JP2017172076A - 複合ナノ繊維及び複合ナノ繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】イネの籾殻から金属成分及び有機成分を除去することで製造したイネ由来多孔質シリカ体に薬剤を含有させた薬剤含有多孔質シリカ体と、薬剤含有多孔質シリカ体を担持しているナノ繊維とを備えることを特徴とする複合ナノ繊維。また、イネの籾殻から金属成分及び有機成分を除去することで製造したイネ由来多孔質シリカ体に薬剤を含有させた薬剤含有多孔質シリカ体を準備する薬剤含有多孔質シリカ体準備工程と、薬剤含有多孔質シリカ体をナノ繊維に担持させて複合ナノ繊維を製造する複合ナノ繊維製造工程とをこの順序で含むことを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。
【選択図】図16
Description
イネの籾殻は、籾殻全体量の15〜20wt%のシリカを含んでいる。籾殻中のシリカは、昆虫や細菌による外部攻撃から米を保護する上で重要な役割を果たし、同時に籾殻の内側と外部との通気性の確保も行っている。これらの機能を実現するために、籾殻中のシリカは独特な多孔質ナノ構造を有している。なお、籾殻中のシリカは非結晶性(アモルファス)構造を有しており(後述する実験例も参照。)、非結晶性シリカは食品添加物や顔料、健康食品として使用される生体親和性の高い材料である。
図1は、実施形態1に係る複合ナノ繊維1の模式図である。
実施形態1に係る複合ナノ繊維1は、図1に示すように、イネの籾殻から金属成分及び有機成分を除去することで製造したイネ由来多孔質シリカ体に薬剤を含有させた薬剤含有多孔質シリカ体2と、薬剤含有多孔質シリカ体2を担持しているナノ繊維3とを備える。
ここで、薬剤含有多孔質シリカ体2は、ナノ粒子化されたものである。
本明細書における「ナノ粒子」とは、ナノスケールのサイズを有する粒子のことをいう。
複合ナノ繊維1は、後述するように、電界紡糸法により得られたものである。
「イネの籾殻」中のシリカは、上記したように特有な構造を有する。本発明におけるイネ由来多孔質シリカ体は、イネの籾殻から直接的に作製されるものであるため、イネの籾殻に特有の構造を引き継いだ構造を有している(後述する実験例も参照。)。当該天然物から得られた構造を完全に特定するには、極めて膨大な実験が必要となり、現実的ではないためである。
薬剤の含有量は、医薬品としての形態・有効使用量及び投与量・使用量及び投与量のデータ等に基づき、各投与形態に最適な量を設定することができる。
図2は、実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法のフローチャートである。
図3は、実施形態1における複合ナノ繊維製造装置100の模式図である。図3は電界紡糸を行っているときの様子を示している。
実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法は、図2に示すように、イネの籾殻から金属成分及び有機成分を除去することで製造したイネ由来多孔質シリカ体に薬剤を含有させた薬剤含有多孔質シリカ体2を準備する薬剤含有多孔質シリカ体準備工程S10と、薬剤含有多孔質シリカ体2をナノ繊維3に担持させて複合ナノ繊維1を製造する複合ナノ繊維製造工程S20とをこの順序で含む。
また、薬剤含有多孔質シリカ体準備工程S10は、イネ由来多孔質シリカ体準備工程S12の後に、イネ由来多孔質シリカ体を粉砕してナノ粒子化するナノ粒子化工程S14をさらに含む。
また、イネ由来多孔質シリカ体準備工程S12では、イネの籾殻を所定の温度で加熱することで有機成分を除去する。所定の温度は、例えば、500〜700℃の範囲内とすることができる。
なお、所定の温度を500℃以上とすることにより、有機成分の除去を効率的に進めることができ、有機成分の除去を十分なものとすることが可能となる。また、所定の温度を700℃以下とすることにより、高温が微細構造に与える影響を抑え、イネの籾殻が有する多孔質構造を活かしたイネ由来多孔質シリカ体とすることが可能となる。
原料溶液作製工程S22では、ポリマー溶液とするための溶媒に薬剤含有多孔質シリカ体2を分散させた後に、ポリマー溶液とするためのポリマー原料を溶解させることで原料溶液20を作製する。
