以下に、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、これらの実施形態を、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、変更または変形することができる。
[第1の合わせガラス]
本発明の第1の合わせガラスは、互いに対向する1対のガラス板と、前記1対のガラス板の間にその対向面に対応する全面に亘って配置される1対の中間接着層と、前記1対の中間接着層の間に、各中間接着層の対向面と接するように配置される機能性フィルムとを備える合わせガラスであって、前記1対の中間接着層の少なくとも一方が、以下の所定の接着性樹脂組成物(以下、「接着性樹脂組成物(I)」ともいう。)からなることを特徴とする。
接着性樹脂組成物(I)は、変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する組成物である。中間接着層の少なくとも一方において、これを構成する接着性樹脂組成物(I)が変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有することで、外観や透明性を良好に維持しながら、外部からの水分等の侵入を十分に抑制することができる。変性ブロック共重合体水素化物[3]は、ブロック共重合体[1]の、全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[2]にアルコキシシリル基が導入された化合物である。ブロック共重合体[1]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体[1]に占める質量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体[1]に占める質量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が30:70〜60:40のブロック共重合体である。
本明細書において、形状が板状やフィルム状である物品の主面の周縁部とは、該主面の外周から中央部に向かって、ある一定の幅を有する領域を意味する。該物品の両主面の周縁部と端面を併せて端部という。また、本明細書において、ガラス板の主面において中央部から見て外周側を外側、外周からみて中央部側を内側という。
本発明の第1の合わせガラスにおいては、1対の中間接着層の少なくとも一方を接着性樹脂組成物(I)で構成したことで、合わせガラス内において外部からの水分等の侵入を十分に抑制でき、該中間接着層の対向面に接するように設けられる機能性フィルムの経時的な劣化、特に水分に起因する劣化を抑制でき、該機能性フィルムが有する機能を長期に亘って良好に維持できる。これにより、従来、機能性フィルムの外周端を合わせガラス外周端よりも相当の距離をもって内側に設計されていたものが、合わせガラス外周端に近い位置に設計できる。
また、機能性フィルムの端部を十分に保護する必要がある場合であっても、機能性フィルムの外周端を合わせガラス外周端から少し距離を置いて配置するだけで、その端部を十分に保護することが可能となり、意匠性の向上を図ることができる。さらにこれにより、2種以上の機能性フィルムを用いた場合に必要とされていた位置合わせ等の製造上の工程を省略したり、工程自体を容易にすることが可能となる。
以下、本発明の第1の合わせガラスの実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1の合わせガラスの実施形態の一例における正面図であり、図2は、図1に示す合わせガラスのX−X線における断面図である。
図1および図2に示す合わせガラス10Aは、互いに対向する1対のガラス板1A、1Bと、1対のガラス板1A、1Bの対向面にそれぞれ接する1対の中間接着層2A、2Bと、を備える。合わせガラス10Aにおいて、1対のガラス板1A、1Bおよび1対の中間接着層2A、2Bは略同形、同寸の矩形の主面を有する。
合わせガラス10Aは、さらに、1対の中間接着層2A、2Bの間に、ガラス板1A、1Bの主面と略同形であるが面積が小さい主面を有し、該主面の外周端がガラス板1A、1Bの主面および中間接着層2A、2Bの主面の外周端より距離w1だけ内側に位置する機能性フィルム3を有する。機能性フィルム3の外周端から中間接着層2A、2Bの主面の外周端までの、中間接着層2A、2Bの対向面における額縁状の周縁部は、互いに接する構成である。なお、1対の中間接着層2A、2Bはともに接着性樹脂組成物(I)で構成されている。
ここで、本明細書において、「略同形、同寸」とは、人の見た目において同じ形状、同じ寸法を有することをいう。他の場合においても、「略」は上記と同様の意味を示す。
以下、合わせガラス10Aを構成する各要素について説明する。
(ガラス板)
本発明の実施形態の合わせガラス10Aに用いるガラス板1A、1Bの材質としては、透明な無機ガラスや有機ガラス(樹脂)が挙げられる。無機ガラスとしては通常のソーダライムガラス(ソーダライムシリケートガラスともいう)、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が特に制限なく用いられる。これらのうちでもソーダライムガラスが特に好ましい。成形法についても特に限定されないが、例えば、フロート法等により成形されたフロート板ガラスが好ましい。
有機ガラス(樹脂)としては、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ハロゲン化ビスフェノールAとエチレングリコールとの重縮合物、アクリルウレタン樹脂、ハロゲン化アリール基含有アクリル樹脂等が挙げられる。これらのなかでも芳香族系ポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート樹脂やポリメチルメタクリレート系アクリル樹脂等のアクリル樹脂が好ましく、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。さらに、ポリカーボネート樹脂のなかでも特にビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂が好ましい。なお、ガラス板は、上記のような樹脂を2種以上含んで構成されてもよい。
上記ガラスとしては、着色成分を添加しない無色透明な材質を用いてもよく、あるいは、本発明の効果を損なわない範囲で着色された着色透明な材質を用いてもよい。さらには、これらのガラスは1種類もしくは2種類以上を組合せて用いてもよく、例えば、2層以上に積層された積層基板であってもよい。合わせガラスの適用箇所にもよるがガラスとしては、無機ガラスが好ましい。
合わせガラス10Aに用いる1対のガラス板1A、1Bは、互いに異なった種類の材質から構成されてもよいが、同一であることが好ましい。ガラス板1A、1Bの形状は平板でもよく、全面または一部が曲率を有していてもよい。ガラス板1A、1Bの厚みは合わせガラス10Aの用途により適宜選択できるが、一般的には1〜10mmであることが好ましい。さらに、ガラス板1A、1Bには、大気に晒される表出面に、撥水機能、親水機能、防曇機能等を付与するコーティングが施されていてもよい。また、ガラス板1A、1Bの互いに対向する対向面には、低放射性コーティング、赤外線遮蔽コーティング、導電性コーティング等の機能コーティングが施されていてもよい。
なお、ガラス板1A、1Bの対向面が上記機能コーティングを有する場合には、以下の中間接着層2A、2Bはガラス板1A、1Bの対向面上の該機能コーティングに接する構成となる。
(中間接着層)
合わせガラス10Aにおける1対の中間接着層2A、2Bは、ガラス板1A、1Bの主面と略同形、同寸の主面を有し、厚みが後述のとおりの平膜状の層である。中間接着層2A、2Bは、機能性フィルム3を挟持しつつ、それぞれガラス板1A、1Bの対向面に接するように設けられる。このように中間接着層2A、2Bは、該中間接着層2A、2Bを介して1対のガラス板1A、1Bの間に機能性フィルム3を挟み込むように接着して合わせガラス10Aとして一体化する機能を有する。上記のとおり、中間接着層2A、2Bの間において機能性フィルム3が存在しない額縁状の周縁部は、通常、中間接着層2A、2B同士が接着した構成である。
中間接着層2A、2Bは、変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着性樹脂組成物(I)からなる。変性ブロック共重合体水素化物[3]は、以下に説明する特定のブロック共重合体[1]の炭素−炭素不飽和結合を水素化したブロック共重合体水素化物[2]をアルコキシシリル化することにより得られる。
<ブロック共重合体[1]>
ブロック共重合体[1]は、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と少なくとも1つの重合体ブロック[B]を含有する。
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とする。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量は、通常90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上である。重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位以外の成分として、鎖状共役ジエン由来の構造単位および/またはその他のビニル化合物由来の構造単位を含むことができ、その含有量は通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位が少なすぎると、中間接着層の耐熱性が十分でない場合がある。複数の重合体ブロック[A]は、上記の範囲を満足すれば互いに同じであっても、異なっていてもよい。
