以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.送電装置、制御装置、送電部
図1は、本実施形態の送電装置、制御装置、送電部の構成例である。送電装置10は、制御装置20、送電部12(送電回路)、1次コイルL1を含む。なお、図1の送電装置10は、図9、図11、図12等で後述する無接点電力伝送システム200の送電装置10である。送電装置10は、1次コイルL1(送電側コイル)及び2次コイルL2(受電側コイル)の電磁的結合により受電装置40に対して電力を伝送する装置である。
送電部12は、電力伝送時において所定周波数の交流電圧を生成して、1次コイルL1に供給する。送電部12は、1次コイルL1を駆動する送電ドライバー18、送電ドライバー18に電源を供給する電源電圧制御部14(電源電圧制御回路、電源回路)を含む。
電源電圧制御部14は、送電部12(送電装置10)の電源電圧VINから送電ドライバー18の電源電圧VDRVを生成する昇圧回路であり、送電ドライバー18に供給する電源電圧VDRVを可変に制御する。電源電圧制御部14は、例えばコイルをトランジスターでスイッチング駆動(例えばPWM駆動)し、出力電圧が一定となるようにスイッチング駆動をフィードバック制御するDCDCコンバーターである。なお、電源電圧制御部14はこれに限定されず、キャパシターの接続関係をスイッチングすることで昇圧を行うチャージポンプ回路等であってもよい。
送電ドライバー18は、制御部24による制御に基づいて所定周波数で1次コイルL1を駆動(例えば矩形波駆動、交流駆動)するドライバーである。例えば、送電ドライバー18は、1次コイルL1の一端を駆動するインバーター回路と、1次コイルL1の他端を駆動するインバーター回路とで構成される。これらのインバーター回路は電源電圧VDRVで動作する。そして、その電源電圧VDRVが電源電圧制御部14により可変に制御されることで、送電装置10が受電装置40へ送電する電力が可変に制御される。
制御装置20は、送電部12を制御する制御部24(制御回路)を含む。また制御装置20は、種々の設定情報や制御情報等を記憶するレジスター部32(レジスター)と、を含む。
制御部24は、送電側の制御装置20の各種の制御処理を実行する。例えば制御部24は、電力伝送、通信処理等に必要な各種のシーケンス制御や判定処理を行う。この制御部24は、例えばゲートアレイ等の自動配置配線手法で生成されたロジック回路や、或いはマイクロコンピューターやDSP(Digital Signal Processor)などの各種のプロセッサーにより実現できる。プロセッサーにより実現する場合、例えば制御装置20は更にメモリーを含み、そのメモリーには制御部24の機能を記述したプログラム等が記憶される。そして、そのプログラムをプロセッサーが実行することによって制御部24の機能が実現される。
レジスター部32は、例えばフリップフロップ回路(ラッチ回路)や不揮発性メモリーで実現される。レジスター部32は、制御装置20の外部装置(例えばCPU(Central Processing Unit)やマイクロコンピューター)から不図示のインターフェース回路を介してアクセス可能に構成される。またレジスター部32には、後述する通信により受電装置40から受信した設定情報や制御情報等が記憶される。
図2は、間欠送電における送電装置10の第1の動作例を説明する図である。間欠送電は、1次コイルL1を間欠的に駆動して間欠的に送電を行うことであり、所定の条件の場合に行われる。例えば図13〜図16等で後述するように、受電側でバッテリーの満充電が検出された後において、送電装置10から受電装置40が取り去られたか否かを検出する取り去り検出時や、或いは受電装置40が取り去られた状態の取り去り期間において、送電装置10に受電装置40が着地されたか否かを検出する着地検出時に、間欠送電が行われる。
この第1の動作例では、送電ドライバー18が1次コイルL1の駆動を行っていない(オフしている)時には、電源電圧制御部14が送電ドライバー18の電源電圧VDRVを5Vに設定している。この5Vは、例えば電源電圧制御部14が設定できる電源電圧VDRVの最低値に相当する。送電ドライバー18が1次コイルL1の駆動を開始する(オンにする)と、それと同時に電源電圧制御部14が送電ドライバー18の電源電圧VDRVを6Vに設定する。そして、7V、8Vと段階的に高い電圧を設定していき、送電ドライバー18が1次コイルL1の駆動を停止する(オフにする)と同時に、電源電圧制御部14が送電ドライバー18の電源電圧VDRVを5Vに設定する。
このように、送電ドライバー18が1次コイルL1を駆動している期間において送電ドライバー18の電源電圧VDRVが6V、7V、8Vと段階的に高い電圧に設定される。このような動作を行うことで、着地検出又は取り去り検出において、検出範囲の設定や、2次側の受電電圧(図11のVCC)の抑制が可能となる。
即ち、図14で後述するように、着地検出では2次側の受電電圧VCCが電圧VSTよりも高くなった場合に受電装置40が送電装置10へ通信を行い、それを受けて送電装置10が着地を検出したと判断し、間欠送電から通常送電へ移行させる。例えば、送電ドライバー18の電源電圧VDRVが7Vになったときに着地が検出された場合、送電ドライバー18の電源電圧VDRVは8Vには設定されずに通常送電へ移行される。即ち、受電電圧VCCが電圧VSTを大きく超えることなく着地検出が行われる。
仮に送電ドライバー18の電源電圧VDRVを最初から高い電圧に設定したとすると、たまたま受電装置40の2次コイルL2と送電装置10の1次コイルL1が近い距離に置かれた場合に、受電電圧VCCが非常に高い電圧となり、受電装置40に過電圧が印加される可能性がある。本実施形態では、このような状況を避けることが可能である。
また、受電装置40の2次コイルL2と送電装置10の1次コイルL1が近い場合には送電ドライバー18の電源電圧VDRVが低くても着地を検出できるが、受電装置40の2次コイルL2と送電装置10の1次コイルL1が遠い場合には送電ドライバー18の電源電圧VDRVが高くないと着地を検出できない。これは、送電ドライバー18の電源電圧VDRVが着地を検出できる距離(範囲)に対応することを意味している。即ち、送電ドライバー18の電源電圧VDRVを段階的に高い電圧に設定することで、着地検出の距離範囲を所望の範囲に設定できることになる。
図16で後述するように、取り去り検出では2次側の受電電圧VCCが電圧VSTよりも高くなった場合に受電装置40が送電装置10へ通信を行い、それを受けて送電装置10が受電装置40が取り去られていないと判断し、間欠送電を維持する。そして、間欠送電期間において受電装置40から通信が行われなかった場合に、送電装置10は受電装置40が取り去られたと判断し、着地検出の間欠送電に移行する。この場合にも、上述した着地検出と同じことが言える。即ち、送電ドライバー18の電源電圧VDRVを段階的に高い電圧に設定することで、取り去り検出の距離範囲を所望の範囲に設定できる。また、受電装置40へ過電圧が印加される可能性を下げることができる。
なお、間欠送電期間において送電ドライバー18の電源電圧VDRVを段階的に高い電圧に設定する際のステップ数や各ステップでの電圧は、着地検出と取り去り検出で異ならせてもよい。
さて、図2の第1の動作例では、送電ドライバー18が1次コイルL1の駆動を開始すると同時に電源電圧制御部14が送電ドライバー18の電源電圧VDRVを5Vから6Vに設定している。また、送電ドライバー18が1次コイルL1を駆動した状態で電源電圧制御部14が送電ドライバー18の電源電圧VDRVを6Vから7V、7Vから8Vに設定している。このように、電源電圧制御部14が負荷電流の出力を開始すると同時に或いは負荷電流を出力した状態で送電ドライバー18の電源電圧VDRVを変化させると、送電部12の電源(電源電圧VIN)から電源電圧制御部14へ流れる電流Iinが急激に変化し、電源或いは送電装置10に悪影響を及ぼす可能性がある。
例えば送電ドライバー18が1次コイルL1を駆動している際に電源電圧制御部14から送電ドライバー18へ出力される電流Ioutが100mAとし、送電部12の電源電圧VINを5Vとする。この場合、送電ドライバー18の電源電圧VDRV=5V、6V、7V、8Vに対応する昇圧倍率は1倍、1.2倍、1.4倍、1.6倍となる。そうすると、電流Iout=100mAに対して送電部12の電源が出力する電流Iinは100mA、120mA、140mA、160mAとなる。送電ドライバー18がオンしているのは間欠送電期間だけなので、実際には送電ドライバー18の電源電圧VDRV=5V、6V、7V、8V、5Vと変化するに従って、電流Iin=0mA、120mA、140mA、160mA、0mAとなる。このように、送電ドライバー18が1次コイルL1の駆動を開始したときに電流Iinが120mAだけ変化し、その後に送電ドライバー18の電源電圧VDRVが1V上がるごとに電流Iinが20mAだけ変化する。
