JP2017155350A - バインダー含有無機繊維成形体の製造方法、およびそれに用いられる塗布装置 - Google Patents

バインダー含有無機繊維成形体の製造方法、およびそれに用いられる塗布装置 Download PDF

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秀高 伊藤
敏男 伊藤
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敏男 伊藤
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Daisuke Tawara
大輔 田原
俊宏 若松
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俊宏 若松
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Abstract

【課題】本発明は、塗布条件に因らず、連続走行する無機繊維成形体に十分な量のバインダー液を均一に塗布し含浸させることができ、バインダーの局在化を抑制することが可能なバインダー含有無機繊維成形体の製造方法、および塗布装置を提供することを主目的とする。【解決手段】連続走行する無機繊維成形体の一方の面を第1ガイドロールおよび第2ガイドロールで支持し、上記無機繊維成形体の他方の面に塗布ロールを当接させて、上記塗布ロールの周面に汲み上げたバインダー液を、上記無機繊維成形体に塗布する塗布工程、を有するバインダー含有無機繊維成形体の製造方法であって、上記第1ガイドロール、上記第2ガイドロールおよび上記塗布ロールが所定の高さ位置関係を有することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、連続走行する無機繊維成形体に対して、塗布ロールを用いてバインダー液を塗布して含浸させるバインダー含有無機繊維成形体の製造方法に関する。
セラミックファイバーに代表される無機繊維の成形体は、工業用断熱材、耐火材、パッキン材等の高温の状態に暴露される用途に用いられてきたが、近年では自動車の排ガス浄化装置用のクッション材(保持材)、すなわち、触媒担持体や粒子フィルタ等の排ガス処理体を金属製のケーシングに収容する際に、排ガス処理体に巻回され、排ガス処理体とケーシングとの間に介装される排ガス浄化装置用保持材としても用いられている。
無機繊維成形体には、組み付け作業中の繊維飛散を防止するため、有機バインダーや無機バインダーを含有させることが一般的に行われている。バインダーを含有する無機繊維成形体のことを、バインダー含有無機繊維成形体と称する。
バインダー含有無機繊維成形体は、無機繊維成形体にバインダー液を含浸させ、乾燥して得られる。無機繊維成形体へのバインダー液の含浸方法としては、例えばバインダー液を噴霧して含浸させる方法(噴霧法)が一般に知られている。
しかしながら、連続走行する無機繊維成形体に対して噴霧法によりバインダー液を含浸させる場合、無機繊維成形体以外の部分にもバインダー液が飛散することになり、結果バインダー液のロス(バインダー液の歩留まり低下)を生じるという課題がある。また、バインダー液を噴霧することでバインダー液のミストが発生するため、該ミストによる人体への影響が懸念される、及び該ミストへの対策が必須であるという課題がある。
一方、フィルム等の被塗布体を連続走行させながら塗布液を塗布する方法としては、例えば、特許文献1で開示されるグラビアコート法、特許文献2で開示されるスロットダイを用いたダイコート法、ロールコート法、キスコート法等が公知である。
中でも、キスコート法は、グラビアコート法のようなセルパターンが塗工面に残らない、高速塗布が可能であるため生産性に優れる、バックアップロールを用いずに被塗布体に対して比較的低い当接力で塗布ロールを当接させて塗布することができ、塗布ムラが抑えられる等の点で好適とされる。
特開2006−279385号公報 特開2011−56342号公報
バインダー含有無機繊維成形体の製造においても、一般的なキスコート法により、塗布ロールを用いて無機繊維成形体にバインダー液を均一に塗布し含浸させることが可能であると推量される。しかしながら、キスコート法による無機繊維成形体へのバインダー液の塗布について、本発明者等が検討したところ、キスコート法を用いる場合であっても無機繊維成形体へ均一に塗布できず、バインダー液が無機繊維成形体の中まで含浸されないことを知得した。この理由について、本発明者等は塗布量に因るものと推量する。
すなわち、無機繊維成形体は、繊維が絡み合ってなることから、上記無機繊維成形体の内部にまで十分な量のバインダー液を含浸させ、分散させたバインダーにより繊維同士を結着させる必要がある。しかし、キスコート法は、一般に、薄厚の塗布膜の形成に好適とされ、一回の当接あたりの塗布量は少量である。このため、フィルム等の被塗布体に対して塗布する際の条件と同様の条件で、キスコート法による無機繊維成形体への塗布を行う場合、塗布量が少ないため十分な量のバインダー液を、無機繊維成形体の中に含浸させることができない。
また、バインダー液の塗布量が少量であると、無機繊維成形体の表面上に塗布できたとしても、無機繊維成形体の内部まで含浸されないと考えられる。
そこで、本発明者等は、キスコート法による無機繊維成形体へのバインダー液の塗工に際しては、無機繊維成形体に対して必要十分量のバインダー液を含浸させるために、一回の当接あたりの塗布量を増やす必要があることを見出した。
塗布量を増やす方法としては、一般に、塗布ロールの回転速度を上げること、バインダー液の濃度を高くすること等が考えられる。
しかし、本発明者等がバインダー含有無機繊維成形体の製造において、これらの方法により塗布量の増やす検討を行ったところ、バインダー液の塗布ムラが生じる、バインダーを均一に拡散できない、等の問題が生じることを更に知得した。
すなわち、塗布ロールの回転速度を上げて、無機繊維成形体の表面にバインダー液を塗布すると、一回の当接あたりの時間が短くなり、当接面積が小さくなる。無機繊維成形体は、繊維が絡み合い、繊維間には空隙が形成されることから、表面は凹凸を有しているため、塗布ロールの回転速度を上げるほど、無機繊維成形体の表面の凹凸により当接ばらつきが大きくなる。このため、幅方向に塗布量が均一にならず、無機繊維成形体表面に塗布筋が発生する等の塗布ムラが大きくなる。
また、塗布するバインダー液の濃度を高くすると、無機繊維成形体にバインダー液を塗布した後、乾燥させて無機繊維成形体の厚み方向にバインダーを拡散させる際に、バインダーの拡散均一性が得られない。
さらに、キスコート法を用いる場合、上述の塗布量の問題に加えて、塗布条件によっても塗布ムラが生じるという課題もある。すなわち、キスコート法では、図9で示すように、一対のガイドロール2および3は、塗布ロール1に対してロールの最下点PおよびPの高さ位置を揃えて配置されており、連続走行する無機繊維成形体10は、一方のガイドロール3から巻き出され、塗布ロール1の最上点付近で当接してバインダー液11が塗布され、他方のガイドロール2で巻き取られる。このとき、例えば、走行時に無機繊維成形体にかかる張力が変動すると、塗布ロールとの当接位置がずれたり、無機繊維成形体が塗布ロールから浮いてしまう等の理由で、塗布ムラが生じてしまう。
そして、無機繊維成形体にバインダー液が均一に塗布および含浸されないと、得られるバインダー含有無機繊維成形体の内部においてバインダーが局在化してしまい、繊維飛散の防止が図れないという問題が生じる。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、塗布条件に因らず、連続走行する無機繊維成形体に十分な量のバインダー液を均一に塗布し含浸させることができ、バインダーの局在化を抑制することが可能なバインダー含有無機繊維成形体の製造方法、および塗布装置を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者等は、キスコート法における各種ロールの配置位置に着目して、更に鋭意検討を行った。通常、キスコート法で塗布する場合、上述した図9のように、一対のガイドロールは、塗布ロールに対するロールの最下点の高さ位置を揃えて配置される。これに対し、本発明者等は、塗布ロール表面の所望の位置において塗布ロールと無機繊維成形体とが当接可能となるように、一対のガイドロールと塗布ロールとの高さ位置関係を調整した。そして、当接位置よりも塗布ロールの回転方向の上流側に無機繊維成形体と塗布ロールとで挟まれた空間(以下、「挟持空間」と称する場合がある。)を設け、上記挟持空間にてバインダー液を一定量滞留させた。その結果、本発明者等は、塗布条件に因らず、無機繊維成形体に対し十分な量のバインダー液を均一に塗布し含浸させることができるという知見を得た。本発明はこのような知得に基づくものである。
