JP2017183875A - 追尾アンテナシステムおよび追尾アンテナ装置 - Google Patents

追尾アンテナシステムおよび追尾アンテナ装置 Download PDF

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智明 熊谷
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Abstract

【課題】複数の地上局による複数の飛翔体に対する追尾において、効率的かつ安定なハンドオーバを実行することが可能な追尾アンテナシステムを提供する。【解決手段】移動する無人航空機100の位置・姿勢情報や信号強度情報、アンテナ指向性情報等を用いて、複数の地上局アンテナ10が追尾する方向、各無人航空機100が接続する地上局200を動的に制御する。各追尾アンテナ10は、第1および第2の無人飛行機100を追尾可能である。無人飛行機の移動経路の予測から、無人飛行機の特定の組について通信中の地上局において、通信相手となる地上局の交代条件が満たされると判断した場合、交代先の地上局の第2の追尾対象に、交代が予測される無人飛行機を加える。【選択図】図1

Description

本発明は、飛翔体を追尾するための追尾アンテナ装置および追尾アンテナシステムに関する。
地震や火災などの災害発生時では、民間報道機関や官省庁などによる初動対応として、無人飛行機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)や無人ヘリコプタ(撮影用ヘリ)に搭載されたカメラにより現地が撮影され、撮影された映像情報がいち早くリアルタイムで地上局へ伝送されるというような技術が採用される場合がある。このような映像情報は、初動対応の判断源となる重要な情報であるため、映像情報を随時途切れさせることなく伝送することが要求される。
特に、広域を高精度にリアルタイムで観測するには複数機の運用が不可欠であり、飛行状態及び航空電子搭載機器のみならずミッション機器の情報をリアルタイムで地上にブロードバンド伝送し、必要なコマンドを地上より送信する通信システムが必須である。このようなシステムは、大規模災害等により携帯電話等の公衆系通信システムが利用できない場合においても運用できる必要があるため、通信システムは必然的に自営系システムとなる。また、検査・監視対象となる建造物の規模から、その通信可能エリアは1キロメートル四方程度をカバーする必要がある。
特許文献1には、定時間毎にGPSで無人航空機の位置が検出され、無人航空機の2時点の2つの位置の情報と、指向性アンテナの位置情報とに基づいて、指向性アンテナが無人航空機を追跡するのに必要なアンテナモーターの回転量をノート型パーソナル・コンピュータにより計算し、計算された回転量に応じてアンテナ・コントローラによりアンテナモーターが制御される構成が開示されている。
特許文献1に開示の技術では、1台の追尾アンテナで1機のUAVを追尾するにあたり、UAVと追尾アンテナの最新の位置情報からアンテナの追尾方向を決定する。
一方、非特許文献1には、航空機などの高速移動体の無線通信にミリ波帯を適用するために、長距離のミリ波帯通信を実現するアンテナの高性能化、移動体に搭載するための装置の小型・軽量化、航空機の姿勢に追随して電波の放射方向を高速に制御するアンテナ制御技術、ミリ波帯を用いた移動体通信に適したネットワーク技術が開示されている。
非特許文献1の技術では、1台の航空機の航路予測に基づきハンドオーバーが実行され、航空機の移動を予測してハンドオーバー元とハンドオーバー先の追尾アンテナが追尾する構成である。
特開2001−267829号公報
http://www.nict.go.jp/press/2010/06/23-1.html,「ミリ波を用いた航空機-地上間の大容量無線通信システムを開発」,独立行政法人 情報通信研究機構 プレスリリース 2010年6月23日
現状、産業用無人航空機及び無人ヘリコプタテレビ中継(ヘリテレ)向け画像伝送用無線通信システムに対しては、1.2GHz帯においてチャネル当たり6MHzの周波数帯域が割り当てられている。しかしながら、複数のUAVを用いて1ストリーム当たり8〜10Mb/s程度のビットレートを有するブロードバンドリアルタイム動画像伝送を行うには、帯域が不足している。
このため、自営システムでこのような伝送を実現するにIEEE802.11g/n等に代表される無線LAN(Local Area Network)が最も有力である。ただし、一般的な無線LANデバイスの伝送可能距離は高々100m程度である。このため、大型建造物の周囲を周回する複数のUAVに対して十分な受信電力を安定して確保するには多数の地上局(BS)が必要となる。
少数の地上局においてUAVの飛行エリアをカバーする方法として、高利得の追尾アンテナを用いてUAVを追尾することにより、伝送可能距離を延長することが考えられる。ただし、各UAVとこれを追尾する地上局追尾アンテナの関係を一対一に固定すると、地上局からの距離と見通し範囲によってUAVの行動範囲が大きく制約される上、他の地上局と同一チャネル干渉が生じた場合における回避策の自由度も限定される。
このため、位置的に離れた複数の追尾アンテナで複数のUAVを追尾する必要がある。この際には、所要受信電力が確保できるよう、数10〜100km/h程度で移動する複数のUAVを地上局の追尾アンテナで捕捉することになる。
しかし、特許文献1および非特許文献1に開示された技術は、同一エリアに存在する複数UAVの追尾を想定していない。
また、ハンドオーバー時に急激な追尾方向の変動があると、所要受信電力が確保できない時間が長くなる恐れがある。
さらに、監視対象の建造物によるデッドスポット発生への対策も必要であり、複数の地上局を位置的に離して配置することで通信可能範囲を確保するだけでなく、UAVの飛行位置に応じて適切に通信先の地上局を切り替え(ハンドオーバー)を実行する必要がある。特に、UAVの追い越しやすれ違いに対して対応することも必要である。
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、飛翔体からの信号を地上局で追尾しながら受信する構成において、複数の地上局による複数の飛翔体に対する追尾において、効率的かつ安定なハンドオーバーを実行することが可能な追尾アンテナシステムおよび追尾アンテナ装置を提供することである。
