JP2017149685A - 造影剤の使用に関連して腎臓の保護に使用するためのα−1−ミクログロブリン - Google Patents

造影剤の使用に関連して腎臓の保護に使用するためのα−1−ミクログロブリン Download PDF

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Abstract

【課題】造影剤誘導ネフロパシー(その他の腎臓関連副作用を含む、造影剤により誘導されるネフロパシー;CINと略す)を予防するため、又は造影剤の使用に伴うネフロパシーを軽減若しくは治療するための薬剤の提供。【解決手段】α-1-ミクログロブリンを含有する医薬組成物の使用。該組成物を、医用造影剤を伴う検査を受ける人に、遅くとも検査が始まる24時間前に投与されることからなる使用方法。【選択図】なし

Description

発明の分野
本発明は、造影剤誘導ネフロパシー(その他の腎臓関連副作用を含む、造影剤により誘導されるネフロパシー;CINと略す)を予防するため、又は造影剤の使用に伴うネフロパシーを軽減若しくは治療するためのα-1-ミクログロブリン(A1M)の使用に関する。
発明の背景
CINは、院内で罹患する急性腎不全の主要原因の1つである。CINは、透析を必要としない患者においてでさえ、顕著に高い院内死亡及び1年以内死亡リスクと関連する。実際、CINは、全ての院内罹患急性腎不全の3番目に一般的な原因であり、全症例の約10%を占める。
目下のところ、CINを定義する標準的な方法は存在しない。しかし、一般には、CINは、造影剤の投与後48時間以内に起こる腎機能障害又は急性腎傷害として定義することができる。造影剤誘導ネフロパシーの観察は、連続的な血漿クレアチニン濃度に依拠してもよい。ベースラインレベルは、造影剤の投与の前に取得すべきであり、通常、血漿クレアチニン(SCr)にベースラインからの25%増加が存在する場合、又はSCrに絶対値で0.5mg/dL(44マイクロモル/L)の増加が観察される場合には、腎臓に対する何らかの負の影響が観察される。
現在、CINの最良の治療法は、例えば、必要な限り少量の造影剤の使用や造影剤投与の少なくとも24時間前の腎毒性薬剤(例えば、NSAID、アミノグリコシド、アンホテリシンB、シクロスポリン、タクロリムス)の退薬による、予防である。例えばメトホルミンやACE阻害剤のような他の薬剤もまた、造影剤投与前に退薬すべきである。CINの1つの有効な予防手段は水分補給療法であると思われるが、無作為化対照臨床試験は今日まで行なわれてなさそうである。異なる組成及び張度の液体が研究されており、通常の生理食塩水が静脈内投与されたときに優れていることが判明した。
CINについて、スタチン、重炭酸塩、N-アセチルシステイン、アスコルビン酸、テオフィリン、アミノフィリン、血管拡張剤、強制利尿剤及び腎臓置換療法の使用を含む幾つかの異なる治療レジメンが開発されて、試験された。
しかし、現在のところ、NICの予防及び/又はNICの治療に有効な手段を開発することの必要性が依然として存在する。
発明の説明
造影剤は、医用X線、磁気共鳴(MRI)、コンピュータトモグラフィー(CT)、血管造影及び超音波造影に使用される化学物質である。造影剤は、放射線医師が、検査する身体中の何らかの疾患又は異常をより正確に明らかにすることができるように、画像又は写真の品質を高め、改善する。本発明に関しては、造影剤は医用用途のものとされ、すなわち、身体又は身体の一部の検査を受ける人に投与されるものである。
造影剤は、とりわけ、下記:
・血管心臓造影(例えば、心室造影、選択的冠血管造影)、
・血管造影(例えば、冠血管造影)、
・大動脈起始部、大動脈弓、上行大動脈、腹大動脈及びその分枝の検査を含む大動脈造影、
・動脈造影、
・関節造影、
・コンピュータトモグラフィーによる頭部及び身体造影のためのコントラスト増強、
・頭部、頸部、腹部、腎臓及び末梢血管の静脈内デジタルサブトラクション血管造影
・胃腸検査(例えば、胃腸管の通過検査)、
・腰椎硬膜外静脈造影、
・腎血管造影
・末梢動脈造影、
・心室造影、
・尿路造影(例えば、排泄性尿路造影)
・その他
を含む多くの異なる適用に使用される。
一般的な造影剤としては、ヨード造影剤、例えば、ジアトリアゾール(メグルミン又はナトリウムとして);イオキシタラム酸塩;イオキサグル酸塩、イオヘキソール;イオパミドール;イオメプロール、イオベルソール、イオプロミド、イオジキサノール、イオトロラン、及びガドリニウム(Gd)造影剤が挙げられる。約十数個の異なるGd-キレート化物質が世界中でMRI造影剤として認可されている。
遊離イオンとしてのガドリニウムは、しばしば、高度に毒性であると報告されているが、MRI造影剤は、キレート化された化合物であり、ほとんどの人で使用するに十分に安全とみなされている。動物における遊離ガドリニウムイオンの毒性は、幾つかのカルシウムイオンチャネル依存性プロセスとの干渉に起因する。50%致死用量は約100〜200mg/kgである。低用量のガドリニウムイオン曝露後の長期毒性は報告されていない。しかし、げっ歯動物における毒性研究により、ガドリニウムのキレート化(これはまた溶解性も改善する)は、遊離イオンに対して、少なくとも100の因数で毒性を低減させる(すなわち、Gd-キレートの致死用量は100倍増加する)ことが示されている。したがって、ヒトにおけるGd造影剤の臨床毒性は、キレート化剤の強度に依存すると考えられる;しかし、この研究は依然として完全ではない。
