以下、適宜図面を参照しながら、本発明に係る内視鏡を具体的に開示した各実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
先ず、最初に各実施形態の内視鏡に共通する基本構成例について説明する。なお、構成例とは本発明に係る内視鏡が備えることのできる構成要件である。本発明に係る内視鏡は、以下の各構成例を相互に重複して備えることを排除しない。
(第1の実施形態)
<基本構成例>
図1は、各実施形態の内視鏡を用いた内視鏡システムの一例を示す全体構成図である。図1では、内視鏡11及びビデオプロセッサ19を含む内視鏡システム13の全体構成を斜視図にて示している。
なお、本明細書において説明に用いる方向については、各図中の方向の記載に従うとする。ここで、「上」、「下」は、水平面に置かれたビデオプロセッサ19の上と下にそれぞれ対応し、「前(先)」、「後」は、内視鏡本体(以降「内視鏡11」という)の挿入部21の先端側とプラグ部23の基端側(言い換えると、ビデオプロセッサ19側)にそれぞれ対応する。
図1に示すように、内視鏡システム13は、例えば医療用の軟性鏡である内視鏡11と、観察対象(例えば人体の血管)の内部を撮影して得られた静止画又は動画に対して周知の画像処理等を行うビデオプロセッサ19と含む構成である。内視鏡11は、略前後方向に延在し、観察対象の内部に挿入される挿入部21と、挿入部21の後部が接続されるプラグ部23とを備える。
ビデオプロセッサ19は、前壁25に開口するソケット部27を有している。ソケット部27には内視鏡11のプラグ部23の後部が挿入され、これにより、内視鏡11はビデオプロセッサ19との間で電力及び各種信号(映像信号、制御信号など)の送受が可能である。
上述した電力及び各種信号は、軟性部29の内部に挿通された伝送ケーブル31(図3参照)を介してプラグ部23から軟性部29に導かれる。先端部15に設けられた撮像素子33が出力した画像データは、伝送ケーブル31を介してプラグ部23からビデオプロセッサ19に伝送される。ビデオプロセッサ19は、プラグ部23から伝送された画像データに対して色補正、階調補正等の周知の画像処理を施して、画像処理後の画像データを表示装置(不図示)に出力する。表示装置は、例えば液晶表示パネル等の表示デバイスを有するモニタ装置であり、内視鏡11によって撮像された被写体の画像(例えば被写体である人物の血管内の様子を示す画像データ)を表示する。
挿入部21は、プラグ部23に後端が接続された可撓性の軟性部29と、軟性部29の先端に連なる先端部15とを有している。軟性部29は各種の内視鏡検査、内視鏡手術等の方式に対応する適切な長さを有する。軟性部29は、例えば螺旋状に巻回された金属薄板の外周にネットを被せ、更に、その外周に被覆を被せることにより構成され、十分な可撓性を有するように形成される。軟性部29は、先端部15とプラグ部23との間を接続する。
以下説明する各実施形態の内視鏡11,111,121は、細径で形成されることにより、細径の体腔への挿入が可能となる。細径の体腔は、人体の血管に限定されず、例えば尿管、すい管、胆管、細気管支等が含まれる。つまり、内視鏡11,111,121は、人体の血管、尿管、すい管、胆管、細気管支等への挿入を可能とすることができる。言い換えると、内視鏡11,111,121は、血管内の病変の観察に用いることができる。内視鏡11,111,121は、動脈硬化性プラークの同定において有効となる。また、心臓カテーテル検査時の内視鏡による観察にも適用可能となる。更に、内視鏡11,111,121は、血栓や動脈硬化性の黄色プラークの検出にも有効となる。なお、動脈硬化病変では、色調(白色、淡黄色、黄色)や、表面(平滑、不整)が観察される。血栓では、色調(赤色、白色、暗赤色、黄色、褐色、混色)が観察される。
また、内視鏡11,111,121は、腎盂・尿管がんや、特発性腎出血の診断・治療に用いることができる。この場合、内視鏡11,111,121は、尿道から膀胱内に挿入され、更に尿管内にまで進めて、尿管と腎盂の中を観察することができる。
また、内視鏡11,111,121は、十二指腸に開口するファーター乳頭への挿入が可能となる。胆汁は、肝臓から造られ胆管を通って、また膵液は膵臓から造られ膵管を通って十二指腸にあるファーター乳頭から排出される。内視鏡11,111,121は、胆管及び膵管の開口部であるファーター乳頭から挿入し、胆管又は膵管の観察を可能とすることができる。
更に、内視鏡11,111,121は、気管支への挿入が可能となる。内視鏡11,111,121は、背臥位となった検体(つまり、被施術者)の口腔又は鼻腔から挿入される。内視鏡11,111,121は、咽頭、喉頭を過ぎ、声帯を視認しつつ気管へ挿入される。気管支は分岐するたびに細くなる。例えば最大外径Dmaxが2mm未満の内視鏡11,111,121によれば、亜区域気管支まで内腔の確認が可能となる。
次に、第1の実施形態の内視鏡が有する各種の構成例について説明する。第1の実施形態の内視鏡11は、第1構成例から第17構成例の各構成を有することができる。
図2は、第1の実施形態の内視鏡11の先端部15を前側から見た様子を示す斜視図である。図3は、第1の実施形態の内視鏡11の先端部15の一例を示す断面図である。図4は、第1の実施形態の内視鏡11の導体接続部49に伝送ケーブル31が接続された撮像素子33を後側から見た様子を示す斜視図である。
図2では、図1に示した内視鏡11の先端部15の構成を斜視図にて示している。図3では、図2に示した先端部15の構成を断面図にて示している。図4では、図3に示した撮像素子33をレンズユニット35と反対側から見た構成を斜視図にて示している。
<第1構成例>
第1構成例の内視鏡11は、レンズ支持部材39にレンズを収容するレンズユニット35と、撮像面が素子カバーガラス43によって覆われる撮像素子33と、撮像面の中心にレンズの光軸を一致させたレンズユニット35と素子カバーガラス43とを固定する接着用樹脂37と、撮像素子33の撮像面と反対側(つまり、後側)の面に設けられた4つの導体接続部49のそれぞれに接続される4本の電線45を有する伝送ケーブル31と、を備える。