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とする。重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位の含有量は、通常90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上である。鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位が上記範囲にあると、中間接着層は柔軟性、低温での接着性に優れる。重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位以外の成分として、芳香族ビニル化合物由来の構造単位および/またはその他のビニル化合物由来の構造単位を含むことができ、その含有量は、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。重合体ブロック[B]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量が増加すると、中間接着層の低温での柔軟性が低下し、得られる合わせガラスの耐衝撃性が低下する恐れがある。重合体ブロック[B]が複数有る場合には、重合体ブロック[B]は、上記の範囲を満足すれば互いに同じであっても、異なっていてもよい。
芳香族ビニル化合物としては、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、4−モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレンなどが挙げられ、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましく、工業的な入手の容易さからスチレンが特に好ましい。
鎖状共役ジエン系化合物としては、具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられ、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましく、工業的な入手の容易さから1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
その他のビニル系化合物としては、鎖状ビニル化合物や環状ビニル化合物が挙げられる。その他のビニル系化合物は、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、またはハロゲン基を有するビニル化合物および/または不飽和の環状酸無水物または不飽和イミド化合物を含んでもよい。その他のビニル系化合物として、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテンなどの鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサンなどの環状オレフィンなどの、極性基を含有しないものが吸湿性の面で好ましい。これらのなかでも、その他のビニル系化合物としては、鎖状オレフィンがより好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
ブロック共重合体[1]中の重合体ブロック[A]の数は、通常5個以下、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下である。重合体ブロック[A]および/または重合体ブロック[B]が複数存在する場合、重合体ブロック[A]の中で重量平均分子量が最大と最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(A1)およびMw(A2)とし、重合体ブロック[B]の中で重量平均分子量が最大と最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(B1)およびMw(B2)としたとき、該Mw(A1)とMw(A2)との比(Mw(A1)/Mw(A2))、および、該Mw(B1)とMw(B2)との比(Mw(B1)/Mw(B2))は、それぞれ2.0以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下である。
ブロック共重合体[1]のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでもよく、鎖状型ブロックであるものが、機械的強度に優れ好ましい。ブロック共重合体[1]の最も好ましい形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体、および、重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、さらに、該両重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合したペンタブロック共重合体である。
ブロック共重合体[1]中の、全重合体ブロック[A]がブロック共重合体[1]に占める質量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]がブロック共重合体[1]全体に占める質量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)は、30:70〜60:40である。wA:wBは、好ましくは35:65〜55:45、より好ましくは40:60〜50:50である。wAが高過ぎる場合は、変性ブロック共重合体水素化物[3]の耐熱性は高くなるが、柔軟性が低くなりやすい。wAが低過ぎる場合は、屈折率が汎用のフロートガラスの屈折率に比べて小さくなり過ぎる。それにより、中間接着層とその他の層との界面において全反射が起き易くなり視認性が低下するため好ましくない。
ブロック共重合体[1]の分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常30,000〜200,000、好ましくは40,000〜150,000、より好ましくは50,000〜100,000である。また、ブロック共重合体[1]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。
ブロック共重合体[1]の製造方法は、例えばリビングアニオン重合などの方法により、芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を交互に重合させる方法;芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を順に重合させた後、重合体ブロック[B]の末端同士を、カップリング剤によりカップリングさせる方法などがある。
<ブロック共重合体水素化物[2]>
ブロック共重合体水素化物[2]は、上記のブロック共重合体[1]が有する全不飽和結合の90%以上を水素化したものである。ブロック共重合体[1]が有する全不飽和結合とは、主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに芳香環の炭素−炭素不飽和結合の合計である。上記水素化率は、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、中間接着層の耐候性、耐熱性が良好である。ブロック共重合体水素化物[2]の水素化率は、1H−NMRによる測定において求めることができる。
不飽和結合の水素化方法や反応形態などは特に限定されず、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような水素化方法としては、例えば、国際公開WO2011/096389号、国際公開WO2012/043708号などに記載された方法を挙げることができる。
上記の方法で得られるブロック共重合体水素化物[2]は、水素化触媒および/または重合触媒を、ブロック共重合体水素化物[2]を含む反応溶液から除去した後、反応溶液から回収される。回収されたブロック共重合体水素化物[2]の形態は限定されるものではないが、通常はペレット形状にして、その後のアルコキシシリル基の導入反応に供することができる。
ブロック共重合体水素化物[2]の分子量は、テトラヒドロフランを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常、35,000〜200,000、好ましくは40,000〜150,000、より好ましくは45,000〜100,000である。また、ブロック共重合体水素化物[2]の分子量分布(Mw/Mn)を、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下にする。MwおよびMw/Mnが上記範囲となるようにすると、中間接着層の機械強度や耐熱性が向上する。
<変性ブロック共重合体水素化物[3]>
変性ブロック共重合体水素化物[3]は、上記ブロック共重合体水素化物[2]にアルコキシシリル基が導入されたものである。アルコキシシリル基は、上記ブロック共重合体水素化物[2]に直接結合していても、アルキレン基などの2価の有機基を介して結合していてもよい。
アルコキシシリル基の導入方法は、通常、上記のブロック共重合体水素化物[2]とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる方法が好ましい。
アルコキシシリル基の導入量は、通常、ブロック共重合体水素化物[2]100質量部に対し、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部、より好ましくは0.3〜3質量部である。アルコキシシリル基の導入量が多過ぎると、所望の形状に溶融成形する前に微量の水分等で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋が進み、ゲルが発生したり、溶融時の流動性が低下して成形性が低下するなどの問題を生じる。アルコキシシリル基の導入量が少な過ぎると、他の層との十分な接着力が得られないという不具合が生じるため好ましくない。アルコキシシリル基の導入はIRスペクトルで確認することができ、導入量は1H−NMRによる測定において求めることができる。
エチレン性不飽和シラン化合物としては、上記のブロック共重合体水素化物[2]とグラフト重合し、ブロック共重合体水素化物[2]にアルコキシシリル基を導入するものであれば特に限定されないが、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシランが好適に用いられる。これらのエチレン性不飽和シラン化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。エチレン性不飽和シラン化合物の使用量は、上記アルコキシシリル基の導入量と同量とできる。
