以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する部材には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態である過熱水蒸気を利用した暖房機1の構成を示す分解斜視図である。この暖房機1は、過熱水蒸気を発生する過熱水蒸気モジュール2と、過熱水蒸気モジュール2を内側に収納可能であり、過熱水蒸気モジュール2の外周面との間に送風空間を形成する筒状のモジュールケース3と、モジュールケース3の外側に取り付けられ、過熱水蒸気モジュール2とモジュールケース3との間の送風空間に対して空気を送り込む送風器42と、モジュールケース3の一方の端部に装着され、過熱水蒸気を含む温風を吹き出すノズル4と、モジュールケース3の他方の端部に装着されるエンドキャップ5とを備えて構成される。
図2は、過熱水蒸気モジュール2の構成部材を示す分解斜視図である。過熱水蒸気モジュール2は、一端から水を取り込み、他端から過熱水蒸気を吐出する筒状の耐熱ケース10と、その耐熱ケース10の外周面に導線を巻き回して構成されるコイル13と、耐熱ケース10の内部に設けられる発熱モジュール20と、耐熱ケース10の一端に設けられ、耐熱ケース10の内部に水を供給する供給部15と、耐熱ケース10の他端に設けられ、過熱水蒸気を吐出するノズル部14とを備える。尚、コイル13の両端は後述するコイル駆動部31に接続され、コイル駆動部31によってコイル13に交流電流が流れる。
耐熱ケース10は、例えば数十cm程度の長さを有し、外径数cm程度に形成された円筒状のケースである。この耐熱ケース10は、コイル支持管11と耐熱管12との2つの部材を有し、耐熱管12がコイル支持管11の内側に配置された構成である。コイル支持管11は、例えばマイカなどの電気絶縁性及び耐熱性に優れた材料によって形成され、その長手方向の両端部にフランジ部11a,11bが設けられた構成である。このコイル支持管11の外周面にコイル13が巻き回される。一方、耐熱管12は、例えば耐熱性及び断熱性に優れたセラミックなどで形成され、コイル支持管11の内径よりも小さい外径を有する。そして耐熱管12は、コイル支持管11の内壁との間に一定の空隙を形成する状態でコイル支持管11の内側に挿入装着される。
またコイル支持管11は、その両端近傍2箇所の外周面に空気を内側へ導入する導入口16を有すると共に、その中央の外周面4箇所にコイル支持管11の内側の空気を外側へ導出する導出口17を有している。導入口16は、コイル支持管11の内壁と耐熱管12の外壁との間の空隙に空気を導入するための筒状開口であり、導出口17は、コイル支持管11の内壁と耐熱管12の外壁との間の空隙から空気を外側へ導出するための開口である。
供給部15は、水を流入させる供給口15aと、フランジ部15bとを有する。供給部15は、フランジ部15bをコイル支持管11のフランジ部11bと接合させて螺子などで固定されることにより、耐熱ケース10の一端側に取り付けられる。この供給部15は内部にメタルガスケット18b(図6参照)を有している。そしてメタルガスケット18bがコイル支持管11の内側に設けられる耐熱管12の一端と接触して耐熱管12の端部周縁部を封止する。
ノズル部14は、過熱水蒸気を吐出する吐出口14aと、フランジ部14bとを有する。このノズル部14は、フランジ部14bをコイル支持管11のフランジ部11aと接合させて螺子などで固定されることにより、耐熱ケース10の他端側に取り付けられる。このノズル部14も内部にメタルガスケット18a(図6参照)を有しており、そのメタルガスケット18aがコイル支持管11の内側に設けられる耐熱管12の他端と接触して耐熱管12の端部周縁部を封止する。
コイル13は、コイル支持管11のフランジ部11a,11bの間の外周面に巻き回した状態で配置される。ただし、コイル13は、コイル支持管11において導入口16及び導出口17が形成された部分を避けたコイル支持管11の外周面に巻き回される。コイル13のコイル密度(長手方向単位長さ当たりの巻き数)は、耐熱ケース10の長手方向中央部分よりも供給口15a側が高くなっており、例えば供給口15aの近傍位置ではコイル13が二重巻き状態で構成され、耐熱ケース10の中央部分及び中央部分よりもノズル部14側ではコイル13が一重巻き状態で構成される。すなわち、耐熱管12内側の水の通過経路において上流側のコイル密度が下流側のコイル密度よりも高くなっている。
