が好ましく、より好ましくは0.03%以下であり、更に好ましくは0.02%以下である。
Nb:0%超、0.08%以下
Nbの高強度化の効果を有効に発揮させるために、Nb量の下限を、0.003%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.005%以上とする。しかしながら、Nb量が過剰になると、曲げ性を劣化させる。そのため、Nb量の上限は、好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.06%以下、更に好ましくは0.04%以下である。
Ca:0%超、0.005%以下
Caは、鋼中の硫化物を球状化し、曲げ性を高めることに有効な元素である。このような効果を有効に発揮させるために、Ca量の下限を、好ましくは、0.0005%以上、より好ましくは0.001%以上とする。しかしながら、Ca量が過剰になると、その効果が飽和し、コストが増加するだけである。そのため、Ca量の上限は0.005%以下が好ましく、より好ましくは0.003%以下であり、更に好ましくは0.0025%以下である。
化学成分組成、残留オーステナイトの面積率、IQ値から算出される値X、Yが上記の条件を満足している本発明の高強度鋼板は、引張強度が980MPa以上であり、且つ、降伏比、延性、曲げ性のすべてに優れている。本発明の高強度鋼板の降伏比は、例えば90%以上、95%以下とできる。
次に、本発明の高強度鋼板を製造する方法について説明する。
上記要件を満足する本発明の高強度鋼板は、熱間圧延、冷間圧延、および焼鈍(均熱および冷却)の工程において、特に冷間圧延後の焼鈍工程を適切に制御して製造するところに特徴がある。以下、本発明の高強度鋼板を得るための好ましい製造工程を、熱間圧延、冷間圧延、その後の焼鈍の順に説明する。
熱間圧延の好ましい条件は、例えば以下のとおりである。
熱間圧延前の加熱温度が低いと、オーステナイト中への、TiCなどの炭化物の固溶が低下するおそれがあるため、熱間圧延前の加熱温度の下限は、好ましくは1200℃以上、より好ましくは1250℃以上である。熱間圧延前の加熱温度が高いとコストアップとなるため、熱間圧延前の加熱温度の上限は、好ましくは1350℃以下、より好ましくは1300℃以下である。
熱間圧延の仕上げ圧延温度が低いと、オーステナイト単相域で圧延することができず、圧延時の変形抵抗が大きく、操業が困難になるおそれがあるため、仕上げ圧延温度は、好ましくは850℃以上、より好ましくは870℃以上である。仕上げ圧延温度が高いと結晶が粗大化するおそれがあるため、好ましくは980℃以下、より好ましくは950℃以下である。
熱間圧延の仕上げ圧延から巻取りまでの平均冷却速度は、生産性を考慮し、好ましくは10℃/秒以上、より好ましくは20℃/秒以上である。一方、平均冷却速度が速いと設備コストが高くなるため、好ましくは100℃/秒以下、より好ましくは50℃/秒以下である。
次に、熱間圧延後の工程の好ましい条件について説明する。
熱間圧延後の巻取り温度:550℃以上
熱間圧延後の巻取り温度が、550℃未満になると、熱延板の強度が高くなり、冷間圧延で圧下し難くなる。そのため、巻取り温度は550℃以上が好ましく、より好ましくは570℃以上、更に好ましくは600℃以上である。一方、熱延巻取り温度が、高くなりすぎるとスケール除去のための酸洗性が劣化する。そのため、好ましくは800℃以下、より好ましくは750℃以下である。
冷延率:20%以上、60%以下
熱延鋼板は、スケール除去のために酸洗を施し、冷間圧延に供する。冷間圧延の冷延率が20%未満になると、所定厚さの鋼板を得るために熱間圧延工程で板厚を薄くしなければならず、熱間圧延工程で薄くすると鋼板長さが長くなるため、酸洗に時間がかかり、生産性が低下する。そのため、冷延率の下限を、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上とする。一方、冷延率が60%を超えると、高い冷間圧延機の能力が必要となる。そのため、冷延率の上限は、好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下、更に好ましくは50%以下である。
