JP2017154902A - 六ホウ化物微粒子の集合体、六ホウ化物微粒子分散液、六ホウ化物微粒子分散体、六ホウ化物微粒子分散体合わせ透明基材、赤外線吸収フィルムおよび赤外線吸収ガラス - Google Patents

六ホウ化物微粒子の集合体、六ホウ化物微粒子分散液、六ホウ化物微粒子分散体、六ホウ化物微粒子分散体合わせ透明基材、赤外線吸収フィルムおよび赤外線吸収ガラス Download PDF

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Abstract

【課題】光の吸収波長の選択性が制御され、太陽光を遮蔽する日射遮蔽材料としての十分な特性を有する六ホウ化物微粒子の集合体、六ホウ化物微粒子分散液、六ホウ化物微粒子分散体、等を提供する。
【解決手段】六ホウ化物微粒子の集合体であって、前記集合体に含有される六ホウ化物微粒子の粒子形状を楕円体とみなし、前記楕円体の軸長をa、b、c(但し、a≧b≧c)とおいたとき、前記集合体に含有される微粒子のうち、(a+c)≧2bであり、かつ、アスペクト比[(長軸長さ)/(短軸長さ)=a/c]の値が1.2以上5.0以下である、微粒子の個数割合が60(個数)%以上100(個数)%以下である六ホウ化物微粒子の集合体、当該六ホウ化物微粒子の集合体を用いた六ホウ化物微粒子分散液、六ホウ化物微粒子分散体、等を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、可視光透過性が良好で、且つ近赤外光を吸収する六ホウ化物微粒子の集合体、六ホウ化物微粒子分散液、六ホウ化物微粒子分散体、六ホウ化物微粒子分散体合わせ透明基材、赤外線吸収フィルムおよび赤外線吸収ガラスに関する。
良好な可視光透過率を有し透明性を保ちながら日射透過率を低下させる熱線遮蔽技術として、さまざまな技術が提案されてきた。なかでも、導電性微粒子の分散体を用いた熱線遮蔽技術は、その他の技術と比較して熱線遮蔽特性に優れ、低コストであり電波透過性があり、さらに耐候性が高い等のメリットがある。
例えば特許文献1には、酸化錫微粉末を分散状態で含有させた透明樹脂や、酸化錫微粉末を分散状態で含有させた透明合成樹脂をシートまたはフィルムに成形したものを、透明合成樹脂基材に積層してなる赤外線吸収性合成樹脂成形品が提案されている。
特許文献2には、少なくとも2枚の対向する板ガラスの間に、Sn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W、V、Moといった金属、当該金属の酸化物、当該金属の窒化物、当該金属の硫化物、当該金属へのSbやFのドープ物、または、これらの混合物を分散させた中間層を、挟み込んだ合わせガラスが提案されている。
また、出願人は特許文献3〜5で、窒化チタン微粒子や六ホウ化物微粒子を分散した選択透過膜用塗布液や選択透過膜、熱線遮蔽成分分散体、熱線遮蔽樹脂成形体等を開示している。
特開平2−136230号公報 特開平8−259279号公報 特開平11−181336号公報 特開2000−96034号公報 特開2004−162020号公報
しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献1、2に開示されている赤外線吸収性合成樹脂成形品等の熱線遮蔽構造体には、いずれも高い可視光透過率が求められたときの熱線遮蔽性能が十分でないという問題点が存在した。
ここで、本発明者らは光吸収微粒子としての六ホウ化物微粒子と、当該六ホウ化物微粒子の分散体とに想到した。即ち、六ホウ化物微粒子および六ホウ化物微粒子分散体は、高い透明性を保ちつつ強力な近赤外吸収能力を持ち、高いモル吸光係数を持ちながら低コストであり、かつ高い耐候性を備えていることを知見し、これを光吸収微粒子分散液、光吸収微粒子分散体として用いることに想到した。
当該想到を基に、本出願人は上述した特許文献3〜5を開示し、窒化チタン微粒子や六ホウ化物微粒子を分散した選択透過膜用塗布液や選択透過膜、熱線遮蔽成分分散体、熱線遮蔽樹脂成形体等を提供した。
しかしながら、本発明者らがさらなる検討を行った結果、以下の課題が見出された。
すなわち、特許文献3〜5に開示された六ホウ化物微粒子は、太陽光において重価係数の高い波長800nmから1400nm付近における範囲の光を十分に吸収できないことがあった。そこで、当該波長800nmから1400nm付近の範囲の光を十分に吸収させようと六ホウ化物微粒子の濃度を上げると、今度は、可視光領域の光も大きく吸収してしまう。この為、可視光を透過する一方で太陽光を遮蔽する日射遮蔽材料としての特性が不十分となることがあった。
当該課題を解決する為、例えば特許文献4では、六ホウ化物微粒子以外の他種の光吸収微粒子を、六ホウ化物微粒子と混合使用する構成を開示している。しかしながら、種類の異なる光吸収微粒子を混合使用することは、複数種類の光吸収微粒子を溶媒中に安定に存在させることのできる分散剤の選定や添加方法の選択が必要となるが、一般的に困難である。さらに、当該混合の際に光吸収微粒子の凝集が発生するおそれがある。この結果、光吸収微粒子と分散剤との困難な混合分散操作を十分に行う必要がある。
結局、最終的に当該光吸収微粒子を含有することになる樹脂等の媒体への影響が光吸収微粒子の種類毎に異なる、さらに光吸収微粒子の種類毎に経時変化の進行状態が異なる、といった数々の品質管理上の課題があった。
本発明は上述の状況の下で為されたものであり、その解決しようとする課題は、光の吸収波長の選択性が制御され、太陽光を遮蔽する日射遮蔽材料としての十分な特性を有する六ホウ化物微粒子の集合体、六ホウ化物微粒子分散液、六ホウ化物微粒子分散体、六ホウ化物微粒子分散体合わせ透明基材、赤外線吸収フィルムおよび赤外線吸収ガラスを提供することである。
上述の課題を解決する為、本発明者らは研究をおこなった。
そして、これまでに公知であった六ホウ化物微粒子、あるいはこれを応用した先行技術に係る六ホウ化物の微粒子分散体において、その微粒子の形状を制御するという構成について、何らの検討も行われたことがないことを知見した。
例えば、上述した特許文献3や特許文献5では、実施例において平均粒子径100nm以下のホウ化ランタン微粒子(LaB)を有機溶媒、シラン系カップリング剤と混合し、直径4mmのジルコニアボールを用いて100時間ボールミル混合してホウ化ランタンの微粒子分散液を作製する手順が開示されているのみであって、分散液あるいは塗布膜、分散体となった形態での粒子の形状については特に言及されていない。
また、特許文献4では、実施例において平均粒子径85nmから120nmのホウ化物微粒子を、有機溶媒や、微粒子分散用カップリング剤と混合して、直径4mmのジルコニアボールを用いてボールミル混合し、ホウ化物微粒子の分散液を作製する手順が開示されているのみである。そして、分散液あるいは塗布膜となった形態での粒子の形状については、特に言及されていない。
さらに、他の公知文献においても、六ホウ化物の粒子形状の制御及びその効果についての記述は、上述した特許文献3〜5の記述の範囲を実質的に超えるものではなかった。即ち、六ホウ化物微粒子において、各々の微粒子を所定の形状に制御するという構成を採ることで、当該六ホウ化物微粒子を分散体としたときの、当該分散体が発揮する光吸収特性については、全く明らかになっていなかったものである。
当該知見を基に、上述した特許文献3〜5に開示された六ホウ化物微粒子について、その形状と、太陽光において重価係数の高い波長800nmから1400nm付近の範囲の光を、十分に吸収しない場合がある原因との関連を研究した。
