JP2017172294A - 止水ゲートの漏水防止具、及びその投入方法 - Google Patents
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この調査では閉じた状態にある止水ゲートの下流側に調査員が入り込んで作業を行うが、閉じた止水ゲートと水路との間からの漏水量が多い場合には危険であり止水ゲート下流側に接近できないため、調査やメンテナンスが不可能となる。また、漏水量が多いこと自体がメンテナンスの必要性を意味しているため、止水ゲート調査、メンテナンスの前段階として応急的に漏水を停止するための作業が求められる。
止水ゲートからの漏水量が少ない場合には止水ゲート上流側に砂や土嚢を単純に投入して止水ゲートと水路底面との隙間を埋めるようにしているが、上方からの投入作業では土嚢等が漏水箇所にヒットにしくいために漏水を止めるまでに多量の土嚢等と、多大な投入手数が必要となる。また、漏水量が多い場合にはこの手法では対応し切れない。
特許文献2に係る「水門扉」には、扉体の一面に沿って水密ゴム板を進退自在に配置し、水密ゴム板を突出させた状態で閉扉することにより水密ゴム板が水路底面との間に変形しながら入り込んで止水する構成が開示されている。しかし、水密ゴム板の耐久性の低下、異物の介在による隙間形成、その他の事情により漏水が発生した場合の対処方法については一切開示されていない。
請求項2の発明では、前記錘は、袋体に土、又は/及び、砂を収容した土嚢であることを特徴とする。
請求項3の発明では、前記錘は、金属部材であることを特徴とする。
請求項4の発明では、前記止水シートは個々の前記錘に、又は隣接する2つの前記錘にまたがって固定されていることを特徴とする。
図1は本発明の一実施形態に係る漏水防止具を設置する対象としての可動式の止水ゲート(門扉)を備えた取水堰を下流側から見た概略構成図である。
取水堰(ダム)50は、例えば水路式発電所における貯水用に利用される。水路式発電では、河川の上流に設置した取水堰50に隣接した取水口60から取り入れた水を導水路から下流側に位置する図示しない発電所に導くことにより貯留水との間の落差を利用した発電を行う。
止水ゲート55は鉄鋼等の金属製であり、水中に長期間浸漬されていると水圧の影響、流木や岩石や砂利等の衝突、経年劣化等によりダメージや摩耗を起こして水路底面との間に隙間が形成されて漏水が発生する。
本発明に係る止水ゲートの漏水防止具(以下、漏水防止具、という)1は、漏水を起こしている止水ゲート下端と水路底面(水路内壁)との隙間に投入されることにより効果的に漏水を防止、低減することを可能とする手段である。
止水ゲート55の上方に設けた足場に位置する2人の作業員が吊り下げ手段30としてのロープの両端を保持して錘5を止水ゲートの上流側に投入することにより錘5を止水ゲート下端と水路底面との接触位置近傍に着底させる一方で、錘に固定された止水シート20が柔軟に変形しながら止水ゲートと水路内壁との間の漏水箇所(隙間)に吸引されてこれを塞ぐことにより漏水を阻止、或いは低減する。
土嚢6はある程度変形して狭い箇所に入り込んで漏水の原因となっている隙間を塞ぐ必要があるため、袋体6aの構成材料としては比較的柔軟性が求められる一方で、外力で容易に破損しない程度の耐久性と強度を要求される。一方で、袋体に土等を充填して充分な重量を確保しようとすると土嚢全体の柔軟性が損なわれて細かい隙間や穴からなる漏水箇所に変形しながら入り込んでこれを塞ぐことは困難となる。つまり、土嚢のみによって止水ゲートと水路との間の漏水箇所(隙間、穴)を閉塞することは不可能なのが現状である。また、土嚢の投入に際してその着底位置を漏水箇所に確実にヒットさせることが難しいことも土嚢のみによる漏水阻止を困難にしている事情の一つである。
但し、収容物6bが袋体の穴等から排出されることがないように微細な穴となるように素材を選定する。
袋体6a内には、収容物6bとして土、又は/及び、砂利を充填する。土としては、例えば、真砂土や粘土(例えば、赤土+オガクズ)を用いる。粘土は粒子が細かく高い粘着質を有するため、袋体の一部と共に漏水箇所に吸引されてこれを塞ぐ際に止水ゲートと水路との隙間に密着して入り込んで離脱し難くすることができる。
袋体6aは例えば図示のような細長い略流線形状としてもよいし、円筒状、球状等としてもよい。また、袋体の軸方向長を短くして、多数の短尺土嚢を連結するようにしてもよい。
本例では一本の線材31を用いて複数の土嚢を数珠状に連結しているが、土嚢間を格別の連結部材により連結する一方で、両端に位置する土嚢の端部にのみ夫々線材31を固定するようにしてもよい。
