JP2017172076A - 複合ナノ繊維及び複合ナノ繊維の製造方法 - Google Patents

複合ナノ繊維及び複合ナノ繊維の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】徐放技術に用いることが可能であり、環境負荷を低くすることが可能であり、かつ、生産コストを低減することが可能な複合ナノ繊維及びその製造方法を提供する。
【解決手段】イネの籾殻から金属成分及び有機成分を除去することで製造したイネ由来多孔質シリカ体に薬剤を含有させた薬剤含有多孔質シリカ体と、薬剤含有多孔質シリカ体を担持しているナノ繊維とを備えることを特徴とする複合ナノ繊維。また、イネの籾殻から金属成分及び有機成分を除去することで製造したイネ由来多孔質シリカ体に薬剤を含有させた薬剤含有多孔質シリカ体を準備する薬剤含有多孔質シリカ体準備工程と、薬剤含有多孔質シリカ体をナノ繊維に担持させて複合ナノ繊維を製造する複合ナノ繊維製造工程とをこの順序で含むことを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。
【選択図】図16

Description

本発明は、複合ナノ繊維及び複合ナノ繊維の製造方法に関する。
徐放技術は、内容物(例えば、薬剤)を少しずつ長期間にわたって放出する技術である。このような徐放技術は、例えば、医薬品、防虫剤、芳香消臭剤、香りの良い石鹸、電気蚊取りマット、農薬、肥料、フェルトペン等に広く応用されている。徐放技術は古くから用いられている技術であるが、現在も広い分野で注目されており、特に医薬品分野ではコントロールリリースやドラッグデリバリーシステムの基幹技術として、新薬の開発と同等の位置づけで精力的に技術開発が進んでいる。
このような徐放技術に用いる機能性材料(徐放材料)として注目されている材料の1つに、多孔質シリカがある。多孔質シリカは高比表面積及び大細孔容積という特性を有し、中でもメソ孔(2〜50nm)を有するメソポーラスシリカは、ミクロ孔(細孔径2nm以下)を有するゼオライト等では対応不可能なサイズの分子等を包接可能な材料として期待されている。多孔質シリカは、これまでに様々な両親媒性分子、シリカ源、添加剤等を用い、多様な合成手法(例えば、水熱合成法やゾル−ゲル法)により合成されてきた(例えば、特許文献1参照。)。
特開2010−228986号公報
近年の研究の進展に伴い、多孔質シリカを用いた徐放材料の分野においては、新規な徐放材料、特に、環境負荷を低くすることが可能であり、かつ、生産コストを低減することが可能なものが希求されている。本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、徐放技術に用いることが可能であり、環境負荷を低くすることが可能であり、かつ、生産コストを低減することが可能な複合ナノ繊維及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の発明者らは、多孔質シリカの材料としてイネ科の植物に着目した。イネは多くの国で栽培され、食料として広く普及している作物の1つである。その世界的な年間生産量は、6億1000万トンにものぼるとされている。イネからは収穫の際に籾殻が分離され、その量は収穫される米粒の約20wt%にもなる。
イネの籾殻は、籾殻全体量の15〜20wt%のシリカを含んでいる。籾殻中のシリカは、昆虫や細菌による外部攻撃から米を保護する上で重要な役割を果たし、同時に籾殻の内側と外部との通気性の確保も行っている。これらの機能を実現するために、籾殻中のシリカは独特な多孔質ナノ構造を有している。なお、籾殻中のシリカは非結晶性(アモルファス)構造を有しており(後述する実験例も参照。)、非結晶性シリカは食品添加物や顔料、健康食品として使用される生体親和性の高い材料である。
本発明は「イネの籾殻から有機成分を除去することで製造したイネ由来多孔質シリカ体」を用いることを主眼において発明された。本発明は、以下の構成要素からなる。
[1]本発明の複合ナノ繊維は、イネの籾殻から金属成分及び有機成分を除去することで製造したイネ由来多孔質シリカ体に薬剤を含有させた薬剤含有多孔質シリカ体と、前記薬剤含有多孔質シリカ体を担持しているナノ繊維とを備えることを特徴とする。
[2]本発明の複合ナノ繊維においては、前記薬剤含有多孔質シリカ体は、ナノ粒子化されたものであることが好ましい。
[3]本発明の複合ナノ繊維の製造方法は、イネの籾殻から金属成分及び有機成分を除去することで製造したイネ由来多孔質シリカ体に薬剤を含有させた薬剤含有多孔質シリカ体を準備する薬剤含有多孔質シリカ体準備工程と、前記薬剤含有多孔質シリカ体をナノ繊維に担持させて複合ナノ繊維を製造する複合ナノ繊維製造工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
[4]本発明の複合ナノ繊維の製造方法においては、前記薬剤含有多孔質シリカ体準備工程は、前記イネ由来多孔質シリカ体を準備するイネ由来多孔質シリカ体準備工程と、前記イネ由来多孔質シリカ体に前記薬剤を含有させて前記薬剤含有多孔質シリカ体とする薬剤含有工程とをこの順序で含むことが好ましい。
[5]本発明の複合ナノ繊維の製造方法においては、前記薬剤含有多孔質シリカ体準備工程は、前記イネ由来多孔質シリカ体準備工程の後に、前記イネ由来多孔質シリカ体を粉砕してナノ粒子化するナノ粒子化工程をさらに含むことが好ましい。
[6]本発明の複合ナノ繊維の製造方法においては、前記イネ由来多孔質シリカ体準備工程では、前記イネの籾殻を塩酸水溶液に浸漬することで前記金属成分を除去することが好ましい。
[7]本発明の複合ナノ繊維の製造方法においては、前記イネ由来多孔質シリカ体準備工程では、前記イネの籾殻を所定の温度で加熱することで前記有機成分を除去することが好ましい。
[8]本発明の複合ナノ繊維の製造方法においては、前記所定の温度は、500〜700℃の範囲内にあることが好ましい。
[9]本発明の複合ナノ繊維の製造方法においては、前記複合ナノ繊維製造工程は、前記薬剤含有多孔質シリカ体が分散したポリマー溶液である原料溶液を作製する原料溶液作製工程と、前記原料溶液を電界紡糸して複合ナノ繊維を製造する電界紡糸工程とをこの順序で含むことが好ましい。
[10]本発明の複合ナノ繊維の製造方法においては、前記原料溶液作製工程では、前記ポリマー溶液とするための溶媒に前記薬剤含有多孔質シリカ体を分散させた後に、前記ポリマー溶液とするためのポリマー原料を溶解させることで前記原料溶液を作製することが好ましい。
本発明の複合ナノ繊維は、イネの籾殻から金属成分及び有機成分を除去することで製造したイネ由来多孔質シリカ体に薬剤を含有させた薬剤含有多孔質シリカ体を備えるため、後述する実験例に示すように、徐放技術に用いることが可能である。
また、イネ由来多孔質シリカ体は、現在は大部分が廃棄物として扱われているイネの籾殻から簡単な工程で作製することが可能である。このため、本発明の複合ナノ繊維は、環境負荷を低くすることが可能であり、かつ、生産コストを低減することが可能である。
その結果、本発明の複合ナノ繊維は、徐放技術に用いることが可能であり、環境負荷を低くすることが可能であり、かつ、生産コストを低減することが可能な複合ナノ繊維となる。
また、本発明の複合ナノ繊維は、薬剤含有多孔質シリカ体を担持しているナノ繊維を備えるため、脆く散らばりやすいイネ由来多孔質シリカ体のみで用いる場合と比較して、取り扱いを容易なものとすることが可能となる。
