以下、本実施形態の系統連系制御装置10を図面に基づいて説明する。なお、図面は、概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
<系統連系制御装置10の構成>
図1に示すように、本実施形態の系統連系制御装置10は、直流電源11、コンバータ12、コンデンサ13、インバータ14、検出器15および制御装置16を備えている。また、検出器15は、直流電圧検出器15a、出力電流検出器15bおよび系統電圧検出器15cを備えている。
直流電源11は、直流電力を出力する。直流電源11は、直流電力を出力することができれば良く、限定されない。本実施形態では、直流電源11として燃料電池を用いる。燃料電池は、燃料と酸化剤ガスとによって発電する発電装置であり、種々の燃料電池(例えば、公知の固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)など)を用いることができる。また、直流電源11は、燃料電池以外の発電装置(例えば、太陽光発電装置)を用いることもできる。さらに、直流電源11は、ガスエンジン発電機などを用いることもできる。直流電源11としてガスエンジン発電機を用いる場合、交流発電機が出力する交流電力をダイオードブリッジ等の公知の平滑回路で整流して、直流電力を生成することができる。同図に示すように、直流電源11は、出力側端子11a,11bを備えている。出力側端子11aは、直流電源11の正極(+)に接続されており、出力側端子11bは、直流電源11の負極(−)に接続されている。また、直流電源11の出力状態(出力電力等の情報)は、後述する制御装置16に送信される。
コンバータ12は、直流電源11から出力された直流電力を昇圧して、インバータ14に出力する。コンバータ12は、入力側端子12a,12bおよび出力側端子12c,12dを備えている。直流電源11の出力側端子11aと、コンバータ12の入力側端子12aとの間には、電路17aが形成されている。また、直流電源11の出力側端子11bと、コンバータ12の入力側端子12bとの間には、電路17bが形成されている。直流電源11から出力された直流電力は、電路17a,17bを介してコンバータ12に入力される。そして、コンバータ12によって昇圧された直流電力は、出力側端子12c,12dから出力される。電路17a,17bは、例えば、公知の電力用電線を用いることができる。このことは、以降に示す電路についても同様である。
コンバータ12は、リアクトル12e、ダイオード12fおよびスイッチング素子12gを備えている。これらの素子は、公知の電力用デバイスを用いることができる。例えば、スイッチング素子12gは、公知の電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などを用いることができる。
コンバータ12の入力側端子12aと出力側端子12cとの間には、電路17cが形成されている。また、コンバータ12の入力側端子12bと出力側端子12dとの間には、電路17dが形成されている。電路17cには、入力側端子12a側から順に、リアクトル12e、ダイオード12fが設けられている。また、リアクトル12eとダイオード12fとの間の電路17cには、接続点12iが設けられており、接続点12iには、スイッチング素子12gのドレイン12g1が接続されている。スイッチング素子12gのソース12g2は、電路17dに設けられる接続点12jに接続されており、接続点12iと接続点12jとの間には、電路17eが形成されている。なお、スイッチング素子12gのゲート12g3は、駆動回路16eを介して、後述する制御装置16に接続されている。駆動回路16eは、公知のドライバ回路を用いることができる。コンバータ12は、直流電源11から出力された直流電力を昇圧することができれば良く、上述の構成に限定されるものではない。
コンバータ12の出力側端子12cと、インバータ14の入力側端子14aとの間には、電路17fが形成されている。また、コンバータ12の出力側端子12dと、インバータ14の入力側端子14bとの間には、電路17gが形成されている。電路17fと電路17gとの間には、コンデンサ13および直流電圧検出器15aが設けられている。
電路17fには、接続点13aが設けられており、接続点13aには、コンデンサ13の一端側(正極側)が接続されている。電路17gには、接続点13bが設けられており、接続点13bには、コンデンサ13の他端側(負極側)が接続されている。コンデンサ13は、公知の電解コンデンサを用いることができ、コンバータ12によって昇圧された直流電力のリップルを低減することができる。直流電圧検出器15aは、コンバータ12によって昇圧された直流電力の直流電圧を検出する。具体的には、直流電圧検出器15aは、インバータ14の入力側端子14a,14b間に印加される直流電圧を検出する。本明細書では、直流電圧検出器15aによって検出された検出値を直流電圧検出値という。
直流電圧検出器15aは、例えば、抵抗値が既知の複数の抵抗器によって電路17fと電路17gとの間の直流電圧を分圧して、分圧された電圧値に基づいてインバータ14の入力側端子14a,14b間に印加される直流電圧を検出することができる。具体的には、上述した抵抗器によって分圧された直流電圧は、制御装置16に入力される。そして、制御装置16は、公知のA/D変換器(図示略)などによって分圧された直流電圧を知得し、インバータ14の入力側端子14a,14b間に印加される直流電圧を算出することができる。
制御装置16は、出力電力の目標値に基づいて、コンバータ12を駆動させるスイッチング素子12gの制御信号であるパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)信号のデューティ比DFを決定する。制御装置16は、ドライバ回路である駆動回路16eを介して、当該デューティ比に基づくパルス信号をスイッチング素子12gのゲート12g3に付与する。例えば、スイッチング素子12gのゲート12g3に付与される電圧がハイレベル(所定電圧値を超えている状態)のときには、スイッチング素子12gのドレイン12g1とソース12g2との間が電気的に導通された閉状態になり、リアクトル12eに電磁エネルギーが蓄えられる。
スイッチング素子12gのゲート12g3に付与される電圧がローレベル(所定電圧値以下の状態)のときには、スイッチング素子12gのドレイン12g1とソース12g2との間が電気的に遮断された開状態になり、リアクトル12eに蓄えられた電磁エネルギーがコンデンサ13に充電されて、コンバータ12の出力電力は増大する。このようにして、制御装置16は、コンバータ12の出力電力を所望の電力値(出力電力の目標値)に制御することができる。
インバータ14は、コンバータ12によって昇圧された直流電力を交流電力に変換して系統電源20に接続されている負荷30に出力する。インバータ14は、入力側端子14a,14bおよび出力側端子14c,14dを備えている。インバータ14の出力側端子14cと、系統電源20の接続端子20aとの間には、電路21aが形成されている。また、インバータ14の出力側端子14dと、系統電源20の接続端子20bとの間には、電路21bが形成されている。インバータ14から出力された交流電力は、電路21a,21bを介して出力される。これにより、インバータ14から出力された交流電力は、負荷30に供給可能になっている。なお、系統電源20として、例えば、電力会社が保有する商用の配電線網から供給される交流電源が挙げられる。また、負荷30は、電力を駆動源とする負荷であり、例えば、家庭用電気機器(家電製品など)や産業用電気機器(ロボットなど)が挙げられる。
