JP2017152872A - 無線通信装置およびキャリブレーション方法 - Google Patents

無線通信装置およびキャリブレーション方法 Download PDF

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Abstract

【課題】各アンテナの位相誤差を精度よく補正する。【解決手段】チャネル推定部33は、複数のアンテナ23を介して3つ以上の端末のそれぞれから受信した受信信号に基づいて、端末毎に、チャネルベクトルを推定する。位相差算出部35は、前記端末毎に推定されたチャネルベクトルの中で、2つのチャネルベクトルの組合せ毎に該2つのチャネルベクトル間の第1の位相差を算出する。到来方向推定部34は、位相差算出部35が算出した位相差に基づいて、端末毎に受信信号の到来方向を推定する。位相誤差推定部32は、到来方向推定部34が端末毎に推定した受信信号の到来方向と、チャネル推定部33が端末毎に推定したチャネルベクトルとに基づいて、各アンテナ23の位相誤差を推定する。位相制御部31は、位相誤差推定部32が推定した各アンテナ23の位相誤差に基づいて、各アンテナ23を介して送受信される信号の位相を補正する。【選択図】図2

Description

本発明は、無線通信装置およびキャリブレーション方法に関する。
無線LAN等の無線通信システムにおいて、近年の通信帯域の増大に伴い、ミリ波帯の周波数の電波を用いた無線通信が検討されている。ミリ波は、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波に比べて空間伝搬損失が大きい。そのため、ミリ波を用いた通信では、所望の通信品質を得るために、複数のアンテナを用いたビームフォーミングが行われる。
複数のアンテナを用いたビームフォーミングでは、各アンテナから送信される信号の位相が制御される。しかし、各アンテナは位相誤差を有する。そのため、ある方向に向けたビームを形成するために各アンテナの位相を設定したとしても、実際に各アンテナから送信される信号の位相が、設定された位相からずれる場合がある。そのため、意図した方向とは異なる方向にビームが形成されたり、意図した方向におけるアンテナ利得が意図した値よりも低くなってしまう場合がある。
これを回避するために、アンテナの位相誤差を補正する技術が知られている。この技術では、複数のアンテナを有するサブアレイ毎に、推定されたチャネル推定値を加算平均することにより、基準チャネル推定値が算出される。そして、基準チャネル推定値と、サブアレイ毎に推定されたチャネル推定値との相関値に基づいて、各アンテナの位相誤差が算出される。そして、算出された位相誤差を用いて、各アンテナにおいて送信または受信される信号の位相が補正される。
特開2015−012568号公報
ところで、各アンテナが有する位相誤差が一様ランダムであれば、チャネル推定値を加算平均することにより、各アンテナの位相誤差成分を減少させることができる。そのため、位相誤差成分が少ない基準チャネル推定値が算出される。しかし、各アンテナが有する位相誤差には、配線や回路定数等に起因する成分も含まれる。そのため、各アンテナが有する位相誤差は、一様ランダムな成分以外に、ある位相値の近辺に偏った分布となる成分も含まれる。その場合、位相誤差を含むチャネル推定値を加算平均したとしても、位相誤差が減少せず、位相誤差を多く含む基準チャネル推定値が算出されることになる。そして、位相誤差を多く含む基準チャネル推定値を用いて各アンテナの位相誤差が算出された場合、各アンテナについて算出された位相誤差の精度が低くなる。従って、所望の方向にビームを形成したり、ビームによるアンテナ利得を所望の値に設定することが困難となる。
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、各アンテナの位相誤差を精度よく補正することを目的とする。
1つの側面では、無線通信装置は、複数のアンテナと、チャネル推定部と、位相差算出部と、到来方向推定部と、位相誤差推定部と、補正部とを有する。チャネル推定部は、複数のアンテナを介して3つ以上の端末のそれぞれから受信した受信信号に基づいて、端末毎に、それぞれのアンテナと端末との間のチャネルを含むチャネルベクトルを推定する。位相差算出部は、チャネル推定部によって端末毎に推定されたチャネルベクトルの中で、2つのチャネルベクトルの組合せ毎に該2つのチャネルベクトル間の第1の位相差を算出する。到来方向推定部は、位相差算出部によって算出された位相差に基づいて、端末毎に受信信号の到来方向を推定する。位相誤差推定部は、到来方向推定部によって端末毎に推定された受信信号の到来方向と、チャネル推定部によって端末毎に推定されたチャネルベクトルとに基づいて、それぞれのアンテナの位相誤差を推定する。補正部は、位相誤差推定部によって推定されたそれぞれのアンテナの位相誤差に基づいて、それぞれのアンテナを介して送信または受信される信号の位相を補正する。
1実施形態によれば、各アンテナの位相誤差を精度よく補正することができる。
図1は、無線通信システムの一例を示す図である。 図2は、実施例1におけるAP(Access Point)の一例を示すブロック図である。 図3は、アレイアンテナの一例を示す図である。 図4は、アレイアンテナの他の例を示す図である。 図5は、第1の端末の方向と第2の端末の方向との全ての組合せについて算出された尤度の一例を示す図である。 図6は、第2の端末の方向と第3の端末の方向との全ての組合せについて算出された尤度の一例を示す図である。 図7は、第3の端末の方向と第1の端末の方向との全ての組合せについて算出された尤度の一例を示す図である。 図8は、各端末からの電波の到来方向の推定過程の一例を説明するための図である。 図9は、APによって実行されるキャリブレーションの一例を示すフローチャートである。 図10は、尤度算出処理の一例を示すフローチャートである。 図11は、実施例2におけるAPの一例を示すブロック図である。 図12は、実施例3におけるAPの一例を示すブロック図である。 図13は、基準チャネルベクトルテーブルの一例を示す図である。 図14は、第2の位相差テーブルの一例を示す図である。
以下に、本願の開示する無線通信装置およびキャリブレーション方法の実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例は開示の技術を限定するものではない。
[無線通信システム10]