その結果、六ホウ化物微粒子の造粒にあたって粒子形状の制御が考慮していない為、製造された微粒子の形状や各形状を有する微粒子の存在比率が、不適切なものになっていることが、波長800nmから波長1400nm付近における範囲の光を十分に吸収しない場合の原因であることに想到した。
ここで、本発明者らは上述の認識の下、さらに研究を行った。
そして、詳細は後述するが、当該六ホウ化物微粒子の粒子形状を楕円体とみなして、前記楕円体の軸長をa,b,c(ただしa≧b≧c)とおき、当該六ホウ化物微粒子のアスペクト比を考えたとき、当該六ホウ化物微粒子の形状がロッドのような形態を持つ、すなわち(a+c)≧2bを満たし、かつアスペクト比が1.2以上5.0未満の六ホウ化物微粒子は、波長800nmから1400nmにおける範囲の光に主要な第1の吸収ピーク、波長670nmから780nmの範囲に第2のピークを持つことを知見した。従って、当該形状を有する六ホウ化物微粒子は、可視光を透過する一方で太陽光を効率よく遮蔽することができることに想到した。
一方、ロッドのような形態を持ち、かつアスペクト比が1.2以上5.0未満の六ホウ化物微粒子は、一般的に可視光に分類されることもある波長670nmから780nmの範囲にも吸光ピークを持つことから、当該微粒子が可視光の透明性に劣ることも考えられた。
しかし本発明者らの検討の結果、当該ロッドのような形態を持ち、(a+c)≧2bを満たし、かつアスペクト比が1.2以上5.0未満の六ホウ化物微粒子は、波長670nmから780nmの範囲に吸光ピークを持っているにも拘わらず、可視光の透明性に劣るものではないことが確かめられた。
この原因は定かではないが、本発明者らは、JIS R 3106に記載された可視光透過率の重価係数から説明することができると考えている。
即ち、当該重価係数は、ほぼ人間の眼の視感度曲線に相当する。そして、当該重価係数の値は、おおよそ波長450nmから650nmの範囲に高い値を持ち、波長450nmより短波長、および波長650nmより長波長における値は相対的に小さい。
これは、人間の眼において、波長650nmより長波長の光に対する視感度が相対的に小さい、言い換えれば波長650nmより長波長の光は、人間の眼には明るさとして認識されにくいことを意味する。
従って、ロッドのような形態を持ち、かつアスペクト比が1.2以上5.0未満の六ホウ化物微粒子が、一般的に可視光に分類されることもある波長670nmから780nmの範囲の光に吸光ピークを持っていても、当該吸光ピークは人間の眼に対する明るさを減じるものではないと考えられる。この結果、当該形状を有する六ホウ化物微粒子は、波長670nmから780nmの範囲に吸光ピークを持っているにも関わらず、可視光の透明性に劣るものではないことが説明されると考えられる。
一方、アスペクト比が1.2未満の六ホウ化物微粒子は、その主要な吸収ピークを波長700nmから800nmの範囲にのみ持ち、太陽光の重価係数の高い波長800nmから1400nm付近の範囲の光を十分に吸収しない。このため、日射遮蔽材料としての特性は十分なものではなかった。
さらに、アスペクト比が5.0を超える六ホウ化物微粒子は、波長1400nmよりも長波長に主要な第1の吸収ピーク、波長670nmから780nmの範囲に第2のピークを持ち、太陽光の重価係数の高い800nmから1400nm付近の範囲の光を十分に吸収しない。このため、やはり、日射遮蔽材料としての特性は十分なものではなかった。
当該知見に基づき、本発明者らは、粒子の形状がロッド状であり、アスペクト比が1.2以上5.0未満である六ホウ化物微粒子を集合体とすることにより、可視光を透過する一方で、太陽光の重価係数が高い近赤外領域に吸収を持つ六ホウ化物微粒子の集合体が得られることに想到した。
具体的には、所定のTEMトモグラフィー像の視野範囲内に観察される六ホウ化物微粒子の集合体または分散体において、当該視野内に観察される六ホウ化物微粒子の粒子形状を楕円体とみなし、当該楕円体の軸長をa、b、c(但し、a≧b≧c)とする。
そのとき、当該六ホウ化物微粒子であって、(a+c)≧2bであり、かつ、アスペクト比[(長軸長さ)/(短軸長さ)=a/c]の値が1.2以上5.0以下である六ホウ化物微粒子の個数割合が、前記視野内に観察される六ホウ化物微粒子の60(個数)%以上100(個数)%以下であることを満足するとき、当該六ホウ化物微粒子集合体、および、当該集合体を分散させた分散体の日射遮蔽特性が、非常に良好なものになることを知見するに至って本発明を完成したものである。
なお、本発明において「集合体」とは、各々の形態を持つ1つ1つの微粒子が同一空間内に多数存在するもの、および、その状態を指す概念として用いている。一方、本発明において「集合体」とは、複数の微粒子同士が凝集して凝集体を形成しているもの、および、その状態を指す概念としては用いていない。
即ち、上述の課題を解決する第1の発明は、
六ホウ化物微粒子の集合体であって、
前記集合体に含有される六ホウ化物微粒子の粒子形状を楕円体とみなし、前記楕円体の軸長をa、b、c(但し、a≧b≧c)とおいたとき、
前記集合体に含有される微粒子のうち、
(a+c)≧2bであり、かつ、アスペクト比[(長軸長さ)/(短軸長さ)=a/c]の値が1.2以上5.0以下である微粒子の個数割合が、60(個数)%以上100(個数)%以下であることを特徴とする六ホウ化物微粒子の集合体である。
第2の発明は、
前記六ホウ化物微粒子の集合体に含有される六ホウ化物微粒子の平均分散粒子径が、1nm以上100nm以下であることを特徴とする第1の発明に記載の六ホウ化物微粒子の集合体である。
第3の発明は、
前記六ホウ化物微粒子が、六ホウ化ランタン微粒子であることを特徴とする第1または第2の発明に記載の六ホウ化物微粒子の集合体である。
第4の発明は、
第1から第3の発明のいずれかに記載の六ホウ化物微粒子の集合体が、液状媒体中に分散して含有されている分散液であって、
前記液状媒体とは、水、有機溶媒、油脂、液状樹脂、液状プラスチック用可塑剤、または、これらから選択された2種以上の混合物、から選択されたものであることを特徴とする六ホウ化物微粒子分散液である。
第5の発明は、
前記六ホウ化物微粒子を、0.02質量%以上20質量%以下含有することを特徴とする第4の発明に記載の六ホウ化物微粒子分散液である。
第6の発明は、
第1から第3の発明のいずれかに記載の六ホウ化物微粒子の集合体が、熱可塑性樹脂またはUV硬化性樹脂中に分散して含有されていることを特徴とする六ホウ化物微粒子分散体である。
第7の発明は、
前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール樹脂という樹脂群から選択される1種の樹脂、
または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、
または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体、のいずれかであることを特徴とする第6の発明に記載の六ホウ化物微粒子分散体である。
第8の発明は、
前記六ホウ化物微粒子を、0.001質量%以上80.0質量%以下含有することを特徴とする第6または第7の発明に記載の六ホウ化物微粒子分散体である。
第9の発明は、
前記六ホウ化物微粒子分散体が、シート形状、ボード形状またはフィルム形状であることを特徴とする第6から第8の発明のいずれかに記載の六ホウ化物微粒子分散体である。
第10の発明は、
前記六ホウ化物微粒子分散体に含まれる単位投影面積あたりの前記六ホウ化物微粒子の含有量が、0.02g/m以上1.0g/m以下であることを特徴とする第6から第9の発明のいずれかに記載の六ホウ化物微粒子分散体である。
第11の発明は、