インバータ14は、複数(本実施形態では、4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14h)を備えている。第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hは、コンバータ12のスイッチング素子12gと同様に、公知の電界効果トランジスタ(FET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などを用いることができる。
図1に示すように、インバータ14の入力側端子14aと、第一スイッチング素子14eのドレイン14e1と、第三スイッチング素子14gのドレイン14g1との間には、電路17hが形成されている。また、インバータ14の入力側端子14bと、第二スイッチング素子14fのソース14f2と、第四スイッチング素子14hのソース14h2との間には、電路17iが形成されている。
第一スイッチング素子14eおよび第二スイッチング素子14fは、電路17hと電路17iとの間において直列接続されており、第一スイッチング素子14eのソース14e2と、第二スイッチング素子14fのドレイン14f1との間には、電路17jが形成されている。また、第三スイッチング素子14gおよび第四スイッチング素子14hは、電路17hと電路17iとの間において直列接続されており、第三スイッチング素子14gのソース14g2と、第四スイッチング素子14hのドレイン14h1との間には、電路17kが形成されている。つまり、直列接続された第一スイッチング素子14eおよび第二スイッチング素子14fと、直列接続された第三スイッチング素子14gおよび第四スイッチング素子14hとは、電路17hと電路17iとの間において並列接続されている。
電路17jには、接続点14iが設けられており、接続点14iと、インバータ14の出力側端子14cとの間には、電路17lが形成されている。また、電路17kには、接続点14jが設けられており、接続点14jとインバータ14の出力側端子14dとの間には、電路17mが形成されている。以上のようにして、第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hは、フルブリッジ接続されている。
第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hの各ゲート14e3〜14h3は、駆動回路16fを介して、制御装置16に接続されている。駆動回路16fは、公知のドライバ回路を用いることができる。第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hは、制御装置16から出力される駆動信号(開閉信号)に基づいて駆動制御される。
例えば、第一スイッチング素子14eのゲート14e3に付与される電圧がハイレベル(所定電圧値を超えている状態)のときには、第一スイッチング素子14eのドレイン14e1とソース14e2との間が電気的に導通された閉状態になる。一方、第一スイッチング素子14eのゲート14e3に付与される電圧がローレベル(所定電圧値以下の状態)のときには、第一スイッチング素子14eのドレイン14e1とソース14e2との間が電気的に遮断された開状態になる。以上のことは、第二スイッチング素子14f〜第四スイッチング素子14hについても同様である。制御装置16は、例えば、パルス幅変調(PWM)によりデューティ比を可変して、当該デューティ比に基づいて第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hを開閉制御することができる。
インバータ14は、第一スイッチング素子14eおよび第四スイッチング素子14hの両方が閉状態であり、かつ、第二スイッチング素子14fおよび第三スイッチング素子14gの両方が開状態である第一状態と、第一スイッチング素子14eおよび第四スイッチング素子14hの両方が開状態であり、かつ、第二スイッチング素子14fおよび第三スイッチング素子14gの両方が閉状態である第二状態とを交互に繰り返すことによって、インバータ14の入力側端子14a,14bから入力された直流電力を交流電力に変換することができる。
なお、インバータ14と負荷30との間には、公知のフィルタ回路を設けることができる。フィルタ回路は、例えば、公知のLC回路を用いることができる。これにより、インバータ14の出力側端子14c,14dから出力されるインバータ14の出力電流Ioutに含まれる高調波成分が低減され、インバータ14の出力電流Ioutが正弦波状に整形される。
出力電流検出器15bは、インバータ14の出力側端子14c,14dから出力される出力電流Ioutを検出する。本実施形態では、出力電流検出器15bは、電路21bに設けられている。本明細書では、出力電流検出器15bによって検出された検出値を出力電流検出値という。出力電流検出器15bは、公知の電流検出器(例えば、カレントトランスを使用した電流検出器)を用いることができる。
系統電圧検出器15cは、系統電圧Vs(電路21aと電路21bとの間の電圧)を検出する。本明細書では、系統電圧検出器15cによって検出された検出値を系統電圧検出値という。系統電圧検出器15cは、公知の電圧検出器を用いることができる。系統電圧検出器15cは、例えば、系統電圧Vsを変圧器によって降圧して、降圧された電圧値に基づいて、系統電圧Vsの電圧値、位相等を検出することができる。なお、検出器15は、直流電圧検出器15aを含む既述した検出器に限定されるものではなく、種々の検出器を備えることができる。
制御装置16には、検出器15の各検出値が入力される。本実施形態では、各検出値には、直流電圧検出器15aによって検出された直流電圧検出値と、出力電流検出器15bによって検出された出力電流検出値と、系統電圧検出器15cによって検出された系統電圧検出値とが含まれる。制御装置16は、入力された各検出値に基づいて、コンバータ12の1つまたは複数(本実施形態では、1つ)のスイッチング素子12gを駆動制御し、インバータ14の複数(本実施形態では、4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14h)を駆動制御する。
図2に示すように、制御装置16は、公知の中央演算装置16a、記憶装置16bおよび入出力インターフェース16cを備えており、これらは、バス16dを介して電気的に接続されている。制御装置16は、これらを用いて、種々の演算処理を行うことができ、外部機器との間で、入出力信号(駆動信号を含む)の授受を行うことができる。
中央演算装置16aは、CPU:Central Processing Unitであり、種々の演算処理を行うことができる。記憶装置16bは、第一記憶装置16b1および第二記憶装置16b2を備えている。第一記憶装置16b1は、読み出しおよび書き込み可能な揮発性の記憶装置(RAM:Random Access Memory)であり、第二記憶装置16b2は、読み出し専用の不揮発性の記憶装置(ROM:Read Only Memory)である。入出力インターフェース16cは、外部機器との間で、入出力信号(駆動信号を含む)の授受を行う。