図1は、無線通信システム10の一例を示す図である。無線通信システム10は、AP20および複数の端末11−1〜11−nを有する。本実施例において、無線通信システム10は、ミリ波帯の周波数の電波を用いて通信を行う無線LANシステムである。なお、開示の技術は、ミリ波帯の周波数の電波を用いて通信を行うシステムであれば、無線LANに限らず、セルラー通信や近距離無線通信等を行うシステムに対しても適用可能である。AP20は、無線通信装置の一例である。なお、以下では、端末11−1〜11−nのそれぞれを区別することなく総称する場合に単に端末11と記載する。
AP20は、複数のアンテナを含むアレイアンテナ21を有する。AP20は、それぞれの端末11との通信において、アレイアンテナ21に含まれる各アンテナの位相を制御し、端末11の方向へビーム22を形成する。これにより、端末11へ送信する電波および端末11から受信する電波の利得を高めることができる。
[AP20]
図2は、実施例1におけるAP20の一例を示すブロック図である。AP20は、例えば図2に示すように、アレイアンテナ21、プロセッサ30、無線処理回路40、およびメモリ50を有する。本実施例において、AP20は、例えばCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)方式に基づいて各端末11と通信する。
プロセッサ30は、位相制御部31、位相誤差推定部32、チャネル推定部33、到来方向推定部34、位相差算出部35、およびベースバンド信号処理部36を有する。メモリ50には、プロセッサ30によって実行されるプログラムやデータ等が格納されている。プロセッサ30は、メモリ50からプログラムを読出し、読出したプログラムを実行することにより、位相制御部31、位相誤差推定部32、チャネル推定部33、到来方向推定部34、位相差算出部35、およびベースバンド信号処理部36の各機能を実現する。なお、プロセッサ30は、メモリ50内に格納されたプログラムをメモリ50から読み出して実行する以外に、通信回線を介して他の装置からプログラムを取得して実行してもよい。
アレイアンテナ21は、複数のアンテナ23−1〜23−Kを有する。なお、以下では、アンテナ23−1〜23−Kのそれぞれを区別することなく総称する場合に単にアンテナ23と記載する。本実施例において、アレイアンテナ21は、例えばK個のアンテナ23を有する。また、本実施例において、アレイアンテナ21は、例えば、複数のアンテナ23が円状に配置されたサーキュラアレイアンテナである。
無線処理回路40は、ADC(Analog to Digital Converter)41、ダウンコンバータ42、LNA(Low Noise Amplifier)43、合成器44、および複数の位相調整部45−1〜45−Kを有する。また、無線処理回路40は、DAC(Digital to Analog Converter)46、アップコンバータ47、PA(Power Amplifier)48、および発振器49を有する。なお、以下では、位相調整部45−1〜45−Kのそれぞれを区別することなく総称する場合に単に位相調整部45と記載する。本実施例において、無線処理回路40は、例えばK個の位相調整部45を有する。
位相調整部45は、1つのアンテナ23に対応して1つ設けられている。それぞれの位相調整部45は、プロセッサ30からの制御信号に応じて、対応するアンテナ23を介して受信された受信信号の位相を調整し、位相が調整された受信信号を合成器44へ出力する。また、それぞれの位相調整部45は、プロセッサ30からの制御信号に応じて、PA48から出力された送信信号の位相を調整する。位相が調整された送信信号は、対応するアンテナ23を介して放射される。
合成器44は、それぞれの位相調整部45から出力された受信信号を合成する。LNA43は、合成器44によって合成された受信信号を増幅する。ダウンコンバータ42は、LNA43によって増幅された受信信号を、発振器49から出力された局発信号を用いてダウンコンバートする。ADC41は、ダウンコンバータ42によってダウンコンバートされた受信信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換する。そして、ADC41は、デジタル信号に変換された受信信号をプロセッサ30へ出力する。
DAC46は、プロセッサ30から出力された送信信号を、デジタル信号からアナログ信号に変換する。アップコンバータ47は、DAC46によってアナログ信号に変換された送信信号を、発振器49から出力された局発信号を用いてアップコンバートする。PA48は、アップコンバータ47によってアップコンバートされた送信信号を増幅する。そして、PA48は、増幅された送信信号をそれぞれの位相調整部45へ出力する。
ベースバンド信号処理部36は、ADC41から出力された受信信号に対して復調および復号等のベースバンド処理を行うことにより受信データを生成する。そして、ベースバンド信号処理部36は、生成された受信データを、図示しないアプリケーション処理部へ出力する。また、ベースバンド信号処理部36は、図示しないアプリケーション処理部から出力された送信データに対して符号化および変調等のベースバンド処理を行うことにより、送信信号を生成する。そして、ベースバンド信号処理部36は、生成された送信信号を、DAC46へ出力する。
チャネル推定部33は、それぞれの端末11から受信された受信信号に基づいて、端末11毎に、各アンテナ23と端末11との間のチャネルを含むチャネルベクトルを推定する。本実施例において、チャネル推定部33は、3つ以上の端末11のそれぞれについてチャネルベクトルを算出する。なお、チャネル推定部33は、3つ以上の異なる方向から到来する受信信号に基づいて、受信信号の到来方向毎に、各アンテナ23と端末11との間のチャネルを含むチャネルベクトルを算出してもよい。ただし、ミリ波通信では電波の空間伝搬損失が大きいため、送信側の装置から送信された電波のうち、直接波以外のマルチパスの成分は、受信側の装置ではほとんど受信されない。従って、AP20における各端末11からの電波の到来方向は、各端末11からAP20へ向かう方向と一致する。そのため、以下では、それぞれの端末11から送信された電波の到来方向を、それぞれの端末11の方向として説明を行う。
ここで、第i番目の端末11から到来方向φiで到来する電波の時刻tにおける受信信号ベクトルyi(t)=[yi,0(t),・・・,yi,K-1(t)]Tは、例えば下記(1)式のように表すことができる。なお、yi,k(t)は、時刻tにおいて、第i番目の端末11から送信された信号が第k番目のアンテナ23によって受信された受信信号を示し、Kはアンテナ23の本数を示す。