過酸化物としては、1分間半減期温度が170〜190℃のものが好ましく使用される。過酸化物としては、例えば、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシドなどが好適に用いられる。
これらの過酸化物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。過酸化物の使用量は、ブロック共重合体水素化物[2]100質量部に対して、通常0.05〜2質量部、好ましくは0.1〜1質量部、より好ましくは0.2〜0.5質量部である。
上記のブロック共重合体水素化物[2]とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる方法は特に限定されない。例えば、ブロック共重合体水素化物[2]と所定量のエチレン性不飽和シラン化合物および過酸化物を、二軸混練機にて所望の温度で所望の時間混練することによりアルコキシシリル基を導入することができる。上記混練温度は、通常180〜220℃、好ましくは185〜210℃、より好ましくは190〜200℃である。加熱混練時間は、通常0.1〜10分間、好ましくは0.2〜5分間、より好ましくは0.3〜2分間程度である。温度、滞留時間が上記範囲になるようにして、連続的に混練、押出しをすればよい。
変性ブロック共重合体水素化物[3]の分子量は、導入されるアルコキシシリル基の量が少ないため、原料として用いたブロック共重合体水素化物[2]の分子量と実質的には変わらないが、過酸化物の存在下でエチレン性不飽和シラン化合物と反応させるため、重合体の架橋反応、切断反応も併発し、分子量分布は大きくなる。テトラヒドロフランを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常35,000〜200,000、好ましくは40,000〜150,000、より好ましくは45,000〜100,000、分子量分布(Mw/Mn)は、通常3.5以下、好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。MwおよびMw/Mnがこの範囲であると、中間接着層の機械強度や耐熱性が維持される。
<接着性樹脂組成物(I)>
接着性樹脂組成物(I)は、変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する。接着性樹脂組成物(I)は、変性ブロック共重合体水素化物[3]以外のその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、接着性や遮音性能を向上させるための可塑剤、耐光性、遮光性、耐熱性などを向上させるための光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などが挙げられる。
可塑剤としては、変性ブロック共重合体水素化物[3]以外の低分子量のポリマー;一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステルなどの有機酸エステル系可塑剤;有機リン酸エステル系、有機亜リン酸エステル系などのリン酸エステル系可塑剤などが好適に用いられる。これらの可塑剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
低分子量のポリマーは、変性ブロック共重合体水素化物[3]に均一に溶解ないし分散できるものが好ましく、数平均分子量300〜5,000の炭化水素系重合体が透明性を維持し、耐熱性を大きく損なうことがないため、好ましい。炭化水素系重合体の具体例としては、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−1−オクテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、脂肪族系炭化水素樹脂およびその水素化物、脂環族炭化水素樹脂およびその水素化物、インデン・スチレン共重合体水素化物、ポリイソプレンおよびその水素化物などが挙げられる。これらの中でも、特に透明性に優れた合わせガラス板が得られる点で、ポリイソブチレン、ポリブテンが好ましい。
有機酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールまたはトリプロピレングリコールなどのグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプタン酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)またはデシル酸などの一塩基機酸との反応によって得られるグリコール系エステル;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フタル酸などの多塩基酸と、炭素数4〜8の直鎖状または分枝状アルコールとの反応によって得られる多塩基酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、中間接着層の屈折率をガラス板等の屈折率に近づけ、優れた透光性の合わせガラスが得られる点で、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレートなどが好ましい。
リン酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。これらの中でも、中間接着層の屈折率をガラス板等の屈折率に近づけ、優れた透光性の合わせガラスが得られる点で、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェートなどが好ましい。
可塑剤の配合量としては特に限定されないが、変性ブロック共重合体水素化物[3]100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは5〜40質量部である。1質量部未満の場合は、可塑化効果が小さく、変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する中間接着層と他の層との界面に気泡が残り易く、後述の合わせガラス製造に際して、より高温の条件を要する。また、50質量部を超える場合は、可塑剤のブリードアウトにより、他の層との接着性が低下し易い。
接着性樹脂組成物(I)からなる中間接着層2A、2Bは、具体的には、接着性樹脂組成物(I)をガラス板1A、1Bの主面と略同形、同寸の主面を有するシート状に製膜し、機能性フィルム3を挟持して1対のガラス板1A、1Bの間に挿入、加熱、加圧して合わせガラス10Aを成形して得られる。中間接着層2A、2Bが接着性樹脂組成物(I)からなることで、得られる合わせガラス10Aは、機能性フィルム3に対して防湿性を有し、機能性フィルム3が有する機能を長期に亘って良好に維持できる。
また、接着性樹脂組成物(I)からなる中間接着層2A、2Bは、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の諸性能のバランスがよい。
なお、合わせガラス10Aにおいて、必要に応じて、中間接着層2A、2Bのいずれか一方を、接着性樹脂組成物(I)以外の熱可塑性樹脂組成物(以下、該組成物が含む熱可塑性樹脂を「その他の熱可塑性樹脂」ともいう。)で構成してもよい。その他の熱可塑性樹脂としては、これを主成分とする組成物をシート状に製膜して、接着性樹脂組成物(I)からなるシートとの間に機能性フィルムを挿入したものを、1対のガラス板の間に挿入、加熱、加圧して合わせガラスを成形した際に、一体化できるものであれば特に限定されない。
その他の熱可塑性樹脂として、具体的には、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、ポリ塩化ビニル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂等の従来から中間膜用として用いられている熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
合わせガラスの中間接着層用の熱可塑性樹脂は、用途に応じて、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性および遮音性等の諸性能のバランスを考慮して選択される。このような観点から、上記その他の熱可塑性樹脂のなかでも、PVB、EVA等が好ましい。
上記のとおり中間接着層2A、2Bの作製には、接着性樹脂組成物(I)、さらに、必要に応じてその他の熱可塑性樹脂含有組成物が用いられる。これらの組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で各種目的に応じて、例えば、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、接着性調整剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、脱水剤、消泡剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上を含有していてもよい。これらの添加剤は中間接着層2A、2Bにおいて、全体に均一に含有される。
中間接着層2A、2Bは部分的に染料や顔料からなる着色材を含んでいてもよい。着色された部分は特に、合わせガラス10Aが車両用ウィンドシールドとして使用される場合に、防眩性、遮熱性などの向上のために、グリーンあるいはブルーなどの色で帯状のシェード領域(シェードバンド)として機能する。シェードバンドは視野領域の外、特にウィンドシールドの上部に配置されることが多い。
なお、上記添加剤のうちでも特に、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、蛍光剤等の中間接着層に接着以外の別の機能を付与するための添加剤の含有については、1対の中間接着層2A、2Bにおいて、一方のみが含有する構成であっても、両方が含有する構成であってもよく、さらに両方が含有する場合、同種の添加剤を同量、または異なる量含有してもよく、異なる添加剤をそれぞれ含有してもよい。