発熱モジュール20は、耐熱管12の内部において耐熱管12の長手方向に沿って互いに密着状態に設けられる複数の発熱エレメント21を備えている。これら複数の発熱エレメント21は、例えばステンレス製の針金などによって構成されるガイド部材19によって互いに密着した状態に保持される。
図3は、発熱エレメント21の詳細を示す図であり、図3(a)が発熱エレメント21の表面側斜視図を、図3(b)が発熱エレメント21の裏面側斜視図を、図3(c)が発熱エレメント21の断面図を示している。尚、図3に示す矢印Fは、水又は水蒸気が通る方向を示している。発熱エレメント21は、例えば耐熱管12の内径よりも若干小さい外径を有する概略円盤状のステンレス製部材である。この発熱エレメント21は、例えば直径10〜20ミリメートル、厚さ数ミリメートル(1〜3ミリメートル程度)に形成される。図3に示すように、発熱エレメント21は、円環状のリング部22と、そのリング部22の内側において所定間隔で互いに平行に設けられる複数のフィン23とを有し、複数のフィン23の間に水や水蒸気を通過させるスリットを形成した構成である。
リング部22には、表面から裏面に貫通する複数の孔24が周方向にほぼ等間隔で設けられる。例えば図3では、9個の孔24がリング部22に設けられており、それら9個の孔24はリング部22の中心軸を基準に40度ずつ回転した位置に設けられる。これら複数の孔24は、上述したガイド部材19を挿通するための孔である。またリング部22の表面には、複数の突起25が周方向にほぼ等間隔で設けられる。例えば図3(a)では、9個の突起25が設けられており、それら9個の突起25はそれぞれ互いに隣接する2つの孔24の間の位置に設けられる。つまり、これら9個の突起25もまた、リング部22の中心軸を基準に40度ずつ回転した位置に設けられる。更にリング部22の裏面には、複数の凹部26が周方向にほぼ等間隔で設けられる。例えば図3(b)では、9個の凹部26が設けられており、それら9個の凹部26はそれぞれ互いに隣接する2つの孔24の間の位置に設けられる。つまり、これら9個の凹部26もまた、リング部22の中心軸を基準に40度ずつ回転した位置に設けられる。
複数のフィン23のそれぞれは、リング部22の軸方向の一方側から他方側に向かって隣り合う別のフィン23との間隔を漸次縮小させるように構成される。すなわち、複数のフィン23のそれぞれは、図3(c)に示すように、概略三角形の断面形状を有し、その三角形の1つの頂点をリング部22の軸方向の一方側(水又は水蒸気が流れる方向の上流側)に向けると共に、底辺をリング部22の軸方向の他方側(水又は水蒸気が流れる方向の下流側)に向けた状態に配置される。水又は水蒸気が流れる方向に沿って複数のフィン23のそれぞれが隣り合うフィン23との間隔を漸次縮小させることにより、水又は水蒸気がリング部22の内側を通過するときには、水又は水蒸気を圧縮した後に膨張させることができると共に、水や水蒸気をフィン23に対して確実に衝突(接触)させることができる。
このような発熱エレメント21は、リング部22の表面に形成された突起25を、その表面側において隣り合う別の発熱エレメント21の裏面側に形成された凹部26に嵌め込むことにより、複数の発熱エレメント21のリング部22を互いに密着させることができる。また本実施形態では、複数の発熱エレメント21のそれぞれを、耐熱ケース10の内部において耐熱ケース10の長手方向に沿って隣り合う別の発熱エレメント21に対して所定角度ずつ回転させた状態に配置して密着させる。
図4は、複数の発熱エレメント21a〜21iの配置例を示す図である。尚、図4に示す矢印Fは、水又は水蒸気が通る方向を示している。図4に示すように、複数の発熱エレメント21a〜21iを軸方向に沿って順に装着していくとき、各発熱エレメント21を例えば40度ずつ回転させた状態に取り付ける。このとき、各発熱エレメント21の表面側に設けられた複数の突起25は、その表面側に隣り合う別の発熱エレメント21の裏面側に形成されている複数の凹部26の位置と合致する。そのため、複数の発熱エレメント21a〜21iを順に40度ずつ回転させた状態に取り付けても、リング部22の表面に形成された突起25を、その表面側において隣り合う別の発熱エレメント21の裏面側に形成された凹部26に嵌め込むことが可能であり、複数の発熱エレメント21a〜21iのリング部22を互いに密着させることができる。