このように構成すれば線材に対して土嚢を着脱することが可能となり、任意の個数、サイズの土嚢6を線材31の任意の位置に配置することができる。つまり、止水ゲートの規模、或いは漏水の規模に応じて、線材31に対して取り付ける土嚢の個数および大きさ等を自在に設定できることとなる。
なお、図2(c)に示すように袋体6aの外面に線材を挿通する筒状の挿通部6dを設けてここに線材を挿通するようにしてもよい。このように構成すれば、袋体の構造を単純化することができる。
重量の異なる複数の土嚢を数珠状に連結する場合には、線材の長手方向中央部の土嚢よりも両サイドに位置する土嚢の重量を大きいものとするのが好ましい。このようにすることにより、線材の両端を保持して吊り下げたときに、線材の中央部が極端に垂れ下がることを防止して漏水防止具1全体をほぼ水平な姿勢とすることができる。このため、漏水防止具1を水中に投入する位置(着底位置)を微調整する際のコントロールがし易くなる。なお、ここで水平な姿勢というのは正確な意味での水平では無く、両端の土嚢よりも中央側が多少下降している場合を含む。
また、袋体6a内の収容物6bが長手方向に偏らないように袋体内を複数の小部屋に仕切るようにしても良い。
土嚢6は止水ゲートと水路底面との間に形成される隙間の上流側に近接して配置されることによりある程度の防水効果を発揮するが、土嚢間には土嚢が存在しないスペースが存在している。このスペースに相当する部位に漏水箇所が存在する場合には土嚢によって防水仕切れない。特に土嚢を投入する位置を漏水箇所に的確にヒットさせにくいことも土嚢による防水の限界をもたらしている。
つまり、土嚢だけの構成によって発揮し得る防水効果には限界がある。
本発明では、土嚢の袋体6aに一部を固定された薄肉の止水シート20の非固定部分が水中で自由に変形し流動(展開)することにより、土嚢によって閉塞し切れない漏水箇所(常に水流が形成されている)に吸引されてこれを塞ぎ易くなり、漏水を効果的に阻止することができる。
止水シート20としては、所要の肉厚を有した非透水性のビニルシート、樹脂シート、或いは、布製シートに非透水剤を含浸させた軽量なもの等々を使用することができるが、土嚢よりも高い柔軟性、変形性、流動性を有することにより、土嚢により塞ぎきれない狭い隙間に進入してこれを塞ぐことができる素材を選定する。
止水シートの形状は図示したように四角形でもよいし、円形、楕円形等々、任意の形状、面積を選定することができる。
なお、図2(c)中に示すように止水シート20の先端縁に破線で示す切り込み線20aを形成して切り込み線間の小片を個別、且つ自由に変形し得るように構成すれば、小規模の漏水箇所に小片が入り込んでこれを効果的に塞ぐことが可能となる。
或いは止水シートの一部又は全部を多数本の細い線材から成るすだれ状に構成しても良い。
土嚢6と異なり、金属部材10自体には防水効果はなく錘としてのみ機能するので、本実施形態における防水効果は専ら止水シート20が発揮する。
金属部材10の長さ、形状、個数は投入箇所の状況、漏水状態に応じて種々選定可能であり、金属製チェーン、金属ワイヤーを用いても良い。
なお、上記何れの実施形態においても、使用する吊り下げ手段30としての線材(ロープ、ワイヤー等)31には、その両端部から位置を示す目盛りを均等に付しておくことが、漏水防止具1の投入作業、回収作業を進める上で便利である。
図4(a)(b)では土嚢6の袋体6aの外面に一枚の四角い止水シート20の中間部を固定した構成例を示している。止水シートは土嚢の底面、つまり水中への投入時に水路底面と接する土嚢面に固定することにより、止水ゲート先端部の漏水箇所に止水シートを導きやすくすることができる。或いは、土嚢の他の面(非底面)、つまり水中への投入時に水路底面と接しない土嚢面に固定することにより、止水ゲート先端部の漏水箇所に止水シートを導きやすくしてもよい(図4(a)中に破線で示した止水シート20B)。
或いは、止水シート20A、20Bを土嚢の底面と、他の面に夫々同時に配置してもよい。
図示の例では、一枚の止水シートの中間部を土嚢に固定することにより止水シートは中間部から二つ折りになっているが、止水シートを二つ折りとすることにより一枚の止水シートでは塞ぎきれない隙間を二枚の止水シートにより塞ぐことができるケースも想定されるからである。なお、一枚の止水シートの一端縁を土嚢に固定するようにしても良い。