本発明の高強度鋼板を得るためには、冷延後の焼鈍工程が(a)加熱して保持する均熱工程、(b)均熱工程に引き続き行われる第1の冷却工程、(c)前記第1の冷却工程後に所定温度範囲で保持する保持工程、(d)前記保持工程に引き続いて行われる第2の冷却工程、(e)第2の冷却工程に引き続いて行われる第3の冷却工程を含み、この(a)〜(e)の条件をそれぞれ適切に調整することが重要である。本発明の焼鈍工程の上記(a)〜(e)の構成を、図2に模式的に示す。
(a)均熱工程
上記冷間圧延後、好ましくはAc3点〜Ac3点+200℃に加熱して所定時間保持して均熱する。均熱温度がAc3点未満になると、上記Xの値が高くなり、降伏比の確保が難くなる。そのため、均熱温度の下限は、Ac3点以上が好ましく、より好ましくはAc3点+25℃以上とする。一方、上記温度がAc3点+200℃を超えると、工業的に生産するためのエネルギーが過剰に必要となる。そのため、上限は、Ac3点+200℃以下が好ましく、より好ましくはAc3点+150℃以下である。
ここで、上記Ac3点温度は、下式に基づいて算出される。式中の[%(元素名)]は各元素の含有量(質量%)である。この式は、「レスリー鉄鋼材料学」(丸善株式会社発行、William C. Leslie著、p.273)に記載されている。
Ac3=910−203√(%C)−15.2(%Ni)+44.7(%Si)+104(%V)+31.5(%Mo)+13.1(%W)−30(%Mn)−11(%Cr)−20(%Cu)+700(%P)+400(%Al)+120(%As)+400(%Ti)
上記均熱温度までの加熱速度は特に限定されないが、平均加熱速度は1℃/秒以上、20℃/秒以下であることが好ましい。上記冷間圧延後の平均加熱速度が1℃/秒未満となると、生産性が悪化する。そのため、上記平均加熱速度の下限を1℃/秒以上とすることが好ましく、より好ましくは3℃/秒以上、更に好ましくは5℃/秒以上とする。一方、上記平均加熱速度が20℃/秒を超えると、鋼板温度が制御し難くなり、設備コストも増加する。そのため、上記平均加熱速度の上限は20℃/秒以下が好ましく、より好ましくは18℃/秒以下、更に好ましくは15℃/秒以下である。
上記均熱温度では1秒以上、100秒以下均熱することが好ましい。均熱時間が1秒未満となると、上記Xの値が高くなり、降伏比の確保が難しくなる。そのため、上記均熱時間の下限は1秒以上が好ましく、より好ましくは10秒以上とする。一方、上記均熱時間が100秒を超えると、生産性が悪化する。そのため、上記均熱時間の上限は100秒以下が好ましく、より好ましくは80秒以下である。
(b)第1の冷却工程
上記均熱温度から下記冷却停止保持温度までの平均冷却速度は15℃/秒以上、50℃/秒以下とすることが好ましい。第1の冷却工程での平均冷却速度が、15℃/秒未満になると、生産性が悪化する。そのため、上記平均冷却速度の下限は15℃/秒以上が好ましく、より好ましく20℃/秒以上とする。一方、上記平均冷却速度が50℃/秒を超えると、鋼板温度を制御し難くなり、設備コストが増加する。そのため、上記平均冷却速度の上限は50℃/秒以下が好ましく、より好ましくは40℃/秒以下、更に好ましくは30℃/秒以下である。
第1の冷却工程の冷却停止温度は、380℃以上、440℃以下とするのが好ましい。このような温度範囲が好ましい理由は、後述する。
(c)保持工程
前記第1の冷却を380℃以上、440℃以下の温度範囲で停止した後、380℃以上、440℃以下の温度で所定時間保持するのが好ましい。第1段目冷却の冷却停止温度及び保持温度が、380℃未満になると、前記したY−Xの値が高くなって、降伏比が高くなりすぎ、且つ、延性も低下する。そのため、上記冷却停止及び保持温度の下限は380℃以上が好ましく、より好ましくは390℃以上とする。一方、上記冷却停止及び保持温度が440℃を超えると、逆に前記Y−Xの値が低くなり、降伏比が低下する。そのため、上記冷却停止及び保持温度の上限は440℃以下が好ましく、より好ましくは430℃以下、更に好ましくは420℃以下である。特に、第1の冷却工程の冷却停止温度が380℃未満であり、保持工程の終了温度が440℃を超える場合には、残留オーステナイト体積率が高くなり、降伏比が低下する。
上記保持工程での保持時間は20秒以上、30秒以下とすることが好ましい。該保持時間が20秒未満になると、上記Xの値が高く、上記Y−Xの値が低くなり、降伏比が低下し、且つ、曲げ性が劣化する。そのため、該保持時間の下限は、20秒以上、好ましくは22秒以上とする。一方、該保持時間が30秒を超えると、逆に上記Y−Xの値が高くなることで、降伏比が高くなりすぎ、且つ、曲げ性も低下する。そのため、該保持時間の上限は30秒以下、好ましくは28秒以下である。
