上述したように、この従来の動力装置では、変速段が1速段であるときに、回転電機の動力が第1及び第2遊星歯車装置を介して駆動輪に伝達されるため、両者における各種のギヤの動力の伝達ロスが相乗されることによって、その効率が低下してしまう。同じ理由から、1速段の変速比が、2速段の変速比を定める第1遊星歯車装置の減速比に応じた値に定まるため、1速段及び2速段の変速比の設定の自由度が低く、また、この設定が困難になってしまう。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、効率を高めることができるとともに、2つの変速段の変速比を自由にかつ容易に設定することができる動力装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、被駆動部を駆動するための動力装置1、1A〜1Eであって、動力が出力される出力軸3aを有し、出力軸3aが軸線方向の両外側に延びるように設けられた動力源(実施形態における(以下、本項において同じ)回転電機3)と、第1回転要素(第1サンギヤS1、S1’)、第2回転要素(第1キャリヤC1、C1’)及び第3回転要素(第1リングギヤR1、R1’)を有し、第1〜第3回転要素の回転数が共線図において単一の直線上にこの順で並ぶ共線関係を満たすように構成され、出力軸3aの一端部に同軸状に設けられた第1遊星歯車装置4、51と、第4回転要素(第2サンギヤS2、S2’)、第5回転要素(第2キャリヤC2、C2’)及び第6回転要素(第2リングギヤR2、R2’)を有し、第4〜第6回転要素の回転数が共線図において単一の直線上にこの順で並ぶ共線関係を満たし、第6回転要素を固定した状態で第4及び第5回転要素を回転させたときの第4回転要素の回転数に対する第5回転要素の回転数の比である第2回転数比が、第1遊星歯車装置の第3回転要素を固定した状態で第1及び第2回転要素を回転させたときの第1回転要素の回転数に対する第2回転要素の回転数の比である第1回転数比と異なるように構成され、出力軸3aの他端部に同軸状に設けられた第2遊星歯車装置5、52と、を備え、第1及び第4回転要素は、出力軸3a及び被駆動部の一方に機械的に連結されるとともに、第2及び第5回転要素は、出力軸3a及び被駆動部の他方に機械的に連結され、第1及び第2回転要素のうちの被駆動部に連結される回転要素である第1被連結要素に、第1被連結要素と一体に回転するように機械的に連結され、第1被連結要素を被駆動部に連結するための第1回転体(第1回転軸8、21)と、第4及び第5回転要素のうちの被駆動部に連結される回転要素である第2被連結要素に、第2被連結要素と一体に回転するように機械的に連結され、第2被連結要素を被駆動部に連結するための第2回転体(第2回転軸9)と、第3及び第6回転要素が機械的に連結された回転不能な不動部(ケースCA)と、動力源から第1遊星歯車装置4、51及び第1回転体を介した被駆動部への動力の伝達を接続/遮断するための第1接断装置(第1クラッチ6、ワンウェイクラッチ31、ワンウェイクラッチ61)と、動力源から第2遊星歯車装置5、52及び第2回転体を介した被駆動部への動力の伝達を接続/遮断するための第2接断装置(第2クラッチ7)と、をさらに備えることを特徴とする。
この構成によれば、動力源の出力軸が軸線方向の両外側に延びており、出力軸の軸線方向の一端部に第1遊星歯車装置が、出力軸の軸線方向の他端部に第2遊星歯車装置が、それぞれ同軸状に設けられている。第1遊星歯車装置の第1〜第3回転要素の回転数が、共線図において単一の直線上にこの順で並ぶ共線関係を満たしている。また、第2遊星歯車装置の第4〜第6回転要素の回転数が、共線図において単一の直線上にこの順で並ぶ共線関係を満たしており、第6回転要素を固定した状態で第4及び第5回転要素を回転させたときの第4回転要素の回転数に対する第5回転要素の回転数の比である第2回転数比が、第1遊星歯車装置の第3回転要素を固定した状態で第1及び第2回転要素を回転させたときの第1回転要素の回転数に対する第2回転要素の回転数の比である第1回転数比と異なっている。
また、第1及び第4回転要素が、出力軸及び被駆動部の一方に機械的に連結されるとともに、第2及び第5回転要素が、出力軸及び被駆動部の他方に機械的に連結されている。第1及び第2回転要素のうちの被駆動部に連結される回転要素である第1被連結要素が、第1回転体を介して被駆動部に機械的に連結されており、第4及び第5回転要素のうちの被駆動部に連結される回転要素である第2被連結要素が、第2回転体を介して被駆動部に機械的に連結されている。第1及び第2回転体はそれぞれ、第1及び第2被連結要素に、前者及び後者と一体に回転するように機械的に連結されている。また、第3及び第6回転要素が、回転不能な不動部に機械的に連結されている。さらに、動力源から第1遊星歯車装置及び第1回転体を介した被駆動部への動力の伝達が、第1接断装置によって接続/遮断されるとともに、動力源から第2遊星歯車装置及び第2回転体を介した被駆動部への動力の伝達が、第2接断装置によって接続/遮断される。
以上の構成より、第2回転数比が第1回転数比よりも大きく、また、第1及び第4回転要素が出力軸に、第2及び第5回転要素が被駆動部に、それぞれ連結され、第1接断装置により動力源から第1遊星歯車装置及び第1回転体を介した被駆動部への動力の伝達が接続されるとともに、第2接断装置により動力源から第2遊星歯車装置及び第2回転体を介した被駆動部への動力の伝達が遮断されている場合における出力軸、第1〜第3回転要素、第1回転体及び被駆動部の間の回転数の関係は、例えば図14のように表される。
また、上記のように第1及び第2回転数比が設定されるとともに各種の回転要素が連結され、かつ、第1接断装置により動力源から第1遊星歯車装置及び第1回転体を介した被駆動部への動力の伝達が遮断されるとともに、第2接断装置により動力源から第2遊星歯車装置及び第2回転体を介した被駆動部への動力の伝達が接続されている場合における出力軸、第4〜第6回転要素、第2回転体及び被駆動部の間の回転数の関係は、例えば図15のように表される。
これらの図14及び図15ならびに後述する他の共線図では、値0を示す横線から縦線上の白丸までの距離が、各回転要素の回転数に相当する。なお、図14及び図15はそれぞれ、第1及び第2回転体が被駆動部に直接、連結されている場合の例であるが、ギヤなどを介して連結されていてもよい。また、図14及び図15において、Tmは動力源の出力トルクであり、Roは被駆動部の反力トルク、Rb1及びRb2はそれぞれ、第3及び第6回転要素に作用する不動部の反力トルクである。
図14に示すように、第1接断装置による動力の伝達の接続が実行されるとともに、第2接断装置による動力の伝達の遮断が実行されているときには、第1回転要素に伝達された動力源の出力トルクTmが、第3回転要素に作用する不動部の反力トルクRb1を反力として、第1被連結要素としての第2回転要素に伝達され、さらに第1回転体を介して、被駆動部に伝達される。この場合、動力源の出力トルクTmが第2遊星歯車装置の第4回転要素にも伝達されるものの、第2接断装置によって、動力源から第2遊星歯車装置を介した被駆動部への動力の伝達が遮断される。
また、図15に示すように、第1接断装置による動力の伝達の遮断が実行されるとともに、第2接断装置による動力の伝達の接続が実行されているときには、第4回転要素に伝達された動力源の出力トルクTmが、第6回転要素に作用する不動部の反力トルクRb2を反力として、第2被連結要素としての第5回転要素に伝達され、さらに第2回転体を介して、被駆動部に伝達される。この場合、動力源の出力トルクTmが第1遊星歯車装置の第1回転要素にも伝達されるものの、第1接断装置によって、動力源から第1遊星歯車装置を介した被駆動部への動力の伝達が遮断される。
図14と図15の比較から明らかなように、第1接断装置による動力の伝達の接続が実行されるとともに、第2接断装置による動力の伝達の遮断が実行されることによって、動力源の動力は、第1回転要素などの第1遊星歯車装置を介して、より低速側の1速段の変速比で被駆動部に伝達される。また、第1接断装置による動力の伝達の遮断が実行されるとともに、第2接断装置による動力の伝達の接続が実行されることによって、動力源の動力は、第4回転要素などの第2遊星歯車装置を介して、より高速側の2速段の変速比で被駆動部に伝達される。また、図14及び図15から明らかなように、これらのいずれの場合にも、動力源の動力は、減速した状態で被駆動部に伝達される。
なお、図14及び図15に示すような連結態様において、第2回転数比が第1回転数比よりも小さい場合には、動力源の動力は、第1遊星歯車装置を介して被駆動部に伝達されることによって、より高速側の2速段の変速比で伝達され、第2遊星歯車装置を介して被駆動部に伝達されることによって、より低速側の1速段の変速比で伝達される。
また、第2回転数比が第1回転数比よりも小さく、第2及び第5回転要素が出力軸に、第1及び第4回転要素が被駆動部に、それぞれ連結され、第1接断装置により動力源から第1遊星歯車装置及び第1回転体を介した被駆動部への動力の伝達が接続されるとともに、第2接断装置により動力源から第2遊星歯車装置及び第2回転体を介した被駆動部への動力の伝達が遮断されている場合における出力軸、第1〜第3回転要素、第1回転体及び被駆動部の間の回転数の関係は、例えば図16のように表される。
さらに、上記のように第1及び第2回転数比が設定されるとともに各種の回転要素が連結され、かつ、第1接断装置により動力源から第1遊星歯車装置及び第1回転体を介した被駆動部への動力の伝達が遮断されるとともに、第2接断装置により第2遊星歯車装置及び第2回転体を介した動力源から被駆動部への動力の伝達が接続されている場合における出力軸、第4〜第6回転要素、第2回転体及び被駆動部の間の回転数の関係は、例えば図17のように表される。なお、図16及び図17は、第1及び第4回転要素が被駆動部に直接、連結されている場合の例であるが、ギヤなどを介して連結されていてもよい。
図16に示すように、第1接断装置による動力の伝達の接続が実行されるとともに、第2接断装置による動力の伝達の遮断が実行されているときには、第2回転要素に伝達された動力源の出力トルクTmは、第3回転要素に作用する不動部の反力トルクRb1を反力として、第1被連結要素としての第1回転要素に伝達され、さらに第1回転体を介して、被駆動部に伝達される。この場合、動力源の出力トルクTmが第2遊星歯車装置の第5回転要素にも伝達されるものの、第2接断装置によって、動力源から第2遊星歯車装置を介した被駆動部への動力の伝達が遮断される。