図5(a)に示すように止水ゲート55先端部と水路底面51aとの間の隙間(本例では止水ゲートの欠損部55a)からの漏水を防止するために上流側の水中に土嚢6を投入させた場合には土嚢によっては充分に隙間を塞ぐことができないことがある。特に、土嚢間のスペースに位置する漏水箇所を塞ぐ手立てがない。
上記以外の原因による漏水に対しても止水シート20が漏水箇所に入り込んでこれを塞ぐことができる。例えば、水路底面(水路内壁)がわの損傷等によって漏水箇所が形成されている場合にも同様に対処することができる。
なお、土嚢の姿勢を所定に維持しつつ水中に投入したとしても、重量物である土嚢の線材31に対する姿勢、位置関係を常に一定の保持することは難しく、水中への投入過程で線材を中心として回転方向へ捻れることもあるので、着底時に止水シートを常に理想的な方向に向かせることは容易ではない。土嚢が大きく捻れた場合には止水シートが土嚢外面に巻き付いて短くなり、漏水箇所に届かなくなることも想定される。
なお、止水シートの固定の仕方としては、一枚のシートの一端部を固定しても良いし、又は一枚のシートの中間部(二枚の止水シートの各一端部)を固定しても良い。
次に、図7は止水シートの他の構成例を示す斜視図である。
止水シート20は止水ゲートと水路との間の隙間から流出する漏水によって形成される水流に吸引されて隙間に入り込んでこれを塞ぐ役割を有しているが、単なる一枚のシート状の構成では隙間を塞ぎきれないことが想定される。
なお、図中に破線で示すように止水シート本体21の先端縁や、個々の支片22に所定ピッチで切り込み21a、22aを入れて切り込み間の小片を独立して可動にすれば、これらの小片が奥部にある細かい漏水箇所に個別に進入してこれを閉塞することが可能となる。
なお、この例では止水シート本体21をテーパー状に構成することにより止水能力を高めている。
図8(a)(b)、図9(a)(b)、及び図10(a)(b)は漏水防止具を漏水箇所に投入するための吊り下ろし作業、セット完了時の状態、及び吊り上げ手順を夫々示す説明図である。なお、各図の(a)では作業員を図示省略している。
本発明の漏水防止具1は取扱性がよく、しかも比較的軽量であるため、一人、又は2人による人力での昇降作業が可能である点が特徴的である。
取水堰50に設けた水路51には水路を開閉する止水ゲート55が昇降自在に配置されており、止水ゲート55は昇降装置70によって駆動される。
昇降装置70が設置された建造物62に設けた足場63には予めプーリー等の線材支持部材64を一対配置しておき、各プーリーに巻き掛けた線材の両端を足場63に立った二人の作業員が保持して操作することにより吊り下ろしを行う。
吊り下ろし時には各土嚢ができるだけ水平な姿勢を保った状態で水中に入るように両作業員は均等な距離ずつ下降させてゆく。この際に線材に付した目盛りが下降量の手掛かりとなる。
この際に、両端に位置する土嚢の重量を中間部の土嚢よりも大きくしたことにより漏水防止具の全体姿勢のコントロールが容易となり、中間部が極端に先行して下降することを防止できるので、着底時の各土嚢の位置をコントロールし易くなる。
この操作により土嚢を漏水量の多い箇所に位置合わせできると共に、土嚢によって塞ぎきれない漏水箇所には止水シートを先行して進入させてこれを閉塞することができる(図9参照)。止水ゲートを僅かに開口させる操作を短時間行うだけで、土嚢に一部を固定された全ての止水シートの姿勢(方向)を止水ゲート側に仕向けることができ、全ての止水シートを漏水防止に有効活用することが可能となる。
健全性の調査や止水ゲートのメンテナンスが終了したことにより漏水防止具1を引き上げる場合には二人の作業員がロープの両端を保持して夫々引き上げるようにしてもよいし、図10に示すように線材の一端を固定する一方で、一人の作業員が線材の他端を引き上げるようにしてもよい。
即ち、吊り上げに際して二人の作業員により土嚢群を略水平に維持したまま引き上げることが難しい場合には、線材の一端を引き上げて吸い込み力の強い漏水箇所から離したのちに線材両端を二人により引き上げる。
なお、吊り下ろし、吊り下げ共に、上記のように人手によって行っても良いし、図示しないクレーン等の動力を用いて行っても良い。
第1の本発明に係る止水ゲートの漏水防止具は、止水ゲート55と水路51の内壁との間の漏水箇所に投入され、一、又は連結された複数の錘5と、錘に一部を固定された止水シート20と、前記一、又は複数の錘(の両端部)に接続された吊り下げ手段30と、を備えたことを特徴とする。
本発明の漏水防止具1は、取水堰、ダム等の河川、湖沼の堰き止め手段に設けられる水門を開閉する止水ゲート(排砂ゲート)一般に適用できるが、具体的には例えば水力発電所の水路式発電を想定することができる。