この発明の1つの局面に従うと、追尾アンテナシステムであって、複数の飛翔体を備え、各複数の飛翔体は、自身の位置、速度および姿勢を把握するための測位手段と、無線信号を送受信可能な機体アンテナとを含み、複数の飛翔体との間で無線通信を行うための複数の地上局を備え、複数の地上局の各々は、通信指向性を変更可能な追尾アンテナと、追尾制御指示に応じて、複数の飛翔体のうちの対応する飛翔体の方向に追尾アンテナの通信指向性を駆動する指向性制御手段と、飛翔体からの受信信号強度を計測する信号強度計測手段とを含み、追尾アンテナは、複数の飛翔体のうちから第1および第2の追尾対象を設定することが可能であり、複数の地上局の各々が接続する飛翔体を選択するとともに、複数の地上局の通信指向性を制御するための追尾制御指示を生成するための制御局をさらに備え、制御局は、各飛翔体の位置、速度および姿勢の情報ならびに受信信号強度の情報に基づいて、複数の飛翔体の移動経路の予測から、飛翔体の特定の組について通信中の地上局において、通信相手となる地上局の交代を要する条件が満たされると判断した場合、交代先の地上局の第2の追尾対象に、交代が予測される飛翔体を加えるように、追尾制御信号を地上局に対して出力する。
好ましくは、制御局は、各飛翔体の位置、速度および姿勢の情報に基づいて、所定時間後の飛翔体の位置を推定する飛翔体位置推定手段と、推定された飛翔体の位置と受信信号強度の情報に基づいて、各地上局において、飛翔体についての伝搬損を推定し、推定された伝搬損が最小となる飛翔体を第1追尾対象に、2番目に最小となる飛翔体を第2追尾対象として選択する選択手段とを含む。
好ましくは、通信相手となる地上局の交代を要する条件は、複数の地上局のうち、隣接する第1の地上局および第2の地上局が、それぞれ異なる第1の飛翔体および第2の飛翔体と通信中であって、第1および第2の飛翔体が、それぞれ、第1の地上局および第2の地上局のうち通信中でない方の地上局に接近中であることである。
好ましくは、通信相手となる地上局の交代を要する条件は、複数の地上局のうち、隣接する第1の地上局および第2の地上局が、それぞれ異なる第1の飛翔体および第2の飛翔体と通信中であって、第1および第2の飛翔体が、それぞれ、第1の地上局および第2の地上局のうちの一方の地上局に接近中で、第1および第2の飛翔体のうち当該一方の地上局と通信中の飛翔体が、通信中でない飛翔体に追い抜かれることである。
好ましくは、制御局は、推定された伝搬損に基づいて、所定時間後の受信電力を予測する受信電力予測手段をさらに備え、通信相手となる地上局の交代を要する条件は、さらに、予測された受信電力が、所定の通信開始しきい値を超えることを含む。
好ましくは、制御局は、推定された伝搬損に基づいて、所定時間後の受信電力を予測する受信電力予測手段をさらに備え、通信相手となる地上局の交代を要する条件は、飛翔体が、現在通信中の地上局以外であって通信やハンドオーバ処理を行っていない地上局に接近中で、かつ一定時間後の予測受信電力が所定の通信開始しきい値以上であることである。
好ましくは、通信相手となる地上局の交代を要する条件は、飛翔体が現在通信中の地上局の現在の受信電力が、所定のしきい値を下回ることである。
好ましくは、通信相手となる地上局の交代を要する条件は、飛翔体の一定時間後の予測伝搬損が、現在通信中の地上局よりも小さい地上局が少なくとも1つ存在することである。
この発明の他の局面に従うと、複数の飛翔体に対して無線通信のための追尾を行うための追尾アンテナ装置であって、各複数の飛翔体は、自身の位置、速度および姿勢を把握するための測位手段と、無線信号を送受信可能な機体アンテナとを含み、通信指向性を変更可能な追尾アンテナと、飛翔体からの受信信号強度を計測する信号強度計測手段と、複数の飛翔体のうちの対応する飛翔体の方向に通信指向性を駆動する指向性制御手段とを備え、追尾アンテナは、複数の飛翔体のうちから第1および第2の追尾対象を設定することが可能であり、指向性制御手段は、各飛翔体の位置、速度および姿勢の情報ならびに受信信号強度の情報に基づいて、複数の飛翔体の移動経路の予測から、飛翔体の特定の組について通信中の地上局において、通信相手となる地上局の交代を要する条件が満たされると判断した場合、交代先の地上局の第2の追尾対象に、交代が予測される飛翔体を加えるように、通信指向性を制御する。
この発明の追尾アンテナシステムおよび追尾アンテナ装置によれば、複数の地上局による複数の飛翔体に対する追尾において、効率的かつ安定なハンドオーバーを実行することが可能である。
本実施の形態の追尾アンテナ装置を含む無線通信システムの構成を示す概念図である。 本実施の形態の無人航空機100の構成を説明するための機能ブロック図である。 システムサーバ300の構成を説明するための機能ブロック図である。 無人航空機100.1および100.2を追尾する際の地上局200およびシステムサーバ300の処理の概念を説明するための図である。 無線航空機100、地上局200およびシステムサーバ300の処理の流れを説明するためのフローチャートである。 システムサーバ300が、UAVについての追尾対象更新処理およびアンテナの追尾方向更新処理を説明するフローチャートである。 各UAVの位置および伝搬損を予測する処理を説明するためのフローチャートである。 条件1の状態を説明するための概念図である。 2機のUAVに対する追尾方向制御を行うアルゴリズムを説明するためのフローチャートである。 ケースAの場合の予想受信電力を示す概念図である。 ケースBの場合の予想受信電力を示す概念図である。 ケースCの場合の予想受信電力を示す概念図である。 シミュレーションにおける建造物と地上局(BS)の位置関係、ならびにUAVの飛行経路を示す図である。 追尾アンテナにおける追尾方向との間の角度差に対する指向性パタンを示す図である。 シミュレーション諸元を示す図である。 機とも同方向に移動する場合に、UAV間の初期飛行角度差と所要受信電力のアウテージ率を各手法で比較したシミュレーション結果を示す図である。 3機のうち1機が逆方向に移動する場合に、UAV間の初期飛行角度差と所要受信電力のアウテージ率を各種法で比較したシミュレーション結果を示す図である。
以下、本発明の実施の形態の追尾アンテナ装置を含む無線通信システムについて、図に従って説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素および処理工程は、同一または相当するものであり、必要でない場合は、その説明は繰り返さない。
なお、以下では、特に限定されないが、たとえば、飛翔体である移動局は無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)であるものとして説明する。ただし、たとえば、無人ヘリコプター、ドローンなどでもよい。
以下に説明するように、本実施の形態の無線通信システムは、複数のUAVによる同時観測を可能にする、ブロードバンド無線通信システムである。より具体的には、移動するUAVの位置・速度・姿勢情報や信号強度情報、アンテナ指向性情報等を用いて、複数の地上局アンテナが追尾する方向、各UAVが接続する地上局、及び各通信リンクの使用チャネルを動的に制御する。