すなわち、本発明は、連続走行する無機繊維成形体の一方の面を第1ガイドロールおよび第2ガイドロールで支持し、上記無機繊維成形体の他方の面に塗布ロールを当接させて、上記塗布ロールの周面に汲み上げたバインダー液を、上記無機繊維成形体に塗布する塗布工程、を有するバインダー含有無機繊維成形体の製造方法であって、上記第1ガイドロールおよび上記第2ガイドロールは、それぞれが上記塗布ロールの回転軸を通る鉛直面よりも上記塗布ロールの回転方向の上流側および下流側に位置し、上記第1ガイドロールと上記塗布ロールとの第1共通内接線を引いたときに、上記塗布ロールは、上記回転軸よりも上方且つ上記鉛直面よりも上記回転方向の下流側の表面に、上記第1共通内接線との接点を有し、また、上記第2ガイドロールと上記塗布ロールとの第2共通内接線を引いたときに、上記塗布ロールは、上記鉛直面よりも上記回転方向の下流側であり、且つ上記第1共通内接線との接点よりも上記回転方向の下流側の表面に、上記第2共通内接線との接点を有することを特徴とするバインダー含有無機繊維成形体の製造方法を提供する。
なお、以下の説明において、塗布ロールの回転方向の「上流側」および「下流側」を、それぞれ「塗布ロールの上流側」および「塗布ロールの下流側」、もしくは、単に「上流側」および「下流側」と称する場合がある。
また、本明細書内において、塗布ロールの回転方向の「上流側」および「下流側」とは、塗布ロールの最上点を基準とした回転方向に対する位置をいう。塗布ロールの最上点とは、塗布ロールの回転軸から鉛直上向きに引いた直線と塗布ロールの外周との交点である。
上記発明によれば、塗布工程において、第1ガイドロール、第2ガイドロールおよび塗布ロールを上述した位置関係で配置することで、塗布ロールと無機繊維成形体との当接位置が、上記塗布ロールの回転軸を通る鉛直面よりも下流側となり、上記当接位置よりも塗布ロールの上流側に生じる挟持空間にて、上記塗布ロールの回転により汲み上げたバインダー液を一定量滞留させることができる。これにより、走行時に無機繊維成形体にかかる張力や走行速度、塗布ロールの回転速度等の塗布条件に因らず、十分な量のバインダー液を幅方向に均一に塗布し、上記無機繊維成形体内に含浸させることができる。そして、得られるバインダー含有無機繊維成形体において、含有されるバインダーの局在化を抑制することができる。
上記発明においては、上記塗布ロールの、上記第1共通内接線との接点および上記回転軸を通る面と、上記鉛直面と、が成す角度が、0°より大きく90°以下であることが好ましい。上記挟持空間の塗布ロールの最上点付近にて十分量のバインダー液を滞留させることができるとともに、上記挟持空間から塗布ロールの回転方向の上流側への液垂れを抑えることができるからである。また、上記角度が大きすぎると、第2ガイドロール近傍において無機繊維成形体のパスラインが確保しにくいおそれがあるからである。
上記発明においては、上記塗布ロールの、上記第2共通内接線との接点および上記回転軸を通る面と、上記鉛直面と、が成す角度が、3°以上130°以下であることが好ましい。塗布ロールが無機繊維成形体と安定して接触することができ、バインダー液の塗工ムラを抑制することができるからである。また、搬送時の無機繊維成形体の層間剥離を防ぐことができるからである。
上記発明においては、上記無機繊維成形体の走行方向が、上記塗布ロールの上記回転方向と逆方向であることが好ましい。無機繊維成形体と塗布ロールとの相対速度が上がり、塗布量を多くすることができるため、塗布効率を向上させることができるからである。
また、本発明は、連続走行する無機繊維成形体の一方の面を支持する第1ガイドロールおよび第2ガイドロールと、バインダー液を貯留する貯留部と、上記無機繊維成形体の他方の面と当接して、上記貯留部から汲み上げた上記バインダー液を塗布する塗布ロールと、を有する塗布装置であって、上記第1ガイドロールおよび上記第2ガイドロールは、それぞれが上記塗布ロールの回転軸を通る鉛直面よりも上記塗布ロールの回転方向の上流側および下流側に位置し、上記第1ガイドロールと上記塗布ロールとの第1共通内接線を引いたときに、上記塗布ロールは、上記回転軸よりも上方且つ上記鉛直面よりも上記回転方向の下流側の表面に、上記第1共通内接線との接点を有し、また、上記第2ガイドロールと上記塗布ロールとの第2共通内接線を引いたときに、上記塗布ロールは、上記鉛直面よりも上記回転方向の下流側であり、且つ上記第1共通内接線との接点よりも上記回転方向の下流側の表面に、上記第2共通内接線との接点を有することを特徴とする塗布装置を提供する。
上記発明によれば、第1ガイドロール、第2ガイドロールおよび塗布ロールが、上述した位置関係を有することで、上記塗布ロールの回転軸を通る鉛直面よりも下流側で塗布ロールと無機繊維成形体とを当接させ、当接位置よりも塗布ロールの上流側に生じる挟持空間にて、汲み上げたバインダー液を一定量滞留させることができる。これにより、本発明の塗布装置は、走行時に無機繊維成形体にかかる張力や走行速度、塗布ロールの回転速度等の塗布条件に因らず、十分な量のバインダー液を幅方向に均一に塗布し含浸させることができる。
本発明のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法は、塗布条件によらず、連続走行する無機繊維成形体に十分な量のバインダー液を均一に塗布し含浸させることができ、得られるバインダー含有無機繊維成形体において、含有されるバインダーの局在化を抑制することができるという効果を奏する。
本発明のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法における塗布工程の一例を説明する模式図である。 塗布工程における塗布ロールと無機繊維成形体との当接態様を説明する模式図である。 本発明のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法における塗布工程の他の例を説明する模式図である。 本発明のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法の一例を示す模式図である。 第1ガイドロール、第2ガイドロールおよび塗布ロールの位置関係を説明する説明図である。 塗布ロールと無機繊維成形体との当接面を説明する模式図である。 本発明の塗布装置の一例を示す模式図である。 実施例および比較例における第1ガイドロール、第2ガイドロールおよび塗布ロールの位置関係を示す模式図である。 従来のキスコート法を用いた塗布態様を説明する模式図である。
以下、本発明のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法および塗布装置について、詳細に説明する。
A.バインダー含有無機繊維成形体の製造方法
本発明のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法は、連続走行する無機繊維成形体の一方の面を第1ガイドロールおよび第2ガイドロールで支持し、上記無機繊維成形体の他方の面に塗布ロールを当接させて、上記塗布ロールの周面に汲み上げたバインダー液を、上記無機繊維成形体に塗布する塗布工程、を有するバインダー含有無機繊維成形体の製造方法であって、上記第1ガイドロールおよび上記第2ガイドロールは、それぞれが上記塗布ロールの回転軸を通る鉛直面よりも上記塗布ロールの回転方向の上流側および下流側に位置し、上記第1ガイドロールと上記塗布ロールとの第1共通内接線を引いたときに、上記塗布ロールは、上記回転軸よりも上方且つ上記鉛直面よりも上記回転方向の下流側の表面に、上記第1共通内接線との接点を有し、また、上記第2ガイドロールと上記塗布ロールとの第2共通内接線を引いたときに、上記塗布ロールは、上記鉛直面よりも上記回転方向の下流側であり、且つ上記第1共通内接線との接点よりも上記回転方向の下流側の表面に、上記第2共通内接線との接点を有することを特徴とする製造方法である。
