JP2017160335A - コンパウンド複合材料およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】不連続炭素繊維を強化繊維として用いた機械的強度に優れたCFRPを得ることができるシートモールドディングコンパウンド等のコンパウンド複合材料およびその製造方法を提供することを目的としている。【解決手段】ビニルエステル樹脂等の母材樹脂中に径が500nm程度の微細ガラス繊維を母材樹脂に対して0.3wt%程度分散混合して改質母材樹脂を得たのち、繊維長30mm程度のチョップド炭素繊維の不織布状体に含浸させて、コンパウンド複合材料を得るようにした。【選択図】 なし

Description

本発明は、コンパウンド複合材料およびその製造方法に関する。
炭素繊維強化プラスチックス( Carbon Fiber Reinforced Plastics :以後 CFRP )は母材をプラスチック、強化繊維を炭素繊維とした繊維強化複合材料である。
CFRPは一般の構造用金属材料に比べて軽量で、また比強度・比剛性に優れ、電気的特性や耐腐食性においても優れた特性を有する高性能な材料である.
そこで、近年では、CFRPが、金属材料にとって代わる材料として航空宇宙構造物、自動車・二輪車・船艇の構造用部材、大型の産業用機械部品、スポーツ用品などに多く使用されている(非特許文献1参照) 。
その中でも、近年では自動車への CFRP の適用が盛んに取り組まれている(非特許文献2〜4参照)。
また、世界中で環境問題への意識が高まるなか、各国で自動車に求められる燃費の基準が年々高くなっている。
例えば、車体重量は、燃費支配要因の 40 %程度を占めており、そのため自動車の軽量化は自動車業界の課題となっている(非特許文献5参照)。
このようなことから、近年では市販車へのCFRP の適用が始まっている。一般的にCFRPを自動車に適用する場合にはその部材にあった成形法が用いられる。
例えば、自動車の骨格などの構造部材には高い強度が必要とされるため、コストは高くても性能の良い成形品を得ることができるプリプレグ法や RTM(Resin Transfer Molding)法で作製された連続繊維強化複合材料を用いられる。
しかし、自動車のバンパー、フェンダーなどの準構造部材には、構造部材に使用するCFRPほどの強度は必要とされない。
準構造用部材に求められるのは、コスト及び成形性である。そこで、近年、自動車の準構造材料として注目を集めているのが不連続繊維強化材料である(非特許文献6参照) 。
そして、この不連続繊維強化材料の成形方法として頻繁に用いられるのがSMC(Sheet Molding Compound)を用いた成形法である。
SMC成形法は他の成形法と比較して成形性及びコスト面に優れるため(非特許文献7参照)、実際の市販車にも強化繊維にガラス繊維を使用した G-SMC(非特許文献8、9参照)、強化繊維に炭素繊維を使用したチョップド炭素繊維強化樹脂複合材料(C - SMC)が一部使用されている(非特許文献10参照)。
特に、C-SMCは自動車の構造部材として使用されており、現在、注目を集めている。
しかしながら、従来のC-SMCを用いて成形した成形品(以下、C-SMC成形品)は、不連続繊維強化材料特有の繊維先端での局所的な応カ集中により樹脂クラックが発生しやすい。
その結果、C-SMC 成形品の強度は連続繊維を使用して作製されたCFRPと比較すると、強度が低くなることが明らかになっている。
そのため、チョップド炭素繊維を用いた不連続繊維強化材料の、自動車の構造部材としての適用も一部にとどまっている(非特許文献11〜13参照 )。