安定したハンドオーバー実現に向けて、各追尾アンテナは可能な限り、複数、たとえば、2機のUAV(「第1追尾対象」、「第2追尾対象」と呼ぶ)を追尾する。このとき、追尾方向の変動を抑えることにより、所望受信電力が所定値を下回る時間を減少させる。これにより、効率的なハンドオーバーの実現と、各UAVに対して所要受信電力の安定した確保を実現する。
[実施の形態]
図1は、本実施の形態の追尾アンテナ装置を含む無線通信システムの構成を示す概念図である。
本システムは、追尾アンテナを有する複数の地上局200.1〜200.M(以下、総称する場合は「地上局200」と呼ぶ。)、地上局200に対してアプリケーションデータの伝送を行う複数の無人航空機100.1〜100.2(以下、総称する場合は「無人航空機100」と呼ぶ)、ならびに集中制御的に各地上局・UAVのアンテナ制御を行うシステムサーバ300より構成される。
大規模な災害・事故発生時には当該エリアの情報を可能な限り同時に広く、リアルタイムで撮影、入手する必要がある。この場合、複数の無人航空機100.1〜100.2での撮影した画像を地上で受信する必要があり、このため1つの無人航空機に対して複数の追尾アンテナを用いて高速伝送に必要な伝送速度を確保可能な無線通信リンクを確保することになる。
各無人航空機100.1〜100.2は、後に説明するように、GPS(global positioning system)ハイブリッド慣性航法装置を搭載し、無人航空機100.1〜100.2の位置、速度、姿勢角度、ならびに姿勢各速度等のテレメトリデータを計測する。ここで、計測された各テレメトリデータは、テレメトリデータ伝送用の無線通信デバイスを用いて地上局200に伝送される。また、無人航空機100.1〜100.2には、特に限定されないが、たとえば、複数の指向性アンテナが搭載される。その場合はシステムサーバ300からの指令に基づき使用するアンテナを選択する。
なお、以下では、説明の簡単のために、無人航空機は、2機であるものとして説明するが、その数は、より多くてもよい。
図1においては、地上局200.1〜200.Mは、追尾アンテナ装置を有し、無人航空機100.1〜100.2の方向にアンテナを指向させることが可能である。地上局200.1〜200.Mは、それぞれ、対応する指向性アンテナ10.1〜10.M(M:自然数。以下、総称する場合は「指向性アンテナ10」と呼ぶ)により、移動局と無線通信をするものとする。
後に説明するように、システムサーバ300は、受信したテレメトリデータや受信強度に基づき、無人航空機の位置と速度から一定時間後の無人航空機の位置を線形予測により算出する。そして、システムサーバ300は、予測した位置でもシャドウイング量が同一と仮定して、伝搬損 (距離減衰+シャドウイング量)を算出し、以下の基準により各地上局の追尾対象となる無人航空機を決定する。
i)伝搬損が最小の無人航空機を第1追尾対象とする。
ii)伝搬損が2番目に小さい無人航空機を第2追尾対象とする。
この場合、典型的には、複数の無人航空機100を運用している場合は、地上局の近傍に位置する無人航空機100(第1追尾対象)をサイドローブで追尾しつつ、遠方から接近する別の無人航空機100(第2追尾対象)をメインローブで捕捉することになる。
なお、複数の無人航空機100が同時にメインローブの範囲に入っている状態では、メインローブのみで、近傍側の無人航空機も遠方側の無人航空機も同時に追尾することになる。
図1では、指向性アンテナ10.1〜10.Mの指向性のメインローブの範囲を、ビーム方向BM.11〜BM.M1として、サイドローブの範囲を、ビーム方向BM.12〜BM.M2として示す。
各地上局200では、無人航空機100からのテレメトリデータ、ならびに無線LANにより伝送されるアプリケーションデータ(たとえば、画像データ)を受信する。その際、いずれかの無線インタフェースにおいて、受信電力計測部22.1〜22.M(総称する場合は、「受信電力計測部22」と呼ぶ。)が、各無人航空機100が送信した信号の受信電力を計測し、これらの情報をシステムサーバ300へ送信する。そして、システムサーバ300の指示に基づき追尾アンテナの追尾方向と無線LANの使用周波数チャネルを変更すると共に、使用周波数チャネル・無線LANの接続先地上局および使用指向性アンテナに関する情報を無人航空機100に伝送する。
システムサーバ300は、無人航空機100.1〜100.2から地上局200.1〜200.M経由で伝送される無人航空機100.1〜100.2の位置・姿勢情報と、地上局200.1〜200.Mで受信する無人航空機100.1〜100.2の信号強度の情報に基づいて、目的とする通信に必要な伝送速度確保が可能な無線通信リンクを監視し、後に説明するように、無人航空機100.1〜100.2と無線通信を接続し追尾する地上局を、地上局200.1〜200.Mのうちから、随時、選択し、選択した地上局、たとえば、地上局200.1および200.Mの追尾方向の制御を行う。
すなわち、システムサーバ300では、無人航空機100から送信されたテレメトリデータ、地上局にて計測した受信電力、地上局位置、そして各アンテナの指向性パタンから、無人航空機100と地上局200間の伝搬損(距離減衰およびシャドウイング)を算出する。また、一定時間後の各無人航空機100の位置を予測し、その地点において所要の受信電力と通信機会が得られるよう、地上局アンテナの追尾方向と無人航空機100の使用アンテナ、各地上局における無線LANの使用周波数チャネル、ならびに各無人航空機100の接続先地上局を決定する。
地上局200.1および200.Mでは、それぞれ、システムサーバ300からの追尾方向の制御信号に応じて、追尾アンテナ制御部20.1および20.Mが、駆動部30.1および30.Mをそれぞれ制御し駆動して、指向性アンテナ10.1および10.Mの方向を制御する。指向性の駆動方法としては、たとえば、2軸以上の軸数を有するジンバル機構により駆動される構成としてもよいし、あるいは、アレーアンテナとして電子的に指向性を制御してもよい。
(無人航空機100の構成)
図2は、本実施の形態の無人航空機100の構成を説明するための機能ブロック図である。
無人航空機100は、複数の指向性アンテナ120と、指向性アンテナ120のアンテナのうち、無線リンクに使用するアンテナを選択するための切換装置124と、選択されたアンテナにより通信を行うための無線部122と、無人航空機100の飛行の制御や通信の制御を行うための搭載コンピュータ128と、無人航空機100の位置や姿勢を計測するためのGPSおよびジャイロを含むハイブリッド航法装置126と、上空からの画像(静止画、動画)を撮影するための撮像装置130とを含む。