また、ナノ繊維は、後述する実験例に示すように、薬剤含有多孔質シリカ体から薬剤が離脱するのを抑制する働きも有する。このため、本発明の複合ナノ繊維によれば、薬剤の急激な離脱を抑制することが可能となり、その結果、徐放技術に一層好適に用いることが可能となる。
本発明の複合ナノ繊維の製造方法によれば、徐放技術に用いることが可能であり、環境負荷を低くすることが可能であり、かつ、生産コストを低減することが可能な本発明の複合ナノ繊維を製造することが可能となる。
実施形態1に係る複合ナノ繊維1の模式図である。 実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法のフローチャートである。 実施形態1における複合ナノ繊維製造装置100の模式図である。 実験例におけるイネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体の写真である。 実験例におけるイネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体のSEM画像及びFE−SEM画像である。 実験例におけるイネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体のXPSによる分析結果を示すグラフである。 実験例におけるイネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体のEDSによる分析結果を示すグラフである。 実験例におけるイネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体のFT−IRによる分析結果を示すグラフである。 実験例におけるイネ由来多孔質シリカ体のX線回折結果を示すグラフである。 実験例におけるナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体のTEM画像である。 実験例におけるナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体の粒子径分布を示すグラフである。 実験例におけるナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体の窒素ガス吸脱着等温線のグラフである。 IUPACの等温線分類及びヒステリシスパターンの分類を示すグラフである。 実験例におけるナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体の細孔径分布を示すグラフである。 比較用のシリカ体非含有ナノ繊維のSEMによる観察結果を示す図である。 実験例において、PCLに対し10wt%の薬剤含有多孔質シリカ体を添加した溶液から製造した複合ナノ繊維のSEMによる観察結果を示す図である。 実験例において、PCLに対し20wt%の薬剤含有多孔質シリカ体を添加した溶液から製造した複合ナノ繊維のSEMによる観察結果を示す図である。 実験例において、PCLに対し30wt%の薬剤含有多孔質シリカ体を添加した溶液から製造した複合ナノ繊維のSEMによる観察結果を示す図である。 実験例において、PCLに対し10wt%の薬剤含有多孔質シリカ体を添加した溶液から製造した複合ナノ繊維のTEM画像である。 アラントインの紫外可視吸光スペクトルにおける検量線を示すグラフである。 実験例におけるアラントイン放出の様子を示すグラフである。
以下、本発明に係る複合ナノ繊維及び複合ナノ繊維の製造方法について説明する。
1.実施形態に係る複合ナノ繊維1の構成
図1は、実施形態1に係る複合ナノ繊維1の模式図である。
実施形態1に係る複合ナノ繊維1は、図1に示すように、イネの籾殻から金属成分及び有機成分を除去することで製造したイネ由来多孔質シリカ体に薬剤を含有させた薬剤含有多孔質シリカ体2と、薬剤含有多孔質シリカ体2を担持しているナノ繊維3とを備える。
ここで、薬剤含有多孔質シリカ体2は、ナノ粒子化されたものである。
本明細書における「ナノ粒子」とは、ナノスケールのサイズを有する粒子のことをいう。
複合ナノ繊維1は、後述するように、電界紡糸法により得られたものである。
なお、イネ由来多孔質シリカ体について「イネの籾殻から金属成分及び有機成分を除去することで製造したイネ由来多孔質シリカ体」と、構造によらず製造方法により記載したのは、以下の理由による。
「イネの籾殻」中のシリカは、上記したように特有な構造を有する。本発明におけるイネ由来多孔質シリカ体は、イネの籾殻から直接的に作製されるものであるため、イネの籾殻に特有の構造を引き継いだ構造を有している(後述する実験例も参照。)。当該天然物から得られた構造を完全に特定するには、極めて膨大な実験が必要となり、現実的ではないためである。
薬剤含有多孔質シリカ体2の量は、ナノ繊維3の重量に対して10〜30wt%とすることが好ましい。当該量がナノ繊維3の重量に対して10wt%以上であることにより、薬剤の量を十分に確保しやすくなる。また、当該量がナノ繊維3の重量に対して30wt%以下であることにより、薬剤含有多孔質シリカ体2の分布が不均等になるのを抑制することが可能となる。
ナノ繊維3は、ポリマー材料からなる。ポリマー材料としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、タンパク質繊維(シルク、コラーゲン等)、キトサン、ポリプロピレン(PP)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PB)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルイミド(PEI)等、種々のものを用いることができるが、生体に対して害のないものを用いることが好ましい。
薬剤含有多孔質シリカ体が含有する薬剤については、イネ由来多孔質シリカ体が含有可能なものであれば特に限定されないが、イネ由来多孔質シリカ体の表面には強い極性を有する官能基が存在するため、アラントインのように極性分子からなる薬剤を好適に用いることができる。
実施形態に係る複合ナノ繊維1は、創傷皮膜剤のような外用の医薬品に用いてもよいし、経口投与剤のような内用の医薬品に用いてもよい。複合ナノ繊維1は、単体で用いてもよいし、他の成分を混ぜて用いてもよい。また、複合ナノ繊維1は、そのまま単繊維として用いてもよいし、撚り糸として用いてもよいし、不織布として用いてもよいし、織物として用いてもよい。
薬剤の含有量は、医薬品としての形態・有効使用量及び投与量・使用量及び投与量のデータ等に基づき、各投与形態に最適な量を設定することができる。
2.実施形態に係る複合ナノ繊維の製造方法
図2は、実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法のフローチャートである。
図3は、実施形態1における複合ナノ繊維製造装置100の模式図である。図3は電界紡糸を行っているときの様子を示している。
実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法は、図2に示すように、イネの籾殻から金属成分及び有機成分を除去することで製造したイネ由来多孔質シリカ体に薬剤を含有させた薬剤含有多孔質シリカ体2を準備する薬剤含有多孔質シリカ体準備工程S10と、薬剤含有多孔質シリカ体2をナノ繊維3に担持させて複合ナノ繊維1を製造する複合ナノ繊維製造工程S20とをこの順序で含む。