また、図17に示すように、第1接断装置による動力の伝達の遮断が実行されるとともに、第2接断装置による動力の伝達の接続が実行されているときには、第5回転要素に伝達された動力源の出力トルクTmは、第6回転要素に作用する不動部の反力トルクRb2を反力として、第2被連結要素としての第4回転要素に伝達され、さらに第2回転体を介して、被駆動部に伝達される。この場合、動力源の出力トルクTmが第1遊星歯車装置の第2回転要素にも伝達されるものの、第1接断装置によって、動力源から第1遊星歯車装置を介した被駆動部への動力の伝達が遮断される。
図16と図17の比較から明らかなように、第1接断装置による動力の伝達の接続が実行されるとともに、第2接断装置による動力の伝達の遮断が実行されることによって、動力源の動力は、第1回転要素などの第1遊星歯車装置を介して、より低速側の1速段の変速比で被駆動部に伝達される。また、第1接断装置による動力の伝達の遮断が実行されるとともに、第2接断装置による動力の伝達の接続が実行されることによって、動力源の動力は、第4回転要素などの第2遊星歯車装置を介して、より高速側の2速段の変速比で被駆動部に伝達される。また、図16及び図17から明らかなように、これらのいずれの場合にも、図14及び図15の場合とは異なり、動力源の動力は、増速した状態で被駆動部に伝達される。
なお、図16及び図17に示すような連結態様において、第2回転数比が第1回転数比よりも大きい場合には、動力源の動力は、第1遊星歯車装置を介して被駆動部に伝達されることによって、より高速側の2速段の変速比で伝達され、第2遊星歯車装置を介して被駆動部に伝達されることによって、より低速側の1速段の変速比で伝達される。
以上のように、本発明による動力装置では、前述した従来の動力装置と異なり、1速段及び2速段の一方の変速比で変速した状態で動力源の動力を被駆動部に伝達するにあたって、この動力の伝達を、対応する第1及び第2遊星歯車装置の一方を用いて行うので、動力装置の効率を高めることができる。また、1速段の変速比を、対応する第1及び第2回転数比の一方を調整するだけで設定でき、2速段の変速比を、対応する第1及び第2回転数比の他方を調整するだけで設定できるので、これらの2つの変速段の変速比を自由にかつ容易に設定することができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の動力装置1、1A〜1Eにおいて、第1遊星歯車装置4、51は、シングルピニオンタイプの遊星歯車装置であり、第1回転要素としての第1サンギヤS1、S1’と、第1サンギヤS1、S1’に噛み合う第1ピニオンギヤP1、P1’と、第1ピニオンギヤP1、P1’を回転自在に支持する、第2回転要素としての第1キャリヤC1、C1’と、第1ピニオンギヤP1、P1’に噛み合う、第3回転要素としての第1リングギヤR1、R1’と、を有し、第2遊星歯車装置5、52は、シングルピニオンタイプの遊星歯車装置であり、第4回転要素としての第2サンギヤS2、S2’と、第2サンギヤS2、S2’に噛み合う第2ピニオンギヤP2、P2’と、第2ピニオンギヤP2、P2’を回転自在に支持する、第5回転要素としての第2キャリヤC2、C2’と、第2ピニオンギヤP2、P2’に噛み合う、第6回転要素としての第2リングギヤR2、R2’と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、第1遊星歯車装置が、シングルピニオンタイプの遊星歯車装置であり、第1回転要素としての第1サンギヤと、第1サンギヤに噛み合う第1ピニオンギヤと、第1ピニオンギヤを回転自在に支持する、第2回転要素としての第1キャリヤと、第1ピニオンギヤに噛み合う、第3回転要素としての第1リングギヤを有している。また、第2遊星歯車装置が、第1遊星歯車装置と同様に、シングルピニオンタイプの遊星歯車装置であり、第4回転要素としての第2サンギヤと、第2サンギヤに噛み合う第2ピニオンギヤと、第2ピニオンギヤを回転自在に支持する、第5回転要素としての第2キャリヤと、第2ピニオンギヤに噛み合う、第6回転要素としての第2リングギヤを有している。
したがって、請求項1に係る発明の説明で述べた動力装置の動作を適切に得ることができる。また、これらの第1及び第2遊星歯車装置として、ダブルピニオンタイプの遊星歯車装置を用いた場合と比較して、ピニオンギヤと他のギヤとの噛み合いによる動力の伝達ロスを低減することができ、ひいては、動力装置の効率をさらに高めることができる。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の動力装置1、1A〜1Eにおいて、出力軸3aは中空状に形成され、第1回転体は、中空の第1回転軸8、21で構成されるとともに、動力源に対して軸線方向の反対側に延びており、第2回転体は、出力軸3aの内側に回転自在に部分的に嵌合するとともに、第1回転軸8、21側に延びるように設けられた中空の第2回転軸9で構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、出力軸が中空状に形成されており、第1遊星歯車装置の第1又は第2回転要素に連結された第1回転体が、中空の第1回転軸で構成されるとともに、動力源に対して軸線方向の反対側に延びている。また、第2遊星歯車装置の第4又は第5回転要素に連結された第2回転体が、中空の第2回転軸で構成されており、第2回転軸は、出力軸の内側に回転自在に部分的に嵌合するとともに、第1回転軸側に延びるように設けられている。前述したように、第1遊星歯車装置は、動力源の出力軸の一端部側に設けられている。以上の構成より、第1遊星歯車装置で変速された動力源の動力及び第2遊星歯車装置で変速された動力源の動力をいずれも、動力源の一端部側から被駆動部に伝達できるので、動力装置のレイアウトの自由度を高めることができる。
また、動力装置の各種の回転要素の連結態様、ならびに第1及び第2回転数比の設定手法として、前述した図14〜図17に示すような連結態様ならびに設定手法を採用した場合には、これらの図14〜図17から明らかなように、第1回転体としての第1回転軸に伝達されるトルクは、第2回転体としての第2回転軸に伝達されるトルクよりも大きくなる。これに対して、本発明によれば、第1及び第2回転軸を被駆動部に連結するにあたって、上述した構成により、第2回転軸に対して第1回転軸を短くできるので、トルクに対する第1回転軸の捩れを小さくすることができる。
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の動力装置1、1Dにおいて、第1回転軸8の径は、第2回転軸9の径よりも大きく設定されていることを特徴とする。
請求項3に係る発明の説明で述べたように、動力装置の各種の回転要素の連結態様、ならびに第1及び第2回転数比の設定手法として、前述した図14〜図17に示すような連結態様ならびに設定手法を採用した場合には、第1回転軸に伝達されるトルクは、第2回転軸に伝達されるトルクよりも大きくなる。これに対して、上述した構成によれば、第1回転軸の径が第2回転軸の径よりも大きく設定されているので、トルクに対する第1回転軸の捩れをさらに小さくすることができる。
請求項5に係る発明は、請求項3に記載の動力装置1A〜1C、1Eにおいて、第2回転軸9における第1回転軸21側の部分が、第1回転軸21と一体に構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、第2回転軸における第1回転軸側の部分が、第1回転軸と一体に構成されているので、第1及び第2回転軸を被駆動部に、例えば2段スプライン構造を用いずに連結でき、ひいては、動力装置を容易に構成することができる。
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の動力装置1、1A、1C、1Dにおいて、第1接断装置は、第3回転要素と不動部の間を接続/遮断するための第1クラッチ6を有し、第2接断装置は、第6回転要素と不動部の間を接続/遮断するための第2クラッチ7を有することを特徴とする。
この構成によれば、第3回転要素と不動部の間を第1接断装置の第1クラッチで接続することによって、不動部の反力トルクTb1が第3回転要素に作用する。一方、第3回転要素と不動部の間を第1クラッチで遮断することによって、不動部の反力トルクTb1が第3回転要素に作用しなくなり、それにより第3回転要素が空転する結果、動力源から第1遊星歯車装置及び第1回転体を介した被駆動部への動力の伝達が遮断される。
また、第6回転要素と不動部の間を第2接断装置の第2クラッチで接続することによって、不動部の反力トルクTb2が第6回転要素に作用する。一方、第6回転要素と不動部の間を第2クラッチで遮断することによって、不動部の反力トルクTb2が第6回転要素に作用しなくなり、それにより第6回転要素が空転する結果、動力源から第2遊星歯車装置及び第2回転体を介した被駆動部への動力の伝達が遮断される。以上より、請求項6に係る発明の構成によれば、第1及び第2クラッチの接続/遮断を制御することによって、請求項1に係る発明で説明した動作を適切に実行することができる。
請求項7に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の動力装置1Bにおいて、第2遊星歯車装置5は、第2回転数比が第1回転数比よりも大きくなるように構成され、第1及び第4回転要素は、出力軸3aに連結されるとともに、第1及び第2被連結要素はそれぞれ、第2及び第5回転要素であり、第1接断装置は、第2回転要素と第1回転体の間に設けられ、第1回転体の回転数が第2回転要素の回転数以下であるときに、第1回転体と第2回転要素の間を接続し、第1回転体の回転数が第2回転要素の回転数よりも高いときに、第1回転体と第2回転要素の間を遮断するワンウェイクラッチ31を有し、第2接断装置は、第6回転要素と不動部の間を接続/遮断するためのクラッチ(第2クラッチ7)を有しており、第1及び第2回転体を被駆動部に連結するための共通の動力伝達経路(駆動軸11)をさらに備えることを特徴とする。