電界紡糸工程S24は、例えば、図3に示すような装置を用いて実施することができる。
実施形態においては、複合ナノ繊維10はコレクター108上に堆積された不織布10として得ることができる。この後、複合ナノ繊維1を繊維ごとに引き出して糸とする加工を行ったり、不織布10ごと撚り糸して糸とする加工を行ったりしてもよい。
実験例においては、本発明の複合ナノ繊維を本発明の複合ナノ繊維の製造方法に従って実際に製造し、その物性や効果を確認した。
まず、実験例で用いた原料、試薬及び装置について説明する。なお、汎用の実験器具及び実験装置については、特段の記載を行わない。
イネ由来多孔質シリカ体の原料であるイネの籾殻は、日本の愛知県で食用に栽培されたイネから得られたものを用いた。
イネの籾殻を処理するための塩酸は、日本の和光純薬工業株式会社を通じて購入した5mol/l塩酸を純水で薄めて用いた。
ナノ繊維の原料であるポリカプロラクトン(PCL。Mn:70,000〜90,000)は、米国のシグマアルドリッチ社を通じて購入したものをそのまま用いた。
ナノ繊維を製造するための溶媒であるジクロロメタン(DCM)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)は、日本の和光純薬工業株式会社を通じて購入したものをそのまま用いた。
イネ由来多孔質シリカ体に含有させるための薬剤であるアラントインは、日本の和光純薬工業株式会社を通じて購入したものをそのまま用いた。
溶出試験に用いるためのリン酸緩衝液(PBS。1/15 mol/l、pH7.2)は、日本の和光純薬工業株式会社を通じて購入したものをそのまま用いた。
遠心分離器としては、日本ミリポア株式会社のXX42CFO RTを用いた。
高電圧供給装置としては、松定プレシジョン株式会社のHar−100*12を用いた。
走査型電子顕微鏡(SEM)としては、日本電子株式会社(JEOL)のJSM−6010LAを用いた。
電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)としては、株式会社日立製作所のS−5000を用いた。
透過型電子顕微鏡(TEM)としては、日本電子株式会社の2010 FasTEMを用いた。
スパッタ装置としては、日本電子株式会社のJFC−1600を用いた。
オスミウムコーターとしては、メイワフォーシス株式会社のNeoc−STBを用いた。
FT−IR分析装置としては、株式会社島津製作所のIR Prestige−21を用いた。
X線光電子分光測定装置(XPS)としては、株式会社島津製作所のAxis−Ultra DLDを用いた。
X線回折装置としては、株式会社リガクのMiniFlex300を用いた。
光動的散乱粒子径測定装置としては、英国のMalvern Instruments LtdのZetasizer−nanoを用いた。
自動比表面積測定装置としては、株式会社島津製作所のTriStar3000を用いた。
恒温器としては、東京理化器械株式会社のSLI−200を用いた。
振盪機としては、株式会社日伸理化のNX−20を用いた。
UV−可視分光光度計としては、日本分光株式会社のJasco V−530を用いた。
次に、実験例に係る複合ナノ繊維の製造方法について説明する。
実験例に係る複合ナノ繊維の製造方法は、実施形態に係る複合ナノ繊維の製造方法と基本的に同様であり、薬剤含有多孔質シリカ体準備工程及び複合ナノ繊維製造工程をこの順序で含む。
(1−1)イネ由来多孔質シリカ体準備工程
まず、イネの籾殻を水道水で洗浄し、24時間60℃で乾燥させた。その後、イネの籾殻中のカリウム、カルシウム等の金属成分を除去するため、乾燥させたイネの籾殻50gを、0.1mol/lとした塩酸500mlに24時間浸漬した。その後、イネの籾殻を蒸留水で洗浄し、再び24時間60℃で乾燥させた。
次に、セルロースやリグニン等の有機成分を除去するため、乾燥したイネの籾殻を小型炉底昇降式電気炉で焼成した。昇温速度は10℃/分とし、空気雰囲気中において600℃で3時間保持した。このようにしてイネの籾殻に含まれる金属成分及び有機成分を除去し、イネ由来多孔質シリカ体を得た。
上記のようにして得たイネ由来多孔質シリカ体を、乳鉢を用いて粉砕した。粉砕したイネ由来多孔質シリカ体を蒸留水中に分散させて分散液とし、その状態で1時間放置した。その後、分散液の上澄みを採取し、遠心分離器を用いて6200rpmで遠心分離した。その後、6時間の真空乾燥を行うことでナノ粒子化されたイネ由来多孔質シリカ体を得た。