レンズ支持部材39には、光学材料(例えばガラス、樹脂等)により形成された複数(図示例では、3枚)のレンズL1〜L3と、レンズL1及びレンズL2の間に挟まれて形成された絞り51とが互いに光軸の方向に近接した状態で組み込まれている。絞り51はレンズL2又はレンズ93への入射光量の調整に設けられており、絞り51を通過した光だけがレンズL2又はレンズ93に入射することが可能となる。なお、近接とは、レンズ相互間の接触による傷付きを避けるために僅かに離間している意味である。レンズL1〜L3は、全周にわたってレンズ支持部材39の内周面に接着剤により固定されている。
なお、以降の説明において「接着剤」の用語は、固体物の面と面とを接着するために用いる物質という厳密な意味ではなく、2つの物の結合に用いることができる物質、或いは硬化した接着剤が気体及び液体に対する高いバリア性を備えている場合は、封止材としての機能を有する物質という広い意味で用いられる。
レンズ支持部材39の前端はレンズL1によって、レンズ支持部材39の後端はレンズL3によって密閉(封止)されており、レンズ支持部材39の内部に空気又は水分等が侵入しないよう構成されている。従って、空気等はレンズ支持部材39の一端から他端へと抜けることができない。なお、以降の説明では、レンズL1〜L3を合わせて光学レンズ群LNZという。
レンズ支持部材39を構成する金属材料としては、例えばニッケルが用いられる。ニッケルは、剛性率が比較的高くかつ耐食性も高く、先端部15を構成する材料として適している。また、内視鏡11を用いた検査時又は手術時に先端部15からレンズ支持部材39を構成するニッケルが直接的に露出しないように、検査前又は手術前の時点で、レンズ支持部材39の周囲はモールド樹脂17によってムラ無く被覆され、かつ先端部15が生体適合コーティングを施されることが好ましい。ニッケルに代えて例えば銅ニッケル合金を用いてもよい。銅ニッケル合金も高い耐食性を有しており、先端部15を構成する材料として適している。また、レンズ支持部材39を構成する金属材料としては、好ましくは、電鋳(電気めっき)によって製造が可能な材料が選択される。ここで、電鋳を利用する理由は、電鋳によって製造される部材の寸法精度は1μm未満(いわゆるサブミクロン精度)と極めて高く、更に多数の部材を製造した際のばらつきも小さいからである。また、レンズ支持部材39を構成する金属材料として、ステンレス鋼(例えばSUS316)を用いてもよい。ステンレス鋼(SUS管とも言われる)は生体適合性が高く、例えば人体の血管等の細径な部位に挿入される内視鏡として適すると考えられる。レンズ支持部材39は極めて小さな部材であり、内外径寸法の誤差は内視鏡11の光学性能(つまり、撮像された画像の画質)に影響を与える。レンズ支持部材39を例えばニッケル電鋳管により構成することで、小径にもかかわらず高い寸法精度を確保して高画質な画像を撮像することが可能な内視鏡11が得られる。
レンズ支持部材39は、金属以外にシート材等であってもよい、レンズ支持部材39は、レンズユニット35の各レンズの光軸を合わせる際の位置決めが達成できればよい。レンズユニット35が、モールド樹脂17によって覆われれば、各レンズは相互の相対位置が固定される。このため、レンズ支持部材39には、従来の複数のレンズを支持するために使用されていた鏡筒に対し、強度が小さく、厚みが薄く、重量が軽い材質のものが使用可能となる。これにより、内視鏡11における先端部15の細径化に寄与することが可能となる。なお、レンズ支持部材39は、従来と同様の金属製の鏡筒を用いることを排除するものではない。
図4に示すように、撮像素子33は、例えば前後方向から見て正方形形状をなす小型のCCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)の撮像デバイスにより構成される。撮像素子33では、外部から入射した光が、レンズ支持部材39内の光学レンズ群LNZによって撮像面41に結像する。また、撮像素子33では、撮像面41が素子カバーガラス43によって覆われる。素子カバーガラス43は、光軸に対して垂直方向の外形状が正方形であり、その一辺の長さが撮像素子33の一辺の長さと同一である。
接着用樹脂37は、例えばUV・熱硬化性樹脂によって構成される。接着用樹脂37は、透光性を有し、屈折率が空気に近いものが好ましい。接着用樹脂37として、UV・熱硬化性樹脂を用いる場合、外表部分を紫外線照射により硬化できるとともに、紫外線を照射できない充填接着剤の内部を、熱処理によって硬化させることができる。接着用樹脂37は、撮像面41の中心にレンズの光軸を一致させたレンズユニット35を、素子カバーガラス43に固定する。これにより、レンズユニット35と撮像素子33とが接着用樹脂37によって直接接着されて固定され、つまり、レンズユニット35と撮像素子33とが接着用樹脂37を介して直付けされる。接着用樹脂37は、例えば最終的な硬度を得るためには熱処理を必要とするが、紫外線照射によってもある程度の硬度まで硬化が進行するタイプの接着剤である。
なお、内視鏡11では、素子カバーガラス43に対面するレンズの光出射面が凹面である場合、レンズの周囲の円環端面であるコバ部55が素子カバーガラス43に接着される。この際、レンズの外周、レンズ支持部材39の外周も同時に接着用樹脂37によって固定されてもよい。レンズのコバ部55が素子カバーガラス43に接着されることで、レンズと撮像素子33との間に、空気層が設けられる。レンズと撮像素子33との間に、空気層が設けられることで、レンズの光学的性能を高めることができる。例えば、レンズから空気層への出射光の屈折率差を大きくでき、光を屈折させるためのパワーが得られる。これにより、解像度を高める、画角を大きくするなどの光学設計が容易になる。その結果、内視鏡11により撮像された画像の画質が向上する。
撮像素子33の背面側の後部には、4つの導体接続部49が設けられる。導体接続部49は、例えばLGA(Land grid array)によって形成することができる。4つの導体接続部49は、一対の電力接続部と、一対の信号接続部とからなる。4つの導体接続部49は、伝送ケーブル31の4本の電線45と電気的に接続される。伝送ケーブル31は、電線45である一対の電力線と、電線45である一対の信号線とからなる。即ち、導体接続部49の一対の電力接続部には、伝送ケーブル31の一対の電力線が接続される。導体接続部49の一対の信号接続部には、伝送ケーブル31の一対の信号線が接続される。