また、電源電圧制御部14の出力には電圧安定化用のキャパシター(図7のCB)が設けられる。そのため、電源電圧制御部14の出力電圧(VDRV)が上がると電圧安定化用のキャパシターを充電する必要があり、そのための電流が突入電流となって送電部12の電源からの電流Iinを急激に上昇させる。そして、この突入電流が、上述の段階的な電流上昇に加わり、大きな突入電流となって電源或いは送電装置10に悪影響を及ぼす可能性がある。
例えば、送電部12の電源としてUSB(Universal Serial Bus)のバスパワー等を想定できるが、このような電源では定格出力電流が決められている。このような電源において、電流Iinの急激な変化により一時的に定格出力電流を超える(又は定格出力電流に近い)電流が流れ、電源に異常や故障等の悪影響が生じる可能性がある。或いは、電流Iinの急激な変化により電源電圧VINが一時的に低下(電圧ドロップ)し、それを送電装置10の電圧監視回路が検出してしまい、送電装置10の安全機能(例えば動作停止)が働いてしまう可能性がある。
以下、上記のような課題を解決できる本実施形態の送電装置10(制御装置20)について説明する。図3は、間欠送電における送電装置10の第2の動作例を説明する図である。
本実施形態の制御装置20は、送電用の1次コイルL1に駆動信号を印加する送電ドライバー18と、送電ドライバー18に電源電圧VDRVを供給する電源電圧制御部14と、を制御する。制御装置20は、制御部24を含む。制御部24は、電源電圧VDRVを第1の電圧V1から第1の電圧V1よりも高い第2の電圧V2に設定してから所与の期間T1経過後に、送電ドライバー18に1次コイルL1の駆動を開始させる駆動制御を行う。
即ち、制御部24は、電源電圧VDRVを第2の電圧V2に変化させる指示を電源電圧制御部14に対して行い、その後に期間T1が経過したと判断(例えばタイマー等により計測)した場合に、送電ドライバー18に対して1次コイルL1の駆動を指示する。所与の期間T1は、例えば固定の期間であってもよいし、或いはレジスター設定等により可変に設定される期間であってもよい。所与の期間T1は、例えば電源電圧VDRVが電圧V2に設定されている期間よりも短い期間である。
このようにすれば、送電ドライバー18が1次コイルL1を駆動していない期間(即ち電源電圧制御部14が負荷電流を出力していない期間)において送電ドライバー18の電源電圧VDRVを第1の電圧V1から第2の電圧V2に変化させることができる。これにより、図2で説明した送電部12の電源から電源電圧制御部14へ流れる電流Iinの0mAから120mAへの変化は、送電ドライバー18の電源電圧VDRVが第2の電圧V2に変化した際には起きず、そこから期間T1が経過した後の送電ドライバー18の駆動を開始した際に起きることになる。電圧安定化用のキャパシターを充電することによる突入電流は、送電ドライバー18の電源電圧VDRVが第2の電圧V2に変化した際に起きるので、キャパシターを充電することによる突入電流の発生と送電部12の電源から電源電圧制御部14へ流れる電流の変化のタイミングが異なることになり、送電部12の電源に対する突入電流(そのピーク値)が低減される。これにより、電源や送電装置10への悪影響を低減できる。
ここで、第1の電圧V1とは、間欠送電期間において送電ドライバー18が1次コイルを駆動しない期間(駆動オフ期間、非送電期間)において設定される送電ドライバー18の電源電圧VDRV(デフォルト電圧)である。例えば、第1の電圧V1は、電源電圧VDRVとして設定可能な最低電圧である。また第2の電圧V2とは、間欠送電期間において送電ドライバー18が1次コイルを駆動する期間(駆動オン期間、送電期間)において設定される送電ドライバー18の電源電圧VDRV(間欠送電用電圧)である。この第2の電圧V2は、その電圧で送電ドライバー18が送電を行った場合に、受電装置40が負荷変調による通信(応答)を行う可能性がある電圧である。即ち、第2の電圧V2で送電ドライバー18が送電を行うと共に、受電電圧VCCが所与の電圧VSTより大きくなった場合に、負荷変調が行われる。第3の電圧V3、第4の電圧V4についても同様に、それらの電圧で送電ドライバー18が送電を行うと共に、受電電圧VCCが所与の電圧VSTより大きくなった場合に、負荷変調が行われる。ここで、V3>V4>V2>V1である。
また本実施形態では、制御部24は、送電ドライバー18による1次コイルL1の駆動を停止させた後、第2の所与の期間T2経過後に、電源電圧VDRVを第1の電圧V1よりも高い第3の電圧V3から第1の電圧V1に設定する。
即ち、制御部24は、送電ドライバー18に対して1次コイルL1の駆動の停止を指示し、その後に期間T2が経過したと判断(例えばタイマー等により計測)した場合に、電源電圧VDRVを第1の電圧V1に変化させる指示を電源電圧制御部14に対して行う。第2の所与の期間T2は、例えば固定の期間であってもよいし、或いはレジスター設定等により可変に設定される期間であってもよい。また、第2の所与の期間T2は、所与の期間T1と同一の長さの期間であってもよいし、異なる長さの期間であってもよい。第2の所与の期間T2は、例えば電源電圧VDRVが電圧V3に設定されている期間よりも短い期間である。
図2において電源電圧VDRVを8V(第3の電圧V3)から5V(第1の電圧V1)に下げる場合、電圧安定化用のキャパシターの電荷が余ることになるので、その余った電荷が除かれるまで送電部12の電源からの電流供給は大きく絞られる。この電流Iinの変化に、送電ドライバー18の駆動をオフしたことによる電流Iinを絞る方向の変化(図2の電流Iinの160mAから0mAへの変化)が重なることは望ましくない。
この点、本実施形態によれば、送電ドライバー18の駆動を停止させるタイミングと、電源電圧VDRVを第1の電圧V1に変化させるタイミングとを第2の所与の期間T2だけずらすことができる。これにより、電流Iinの変化による送電部12の電源や送電装置10への悪影響を低減できる。
また本実施形態では、制御部24は、電源電圧VDRVを第1の電圧V1から第1の電圧V1よりも高い第2の電圧V2に設定して、送電ドライバー18による1次コイルL1の駆動を開始させ、第2の電圧V2から第3の電圧V3に徐々に又は階段状に変化させる駆動制御を行う。そして、制御部24は、電源電圧VDRVを第3の電圧V3から第1の電圧V1に設定する。
上述したように、電源電圧VDRVの変化範囲は、送電装置10と受電装置40の間で着地検出や取り去り検出が可能な1次コイルL1と2次コイルL2の間の距離範囲に対応している。本実施形態によれば、電源電圧VDRVを第2の電圧V2から第3の電圧V3に徐々に又は階段状に変化させることで、所望の距離範囲において徐々に又は段階的に検出距離を変化させながら着地検出や取り去り検出を行うことが可能となる。
ここで、「第2の電圧V2から第3の電圧V3に階段状に変化させる」とは、ある電圧ステップ(電圧幅)で第2の電圧V2から第3の電圧V3に段階的に変化させることである。例えば図2では、1Vステップで5V(V2)、6V、7V(V3)と変化させることに相当する。なお、図2ではV2とV3の間に1つの電圧ステップ(6V)を含むが、V2からV3へ電圧ステップを経由せずに直接に変化させてもよいし、V2とV3の間に2以上の電圧ステップが含まれてもよい。
なお、図2、図3では第2の電圧V2から第3の電圧V3に階段状に変化させる場合を例に説明しているが、第2の電圧V2から第3の電圧V3に徐々に変化させてもよい。「第2の電圧V2から第3の電圧V3に徐々に変化させる」とは、第2の電圧V2から第3の電圧V3に少しずつ変化させることである。例えば、時間の経過に対してある電圧変化率(傾き)で第2の電圧V2から第3の電圧V3に変化させることである。例えば、非常に小さな電圧ステップによる変化を繰り返して電圧を変化させる、或いは、アナログ回路などにより電圧を連続的に変化させることで、実現できる。非常に小さな電圧ステップは、例えば第2の電圧V2と第3の電圧V3の差の1/4以下や1/8以下の電圧ステップである。例えば、図7で後述する電源電圧制御部14は可変抵抗RBの抵抗値を変更することで、電源電圧VDRVを変化させる。図8は可変抵抗RBの構成例であるが、その抵抗値を制御する制御データDA[0:7]を1〜数LSBずつ変化させることで、非常に小さな電圧ステップを実現できる。
また本実施形態では、第3の電圧V3は、第2の電圧V2とは異なる電圧である。具体的には、第3の電圧V3は第2の電圧V2よりも高い電圧である。
このように第3の電圧V3を第2の電圧V2よりも高い電圧にすることで、低い送電電力(電源電圧VDRV)から徐々に又は階段状に高い送電電力に上げることができる。これにより、図2で説明したような受電装置40の受電電圧VCCが過電圧となる可能性を低減できる。また、第3の電圧V3に対応した1次コイルL1と2次コイルL1の間の距離範囲(着地検出又は取り去り検出できる距離範囲)を、第2の電圧V2に対応した距離範囲よりも広くできる。これにより、狭い距離範囲から徐々に広い距離範囲で着地検出又は取り去り検出できる。距離範囲については図5等で後述する。