複数枚の透明基材間に、第6から第10の発明のいずれかに記載の六ホウ化物微粒子分散体が存在していることを特徴とする六ホウ化物微粒子分散体合わせ透明基材である。
第12の発明は、
透明フィルム基材または透明ガラス基材から選択される透明基材の少なくとも一方の面に、コーティング層として第6から第10の発明のいずれかに記載の六ホウ化物微粒子分散体が設けられていることを特徴とする赤外線吸収フィルムまたは赤外線吸収ガラスである。
第13の発明は、
前記樹脂が、UV硬化性樹脂であることを特徴とする第12の発明に記載の赤外線吸収フィルムまたは赤外線吸収ガラスである。
第14の発明は、
前記コーティング層の厚さが10μm以下であることを特徴とする第12または第13の発明に記載の赤外線吸収フィルムまたは赤外線吸収ガラスである。
第15の発明は、
前記透明フィルム基材が、ポリエステルフィルムであることを特徴とする第12から第14の発明のいずれかに記載の赤外線吸収フィルムである。
第16の発明は、
前記コーティング層に含まれる、単位投影面積あたりの前記六ホウ化物微粒子の含有量が0.02g/m以上1.0g/m以下であることを特徴とする第12から第14の発明のいずれかに記載の赤外線吸収フィルムまたは赤外線吸収ガラスである。
本発明に係る六ホウ化物微粒子集合体、六ホウ化物微粒子分散液、六ホウ化物微粒子分散体、六ホウ化物微粒子分散体合わせ透明基材、赤外線吸収フィルムおよび赤外線吸収ガラスによれば、光の吸収波長の選択性が制御され、太陽光を遮蔽する日射遮蔽材料としての十分な特性を有している。
以下、本発明の実施の形態について、[a]六ホウ化物微粒子、[b]六ホウ化物微粒子の集合体、[c]六ホウ化物微粒子の集合体の製造方法、[d]六ホウ化物微粒子分散液とその製造方法、[e]六ホウ化物微粒子分散体とその製造方法、[f]シート状またはフィルム状の六ホウ化物微粒子分散体とその製造方法、[g]六ホウ化物微粒子分散体合わせ透明基材とその製造方法、[h]赤外線吸収フィルムおよび赤外線吸収ガラスとその製造方法、の順で説明する。
[a]六ホウ化物微粒子
本発明に用いる六ホウ化物微粒子は、近赤外領域においてプラズモン吸収による光の吸収を発現するものである。その成分は一般式XBで表されるものであり、形状は非球状の形状を持つものである。
ここで、元素Xは、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Y、Sm、Eu、Er、Tm、Yb、Lu、SrおよびCaから選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。具体的には、六ホウ化ランタン[LaB]、六ホウ化セリウム[CeB]、六ホウ化プラセオジム[PrB]、六ホウ化ネオジム[NdB]、六ホウ化ガドリニウム[GdB]、六ホウ化テルビウム[TbB]、六ホウ化ディスプロシウム[DyB]、六ホウ化ホルミウム[HoB]、六ホウ化イットリウム[YB]、六ホウ化サマリウム[SmB]、六ホウ化ユーロピウム[EuB]、六ホウ化エルビウム[ErB]、六ホウ化ツリウム[TmB]、六ホウ化イッテルビウム[YbB]、六ホウ化ルテチウム[LuB]、六ホウ化ランタンセリウム[(La,Ce)B]、六ホウ化ストロンチウム[SrB]、六ホウ化カルシウム[CaB]等を、その代表的なものとして挙げることが出来る。なかでも可視光吸収に対する近赤外吸収の強度が高いことから、六ホウ化ランタン[LaB]を用いることが好ましい。
本発明に用いる六ホウ化物微粒子において、その表面が酸化していないことが好ましいが、通常は僅かに酸化していることが多い。また、六ホウ化物微粒子の分散工程で表面の酸化が起こることはある程度避けられない。しかし、その場合でも近赤外線遮蔽効果を発現する有効性に変わりはない。従って、例えば表面が酸化された六ホウ化物微粒子であっても、本発明に用いる六ホウ化物微粒子として使用することが可能である。
また、本発明に用いる六ホウ化物微粒子は、結晶としての完全性が高いほど大きい熱線遮蔽効果が得られる。尤も、結晶性が低くX線回折でブロードな回折ピークを生じるようなものであっても、微粒子内部の基本的な結合が各金属とホウ素の結合から成り立っているものであるならば熱線遮蔽効果を発現するため、本発明において適用することが可能である。なお、六ホウ化物として金属とホウ素との比が厳密に6である必要はなく、5.8以上6.2以下の範囲であれば良い。
[b]六ホウ化物微粒子の集合体
本発明に係る六ホウ化物微粒子の集合体は、所定の範囲の粒子形状を有する六ホウ化物微粒子の集合体で構成されている。
まず、六ホウ化物微粒子の集合体に含有される六ホウ化物微粒子の形状の特徴を説明する。
当該六ホウ化物微粒子の粒子形状を楕円体とみなして、当該楕円体の軸長をa、b、c(但し、a≧b≧c)とおいたとき(a+c)≧2bであり、後述するようにロッド形状を有するものである。そして、当該六ホウ化物微粒子のアスペクト比[(長軸長さ)/(短軸長さ)=a/c]を考えたとき、本発明に係る六ホウ化物微粒子の集合体は、当該アスペクト比の値が1.2以上5.0以下である。
さらに、本発明に係る六ホウ化物微粒子の集合体において、当該ロッド形状を有する六ホウ化物微粒子の個数割合が60(個数)%以上100(個数)%以下の範囲にあるものである。
尚、後述する六ホウ化物微粒子分散液の製造方法、ならびに六ホウ化物微粒子分散体の製造方法で示されるように、六ホウ化物微粒子の集合体に含有される六ホウ化物微粒子の特徴は、六ホウ化物微粒子分散液や六ホウ化中微粒子分散体中の六ホウ化物微粒子の特徴と一致することは明らかである。
六ホウ化物微粒子のアスペクト比は、TEMトモグラフィー法によって得られる3次元画像によって個々の六ホウ化物微粒子を識別し、3次元画像の長さスケールと粒子の具体的な形状を比較することで、個々の六ホウ化物微粒子についてアスペクト比[(長軸長さ)/(短軸長さ)]を算出することで求められる。
尚、TEMトモグラフィー法は、電子線トモグラフィー(Electron Tomography、ET)法とも呼ばれ、撮影角を変更しながら対象物を撮像した複数の二次元TEM像を元に、数学的な変換を利用して、対象物の三次元の形状情報を得る手法である。例えば、J.Flank ed.,Electron tomography−methods for three−dimensional visualization of structures in the cell,Springer,New York(1992)に詳しく記載されている。
具体的には、上述の手法を用いて、TEMトモグラフィー法によって得られる3次元画像から100個以上、好ましくは200個以上の六ホウ化物微粒子を識別する。識別された個々の六ホウ化物微粒子について、長軸と短軸との方向を決定し(互いに直交する最長の軸を長軸、最短の軸を短軸とする。)、長短両軸の長さを測定し、当該測定値から六ホウ化物微粒子のアスペクト比を算出する。
上述したように、アスペクト比が1.2未満の六ホウ化物微粒子は、その主要な吸収ピークを波長700nmから800nmの範囲に持ち、波長800nmから1400nmの範囲にピークを持たない。このため、当該六ホウ化物微粒子は、太陽光の重価係数の高い波長800nmから1400nm付近における範囲の光を十分に吸収せず、日射遮蔽材料としての特性は十分なものではなかった。
一方、アスペクト比が1.2以上5.0未満の六ホウ化物微粒子は、波長800nmから1400nmの範囲に主要な吸収ピークを持つ。従って可視光線を透過する一方で太陽光を効率よく遮蔽することができる。
そして、アスペクト比が5.0以上の六ホウ化物微粒子は、波長1400nmより長波長の範囲に主要な吸収ピークを持ち、波長800nmから1400nmの範囲にピークを持たない。このため、やはり、太陽光の重価係数の高い波長800nmから1400nmの範囲の光を十分に吸収することができない。