以上により、第1構成例の内視鏡11によれば、レンズユニット35と撮像素子33とが、接着用樹脂37によって所定距離保持した状態で固定される。固定されたレンズユニット35と撮像素子33とは、レンズユニット35の光軸と、撮像面41の中心とが位置合わせされている。また、レンズユニット35と撮像素子33との距離は、レンズユニット35を通る被写体からの入射光が、撮像素子33の撮像面41に合焦する距離で位置合わせされている。レンズユニット35と撮像素子33とは、位置合わせされた後に固定されている。
固定されたレンズユニット35と撮像素子33との間には、離間部47(図3参照)が形成される。離間部47は、レンズユニット35と撮像素子33とが、相対的に位置合わせされ、相互が接着用樹脂37によって固定されることで、形状が定まる。即ち、離間部47は、レンズユニット35と撮像素子33との位置合わせ用の調整ギャップとなっている。この調整ギャップは、接着用樹脂37が充填されても無くなることはない。上述した寸法の具体例では、少なくとも30μm程度から100μm程度までの間で調整が行われる。この際の公差は ±20μmとなる。従って、この場合の最小の調整ギャップは、10μmで残存することになる。
内視鏡11では、離間部47が調整ギャップとなってレンズユニット35と撮像素子33との位置合わせが完了した後、離間部47が接着用樹脂37の固定スペースに利用される。これにより、レンズユニット35と撮像素子33とを直接に固定可能としている。これにより、従来必要であった、レンズユニット35を撮像素子33に固定するためのフレーム又はホルダ等の介装部材が不要となっている。また、フレーム又はホルダ等を省略できるため、部品点数が削減されて固定構造が簡素になる。これにより、内視鏡11の先端部15を小径化することができ、更なる小型化(例えば先端側の挿入部位における外径の細径化)を図る場合であっても、最小限の寸法で構成できる。また、部品コストを削減できる。更に、レンズユニット35と撮像素子33とを固定する際の介在部品が少ないので、位置合わせ及び固定にかかる作業に必要な作業工数を削減でき、かつ高精度な位置合わせが容易に可能となる。また、製造コストを低減できるとともに、生産性を向上させることができる。
また、この内視鏡11によれば、撮像素子33に、4本の電線45からなる伝送ケーブル31が接続される。内視鏡11は、伝送ケーブル31を4本の電線45とすることにより、小型化、コスト低減の両立を図ることができる。例えば、伝送ケーブル31の電線45を4本以下(例えば3本)とすることは撮像素子33の背面側の後部に対する導体接続部49の配置スペースの関係上可能ではあるが、この場合、例えば1本の信号線を廃止すると、撮像画像の信号又はビデオプロセッサ19から送出される制御用の信号を電力線を通る電力の波形に重畳しなくてはならない。すると、信号重畳のために変調回路や復調回路等が必要となり、部品点数が増大してトータルのコストが増大してしまう。また、各種の信号(撮像画像画像の信号、制御用の信号など)の送受用に専用の信号線を用いれば、回路構成が容易となるが、内視鏡の細径化には不利となる。一方、伝送ケーブル31の電線45を4本より多く(例えば5本)とすると、撮像素子33の背面側の後部に対する個々の導体接続部49の配置スペースが狭くなり、後述するように先端部15の最大外径を1.8mm以下とする内視鏡11を製造する場合に、半田付けによる接続作業が困難となり、内視鏡11の製造が困難となる。以上により、内視鏡11において、伝送ケーブル31は、4本の電線45とすることによって、小型化、コスト低減の両立を図る上で顕著な作用を奏することとなる。
<第2構成例>
第2構成例の内視鏡11は、本実施形態の内視鏡11において、先端部15の最大外径Dmaxを、ダイシング可能な撮像素子33の基板の外接円の直径に相当する有限径〜1.8mmの範囲で形成することができる。
本実施形態の内視鏡11では、光軸に垂直な方向における断面が正方形状の撮像素子33として、1辺の寸法が1.0mmのものが使用される。これにより、内視鏡11は、撮像素子33の対角寸法が1.4mm程度となり、照明手段としてのライトガイド57(例えば150ミクロン φ)を含めば、最大外径Dmaxが1.8mm以下のものが可能となる。
以上により、第2構成例の内視鏡11によれば、最大外径Dmaxを1.8mm未満とすることで、例えば人体の血管への挿入を容易に可能とすることができる。
<第3構成例>
第3構成例の内視鏡11は、本実施形態の内視鏡11において、図4に示すように、撮像素子33の基板が、正方形で形成され、4つの導体接続部49が、撮像素子33の基板の一辺に沿って並んで配置されている。1つの導体接続部49は、矩形状に形成される。4つの導体接続部49は、長辺が平行となって相互に離間して配置される。これら4つの導体接続部49は、撮像素子33の基板の中央部に配置される。従って、それぞれの導体接続部49は、撮像素子33の基板の周縁から離間されている。
伝送ケーブル31は、電線45である電力線及び信号線それぞれの導体が絶縁被覆によって覆われる。4本の電線45は、左右2本、上下2段に配置されて絶縁被覆の外周が更に外被によって束ねられて、一本の伝送ケーブル31となっている。それぞれの導体は、導体接続部49の長手方向に沿ってU字状に曲げられた屈曲部53を有している。電線45は、この屈曲部53が予めフォーミングされて導体接続部49に突き当てられる。電線45は、この屈曲部53の先端が、半田によって導体接続部49に接続される。撮像素子33と伝送ケーブル31とは、モールド樹脂17によって覆われる。従って、導体接続部49、屈曲部53、電線45、及び伝送ケーブル31の外被は、モールド樹脂17に埋入される。
以上により、第3構成例の内視鏡11によれば、4つの導体接続部49を、撮像素子33の基板の中央部に平行に配置できるので、導体接続部49の形成が容易となる。一方向に離間した4つの導体接続部49のそれぞれに電線45の導体を半田によって接続するので、接続作業を容易にできる。導体接続部49を撮像素子33の基板の中央部に配置したので、導体に屈曲部53を形成することができる。屈曲部53は、モールド部65によって埋入されて固定されるので、伝送ケーブル31に作用する張力が導体と導体接続部49との接合部に作用することを軽減できる(ストレインリリーフとして働く)。これにより、電線45と導体接続部49との接続信頼性を高めることができる。
<第4構成例>
第4構成例の内視鏡11では、本実施形態の内視鏡11において、レンズユニットに沿って照明手段が設けられている。即ち、第4構成例の内視鏡11は、照明手段の一例としてのライトガイド57を有する。以下、照明手段は、ライトガイド57である場合を例に説明するが、この他、照明手段は、先端部15の挿入先端面に直付けしたLEDとすることもできる。この場合、ライトガイド57は不要となる。