塚本 朗、宇宙・航空、自動車における新材料、デュポンジャパン中央技術研究所(2007)pp.401-406 邉 吾 一、濱 田 泰以、八 角 恭介、青 木 義 男、仲 井 浅見、金 炯 秀、杉 本 直、陽 玉 球、自動車の安全設計と信頼性向上に貢献する複合材料技術−「NEDOプロジェクト3」:車体安全設計技術の開発−、日本複合材料学会誌、33、2、(2007)pp.41-47 北野 彰彦、山口晃司、自動車の安全設計と信頼性向上に貢献する 複合材料技術―IIINEDOプロジェクト:革新的温暖化対策技術プログラム「自動車軽量化炭素繊維強化複合 材料の研究開発動向」の概説、日本複合材料学会誌、32、5、(2006)pp.193-197 和田原 英輔、北野 彰彦、炭素繊維強化プラスチックによる自動車の軽量化、繊維学会誌、64、9、(2009)pp.295-301 大聖 泰引、自動車の環境・エネルギー技術に関わる将来展望~従来車の技術改善から電動化へ~、NTN Technical review、No.70 (2011) 高堀 恭雄、中山 克産、先端産業における高分子の役割2=自動車産業、(株)本田技術研究所(2011)pp.48-51 合田 公一、繊維強化形複合材料の強度信頼性に関わる界面はく離の役割(モンテカルロ・シミュレーションによる検討) 日本機械学会論文集(A編)63巻606号(1997)pp.233-240 矯 桂 諒 、鈴 木 恵 、ランダム短繊維SMC複合材料の損傷進展に関する研究、日本材料学会(1988)pp.398-403 関根 英樹 、小沢 喜仁、 藤田 淳、SMC複合材料の破壊じん性と微視的破壊、日本材料学会(1986)pp.1016-1022 山田寿一、コンパウンド複合材料−III.SMC最新技術動向と今後の展望、日本複合材料学会誌、18、4、(1992)、pp.139-143 J.L.Thomason、M.A.Vlug、G.Schipper&H.G.L.T.Krikort、 Influence of fiber length and concentration on the properties of glass fiber reinforced polypropylene: 3. Strength and strain at failure、 CompositesA、27(1996)、pp.1075-1084 F.M.Zhao&N.Takeda、Effect of interfacial adhesion and statistical fiber strength on tensile strength of unidirectional glass fiber/epoxy composites. Part I: experiment results、CompositesA、31(2000)、pp.1203-1214 T.Okabe、N.Takeda、Y.Kamoshida、M.Shimizu&W.A.Curtin、 Estimation of strength distribution for a fiber embedded in a single-fiber composite: experiments and statistical simulation based on the elasto-plastic shear-lag approach、Composites Science Technology、66(2001)pp.1773-1787 北川 正義、木村 将秀、単純せん断におけるポリカーボネイト材のせん断帯挙動、材料Vol. 51 (2002) No. 3
本発明は、上記事情に鑑みて、不連続炭素繊維を強化繊維として用いた機械的強度に優れたCFRPを得ることができるコンパウンド複合材料およびその製造方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明にかかるコンパウンド複合材料は、チョップド炭素繊維を強化繊維として母材樹脂中に含むコンパウンド複合材料であって、微細ガラス繊維が母材樹脂中に分散されていることを特徴としている。
本発明において、コンパウンド複合材料としては、特に限定されないが、C-SMC、C-BMC(Bulk Molding Compound)が挙げられる。
母材樹脂としては、特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂が好ましく、例えば、ビニルエステル樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂等のラジカル硬化性樹脂やエポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの中でもビニルエステル樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂等のラジカル硬化性樹脂がより好ましく、ビニルエステル樹脂がさらに好ましい。ビニルエステル樹脂とは、分子鎖末端に不飽和基を有する高分子であり、エポキシ(メタ)アクリレート、(不飽和)ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、マクロモノマーなどが挙げられる。