また本実施形態では、制御部24は、着地検出時の間欠送電期間又は取り去り検出時の間欠送電期間において、上述の駆動制御を行う。
間欠送電期間とは、送電装置10が受電装置40へ間欠的に送電を行う(送電ドライバー18が間欠的に1次コイルL1の駆動を行う)期間である。即ち、送電装置10が送電していない(送電ドライバー18による駆動がオフになっている)期間と、一時的に送電装置10が送電する(送電ドライバー18による駆動がオンになっている)期間とを、繰り返している期間である。例えば、送電装置10が送電する期間(駆動オン期間)の方が、送電装置10が送電していない期間(駆動オフ期間)よりも短い。
このように、着地検出や取り去り検出において間欠送電を行うことで、送電電力を節約し、送電装置10の消費電力を低減できる。また、着地検出時や取り去り検出時の間欠送電期間において上述の駆動制御を行うことで、突入電流による電源や送電装置10への悪影響を低減したり、所望の検出距離範囲での着地検出や取り去り検出が可能となる。
また本実施形態では、図4に示すように、着地検出時の間欠送電期間における駆動制御の第2の電圧V2を、着地検出用の第2の電圧VL2とし、取り去り検出時の間欠送電期間における駆動制御の第2の電圧V2を、取り去り検出用の第2の電圧VR2とする。この場合に、着地検出用の第2の電圧VL2よりも取り去り検出用の第2の電圧VR2が低い電圧に設定される。
また本実施形態では、図4に示すように、着地検出時の間欠送電期間における駆動制御の第3の電圧V3を、着地検出用の第3の電圧VL3とし、取り去り検出時の間欠送電期間における駆動制御の第3の電圧V3を、取り去り検出用の第3の電圧VR3とする。この場合に、着地検出用の第3の電圧VL3よりも取り去り検出用の第3の電圧VR3が高い電圧に設定される。
このようにすれば、着地検出における検出距離範囲よりも取り去り検出における検出距離範囲の方が広くなり、着地検出後に取り去りが誤検出される可能性を低減できる。この点について、図5を用いて検出距離範囲の外側の境界を例にとって説明する。
図5に示すように、送電装置10を含む充電器500に、受電装置40を含む電子機器510を着地させて電子機器510のバッテリーを充電するとする。このとき、着地検出用の第3の電圧VL3は、送電装置10(1次コイルL1)と受電装置40(2次コイルL2)の間の距離DT1に対応する。即ち、電源電圧VDRV=VL3で送電ドライバー18が1次コイルL1を駆動している場合、距離DT1に受電装置40が着地していると受電電圧VCCが電圧VSTより大きくなり、着地が検出されるということである。同様に、取り去り検出用の第3の電圧VR3は、送電装置10(1次コイルL1)と受電装置40(2次コイルL2)の間の距離DT2に対応する。VR3>VL3からDT2>DT1である。
このとき、着地検出における検出距離範囲の境界付近(即ち距離DT1付近)に受電装置40が着地されたとする。そうすると、着地が検出されるが、E1に示す矢印のように、ユーザーが受電装置40から手を離した際などにわずかに受電装置40が移動する場合がある。仮にDT1=DT2であった場合、このわずかな動きによって取り去り検出の範囲外(着地した状態と判定される範囲外)になり、ユーザーが取り去る意思がないにも関わらず取り去りが検出され、バッテリーの充電が停止される可能性がある。この点、本実施形態ではDT2>DT1であるため、受電装置40が動いても取り去りが検出される可能性は低くなり、ユーザーの意図に反した充電の停止が発生しにくくなる。なお、距離が近い側(電源電圧VDRVが低い側)での境界付近でも、同様に受電装置40が動いても取り去りが検出される可能性を低くできる。
なお、上記のような問題が発生しにくい状況においては、VR2=VL2、VR3=VL3に設定されてもよい。例えば、受電装置40を含む電子機器510が補聴器の場合、送電装置10を含む充電器500にポケット(凹部)が設けられ、そのポケットに補聴器を差し込んで充電することが想定される。このような場合、補聴器の動きはポケットによって制限されるので、検出距離範囲をポケットよりも大きくしておけば、ポケット内での補聴器の動きがあっても取り去りが誤検出される可能性は小さい。そのため、VR2=VL2、VR3=VL3に設定しておいてもよい(もちろん、VR2<VL2、VR3>VL3にしてもよい)。
また本実施形態では、図3に示すように、制御部24は、電源電圧VDRVを第2の電圧V2から第4の電圧V4へと、時間経過と共に徐々に(徐々に又は階段状に)変化させる。また、その後に制御部24は、電源電圧VDRVを第4の電圧V4から第3の電圧V3へと、時間経過と共に徐々に(徐々に又は階段状に)変化させる。
具体的には、第3の所与の期間T3において時間経過と共に電源電圧VDRVを第2の電圧V2から第4の電圧V4へ徐々に変化させる。即ち、急峻(瞬時)に電源電圧VDRVが第2の電圧V2から第4の電圧V4へ変化するのではなく、ある程度の期間T3をかけて変化させる。同様に、第3の所与の期間T3において時間経過と共に電源電圧VDRVを第4の電圧V4から第3の電圧V3へ徐々に変化させる。この第3の所与の期間T3は、例えば固定の期間であってもよいし、或いはレジスター設定等により可変に設定される期間であってもよい。また、第3の所与の期間T3は、例えば電源電圧VDRVが電圧V2、V4に設定されている期間よりも短い期間である。
例えば、図6に示すように、非常に小さな電圧ステップにより階段状に電圧を変化させることで、電源電圧VDRVを第2の電圧V2から第4の電圧V4へ徐々に変化させる。例えば図8の可変抵抗RBの抵抗値を制御する制御データをDA[0:7]=DA1に設定すると電源電圧VDRV=V2となり、DA[0:7]=DA2に設定すると電源電圧VDRV=V4となるとする。DA1とDA2の差が10LSBであったとすると、その10LSBよりも小さいステップ(例えば1〜数LSB)で制御データDA[0:7]を変化させることで、電源電圧VDRVを第2の電圧V2から第4の電圧V4へ時間経過とともに徐々に変化させることができる。第4の電圧V4から第3の電圧V3への変化についても同様である。
なお、アナログ回路などによって第2の電圧V2から第4の電圧V4へ、或いは第4の電圧V4から第3の電圧V3へ、時間経過とともに連続的に電源電圧VDRVを変化させてもよい。即ち、時間の経過に対してある電圧変化率(傾き)で変化させてもよい。
本実施形態では送電ドライバー18の駆動をオンしている期間において電源電圧VDRVをV2、V4、V3のように段階的に変化させている。この場合、電源電圧VDRVを変化させるときに送電ドライバー18の駆動を停止させて突入電流を低減することはできない。即ち、図2で説明した電流Iinの120mAから140mAへの変化や、140mAから160mAへの変化を無くすことはできない。
この点、本実施形態では、時間経過とともに徐々に電源電圧VDRVを変化させることで、電圧安定化用のキャパシターを充電するための突入電流(図2の電流Iinのピーク部分)を低減できる。これにより、送電ドライバー18の駆動がオンしている状態(即ち、電流Iinの階段状の変化が存在している状態)でも、突入電流のピーク値を低減することが可能となる。
また本実施形態では、制御装置20はレジスター部32を含む。制御部24は、電源電圧VDRVを第1の電圧V1から第2の電圧V2を含む複数の電圧(V2、V4、V3)に設定した後、第1の電圧V1に設定する。レジスター部32には、第2の電圧V2、複数の電圧(V2、V4、V3)のステップ幅、及び複数の電圧(V2、V4、V3)のステップ数の少なくとも1つが設定される。
例えば、レジスター部32には、外部装置からこれらのパラメーターの少なくとも1つが書き込まれる(設定される)。或いは、レジスター部32には、これらのパラメーターの少なくとも1つが予め格納されていてもよい。或いは、制御装置20がこれらのパラメーターの少なくとも1つをレジスター部32に設定する構成であってもよい。
このようにすれば、第2の電圧V2、複数の電圧(V2、V4、V3)のステップ幅、及び複数の電圧(V2、V4、V3)のステップ数の少なくとも1つを可変に設定することが可能となる。上述したように、これらの電圧やステップ数は、着地検出や取り去り検出の検出距離範囲などに関係しており、その検出距離範囲などを可変に設定することが可能となる。なお、図3では複数の電圧のステップ数を3としているが、ステップ数は3に限定されない。また、着地検出と取り去り検出で、第2の電圧V2や、複数の電圧のステップ幅、複数の電圧のステップ数が異なってもよい。
また本実施形態では、制御部24は、送電ドライバー18に供給する電源電圧VDRVを変化させることにより送電ドライバー18の送電電力を制御する。
具体的には、図14で後述するように、通常送電において受電装置40が受電電圧VCC(受電電圧VCCのA/D変換データ)を送電装置10へ送信し、それを受けて送電装置10の制御部24は、受電電圧VCCがターゲット電圧となるように送電電力を制御する。
