JP2017173277A - 農薬汚染の分析用試料の調製方法 - Google Patents

農薬汚染の分析用試料の調製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】農薬による青果等の物品の表面汚染を分析するに当り、簡単な操作で信頼性の高い分析結果を得る。【解決手段】物品の表面から農薬を拭い取った採取体を分散媒に溶解し、当該分散媒において農薬が分散した懸濁液を調製する。この懸濁液に分散している農薬を捕捉可能なフイルタを用いて懸濁液をろ過し、農薬を捕集したフイルタの赤外分光スペクトルを測定する。この測定結果を予め作成しておいた定量モデルに適用し、物品から拭い取った農薬を定量する。【選択図】図1

Description

本発明は、農薬汚染の分析用試料の調製方法、特に、農薬による物品の表面汚染を分析するために、物品から農薬を分離して分析用試料を調製するための方法に関する。本願において農薬とは、樹木および農林産物を含む農作物または農用地等へ適用される各種薬剤等、例えば、殺虫剤、殺菌剤、防かび剤、除草剤、殺鼠剤、忌避剤、誘引剤、植物生長調節剤、補助剤、展着剤および農薬肥料等であって、典型的には農薬取締法の対象となるものをいう。
農薬による青果の表面汚染を分析するための方法として、主に、青果の表面に付着した農薬を直接的に分析する方法と、青果の表面に付着した農薬を溶剤に移して農薬溶液を調製し、その農薬溶液を分析する方法とが知られている。
前者の直接的に分析する方法として、例えば特許文献1は、青果の表面での赤外線の反射光から変換される測定スペクトルを調べ、その情報に基づいて農薬による青果の表面汚染を分析する方法を開示している。しかし、この方法は、赤外線の反射光を利用することから、青果の表面状態によって反射光が不安定になり、分析結果の信頼性が損なわれることがある。例えば、レタスや白菜等の葉菜類や蜜柑等の柑橘類は、表面に葉脈や微妙な凹凸を有することから反射光が不安定になり、分析結果の信頼性を欠くことがある。
一方、後者の農薬溶液を調製して分析する方法として、例えば特許文献2に記載の方法が知られている。この方法は、ガラス製フイルタを敷いた容器に農薬溶液を入れて溶剤を乾燥または濃縮し、農薬をフイルタに付着させる。そして、そのフイルタの近赤外線スペクトルを測定し、当該近赤外線スペクトルに基づいて農薬溶液に含まれる農薬を分析する。しかし、この方法は、容器に入れた農薬溶液から溶剤を除去する必要があることから操作が煩雑であり、農薬の分析に長時間を要する。
特開2007−139639号公報 特開2007−263883号公報
本発明は、農薬による青果等の物品の表面汚染を分析するに当り、簡単な操作で信頼性の高い分析結果が得られるようにするものである。
本発明は、農薬による物品の表面汚染を分析するために、物品から農薬を分離して分析用試料を調製するための方法に関するものである。この調製方法は、農薬を物品から分散媒へ移し、当該分散媒中に農薬が分散した懸濁液を調製する工程を含む。
この調製方法では、通常、分散媒として親水性のものまたは疎水性のものを用いる。
この調製方法の一形態では、農薬を拭取り可能な採取体を物品の表面に適用することで物品の表面の少なくとも一部を拭い、物品に適用した採取体を分散媒に溶解することで懸濁液を調製する。
また、この調製方法の他の一形態では、分散媒中に物品を浸漬することで懸濁液を調製する。
他の観点に係る本発明は、本発明に係る農薬汚染の分析用試料の調製方法により得られた懸濁液に含まれる農薬を分析するための方法に関するものである。この分析方法は、懸濁液に分散している農薬を捕集可能なフイルタを用いて懸濁液をろ過する工程と、フイルタに捕集された農薬を分析する工程とを含む。
この分析方法では、例えば、農薬を捕集したフイルタに対して赤外分光法を適用することで農薬を分析する。
本発明に係る分析用試料の調製方法により調製された懸濁液は、分散した農薬を分離可能であるため、農薬の分析用試料として用いることができる。
本発明に係る農薬の分析方法は、本発明の調製方法により得られた懸濁液をフイルタを用いてろ過し、フイルタに捕集された農薬を分析するため、農薬による物品の表面汚染についての信頼性の高い分析結果を得ることができる。
本発明の実施の一形態に係る農薬の分析方法において用いられるろ過器具の縦断面図。 実験例2において作成したアセタミプリドのPLS法での定量モデルのグラフ。
[農薬汚染の分析用試料の調製方法]