また複数の発熱エレメント21a〜21iのそれぞれに設けられた孔24は、各発熱エレメント21が40度回転した状態となっても同じ位置に存在する。そのため、複数の発熱エレメント21を密着させたとき、複数の発熱エレメント21a〜21iのそれぞれに設けられた孔24の位置が全て一致するので、ガイド部材19を複数の発熱エレメント21に連通する孔24に挿通させることができ、複数の発熱エレメント21を密着させた状態に保持することが可能である。ガイド部材19は、発熱モジュール20の両端部分で折り曲げておくことにより、各発熱エレメント21がガイド部材19から離脱してしまうことを防止することができる。尚、ガイド部材19は、発熱モジュール20に対して2,3本程度取り付けられれば良く、必ずしも9個の孔24の全てにガイド部材19を取り付けなくても良い。
上記のように複数の発熱エレメント21を1つずつ所定角度回転させた状態にして装着していくと、発熱モジュール20においては、水又は水蒸気を通過させるためのスリットが順次回転した状態となる。例えば本実施形態では40度ずつ回転させていくので、連続的に配置される9個の発熱エレメント21により、スリットが1回転(360度)する。このようなスリットの回転により、耐熱管12の内側を吐出口14aに向かって進行する水又は水蒸気に螺旋状の渦流を形成させることができる。そしてスリットの回転方向は、複数の発熱エレメント21を所定角度ずつ回転させた状態に配置するときの回転方向によって調整可能である。本実施形態では、上記のようにして構成される発熱モジュール20が耐熱ケース10(耐熱管12)の長手方向のほぼ全域に亘って配置される。
図5は、発熱エレメント21の発熱原理を示す図である。高周波のコイル電流Icoilがコイル13に流れると、耐熱ケース10の内側の磁束密度Bが、コイル電流Icoilに応じて変化する。この磁束密度Bの変化は、発熱エレメント21のリング部22に対して直角方向に作用する。そして磁束密度Bの変化によって発熱エレメント21のリング部22に渦電流Ieが誘導される。つまり、リング部22は一種のコイルとして作用するのである。このようなリング部22は、磁束密度Bが変化する方向に対して直角に設けられると共に、耐熱管12の内壁に沿った円環状に設けられるため、磁束密度Bの変化に応じて渦電流Ieを高効率で発生させることができる。すなわち、本実施形態では、コイル13に高周波のコイル電流Icoilを流すことにより、個々の発熱エレメント21のリング部22に比較的大きな渦電流Ieを流すことができるのである。この渦電流Ieは熱エネルギーに変換され、発熱エレメント21を発熱させる。発熱エレメント21の発熱量は渦電流Ieによって定まり、本実施形態では、リング部22に大きな渦電流Ieが流すことができるので、発熱エレメント21における発熱量を大きくすることができる。その結果、リング部22だけでなく、複数のフィン23のそれぞれが高温状態に昇温する。そして複数の発熱エレメント21のそれぞれが耐熱ケース10の内側で生じる磁束密度Bの変化に応じた発熱作用を示すことにより、水又は水蒸気が通過する耐熱管12の内部空間が加熱される。
図6は、上記のように構成される各構成部材を組み付けた状態の過熱水蒸気モジュール2の断面図である。図6に示すようにコイル支持管11の外周面に巻き回されたコイル13の両端には、導電ケーブル30が接続されており、その導電ケーブル30の他端にはコイル13に高周波の交流電流Icoilを流すコイル駆動部31が接続される。コイル駆動部31は、商用電源や家庭用電源などの一般的な交流電源32に接続され、インバータ回路などを用いて所定周波数の交流電流Icoilを生成し、その交流電流Icoilをコイル13へ流す。