蒸留水50mlにアラントイン0.3g及びナノ粒子化されたイネ由来多孔質シリカ体2.5gを添加した後、6時間暗所で撹拌を行った。その後、遠心分離器を用いて6200rpmで遠心分離し、薬剤含有多孔質シリカ体とアラントインとの混合物を得た。その後、余剰のアラントインを除去するため、蒸留水に混合物を分散させて5分間撹拌し、再び遠心分離器を用いて薬剤含有多孔質シリカ体を分離した。その後、6時間の真空乾燥を行うことで薬剤含有多孔質シリカ体を得た。
(2−1)原料溶液作製工程
まず、最適な紡糸条件を調査するために事前検討を行い、PCL濃度10wt%、DCM:DMF=8:2(体積比)という条件を採用した。PCLに対しそれぞれ10wt%、20wt%及び30wt%となるように薬剤含有多孔質シリカ体を添加し、12時間撹拌することで電界紡糸用の原料溶液を作製した。この際、混合溶媒に薬剤含有多孔質シリカ体を分散させた後に5分間撹拌して分散させ、その後PCLを添加して溶解させるという手順で行った。これは、PCL添加後に薬剤含有多孔質シリカ体を添加すると、薬剤含有多孔質シリカ体が十分に分散しないためである。また、比較用のナノ繊維を製造するために、薬剤含有多孔質シリカ体を添加しない溶液、及び、上記と同様の混合溶媒にPCLを10wt%、アラントインをPCLに対して5wt%、それぞれ添加した溶液も作製した。
図2に示したような電界紡糸装置を用いて、電界紡糸を行った。ただし、コレクターとしては回転型ドラムコレクタを用いた。
まず、キャピラリーチップ(内径:0.6mm)を取り付けた5mlプラスチックシリンジに作製した原料溶液を注入し、アノードと接続した銅線を溶液内に差し込んだ。回転型ドラムコレクタをアルミホイルで覆い、その上に複合ナノ繊維を電界紡糸した。チップ−コレクター間の距離は15cmとし、印加電圧は10kVとした。
なお、当該工程で製造したもののうち、本発明に含まれるものについては「複合ナノ繊維」と、薬剤含有多孔質シリカ体を添加しない溶液から製造したものについては「シリカ体非含有ナノ繊維」と、混合溶媒にPCLを10wt%、アラントインをPCLに対して5wt%、それぞれ添加した溶液から製造したものについては「アラントイン含有ナノ繊維」と、それぞれ記載する。
ここで、複合ナノ繊維やイネ由来多孔質シリカ体等の試料に対して行った観察等の方法について説明する。
電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)によりイネ由来多孔質シリカ体を観察する際には、コーティングによる細孔の埋没を最小限にするため、オスミウムコーターを用いてオスミウムを約2nmの厚さでコーティングした。
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の際には、電界紡糸により複合ナノ繊維をTEM用メッシュグリッドに紡糸することで観察試料を作製した。
FT−IR分析は、全反射測定法(ATR法)を用い、測定範囲600〜4000cm−1、分解能4cm−1、積算回数30回という条件で行った。
各試料の構成元素および電子状態は、X線光電子分光測定装置を用いて分析した。
ナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体の比表面積、細孔径分布及び細孔構造の分析は、自動比表面積測定装置を用いて窒素吸着等温線を作製し、BET放及びBJH法により行った。
薬物濃度の測定のために、任意の時間において試験液4mlを採取し、容量の調整のために新たな試験液を4ml加えた。試験後、各試料について、24時間の真空乾燥を行った。その後、紫外・可視分光光度計を用いて、採取した試験液から放出したアラントインの濃度を測定した。なお、アラントインの濃度を求めるため、事前にアラントインの紫外可視吸光スペクトルによる検量線を作製した(後述する図20参照。)。
以下、観察等の結果及び考察を、イネ由来多孔質シリカ(粉砕前のもの)、ナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ、複合ナノ繊維それぞれに分けて記載する。