さらに、薬剤含有多孔質シリカ体準備工程S10は、イネ由来多孔質シリカ体を準備するイネ由来多孔質シリカ体準備工程S12と、イネ由来多孔質シリカ体に薬剤を含有させて薬剤含有多孔質シリカ体2とする薬剤含有工程S16とをこの順序で含む。
また、薬剤含有多孔質シリカ体準備工程S10は、イネ由来多孔質シリカ体準備工程S12の後に、イネ由来多孔質シリカ体を粉砕してナノ粒子化するナノ粒子化工程S14をさらに含む。
イネ由来多孔質シリカ体準備工程S12では、イネの籾殻を塩酸水溶液に浸漬することで金属成分を除去する。
また、イネ由来多孔質シリカ体準備工程S12では、イネの籾殻を所定の温度で加熱することで有機成分を除去する。所定の温度は、例えば、500〜700℃の範囲内とすることができる。
なお、所定の温度を500℃以上とすることにより、有機成分の除去を効率的に進めることができ、有機成分の除去を十分なものとすることが可能となる。また、所定の温度を700℃以下とすることにより、高温が微細構造に与える影響を抑え、イネの籾殻が有する多孔質構造を活かしたイネ由来多孔質シリカ体とすることが可能となる。
複合ナノ繊維製造工程S20は、薬剤含有多孔質シリカ体2が分散したポリマー溶液である原料溶液20を作製する原料溶液作製工程S22と、原料溶液20を電界紡糸して複合ナノ繊維1を製造する電界紡糸工程S24とをこの順序で含む。
原料溶液作製工程S22では、ポリマー溶液とするための溶媒に薬剤含有多孔質シリカ体2を分散させた後に、ポリマー溶液とするためのポリマー原料を溶解させることで原料溶液20を作製する。
電界紡糸工程S24は、例えば、図3に示すような装置を用いて実施することができる。
なお、図3において符号102で示すのはポリマー溶液を入れる溶液タンクであり、符号104で示すのはバルブであり、符号106で示すのはノズルであり、符号108で示すのはコレクターであり、符号110で示すのは電源装置である。
実施形態においては、複合ナノ繊維10はコレクター108上に堆積された不織布10として得ることができる。この後、複合ナノ繊維1を繊維ごとに引き出して糸とする加工を行ったり、不織布10ごと撚り糸して糸とする加工を行ったりしてもよい。
3.実施形態に係る複合ナノ繊維1及び複合ナノ繊維製造方法の効果
実施形態に係る複合ナノ繊維1は、イネの籾殻から金属成分及び有機成分を除去することで製造したイネ由来多孔質シリカ体に薬剤を含有させた薬剤含有多孔質シリカ体2を備えるため、後述する実験例に示すように、徐放技術に用いることが可能である。
また、イネ由来多孔質シリカ体は、現在は大部分が廃棄物として扱われているイネの籾殻から簡単な工程で作製することが可能である。このため、実施形態に係る複合ナノ繊維1は、環境負荷を低くすることが可能であり、かつ、生産コストを低減することが可能である。
その結果、実施形態に係る複合ナノ繊維は、徐放技術に用いることが可能であり、環境負荷を低くすることが可能であり、かつ、生産コストを低減することが可能な複合ナノ繊維となる。
また、実施形態に係る複合ナノ繊維1は、薬剤含有多孔質シリカ体2を担持しているナノ繊維3を備えるため、脆く散らばりやすいイネ由来多孔質シリカ体のみで用いる場合と比較して、取り扱いを容易なものとすることが可能となる。
また、ナノ繊維3は、後述する実験例に示すように、薬剤含有多孔質シリカ体2から薬剤が離脱するのを抑制する働きも有する。このため、実施形態に係る複合ナノ繊維1によれば、薬剤の急激な離脱を抑制することが可能となり、その結果、徐放技術に一層好適に用いることが可能となる。
実施形態に係る複合ナノ繊維1によれば、薬剤含有多孔質シリカ体2は、ナノ粒子化されたものであるため、薬剤含有多孔質シリカ体をナノ繊維に安定して担持させることが可能となる。
実施形態に係る複合ナノ繊維の製造方法は、薬剤含有多孔質シリカ体準備工程S10と、複合ナノ繊維製造工程S20とをこの順序で含むため、徐放技術に用いることが可能であり、環境負荷を低くすることが可能であり、かつ、生産コストを低減することが可能な実施形態1に係る複合ナノ繊維1を製造することが可能となる。
また、実施形態に係る複合ナノ繊維の製造方法によれば、ナノ繊維3に薬剤含有多孔質シリカ体2を担持させるため、脆く散らばりやすいイネ由来多孔質シリカ体のみで用いる場合と比較して、取り扱いを容易なものとすることが可能となる。
ナノ繊維3は、薬剤含有多孔質シリカ体2から薬剤が離脱するのを抑制する働きも有する。このため、実施形態に係る複合ナノ繊維の製造方法によれば、薬剤の急激な離脱を抑制することが可能となり、その結果、徐放技術に一層好適に用いることが可能な複合ナノ繊維を製造することが可能となる。
また、実施形態に係る複合ナノ繊維の製造方法によれば、薬剤含有多孔質シリカ体準備工程S10は、イネ由来多孔質シリカ体準備工程S12と薬剤含有工程S16とをこの順序で含むため、イネ由来多孔質シリカ体に任意の薬剤を含有させることが可能となる。
また、実施形態に係る複合ナノ繊維の製造方法によれば、薬剤含有多孔質シリカ体準備工程S10は、イネ由来多孔質シリカ体準備工程S12の後にナノ粒子化工程S14を含むため、イネ由来多孔質シリカ体、ひいては薬剤含有多孔質シリカ体をナノ粒子化して、薬剤含有多孔質シリカ体をナノ繊維に安定して担持させることが可能となる。
また、実施形態に係る複合ナノ繊維の製造方法によれば、イネ由来多孔質シリカ体準備工程S12では、イネの籾殻を塩酸水溶液に浸漬することで金属成分を除去するため、このような比較的簡単な操作でイネの籾殻から金属成分を除去することが可能となる。
また、実施形態に係る複合ナノ繊維の製造方法によれば、イネ由来多孔質シリカ体準備工程S12では、イネの籾殻を所定の温度で加熱することで有機成分を除去するため、このような比較的簡単な操作でイネの籾殻から有機成分を除去することが可能となる。
また、実施形態に係る複合ナノ繊維の製造方法によれば、所定の温度は、500〜700℃の範囲内にあるため、有機成分の除去を十分なものとすることが可能となり、かつ、イネの籾殻が有する多孔質構造を活かしたイネ由来多孔質シリカ体とすることが可能となる。
また、実施形態に係る複合ナノ繊維の製造方法によれば、複合ナノ繊維製造工程S20は、原料溶液作製工程S22と、電界紡糸工程S24とをこの順序で含むため、薬剤含有多孔質シリカ体が分散したポリマー溶液である原料溶液から複合ナノ繊維を製造することで、複合ナノ繊維における薬剤含有多孔質シリカ体を比較的均一に分散させることが可能となる。
また、実施形態に係る複合ナノ繊維の製造方法によれば原料溶液作製工程S22では、ポリマー溶液とするための溶媒に薬剤含有多孔質シリカ体2を分散させた後に、ポリマー溶液とするためのポリマー原料を溶解させることで原料溶液を作製するため、薬剤含有多孔質シリカ体を原料溶液中で比較的均一に分散させることが可能となる。
[実験例]
実験例においては、本発明の複合ナノ繊維を本発明の複合ナノ繊維の製造方法に従って実際に製造し、その物性や効果を確認した。
1.実験例で用いた原料、試薬及び装置
まず、実験例で用いた原料、試薬及び装置について説明する。なお、汎用の実験器具及び実験装置については、特段の記載を行わない。
イネ由来多孔質シリカ体の原料であるイネの籾殻は、日本の愛知県で食用に栽培されたイネから得られたものを用いた。
イネの籾殻を処理するための塩酸は、日本の和光純薬工業株式会社を通じて購入した5mol/l塩酸を純水で薄めて用いた。