Figure 2017152872
上記(1)式において、hiは、第i番目の端末11とアレイアンテナ21との間のチャネルベクトルを示す。si(t)は、第i番目の端末11から送信された送信信号を示す。ni(t)は、時刻tにおいて、第i番目の端末11から送信された信号の受信信号に付加された雑音ベクトルを示す。Ψは、各アンテナ23の位相誤差を表した位相誤差行列を示す。位相誤差行列Ψは、例えば下記(2)式のように表すことができる。
Figure 2017152872
上記(2)式において、θkは第k番目のアンテナ23の位相誤差を示す。
また、チャネル推定部33によって、第i番目の端末11からの受信信号から推定されたチャネルベクトル
Figure 2017152872
は、例えば下記(3)式のように表すことができる。
Figure 2017152872
なお、チャネルの推定方法に関しては、本明細書では特に限定しないが、より高精度にチャネルを推定することができる推定方法を用いた方がよいことは明らかである。また、以下では、説明を簡単にするために、雑音の影響は無視できるものと仮定する。
本実施例において、アレイアンテナ21は、例えば図3に示すように、複数のアンテナ23が円状に配置されたサーキュラアレイアンテナである。図3は、アレイアンテナ21の一例を示す図である。本実施例におけるアレイアンテナ21は、送信および受信の対象となる電波の波長λで正規化された半径rの円周上に、等間隔で配置されたK個のアンテナ23を有する。本実施例では、例えば図3に示すように、複数のアンテナ23が配置された円周の中心oから所定の方向(図3の例では、第0番目のアンテナ23の方向)を基準方向として、基準方向と、中心oから第k番目のアンテナ23の方向とのなす角をαkと定義する。これにより、上記(3)式において、推定された各アンテナ23のチャネルは、例えば下記(4)式および(5)式のように変換することができる。
Figure 2017152872
Figure 2017152872
一般的に、上記(4)式および(5)式のような変換は、サーキュラアレイ以外にも、例えば図4に示すように、複数のアンテナ23が直線状に配置されたリニアアレイなど、他の配列のアレイアンテナ21でも容易に変換が可能である。図4は、アレイアンテナ21の他の例を示す図である。図4に示したアレイアンテナ21において、dkは、基準点から第k番目のアンテナ23までの距離を示す。これにより、上記(4)式におけるfk(φi)は、例えば下記のように表すことができる。
Figure 2017152872
位相差算出部35は、少なくとも3つの異なる方向から到来したと予想されるそれぞれの端末11の受信信号についてチャネル推定部33が推定したチャネルベクトルを取得する。そして、位相差算出部35は、取得した複数のチャネルベクトルの中で、2つのチャネルベクトルの組合せ毎に第1の位相差を算出する。
例えば、第i番目の端末11について推定されたチャネルベクトルと、第j番目の端末11について推定されたチャネルベクトルとの第1の位相差Δθ(i,j)は、下記(6)式のように表すことができる。
Figure 2017152872
上記(4)式および(6)式により、第k番目のアンテナ23におけるチャネルの第1の位相差Δθk(i,j)は、例えば下記(7)式のように表すことができる。
Figure 2017152872
上記(7)式を参照すると、第i番目の端末11からの受信信号から推定されたチャネルと、第j番目の端末11からの受信信号から推定されたチャネルとの間の第1の位相差には、各アンテナ23に付加される位相誤差θkが含まれていない。即ち、上記(7)式によれば、第i番目の端末11からの受信信号から推定されたチャネルと、第j番目の端末11からの受信信号から推定されたチャネルとの間の第1の位相差は、各端末11からの受信信号の到来方向のみの関数となっている。従って、上記(6)式で表されるチャネルベクトル間の第1の位相差Δθ(i,j)を用いることで、各アンテナ23の位相誤差θkの影響を受けずに電波の到来方向の推定が可能になる。
到来方向推定部34は、位相差算出部35によって算出されたチャネルベクトルの組合せ毎の第1の位相差Δθ(i,j)に基づいて、端末11毎に、端末11からの電波の到来方向を推定する。なお、以下では、端末11からの電波の到来方向を、単に端末11の方向と呼ぶ。
到来方向推定部34は、到来方向特定部340および尤度算出部341を有する。尤度算出部341は、複数のアンテナ23の配置と、予め定められた電波の到来方向とから定まる基準チャネルベクトルを、予め定められた到来方向毎に算出する。そして、尤度算出部341は、算出された2つの基準チャネルベクトルの組合せ毎に、基準チャネルベクトル間の第2の位相差を算出する。そして、尤度算出部341は、算出された第2の位相差毎に、第1の位相差が第2の位相差であることについての確からしさを示す尤度を算出する。本実施例において、予め定められた到来方向とは、360度を均等に360個に分割した場合のそれぞれの方向であり、1度ずつ異なる360通りの方向を示す。なお、予め定められた到来方向は、360度を均等に分割した場合のそれぞれの方向であれば、1度未満の角度ずつ異なる方向であってもよく、1度より大きい角度ずつ異なる方向であってもよい。ただし、予め定められた到来方向の分解能は、細かいほど、各端末11からの受信信号の到来方向の推定精度が高くなる。
ここで、第i番目の端末11の方向が、予め定められた電波の到来方向αである場合、基準チャネルベクトルは、例えば下記(8)式のように表される。
Figure 2017152872
また、第j番目の端末11の方向が、予め定められた電波の到来方向βである場合、基準チャネルベクトルは、例えば下記(9)式のように表される。
Figure 2017152872
ここで、第i番目の端末11の方向が、予め定められた電波の到来方向αである場合の第k番目のアンテナ23の基準チャネルは、前述の(4)式および(5)式を用いて、例えば下記(10)式のように表すことができる。
Figure 2017152872
尤度算出部341は、第i番目の端末11の方向をα、第j番目の端末11の方向をβと仮定し、方向αおよびβの組合せ毎に、例えば下記(11)式に基づいて、基準チャネルベクトルの第2の位相差Δθ’(α,β)を算出する。
Figure 2017152872
そして、尤度算出部341は、前述の(6)式により算出された第1の位相差Δθ(i,j)と、上記(11)式により算出された第2の位相差Δθ’(α,β)とを用いて、下記(12)式に示す評価関数J(i,j,α,β)の値を計算する。