ガドリニウムMRI造影剤は、X線放射線造影又はコンピュータトモグラフィーで使用されるヨード造影剤より安全であると証明されている。アナフィラキシー様反応は稀であり、約0.03〜0.1%で起こる。
ガドリニウム剤は、腎障害を有する患者に有用であると証明されているが、透析を必要とする重度腎不全を有する患者においては、稀ではあるが、腎原性全身性線維症(NSF)又は腎原性線維化性皮膚症(これは4つのガドリニウム含有MRI造影剤の使用に関連付けられている)と呼ばれる深刻な疾病のリスクが存在する。前記疾患は硬化性粘液水腫に似ており、強皮症に幾らか似ている。この疾患は、造影剤注射の数ヶ月後に起こることもある。この疾患がガドリニウムと関係し、担体分子とは関係ないことは、ガドリニウムが非常に異なる担体分子に担持される造影剤においても当該疾患が発生することにより確証されている。NSFは稀であり、これまでは、重度腎疾患を有する人々でのみ発生していた。よって、造影剤検査を受ける患者で重度腎疾患を予防又は治療できる場合には、NSFのような疾患は、予防、治療又は軽減することが可能である。
米国における現行ガイドラインは、透析患者には、必須の場合にのみ、ガドリニウム剤を投与すべきであり、可能な場合にはヨードコントラスト増強CTを行なうことを考慮すべきことを勧めている。透析患者にコントラスト増強MRIを行なわなければならない場合には、特定の高リスク造影剤を回避して、より低用量を考慮すべきと忠告されている。The American College of Radiologyは、予防策として、コントラスト増強MRI検査を、できる限り透析の直前に行なうことを推奨しているが、これがNSFの発症確率を低減させることは証明されていない。
通常、造影剤は分類されている。CINは、造影剤のオスモル濃度により影響を受けると考えられており、したがって、造影剤は、低オスモル濃度の造影剤(LOCM)であってもよいし、高オスモル濃度の造影剤(HOCM)であってもよい。本発明に関しては、全ての医用造影剤、特にCIN効果が知られているものが妥当である。
本発明は、一般には患者への造影剤投与後に生じる腎損傷の予防に使用するためのA1Mに関する。
具体的には、本発明は、とりわけ、造影剤を用いる検査を受ける患者亜集団であって、以下の危険因子:
・年齢 − 年齢増加はリスク増大を導き、通常、75歳以上は重要因子とみなされる、
・CKD(慢性腎疾患)
・真性糖尿病
・高血圧
・メタボリックシンドローム
・貧血
・多発性骨髄腫
・低アルブミン血症
・腎移植
・下記のものにより証明される血液量減少及び有効循環量低下:
*鬱血性心不全(CHF)
*40%未満の駆出率(EF)
*低血圧
*動脈内バルーンカウンターパルセイション
のうちの1つ又はそれより多くの危険因子を有する患者又は人を含む亜集団における腎損傷の予防のためのA1Mの使用に関する。
人が上記危険因子の1又はそれより多くを有する場合、A1Mを、造影剤を使用して身体部分の検査を受ける人に投与することが有利である。A1Mは、造影剤の投与の前に投与してもよいが、原則的には、造影剤の投与と同時、投与の間又は投与後に投与する。
リスク評価に関係する他の重要な因子は以下のものである:
・緊急性あり 対 緊急性なし(緊急性ありは、緊急性なしよりリスクが高い)
・動脈投与 対 静脈投与(動脈投与は静脈投与よりリスクが高い)
・診断目的 対 治療目的(診断目的は治療目的よりリスクが高い)。
造影剤に関連する危険因子は以下のものである:
・造影剤の量(量が多い方がリスクが高い)
・オスモル濃度、張度、分子構造及び粘度を含む造影剤の特性(等浸透圧造影剤の使用は低又は高浸透圧造影剤よりリスクが低いことが研究により示されている)。
唯一の最も重要な患者関連危険因子は、真性糖尿病に関連する既存のCKDである。真性糖尿病でCKDを有する患者は、真性糖尿病も既存のCKDも有しない患者と比較して、CINのリスクが4倍増加する。
更に、本発明は、ヒトにおける造影剤の使用に起因する腎臓関連副作用の治療に使用するためのα1-ミクログロブリン(A1M)に関し、ここで、A1Mは、使用する造影剤に対する同時治療として使用される。A1Mは、原則として、造影剤と同時に投与されてもよく、或いは、腎臓関連副作用が出現したら、又は患者モニタリング、例えば適切な腎機能パラメータ(例えば、クレアチニン又はeGFR(推定糸球体濾過速度)、シスタチンC又は他の信頼できる腎機能マーカー)の患者モニタリングに基いて明らかとなったら、A1M療法を開始することとしてもよい。
A1Mの保護作用の前提条件は、当然のことながら、このタンパク質が1)外因性投与後に腎臓に局在し、2)腎臓への局在の直後に分解されないことである。したがって、本発明者らは、1)注入したA1Mの生体内分布の動力学、及び2)腎臓ホモジネート中でのこのタンパク質のサイズを調べた。図1から明らかなように、注入したA1Mの大部分は10分後に腎臓に局在する。図2は、腎臓に見出されるA1Mの大部分が少なくとも注射の60分後まで完全長サイズを示すことを証明している。腎臓でのA1Mの天然経路は、ほとんどの小さな血漿タンパク質と同様に、血液から一次尿への糸球体濾過、その後の近位尿細管上皮における再吸収及びリソソーム分解である[29,30]。尿中には少量のA1Mを依然として見出すことができる[24]。したがって、大部分が近位尿細管細胞で分解されると予測されるが、相当量のA1Mが尿細管再吸収及び分解から逃れ得て、最初の10〜60分間はインタクトで機能的のまま残るとの仮説を立てることができる。
