JP2017153967A - 運動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 運動負荷が小さい状態でも呼吸循環代謝に関して大きな運動効果が得られる運動装置を提供する。【解決手段】 本発明に係る運動装置1は、使用者Uに所定の下肢の運動を行わせる運動器具2と、使用者Uが運動する位置に対応させて設けられた開口部12を有し、少なくとも使用者Uの下半身を覆うカバー10と、開口部12を封止するシール部材20と、カバー10内の空気を加温する加温装置30とを備え、カバー10は、断熱性を有する。【選択図】 図1

Description

本発明は、運動装置に関し、特に加温状態で運動することができる運動装置に関するものである。
従来から、下肢の筋力増強または心肺機能の向上のために、有酸素運動が有効であることが知られている。また、有酸素運動が行える運動器具として、例えば特許文献1に示されるようなウォーキング運動を行うためのトレッドミル、サイクリング運動を行うためのエルゴメータ等が知られている。
米国特許第5133339号
一般に運動は筋肉の収縮(筋収縮)によって起こる。筋収縮に直接関わっている物質は、アデノシン三リン酸(ATP)であり、ATPの生成に大きく関与している物質は、酸素である。速く歩く、重い物を持ち上げる等、運動強度が高くなるにしたがって、動員される筋繊維(神経筋単位)の数が増え、筋細胞におけるATP消費量が増大するとともに、ATP消費量の増大に伴って、酸素需要も高まる。呼吸器から筋細胞まで種々の因子によって酸素が輸送されるが、酸素が最終的に血液によって筋細胞へと運ばれることから、運搬される酸素の量は基本的に心臓が送り出す血液の量(心拍出量)に依存すると考えられる。このように、運動時には運動強度に応じて呼吸循環系の亢進が起こっている。
しかしながら、例えば、肥満により下肢筋力が自重による運動を行うには不足である者、下肢の障害もしくは手術による一時的な機能不全を有する者、加齢もしくは慢性疾患によるサルコペニアを来して下肢筋力が低下した者、または、心臓疾患等により心機能が低下した者等は、大きな運動負荷をかけて運動することはできず、単に特許文献1に示されるような運動器具を使用して運動したのでは、呼吸循環系の亢進を起こさせるような十分な運動を行えないという問題が生じていた。その結果、有効な下肢の筋力増強または心肺機能の向上が成し得ないという問題も生じていた。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、運動負荷が小さい状態でも呼吸循環代謝に関して大きな運動効果が得られる運動装置を提供する。
本発明に係る運動装置は、使用者に所定の下肢の運動を行わせる運動器具と、使用者が運動する位置に対応させて設けられた開口部を有し、少なくとも使用者の下半身を覆うカバーと、開口部を封止するシール部材と、カバー内の空気を加温する加温装置とを備える。カバーは、断熱性を有している。
本発明の運動装置は、カバー内の空気を加温する加温装置を備えている。使用者は、運動時にカバー内に下半身を挿入して運動するため、下半身が温められて下半身の体温が上昇する。血液は身体全体を循環しているので、下半身の体温が上昇することで、深部体温(核心温)が上昇する。一方、体温調節中枢は、上昇した体温を下げようとして発汗を促し、結果、呼吸循環系が亢進する。このように、深部体温を上昇させることで呼吸循環系
が亢進するため、小さい運動負荷でも呼吸循環代謝に関して大きな運動効果が得られる。
好ましい実施形態においては、運動装置は、カバー内の圧力を調整する圧力調整装置をさらに備え、カバーは、気密性を有するとともに、シール部材は、カバー内を気密に封止する。
このような構成とすることで、カバー内を加圧することができる。カバー内が加圧されると、使用者に対して下から持ち上げる力、つまり浮力がかかり、浮力によって使用者の下肢に掛かる体重を軽くする、つまり、使用者の体重を免荷することができる。そのため、下肢の筋力低下により自身の体重(自重)を支えることができない者でも運動を行うことができる。
また、好ましい実施形態においては、カバーは、断熱シートと気密シートとの二重シートにより構成されている。
また、好ましい実施形態においては、運動装置は、カバー内に送風機をさらに備える。