本発明において、微細ガラス繊維の配合量は、特に限定されないが、母材樹脂に対して0.01〜1wt%とすることが好ましく、0.1wt%〜1wt%とすることがより好ましく、0.2〜0.4wt%とすることがさらに好ましい。
すなわち、微細ガラス繊維の配合量が少なすぎると、微細ガラス繊維添加の効果があまり望めず、多すぎると、繊維の分散が困難になるおそれがある。
本発明において、微細ガラス繊維としては、特に限定されないが、繊維径が、50nm〜2μmのものを用いることが好ましく、100nm~900nmのものを用いることがより好ましい。
すなわち、繊維径が細すぎると、微細繊維添加の効果がみこめない恐れがあり、太すぎると応力集中源となる恐れがある。
本発明において、チョップド炭素繊維は、特に限定されないが、その繊維長が、2mm〜50mmのものを用いることが好ましく、20mm〜40mmのものを用いることがより好ましい。
すなわち、繊維長が短すぎると、SMC材料の十分な強度が保障されない恐れがあり、長すぎると,成形性が低下する恐れがある。
本発明において、チョップド炭素繊維は、特に限定されないが、例えば、炭素繊維の体積含有率が10〜70%となる量を配合することが好ましくい、40〜50%となる量を配合することがより好ましい。
すなわち、配合量が少なすぎると、十分な強度が得られない恐れがあり、多すぎると,成形性が低下する恐れがある。
本発明のコンパウンド複合材は、特に限定されないが、硬化剤以外に、必要に応じて、SMCやBMCに用いられる公知の促進剤、増粘剤、重合禁止剤、離型剤、顔料、減粘剤、老化防止剤、可塑剤、難燃剤、抗菌剤、安定剤、光硬化剤等を含有することができる。
い。
本発明にかかるコンパウンド複合材料の製造方法は、母材樹脂に、微細ガラス繊維を分散混合した改質母材樹脂を得る工程と、繊維方向がランダムなチョップド炭素繊維の不織布状体を得る工程と、前記不織布状体に硬化剤が混合された改質母材樹脂を含浸させる工程を含むことを特徴としている。
本発明の製造方法において、上記不織布状体は、特に限定されないが、例えば、チョップド炭素繊維を空中で自由落下させて得るようにすることが好ましい。
そして、不織布状体に硬化剤が混合された改質母材樹脂を含浸させる方法としては、特に限定されないが、例えば、真空パックに入れられた状態の不織布状体を、金型内に入れ、前記真空パック内を真空状態にしたのち、前記真空パックに接続された樹脂吸引用のホースまたは管を介して、硬化剤が混合された改質母材樹脂を前記真空パック内に吸引充填して前記不織布状体に硬化剤が混合された改質母材樹脂を含浸させる方法が挙げられる。
本発明のコンパウンド複合材料は、上記のように、チョップド炭素繊維を強化繊維として母材樹脂中に含むコンパウンド複合材料であって、微細ガラス繊維が母材樹脂中に分散されているので、得られるCFRP成形体は、応力集中を起こす補強繊維である炭素繊維の端部が微細ガラス繊維によって補強された状態になる。したがって、従来のSMC等のコンパウンド複合材料を用いた不連続炭素樹脂強化のCFRP成形体に比べ、強度的に優れたものとなる。
したがって、従来、製造コストの面で問題のある連続炭素繊維補強CFRPしか用いることができなかった構造材も安価に製造することができるようになる。
本発明の実施例に用いた微細ガラス繊維を説明する写真写しである。 X線CTスキャンを用いて、3点曲げ試験の試験後の試験片の内部の損傷状態を観察した結果を対比して示す写真の写しである。 疲労試験後の実施例1、2および比較例1、2の試験片1の破断面の繊維先端付近を、それぞれ走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を対比して示す写真の写しである。
以下に、本発明の具体的な実施例を、比較例と併せて説明する。
(実施例1)