α1-ミクログロブリン − 一般的背景
A1Mは、肝臓で高速に合成され、血流に分泌され、血管壁を横切って全ての器官の血管外区画に輸送される。このタンパク質は、より低速ではあるが、他の組織(血液細胞、脳、腎臓、皮膚)でも合成される。小さなサイズに起因して、遊離A1Mは腎臓において血液から迅速に濾過される。
A1Mは、保存された三次元構造を有するが、非常に多様な機能を有する動物、植物及び細菌由来のタンパク質群たるリポカリンスーパーファミリーのメンバーである。各リポカリンは、疎水性内部を有するβ-バレルポケットに折り畳まれた160〜190アミノ酸鎖からなる。少なくとも12のヒトリポカリン遺伝子が既知である。A1Mは、これまでに哺乳動物、鳥類、魚類及びカエルで同定されている26kDaの血漿及び組織タンパク質である。X線結晶学により決定されたA1Mの三次元構造を図3に示す。A1Mは、肝臓で高速に合成され、血流に分泌され、迅速(T1/2=2〜3分)に血管壁を横切って全ての器官の血管外区画に輸送される。A1Mは、血中及び間質組織において、遊離単量体形態で、及びより大きな分子(IgA、アルブミン、プロトロンビン)との共有結合性複合体としての両方で見出される。小さなサイズに起因して、遊離A1Mは腎臓で血液から迅速に濾過される。その後、大部分は再吸収されるが、相当量が尿に排出される。
抗酸化剤は、オキシダントを排除するか又は有害な酸化反応を防止する保護因子である。ヒト生物体は、酸化ストレスに応答して抗酸化剤を産生することができる。このような内因性抗酸化剤としては、スーパーオキシド分解性酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、過酸化水素分解性酵素であるカタラーゼ及びグルタチオンペルオキシダーゼ並びにヘム分解性酵素であるヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)が挙げられる。通常生じる26kDaの血漿及び組織タンパク質であるα1-ミクログロブリン(A1M)は、ラジカル及びヘムのスカベンジャーとしても、レダクターゼ及び酸化阻害剤としても機能することにより酸化的組織損傷に対する保護に関与することが最近示された。幾つかの最近の論文により、A1Mが、部分的には、ミトコンドリアに蓄積してミトコンドリア機能を保護することにより、細胞培養物及び器官外植片を酸化的損傷から防護することが証明されている。実際、ヒト組換えA1Mの注入を用いて、動物モデルにおいて、酸化ストレス関連疾患たる子癇前症及びヘモグロビン誘導糸球体傷害のインビボ治療に成功している。
A1Mの配列及び構造的特性
ヒトA1Mの完全長配列は既知である。このタンパク質は、183アミノ酸残基を有するポリペプチドからなる。他の哺乳動物、鳥類、両生類及び魚類に由来する多くの更なるA1M cDNA及び/又はタンパク質が検出、単離及び/又は配列決定されている。A1Mのペプチド鎖長は、主にC末端の変動に起因して、種間で僅かに異なる。異なる推定アミノ酸配列のアラインメント比較により、同一性パーセンテージがげっ歯類又は肉蹄類(ferungulates)とヒトとの間の約75〜80%から魚類と哺乳動物との間の約45%まで変化することが証明される。34位の遊離システイン側鎖は保存されている。この基は、レドックス反応(下記参照)、他の血漿タンパク質との複合体形成及び黄褐色発色団への結合に関与することが示されている。A1Mの三次元構造により、C34が溶媒に曝されており、リポカリンポケットの開口部付近に位置することが示される(図3を参照)。
本発明に関しては、用語「α1-ミクログロブリン」は、配列番号1(ヒトA1M)及び配列番号2(ヒト組換えA1M)で同定されるα1-ミクログロブリン、並びに同様の治療活性を有するそれらホモログ、フラグメント又はバリアントを包含するものとする。よって、A1Mは、本明細書で用いる場合、配列番号1又は配列番号2と少なくとも80%の配列同一性を有するタンパク質を意味するものとする。A1Mは、本明細書で用いる場合、配列番号1又は配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有することが好ましい。A1Mは、本明細書で用いる場合、配列番号1又は配列番号2と少なくとも95%、例えば99%又は100%の配列同一性を有することが更により好ましい。好適な観点において、α1-ミクログロブリンは、本明細書において同定されている配列番号1又は2のとおりである。図7には、ヒトA1M及びヒト組換えA1Mのアミノ酸配列(それぞれ配列番号1及び2)並びに対応するヌクレオチド配列(それぞれ配列番号3及び4)の配列表を示す。しかし、下記で同定されるタンパク質の重要部分を有するA1Mのホモログ、バリアント及びフラグメントもまた、本明細書で用いる場合の用語A1Mに含まれる。