本発明のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法について、図を参照して説明する。
図1は、本発明のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法における塗布工程の一例を説明する模式図であり、塗布方式として、無機繊維成形体の走行方向が塗布ロールの回転方向と逆方向であるリバース方式の例を示している。また、図2は、塗布ロールと無機繊維成形体との当接態様を説明する模式図である。図1および図2は、各ロールの延在方向から見た側面図に相当する。
本発明のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法は、図1で例示するように、所定の走行方向Yへ連続走行する無機繊維成形体10の一方の面を第1ガイドロール2および第2ガイドロール3で支持し、無機繊維成形体10の他方の面に塗布ロール1を当接させて、塗布ロール1の周面に汲み上げたバインダー液11を、無機繊維成形体10に塗布する塗布工程、を少なくとも有する。バインダー液11は、通常、塗布ロール1の下側に配置される貯留部4内に貯留されており、塗布ロール1の回転により貯留部4から汲み上げられる。
本発明における塗布工程では、第1ガイドロールおよび第2ガイドロールの、塗布ロールに対する高さ位置が異なるように、第1ガイドロール、第2ガイドロールおよび塗布ロールを、所望の位置関係で配置することを特徴とする。すなわち、図1で例示するように、第1ガイドロール2は、塗布ロール1の回転軸Oを通る鉛直面Sよりも塗布ロール1の回転方向Xの上流側に位置する。また、第2ガイドロール3は、塗布ロール1の回転軸Oを通る鉛直面Sよりも回転方向Xの下流側に位置する。
第1ガイドロール2および第2ガイドロール3は、無機繊維成形体10の塗布ロール1と当接する側とは反対側の面と当接する。
ここで、第1ガイドロール2と塗布ロール1との第1共通内接線Lを引いたときに、塗布ロール1は、回転軸Oよりも上方且つ鉛直面Sよりも回転方向Xの下流側の表面に、第1共通内接線Lとの接点Pを有する。
また、第2ガイドロール3と塗布ロール1との第2共通内接線Lを引いたときに、塗布ロール1は、鉛直面Sよりも回転方向Xの下流側であり、且つ第1共通内接線Lとの接点Pよりも回転方向Xの下流側の表面に、第2共通内接線Lとの接点Qを有する。
これにより、第1ガイドロール2の配置位置は塗布ロール1よりも高い位置となり、一方、第2ガイドロール3の配置位置は、塗布ロール1よりも低い位置となる。
第1ガイドロール、第2ガイドロールおよび塗布ロールを上述した位置関係で配置することで、図1および図2で示すように、無機繊維成形体10は、第1ガイドロール2および第2ガイドロール3を介して、塗布ロール1の回転軸Oを通る水平面に対して傾斜を成して走行することとなり、塗布ロール1の鉛直面Sよりも回転方向Xの下流側で、塗布ロール1と無機繊維成形体10とを当接させることができる。このとき、無機繊維成形体10と塗布ロール1との当接位置よりも塗布ロール1の上流側、具体的には、塗布ロール1の最上点付近には、広域な挟持空間Bを確保することができ、塗布ロール1の回転により汲み上げたバインダー液11を一定量滞留させることができる。これにより、無機繊維成形体10の幅方向に対して、一定量のバインダー液11を均一に塗布することが可能となり、塗布ムラの発生を防ぐことができる。
ここで、既述の図9で例示した、従来のキスコート方式の場合について説明する。塗布ロール1に対して均等なロール間距離で配置される一対のガイドロール2および3について、その最下点PおよびPが同等の高さ位置で揃う場合、第1ガイドロール2と塗布ロール1との第1共通内接線Lを引いたときに、塗布ロール1は、回転軸Oよりも上方だが鉛直面Sよりも回転方向Xの上流側に、第1共通内接線Lとの接点Pを有する。また、従来法においても、塗布ロール1は、鉛直面Sよりも回転方向Xの下流側であり且つ第1共通内接線Lとの接点Pよりも回転方向Xの下流側の表面に、第2共通内接線Lとの接点Qを有する。このため、無機繊維成形体10は、第1ガイドロール2および第2ガイドロール3の間を、塗布ロール1の中心軸Oを通る水平面に対して略平行に走行することとなり、無機繊維成形体10は、塗布ロール1の最上点付近で当接することとなる。
このような当接態様においては、無機繊維成形体10と塗布ロール1との当接位置よりも塗布ロール1の回転方向の上流側に、十分な挟持空間を有することができず、塗布ロール1の回転により汲み上げたバインダー液11を一定量滞留させることが困難である。仮に挟持空間を有することができても、上記挟持空間が設けられる位置が、塗布ロールの最上点よりも回転方向の上流側に位置するため、重力によりバインダー液の液垂れが生じやすくなる等の理由から、所望量のバインダー液を滞留させることができない。このため、無機繊維成形体の幅方向に対して、一定量のバインダー液を塗布することができず、塗布ムラが発生してしまう。走行時に無機繊維成形体にかかる張力や走行速度、塗布ロールの回転速度等の塗布条件が変わると、上記の不具合は顕著化する。
このように、本発明によれば、塗布工程において、第1ガイドロール、第2ガイドロールおよび塗布ロールを上述した位置関係で配置することで、塗布ロールと無機繊維成形体との当接位置が、上記塗布ロールの回転軸を通る鉛直面よりも下流側となり、上記当接位置よりも塗布ロールの上流側に生じる挟持空間にて、上記塗布ロールの回転により汲み上げたバインダー液を一定量滞留させることができる。これにより、走行時に無機繊維成形体にかかる張力や走行速度、塗布ロールの回転速度等の塗布条件に因らず、十分な量のバインダー液を幅方向に均一に塗布し、上記無機繊維成形体内に含浸させることができる。
詳しくは、上記挟持空間内において、一定量のバインダー液が、上記塗布ロールの幅方向に均一に滞留可能となることから、無機繊維成形体と塗布ロールとの当接に際し、無機繊維成形体の表面の凹凸に因らず、幅方向に均一かつ十分な量でバインダー液を塗布することができる。また、バインダー液を上記挟持空間内で滞留させる分、一回の当接あたりのバインダー液の塗布量が多くなることから、無機繊維成形体内に十分に含浸させることができる。さらに、塗布ロールの回転速度を上げる場合や、無機繊維成形体に掛る張力が変動する場合であっても、塗布ロールにより汲みあげられたバインダー液は、一旦、上記挟持空間内に滞留されるため、塗布条件の変動によらず一律な塗布量を確保することができ、幅方向及び/又は長手方向の塗布量の均一性を保つことができる。
そして、上述の製造方法により、バインダーの局在化が抑制されたバインダー含有無機繊維成形体を得ることができるのである。
図3は、本発明のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法における塗布工程の他の例を説明する模式図であり、塗布方式として、無機繊維成形体10の走行方向Yが塗布ロール1の回転方向Xと同方向であるフォワード方式の例を示している。なお、図3中の符号については、図1と同様とする。
フォワード方式の場合もリバース方式と同様に、第1ガイドロール、第2ガイドロールおよび塗布ロールを上述した位置関係で配置することで、上述の効果を奏することができる。
本発明のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法は、図4で示すように、長尺の無機繊維成形体10を用いたロールツーロール方式が採用される。すなわち、巻回されたロール状の無機繊維成形体10を巻出ロール21から繰り出し、搬送ロール22により連続走行させ、上述の塗布工程を行う。その後、バインダー液11が塗布された無機繊維成形体10を搬送ロール22にて乾燥装置23へ搬送し、乾燥させることで、無機繊維成形体10にバインダーが含有されたバインダー含有無機繊維成形体20が得られる。バインダー含有無機繊維成形体20は、搬送ロール22にて搬送し、巻取ロール24にて巻き取ることができる。図4では、バインダー含有無機繊維成形体20を巻取ロール24にて巻き取る態様を示したが、シート状にカットして回収してもよい。