ライトガイド57は、1本の光ファイバ59からなる。光ファイバ59には、例えばプラスチック光ファイバ(POF:Plastic Optical Fiber)が好適に用いられる。プラスチック光ファイバは、シリコン樹脂やアクリル樹脂を材料としてコアもクラッドもプラスチックで形成される。また、光ファイバ59は、例えば光ファイバ素線を複数本束ねて、その両端に端末金具を取り付けたバンドルファイバ(bundle fiber)等であってもよい。光ファイバ59は、先端が先端部15で出射端面となり、基端がプラグ部23のフェルールに接続される。光源は、例えばソケット部27等に設けられるLEDである。内視鏡11は、プラグ部23をソケット部27に接続することで、LEDからの光がライトガイド57の光ファイバ59を伝搬し、先端から出射される。この構成によれば、光源から照明光の出射端までを1本の光ファイバで構成でき、光損失を小さくすることができる。
以上により、第4構成例の内視鏡11によれば、ライトガイド57を備えることで、内視鏡11を単独で用いて暗部での撮影を可能にできる。
<第5構成例>
図5は、照明手段の一例としてのライトガイド57の配置例を表す先端部の一例を示す正面図である。第5構成例の内視鏡11では、本実施形態の内視鏡11において、照明手段の一例としてのライトガイド57が、レンズユニット35の円周方向に複数個設けられた構成である。ライトガイド57は、レンズユニット35の円周方向に等間隔で4本を設けることができる。
以上により、第5構成例の内視鏡11によれば、レンズユニット35の円周方向に、等間隔で4本のライトガイド57が設けられるので、被写体の上下左右に影が生じにくくなる。これにより、内視鏡11は、ライトガイド57が1本の構成や、2本の構成に比べ、明瞭な撮像画像を得ることができる。
<第6構成例>
第6構成例の内視鏡11では、本実施形態の内視鏡11において、撮像素子33が方形状に形成される。4つのライトガイド57の光ファイバ59は、撮像素子33の基板と、撮像素子33の基板の外接円とに挟まれる空間において、撮像素子33の基板の各辺部の略中央に配設されている。
以上により、第6構成例の内視鏡11によれば、正方形の撮像素子33と、撮像素子33に略外接する円形のモールド部65とに挟まれるスペースを有効に利用でき、先端部15の外径を大きくせずに、複数(特に4本)の光ファイバ59を容易に配設することができる。これにより、内視鏡11は、先端部15の外径を大きくせずに、製造を容易にしながら、明瞭な画像を得ることができる。
<第7構成例>
第7構成例の内視鏡11は、本実施形態の内視鏡11において、図3に示すように、レンズ支持部材39にレンズを収容するレンズユニット35と、撮像面41が素子カバーガラス43によって覆われる撮像素子33と、撮像面41の中心にレンズの光軸を一致させたレンズユニット35と素子カバーガラス43とを固定する接着用樹脂37と、最大外径Dmaxがダイシング可能な撮像素子33の基板の外接円の直径に相当する有限径〜1.8mmの範囲で形成される先端部15と、レンズユニット35の少なくとも一部及び撮像素子33をモールド樹脂17によって被覆して固定するモールド部65と、先端部15と同一外径で形成されてモールド部65の少なくとも一部を覆って接続される管状のシース61と、を備えることができる。
以下の説明において、同一の部材又は構成については同一の符号を付与して説明を簡略化又は省略する。また、第7構成例の内視鏡11(図3参照)の説明では、適宜、第9構成例の内視鏡11(図6参照)と対比しながら説明する。
シース61は、可撓性を有する樹脂材からなる。シース61は、強度を付与する目的で、内周側に単線、複数線、編組の抗張力線を備えることができる。抗張力線としては、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド繊維などのアラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などのポリエステル系繊維、ナイロン繊維、タングステンの細線、又はステンレス鋼の細線など一例として挙げることができる。
第7構成例の内視鏡11では、後述する第9構成例の内視鏡11(図6参照)と同様に、撮像素子33の全体と、レンズユニット35の撮像素子33側の少なくとも一部分と、伝送ケーブル31の一部分と、ライトガイド57の一部分とがモールド樹脂17によって被覆されて固定されている。「少なくとも」とは、モールド樹脂17が、レンズ支持部材39の外周全体を覆うことも含む概念である。モールド樹脂17は、撮像素子33とレンズユニット35とを覆うことで、その間の離間部47も連続して覆う。なお、第7構成例の内視鏡11の先端部15には、X線不透過マーカーが内包されてもよい。これにより、第7構成例の内視鏡11は、X線透視下における先端位置の確認が容易となる。
また、第7構成例の内視鏡11は、後述する第9構成例の内視鏡11(図6参照)と同様に、先端部15に、先端フランジ部63を備える。先端フランジ部63は、例えばステンレス鋼によって形成することができる。先端フランジ部63は、先端側より大径部と小径部とが連なった円筒状に形成される。先端フランジ部63の大径部の外径は、最大外径Dmax(1.8mm)で形成され、大径部には4つの光ファイバ59が挿入されるための挿入用穴(不図示)が設けられており、この挿入用穴からそれぞれの光ファイバ59が挿入される。小径部には、レンズユニット35が挿入されるための挿入用穴(不図示)が設けられており、この挿入用穴からレンズユニット35が挿入される。先端フランジ部63は、レンズユニット35を同軸に保持する。先端フランジ部63の大径部には、小径部よりも外側に、光ファイバ59の先端側を保持するためのファイバ保持孔67が穿設される。ファイバ保持孔67は、円周方向に等間隔で4つが均等に設けられる。ファイバ保持孔67に先端側が挿入された光ファイバ59は、小径部に沿って後方へ導出される。