ナノ繊維の原料であるポリカプロラクトン(PCL。Mn:70,000〜90,000)は、米国のシグマアルドリッチ社を通じて購入したものをそのまま用いた。
ナノ繊維を製造するための溶媒であるジクロロメタン(DCM)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)は、日本の和光純薬工業株式会社を通じて購入したものをそのまま用いた。
イネ由来多孔質シリカ体に含有させるための薬剤であるアラントインは、日本の和光純薬工業株式会社を通じて購入したものをそのまま用いた。
溶出試験に用いるためのリン酸緩衝液(PBS。1/15 mol/l、pH7.2)は、日本の和光純薬工業株式会社を通じて購入したものをそのまま用いた。
小型炉底昇降式電気炉としては、株式会社モトヤマのNHV−1515Dを用いた。
遠心分離器としては、日本ミリポア株式会社のXX42CFO RTを用いた。
高電圧供給装置としては、松定プレシジョン株式会社のHar−100*12を用いた。
走査型電子顕微鏡(SEM)としては、日本電子株式会社(JEOL)のJSM−6010LAを用いた。
電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)としては、株式会社日立製作所のS−5000を用いた。
透過型電子顕微鏡(TEM)としては、日本電子株式会社の2010 FasTEMを用いた。
スパッタ装置としては、日本電子株式会社のJFC−1600を用いた。
オスミウムコーターとしては、メイワフォーシス株式会社のNeoc−STBを用いた。
FT−IR分析装置としては、株式会社島津製作所のIR Prestige−21を用いた。
X線光電子分光測定装置(XPS)としては、株式会社島津製作所のAxis−Ultra DLDを用いた。
X線回折装置としては、株式会社リガクのMiniFlex300を用いた。
光動的散乱粒子径測定装置としては、英国のMalvern Instruments LtdのZetasizer−nanoを用いた。
自動比表面積測定装置としては、株式会社島津製作所のTriStar3000を用いた。
恒温器としては、東京理化器械株式会社のSLI−200を用いた。
振盪機としては、株式会社日伸理化のNX−20を用いた。
UV−可視分光光度計としては、日本分光株式会社のJasco V−530を用いた。
2.実験例に係る複合ナノ繊維の製造方法
次に、実験例に係る複合ナノ繊維の製造方法について説明する。
実験例に係る複合ナノ繊維の製造方法は、実施形態に係る複合ナノ繊維の製造方法と基本的に同様であり、薬剤含有多孔質シリカ体準備工程及び複合ナノ繊維製造工程をこの順序で含む。
(1)薬剤含有シリカ体準備工程
(1−1)イネ由来多孔質シリカ体準備工程
まず、イネの籾殻を水道水で洗浄し、24時間60℃で乾燥させた。その後、イネの籾殻中のカリウム、カルシウム等の金属成分を除去するため、乾燥させたイネの籾殻50gを、0.1mol/lとした塩酸500mlに24時間浸漬した。その後、イネの籾殻を蒸留水で洗浄し、再び24時間60℃で乾燥させた。
次に、セルロースやリグニン等の有機成分を除去するため、乾燥したイネの籾殻を小型炉底昇降式電気炉で焼成した。昇温速度は10℃/分とし、空気雰囲気中において600℃で3時間保持した。このようにしてイネの籾殻に含まれる金属成分及び有機成分を除去し、イネ由来多孔質シリカ体を得た。
(1−2)ナノ粒子化工程
上記のようにして得たイネ由来多孔質シリカ体を、乳鉢を用いて粉砕した。粉砕したイネ由来多孔質シリカ体を蒸留水中に分散させて分散液とし、その状態で1時間放置した。その後、分散液の上澄みを採取し、遠心分離器を用いて6200rpmで遠心分離した。その後、6時間の真空乾燥を行うことでナノ粒子化されたイネ由来多孔質シリカ体を得た。
(1−3)薬剤含有工程
蒸留水50mlにアラントイン0.3g及びナノ粒子化されたイネ由来多孔質シリカ体2.5gを添加した後、6時間暗所で撹拌を行った。その後、遠心分離器を用いて6200rpmで遠心分離し、薬剤含有多孔質シリカ体とアラントインとの混合物を得た。その後、余剰のアラントインを除去するため、蒸留水に混合物を分散させて5分間撹拌し、再び遠心分離器を用いて薬剤含有多孔質シリカ体を分離した。その後、6時間の真空乾燥を行うことで薬剤含有多孔質シリカ体を得た。
(2)複合ナノ繊維製造工程
(2−1)原料溶液作製工程
まず、最適な紡糸条件を調査するために事前検討を行い、PCL濃度10wt%、DCM:DMF=8:2(体積比)という条件を採用した。PCLに対しそれぞれ10wt%、20wt%及び30wt%となるように薬剤含有多孔質シリカ体を添加し、12時間撹拌することで電界紡糸用の原料溶液を作製した。この際、混合溶媒に薬剤含有多孔質シリカ体を分散させた後に5分間撹拌して分散させ、その後PCLを添加して溶解させるという手順で行った。これは、PCL添加後に薬剤含有多孔質シリカ体を添加すると、薬剤含有多孔質シリカ体が十分に分散しないためである。また、比較用のナノ繊維を製造するために、薬剤含有多孔質シリカ体を添加しない溶液、及び、上記と同様の混合溶媒にPCLを10wt%、アラントインをPCLに対して5wt%、それぞれ添加した溶液も作製した。
(2−2)電界紡糸工程
図2に示したような電界紡糸装置を用いて、電界紡糸を行った。ただし、コレクターとしては回転型ドラムコレクタを用いた。
まず、キャピラリーチップ(内径:0.6mm)を取り付けた5mlプラスチックシリンジに作製した原料溶液を注入し、アノードと接続した銅線を溶液内に差し込んだ。回転型ドラムコレクタをアルミホイルで覆い、その上に複合ナノ繊維を電界紡糸した。チップ−コレクター間の距離は15cmとし、印加電圧は10kVとした。
なお、当該工程で製造したもののうち、本発明に含まれるものについては「複合ナノ繊維」と、薬剤含有多孔質シリカ体を添加しない溶液から製造したものについては「シリカ体非含有ナノ繊維」と、混合溶媒にPCLを10wt%、アラントインをPCLに対して5wt%、それぞれ添加した溶液から製造したものについては「アラントイン含有ナノ繊維」と、それぞれ記載する。
3.観察等の方法の説明
ここで、複合ナノ繊維やイネ由来多孔質シリカ体等の試料に対して行った観察等の方法について説明する。
走査型電子顕微鏡(SEM)による観察の際には、試料に導電性を持たせるため、スパッタ装置を用いて白金パラジウムを約20nmの厚さでコーティングした。
電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)によりイネ由来多孔質シリカ体を観察する際には、コーティングによる細孔の埋没を最小限にするため、オスミウムコーターを用いてオスミウムを約2nmの厚さでコーティングした。
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の際には、電界紡糸により複合ナノ繊維をTEM用メッシュグリッドに紡糸することで観察試料を作製した。
元素分析は、SEMに付随するエネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いて行った。
FT−IR分析は、全反射測定法(ATR法)を用い、測定範囲600〜4000cm−1、分解能4cm−1、積算回数30回という条件で行った。
各試料の構成元素および電子状態は、X線光電子分光測定装置を用いて分析した。