以上の知見より、本発明者らは、六ホウ化物微粒子の集合体において、アスペクト比が1.2以上5.0以下であるロッド状の微粒子の個数割合が60(個数)%以上100(個数)%以下であると、光吸収微粒子として六ホウ化物微粒子を用いながら、太陽光の重価係数の高い近赤外の波長領域に吸収特性を有し、日射遮蔽材料として適切な特性を発揮することを知見した。
[c]六ホウ化物微粒子の集合体の製造方法
本発明に係る六ホウ化物微粒子の集合体の製造方法について、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によるLaB(六ホウ化ランタン)微粒子の集合体の製造方法を例として説明する。
ここで、六ホウ化物微粒子の例として、LaB(六ホウ化ランタン)微粒子の例を選択したのは、後述する光学特性の観点において六ホウ化物微粒子の中でも、LaB微粒子が優れており好ましいからである。
尚、六ホウ化物微粒子の集合体の製造方法は、当該例に限定される訳ではなく、本発明に係る六ホウ化物微粒子の集合体を構成する微粒子の形状的特徴や存在割合を実施出来る方法であれば良い。
LaB単結晶の(001)面の基板をグラファイトチューブ中に設置する。当該グラファイトチューブをさらに石英チューブで覆い、これを炉内に設置する。
Laを含む化合物の粉末試料をグラファイトるつぼに入れ、炉内の前記グラファイトチューブ中において、ガスの流入方向にあたる箇所に当該るつぼを設置する。ここで、Laを含む化合物としては、例えばLaCl(塩化ランタン)を好適に用いることができる。
一旦、炉内を真空に引いたのち、水素ガスを導入する。水素ガスの圧力は問わないが、例えば0.1atm前後が好適である。
そして炉内を加熱するとともに、ホウ素を含む化合物のガスを導入する。炉の温度は反応が進む温度であれば問わないが、例えば1400K(ケルビン)前後が好適である。ここで、ホウ素を含む化合物としては、例えばBCl(三塩化ホウ素)を好適に用いることができる。
上述の操作によって、LaB単結晶基板上に、柱状のLaB構造物を析出させることができる。当該柱状のLaB構造物のアスペクト比は、炉の温度、あるいはCVD処理を行う時間によって調節することができる。
次に、当該析出した柱状のLaB構造物を基板から剥離させることで、任意のアスペクト比を有するロッド形状のLaB微粒子を製造することができる。剥離方法は、基板から当該ロッド形状のLaB微粒子を剥離することができる方法であれば任意に選択可能であるが、例えば基板表面に対する研磨処理法、基板に対する超音波処理法、等を用いることができる。
基板から剥離されたLaB微粒子を洗浄することで、本発明に係るLaB微粒子の集合体を製造することができる。
以上、本発明に係る六ホウ化物微粒子の集合体の製造方法例について説明した。上述した製造方法はあくまで一例であり、生成形状を制御できる湿式法により製造された六ホウ化物微粒子を適用したり、生成形状を制御できるプラズマトーチ法を適用して製造された六ホウ化物微粒子を用いることも出来る。
いずれの製造方法を採るにせよ、最終的に六ホウ化物微粒子の集合体となった際に、当該集合体に含有される六ホウ化物微粒子の粒子形状を楕円体とみなしたとき、アスペクト比が1.2以上5.0以下である微粒子の個数割合が60(個数)%以上100(個数)%以下を満たす製造方法であれば、好適に用いることができる。
本発明に係る六ホウ化物微粒子の集合体に含有される微粒子の平均粒子径は、200nm以下であることが好ましい。当該平均粒子径が200nm以下であれば、後述する六ホウ化物微粒子分散体としたとき、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光領域の視認性を保持し、同時に効率よく透明性を保持することができるからである。
尚、本発明において六ホウ化物微粒子の平均粒子径とは、当該六ホウ化物微粒子の分散液中における微粒子の平均分散粒子径を、動的光散乱法(FFT−パワースペクトル法)にて測定した値のことである。
本発明に係る六ホウ化物微粒子において、特に、可視光領域の透明性を重視する場合には、さらに、六ホウ化物微粒子による散乱の低減を考慮することが好ましい。
当該六ホウ化物微粒子による散乱の低減を考慮するのであれば、六ホウ化物微粒子の平均粒子径は100nm以下がよい。この理由は、後述する六ホウ化物微粒子分散液や六ホウ化物微粒子分散体において、六ホウ化物微粒子の平均分散粒子径が小さければ、幾何学散乱、または、ミー散乱による波長400nmから780nmの範囲の可視光線領域における光の散乱が低減されるからである。当該光の散乱が低減される結果、六ホウ化物微粒子分散体が曇りガラスのようになって、鮮明な透明性が得られなくなるのを回避することが出来る。
これは、六ホウ化物微粒子の平均分散粒子径が100nm以下になると、上記幾何学散乱若しくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になるからである。当該レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に反比例して低減するため、六ホウ化物微粒子の平均分散粒子径の減少に伴い散乱が低減し、透明性が向上する。さらに、六ホウ化物微粒子の平均分散粒子径が50nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、六ホウ化物微粒子の平均分散粒子径が小さい方が好ましく、平均分散粒子径が1nm以上であれば工業的な製造は容易である。
また、六ホウ化物微粒子の表面を、Si、Ti、Zr、Alのいずれか1種類以上の元素を含有する酸化物で被覆すれば、耐候性をより向上させることが出来好ましい。
[d]六ホウ化物微粒子分散液とその製造方法
本発明に係る六ホウ化物微粒子の集合体を液状の媒体中に分散させることで、本発明に係る六ホウ化物微粒子分散液を得ることが出来る。
以下、六ホウ化物微粒子分散液の製造方法を説明する。なお、本発明において、六ホウ化物微粒子分散液を単に「分散液」と記載する場合がある。
本発明に係る六ホウ化物微粒子の集合体および所望により適量の分散剤、カップリング剤、界面活性剤等を、液状の媒体へ添加し分散処理を行うことで、本発明に係る六ホウ化物微粒子分散液を得ることができる。当該六ホウ化物微粒子分散液の媒体には、六ホウ化物微粒子分散液、および、後述する六ホウ化物微粒子分散体として、本発明に係る六ホウ化物微粒子の分散性を保つための機能と、六ホウ化物微粒子分散液を用いる際に欠陥を生じさせないための機能が要求される。
(1)媒体
媒体としては水、有機溶媒、油脂、液状樹脂、液状のプラスチック用可塑剤、あるいはこれらから選択される2種以上の混合物を選択し六ホウ化物微粒子分散液を製造することができる。上記の要求を満たす有機溶媒としては、アルコール系、ケトン系、炭化水素系、グリコール系、水系など、種々のものを選択することが可能である。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;3−メチル−メトキシ−プロピオネートなどのエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;フォルムアミド、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;エチレンクロライド、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類などを挙げることができる。これらの中でも極性の低い有機溶剤が好ましく、特に、イソプロピルアルコール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n−ブチルなどがより好ましい。これらの溶媒は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