例えば、中央演算装置16aは、第二記憶装置16b2に記憶されているインバータ14の駆動制御プログラムを第一記憶装置16b1に読み出して、当該駆動制御プログラムを実行する。中央演算装置16aは、当該駆動制御プログラムに基づいて、インバータ14の駆動信号(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hの開閉信号)を生成する。生成された駆動信号は、入出力インターフェース16cおよび駆動回路16fを介して、インバータ14の第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hの各ゲート14e3〜14h3に付与される。このようにして、インバータ14は、制御装置16によって駆動制御される。以上のことは、コンバータ12についても同様であり、コンバータ12は、制御装置16によって駆動制御される。
<系統連系制御装置10による制御>
図3に示すように、インバータ14の出力電流Ioutが一定になるように制御(定電流制御)されているときに、系統電源20の系統電圧Vsが低下して復帰する場合を想定する。図3は、参考形態に係り、系統電圧Vsおよびインバータ14の出力電流Ioutの経時変化の一例を示している。曲線L11は、系統電圧Vsの経時変化の一例を示している。縦軸は、電圧を示し、横軸は、時刻を示している。曲線L12は、出力電流Ioutの経時変化の一例を示している。縦軸は、電流を示し、横軸は、時刻を示している。
同図に示すように、時刻t11以前は、系統電源20の系統電圧Vsが移行前系統電圧値Vs0で一定であり、インバータ14の出力電流Ioutが移行前出力電流値Iout0で一定であるとする。このとき、インバータ14の入力電力Pinと、インバータ14の出力電力Poutとは、一致しているものとする。
時刻t11において、系統電源20の系統電圧Vsが、移行前系統電圧値Vs0から移行後系統電圧値Vs1へ低下する。これにより、インバータ14の出力電力Poutは、電圧低下前と比べて低下する。そのため、インバータ14の入力電力Pinは、インバータ14の出力電力Poutと比べて大きくなり、余剰電力が生じる。その結果、コンバータ12によって昇圧された直流電力の直流電圧Vdcは、電圧低下前と比べて増加し、インバータ14が停止する可能性がある。よって、系統電圧Vsが低下した際には、インバータ14の入力電力Pinを低下させる必要がある。
時刻t12において、系統電源20の系統電圧Vsが、移行後系統電圧値Vs1から移行前系統電圧値Vs0へ復帰する。系統電圧Vsの復帰により、インバータ14の出力電力Poutは、電圧復帰前と比べて増加する。そのため、系統電圧Vsの低下中にインバータ14の入力電力Pinと出力電力Poutとを一致させている場合、インバータ14の出力電力Poutは、インバータ14の入力電力Pinと比べて大きくなり、電力不足が生じる。その結果、コンバータ12によって昇圧された直流電力の直流電圧Vdcは、電圧復帰前と比べて低下する。直流電圧Vdcが低下すると、電圧復帰後にインバータ14の出力電力Poutを所定時間内に回復させることが困難になる。
また、系統電圧Vsの低下中に系統電圧Vsが中途半端に復帰した場合(例えば、系統電圧Vsが移行前系統電圧値Vs0より若干低い電圧レベルに復帰した場合など)、インバータ14の出力電力Poutが急増し、直流電圧Vdcが大きく低下する可能性がある。その結果、インバータ14の出力電流Ioutに歪みが生じて、家電製品へ悪影響を与える可能性がある。また、直流電圧Vdcの低下により、インバータ14が停止する可能性がある。
そこで、本実施形態の系統連系制御装置10は、系統電源20の系統電圧Vsが低下した際のインバータ14の入力電力Pinと出力電力Poutとの間のアンバランスを低減して、インバータ14の停止を回避する。図4に示すように、制御装置16は、制御ブロックとして捉えると、コンバータ制御部40とインバータ制御部50とを備えている。コンバータ制御部40は、第一デューティ比算出部41と、第二デューティ比算出部42と、第三デューティ比算出部43と、開閉信号生成部44とを備えている。インバータ制御部50は、第一出力電流目標値算出部51と、第二出力電流目標値算出部52と、開閉信号生成部53とを備えている。
(各制御部の構成)
コンバータ制御部40は、系統電圧正常状態から系統電圧低下状態への移行をしたときに、コンバータ12を駆動させるスイッチング素子12gの制御信号であるパルス幅変調信号のデューティ比DFを移行前と比べて低減させてインバータ14の入力電力Pinを低下させる。インバータ制御部50は、コンバータ制御部40がスイッチング素子12gのデューティ比DFを低減させるのと同時にインバータ14の出力電流Ioutを制御する。なお、系統電圧正常状態は、系統電圧検出器15cによって検出された系統電圧検出値が所定閾値(電圧閾値VT0)を超えている状態をいう。また、系統電圧低下状態は、系統電圧検出器15cによって検出された系統電圧検出値が所定閾値(電圧閾値VT0)以下に低下した状態をいう。電圧閾値VT0は、系統電圧Vsが正常であるか否かを判定する閾値(固定値)であり、例えば、正常時の系統電圧Vsに対して所定割合を乗じて算出し、予め設定しておくと良い。
本実施形態では、系統電圧正常状態から系統電圧低下状態への移行直後において、第一出力電流目標値算出部51がインバータ14の出力電流Ioutの目標値(第一出力電流目標値Iout_ref1)を算出し、第一デューティ比算出部41がスイッチング素子12gのデューティ比DF(第一デューティ比DF1)を算出する。また、系統電圧低下状態において、第二出力電流目標値算出部52がインバータ14の出力電流Ioutの目標値(第二出力電流目標値Iout_ref2(t))を算出し、第二デューティ比算出部42がスイッチング素子12gのデューティ比DF(第二デューティ比DF2(t))を算出する。さらに、系統電圧低下状態から系統電圧正常状態への復帰後において、第二出力電流目標値算出部52がインバータ14の出力電流Ioutの目標値(第二出力電流目標値Iout_ref2(t))を算出し、第三デューティ比算出部43がスイッチング素子12gのデューティ比DF(第三デューティ比DF3(t))を算出する。
開閉信号生成部53は、第一出力電流目標値算出部51または第二出力電流目標値算出部52によって算出されたインバータ14の出力電流Ioutの目標値に基づいて、インバータ14の駆動信号(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hの開閉信号)を生成する。開閉信号生成部44は、第一デューティ比算出部41、第二デューティ比算出部42または第三デューティ比算出部43によって算出されたデューティ比DFに基づいて、コンバータ12の駆動信号(スイッチング素子12gの開閉信号)を生成する。以下、各制御部について詳細に説明する。
第一出力電流目標値算出部51は、系統電圧正常状態から系統電圧低下状態に移行した直後のインバータ14の出力電流Ioutの目標値である第一出力電流目標値Iout_ref1を算出する。第一出力電流目標値Iout_ref1は、第一電流値Iout_ref11および第二電流値Iout_ref12のうちの小さい方が選択される。第一電流値Iout_ref11は、系統電圧正常状態から系統電圧低下状態に移行する直前の出力電流検出値をいう。第二電流値Iout_ref12は、下記数1に基づいて算出される電流値をいう。