中間接着層2A、2Bの膜厚は、特に限定されるものではない。具体的には、合わせガラス用等に通常用いられる中間膜と同様に、1層あたりの膜厚として、0.05〜0.8mmであることが好ましく、2層の合計膜厚として0.1〜1.6mmであることが好ましい。中間接着層の1層あたりの膜厚が0.05mm未満であったり、2層の合計膜厚が0.1mm未満であったりすると、強度が不十分となることがあり、また、ガラスミスマッチが大きい場合、剥離が発生しやすくなる。逆に中間接着層の1層あたりの膜厚が0.8mmを超えたり、2層の合計膜厚が1.6mmを超えたりすると、後述する合わせガラス10A作製時の圧着工程や、耐久試験(実暴試験や高温試験)おいて、これが挟み込まれる1対のガラス板1A、1Bのずれが生じる現象、いわゆる板ずれ現象が発生することがある。
中間接着層2A、2Bはそれぞれ単層構造に限定されない。例えば、特開2000−272936号公報等に開示された遮音性能の向上を目的として用いられる、性質の異なる(損失正接の異なる)樹脂膜を積層した多層樹脂膜を中間接着層2A、2Bとして使用してもよい。この場合においても、中間接着層2A、2Bは同一である必要はなく、互いに独立して、単層構造または多層構造が選択できる。
(機能性フィルム)
合わせガラス10Aにおいて、機能性フィルム3は、ガラス板1A、1Bの主面に対して小面積かつ略相似形状の主面を有し、該主面の外周端がガラス板1A、1Bの主面の外周端より距離w1だけ内側に位置するように中間接着層2A、2Bの間に配置されている。合わせガラス10Aにおいて、機能性フィルム3の外周端は4辺ともガラス板1A、1Bの主面の外周端より距離w1だけ内側に位置している。
ここで、本発明の第1の合わせガラスにおいて、w1は10mm以内が好ましい。すなわち、機能性フィルムの外周端が、ガラス板の外周端から中央部に向かって10mm以内の範囲に位置することが好ましい。この機能性フィルムの外周端とガラス板の外周端の距離w1は、より好ましくは5mm以内である。該距離w1の下限は0mmである。その場合、機能性フィルムの外周端とガラス板の外周端が一致する。しかしながら、機能性フィルムの端部を特に外部の水分等から保護することが求められる場合には、上記距離w1は1mm以上が好ましく、3mm以上が特に好ましい。なお、上記距離w1は、合わせガラスの外周全体で同一であってもよく、辺ごとに異なる、あるいは所定の箇所において小さい、大きい等、異なってもよい。
なお、合わせガラス10Aの正面視において、合わせガラス10Aの面積に対する機能性フィルム3の占有する面積の割合は70%以上であることが好ましい。合わせガラス10Aにおいては、中間接着層2A、2Bを上記構成とすることで、機能性フィルム3の外周端とガラス板の外周端1A、1Bの距離w1を上記のように小さく設定することが可能となり、それにより合わせガラス10Aの面積に対する機能性フィルム3の占有する面積の割合を70%以上とすることができる。該面積の割合は75%以上がより好ましい。さらに、該面積の割合は必要に応じて80%程度まで大きくすることができる。
機能性フィルム3の厚みについては、取扱い性ならびに後述する合せガラス作製工程での脱気処理の観点から25〜200μmであることが好ましく、50〜120μmであることがより好ましい。また、機能性フィルム3として、具体的には、赤外線反射フィルム、映像投影用スクリーンフィルム、発電用薄膜太陽電池フィルム、自発光フィルム等が挙げられる。機能性フィルム3は、単層膜で上記のような機能性フィルムを構成していてもよく、あるいは2枚以上のフィルムの間に光反射、光散乱、発電、発光等の機能を有する材料が挟み込まれた構成でもよい。機能性フィルムについて、赤外線反射フィルムを例に説明するが、本発明の第1の合わせガラスはこれに限定されない。以下に説明する赤外線反射フィルムの構成(i)、構成(ii)または構成(iii)は、他の機能性フィルムにおいても適用可能である。
なお、機能性フィルムが支持フィルムの片側の主面に機能性コーティング層(以下、単に「コーティング層」ともいう)が配設された機能性コーティング層(機能層)付きフィルムである場合、コーティング層として、金属、金属酸化物および金属窒化物から選ばれる少なくとも1種を含むコーティング層を用いた場合に、特に本発明の第1の合わせガラスにおける機能性フィルムの劣化の抑制効果が大きい。コーティング層を構成する金属として、具体的には、Ag、Ti、Cr、Ni、Al、Zn、W、Au、Cu等が、金属酸化物としては、ZnO、SnO、SnO2、TiO2、SiO2、ITO、Nb2O5、Ta2O5、Al2O3、ZrO2等が、金属窒化物としては、TiN、CrN、Si3N4、AlN等、その他の材料として、MgF2が挙げられる。
赤外線反射フィルムとしては、合わせガラスに通常、用いられる赤外線反射フィルム、例えば、支持フィルムの片側の主面に金属を用いない赤外線反射層が配設された赤外線反射層付きフィルム(i)、支持フィルムの片側の主面に金属と金属化合物を積層した赤外線反射層が配設された金属含有赤外線反射層付きフィルム(ii)、屈折率の異なる樹脂フィルムを積層した誘電多層フィルム(iii)等が挙げられる。
赤外線反射フィルムのうち、赤外線反射層付きフィルム(i)における支持フィルムとしては、表面に赤外線反射層の形成が可能であり、かつ1対の中間接着層の間に挟持され、これがさらに1対のガラス板の間に挟持された構成の本発明の第1の合わせガラスが作製可能な材質のものであれば、特に制限されない。具体的には、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ナイロン、シクロオレフィンポリマー等の樹脂フィルムを挙げることができる。
ここで、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのように延伸法で作製されている樹脂フィルムは、比較的に高強度であり、第1の中間接着層や第2の中間接着層との合わせ加工時の取扱などで発生するフィルムの折れなどの欠陥を抑制でき、また、加熱による球状結晶の生成も抑制できて白濁が抑制されることから、赤外線反射層の支持フィルムとして好ましい。用いる支持フィルムの膜厚としては、赤外線反射層と支持フィルムの合計の厚みが25〜200μmの範囲となるように以下の赤外線反射層の厚みを勘案して設定されることが好ましく、赤外線反射層と支持フィルムの合計の厚みが50〜120μmの範囲となるように設定されることがより好ましい。
支持フィルム上に形成される赤外線反射層としては、誘電体多層膜、液晶配向膜、赤外線反射材含有被膜、金属膜を含む単層または多層の赤外線反射層等の従来公知の赤外線反射層等の各種コーティング層が挙げられる。
赤外線反射層の膜厚としては100〜500nmが好ましく、150〜450nmがより好ましい。また、赤外線反射層と支持フィルムの合計の厚みについては、上に赤外線反射フィルムの厚みとして示した、25〜200μmが好ましく、50〜120μmがより好ましい。
上記赤外線反射フィルムにおいて、支持フィルム上に赤外線反射層として形成される誘電体多層膜は、高屈折率誘電体膜と低屈折率誘電体膜を交互に積層した構成を有する。誘電体膜には、ZnO、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、SiO2、Al2O3、ZrO2、MgF2等の金属化合物から、適当な屈折率差を有する2種を組合せて選んで高屈折率誘電体および低屈折率誘電体として用いることが好ましい。また必要に応じて前記高屈折率誘電体膜と低屈折率誘電体膜は、Si、Ti、Zr、N、Al、Sn等のドーパントを含んでいてもよい。
また、積層される誘電体膜の層数は、高屈折率誘電体膜と低屈折率誘電体膜の合計の層数として、3層以下であると赤外線域の反射が不十分であり、また、層数が12層を超えると製造コストが高くなり、また、層数を増やすことによって膜応力が増加し、支持フィルムとの密着性が低下したり支持フィルムをカールさせたりするので、積層される誘電体膜の層数は、4層以上11層以下であることが好適である。層数を増すほど赤外線領域における反射の極大値は大きくなり、かつ可視光域の色が無色に近くなり、好ましい赤外線反射層となる。なお、このような誘電体多層膜からなる赤外線反射層は、用いる誘電体の種類、各層の層厚および層数により、反射波長域や反射率の設計が可能である。
支持フィルム上に誘電体多層膜を形成する方法としては、例えば、マグネトロンスパッタリング、電子線蒸着、真空蒸着、化学蒸着等の、既知の技術のいずれかを使用して、赤外線反射層の被形成面である支持フィルムのいずれか一方の主面上に設ける方法が挙げられる。
上記赤外線反射フィルムにおいて、支持フィルム上に赤外線反射層として形成される液晶配向膜は、具体的には、螺旋状構造または格子状構造に配向可能な液晶化合物を支持フィルム上で、螺旋構造または格子構造に配向させ、かかる配向状態を固定することによって得られる膜である。これらの構造を示す液晶相としては、コレステリック液晶相、強誘電性液晶相、反強誘電性液晶相、ブルー相があり、これらのいずれを利用することもできる。また、目的とする光の波長の大きさの半分から十分の一程度の大きさの周期構造があれば、上記の物質によらず、選択反射性を示すことが可能であるので、いわゆるストップバンドを光の波長領域に有するフォトニック結晶も使用できる。
支持フィルム上に液晶配向膜を形成する方法としては、例えば、液晶化合物およびその他任意成分を必要に応じて有機溶媒に溶解させて得られる液状組成物を塗工液として、支持フィルム上に形成された配向膜の上に塗布して、螺旋状構造または格子状構造に配向させ、該配向状態を固定する方法が挙げられる。また、配向膜を用いずに、磁場、電場配向、ずり応力操作により配向させることもできる。
加熱配向の温度は、一般的には、液晶性組成物の結晶相/ネマチック相転移温度以上、ネマチック相/等方相転移温度以下で行なう。加熱配向時間は、特に制限されないが、10秒〜3分程度の範囲が好ましい。配向固定は、加熱配向温度で行ってもよいし、それより低温で結晶が析出しない範囲の温度で行ってもよい。
金属含有赤外線反射層付きフィルム(ii)における支持フィルムとしては、上記赤外線反射層付きフィルム(i)における支持フィルムと同様にできる。金属含有赤外線反射層は、支持フィルム側から金属化合物膜と金属膜とが交互に計(2n+1)層[nは1以上の整数]積層された多層構造体である。ここで、金属膜が2〜8つ設けられていることが好ましく、2〜6つ設けられていることがより好ましい。金属膜が2つ以上であれば、充分な熱線反射性能を得ることができ、8つ以下であれば、積層体の内部応力増加を抑制できる。