ハイブリッド航法装置126により計測された無人航空機100の位置、速度、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)、姿勢角速度の情報は、テレメトリデータとして、選択されたアンテナから地上局に対して、たとえば、一定時間間隔で送信される。選択されたアンテナ120からの受信電波強度の情報は、地上局200で計測される。また、地上局からの指示に従って、撮像装置130で撮影された画像データも、同様にして、選択されたアンテナから地上局200に対して送信される。
切換装置124により、アンテナ120のうちの特定のアンテナを選択する方法としては、たとえば、利得が最も大きくなるようなアンテナを随時選択するように構成することができる。
ここで、無人航空機100の指向性アンテナ120については、上述のとおり複数個設けてもよいが、アンテナ数が1個であり、指向性を地上局からの指示により変更できるアンテナを設け、切換装置124により指向性を切換える構成としてもよい。
なお、以下では、説明の簡単のために、無人航空機100のアンテナ120の指向性は、原則として、等方的であるものとして説明する。指向性を有する場合は、無人飛行機100からの信号にその際に設定されている指向性アンテナの利得を考慮すればよい。
図3は、システムサーバ300の構成を説明するための機能ブロック図である。
システムサーバ300は、周知のコンピュータシステムと同様に構成され、記憶装置に格納されたプログラムに基づいて、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置が、演算処理を行うことで、図3に示すような各機能を実行するものとする。
システムサーバ300は、地上局200(図3では、例示的に地上局200.m−1および200.mを示す)との間で通信するための通信インタフェース(以下、通信I/F)302と、無人航空機100から送信され地上局200で受信されて伝送されてきた無人航空機100の位置、速度、姿勢角、姿勢角速度の情報を取得する位置・姿勢情報取得部304と、位置・姿勢情報取得部304からの情報により、地上局200の各々が、無人航空機100を追尾する方向を制御するための追尾方向制御信号を生成する追尾方向制御部306とを備える。追尾方向制御部306は、無人航空機100において高利得となるアンテナ120を選択するために、無人航空機100側から送信されてくる無人航空機100の位置、速度、姿勢角及び姿勢角速度等の情報を用いて、追尾を担当している地上追尾アンテナ10との相対姿勢角より、最大利得となるアンテナを選択する指示を、追尾方向制御信号として併せて生成する。あるいは、無人航空機100のアンテナ120が指向性を変更できる構成であれば、利得最大となるように、その指向性を変更させる信号を追尾方向制御信号として併せて生成してもよい。追尾方向制御信号は、それぞれ、対応する地上局200に伝送される。以下では、便宜上、複数のアンテナから選択を行うものとして説明する。
システムサーバ300は、さらに、地上局200で受信された無人航空機100からの受信信号強度に関する情報を取得する信号強度情報取得部310と、信号強度情報取得部310からの情報により、無人航空機100の追尾を担当する追尾アンテナを備えた地上局の選択を制御するための接続局指示信号を生成する接続局制御部312とを備える。接続局指示信号は、それぞれ、対応する地上局200に伝送される。
接続局制御部312は、一定時間後の各無人航空機100位置を予測し、その時点において所要の受信電力と通信機会が得られるよう、各地上局における無線LANの使用周波数チャネル、ならびに各無人航空機100の接続先地上局を決定するための処理を実行し、ハンドオーバーの準備ならびにハンドオーバーの実行を指示するための接続局指示信号を出力する。追尾方向制御部306は、後に説明するように、位置・姿勢情報取得部304からの情報および接続局制御部312からの情報に基づき、地上局アンテナの追尾方向と無人航空機100の使用アンテナを決定して追尾方向制御信号を生成する。
システムサーバ300は、さらに、無人航空機100からの撮像情報を地上局200経由で受信する撮像データ取得部320と、取得した撮像データを格納するための記憶装置322とを備える。
なお、システムサーバ300は、複数の無人航空機100および複数の追尾アンテナ10の組合せを集中管理するために1つのサーバーとして設置されてもよいし、あるいは分散配置された複数のサーバーによって構成されてもよい。
特に、本実施の形態においては、ハンドオーバー時における以下のような課題に対する、システムの処理について説明する。
地上局アンテナは鋭い指向性を持つため、複数の無人航空機100が異なる方向から同一地上局に近接すると、同時追尾が困難となる。そこで、良好な無人航空機100の追尾実現にはどの地上局がどの無人航空機100を追尾するかを適切に決定する必要がある。このためには、上述したような伝搬損や位置情報だけでなく、無人航空機の位置の一定時間後の予測に基づき、無人航空機100の追い越しやすれ違いのような無人航空機相互の位置関係が、どのようになると予想されるかも考慮する必要がある。
図4は、システムサーバ300により、無人航空機100.1および100.2を追尾する際の地上局200およびシステムサーバ300の処理の概念を説明するための図である。
また、図5は、図4に示した概念を実行するための無人航空機100、地上局200およびシステムサーバ300の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
なお、図4においては、時刻t=t1において追尾アンテナ10.mおよび10.m−1により、無人航空機100.1を追尾していた状態から、時刻t=t1+τの状態が推定され、追尾アンテナ10.mおよび10.m−1により、無人航空機100.1および100.2の追尾を続行する状態の概念を示している。
図4および図5を参照して、まず、システムサーバ300において、ステップS300およびステップS200において、無人航空機100から受信し地上局から転送されているテレメトリデータや無人航空機100からの受信信号強度の情報に基づいて、最初の通信地上局の決定が実行される(S100)。なお、このような初期設定としては、たとえば、全ての地上局200からの情報に基づいて、システムサーバ300が、追尾方向制御信号および接続局指示信号を算出するものとすることができる。
このような最初の通信地上局の決定は、追尾方向制御部306により、現在の受信電力が、瞬時的、あるいは一定時間の間について、通信開始しきい値Pcomm以上となる基地局があれば、以下の要領で初期通信先の決定が実行される。
a)通信やハンドオーバー処理を行っていない地上局の中で、一定時間後の予測伝搬損が最小のもの
b)条件a)を満たす地上局が無い場合に、他の無人航空機と通信中ではあるが、ハンドオーバー処理を行っていない地上局の中で一定時間後の予測伝搬損が最小のもの
上記a)を満たす地上局と無人航空機がある場合は、当該無人航空機を初期通信先地上局の第1追尾対象に設定する。