バッテリーの充電を行う状態(送電装置10に受電装置40が着地した状態)において、送電装置10と受電装置40は毎回同じ位置関係になるとは限らない。また、充電中に位置関係が変わる可能性もある。この点、本実施形態によれば、送電部12の送電電力を制御することで、送電装置10と受電装置40の位置関係に依らず(着地検出の範囲内であれば)受電電圧VCCをターゲット電圧となるように制御できる。これにより、送電装置10と受電装置40の位置関係に依らずに同じ受電電圧VCCに基づいてバッテリーを充電できる。
そして、このような送電電力の制御機能を用いて、本実施形態の間欠送電期間における駆動制御が実現されている。
なお、本実施形態では制御装置20の外部に送電部12が設けられる場合を例に説明したが、これに限定されない。即ち、制御装置20が送電部12又は送電部12の一部を含んでもよい。具体的には、制御装置20が送電ドライバー18及び電源電圧制御部14の少なくとも一方を含んでもよい。例えば、制御装置20がインダクター等の外付け部品を除く電源電圧制御部14と送電ドライバー18を含んでもよいし、或いは電源電圧制御部14が制御装置20の外部に設けられ、制御装置20が送電ドライバー18を含んでもよい。或いは、送電ドライバー18が制御装置20の外部に設けられ、制御装置20が、インダクター等の外付け部品を除く電源電圧制御部14を含んでもよい。
このような構成の場合にも、本実施形態の駆動制御を行うことで、送電部12の電源に対する突入電流を低減でき、電源や送電装置10への悪影響を低減できる。
2.電源電圧制御部
図7は、電源電圧制御部14の詳細な構成例である。電源電圧制御部14は、抵抗RCと、インダクターLB(コイル)と、ダイオードDBと、キャパシターCBと、制御回路CV(スイッチング制御回路)と、トランジスターTB(例えばN型MOSトランジスター)と、を含む。なお、抵抗RAと可変抵抗RBは、図12に示すように電源電圧設定部26として制御装置20に内蔵される。
電源電圧設定部26は、抵抗分割回路であり、抵抗RAと可変抵抗RBとを含む。抵抗RAは、送電ドライバー18の電源電圧VDRV(出力電圧)が出力されるノードAOUTとノードN1との間に設けられる。可変抵抗RBは、ノードN1とグランドGND(広義には、低電位側電源)との間に設けられる。
電源電圧制御部14の抵抗RCは、電源電圧VIN(入力電圧)が供給されるノードTINとノードN2との間に設けられる。インダクターLBは、ノードN2とノードN3との間に設けられている。ダイオードDBは、アノードがノードN3に接続され、カソードがノードN4に接続されている。キャパシターCBは、ノードN4とグランドGNDとの間に設けられている。制御回路CVは、ノードN2に接続される端子VDDと、ノードN1に接続される端子ADJと、ノードAOUTに接続される端子VOと、トランジスターTBのゲートに接続される端子GCと、を有する。トランジスターTBは、ドレインがノードN3に接続され、ソースがグランドGNDに接続される。ノードAOUTは、ノードである。
図7に示すような回路において、駆動電圧VDRV(電源電圧)は、下式(1)により表すことができる。なお、下式(1)において、VADJは、制御回路CVの端子ADJにおける電圧であり、RRAは抵抗RAの抵抗値であり、RRBは可変抵抗RBの抵抗値である。
VDRV=VADJ×(RRA+RRB)/RRB (1)
具体的には、電源電圧制御部14は、端子ADJにおける電圧VADJを一定に保つ動作をする。即ち、制御回路CVは、端子ADJにおける電圧VADJが基準電圧Vref(一定値)となるように、トランジスターTBのオンオフ信号を変調制御(例えばPWM:Pulse Width Modulation)し、そのオンオフ信号を端子GCからトランジスターTBのゲートに出力する。出力電圧VDRV(電源電圧)を抵抗分割した電圧VADJが一定値に制御されることで、出力電圧VDRVが一定値に制御される。また、可変抵抗RBの抵抗値を変えることで、抵抗RAと可変抵抗RBによる分割比が変わり、出力電圧VDRVを可変に制御することが可能となる。
制御回路CVは、一例として、三角波生成回路と、エラー増幅アンプと、PWM信号出力回路とにより実現できる。即ち、三角波生成回路は三角波を生成し、エラー増幅アンプは、電圧VADJと基準電圧Vrefとの誤差を増幅する。PWM信号出力回路は、三角波生成回路により生成された三角波と、エラー増幅アンプの出力とを比較して、PWM信号(オンオフ信号)を出力する。
図8は、電源電圧設定部26の詳細な構成例である。電源電圧設定部26は、抵抗RAと可変抵抗RBを含む。可変抵抗RBは、ベースとなる抵抗R2と、8つ(広義には複数)の調整用の抵抗RA0〜RA7と、8つのトランジスターTA0〜TA7とにより構成されている。抵抗RA0〜RA7の各抵抗は、トランジスターTA0〜TA7の各トランジスターと直列回路(DC0〜DC7)を構成しており、各直列回路(DC0〜DC7)が、抵抗R2と並列に接続されている。
より具体的には、抵抗R2は、ノードN1とグランドGNDとの間に設けられ、抵抗R1と直列に接続されている。抵抗RA0は、一端がノードN1に接続されており、他端がトランジスターTA0(例えばN型MOSトランジスター)のドレインに接続されている。トランジスターTA0のソースはグランドGNDに接続され、トランジスターTA0のゲートには、制御部24からの制御信号(制御データDA[7:0]のビットDA[0])が入力される。他の直列回路DC1〜DC7についても同様に構成される。抵抗RA0〜RA7のうち抵抗RA0の抵抗値が最も大きく、抵抗RA1、RA2、・・・、RA7の順に抵抗値が小さくなっていく。例えば抵抗RA0〜RA7の抵抗値はバイナリー(2の累乗)に重み付けされている。
制御部24は、制御データDA[7:0]の値を制御することで、可変抵抗RBの抵抗値を制御し、送電ドライバー18の電源電圧VDRVを制御する。即ち、制御データDA[7:0]の値に応じてトランジスターTA0〜TA7のオンオフ状態が決定され、抵抗RA0〜RA7のうち、オンとなったトランジスターに接続される抵抗が抵抗R2に並列に接続され、可変抵抗RBの抵抗値が決まる。例えば制御データDA[7:0]=0の場合にはトランジスターTA0〜TA7の全てがオフとなる。この場合、可変抵抗RBの抵抗値は最も高く、送電ドライバー18の電源電圧VDRVは最も低い。そして、制御データDA[7:0]=0の値を大きくするほど可変抵抗RBの抵抗値は小さくなり、送電ドライバー18の電源電圧VDRVは高くなっていく。
3.無接点電力伝送システム
以下、本実施形態の制御装置20を無接点電力伝送システム200の送電装置10に適用した場合を例にとり、制御装置20及び制御装置20を含む電子機器の詳細を説明する。
図9は、本実施形態の無接点電力伝送システム200の一例である。充電器500(電子機器の1つ)は送電装置10を有する。電子機器510は受電装置40を有する。また電子機器510は、操作用のスイッチ部514(広義には操作部)やバッテリー90を有する。なお図9ではバッテリー90を模式的に示しているが、このバッテリー90は実際には電子機器510に内蔵されている。図9の送電装置10と受電装置40により本実施形態の無接点電力伝送システム200が構成される。
充電器500には、電源アダプター502を介して電力が供給され、この電力が、無接点電力伝送により送電装置10から受電装置40に送電される。これにより、電子機器510のバッテリー90を充電し、電子機器510内のデバイスを動作させることができる。
なお充電器500の電源は、USB(USBケーブル)による電源であってもよい。また、本実施形態が適用される電子機器510としては種々の機器を想定できる。例えば補聴器、腕時計、生体情報の測定装置(脈波等を測定するウェアラブル機器)、携帯情報端末(スマートフォン、携帯電話機等)、コードレス電話器、シェーバー、電動歯ブラシ、リストコンピューター、ハンディターミナル、車載用機器、ハイブリッド車、電気自動車、電動バイク、或いは電動自転車などの種々の電子機器を想定できる。例えば本実施形態の制御装置(受電装置等)は、車、飛行機、バイク、自転車、或いは船舶等の種々の移動体に組み込むことができる。移動体は、例えばモーターやエンジン等の駆動機構、ハンドルや舵等の操舵機構、各種の電子機器(車載機器)を備えて、地上や空や海上を移動する機器・装置である。
図10に模式的に示すように、送電装置10から受電装置40への電力伝送は、送電側に設けられた1次コイルL1(送電コイル)と、受電側に設けられた2次コイルL2(受電コイル)を電磁的に結合させて電力伝送トランスを形成することなどで実現される。これにより非接触での電力伝送が可能になる。なお無接点電力伝送の方式としては、電磁誘導方式又は磁界共鳴方式等の種々の方式を採用できる。
4.送電装置、受電装置、制御装置の構成