Figure 2017152872
上記(12)式において、||x||は、xのノルムを示す。
そして、尤度算出部341は、上記(12)式に基づいて計算された評価関数J(i,j,α,β)の値に基づいて、第1の位相差Δθ(i,j)が第2の位相差Δθ’(α,β)であることについての確からしさを示す尤度Lijを算出する。第1の位相差Δθ(i,j)および第2の位相差Δθ’(α,β)に基づいて算出された尤度Lijが大きいということは、第1の位相差Δθ(i,j)が、第2の位相差Δθ’(α,β)である可能性が高いことを示す。算出された尤度Lijは、評価関数J(i,j,α,β)の値が大きいほど小さく、評価関数J(i,j,α,β)の値が小さいほど大きくなる。本実施例において、尤度算出部341は、例えば、評価関数J(i,j,α,β)の値の逆数を、尤度Lijとして算出する。尤度算出部341は、それぞれの第1の位相差Δθ(i,j)について、αおよびβの組合せ毎の尤度Lijを算出し、算出された尤度Lijを到来方向特定部340へ出力する。
本実施例では、3つの端末11のそれぞれから受信した受信信号に基づいて、各アンテナ23の位相誤差を補正する。ここで、3つの端末11のそれぞれを、第1の端末11、第2の端末11、および第3の端末11と定義する。また、第1の端末11の方向をa、第2の端末11の方向をb、第3の端末11の方向をcと定義する。
尤度算出部341は、予め定められた電波の到来方向の中から、第1の端末11の方向aと、第2の端末11の方向bとを任意に選択する。そして、尤度算出部341は、第1の端末11について選択された方向をα、第2の端末11について選択された方向をβとし、第1の端末11を第i番目の端末11、第2の端末11を第j番目の端末11とする。そして、尤度算出部341は、前述の(12)式を用いて評価関数J(i,j,α,β)の値を計算し、計算された評価関数J(i,j,α,β)の値から尤度L12を算出する。尤度算出部341は、予め定められた電波の到来方向の中から選択された、第1の端末11の方向aと、第2の端末11の方向bとの全ての組合せについて、尤度L12を算出する。
予め定められた電波の到来方向の中から選択された、第1の端末11の方向aと、第2の端末11の方向bとの全ての組合せについて算出された尤度L12を図示すると、例えば図5のようになる。図5は、第1の端末11の方向aと、第2の端末11の方向bとの全ての組合せについて算出された尤度L12の一例を示す図である。図5に示した例では、第1の端末11の方向aが「a1」であり、第2の端末11の方向bが「b1」である場合の尤度L12として、例えば「L12−11」が算出されている。
また、尤度算出部341は、予め定められた電波の到来方向の中から、第2の端末11の方向bと、第3の端末11の方向cとを任意に選択する。そして、尤度算出部341は、第2の端末11について選択された方向をα、第3の端末11について選択された方向をβとし、第2の端末11を第i番目の端末11、第3の端末11を第j番目の端末11とする。そして、尤度算出部341は、前述の(12)式を用いて評価関数J(i,j,α,β)の値を計算し、計算された評価関数J(i,j,α,β)の値から尤度L23を算出する。尤度算出部341は、予め定められた電波の到来方向の中から選択された、第2の端末11の方向bと、第3の端末11の方向cとの全ての組合せについて、尤度L23を算出する。
予め定められた電波の到来方向の中から選択された、第2の端末11の方向bと、第3の端末11の方向cとの全ての組合せについて算出された尤度L23を図示すると、例えば図6のようになる。図6は、第2の端末11の方向bと、第3の端末11の方向cとの全ての組合せについて算出された尤度L23の一例を示す図である。図6に示した例では、第2の端末11の方向bが「b1」であり、第3の端末11の方向cが「c2」である場合の尤度L23として、例えば「L23−12」が算出されている。
また、尤度算出部341は、予め定められた電波の到来方向の中から、第3の端末11の方向cと、第1の端末11の方向aとを任意に選択する。そして、尤度算出部341は、第3の端末11について選択された方向をα、第1の端末11について選択された方向をβとし、第3の端末11を第i番目の端末11、第1の端末11を第j番目の端末11とする。そして、尤度算出部341は、前述の(12)式を用いて評価関数J(i,j,α,β)の値を計算し、計算された評価関数J(i,j,α,β)の値から尤度L31を算出する。尤度算出部341は、予め定められた電波の到来方向の中から選択された、第3の端末11の方向cと、第1の端末11の方向aとの全ての組合せについて、尤度L31を算出する。
予め定められた電波の到来方向の中から選択された、第3の端末11の方向cと、第1の端末11の方向aとの全ての組合せについて算出された尤度L31を図示すると、例えば図7のようになる。図7は、第3の端末11の方向cと、第1の端末11の方向aとの全ての組合せについて算出された尤度L31の一例を示す図である。図7に示した例では、第3の端末11の方向cが「c2」であり、第1の端末11の方向aが「a1」である場合の尤度L31として、例えば「L31−21」が算出されている。
到来方向特定部340は、尤度算出部341によって算出された尤度Lijに基づいて、それぞれの端末11の方向を特定する。例えば、到来方向特定部340は、第1の端末11の方向a、第2の端末11の方向b、および第3の端末11の方向cの組合せ毎に、該組合せに含まれる2つの端末11の方向について算出された尤度Lijを合計して尤度の合計値Lsを算出する。そして、到来方向特定部340は、最も大きい尤度の合計値Lsとなる端末11の方向の組合せを特定する。そして、到来方向特定部340は、特定された組合せに含まれている各端末11の方向を、推定された各端末11の方向として特定する。
例えば、到来方向特定部340は、第1の端末11の方向a、第2の端末11の方向b、および第3の端末11の方向cの組合せに対して、例えば図8に示すように、該組合せに含まれる2つの方向の組合せ毎の尤度Lijを対応付ける。図8は、各端末からの電波の到来方向の推定過程の一例を説明するための図である。到来方向特定部340は、第1の端末11の方向a、第2の端末11の方向b、および第3の端末11の方向cの組合せ毎に、該組合せに対応付けられた尤度Lijを合計して尤度の合計値Lsを算出する。