なお、図4は、本発明のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法の一例を示す工程図であり、図4の破線で囲まれた領域Cが、図1に例示した塗布工程に相当する。
以下、本発明のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法における各工程について説明する。
1.塗布工程
本発明における塗布工程は、連続走行する無機繊維成形体の一方の面を第1ガイドロールおよび第2ガイドロールで支持し、上記無機繊維成形体の他方の面に塗布ロールを当接させて、上記塗布ロールの周面に汲み上げたバインダー液を、上記無機繊維成形体に塗布する工程である。
本発明は、本工程における第1ガイドロール、第2ガイドロール、および塗布ロールが、所定の高さ位置関係を有することに特徴を有する。
無機繊維成形体は、一方の面が第1ガイドロールおよび第2ガイドロールと当接し、他方の面が、塗布ロールと当接する。塗布ロールと各ガイドロールとの間には、通常、2本の共通内接線を引く事ができるが、本発明において、ガイドロールと塗布ロールとの共通内接線とは、ガイドロールの無機繊維成形体との当接付近、および、塗布ロールの無機繊維成形体との当接付近に、それぞれ接点を有する共通内接線をいう。
(1)第1ガイドロール、第2ガイドロール、および塗布ロールの位置関係
本発明において、上記第1ガイドロールおよび上記第2ガイドロールは、それぞれが上記塗布ロールの回転軸を通る鉛直面よりも、上記塗布ロールの回転方向の上流側および下流側に位置する。
塗布ロールの鉛直面とは、塗布ロールの回転軸を通り、塗布ロールの長手方向に延在する水平面に対して、直交する平面であり、塗布ロールの最上点および最下点を通る面である。
上記第1ガイドロールと上記塗布ロールとの第1共通内接線を引いたときに、上記塗布ロールは、上記回転軸よりも上方且つ上記鉛直面よりも上記回転方向の下流側の表面に、上記第1共通内接線との接点を有する。
上記塗布ロールにおける上記第1共通内接線との接点の位置は、無機繊維成形体と塗布ロールとを、上記塗布ロールの上記回転軸よりも下流側で当接させることができ、無機繊維成形体との当接位置よりも上記塗布ロールの回転方向の上流側にバインダー液を一定量滞留させる挟持空間を有することが可能な位置とすることができる。
すなわち、図5で示すように、塗布ロール1の、第1共通内接線Lとの接点Pおよび回転軸Oを通る面Rと、鉛直面Sと、が成す角度θが、所望の値となる様に設計される。このとき角度θは、無機繊維成形体10と塗布ロール1との当接位置、具体的には、図6で示すように当接面Aが、塗布ロール1の鉛直面Sよりも回転方向Xの下流側となることを考慮して決定される。
角度θは、0°より大きく90°であることが好ましく、中でも5°〜60°の範囲内、特に10°〜30°の範囲内であることが好ましい。角度θを上記範囲内で設定することで、上記挟持空間に十分量のバインダー液を滞留させることができる。また、上記挟持空間から塗布ロールの回転方向の上流側への液垂れを抑制することができる。
なお、角度θが上記範囲よりも小さい場合、上記挟持空間から塗布ロールの回転方向の上流側へ液垂れが生じやすくなり、挟持空間内に十分な量のバインダー液を滞留させることが困難となり、塗布ムラが解消されないおそれや、充分な塗工量が得られないおそれがある。また、角度θを上記範囲よりも大きい値で設定することは、第2ガイドライン近傍において、無機繊維成形体のパスラインが確保しにくい恐れがあり、装置能力上困難である。
角度θは、第1ガイドロールや塗布ロールのロール径、ロール間距離、塗布ロールの回転速度、バインダー液の粘度、第1ガイドロールと塗布ロールの高さ方向における相対的位置等をもとに、調整することができる。
また、上記第2ガイドロールと上記塗布ロールとの第2共通内接線を引いたときに、上記塗布ロールは、上記鉛直面よりも上記回転方向の下流側であり、且つ上記第1共通内接線との接点よりも上記回転方向の下流側の表面に、上記第2共通内接線との接点を有する。
このとき、第2ガイドロールの最下点は、通常、上記第1共通内接線よりも下方に位置する。第2ガイドロールの最下点とは、第2ガイドロールの回転軸から鉛直下向きに引いた直線と第2ガイドロールの外周との交点である。
上記塗布ロールにおける上記第2共通内接線との接点の位置は、第1共通内接線との接点よりも下流側に接点を有し、所望の当接面積を確保することが可能な位置とすることができる。
すなわち、図5で示すように、塗布ロール1の、第2共通内接線Lとの接点Qおよび回転軸Oを通る面Rと、鉛直面Sと、が成す角度θが、所望の値となる様に設計される。このとき角度θは、塗布ロール1の、第1共通内接線Lとの接点Pの位置、無機繊維成形体10と塗布ロール1との当接位置および当接面積、具体的には、図6で示すように、当接面Aが、塗布ロール1の鉛直面Sよりも回転方向Xの下流側となり、所望の当接面積を有することを考慮して決定されることが好ましい。
角度θは、3°以上130°以下であることが好ましく、中でも9°〜90°の範囲内、特に15°〜50°の範囲内であることが好ましい。角度θを上記範囲内とすることで、塗布ロールが無機繊維成形体と安定して接触することができ、バインダー液の塗工ムラを抑制することができる。また、無機繊維成形体の層間剥離を防ぐことができる。
角度θは、第2ガイドロールや塗布ロールのロール径、ロール間距離、塗布ロールの回転速度、バインダー液の粘度、第2ガイドロールと塗布ロールの高さ方向における相対的位置等をもとに、調整することができる。
第1ガイドロールと塗布ロールとの第1共通内接線、および、第2ガイドロールと塗布ロールとの第2共通内接線は、第1ガイドロール、塗布ロールおよび第2ガイドロールの延在方向の側面視図上において規定される。各共通内接線は、上記側面視図上で従来公知の作図法により作図することができる。
塗布ロールと第1ガイドロールとのロール間距離(図5中のW)、および塗布ロールと第2ガイドロールとのロール間距離(図5中のW)は、塗布ロールおよび第1ガイドロール間、ならびに、塗布ロールおよび第2ガイドロール間で、それぞれ所望の傾きを有する共通内接線を引くことが可能であれば特に限定されず、図5中の角度θ、θに応じて適宜設定が可能である。
ただし、WおよびWが長すぎると、無機繊維成形体に過剰なたるみが生じて所望の角度が得られない場合や、搬送プロセス中に無機繊維成形体が固化する場合があるため、これらの場合を考慮して設定することが好ましい。なお、搬送プロセス中に無機繊維成形体が自重でたるむのを防ぐ観点から、WおよびWは300mm以内であることが好ましい。
ロール間距離WおよびWの大きさは、同じであってもよく異なってもよい。ロール間距離とは各ロールの中心軸(図5中のO、OおよびO)間の水平距離とする。
上記塗布ロールと上記無機繊維成形体との当接位置は、上述の第1ガイドロール、第2ガイドロール、および塗布ロールの位置関係により決まる。本発明においては、図6で例示するように、塗布ロール1と無機繊維成形体10との当接面Aが、塗布ロール1の鉛直面Sよりも回転方向Xの下流側に位置する。上記当接面とは、塗布ロールの表面と無機繊維成形体の表面とが接触する面であり、第1ガイドロール、塗布ロールおよび第2ガイドロールの延在方向の側面視図上において、塗布ロール上の第1共通内接線の接点と第2共通内接線の接点との間の領域全域をいう。
なお、塗布ロール1の鉛直面Sよりも回転方向Xの上流側には、通常、上記塗布ロールと上記無機繊維成形体との当接面を有さない。
上記当接面の面積は、塗布ロール上の第1共通内接線の接点の位置および第2共通内接線の接点の位置に応じて適宜調整することができる。上記当接面の面積が大きいほど、バインダー液の塗布量を多くすることができ、十分な量のバインダー液を無機繊維成形体内に含浸させることができる。