金属含有赤外線反射層における金属化合物膜は、亜鉛、スズ、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、ケイ素等の金属元素と酸素または窒素の化合物である。特に屈折率2.0以上の高屈折率金属化合物と酸化亜鉛とを主成分として含有する膜が好ましい。また金属化合物膜は、屈折率2.0以上の高屈折率金属化合物と酸化亜鉛とを合計で90質量%以上含有することが好ましく、95質量%以上含有することがより好ましく、99質量%以上含有することが特に好ましい。屈折率2.0以上の高屈折率金属化合物の中でも、反射バンドをより広くできることから、酸化チタン(屈折率2.5)および/または酸化ニオブ(屈折率2.4)が好ましい。本発明において「屈折率」とは、波長550nmにおける屈折率をいう。また必要に応じて前記金属化合物膜は、Si、Ti、Zr、N、Al、Sn等のドーパントを含んでいてもよい。
高屈折率金属化合物の存在により金属化合物膜の屈折率を高くすることができ、積層体の透過、反射バンドを広くすることができる。金属化合物膜において、高屈折率金属化合物の金属の、金属と亜鉛の合計に対する割合は、1〜50原子%であることが好ましく、5〜20原子%であることが特に好ましい。この範囲内にすることで、透過、反射バンドを広く保つことができると同時に、耐湿性に優れる。この理由は必ずしも明確にはなっていないが、この範囲にすることにより、酸化亜鉛の良好な物性を保ったまま、金属化合物膜と金属膜との応力を緩和することができるためと考えられる。
金属化合物膜には、物性を損なわない範囲で、酸化亜鉛、酸化チタンおよび酸化ニオブ以外の金属化合物が含まれていても構わない。例えば、導電性を付与する目的で、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化スズなどを混合しても構わない。
金属化合物膜の幾何学的膜厚(以下、単に膜厚という)は、最も支持フィルムに近い金属化合物膜および最も支持フィルムから遠い金属化合物膜は20〜60nm(特に30〜50nm)、それ以外の金属化合物膜は40〜120nm(特に40〜100nm)とすることが好ましい。
金属含有赤外線反射層における金属膜は、銀または銀合金を主成分として含有する層である。銀または銀合金により金属膜が形成されていることにより積層体の抵抗値を低くし、赤外線反射性能を向上できる。金属膜は、積層体の低抵抗化、赤外線反射性能向上化の観点からは、純銀からなる層であることが好ましい。本発明における「純銀」は、金属膜(100質量%)中に銀を99.9質量%以上含有することを意味する。
金属膜は、銀の拡散を抑制し、結果として耐湿性を高くできる観点からは、金および/またはビスマス、および/またはパラジウムを含有する銀合金からなる層が好ましい。金およびビスマスおよびパラジウムの合計は、比抵抗を4.5μΩcm以下にするために、金属層(100質量%)中、0.2〜1.5質量%が好ましい。
金属膜の合計膜厚は、例えば、得られる積層体の抵抗値の目標を1.5Ωとした場合は25〜60nm(特に25〜50nm)、抵抗値の目標を0.9Ωとした場合は35〜80nm(特に35〜70nm)とすることが好ましい。各金属膜の膜厚は、前記の合計膜厚を金属層数で適宜配分する。なお、金属層の数が多くなると各金属膜の比抵抗が上がるので、抵抗を下げるために合計膜厚は大きくなる傾向にある。
赤外線反射フィルムのうち、誘電多層フィルム(iii)は、少なくとも2つの樹脂層を含み、高屈折率を有する樹脂からなる層と低屈折率を有する樹脂からなる層を交互に積層した構成を有する誘電光学フィルムである。
樹脂層を構成する樹脂は等方性または複屈折性であってもよい。樹脂層は、好ましくは、複屈折性の樹脂からなり、より好ましくは、誘電多層フィルムは、ブルースター角(p偏光の反射率がゼロになる角度)が非常に大きいかまたは樹脂層境界面に対して存在しないように設計される。
高屈折率を有する樹脂からなる層と低屈折率を有する樹脂からなる層をそれぞれ構成する樹脂の組合せとしては、屈折率差がある透明樹脂であれば特に限定されない。具体的には、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、脂肪族ポリオレフィン、フッ素樹脂、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド等から選ばれる屈折率の異なる2種の組合せが挙げられる。異なる2種のポリエステルの組合せ、ポリエステルと、アクリル樹脂、ポリスチレンおよびフッ素樹脂等から選ばれる1種の組合せが好ましい。なお、必要に応じて3種以上の樹脂を用いて誘電多層フィルム(iii)を作製してもよい。
ポリエステルとしては、各種ジオール、例えば、線状または枝分かれアルカンジオールまたはグリコール、エーテルグリコール、鎖−エステルジオール、シクロアルカングリコール、ビ−または多環状ジオール、芳香族グリコール、ジメチルまたはジエチルジオール、これらのジオールのより低級のアルキルエーテルまたはジエーテルおよび各種ジカルボン酸、例えば、置換芳香族ジカルボン酸、シクロアルカンジカルボン酸、ビ−または多環状ジカルボン酸、アルカンジカルボン酸、縮合環芳香族炭化水素の異性ジカルボン酸等とのエステル化物が挙げられる。
ポリエステルとして好ましくは、PET、PEN、ポリブチレンナフタレート(BEN)や、これらポリエステルにおいて主原料とともに各種コモノマーを用いて製造される共重合体が挙げられる。以下、PETを主体とするこのような共重合体をcoPET、PENを主体とする共重合体をcoPENという。アクリル樹脂としてはPMMAが好ましく、フッ素樹脂としてはポリフッ化ビニリデンが好ましい。ポリスチレンとしては、シンジオタクチックポリスチレン(sPS)が好ましい。
誘電多層フィルム(iii)は、加工の容易さ、コスト、耐熱性等の観点から、PET、PEN、PMMA、またはポリカーボネートからなる樹脂膜の少なくとも一層を含むことが好ましい。
具体的には、PENとPMMA、PETとPMMA、PENとsPS、PETとsPS、PENとcoPET、PENとPETG(第2グリコール(通常シクロヘキサンジメタノール)を使用するPETのコポリマー)の組合せ等が好ましい。
誘電多層フィルムは、交互に屈折率の異なる2種の樹脂層が積層された樹脂シートが得られるように上記樹脂を組み合わせて同時押出しし、得られた積層シートを必要に応じて延伸する等の、例えば、特表2002−509279号公報等に記載された従来公知の方法で作製できる。誘電多層フィルムの各樹脂層の厚みおよび層数は必要とされる反射特性に応じて適宜調整される。誘電多層フィルムの全体の厚みについては、上に赤外線反射フィルムの厚みとして示した、25〜200μmが好ましく、50〜120μmがより好ましい。
[第2の合わせガラス]
本発明の第2の合わせガラスは、互いに対向する1対のガラス板と、前記1対のガラス板の対向面の少なくとも一方の面上に形成された機能性コーティング層と、前記1対のガラス板の間に、前記機能性コーティング層と接するように、かつ前記1対のガラス板の対向面に対応する全面に亘って配置される、接着性樹脂組成物(I)からなる中間接着層と、を備える。
本発明の合わせガラスにおいては、中間接着層を接着性樹脂組成物(I)で構成したことで、合わせガラス内において外部からの水分等の侵入を十分に抑制でき、機能性コーティング層の経時的な劣化、特に水分に起因する劣化を抑制でき、該機能性コーティング層が有する機能を長期に亘って良好に維持できる。これにより、従来、機能性コーティング層の外周端を合わせガラス外周端よりも相当の距離をもって内側に設計されていたものが、合わせガラス外周端と同じ位置に設計できる。
また、機能性コーティング層の端部を十分に保護する必要がある場合であっても、機能性コーティング層の外周端を合わせガラス外周端からわずかな距離を置いて配置するだけで、その端部を十分に保護することが可能となり、意匠性の向上を図ることができる。さらにこれにより、機能性フィルムと組み合わせて用いた場合に必要とされていた位置合わせ等の製造上の工程を省略したり、工程自体を容易にすることが可能となる。
以下、本発明の第2の合わせガラスの実施の形態について図面を参照しながら説明する。図3は本発明の第2の合わせガラスの実施形態の一例における断面図である。
図3に示す合わせガラス10Bは、互いに対向する1対のガラス板1A、1Bと、ガラス板1Bのガラス板1Aに対向する主面上に形成された機能性コーティング層4と、1対のガラス板1A、1Bの間に、機能性コーティング層4と接するように、かつ1対のガラス板1Aの対向面上の全面に亘って配置された、接着性樹脂組成物(I)からなる中間接着層2Aと、を備える。
合わせガラス10Bにおいて、1対のガラス板1A、1Bおよび中間接着層2Aは略同形、同寸の矩形の主面を有する。ガラス板1Bのガラス板1Aに対向する主面上に形成された機能性コーティング層4は、その外周端がガラス板1Bの外周端より距離w2だけ内側に位置するように形成されている。
ここで、本発明の第2の合わせガラスにおいて、w2は10mm以内が好ましい。すなわち、機能性コーティング層の外周端が、ガラス板の外周端から中央部に向かって10mm以内の範囲に位置することが好ましい。この機能性コーティング層の外周端とガラス板の外周端の距離w2は、より好ましくは5mm以内である。該距離w2の下限は0mmである。その場合、機能性コーティング層の外周端とガラス板の外周端が一致する。しかしながら、機能性コーティング層の端部を特に外部の水分等から保護することが求められる場合には、上記距離w2は1mm以上が好ましく、3mm以上が特に好ましい。なお、上記距離w2は、合わせガラスの外周全体で同一であってもよく、辺ごとに異なる、あるいは所定の箇所において小さい、大きい等、異なってもよい。
なお、合わせガラス10Bの正面視において、合わせガラス10Bの面積に対する機能性コーティング層4の占有する面積の割合は70%以上であることが好ましい。合わせガラス10Bにおいては、中間接着層2Aを以下の構成とすることで、機能性コーティング層4の外周端とガラス板の外周端1A、1Bの距離w2を上記のように小さく設定することが可能となり、それにより合わせガラス10Bの面積に対する機能性コーティング層4の占有する面積の割合を70%以上とすることができる。該面積の割合は75%以上がより好ましい。さらに、該面積の割合は必要に応じて80%程度まで大きくすることができる。