但し、系統電圧低下状態から系統電圧正常状態に復帰した直後のインバータ14の出力電力Poutの上限値を出力電力上限値Pα2とする。既述したように、系統電圧Vsの復帰直後には直流電圧Vdcが低下する。出力電力上限値Pα2は、系統電圧Vsの復帰直後に生じる直流電圧Vdcの低下を抑制する規制値(固定値)であり、例えば、直流電源11の定格出力に対して所定割合を乗じて算出し、予め設定しておくと良い。また、系統電圧正常状態から系統電圧低下状態に移行する直前の系統電圧検出値を移行前系統電圧値Vs0とする。さらに、系統電圧正常状態から系統電圧低下状態に移行した直後の系統電圧検出値を移行後系統電圧値Vs1とする。このように、第二電流値Iout_ref12は、系統電圧Vsが復帰した直後のインバータ14の出力電力Poutの上限値(規制値)を考慮して算出される。
系統電圧Vsの低下度が大きい程(移行前系統電圧値Vs0と移行後系統電圧値Vs1との差が大きい程)、第二電流値Iout_ref12が小さくなるので、第一出力電流目標値Iout_ref1として第二電流値Iout_ref12が選択され易くなる。一方、系統電圧Vsの低下度が小さい程(移行前系統電圧値Vs0と移行後系統電圧値Vs1との差が小さい程)、第二電流値Iout_ref12が大きくなるので、第一出力電流目標値Iout_ref1として第一電流値Iout_ref11が選択され易くなる。このように、第一出力電流目標値算出部51は、系統電圧Vsの低下度に応じて、第一電流値Iout_ref11または第二電流値Iout_ref12を選択して、第一出力電流目標値Iout_ref1を算出することができる。
また、系統電圧Vsの低下度が大きい程、第一出力電流目標値Iout_ref1として第二電流値Iout_ref12が選択され易くなる。第二電流値Iout_ref12は、系統電圧Vsが復帰した直後のインバータ14の出力電力Poutの上限値である出力電力上限値Pα2を考慮して算出される。よって、第一出力電流目標値算出部51は、系統電圧Vsの低下度が大きいときに予めインバータ14の出力電流Ioutを低下させて、系統電圧Vsが復帰したときにインバータ14の入力電力Pinと出力電力Poutとの間の電力差が急増してしまうことを抑制することができる。
第一デューティ比算出部41は、系統電圧正常状態から系統電圧低下状態に移行した直後のデューティ比DFである第一デューティ比DF1を下記数2に基づいて算出する。
但し、系統電圧正常状態から系統電圧低下状態に移行する直前のデューティ比DFを移行前デューティ比DF0とする。また、第一出力電流目標値Iout_ref1、移行前系統電圧値Vs0および移行後系統電圧値Vs1は、第一出力電流目標値算出部51で既述したとおりである。数2に示すように、第一デューティ比算出部41は、第一出力電流目標値算出部51によって算出された第一出力電流目標値Iout_ref1および系統電圧Vsの低下度を用いて、第一デューティ比DF1を算出することができる。つまり、第一デューティ比算出部41は、インバータ14の出力電力Poutの低下度に合わせて、インバータ14の入力電力Pinを低下させることができる。よって、第一デューティ比算出部41は、系統電圧Vsが低下してインバータ14の出力電力Poutが低下したときに、インバータ14の入力電力Pinと出力電力Poutとの間のアンバランスを解消することができる。
第二出力電流目標値算出部52は、系統電圧正常状態から系統電圧低下状態へ移行後のインバータ14の出力電流Ioutの目標値である第二出力電流目標値Iout_ref2(t)を算出する。図4に示すように、第二出力電流目標値算出部52は、減算器52aと、PI制御部52bとを備えている。減算器52aには、直流電圧検出器15aによって検出された直流電圧検出値Vdc(t)と、直流電圧目標値Vdc0とが入力される。直流電圧検出値Vdc(t)は、時刻tのときの直流電圧検出値を示している。このように、直流電圧Vdcは、適宜、直流電圧検出値Vdc(t)で表す。このことは、他の変数についても同様とする。なお、直流電圧目標値Vdc0は、直流電圧Vdcの目標値であり、予め設定された固定値を用いることができる。
減算器52aは、直流電圧検出器15aによって検出された直流電圧検出値Vdc(t)から、直流電圧Vdcの目標値である直流電圧目標値Vdc0を減じて偏差ΔVdcを算出する。減算器52aによって算出された偏差ΔVdcは、PI制御部52bに入力される。本実施形態では、PI制御部52bは、直流電圧検出値Vdc(t)が直流電圧目標値Vdc0と一致するように、比例制御および積分制御を行う。PI制御部52bは、公知の比例演算器、積分演算器および加算器(いずれも図示略)を備えている。
比例演算器は、偏差ΔVdcに比例ゲインを乗じた演算結果を出力する。積分演算器は、偏差ΔVdcを積分した積分値に積分ゲインを乗じた演算結果を出力する。積分器の初期値として、第一出力電流目標値Iout_ref1が用いられる。加算器は、比例演算器の演算結果と、積分演算器の演算結果とを加算する。そして、PI制御部52bは、加算器の演算結果を第二出力電流目標値Iout_ref2(t)として出力する。なお、PI制御部52bは、偏差ΔVdcを微分した微分値に微分ゲインを乗じた演算結果を出力する微分演算器を備えることもできる。つまり、PI制御部52bは、比例制御、積分制御および微分制御を行うPID制御部とすることができる。この場合、加算器は、比例演算器の演算結果と、積分演算器の演算結果と、微分演算器の演算結果とを加算する。
このように、第二出力電流目標値算出部52は、比例制御(P制御)、積分制御(I制御)および微分制御(D制御)のうちの少なくとも比例制御(P制御)および積分制御(I制御)によって、系統電圧正常状態から系統電圧低下状態への移行後の第二出力電流目標値Iout_ref2(t)を算出することができる。なお、伝達関数G(s)は、G(s)=KP+KI×1/sで表すことができる。但し、KPは比例ゲインを示し、KIは積分ゲインを示し、sは、ラプラス演算子を示している。比例ゲインKPおよび積分ゲインKIは、図2に示す第二記憶装置16b2に記憶されている。これらの制御ゲインは、インバータ14の駆動制御プログラムとともに、起動時に第二記憶装置16b2から第一記憶装置16b1に読み出される。
比例ゲインKPを大きくする程、偏差ΔVdcを短時間に小さくすることができる。また、積分ゲインKIを大きくする程、偏差ΔVdcによるオフセット(定常偏差)を短時間に0にすることができる。さらに、微分ゲインを大きくする程、偏差ΔVdcの振動を短時間に収束することができ、外乱に対して強くなる。これらの制御ゲインは、例えば、シミュレーション、実機による調整などによって予め取得しておくと良い。
第二出力電流目標値算出部52は、直流電圧検出器15aによって検出された直流電圧検出値Vdc(t)が、直流電圧Vdcの目標値である直流電圧目標値Vdc0と一致するように、比例制御、積分制御および微分制御のうちの少なくとも比例制御および積分制御によって、系統電圧正常状態から系統電圧低下状態への移行後のインバータ14の出力電流Ioutの目標値である第二出力電流目標値Iout_ref2(t)を算出する。そのため、第二出力電流目標値算出部52は、系統電圧低下状態において、コンバータ12によって昇圧された直流電力の直流電圧Vdcの変動を低減することができる。