この構成によれば、第2遊星歯車装置は、その第2回転数比が第1遊星歯車装置の前述した第1回転数比よりも大きくなるように構成されており、第1及び第4回転要素が出力軸に連結されるとともに、第1被連結要素である第2回転要素、及び第2被連結要素である第5回転要素が、被駆動部に連結されている。また、第1及び第2回転体が、共通の動力伝達経路を介して被駆動部に連結されている。さらに、第1被連結要素と第1回転体の間には、ワンウェイクラッチが設けられており、このワンウェイクラッチによって、第1回転体と第1被連結要素すなわち第2回転要素の間は、第1回転体の回転数が第2回転要素の回転数以下であるときに接続され、第1回転体の回転数が第2回転要素の回転数よりも高いときに遮断される。また、第2接断装置のクラッチによって、第6回転要素と不動部の間が接続/遮断される。
以上の構成より、クラッチによって第6回転要素と不動部の間が遮断されている場合における動力装置の各種の回転要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係は、例えば図18のように表される。なお、図18は、第1及び第2回転体が被駆動部に直接、連結されている場合の例であるが、ギヤなどを介して連結されていてもよい。
この場合、クラッチによる遮断により、不動部の反力トルクRb2が第6回転要素に作用しないため、前述した請求項6に係る発明の場合と同様に、動力源から第2遊星歯車装置を介した被駆動部への動力の伝達が遮断されるとともに、図18に示すように、第4回転要素、第5回転要素、第2回転体及び第6回転要素が空転する。また、第1回転要素に伝達された動力源の出力トルクTmは、不動部の反力トルクRb1を反力として、第2回転要素に伝達される。上述したように、動力源から第2遊星歯車装置を介した被駆動部への動力の伝達が遮断されているので、第1回転体の回転数が第2回転要素のそれよりも高くはならないため、第2回転要素と第1回転体の間がワンウェイクラッチによって自動的に接続状態に保持され、その結果、第2回転要素に伝達された動力源からのトルクは、第1回転体を介して被駆動部に伝達される。さらに、上述したように、第1及び第2回転体が共通の動力伝達経路を介して被駆動部に連結されているため、第1及び第2回転体の回転数は互いに等しくなる。
また、クラッチによって第6回転要素と不動部の間が接続されている場合における各種の回転要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係は、例えば図19のように表される。なお、図19は、図18と同様、第1及び第2回転体が被駆動部に直接、連結されている場合の例であるが、ギヤなどを介して連結されていてもよい。
図19に示すように、第4回転要素に伝達された動力源の出力トルクTmは、不動部の反力トルクRb2を反力として、第5回転要素及び第2回転体を介して、被駆動部に伝達される。この場合、第1回転要素に伝達された動力源の出力トルクTmは、不動部の反力トルクRb1を反力として、第2回転要素に伝達され、それにより第2回転要素が回転するものの、第1回転体が、被駆動部からの動力の伝達により第2回転体と同じ回転数で回転するため、第1回転体の回転数が第2回転要素の回転数よりも高くなり、それにより、第1回転体と第2回転要素の間が、前述したワンウェイクラッチによって自動的に遮断される。その結果、動力源の出力トルクTmは、第1遊星歯車装置を介しては被駆動部に伝達されず、第1及び第2回転要素が空転する。したがって、第3回転要素に作用する不動部の反力トルクRb1は、ほぼ値0になる。
図18と図19の比較から明らかなように、動力装置では、動力源の動力は、クラッチによる遮断を実行することにより、第1遊星歯車装置を介してより低速側の1速段の変速比で減速した状態で被駆動部に伝達され、また、クラッチによる接続を実行することにより、第2遊星歯車装置を介してより高速側の2速段の変速比で減速した状態で被駆動部に伝達される。以上のように、クラッチによる接続/遮断を制御するだけで、ワンウェイクラッチについては何ら制御することなく、変速段を容易に変更することができる。
請求項8に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の動力装置1Eにおいて、第2遊星歯車装置51は、第2回転数比が第1回転数比よりも小さくなるように構成され、第2及び第5回転要素は、出力軸に連結されるとともに、第1及び第2被連結要素はそれぞれ、第1及び第4回転要素であり、第1接断装置は、第1回転要素と第1回転体の間に設けられ、第1回転体の回転数が第1回転要素の回転数以下であるときに、第1回転体と第1回転要素の間を接続し、第1回転体の回転数が第1回転要素の回転数よりも高いときに、第1回転体と第1回転要素の間を遮断するワンウェイクラッチ61を有し、第2接断装置は、第6回転要素と不動部の間を接続/遮断するためのクラッチ(第2クラッチ7)を有しており、第1及び第2回転体を被駆動部に連結するための共通の動力伝達経路(駆動軸11)をさらに備えることを特徴とする。
この構成によれば、第2遊星歯車装置は、その第2回転数比が第1遊星歯車装置の第1回転数比よりも小さくなるように構成されており、第2及び第5回転要素が出力軸に連結されるとともに、第1被連結要素である第1回転要素、及び第2被連結要素である第4回転要素が、被駆動部に連結されている。また、第1及び第2回転体が、共通の動力伝達経路を介して被駆動部に連結されている。さらに、第1被連結要素と第1回転体の間には、ワンウェイクラッチが設けられており、このワンウェイクラッチによって、第1回転体と第1被連結要素すなわち第1回転要素の間は、第1回転体の回転数が第1回転要素の回転数以下であるときに接続され、第1回転体の回転数が第1回転要素の回転数よりも高いときに遮断される。また、第2接断装置のクラッチによって、第6回転要素と不動部の間が接続/遮断される。
以上の構成より、クラッチによって第6回転要素と不動部の間が遮断されている場合における動力装置の各種の回転要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係は、例えば図20のように表される。なお、図20は、第1及び第2回転体が被駆動部に直接、連結されている場合の例であるが、ギヤなどを介して連結されていてもよい。
この場合、クラッチによる遮断により、不動部の反力トルクRb2が第6回転要素に作用しないため、前述した請求項6に係る発明の場合と同様に、動力源から第2遊星歯車装置を介した被駆動部への動力の伝達が遮断されるとともに、図20に示すように、第5回転要素、第4回転要素、第2回転体及び第6回転要素が空転する。また、第2回転要素に伝達された動力源の出力トルクTmは、不動部の反力トルクRb1を反力として、第1回転要素に伝達される。上述したように、動力源から第2遊星歯車装置を介した被駆動部への動力の伝達が遮断されているので、第1回転体の回転数が第1回転要素のそれよりも高くはならないため、第1回転要素と第1回転体の間がワンウェイクラッチによって自動的に接続状態に保持され、その結果、第1回転要素に伝達された動力源からのトルクは、第1回転体を介して被駆動部に伝達される。さらに、上述したように、第1及び第2回転体が共通の動力伝達経路を介して被駆動部に連結されているため、第1及び第2回転体の回転数は互いに等しくなる。
また、クラッチによって第6回転要素と不動部の間が接続されている場合における各種の回転要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係は、例えば図21のように表される。なお、図21は、図20と同様、第1及び第2回転体が被駆動部に直接、連結されている場合の例であるが、ギヤなどを介して連結されていてもよい。
図21に示すように、第5回転要素に伝達された動力源の出力トルクTmは、不動部の反力トルクRb2を反力として、第4回転要素及び第2回転体を介して、被駆動部に伝達される。この場合、第2回転要素に伝達された動力源の出力トルクTmは、不動部の反力トルクRb1を反力として、第1回転要素に伝達され、それにより第1回転要素が回転するものの、第1回転体が、被駆動部からの動力の伝達により第2回転体と同じ回転数で回転するため、第1回転体の回転数が第1回転要素の回転数よりも高くなり、それにより、第1回転体と第1回転要素の間が、前述したワンウェイクラッチによって自動的に遮断される。その結果、動力源の出力トルクTmは、第1遊星歯車装置を介しては被駆動部に伝達されず、第2及び第1回転要素が空転する。したがって、第3回転要素に作用する不動部の反力トルクRb1は、ほぼ値0になる。
図20と図21の比較から明らかなように、動力装置では、動力源の動力は、クラッチによる遮断を実行することにより、第1遊星歯車装置を介してより低速側の1速段の変速比で増速した状態で被駆動部に伝達され、また、クラッチによる接続を実行することにより、第2遊星歯車装置を介してより高速側の2速段の変速比で増速した状態で被駆動部に伝達される。以上のように、クラッチによる接続/遮断を制御するだけで、ワンウェイクラッチについては何ら制御することなく、変速段を容易に変更することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明による第1実施形態による動力装置1を、これを適用した車両(図示せず)の駆動軸11とともに示している。この駆動軸11は、その一端部に、第1スプライン軸部11a及び第2スプライン軸部11bから成る2段スプライン軸部が設けられており、被駆動部としての車両の駆動輪に、自在継ぎ手(いずれも図示せず)などを介して連結されている。第1スプライン軸部11aの径は、第2スプライン軸部11bの径よりも大きく設定され、両者11a、11bの外周面には、多数の歯溝が形成されており、これらの歯溝は、周方向に連続するとともに、軸線方向に延びている。
動力装置1は、動力源としての回転電機3と、回転電機3の動力を駆動軸11に伝達するための第1遊星歯車装置4、第2遊星歯車装置5、第1クラッチ6及び第2クラッチ7を備えている。回転電機3は、例えばACモータであって、ケースCAに固定されたステータと、回転自在のロータ(いずれも図示せず)と、ロータに同軸状に一体に設けられた出力軸3aを有している。ケースCAは、車両のシャーシ(図示せず)に固定されており、回転不能である。また、出力軸3aは、中空状に形成されており、回転電機3の軸線方向の両外側に延びている。回転電機3では、ステータに供給された電力が、ロータで動力に変換され、出力軸3aに出力される。
また、回転電機3のステータは、パワードライブユニット(以下「PDU」という)15を介して、放電可能なバッテリ16に電気的に接続されている。このPDU15は、インバータなどの電気回路で構成されている。図2に示すように、PDU15には、後述するECU2が電気的に接続されており、ECU2は、PDU15を制御することによって、回転電機3に供給する電力と、出力軸3aの回転数を制御する。