第7構成例の内視鏡11では、先端フランジ部63より後方の光ファイバ59は、カバーチューブ69の内側に配置される(図3参照)。カバーチューブ69は、先端フランジ部63と同一外径で形成される。カバーチューブ69は、金属、樹脂等を素材に形成される。カバーチューブ69は、先端が先端フランジ部63の大径部に当接し、少なくとも後端が伝送ケーブル31に到達する全長を有する。カバーチューブ69の内側には、モールド樹脂17が充填される。つまり、第7構成例の内視鏡11では、モールド部65がカバーチューブ69によって覆われている。なお、後述する第9構成例の内視鏡11では、カバーチューブ69が省略され、シース61の先端が先端フランジ部63の後端に当接して接着剤等で接着していること(図6参照)を除けば、第1構成例の内視鏡11と同等の構成である。
カバーチューブ69に充填されたモールド部65は、カバーチューブ69の後端から後方へ延出する小径延出部71(図3参照)を有する。小径延出部71は、円柱状に成形され、4本の光ファイバ59を埋入している。小径延出部71は、4本の光ファイバ59の内側に伝送ケーブル31を埋入している。シース61は、内径側が、この小径延出部71の外周に接着剤等によって固定される。つまり、図3に示す第7構成例の内視鏡11では、先端フランジ部63、カバーチューブ69及びシース61は、1.8mmの同軸の最大外径Dmaxで連なっている。なお、図6に示す第9構成例の内視鏡11では、先端フランジ部63及びシース61が、1.8mmの同軸の最大外径Dmaxで連なっている。
以上により、第7構成例並びに第9構成例の内視鏡11によれば、レンズユニット35の少なくとも一部、撮像素子33及び伝送ケーブル31の一部がモールド樹脂17によって被覆されて固定されるので、レンズユニット35と撮像素子33とを固定する際の介在部品が少ない。これにより、内視鏡11の先端部15を小径化することができ、更なる細径化を図る場合であっても、最小限の寸法で構成できる。また、部品コストを削減できる。例えば人体の血管のような非常に径が細い患部を撮像可能に適用可能な内視鏡11を実現することができる。この結果、内視鏡11において小型化、コスト低減を図ることができる。
また、モールド樹脂17は、撮像素子33とレンズユニット35とに渡って連続して成形されることで、撮像素子33とレンズユニット35との固定強度の増大に寄与する。また、モールド樹脂17は、離間部47の気密性(つまり、細かな隙間が少ない)、水密性、遮光性も高める。更に、モールド樹脂17は、ライトガイド57用の光ファイバ59が埋入された際の遮光性も高める。
また、内視鏡11は、先端部15に、ライトガイド57をモールド樹脂17によってモールドするので、ライトガイド57を構造材として作用させ、細径の内視鏡11においても、軟性部29と先端部15との接続強度を向上させることができる。更に、内視鏡11では、先端部15を先端フランジ部63の挿入側最表面(図5参照)から見た場合に、先端フランジ部63に予め設けられたレンズユニット35の挿入用穴(不図示)とレンズユニット35との間、更に、先端フランジ部63に各光ファイバ59に対応して予め設けられた4つのファイバ保持孔67とそれぞれの光ファイバ59との間がそれぞれ接着用樹脂37によって充填される。このため、内視鏡11において、上記した各挿入穴やファイバ保持孔67と各部材(つまり、レンズ支持部材39、光ファイバ59)との隙間が無くなる。また、内視鏡11では、先端フランジ部63とカバーチューブ69との間及びカバーチューブ69とシース61との間、又は先端フランジ部63とシース61との間がそれぞれ接着用樹脂37により接着され、これらの間に隙間は無くなる。従って、内視鏡11は、検査や手術の際に使用された後に滅菌作用が施される(つまり、洗浄される)と、内視鏡11に不要な液体等の洗浄残りが付着することが軽減され、次の検査又は手術に使用する際の衛生面において高度の利便性を有することができる。
また、特許文献2に示した従来の内視鏡533は、先端部の軸線とレンズユニット547の光軸とが偏芯している。このため、先端部の回転角度によって被写体までの距離が変わりやすく、良好な画像を安定的に得にくい。更に、先端部の軸線とレンズユニット547の光軸とが偏芯していると、先端部の回転角度によって管内壁と先端部との干渉具合が変わり、特に径が細い孔への進入時に操作性が低下する。これに対し、第7構成例の内視鏡11によれば、先端フランジ部63、カバーチューブ69及びシース61が同軸で連なっており、第9構成例の内視鏡11によれば、先端フランジ部63及びシース61が同軸で連なっているので、ともに細径化しやすく、良好な画像を安定的に得ることができ、挿入操作性を高めることができる。
<第8構成例>
第8構成例の内視鏡11は、本実施形態の内視鏡11において、シース61の厚みを0.1〜0.3mmの範囲とすることができる。シース61の厚みは、カバーチューブ69と小径延出部71との間の段部における段差寸法と一致する。小径延出部71は、撮像素子33を挟んでレンズユニット35の反対側に突出する部分となる。即ち、小径延出部71は、中心に1本の伝送ケーブル31を配置し、その外側に、4本の光ファイバ59が配置されるのみとなる。従って、小径延出部71は、撮像素子33を埋入している部分のモールド部65に比べ、容易に小径化が可能となる。つまり、シース61は、外径がカバーチューブ69と同一であるので、肉厚の設計自由度が向上する。
以上により、第8構成例の内視鏡11によれば、シース61の厚みを0.3mmまで厚くできるので、シース61の引っ張り強度を高くすることが容易となる。
<第9構成例>
図6は、薄肉のシースが先端部に接続された構成の一例を示す断面図である。
第9構成例の内視鏡11は、本実施形態の内視鏡11において、シース61の厚みを0.1mmとすることができる。内視鏡11は、シース61の厚みを0.1mmとした場合、第7構成例の内視鏡11において説明したカバーチューブ69を不要とすることができる。即ち、第9構成例の内視鏡11は、シース61をカバーチューブ69の肉厚とほぼ同等の肉厚(0.1mm)とすることで、撮像素子33及びレンズユニット35を埋入している部分のモールド部65を覆うことが可能となる。第9構成例の内視鏡11では、シース61の先端が、先端フランジ部63の後端面に当接して接着剤等によって固定される。シース61は、薄厚になることによって生じる引っ張り強度の低下を、上記の抗張力線等によって補うことができる。
以上により、第9構成例の内視鏡11によれば、カバーチューブ69を省略し、シース61を直接に先端フランジ部63に接続できるので、部品点数を少なくできる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の内視鏡111について説明する。