図11は、本実施形態の制御装置20、50及びこれを含む送電装置10、受電装置40の構成例である。なお、これらの各装置の構成は図11の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素(例えば報知部)を追加したり、接続関係を変更するなどの種々の変形実施が可能である。
図9の充電器500などの送電側の電子機器は送電装置10を含む。また受電側の電子機器510は受電装置40と負荷80を含む。負荷80は、バッテリー90、電力供給対象100を含むことができる。電力供給対象100は、例えば処理部(CPU(Central Processing Unit)、マイクロコンピューター、DSP(Digital Signal Processor)等)などの各種のデバイスである。そして図11の構成により、1次コイルL1と2次コイルL2を電磁的に結合させて送電装置10から受電装置40に対して電力を伝送する無接点電力伝送(非接触電力伝送)システムが実現される。
送電装置10(送電モジュール、1次モジュール)は、1次コイルL1、送電部12(送電回路)、制御装置20を含む。送電部12は、1次コイルL1と共に共振回路を構成する少なくとも1つのキャパシター(コンデンサー)を含むことができる。
1次コイルL1(送電側コイル)は、2次コイルL2(受電側コイル)と電磁結合して電力伝送用トランスを形成する。例えば電力伝送が必要なときには、図9、図10に示すように、充電器500の上に電子機器510を置き、1次コイルL1の磁束が2次コイルL2を通るような状態にする。一方、電力伝送が不要なときには、充電器500と電子機器510を物理的に離して、1次コイルL1の磁束が2次コイルL2を通らないような状態にする。
制御装置20は、送電側の各種制御を行うものであり、集積回路装置(IC)などにより実現できる。制御装置20は、制御部24(制御回路)、通信部30(通信回路)、レジスター部32を含む。なお送電部12を制御装置20に内蔵させるなどの変形実施も可能である。
通信部30は、受電装置40との間での通信データの通信処理を行う。例えば通信部30は、受電装置40からの通信データを検出して受信するための処理を行う。
受電装置40(受電モジュール、2次モジュール)は、2次コイルL2、制御装置50を含む。制御装置50は、受電側の各種制御を行うものであり、集積回路装置(IC)などにより実現できる。制御装置50は、受電部52(受電回路)、制御部54(制御回路)、電力供給部57(電力供給回路)を含む。また通信部46(通信回路)、記憶部48(メモリー)を含むことができる。なお、受電部52を制御装置50の外部に設けるなどの変形実施も可能である。
受電部52は、送電装置10からの電力を受電する。具体的には受電部52は、2次コイルL2の交流の誘起電圧を直流の整流電圧VCC(受電電圧)に変換して、出力する。
電力供給部57は、受電部52が受電した電力に基づいて、負荷80に対して電力を供給する。例えば受電部52が受電した電力を供給して、バッテリー90を充電する。或いはバッテリー90からの電力や、受電部52が受電した電力を、電力供給対象100に供給する。電力供給部57は電力供給スイッチ42、チャージポンプ回路61を含む。電力供給スイッチ42は、受電部52が受電した電力を、負荷80に供給するスイッチ(スイッチ素子、スイッチ回路)である。例えば電力供給スイッチ42は、受電部52が受電した電力を、負荷80であるバッテリー90に供給して、バッテリー90を充電する。
制御部54は、受電側の制御装置50の各種の制御処理を実行する。例えば制御部54は、通信部46、電力供給部57の制御を行う。また受電部52や記憶部48の制御を行うこともできる。制御部54は、例えばゲートアレイ等の自動配置配線手法で生成されたロジック回路や、或いはマイクロコンピューターなどの各種のプロセッサーにより実現できる。
通信部46は、送電装置10に対して通信データを送信する通信を行う。或いは送電装置10から通信データを受信する通信を行ってもよい。通信部46の通信は、例えば負荷変調により実現できる。但し、通信部46の通信方式は負荷変調には限定されない。例えば通信部46は、1次コイルL1、2次コイルL2を用いて負荷変調以外の方式で通信を行ってもよい。或いは、1次コイルL1、2次コイルL2とは別のコイルを設け、この別のコイルを用いて負荷変調やそれ以外の通信方式で通信を行ってもよい。或いはRFなどの近接無線通信で通信を行ってもよい。
記憶部48は、各種の情報を記憶する。記憶部48は例えば不揮発性メモリーにより実現できるが、これに限定されるものではない。例えば不揮発性メモリー以外のメモリー(例えばROM)により記憶部48を実現してもよい。或いは、ヒューズ素子を用いた回路等により記憶部48を実現してもよい。
負荷80は、バッテリー90、電力供給対象100を含む。バッテリー90は例えば充電可能な二次電池であり、例えばリチウム電池(リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池等)、ニッケル電池(ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池等)などである。電力供給対象100は、例えば、処理部(CPU、DSP、マイくろコンピューター)などのデバイス(集積回路装置)であり、受電装置40を内蔵する電子機器510(図9)に設けられ、例えばバッテリー90の電力供給対象となるデバイスである。なお、受電部52が受電した電力を直接に電力供給対象100に供給してもよい。
5.送電装置、受電装置、制御装置の詳細な構成例
図12は、本実施形態の制御装置20、50及びこれを含む送電装置10、受電装置40の詳細な構成例である。なお図12において図11と同様の構成については詳細な説明を省略する。
図12では、送電部12は、1次コイルL1の一端を駆動する第1の送電ドライバーDR1と、1次コイルL1の他端を駆動する第2の送電ドライバーDR2と、電源電圧制御部14(電源電圧制御回路)を含む。送電ドライバーDR1、DR2は、図1の送電ドライバー18に対応する。送電ドライバーDR1、DR2の各々は、例えばパワーMOSトランジスターにより構成されるインバーター回路(バッファー回路)などにより実現される。これらの送電ドライバーDR1、DR2は、制御装置20のドライバー制御回路22により制御(駆動)される。即ち、制御部24は、ドライバー制御回路22を介して送電部12を制御する。
電源電圧制御部14は、送電ドライバーDR1、DR2の電源電圧VDRVを制御する。例えば制御部24は、受電側から受信した通信データ(送電電力設定情報)に基づいて、電源電圧制御部14を制御する。これにより、送電ドライバーDR1、DR2に供給される電源電圧VDRVが制御されて、例えば送電電力の可変制御等が実現される。この電源電圧制御部14は、例えばDCDCコンバーターなどにより実現できる。例えば電源電圧制御部14は、電源からの電源電圧(例えば5V)の昇圧動作を行って、送電ドライバー用の電源電圧VDRV(例えば6V〜15V)を生成して、送電ドライバーDR1、DR2に供給する。具体的には、送電装置10から受電装置40への送電電力を高くする場合には、電源電圧制御部14は、送電ドライバーDR1、DR2に供給する電源電圧VDRVを高くし、送電電力を低くする場合には、電源電圧VDRVを低くする。
報知部16(報知装置。例えば表示部(表示装置))は、無接点電力伝送システム200の各種状態(電力伝送中、ID認証等)を、光や音や画像などを用いて報知(表示)するものであり、例えばLEDやブザーやLCDなどにより実現できる。
送電側の制御装置20は、ドライバー制御回路22、制御部24、電源電圧設定部26(電源電圧制御回路)、通信部30、レジスター部32、クロック生成回路37、発振回路38を含む。ドライバー制御回路22(プリドライバー)は、送電ドライバーDR1、DR2を制御する。例えばドライバー制御回路22は、送電ドライバーDR1、DR2を構成するトランジスターのゲートに対して制御信号(駆動制御信号)を出力する。送電ドライバーDR1、DR2は、その制御信号に基づいて1次コイルL1に駆動信号を印加(供給)し、1次コイルL1を駆動する。発振回路38は、例えば水晶発振回路などにより構成され、1次側のクロック信号を生成する。クロック生成回路37は、送電周波数(駆動周波数)を規定する駆動クロック信号等を生成する。そしてドライバー制御回路22は、この駆動クロック信号や制御部24からの制御信号などに基づいて、所与の周波数(送電周波数)の制御信号を生成し、送電部12の送電ドライバーDR1、DR2に出力して、制御する。
受電側の制御装置50は、受電部52、制御部54(制御回路)、負荷変調部56(負荷変調回路)、電力供給部57、不揮発性メモリー62、検出部64(検出回路)を含む。
受電部52は、複数のトランジスターやダイオードなどにより構成される整流回路53を含む。整流回路53は、2次コイルL2の交流の誘起電圧を直流の整流電圧VCCに変換して、出力する。