上記b)の場合は、当該無人航空機を初期通信先地上局の第2追尾対象に設定する。
続いて、追尾方向制御部306は、追尾方向制御信号を生成して、地上局200に対して送信し(S101)、接続局制御部312が追尾を担当する追尾アンテナ(接続先地上局)の変更や無線LANの使用周波数チャネルの決定あるいは変更が必要であるかを判断して(S102でY)、接続局指示として、地上局200へ送信する(S104)。
地上局200は、システムサーバ300からの追尾方向制御信号や接続局指示信号の制御信号を受信し(S200)、接続局指示でハンドオーバーの準備や接続地上局の変更(ハンドオーバー)の指示がある場合(S202)は、ハンドオーバーのための指示を生成し(S204)、追尾方向制御信号に応じて、追尾アンテナの指向方向の制御を実行する(S206)。
地上局200は、さらに、無人航空機100に対して、必要に応じて、アンテナ120のうちから送受信に使用するアンテナを選択する指示をしたり、ハンドオーバーの指示をしたり、撮像情報の送信を指示する制御信号を、送信する(S208)。
無人航空機100では、搭載コンピュータ128が、ハイブリッド完成航法装置から位置や姿勢等の情報を取得し(S300)、S208で地上局200から送信された制御信号を受信する(S302)。
無人航空機100では、さらに、地上局200からの指示に基づく搭載コンピュータ128の制御により、切換装置124によりアンテナ120のうちの1つのアンテナの選択の処理や、ハンドオーバーが指示されている場合は、地上局を選択する処理を行う(S304)。
続いて、無人航空機100では、自身の位置や姿勢等に関する情報を地上局200に対して送信し(S306)、地上局200からの指示に応じて、撮像情報を地上局200に対して送信する(S308)。
一方、地上局200では、無人航空機100からの位置や姿勢等に関する情報を受信し(S210)、併せて、無人航空機100における地上局200からの信号の受信強度に関する情報を取得し(S212)、無人航空機100からの撮像情報を受信して(S214)、無人航空機100から受信した情報をシステムサーバ300に伝送する(S216)。
システムサーバ300では、地上局200からステップS216で送信された信号を受信して(S106)、地上局200に対する追尾方向制御信号および接続局指示信号を算出する(S108)。
[UAVについての追尾対象更新処理およびアンテナの追尾方向更新処理]
以下では、図5のステップS108において、システムサーバ300が、追尾方向制御や接続局の制御(ハンドオーバー)を行う処理について説明する。
なお、以下では、記述の簡単のために、無人航空機を単に「UAV」と称する。
図6は、システムサーバ300が、ステップS108として実行するUAVについての追尾対象更新処理およびアンテナの追尾方向更新処理を説明するフローチャートである。
図6を参照して、ステップS108の処理が開始されると(S400)、システムサーバ300の接続局制御部312は、地上局より取得したテレメトリデータおよび受信強度データにより、各UAVの位置および伝搬損を予測する(S402)。
ここで、図7は、このような各UAVの位置および伝搬損を予測する処理を説明するためのフローチャートである。
図7を参照して、まず、接続局制御部312は、処理の開始後(S500)、以下の「地上局アンテナ-UAV間の伝搬損の推定」を行うことで、地上局アンテナ-UAV間の伝搬損を推定する(S502)。
[地上局アンテナ-UAV間の伝搬損の推定]
第m地上局(m=1,…,M)において、第nUAV(n=1,…,N)が送信した信号の受信電力pm,n[dBm]を測定し、システムサーバ300に送信する。なお、受信電力が小さく信号の復調に失敗した場合は、受信電力を所定の設定値pfail[dBm]に設定する。
次に、接続局制御部312は、第m地上局と第nUAVの距離dm,nに基づき、自由空間伝搬を仮定して距離減衰Lm,n[dB]を算出する。
続いて、接続局制御部312は、第nUAVの位置情報に基づき第m地上局から見て第nUAVが位置する方向を算出し、地上局アンテナが現在追尾している方向との間の角度差(θm,n,φm,n)(θm,nは水平方向、φm,nは垂直方向)を求め、地上局アンテナにおける指向性利得gbs(θm,n,φm,n)[dB]を算出する。
最後に、接続局制御部312は、第nUAVの送信電力P[dBm]を用いて、第m地上局と第nUAVとの間のシャドウイングレベルSm,n[dB]を次式(1)より求める。送信電力Pは、予め規定された値であってもよいし、たとえば、所定のタイミングで、第nUAVから地上局200に送信されてくるものとしてもよい。
なお、接続局制御部312は、UAVのアンテナが指向性を制御できる場合は、第nUAVから見て第m地上局が位置する方向と第nUAVの姿勢方向との間の角度差(θm,nバー,φm,nバー)(文字Xの頭部に―を付したものを、Xバーとよぶ。)から、UAV側の指向性利得gUAV(θm,nバー,φm,nバー)[dB]を求めて、上記の式(1)に加算してもよい。
[UAVの位置予測]
次に、接続局制御部312は、各UAVの位置情報と速度情報から、一定時間τ経過後のUAV位置を線形予測により算出する(S504)。
[伝搬損の予測および追尾対象の決定]
そして、接続局制御部312は、第m地上局と時間τ経過後の第nUAVの予測位置との間の距離「dm,nハット」(予測された量を表す文字Yの頭部に^を付したものを、Yハットとよぶ。)に基づき、τ経過後の距離減衰Lm,nハットを推定する。
続いて、接続局制御部312は、以下の手続きにより、各地上局が追尾対象とする2機のUAVの選定を行う(S506)。
[追尾対象とするUAVの決定]
接続局制御部312は、シャドウイングの発生状況がτの間変化しないものとして、予測される伝搬損Hmnハットを以下の式により導出する。
ここで、伝搬損Hmnハットが最小となるUAV(第1追尾対象)と、2番目に最小となるUAV(第2追尾対象)の2機を追尾対象とする。上述したように、この場合、基本的には、地上局の近傍に位置するUAVをサイドローブで追尾しつつ、遠方から接近する別のUAVをメインローブで捕捉することになる。
なお、同時追尾するUAVは、2機であるものとして説明するが、地上局の追尾能力によっては、これ以上の機数を同時追尾してもよい。
また、UAV側でアンテナの指向性を制御できる場合は、接続局制御部312は、τ経過後に第nUAVから見て第m地上局が位置する方向と第nUAVの姿勢方向との間の角度差(θm,nハット,φm,nハット)を算出し、これに基づきUAV側の指向性利得gUAV(θm,nハット,φm,nハット)を求め、伝搬損Hmnハットにおいて、この利得gUAV(θm,nハット,φm,nハット)を減算することとしてもよい。