このような構成とすることで、カバー内の空気を循環することができ、発汗による蒸れに伴う不快感を低減させることができる。
本発明に係る運動装置によれば、運動負荷が小さい状態でも呼吸循環代謝に関して大きな運動効果を得ることができる。
本発明の運動装置の一実施形態を示す一部分を断面で示した側面図である。 図1の運動装置の側面図である。 図1の運動装置のカバーを縮めた時の側面図である。 図1の運動装置のシール部材付近を拡大して示す断面図である。 図4のA部を拡大して示す断面図である。 図1の運動装置のシール部材の斜視図である。 図1の運動装置の加温装置の制御の流れを示すブロック図である。 鼓膜温の比較図である。 心拍数の比較図である。 酸素摂取量の比較図である。 心拍出量の比較図である。 呼吸数の比較図である。 本発明の運動装置の他の実施形態を示す一部分を断面で示した側面図である。
以下、本発明に係る運動装置の一実施形態について添付図面を参照して説明する。図1に示すように、運動装置1は、運動器具2と、運動器具2および使用者Uの下半身を覆い、使用者Uが出入可能な開口部12を有するカバー10と、開口部12を封止するシール部材20と、加温装置30と、圧力調整装置40とを備えている。以下では、運動器具2を使用する使用者Uが向く方向を前方向として、前後左右方向を定義する。
運動器具2には、一般に市販されている種々のトレッドミルが使用される。この運動器具2は、台座3上に配置されている。台座3は、運動器具2を配置するのに十分な大きさを有しており、運動器具2上で使用者Uが運動を行った場合でも耐え得るように形成され
ている。台座3には、折畳み可能な脚4及びキャスター5が取り付けられてもよい。これにより、運動装置1を使用するときには、脚4を伸ばして台座3が動かないように固定することができ、運動装置1を移動させたい場合は、脚4を折畳むことで、キャスター5を使用して任意の場所に移動させることができる。
次に、図1〜図5を参照して、カバー10について説明する。カバー10は、端部が台座3の外周端に取り付けられ、袋状に形成されている。このカバー10は、運動器具2と使用者Uの下半身とを覆うことができる大きさとなっている。
カバー10は、断熱性を有する断熱シート101と、気密性を有する気密シート102との二重シートにより構成されている(図5参照)。断熱シート101と気密シート102とは、いずれが内側でも外側でもよいが、本実施形態では、断熱シート101の外面が気密シート102で覆われている。断熱シート101としては、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート等からなるシートを使用することができる。気密シート102としては、例えば、ナイロン、ビニロン、ポリエステルターポリン等からなるシートを使用することができる。断熱シート101および気密シート102には、透明なシート、半透明なシートまたは不透明なシートを使用することができる。半透明なシートまたは不透明なシートを使用する場合には、前後左右の一部に透明なシートで形成された透明窓11を設けることが好ましい。これにより、外部からトレーナーが使用者Uの運動状態を把握することができる。
カバー10の上端部には、使用者Uが運動器具2で運動する位置に対応する位置に、使用者Uの下半身が出入可能な大きさの円形状の開口部12が形成されている。開口部12の内周端には、所定の幅を有し、かつ、剛性の高い材料からなる係合リング13が取り付けられている。係合リング13は、内径が開口部12より小さく、かつ、外径が開口部12より大きい平板リング状を呈している。係合リング13の内周端部には、下方よりの位置に、断面略円形状の保護リング14が取り付けられている。また、係合リング13の外周側には、カバー10の内部に突出し、板材を下側の径が小さい円錐台形状に湾曲させて形成された環状のストッパー15が全周にわたって取り付けられている。
カバー10の開口部12の左右両側には、図2に示すように、カバー10を上下に伸縮させるための一対のレバー16,16が取り付けられている。各レバー16は、台座3の左右両側部に取り付けられた一対のスライドバー6,6に上下動可能に支持されており、スライドバー6,6に沿って上下に移動し、任意の高さでスライドバー6,6上に保持される。これにより、使用者Uの身長にかかわらず、使用者Uの腰部あたりにカバー10の上端を位置させることができる。また、使用者Uが運動装置1を使用する際には、図3に示すように、レバー16,16をスライドバー6,6の下端付近まで下げてカバー10を下方に圧縮することができ、これにより、使用者Uは、容易に開口部12を介してカバー10内に入ることができる。