(d)第2の冷却工程
上記(c)保持工程を終了した後、100℃以上、310℃以下の冷却停止温度までを20℃/秒以上、50℃/秒以下の平均冷却速度で冷却することが好ましい。第2の冷却工程における平均冷却速度が20℃/秒未満になると、上記Y−Xの値が高くなることで、降伏比が高くなりすぎ、延性が劣化する。そのため、第2の冷却工程における平均冷却速度の下限は、20℃/秒以上が好ましく、より好ましくは25℃/秒以上とする。一方、上記平均冷却速度が50℃/秒を超えると、設備コストが増加する。そのため、上記平均冷却速度の上限は50℃/秒以下が好ましく、より好ましくは40℃/秒以下である。
第2の冷却工程における冷却停止温度が100℃未満になると、設備コストが増加する。そのため、上記冷却停止保持温度の下限は100℃以上が好ましく、より好ましくは200℃以上とする。一方、上記冷却停止保持温度が310℃を超えると、上記Y−Xの値が高くなり、降伏比が高くなりすぎる。そのため、上記冷却停止温度の上限は、310℃以下が好ましく、より好ましくは300℃以下、更に好ましくは290℃以下である。
(e)第3の冷却工程
第2の冷却工程の後、1℃/秒以上の平均冷却速度で冷却することが好ましい。前記平均冷却速度の上限は特に限定されず、例えば10℃/秒である。また第3の冷却工程の冷却停止温度も特に限定されず、通常、室温まで冷却すれば良い。
本発明には、高強度冷延鋼板の表面に亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板も包含される。本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、上記(c)保持工程と(d)第2の冷却工程の間に、通常の方法により亜鉛めっき処理(460℃程度の亜鉛めっき浴に1〜5秒程度浸漬)を行って製造することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含有される。
下記表1に示す成分組成の実験用スラブを製造した。そのスラブを1250℃まで加熱し、板厚2.8mmまで熱間圧延を施した。仕上げ圧延温度は900℃、熱間圧延の仕上げ圧延から巻取りまでの平均冷却速度は20℃/秒、巻取り温度は、600℃で行った。次いで得られた熱間圧延鋼板を酸洗した後、板厚1.4mmまで冷間圧延した。その後、図2、表2に示す条件で熱処理を行った。表2に示すいずれの熱処理も、(a)均熱工程までの平均加熱速度は8℃/秒であり、第1の冷却工程での平均冷却速度は20℃/秒であった。更に伸び率0.1%の調質圧延を施した。なお、表1中、空欄は添加していないことを意味し、またP、S、N、Oは上述の通り不可避的不純物であり、P、S、N、Oの欄に示した値は不可避的に含まれた量を意味する。
また、表2の熱処理21〜23では、溶融亜鉛めっき鋼板と同様の熱履歴を与えた。溶融亜鉛めっき鋼板の熱履歴として、(c)保持工程終了の後に2秒で460℃(溶融亜鉛めっき浴温度を模擬)まで加熱し、2秒保持の後、(d)第2の冷却工程以降の処理を行った。
Figure 2017186645
Figure 2017186645
このようにして得られた各冷延鋼板について、イメージクオリティ、残留オーステナイト体積率、および各種特性を以下のようにして測定した。
[残留オーステナイト体積率]
残留オーステナイトは、上記焼鈍後の冷延鋼板から1.4mm×20mm×20mmの試験片を切り出し、板厚の1/4部まで研削した後、化学研磨してからX線回折法により残留オーステナイト量を測定した(ISIJ Int.Vol.33.(1933),No.7,P.776)。
[イメージクオリティ]
また、EBSDパターンの鮮明度であるIQ(イメージクオリティ)は以下のように測定した。まず、圧延方向に平行な断面を機械研磨した試料を用意した。次いで、この試料を、テクセムラボラトリーズ社製OIMシステムにセットして70°傾斜させた状態で、100μm×100μmの領域を測定視野とし、加速電圧:20kV、1ステップ:0.25μmで18万点のEBSD測定を行い、体心正方格子(BCT:Body centered Tetragonal)を含む体心立方格子(BCC:Body Centered Cubic)結晶のIQ値を測定した。ここで体心正方格子は、C原子が体心立方格子内の特定の侵入型位置に固溶することで格子が一方向に伸長したものであり、構造自体は体心立方格子と同等であるため、本実施例では、体心立方格子の測定には体心正方格子を含むものとした。なお、測定箇所は、圧延に平行な面における圧延方向に垂直な方向の長さをWとした時のW/4部、且つ板厚をtとした時のt/4部であり、測定は1視野について実施した。この測定結果より、上記したX及びYの値をそれぞれ算出した。