まず、イネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体(粉砕前のもの。以下、「ナノ粒子化された」という記載が無いものについて同様。)について、目視による観察を行った。
図4は、実験例におけるイネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体の写真である。図4(a)はイネの籾殻の写真であり、図4(b)はイネ由来多孔質シリカ体の写真である。
イネの籾殻の色は、主に有機成分であるリグニンに由来する。このため、焼成によりイネの籾殻中の有機成分が除去されたことで、イネ由来多孔質シリカ体が白くなったと考えられる。
図5は、実験例におけるイネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体のSEM画像及びFE−SEM画像である。図5(a)はイネの籾殻のSEM画像であり、図5(b)はイネ由来多孔質シリカ体のFE−SEM画像であり、図5(c)及び図5(e)はイネの籾殻のFE−SEM画像であり、図5(d)及び図5(f)はイネ由来多孔質シリカ体のFE−SEM画像である。なお、図5(c)及び図5(e)並びに図5(d)及び図5(f)は、それぞれ拡大率が異なる画像である。
図6は、実験例におけるイネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体のXPSによる分析結果を示すグラフである。符号aのグラフはイネ由来多孔質シリカ体のグラフであり、符号bのグラフはイネの籾殻のグラフである。図6の縦軸は光電子検出強度(Intensity。単位:CPS)を示し、横軸は結合エネルギー(Binding Energy。単位:eV)を示す。図6では、グラフaとグラフbとはピーク位置を比較しやすいように縦に並べてあるのであり、グラフaの方がグラフbよりも光電子検出強度が大きいことを示すものではない。これは、後述する図8のグラフにおいても同様である。
図7は、実験例におけるイネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体のEDSによる分析結果を示すグラフである。図7(a)はイネ由来多孔質シリカ体のEDSによる分析結果を示すグラフであり、図7(b)はイネの籾殻のEDSによる分析結果を示すグラフである。図7(a)及び図7(b)の縦軸はカウント数(Counts。単位:103個)を示し、横軸はX線のエネルギー(単位:keV)を示す。なお、図7(a)と図7(b)とでは、縦軸のスケールが異なる。
EDSについても同様であり、イネ由来多孔質シリカ体(図7(a)参照。)では、イネの籾殻(図7(b)参照。)と比較して0.3eV付近における炭素のピークが減少し、1.75eV付近におけるケイ素のピーク及び0.5eV付近における酸素のピークの増加が確認された。
また、XPS及びEDS両方の結果より、実験例におけるイネ由来多孔質シリカ体には微量の炭素が残存していることが確認できた。この結果は、炭素の一部が焼成により失われず、炭化ケイ素として多孔質シリカ中に残留している可能性を示している。
図8は、実験例におけるイネの籾殻及びイネ由来多孔質シリカ体のFT−IRによる分析結果を示すグラフである。図8(a)はグラフの全体であり、図8(b)は図8(a)の4000〜2800cm−1の部分を拡大して示すグラフであり、図8(c)は図8(a)の1200〜800cm−1の部分を拡大して示すグラフである。符号aのグラフはイネ由来多孔質シリカ体のグラフであり、符号bのグラフはイネの籾殻のグラフである。図8(a)〜図8(c)の縦軸は赤外線の吸収率(Absorbance。単位:a.u.)を示し、横軸は波数(Wavenumbers。単位:cm−1)を示す。
図9は、実験例におけるイネ由来多孔質シリカ体のX線回折結果を示すグラフである。図9の縦軸は強度(Intensity。単位:a.u.)を示し、横軸は2θ(単位:°)を示す。
実験例におけるイネ由来多孔質シリカ体についてX線回折による分析を行った結果、図9に示すように、2θ=22.5°付近にゆるやかなピークが確認できた。このため、イネ由来多孔質シリカ体におけるシリカは、非結晶性であるといえる。
まず、ナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体について、TEMによる観察及び光動的散乱法による粒子径分布の測定を行った。