図7は、第2の実施形態の内視鏡111の先端部を前側から見た様子を示す斜視図である。図8は、第2の実施形態の内視鏡111の先端部の一例を示す断面図である。図9は、第2の実施形態の内視鏡におけるレンズ及び撮像素子が接着用樹脂を介して直付けされた状態の一例を示す断面図である。図10は、第2の実施形態の内視鏡の導体接続部に伝送ケーブルが接続された撮像素子をレンズユニットと反対側から見た斜視図である。なお、第2の実施形態では第1の実施形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
<第10構成例>
図7に示す内視鏡111は、図8に示す先端部15の最大外径Dmaxを、ダイシング可能な撮像素子33の基板の外接円の直径に相当する有限径〜1.0mmの範囲で形成することができる。
本実施形態の内視鏡111では、光軸の方向に垂直な方向における断面が正方形状の撮像素子33として、1辺の寸法が0.5mm以下のものが使用される。これにより、内視鏡111は、撮像素子33の対角寸法が0.7mm程度となり、照明手段としてのライトガイド57(例えば50ミクロン φ)を含めば、最大外径Dmaxが1.0mm以下のものが可能となる。
以上により、第10構成例の内視鏡111によれば、最大外径Dmaxを1.0mm未満とすることで、例えば人体の血管への挿入を更に容易に可能とすることができる。
<第11構成例>
第11構成例の内視鏡111は、本実施形態の内視鏡111において、図10に示すように、撮像素子33の基板が、正方形で形成され、導体接続部49が、撮像素子33の基板の四隅に配置されている。1つの導体接続部49は、例えば円形状に形成される。4つの導体接続部49は、正方形の四隅に配置されることによって、相互に最大距離で離間した配置が可能となっている。
伝送ケーブル31は、電線45である電力線及び信号線それぞれの導体が絶縁被覆によって覆われる。4本の電線45は、左右2本、上下2段に配置されて絶縁被覆の外周が更に外被によって束ねられて、一本の伝送ケーブル31となっている。それぞれの導体は、絶縁被覆が剥かれた状態で、4本が平行な直線状にフォーミングされる。電線45は、この導体の先端が、半田によって導体接続部49に接続される。撮像素子33と伝送ケーブル31とは、図8に示すように、モールド樹脂17によって覆われる。従って、導体接続部49、導体、電線45の絶縁被覆、及び伝送ケーブル31の外被は、モールド樹脂17に埋入される。
以上により、第11構成例の内視鏡111によれば、4つの導体接続部49を、撮像素子33の基板の四隅に配置できるので、4つの導体接続部49を、正方形の撮像素子33の基板において、図10に示すように、相互に最大距離で均等に離間させて配置させることができる。これにより、半田付けの工程において隣接する2つの導体接続部49が半田によって接続されることがなく、絶縁距離の確保が容易となって、先端部15の細径化を容易にすることができる。なお、第1の実施形態の内視鏡11において、図10に示すように、4つの導体接続部49が撮像素子33の基板の四隅に配置されてもよい。
<第12構成例>
第12構成例の内視鏡111は、図9に示すように、対物カバーガラス91と、素子カバーガラス43と、撮像面41が素子カバーガラス43によって覆われる撮像素子33と、対物カバーガラス91と素子カバーガラス43との間に挟まれ、撮像面41の中心に光軸が一致されたレンズ93と、対物カバーガラス91とレンズ93との間に設けられる絞り51と、レンズ93と素子カバーガラス43とを固定する接着用樹脂37と、レンズ93と素子カバーガラス43との間に設けられる空気層95と、を備える。
第1の実施形態の内視鏡11では、3枚レンズのうち最終のレンズL3と素子カバーガラス43との間の有限な幅を有する離間部47に接着用樹脂37が塗布されたことで、レンズL3と素子カバーガラス43とが直付けされている。一方、第2の実施形態の内視鏡111では、レンズ93と素子カバーガラス43とが接着用樹脂37を介して直付けされる。その結果、内視鏡111では、接着用樹脂37は、側面視でほぼ線状となる(図10参照)。また、第2の実施形態の内視鏡111では、レンズ93と素子カバーガラス43とは、レンズ93の両端側のコバ部において接着用樹脂37によって直付けされており、接着用樹脂37はコバ部にのみ塗布される。
レンズ93は、例えば単一レンズであり、外形状が撮像素子33と同一の角柱状に形成され、かつ光軸の方向に垂直な方向における断面が正方形状である。レンズ93は、対物カバーガラス91を通過した被写体からの入射光を、素子カバーガラス43を介して撮像素子33の撮像面41に結像する。レンズ93の素子カバーガラス43側の面には、凹部が形成される。凹部の底面には、略球面状に隆起した凸曲面部97が形成される。レンズ93は、凸曲面部97によって、光の集束を行う光学素子としての機能を有する。凸曲面部97の隆起先端は、素子カバーガラス43との間から若干離間する。一方、レンズ93は、凹部を包囲する四角環状の端面が、接着用樹脂37を介して素子カバーガラス43に接着される。これにより、レンズ93と素子カバーガラス43との間の凹部には、空気が封入された状態となる。この密閉空間となった凹部に封入される空気は、乾燥空気であることが好ましい。また、この凹部には、窒素が封入されてもよい。このように、レンズ93と素子カバーガラス43との間には、凹部を内容積とする空気層95が形成される。この空気層95には、凸曲面部97が配置される。つまり、レンズ93は、凸曲面部97の光出射面が、空気と接している。
最大外径Dmaxが1.0mmの内視鏡111では、レンズ枚数が減らせるか否かが細径化の重要な要件となる。従って、内視鏡111において単一レンズであるレンズ93を設けた場合、光軸方向に平行な幅方向における微小な領域で、レンズ93との間で如何に屈折率差を持たせるかが重要であり、第12構成例の内視鏡111では、レンズ93との間で大きな屈折率差が得られる空気層を光学素子面に設けたことを特徴としている。
以上により、第12構成例の内視鏡111によれば、レンズ93に凹部を形成し、その底面に凸曲面部97を形成し、四角環状の端面を素子カバーガラス43に接着したので、微小な領域に、レンズ93との屈折率差を大きくするための空気層95を確保することができる。同時に、レンズ93は、撮像面41との光軸合わせが容易にできるようになる。レンズ93は、空気層95を確保できたことにより、レンズ93との間で大きなレンズパワーを得ることが可能となる。これにより、内視鏡111においてレンズ枚数を1枚に減らすことができる。その結果、内視鏡111において小型化、コスト低減を図ることができる。