結晶構造は、X線回折装置を用いて解析した。解析の際には、乳鉢内ですり潰した試料に少量の蒸留水を加え、それをガラス試料板上に塗布して乾燥させることで試料をガラス試料板に固定した。解析は、CuKα放射線、30kV、100mA、スキャン範囲2θ=2〜80°、スキャン速度1°/分という条件で行った。
ナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体の粒子径は、光動的散乱粒子径測定装置を用いて測定した。
ナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体の比表面積、細孔径分布及び細孔構造の分析は、自動比表面積測定装置を用いて窒素吸着等温線を作製し、BET放及びBJH法により行った。
薬剤含有多孔質シリカ体及び複合ナノ繊維の薬物放出特性は、それぞれをpH7.2のリン酸緩衝液(PBS)50mlに5日間浸漬することで調査した。試験温度は恒温器を用いて36℃に維持し、試験中は振盪機を用い、試験液を100rpmで振盪した。
薬物濃度の測定のために、任意の時間において試験液4mlを採取し、容量の調整のために新たな試験液を4ml加えた。試験後、各試料について、24時間の真空乾燥を行った。その後、紫外・可視分光光度計を用いて、採取した試験液から放出したアラントインの濃度を測定した。なお、アラントインの濃度を求めるため、事前にアラントインの紫外可視吸光スペクトルによる検量線を作製した(後述する図20参照。)。
4.観察等の結果及び考察
以下、観察等の結果及び考察を、イネ由来多孔質シリカ(粉砕前のもの)、ナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ、複合ナノ繊維それぞれに分けて記載する。
4−1.イネ由来多孔質シリカ
まず、イネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体(粉砕前のもの。以下、「ナノ粒子化された」という記載が無いものについて同様。)について、目視による観察を行った。
図4は、実験例におけるイネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体の写真である。図4(a)はイネの籾殻の写真であり、図4(b)はイネ由来多孔質シリカ体の写真である。
イネの籾殻は、柑子色であり、舟形の形状をしていた(図4(a)参照。)。これに対し、焼成後に得られたイネ由来多孔質シリカ体は白色であり、籾殻の形状を細くしたような形状が見られた(図4(b)参照。)。
イネの籾殻の色は、主に有機成分であるリグニンに由来する。このため、焼成によりイネの籾殻中の有機成分が除去されたことで、イネ由来多孔質シリカ体が白くなったと考えられる。
次に、イネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体について、SEM及びFE−SEMによる観察を行った。
図5は、実験例におけるイネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体のSEM画像及びFE−SEM画像である。図5(a)はイネの籾殻のSEM画像であり、図5(b)はイネ由来多孔質シリカ体のFE−SEM画像であり、図5(c)及び図5(e)はイネの籾殻のFE−SEM画像であり、図5(d)及び図5(f)はイネ由来多孔質シリカ体のFE−SEM画像である。なお、図5(c)及び図5(e)並びに図5(d)及び図5(f)は、それぞれ拡大率が異なる画像である。
図5(a)及び図5(b)の画像から、イネの籾殻表面のマクロな凹凸構造は、イネ由来多孔質シリカ体とした後も維持されていることが確認できた。一方、図5(c)〜図5(f)の画像から、イネの籾殻の表面は比較的滑らかであるのに対し、イネ由来多孔質シリカ体の表面は小さな粒が集合したような多孔質構造が形成されていることが確認できた。また、図5(f)に示すように、当該多孔質構造は、数nm〜数十nmの粒子状構造が集合して形成されていることが確認できた。FE−SEM観察の際に行ったオスミウムによるコーティングの厚さは約2nmであるため、微細な多孔質構造はオスミウムによって埋まってしまっている可能性がある。このため、実際のイネ由来多孔質シリカ体の表面は、図5(d)及び図5(f)で確認できる以上の微細構造を有していると考えられる。以上の形態観察により、イネの籾殻から極めて微細な多孔質構造を有するイネ由来多孔質シリカ体を得られたことが確認できた。
次に、本当にシリカからなるイネ由来多孔質シリカ体を得られたか否かを確認するため、イネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体について、XPS及びEDSによる元素分析を行った。
図6は、実験例におけるイネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体のXPSによる分析結果を示すグラフである。符号aのグラフはイネ由来多孔質シリカ体のグラフであり、符号bのグラフはイネの籾殻のグラフである。図6の縦軸は光電子検出強度(Intensity。単位:CPS)を示し、横軸は結合エネルギー(Binding Energy。単位:eV)を示す。図6では、グラフaとグラフbとはピーク位置を比較しやすいように縦に並べてあるのであり、グラフaの方がグラフbよりも光電子検出強度が大きいことを示すものではない。これは、後述する図8のグラフにおいても同様である。
図7は、実験例におけるイネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体のEDSによる分析結果を示すグラフである。図7(a)はイネ由来多孔質シリカ体のEDSによる分析結果を示すグラフであり、図7(b)はイネの籾殻のEDSによる分析結果を示すグラフである。図7(a)及び図7(b)の縦軸はカウント数(Counts。単位:10個)を示し、横軸はX線のエネルギー(単位:keV)を示す。なお、図7(a)と図7(b)とでは、縦軸のスケールが異なる。
まず、XPSの結果より、図6に示すように、全てのサンプルにおいてO1s、Si2p及びSi2sのピークが、それぞれ530eV、100eV及び145eV付近に確認された。また、イネの籾殻に関しては、C1sおよびK2sのピークが、それぞれ280eV及び400eV付近に確認された。つまり、塩酸処理及び焼成により、イネの籾殻に含まれる金属成分(特にカリウム)及び有機成分が除去され、シリカが残ったことが確認できた。
EDSについても同様であり、イネ由来多孔質シリカ体(図7(a)参照。)では、イネの籾殻(図7(b)参照。)と比較して0.3eV付近における炭素のピークが減少し、1.75eV付近におけるケイ素のピーク及び0.5eV付近における酸素のピークの増加が確認された。
なお、図7(b)においては、イネの籾殻におけるケイ素が、一般的な値よりも多く検出された。これは、ケイ素が集中しているイネの籾殻表面がEDSにより読み取られたためであると考えられる。
また、XPS及びEDS両方の結果より、実験例におけるイネ由来多孔質シリカ体には微量の炭素が残存していることが確認できた。この結果は、炭素の一部が焼成により失われず、炭化ケイ素として多孔質シリカ中に残留している可能性を示している。
次に、イネ由来多孔質シリカ体における表面の化学構造の調査を行うために、FT−IRによる分析を行った。