負荷変調部56(広義には通信部)は負荷変調を行う。例えば負荷変調部56は電流源ISを有し、この電流源ISを用いて負荷変調を行う。具体的には、負荷変調部56は電流源IS(定電流源)とスイッチ素子SWを有する。電流源ISとスイッチ素子SWは、例えば整流電圧VCCのノードNVCとグランドGND(広義には低電位側電源)のノードとの間に直列に設けられる。そして、例えば制御部54からの制御信号に基づいてスイッチ素子SWがオン又はオフにされ、ノードNVCからグランドGNDに流れる電流源ISの電流(定電流)をオン又はオフにすることで、負荷変調が実現される。
なお、ノードNVCにはキャパシターCMの一端が接続される。このキャパシターCMは例えば制御装置50の外付け部品として設けられる。またスイッチ素子SWはMOSのトランジスターなどにより実現できる。このスイッチ素子SWは、電流源ISの回路を構成するトランジスターとして設けられるものであってもよい。また負荷変調部56は図12の構成に限定されず、例えば電流源ISの代わりとして抵抗を用いるなどの種々の変形実施が可能である。
電力供給部57は充電部58と放電部60を含む。充電部58はバッテリー90の充電(充電制御)を行う。例えば充電部58は、受電部52からの整流電圧VCC(広義には直流電圧)に基づく電圧が供給されて、バッテリー90を充電する。この充電部58は、電力供給スイッチ42とCC充電回路59を含むことができる。CC充電回路59は、バッテリー90のCC(Constant-Current)充電を行う回路である。
放電部60はバッテリー90の放電動作を行う。例えば放電部60は、バッテリー90の放電動作を行って、バッテリー90からの電力を電力供給対象100に対して供給する。例えば放電部60は、バッテリー90からのバッテリー電圧VBATが供給され、出力電圧VOUTを電力供給対象100に供給する。この放電部60はチャージポンプ回路61を含むことができる。チャージポンプ回路61は、バッテリー電圧VBATを降圧(例えば1/3降圧)して、出力電圧VOUT(VBAT/3)を電力供給対象100に対して供給する。この放電部60(チャージポンプ回路)は、例えばバッテリー電圧VBATを電源電圧として動作する。
不揮発性メモリー62(広義には記憶部)は、各種の情報を記憶する不揮発性のメモリーデバイスである。この不揮発性メモリー62は例えば受電装置40のステータス情報等の各種の情報を記憶する。不揮発性メモリー62としては、例えばEEPROMなどを用いることができる。EEPROMとしては例えばMONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon)型のメモリーを用いることができる。例えばMONOS型のメモリーを用いたフラッシュメモリーを用いることができる。或いはEEPROMとして、フローティングゲート型などの他のタイプのメモリーを用いてもよい。
検出部64は各種の検出処理を行う。例えば検出部64は、整流電圧VCCやバッテリー電圧VBAT等を監視して、各種の検出処理を実行する。具体的には検出部64はA/D変換回路65を有し、整流電圧VCCやバッテリー電圧VBATに基づく電圧や、不図示の温度検出部からの温度検出電圧などを、A/D変換回路65によりA/D変換し、得られたデジタルのA/D変換値を用いて検出処理を実行する。検出部64が行う検出処理としては、過放電、過電圧、過電流、或いは温度異常(高温、低温)の検出処理を想定できる。
そして図12では、負荷変調部56は、受電部52の出力電圧VCC(受電電圧)が第1の電圧(VST)よりも高くなって着地が検出された場合に、負荷変調を開始し、取り去りが検出された場合に、負荷変調を停止する。具体的には負荷変調部56は、電子機器510の着地が検出された場合に、負荷変調を開始する。送電装置10(制御部24)は、例えば受電装置40(負荷変調部56)が負荷変調を開始したことを条件に、送電部12による通常送電を開始させる。そして電子機器510の取り去りが検出された場合に、負荷変調部56は負荷変調を停止する。送電装置10(制御部24)は、負荷変調が継続されている間は、送電部12による通常送電を継続させる。即ち、負荷変調が非検出となった場合に、通常送電を停止させ、例えば着地検出用の間欠送電を送電部12に行わせる。この場合に受電側の制御部54は、受電部52の出力電圧VCCに基づいて、着地検出、取り去り検出を行うことができる。
また図12では、図11の通信部46が、負荷変調により通信データを送信する負荷変調部56により実現されている。具体的には、負荷変調部56は、送電装置10(制御装置20)に送信する通信データ(通信データのビット)の第1の論理レベル(例えば「1」)については、第1の負荷状態と第2の負荷状態で構成される負荷変調パターンが第1のパターン(第1のビットパターン)となる負荷変調を行う。一方、送電装置10に送信する通信データ(通信データのビット)の第2の論理レベル(例えば「0」)については、負荷変調パターンが第1のパターンとは異なる第2のパターン(第2のビットパターン)となる負荷変調を行う。
一方、送電側の通信部30は、負荷変調パターンが第1のパターンである場合には、第1の論理レベルの通信データであると判断し、負荷変調パターンが第2のパターンである場合には、第2の論理レベルの通信データであると判断する。
ここで第1のパターンは、例えば第1の負荷状態の期間の幅が第2のパターンに比べて長くなるパターンである。例えば通信部30は、第1のパターンにおける第1の負荷状態の期間内に設定された第1のサンプリングポイントから、所与のサンプリング間隔で負荷変調パターンのサンプリングを行って、所与のビット数(例えば16ビット、64ビット)の通信データを取り込む。
このような負荷変調パターンを用いた手法によれば、負荷変調による負荷変動についての検出感度や検出のノイズ耐性の向上を図れる。これにより、通信開始電圧(負荷変調開始電圧)である第1の電圧を低い電圧に設定することが可能になる。この結果、広い距離範囲で着地を検出して、通信を開始し、バッテリー90の充電のための制御(例えば送電電力制御)を送電側に行わせることが可能になる。
また電力供給部57は、受電部52が受電した電力に基づいて、バッテリー90を充電する充電部58と、バッテリー90の放電動作を行って、バッテリー90からの電力を電力供給対象100に対して供給する放電部60を含む。
そして制御部54(放電系の制御部)は、着地が検出された場合に、放電部60の放電動作を停止する。即ち図9において電子機器510の着地が検出された場合に、放電部60の放電動作(VOUTの供給)を停止して、バッテリー90の電力が電力供給対象100に放電されないようにする。そして制御部54は、取り去り期間(電子機器510が取り去られている期間)において、放電部60に放電動作を行わせる。この放電動作により、バッテリー90からの電力が放電部60を介して電力供給対象100に供給されるようになる。
6.無接点電力伝送システムの動作シーケンス
次に本実施形態の無接点電力伝送システム200の動作シーケンスの一例について説明する。図13は動作シーケンスの概要を説明する図である。
図13のA1では、受電装置40を有する電子機器510が、送電装置10を有する充電器500に上に置かれておらず、取り去り状態になっている。この場合にはスタンバイステートとなる。このスタンバイステートでは、送電装置10の送電部12は、着地検出のための間欠送電を行って、電子機器510の着地を検出する状態になる。またスタンバイステートでは、受電装置40では、電力供給対象100への放電動作がオンになっており、電力供給対象100への電力供給がイネーブルになっている。これにより、処理部等の電力供給対象100は、バッテリー90からの電力が供給されて動作可能になる。
図13のA2に示すように、電子機器510が充電器500に上に置かれ、着地が検出されると、通信チェック&充電ステートになる。この通信チェック&充電ステートでは、送電装置10の送電部12は、連続送電である通常送電を行う。この際に、電力伝送の状態などに応じて電力が可変に変化する電力制御を行いながら、通常送電を行う。またバッテリー90の充電状態に基づく制御も行われる。電力伝送の状態は、例えば1次コイルL1、2次コイルL2の位置関係(コイル間距離等)などにより決まる状態であり、例えば受電部52の整流電圧VCCなどの情報に基づいて判断できる。バッテリー90の充電状態は、例えばバッテリー電圧VBATなどの情報に基づいて判断できる。
また通信チェック&充電ステートでは、受電装置40の充電部58の充電動作がオンになり、受電部52が受電した電力に基づいてバッテリー90の充電が行われる。また放電部60の放電動作がオフになり、バッテリー90からの電力が、電力供給対象100に供給されなくなる。また通信チェック&充電ステートでは、負荷変調部56の負荷変調により、通信データが送電側に送信される。例えば電力伝送状態情報(VCC等)や、充電状態情報(VBATや各種のステータスフラグ等)や、温度などの情報を含む通信データが、通常送電期間中の常時の負荷変調により、受電側から送電側に送信される。