例えば図8のレコード60には、第1の端末11の方向a1、第2の端末11の方向b1、および第3の端末11の方向c2の組合せに、尤度L12−11、尤度L23−12、尤度L31−21、および尤度の合計値Ls−112が対応付けられている。尤度L12−11は、例えば図5に示したように、第1の端末11の方向a1と、第2の端末11の方向b1とに基づいて算出された尤度L12である。また、尤度L23−12は、例えば図6に示したように、第2の端末11の方向b1と、第3の端末11の方向c2とに基づいて算出された尤度L23である。また、尤度L31−21は、例えば図7に示したように、第3の端末11の方向c2と、第1の端末11の方向a1とに基づいて算出された尤度L31である。尤度の合計値Ls−112は、レコード60に含まれている尤度L12−11、尤度L23−12、および尤度L31−21が合計された値である。
そして、到来方向特定部340は、第1の端末11の方向a、第2の端末11の方向b、および第3の端末11の方向cの組合せ毎に算出された尤度の合計値Lsの中で、最も大きい尤度の合計値Lsに対応する組合せを特定する。そして、到来方向特定部340は、特定された組合せに含まれている第1の端末11の方向a、第2の端末11の方向b、および第3の端末11の方向cを、各端末11の方向として特定する。例えば図8において、レコード60に含まれている尤度の合計値Lsが最も大きい場合、到来方向特定部340は、第1の端末11の方向をa1、第2の端末11の方向をb1、第3の端末11の方向をc2と特定する。そして、到来方向特定部340は、端末11毎に特定された受信信号の到来方向の情報を、位相誤差推定部32へ出力する。
このように、本実施例では、3つ以上の端末11のそれぞれについて推定されたチャネルベクトル中で2つの端末11のチャネルベクトルの組合せ毎に第1の位相差Δθ(i,j)が算出される。そして、各端末11について仮定された、予め定められた電波の到来方向の2つの組合せ毎に、該組合せにおいて算出された第2の位相差Δθ’(α,β)と、第1の位相差Δθ(i,j)との尤度が算出される。そして、3つ以上の端末11のそれぞれについて仮定された、予め定められた電波の到来方向の組合せ毎に、尤度が合計され、最も尤度が大きい電波の到来方向の組合せが、各端末11の方向として推定される。
ここで、端末11の数が3つ以上であれば、2つの端末11の組合せが端末11の数以上存在することになる。そして、2つの端末11の組合せ毎に、該2つの端末11の方向について第2の位相差Δθ’(α,β)が特定されれば、該第2の位相差Δθ’(α,β)を満たす端末11の方向の組合せを特定することができる。なお、端末11の数が2つである場合、2つの端末11の組合せは1つしか存在せず、特定された第2の位相差Δθ’(α,β)も1つしか存在しない。そのため、特定された第2の位相差Δθ’(α,β)から、2つの端末11の方向を特定することは困難である。
位相誤差推定部32は、端末11毎に、到来方向特定部340から出力された受信信号の到来方向と前述の(8)式とを用いて、基準チャネルベクトルを算出する。そして、位相誤差推定部32は、チャネル推定部33によって端末11毎に推定されたチャネルベクトルと、端末11毎に算出された基準チャネルベクトルとに基づいて、例えば下記(13)式により、各アンテナ23の位相誤差
Figure 2017152872
を推定する。そして、位相誤差推定部32は、推定した位相誤差の情報を位相制御部31へ出力する。
Figure 2017152872
上記(13)式において、
Figure 2017152872
は、チャネル推定部33によって推定された、第k番目のアンテナ23と第i番目の端末11との間のチャネルを示す。また、
Figure 2017152872
は、到来方向特定部340によって推定された第i番目の端末11の方向を示す。また、
Figure 2017152872
は、位相誤差推定部32によって算出された、第k番目のアンテナ23と第i番目の端末11との間の基準チャネルを示す。また、Mは、端末11の数を示す3以上の整数である。本実施例において、Mは例えば3である。
位相制御部31は、位相誤差推定部32から出力された位相誤差の情報を基に、各アンテナ23を介して受信された受信信号の位相を、前述の(13)式で表される位相分だけ逆に回転させる。これにより、位相制御部31は、端末11からの信号の受信において、各アンテナ23の位相誤差をキャンセルすることができる。位相誤差が補正された後の第i番目の端末11からの受信信号の受信信号ベクトルyi’(t)は、例えば下記(14)式のように表される。
Figure 2017152872
上記(14)式における
Figure 2017152872
は、例えば下記(15)式のように表される。
Figure 2017152872
また、位相制御部31は、位相誤差推定部32から出力された位相誤差の情報を基に、各アンテナ23から送信される送信信号の位相を、前述の(13)式で表される位相分だけ逆に回転させる。これにより、位相制御部31は、アレイアンテナ21からの信号の送信において、各アンテナ23の位相誤差をキャンセルすることができる。例えば、位相制御部31は、第k番目のアンテナ23から送信される信号の位相ωkを、位相誤差の情報を基に、例えば下記(16)式のように補正する。
Figure 2017152872
そして、位相制御部31は、補正後の位相ωk’を示す制御信号を、第k番目のアンテナ23に接続された位相調整部45−kへ出力する。これにより、第k番目のアンテナ23から送信される信号において、アンテナ23の位相誤差がキャンセルされる。
[キャリブレーション]
図9は、AP20によって実行されるキャリブレーションの一例を示すフローチャートである。AP20は、起動時やアレイアンテナ21を介した通信の開始前など、所定のタイミングで図9に示す動作を開始する。
まず、チャネル推定部33は、それぞれの端末11から受信した受信信号に基づいて、端末11毎に、端末11とアレイアンテナ21との間のチャネルベクトルを推定する(S100)。
次に、位相差算出部35は、チャネル推定部33によって推定された端末11毎のチャネルベクトルに基づいて、2つの端末11の組合せ毎に第1の位相差Δθ(i,j)を算出する(S101)。例えば、位相差算出部35は、3つの端末11の中の2つの組合せ毎に、一方の端末11を第i番目の端末11とし、他方の端末11を第j番目の端末11として、前述の(6)式を用いて、第1の位相差Δθ(i,j)を算出する。そして、尤度算出部341は、尤度算出処理を実行する(S200)。
図10は、尤度算出処理の一例を示すフローチャートである。