図8は、実験例におけるイネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体のFT−IRによる分析結果を示すグラフである。図8(a)はグラフの全体であり、図8(b)は図8(a)の4000〜2800cm−1の部分を拡大して示すグラフであり、図8(c)は図8(a)の1200〜800cm−1の部分を拡大して示すグラフである。符号aのグラフはイネ由来多孔質シリカ体のグラフであり、符号bのグラフはイネの籾殻のグラフである。図8(a)〜図8(c)の縦軸は赤外線の吸収率(Absorbance。単位:a.u.)を示し、横軸は波数(Wavenumbers。単位:cm−1)を示す。
まず、図8に示すように、イネの籾殻及び多孔質シリカの両方に、Si−O−Siの非対称振動に由来する1027cm−1付近及び793cm−1付近のピークが確認できた。また、イネの籾殻に関しては、セルロース等の有機成分由来のC−H伸縮に起因する3000〜2870cm−1付近のピーク及びCH変角振動に起因する1430〜1250cm−1付近のピーク等が確認できた。イネ由来多孔質シリカ体に関しては、イネの籾殻のスペクトルで確認された有機成分に由来するピークが無くなっていることが確認できた。また、イネ由来多孔質シリカ体に関しては、図8(b)に示すように、わずかではあるが、3800〜3000cm−1付近にゆるやかなピークが確認できた。加えて、図8(c)に示すように、Si−O−Siのピークの945cm−1付近にショルダーが存在していることも確認できた。これは、Si−OHに由来するものである。このため、イネ由来多孔質シリカ体の表面にはSi−OHが存在し、それがシリカ内部のSi−O−Si構造と接続した構造をしているものと考えられる。
次に、イネ由来多孔質シリカ体の結晶構造を調査するために、X線回折による分析を行った。
図9は、実験例におけるイネ由来多孔質シリカ体のX線回折結果を示すグラフである。図9の縦軸は強度(Intensity。単位:a.u.)を示し、横軸は2θ(単位:°)を示す。
結晶性シリカの一部はIARCにてグループ1(人に対して発ガン性を示す物質)とされている。これに対して、非結晶性シリカはグループ2(人に対する発ガン性について分類できない物質)とされ、食品添加物や医療用材料等に利用される生体親和性の高い物質である。結晶性の評価は、シリカを医療用途に応用する際の重要な要素である。
実験例におけるイネ由来多孔質シリカ体についてX線回折による分析を行った結果、図9に示すように、2θ=22.5°付近にゆるやかなピークが確認できた。このため、イネ由来多孔質シリカ体におけるシリカは、非結晶性であるといえる。
4−2.ナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体
まず、ナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体について、TEMによる観察及び光動的散乱法による粒子径分布の測定を行った。
図10は、実験例におけるナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体のTEM画像である。
図11は、実験例におけるナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体の粒子径分布を示すグラフである。符号aで示すグラフは、イネ由来多孔質シリカ体を粉砕した後、蒸留水中に分散させて分散液とし、その状態で1時間放置した後の上澄み中の粒子の粒子径分布である。符号bで示すグラフは、イネ由来多孔質シリカ体を粉砕した後、蒸留水中に分散させた分散液中の粒子の粒子径分布である。図11の縦軸は散乱強度(Intensity。単位:%)を示し、横軸は粒子径(Size。単位:nm)を示す。
まず、図10に示すように、ナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体の内部に、微細孔に由来する空隙が見られる(図10における明るい点状の部分。)。このため、イネ由来多孔質シリカ体を粉砕しても微細孔が維持されることが確認できた。
また、図11に示すように、上澄み液に含まれる粒子の平均粒子径は220nmであった。粒子径の分散性を示すPDIは0.221となり、単分散の粒子が得られたといえる(図11のグラフa参照。)。
なお、今回の実験で使用した装置は、粒子径の分散が激しい場合や明らかな粗大粒子が存在する場合には正確な計測を行うことができない。このため、分散液に含まれる粒子については、計測範囲外の粗大粒子が存在するため正確な計測が不可能であった(図11のグラフb参照。)。
次に、ナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体の表面積や細孔径を、自動比表面積測定装置により計測した窒素ガス吸脱着等温線を用いて求めた。
図12は、実験例におけるナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体の窒素ガス吸脱着等温線のグラフである。+印で示すプロットは吸着を表し、○印で示すプロットは脱離を表している。図12の縦軸は吸着量(Volume Absorbed。単位:cm/g STP)を示し、横軸は相対圧力(Relative Pressure、P/P)を示す。
図13は、IUPACの等温線分類及びヒステリシスパターンの分類を示すグラフである。図13(a)は等温線分類(I〜VIの6種類)を示すグラフであり、図13(b)はヒステリシスパターンの分類(H1〜H4の4種類)を示すグラフである。なお、図13のグラフの縦軸及び横軸が示すものは、図12の縦軸及び横軸と同様である。
図14は、実験例におけるナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体の細孔径分布を示すグラフである。図14の縦軸は細孔容積(Pore Volume。単位:cm/g・nm)を示し、横軸は細孔直径(Pore Diameter。単位:nm)を示す。
ナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体について、図12に示す吸脱着等温線からBET法により比表面積および平均細孔径を求めた結果、比表面積は334m/gとなり、平均細孔径は3.57nmとなった。このため、実験例におけるナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体は、メソ孔を有する多孔質材料であることが確認できた。
窒素ガス吸脱着等温線の形状に関して、IUPACがその細孔形状と窒素ガス吸脱着等温線との関係性をモデルとした分類を開示している(図13参照。)。当該分類においては、I型はマイクロポア(2nm以下の細孔)の存在の可能性を示し、IV型及びV型はメソポア(2〜50nmの細孔)の存在の可能性を示す。また、II型及びIII型は細孔が存在しない、又は、マクロポア(50nm以上の細孔)の存在の可能性を示す。VI型は稀なタイプであり、細孔の無い平滑表面への段階的な多分子層吸着を示す。
同様に、ヒステリシスパターンについてもIUPACが分類を開示している。H1型は、大きさの揃った球形粒子の凝集体(又はその塊)の場合に見られるヒステリシスパターンである。H2型は、シリカゲル等で見られる、細孔径や細孔形状を特定することが難しいヒステリシスパターンである。H3型及びH4型は、スリット型細孔の存在を示すヒステリシスパターンである。また、H3型は平板状粒子の凝集体等が存在する場合にも見られることがあり、H4型は等温線のI型同様、マイクロポアが存在する場合に見られることがある。