第二デューティ比算出部42は、系統電圧低下状態のスイッチング素子12gのデューティ比DFである第二デューティ比DF2(t)を算出する。図4に示すように、第二デューティ比算出部42は、入力電力目標値算出部42aと、入力電力算出部42bと、減算器42cと、PI制御部42dとを備えている。入力電力目標値算出部42aは、下記数3に基づいて、インバータ14の入力電力目標値Pin_ref(t)を算出する。
但し、時刻tのときの系統電圧検出値を系統電圧検出値Vs(t)で表すものとする。系統電圧検出値Vs(t)は、系統電圧Vsの実効値を示している。また、第一出力電流目標値Iout_ref1は、第一出力電流目標値算出部51で既述したとおりである。数3に示すように、入力電力目標値算出部42aは、系統電圧検出値Vs(t)の変動に合わせて、インバータ14の入力電力目標値Pin_ref(t)を算出することができる。
入力電力算出部42bは、時刻tのときのインバータ14の入力電力Pin(t)を算出する。インバータ14の入力電力Pin(t)は、例えば、直流電源11の出力電力から算出することができる。なお、インバータ14の入力電流を検出する入力電流検出器を設けても良い。この場合、入力電力算出部42bは、入力電流検出器によって検出されたインバータ14の入力電流検出値と、直流電圧検出値とを乗算して、インバータ14の入力電力Pin(t)を算出することができる。
減算器42cには、入力電力目標値算出部42aによって算出されたインバータ14の入力電力目標値Pin_ref(t)と、入力電力算出部42bによって算出されたインバータ14の入力電力Pin(t)とが入力される。減算器42cは、インバータ14の入力電力目標値Pin_ref(t)から、インバータ14の入力電力Pin(t)を減じて偏差ΔPinを算出する。減算器42cによって算出された偏差ΔPinは、PI制御部42dに入力される。本実施形態では、PI制御部42dは、インバータ14の入力電力Pin(t)がインバータ14の入力電力目標値Pin_ref(t)と一致するように、比例制御および積分制御を行う。PI制御部42dは、PI制御部52bと同様の比例演算器、積分演算器および加算器(いずれも図示略)を備えている。
比例演算器は、偏差ΔPinに比例ゲインを乗じた演算結果を出力する。積分演算器は、偏差ΔPinを積分した積分値に積分ゲインを乗じた演算結果を出力する。積分器の初期値として、第一デューティ比DF1が用いられる。加算器は、比例演算器の演算結果と、積分演算器の演算結果とを加算する。そして、PI制御部42dは、加算器の演算結果を第二デューティ比DF2(t)として出力する。なお、PI制御部42dは、偏差ΔPinを微分した微分値に微分ゲインを乗じた演算結果を出力する微分演算器を備えることもできる。つまり、PI制御部42dは、比例制御、積分制御および微分制御を行うPID制御部とすることができる。この場合、加算器は、比例演算器の演算結果と、積分演算器の演算結果と、微分演算器の演算結果とを加算する。
このように、第二デューティ比算出部42は、比例制御(P制御)、積分制御(I制御)および微分制御(D制御)のうちの少なくとも比例制御(P制御)および積分制御(I制御)によって、系統電圧低下状態のスイッチング素子12gのデューティ比DFである第二デューティ比DF2(t)を算出することができる。なお、比例ゲイン等の制御ゲインは、PI制御部52bの制御ゲインと同様の方法で取得し、PI制御部52bの制御ゲインと同様に取り扱うことができる。
第二デューティ比算出部42は、インバータ14の入力電力Pin(t)が、数3に基づいて算出される入力電力目標値Pin_ref(t)と一致するように、比例制御、積分制御および微分制御のうちの少なくとも比例制御および積分制御によって、系統電圧低下状態のスイッチング素子12gのデューティ比DFである第二デューティ比DF2(t)を算出する。そのため、第二デューティ比算出部42は、系統電圧低下状態において系統電圧Vsが変動した場合においても、系統電圧Vsの変動に合わせてインバータ14の入力電力Pinを制御することができる。
第三デューティ比算出部43は、電圧復帰制御中のスイッチング素子12gのデューティ比DFである第三デューティ比DF3(t)を算出する。電圧復帰制御は、系統電圧Vsが系統電圧低下状態から系統電圧正常状態に復帰した直後に行われる。第三デューティ比算出部43は、所定時間TH1内にインバータ14の出力電力Poutが所定電力(電力閾値PT0)まで回復するように、スイッチング素子12gのデューティ比DF(t)を増加させる。所定電力は、電圧復帰制御におけるインバータ14の出力電力Poutの目標値(固定値)であり、例えば、移行前出力電力Pout0に対して所定割合を乗じて算出し、予め設定しておくと良い。移行前出力電力Pout0は、系統電圧Vsが低下する直前のインバータ14の出力電力Poutをいう。
系統電圧Vsが低下する直前のスイッチング素子12gのデューティ比DFを移行前デューティ比DF0とする。また、系統電圧Vsが復帰する直前のスイッチング素子12gのデューティ比DFを復帰前デューティ比DF30とする。第三デューティ比算出部43は、移行前デューティ比DF0から復帰前デューティ比DF30を減じたデューティ比DFの差分ΔDF0を算出する。第三デューティ比算出部43は、デューティ比DFの差分ΔDF0に対して所定係数(上述した移行前出力電力Pout0に対する所定割合と同義)を乗じて、上述した所定時間内に増加させる増加量ΔDF1を算出する。
第三デューティ比算出部43は、増加量ΔDF1を上記所定時間で除算して単位時間あたりのデューティ比DFの増加量である単位時間増加量ΔDF2を算出する。第三デューティ比算出部43は、単位時間増加量ΔDF2から電圧復帰制御の制御周期に応じたデューティ比DFの増加量である加算量ΔDF3を算出する。第三デューティ比算出部43は、電圧復帰制御の制御周期毎に、復帰前デューティ比DF30に加算量ΔDF3を加算して、第三デューティ比DF3(t)を算出する。
なお、電圧復帰制御中は、第二出力電流目標値算出部52が、系統電圧低下状態のときと同様にして、インバータ14の出力電流Ioutの目標値である第二出力電流目標値Iout_ref2(t)を算出する。
開閉信号生成部53は、第一出力電流目標値算出部51または第二出力電流目標値算出部52によって算出されたインバータ14の出力電流Ioutの目標値に基づいて、インバータ14の駆動信号(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hの開閉信号)を生成する。系統電圧正常状態から系統電圧低下状態への移行時には、例えば、第一出力電流目標値Iout_ref1と、出力電流検出値と、系統電圧検出値と、直流電圧検出値と、スイッチングモードとが開閉信号生成部53に入力される。系統電圧低下状態および電圧復帰制御中には、例えば、第二出力電流目標値Iout_ref2(t)と、出力電流検出値と、系統電圧検出値と、直流電圧検出値と、スイッチングモードとが開閉信号生成部53に入力される。