<第13構成例>
第13構成例の内視鏡111は、本実施形態の内視鏡111において、図8に示すように、対物カバーガラス91の対物面を除く外周面、レンズ93の外周面及び撮像素子33をモールド樹脂17によって被覆して固定するとともに先端部15の外殻を形成しかつ外部に露出するモールド部65と、先端部15と同一外径で形成されてモールド部65の少なくとも一部を覆って接続される管状のシース61とを備える。
シース61は、上記のように可撓性を有する樹脂材からなる。また、シース61は、上記のように強度を付与する目的で、内周側に単線、複数線、編組の抗張力線を備えることができる。抗張力線の材質は上記と同様である。
内視鏡111は、対物カバーガラス91と、レンズ93と、素子カバーガラス43と、撮像素子33の全体と、伝送ケーブル31の一部分と、ライトガイド57の一部分がモールド樹脂17によって被覆されて固定され、かつモールド樹脂17は外部に露出されている。なお、内視鏡111の先端部15には、X線不透過マーカーが内包されてもよい。これにより、内視鏡111は、X線透視下における先端位置の確認が容易となる。
内視鏡111は、対物カバーガラス91、レンズ93、素子カバーガラス43、撮像素子33、伝送ケーブル31の一部、ライトガイド57の一部(撮像ユニット)がモールド樹脂17によって被覆されて固定されるので、これら各部材同士を固定する際の介在部品が少ない。これにより、内視鏡111の先端部15を小径化することができ、更なる細径化を図る場合であっても、最小限の寸法で構成できる。また、部品コストを削減できる。例えば人体の血管のような非常に径が細い患部を撮像可能に適用可能な内視鏡111を実現することができる。この結果、内視鏡11において小型化、コスト低減を図ることができる。
また、モールド樹脂17は、撮像素子33から対物カバーガラス91までを覆って成形されるので、これら撮像ユニットの固定強度の増大に寄与する。また、モールド樹脂17は、空気層95の気密性(つまり、細かいな隙間が無い)、水密性、遮光性も高める。更に、モールド樹脂17は、ライトガイド57用の光ファイバ59が埋入された際の遮光性も高める。
また、内視鏡111は、先端部15に、ライトガイド57をモールド樹脂17によってモールドするので、ライトガイド57を構造材として作用させ、細径の内視鏡111においても、軟性部29と先端部15との接続強度を向上させることができる。また、内視鏡111では、先端部15を挿入側最表面(例えば図7参照)から見た場合に、モールド樹脂17が先端部15の対物カバーガラス91並びに4つの光ファイバ59を含めて被覆するので、対物カバーガラス91並びに4つの光ファイバ59のそれぞれの周囲のクリアランス(つまり、それぞれの周囲の隙間)が無い。従って、内視鏡111は、検査や手術の際に使用された後に滅菌作用が施される(つまり、洗浄される)と、内視鏡111に不要な液体等の洗浄残りが付着することが軽減され、第1の実施形態の内視鏡11に比べて、次の検査又は手術に使用する際の衛生面においてより一層の高度な利便性を有することができる。
また、特許文献2に示した従来の内視鏡533は、先端部の軸線とレンズユニット547の光軸とが偏芯している。このため、先端部の回転角度によって被写体までの距離が変わりやすく、良好な画像を安定的に得にくい。更に、先端部の軸線とレンズユニット547の光軸とが偏芯していると、先端部の回転角度によって管内壁と先端部との干渉具合が変わり、特に径が細い孔への進入時に操作性が低下する。これに対し、内視鏡111によれば、対物カバーガラス91、レンズ93、素子カバーガラス43、撮像素子33が同軸で連なっている。つまり、先端部15と同心円で対物カバーガラス91が配置される。その結果、第13構成例の内視鏡111は、細径化しやすく、良好な画像を安定的に得ることができ、挿入操作性を高めることができる。
<第14構成例>
第14構成例の内視鏡111は、シース61の厚みを、0.1〜0.3mmの範囲とすることが好ましい。
内視鏡111のモールド部65は、撮像素子33を覆った後端から後方へ延出する図8に示す小径延出部71を有する。小径延出部71は、円柱状に成形され、4本の光ファイバ59を埋入している。小径延出部71は、4本の光ファイバ59の内側に、伝送ケーブル31を埋入している。シース61は、内径側が、小径延出部71の外周に接着剤等によって固定される。つまり、モールド部65及びシース61は、1.0mmの同軸の最大外径Dmaxで連なっている。
以上により、第14構成例の内視鏡111によれば、シース61の厚みを0.3mmまで厚くできるので、シース61の引っ張り強度を高くすることが容易となる。また、伝送ケーブル31の最小外径は、現在0.54mm程度である。先端部15の最大外径Dmaxを1.0mmとした場合、シース61の厚みは、0.23mmとなる。これによって、内視鏡111は、シース61の厚みを上記の0.1〜0.3mmの範囲とすることで、先端部15の最大外径Dmaxを、1.0mmとすることを可能にすることができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態の内視鏡121について説明する。
図11は、第3の実施形態の内視鏡121の先端部の一例を示す断面図である。なお、第3の実施形態では第1の実施形態、第2の実施形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
第3の実施形態の内視鏡121は、上記のカバーチューブ69を備えない点に特徴を有する。内視鏡121は、先端部15の最大外径Dmaxが、1.8mmで形成される。モールド部65は、大径のモールド本体123から先端フランジ部63の反対側に小径延出部71が延出する。
シース61は、可撓性を有し、内視鏡121の先端部15を保護するために、レンズL1,L2,L3、撮像素子33、照明手段(例えばライトガイド57)の一部、及び伝送ケーブル31を覆う。シース61は、先端フランジ部63と、同一外径(即ち、最大外径Dmax)で形成される。一方、シース61の内周は、小径延出部71を覆う部分で小径となり、モールド本体123を覆う部分で大径となる。従って、シース61は、小径延出部71を覆う部分が厚肉部125となり、モールド本体123を覆う部分が薄肉部127となる。シース61の内周には、厚肉部125と薄肉部127との間に段部129が形成される。この段部129には、シース接着剤131が充填される。