第1遊星歯車装置4は、シングルピニオンタイプのものであって、第1サンギヤS1と、第1サンギヤS1に噛み合う第1ピニオンギヤP1と、第1ピニオンギヤP1を回転自在に支持する第1キャリヤC1と、第1サンギヤS1の外周に設けられるとともに、第1ピニオンギヤP1に噛み合う第1リングギヤR1を有しており、回転電機3の出力軸3aの一端部に同軸状に設けられている。第1サンギヤS1は、リング状に形成されており、出力軸3aの一端部に同軸状に一体に設けられている。第1キャリヤC1は、第1回転軸8の一端部に同軸状に一体に設けられている。
上記の第1回転軸8は、中空状に形成されるとともに、第1キャリヤC1から回転電機3に対して軸線方向の反対側に延びており、その他端部の内周面には、前記第1スプライン軸部11aの多数の歯溝に噛み合う多数の歯溝(図示せず)が形成されている。この構成により、第1回転軸8は、駆動軸11に同軸状にスプライン結合されており、それにより駆動軸11と一体に回転自在である。
上記の第2遊星歯車装置5は、第1遊星歯車装置4と同様、シングルピニオンタイプのものであって、第2サンギヤS2と、第2サンギヤS2に噛み合う第2ピニオンギヤP2と、第2ピニオンギヤP2を回転自在に支持する第2キャリヤC2と、第2サンギヤS2の外周に設けられるとともに、第2ピニオンギヤP2に噛み合う第2リングギヤR2を有しており、回転電機3の出力軸3aの他端部に同軸状に設けられている。第2サンギヤS2は、リング状に形成されており、出力軸3aの他端部に同軸状に一体に設けられている。第2キャリヤC2は、第2回転軸9の一端部に同軸状に一体に設けられている。
上記の第2回転軸9は、中空状に形成されており、その径が出力軸3a及び第1回転軸8の径よりも小さく設定されている。また、第2回転軸9は、第1回転軸8側に延びるとともに、出力軸3の内側に回転自在に部分的に嵌合しており、その他端部側の部分が、第1回転軸8の内側に回転自在に嵌合している。また、第2回転軸9の他端部の内周面には、前記第2スプライン軸部11bの多数の歯溝に噛み合う多数の歯溝(図示せず)が形成されている。この構成により、第2回転軸9は、駆動軸11に同軸状にスプライン結合されており、それにより駆動軸11及び第1回転軸8と一体に回転自在である。また、第1回転軸8は、第2回転軸9よりも短い。
また、第2リングギヤR2の歯数ZR2に対する第2サンギヤS2の歯数ZS2の比(ZS2/ZR2)は、第1リングギヤR1の歯数ZR1に対する第1サンギヤS1の歯数ZS1の比(ZS1/ZR1)よりも大きく設定されている。これにより、第2リングギヤR2を固定した状態で第2サンギヤS2及び第2キャリヤC2を回転させたときの第2サンギヤS2の回転数に対する第2キャリヤC2の回転数の比(以下「第2回転数比」という)が、第1リングギヤR1を固定した状態で第1サンギヤS1及び第1キャリヤC1を回転させたときの第1サンギヤS1の回転数に対する第1キャリヤC1の回転数の比(以下「第1回転数比」という)よりも大きくなるように、第2遊星歯車装置5が構成されている。
前記第1クラッチ6は、回転電機3から第1遊星歯車装置4及び第1回転軸8を介した車輪への動力の伝達を接続/遮断するためのものであり、例えば油圧式の摩擦クラッチなどで構成されている。具体的には、第1クラッチ6は、ケースCAに、軸線方向に移動可能にかつ回転不能に設けられたリング状のアウターと、第1リングギヤR1に一体に設けられたリング状のインナーと、第1油圧制御弁6a(図2参照)を有している。第1クラッチ6のアウター及びインナーの各々には、多数のクラッチ板(図示せず)が設けられており、両者のクラッチ板は軸線方向に交互に配置されている。また、アウターは、リターンスプリングで付勢されることによって、解放位置に保持されており、油圧ポンプ(いずれも図示せず)から供給される油圧で駆動される。第1油圧制御弁6aは、この油圧ポンプからアウターに供給される油圧を制御するためのものであって、例えば電磁弁で構成されており、その開度がECU2によって制御される。
以上の構成の第1クラッチ6では、第1油圧制御弁6aが全閉され、それによりアウターへの油圧の供給が停止されると、アウター及びインナーのクラッチ板が互いに係合せず、その結果、ケースCAと第1リングギヤR1の間が、第1クラッチ6によって遮断される。また、第1油圧制御弁6aが開弁され、それによりアウターへの油圧の供給が行われると、アウターが駆動されることによって、アウター及びインナーのクラッチ板が互いに係合する結果、ケースCAと第1リングギヤR1の間が、第1クラッチ6によって接続される。この場合、第1油圧制御弁6aの開度をECU2で制御することによって、第1クラッチ6によるケースCAと第1リングギヤR1の間の接続度合が変化することで、第1クラッチ6を介して第1リングギヤR1に作用するケースCAの制動力(反力トルク)が制御される。
また、第2クラッチ7は、回転電機3から第2遊星歯車装置5及び第2回転軸9を介した車輪への動力の伝達を接続/遮断するためのものであり、第1クラッチ6と同様、例えば油圧式の摩擦クラッチなどで構成されている。具体的には、第2クラッチ7は、ケースCAに、軸線方向に移動可能にかつ回転不能に設けられたリング状のアウターと、第2リングギヤR2に一体に設けられたリング状のインナーと、第2油圧制御弁7a(図2参照)を有している。これらのアウター、インナー及び第2油圧制御弁7aはそれぞれ、第1クラッチ6のアウター、インナー及び第1油圧制御弁6aと同様に構成されている。
第2クラッチ7では、第2油圧制御弁7aが全閉され、それによりアウターへの油圧の供給が停止されると、アウター及びインナーのクラッチ板が互いに係合せず、その結果、ケースCAと第2リングギヤR2の間が、第2クラッチ7によって遮断される。また、第2油圧制御弁7aが開弁され、それによりアウターへの油圧の供給が行われると、アウターが駆動されることによって、アウター及びインナーのクラッチ板が互いに係合する結果、ケースCAと第2リングギヤR2の間が、第2クラッチ7によって接続される。この場合、第2油圧制御弁7aの開度をECU2で制御することによって、第2クラッチ7によるケースCAと第2リングギヤR2の間の接続度合が変化することで、第2クラッチ7を介して第2リングギヤR2に作用するケースCAの制動力(反力トルク)が制御される。
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAM及びROMなどから成るマイクロコンピュータで構成されており、ROMに記憶された制御プログラムに従って、回転電機3や、第1油圧制御弁6a、第2油圧制御弁7aを制御する。
以上の構成の動力装置1では、第1及び第2遊星歯車装置4、5ならびに第1及び第2クラッチ6、7は、所定の1速段及び2速段から成る2つの変速段を有する変速装置として機能し、回転電機3の動力は、これらの1速段又は2速段の変速比で変速された状態で、駆動軸11に伝達され、さらに車輪に伝達される。以下、図3及び図4を参照しながら、動力装置1の動作について説明する。
変速段が1速段であるときには、第1クラッチ6によりケースCAと第1リングギヤR1の間が接続されるとともに、第2クラッチ7によりケースCAと第2リングギヤR2の間が遮断される。図3は、変速段が1速段である場合における各種の回転要素の間の回転数の関係を表している。第1遊星歯車装置4は、前述したように一般的なシングルピニオンタイプのものであるため、図3に示すように、第1サンギヤS1、第1キャリヤC1及び第1リングギヤR1の回転数は、それらの回転数の関係を表す共線図において、単一の直線上にこの順で並ぶ共線関係にある。また、各種の回転要素の間の前述した連結関係から明らかなように、第1サンギヤS1の回転数は、回転電機3の出力軸3aの回転数と等しく、第1キャリヤC1の回転数は、第1回転軸8及び駆動軸11の回転数と等しい。
さらに、第2遊星歯車装置5は、第1遊星歯車装置4と同様に一般的なシングルピニオンタイプのものであり、前述した第2回転数比が、第1遊星歯車装置4の第1回転数比よりも大きく設定されている。さらに、各種の回転要素の間の前述した連結関係から明らかなように、第2サンギヤS2の回転数は、回転電機3の出力軸3aの回転数と等しく、第2キャリヤC2の回転数は、第2回転軸9及び駆動軸11の回転数と等しい。
以上から、動力装置1における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図3のように表される。図3において、TMは、回転電機3の出力トルク(以下「モータ出力トルク」という)であり、RB1は、第1クラッチ6を介して第1リングギヤR1に作用するケースCAの反力トルク、ROは、駆動軸11の反力トルクである。
図3に示すように、変速段が1速段であるときには、第1サンギヤS1に伝達されたモータ出力トルクTMは、第1リングギヤR1に作用するケースCAの反力トルクRB1を反力として、第1ピニオンギヤP1及び第1キャリヤC1を介して第1回転軸8に伝達され、さらに駆動軸11に伝達される。この場合、前述したように第2サンギヤS2が出力軸3aに一体に設けられているため、モータ出力トルクTMが、第2サンギヤS2にも伝達され、さらに第2ピニオンギヤP2及び第2リングギヤR2に伝達される。これに対して、上述したように第2クラッチ7によりケースCAと第2リングギヤR2の間が遮断されているため、第2リングギヤR2にケースCAの制動トルクが作用せず、それにより第2リングギヤR2が空転することによって、回転電機3から第2遊星歯車装置5及び第2回転軸9を介した駆動軸11への動力の伝達が遮断される。
以上より、変速段が1速段であるときには、回転電機3の動力は、第1遊星歯車装置4及び第1回転軸8を介して駆動軸11に伝達される。この場合、図3から明らかなように、回転電機3の動力は減速した状態で伝達され、1速段の変速比(出力軸3aの回転数/駆動軸11の回転数)は、1+ZR1/ZS1である。
また、変速段が2速段であるときには、第1クラッチ6によりケースCAと第1リングギヤR1の間が遮断されるとともに、第2クラッチ7によりケースCAと第2リングギヤR2の間が接続される。図4は、変速段が2速段である場合における各種の回転要素の間の回転数の関係の一例を示している。同図において、RB2は、第2クラッチ7を介して第2リングギヤR2に作用するケースCAの反力トルクであり、その他のパラメータについては、図3を参照して前述したとおりである。