上記当接面は、機構学の巻き掛け伝動における巻き掛け角が大きいほど、その面積を大きくすることができる。上記当接面の巻き掛け角度(図6で示すθ)は、無機繊維成形体にバインダー液を十分に塗布し含浸させることが可能な大きさであればよく、例えば3°〜40°の範囲内であることが好ましく、中でも7°〜30°の範囲内、特に10°〜20°の範囲内であることが好ましい。巻き掛け角度が上記範囲よりも小さいと、当接面の面積が小さく、所望量のバインダー液を塗布し含浸させることができない場合があり、一方、上記範囲よりも大きいと、設備構造上、第2ガイドロールを所望の位置に設置できないおそれがある。
巻き掛け角度は、第1ガイドロールおよび第2ガイドロール、ならびに塗布ロールの延在方向の側面視図上において特定することができる。
挟持空間は、当接により上記塗布ロールと走行する無機繊維成形体との間に生じる空間である。上記挟持空間は、上記当接位置よりも塗布ロールの上流側に設けられる。バインダー液は、上記挟持空間に滞留されていればよく、中でも、上記挟持空間におけるバインダー液の滞留部全体が、上記鉛直面よりも上記回転方向の下流側にあることが好ましい。一旦滞留させたバインダー液が、重力により塗布ロールの回転方向の上流側へ液垂れすることを抑え、塗布ロールの最上点付近にて均一な塗布に必要な十分量のバインダー液を滞留させることができるからである。
挟持空間の位置やバインダー液の滞留量等については、図5中の角度θやθ、無機繊維成形体との当接位置、塗布ロールの回転速度等に応じて適宜調整が可能である。
(2)第1ガイドロールおよび第2ガイドロール
第1ガイドロールおよび第2ガイドロールは、連続走行する無機繊維成形体の一方の面を支持するものである。以下、第1ガイドロールおよび第2ガイドロールを総じて「ガイドロール」と称する場合がある。
第1ガイドロールは、塗布ロールの回転軸を通る鉛直面よりも上記塗布ロールの回転方向の上流側に位置し、一方、上記第2ガイドロールは、上記塗布ロールの回転軸を通る鉛直面よりも上記塗布ロールの回転方向の下流側に位置する。
第1ガイドロールおよび第2ガイドロールは、それぞれ上下方向に独立して移動可動である。また、無機繊維成形体は、一方のガイドロールが回転することで巻き出され、他方のガイドロールが回転することで巻き取られる。
ガイドロールは、無機繊維成形体の円滑な走行を支持することが可能なものであれば特に限定されず、例えば、ステンレス等の金属材料からなる硬質ロール、樹脂、ゴム等からなる弾性ロール等、一般的なガイドロールを用いることができる。また、上記ロール表面に布等の柔らかいマットを巻いたロールを用いることもできる。
ガイドロールのロール長は、無機繊維成形体を支持することが可能な長さであればよく、無機繊維成形体の幅と同等、もしくはそれ以上であることが好ましい。具体的には、ガイドロールのロール長が無機繊維成形体の全幅(100%)に対して105%〜200%の範囲内であることが好ましい。
第1ガイドロールおよび第2ガイドロールは、ロール長が同じであってもよく異なってもよいが、同じであることが好ましい。
ガイドロールのロール径(直径)としては、例えば100mm〜250mmの範囲内が好ましい。ロール径が小さすぎると同じパスラインで、ガイドロールに接する領域の曲率半径が小さくなるため、無機繊維成形体にダメージが生じるおそれや、ガイドロールが回転しないおそれがある。一方、ロール径が大きすぎると、パスラインのスペース確保が困難となる場合がある。
第1ガイドロールおよび第2ガイドロールは、ロール径が同じであってもよく、異なっていてもよい。
ガイドロールは回転軸を中心に回転する。ガイドロールの回転方向については、無機繊維成形体の走行方向に応じて適宜設定されるが、通常、無機繊維成形体の走行方向と同方向となる。
(3)塗布ロール
塗布ロールは、無機繊維成形体の他方の面と当接して、周面に汲み上げたバインダー液を塗布するものである。
塗布ロールは、回転しながら下側に配置される貯留部内に貯留されるバインダー液を汲み上げる。
塗布ロールは、バインダー液を保持し、且つ、無機繊維成形体との当接により上記バインダー液を転写可能なものであればよく、例えば、ステンレス等の金属材料からなる硬質ロール、樹脂、ゴム等からなる弾性ロール等、一般的な塗布ロールを用いることができる。また、上記一般的な塗布ロール表面に布等を巻いたロールも用いることができる。
上記塗布ロールは、周面に均一量のバインダー液を保持することができ、無機繊維成形体の幅方向にバインダー液を均一に塗布することができる限り、表面が平滑面であっても、エンボス面であってもよい。
塗布ロールのロール長は、無機繊維成形体の幅方向にバインダー液を均一に塗布することが可能な長さであればよく、無機繊維成形体の幅と同等もしくはそれ以上であることが好ましい。具体的には、塗布ロールのロール長が無機繊維成形体の全幅(100%)に対して105%〜200%の範囲内であることが好ましい。
塗布ロールのロール径(直径)としては、例えば150mm〜250mmの範囲内が好ましい。ロール径が小さすぎると、貯留部の液面から塗工面までの距離が保持できなくなり、角度θ1が確保できなくなる。また、ロール径が大きすぎると、スペース確保できないおそれや、回転動力不足等が生じるおそれがあるからである。
塗布ロールは回転軸を中心に回転する。塗布ロールの回転方向については、無機繊維成形体の走行方向に応じて適宜設定される。
(4)無機繊維成形体
本発明において、無機繊維成形体は無機繊維の不織布状の集合体であり、例えばマット、ブランケットまたはブロック等と称されるものである。
本発明においては、無機繊維成形体の連続走行により、ロールツーロール方式で塗布工程を行う。無機繊維成形体は、長尺としてもよく、また、回収時に幅手方向に切断し、シートとしてもよい。
無機繊維成形体を構成する無機繊維としては、特に限定されるものではなく、例えばシリカ、アルミナ/シリカ、これらを含むジルコニア、スピネル、チタニア等の単独、または複合繊維が挙げられる。中でもアルミナ/シリカ系繊維が好ましく、特に結晶質アルミナ/シリカ系繊維が好ましい。アルミナ/シリカ系繊維のアルミナ/シリカの組成比(重量比)は60〜98/40〜2の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは70〜74/30〜26の範囲内である。
無機繊維の平均繊維径は3μm〜8μmの範囲内、特に5μm〜7μmの範囲内であることが好ましい。無機繊維の平均繊維径が大きすぎると無機繊維成形体の常温圧縮サイクル特性(コールドコンプレッション)が失われ、小さすぎると空気中に浮遊する発塵量が多くなるおそれがある。
無機繊維成形体の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用することができる。中でも、無機繊維成形体は、ニードリング処理が施されたものであることが好ましい。ニードリング処理によって、無機繊維成形体を構成する無機繊維同士が絡んだ強固な無機繊維成形体となるだけでなく、無機繊維成形体の厚みを調整することができる。
無機繊維成形体の厚みとしては、特に限定されるものではなく、用途等に応じて適宜選択され、例えば2mm〜50mm程度とすることができる。
(5)バインダー液
バインダー液は、通常、塗布ロールの下側に配置される貯留部内に貯留され、塗布ロールの回転により上記塗布ロールの周面に汲みあげられる。
バインダー液に含まれるバインダーとしては、有機バインダーおよび無機バインダーのいずれも用いることができる。中でも、少なくとも有機バインダーを用いることが好ましい。この場合、有機バインダーのみを用いてもよく、有機バインダーおよび無機バインダーを組み合わせて用いてもよい。有機バインダーは加熱により分解除去することができるため、得られるバインダー含有無機繊維成形体の使用時に有機バインダーを加熱により分解除去することで、バインダー含有無機繊維成形体の厚みを復元することができ、バインダー含有無機繊維成形体を、例えば排ガス浄化装置用保持材として好適に使用することができる。