続いて、追尾方向制御部306は、各地上局200での第1追尾対象と第2追尾対象のUAVについて、推定した伝搬損Hmnハットにより、アンテナの追尾可能範囲におけるτ経過後の受信電力を予測し(S508)、図6のステップ404に処理を復帰させる(S510)。
再び、図6に戻って、接続局制御部312は、現在、あるUAVについて、地上局間で、ハンドオーバー(以下、HOと略記する)処理中であるかを判断し、HO処理中であり(S404でY)、HOが成功すれば(S406でY)、各地上局における追尾対象を、HO後の対象に更新し(S408)、処理を、ステップS420へ移行させる。
一方。接続局制御部312は、HO処理が成功しなかった場合(S406でN)、さらに所定時間が経過してタイムアウトになれば(S410でY)、HO処理を取りやめることとして(S412)処理をステップS420へ移行させ、または、タイムアウトにならなかったときは(S410でN)、処理をステップS420へ移行させる。
続いて、接続局制御部312は、現在、あるUAVについて、地上局間で、後に説明するように、HO準備中であるかを判断し、HO準備中であり(S420でY)、HO先が決定されれば(S422でY)、HO対象の地上局100においてHO処理を開始し(S424)、処理を、ステップS440へ移行させる。
一方、接続局制御部312は、HO先が決定されていない場合(S422でN)、さらに所定時間が経過してタイムアウトになれば(S426でY)、HO準備を取りやめることとして(S428)処理をステップS440へ移行させ、または、タイムアウトにならなかったときは(S426でN)、処理をステップS440へ移行させる。
続いて、接続局制御部312は、地上局100が、全ての追尾対象のUAVと通信中であるかを判断し、通信中である場合(S440でY)、通信中のUAVについて、以下のようなHO準備開始条件が充足されるかを判断する(S442)。
そして、以下の条件1)〜条件4)のいずれかの条件を満たしたら(S442でY)、ハンドオーバー予定のUAVをハンドオーバー予定先の地上局の第2追尾対象に設定することで、各地上局の追尾対象を更新して(S444)、ハンドオーバー準備の開始を指示する(S446)。このとき、すでに、ハンドオーバー予定先の地上局に、第2追尾対象が設定されている場合は、適切なハンドオーバー先を選定できなかったと判断する(S422でN)。
ここで、図8は、以下の条件1の状態を説明するための概念図である。
条件1)隣接地上局間で通信中のUAVの交換(スワッピング)が可能である。
そのためには、以下のことが満たされる必要がある。
1−1)隣接する地上局BSaおよび地上局BSbが、それぞれ異なるUAVaおよびUAVbと通信中であることを前提にして、
1−2)両方のUAVaおよびUAVbがそれぞれ通信中でない方の地上局に接近中である場合か(たとえば、UAVaが地上局BSbに接近中であり、UAVbが地上局BSaに接近中である)(図8(a))、あるいは、
1−3)同一地上局(たとえば、BSb)に双方のUAVaおよびUAVbが接近中で、地上局BSbと通信中のUAVbが、UAVaに追い抜かれる場合に(図8(b))、
1−4)予測受信電力Ppredが通信開始しきい値Pcomm以上であるとき。
なお、1−4)については、必ずしも必須の条件とする必要はないものの、このような条件が満たされることが望ましい。
条件2)UAVが、現在通信中の地上局以外で、通信やハンドオーバー処理を行っていない地上局に接近中で、かつ一定時間後の予測受信電力Ppred が通信開始しきい値Pcomm 以上である場合。
この条件2は、移動先にある地上局と早めにハンドオーバーを行い、現在通信中の地上局に別のUAVをハンドオーバーできるようにするためである。
条件3)UAVが現在通信中の地上局の現在の受信電力Pcbsが、しきい値Phoを下回る場合。
この条件3は、受信電力Pcbsが、所要受信電力Preq(<Pho)より小さくなる前にハンドオーバーするためである。通常は、通信開始しきい値Pcomm≧所要受信電力Preqである。
条件4)UAVの一定時間後の予測伝搬損が、現在通信中の地上局よりも小さい地上局が少なくとも1つ存在する場合。
この条件4は、ハンドオーバーにより受信電力が高くなると期待されるためである。
これらの条件のいずれかが満たされると、条件に該当する地上局においては、HOをするために、当該地上局の追尾対象を更新し(S444)、HO準備開始を指示することになる。
すなわち、システムサーバ300は、ハンドオーバー準備開始条件が満たされると判断してから一定時間(地上局のアンテナ追尾対象を変更してから、追尾が行われるまでに必要な時間)を経過したら、ハンドオーバー先で所要受信電力が得られるかどうかを確認し(S406)、所要受信電力が得られるときは、ハンドオーバー処理を該当する地上局が開始する(S408)。
また、上述した条件3および条件4により、ハンドオーバー準備を開始した場合は、以下の要領でハンドオーバー先を決定する(S444)。なお、該当する候補が見つからない場合は、HO処理は、ペンディングとする(S412)。
i)現在通信中の地上局以外で、通信やハンドオーバー処理を行っていない地上局であって、予測伝搬損が最小のものをハンドオーバー先に選択する。
ii)上記i)に該当する地上局が無い場合は,他のUAV1機と通信中で,かつハンドオーバー処理をしていない地上局があれば、これを選択する。
そして、接続局制御部312は、ハンドオーバーに成功した場合は、ハンドオーバーする前の通信地上局の追尾対象からハンドオーバーに成功したUAVを削除することになる(S408)。
また、接続局制御部312は、上述のとおり、タイムアウト時間内にハンドオーバー処理が成功しなかった場合(S410でY)、あるいは、適切なハンドオーバー先を選定できなかった場合(S422でN)、HO処理を取りやめるか(S412)、HO準備を取りやめることになる(S428)。
再び、図6にもどって、続いて、接続局制御部312は、いずれの地上局とも通信中でないUAVが存在するかを判断する(S460)。
接続局制御部312は、いずれの地上局とも通信中でないUAVが存在する場合(S460でY)、たとえば、S444と同様にして、「通信やハンドオーバー処理を行っていない地上局であって、予測伝搬損が最小の地上局」あるいは「他のUAV1機と通信中で,かつハンドオーバー処理をしていない地上局」を選択して、通信先を決定できる場合は(S462でY)、該当する地上局の追尾対象を更新して(S464)、未通信であったUAVと決定された地上局との間での通信の開始を指示する(S466)。
さらに、接続局制御部312は、地上局の中に、通信もハンドオーバー処理もいずれも実行していない地上局がある場合(S480でY)、いずれかのUAVについて、予測される伝搬損により一定時間後の予測受信電力Ppred が所定の値以上となる地上局については、この地上局の追尾対象に、当該UAVを加える。ただし、実際に通信を開始するのは、HO条件が満たされると判断された後である。