そして過熱水蒸気モジュール2は、耐熱ケース10の中央部分よりも供給口15a側のコイル密度を高くした部分を飽和水蒸気発生領域として利用し、その飽和水蒸気発生領域よりも下流側の部分を過熱水蒸気発生領域として利用する。つまり、本実施形態の過熱水蒸気モジュール2は、水を加熱して飽和水蒸気を生成する領域と、飽和水蒸気を更に加熱して過熱水蒸気を生成する領域とを1つのユニットで実現しているのである。このような過熱水蒸気モジュール2は、供給口15aから供給する水量を所定の上限値以下に抑えることにより、吐出口14aから水滴などが吐出されず、所定の温度まで昇温された過熱水蒸気を良好に吐出させることができるようになる。
コイル密度の高い飽和水蒸気発生領域では、発熱エレメント21のスリットの回転方向が正逆2方向となるように複数の発熱エレメント21が組み合わせられる。例えば供給口15a側の端部に配置される9個の発熱エレメント21は1個ずつ右周り方向に40度ずつ回転させることによりスリットを右周り方向に一回転させ、次の9個の発熱エレメント21は1個ずつ左周り方向に40度ずつ回転させることによりスリットを左周り方向に回転させる。飽和水蒸気発生領域では、このような正逆2方向の回転を繰り返すように複数の発熱エレメント21が配置される。
図7は、耐熱ケース10の内部に生じる水又は水蒸気の渦流の例を示す図である。飽和水蒸気発生領域では、上述のように正逆2方向の回転を繰り返すように複数の発熱エレメント21が配置されることにより、供給口15aから供給される水は、耐熱ケース10の内側を吐出口14aに向かって進行するとき、右周りの渦流と左周りの渦流とを交互を生じるようになる。そして水や水蒸気が飽和水蒸気発生領域に設けられた複数の発熱エレメント21を通過していくときには、右周りの渦流と左周り渦流との切り替え位置に相当する部分が抵抗となり、その部分で水や水蒸気が高温状態に発熱したフィン23に衝突(接触)してフィン23から直接熱交換を受ける。尚、図7では、右周りの渦流と左周りの渦流とが1回ずつ生じる場合を例示しているが、右周りの渦流と左周りの渦流とが複数回入れ替わるようにしても良い。
また飽和水蒸気発生領域では、コイル13のコイル密度が高いため、複数の発熱エレメント21は、水による冷却作用を受ける場合であっても少なくとも百度〜百数十度程度の温度まで昇温する。そのような飽和水蒸気発生領域を、水又は水蒸気が圧縮、膨張、衝突、回転(渦流回転)を繰り返しながら下流側に向かって進行していくため、供給口15aから流入する水を飽和水蒸気発生領域において確実に飽和水蒸気に変化(相転移)させることができる。そのため、飽和水蒸気発生領域よりも下流側の過熱水蒸気発生領域には飽和水蒸気だけを進行させることができ、水の状態で飽和水蒸気発生領域から過熱水蒸気発生領域へ進入することを防止できる。
一方、過熱水蒸気発生領域では、飽和水蒸気発生領域で発生する飽和水蒸気が更に加熱されて過熱水蒸気が生成される。この過熱水蒸気発生領域では、発熱エレメント21のスリットの回転方向が一方向となるように複数の発熱エレメント21が組み合わせられる。例えば過熱水蒸気発生領域に設けられる複数の発熱エレメント21は1個ずつ右周り方向に40度ずつ回転させることによりスリットを右周り方向に連続回転させる。過熱水蒸気発生領域では、このような一方向の回転を繰り返すように複数の発熱エレメント21が配置される。これにより、飽和水蒸気発生領域から流入する飽和水蒸気は、耐熱ケースの内側を吐出口14aに向かって進行するとき、図6に示すように、常に一方向に回転する渦流を生じるようになる。つまり、過熱水蒸気発生領域では回転方向の切り替わりによる抵抗が存在しないため、過熱水蒸気又は飽和水蒸気が耐熱ケース10の内側を一定の速度で進行する。ただし、過熱水蒸気又は飽和水蒸気が各発熱エレメント21に設けられた複数のフィン23の間のスリットを通過するとき、圧縮、膨張、衝突、回転(渦流回転)を繰り返しながら下流側に向かって進行して行く点は、飽和水蒸気発生領域と同様である。