有機バインダーとしては、例えば各種のゴム、水溶性高分子化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を使用することができる。中でも、アクリルゴム、ニトリルゴム等の合成ゴム;カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子化合物;またはアクリル樹脂が好ましい。特に、アクリルゴム、ニトリルゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アクリルゴムに含まれないアクリル樹脂が好ましい。これらの有機バインダーは、有機バインダー液の調製または入手が容易であり、また無機繊維成形体への塗布操作も簡単であり、比較的低含有量としても十分な厚み拘束力を発揮し、得られる成形体が柔軟で強度に優れ、使用温度条件下で容易に分解または焼失されることから好適に使用することができる。有機バインダーは、1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
無機バインダーとしては、例えば無機酸化物を挙げることができ、具体的にはアルミナ、スピネル、ジルコニア、マグネシア、チタニア、カルシア、および上記無機繊維と同質の組成を有する材料が挙げられる。無機バインダーは、1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
無機酸化物の粒径は、例えば1μm以下とすることができる。
バインダー液に含まれる溶媒や分散媒としては、バインダーやバインダー液の種類に応じて適宜選択されるものであり、例えば水、有機溶媒等が挙げられる。溶媒や分散媒は1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
バインダー液としては、有機バインダーの場合、上記有機バインダーを含む水溶液、水分散型のエマルション、ラテックス、または有機溶媒溶液を用いることができる。これらは市販されており、これらの有機バインダー液は、そのまま又は水等で希釈して用いることができ、無機繊維成形体に有機バインダー液を塗布するのに好適に使用することができる。特にエマルションが好ましい。有機バインダー液には、無機バインダーが含有されていてもよい。
また、無機バインダーの場合、バインダー液としては、上記無機バインダーを含むゾル、コロイド、スラリー、溶液を用いることができる。無機バインダー液には、有機バインダーが含有されていてもよい。また、無機バインダー液には、無機バインダーの安定性を高めるために分散安定剤が添加されていてもよい。分散安定剤としては、例えば酢酸、乳酸、塩酸、硝酸等が挙げられる。
バインダー液中のバインダー濃度は、無機繊維成形体にバインダー液を均一に塗布することができる程度であればよく、バインダーの種類や塗布条件に応じて適宜調整される。例えば、バインダー液中のバインダー濃度は3質量%〜50質量%の範囲内で調整されることが好ましい。バインダー濃度が低すぎると、バインダー含有無機繊維成形体中のバインダーの含有量を所望の範囲にすることが困難になる。また、バインダー濃度が高すぎると、バインダーが無機繊維成形体に含浸しにくくなり、作業性やバインダー含有無機繊維成形体の熱特性、強度等の諸物性が劣化するおそれがある。
また、バインダー液の粘度は、無機繊維成形体にバインダー液を均一に塗布することができる程度であればよいが、挟持空間内に滞留可能な粘度を有することが好ましく、具体的には、1cps〜10cpsの範囲内が好ましい。なお、上記粘度は、B型粘度計(温度:25℃、回転数:12rpm)により測定した値である。
(6)バインダー液の塗布条件
上記無機繊維成形体は、塗布ロールに対して所望の方向へ走行する。無機繊維成形体の走行方向および塗布ロールに回転方向によって、本工程における塗布方式をフォワード方式またはリバース方式とすることができる。
無機繊維成形体の走行方向は、上記塗布ロールの回転方向と同じ方向であってもよく逆方向であってもよいが、上記回転方向と逆方向であることが好ましい。無機繊維成形体と塗布ロールとの相対速度が上がり、塗布量を多くすることができるため、塗布効率を向上させることができるからである。また、特に無機繊維成形体のバインダー含有量を多くする態様では、幅方向および/または長手方向塗布量のばらつきを低減できるからである。
各ロールの回転速度は、例えば、ロールの周速度により規定される。無機繊維成形体にバインダー液を塗布する際の、塗布ロールの周速度は、無機繊維成形体の走行速度および所望の塗布量、1回転当たりに汲み上げるバインダー液の汲み上げ量、バインダー液の粘度や濃度等に応じて適宜設定することができる。塗布ロールの周速度が速い程、単位時間当たりの回転数が増え、無機繊維成形体との当接回数も増えるため、無機繊維成形体の単位面積当たりの塗布量を増加させることができる。
塗布ロールの周速度は、例えば、1.0m/分〜25.0m/分の範囲内が好ましく、中でも3.0m/分〜23.0m/分の範囲内が好ましい。塗布ロールの周速度が遅すぎる場合には、所望の塗工量が得られず、一方、塗布ロールの周速度が早すぎる場合には、塗工斑が生じるおそれがあるからである。
また、第1ガイドロールおよび第2ガイドロールの周速度は、特段に制限はなく、塗工ロールの周速度や無機繊維成形体の走行速度等の塗布条件等に応じて、適宜設定することができる。
本発明においては、無機繊維成形体にかかる張力が変動しても、塗布ロールとの当接により幅方向に均一に所望量のバインダー液を塗布することが可能であるが、所望の張力がかかることが好ましい。走行時の無機繊維成形体の平面性を保持することができるからである。
無機繊維成形体にかかる張力としては、例えば3.0kPa〜20.0kPaの範囲内が好ましく、中でも3.5kPa〜17.0kPaの範囲内が好ましく、特に4.0kPa〜14.0kPaの範囲内が好ましい。無機繊維成形体にかかる張力が低すぎる場合には、無機繊維成形体にたるみが生じるため、塗工ムラや、搬送中に無機繊維成形体が止まる又は絡まるおそれがあり、一方、無機繊維成形体にかかる張力が高すぎる場合には、無機繊維成形体の密度ムラや最悪切断が生じるおそれがあるからである。
なお、無機繊維成形体にかかる張力とは、例えばテンションゲージ(張力計)により実測される無機繊維成形体にかかっている張力の測定値(単位「N」)を、無機繊維成形体の断面積、すなわち無機繊維成形体の幅と厚みとの積(単位「m」)で除することにより算出される値(単位「Pa」)である。
無機繊維成形体の走行速度は、例えば0.1m/分〜10m/分の範囲内が好ましく、中でも0.5m/分〜2m/分の範囲内が好ましい。無機繊維成形体の走行速度が上記範囲よりも遅すぎる場合には、生産性に難がある。一方、上記走行速度が上記範囲よりも速すぎる場合には、乾燥が不十分となるおそれや、塗工ムラが生じるおそれがあり、これらを解消するために設備能力増強が必要になるという課題が生じるからである。
無機繊維成形体へのバインダー液の塗布量は、後述するバインダー含有無機繊維成形体中のバインダー量(無機繊維に対するバインダー固形分添着量)が所望の範囲内となればよく、無機繊維成形体の走行速度や張力等の塗布条件、無機繊維やバインダー液の種類、バインダー液中のバインダー濃度、目的とするバインダー含有無機繊維成形体の厚み、用途等に応じて適宜調整することができる。
無機繊維成形体の面内におけるバインダー液の塗布量のばらつきは、無機繊維成形体の走行速度や張力に因らず小さいことが好ましい。無機繊維成形体の面内におけるバインダー液の塗布量のばらつきは、得られるバインダー含有無機繊維成形体中の、無機繊維に対するバインダー固形分量のばらつき(バインダー添着量のばらつき)を指標とすることができる。
すなわち、得られるバインダー含有無機繊維成形体中の、無機繊維に対するバインダー固形分量のばらつきが大きいほど、無機繊維成形体の面内におけるバインダー液の塗布量のばらつきが大きいことを意味する。
得られるバインダー含有無機繊維成形体中の無機繊維に対するバインダー固形分量のばらつきとしては、2質量%以下であることが好ましく、中でも1質量%以下、特に0.5質量%以下であることが好ましい。無機繊維に対するバインダー固形分量のばらつきが上記範囲よりも大きいと、本工程でのバインダー液の塗布ばらつきも大きくなる。そして、本発明により得られるバインダー含有無機繊維成形体から、排ガス浄化装置用保持材を形成する際に、個々の排ガス浄化装置用保持材の特性ばらつきが大きくなるからである。