液状の樹脂としては、メタクリル酸メチル等が好ましい。液状のプラスチック用可塑剤としては、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤や、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤などが好ましい例として挙げられる。なかでもトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサオネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサオネートは、加水分解性が低い為、さらに好ましい。
(2)分散剤、カップリング剤、界面活性剤
分散剤、カップリング剤、界面活性剤は用途に合わせて選定可能であるが、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基を官能基として有することが好ましい。これらの官能基は、六ホウ化物微粒子の表面に吸着し、六ホウ化物微粒子集合体の凝集を防ぎ、後述する六ホウ化物微粒子分散体中でも六ホウ化物微粒子を均一に分散させる効果を持つ。
好適に用いることのできる分散剤としては、リン酸エステル化合物、高分子系分散剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、等があるが、これらに限定されるものではない。高分子系分散剤としては、アクリル系高分子分散剤、ウレタン系高分子分散剤、アクリル・ブロックコポリマー系高分子分散剤、ポリエーテル類分散剤、ポリエステル系高分子分散剤などが挙げられる。
当該分散剤の添加量は、六ホウ化物微粒子集合体100重量部に対し10重量部以上1000重量部以下の範囲であることが望ましく、より好ましくは20重量部以上200重量部以下の範囲である。分散剤添加量が上記範囲にあれば、六ホウ化物微粒子集合体が液中で凝集を起こすことがなく、分散安定性が保たれる。
分散処理の方法は六ホウ化物微粒子集合体が均一に液状媒体中へ分散する方法であれば公知の方法から任意に選択でき、たとえばビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散などの方法を用いることができる。
均一な六ホウ化物微粒子分散液を得るために、各種添加剤や分散剤を添加したり、pH調整したりしても良い。
(3)六ホウ化物微粒子分散液
上述した六ホウ化物微粒子分散液中における六ホウ化物微粒子の含有量は0.02質量%以上20質量%以下であることが好ましい。0.02質量%以上であれば後述するコーティング膜やプラスチック成型体などの製造に好適に用いることができ、20質量%以下であれば工業的な生産が容易である。さらに好ましくは0.5質量%以上20質量%以下である。
このような六ホウ化物微粒子を液体媒体中に分散させた本発明に係る六ホウ化物微粒子分散液は、適当な透明容器に入れ、分光光度計を用いて、光の透過率を波長の関数として測定することができる。本発明に係る六ホウ化物微粒子分散液は、おおむね波長850nmから1300nm近辺の範囲において主要な吸収ピークを持ち、該吸収ピーク位置の光の吸光度に対する波長550nmの光の吸光度に対する比[(吸収ピーク位置の光の吸光度)/(波長550nmの吸光度)]の値が5.0以上12.0以下であるという、後述する六ホウ化物微粒子分散体合わせ透明基材や赤外線吸収ガラス、赤外線吸収フィルム等に最適な、優れた光学的特性を有していた。
尚、当該測定において、六ホウ化物微粒子分散液の透過率の調整は、その分散溶媒または分散溶媒と相溶性を有する適宜な溶媒で希釈することにより、容易になされる。
[e]六ホウ化物微粒子分散体とその製造方法
六ホウ化物微粒子分散体は、前記六ホウ化物微粒子と、熱可塑性樹脂またはUV硬化性樹脂とからなる。
熱可塑性樹脂としては特に制限はないが、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール樹脂という樹脂群から選択される1種の樹脂、
または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、
または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体、のいずれかであることが好ましい。
一方、UV硬化性樹脂としては特に制限はないが、例えばアクリル系UV硬化性樹脂を好適に用いることができる。
六ホウ化物微粒子分散体中に分散して含まれる六ホウ化物微粒子の量は、0.001質量%以上80.0質量%以下含むことが好ましく、0.01質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
これは、六ホウ化物微粒子が0.001質量%以上あれば、六ホウ化物微粒子分散体において必要とされる赤外線遮蔽効果が得られるからである。また、六ホウ化物微粒子が80質量%以下であれば、六ホウ化物微粒子分散体において、熱可塑性樹脂成分の存在に起因する機械的強度の低下を回避出来るからである。
また、六ホウ化物微粒子分散体が赤外線遮蔽効果を得る観点から、六ホウ化物微粒子分散体に含まれる単位投影面積あたりの六ホウ化物微粒子の含有量は、0.02g/m以上1.0g/m以下であることが好ましい。尚、「単位投影面積あたりの含有量」とは、本発明に係る六ホウ化物微粒子分散体において、光が通過する単位面積(m)あたり、その厚み方向に含有されている六ホウ化物微粒子の重量(g)である。
六ホウ化物微粒子分散体は、シート形状、ボード形状またはフィルム形状に加工することが出来、様々な用途に適用できる。
以下に六ホウ化物微粒子分散体の製造方法を説明する。
六ホウ化物微粒子分散液と熱可塑性樹脂あるいは可塑剤を混合後、溶媒成分を除去することで、熱可塑性樹脂中及び/または分散剤中に六ホウ化物微粒子が高濃度に分散した分散体である六ホウ化物微粒子分散粉(以下、単に分散粉と呼ぶことがある)や、可塑剤中に六ホウ化物微粒子が高濃度に分散した分散液(以下、単に可塑剤分散液と呼ぶことがある)を得ることが出来る。六ホウ化物微粒子分散液から溶媒成分を除去する方法としては、当該六ホウ化物微粒子分散液を減圧乾燥することが好ましい。具体的には、六ホウ化物微粒子分散液を攪拌しながら減圧乾燥し、分散粉もしくは可塑剤分散液と溶媒成分とを分離する。当該減圧乾燥に用いる装置としては、真空攪拌型の乾燥機があげられるが、上記機能を有する装置であれば良く、特に限定されない。また、乾燥工程の減圧の際の圧力値は適宜選択される。
当該減圧乾燥法を用いることで、六ホウ化物微粒子分散液からの溶媒の除去効率が向上すると伴に、六ホウ化物微粒子分散粉や可塑剤分散液が長時間高温に曝されることがないので、分散粉中や可塑剤分散液中に分散している六ホウ化物微粒子集合体の凝集が起こらず好ましい。さらに六ホウ化物微粒子分散粉や六ホウ化物微粒子可塑剤分散液の生産性も上がり、蒸発した溶媒を回収することも容易で、環境的配慮からも好ましい。
当該乾燥工程後に得られた六ホウ化物微粒子分散粉や六ホウ化物微粒子可塑剤分散液において、残留する溶媒は5質量%以下であることが好ましい。残留する溶媒が5質量%以下であれば、当該六ホウ化物微粒子分散粉や六ホウ化物微粒子可塑剤分散液を、例えば、後述する六ホウ化物微粒子分散体合わせ透明基材に加工した際に気泡が発生せず、外観や光学特性が良好に保たれるからである。