接続局制御部312による処理の実行でステップS480でNとなった場合、あるいは、ステップS482の処理が終わった場合は、後述するように、追尾方向制御部306が、各地上局のアンテナの追尾方向の制御の処理を実行し(S484)、処理は、図5のステップS101に復帰する。
(UAVへの追尾方向制御)
以下では、図6のステップS484において、システムサーバ300の追尾方向制御部306が、追尾方向制御や接続局の制御を行う処理について説明する。
ハイブリッド慣性航法装置126にて計測されたテレメトリデータは、地上局200へ無線インタフェースにて伝送された後、システムサーバ300に集約される。
このため、システムサーバ300が収集したテレメトリデータは測定が完了してから多少なり時間が経過したものである。また、地上局アンテナの追尾方向を決定してから制御が反映されて指向方向が静定するまでにも数100msオーダの時間を要する。そこで、上述のとおり、UAV追尾の処理では、所定の時間τが経過した後の各UAVの位置を線形予測し、その位置において所要の受信電力が得られるよう、地上局アンテナの追尾方向を決定する。
以下に説明するように、本実施の形態では、主として、各地上局が状況に応じて、最大2機のUAVを追尾するものとする。
広いエリアにおいて複数の地上局アンテナにより複数のUAVを追尾する場合、各地上局は基本的に自身の近傍に位置するUAVを追尾するのが適切である。ただし、付近に障害物が存在してUAVと地上局との間に遮蔽が発生する場合は、遮蔽の影響が小さい地上局がUAVを追尾することが望ましい。
[2機のUAVの同時追尾ための方向制御]
図9は、2機のUAVに対する追尾方向制御を行うアルゴリズムを説明するためのフローチャートである。
接続局制御部312は、上述のとおり、各地上局は、基本的に、予測される伝搬損に基づいて、条件を満たすUAVを追尾対象となるように接続地上局を選択するものとし、追尾方向制御部306は、当該UAVの位置する方向を追尾方向とする。
各地上局においては、上述のとおり、原則として、それぞれUAV側指向性利得を考慮した伝搬損が最小となるUAVを第1追尾対象に、2番目に最小となるUAVを第2追尾対象に設定する。
以下、図9の前提として、接続局制御部312は、図7に示した通り、各地上局200での第1追尾対象と第2追尾対象のUAVについて、予測される伝搬損Hmnハットにより、アンテナの追尾可能範囲におけるτ経過後の受信電力を予測している(S508)。
そこで、図9のステップS522において、追尾方向制御部306は、各追尾方向における予測受信電力と次式で示される受信電力しきい値pthre[dBm]の比較を行う。
ここで、preq[dBm]は所要受信電力、pmrgn[dB]は所要受信電力に対するマージン量である。
本アルゴリズムでは以下の3種類のケースに対し、それぞれ下記の方法により、追尾方向制御部306が追尾方向を決定する。
ケースA:第1追尾対象UAVの予測受信電力が受信電力しきい値以上となる追尾方向が存在しない場合(S522でN)
図10は、ケースAの場合の予想受信電力を示す概念図である。
第1追尾対象UAVの予測受信電力が最大となる方向を追尾方向に設定する(S530)。
ケースB:第1追尾対象UAVの予測受信電力が受信電力しきい値以上となる追尾方向が存在するが、そこでは第2追尾対象UAVの予測受信電力が受信電力しきい値に満たない場合(S524で1機の場合)
図11は、ケースBの場合の予想受信電力を示す概念図である。
第1追尾対象UAVの予測受信電力が受信電力しきい値pthre以上となる追尾方向の中で、第2追尾対象UAVの予測受信電力が最大となる方向を追尾方向に設定する(S532)。
ケースC:両追尾対象UAVの受信電力が同時に受信電力しきい値以上となる追尾方向が存在する場合(S524で2機の場合)
図12は、ケースCの場合の予想受信電力を示す概念図である。
両追尾対象UAVの予測受信電力が同時に受信電力しきい値pthre以上となる追尾方向の中で、第1追尾対象UAVの予測受信電力と第2追尾対象UAVの予測受信電力の小さい方の値が最大となる方向を追尾方向に設定する(S534)。
以上のように制御することで、可能なかぎり、各地上局200が、2機の無人航空機100を同時に追尾している状態が実現できるので、ハンドオーバーが必要となったときには、ハンドオーバー元の地上局で追尾している無人航空機100を、ハンドオーバー先の地上局でも追尾している状態となっている確率を高めることができ、効率的なハンドオーバーを実現することができる。しかも、ハンドオーバー元とハンドオーバー先で受信電力が所定のしきい値以上に維持される確率も高めることができるので、所要受信電力が確保できない時間を小さく抑えることが可能である。
[計算機シミュレーション]
以下では、大型建造物の周囲を複数のUAVが周回飛行する状況を想定し、提案UAV追尾アルゴリズム適用時における所要受信電力に対するアウテージ率を評価する。
(シミュレーション諸元)
図13は、シミュレーションにおける建造物と地上局(BS)の位置関係、ならびにUAVの飛行経路を示す図である。
建造物は縦横各400m、高さ50mの立方体とし、建造物の中央部を中心とした半径320mの円周上を、3機のUAVが時速60kmで時計回りに一定高度で周回するか、あるいは、3機のうち1機のみは、ホバリングするものとした。各UAVの高度は、それぞれ、10m、50m、90mとする。
また、建造物の中央部から四隅の方向にそれぞれ500m離れた場所に4台の地上局BS1〜BS4が設置される。各地上局には追尾アンテナが1台設けられるとし、追尾アンテナの指向性パタンは追尾方向を中心として360°対称とした。
図14は、追尾アンテナにおける追尾方向との間の角度差に対する指向性パタンを示す図である。
なお、本指向性パタンは直径75cmのパラボラアンテナにおいて、2.442GHzの信号を送受信することを想定して解析的に求めたものであり、メインローブの半値幅は約9°である。また、各UAVには等方性アンテナが1台搭載されるとした。
図15は、シミュレーション諸元を示す図である。
各UAVは、自身の位置および速度を100ms毎に計測し、地上局へ送信するとした。ここで、計測誤差および計測データのロストは発生しないものとし、計測データの伝送遅延は50msとした。
地上局の追尾方向制御は500ms毎に行われるとし、追尾アンテナの制定時間に関する以下の公知文献に開示の検討結果に基づき、算出した追尾方向は250ms後に追尾アンテナに反映されるとした。
公知文献1:上羽正純、竹内僚太郎、樋口健、“複数無人航空機による同時観測を可能とする高精度・高応答追尾アンテナ制御技術の検討、”信学技報 Vol.114 No.449 SAT2014-52 pp.7-11, Feb.2015.