[引張特性]
引張強度(TS)、0.2%耐力(YS)、および延性(El)については、上記冷間圧延の圧延面と平行な面における圧延方向と直角な方向が試験片の長手となるように、JIS13B号試験片(標点距離50mm、平行部幅12.5mm)を採取し、JIS Z 2241に従って試験した。
[曲げ性]
曲げ性(R/t)は、圧延面において圧延方向と垂直となる方向が試験片の長手となるように、上記冷延鋼板から1.4mm×30mm×20mmの試験片を採取し、JIS Z 2248のVブロック法に従って試験を行い、割れや亀裂が発生しない最小曲げ半径Rを測定した。なお、曲げ方向は試験片長手方向である。また、Vブロックの曲げ角度は90°で行った。曲げ試験により判明したRを公称板厚1.4mmで割った値をR/tとした。
(i)引張強度が980MPa以上1180MPa未満の鋼板について、伸び(El)は、8%以上、曲げ性(R/t)については、3以下を合格とした。Elは高いほどよく(上限は特に限定されないが、通常15%程度)、R/tは小さいほど良い(下限は特に限定されないが、通常0.5)。
(ii)一方、引張強度が1180MPa以上の鋼板については、伸び(El)は、7%以上、曲げ性(R/t)については、4以下を合格とした。Elは高いほどよく(上限は特に限定されないが、通常13%程度)、R/tは小さいほど良い(下限は特に限定されないが、通常1.0)。これらの結果を表3に示す。
Figure 2017186645
表3より、以下のように考察することができる。表3の試験No.3、11〜14、27〜31、35、37、38、41、42は、それぞれ、本発明の組成を満足する表1の鋼種1〜3、11〜16、18、19を用い、本発明の好ましい熱処理条件である表2の熱処理No.3、10〜13で製造した本発明例である。これらは、本発明の要件を満足しているため、引張強度が980MPa以上、且つ、降伏比が90%以上95%以下であって、延性(El)、曲げ性(R/t)に優れているものが得られている。
また、表3の試験No.32〜34は、それぞれ、本発明の組成を満足する表1の鋼種2を用い、本発明の好ましい熱処理条件である表2の熱処理No.21〜23で製造した本発明例であり、溶融亜鉛めっきを模擬した熱履歴を経たものである。これらも、本発明の要件を満足しているため、引張強度が980MPa以上、且つ、降伏比が90%以上95%以下であって、延性(El)、曲げ性(R/t)に優れているものが得られている。
なお、試験No.3、11〜14、27〜35、37、38、41、42では、ベイナイト及びマルテンサイトの合計面積率が95%以上であることを確認している。
これに対し、本発明のいずれかの要件を満足しない下記の例は、所望とする特性が得られないことが確認された。
表3の試験No.20〜26、39は、本発明の組成を満足しない表1の鋼種4〜10、17を用い、表2の熱処理No.3の熱処理条件で製造した例である。
試験No.20は、C量が少なく、Y−Xの値が小さく、引張強度(TS)が低い。
試験No.21は、C量が多く、Xの値が大きいと共に、Y−Xの値が小さく、更に残留オーステナイト体積率が高く、降伏比(YR)が低いことに加えて、曲げ性(R/t)も満たしていない。
試験No.22は、Mn量が少なく、Y−Xの値が小さく、引張強度(TS)が低い。
試験No.23は、Mn量が多く、Xの値が大きいと共に、Y−Xの値が小さく、降伏比(YR)が低く、曲げ性も満たしていない。
試験No.24は、Ti量が少なく、Y−Xの値が小さく、引張強度(TS)が低いと共に、降伏比(YR)及び延性(El)が低く、曲げ性(R/t)も満たしていない。
試験No.25は、Ti量が多く、Xの値が大きいと共に、Y−Xの値が小さく、降伏比(YR)が低く、曲げ性も満たしていない。
試験No.26は、B量が少なく、Y−Xの値が小さく、引張強度(TS)が低いと共に、降伏比(YR)が低い。
試験No.39は、Si量が多く、Xの値が大きいと共に、Y−Xの値が小さく、降伏比(YR)が低い。