開閉信号生成部53は、これらの入力値から、例えば、フィードフォワード制御によってインバータ14の出力電圧値を算出することができる。なお、スイッチングモードは、インバータ14の出力電流Ioutの極性(正極性または負極性)に対応して予め設定されており、第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hの各開閉状態が定められている。例えば、インバータ14の出力電流Ioutが正極性のときには、第一スイッチング素子14eおよび第四スイッチング素子14hが閉状態に設定され、かつ、第二スイッチング素子14fおよび第三スイッチング素子14gが開状態に設定される。このとき、第一スイッチング素子14eおよび第四スイッチング素子14hのうちの少なくとも一方は、パルス幅変調(PWM)により制御される。一方、インバータ14の出力電流Ioutが負極性のときには、第一スイッチング素子14eおよび第四スイッチング素子14hが開状態に設定され、かつ、第二スイッチング素子14fおよび第三スイッチング素子14gが閉状態に設定される。このとき、第二スイッチング素子14fおよび第三スイッチング素子14gのうちの少なくとも一方は、パルス幅変調(PWM)により制御される。
開閉信号生成部53は、スイッチングモードに従って、インバータ14の複数(4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14h)の開閉信号を生成する。具体的には、開閉信号生成部53は、インバータ14の出力電圧値を、直流電圧検出値で除して変調率を算出する。開閉信号生成部53は、算出された変調率に基づいて、パルス幅変調(PWM)のパルス信号(開閉信号)を生成する。
制御装置16は、図1に示す駆動回路16fを介して、生成されたパルス信号を複数(4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14h)の各ゲート(14e3〜14h3)に付与する。これにより、制御装置16は、複数(4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14h)を駆動制御する。
開閉信号生成部44は、第一デューティ比算出部41、第二デューティ比算出部42または第三デューティ比算出部43によって算出されたデューティ比DFに基づいて、コンバータ12の駆動信号(スイッチング素子12gの開閉信号)を生成する。系統電圧正常状態から系統電圧低下状態への移行時には、第一デューティ比DF1が開閉信号生成部44に入力される。系統電圧低下状態においては、第二デューティ比DF2(t)が開閉信号生成部44に入力される。電圧復帰制御中には、第三デューティ比DF3(t)が開閉信号生成部44に入力される。開閉信号生成部44は、これらのデューティ比DFに基づいて、パルス信号(開閉信号)を生成する。制御装置16は、図1に示す駆動回路16eを介して、生成されたパルス信号をコンバータ12のスイッチング素子12gのゲート12g3に付与する。これにより、制御装置16は、スイッチング素子12gを駆動制御する。
(制御フロー)
制御装置16は、図5Aおよび図5Bに示すフローチャートに従って駆動制御プログラムを実行する。以下、制御装置16による制御フローについて、図6を参照しつつ説明する。図6は、系統電圧Vs、インバータ14の出力電流Iout、スイッチング素子12gのデューティ比DF、インバータ14の入力電力Pin、インバータ14の出力電力Poutおよび直流電圧Vdcの経時変化の一例を示す図である。曲線L21は、系統電圧Vsの経時変化の一例を示している。縦軸は、電圧を示し、横軸は、時刻を示している。曲線L22は、インバータ14の出力電流Ioutの経時変化の一例を示している。縦軸は、電流を示し、横軸は、時刻を示している。曲線L23は、スイッチング素子12gのデューティ比DFの経時変化の一例を示している。縦軸は、デューティ比DFを示し、横軸は、時刻を示している。曲線L24は、インバータ14の入力電力Pinの経時変化の一例を示している。縦軸は、電力を示し、横軸は、時刻を示している。曲線L25は、インバータ14の出力電力Poutの経時変化の一例を示している。縦軸は、電力を示し、横軸は、時刻を示している。曲線L26は、直流電圧Vdcの経時変化の一例を示している。縦軸は、電圧を示し、横軸は、時刻を示している。
図5Aに示すように、系統電圧検出器15cは、所定周期で系統電圧Vsを検出する。そして、制御装置16は、系統電圧検出器15cによって検出された系統電圧検出値(例えば、系統電圧Vsの半周期分)から、系統電圧Vsの実効値(既述した系統電圧検出値Vs(t))を算出する(ステップS11)。次に、制御装置16は、系統電圧Vsの実効値が電圧閾値VT0以下であるか否かを判断する(ステップS12)。
系統電圧Vsの実効値が電圧閾値VT0以下の場合(Yesの場合)、系統電圧低下状態であり、制御装置16は、系統電圧Vsが低下する直前の状態を記録する(ステップS13)。具体的には、制御装置16は、系統電圧Vsの実効値(図6では、移行前系統電圧値Vs0で示す)、インバータ14の移行前出力電流値Iout0、移行前出力電力Pout0および移行前デューティ比DF0を図1に示す第一記憶装置16b1に記憶させる。そして、第一出力電流目標値算出部51は、第一出力電流目標値Iout_ref1を算出する(ステップS14)。また、第一デューティ比算出部41は、第一デューティ比DF1を算出する(ステップS15)。
開閉信号生成部53は、第一出力電流目標値Iout_ref1に基づいて、インバータ14の駆動信号(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hの開閉信号)を生成する。制御装置16は、生成されたパルス信号を複数(4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14h)の各ゲート(14e3〜14h3)に付与する。開閉信号生成部44は、第一デューティ比DF1に基づいて、コンバータ12の駆動信号(スイッチング素子12gの開閉信号)を生成する。制御装置16は、生成されたパルス信号をコンバータ12のスイッチング素子12gのゲート12g3に付与する。なお、ステップS12において、系統電圧Vsの実効値が電圧閾値VT0を超えている場合(Noの場合)、系統電圧正常状態であり、ステップS11の処理およびステップS12の判断が繰り返される。
図6に示すように、時刻t21までは、系統電圧Vsは、移行前系統電圧値Vs0であり、系統電圧Vsが電圧閾値VT0を超えている。よって、時刻t21までは、系統電圧正常状態であり、ステップS11の処理およびステップS12の判断が繰り返される。時刻t21において、系統電圧Vsが移行前系統電圧値Vs0から移行後系統電圧値Vs1へ低下し、電圧閾値VT0以下になる。つまり、時刻t21において、系統電圧正常状態から系統電圧低下状態に移行する。
これにより、インバータ14の出力電力Poutは、移行前出力電力Pout0から移行後出力電力Pout1へ低下する。時刻t22までは、インバータ14の入力電力Pinは、移行前入力電力Pin0であるので、インバータ14の入力電力Pinは、インバータ14の出力電力Poutと比べて大きい。そのため、直流電圧Vdcは、時刻t21から上昇し始める。
時刻t21から、図5Aに示すステップS13〜ステップS15の処理が順に開始され、時刻t22において、制御装置16は、開閉信号生成部44によって生成されたパルス信号をコンバータ12のスイッチング素子12gのゲート12g3に付与する。また、制御装置16は、開閉信号生成部53によって生成されたパルス信号を複数(4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14h)の各ゲート(14e3〜14h3)に付与する。