無機繊維成形体の面内でのバインダー液の塗布量の指標である、無機繊維に対するバインダー固形分量のばらつきは、以下の方法により算出することができる。
まず、得られるバインダー含有無機繊維成形体を幅方向に20mm×50mmの短冊状にN箇所(N≧15)切断し、各々の試験片の熱処理前の質量を測定する。次に、各々の試験片に対して、800℃で1時間、熱処理(焼成)を行い、バインダーを焼失させ、各々の試験片の熱処理後の質量を測定する。熱処理前後の質量差分から、無機繊維の質量あたりのバインダー添着量(質量%)を計算して、該バインダー添着量(質量%)の標準偏差を求めることで、無機繊維に対するバインダー固形分量のばらつきを算出することができる。
2.その他の工程
本発明の製造方法は、上述の塗布工程の他に、以下の工程を有していてもよい。
(1)乾燥工程
本発明は、通常、塗布工程後に、バインダー液が塗布された無機繊維成形体を乾燥する乾燥工程を行う。
乾燥方法としては、バインダー液の溶媒や分散媒を除去することが可能な方法であればよく、例えば加熱乾燥、通気乾燥、減圧乾燥、遠心乾燥、吸引乾燥、加圧乾燥、自然乾燥等が挙げられる。中でも、通気乾燥が好ましい。乾燥時間を短縮することができるからである。
通気乾燥では、通常、無機繊維成形体の厚み方向に熱風を通過させる。中でも、無機繊維成形体のバインダー液の塗布面から熱風を通過させることが好ましい。無機繊維成形体のバインダー液の塗布面から厚み方向に熱風を通過させると、バインダー液の溶媒や分散媒が気化する際には熱風とともに厚み方向に移動するため、マイグレーションを抑制することができる。そのため、バインダーを無機繊維成形体の内部に含有させたままにすることができる。
通気乾燥の際には、無機繊維成形体を、通気孔を有する2枚の通気部材の間に挟んで通気乾燥することが好ましい。無機繊維成形体を均一に乾燥させることができるからである。
通気部材の材質は、例えば金属、樹脂等が挙げられる。中でも、金属の通気部材を用いることが好ましい。熱伝導性が高いため、効率的に乾燥させることができるからである。
通気部材は、多数の貫通孔を有することが好ましい。乾燥時間を短縮することができる。
また、通気乾燥の際には、無機繊維成形体を上記通気部材の間に挟んで圧縮することが好ましい。無機繊維成形体の嵩密度を高めることができるからである。
乾燥温度としては、乾燥方法や、バインダー液の種類等に応じて適宜選択される。例えば加熱乾燥や通気乾燥の場合、乾燥温度はバインダー液の溶媒や分散媒の沸点以上であればよく、具体的には80℃〜160℃の範囲内であることが好ましい。乾燥温度が低すぎると十分に乾燥することができず、高すぎるとバインダーが変質したり、バインダー液の溶媒や分散媒の急激な蒸発が起こり、マイグレーションが発生するおそれがある。
乾燥時の通気量、乾燥時間等、他の乾燥条件は、無機繊維成形体からバインダー液の溶媒や分散媒を除去することができ、かつ、バインダーが除去されないように適宜調整される。例えば、乾燥時間は10秒〜60秒程度とすることができる。
また、無機バインダーを用いた場合には、通常、乾燥後に焼成を行う。焼成条件は、無機バインダーを含有するバインダー含有無機繊維成形体の製造方法における一般的な焼成条件から適宜選択することができる。
(2)脱液工程
本発明は、塗布工程と乾燥工程との間に無機繊維成形体からバインダー液の溶媒や分散媒を除去する脱液工程を行ってもよい。
吸引、加圧、圧縮等に脱液方法を用いてバインダー液の溶媒や分散媒を予め除去することで、乾燥工程での乾燥時間の短縮化を図ることができるからである。中でも、吸引脱液が好ましく、無機繊維成形体のバインダー液の塗布面とは反対側の面から液体を吸引することが好ましい。無機繊維成形体の厚み方向にバインダー液が移動して、バインダーの均一化を図ることができるからである。脱液時の圧力、脱液時間等の脱液条件は、バインダー液中のバインダーが除去されないように適宜調整される。
(3)その他の工程
本発明において実施されるその他の工程としては、無機繊維で無機繊維成形体を形成する無機繊維形成工程等が挙げられる。
3.バインダー含有無機繊維成形体
本発明においては、無機繊維成形体と、無機繊維成形体に含有されるバインダーとを有するバインダー含有無機繊維成形体を得ることができる。
バインダー含有無機繊維成形体中のバインダーの含有量としては、特に限定されるものではなく、無機繊維やバインダーの種類、バインダー含有無機繊維成形体の厚み、用途等に応じて適宜選択される。例えばバインダー含有無機繊維成形体中のバインダー固形分量は、無機繊維成形体中の無機繊維の質量あたり0.1質量%〜10.0質量%の範囲内であることが好ましい。上記バインダー固形分量が少なすぎるとバインダー含有無機繊維成形体の所望の厚みが得られないおそれがあり、多すぎるとコスト高になる。また、有機バインダーの場合、上記の有機バインダー固形分量が多いと、有機バインダーが分解されにくくなったり、有機バインダーの分解によって生じるガスにより作業環境が悪化したりするおそれがある。また、無機バインダーの場合、上記の無機バインダー固形分量が多いとクッション性が損なわれるおそれがある。
バインダー含有無機繊維成形体は、例えば断熱材、耐火材、クッション材(保持材)、シール材等に適用することができる。中でも、バインダー含有無機繊維成形体は、排ガス浄化装置用の保持材として好適である。バインダー含有無機繊維成形体は剪断強度が高く、ケーシングに対する摩擦力が小さいため、組み付け性に優れており、圧入時のバインダー含有無機繊維成形体および触媒担体または粒子フィルタのずれを抑制し、バインダー含有無機繊維成形体の保持力を高めることができる。
排ガス浄化装置は、例えば触媒担体または粒子フィルタと、触媒担体または粒子フィルタを収容する金属製のケーシングと、触媒担体または粒子フィルタおよびケーシングの間に介装された保持材とを備えるものである。具体的には、触媒コンバータやディーゼルパティキュラーフィルタ(DPF)が挙げられる。
排ガス浄化装置の構成は特に限定されるものではなく、本発明におけるバインダー含有無機繊維成形体は、上記の構成を備える一般的な排ガス浄化装置に適用することが可能である。
B.塗布装置
次に、本発明の塗布装置について説明する。本発明の塗布装置は、連続走行する無機繊維成形体の一方の面を支持する第1ガイドロールおよび第2ガイドロールと、バインダー液を貯留する貯留部と、上記無機繊維成形体の他方の面と当接して、上記貯留部から汲み上げた上記バインダー液を塗布する塗布ロールと、を有する塗布装置であって、上記第1ガイドロールおよび上記第2ガイドロールは、それぞれが上記塗布ロールの回転軸を通る鉛直面よりも上記塗布ロールの回転方向の上流側および下流側に位置し、上記第1ガイドロールと上記塗布ロールとの第1共通内接線を引いたときに、上記塗布ロールは、上記回転軸よりも上方且つ上記鉛直面よりも上記回転方向の下流側の表面に、上記第1共通内接線との接点を有し、また、上記第2ガイドロールと上記塗布ロールとの第2共通内接線を引いたときに、上記塗布ロールは、上記鉛直面よりも上記回転方向の下流側であり、且つ上記第1共通内接線との接点よりも上記回転方向の下流側の表面に、上記第2共通内接線との接点を有することを特徴とするものである。
本発明の塗布装置について、図を用いて説明する。図7は、本発明の塗布装置の一例を示す模式図である。図7で例示するように、本発明の塗布装置30は、連続走行する無機繊維成形体(図示せず)の一方の面を支持する第1ガイドロール2および第2ガイドロール3と、バインダー液11を貯留する貯留部4と、無機繊維成形体の他方の面と当接して、貯留部3から汲み上げたバインダー液11を塗布する塗布ロール1と、を有する。本発明の塗布装置は、第1ガイドロール2、第2ガイドロール3および塗布ロール1が、所望の高さ位置関係を有する。第1ガイドロール2、第2ガイドロール3および塗布ロール1の位置関係については、「A.バインダー含有無機繊維成形体の製造方法」で、図1〜図2および図5〜図6を用いて説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、図7中の符号は、図1と同様である。