第2の合わせガラスにおける1対のガラス板1A、1Bは、第1の合わせガラスにおける1対のガラス板と同様にできる。第2の合わせガラスにおける中間接着層2Aを構成する接着性樹脂組成物(I)は上に説明したとおりである。さらに、機能性コーティング層としては、第1の合わせガラスにおける機能性フィルムにおいて、支持フィルムの片側の主面に機能性コーティング層、例えば赤外線反射層が配設された機能性コーティング層(赤外線反射層)付きフィルム(i)または(ii)における機能性コーティング層と同様にできる。
機能性コーティング層としては、金属、金属酸化物および金属窒化物から選ばれる少なくとも1種を含むコーティング層を用いた場合に、特に本発明の第2の合わせガラスにおける機能性コーティング層の劣化の抑制効果が大きい。機能性コーティング層に用いる金属、金属酸化物および金属窒化物については上記と同様にできる。
本発明の第2の合わせガラスにおいて、合わせガラス10Bでは機能性コーティング層は、1対のガラス板1A、1Bの一方のガラス板1Bにのみ形成されている。機能性コーティング層は必要に応じて1対のガラス板の各対向面にそれぞれ形成されてもよい。
本発明の第1の合わせガラスおよび第2の合わせガラスは、上記機能性フィルムや機能性コーティング層以外のその他の機能層を有してもよい。第1の合わせガラスおよび第2の合わせガラスがその他の機能層を有する場合、該機能層は中間接着層に挟持される形で上記1対のガラス板の間に挿入される。第1の合わせガラスにおいては、機能性フィルムを挟み込む1対の中間接着層のいずれか一方を、その他の機能層を挟持する中間接着層の一方とすることができる。また、第2の合わせガラスにおいては、1対のガラス板の間に配置される中間接着層を、その他の機能層を挟持する中間接着層の一方とすることができる。
第1の合わせガラスおよび第2の合わせガラスのいずれの場合においても、その他の機能層を挿入するために、上記した中間接着層とは別の中間接着層が必要とされる。以下、第1の合わせガラスおよび第2の合わせガラスが別の機能層としてSPDフィルムを有する場合を例にそれぞれ図面を参照しながら説明する。なお、別の機能層としてSPDフィルムを有する構成の合わせガラスにおいて、通常、上記機能性フィルムや機能性コーティング層は、SPDフィルムを保護する機能を備える。
図4は本発明の第1の合わせガラスにおいてSPDフィルムを有する実施形態の一例を示す正面図であり、図5は、図4に示す合わせガラスのY−Y線における断面図である。図4および図5に示す合わせガラス10Cは、互いに対向する1対のガラス板1A、1Bと、1対のガラス板1A、1Bの対向面に対応する全面に亘って配置される3枚の中間接着層2A、2B、2Cと、を備える。合わせガラス10Cにおいて、1対のガラス板1A、1Bおよび3枚の中間接着層2A、2B、2Cは略同形、同寸の矩形の主面を有する。
合わせガラス10Cにおいて、中間接着層2Bはガラス板1Bの対向面に接するように、中間接着層2Cはガラス板1Aの対向面に接するように、中間接着層2Aはそれらの間にそれぞれ配置される。
合わせガラス10Cは、さらに、中間接着層2Bと中間接着層2Aの間に、これらの主面と略同形、同寸の矩形の主面を有する機能性フィルム3を主面がそれらの対向面に接するように有し、中間接着層2Aと中間接着層2Cの間に、主面の外周端がガラス板1A、1Bの主面の外周端より距離w3だけ内側に位置するように配置されるSPDフィルム5と、SPDフィルム5が配置されない幅w3の額縁状部分の隙間を埋める形にバリア層6をそれぞれ有する。
バリア層6は、SPDフィルム5の外周面に、その内周面が接するように配置された、ガラス板1A、1Bの主面の外周と略一致する外周を有する主面形状が額縁状の層であり、通常、中間接着層と同様の材料で構成される。ただし例えばUVカット、赤外線カット、着色、遮音性などの付与の目的で異なる材料の中間接着層を部分的に用いてもよい。
なお、図4および図5において図示されないが、合わせガラス10Cは、以下に説明するSPDフィルム5が有する透明電極と外部電源を接続するための配線導体を有する。合わせガラス10Cは、窓枠等に組み込まれて使用される際に、該配線導体を用いて外部電源に接続されることで、電源スイッチのオン/オフによりSPDフィルム5が変化して電気的に透過率を切り替えられるガラス(スマートガラス)として機能する。
その際に、例えば機能性フィルム3が赤外線反射フィルムである合わせガラス10Cを窓枠等に組み込む場合、通常、屋外側に機能性フィルム3が位置し屋内側にSPDフィルム5が位置するように組み込まれる。このような配置とすれば、屋外から照射される赤外線を赤外線反射フィルムが反射することで、SPDフィルム5の赤外線による劣化を抑制することができる。
合わせガラス10Cを構成する各部材のうち、ガラス板1A、1B、中間接着層2A、2B、機能性フィルム3については、合わせガラス10Aの場合のガラス板1A、1B、中間接着層2A、2B、機能性フィルム3とそれぞれ同様にできる。
合わせガラス10Aの場合と同様、中間接着層2Aと中間接着層2Bのいずれか一方は接着性樹脂組成物(I)で構成され、好ましくは、その両方が接着性樹脂組成物(I)で構成される。中間接着層2Cは、接着性樹脂組成物(I)で構成されてもよく、その他の熱可塑性樹脂を主として含有する組成物で構成されてもよい。好ましくは、中間接着層2Cについても、接着性樹脂組成物(I)で構成される。
合わせガラス10Cにおいては、上記のとおりバリア層6は中間接着層と同様の材料で構成される。バリア層6についても、接着性樹脂組成物(I)で構成されることが好ましい。合わせガラス10Cにおいて、中間接着層2A、2B、2Cおよびバリア層6の全てが接着性樹脂組成物(I)で構成されることで、機能性フィルム3およびSPDフィルム5は十分に外部の水分等から保護され、各機能の経時的な劣化が抑制され好ましい。ただし例えばUVカット、赤外線カット、着色、遮音性などの付与の目的で接着性樹脂組成物(I)以外の中間接着層を部分的に用いてもよい。例えば、中間接着層2A、2B、2Cの少なくとも1つは、合わせガラス10Aで説明したのと同様に帯状のシェード領域を設けるために部分的にグリーンあるいはブルーなどの色に着色されてもよい。
ここで、合わせガラス10Cにおいて、機能性フィルム3の外周端は、ガラス板1A、1Bの外周端と略一致している。機能フィルム3このような配置とすることで、後述のSPDフィルム5との外周端の位置合わせ等の必要がなく、積層工程の簡素化が図れる。ただし、必要に応じて、機能性フィルム3の外周端は、ガラス板1A、1Bの外周端より内側にあってもよく、その場合、機能性フィルム3の外周端は、ガラス板1A、1Bの外周端から中央部に向かって10mm以内の範囲に位置することが好ましい。また、SPDフィルム5、バリア層6は以下のとおりである。
(SPDフィルム)
SPDフィルム5の外周端からガラス板1A、1Bの外周端までの距離、すなわちバリア層6の幅w3は、用途に応じて適宜選択できる。合わせガラス10Cにおいてバリア層6が接着性樹脂組成物(I)で構成される場合には、例えば、バリア層6の幅w3を最大幅として10mm以下としてもSPDフィルム5の端面を水分から十分保護することができる。
SPDフィルム5としては、電圧の印加により配向可能な懸濁粒子を含有するポリマー層を、透明導電膜を内側にコートした2枚の電気絶縁性フィルムで挟み込むようにして構成された、一般的なSPDフィルムが使用可能である。このような、SPDフィルムは、電源スイッチをオンにして透明導電膜間に電圧を印加することにより、ポリマー層中の懸濁粒子が配向することで可視光透過率が高く、透明性が高い状態になる。電源スイッチがオフの状態では、ポリマー層中の懸濁粒子が配向することがなく可視光透過率が低く、透明性が低い状態となる。
なお、SPDフィルム5の主面は上記のとおり樹脂等の電気絶縁性フィルムの主面からなり、透明導電膜や懸濁粒子を含有するポリマー層が表出していないが、SPDフィルム5の端面においてはこれらが表出する構成である。よって、この端面をバリア層6で保護することで、SPDフィルム5の周縁部における電源スイッチのオン/オフに対応する可視光透過率の切り替えの不具合の発生を効果的に抑制できる。
SPDフィルム5としては、例えば、LCF−1103DHA(商品名、日立化成社製)、等の市販品を用いることができる。なお、このような市販品は、所定の大きさで供給されるため、使用に際しては合わせガラスの大きさに合わせて所望の大きさに切断して使用する。なお、合わせガラス10Cに用いるSPDフィルム5の厚みとしては、特に制限されないが、取り扱い性および入手容易性の観点から0.2〜0.4mmが好ましい。
(バリア層)
上記のとおり、バリア層6の幅w3は、用途に応じて適宜選択される。合わせガラス10Cにおいては、上記のとおりバリア層6が接着性樹脂組成物(I)で構成される場合には、バリア層6の幅w3が10mm以下であっても、合わせガラス10Cの端面からの水分の侵入を十分に抑制してSPDフィルム5の端面を水分から保護する性質、すなわち、防湿性を維持することができる。このような合わせガラスを用いれば、SPDフィルムを備える合わせガラスにおいて、より意匠性が求められる用途への適用が可能となる。
合わせガラス10Cにおいて、バリア層6が接着性樹脂組成物(I)で構成される場合に、防湿性を維持できるバリア層の幅の下限は、バリア層の厚み等にもよるが、概ね3mmとすることができる。なお、より高い防湿性が要求される場合には、バリア層の幅の下限は、5mmが好ましい。
主面形状が矩形の合わせガラス10Cが有する、外周がガラス板1A、1Bの主面の外周と略一致する額縁状の主面形状を有するバリア層6において、該矩形の4辺に沿った額縁部分において、幅w3は辺ごとに同一であっても、異なってもよく、辺に関係なく部分的に大小があってもよい。
また、SPDフィルム5の端面を十分に保護する観点から、バリア層6の厚みはSPDフィルム5の厚みと略同一であることが好ましい。具体的には、バリア層6の厚みは、SPDフィルム5の厚みの±0.1mm以内が好ましく、±0.075mm以内がより好ましい。