図10は、実験例におけるナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体のTEM画像である。
図11は、実験例におけるナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体の粒子径分布を示すグラフである。符号aで示すグラフは、イネ由来多孔質シリカ体を粉砕した後、蒸留水中に分散させて分散液とし、その状態で1時間放置した後の上澄み中の粒子の粒子径分布である。符号bで示すグラフは、イネ由来多孔質シリカ体を粉砕した後、蒸留水中に分散させた分散液中の粒子の粒子径分布である。図11の縦軸は散乱強度(Intensity。単位:%)を示し、横軸は粒子径(Size。単位:nm)を示す。
また、図11に示すように、上澄み液に含まれる粒子の平均粒子径は220nmであった。粒子径の分散性を示すPDIは0.221となり、単分散の粒子が得られたといえる(図11のグラフa参照。)。
なお、今回の実験で使用した装置は、粒子径の分散が激しい場合や明らかな粗大粒子が存在する場合には正確な計測を行うことができない。このため、分散液に含まれる粒子については、計測範囲外の粗大粒子が存在するため正確な計測が不可能であった(図11のグラフb参照。)。
図12は、実験例におけるナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体の窒素ガス吸脱着等温線のグラフである。+印で示すプロットは吸着を表し、○印で示すプロットは脱離を表している。図12の縦軸は吸着量(Volume Absorbed。単位:cm3/g STP)を示し、横軸は相対圧力(Relative Pressure、P/P0)を示す。
図13は、IUPACの等温線分類及びヒステリシスパターンの分類を示すグラフである。図13(a)は等温線分類(I〜VIの6種類)を示すグラフであり、図13(b)はヒステリシスパターンの分類(H1〜H4の4種類)を示すグラフである。なお、図13のグラフの縦軸及び横軸が示すものは、図12の縦軸及び横軸と同様である。
図14は、実験例におけるナノ粒子化したイネ由来多孔質シリカ体の細孔径分布を示すグラフである。図14の縦軸は細孔容積(Pore Volume。単位:cm3/g・nm)を示し、横軸は細孔直径(Pore Diameter。単位:nm)を示す。
先に記したFE−SEM画像(図5(f)参照。)と比較して考えると、FE−SEM画像から数nm〜数十nm程度の細孔が確認されたため、イネ由来多孔質シリカ体の表面だけでなく内部に関しても一様に微細構造が存在すると考えられる。また、FE−SEM画像からはスリット状あるいは平板状の細孔の存在は確認できなかった。
まず、実験例に係る複合ナノ繊維及び比較用のシリカ体非含有ナノ繊維について、SEM及びTEMによる観察を行った。
図16は、実験例において、PCLに対し10wt%の薬剤含有多孔質シリカ体を添加した溶液から製造した複合ナノ繊維(以下、複合ナノ繊維Aという。)のSEMによる観察結果を示す図である。図16(a)及び図16(b)はそれぞれ倍率が異なるSEM画像であり、図16(c)はSEM画像から求めた繊維径の分布を示すグラフである。
図17は、実験例において、PCLに対し20wt%の薬剤含有多孔質シリカ体を添加した溶液から製造した複合ナノ繊維(以下、複合ナノ繊維Bという。)のSEMによる観察結果を示す図である。図17(a)及び図17(b)はそれぞれ倍率が異なるSEM画像であり、図17(c)はSEM画像から求めた繊維径の分布を示すグラフである。
図18は、実験例において、PCLに対し30wt%の薬剤含有多孔質シリカ体を添加した溶液から製造した複合ナノ繊維(以下、複合ナノ繊維Cという。)のSEMによる観察結果を示す図である。図18(a)及び図18(b)はそれぞれ倍率が異なるSEM画像であり、図18(c)はSEM画像から求めた繊維径の分布を示すグラフである。
図16〜図18に示すように、薬剤含有多孔質シリカ体を添加したサンプルにおいては、繊維表面にコブ状の突起が確認できた。