本発明は、農薬による物品の表面汚染を分析するために、物品から農薬を分離して分析用試料を調製するための方法に関するものである。本発明の調製方法の適用対象となる物品は、農作物、典型的には葉菜類や茎菜類等の各種の野菜および仁果類や柑橘類等の各種の果実など、種類が限定されない青果であって、例えば、出荷時のものや輸入時のもの等である。また、各種の農耕器具類や青果の搬送、輸送において用いられる篭その他の容器類も本発明の調製方法の適用対象となる物品となり得る。
さらに、最近は、食品の安全への関心の高まりに従って農薬の使用を抑えた有機栽培が盛んである。有機栽培農場は、近隣の農場において散布等された農薬による作物や土壌の汚染(ドリフトと呼ばれる。)の程度を判定するためにシート状または板状の部材を配置し、その汚染を評価することがあるが、本発明の調製方法は、ドリフトの評価のために用いられる部材の農薬汚染を判定するための分析用試料を調製するために用いることもできる。
本発明の調製方法では、物品の表面に付着している農薬を分散媒へ移し、当該分散媒中に農薬が分散した懸濁液を調製する。
ここで用いられる分散媒は、物品の表面から移された農薬を実質的に溶解せず、分散させることができるものである。農薬としては多種多様のものが存在するが、一般には水溶性のものと疎水性のものとに分類することができる。そこで、物品の表面に付着している農薬であって、分析対象となるものが水溶性の場合は疎水性の分散媒が用いられ、逆に分析対象となる農薬が疎水性の場合は親水性の分散媒が用いられる。
ここで用いられる疎水性の分散媒は、水溶性の農薬を実質的に溶解しないものであればよく、通常は疎水性の有機溶媒である。疎水性の有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカンおよびイソオクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロオクタンおよびシクロヘキセン等の脂環式炭化水素類、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、トリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレン等の有機塩素系化合物、ジメチルエーテルおよびジエチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチルおよび酢酸ブチル等のエステル類、並びに、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン類等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いられてもよいし、二種以上のものの混合溶媒であってもよい。
親水性の分散媒は、疎水性の農薬を実質的に溶解しないものであればよく、通常は水、好ましくはイオン交換水、蒸留水または純水などの精製水である。分散媒として用いられる水は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、塩化カルシウム若しくは硫酸ナトリウム等の塩が溶解した塩水であってもよく、また、各種の弱酸とその塩とが溶解した緩衝液、例えば、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、トリス緩衝液若しくは酒石酸緩衝液等であってもよい。また、親水性の分散媒として、親水性の有機溶媒、例えば、メタノールやエタノール等のアルコール類を用いることもできる。親水性の有機溶媒は、二種以上のものの混合溶媒であってもよい。
分散媒は、物品の表面から移された農薬を実質的に溶解せず、分散させることができるという条件を満足するものであれば、両親媒性のもの、例えば、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、プロパノール若しくはテトラヒドロフラン等であってもよい。また、このような両親媒性の分散媒は、上記条件を損なわない限りにおいて、上述の疎水性の分散媒または親水性の分散媒に対して混合して用いることもできる。
物品から分散媒へ農薬を移して懸濁液を調製するための操作方法としては、例えば、農薬を拭取り可能な採取体を物品の表面に適用することで当該表面を拭い、その採取体を分散媒に溶解する操作を採用することができる。この際、物品表面の全体を採取体により拭ってもよいし、物品表面の一部のみを採取体により拭ってもよい。
ここで利用可能な採取体は、使用する分散媒に溶解可能なものである。すなわち、物品の表面から移す農薬が疎水性のものの場合、親水性の分散媒を用いることから、当該親水性の分散媒に溶解可能な採取体を用いる。一方、物品の表面から移す農薬が水溶性のものの場合、疎水性の分散媒を用いることから、当該疎水性の分散媒に溶解可能な採取体を用いる。