上記のとおり、A1Mのホモログもまた、本明細書の説明に従って用いることができる。理論上、これまでに見出された最も原始的なもの(魚類(プレイス)由来のもの)を含む全ての種からのA1Mを、本明細書に記載する目的に用いることができる。A1Mはまた、ヒト、オランウータン、リスザル、ラット、ハダカデバネズミ、マウス、ウサギ、モルモット、ウシ、カエル、ニワトリ、セイウチ、マナティ及びプレイスからの単離形態で入手可能である。
A1Mのホモログ、バリアント及びフラグメントを考慮して、以下のものが、抗酸化効果に関するこのタンパク質の重要部分として同定された:
Y22 (チロシン、22位、塩基対64〜66)
C34 (システイン、34位、塩基対100〜102)
K69 (リジン、69位、塩基対205〜207)
K92 (リジン、92位、塩基対274〜276)
K118 (リジン、118位、塩基対352〜354)
K130 (リジン、130位、塩基対388〜390)
Y132 (チロシン、132位、塩基対394〜396)
L180 (ロイシン、180位、塩基対538〜540)
I181 (イソロイシン、181位、塩基対541〜543)
P182 (プロリン、182位、塩基対544〜546)
R183 (アルギニン、183位、塩基対547〜549)
(本明細書全体を通して、アミノ酸及びヌクレオチドの番号付けは、配列番号1及び3を参照する。図3及び4も参照;他の種由来の他のA1M、A1Mアナログ又はそれらの組換え配列を用いる場合には、当業者は、活性部位又は酵素活性を担う部位のアミノ酸を同定する方法を理解する)。
よって、A1Mが例えば配列番号1又は2と80%(又は90%又は95%)の配列同一性を有する場合は、上記のアミノ酸は当該分子中の適切な場所に存在することが好ましい。
ヒトA1Mは、3つの位置にてオリゴ糖で置換されており、2つは、N17及びN96に連結しシアリル化複合体タイプ、おそらくは2つの分岐鎖を有する炭水化物であり、1つは、T5に連結したより単純なオリゴ糖である。、しかし、異なる種からのA1Mタンパク質の炭水化物含量は、ツメガエル(Xenopus leavis)におけるグリコシル化なしから、多種多様なグリコシル化パターンにわたる範囲まで大きく変化する。また一方で、1つのグリコシル化部位(ヒトのN96に相当)は哺乳動物で保存されており、この特定の炭水化物が機能的に重要であり得ることが示唆される。
A1Mは、血漿又は尿から精製されると黄褐色に着色している。この着色は、主にポケットへの入口に位置する種々のアミノ酸側基に共有結合した異種化合物が原因である。これら修飾物は、インビボでA1Mにより共有結合的に捕捉された有機オキシダントの酸化された分解産物、例えばヘム、キヌレニン及びチロシルラジカルである。
A1Mはまた、電荷的にもサイズ的にも不均質であり、より褐色が強く着色したA1M分子はより負に荷電している。この不均質性の有望な説明は、異なる側基が異なるラジカルで様々な程度に修飾されており、この修飾がこのタンパク質の正味電荷を変化させるというものである。共有結合的に連結した着色物質は、C34並びにK92、K118及びK130に位置決めされており、後者は100〜300Daの分子質量を有する。トリプトファン代謝産物たるキヌレニンは、血液透析患者の尿からのA1Mにおいてリジン残基に共有結合していることが見出されており、この場合の当該タンパク質の褐色の供給源であるとみられる[6]。合成ラジカルABTS(2,2'-アジノ-ジ-(3-エチルベンゾチアゾリン)-6-スルホン酸)の酸化されたフラグメントは、Y22及びY132の側鎖に結合していた。
C34はA1Mの反応中心である。これは非常に電気的に陰性になり、このことは、C34が、K69、K92、K118及びK130の正に荷電した側鎖の近接によって、電子を供与する能力が高いことを意味する(電子の供与は、硫黄原子の酸化の前提条件であるC34チオール基の脱プロトン化を誘導する)。予備的なデータは、C34が、既知の最も電気陰性である基の1つであることを示している。
理論的には、A1Mの特性を特徴付けるアミノ酸(C34、Y22、K92、K118、K130、Y132、L180、I181、P182、R183)(下記でより詳細に説明する)は、別のフレームワーク上、例えば全体が同じように折り畳まれるタンパク質(別のリポカリン)又は完全に人工的な有機若しくは無機分子(例えば、プラスチックポリマー、ナノ粒子若しくは金属ポリマー)上に、同様の三次元形状に配置させることができる。
これらのアミノ酸の幾つかの三次元配置(青色楕円、リジンを「+」で示す)、A1M-フレームワーク(樽状)、電子の流れ及びラジカルの捕捉を図4に示す。
したがって、上記の反応中心及びその周囲を含む構造を含んでなるホモログ、フラグメント又はバリアントが好ましい。
本開示のポリペプチドの構造に改変及び変更をなして、該ポリペプチドと類似する特徴を依然として有する分子を生じさせることは可能である(例えば保存的アミノ酸置換)。例えば、配列中で、認識可能な活性喪失なく、或る特定のアミノ酸を他のアミノ酸に置換することが可能である。ポリペプチドの生物学的機能活性を規定するのは該ポリペプチドの相互作用能力及び性質であるので、ポリペプチド配列に或る特定のアミノ酸配列置換をなしたにもかかわらず類似する特性を有するポリペプチドを取得することは可能である。