また、六ホウ化物微粒子分散液や六ホウ化物微粒子分散粉を樹脂中に分散させ、当該樹脂をペレット化することで、マスターバッチを得ることが出来る。
また、六ホウ化物微粒子分散液や六ホウ化物微粒子分散粉と、熱可塑性樹脂の粉粒体またはペレット、および必要に応じて他の添加剤を均一に混合したのち、ベント式一軸若しくは二軸の押出機で混練し、一般的な溶融押出されたストランドをカットする方法によりペレット状に加工することによっても、マスターバッチを得ることが出来る。この場合、その形状としては円柱状や角柱状のものを挙げることができる。また、溶融押出物を直接カットするいわゆるホットカット法を採ることも可能である。この場合には球状に近い形状をとることが一般的である。
[f]シート状またはフィルム状の六ホウ化物微粒子分散体とその製造方法
前記六ホウ化物微粒子分散粉や六ホウ化物微粒子分散液、またはマスターバッチを透明樹脂中へ均一に混合することにより、本発明に係るシート形状、ボード形状またはフィルム形状の六ホウ化物微粒子分散体を製造出来る。当該シート形状、ボード形状またはフィルム形状の六ホウ化物微粒子分散体からは、六ホウ化物微粒子分散体合わせ透明基材、赤外線吸収フィルム、赤外線吸収ガラスを製造できる。
シート形状、ボード形状またはフィルム形状の六ホウ化物微粒子分散体を製造する場合、当該シートやフィルムを構成する樹脂には多様な熱可塑性樹脂を用いることが出来る。そして、シート形状、ボード形状またはフィルム形状の六ホウ化物微粒子分散体は、十分な透明性を持った熱可塑性樹脂であることが好ましい。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体といった樹脂群から選択される樹脂、または当該樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、または当該樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体から、好ましい樹脂の選択を行うことが出来る。
また、シート形状、ボード形状またはフィルム形状の六ホウ化物微粒子分散体を中間層として用いる場合であって、当該シート、ボードやフィルムを構成する熱可塑性樹脂が単独では柔軟性や透明基材との密着性を十分に有しない場合、例えば熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール樹脂である場合は、さらに可塑剤を添加することが好ましい。
可塑剤としては、本発明に係る熱可塑性樹脂に対して可塑剤として用いられる物質を用いることができる。例えばポリビニルアセタール樹脂で構成された赤外線吸収フィルムに用いられる可塑剤としては、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤が挙げられる。いずれの可塑剤も、室温で液状であることが好ましい。なかでも、多価アルコールと脂肪酸から合成されたエステル化合物である可塑剤が好ましい。
六ホウ化物微粒子分散粉や六ホウ化物微粒子分散液またはマスターバッチと、熱可塑性樹脂と、所望に応じて可塑剤その他添加剤とを混練した後、当該混練物を、押出成形法、射出成形法等の公知の方法により、例えば、平面状や曲面状に成形されたシート状の六ホウ化物微粒子分散体を製造することができる。
シート状またはフィルム状の六ホウ化物微粒子分散体の形成方法には、公知の方法を用いることが出来る。例えば、カレンダーロール法、押出法、キャスティング法、インフレーション法等を用いることができる。
[g]六ホウ化物微粒子分散体合わせ透明基材とその製造方法
シート形状、ボード形状またはフィルム形状の六ホウ化物微粒子分散体を、板ガラスまたはプラスチック等の材質からなる複数枚の透明基材間に、中間層として介在させて成る六ホウ化物微粒子分散体合わせ透明基材について説明する。
六ホウ化物微粒子分散体合わせ透明基材は、中間層をその両側から透明基材を用いて挟み合わせたものである。当該透明基材としては、可視光領域において透明な板ガラス、または、板状のプラスチック、ボード状のプラスチック、またはフィルム状のプラスチックが用いられる。プラスチックの材質は、特に限定されるものではなく用途に応じて選択可能であり、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、PET樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、等が使用可能である。
本発明にかかる六ホウ化物微粒子分散体合わせ透明基材は、本発明に係るシート形状、ボード形状またはフィルム形状の六ホウ化物微粒子分散体を挟み込んで存在させた対向する複数枚の透明基材を、公知の方法で張り合わせ一体化することによっても得られる。
本発明に係るシート形状、ボード形状またはフィルム形状の六ホウ化物微粒子分散体または光吸収合わせ構造体の光学特性は、可視光透過率が70%のときに、波長850nmから1300nmの範囲において光波長領域の透過率における最小値(最小透過率)が35%以下であることを実現できた。
ここで、可視光透過率を70%に調整することは、上述した六ホウ化物微粒子分散液、分散粉、可塑剤分散液またはマスターバッチに含有される六ホウ化物微粒子集合体の濃度、樹脂組成物を調製する際の六ホウ化物微粒子集合体、分散粉、可塑剤分散液またはマスターバッチの添加量、さらにはフィルムやシートの膜厚等を調整することにより容易である。
[h]赤外線吸収フィルムおよび赤外線吸収ガラスとその製造方法
上述した六ホウ化物微粒子分散液を用いて、基板フィルムまたは基板ガラスから選択される透明基板の少なくとも一方の面上へ、六ホウ化物微粒子集合体を含有するコーティング層を形成することで、赤外線吸収フィルムまたは赤外線吸収ガラスを製造することが出来る。
前述した六ホウ化物微粒子分散液を、プラスチックまたはモノマーと混合して塗布液を作製し、公知の方法で透明基材上にコーティング膜を形成することで、赤外線吸収フィルムまたは赤外線吸収ガラスを作製することができる。
例えば、赤外線吸収フィルムは以下のように作製することができる。
上述した六ホウ化物微粒子分散液に媒体樹脂を添加し、塗布液を得る。この塗布液をフィルム基材表面にコーティングした後、溶媒を蒸発させ所定の方法で樹脂を硬化させれば、当該六ホウ化物微粒子集合体が媒体中に分散したコーティング膜の形成が可能となる。
上記コーティング膜の媒体樹脂として、例えば、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂、電子線硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑樹脂等が目的に応じて選定可能である。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ふっ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。
これらの樹脂は、単独使用であっても混合使用であっても良い。尤も、当該コーティング層用の媒体のなかでも、生産性や装置コストなどの観点からUV硬化性樹脂バインダーを用いることが特に好ましい。
また、金属アルコキシドを用いたバインダーの利用も可能である。当該金属アルコキシドとしては、Si、Ti、Al、Zr等のアルコキシドが代表的である。これら金属アルコキシドを用いたバインダーは、加熱等により加水分解・縮重合させることで、酸化物膜からなるコーティング層を形成することが可能である。