これにより、図6に示す時刻t22において、スイッチング素子12gのデューティ比DFは、移行前デューティ比DF0から第一デューティ比DF1へ低減される。また、インバータ14の入力電力Pinは、移行前入力電力Pin0から移行後入力電力Pin1へ低下する。さらに、時刻t22において、インバータ14の出力電流Ioutは、移行前出力電流値Iout0から移行後出力電流値Iout1へ低減される。図6に示す移行後出力電流値Iout1は、移行前出力電流値Iout0と比べて小さくなっており、この場合、第一出力電流目標値Iout_ref1として、第二電流値Iout_ref12が選択されたことが分かる。
なお、時刻t22において、インバータ14の入力電力Pinが移行前入力電力Pin0から移行後入力電力Pin1へ低下するので、インバータ14の入力電力Pinと出力電力Poutとの間のアンバランスが解消される。そのため、時刻t22において、直流電圧Vdcの上昇が止まる。
図5Aに示すように、ステップS15の次に、第二出力電流目標値算出部52は、第二出力電流目標値Iout_ref2(t)を算出する(ステップS16)。また、第二デューティ比算出部42は、第二デューティ比DF2(t)を算出する(ステップS17)。そして、開閉信号生成部53は、第二出力電流目標値Iout_ref2(t)に基づいて、インバータ14の駆動信号(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hの開閉信号)を生成する。制御装置16は、生成されたパルス信号を複数(4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14h)の各ゲート(14e3〜14h3)に付与する。また、開閉信号生成部44は、第二デューティ比DF2(t)に基づいて、コンバータ12の駆動信号(スイッチング素子12gの開閉信号)を生成する。制御装置16は、生成されたパルス信号をコンバータ12のスイッチング素子12gのゲート12g3に付与する。
次に、制御装置16は、系統電圧Vsの実効値が電圧閾値VT0以下になってから所定時間TH1が経過したか否かを判断する(ステップS18)。所定時間TH1が経過した場合(Yesの場合)、制御装置16は、コンバータ12およびインバータ14の制御を通常制御へ移行させて(ステップS19)、系統電圧Vsの低下に伴う制御は、終了する。本実施形態では、インバータ14の通常制御は、定電流制御(インバータ14の出力電流Ioutを目標出力電流値で一定にする制御)をいう。また、コンバータ12の通常制御は、インバータ14の出力電力Poutに合わせて、コンバータ12の出力電力を増減させる制御をいう。なお、「通常制御」は、上述した制御に限定されるものではなく、制御装置16は、コンバータ12およびインバータ14に対して、種々の制御を行うことができる。
ステップS18において、所定時間TH1が経過していない場合(Noの場合)、制御装置16は、系統電圧Vsの実効値が電圧閾値VT0を超えたか否かを判断する(ステップS20)。系統電圧Vsの実効値が電圧閾値VT0を超えた場合(Yesの場合)、制御装置16は、電圧復帰制御を行う(ステップS30)。そして、制御装置16は、コンバータ12およびインバータ14の制御を通常制御へ移行させて(ステップS19)、系統電圧Vsの低下に伴う制御は、終了する。一方、ステップS20において、系統電圧Vsの実効値が電圧閾値VT0以下の場合(Noの場合)、ステップS16に戻り、所定時間TH1が経過するまで、ステップS16およびステップS17の処理を繰り返す。
図6に示す時刻t22から時刻t23までの時間は、ステップS16およびステップS17の処理、並びに、ステップS18およびステップS20の判断が繰り返される。但し、同図に示す時刻t21から時刻t23までの時間である系統電圧低下時間は、所定時間TH1と比べて短いものとする。図6では、系統電圧低下時間において、系統電圧Vsが変動していない。そのため、インバータ14の入力電力目標値Pin_ref(t)は、移行後入力電力Pin1で一定になり、インバータ14の入力電力Pin(t)は、移行後入力電力Pin1で一定になる。また、直流電圧Vdcは、次第に直流電圧目標値Vdc0に収束している。
時刻t23において、系統電圧Vsが移行後系統電圧値Vs1から移行前系統電圧値Vs0へ復帰し、電圧閾値VT0を超える。つまり、時刻t23において、系統電圧低下状態から系統電圧正常状態に復帰する。これにより、インバータ14の出力電力Poutは、上昇する。
しかしながら、同図に示すように、インバータ14の出力電力Poutは、出力電力上限値Pα2で規制されている。既述したように、出力電力上限値Pα2は、系統電圧低下状態から系統電圧正常状態に復帰した直後のインバータ14の出力電力の上限値である。本実施形態の系統連系制御装置10によれば、第一出力電流目標値算出部51は、第一出力電流目標値Iout_ref1として、出力電力上限値Pα2を考慮して算出される第二電流値Iout_ref12を選択することができる。そして、第二出力電流目標値算出部52は、直流電圧検出値Vdc(t)が直流電圧目標値Vdc0と一致するように制御して、第二出力電流目標値Iout_ref2(t)を算出する。
これらにより、インバータ14の出力電力Poutは、系統電圧Vsの復帰直後に、出力電力上限値Pα2で規制される。なお、時刻t24までは、インバータ14の入力電力Pinは、移行後入力電力Pin1であるので、インバータ14の出力電力Pout(出力電力上限値Pα2)は、インバータ14の入力電力Pinと比べて大きい。そのため、直流電圧Vdcは、時刻t23から下降し始める。
時刻t23において、系統電圧Vsが復帰すると、図5Aに示すステップS20における条件が成立(Yesの場合)して、制御装置16は、電圧復帰制御を行う(ステップS30)。図5Bに示すように、電圧復帰制御では、制御装置16は、系統電圧Vsが復帰する直前のスイッチング素子12gのデューティ比DF(復帰前デューティ比DF30)を記録する(ステップS31)。そして、第二出力電流目標値算出部52は、第二出力電流目標値Iout_ref2(t)を算出する(ステップS32)。また、第三デューティ比算出部43は、第三デューティ比DF3(t)を算出する(ステップS33)。
そして、開閉信号生成部53は、第二出力電流目標値Iout_ref2(t)に基づいて、インバータ14の駆動信号(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14hの開閉信号)を生成する。制御装置16は、生成されたパルス信号を複数(4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14h)の各ゲート(14e3〜14h3)に付与する。開閉信号生成部44は、第三デューティ比DF3(t)に基づいて、コンバータ12の駆動信号(スイッチング素子12gの開閉信号)を生成する。制御装置16は、生成されたパルス信号をコンバータ12のスイッチング素子12gのゲート12g3に付与する。