母材樹脂としてのビニルエステル樹脂A(DICマテリアル株式会社製:エクスドーマ 9102-01NP)に図1に示す繊維径500nmの微細ガラス繊維(日本無機株式会社製:FM1700)を母材樹脂に対して0.3wt%の割合となるように加え、プロセスホモジナイザー(シルバーソンニッポン株式会社製:L4-RT)を使用して、30分間、5、000rpmの条件下で撹拌し、樹脂中に微細ガラス繊維が分散混合された改質ビニルエステル樹脂Aを得た。
PAN系炭素繊維(三菱レイヨン株式会社製:TR 3110-MS)を30mmの繊維長にチョップされたチョップド炭素繊維を空中から自由落下させて不織布状体(210mm×130mm)を得た。得られた不織布状体は、繊維方向のランダム性が保障されたものであった。
上記のようにして得られた改質ビニルエステル樹脂A中のボイドを取り除くために、真空含浸機(YTP400-4W01)を使用して脱泡処理を行うとともに、改質ビニルエステル樹脂Aの重量に対して0.3wt%のコバルト系促進剤(DIC株式会社製:Co-OCTOATE 6%X)及び1.0wt%の硬化剤(日油株式会社製:パーキュアーAH)を加え完全に混合して、樹脂コンパウンドAを得た。
つぎに、樹脂コンパウンドAと上記で得た不織布状体を用い、VaRTM法(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)を参考にした以下のようなSMC製造方法によってC−SMCサンプルAを得た。
〔SMCの製造方法〕
不織布状体を、真空パックに入れアルミ製の型枠に設置した。エアーコンプレッサーを使用し、真空パック内を真空にし、真空計で真空圧を調整、リークが発生していないことを確認した後に、樹脂吸引用のホースから樹脂コンパウンドAを流し入れた。樹脂排出用のホースに樹脂コンパウンドAが達した時点で不織布状体に樹脂コンパウンドAが含浸したとみなし樹脂コンパウンドAの吸引を中断し、C-SMCサンプルAを得た。
その後、C-SMCサンプルAを常温、1MPaの条件下で1時間、電気炉にて60℃の条件下で3時間保持しアフターキュアをおこなって、炭素繊維強化複合材料Aを得た。
得られた炭素繊維強化複合材料Aの炭素繊維の体積含有率は45wt%であった。
(実施例2)
母材樹脂としてビニルエステル樹脂B(DICマテリアル株式会社製:レイドーマ DCF-670)を用いた以外は、実施例1と同様にして改質ビニルエステル樹脂Bを得た。
そして、この改質ビニルエステル樹脂Bに、母材樹脂に対して0.3wt%のコバルト系促進剤(DIC株式会社製:Co-OCTOATE 6%X)及び1.0wt%の硬化剤(化薬アクゾ株式会社製:硬化剤328E)を加え完全に混合して、樹脂コンパウンドBを得た。
つぎに、この樹脂コンパウンドBを用いて、実施例1と同様にしてC-SMCサンプルBを得た。
その後、C-SMCサンプルBを常温、1MPaの条件下で1時間、電気炉にて60℃の条件下で3時間保持しアフターキュアをおこなって、炭素繊維強化複合材料Bを得た。
得られた炭素繊維強化複合材料Bの炭素繊維の体積含有率は45wt%であった。
(比較例1)
改質ビニルエステル樹脂Aに代えて、実施例1に用いた母材樹脂のビニルエステル樹脂(DICマテリアル株式会社製:エクスドーマ 9102-01NP)に、母材樹脂の重量に対して0.3wt%のコバルト系促進剤(DIC株式会社製:Co-OCTOATE 6%X)及び1.0wt%の硬化剤(日油株式会社製:パーキュアーAH)を加え完全に混合して、樹脂コンパウンドCを得た。
つぎに、この樹脂コンパウンドCを用いて、実施例1と同様にしてC-SMCサンプルCを得た。
その後、C-SMCサンプルCを常温、1MPaの条件下で1時間、電気炉にて60℃の条件下で3時間保持しアフターキュアをおこなって、炭素繊維強化複合材料Cを得た。
得られた炭素繊維強化複合材料Cの炭素繊維の体積含有率は45wt%であった。
(比較例2)
改質ビニルエステル樹脂Bに代えて、実施例2に用いた母材樹脂のビニルエステル樹脂B(DICマテリアル株式会社製:レイドーマ DCF-670)に、母材樹脂の重量に対して0.3wt%のコバルト系促進剤(DIC株式会社製:Co-OCTOATE 6%X)及び1.0wt%の硬化剤(化薬アクゾ株式会社製:硬化剤328E)を加え完全に混合して、樹脂コンパウンドDを得た。
つぎに、この樹脂コンパウンドDを用いて、実施例1と同様にしてC-SMCサンプルDを得た。