図4に示すように、変速段が2速段であるときには、第2サンギヤS2に伝達されたモータ出力トルクTMは、第2リングギヤR2に作用するケースCAの反力トルクRB2を反力として、第2ピニオンギヤP2及び第2キャリヤC2を介して第2回転軸9に伝達され、さらに駆動軸11に伝達される。この場合、モータ出力トルクTMが、第1サンギヤS1にも伝達され、さらに第1ピニオンギヤP1及び第1リングギヤR1に伝達される。これに対して、上述したように第1クラッチ6によりケースCAと第1リングギヤR1の間が遮断されているため、第1リングギヤR1にケースCAの制動トルクが作用せず、それにより第1リングギヤR1が空転することによって、回転電機3から第1遊星歯車装置4及び第1回転軸8を介した駆動軸11への動力の伝達が遮断される。
以上より、変速段が2速段であるときには、回転電機3の動力は、第2遊星歯車装置5及び第2回転軸9を介して駆動軸11に伝達される。この場合、図4から明らかなように、回転電機3の動力は減速した状態で伝達され、2速段の変速比(出力軸3aの回転数/駆動軸11の回転数)は、1+ZR2/ZS2であり、1速段の変速比よりも小さくなり、高速側になる。
なお、変速段を1速段から2速段に変更する場合には、回転電機3、第1及び第2クラッチ6、7は、例えば、次のようにして制御される。すなわち、まず、第1クラッチ6により第1リングギヤR1とケースCAの間が遮断され、その状態で、第2リングギヤR2の回転数が値0になるように、回転電機3の出力軸3aの回転数が制御される。そして、第2リングギヤR2の回転数が値0になった後に、第2クラッチ7により第2リングギヤR2とケースCAの間が接続され、1速段から2速段への変速段の変更が完了する。
また、変速段を2速段から1速段に変更する場合には、回転電機3、第1及び第2クラッチ6、7は、例えば、次のようにして制御される。すなわち、まず、第2クラッチ7により第2リングギヤR2とケースCAの間が遮断され、その状態で、第1リングギヤR1の回転数が値0になるように、回転電機3の出力軸3aの回転数が制御される。そして、第1リングギヤR1の回転数が値0になった後に、第1クラッチ6により第1リングギヤR1とケースCAの間が接続され、2速段から1速段への変速段の変更が完了する。
また、第1実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第1実施形態における回転電機3が、本発明における動力源に相当し、第1実施形態における第1サンギヤS1、第1キャリヤC1及び第1リングギヤR1が、本発明における第1、第2及び第3回転要素にそれぞれ相当するとともに、第1実施形態における第2サンギヤS2、第2キャリヤC2及び第2リングギヤR2が、本発明における第4、第5及び第6回転要素にそれぞれ相当する。また、第1実施形態における第1及び第2回転軸8、9が、本発明における第1及び第2回転体にそれぞれ相当し、第1実施形態におけるケースCAが、本発明における不動部に相当するとともに、第1実施形態における第1及び第2クラッチ6、7が、本発明における第1及び第2接断装置にそれぞれ相当する。
以上のように、第1実施形態によれば、回転電機3の出力軸3aが軸線方向の両外側に延びており、出力軸3aの軸線方向の一端部に第1遊星歯車装置4が、出力軸3aの軸線方向の他端部に第2遊星歯車装置5が、それぞれ同軸状に設けられている。また、第2遊星歯車装置5の第2回転数比が、第1遊星歯車装置4の第1回転数比よりも大きな値に設定されている。前述したように、この第1回転数比は、第1リングギヤR1を固定した状態で第1サンギヤS1及び第1キャリヤC1を回転させたときの第1サンギヤS1の回転数に対する第1キャリヤC1の回転数の比であり、第2回転数比は、第2リングギヤR2を固定した状態で第2サンギヤS2及び第2キャリヤC2を回転させたときの第2サンギヤS2の回転数に対する第2キャリヤC2の回転数の比である。
さらに、第1及び第2サンギヤS1、S2が、出力軸3aに連結されるとともに、第1及び第2キャリヤC1、C2が、第1及び第2回転軸8、9をそれぞれ介して、車輪に連結されている。第1及び第2回転軸8、9はそれぞれ、第1及び第2キャリヤC1、C2に、前者C1及び後者C2と一体に回転するように連結されている。また、第1及び第2リングギヤR1、R2が、第1及び第2クラッチ6、7をそれぞれ介して、回転不能なケースCAに連結されている。
以上の構成より、図3及び図4を参照して説明したように、第1クラッチ6によりケースCAと第1リングギヤR1の間を接続するとともに、第2クラッチ7によりケースCAと第2リングギヤR2の間を遮断することによって、回転電機3の動力は、第1遊星歯車装置4を介して、低速側の1速段の変速比により減速した状態で車輪に伝達されるとともに、回転電機4から第2遊星歯車装置5を介した車輪への動力の伝達が遮断される。また、第1クラッチ6によりケースCAと第1リングギヤR1の間を遮断するとともに、第2クラッチ7によりケースCAと第2リングギヤR2の間を接続することによって、回転電機3の動力は、第2遊星歯車装置5を介して、高速側の2速段の変速比により減速した状態で車輪に伝達されるとともに、回転電機4から第1遊星歯車装置4を介した車輪への動力の伝達が遮断される。
このように、前述した従来の動力装置と異なり、1速段及び2速段の一方の変速比で変速した状態で回転電機3の動力を車輪に伝達するにあたって、この動力の伝達を、対応する第1及び第2遊星歯車装置4、5の一方を用いて行うので、動力装置1の効率を高めることができる。また、1速段及び2速段の変速比を、第1及び第2回転数比をそれぞれ調整するだけで設定できるので、これらの2つの変速段の変速比を自由にかつ容易に設定することができる。
また、出力軸3a、第1及び第2回転軸8、9が、中空状に形成され、第1回転軸8が、回転電機3に対して軸線方向の反対側に延びており、第2回転軸9は、出力軸3aの内側に回転自在に部分的に嵌合するとともに、第1回転軸8側に延びるように設けられている。また、前述したように、第1遊星歯車装置4が回転電機4の一端部に設けられている。以上の構成により、第1遊星歯車装置4で変速した回転電機4の動力及び第2遊星歯車装置5で変速した回転電機4の動力をいずれも、回転電機4の一端部側から車輪に伝達できるので、動力装置1のレイアウトの自由度を高めることができる。
さらに、図3及び図4から明らかなように、第1回転軸8に伝達されるトルクが第2回転軸9に伝達されるトルクよりも大きくなる。これに対して、図1に示すように、第1回転軸8が第2回転軸9よりも短く構成されるとともに、第1回転軸8の径が第2回転軸9の径よりも大きく設定されているので、トルクに対する第1回転軸8の捩れを小さくすることができる。
次に、図5を参照しながら、本発明の第2実施形態による動力装置1Aについて説明する。この動力装置1Aは、第1実施形態と比較して、第1回転軸21及び駆動軸11の構成のみが異なっている。図5において、第1実施形態と同じ構成要素につては、同じ符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
第1回転軸21の一端部は、第1実施形態と異なり、第2回転軸9の他端部と同軸状に一体に構成されており、第1回転軸21の他端部の内周面には、多数の歯溝(図示せず)が形成されている。これらの歯溝は、周方向に連続するとともに、軸線方向に延びている。駆動軸11の一端部に設けられたスプライン軸部11cの外周面には、第1回転軸21の上記の歯溝に噛み合う多数の歯溝が形成されている。
以上のように、第2実施形態によれば、第2回転軸9における第1回転軸21側の部分が、第1回転軸21と一体に構成されているので、第1実施形態と異なり、第1及び第2回転軸21、9を車輪に、2段スプライン構造を用いずに連結でき、ひいては、動力装置1Aを容易に構成することができる。その他、第1実施形態による前述した効果、すなわち、動力装置1の効率の向上や、2つの変速段の変速比の設定の自由化及び容易化といった効果を、同様に得ることができる。
次に、図6を参照しながら、本発明の第3実施形態による動力装置1Bについて説明する。この動力装置1Bは、第2実施形態と比較して、第1クラッチ6が省略されるとともに、第1リングギヤR1がケースCAに直接、連結されていることと、第1キャリヤC1と第1回転軸21の間にワンウェイクラッチ31が設けられていることが、主に異なっている。図6において、第1及び第2実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1及び第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
ワンウェイクラッチ31は、一般的な機械式のものであり、第1キャリヤC1に同軸状に一体に設けられたリング状のアウターと、第1回転軸21に同軸状に一体に設けられたリング状のインナーを有している。また、ワンウェイクラッチ31は、第1回転軸21の回転数が第1キャリヤC1の回転数以下であるときに、第1回転軸21と第1キャリヤC1の間を接続し、第1回転軸21の回転数が第1キャリヤC1の回転数よりも高いときに、第1回転軸21と第1キャリヤC1の間を遮断する。
次に、変速段が1速段である場合における動力装置1Bの動作について説明する。変速段が1速段であるときには、第1実施形態の場合と同様、第2クラッチ7によりケースCAと第2リングギヤR2の間が遮断される。これにより、前述した図3を参照して説明したように、回転電機3から第2遊星歯車装置5を介した駆動軸11への動力の伝達が遮断されるとともに、第2サンギヤS2、第2キャリヤC2及び第2リングギヤR2が空転する。
また、前述したように、第1リングギヤR1がケースCAに直接、連結されているため、第1実施形態の場合と同様、第1サンギヤS1に伝達されたモータ出力トルクTMは、第1リングギヤR1に作用するケースCAの反力トルクRB1を反力として、第1ピニオンギヤP1及び第1キャリヤC1に伝達される(図3参照)。上述したように、回転電機3から第2遊星歯車装置5を介した駆動軸11への動力の伝達が遮断されているので、第1回転軸21の回転数が第1キャリヤC1の回転数よりも高くはならないため、第1キャリヤC1と第1回転軸21の間がワンウェイクラッチ31によって自動的に接続状態に保持され、その結果、第1キャリヤC1に伝達された回転電機3からのトルクは、第1回転軸21を介して駆動軸11に伝達される。