図6は、第2の合わせガラスが別の機能層としてSPDフィルムを有する場合の実施形態の一例を示す断面図である。図6に示す合わせガラス10Dは、互いに対向する1対のガラス板1A、1Bと、1対のガラス板1A、1Bの対向面に対応する全面に亘って配置される2枚の中間接着層2A、2Cと、を備える。合わせガラス10Dにおいて、1対のガラス板1A、1B、および中間接着層2A、2Cは略同形、同寸の矩形の主面を有する。
合わせガラス10Cにおいて、中間接着層2A、2Cは、ガラス板1A側からガラス板1B側に向かって中間接着層2C、中間接着層2Aの順に配置され、中間接着層2Cはガラス板1Aの対向面に接するように配置される。
合わせガラス10Dは、さらにガラス板1Bのガラス板1Aと対向する面上に全面に亘って形成された機能性コーティング層4を有し、機能性コーティング層4の全面に接するように中間接着層2Aが配置される。合わせガラス10Dは、また、中間接着層2Aと中間接着層2Cの間に、主面の外周端がガラス板1A、1Bの主面の外周端より距離w3だけ内側に位置するように配置されるSPDフィルム5と、SPDフィルム5が配置されない幅w3の額縁状部分の隙間を埋める形にバリア層6をそれぞれ有する。
バリア層6は、SPDフィルム5の外周面に、その内周面が接するように配置された、ガラス板1A、1Bの主面の外周と略一致する外周を有する主面形状が額縁状の層であり、通常、中間接着層と同様の材料で構成される。ただし例えばUVカット、赤外線カット、着色、遮音性などの付与の目的で異なる材料の中間接着層を部分的に用いても良い。
なお、図6において図示されないが、合わせガラス10Dは、合わせガラス10Cと同様に、SPDフィルム5が有する透明電極と外部電源を接続するための配線導体を有し、合わせガラス10Cと同様に使用できる。
合わせガラス10Dにおいて、例えば機能性コーティング層4が赤外線反射コーティング層である場合、これを窓枠に組み込む際には、通常、屋外側に機能性コーティング層4が位置し屋内側にSPDフィルム5が位置するように組み込まれる。このような配置とすれば、屋外から照射される赤外線を赤外線反射フィルムが反射することで、SPDフィルム5の赤外線による劣化を抑制することができる。
合わせガラス10Dを構成する各部材のうち、ガラス板1A、1B、中間接着層2A、機能性コーティング層4については、合わせガラス10Bの場合のガラス板1A、1B、中間接着層2A、機能性コーティング層4とそれぞれ同様にできる。また、SPDフィルム5、バリア層6は合わせガラス10Cの場合のSPDフィルム5、バリア層6とそれぞれ同様にできる。
合わせガラス10Dにおいて、中間接着層2Aは接着性樹脂組成物(I)で構成される。合わせガラス10Dにおいては、中間接着層2Cは、接着性樹脂組成物(I)で構成されてもよく、その他の熱可塑性樹脂を主として含有する組成物で構成されてもよい。好ましくは、中間接着層2Cについても、接着性樹脂組成物(I)で構成される。合わせガラス10Dにおいて、バリア層6は中間接着層と同様の材料で構成される。バリア層6についても、接着性樹脂組成物(I)で構成されることが好ましい。合わせガラス10Dにおいて、中間接着層2A、2Cおよびバリア層6の全てが接着性樹脂組成物(I)で構成されることで、機能性コーティング層4およびSPDフィルム5は十分に外部の水分等から保護され、各機能の経時的な劣化が抑制され好ましい。
ここで、合わせガラス10Dにおいて、機能性コーティング層4の外周端は、ガラス板1A、1Bの外周端と略一致している。機能性コーティング層4このような配置とすることで、後述のSPDフィルム5との外周端の位置合わせ等の必要がなく、積層工程の簡素化が図れる。ただし、必要に応じて、機能性コーティング層4の外周端は、ガラス板1A、1Bの外周端より内側にあってもよく、その場合、機能性コーティング層4の外周端は、ガラス板1A、1Bの外周端から中央部に向かって10mm以内の範囲に位置することが好ましい。
一般的に、合わせガラスにおいては、その枠体等への取り付け部分や配線導体等を隠蔽する目的で、合わせガラスを構成するガラス板の主面の周縁部の一部または全部に帯状に、黒色セラミックス層を設けることがある。本発明の第1の合わせガラスおよび第2の合わせガラスにおいても、その他の層として、このような黒色セラミックス層を設けてもよい。ただし、通常黒色セラミックス層を設けないガラス、例えば自動車用ドアガラス等は、製造工程が複雑になることや通常品と見栄えを著しく異ならないようにすることなどの観点から、本発明の第1の合わせガラスおよび第2の合わせガラスにおいては黒色セラミックス層を有しないことが好ましい。
以上、図1、2に示される合わせガラス10A、および図4、5に示される合わせガラス10Cを例にして本発明の第1の合わせガラスについて、図3に示される合わせガラス10B、および図6に示される合わせガラス10Dを例にして本発明の第2の合わせガラスについてそれぞれ説明したが、本発明はこれらに限定されない。本発明の趣旨および範囲を逸脱することのない範囲で、設計を変更または変形することができる。
本発明の第1の合わせガラスおよび第2の合わせガラスは、必要に応じて、3枚以上のガラス板を有する構成、例えば、合わせガラス10Aについていえば、ガラス板1Aまたはガラス板1Bの大気側に、さらに1枚以上のガラス板をそれぞれ、中間接着層2A、2Bとは別に準備された中間接着層を介して積層した合わせガラスであってもよい。さらに、必要に応じて、第1の合わせガラスの1対のガラス板は、その対向面に第2の合わせガラスが有するのと同様の機能性コーティング層を有する構成であってもよい。このように、本発明の第1の合わせガラスおよび第2の合わせガラスは、上記構成要素に加えて、本発明の効果を損なわい範囲で任意にその他の層を有してもよい。
[合わせガラスの製造]
本発明の第1の合わせガラスおよび第2の合わせガラスは、いずれも一般的に用いられる公知の技術により製造できる。例えば、合わせガラス10Aにおいては、1対の中間接着層2A、2Bの間に機能性フィルム3を所定の位置関係となるように配置した積層体を作製し、これを1対のガラス板1A、1Bの間に挿入して、ガラス板1A、中間接着層2A、機能性フィルム3、中間接着層2B、ガラス板1Bの順に積層された圧着前の合わせガラスである合わせガラス前駆体を準備する。その他の層を有する場合も、同様に得られる合わせガラスと同様の積層順にガラス板と各層を積層してガラス前駆体を準備する。
また、例えば、合わせガラス10Bにおいては、1対のガラス板1A、1Bを準備し、ガラス板1Bの一方の主面上の所定の領域に機能性コーティング層4を形成する。ガラス板1Aに対して機能性コーティング層4付きガラス板1Bを機能性コーティング層4の表面がガラス板1Aの一方の主面に対向するようにガラス板1A、1Bを配置し、その間に中間接着層2Aを挿入して積層した圧着前の合わせガラスである合わせガラス前駆体を準備する。その他の層を有する場合も、同様に得られる合わせガラスと同様の積層順にガラス板と各層を積層してガラス前駆体を準備する。
この様に準備された合わせガラス前駆体をゴムバッグのような真空バッグの中に入れ、この真空バッグを排気系に接続して、真空バッグ内の圧力が約−65〜−100kPaの減圧度(絶対圧力)となるように減圧吸引(脱気)しながら温度約70〜130℃で接着することで実施形態の合わせガラスを得ることができる。さらに、例えば、100〜150℃、圧力0.6〜1.3MPaの条件で加熱加圧する圧着処理を行うことで、より耐久性の優れた合わせガラスを得ることができる。
本発明の合わせガラスは、機能性フィルム等を備える合わせガラスにおいて、該機能性フィルム等の経時的な劣化、特に水分の侵入による劣化を抑制することで、該機能性フィルム等が有する機能を長期に亘って良好に維持できる合わせガラスであって、例えば、車両用の窓ガラス、ビルディング用の窓ガラス等に好適に使用される。
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明は、以下で説明する実施形態および実施例に何ら限定されるものではない。例1、2が実施例、例3〜6が比較例である。なお、以下の説明において「部」とは、特に断りのない場合、「質量部」を示す。
[実験例1]
以下のようにして、機能性フィルムおよび機能性コーティング層のいずれも有しない評価用合わせガラスサンプルを作製して、本発明の合わせガラスに適用される接着性樹脂組成物(I)からなる中間接着層について、その他の熱可塑性樹脂を主体として含有する組成物からなる中間接着層とともに、防湿性を評価した。
(評価用合わせガラスサンプルの作製)
2枚のソーダライムガラスからなるガラス板(2mm厚、100mm角)の間に、0.4mm厚、100mm角の以下の製造例により作製された接着性樹脂組成物(Ia)からなるフィルムを挟み積層体とした。積層体を、真空パックに入れて脱気したのち、120℃に保持したオーブンに投入し、30分放置して、圧着することで、評価用合わせガラスサンプル1を得た。
上記において接着性樹脂組成物(Ia)フィルムのかわりに、0.4mm厚、100mm角のPVBフィルム(イーストマンケミカル社製、RK11(商品名))または0.4mm厚、100mm角のEVAフィルム(東ソーニッケミ社製、メルセンG7060(商品名))を用いた以外は同様にして、評価用合わせガラスサンプル2、評価用合わせガラスサンプル3を作製した。
<接着性樹脂組成物(Ia)フィルムの作製>
以下の様にして製造した変性ブロック共重合体水素化物[3]−1を用いて接着性樹脂組成物(Ia)フィルムを以下のとおり作製した。
(1)ブロック共重合体[1]−1の合成
充分に窒素置換された、撹拌装置を備えた反応器に脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25.0部およびn−ジブチルエーテル0.475部を入れ、60℃で撹拌しながらn−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.62部を加えて重合を開始した。撹拌しながら60℃で60分反応させた。ガスクロマトグラフィーにより測定した。この時点で重合転化率は99.5%であった。
次に、脱水イソプレン50.0部を加えそのまま30分撹拌を続けた。この時点で重合転化率は99.5%であった。