その後、C-SMCサンプルDを常温、1MPaの条件下で1時間、電気炉にて60℃の条件下で3時間保持しアフターキュアをおこなって、炭素繊維強化複合材料Dを得た。
得られた炭素繊維強化複合材料Dの炭素繊維の体積含有率は45wt%であった。
上記実施例1、2および比較例1、2で得られた炭素繊維強化複合材料A〜Dから、ダイヤモンドカッターを用いて、長さ200mm×幅25mm×厚さ2mmの短冊状の引張試験及び引張-引張疲労試験用の試験片1と、長さ100mm×幅15mm×厚さ2mmの短冊状の曲げ試験用の試験片2を、それぞれ切り分けた。
〔引張特性の把握試験〕
上記実施例1、2および比較例1、2で得られた炭素繊維強化複合材料A〜Dの試験片1のそれぞれについて、万能材料試験機(株式会社島津製作所製:オートグラフ、定格荷重 500N)を使用して.JIS K7164 に準拠し以下の試験条件(チャック間距離、クロスヘッドスピード、サンプル数、試験環境)で引張特性の把握試験を行い、その結果を表1に示した。
チャック間距離: 100[mm]
クロスヘッドスピード:1[mm/min]
サンプル数:5
試験環境:実験室温環境下(温度 23℃、湿度 50〜65%)
表1から微細ガラス繊維を添加することによって、実施例1改質ビニルエステル樹脂Aは、比較例1ビニルエステル樹脂Aより引張強度が35%以上高くなり、実施例2改質ビニルエステル樹脂Bでは、比較例2ビニルエステル樹脂Bより引張強度が57%以上高くなることがわかる。
また、標準偏差は、実施例1改質ビニルエステル樹脂Aの場合±17MPa、比較例1ビニルエステル樹脂Aの場合±21MPaとなり、微細ガラス繊維を添加することによって標準偏差が低減する。ビニルエステル樹脂Bの場合も、比較例2の±23MPaから実施例2の±15MPaと微細ガラス繊維を添加することによって、標準偏差が低減する。このように、微細ガラス繊維添加により引張強度のばらつきの少ない成形品を得られることがわかる。
〔曲げ特性の把握試験〕
上記実施例1、2および比較例1、2で得られた炭素繊維強化複合材料A〜Dの試験片2のそれぞれについて、万能材料試験機(株式会社島津製作所:オートグラフ、定格荷重 500N)を使用して、 JIS K7074に準拠し、以下の試験条件(支点間距離、クロスヘッドスピード、サンプル数、試験環境)で静的3点曲げ試験を行い、その結果を表2に示した。
支点間距離: 80[mm]
クロスヘッドスピード:5[mm/min]
サンプル数:5
試験環境:実験室温環境下(温度 23℃、湿度 50〜65%)
表2から、微細ガラス繊維を添加することによって、実施例1改質ビニルエステル樹脂Aは、比較例1ビニルエステル樹脂Aより曲げ強度が31%高くなり、実施例2改質ビニルエステル樹脂Bでは、比較例2ビニルエステル樹脂Bより曲げ強度が19%高くなることがわかる。
また、標準偏差も微細ガラス繊維を添加することによって、ビニルエステル樹脂Aの場合±56MPaから±43MPaに低減し、ビニルエステル樹脂Bの場合±111MPaから±25MPaに低減することから、微細ガラス繊維の添加によって、曲げ強度のばらつきの少ない成形品を得られることがわかる。
〔疲労特性〕
上記実施例1、2および比較例1、2で得られた炭素繊維強化複合材料A〜Dの試験片1のそれぞれについて、電気油圧式材料試験機(サーボパルサ、定格荷重 50KN、(株)島津製作所)を用い、荷重制御により以下の試験条件(応力比、繰り返し周波数、繰返し負荷荷重、サンプル数、試験環境)で疲労特性を評価するために引張-引張疲労試験を行い、その結果を、表3に示した。
応力比:0.1
繰り返し周波数:5Hz
繰返し負荷荷重:正弦波
サンプル数:3
試験環境:実験室温環境下(温度 23℃、湿度 50〜65%)
表3から、微細ガラス繊維を樹脂中に添加することによって、得られる成形品の疲労寿命が向上することが分かる。
なお、上記疲労試験では、試験後の試験片は完全破断したのに対し、上記3点曲げ試験では完全に破断しなかった。
そこで、上記3点曲げ試験後の炭素繊維強化複合材料A〜Dの試験片2にX線CTスキャンを用いて内部の損傷状態を観察し、その結果を図2(a)、(b)、(c)、(d)に示した。