以上により、動力装置1Bでは、第1実施形態の場合と同様、回転電機3の動力が、第1遊星歯車装置4を介して、1速段の変速比で減速された状態で駆動軸11に伝達される。
次に、図7を参照しながら、変速段が2速段である場合における動力装置1Bの動作について説明する。変速段が2速段であるときには、第1実施形態の場合と同様、第2クラッチ7によりケースCAと第2リングギヤR2の間が接続され、図7に示すように、第2サンギヤS2に伝達されたモータ出力トルクTMは、第2リングギヤR2に作用するケースCAの反力トルクRB2を反力として、第2ピニオンギヤP2及び第2キャリヤC2を介して第2回転軸9に伝達され、さらに駆動軸11に伝達される。
この場合、第1サンギヤS1に伝達されたモータ出力トルクTMは、ケースCAの反力トルクRB1を反力として、第1キャリヤC1に伝達され、それにより第1キャリヤC1が回転するものの、第1回転軸21が、駆動軸11からの動力の伝達により第2駆動軸9と同じ回転数で回転するため、第1回転軸21の回転数が第1キャリヤC1の回転数よりも高くなり、それにより、第1回転軸21と第1キャリヤC1の間が、ワンウェイクラッチ31によって自動的に遮断される。その結果、モータ出力トルクTMは、第1遊星歯車装置4を介しては駆動軸11に伝達されず、第1サンギヤS1及び第1キャリヤC1が空転する。したがって、第1リングギヤR1に作用するケースCAの反力トルクRB1は、ほぼ値0になる。
以上により、動力装置1Bでは、第1実施形態の場合と同様、回転電機3の動力が、第2遊星歯車装置5を介して、2速段の変速比で減速された状態で駆動軸11に伝達される。
なお、変速段を1速段から2速段に変更する場合には、回転電機3及び第2クラッチ7は、例えば次のようにして制御される。すなわち、まず、回転電機3のモータ出力トルクTMを非常に小さな値(例えば値0)に制御するとともに、その状態で、第2クラッチ7によるケースCAと第2リングギヤR2の間の接続度合を漸増させる。そして、第2クラッチ7によりケースCAと第2リングギヤR2の間が完全に接続された後に、回転電機3のモータ出力トルクTMが増大され、1速段から2速段への変速段の変更が完了する。また、変速段を2速段から1速段に変更する場合には、例えば、回転電機3は制御されず、第2クラッチ7が遮断され、その後、第1回転軸21の回転数が、駆動軸11及び第1回転軸9の回転数とともに低下し、第1キャリヤC1の回転数と等しくなったときに、ワンウェイクラッチ31によって、第1回転軸21と第1キャリヤC1の間が自動的に接続される。
また、第3実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第3実施形態におけるワンウェイクラッチ31が、本発明における第1接断装置に相当し、第3実施形態における第2クラッチ7が、本発明におけるクラッチに相当するとともに、第3実施形態における駆動軸11が、本発明における共通の動力伝達経路に相当する。その他の対応関係については、第1実施形態と同様である。
以上のように、第3実施形態によれば、第2遊星歯車装置5の第2回転数比が、第1遊星歯車装置4の第1回転数比よりも大きく設定されており、第1及び第2サンギヤS1、S2が回転電機3の出力軸3aに連結されるとともに、第1及び第2キャリヤC1、C2が、第1及び第2回転軸21、9をそれぞれ介して、車輪に連結されている。また、第1キャリヤC1と第1回転軸21の間が、ワンウェイクラッチ31によって、第1回転軸21の回転数が第1キャリヤC1の回転数以下であるときに接続され、第1回転軸21の回転数が第1キャリヤC1の回転数よりも高いときに遮断される。さらに、第1及び第2回転軸21、9が、共通の駆動軸11を介して車輪に連結されている。
また、前述したように、第2クラッチ7を遮断することによって、回転電機3から第2遊星歯車装置5を介した車輪への動力の伝達が遮断されるとともに、ワンウェイクラッチ31によって、回転電機3から第1遊星歯車装置4を介した車輪への動力の伝達が自動的に接続される結果、回転電機3の動力は、第1遊星歯車装置4を介して、低速側の1速段の変速比により減速した状態で車輪に伝達される。
さらに、図7を参照して説明したように、第2クラッチ7を接続することによって、回転電機3の動力は、第2遊星歯車装置5を介して、高速側の2速段の変速比により減速した状態で車輪に伝達されるとともに、ワンウェイクラッチ31によって、回転電機3から第1遊星歯車装置4を介した車輪への動力の伝達が自動的に遮断される。このように、第2クラッチ7による接続/遮断を制御するだけで、ワンウェイクラッチ31については何ら制御することなく、変速段を容易に変更することができる。その他、第1実施形態による前述した効果、すなわち、動力装置1Bの効率の向上や、2つの変速段の変速比の設定の自由化及び容易化といった効果を、同様に得ることができる。
なお、第3実施形態では、本発明における第1回転体として、第1回転軸21を用いているが、第1実施形態で説明した第1回転軸8を用いてもよい。
次に、図8を参照しながら、本発明の第4実施形態による動力装置1Cについて説明する。この動力装置1Cは、第2実施形態と比較して、第1及び第2回転軸21、9が、ディファレンシャルギヤ41を介して、車両の左右の車輪(いずれも図示せず)に連結されている点のみが異なっている。図8において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1及び第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
図8に示すように、第1回転軸21の他端部には、歯溝に代えて、ギヤ21aが同軸状に一体に設けられている。このギヤ21aは、ディファレンシャルギヤ41のギヤ41aに噛み合っている。ディファレンシャルギヤ41は、ギヤ41aと一体のデフケースや、ピニオンギヤ、左右のサイドギヤを有する一般的なものであって、左右の車輪に、左右の駆動軸(図示せず)などを介して連結されており、ギヤ41aに伝達された動力を左右の車輪に伝達する。
以上より、第4実施形態によれば、回転電機4の動力を左右の車輪に伝達することができるとともに、第1実施形態による前述した効果を同様に得ることができる。
なお、第4実施形態に関し、第3実施形態のように、第1クラッチ6を省略し、第1リングギヤR1をケースCAに直接、連結するとともに、第1キャリヤC1と第1回転軸21の間にワンウェイクラッチ31を設けてもよい。
次に、図9を参照しながら、本発明の第5実施形態による動力装置1Dについて説明する。この動力装置1Dは、第1実施形態と比較して、次の2つの点が主に異なっている。
・第2遊星歯車装置52の後述する第2回転数比が第1遊星歯車装置51の後述する第1回転数比よりも小さくなるように、第2遊星歯車装置52が構成されていること
・第1遊星歯車装置51の第1キャリヤC1’及び第2遊星歯車装置52の第2キャリヤC2’が回転電機3の出力軸3aに連結されるとともに、第1遊星歯車装置51の第1サンギヤS1’及び第2遊星歯車装置52の第2サンギヤS2’が第1及び第2回転軸8、9をそれぞれ介して駆動軸11に連結されていること
図9において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
第1及び第2遊星歯車装置51、52は、第1実施形態と同様、一般的なシングルピニオンタイプのものであり、第2遊星歯車装置52の第2リングギヤR2’の歯数ZR2’に対する第2サンギヤS2’の歯数ZS2’の比(ZS2’/ZR2’)は、第1遊星歯車装置51の第1リングギヤR1’の歯数ZR1’に対する第1サンギヤS1’の歯数ZS1’の比(ZS1’/ZR1’)よりも小さく設定されている。これにより、第2リングギヤR2’を固定した状態で第2サンギヤS2’及び第2キャリヤC2’を回転させたときの第2サンギヤS2’の回転数に対する第2キャリヤC2’の回転数の比である第2回転数比が、第1リングギヤR1’を固定した状態で第1サンギヤS1’及び第1キャリヤC1’を回転させたときの第1サンギヤS1’の回転数に対する第1キャリヤC1’の回転数の比である第1回転数比よりも小さくなるように、第2遊星歯車装置52が構成されている。
以上の構成の動力装置1Dでは、第1及び第2遊星歯車装置51、52ならびに第1及び第2クラッチ6、7は、第1実施形態と同様、所定の1速段及び2速段から成る2つの変速段を有する変速装置として機能し、回転電機3の動力は、これらの1速段又は2速段の変速比で変速された状態で、駆動軸11に伝達され、さらに車輪に伝達される。以下、図10及び図11を参照しながら、動力装置1Dの動作について説明する。
変速段が1速段であるときには、第1クラッチ6によりケースCAと第1リングギヤR1’の間が接続されるとともに、第2クラッチ7によりケースCAと第2リングギヤR2’の間が遮断される。図10は、動力装置1Dにおける各種の回転要素の間の回転数の関係を、変速段が1速段である場合について示している。第1遊星歯車装置51は、第1実施形態と同様に、一般的なシングルピニオンタイプのものであるため、図10に示すように、第1サンギヤS1’、第1キャリヤC1’及び第1リングギヤR1’の回転数は、それらの回転数の関係を表す共線図において、単一の直線上にこの順で並ぶ共線関係にある。このことは、第2遊星歯車装置52の第2サンギヤS2’、第2キャリヤC2’及び第2リングギヤR2’についても同様に当てはまる。
また、第2回転数比(第2リングギヤR2’を固定した状態で第2サンギヤS2’及び第2キャリヤC2’を回転させたときの第2サンギヤS2’の回転数に対する第2キャリヤC2’の回転数の比)は、第1回転数比(第1リングギヤR1’を固定した状態で第1サンギヤS1’及び第1キャリヤC1’を回転させたときの第1サンギヤS1’の回転数に対する第1キャリヤC1’の回転数の比)よりも小さな値に設定されている。さらに、各種の回転要素の間の前述した連結関係から明らかなように、第1及び第2キャリヤC1’、C2’の回転数は、回転電機3の出力軸3aの回転数と等しく、第1サンギヤS1’の回転数は、第1回転軸8及び駆動軸11の回転数と等しく、第2サンギヤS2’の回転数は、第2回転軸9及び駆動軸11の回転数と等しい。
以上から、各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図10のように表される。図10において、RB1’は、第1クラッチ6を介して第1リングギヤR1’に作用するケースCAの反力トルクである。その他のパラメータについては、第1実施形態で説明したとおりである。