その後、さらに、脱水スチレンを25.0部加え、60分撹拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。ここでイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止した。得られたブロック共重合体[1]−1の重量平均分子量(Mw)は78,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.03、wA:wB=50:50であった。
(2)ブロック共重合体水素化物[2]−1の合成
次に、上記重合体溶液を、撹拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「T−8400RL」、ズードケミー触媒社製)3.0部および脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を撹拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−1の重量平均分子量(Mw)は78,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
水素化反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「Songnox1010」、SONGWON社製)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にてろ過して微小な固形分を除去した後、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレンおよびその他の揮発成分を除去した。連続して溶融ポリマーを、濃縮乾燥器に連結した孔径5μmのステンレス製焼結フィルターを備えたポリマーフィルター(富士フィルター製)により、温度260℃でろ過した後、ダイから溶融ポリマーをストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーによりブロック共重合体水素化物[2]−1のペレット96部を作成した。得られたブロック共重合体水素化物[2]−1の重量平均分子量(Mw)は77,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。水素化率はほぼ100%であった。
(3)変性ブロック共重合体水素化物[3]−1の合成
得られたブロック共重合体水素化物[2]−1のペレット100部に対してビニルトリメトキシシラン2.0部および2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(製品名「パーヘキサ(登録商標)25B」、日油社製)0.2部を添加し、この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度200℃、滞留時間60〜70秒で混練し、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、アルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物[3]−1のペレット97部を得た。
得られたアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]−1のペレット10部をシクロヘキサン100部に溶解した後、脱水したメタノール400部中に注いでアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]−1を凝固させ、濾別した後、25℃で真空乾燥してアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]−1のクラム9.5部を単離した。FT−IRスペクトルでは、1090cm−1にSi−OCH3基、825cm−1と739cm−1にSi−CH2基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのそれらの1075cm−1、808cm−1、および766cm−1と異なる位置に観察された。また、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム中)では3.6ppmにメトキシ基のプロトンに基づく吸収帯が観察され、ピーク面積比からブロック共重合体水素化物[2]−1の100部に対してビニルトリメトキシシラン1.7部が結合したことが確認された。
(4)接着性樹脂組成物(Ia)およびフィルムの作製
上記で得られた変性ブロック共重合体水素化物[3]−1のペレット100部に紫外線吸収剤である2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン(製品名「アデカスタブ(登録商標)1413」、ADEKA社製)0.5部を添加し、90mmφのスクリューを備えた押出し機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機(Tダイ幅1200mm)および梨地パターンのエンボスロールを備えたシート引取機を使用し、溶融樹脂温度190℃、Tダイ温度190℃、ロール温度50℃の成形条件にて、厚さ1.2mm、幅1000mmの接着性樹脂組成物(Ia)のシートを押出し成形した。得られたシートはロールに巻き取り回収した。得られたシートを厚さ0.38mmのフィルムに成形した。
(防湿性評価)
上記で得られた評価用合わせガラスサンプル1〜3の所定の測定位置において、パーキンエルマー社製Spectrum Twoを用いて赤外分光測定を行うことで、各サンプルの中間接着層が含有する単位体積当たりの水分量(初期水分量)(%)を測定した。なお、水分量の測定は、評価用合わせガラスサンプルの1辺の中点から中央部に向かって2.5mm、5mm、10mm、15mm、20mmの位置をそれぞれ中心にして行った。
次いで、上記で得られた評価用合わせガラスサンプル1〜3を温度80℃、湿度95%RHの恒温恒湿槽に投入し、500時間後、1000時間後に、それぞれ上記同様にして赤外分光測定を行うことで所定の測定位置における各サンプルの中間接着層が含有する単位体積当たりの水分量(%)を赤外分光法を用いて測定した。
上記500時間後、または1000時間後の水分量(%)から初期水分量(%)を、それぞれ引いた値を水分量増加量(%)として評価に用いた。測定結果を表1に示す。
表1から、接着性樹脂組成物(I)からなる中間接着層を用いれば、従来合わせガラスにおいて用いられる中間接着層を用いた場合に比べて、防湿性に優れることがわかる。
[例1]
上記で実施形態の一例として説明した図1、2に示す合わせガラス10Aにおいて、機能性フィルム3の主面の大きさが異なる以外は同様の構成の合わせガラスを以下のように作製した。
ソーダライムガラスからなるガラス板(2mm厚、100mm角)の2枚、0.4mm厚、100mm角の上記の製造例により作製された接着性樹脂組成物(Ia)からなるフィルムの2枚、および、50μm厚、100mm角の熱線遮蔽フィルム(Southwall technologies社製、XIR70HPS(商品名))を準備した。ガラス板、接着性樹脂組成物(Ia)からなるフィルム、熱線遮蔽フィルム、接着性樹脂組成物(Ia)からなるフィルム、ガラス板の順に、全ての部材の4辺が略一致するように重ね合わせた後、端部を仮止めして積層体とした。
積層体を、真空パックに入れて脱気したのち、105℃に保持したオーブンに60分間放置して圧着し、合わせガラス1とした。
[例2]
例1において、熱線遮蔽フィルムを、100μm厚、100mm角のPDP用光学フィルタフィルム(4層のAg層付き;旭硝子社製、EMK6808(商品名))に変更した以外は例1と同様にして合わせガラス2を得た。
[例3]
例1の積層体の作製において、接着性樹脂組成物(Ia)からなるフィルムの2枚を、0.4mm厚、100mm角のPVBフィルム(イーストマンケミカル社製、RK11(商品名))の2枚に変更した以外は例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体を、真空パックに入れて脱気したのち、120℃に保持したオーブンに投入し、30分放置して、圧着した後、さらにオートクレーブにて温度135℃、圧力1.3MPaで60分間の加熱加圧を行い、最終的に冷却して合わせガラス3とした。
[例4]
例3において、熱線遮蔽フィルムを、100μm厚、100mm角のPDP用光学フィルタフィルム(4層のAg層付き;旭硝子社製、EMK6808(商品名))に変更した以外は例3と同様にして合わせガラス4を得た。
[例5]
例3において、PVBフィルムの2枚を、0.4mm厚、100mm角のEVAフィルム(東ソーニッケミ社製、メルセンG7060(商品名))の2枚に変更した以外は例1と同様にして合わせガラス5とした。
[例6]
例5において、熱線遮蔽フィルムを、100μm厚、100mm角のPDP用光学フィルタフィルム(4層のAg層付き;旭硝子社製、EMK6808(商品名))に変更した以外は例5と同様にして合わせガラス6を得た。
合わせガラス1〜6で用いたフィルム断面は全て加熱時に流動化した中間接着層によって覆われ、保護されていることを確認した。
(防湿性評価)
JIS R 3211:1998に基づいて測定される可視光線透過率とJIS R 3106:1998に基づいて測定される日射反射率を、上記で得られた合わせガラス1〜6の中央部について、分光光度計;UV−3150(島津製作所社製)を用いて測定した。さらにガラス中央部の曇価を、東洋精機製作所社製、BYKガードナー・ヘイズ-ガード プラスを用いて測定した。その後、合わせガラス1〜6を温度80℃、湿度95%RHの恒温恒湿槽に投入し、500時間後および1000時間後に、上記同様にして合わせガラス1〜6の中央部の可視光線透過率と日射反射率と曇価を測定した。併せて、合わせガラス1〜6の外観評価を行った。結果を表2に示す。
なお、外観の評価は、合わせガラスの4辺の中央部20mm幅の範囲で顕微鏡観察により確認された2mm以上のクラックの本数を計測し合計した本数を指標として行った。
表2から、接着性樹脂組成物(I)からなる中間接着層を用いれば、従来合わせガラスにおいて用いられる中間接着層を用いた場合に比べて、透過率の低下や曇価の上昇、クラックの発生といった各種機能性フィルムの劣化が抑制されることがわかる。