このような変更を行なうときには、アミノ酸のハイドロパシー指数を考慮することができる。相互作用性生物学的機能のポリペプチドへの付与におけるハイドロパシーアミノ酸指数の重要性は、当該分野で一般に理解されている。或る特定のアミノ酸を、類似するハイドロパシー指数又はスコアを有する他のアミノ酸と置換することが可能であり、当該置換により類似する生物学的活性を依然として有するポリペプチドがもたらされ得ることは公知である。各アミノ酸は、疎水性及び電荷特性に基づいてハイドロパシー指数を割り当てられている。これら指数は次のとおりである:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/システイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);及びアルギニン(−4.5)。
アミノ酸の相対的なハイドロパシー特性が、得られるポリペプチドの二次構造を決定し、次に該構造が該ポリペプチドと他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、抗体、抗原など)との相互作用を規定すると考えられている。アミノ酸を、類似するハイドロパシー指数を有する別のアミノ酸で置換することが可能であり、該置換により、依然として機能的に等価なポリペプチドを取得し得ることは、当該分野で公知である。このような変更において、ハイドロパシー指数が±2以内であるアミノ酸同士の置換が好ましく、±1以内での置換が特に好ましく、±0.5以内での置換が尚更特に好ましい。
類似のアミノ酸同士の置換は、置換により生じた生物学的機能が等価なポリペプチド又はペプチドを免疫学的実施形態に用いることが意図されている場合には特に、親水性に基づいて行うこともできる。以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);プロリン(−0.5±1);トレオニン(−0.4);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。アミノ酸を、類似する親水性値を有する別のアミノ酸で置換することが可能であり、該置換により、依然として生物学的に等価なポリペプチド、特に免疫学的に等価なポリペプチドを取得し得ることが理解される。このような変更において、親水性値が±2以内のアミノ酸同士の置換が好ましく、±1以内での置換が特に好ましく、±0.5以内での置換が尚更特に好ましい。
上記で概説したように、アミノ酸置換は、一般的に、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。上記の特徴の1以上を考慮した例示的置換は、当業者に周知であり、そのような例示的置換としては、以下のものが挙げられるがそれらに限定されない(元の残基:例示的置換):(Ala:Gly、Ser)、(Arg:Lys)、(Asn:Gln1 His)、(Asp:Glu、Cys、Ser)、(Gln:Asn)、(Glu:Asp)、(Gly:Ala)、(His:Asn、Gln)、(Ile:Leu、Val)、(Leu:Ile、Val)、(Lys:Arg)、(Met:Leu、Tyr)、(Ser:Thr)、(Thr:Ser)、(Trp:Tyr)、(Tyr:Trp、Phe)及び(Val:Ile、Leu)。よって、本開示の実施形態は、上記のポリペプチドの機能的又は生物学的等価物を企図する。特に、ポリペプチドの実施形態としては、興味対象のポリペプチドに対して約50%、60%、70%、80%、90%及び95%の配列同一性を有するバリアントを挙げることができる。
本発明に関して、2つのアミノ酸配列間又は2つの核酸配列間の相同性は、パラメータ「同一性」により記述される。配列アラインメント及び相同性スコア算出は、タンパク質及びDNAの両方のアラインメントに有用である完全Smith-Watermanアラインメントを用いて行ってよい。デフォルトのスコア付けマトリクスBLOSUM50及び同一性マトリクスを、それぞれタンパク質アラインメント及びDNAアラインメントに用いる。ギャップ中の最初の残基に対するペナルティは、タンパク質については−12、DNAについては−16である一方、ギャップ中の更なる残基に対するペナルティは、タンパク質については−2、DNAについては−4である。アラインメントは、FASTAパッケージバージョンv20u6を用いて行ってもよい。
タンパク質配列の多重アラインメントは、「ClustalW」を用いて行ってもよい。DNA配列の多重アラインメントは、タンパク質アラインメントをテンプレートとして用い、アミノ酸をDNA配列からの対応するコドンで置き換えて行ってもよい。
或いは、アミノ酸配列及びDNA配列を整列させるために異なるソフトウェアを用いることができる。2つのアミノ酸配列のアラインメントは、例えば、EMBOSSパッケージ(http://emboss.org)バージョン2.8.0.からのNeedleプログラムを用いることにより決定する。Needleプログラムは、記述されているグローバルアラインメントアルゴリズムを実行する。用いる置換マトリクスはBLOSUM62であり、ギャップ開口ペナルティは10であり、ギャップ伸長ペナルティは0.5である。
アミノ酸配列(例えば、配列番号1)と異なるアミノ酸配列(例えば、配列番号2)との間の同一性の程度は、(当該2つの配列のアラインメント中の厳密一致の数)/(「配列番号1」の長さ又は「配列番号2」の長さ[いずれか短い方])として算出する。結果をパーセント同一性で表わす。