まず、尤度算出部341は、複数のアンテナ23の配置と予め定められた到来方向とから定まる基準チャネルベクトルを、予め定められた到来方向毎に算出する(S201)。そして、尤度算出部341は、複数の端末11の中で、2つの端末11の組合せを1つ選択する(S202)。本実施例では、尤度算出部341は、3つの端末11の中で、2つの端末11の組合せを1つ選択する。
次に、尤度算出部341は、選択された2つの端末11のうち、一方を第i番目の端末11、他方を第j番目の端末11とする。そして、尤度算出部341は、予め定められた到来方向の中で、第i番目の端末11の方向αと、第j番目の端末11の方向βとの組み合わせを1つ選択する(S203)。
次に、尤度算出部341は、前述の(11)式に基づいて、第i番目の端末11の方向αにおける基準チャネルベクトルと、第j番目の端末11の方向βにおける基準チャネルベクトルとの間の第2の位相差Δθ’(α,β)を算出する(S204)。
次に、尤度算出部341は、ステップS101で算出された第1の位相差Δθ(i,j)と、ステップS204で算出された第2の位相差Δθ’(α,β)とを用いて、前述の(12)式に示した評価関数J(i,j,α,β)の値を計算する(S205)。そして、尤度算出部341は、計算された評価関数J(i,j,α,β)の値に基づいて、尤度Lijを算出する(S206)。尤度算出部341は、例えば、評価関数J(i,j,α,β)の値の逆数を尤度Lijとして算出する。
次に、尤度算出部341は、予め定められた到来方向の中で、第i番目の端末11の方向αと、第j番目の端末11の方向βとの組み合わせを全て選択したか否かを判定する(S207)。第i番目の端末11の方向αと、第j番目の端末11の方向βとの組合せについて、未選択の組合せが存在する場合(S207:No)、尤度算出部341は、再びステップS203に示した処理を実行する。
一方、第i番目の端末11の方向αと、第j番目の端末11の方向βとの組み合わせが全て選択された場合(S207:Yes)、尤度算出部341は、複数の端末11の中で、2つの端末11の組合せを全て選択したか否かを判定する(S208)。2つの端末11の組合せの中で、未選択の組合せが存在する場合(S208:No)、尤度算出部341は、再びステップS202に示した処理を実行する。
一方、複数の端末11の中で、2つの端末11の組合せを全て選択した場合(S208:Yes)、尤度算出部341は、2つの端末11の方向の全ての組合せについて、組合せ毎の尤度を到来方向特定部340へ出力する。そして、尤度算出部341は、本フローチャートに示した尤度算出処理を終了する。図10に示した尤度算出処理が終了した段階では、例えば図5〜図7に示したように、2つの端末11の方向の全ての組合せについて、尤度が算出された状態となる。
図9に戻って説明を続ける。到来方向特定部340は、例えば図8において説明したように、予め定められた電波の到来方向の中から選択された、第1の端末11の方向a、第2の端末11の方向b、および第3の端末11の方向cの組合せ毎に、尤度の合計値Lsを算出する。そして、到来方向特定部340は、算出された尤度の合計値Lsの中で、最も大きい尤度の合計値Lsに対応する第1の端末11の方向a、第2の端末11の方向b、および第3の端末11の方向cの組合せを、各端末11の方向として特定する(S102)。
次に、位相誤差推定部32は、端末11毎に、到来方向特定部340によって特定された到来方向と前述の(8)式とを用いて、基準チャネルベクトルを算出する(S103)。そして、位相誤差推定部32は、端末11毎に算出した基準チャネルベクトルと、チャネル推定部33が端末11毎に推定したチャネルベクトルとに基づいて、前述の(13)式により、各アンテナ23の位相誤差を推定する(S104)。そして、位相誤差推定部32は、アンテナ23毎に推定された位相誤差を位相制御部31へ出力する。
次に、位相制御部31は、位相誤差推定部32から出力された位相誤差を基に各アンテナ23における受信信号の位相および送信信号の位相を、前述の(13)式で表される位相分だけ逆に回転させることにより、補正する(S105)。そして、AP20は、本フローチャートに示したキャリブレーションを終了する。
[実施例1の効果]
上述したように、本実施例のAP20は、複数のアンテナ23と、チャネル推定部33と、位相差算出部35と、到来方向推定部34と、位相誤差推定部32と、位相制御部31とを有する。チャネル推定部33は、複数のアンテナ23を介して3つ以上の端末11のそれぞれから受信した受信信号に基づいて、端末11毎に、それぞれのアンテナ23と端末11との間のチャネルを含むチャネルベクトルを推定する。位相差算出部35は、チャネル推定部33によって端末11毎に推定されたチャネルベクトルの中で、2つのチャネルベクトルの組合せ毎に該2つのチャネルベクトル間の第1の位相差Δθ(i,j)を算出する。到来方向推定部34は、位相差算出部35によって算出された第1の位相差Δθ(i,j)に基づいて、端末11毎に受信信号の到来方向を推定する。位相誤差推定部32は、到来方向推定部34によって端末11毎に推定された受信信号の到来方向と、チャネル推定部33によって端末11毎に推定されたチャネルベクトルとに基づいて、それぞれのアンテナ23の位相誤差を推定する。位相制御部31は、位相誤差推定部32によって推定されたそれぞれのアンテナ23の位相誤差に基づいて、それぞれのアンテナ23を介して送信または受信される信号の位相を補正する。
本実施例のAP20は、3つ以上の異なる到来方向の受信信号から推定されたチャネルベクトルの中で、2つのチャネルベクトルの組合せ毎に位相差を算出し、算出された位相差に基づいて受信信号の到来方向を推定する。これにより、AP20は、受信信号の到来方向の推定において、各アンテナ23の位相誤差の影響を抑制することができる。そのため、AP20は、各アンテナ23の位相誤差を精度よく算出することができる。従って、AP20は、各アンテナ23の位相誤差を精度よく補正することができる。
また、本実施例のAP20は、各アンテナ23の位相誤差を補正するために特別な信号を送信または受信しなくても、3つ以上の端末11と通信が可能な状況であれば、各端末11から受信した信号に基づいて、各アンテナ23の位相誤差を補正することができる。そのため、本実施例のAP20は、無線通信システム10の運用中においても各アンテナ23の位相誤差を補正することが可能である。従って、環境変化や経年変化等によりアンテナ23の位相誤差が変化した場合であっても、所定のタイミング毎に各アンテナ23の位相誤差を補正することで、AP20によって送信および受信される信号の品質を高く維持することができる。