シール部材20は、使用者Uがカバー10内に入った状態で開口部12を気密に封止することができれば、既知の任意のシール手段を採用することができる。本実施形態では、図4〜図6に示すように、シール部材20は、運動装置1の使用に際して、予め使用者Uに装着されるものであり、パンツ21、パンツ21と一体に設けられるフランジ22、および、フランジ22の外周端に取り付けられるチューブ23を備えている。パンツ21には、伸縮性や弾性に優れた素材が使用されている。装着時のフィット感を高めるためには、ウエットスーツ等に用いられるクロロプレンゴム等の合成ゴムからなる素材が使用されるのが好ましい。
フランジ22は、係合リング13の内径より大きく、かつ、ストッパー15の取り付け
位置よりも小さい平板リング状を呈しており、パンツ21の腰部の周りにパンツ21と一体に設けられている。フランジ22は、例えば、ジャージ素材にクロロブレンゴムを重ね合わせたもの、フラットスキン等のようなウエットスーツに一般的に用いられる断熱熱性および気密性のある素材が使用されている。フランジ22は、圧力調整装置40によってカバー10内が加圧されたとしても耐え得るように、上記素材からなる生地を複数枚重ねて形成されている。
チューブ23は、フランジ22の外径と略同等の大きさの環状に形成されており、フランジ22の下面の外周端に全周にわたって取り付けられている。このチューブ23は、例えばポリウレタン等の弾性のある素材で形成されている。
加温装置30は、カバー10内の空気を加温するための装置で、図1〜図3に示すように、カバー10内に設けられている。加温装置30には、セラミックファンヒータ、ガスファンヒータ、石油ファンヒータ、輻射式セラミックヒータ、パネルヒータ、温風機、ヒートポンプ式温風機等の暖房器具として既知の任意の加温装置を使用することができる。カバー10内に挿入される使用者Uの下半身の体温を効率よく上昇させるためには、加温された空気がカバー10内を対流することが好ましいため、加温装置30は、セラミックファンヒータ、ガスファンヒータ、石油ファンヒータ、温風機、ヒートポンプ式温風機等の温風を送り出す機能を有しているものが好ましい。
圧力調整装置40は、カバー10内の圧力を調整するもので、例えばブロア等の送風機からなり、送風管41を備えている。カバー10の前方には送風口17が形成されており、送風管41を送風口17に差し込んで取り付けることで、圧力調整装置40はカバー10の内部と連通されている。圧力調整装置40を使用し、カバー10の外側の空気を吸気し、その空気を、送風管41を介して送風口17からカバー10内に送り込むことによって、カバー10内の圧力が高められる。一方、カバー10の後方には開閉可能な排気口18が形成されており、排気口18には排気管19が連通されている。カバー10内の圧力を下げる場合は、排気口18を開放し、排気管19を介して排気口18からカバー10内の空気を排気することで、カバー10内の圧力が下げられる。これにより、カバー10内の圧力を調整する。
また、カバー10内には、例えば運動器具2の前方に設けられるカバー内に、送風機50が配置されている。この送風機50は、カバー10内の空気を吸気し、使用者Uに対して前方から風を当てることができる。その風は、カバー10の後方に設けられている排気口18から排気管19を介して排気され、これにより、カバー10内を循環する空気の流れが発生する。運動装置1による運動の際には、カバー10内がシール部材20により気密にされ、かつ、カバー10内の空気が加温されているため、使用者Uのウォーキング運動に伴う発汗によりカバー10内の湿度が上昇し、カバー10内が蒸れることがしばしばある。しかしながら、カバー10に送風機50を設け、カバー10内の空気を循環させるとともに、排気口18からカバー10内の湿気を排出することにより、カバー10内の湿度の上昇および蒸れによる不快感を解消することができる。また、送風機50からの風は、使用者Uの下肢に直接当るため、使用者Uの下半身部、特に下肢を冷却することができる。