次に、制御装置16は、時刻tのときのインバータ14の出力電力Pout(t)が電力閾値PT0を超えたか否かを判断する(ステップS34)。インバータ14の出力電力Pout(t)が電力閾値PT0を超えた場合(Yesの場合)、電圧復帰制御は、終了する。一方、インバータ14の出力電力Pout(t)が電力閾値PT0以下の場合(Noの場合)、ステップS32に戻り、インバータ14の出力電力Pout(t)が電力閾値PT0を超えるまで、上述した処理が繰り返される。
図6に示す時刻t23から、図5Bに示すステップS31〜ステップS34の処理が順に開始され、時刻t24において、制御装置16は、開閉信号生成部44によって生成されたパルス信号をコンバータ12のスイッチング素子12gのゲート12g3に付与する。また、制御装置16は、開閉信号生成部53によって生成されたパルス信号を複数(4つ)のスイッチング素子(第一スイッチング素子14e〜第四スイッチング素子14h)の各ゲート(14e3〜14h3)に付与する。
これらにより、スイッチング素子12gのデューティ比DFは、時刻t24から次第に増加し、インバータ14の入力電力Pinは、時刻t24から次第に増加する。また、インバータ14の出力電流Ioutは、時刻t24から次第に増加し、インバータ14の出力電力Poutは、時刻t24から次第に増加する。さらに、直流電圧Vdcは、時刻t24から上昇に転じて、直流電圧Vdcは、次第に直流電圧目標値Vdc0に収束している。
時刻t25において、インバータ14の出力電力Poutが電力閾値PT0を超える。これにより、電圧復帰制御は、終了する(図5Bに示すステップS34でYesの場合)。そして、コンバータ12およびインバータ14の制御は、通常制御へ移行する(図5Aに示すステップS19)。そのため、図6に示すように、スイッチング素子12gのデューティ比DFの増加およびインバータ14の入力電力Pinの増加が止まる。また、インバータ14の出力電流Ioutの増加およびインバータ14の出力電力Poutの増加が止まる。
本実施形態の系統連系制御装置10によれば、制御装置16は、コンバータ制御部40を備える。コンバータ制御部40は、系統電圧正常状態から系統電圧低下状態への移行をしたときに、コンバータ12を駆動させるスイッチング素子12gの制御信号であるパルス幅変調信号のデューティ比DFを移行前と比べて低減させてインバータ14の入力電力Pinを低下させる。そのため、本実施形態の系統連系制御装置10は、系統電圧Vsが低下してインバータ14の出力電力Poutが低下したときに、インバータ14の入力電力Pinと出力電力Poutとの間のアンバランスを低減することができ、コンバータ12によって昇圧された直流電力の直流電圧Vdcの変動を低減することができる。その結果、直流電圧Vdcの変動に起因するインバータ14の停止が回避される。
本実施形態の系統連系制御装置10によれば、第一出力電流目標値算出部51は、系統電圧正常状態から系統電圧低下状態に移行する直前の出力電流検出値である第一電流値Iout_ref11および数1に基づいて算出される第二電流値Iout_ref12のうちの小さい方を、系統電圧正常状態から系統電圧低下状態に移行した直後のインバータ14の出力電流Ioutの目標値である第一出力電流目標値Iout_ref1として選択し算出する。そのため、第一出力電流目標値算出部51は、系統電圧Vsの低下度に応じて、第一電流値Iout_ref11または第二電流値Iout_ref12を選択して、第一出力電流目標値Iout_ref1を算出することができる。また、系統電圧Vsの低下度が大きい程、第一出力電流目標値Iout_ref1として第二電流値Iout_ref12が選択され易くなる。第二電流値Iout_ref12は、系統電圧Vsが復帰した直後のインバータ14の出力電力Poutの上限値である出力電力上限値Pα2を考慮して算出される。よって、第一出力電流目標値算出部51は、系統電圧Vsの低下度が大きいときに予めインバータ14の出力電流Ioutを低下させて、系統電圧Vsが復帰したときにインバータ14の入力電力Pinと出力電力Poutとの間の電力差が急増してしまうことを抑制することができる。
また、第一デューティ比算出部41は、系統電圧正常状態から系統電圧低下状態に移行した直後のデューティ比DFである第一デューティ比DF1を数2に基づいて算出する。そのため、第一デューティ比算出部41は、第一出力電流目標値算出部51によって算出された第一出力電流目標値Iout_ref1および系統電圧Vsの低下度を用いて、第一デューティ比DF1を算出することができる。つまり、第一デューティ比算出部41は、インバータ14の出力電力Poutの低下度に合わせて、インバータ14の入力電力Pinを低下させることができる。よって、第一デューティ比算出部41は、系統電圧Vsが低下してインバータ14の出力電力Poutが低下したときに、インバータ14の入力電力Pinと出力電力Poutとの間のアンバランスを解消することができる。
本実施形態の系統連系制御装置10によれば、第二出力電流目標値算出部52は、直流電圧検出器15aによって検出された直流電圧検出値Vdc(t)が、直流電圧Vdcの目標値である直流電圧目標値Vdc0と一致するように、比例制御、積分制御および微分制御のうちの少なくとも比例制御および積分制御によって、系統電圧正常状態から系統電圧低下状態への移行後のインバータ14の出力電流Ioutの目標値である第二出力電流目標値Iout_ref2(t)を算出する。そのため、第二出力電流目標値算出部52は、コンバータ12によって昇圧された直流電力の直流電圧Vdcの変動を低減することができる。
また、第二デューティ比算出部42は、インバータ14の入力電力Pin(t)が、数3に基づいて算出される入力電力目標値Pin_ref(t)と一致するように、比例制御、積分制御および微分制御のうちの少なくとも比例制御および積分制御によって、系統電圧低下状態のデューティ比DFである第二デューティ比DF2(t)を算出する。そのため、第二デューティ比算出部42は、系統電圧低下状態において系統電圧Vsが変動した場合においても、系統電圧Vsの変動に合わせてインバータ14の入力電力Pinを制御することができる。
<その他>
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、第一出力電流目標値Iout_ref1および第二出力電流目標値Iout_ref2(t)、並びに、第一デューティ比DF1、第二デューティ比DF2(t)および第三デューティ比DF3(t)の算出方法は限定されない。また、第一出力電流目標値算出部51は、第一電流値Iout_ref11および第二電流値Iout_ref12のうちの一方の電流値のみを用いて、第一出力電流目標値Iout_ref1を算出することもできる。この場合、第一出力電流目標値算出部51は、第一電流値Iout_ref11に関わらず、第二電流値Iout_ref12を第一出力電流目標値Iout_ref1とすることができる。また、第一出力電流目標値算出部51は、第二電流値Iout_ref12に関わらず、第一電流値Iout_ref11を第一出力電流目標値Iout_ref1とすることができる。また、コンバータ制御部40およびインバータ制御部50は、図5Aおよび図5Bに示す演算以外にも種々の演算を含めることができる。さらに、本発明に係る系統連系制御装置10は、多相(例えば、三相)の系統電源およびインバータに適用することもできる。