表3の試験No.1、2、4〜10、15〜19、36、40は、本発明の組成を満足する表1の鋼種1〜3、16を用い、表2の熱処理No.1、2、4〜9、14〜20の熱処理条件で製造した例である。
試験No.1は、均熱温度が低く、Xの値が大きく、引張強度(TS)が低いとともに、且つ降伏比(YR)が低くなった。
試験No.2は、冷却停止温度及びその後の保持温度が低く、Y−Xの値が大きく、降伏比(YR)が高くなり、延性(El)が低い。
試験No.4、5、9及び10は、冷却停止温度及びその後の保持温度が高く、Y−Xの値が小さく、降伏比(YR)が低くなった。
試験No.6は、冷却停止温度及びその後の保持温度が高く、且つ、保持時間が長いため、Y−Xの値が小さく、引張強度(TS)が低く、且つ降伏比(YR)が低くなった。
試験No.7は、冷却停止温度及びその後の保持温度が非常に高く、Xの値が高く、Y−Xの値が小さく、降伏比(YR)が低く、曲げ性(R/t)が悪化した。
試験No.8は、冷却停止温度及びその後の保持温度が低く、Y−Xの値が大きく、降伏比(YR)が高くなりすぎ、延性(El)が悪化した。
試験No.15、16は、(c)保持工程の保持時間が短く、Xの値が大きく、Y−Xの値が小さく、降伏比(YR)が低くなり、曲げ性(R/t)が悪化した。
試験No.17、18は、(c)保持工程の保持時間が長く、Y−Xの値が大きく、引張強度(TS)が小さいと共に、降伏比(YR)が高くなりすぎ、且つ延性(El)が悪化した。
試験No.19は、(d)第2の冷却工程の冷却停止温度が高く、Y−Xの値が大きく、引張強度(TS)が小さいと共に、降伏比(YR)が高くなりすぎ、且つ延性(El)が悪化した。
試験No.36は、冷却停止温度が低く、且つ保持終了温度が高い条件で処理した例であり、残留γの体積率が多くなり、降伏比(YR)が低くなった。
試験No.40は、(a)均熱工程で保持する時間が短く(保持していない)、Xの値が大きく、引張強度(TS)が低く、且つ降伏比(YR)が低くなった。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C :0.12〜0.19%、
    Si:0%超、0.4%以下、
    Mn:1.80〜2.45%、
    P :0%超、0.020%以下、
    S :0%超、0.0040%以下、
    Al:0.015〜0.06%、
    Ti:0.010〜0.035%、および
    B :0.0025〜0.0040%
    を含有し、残部が鉄および不可避不純物であり、
    下記(1)で定義されるXが8.0以下であり、下記(2)で定義されるYと前記Xの差の値Y−Xが45以上53以下であり、
    全組織に対する残留オーステナイトの体積率が2%以下であり、
    引張強度が980MPa以上であることを特徴とする高強度冷延鋼板。
    (1)Xは、[0.40×(IQmax−IQmin)+IQmin]以下である測定点数の合計を全測定点数で除して100を掛けた値であり、
    (2)Yは、[0.75×(IQmax−IQmin)+IQmin]以下である測定点数の合計を全測定点数で除して100を掛けた値であり、
    上記(1)、(2)におけるIQは、電子線後方散乱回折パターンの鮮明度を意味し、IQmaxは全測定点中のIQの最大値であり、IQminは全測定点中のIQの最小値である。
  2. 更に、質量%で、
    Cu:0%超、0.3%以下、
    Ni:0%超、0.3%以下、
    Cr:0%超、0.25%以下、
    Mo:0%超、0.1%以下、
    V :0%超、0.05%以下および
    Nb:0%超、0.08%以下よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1に記載の高強度冷延鋼板。
  3. 更に、質量%で、Ca:0%超、0.005%以下を含有する請求項1または2に記載の高強度冷延鋼板。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の高強度冷延鋼板の表面に亜鉛めっき層を有する高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
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