上記方法以外に、六ホウ化物微粒子分散液を基板フィルムまたは基板ガラスの上に塗布した後、さらに媒体樹脂や金属アルコキシドを用いたバインダーを塗布してコーティング層を形成してもよい。
尚、上述したフィルム基材は、フィルム形状に限定されることはなく、例えば、ボード状でもシート状でも良い。当該フィルム基材材料としては、PET、アクリル、ウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ふっ素樹脂等が、各種目的に応じて使用可能である。尤も、赤外線吸収フィルムとしては、ポリエステルフィルムであることが好ましく、PETフィルムであることがより好ましい。
また、フィルム基板の表面は、コーティング層接着の容易さを実現するため、表面処理がなされていることが好ましい。また、ガラス基板もしくはフィルム基板とコーティング層との接着性を向上させるために、ガラス基板上もしくはフィルム基板上に中間層を形成し、中間層上にコーティング層を形成することも好ましい構成である。中間層の構成は特に限定されるものではなく、例えばポリマフィルム、金属層、無機層(例えば、シリカ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物層)、有機/無機複合層等により構成することができる。
基板フィルム上または基板ガラス上へコーティング層を設ける方法は、当該基材表面へ六ホウ化物微粒子分散液が均一に塗布できる方法であれればよく、特に限定されない。例えば、バーコート法、グラビヤコート法、スプレーコート法、ディップコート法等を挙げることが出来る。
例えばUV硬化樹脂を用いたバーコート法によれば、適度なレベリング性を持つよう液濃度及び添加剤を適宜調整した塗布液を、コーティング膜の厚み及び前記六ホウ化物微粒子の含有量を合目的に満たすことのできるバー番号のワイヤーバーを用いて基板フィルムまたは基板ガラス上に塗膜を形成することができる。そして塗布液中に含まれる溶媒を乾燥により除去したのち紫外線を照射し硬化させることで、基板フィルムまたは基板ガラス上にコーティング層を形成することができる。このとき、塗膜の乾燥条件としては、各成分、溶媒の種類や使用割合によっても異なるが、通常では60℃以上140℃以下の温度で、20秒以上10分間以下の時間である。紫外線の照射には特に制限はなく、例えば超高圧水銀灯などのUV露光機を好適に用いることができる。
その他、コーティング層の形成の前後工程により、基板とコーティング層の密着性、コーティング時の塗膜の平滑性、有機溶媒の乾燥性などを操作することもできる。前記前後工程としては、例えば基板の表面処理工程、プリベーク(基板の前加熱)工程、ポストベーク(基板の後加熱)工程などが上げられ、適宜選択することができる。プリベーク工程および/あるいはポストベーク工程における加熱温度は80℃以上200℃以下、加熱時間は30秒以上240秒以下であることが好ましい。
基板フィルム上または基板ガラス上におけるコーティング層の厚みは、特に限定されないが、実用上は10μm以下であることが好ましく、6μm以下であることがより好ましい。これはコーティング層の厚みが10μm以下であれば、十分な鉛筆硬度を発揮して耐擦過性を有することに加えて、コーティング層における溶媒の揮散およびバインダーの硬化の際に、基板フィルムの反り発生等の工程異常発生を回避出来るからである。
製造された赤外線吸収フィルムや赤外線吸収ガラスの光学特性は、可視光透過率が70%のときに、波長850nmから1300nmの範囲において光波長領域の透過率における最小値(最小透過率)が35%以下である。尚、可視光透過率を70%に調整することは、コーティング液中の六ホウ化物微粒子濃度の調整、または、コーティング層の膜厚の調整により、容易になされる。
例えば、コーティング層に含まれる単位投影面積あたりの前記六ホウ化物微粒子集合体の含有量は0.02g/m以上1.0g/m以下であることが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるわけではない。
本実施例に係る膜の光学特性は、300nmから1600nmの範囲における透過率(5nm刻み)を、分光光度計(日立製作所(株)製U−4100)を用いて測定した。可視光透過率は、JIS R 3106に準拠して測定を行った。
吸収ピーク波長は、後述する方法で算出された吸光度曲線を用いて、波長380nmから1600nmの範囲の間で、吸光度が最大となる波長を選択した。なお、吸収ピーク波長を選択する上で、前述した光学特性の測定範囲から波長300nmから375nmの範囲を考慮していない第一の理由は、この範囲の吸収が赤外線吸収材料としての特性にほとんど関係を持たないためである。第二の理由は、この範囲の吸収は六ホウ化物微粒子の形状およびその分布によりほとんど変化しないためである。
平均分散粒子径は、粒度分布計(日機装(株)製ナノトラックUPA)で測定を行った。
TEMトモグラフィー法による形状の測定には、透過型電子顕微鏡(FEI Company製TECNAI G2 F20)を用いた。
(実施例1)
LaCl(塩化ランタン)の粉末を所定量秤量しグラファイトるつぼに入れた。管状炉内に挿入した石英チューブに、当該るつぼを設置した。
LaB単結晶の(001)面の基板をグラファイトチューブ中に設置したのち、当該グラファイトチューブを前記石英チューブ内に挿入した。このとき、当該LaB単結晶基板が前記グラファイトるつぼに対して、ガス流の下流側に来るように設置した。
一旦、ロータリーポンプを用いて管状炉内を真空に引いたのち、炉内にH(水素)ガスを導入し、後述するLaB微粒子の成長の間に炉内の水素分圧が常に0.1atmとなるよう、Hガスの流量を調節した。
炉を1400Kに加熱したのち、BCl(三塩化ホウ素)のガスを炉内にフローさせた。最終的に得られるLaB微粒子の集合体のアスペクト比が後述の範囲となるよう、フロー時間を適宜調節した。
LaB微粒子の成長が完了して炉を降温した後、LaB単結晶基板を取り出した。
そして、純水中で、LaB単結晶基板へ超音波処理を施して、当該基板表面に析出した柱状のLaB構造物を剥離させ、ロッド形状のLaB微粒子を得た。
当該ロッド形状のLaB微粒子に対して純水の添加、撹拌およびろ過を繰り返して洗浄した。
以上の操作を、所定量のLaB微粒子が得られるまで繰り返し、実施例1にかかる六ホウ化物微粒子の集合体(本明細書において「微粒子α」と記載する場合がある。)を得た。
微粒子αは、六ホウ化ランタンの単一相であった。
微粒子α1重量部と、トルエン98重量部と、分散剤(アミノ基を有するアクリル高分子分散剤)1重量部とを混合し、3kgのスラリーを調製した。このスラリーをビーズと共にビーズミルへ投入し、スラリーを循環させて、1時間分散処理を行った。
使用したビーズミルは、横型円筒形のアニュラータイプ(アシザワ株式会社製)であり、ベッセル内壁とローター(回転攪拌部)の材質はZrOとした。また、当該ビーズには、直径0.3mmのYSZ(Yttria-Stabilized Zirconia:イットリア安定化ジルコニア)製のビーズを使用した。ローター回転速度13m/秒、スラリー流量1kg/分として分散処理を行った。
得られた微粒子αの分散液(本明細書において「分散液A」と記載する場合がある。)中における、微粒子αの平均分散粒子径を測定したところ29nmであった。
分散液Aの乾燥体を、TEMトモグラフィーを用いた三次元画像解析により観察した。
まず、TEMトモグラフィーにより微粒子α分散体の三次元形状を得た。
次に、微粒子αに含まれる微粒子のうち200個の微粒子の三次元形状を分析した。具体的には、微粒子α分散体に含まれる微粒子の三次元形状を楕円体に近似し、その3つの軸長a、b、c(ただしa≧b≧c)を得た。