図13のA3に示すように、バッテリー90の満充電が検出されると、満充電スタンバイステートになる。この満充電スタンバイステートでは、送電部12は、例えば取り去り検出のための間欠送電を行って、電子機器510の取り去りを検出する状態になる。また放電部60の放電動作はオフのままとなり、電力供給対象100への電力供給もディスエーブルのままとなる。
図13のA4に示すように電子機器510の取り去りが検出されると、A5に示すように電子機器510が使用状態になり、受電側の放電動作がオンになる。具体的には、放電部60の放電動作がオフからオンに切り替わり、バッテリー90からの電力が放電部60を介して電力供給対象100に供給される。これにより、バッテリー90からの電力が供給されて、処理部等の電力供給対象100が動作し、ユーザーが電子機器510を通常に使用できる状態となる。
以上のように本実施形態では図13のA1に示すように、電子機器510の着地が検出されると、通常送電が行われ、この通常送電期間において常時の負荷変調が行われる。また着地が検出されると、放電部60の放電動作が停止する。そして、この常時の負荷変調では、送電側の電力制御のための情報や受電側のステータスを表す情報を含む通信データが、受電側から送電側に送信される。例えば電力制御のための情報(電力伝送状態情報)を通信することで、例えば1次コイルL1と2次コイルL2の位置関係等に応じた最適な電力制御を実現できる。また受電側のステータスを表す情報を通信することで、最適で安全な充電環境を実現できる。そして本実施形態では、負荷変調が継続している間は、通常送電も継続され、放電部60の放電動作もオフのままになる。
また本実施形態では図13のA3に示すように、バッテリー90の満充電が検出されると、通常送電が停止し、取り去り検出用の間欠送電が行われる。そしてA4、A5に示すように、取り去りが検出されて、取り去り期間になると、放電部60の放電動作が行われる。これによりバッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されて、電子機器510の通常動作が可能になる。なお、着地検出や取り去り検出は、受電部52の出力電圧VCCに基づいて行われる。
このように本実施形態では、電子機器510のバッテリー90の充電期間(通常送電期間)においては、電力供給対象100への放電動作がオフになるため、充電期間において電力供給対象100により無駄に電力が消費されてしまう事態を抑制できる。
そして、電子機器510の取り去りが検出されると、通常送電から間欠送電に切り替わると共に、電力供給対象100への放電動作がオンになる。このように放電動作がオンになることで、バッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されるようになり、処理部(DSP)等の電力供給対象100の通常動作が可能になる。このようにすることで、例えば電子機器510が充電器500の上に置かれる充電期間においては動作しないようなタイプの電子機器510(例えば、補聴器、ウェアラブル機器等のユーザーが装着する電子機器)において、好適な無接点電力伝送の動作シーケンスを実現できる。
図14、図15、図16は本実施形態の無接点電力伝送システム200の動作シーケンスの詳細を説明するための信号波形図である。
図14のB1は、図13のA1のスタンバイステートであり、着地検出用の間欠送電が行われている。即ち、期間TL1の間隔毎に期間TL2の間隔の送電が行われる。TL1の間隔は例えば3秒であり、TL2の間隔は例えば50ミリ秒である。そして図14のB2、B3では、整流電圧VCCは電圧VST以下(第1の電圧以下)であるため、負荷変調による通信は行われない。
一方、B4では整流電圧VCCが電圧VST(例えば4.5V)を超えたため、B5に示すように負荷変調部56が負荷変調を開始する。即ち、B2、B3ではL1、L2のコイルが十分には電磁的結合状態になっていないが、B4ではL1、L2のコイルが図10に示すように適正な電磁的結合状態になっている。このため、整流電圧VCCが上昇して、電圧VSTを超え、B5に示すように負荷変調が開始する。そして、この負荷変調により、B6に示すような通信データが送電側に送信される。このB5の負荷変調は、B7に示す着地検出用の間欠送電により整流電圧VCCが上昇したことにより開始している。
具体的には、受電側は、着地検出用のダミーデータ(例えば64ビットの「0」)を送信する。送電側は、このダミーデータを検出(例えば8ビットの「0」の検出)することで、受電側の着地を検出して、B7に示すように通常送電(連続送電)を開始する。
次に受電側は、ID情報や整流電圧VCCの情報を送信する。前述したように、ID情報の送信に対して送電側が応答を行うことで、簡易的な認証処理が実現される。
また送電側は、整流電圧VCCの情報である送電電力設定情報を受信して、送電電力の制御を行う。この送電側の送電電力の制御により、B8に示すように整流電圧VCCが上昇する。そしてB9に示すように、VCCが電圧VCCL(第2の電圧)を超えると、バッテリー90への充電が開始する。
このように本実施形態では、負荷変調(通信)を開始する電圧VSTを低く設定できる。これにより送電側の駆動電圧が高く設定されることによる耐圧異常等の不具合の発生を抑制できる。そして、開始した負荷変調により、送電電力設定情報(VCC)を送電側に送信することで、送電側の送電電力の制御が行われ、この送電電力の制御により、B8に示すように整流電圧VCCが上昇する。そして、整流電圧VCCが上昇して、B9に示すように充電可能電圧である電圧VCCLを超えると、バッテリー90の充電が開始するようになる。従って、広い距離範囲での着地検出と、耐圧異常等の不具合の発生の抑制とを、両立して実現できるようになる。
図15のC1では、バッテリー90の充電が行われる通常送電期間において、電子機器510が取り去られている。このC1の取り去りは、C2、C3に示すように、バッテリー90の満充電前(満充電フラグ=Lレベル)の取り去りである。
このように電子機器510の取り去りが行われると、送電側の電力が受電側に伝達されなくなり、整流電圧VCCが低下する。そしてC4に示すように例えばVCC<3.1Vになると、C5に示すように負荷変調部56による負荷変調が停止する。負荷変調が停止すると、C6に示すように送電部12による通常送電が停止する。
また、整流電圧VCCが低下し、判定電圧である例えば3.1Vを下回ると、不図示の受電側のスタートキャパシターの放電が開始する。このスタートキャパシターは、受電側の放電動作の起動用(起動期間の計測用)のキャパシターであり、例えば受電側の制御装置50の外付け部品として設けられる。そして、整流電圧VCCが判定電圧(3.1V)を下回ってから、起動期間TSTが経過すると、C8に示すように放電部60の放電動作がオフからオンに切り替わり、バッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されるようになる。また送電部12は、通常送電を停止した後、C9に示すように、着地検出用の間欠送電を行うようになる。
なお本実施形態では受電側の制御部54として、充電系の制御部と、放電系の制御部が設けられている。充電系の制御部は、受電部52の整流電圧VCC(出力電圧)による電源電圧が供給されて動作する。一方、放電系の制御部や放電部60は、バッテリー電圧VBATによる電源電圧が供給されて動作する。そしてスタートキャパシターの充放電の制御や、放電部60の放電動作の制御(オン・オフ制御)は、放電系の制御部が行うことになる。
図16のD1では、満充電フラグがアクティブレベルであるHレベルになっており、バッテリー90の満充電が検出されている。このように満充電が検出されると、D2に示すように満充電後の取り去り検出用の間欠送電が行われる。即ち、期間TR1の間隔毎に期間TR2の間隔の送電が行われる。TR1の間隔は例えば1.5秒であり、TR2の間隔は例えば50ミリ秒である。取り去り検出用の間欠送電の期間TR1の間隔は、着地検出用の間欠送電の期間TL1の間隔に比べて、短くなっている。
この取り去り検出用の間欠送電により、図16のD3、D4に示すように整流電圧がVCC>VSTとなり、D5、D6に示すように負荷変調が行われる。送電側は、この負荷変調(空の通信データ等)を検出することで、電子機器510が未だ取り去られていないことを検出できる。
そして、前述のスタートキャパシターにより設定されるD7に示す起動期間TSTの間隔(例えば3秒より長い)に比べて、取り去り検出用の間欠送電の期間TR1の間隔(例えば1.5秒)は短い。従って、電子機器510が取り去られていない状態では、スタートキャパシターの電圧(充電電圧)は、放電動作オンのための閾値電圧VTを下回らず、D8に示すように放電動作のオフからオンへの切り替わりは行われない。