図7に示すように、運動装置1には、加温装置30、運動器具2および圧力調整装置40を制御するための制御装置60を設けることもできる。制御装置60は、使用者Uの深部体温および心拍数を測定し、使用者Uに適した深部体温または目標心拍数となるように加温装置30、運動器具2および圧力調整装置40を制御している。例えば、制御装置60は、深部体温が適温より高い場合には加温装置30を弱め、深部体温が適温より低い場合には加温装置30を強める制御を行っている。また、制御装置60は、心拍数が目標心
拍数より多い場合は、運動器具2(トレッドミル)の傾斜を緩くしたり、速度を落としたり、圧力調整装置40を強めて免荷率を大きくしたりする制御を行い、運動負荷を下げている。逆に、心拍数が目標心拍数より少ない場合は、制御装置60は、運動器具2(トレッドミル)の傾斜を急にしたり、速度を速めたり、圧力調整装置40を弱めて免荷率を小さくしたりする制御を行い、運動負荷を上げている。
次に、運動装置1の使用方法について説明する。まず、使用者Uは、フランジ22の中央開口から両脚を挿入してパンツ21を穿くことで、フランジ22を使用者Uの腰部に位置させる。そして、図3に示すように、レバー16を下げ、カバー10の上端を台座3付近まで下げる。その後、使用者Uは開口部12を介してカバー10内に入り、レバー16を上昇させてカバー10の上端を腰部まで上げて固定する。
その状態で、使用者Uはチューブ23を撓めて縮径させることで、開口部12を通過させてカバー10内にフランジ22を入れる。チューブ23は弾性のある素材で形成されているため、チューブ23の弾性による復元力によりフランジ22がカバー10内に広げられる。このとき、運動装置1がストッパー15を備えているため、チューブ23は、ストッパー15に当たる位置で止まり、ストッパー15の内方に配置される。これにより、外周端にチューブ23を備えるフランジ22もストッパー15の内方に位置決めされる。フランジ22の外径が係合リング13の内径より大きいため、フランジ22の外周端に取り付けられたチューブ23は係合リング13と係合し、フランジ22が開口部12を覆う所定の位置に保持される。
その後、使用者Uは、手元の操作パネル(図示せず)を操作して、加温装置30および圧力調整装置40を作動させ、カバー10内の空気を加温するとともに、カバー10内の圧力を高める。カバー10内の圧力が高まると、図5の矢印Bに示すように、フランジ22に内圧が掛かってフランジ22が膨らみ、係合リング13に押し付けられると同時に、フランジ22は、保護リング14とぴったりとくっつく。係合リング13が剛性の高い材料で形成されているため、フランジ22と係合リング13および保護リング14とが密接して、開口部12が気密に閉じられる。このとき、係合リング13の内周端に取り付けられた保護リング14により、剛性の高い係合リング13の内周端がフランジ22の生地に接触してフランジ22が傷つくことが防止されている。
カバー10内の圧力が高まると、使用者Uに浮力がかかり、使用者Uの体重が免荷された状態となる。一方、加温装置30により加温された空気は、対流して使用者Uの下半身を温め、使用者Uの下半身全体の体温を上昇させる。下半身で上昇した体温は、血液を介して全体へ巡り、深部体温を上昇させる。これにより、深部体温が上昇し、体重が免荷された状態で使用者Uは運動することができる。
次に、被験者に対してウォーキング運動を行わせ、体重を免荷した影響およびカバー10内を加温した影響を検証した。
実施例1では、体重を50%免荷し、かつ、カバー10内の空気の温度を60℃に加熱した。実施例2では、体重を免荷せず(実験装置の都合上、実質は体重を5%免荷している。)、かつ、カバー10内の空気の温度を60℃に加熱した。一方、比較例1では、体重を免荷せず、かつ、カバー10内の空気を加温しなかった。比較例2では、体重を50%免荷し、かつ、カバー10内の空気を加温しなかった。
実施例1、実施例2、比較例1および比較例2の免荷および加温条件で被験者が6km/hの速度でウォーキング運動を行い、呼吸循環代謝の指標となる鼓膜温、心拍数、酸素摂取量、心拍出量および呼吸数を計測した。鼓膜温は、生体情報モニタ(オムロン株式会
社、HBP-2070)、および、鼓膜温プローブ(ニプロ株式会社、右耳用ニプロCEサーモCET-001)を用いて計測した。心拍数は、生体情報モニタ(オムロン株式会社、HBP-2070)を
用いて計測した。酸素摂取量は、呼気ガス分析装置(ミナト医科学株式会社、AE-300S)