厳密一致は、2つの配列が重複部分の同じ位置に同一のアミノ酸残基を有する場合に起こる。
該当する場合、2つのヌクレオチド配列間の同一性の程度は、アイデンティティテーブルと以下の多重アラインメントパラメータ:ギャップペナルティ10及びギャップ長ペナルティ10で、LASER-GENETM MEGALIGNTMソフトウェア(DNASTAR, Inc.、Madison、WI)を用いるWilbur-Lipman法により決定することができる。ペアワイズアラインメントパラメータは、Ktuple=3、ギャップペナルティ=3及びウィンドウ=20である。
ポリペプチドのアミノ酸配列の、配列番号1のアミノ酸との又は該アミノ酸に対する同一性のパーセンテージは、i)2つのアミノ酸配列を、BLOSUM62置換マトリクス、ギャップ開口ペナルティ10及びギャップ伸長ペナルティ0.5でNeedleプログラムを用いて整列させ、ii)アラインメント中の厳密一致の数を計数し、iii)厳密一致の数を、該2つのアミノ酸配列のうちの短い方の長さで除し、iv) iii)の除算の結果をパーセンテージに変換することにより決定してもよい。本発明の他の配列に対する又は該配列との同一性のパーセンテージは、同様に算出される。
例えば、ポリペプチド配列は、参照配列と同一であってもよいし(すなわち、100%同一)、参照配列と比較したときに或る特定数(整数)までのアミノ酸変更を含んでいてもよい(その結果、%同一性は100%未満である)。このような変更は、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換(保存的置換及び非保存的置換を含む)又は挿入から選択される。ここで、変更は、参照ポリペプチド配列のアミノ末端位若しくはカルボキシ末端位に又はこれらの末端位の間の任意の場所に、参照配列中でアミノ酸の間に個々に散在して又は参照配列内に1以上の近接群で生じてよい。
保存的アミノ酸バリアントは、天然に存在しないアミノ酸残基を含んでなることができる。天然に存在しないアミノ酸としては、限定されないが、トランス-3-メチルプロリン、2,4-メタノプロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、N-メチル-グリシン、アロ-トレオニン、メチルトレオニン、ヒドロキシ-エチルシステイン、ヒドロキシエチルホモシステイン、ニトロ-グルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、チアゾリジンカルボン酸、デヒドロプロリン、3-及び4-メチルプロリン、3,3-ジメチルプロリン、tert-ロイシン、ノルバリン、2-アザフェニル-アラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン及び4-フルオロフェニルアラニンが挙げられる。天然に存在しないアミノ酸残基をタンパク質に組み込む幾つかの方法が、当該分野において公知である。例えば、化学的にアミノアシル化したサプレッサーtRNAを用いてナンセンス変異を抑制するインビトロ系を用いることができる。アミノ酸を合成し、tRNAをアミノアシル化する方法は、当該分野で公知である。ナンセンス変異を含むプラスミドの転写及び翻訳は、E. coli S30抽出物と市販の酵素とその他の試薬とを含んでなる無細胞系で行なう。タンパク質はクロマトグラフィーにより精製する。第2の方法では、翻訳は、アフリカツメガエル卵母細胞で、変異mRNA及び化学的にアミノアシル化したサプレッサーtRNAのマイクロインジェクションにより行う。第3の方法では、E. coli細胞を、置換される天然アミノ酸(例えば、フェニルアラニン)の非存在下、所望の天然に存在しないアミノ酸(例えば、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン又は4-フルオロフェニルアラニン)の存在下で培養する。天然に存在しないアミノ酸が、対応する天然物の代わりにタンパク質に組み込まれる。天然に存在するアミノ酸残基を、インビトロ化学改変により天然に存在しない種に変換することができる。化学改変を部位特異的変異誘発と組み合わせて、置換の範囲を更に拡張することができる。A1Mの抗酸化特性を支持するに十分な三次元構造を提供する代替の化学構造は、他の技術、例えば人工足場、アミノ酸置換などにより提供してもよい。更に、上記並びに図3及び4に示すA1Mの活性部位を模倣する構造は、A1Mと同じ機能を有すると考えられる。
医薬組成物及び投薬量
本発明はまた、
i)造影剤を含んでなる医薬組成物、及び
ii)A1Mを含んでなる医薬組成物
を含んでなるキットを提供する。
キットは、上記2つの組成物を含有する1つのパッケージの形態である。
造影剤を含んでなる医薬組成物は、代表的には、既に上市されている組成物である。
A1M(又は本明細書で規定されるようなアナログ、フラグメント若しくはバリアント)を含んでなる医薬組成物は、i.v.投与用に意図されるものである。したがって、A1Mは、液体、例えば溶液、分散液、乳液、懸濁液などに製剤化することができる。