また、図19(b)に示すように、薬剤含有多孔質シリカ体における、小さい粒子が集合したように見える多孔質構造が確認できた(図19(b)の中央付近を参照。)。つまり、電界紡糸工程を経ても、薬剤含有多孔質シリカ体を構成するイネ由来多孔質シリカ体の微細孔は維持されていることが確認できた。
図20は、アラントインの紫外可視吸光スペクトルにおける検量線を示すグラフである。図20の縦軸は吸光度(Absorbance。単位:Abs.)を示し、横軸は濃度(Concentration。単位:ppm)を示す。
図21は、実験例におけるアラントイン放出の様子を示すグラフである。図21(a)は実験例における薬剤含有多孔質シリカ体のアラントイン放出の様子を示すグラフであり、図21(b)はアラントイン含有ナノ繊維、複合ナノ繊維A、複合ナノ繊維B及び複合ナノ繊維Cのアラントイン放出の様子を示すグラフである。図21(b)の符号aで示すのはアラントイン含有ナノ繊維のグラフであり、符号bで表すのは複合ナノ繊維Aのグラフであり、符号cで表すのは複合ナノ繊維Bのグラフであり、符号dで表すのは複合ナノ繊維Cのグラフである。図21の縦軸はアラントインの放出率(Cumulative release。単位:%)を示し、横軸は時間(Time。単位:図21(a)では分、図21(b)では時間)を示す。なお、薬剤含有多孔質シリカ体に関するアラントインの放出率は、最終的な放出量を100%として計算を行った。一方、アラントイン含有ナノ繊維については、その添加量により100%の放出を求めた。
アラントイン含有ナノ繊維に関しては、実験開始後、10時間以内に急激にアラントインを放出し、その後徐々に放出が緩やかになり、120時間後には内包するアラントインの80%を放出した。実験初期に急激にアラントインを放出したのは、アラントインがナノ繊維の表面近傍に集中して存在していた可能性を示す。アラントインは極性分子であるため、DMFとの親和性が高く、DCM及びPCLとの親和性が低い。このため、電界紡糸行程において溶媒が揮発する際に、DMF濃度の変化に合わせて、ナノ繊維表面にアラントインが移動したと考えられる。徐放開始初期に大量の薬物を放出してしまう現象は、初期バースト放出と言われ、薬物濃度の制御が困難となることから、徐放剤として用いる場合には好ましくないとされている。
各複合ナノ繊維においては、薬剤含有多孔質シリカ体の添加量が増加しても、30時間以降の放出速度に大きな差異は見られなかった。これは、薬剤含有多孔質シリカ体がナノ繊維中に1個ずつ並ぶように存在しているため、薬剤含有多孔質シリカ体が他の薬剤含有多孔質シリカ体からのアラントインの放出を妨げないためであると考えられる。このことから、薬物放出量を制御するためには、面積あたりのナノ繊維の量を制御する必要があると考えられる。ナノ繊維は極細であるため、面積あたりのナノ繊維の量を制御するためにナノ繊維を積層しても、例えば、創傷皮膜剤としての使用の障害とならない。つまり、実験例に係る複合ナノ繊維は、創傷皮膜剤に利用される徐放材料として優れた性能を有するものと考えられる。
以上の実験例により、本発明の複合ナノ繊維の製造方法により本発明の複合ナノ繊維を確かに製造可能であることが確認できた。
また、本発明の複合ナノ繊維は、徐放材料として好適に使用することが可能であることが確認できた。
Claims (10)
- イネの籾殻から金属成分及び有機成分を除去することで製造したイネ由来多孔質シリカ体に薬剤を含有させた薬剤含有多孔質シリカ体と、
前記薬剤含有多孔質シリカ体を担持しているナノ繊維とを備えることを特徴とする複合ナノ繊維。 - 請求項1に記載の複合ナノ繊維において、
前記薬剤含有多孔質シリカ体は、ナノ粒子化されたものであることを特徴とする複合ナノ繊維。 - イネの籾殻から金属成分及び有機成分を除去することで製造したイネ由来多孔質シリカ体に薬剤を含有させた薬剤含有多孔質シリカ体を準備する薬剤含有多孔質シリカ体準備工程と、
前記薬剤含有多孔質シリカ体をナノ繊維に担持させて複合ナノ繊維を製造する複合ナノ繊維製造工程とをこの順序で含むことを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。 - 請求項3に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
前記薬剤含有多孔質シリカ体準備工程は、
前記イネ由来多孔質シリカ体を準備するイネ由来多孔質シリカ体準備工程と、