を用いて計測した。心拍出量は、非侵襲インピーダンス式心拍出量計(マナテック社、フィジオフローLab-1)を用いて計測した。呼吸数は、呼気ガス分析装置(ミナト医科学株
式会社、AE-300S)を用いて計測した。
図8に鼓膜温、図9に心拍数、図10に酸素摂取量、図11に心拍出量、図12に呼吸数の計測結果を示している。横軸は、時間(min)を示している。
図8〜図12に示されるように、免荷の有無にかかわらず、加温することで、鼓膜温、心拍数、酸素摂取量、心拍出量および呼吸数が概ね増大している。また、実施例1と比較例1とを比較しても、実施例1では、鼓膜温、心拍数、酸素摂取量、心拍出量および呼吸数が、比較例1と略同等か概ね増大している。このことから、体重を免化して運動負荷を低減させた状態でも、加温した状態で運動することで、自重がかかった状態で運動した場合と同等またはそれ以上の呼吸循環代謝応答が得られたことが分かる。
以上のように、本実施形態の運動装置1は、カバー10内の空気を加温する加温装置30を備えている。使用者Uは、運動時にカバー10内に下半身を挿入して運動するため、下半身が温められて下半身の体温が上昇する。血液は身体全体を循環しているので、下半身の体温が上昇することで、深部体温が上昇する。一方、体温調節中枢は、上昇した体温を下げようとして発汗を促し、結果、呼吸循環系が亢進する。このように、深部体温を上昇させることで呼吸循環系が亢進するため、小さい運動負荷でも呼吸循環代謝に関して大きな運動効果が得られる。一方で、本実施形態の運動装置1では、上半身はカバー10の外部に露出しており、周囲の空気が加温されていないため、上半身が過度に熱く感じることがなく、使用者Uは快適に運動を行うことができる。
さらに、本実施形態の運動装置1は、カバー10内の圧力を調整する圧力調整装置40を備えることで、カバー10内を加圧することができる。カバー10内が加圧されると、使用者Uに対して下から持ち上げる力、つまり浮力がかかり、浮力によって、使用者Uの下肢に掛かる体重を軽くする、つまり、体重を免荷することができる。そのため、肥満により下肢筋力が自重による運動を行うには不足である者、下肢の障害もしくは手術による一時的な機能不全を有する者、加齢もしくは慢性疾患によるサルコペニアを来して下肢筋力が低下した者でも運動を行うことができる。
また、本実施形態の運動装置1は、使用者Uの腰部にシール部材20を取り付けるため、使用者Uの腰部で体幹が固定されることとなり、立位姿勢を保持しやすくすることができ、バランス能が低い者での運動することができる。
また、カバー10内に送風機50を設け、カバー10に排気口18を設けることで、カバー10内の空気を循環させるとともに、カバー10内の湿気を排出することができる。これにより、運動を行う使用者Uの発汗によりカバー10内が蒸れたとしても、それによる不快感を除去することができる。
本発明は、上記のような運動装置1であるため、第1に、肥満があり下肢筋力が自重による運動を行うには不足である者に効果的な運動を行わせることができる。つまり、肥満の治療には継続的な有酸素性運動が必須であり、しかも消費エネルギー量が大きい(ATP需要量が大きい)方が有用である。しかし、通常であれば、体重を支える筋力が伴わず、有効な運動療法の確保が困難である上、無理に運動すれば、重すぎる自重のために膝関節等の運動器に障害が起こる危険性もある。しかしながら、本発明の運動装置1を用いる
ことで、徐々に脂肪を燃焼して減量を進め、ある程度減量が達成された後は徐々に免荷を解除してウォーキングを行う事で、下肢の筋力も獲得して行くことができる。
第2に、下肢の傷害または手術による一時的な機能不全を有する者でも、自身の体重を免荷して運動することができるので、早期にリハビリを開始することができる。特に、できる限り早い時期のスポーツ復帰を希望するアスリート等にとっては、練習を休めば休むほど心肺持久力も低下するが、早期にリハビリを開始することで、体力をなるべく落とさずに済むという効果が期待できる。
第3に、加齢または慢性疾患によるサルコペニアを来した者にも効果的な運動を行わせることができる。つまり、サルコペニアを来した者は、下肢筋力の衰えから自重による運動耐容能が低下し、有効な有酸素性運動ができないばかりか運動器に傷害を抱える、あるいは運動器に容易に傷害を来たす恐れがある。このような者は運動習慣もない者が多いため、いきなり強度の高い運動を行うことはできない。しかしながら、本発明の運動装置1を用いることで、徐々に呼吸循環系に働きかける運動ができ、体を慣らしながら徐々に免荷を解除して心肺持久力と共に筋肉量を増大し、日常生活動作を高めていくことができる。