ここで、各微粒子においてa+cの値と2bの値とを求め、式a+c≧2bが成立するとき、当該微粒子はロッド状の形状を持つと判断した。一方、式a+c≧2bが成立しないとき、当該微粒子はロッド状の形状を持たない、すなわち球状もしくはディスク状の形状を持つと判定した。
当該微粒子がロッド状であると判定した場合、さらに当該ロッド状粒子のアスペクト比を、式a/cによって計算した。
上述の測定および計算より、分散液Aに含まれる微粒子αのうち、ロッド状であり、かつアスペクト比が1.2以上5.0以下である粒子の個数割合は、94(個数)%であることが判明した。
次に、分散液Aの光学的特性を測定した。具体的には以下の手続きによった。
分散液Aにおいて、微粒子αの濃度が0.002質量%となるようにトルエンを添加して希釈混合し、よく振盪した。そののち、光路長1cmのガラスセルに当該希釈液を入れ、その透過率曲線を分光器で測定した。この際、分光器のベースラインは、同一のガラスセルにトルエンを満たした試料を用いて求めた。そして透過率曲線を、以下の式1により吸収曲線に変換した。
A(λ)=−log10(T(λ)/100)・・・式1
但し、A(λ):吸光度Aの波長λ依存性を示す吸収曲線、T(λ):透過率の波長λ依存性を示す透過率曲線である。
その結果、実施例1に係る分散液Aは、波長960nmに第1の吸収ピーク、波長695nmに第2の吸収ピークを持つことが判明した。
(比較例1)
粒子形状を近似的に楕円体とみなしたときのアスペクト比[(長軸長さ)/(短軸長さ)]の値が、1.0以上1.2以下の球状六ホウ化ランタン微粒子の集合体(本明細書において「微粒子β」と記載する場合がある。)を準備した。
微粒子βは、六ホウ化ランタンの単一相である。
微粒子αの代替として微粒子βを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1にかかる六ホウ化ランタン粒子の分散液(本明細書において「分散液B」と記載する場合がある)を得た。
得られた分散液B中における微粒子βの平均分散粒子径を測定したところ、29nmであった。
次に、実施例1と同様の操作を行って、比較例1に係る分散液Bの光学的特性を測定した。その結果、比較例1に係る分散液Bは、波長760nmに吸収ピークを持ち、波長800nmから1400nmの範囲に吸収ピークを持たなかった。
(まとめ)
実施例1に係る分散液Aは、波長695nmの吸光ピークに加えて、太陽光が高い重価係数を持つ近赤外線である波長955nmに吸収ピークを持ち、良好な日射遮蔽特性を発揮した。
これに対し、平均分散粒子径27nm、アスペクト比の値が1.0以上1.2以下の六ホウ化物微粒子を含有する比較例1に係る分散液Bは、波長760nmにのみ吸収のピークを持ち、波長800nmから1400nmの範囲に吸収ピークを持たなかった。すなわち、比較例1に係る分散液Bは、波長700nmから800nm付近の範囲に鋭い吸収を持つものの、波長800nmより長波長の範囲における近赤外光の吸収は弱い。従って、実施例1にかかる分散液Aと比較して、日射遮蔽特性に劣るものであることが判明した。

Claims (16)

  1. 六ホウ化物微粒子の集合体であって、
    前記集合体に含有される六ホウ化物微粒子の粒子形状を楕円体とみなし、前記楕円体の軸長をa、b、c(但し、a≧b≧c)とおいたとき、
    前記集合体に含有される微粒子のうち、
    (a+c)≧2bであり、かつ、アスペクト比[(長軸長さ)/(短軸長さ)=a/c]の値が1.2以上5.0以下である微粒子の個数割合が、60(個数)%以上100(個数)%以下であることを特徴とする六ホウ化物微粒子の集合体。
  2. 前記六ホウ化物微粒子の集合体に含有される六ホウ化物微粒子の平均分散粒子径が、1nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の六ホウ化物微粒子の集合体。
  3. 前記六ホウ化物微粒子が、六ホウ化ランタン微粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の六ホウ化物微粒子の集合体。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の六ホウ化物微粒子の集合体が、液状媒体中に分散して含有されている分散液であって、
    前記液状媒体とは、水、有機溶媒、油脂、液状樹脂、液状プラスチック用可塑剤、または、これらから選択された2種以上の混合物、から選択されたものであることを特徴とする六ホウ化物微粒子分散液。
  5. 前記六ホウ化物微粒子を、0.02質量%以上20質量%以下含有することを特徴とする請求項4に記載の六ホウ化物微粒子分散液。
  6. 請求項1から3のいずれかに記載の六ホウ化物微粒子の集合体が、熱可塑性樹脂またはUV硬化性樹脂中に分散して含有されていることを特徴とする六ホウ化物微粒子分散体。
  7. 前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール樹脂という樹脂群から選択される1種の樹脂、
    または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、
    または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体、のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の六ホウ化物微粒子分散体。
  8. 前記六ホウ化物微粒子を、0.001質量%以上80.0質量%以下含有することを特徴とする請求項6または7に記載の六ホウ化物微粒子分散体。
  9. 前記六ホウ化物微粒子分散体が、シート形状、ボード形状またはフィルム形状であることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の六ホウ化物微粒子分散体。
  10. 前記六ホウ化物微粒子分散体に含まれる単位投影面積あたりの前記六ホウ化物微粒子の含有量が、0.02g/m以上1.0g/m以下であることを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の六ホウ化物微粒子分散体。
  11. 複数枚の透明基材間に、請求項6から10のいずれかに記載の六ホウ化物微粒子分散体が存在していることを特徴とする六ホウ化物微粒子分散体合わせ透明基材。
  12. 透明フィルム基材または透明ガラス基材から選択される透明基材の少なくとも一方の面に、コーティング層として請求項6から10のいずれかに記載の六ホウ化物微粒子分散体が設けられていることを特徴とする赤外線吸収フィルムまたは赤外線吸収ガラス。
  13. 前記樹脂が、UV硬化性樹脂であることを特徴とする請求項12に記載の赤外線吸収フィルムまたは赤外線吸収ガラス。
  14. 前記コーティング層の厚さが10μm以下であることを特徴とする請求項12または13に記載の赤外線吸収フィルムまたは赤外線吸収ガラス。
  15. 前記透明フィルム基材が、ポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載の赤外線吸収フィルム。
  16. 前記コーティング層に含まれる、単位投影面積あたりの前記六ホウ化物微粒子の含有量が0.02g/m以上1.0g/m以下であることを特徴とする請求項12から15のいずれかに記載の赤外線吸収フィルムまたは赤外線吸収ガラス。
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