なお、追尾方向制御に際しては上記追尾制御遅延を踏まえ、取得したUAVの位置および速度情報から250ms後のUAV位置を一次予測により求めた。
アプリケーションデータ伝送における所要受信電力は-70dBmとした。これは、MAC効率が60%程度のIEEE802.11g無線LANにおいて、1周波数チャネルにおいて8−10MHz程度のビットレートを2ストリーム収容するのに必要な物理層伝送レート36Mb/sに対する規格上の最低要求感度に相当する。
シャドウイングの算出に必要な受信電力は無線LANの受信フレームから得ることを想定した。なお、無線LANフレームの最小感度は-86dBm(IEEE802.11g無線LANにおける物理層伝送レート6Mb/sの最低要求感度から数dB低い値)とし、受信電力がこれより低い場合は受信電力値を-120dBmとした。
伝搬路は自由空間伝搬とし、簡単のため建造物や大地による反射および回折は発生しないとした。また、UAVが送信する無線LAN信号の中心周波数は2.442GHzとし、UAVと地上局との間が建造物により見通し外となる場合は十分に大きなシャドウイングを受けるとした。
(シミュレーション結果)
以下のUAV追尾アルゴリズムについて、所要受信電力に関するアウテージ率を評価した。
1)地上局が常に最も近接したUAVを追尾する場合(ホバリングなし、1機のみホバリング)
2)上述したような本実施の形態による追尾を実行した場合(実施の形態の手法)(ホバリングなし、1機のみホバリング)
図16は、3機とも同方向に移動する場合に、UAV間の初期飛行角度差と所要受信電力のアウテージ率を各手法で比較したシミュレーション結果を示す図である。
図17は、3機のうち1機が逆方向に移動する場合に、UAV間の初期飛行角度差と所要受信電力のアウテージ率を各手法で比較したシミュレーション結果を示す図である。
図16および図17のいずれの場合も、ほとんどのUAV間の初期飛行角度差において、実施の形態の手法の方が、アウテージ率が低くなり、目標値を下回る範囲も広い。
また、1機がホバリングする場合は、追い越しが発生することになるが、その場合でも、実施の形態の手法の方が、アウテージ率は、安定に低く維持できることがわかる。
さらに、図17においては、逆方向にUAVが移動するために、地上局のスワッピングが発生することになり、実施の形態の手法の方が、アウテージ率は、安定に低く維持できる。
以上のように、本実施の形態の追尾アンテナシステムおよび追尾アンテナ装置によれば、複数の地上局による複数の飛翔体に対する追尾において、効率的かつ安定なハンドオーバーを実行することが可能である。
今回開示された実施の形態は、本発明を具体的に実施するための構成の例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲および均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。
10.1〜10.M 指向性アンテナ、30.1〜30.M 駆動部、100.1,100.2 無人航空機、120 アンテナ、200.1〜200.M 地上局、122 無線部、124 切替装置、126 ハイブリッド慣性航法装置、128 搭載コンピュータ、130 撮像装置、300 システムサーバ、302 通信I/F、304 位置・姿勢情報取得部、306 追尾方向制御部、310 信号強度情報取得部、312 接続局制御部、320 撮像データ取得部、322 記憶装置。

Claims (9)

  1. 追尾アンテナシステムであって、
    複数の飛翔体を備え、
    各前記複数の飛翔体は、
    自身の位置、速度および姿勢を把握するための測位手段と、
    無線信号を送受信可能な機体アンテナとを含み、
    前記複数の飛翔体との間で無線通信を行うための複数の地上局を備え、
    前記複数の地上局の各々は、
    通信指向性を変更可能な追尾アンテナと、
    追尾制御指示に応じて、前記複数の飛翔体のうちの対応する飛翔体の方向に前記追尾アンテナの通信指向性を駆動する指向性制御手段と、
    前記飛翔体からの受信信号強度を計測する信号強度計測手段とを含み、
    前記追尾アンテナは、前記複数の飛翔体のうちから第1および第2の追尾対象を設定することが可能であり、
    前記複数の地上局の各々が接続する飛翔体を選択するとともに、前記複数の地上局の通信指向性を制御するための追尾制御指示を生成するための制御局をさらに備え、
    前記制御局は、各前記飛翔体の位置、速度および姿勢の情報ならびに前記受信信号強度の情報に基づいて、前記複数の飛翔体の移動経路の予測から、前記飛翔体の特定の組について通信中の前記地上局において、通信相手となる地上局の交代を要する条件が満たされると判断した場合、交代先の地上局の前記第2の追尾対象に、交代が予測される飛翔体を加えるように、前記追尾制御信号を前記地上局に対して出力する、追尾アンテナシステム。
  2. 前記制御局は、
    前記各前記飛翔体の位置、速度および姿勢の情報に基づいて、所定時間後の前記飛翔体の位置を推定する飛翔体位置推定手段と、
    前記推定された飛翔体の位置と前記受信信号強度の情報に基づいて、各前記地上局において、前記飛翔体についての伝搬損を推定し、推定された伝搬損が最小となる飛翔体を第1追尾対象に、2番目に最小となる飛翔体を第2追尾対象として選択する選択手段とを含む、請求項1記載の追尾アンテナシステム。
  3. 前記通信相手となる地上局の交代を要する条件は、
    前記複数の地上局のうち、隣接する第1の地上局および第2の地上局が、それぞれ異なる第1の飛翔体および第2の飛翔体と通信中であって、
    前記第1および第2の飛翔体が、それぞれ、前記第1の地上局および第2の地上局のうち通信中でない方の地上局に接近中であることである、請求項1または2記載の追尾アンテナシステム。
  4. 前記通信相手となる地上局の交代を要する条件は、
    前記複数の地上局のうち、隣接する第1の地上局および第2の地上局が、それぞれ異なる第1の飛翔体および第2の飛翔体と通信中であって、
    前記第1および第2の飛翔体が、それぞれ、前記第1の地上局および第2の地上局のうちの一方の地上局に接近中で、前記第1および第2の飛翔体のうち当該一方の地上局と通信中の飛翔体が、通信中でない飛翔体に追い抜かれることである、請求項1または2記載の追尾アンテナシステム。
  5. 前記制御局は、推定された前記伝搬損に基づいて、前記所定時間後の受信電力を予測する受信電力予測手段をさらに備え、
    前記通信相手となる地上局の交代を要する条件は、さらに、前記予測された受信電力が、所定の通信開始しきい値を超えることを含む、請求項3または4記載の追尾アンテナシステム。
  6. 前記制御局は、推定された前記伝搬損に基づいて、前記所定時間後の受信電力を予測する受信電力予測手段をさらに備え、
    前記通信相手となる地上局の交代を要する条件は、前記飛翔体が、現在通信中の地上局以外であって通信やハンドオーバ処理を行っていない地上局に接近中で、かつ一定時間後の予測受信電力が所定の通信開始しきい値以上であることである、請求項1または2記載の追尾アンテナシステム。
  7. 前記通信相手となる地上局の交代を要する条件は、前記飛翔体が現在通信中の地上局の現在の受信電力が、所定のしきい値を下回ることである、請求項1または2記載の追尾アンテナシステム。
  8. 前記通信相手となる地上局の交代を要する条件は、前記飛翔体の一定時間後の予測伝搬損が、現在通信中の地上局よりも小さい地上局が少なくとも1つ存在することである、請求項2記載の追尾アンテナシステム。
  9. 複数の飛翔体に対して無線通信のための追尾を行うための追尾アンテナ装置であって、各前記複数の飛翔体は、自身の位置、速度および姿勢を把握するための測位手段と、無線信号を送受信可能な機体アンテナとを含み、
    通信指向性を変更可能な追尾アンテナと、
    前記飛翔体からの受信信号強度を計測する信号強度計測手段と、
    前記複数の飛翔体のうちの対応する飛翔体の方向に通信指向性を駆動する指向性制御手段とを備え、
    前記追尾アンテナは、前記複数の飛翔体のうちから第1および第2の追尾対象を設定することが可能であり、
    前記指向性制御手段は、各前記飛翔体の位置、速度および姿勢の情報ならびに前記受信信号強度の情報に基づいて、前記複数の飛翔体の移動経路の予測から、前記飛翔体の特定の組について通信中の前記地上局において、通信相手となる地上局の交代を要する条件が満たされると判断した場合、交代先の地上局の前記第2の追尾対象に、交代が予測される飛翔体を加えるように、前記通信指向性を制御する、追尾アンテナ装置。
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