一方、D9では、電子機器510が取り去られている。そして、D4に示す取り去り検出用の間欠送電の期間TR2の終了後に、D10に示すように、整流電圧VCCは判定電圧である3.1Vを下回るため、D7に示す起動期間TSTの計測がスタートする。そしてD11では、スタートキャパシターの電圧が放電動作オンのための閾値電圧VTを下回っており、起動期間TSTの経過が検出されている。これにより、放電部60の放電動作がオフからオンに切り替わり、バッテリー90からの電力が電力供給対象100に供給されるようになる。またD12に示すように、電子機器510の着地検出用の間欠送電が行われるようになる。
以上のように本実施形態では、図14のB5に示すように受電装置40が負荷変調を開始したことを条件に、B7に示すように送電部12による通常送電が開始する。そしてB5の負荷変調が継続されている間は、B7に示す通常送電は継続する。具体的には図15のC5に示すように負荷変調が非検出となった場合に、C6に示すように送電部12による通常送電が停止する。そしてC9に示すように送電部12による着地検出用の間欠送電が行われるようになる。
このように本実施形態では、負荷変調の開始を条件に通常送電を開始し、負荷変調が継続されている間は通常送電を継続し、負荷変調が非検出になると通常送電を停止するという動作シーケンスを採用している。このようにすれば、シンプルで簡素な動作シーケンスで、無接点電力伝送と、負荷変調による通信を実現できるようになる。また、通常送電期間中において、常時の負荷変調による通信を行うことで、電力伝送の状態等に応じた効率的な無接点電力伝送も実現できるようになる。
図17は本実施形態の無接点電力伝送システム200における着地検出の動作シーケンスの詳細を説明するためのフローチャートである。
ステップS1に示すように、送電装置10は着地を検出する状態になったときに変数ID_err、FR_errを初期化し、受電装置40に対して間欠送電を行う(図13のA1、図14のB1)。変数ID_errはIDチェックの累積エラー数を表す変数であり、変数FR_errは充電開始指示が受信されなかった累積数を表す変数である。ステップS21に示すように、受電装置40は、受電電圧VCCが電圧VSTよりも大きくなったことを検出した場合に、着地検出における通信を開始する(図13のA2、図14のB4、B5)。
ステップS22に示すように、受電装置40は送電装置10にID情報を2回送信する(図14のB6「ID」)。ステップS2に示すように、送電装置10は受信したID情報が正しいか(期待値と一致するか)否かを判定する。ID情報が正しくない場合には、ステップS8に示すように変数ID_errをインクリメントする。ステップS9に示すように、ID_err≧8であるか否かを判定する。ID_err≧8でない場合にはステップS2に戻る。ID_err≧8である場合には、ステップS10に示すようにIDチェックエラーと判断して処理を終了する。
ステップS2においてID情報が正しい場合には、送電装置10は受電装置40に所与の期間、第2の送電周波数で送電を行う。この所与の期間は2回送信されたID情報のうち1回目を受信した後の期間である。即ち、1回目のID情報が正しいと判定された場合にステップS3が実行される。送電装置10は通常は(所与の期間以外の送電期間では)第1の送電周波数で送電を行う。第2の送電周波数は、第1の送電周波数よりも高い周波数である。
ステップS23に示すように、受電装置40は、第2の送電周波数で所与の期間、送電が行われたか否かを判定する。即ち、送電周波数(受電周波数)と、送電周波数が第2の送電周波数となっている期間とを検出し、それらが判定条件を満たすか否かを判定する。例えば、受電部52が2次コイルL2の出力信号(交流)を例えばコンパレーター等で矩形波信号に変換する。そして制御部54が、その矩形波信号の所定周期分(例えば32周期分)の長さを、不図示のクロック信号生成回路(例えばCR発振回路)からのクロック信号でカウントする。制御部54は、そのカウント値を閾値判定することで送電周波数が第1の送電周波数であるか第2の送電周波数であるかを判定する。また制御部54は、第2の送電周波数が何回検出されたかで、第2の送電周波数で送電された期間を判定する。
ステップS23において第2の送電周波数で所与の期間、送電が行われていないと判定した場合には、ステップS27に示すように、受電装置40は送電装置10にGo−charge=0を2回送信し(図14のB6「CGO」)、ステップS22に戻る。Go−chargeは充電開始フラグであり、Go−charge=1が充電開始の指示に相当する。
ステップS23において第2の送電周波数で所与の期間、送電が行われたと判定した場合には、ステップS24に示すように、受電装置40は送電装置10にGo−charge=1を2回送信する(図14のB6「CGO」)。またステップS25に示すように、受電装置40は送電装置10にサイクル回数の情報を2回送信し(図14のB6「CYC」)、オーバーオール時間の情報を2回送信する(図14のB6)。受電装置40は、不図示の温度センサーによりバッテリー90の温度を検出し、その温度が所与の温度より高くなった場合にバッテリー90の充電を停止する。このとき、送電装置10は間欠送電に切り替える。このバッテリー90の温度上昇により充電が停止され、間欠送電に切り替わっている時間がオーバーオール時間である。
ステップS4に示すように、送電装置10は受信した充電開始フラグがGo−charge=0であるか否かを判定する。受信した充電開始フラグがGo−charge=0である場合、ステップS11に示すように変数F2_errをインクリメントする。ステップS12に示すように、F2_err≧8であるか否かを判定する。F2_err≧8でない場合にはステップS2に戻る。F2_err≧8である場合には、ステップS13に示すようにF2チェックエラー(着地検出における通信チェックのエラー)と判定し、処理を終了する。
ステップS4において受信した充電開始フラグがGo−charge=0でない場合、ステップS15に示すように送電装置10は受信した充電開始フラグがGo−charge=1であるか否かを判定する。受信した充電開始フラグがGo−charge=1である場合には、ステップS7に示すように受電装置40が着地した(着地検出における通信チェックをパスした)と判断し、通常送電(充電ステート)に移行する。
ステップS5において、受信した充電開始フラグがGo−charge=1でない場合には、ステップS6に示すように送電装置10は受電装置40からサイクル回数を受信したか否かを判定する。サイクル回数を受信した場合には、ステップS7に示すように受電装置40が着地したと判断し、通常送電に移行する。サイクル回数が受信されなかった場合には、ステップS2に戻る。
以上のように、IDチェックエラー又はF2チェックエラーが8回検出された場合、着地検出における通信チェックがエラーと判断される(S9、S10、S12、S13)。1回(1セット、1サイクル)の通信でID情報やフラグGo−chargeは2回ずつ送信されるので、4回通信を行ってもIDチェック及びF2チェックがパスしなかった場合に、通信チェックがエラーと判断されることになる。送電装置10に受電装置40が着地した瞬間には通信が不安定になる可能性があるので、1回の通信チェックだけでパス及びエラー(フェイル)を判断すると誤判定する可能性がある。この点、本実施形態では4回(広義には複数回)の通信チェックによりパス及びエラーを判断するので、誤判定の可能性を低減できる。
7.通信手法
図18は、負荷変調による通信手法を説明する図である。図18に示すように、送電側では、送電ドライバーDR1、DR2が、電源電圧制御部14から供給された電源電圧VDRVに基づいて動作して、1次コイルL1を駆動する。
一方、受電側(2次側)では、2次コイルL2のコイル端電圧を受電部52の整流回路53が整流し、ノードNVCに整流電圧VCCが出力される。なお、1次コイルL1とキャパシターCA1により送電側の共振回路が構成され、2次コイルL2とキャパシターCA2により受電側の共振回路が構成されている。
受電側では、負荷変調部56のスイッチ素子SWをオン及びオフさせることで、電流源ISの電流ID2をノードNVCからGND側に間欠的に流して、受電側の負荷状態(受電側の電位)を変動させる。
送電側では、負荷変調による受電側の負荷状態の変動により、電源ラインに設けられたセンス抵抗RCSに流れる電流ID1が変動する。例えば送電側の電源(例えば図9の電源アダプター502等の電源装置)と電源電圧制御部14との間に、電源に流れる電流を検出するためのセンス抵抗RCSが設けられている。電源電圧制御部14は、このセンス抵抗RCSを介して電源から電源電圧が供給される。そして負荷変調による受電側の負荷状態の変動により、電源からセンス抵抗RCSに流れる電流ID1が変動し、通信部30が、この電流変動を検出する。そして通信部30は、検出結果に基づいて、負荷変調により送信される通信データの検出処理を行う。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。また制御装置、送電部、送電装置、受電装置、無接点電力伝送システム、電子機器等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。