図2(a)に示すように、母材樹脂に微細ガラス繊維を無添加のビニルエステル樹脂Aを使用した上記試験片2の場合、最外層でき裂が発生、進展することによって破壊することが分かった。
一方で、母材樹脂に微細ガラス繊維を無添加のビニルエステル樹脂Bを使用した試験片2の破断後の様相は、図2(b)に示すように、最外層でき裂が発生するものの、破壊に至るまでの致命的なき裂には成長せず、その間に中立軸付近で発生したき裂が進展し破壊することが分かった。
他方、母材樹脂に微細ガラス繊維を添加した試験片2の破断後の様相を、改質ビニルエステル樹脂Aを図2(c)に、改質ビニルエステル樹脂Bを図2(d)に示す。いずれの試験片共に、最外層のみならず中立軸付近でも複数のき裂が発生し、連結を繰り返しながら進展し、破壊にいたることがわかった。
以上から微細ガラス繊維を添加することによって最外層で発生するき裂の発生・進展を抑制し、材料の性能を十分に引き出すことが可能となったため、曲げ強度は向上したと考えられる。
次に、上記疲労試験後の実施例1、2および比較例1、2の試験片1の破断面の繊維先端付近を、それぞれ走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、その結果を図3(a)、(b)、(c)、(d)に示した。
図3(a)に示すように、母材樹脂に微細ガラス繊維を無添加のビニルエステル樹脂Aを使用した比較例1の試験片1の破断後の繊維表面の様相は樹脂の残存量が少なく、また繊維間の樹脂の残存も少量である。母材樹脂にビニルエステル樹脂Bを使用した比較例2の試験片1の破断後の繊維表面の様相は、図3(b)に示すように、樹脂の残存量は少ないものの、繊維間には多くの樹脂の残存が見られた。
他方、母材樹脂に微細ガラス繊維を添加すると、図3(c)、(d)に示すように、改質ビニルエステル樹脂A、改質ビニルエステル樹脂B共に、炭素繊維表面と繊維先端に樹脂がより多く残存するような破壊形態へと変化した。
したがって、微細ガラス繊維を添加することによって、炭素繊維/樹脂間の界面接着性が向上し、界面破壊が抑制され、破断面に樹脂が多く残存するような破壊形態へと変化したのだと考えられる。また、繊維先端でも同様の傾向が見られたため、繊維先端での応力集中によって発生する炭素繊維先端/樹脂間のはく離が抑制され、強度と疲労特性が向上すると思われる。
本発明のコンパウンド複合材料は、特に限定されないが、例えば、航空宇宙構造物、自動車・二輪車・船艇の構造用部材、大型の産業用機械部品、建築物や構造物、またそれらの補強、スポーツ用品等の成型品に用いることができる。

Claims (8)

  1. チョップド炭素繊維を強化繊維として母材樹脂中に含むコンパウンド複合材料であって、
    微細ガラス繊維が母材樹脂中に分散されていることを特徴とするコンパウンド複合材料。
  2. 母材樹脂が、ビニルエステル樹脂である請求項1に記載のコンパウンド複合材料。
  3. 微細ガラス繊維が、母材樹脂に対して0.01〜1wt%含まれている請求項1または請求項2に記載のコンパウンド複合材料。
  4. 微細ガラス繊維の繊維径が、50nm〜2μmである請求項1〜請求項3のいずれかに記載のコンパウンド複合材料。
  5. チョップド炭素繊維の繊維長が、2mm〜50mmである請求項1〜請求項4のいずれかに記載のコンパウンド複合材料。
  6. チョップド炭素繊維の体積含有率10〜70%である請求項1〜請求項5のいずれかに記載のコンパウンド複合材料。
  7. 母材樹脂に、微細ガラス繊維を分散混合した改質母材樹脂を得る工程と、
    繊維方向がランダムなチョップド炭素繊維の不織布状体を得る工程と、
    前記不織布状体に硬化剤が混合された改質母材樹脂を含浸させる工程を含む請求項1〜請求項6のいずれかに記載のコンパウンド複合材料の製造方法。
  8. 真空パックに入れられた状態の不織布状体を、金型内に入れ、前記真空パック内を真空状態にしたのち、前記真空パックに接続された樹脂吸引用のホースまたは管を介して、硬化剤が混合された改質母材樹脂を前記真空パック内に吸引充填して前記不織布状体に硬化剤が混合された改質母材樹脂を含浸させる請求項7に記載のコンパウンド複合材料の製造方法。
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