親水性の分散媒に溶解可能な採取体を形成する材料としては、例えば、ポリビニルアルコール系等の水溶性繊維、アクリル酸系若しくはポリエステル系等の水溶性樹脂、塩化ナトリウム、臭化カリウム、硫酸ナトリウム若しくは硫酸マグネシウム等の水溶性無機塩、アスコルビン酸若しくはクエン酸等の有機酸類、システイン等のアミノ酸またはグルコース若しくはセロビオース等の糖類等を用いることができる。
疎水性の分散媒に溶解可能な採取体を形成する材料としては、例えば、チクル、エステルガム、ポリ酢酸ビニル若しくはポリイソブチレンなどのガム材料、または、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル若しくはニトロセルロース等の非水溶性の樹脂材料を用いることができる。
採取体は、通常、物品の表面から農薬を拭取り可能な形態のものが用いられる。例えば、上述の材料を用いて形成されたシート状、鞘状、ペレット状、粘着テープ状または粘土状のものが用いられる。シート状または鞘状の採取体は、通常、水溶性繊維、水溶性樹脂または非水溶性の樹脂材料を用いることで形成することができる。ペレット状のものは、通常、水溶性無機塩、有機酸類または糖類等の加圧成型により形成することができる。粘着テープ状のものは、例えば、水溶性繊維を用いて形成した基材上に水溶性樹脂からなる糊層を配置することで形成することができる。粘土状のものは、通常、ガム材料を用いることで形成することができる。
採取体を物品の表面に適用し、当該表面を拭う作業においては、適当な治具を用いることができる。シート状、鞘状またはペレット状の採取体は、例えば、ガラス棒やガラス管のような棒状の治具の先端に装着し、その治具を操作することで物品の表面を採取体により拭うと、当該表面に付着している農薬を採取することができる。シート状またはペレット状の採取体は、通常、適当な大きさに裁断または分割して用いられる。鞘状の採取体は、いわゆる指サック状に形成すると、作業者の指に装着することができ、その状態で物品の表面を拭うこともできる。粘着テープ状の採取体は、物品の表面に糊層側を圧着した後に引き剥がすことで、当該表面に付着している農薬を拭い取ることができる。粘土状の採取体は、物品の表面に対して圧着または擦り付ける操作を繰り返すことで、当該表面に付着している農薬を拭い取ることができる。
水溶性繊維、特にポリビニルアルコール系の水溶性繊維を材料とする採取体は、水分の多い物品、例えばレタスのような青果に対して用いると、物品の表面を僅かに拭っただけで水分の影響により強度が低下し、物品上で四分五裂状態になることが多い。このため、水溶性繊維を材料とする採取体は、水分の多い物品に対して適用する場合、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、塩化カルシウム若しくは硫酸ナトリウム等の塩が溶解した塩水、または、各種の弱酸とその塩とが溶解した緩衝液、例えば、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、トリス緩衝液若しくは酒石酸緩衝液等に浸漬してから使用するのが好ましい。このようにすると、水分の影響による採取体の強度低下が抑えられ、物品の表面を安定に拭うことができる。
採取体を用いた懸濁液の調製では、物品の表面に適用した採取体を分散媒中に投入して攪拌し、採取体を溶解させる。これにより、採取体により採取された農薬が分散媒中に分散し、目的の懸濁液が得られる。
物品から分散媒へ農薬を移して懸濁液を調製するための他の操作方法として、分散媒中に物品を浸漬する操作を採用することができる。この場合、分散媒を振とうしたり、分散媒に対して超音波を照射したりすることで、浸漬した物品の表面から分散媒への農薬の移動を促進させることができる。この操作方法の場合、浸漬した物品を分散媒から取り出すと、目的の懸濁液が得られる。
物品から分散媒へ農薬を移して懸濁液を調製するためのさらに他の操作方法として、物品の表面から適当な器具を用いて農薬を掻き取ったり、或いは、分散媒に難溶の材料からなる採取体を用いて物品の表面から農薬を拭き取ったりし、掻き取られた農薬または農薬を拭き取った採取体を分散媒に投入して振とうしたり、或いは、超音波を照射したりすることで分散媒に農薬を分散させる操作を採用することもできる。
本発明の調製方法により得られた懸濁液は、通常、以下に説明する農薬の分析方法により、農薬による物品の表面汚染を分析するための分析用試料として用いられる。