第4に、末梢動脈疾患(PAD)患者にも近年初期治療として推奨されている監視下運動療法を行わせることができる。つまり、一般にPAD患者は重症度に応じた歩行時の虚血症状を呈するが、運動プロラムとしては歩行運動が最適であり、最大の運動効果は、虚血症状(跛行痛)のためほとんど歩けなくなるまで継続した場合に得られると言われている。一方で、PADの運動療法は、跛行痛のためほとんど歩けなくなるような運動を行わせるという厳しさから、継続できないことが多くある。またPADでは糖尿病、高脂血症、高血圧症、動脈硬化症、脳心血管障害など生活習慣病の併存率が極めて高く、これらの治療またはコントロールに対しても運動療法は有用である。そこで、本発明の運動装置1を用いることで、体重を免荷する事により下肢の虚血症状が惹起されにくいため歩行運動が長く継続されるとともに、加温により全身の血流が増大する事から、虚血肢の血流改善の効果が期待できる。
第5に、心臓リハビリテーションとして運動療法を採用することができる。つまり、心疾患を患った患者は、下肢の運動器の機能も低下するため、目標心拍数に至る有酸素性運動が実現できない場合もある。しかしながら、本発明の運動装置1を用いることで、自重による有酸素性運動に比べ早期に目標心拍数を達成でき、心拍出量や酸素摂取量の増大、動静脈の拡張による血管抵抗の低下や温熱による発汗等蒸発が亢進から、血管内皮機能や末梢循環、末梢における酸素利用能等の改善、心臓に対する前負荷・後負荷の軽減等の効果を期待することができる。
第6に、脳血管障害、小脳疾患、前提機能障害、パーキンソン病等の神経系疾患でみられる、運動失調、つまり、四肢および体幹の随意運動を調節する機能障害のリハビリテーションにも有効である。すなわち、このような神経系疾患を有する者は、真っすぐ歩けない、バランス能が低い、歩行動作をコントロール出来ないといった症状の見られる患者が多いが、本発明の運動装置1を用いることで、体幹を固定することができるため、効率よく運動療法を行うことができる。
第7に、慢性腎不全で体重(特に水分)コントロールが困難な者に対しても、本発明の運動装置1を用いることで、温熱による発汗等蒸発の亢進のため、体重コントロール、うっ血または浮腫の改善の効果を得ることができる。
このように、本発明の運動装置1を用いることで、運動耐容能の低い使用者Uの運動器
に負担を掛けず、運動強度は低いが呼吸循環代謝応答を確保しながら運動療法を開始し、運動耐容能増加に応じて徐々に免荷率を下げて、最終的には大気圧での身体活動能を獲得することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、カバー10は運動器具2の全体と使用者Uの下半身を覆うように構成されているが、必ずしもこの形態に限られない。例えば、運動器具2に把持部または座席部が付いているような場合には、使用者Uが下肢によって運動器具2を操作する動作部位のみがカバー10内に設けられ、把持部または座席部の一部をカバー10外に露出させるようにカバー10を構成することもできる。この場合、カバー10は、把持部または座席部の外部に飛び出る部分に対応する位置にも開口部が設けられており、この開口部に、カバー10内の断熱性および気密性が保てるように、既知の任意のシール部材が設けられる。また、使用者Uの下半身のみでなく、使用者Uの腹部まで、または使用者Uの胸部までも覆うようにカバー10を構成することもできる。
また、上記実施形態では、カバー10は断熱シート101と気密シート102とにより袋状に形成されているが、必ずしも袋状でなくてもよい。例えば、断熱性および気密性を有するプラスチック板を組み合わせ、所定の形態を保持できるカバーとすることもできる。この場合、カバー10が剛性を有するため、係合リング13は設けられなくてもよい。
また、上記実施形態では、カバー10は断熱性および気密性を有しているが、例えば、カバー内の圧力を調整する必要がない場合には、カバー10は断熱シート101のみで形成され、断熱性のみを備える構成とすることができる。