図10に示すように、変速段が1速段であるときには、第1キャリヤC1’に伝達されたモータ出力トルクTMは、第1リングギヤR1’に作用するケースCAの反力トルクRB1’を反力として、第1ピニオンギヤP1’及び第1サンギヤS1’を介して第1回転軸8に伝達され、さらに駆動軸11に伝達される。この場合、前述したように第2キャリヤC2’が出力軸3aに一体に設けられているため、モータ出力トルクTMが、第2キャリヤC2’にも伝達され、さらに、第2ピニオンギヤP2’及び第2リングギヤR2’に伝達される。これに対して、上述したように第2クラッチ7によりケースCAと第2リングギヤR2’の間が遮断されているため、第2リングギヤR2’にケースCAの制動トルクが作用せず、それにより第2リングギヤR2’が空転することによって、回転電機3から第2遊星歯車装置52及び第2回転軸9を介した駆動軸11への動力の伝達が遮断される。
以上より、変速段が1速段であるときには、回転電機3の動力は、第1遊星歯車装置51及び第1回転軸8を介して駆動軸11に伝達される。この場合、図10から明らかなように、回転電機3の動力は増速した状態で伝達され、1速段の変速比(出力軸3aの回転数/駆動軸11の回転数)は、1/(1+ZR1’/ZS1’)である。
また、変速段が2速段であるときには、第1クラッチ6によりケースCAと第1リングギヤR1の間が遮断されるとともに、第2クラッチ7によりケースCAと第2リングギヤR2の間が接続される。図11は、変速段が2速段である場合における各種の回転要素の間の回転数の関係及びトルクの釣合関係の一例を示している。同図において、RB2’は、第2クラッチ7を介して第2リングギヤR2’に作用するケースCAの反力トルクである。
図11に示すように、変速段が2速段であるときには、第2キャリヤC2’に伝達されたモータ出力トルクTMは、第2リングギヤR2’に作用するケースCAの反力トルクRB2’を反力として、第2ピニオンギヤP2’及び第2サンギヤS2’を介して第2回転軸9に伝達され、さらに駆動軸11に伝達される。この場合、モータ出力トルクTMが、第1キャリヤC1’にも伝達され、さらに第1ピニオンギヤP1’及び第1リングギヤR1’に伝達される。これに対して、上述したように第1クラッチ6によりケースCAと第1リングギヤR1’の間が遮断されているため、第1リングギヤR1’にケースCAの制動トルクが作用せず、それにより第1リングギヤR1’が空転することによって、回転電機3から第1遊星歯車装置51及び第1回転軸8を介した駆動軸11への動力の伝達が遮断される。
以上より、変速段が2速段であるときには、回転電機3の動力は、第2遊星歯車装置52及び第2回転軸9を介して駆動軸11に伝達される。この場合、図12から明らかなように、回転電機3の動力は増速した状態で伝達され、2速段の変速比(出力軸3aの回転数/駆動軸11の回転数)は、1/(1+ZR2’/ZS2’)であり、1速段の変速比よりも小さくなり、高速側になる。
また、第5実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第5実施形態における第1サンギヤS1’、第1キャリヤC1’及び第1リングギヤR1’が、本発明における第1、第2及び第3回転要素にそれぞれ相当するとともに、第5実施形態における第2サンギヤS2’、第2キャリヤC2’及び第2リングギヤR2’が、本発明における第4、第5及び第6回転要素にそれぞれ相当する。その他の対応関係については、第1実施形態と同様である。
以上のように、第5実施形態によれば、第2遊星歯車装置52の第2回転数比(第2リングギヤR2’を固定した状態で第2サンギヤS2’及び第2キャリヤC2’を回転させたときの第2サンギヤS2’の回転数に対する第2キャリヤC2’の回転数の比)が、第1遊星歯車装置51の第1回転数比(第2リングギヤR2’を固定した状態で第2サンギヤS2’及び第2キャリヤC2’を回転させたときの第2サンギヤS2’の回転数に対する第2キャリヤC2’の回転数の比)よりも小さな値に設定されている。
また、第1及び第2キャリヤC1’、C2’が、出力軸3aに連結されるとともに、第1及び第2サンギヤS1’、S2’が、第1及び第2回転軸8、9をそれぞれ介して、車輪に連結されている。第1及び第2回転軸8、9はそれぞれ、第1及び第2サンギヤS1’、S2’に、前者S1’及び後者S2’と一体に回転するように連結されている。また、第1及び第2リングギヤR1’、R2’が、第1及び第2クラッチ6、7をそれぞれ介して、回転不能なケースCAに連結されている。
以上の構成より、図10及び図11を参照して説明したように、第1クラッチ6によりケースCAと第1リングギヤR1’の間を接続するとともに、第2クラッチ7によりケースCAと第2リングギヤR2’の間を遮断することによって、回転電機3の動力は、第1遊星歯車装置51を介して、低速側の1速段の変速比により増速した状態で車輪に伝達されるとともに、回転電機4から第2遊星歯車装置52を介した車輪への動力の伝達が遮断される。また、第1クラッチ6によりケースCAと第1リングギヤR1’の間を遮断するとともに、第2クラッチ7によりケースCAと第2リングギヤR2’の間を接続することによって、回転電機3の動力は、第2遊星歯車装置52を介して、高速側の2速段の変速比により増速した状態で車輪に伝達されるとともに、回転電機4から第1遊星歯車装置51を介した車輪への動力の伝達が遮断される。
このように、第1実施形態と同様、1速段及び2速段の一方の変速比で変速した状態で回転電機3の動力を車輪に伝達するにあたって、この動力の伝達を、対応する第1及び第2遊星歯車装置51、52の一方を用いて行うので、動力装置1Dの効率を高めることができる。また、1速段及び2速段の変速比を、第1及び第2回転数比をそれぞれ調整するだけで設定できるので、これらの2つの変速段の変速比を自由にかつ容易に設定することができる。また、回転電機3の動力を増速した状態で駆動軸11に伝達するので、回転電機3として、高トルク・低回転のモータを採用した場合には、その変速による利点を得ることができる。
さらに、第1実施形態と同様、第1遊星歯車装置51で変速した回転電機4の動力及び第2遊星歯車装置52で変速した回転電機4の動力をいずれも、回転電機4の一端部側から車輪に伝達できるので、動力装置1Dのレイアウトの自由度を高めることができる。また、図10及び図11から明らかなように、第1回転軸8に伝達されるトルクが第2回転軸9に伝達されるトルクよりも大きくなる。これに対して、図9に示すように、第1回転軸8が第2回転軸9よりも短く構成されるとともに、第1回転軸8の径が第2回転軸9の径よりも大きく設定されているので、トルクに対する第1回転軸8の捩れを小さくすることができる。
なお、第5実施形態では、本発明における第1回転体として、第1回転軸8を用いているが、第1回転軸21を用いてもよい。また、第5実施形態に関し、第1及び第2サンギヤS1’、S2’を、ディファレンシャルギヤ41を介して左右の車輪に連結してもよい。
次に、図12を参照しながら、本発明の第6実施形態による動力装置1Eについて説明する。この動力装置1Eは、第5実施形態と比較して、第1クラッチ6が省略されるとともに、第1リングギヤR1’がケースCAに直接、連結されていることと、第1回転軸8に代えて第2実施形態の第1回転軸21が用いられていること、第1キャリヤC1’と第1回転軸21の間にワンウェイクラッチ61が設けられていることが、主に異なっている。図12において、第1、第2及び第5実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1、第2及び第5実施形態と異なる点を中心に説明する。
ワンウェイクラッチ61は、第3実施形態のワンウェイクラッチ31と同様に一般的な機械式のものであり、第1サンギヤS1’に同軸状に一体に設けられたリング状のアウターと、第1回転軸21に同軸状に一体に設けられたリング状のインナーを有している。また、ワンウェイクラッチ61は、第1回転軸21の回転数が第1サンギヤS1’の回転数以下であるときに、第1回転軸21と第1サンギヤS1’の間を接続し、第1回転軸21の回転数が第1サンギヤS1’の回転数よりも高いときに、第1回転軸21と第1サンギヤS1’の間を遮断する。
次に、変速段が1速段である場合における動力装置1Eの動作について説明する。変速段が1速段であるときには、第5実施形態の場合と同様、第2クラッチ7によりケースCAと第2リングギヤR2’の間が遮断される。これにより、前述した図10を参照して説明したように、回転電機3から第2遊星歯車装置52を介した駆動軸11への動力の伝達が遮断されるとともに、第2サンギヤS2’、第2キャリヤC2’及び第2リングギヤR2’が空転する。
また、前述したように、第1リングギヤR1’がケースCAに直接、連結されているため、第1キャリヤC1’に伝達されたモータ出力トルクTMは、第1リングギヤR1’に作用するケースCAの反力トルクRB1’を反力として、第1ピニオンギヤP1’及び第1サンギヤS1’に伝達される(図10参照)。上述したように、回転電機3から第2遊星歯車装置52を介した駆動軸11への動力の伝達が遮断されているので、第1回転軸21の回転数が第1サンギヤS1’の回転数よりも高くはならないため、第1サンギヤS1’と第1回転軸21の間がワンウェイクラッチ61によって自動的に接続状態に保持され、その結果、第1サンギヤS1’に伝達された回転電機3からのトルクは、第1回転軸21を介して駆動軸11に伝達される。
以上により、動力装置1Eでは、第5実施形態の場合と同様、回転電機3の動力が、第1遊星歯車装置51を介して、1速段の変速比で減速された状態で駆動軸11に伝達される。
次に、図13を参照しながら、変速段が2速段である場合における動力装置1Eの動作について説明する。変速段が2速段であるときには、第5実施形態の場合と同様、第2クラッチ7によりケースCAと第2リングギヤR2’の間が接続され、図13に示すように、第2キャリヤC2’に伝達されたモータ出力トルクTMは、第2リングギヤR2’に作用するケースCAの反力トルクRB2’を反力として、第2ピニオンギヤP2’及び第2サンギヤS2’を介して第2回転軸9に伝達され、さらに駆動軸11に伝達される。