また、上記した実施例において、到来方向推定部34は、到来方向特定部340および尤度算出部341を有する。尤度算出部341は、2つの異なる到来方向の電波の組合せ毎に、複数のアンテナ23の配置および電波の到来方向から定まる基準チャネルベクトル間の第2の位相差Δθ’(α,β)を算出する。そして、尤度算出部341は、第1の位相差Δθ(i,j)が、第2の位相差Δθ’(α,β)であることについての確からしさを示す尤度を算出する。到来方向特定部340は、3つ以上の端末11からの電波の到来方向の組合せ毎に、該組合せに含まれる2つの端末11に関する第1の位相差Δθ(i,j)について算出された尤度を合計する。そして、到来方向特定部340は、合計された尤度が最も大きい電波の到来方向の組合せを、それぞれの端末11からの受信信号の到来方向として特定する。これにより、AP20は、受信信号の到来方向を精度よく推定することができる。従って、AP20は、各アンテナ23の位相誤差を精度よく補正することができる。
上記した実施例において、位相誤差推定部32は、到来方向推定部34が推定した各端末11からの受信信号の到来方向において、基準チャネルベクトルと、チャネル推定部33が推定したチャネルベクトルとに基づいて、各アンテナ23の位相誤差を推定する。これにより、AP20は、各アンテナ23の位相誤差を精度よく算出することができる。従って、AP20は、各アンテナ23の位相誤差を精度よく補正することができる。
上記した実施例1において、位相差算出部35は、3つ以上の異なる到来方向から受信した受信信号に基づいて推定されたチャネルベクトルを用いて、第1の位相差Δθ(i,j)を算出する。また、位相誤差推定部32は、3つ以上の異なる到来方向から受信した受信信号に基づいて推定されたチャネルベクトルを用いて、各アンテナ23の位相誤差を算出する。しかし、3つ以上の異なる到来方向からの受信信号であっても、受信信号の到来方向がなす角度が小さいと、アンテナ23毎に推定された位相誤差の精度が低くなる場合がある。そこで、本実施例のAP20は、2つの受信信号の全ての組合せにおける相関値が所定値以下となる3つ以上の受信信号を用いて、各アンテナ23の位相誤差を算出する。
図11は、実施例2におけるAP20の一例を示すブロック図である。本実施例におけるAP20は、アレイアンテナ21、プロセッサ30、無線処理回路40、およびメモリ50を有する。プロセッサ30は、位相制御部31、位相誤差推定部32、チャネル推定部33、到来方向推定部34、位相差算出部35、ベースバンド信号処理部36、チャネル特定部37を有する。なお、以下に説明する点を除き、図11において、図2と同じ符号を付した構成は、図2における構成と同一または同様の機能を有するため説明を省略する。
チャネル特定部37は、チャネル推定部33によって端末11毎に推定されたチャネルベクトルを取得する。そして、チャネル特定部37は、取得した端末11毎のチャネルベクトルの中で、2つの端末11について推定されたチャネルベクトルの組合せ毎に、相関値を算出する。そして、チャネル特定部37は、3つ以上のチャネルベクトルであって、2つのチャネルベクトルのいずれの組合せにおける相関値も所定値以下となる3つ以上のチャネルベクトルを特定する。そして、チャネル特定部37は、特定した3つ以上のチャネルベクトルを、位相誤差推定部32および位相差算出部35へ出力する。
位相差算出部35は、チャネル特定部37から出力された端末11毎のチャネルベクトルについて、2つの端末11のチャネルベクトルの組合せ毎に第1の位相差Δθ(i,j)を算出する。位相誤差推定部32は、チャネル推定部33によって端末11毎に推定されたチャネルベクトルと、到来方向特定部340によって端末11毎に算出された基準チャネルベクトルとに基づいて、例えば前述の(13)式により、各アンテナ23の位相誤差を算出する。
[実施例2の効果]
上述したように、本実施例のAP20は、チャネル特定部37を有する。チャネル特定部37は、端末11毎に推定されたチャネルベクトルの中で、3つ以上のチャネルベクトルであって、2つのチャネルベクトルのいずれの組合せにおける相関値も所定値以下となる3つ以上のチャネルベクトルを特定する。位相差算出部35は、チャネル特定部37によって3つ以上のチャネルベクトルが特定された場合に、特定されたチャネルベクトルの中で、2つのチャネルベクトルの組合せ毎に第1の位相差Δθ(i,j)を算出する。これにより、AP20は、各アンテナ23の位相誤差をより精度よく算出することができる。従って、AP20は、各アンテナ23の位相誤差をより精度よく補正することができる。
上記した実施例1において、尤度算出部341は、複数のアンテナ23の配置と、予め定められた到来方向とから定まる基準チャネルベクトルを、予め定められた到来方向毎に算出する。また、尤度算出部341は、2つの基準チャネルベクトルの第2の位相差Δθ’(α,β)を、予め定められた到来方向の全ての組合せについて算出する。しかし、予め定められた到来方向毎の基準チャネルベクトルや、予め定められた到来方向の組合せ毎の第2の位相差Δθ’(α,β)は、複数のアンテナ23の配置が決まれば、予め算出しておくことが可能である。そこで、実施例3では、予め定められた到来方向毎の基準チャネルベクトルと、予め定められた到来方向の組合せ毎の第2の位相差Δθ’(α,β)とを予めテーブルとして保持する。
図12は、実施例3におけるAP20の一例を示すブロック図である。本実施例におけるAP20は、アレイアンテナ21、プロセッサ30、無線処理回路40、およびメモリ50を有する。なお、以下に説明する点を除き、図12において、図2と同じ符号を付した構成は、図2における構成と同一または同様の機能を有するため説明を省略する。
メモリ50は、基準チャネルベクトルテーブル51および第2の位相差テーブル52を有する。図13は、基準チャネルベクトルテーブル51の一例を示す図である。基準チャネルベクトルテーブル51には、例えば図13に示すように、予め定められた到来方向510毎に、複数のアンテナ23の配置から定まる基準チャネルベクトル511が予め格納されている。基準チャネルベクトル511は、例えば前述の(8)式に基づいて算出された値である。
図14は、第2の位相差テーブル52の一例を示す図である。第2の位相差テーブル52には、例えば図14に示すように、予め定められた到来方向の組合せ520毎に、基準チャネルベクトル間の第2の位相差521が予め格納されている。第2の位相差521は、例えば前述の(11)式に基づいて算出された値である。