本発明によれば、第1ガイドロール、第2ガイドロールおよび塗布ロールが、上述した位置関係を有することで、上記塗布ロールの回転軸を通る鉛直面よりも下流側で塗布ロールと無機繊維成形体とを当接させ、当接位置よりも塗布ロールの上流側に生じる挟持空間にて、汲み上げたバインダー液を一定量滞留させることができる。これにより、本発明の塗布装置は、走行時に無機繊維成形体にかかる張力や走行速度、塗布ロールの回転速度等の塗布条件に因らず、十分な量のバインダー液を幅方向に均一に塗布し含浸させることができる。
本発明の塗布装置における、第1ガイドロール、第2ガイドロールおよび塗布ロールの位置関係、ならびに各ロールの位置関係については、上述の「A.バインダー含有無機繊維成形体の製造方法」で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、本発明の塗布装置を用いて無機繊維成形体にバインダー液を塗布する際の、塗布ロールと無機繊維成形体との当接態様や挟持空間におけるバインダー液の滞留、塗布条件等についても、上述の「A.バインダー含有無機繊維成形体の製造方法」で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明における貯留部は、バインダー液を貯留するものである。
貯蔵部としては、回転する塗布ロールの表面を付着させることができればよく、例えば、液パン等の、キスコート方式を用いて塗布する際に用いられる従来公知のものを用いることができる。
本発明の塗布装置は、上述の各構成の他に、ドクターブレード等を有していてもよい。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[実施例1〜9および比較例1〜9]
図8(a)または図8(b)に示す塗布装置を備える製造ライン上でバインダー含有無機繊維成形体の製造における塗布工程を行った。なお、図8(a)、(b)中において、無機繊維成形体の図示は省略した。
使用した無機繊維成成形体およびバインダー液は、以下の通りである。
・無機繊維成形体:アルミナ繊維成形体原反ロール(商品名:マフテック(登録商標)、三菱樹脂株式会社製、坪量1200g/m
・バインダー液:アクリレート系ラテックス(商品名:Nipol(登録商標)、日本ゼオン製、濃度10%)
また、使用した塗布ロール1、第1ガイドロール2および第2ガイドロール3のロール径、ならびに、塗布ロール1と第1ガイドロール2または第2ガイドロール3とのロール間距離WまたはWについては、以下の通りである。
・塗布ロール1:ロール径120mmφ
・第1、第2ガイドロール2、3:ロール径80mmφ
・塗布ロール1および第1ガイドロール2間距離W=100mm
・塗布ロール1および第2ガイドロール3間距離W=120mm
各実施例および各比較例での無機繊維成形体へのバインダー液の塗布は、表1および表2に示す条件で行った。表1および表2中のθおよびθは、図8(a)、(b)中の符号と同じであり、塗布ロール1の回転軸Oを通る鉛直面Sを0°として、塗布ロール1の回転方向の上流側に接点を有する場合は、角度をマイナスで表わした。
目標添着量は、塗布条件に応じたバインダー液の塗布量から換算した、無機繊維成形体中の無機繊維の質量あたりのバインダー固形分量の割合(質量%)とした。
実測添着量は、得られたバインダー含有無機繊維成形体を800℃で1時間、熱(焼成)処理を行う前後の質量を測定し、その質量差分から無機繊維の質量あたりのバインダー添着量の割合(質量%)を換算することにより算出した。
また、実測添着量の幅方向のばらつき(バインダー固形分量のばらつき)は、得られたバインダー含有無機繊維成形体を幅方向に20mm×50mmの短冊状に切断(N=32)し、各々の試験片を800℃で1時間、熱(焼成)処理を行う前後の質量を測定し、その質量差分から各々の試験片についての無機繊維の質量あたりのバインダー添着量の割合(質量%)を計算して、その標準偏差により算出した。
[考察]
表1および表2の結果から、本発明の製造方法によれば、第1ガイドロール、第2ガイドロールおよび塗布ロールを所定の位置関係で配置することで、無機繊維成形体に有機バインダーをロールコートにて塗工する際、塗布ロール速度が速くなっても、また、無機繊維成形体の張力が低くなっても、安定した塗工量が得られ、無機繊維成形体の面内の塗工量むらを小さくすることができた。
1 … 塗布ロール
2 … 第1ガイドロール
3 … 第2ガイドロール
10 … 無機繊維成形体
11 … バインダー液
20 … バインダー含有無機繊維成形体
30 … 塗布装置
… 第1共通内接線
… 塗布ロールの第1共通内接線との接点
… 第2共通内接線
… 塗布ロールの第2共通内接線との接点

Claims (5)

  1. 連続走行する無機繊維成形体の一方の面を第1ガイドロールおよび第2ガイドロールで支持し、前記無機繊維成形体の他方の面に塗布ロールを当接させて、前記塗布ロールの周面に汲み上げたバインダー液を、前記無機繊維成形体に塗布する塗布工程、
    を有するバインダー含有無機繊維成形体の製造方法であって、
    前記第1ガイドロールおよび前記第2ガイドロールは、それぞれが前記塗布ロールの回転軸を通る鉛直面よりも前記塗布ロールの回転方向の上流側および下流側に位置し、
    前記第1ガイドロールと前記塗布ロールとの第1共通内接線を引いたときに、前記塗布ロールは、前記回転軸よりも上方且つ前記鉛直面よりも前記回転方向の下流側の表面に、前記第1共通内接線との接点を有し、
    また、前記第2ガイドロールと前記塗布ロールとの第2共通内接線を引いたときに、前記塗布ロールは、前記鉛直面よりも前記回転方向の下流側であり、且つ前記第1共通内接線との接点よりも前記回転方向の下流側の表面に、前記第2共通内接線との接点を有することを特徴とするバインダー含有無機繊維成形体の製造方法。
  2. 前記塗布ロールの、前記第1共通内接線との接点および前記回転軸を通る面と、前記鉛直面と、が成す角度が、0°より大きく90°以下であることを特徴とする請求項1に記載のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法。
  3. 前記塗布ロールの、前記第2共通内接線との接点および前記回転軸を通る面と、前記鉛直面と、が成す角度が、3°以上130°以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法。
  4. 前記無機繊維成形体の走行方向が、前記塗布ロールの前記回転方向と逆方向であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載のバインダー含有無機繊維成形体の製造方法。
  5. 連続走行する無機繊維成形体の一方の面を支持する第1ガイドロールおよび第2ガイドロールと、
    バインダー液を貯留する貯留部と、
    前記無機繊維成形体の他方の面と当接して、前記貯留部から汲み上げた前記バインダー液を塗布する塗布ロールと、
    を有する塗布装置であって、
    前記第1ガイドロールおよび前記第2ガイドロールは、それぞれが前記塗布ロールの回転軸を通る鉛直面よりも前記塗布ロールの回転方向の上流側および下流側に位置し、
    前記第1ガイドロールと前記塗布ロールとの第1共通内接線を引いたときに、前記塗布ロールは、前記回転軸よりも上方且つ前記鉛直面よりも前記回転方向の下流側の表面に、前記第1共通内接線との接点を有し、
    また、前記第2ガイドロールと前記塗布ロールとの第2共通内接線を引いたときに、前記塗布ロールは、前記鉛直面よりも前記回転方向の下流側であり、且つ前記第1共通内接線との接点よりも前記回転方向の下流側の表面に、前記第2共通内接線との接点を有することを特徴とする塗布装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR102501023B1 (ko) * 2021-08-11 2023-02-17 주식회사 영도트림아트 마스크용 이어밴드 제조장치

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