[農薬の分析方法]
本発明の調製方法により得られた懸濁液、すなわち分析用試料に含まれる農薬を分析する場合は、先ず、懸濁液をろ過し、農薬と分散媒とを分離する。
図1を参照して、懸濁液のろ過のために用いられるろ過器具の一例を説明する。図1において、ろ過器具1は、一端(図の下端)がフイルタ部材3により閉鎖され、かつ、他端が開放されたガラス製で円筒状のチューブ2と、分散媒に対して安定な樹脂材料からなる、両端が開放した筒状のキャップ4とを備えている。
チューブ2の大きさは、特に限定されるものではないが、後記する農薬の分析操作において赤外分光法を採用する場合、内径が0.5〜20.0mmのものが好ましく、3.0〜10.0mmのものがより好ましい。
フイルタ部材3は、分散媒を通過させることのできる微孔を全体に有するろ過フイルムであり、チューブ2の上記一端から側面にかけて密着するように、かつ、チューブ2から取り外しできるように装着されている。フイルタ部材3は、分散媒を円滑に通過させるとともに、懸濁液に分散する農薬を捕捉して分散媒から分離可能なもの、通常は孔径が0.01〜5μmのもの、好ましくは0.05〜1μmのものであれば、種々の材料からなるものを用いることができる。
但し、フイルタ部材3に捕集された農薬を後記する赤外分光法により分析する場合、フイルタ部材3は、赤外分光法を適用したときに吸収ピークが単純な素材または少ない素材、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂またはポリテトラフルオロエチレン樹脂等からなるものを用いるのが好ましい。この場合、赤外分光法を適用したときに吸収される赤外線を抑え、それによって赤外分光法の感度を高めることができるようにするため、フイルタ部材3は、厚さが1〜100μm程度の薄膜状のものが好ましい。フイルタ部材3の厚さは、50μm以下であればより好ましく、30μm以下であれば特に好ましい。
キャップ4は、チューブ2のフイルタ部材3側の端部に対して着脱可能に装着されており、チューブ2に対して装着された状態において、フイルタ部材3を安定に保持している。
ろ過器具1を用いて懸濁液をろ過するときは、チューブ2内に上端から懸濁液を注入し、フイルタ部材3により懸濁液をろ過する。この際、例えば、チューブ2の上端に懸濁液を貯えたガラス製等のリザーバを装着し、このリザーバからチューブ2内へ懸濁液を注入することもできる。懸濁液は、その自重によりフイルタ部材3を通過させることができるが、キャップ4の下端に吸引装置を装着することで吸引しながらろ過することもでき、或いは、リザーバ側に加圧装置を装着し、加圧しながらろ過することもできる。
懸濁液のろ過により、懸濁液に分散している農薬はフイルタ部材3により捕捉、捕集され、採取体を溶解した分散媒はフイルタ部材3を通過してキャップ4から排出される。この結果、懸濁液に含まれる農薬は、採取体を溶解した分散媒から分離される。
次に、フイルタ部材3に捕集された農薬を分析する。捕集された農薬は、溶媒に溶解して溶液化等することで機器分析を含む種々の分析手法により分析することができるが、農薬を捕集したフイルタ部材3に対して光学的方法を適用することで分析することもできる。
例えば、フイルタ部材3として上述のような赤外分光法に適したものを用いた場合、フイルタ部材3に対して直接に赤外分光法を適用することで捕集された農薬を分析することができる。フイルタ部材3に対して適用する赤外分光法は、分散型分光光度計およびフーリエ変換型分光光度計(FT−IR)のいずれを用いたものであってもよいが、通常は農薬の定性分析および定量分析により適したFT−IRを用いるのが好ましい。FT−IRによる場合、透過法またはATR法を採用することができる。
透過法は、フイルタ部材3のろ過部分(すなわち、農薬を捕集した部分。)に対して干渉波を透過させる方法であり、簡易かつ迅速に測定対象物質の赤外吸収スペクトルを得ることができる。この場合、例えば、チューブ2の内径と略同径の孔を形成した厚紙等の台紙を用意し、この台紙に対してチューブ2から取り外したフイルタ部材3を皺にならないように貼り付けて試料を作成する。この際、厚紙に設けた孔の部分とフイルタ部材3のろ過部分(すなわち、農薬を捕集した部分。)とを一致させる。そして、この試料をFT−IRのアタッチメントに装着し、赤外吸収スペクトルを測定する。また、透過法による場合、FT−IRの測定位置にチューブ2を配置することが可能であれば、フイルタ部材3は、チューブ2に装着したままの状態で赤外吸収スペクトルを測定することもできる。