この場合、第1キャリヤC1’に伝達されたモータ出力トルクTMは、ケースCAの反力トルクRB1’を反力として、第1サンギヤS1’に伝達され、それにより第1サンギヤS1’が回転するものの、第1回転軸21が、駆動軸11からの動力の伝達により第2駆動軸9と同じ回転数で回転するため、第1回転軸21の回転数が第1サンギヤS1’の回転数よりも高くなり、それにより、第1回転軸21と第1サンギヤS1’の間が、ワンウェイクラッチ61によって自動的に遮断される。その結果、モータ出力トルクTMは、第1遊星歯車装置51を介しては駆動軸11に伝達されず、第1キャリヤC1’及び第1サンギヤS1’が空転する。したがって、第1リングギヤR1’に作用するケースCAの反力トルクRB1’は、ほぼ値0になる。
以上により、動力装置1Eでは、第5実施形態の場合と同様、回転電機3の動力が、第2遊星歯車装置52を介して、2速段の変速比で減速された状態で駆動軸11に伝達される。
また、第6実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、第6実施形態におけるワンウェイクラッチ61が、本発明における第1接断装置に相当し、第6実施形態における第2クラッチ7が、本発明におけるクラッチに相当するとともに、第6実施形態における駆動軸11が、本発明における共通の動力伝達経路に相当する。その他の対応関係については、第1実施形態と同様である。
以上のように、第6実施形態によれば、第2遊星歯車装置52の第2回転数比が、第1遊星歯車装置51の第1回転数比よりも小さく設定されており、第1及び第2キャリヤC1’、C2’が回転電機3の出力軸3aに連結されるとともに、第1及び第2サンギヤS1’、S2’が、第1及び第2回転軸21、9をそれぞれ介して、車輪に連結されている。また、第1サンギヤS1’と第1回転軸21の間が、ワンウェイクラッチ61によって、第1回転軸21の回転数が第1サンギヤS1’の回転数以下であるときに接続され、第1回転軸21の回転数が第1サンギヤS1’の回転数よりも高いときに遮断される。さらに、第1及び第2回転軸21、9が、共通の駆動軸11を介して車輪に連結されている。
また、前述したように、第2クラッチ7を遮断することによって、回転電機3から第2遊星歯車装置52を介した車輪への動力の伝達が遮断されるとともに、ワンウェイクラッチ61によって、回転電機3から第1遊星歯車装置51を介した車輪への動力の伝達が自動的に接続される結果、回転電機3の動力は、第1遊星歯車装置51を介して、低速側の1速段の変速比により増速した状態で車輪に伝達される。また、第2クラッチ7を接続することによって、回転電機3の動力は、第2遊星歯車装置52を介して、高速側の2速段の変速比により増速した状態で車輪に伝達されるとともに、ワンウェイクラッチ61によって、回転電機3から第1遊星歯車装置51を介した車輪への動力の伝達が自動的に遮断される。このように、第2クラッチ7による接続/遮断を制御するだけで、ワンウェイクラッチ61については何ら制御することなく、変速段を容易に変更することができる。その他、第1実施形態による前述した効果、すなわち、動力装置1Eの効率の向上や、2つの変速段の変速比の設定の自由化及び容易化といった効果を、同様に得ることができる。
なお、第6実施形態では、本発明における第1回転体として、第1回転軸21を用いているが、第1回転軸8を用いてもよい。また、第6実施形態に関し、第4実施形態と同様、第1回転軸21を、ディファレンシャルギヤ41を介して左右の車輪に連結してもよい。
なお、本発明は、説明した第1〜第6実施形態(以下、総称する場合「実施形態」という)に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、本発明における第1及び第3回転要素として、第1サンギヤS1及び第1リングギヤR1をそれぞれ用いているが、これとは逆に、第1リングギヤR1及び第1サンギヤS1をそれぞれ用いてもよい。同様に、実施形態では、本発明における第4及び第6回転要素として、第2サンギヤS2及び第2リングギヤR2をそれぞれ用いているが、これとは逆に、第2リングギヤR2及び第2サンギヤS2をそれぞれ用いてもよい。この場合、例えば、互いに同じ歯数比の第1及び第2遊星歯車装置を用いるとともに、第1及び第3回転要素として、第1サンギヤ及び第1リングギヤ(第1リングギヤ及び第1サンギヤ)をそれぞれ用いるとともに、第4及び第6回転要素として、第2リングギヤ及び第2サンギヤ(第2サンギヤ及び第2リングギヤ)をそれぞれ用いてもよい。
また、実施形態では、本発明における第1及び第2遊星歯車装置として、シングルピニオンタイプの第1及び第2遊星歯車装置4、51、5、52をそれぞれ用いているが、他の適当な遊星歯車装置、例えば、ダブルピニオンタイプの遊星歯車装置をそれぞれ用いてもよい。この場合、ダブルピニオンタイプの遊星歯車装置のサンギヤが、本発明における第1及び第3回転要素の一方(第4及び第6回転要素の一方)に、リングギヤが本発明における第2回転要素(第5回転要素)に、キャリヤが、本発明における第1及び第3回転要素の他方(第4及び第6回転要素の他方)に、それぞれ相当する。この場合にも、例えば、互いに同じ歯数比のダブルピニオンタイプの第1及び第2遊星歯車装置を用いるとともに、第1及び第3回転要素として、第1遊星歯車装置の第1サンギヤ及び第1キャリヤ(第1キャリヤ及び第1サンギヤ)をそれぞれ用いるとともに、第4及び第6回転要素として、第2遊星歯車装置の第2キャリヤ及び第2サンギヤ(第2サンギヤ及び第2キャリヤ)をそれぞれ用いてもよい。その場合には、第1及び第2遊星歯車装置の第1及び第2回転数比はいずれも、値1/2以外の値に設定される。
あるいは、第1及び第2遊星歯車装置として、互いに一体の第1及び第2ピニオンギヤから成る2連ピニオンギヤと、第1及び第2ピニオンギヤにそれぞれ噛み合う第1及び第2サンギヤと、2連ピニオンギヤを回転自在に支持するキャリヤを有する遊星歯車装置をそれぞれ用いてもよい。その場合には、サンギヤの一方、他方、及びキャリヤが、本発明における第1回転要素(第4回転要素)、第2回転要素(第5回転要素)及び第3回転要素(第6回転要素)にそれぞれ相当する。この場合にも、例えば、互いに同じ歯数比の第1及び第2遊星歯車装置を用いるとともに、第1及び第3回転要素として、第1遊星歯車装置のサンギヤの一方及び第1キャリヤ(キャリヤ及びサンギヤの一方)をそれぞれ用いるとともに、第4及び第6回転要素として、第2遊星歯車装置の第2キャリヤ及びサンギヤの一方(サンギヤの一方及び第2キャリヤ)をそれぞれ用いてもよい。その場合には、第1及び第2遊星歯車装置の第1及び第2回転数比はいずれも、値1/2以外の値に設定される。
あるいは、第1及び第2遊星歯車装置として、互いに噛み合う第1及び第2ピニオンギヤと、第1及び第2ピニオンギヤにそれぞれ噛み合う第1及び第2サンギヤと、第1及び第2ピニオンギヤを回転自在に支持するキャリヤを有する遊星歯車装置をそれぞれ用いてもよい。その場合には、サンギヤの一方、キャリヤ及びサンギヤの他方が、本発明における第1回転要素(第4回転要素)、第2回転要素(第5回転要素)及び第3回転要素(第6回転要素)にそれぞれ相当する。この場合にも、例えば、互いに同じ歯数比の第1及び第2遊星歯車装置を用いるとともに、第1及び第3回転要素として、第1遊星歯車装置のサンギヤの一方及び他方(サンギヤの他方及び一方)をそれぞれ用いるとともに、第4及び第6回転要素として、第2遊星歯車装置のサンギヤの他方及び一方(サンギヤの一方及び他方)をそれぞれ用いてもよい。その場合には、第1及び第2遊星歯車装置の第1及び第2回転数比はいずれも、値1/2以外の値に設定される。
あるいは、第1及び第2遊星歯車装置の一方として、ピニオンギヤと、一対のベベルギヤと、ピニオンギヤを回転自在に支持するデフケースを有する遊星歯車装置(ディファレンシャルギヤ)を用いてもよい。その場合には、一対のベベルギヤの一方、デフケース及び一対のベベルギヤの他方が、本発明における第1回転要素(第4回転要素)、第2回転要素(第5回転要素)及び第3回転要素(第6回転要素)にそれぞれ相当する。この場合、第1及び第2遊星歯車装置の他方の回転数比は、値1/2以外の値に設定される。
さらに、上述した第1及び第2遊星歯車装置に関するバリエーションを採用する場合において、第1及び第2遊星歯車装置として、互いに異なるタイプの遊星歯車装置を用いてもよいことは、もちろんである。
また、第1、第2及び第4実施形態では、第1回転数比を第2回転数比よりも大きく設定しているが、これとは逆に、第1回転数比を第2回転数比よりも小さく設定してもよい。さらに、第5実施形態では、第1回転数比を第2回転数比よりも小さく設定しているが、これとは逆に、第1回転数比を第2回転数比よりも大きく設定してもよい。
また、実施形態では、出力軸3aを、中空状に形成しているが、中実状に形成してもよい。この場合、本発明における第1及び第2被連結要素に相当する第1及び第2キャリヤC1、C2(第1及び第2サンギヤS1’、S2’)は、例えば、次のようにして車輪に連結される。すなわち、第1及び第2キャリヤC1、C2(第1及び第2サンギヤS1’、S2’)とそれぞれ一体の第1及び第2回転軸が、軸線方向に互いに反対方向に延びるように設けられ、第1及び第2回転軸の各々にギヤが一体に設けられるとともに、これらのギヤの各々に噛み合うギヤが、車輪に連結された回転軸に一体に設けられる。さらに、実施形態における車輪への第1及び第2回転軸8、21、9の連結態様は、あくまでも例示であり、他の適当な連結態様を採用してもよい。
また、実施形態では、第1及び第2リングギヤR1、R2(R1’、R2’)が、共通のケースCAに連結されているが、互いに別個の不動部に連結されていてもよいことは、もちろんである。さらに、実施形態では、本発明における第1接断装置として、第1クラッチ6又はワンウェイクラッチ31を用いているが、他の適当な接断装置、例えば、第1被連結要素(第1又は第2回転要素)と第1回転体の間を接続/遮断する第1クラッチなどを用いてもよい。また、実施形態では、本発明における第2接断装置として、第2クラッチ7を用いているが、他の適当な接断装置、例えば、第2被連結要素(第4又は第5回転要素)と第2回転体の間、又は、第2回転体と被駆動部の間を接続/遮断する第2クラッチなどを用いてもよい。
さらに、実施形態では、本発明における動力源として、回転電機3を用いているが、他の適当な動力源、例えば油圧モータなどを用いてもよい。また、実施形態では、本発明における被駆動部は、車輪であるが、例えば、駆動軸や、船舶のスクリューなどでもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。