実験例におけるナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体の吸脱着等温線は、図12に示すように、吸着のプロセス(+印のプロット参照。)と脱離のプロセス(○印のプロット参照。)とが一致しないヒステリシスが確認できた。低圧時の吸着量の立ち上がりが急激であるため、IV型の等温曲線に該当すると判断できる。また、ヒステリシスに関しては、吸着側及び脱離側の曲線がやや水平に近づいているため、H3型又はH4型の等温曲線に該当すると考えられる。
先に記したFE−SEM画像(図5(f)参照。)と比較して考えると、FE−SEM画像から数nm〜数十nm程度の細孔が確認されたため、イネ由来多孔質シリカ体の表面だけでなく内部に関しても一様に微細構造が存在すると考えられる。また、FE−SEM画像からはスリット状あるいは平板状の細孔の存在は確認できなかった。
次に、ナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体の細孔径分布を求めるため、BJH法を用いて、図12の吸脱着等温線から細孔径分布を求めた。その結果、図14に示すように、イネ由来多孔質シリカ体は、ほぼ均一な多孔質構造を有していることが確認できた。
4−3.複合ナノ繊維
まず、実験例に係る複合ナノ繊維及び比較用のシリカ体非含有ナノ繊維について、SEM及びTEMによる観察を行った。
図15は、比較用のシリカ体非含有ナノ繊維のSEMによる観察結果を示す図である。図15(a)及び図15(b)はそれぞれ倍率が異なるSEM画像であり、図15(c)はSEM画像から求めた繊維径の分布を示すグラフである。図15(c)及び後述する図16(c),図17(c),図18(c)の縦軸は頻度(Frequency。単位:%)を示し、横軸は繊維径(Diameter。単位:nm)を示している。
図16は、実験例において、PCLに対し10wt%の薬剤含有多孔質シリカ体を添加した溶液から製造した複合ナノ繊維(以下、複合ナノ繊維Aという。)のSEMによる観察結果を示す図である。図16(a)及び図16(b)はそれぞれ倍率が異なるSEM画像であり、図16(c)はSEM画像から求めた繊維径の分布を示すグラフである。
図17は、実験例において、PCLに対し20wt%の薬剤含有多孔質シリカ体を添加した溶液から製造した複合ナノ繊維(以下、複合ナノ繊維Bという。)のSEMによる観察結果を示す図である。図17(a)及び図17(b)はそれぞれ倍率が異なるSEM画像であり、図17(c)はSEM画像から求めた繊維径の分布を示すグラフである。
図18は、実験例において、PCLに対し30wt%の薬剤含有多孔質シリカ体を添加した溶液から製造した複合ナノ繊維(以下、複合ナノ繊維Cという。)のSEMによる観察結果を示す図である。図18(a)及び図18(b)はそれぞれ倍率が異なるSEM画像であり、図18(c)はSEM画像から求めた繊維径の分布を示すグラフである。
図19は、実験例において、PCLに対し10wt%の薬剤含有多孔質シリカ体を添加した溶液から製造した複合ナノ繊維のTEM画像である。図19(a)及び図19(b)はそれぞれ倍率が異なるTEM画像であるが、図19(b)は図19(a)に示す長方形の枠の近辺を拡大して示す画像である。
まず、図15〜図18に示すように、どの試料においても、ナノサイズの繊維径を有するナノ繊維からなる不織布を製造できたことが確認できた。また、図15(c)、図16(c)、図17(c)及び図18(c)に示すように、シリカ体非含有ナノ繊維の平均繊維径は637nmであり、複合ナノ繊維Aの平均繊維径は684nmであり、複合ナノ繊維Bの平均繊維径は750nmであり、複合ナノ繊維Cの平均繊維径は885nmであった。このため、薬剤含有多孔質シリカ体の添加量の増加に従って平均繊維径が増加することが確認できた。
図16〜図18に示すように、薬剤含有多孔質シリカ体を添加したサンプルにおいては、繊維表面にコブ状の突起が確認できた。
図19に示すように、複合ナノ繊維におけるナノ繊維の内部にも薬剤含有多孔質シリカ体が埋没しており、その一部がナノ繊維の表面を押し上げてコブ状の突起を形成していることが確認できた。ナノ粒子化された薬剤含有多孔質シリカ体の粒子径とナノ繊維の繊維径とは同程度の大きさであるため、薬剤含有多孔質シリカ体はナノ繊維中に1個ずつ並ぶように存在していることも確認できた。
また、図19(b)に示すように、薬剤含有多孔質シリカ体における、小さい粒子が集合したように見える多孔質構造が確認できた(図19(b)の中央付近を参照。)。つまり、電界紡糸工程を経ても、薬剤含有多孔質シリカ体を構成するイネ由来多孔質シリカ体の微細孔は維持されていることが確認できた。
次に、薬剤含有多孔質シリカ体及び複合ナノ繊維について、アラントインの放出試験を行った。
図20は、アラントインの紫外可視吸光スペクトルにおける検量線を示すグラフである。図20の縦軸は吸光度(Absorbance。単位:Abs.)を示し、横軸は濃度(Concentration。単位:ppm)を示す。
図21は、実験例におけるアラントイン放出の様子を示すグラフである。図21(a)は実験例における薬剤含有多孔質シリカ体のアラントイン放出の様子を示すグラフであり、図21(b)はアラントイン含有ナノ繊維、複合ナノ繊維A、複合ナノ繊維B及び複合ナノ繊維Cのアラントイン放出の様子を示すグラフである。図21(b)の符号aで示すのはアラントイン含有ナノ繊維のグラフであり、符号bで表すのは複合ナノ繊維Aのグラフであり、符号cで表すのは複合ナノ繊維Bのグラフであり、符号dで表すのは複合ナノ繊維Cのグラフである。図21の縦軸はアラントインの放出率(Cumulative release。単位:%)を示し、横軸は時間(Time。単位:図21(a)では分、図21(b)では時間)を示す。なお、薬剤含有多孔質シリカ体に関するアラントインの放出率は、最終的な放出量を100%として計算を行った。一方、アラントイン含有ナノ繊維については、その添加量により100%の放出を求めた。
まず、図21(a)に示すように、薬剤含有多孔質シリカ体からのアラントイン放出は、1時間ほどで平衡状態となった。その後、アラントイン濃度がほとんど増加しなかったことから、実験開始1時間ほどでほぼすべてのアラントインを放出したと考えられる。このことから、薬剤含有多孔質シリカ体におけるアラントインの含有量を、事前に作製したアラントインの紫外・可視光吸収スペクトルの検量線(図20参照。)により計算した。その結果、薬剤含有多孔質シリカ体におけるアラントインの含有量は、イネ由来多孔質シリカ体に対して16wt%であった。
次に、上記アラントインの含有量から各複合ナノ繊維中のアラントイン量を求め、各複合ナノ繊維のアラントインの放出率を計算した(図21(b)参照。)。
アラントイン含有ナノ繊維に関しては、実験開始後、10時間以内に急激にアラントインを放出し、その後徐々に放出が緩やかになり、120時間後には内包するアラントインの80%を放出した。実験初期に急激にアラントインを放出したのは、アラントインがナノ繊維の表面近傍に集中して存在していた可能性を示す。アラントインは極性分子であるため、DMFとの親和性が高く、DCM及びPCLとの親和性が低い。このため、電界紡糸行程において溶媒が揮発する際に、DMF濃度の変化に合わせて、ナノ繊維表面にアラントインが移動したと考えられる。徐放開始初期に大量の薬物を放出してしまう現象は、初期バースト放出と言われ、薬物濃度の制御が困難となることから、徐放剤として用いる場合には好ましくないとされている。