一方、ATR法は、プリズムにフイルタ部材3を密着させてプリズム側から赤外線を照射し、フイルタ部材3の表面に赤外光を潜り込ませて全反射させる方法であり、赤外吸収スペクトルにおいてフイルタ部材3の素材の影響が発生しにくく、測定対象物質自体についてのノイズの少ないピークが得られるため、透過法よりも高感度の赤外吸収スペクトルを得ることができる。ATR法は、単反射型および多重反射型のいずれであってもよい。ATR法による場合、透過法の場合と同様にフイルタ部材3を台紙に貼り付けた試料を作成し、この試料をプリズムに密着させて赤外吸収スペクトルを測定する。
透過法およびATR法のいずれの場合においても、400〜4,000cm−1の波数領域の赤外吸収スペクトルを測定するのが好ましい。
FT−IRにより測定した赤外吸収スペクトルに基づく農薬の定量分析では、通常、赤外吸収スペクトルから分析対象となる農薬に固有の波数のピークを判別し、当該ピークの面積または高さを既知濃度の標準液について予め測定した赤外吸収スペクトルにおける該当ピークの面積または高さと比較することで、分析対象の農薬の濃度を求めることができる。
また、赤外吸収スペクトルが農薬以外の夾雑物のスペクトルを含み、当該夾雑物のスペクトルが分析対象の農薬の定量に影響する可能性がある場合、分析対象の農薬の定量分析は、部分最小二乗法(PLS法)によるのが好ましい。この場合、分析対象の農薬を濃度段階に応じて希釈した試料を調製し、各濃度段階の試料について複数回FT−IRで赤外吸収スペクトルを測定する。そして、測定した赤外吸収スペクトルから適切な波数領域を1〜4箇所選択し、部分最小二乗法により定量モデルを作成する。この際、微分等の前処理は、農薬種に応じて選択する。また、分析対象の農薬について作成した定量モデルは、他の農薬の影響等を確認し、必要に応じて適宜調整する。分析対象の農薬の濃度(mg/kg)は、測定した赤外吸収スペクトルから定量モデルに基づいて存在絶対量(μg)を求め、その値を物品の重量(kg)で除することで求めることができる。なお、物品が青果であり、当該青果に対して採取体を適用して農薬を拭き取る場合、青果の表面形状や農薬の浸透移行性の強弱によって採取体での拭取りによる農薬の回収率が青果種や農薬種の組み合わせに応じて異なることから、農薬の定量結果は、青果の種類に応じて農薬の拭取り率を勘案した係数を用いて補正されてもよい。
物品に付着している農薬を定量する場合であって、分析用試料の調製時に物品の表面の一部を採取体により拭ったときは、当該一部の表面積と物品の全表面積との関係から物品に付着している全農薬量(農薬濃度)を算出する必要がある。
農薬を捕集したフイルタ部材3に対して適用する、農薬の分析のための光学的方法としては、赤外分光法以外の方法を採用することもできる。例えば、フイルタ部材3に捕集された農薬をそれと反応可能な発光物質により処理し、農薬と発光物質との反応生成物の可視・紫外スペクトルを測定することで農薬の有無を判定したり、農薬を種類毎に定量したりすることもできる。
採取体により物品から拭い取られた農薬において分散媒に溶解し易い農薬種が含まれる場合、本発明の調製方法により得られる懸濁液は、分散媒に当該農薬種が溶解状態で含まれる。この場合は、ろ過後の分散媒、すなわちろ液も当該農薬種を分析するための試料として用いることができる。例えば、このろ液は、適宜精製、濃縮等の処理をした後、機器分析を含む種々の分析手法を適用することができ、それによって分散媒に溶解した農薬種を分析することができる。
[実験例]
[実験例1]
オレンジの表面にN,N’−エチレンビスジチオカーバメート系の農薬であるマンゼブを70μgずつ5箇所にスポット的に展着させた。オレンジの表面の各スポット毎にポリビニルアルコール系の水溶性繊維からなるシートを個別に適用し、当該シートにより各スポットのマンゼブを個別に拭取った。マンゼブを拭取った各シートについて、以下の要領で拭取ったマンゼブを定量した。
シートを注射塔に注入した2mLの純水中に投入し、注射塔を75℃で10分間加熱することでシートを溶解させ、純水中にマンゼブが分散した状態の懸濁液を調製した。そして、調製した懸濁液をポリテトラフルオロエチレン製のフイルタ(孔径0.1μm、厚さ30μm)によりろ過(マニホールドを用いた減圧ろ過)し、フイルタ上にマンゼブを捕集した。
フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光株式会社の型番「FT/IR−4100」)を用い、分解能4cm−1、積算回数18の条件でフイルタのろ過部分(マンゼブの捕集部分)の赤外吸収スペクトルを透過法により測定した。得られた赤外吸収スペクトルのデータを予め作成しておいたPLS法での定量モデルに適用し、フイルタに捕集されたマンゼブを定量した。