この内視鏡121によれば、第1の実施形態の内視鏡11と同様に、先端部15の更なる細径化を実現可能にできる。また、内視鏡121は、カバーチューブ69が不要となるので、部品点数を少なくできる。更に、内視鏡121は、ステンレス鋼(例えばSUS316)等の金属からなるカバーチューブ69を有する内視鏡11に比べ、先端部15が柔らかいので、内視鏡121の体内等への挿入時に生じる衝撃を吸収することができる。また、内視鏡121は、先端部15が金属の場合に比べ、衝撃を吸収するので術者による施術を行いやすくできる。つまり、操作性を高めることができる。
<第15構成例>
図12は、シース61の硬さを段階的に異ならせた内視鏡121の先端部の一例を示す断面図である。図13は、シースの硬さを段階的に異ならせた内視鏡135の先端部の他の例を示す断面図である。
内視鏡121は、シース61の硬さを挿入部21の位置で異ならせることができる。即ち、内視鏡121のシース61は、挿入部21の先端側に硬度の低い先端低硬度部133を有するとともに、それ以外の部位(つまり、後端側の部分又は先端側以外の部位)の硬度が先端低硬度部133よりも段階的に高い。この構成は、最大外径Dmaxが1.8mmの図12に示す内視鏡121と、最大外径Dmaxが1.0mmの図13に示す内視鏡135とで同様に適用することができる。
例えば術者は、内視鏡121,135を使用する際、挿入時のガイドとしての役割を有するカテーテルの挿入開口(図示略)に、内視鏡121の先端部15を挿入する。この際、術者は、内視鏡121,135の先端部15よりも所定長後方を手指で摘んで挿入開口へ挿入する。先端部15が挿入開口に挿入された内視鏡121,135は、その後は迅速に挿入が行われる。この際、特に細径な血管用の内視鏡121,135は、強く摘まれることによる破損を防止しなければならない。内視鏡121,135は、先端から所定長の長さが、先端低硬度部133となり、それ以外の部位(つまり、後端側の部分又は先端側以外の部位)が先端低硬度部133よりも段階的に高い硬度で形成されることにより、上記の操作性と、破損の防止とを両立させることができる。
この先端低硬度部133の長さは、例えば50〜300mmとすることができる。先端低硬度部133は、50mm以上では、操作性を確保でき、300mm以下で破損のリスクを低減できる。
<第16構成例>
図14は、シース61の硬さを3段階で段階的に異ならせた内視鏡121の先端部の一例を示す断面図である。図15は、シースの硬さを3段階で段階的に異ならせた内視鏡135の先端部の他の例を示す断面図である。内視鏡121は、シース61の硬さを3段階で異ならせるものであってもよい。この場合、内視鏡121のシース61は、挿入部21の先端側に硬度の低い先端低硬度部133を有し、先端低硬度部133が、先端低硬度部133より段階的に硬度の高い接続中硬度部137に接続される。接続中硬度部137の先端低硬度部133の反対側には、接続中硬度部137より段階的に硬度の高い高硬度部139が接続される。この構成は、最大外径Dmaxが1.8mmの図14に示す内視鏡121と、最大外径Dmaxが1.0mmの図15に示す内視鏡135とで同様に適用することができる。
図16は、挿入部の位置ごとの硬さを示す数値例を表すテーブルである。シース61の硬さを3段階で異ならせた内視鏡121,135は、先端低硬度部133、接続中硬度部137及び高硬度部139の硬度を図16に示す範囲の値に設定することが好ましい。即ち、先端低硬度部133のショアD硬さは、25〜55とすることが好ましい。接続中硬度部137のショアD硬さは、40〜65とすることが好ましい。高硬度部139のショアD硬さは、60〜75とすることが好ましい。先端低硬度部133は、ショアD硬さ25よりも柔らかいと破損リスクが高くなる。また、高硬度部139は、ショアD硬さが75よりも硬くなると破損リスクが高くなる。
シース61は、硬度の異なるものでは融点が異なる。この場合、両者を接合するには、融点の高い温度で接合を行う。すると、融点の低い樹脂材料は、融点を大きく超えて加熱されることになる。樹脂材料では、このような過加熱により、ひけやボイドが生じやすく、接合面が不安定となって接合強度が低下する。そこで、内視鏡121,135では、先端低硬度部133と高硬度部139との間に接続中硬度部137を介在させている。接続中硬度部137は、その融点の差を小さくすることができる。これにより、シース61の硬さを3段階で異ならせた内視鏡121,135によれば、接続時における樹脂材料の過加熱を抑制することができる。
従って、内視鏡121,135は、先端が必要な柔らかさがあって、手元に必要な硬さがあって、この間に、接続中硬度部137が介在することにより、上述した製造上の課題(つまり、接合面の接合強度の低下)を解決することができる。
<第17構成例>
内視鏡121は、モールド本体123が図11に示す小径延出部71を有する。従って、シース61は、厚肉部125と薄肉部127とを有する。ここで、内視鏡121は、小径延出部71の延出端面141がシース61の厚肉部125に配置される。シース61の内方は、延出端面141を境にモールド本体123の反対側が空洞143となる。
図17は、モールド部65に小径延出部71を形成しない構成の断面図である。内視鏡は、例えば延出端面141を設けない構成の場合、シース61が屈曲すると、図17に示すように、モールド本体123の本体後端部145でシース61の屈曲により生じる応力が集中する。つまり、応力は、薄肉部127で集中する。これに対し、図11に示す内視鏡121のように、延出端面141を設けた構成では、延出端面141が厚肉部125に配置することになるので、シース61の屈曲時に、シース61は、厚肉部125でシース61の屈曲により生じる応力が集中する。これにより、内視鏡121は、薄肉部127への応力の集中を回避することで、シース61を破損しにくくできる。このことは、特に細径で、薄厚な部材を多用する内視鏡の要部において有益な効果となる。
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態又は各構成例における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。