非経口用途のためには、適切な溶媒としては、水、植物油、プロピレングリコール及びこの目的に一般的に認可されている有機溶媒が挙げられる。一般に、当業者は、「Remington's Pharmaceutical Science」Gennaroら編(Mack Publishing Company)、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」Roweら編(PhP Press)及び特定の製剤タイプに適切な賦形剤及び特定の製剤の製造方法に関する公的モノグラフ(例えばPh.Eur.又はUSP)に指針を見出すことができる。
A1Mは、造影剤の投与との関連で単回投薬されるか又は複数回投薬される。好ましくは、各投薬は、単回投薬として、単回投薬とその後の短時間(60分間まで)の緩徐注入として又は60分までの短時間の緩徐注入のみとしてi.v.投与される。最初の投薬は、造影剤と同時に又は造影剤注射の0〜60分前から0〜30分後までの期間内に行なわれる。造影剤注射後に、必ずでなくてよいが、追加のA1M投薬を行なうことができる。各投薬は、患者の体重に関連する量のA1Mを含む(1〜15mg A1M/kg患者)。
図1は正常NMRIマウスにおける125I-A1Mの生体内分布を示す(左上)。左下の図は腎臓での経時的取込みを示す。データを4匹の動物からの%IA/g±SEMとして示す。 図2は、注射10、20及び60分後での、正常NMRIマウスの腎臓及び血清における完全長A1Mの存在を示す。動物に150μgのA1Mをi.v.注射し、血液及び腎臓を示した時点で採取した。血液を凝固させ、遠心分離により血清を分離した。一方の腎臓を1mlのPBS中でホモジナイズし、遠心分離した。1μlの血清及び6μlの腎臓ホモジネート上清をSDS-PAGEに適用し、PVDFメンブレンに転写し、抗A1Mを用いてブロットした。各レーンは別個のマウスを表す。 図3はA1Mの三次元構造を示す。この図は、PyMOL[Molinspiration, M. v.(2014)]及びヒトA1Mの結晶構造からの配座[Meining, W.及びSkerra, A.(2012) The crystal structure of human α1-microglobulin reveals a potential haem-binding site. Biochem J 445, 175-182]を用いて作成した。βストランド及びαへリックスを緑色リボンで示す。A1Mの機能的活性に関与するC34、K92、K118、K130及びH123の側鎖を緑色スティックとして示し、窒素原子を青色で示す。4つのリポカリンループを#1〜#4と標記する。 図4は幾つかのアミノ酸(青色楕円、リジンを「+」で示す)の三次元配置、A1M-フレームワーク(樽形)、電子の流れ及びラジカル捕捉を示す。 図5は、125I-A1Mの定量SPECT/CT分析を示し、腎臓皮質における優勢な活性分布を矢状断面図及び背側面図で描画する。甲状腺における125I-A1Mの僅かな取込みも観察することができる。 図6はi.v.注射20分後の腎臓におけるA1M免疫反応性の分布を示す。A1Mをi.v.注射し、動物を20分後に安楽死処分し、K323 抗A1M抗体での免疫組織化学によりA1M免疫反応性を検出した。左パネルは、皮質(A)、髄質(B)及び集合管(C)において、A1M免疫反応性を有する代表的領域を示す;これら領域の位置を右パネルの概略図においてA〜Cで示し、箱状に囲んで強調した。スケールバーはA〜Cにおいて100μmを表す。 図7は配列番号1〜4を示す。 続きである。 続きである。 続きである。
実験
材料及び方法
組換えヒトA1M
イオン交換クロマトグラフィー工程を追加した以外はKwasekら[25]に記載されるように、組換えヒトA1MをE.coliで発現させ、精製し、リフォールドさせた。イオン交換クロマトグラフィー工程は、A1Mを、20mM Tris-HCl(pH8.0)で平衡化したDEAE-Sephadex A-50カラム(GE Healthcare, Uppsala, Sweden)に適用することにより行なった。A1Mを、(20mM Tris-HCl(pH8.0)から20mM Tris-HCl、0.2M NaClまでの)線形塩グラジエントで1ml/分の流速にて溶出させた。280nmの吸光度によるA1M含有画分をプールして濃縮した。

A1Mの125I-標識
A1Mの125Iでの放射性標識を、クロラミンT法[26]を用いて行なった。簡潔には、A1M及び125I(Perkin-Elmer, NEZ033005MC)を0.5Mリン酸ナトリウム(pH7.5)中それぞれ1mg/ml及び10mCi/mlの最終濃度にて混合した。クロラミンTを0.4mg/mlまで添加し、氷上で2分間反応させ、NaHSO3を0.8mg/mlまで添加して反応を停止させた。Sephadex G-25カラム(PD10, GE Healthcare, Buckinghamshire, UK)でのゲルクロマトグラフィーにより、タンパク質結合ヨウ素を遊離ヨウ素から分離した。約50〜200kBq/μgタンパク質の比活性が得られた。
動物研究
全ての動物実験を、実験動物の保護に関する国内法及び動物実験倫理委員会(Lund University, Sweden)の認可を遵守して行なった。6〜8週齢の雄性及び雌性NMRI正常マウス(Taconic, Ry, Denmark)を用いた。

生体内分布