レモンについても同様の操作をし、フイルタに捕集されたマンゼブを定量した。結果を表1に示す。
Figure 2017173277
[実験例2]
ネオニコチノイド系の殺虫剤であるアセタミプリドをガラスに展着し、試験物品を作成した。スパーテルを用いて試験物品に展着されたアセタミプリド50μgを掻き取り、それを注射塔に注入した2mLのヘキサン中に投入することでヘキサン中にアセタミプリドが分散した状態の懸濁液を調製した。そして、調製した懸濁液をポリテトラフルオロエチレン製のフイルタ(孔径0.1μm、厚さ30μm)によりろ過(マニホールドを用いた減圧ろ過)し、フイルタ上にアセタミプリドを捕集した。
実験例1と同様にして、フイルタのろ過部分(アセタミプリドの捕集部分)の赤外吸収スペクトルを測定した。
試験物品に展着されたアセタミプリドを100μg、150μgおよび200μg掻き取った場合についても同様の操作をし、赤外吸収スペクトルを測定した。
赤外吸収スペクトルの測定結果に基づいてアセタミプリドのPLS法での定量モデルを作成した結果を表2および図2に示す。
Figure 2017173277
作成した定量モデルは、相関係数が0.956であり、また、直線性が確認された。
[実験例3]
マンゼブ、スピロジクロフェン(テトロン酸系の殺ダニ剤)、シエノピラフェン(ピラゾール系の殺ダニ剤)およびトルフェンピラド(ピラゾール系の殺虫剤)の各農薬成分濃度が5,000ppmになるよう純水と混合することで農薬製剤を調製し、その20μL(各農薬成分の合計量:100μg)を注射塔に入れた2mLの純水に加えて懸濁させて懸濁液を調製した。調製した懸濁液をポリテトラフルオロエチレン製のフイルタ(孔径0.1μm、厚さ30μm)によりろ過(マニホールドを用いた減圧ろ過)し、フイルタ上に各農薬成分を捕集した。
実験例1と同様にして、フイルタのろ過部分(農薬成分の捕集部分)の赤外吸収スペクトルを測定した。得られた赤外吸収スペクトルのデータを予め作成しておいた各農薬成分のPLS法定量モデルに適用し、フイルタに捕集された各農薬成分を個別に定量した。
農薬製剤に含まれる各農薬成分の量と各農薬成分の定量結果とを対比し、定量結果における他の農薬成分の影響を評価した。結果を表3に示す。また、各農薬成分のスペクトルを合成し、その観点からも定量結果における他の農薬成分の影響を評価した。結果を表4に示す。表3、4に示した数値は、各農薬成分について、全ての農薬成分の定量モデルを個別に適用することで求めた定量値(μg)である。
Figure 2017173277
Figure 2017173277
表3、4によると、各農薬成分の定量結果は、農薬製剤の調製において用いた量に近い値であり、他の農薬成分の影響が小さいことがわかる。

Claims (7)

  1. 農薬による物品の表面汚染を分析するために、前記物品から前記農薬を分離して分析用試料を調製するための方法であって、
    前記農薬を前記物品から分散媒へ移し、前記分散媒中に前記農薬が分散した懸濁液を調製する工程を含む、
    農薬汚染の分析用試料の調製方法。
  2. 前記分散媒として親水性のものを用いる、請求項1に記載の農薬汚染の分析用試料の調製方法。
  3. 前記分散媒として疎水性のものを用いる、請求項1に記載の農薬汚染の分析用試料の調製方法。
  4. 前記農薬を拭取り可能な採取体を前記物品の表面に適用することで前記表面の少なくとも一部を拭い、前記物品に適用した前記採取体を前記分散媒に溶解することで前記懸濁液を調製する、請求項1から3のいずれかに記載の農薬汚染の分析用試料の調製方法。
  5. 前記分散媒中に前記物品を浸漬することで前記懸濁液を調製する、請求項1から3のいずれかに記載の農薬汚染の分析用試料の調製方法。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の農薬汚染の分析用試料の調製方法により得られた懸濁液に含まれる農薬の分析方法であって、
    前記懸濁液に分散している前記農薬を捕集可能なフイルタを用いて前記懸濁液をろ過する工程と、
    前記フイルタに捕集された前記農薬を分析する工程と、
    を含む農薬の分析方法。
  7. 前記農薬を捕集した前記フイルタに対して赤外分光法を適用することで前記農薬を分析する、請求項6に記載の農薬汚染の分析方法。
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