前記イネ由来多孔質シリカ体に前記薬剤を含有させて前記薬剤含有多孔質シリカ体とする薬剤含有工程とをこの順序で含むことを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。 - 請求項4に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
前記薬剤含有多孔質シリカ体準備工程は、
前記イネ由来多孔質シリカ体準備工程の後に、前記イネ由来多孔質シリカ体を粉砕してナノ粒子化するナノ粒子化工程をさらに含むことを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。 - 請求項4又は5に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
前記イネ由来多孔質シリカ体準備工程では、前記イネの籾殻を塩酸水溶液に浸漬することで前記金属成分を除去することを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。 - 請求項4〜6のいずれかに記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
前記イネ由来多孔質シリカ体準備工程では、前記イネの籾殻を所定の温度で加熱することで前記有機成分を除去することを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。 - 請求項7に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
前記所定の温度は、500〜700℃の範囲内にあることを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。 - 請求項3〜8のいずれかに記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
前記複合ナノ繊維製造工程は、
前記薬剤含有多孔質シリカ体が分散したポリマー溶液である原料溶液を作製する原料溶液作製工程と、
前記原料溶液を電界紡糸して複合ナノ繊維を製造する電界紡糸工程とをこの順序で含むことを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。 - 請求項9に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
前記原料溶液作製工程では、前記ポリマー溶液とするための溶媒に前記薬剤含有多孔質シリカ体を分散させた後に、前記ポリマー溶液とするためのポリマー原料を溶解させることで前記原料溶液を作製することを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。
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JP2016060547A Active JP6772429B2 (ja) | 2016-03-24 | 2016-03-24 | 複合ナノ繊維の製造方法 |
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JP2022158879A (ja) * | 2021-04-01 | 2022-10-17 | 逢甲大學 | 有効成分を担持及び徐放可能なナノ粒子、その製造方法並びに眼用装置への応用 |
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JP2022158879A (ja) * | 2021-04-01 | 2022-10-17 | 逢甲大學 | 有効成分を担持及び徐放可能なナノ粒子、その製造方法並びに眼用装置への応用 |
JP7340284B2 (ja) | 2021-04-01 | 2023-09-07 | 逢甲大學 | 有効成分を担持及び徐放可能なナノ粒子、その製造方法並びに眼用装置への応用 |
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JP6772429B2 (ja) | 2020-10-21 |
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