一方、各複合ナノ繊維では、実験開始初期の10時間に、複合ナノ繊維C(薬剤含有多孔質シリカ体を30wt%添加したもの)では約20%、複合ナノ繊維B(薬剤含有多孔質シリカ体を20wt%添加したもの)では約15%、複合ナノ繊維A(薬剤含有多孔質シリカ体を10wt%添加したもの)では約5%のアラントインが放出された。これらの値は、アラントイン含有ナノ繊維と比較して格段に少ない。これは、イネ由来多孔質シリカ体の表面に存在するSi−OH基及びSi−O−Si結合の働きによるものであると考えられる。Si−OH基は強い極性を有する官能基であり、Si−O−Si結合もSi−OH基ほどではないが極性を有している。このため、イネ由来多孔質シリカ体はアラントインとの親和性が高く、その微細孔にアラントインを含有することで、電界紡糸の際にアラントインがナノ繊維の表面へ移動することを防ぐことができたと考えられる。
なお、アラントインの初期放出は、薬剤含有多孔質シリカ体の添加量の増加に従って多くなっている。ナノ繊維の表面から外部に露出している薬剤含有多孔質シリカ体の量に関係していると考えられる。薬剤含有多孔質シリカ体の添加量の増加に従い、ナノ繊維中での薬剤含有多孔質シリカ体の密度が上昇し、その結果、ナノ繊維表面に露出した薬剤含有多孔質シリカ体が増加した可能性がある。
また、30時間以降の放出速度に関しては、アラントイン含有ナノ繊維が最も早く、複合ナノ繊維は比較的放出速度が遅いことが確認できた。これは、イネ由来多孔質シリカ体の微細孔が、その中に含有されているアラントインの溶出経路を限定しているためであると考えられる。
各複合ナノ繊維においては、薬剤含有多孔質シリカ体の添加量が増加しても、30時間以降の放出速度に大きな差異は見られなかった。これは、薬剤含有多孔質シリカ体がナノ繊維中に1個ずつ並ぶように存在しているため、薬剤含有多孔質シリカ体が他の薬剤含有多孔質シリカ体からのアラントインの放出を妨げないためであると考えられる。このことから、薬物放出量を制御するためには、面積あたりのナノ繊維の量を制御する必要があると考えられる。ナノ繊維は極細であるため、面積あたりのナノ繊維の量を制御するためにナノ繊維を積層しても、例えば、創傷皮膜剤としての使用の障害とならない。つまり、実験例に係る複合ナノ繊維は、創傷皮膜剤に利用される徐放材料として優れた性能を有するものと考えられる。
5.結論
以上の実験例により、本発明の複合ナノ繊維の製造方法により本発明の複合ナノ繊維を確かに製造可能であることが確認できた。
また、本発明の複合ナノ繊維は、徐放材料として好適に使用することが可能であることが確認できた。
1…複合ナノ繊維、2…薬剤含有多孔質シリカ体、3…ナノ繊維、10…不織布、20…原料溶液、100…複合ナノ繊維製造装置、102…溶液タンク、104…バルブ、106…ノズル、108…コレクター、110…電源装置

Claims (10)

  1. イネの籾殻から金属成分及び有機成分を除去することで製造したイネ由来多孔質シリカ体に薬剤を含有させた薬剤含有多孔質シリカ体と、
    前記薬剤含有多孔質シリカ体を担持しているナノ繊維とを備えることを特徴とする複合ナノ繊維。
  2. 請求項1に記載の複合ナノ繊維において、
    前記薬剤含有多孔質シリカ体は、ナノ粒子化されたものであることを特徴とする複合ナノ繊維。
  3. イネの籾殻から金属成分及び有機成分を除去することで製造したイネ由来多孔質シリカ体に薬剤を含有させた薬剤含有多孔質シリカ体を準備する薬剤含有多孔質シリカ体準備工程と、
    前記薬剤含有多孔質シリカ体をナノ繊維に担持させて複合ナノ繊維を製造する複合ナノ繊維製造工程とをこの順序で含むことを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。
  4. 請求項3に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
    前記薬剤含有多孔質シリカ体準備工程は、
    前記イネ由来多孔質シリカ体を準備するイネ由来多孔質シリカ体準備工程と、
    前記イネ由来多孔質シリカ体に前記薬剤を含有させて前記薬剤含有多孔質シリカ体とする薬剤含有工程とをこの順序で含むことを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。
  5. 請求項4に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
    前記薬剤含有多孔質シリカ体準備工程は、
    前記イネ由来多孔質シリカ体準備工程の後に、前記イネ由来多孔質シリカ体を粉砕してナノ粒子化するナノ粒子化工程をさらに含むことを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。
  6. 請求項4又は5に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
    前記イネ由来多孔質シリカ体準備工程では、前記イネの籾殻を塩酸水溶液に浸漬することで前記金属成分を除去することを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。
  7. 請求項4〜6のいずれかに記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
    前記イネ由来多孔質シリカ体準備工程では、前記イネの籾殻を所定の温度で加熱することで前記有機成分を除去することを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。
  8. 請求項7に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
    前記所定の温度は、500〜700℃の範囲内にあることを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。
  9. 請求項3〜8のいずれかに記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
    前記複合ナノ繊維製造工程は、
    前記薬剤含有多孔質シリカ体が分散したポリマー溶液である原料溶液を作製する原料溶液作製工程と、
    前記原料溶液を電界紡糸して複合ナノ繊維を製造する電界紡糸工程とをこの順序で含むことを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。
  10. 請求項9に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
    前記原料溶液作製工程では、前記ポリマー溶液とするための溶媒に前記薬剤含有多孔質シリカ体を分散させた後に、前記ポリマー溶液とするためのポリマー原料を溶解させることで前記原料溶液を作製することを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。
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