尤度算出部341は、第i番目の端末11の方向をα、第j番目の端末11の方向をβと仮定し、方向αおよびβの組合せ毎に、該組合せに対応する第2の位相差Δθ’(α,β)を、メモリ50内の第2の位相差テーブル52から抽出する。そして、尤度算出部341は、前述の(6)式を用いて算出された第1の位相差Δθ(i,j)と、第2の位相差テーブル52から抽出された第2の位相差Δθ’(α,β)とを用いて、前述の(12)式に示す評価関数J(i,j,α,β)の値を計算する。
位相誤差推定部32は、端末11毎に、到来方向特定部340から出力された受信信号の到来方向に対応付けられている基準チャネルベクトルを、基準チャネルベクトルテーブル51から抽出する。
[実施例3の効果]
上述したように、本実施例のAP20は、予め定められた到来方向毎の基準チャネルベクトルと、予め定められた到来方向の組合せ毎の第2の位相差Δθ’(α,β)とを予めテーブルとして保持する。これにより、AP20は、各アンテナ23の位相誤差を補正する際の処理負荷を軽減することができる。
[その他]
なお、開示の技術は、上記した実施例に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
例えば、上記した各実施例において例示したAP20が有する各処理ブロックは、AP20の動作の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて機能別に区分したものである。そのため、処理ブロックの区分方法やその名称によって、開示の技術が制限されることはない。上記した実施例におけるAP20は、実現される処理の内容に応じて、さらに多くの処理ブロックに区分されてもよく、1つの処理ブロックがさらに多くの処理を実行するように区分されてもよい。また、それぞれの処理ブロックにおける処理は、ソフトウェアによる処理として実現されてもよく、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のハードウェアにより実現されてもよい。
10 無線通信システム
11 端末
20 AP
21 アレイアンテナ
22 ビーム
23 アンテナ
30 プロセッサ
31 位相制御部
32 位相誤差推定部
33 チャネル推定部
34 到来方向推定部
340 到来方向特定部
341 尤度算出部
35 位相差算出部
36 ベースバンド信号処理部
37 チャネル特定部
40 無線処理回路
50 メモリ
51 基準チャネルベクトルテーブル
52 第2の位相差テーブル

Claims (5)

  1. 複数のアンテナと、
    前記複数のアンテナを介して3つ以上の端末のそれぞれから受信した受信信号に基づいて、前記端末毎に、それぞれの前記アンテナと前記端末との間のチャネルを含むチャネルベクトルを推定するチャネル推定部と、
    前記チャネル推定部によって前記端末毎に推定されたチャネルベクトルの中で、2つのチャネルベクトルの組合せ毎に該2つのチャネルベクトル間の第1の位相差を算出する位相差算出部と、
    前記位相差算出部によって算出された第1の位相差に基づいて、前記端末毎に前記受信信号の到来方向を推定する到来方向推定部と、
    前記到来方向推定部によって前記端末毎に推定された前記受信信号の到来方向と、前記チャネル推定部によって前記端末毎に推定された前記チャネルベクトルとに基づいて、それぞれの前記アンテナの位相誤差を推定する位相誤差推定部と、
    前記位相誤差推定部によって推定されたそれぞれの前記アンテナの位相誤差に基づいて、それぞれの前記アンテナを介して送信または受信される信号の位相を補正する補正部と
    を有することを特徴とする無線通信装置。
  2. 前記到来方向推定部は、
    2つの異なる到来方向の電波の組合せ毎に、前記複数のアンテナの配置および電波の到来方向から定まる基準チャネルベクトル間の第2の位相差を算出し、前記第1の位相差が、算出された前記第2の位相差であることについての確からしさを示す尤度を算出する尤度算出部と、
    3つ以上の前記端末からの電波の到来方向の組合せ毎に、該組合せに含まれる2つの前記端末に関する前記第1の位相差について算出された尤度を合計し、合計された尤度が最も大きい電波の到来方向の組合せを、それぞれの前記端末からの受信信号の到来方向として特定する到来方向特定部と
    を有することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
  3. 前記位相誤差推定部は、
    前記到来方向推定部によって推定されたそれぞれの前記端末からの前記受信信号の到来方向において、前記複数のアンテナの配置から定まる基準チャネルベクトルと、前記チャネル推定部によって推定されたチャネルベクトルとに基づいて、それぞれの前記アンテナの位相誤差を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信装置。
  4. 前記端末毎に、前記チャネル推定部によって推定されたチャネルベクトルの中で、3つ以上のチャネルベクトルであって、2つのチャネルベクトルのいずれの組合せにおける相関値も所定値以下となる3つ以上のチャネルベクトルを特定するチャネル特定部を有し、
    前記位相差算出部は、
    前記チャネル特定部によって3つ以上のチャネルベクトルの組合せが特定された場合に、特定されたチャネルベクトルの中で、2つのチャネルベクトルの組合せ毎に前記第1の位相差を算出することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信装置。
  5. 無線通信装置が、
    複数のアンテナを介して3つ以上の端末のそれぞれから受信した受信信号に基づいて、前記端末毎に、それぞれの前記アンテナと前記端末との間のチャネルを含むチャネルベクトルを推定し、
    推定された前記端末毎のチャネルベクトルの中で、2つのチャネルベクトルの組合せ毎に該2つのチャネルベクトル間の第1の位相差を算出し、
    算出された第1の位相差に基づいて、前記端末毎に前記受信信号の到来方向を推定し、
    前記端末毎に推定された前記受信信号の到来方向と、前記端末毎に推定された前記チャネルベクトルに基づいて、それぞれの前記アンテナの位相誤差を推定し、
    推定されたそれぞれの前記アンテナの位相誤差に基づいて、それぞれの前記アンテナを介して送信または受信される信号の位相を補正する
    処理を実行することを特徴とするキャリブレーション方法。
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