また、上記実施形態では、開口部12およびフランジ22の形状を、円形状としているが、開口部12およびフランジ22の形状は、円形状に限られず、楕円形状、矩形状、多角形状等の種々の形状とすることができる。このとき、係合リング13は、開口部12と相似の形状に形成され、保護リング14およびストッパー15、ならびに、チューブ23は、それぞれ係合リング13およびフランジ22の形状に沿うように全周にわたって設けられる。また、必ずしも開口部12とフランジ22とは相似形状である必要もなく、フランジ22が開口部12の内周端に取り付けられる係合リング13と密接できるように形成され、十分な気密性を保てるものであればよい。
また、上記実施形態では、係合リング13の内周端部に保護リング14を設け、係合リング13の外周側にストッパー15を設けているが、保護リング14およびストッパー15は必ずしも必要ではない。例えば、フランジ22と係合リング13とで開口部12の気密性が十分に保たれ、かつ、フランジ22が係合リング13により傷つけられる恐れがない場合には、保護リング14を設ける必要はない。また、係合リング13の内周端を剛性の低い材料で覆うことで、フランジ22を保護することもできる。また、ストッパー15は必ずしも係合リング13の全周にわたって設けられる必要はなく、係合リング13の周方向の一部分にのみ設けてもよいし、フランジ22が係合リング13から抜け出る恐れがなければ、ストッパー15を設けなくてもよい。
また、上記実施形態では、外部に設けた圧力調整装置40により、カバー10内の圧力を調整し、送風機50により、カバー10内の空気を循環させているが、必ずしも、図1の実施形態には限られない。例えば、圧力調整装置40を、台座3の内部に設け、台座3の側面から外気を吸気し、台座3の上面からカバー10内に空気を挿入してもよい。これにより、運動装置1をよりコンパクトにすることができる。さらに、送風機50は、必ず
しも設ける必要はなく、圧力調整装置40が送風機50の機能を兼ね備えてもよい。
また、上記実施形態では、カバー10を上下に伸縮させるために、一対のレバー16,16をカバー10の開口部12の左右両側に設けたが、例えば、カバー10の開口部12の前方又は後方に、一本の棒状のレバーを設けてもよい。このレバーの左右両端は、一対のスライドバー6,6に、それぞれ上下可能に支持されている。このようにレバーを設けることで、カバー10の伸縮に際して左右のレバー16,16を同時に操作する必要はなく、一本のレバーを操作するだけで、容易にカバー10を伸縮させることができる。
また、上記実施形態では、運動器具2としてウォーキング運動を行うためのトレッドミルを使用しているが、このトレッドミルは、傾斜機構を備えるものでもよいし、傾斜機構を備えないものでもよい。また、運動器具2はトレッドミルに限られず、例えば、図13に示すように、運動器具2として、サイクリング運動を行うためのエルゴメータを使用することもできる。この場合には、一対のスライドバー6,6の上端部を架け渡すように把持部7を設け、使用者Uは把持部7を握ってサイクリング運動を行うようにすることもできる。その他にも、階段の昇降運動を行うことができるステッパーを始め、レッグプレス、レッグエクステンション等、使用者が所定の下肢の運動を行うことができる種々の運動器具2を使用することもできる。
1 運動装置
2 運動器具
10 カバー
101 断熱シート
102 気密シート
12 開口部
20 シール部材
30 加温装置
40 圧力調整装置
50 送風機
U 使用者

Claims (4)

  1. 使用者に所定の下肢の運動を行わせる運動器具と、
    使用者が運動する位置に対応させて設けられた開口部を有し、少なくとも使用者の下半身を覆うカバーと、
    前記開口部を封止するシール部材と、
    前記カバー内の空気を加温する加温装置と、を備え、
    前記カバーは、断熱性を有する運動装置。
  2. 前記カバー内の圧力を調整する圧力調整装置をさらに備え、
    前記カバーは、気密性を有し、
    前記シール部材は、前記カバー内を気密に封止する請求項1に記載の運動装置。
  3. 前記カバーは、断熱シートと気密シートとの二重シートにより構成されている請求項2に記載の運動装置。
  4. 前記カバー内に送風機をさらに備える請求項1〜3のいずれかに記載の運動装置。
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