また過熱水蒸気発生領域では、コイル13のコイル密度が飽和水蒸気発生領域よりも低くなるため、飽和水蒸気発生領域から過熱水蒸気発生領域に移行した部分(コイル13の巻き数が少なくなる部分)では、耐熱ケース10の内側で生じる磁束密度Bの変化が飽和水蒸気発生領域よりも小さくなり、発熱エレメント21のリング部22に生じる渦電流Ieも比較的小さくなる。したがって、飽和水蒸気発生領域から過熱水蒸気発生領域に移行した部分では、発熱エレメント21の発熱量が抑えられる。一方、過熱水蒸気発生領域には水が進入しないため、発熱エレメント21は、水による冷却作用を受けない。そのため、過熱水蒸気発生領域では発熱エレメント21の発熱量が抑えられるものの、過熱水蒸気発生領域に設けられている発熱エレメント21は、飽和水蒸気発生領域に設けられている発熱エレメント21よりも昇温し、例えば四百度程度の高温状態となる。その結果、過熱水蒸気発生領域では、飽和水蒸気が更に加熱され、所定温度(例えば250度程度)の過熱水蒸気が生成される。そして最終的に所定の温度まで昇温した過熱水蒸気がノズル部14の吐出口14aから吐出される。
このように本実施形態では、過熱水蒸気発生領域におけるコイル13のコイル密度を低下させているため、水が飽和水蒸気となった直後の空焚き状態において耐熱ケース10の内側が極度な高温状態になることを防止でき、耐熱管12やコイル支持管11の局所的な部分に過度な温度差が生じることを抑制することができる。したがって、温度差によるヒートショックが耐熱ケース10の局所的部分に集中することを防止でき、ヒートショックによる耐熱ケース10の破損を未然に防ぐことができるのである。その結果、過熱水蒸気モジュール2は、1つのモジュールで水から過熱水蒸気を発生させることができ、モジュール全体を小型化することが可能である。
図1に戻り、モジュールケース3は、その一端に、過熱水蒸気モジュール2のノズル部14と係合して過熱水蒸気モジュール2を内側空間の中心で保持する係合部43を有している。また係合部43は、その周縁部に通風口44を有している。一方、モジュールケース3の他端側は、過熱水蒸気モジュール2を内側へ挿入可能なように全面開放されている。過熱水蒸気モジュール2は、その全面開放されたモジュールケース3の他端側からモジュールケース3の内側に挿入され、ノズル部14が係合部43と係合した状態となる。そしてモジュールケース3の内側に過熱水蒸気モジュール2が収納された状態でモジュールケース3の他端にエンドキャップ5が装着される。エンドキャップ5は、過熱水蒸気モジュール2の供給部15と係合し、過熱水蒸気モジュール2をモジュールケース3の中心に保持するように構成される。またエンドキャップ5の中心位置には供給口15aを外部に露出させるための開口5aが形成されている。したがって、モジュールケース3の他端にエンドキャップ5が装着されると、過熱水蒸気モジュール2の供給口15aがエンドキャップ5の開口5aから外側に露出する。このようにモジュールケース3の内側に過熱水蒸気モジュール2が収納され、モジュールケース3の他端にエンドキャップ5が取り付けられると、過熱水蒸気モジュール2は、モジュールケース3の内側においてモジュールケース3の内壁と接触しない状態で固定される。その結果、モジュールケース3の内壁と、過熱水蒸気モジュール2の外周面との間に送風空間が形成される。
またモジュールケース3の外面には、小型ブロアーなどで構成される送風器42が取り付けられる。送風器42は、過熱水蒸気モジュール2とモジュールケース3との間の送風空間に対して空気を送り込むためのものであり、例えばモジュールケース3の長手方向においてエンドキャップ5の近傍側に取り付けられる。
さらにモジュールケース3の外周面には、過熱水蒸気モジュール2に形成された導入口16に接続される供給管45が設けられる。この供給管45は、過熱水蒸気モジュール2のコイル支持管11と耐熱管12との間の空隙に対して常温空気を注入するためのものである。
ノズル4は、モジュールケース3の一端側に取り付けられる。このノズル4は、ラバールノズルとして構成される。すなわち、ノズル4は、その両端に大径部51,53を有し、中央部分に縮径した小径部52を有している。このようなノズル4は、大径部51がモジュールケース3の一端を覆うように装着される。
図8は、暖房機1の各構成部材が組み付けられた状態を示す断面図である。図8に示すように暖房機1は、モジュールケース3と過熱水蒸気モジュール2との間に送風空間Rを有している。また供給管45には、エアポンプ50が接続される。エアポンプ50は、供給管45を介して過熱水蒸気モジュール2の導入口16からコイル支持管11と耐熱管12の間の空隙に対して常温空気を供給する。そしてエアポンプ50によって供給される空気は、コイル支持管11と耐熱管12の間の空隙を通ってコイル支持管11に形成された導出口17からモジュールケース3と過熱水蒸気モジュール2との間の送風空間Rへ流出する。