水路内壁とは水路底面に限られず、水路側面その他の部位を含み、水路内壁と止水ゲートとの間の漏水箇所(隙間)に適用されることにより漏水箇所を封鎖することができる。
なお、錘が防水機能を有しない場合には止水シートのみが防水機能を発揮する。
複数の錘を数珠状に連結した場合には、両端に位置する錘の重量を中間に位置する他の錘よりも大きくする。両端を吊り下げ手段30により吊り下げた場合に、防止具全体をコントロールし易くなる。特に、中央部が極端に垂れ下がることを防止できる。防止具の投入時に中央部が先行して着底するのは差し支えないが、中央部が極端に垂れ下がると投入位置のコントロールが難しくなるからである。
本発明の漏水防止具では手軽な作業により漏水箇所を止水できるので、止水ゲートの上流側に格別の仮締め切り板等を設置する繁雑な作業が不要となる。仮に土嚢が漏水箇所にヒットしなくても、止水シートが漏水箇所に吸引されてこれを塞ぐことができる。
漏水防止具の投入、引上げ作業は、止水ゲートを支持する構造物に通常存在する足場を利用して人力でできるため、どのようなタイプの止水堰、ダムにも適用することができる。
漏水がある状態で止水ゲートの状態を調査したり、メンテナンスすることができないために応急的に漏水を防止する場合には、一旦投入した漏水防止具1を調査、メンテナンス後に引き上げる。恒久的に、或いは長期的に漏水を防止し続けたい場合には投入した漏水防止具は水路内に放置する。この際に、線材は不要となるので線材のみ引き上げることができると便利である。本発明では、錘に対して線材を着脱自在に構成することも可能である。
土嚢の外皮である袋体6aを透水性の素材(素材自体が通気性を有するか、通気性を有しない素材をメッシュ状にする等)とすることにより収容物内に内包された空気を抜気し易くなり、空気による浮力により土嚢が浮上したり、位置ずれすることがなくなる。
袋体に形成される通気穴が微小であれば、内部の土の粒子の流出を防止できる。
また、貯留水底部に沈殿している微細粒子からなるゴミ、砂、土等がこの微小穴を塞いで水の進入を阻止するようになる。
錘自体が防水機能を有していなくても、止水シートにより充分な防水機能を発揮できる。金属部材は一本でもよい。細かく細分化して互いに関節状に連結することにより、漏水箇所に柔軟に対応させるようにしてもよい。
止水シート20は、個々の錘に対して個別に取り付けられても良いし、隣接する2つ、類は3つの錘にまたがって固定されても良い。錘の間にも止水シートが展張されていることにより、錘として土嚢等の防水(止水)機能を備えた物を用いた場合に土嚢によって塞ぎ切れない漏水箇所を止水シートにより閉塞できる。
止水ゲートを僅かに開放させる操作を短時間行うだけで、土嚢に一部を固定された全ての止水シートの姿勢(方向)を止水ゲート側に仕向けることができ、全ての止水シートを漏水防止に有効活用することが可能となる。
Claims (5)
- 止水ゲートと水路内壁との間の漏水箇所に投入される止水ゲートの漏水防止具であって、
一、又は連結された複数の錘と、前記錘に一部を固定された止水シートと、前記一、又は複数の錘に接続された吊り下げ手段と、を備えたことを特徴とする止水ゲートの漏水防止具。 - 前記錘は、袋体に土、又は/及び、砂を収容した土嚢であることを特徴とする請求項1に記載の止水ゲートの漏水防止具。
- 前記錘は、金属部材であることを特徴とする請求項1に記載の止水ゲートの漏水防止具。
- 前記止水シートは個々の前記錘に、又は隣接する2つの前記錘にまたがって固定されていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の止水ゲートの漏水防止具。
- 請求項1乃至4の何れか一項に記載の止水ゲートの漏水防止具を前記水路内壁に定着させる直前に前記止水ゲートを一時的に開放して前記止水シートが前記止水ゲートに向けて吸引されるようにしたことを特徴とする漏水防止具の投入方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019183570A (ja) * | 2018-04-16 | 2019-10-24 | 第一建設工業株式会社 | 橋脚補修・補強工事に用いる仮締切り構造体の止水工法 |
JP2023072750A (ja) * | 2021-11-15 | 2023-05-25 | 株式会社堀内組 | 鋼矢板の継手部止水方法 |
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