過熱水蒸気モジュール2は、上述したように、コイル13に交流電流が流れることにより、発熱エレメント21を発熱させ、矢印F1で示すように供給口15aから供給される水が飽和水蒸気となり、更に飽和水蒸気が過熱水蒸気となるまで加熱し、矢印F2で示すように吐出口14aから過熱水蒸気を吐出する。このとき、耐熱管12は発熱エレメント21とほぼ同程度の温度まで昇温する。そのため、エアポンプ50によってコイル支持管11と耐熱管12との間の空隙に供給される空気は、耐熱管12によって例えば百度以上に加熱される。そして加熱された空気が、導出口17からモジュールケース3と過熱水蒸気モジュール2との間の送風空間Rへ流出する。
一方、モジュールケース3と過熱水蒸気モジュール2との間の送風空間Rには、送風器42による気流X1が形成されている。導出口17から送風空間Rへ流出する加熱された空気は、その気流X1と混合される。その結果、送風空間Rに形成される気流X1の温度が暖房に適した温度まで加温される。そのようにして加温された空気は、矢印X2で示すように送風空間Rから通風口44を通ってノズル4の内側に導かれる。この気流X2は、ノズル4の小径部52において過熱水蒸気モジュール2の吐出口14aから吐出される過熱水蒸気と混合され、小径部52から大径部53へ流れるときに膨張して過熱水蒸気を含む温風X3となってノズル4から放出される。ノズル4から吹き出される温風X3には、過熱水蒸気が含まれるため、室内を適度な湿度に保ちながら暖房することができる。
以上のように本実施形態の暖房機1は、過熱水蒸気モジュール2と、モジュールケース3と、送風器42と、ノズル4とを備えている。そして過熱水蒸気モジュール2は、外周面にコイル13が巻き回されたコイル支持管11の内側に一定の空隙を隔てて耐熱管12が配置されると共に、耐熱管12の内側に発熱エレメント21が収容されており、コイル13に交流電流を流すことにより発熱エレメント21を加熱し、耐熱管12の一端から供給される水を過熱水蒸気に変化させて耐熱管12の他端から吐出する構成である。また筒状のモジュールケース3は、過熱水蒸気モジュール2を内側に収納可能であり、過熱水蒸気モジュール2との間に送風空間Rを形成する。そして送風器42がその送風空間Rに対して空気を送り込み、ノズル4が送風空間Rから送り出される空気と、過熱水蒸気モジュール2から吐出される過熱水蒸気とを混合して温風を吹き出すように構成される。
上記のような暖房機1は、水や飽和水蒸気が流れる過程で水や飽和水蒸気を加熱して過熱水蒸気を発生させる構成であるため、貯水部などを設ける必要がなく、従来の過熱水蒸気を利用した暖房機と比較して小型化が可能である。したがって、上述した暖房機1は、狭小な場所にも設置可能であり、利便性に優れている。
また上述した暖房機1では、モジュールケース3が過熱水蒸気モジュール2へ空気を供給する供給管45を有している。そして過熱水蒸気モジュール2は、供給管45から供給される空気をコイル支持管11と耐熱管12との間の空隙に導入して加熱し、その加熱された空気を送風空間Rへ導出させる構成を有している。このような構成によれば、ノズル4から吹き出される空気を予め送風空間Rにおいて加温しておくことができるため、暖房効率を向上させることができるという利点がある。
以上、本発明に関する一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態において説明した内容のものに限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
例えば上記実施形態では送風器42をモジュールケース3に取り付けた場合を例示したが、これに限られるものではなく、送風器42は例えばエンドキャップ5に取り付けられたものであっても構わない。
また上記実施形態では、モジュールケース3に供給管45を設けてコイル支持管11と耐熱管12との間に空気を供給する場合を例示したが、これに限られるものもない。例えば、上述した供給管45は、エンドキャップ5に設けたものであっても構わない。