生体内分布研究を行ない、125I-A1Mの薬物動態及び生体内分布を決定した。125I-A1M(100kBq、1μg)をNMRIマウスに尾静脈よりi.v.投与した(注射した分子及び時点あたりn=3)。注射の10、20、40、60分後に動物を安楽死処分し、血液及び器官をサンプル採取し、秤量し、NaI(TI)ウェルカウンタ(Wallac Wizard 1480 Wizard, Perkin Elmer)で測定した。器官特異的取込み値は、注射した活性に対するパーセント/グラム組織(%IA/g)又は注射した活性に対するパーセント(%IA)として算出した。

ウェスタンブロッティング
非標識A1Mをi.v.注射した動物(100μl/動物、1.5 mg/ml)の腎臓及び血清についてSDS-PAGE分析を行なった。注射の10、20及び60分後に動物を安楽死処分し、血液及び腎臓をサンプル採取し、腎臓を洗浄し、1mlのPBS中に置いた。機械的組織ホモジナイゼーション後、組織を10,000×gにて10分間遠心分離し、上清を新たな管に移し、下記で説明するとおり更なる分析に用いた。血液サンプルから1,000×gにて10分間の遠心分離により血清を得た。SDS-PAGEゲルを還元条件下で泳動し、Trans-Blot Turboトランスファーシステム(Bio-Rad, Delaware, USA)を用いて、分離したタンパク質をポリビニリデンジフルオリド(PVDF)メンブレン(Immobilon-P, Millipore, Bedford, MA, USA)に転写した。その後、PVDFメンブレンをブロックし、以前に記載されたとおりに、ウサギポリクローナル抗A1M抗血清(K322、5μg/ml)のIgG画分と共に一晩インキュベートし、続いて、Alexa Fluor 647ヤギ抗ウサギIgG(3000×希釈;Molecular Probes)と共にインキュベートした。ChemiDoc MPイメージングシステム(BioRad)を用いてメンブレンを発色させた。
SPECT撮像
NanoSPECT/CT(Bioscan, Washington DC, USA)での撮像の間、2%〜3%イソフルランガス(Baxter;Deerfield, IL, USA)を用いて動物を麻酔した。動物に約5MBqの125I-A1M(約30μg)をi.v.注射し、NSP-106マルチ-ピンホールマウスコリメータで20m p.i.にて撮像した。20%エネルギーウィンドウは、125I撮像には35keV光電ピークに、111In撮像には175及び241光電ピークに設置した。HiSPECTソフトウェア(SciVis;Goettingen, Germany)を用いてSPECTデータを再構築した。各全身SPECTの前に、CT撮像を行なった。

腎臓 − サンプル調製及びA1Mの免疫標識
150μgのA1M(非接合)のi.v.注射後、10、20、40、60分及び4時間で動物を犠牲にした。全ての時点で評価したが、細胞レベルでの詳細な分析(レーザ共焦点走査顕微鏡観察及び定量的画像分析を含む)を示す20分及び4時間の腎臓のみを含ませている。重要なことには、全ての実験を野生型マウス及びヌードマウスの両方について行なって評価し、その両方が同じ標識パターンを有することが示された。しかし、野生型のデータのみを含ませている。
安楽死後、腎臓を取り出し、直接凍結し、Tissue Tecに包埋した。組織ブロックをクリオスタット(Microm, HM 500OM, Walldorf, GmbH)で切片化し、切片(10μm)をSuperFrostプラススライド(Merck, Darmstadt, Germany)上に採集した。連続切片化を行い、スライドあたり3〜4切片を採集し、そのうちの隣接スライドを色素原免疫組織化学(IHC)に用いた。切片を、4%パラホルムアルデヒド(PFA;Sigma, St. Louis, MO, USA;PBS、0.1M、pH7.4中に溶解)中で15分間、後固定し、PBS中で5分間、2回濯いだ。
A1M標識に関して、切片を色素原可視化(IHC)のために0.03%過酸化水素(H2O2;Merck, Darmstadt, Germany)と共に5分間インキュベートした後、1%ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma, St. Louis, MO, USA;PBS中に希釈)と共に30分間インキュベートした。その後、切片を、(1% BSA、0.02% Triton X-100(Sigma, St. Louis, MO, USA)を含有するPBS中に)1:7500希釈したウサギ抗ヒトA1M(K:323、IgG)と共に16時間4℃にてインキュベートした。
次いで、切片を、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP;Dako Glostrup, Denmark)に接合したヤギ抗ウサギIgGと共に20分間RTにてインキュベートした。免疫反応を、0.03% H2O2を含有するジアミノベンジジン(DAB)溶液中での10分間RTにてのインキュベーションにより行なった。切片をPBS中で濯ぎ(2×10分間)、ヘマトキシリン(Mayers, Hematoxylin Mayers Htx Histolab Products AB, Gothenburg, Sweden)で対比染色し、続いて段階的濃度のアルコール系列中で脱水し、100%キシレン中に浸漬した。Pertex(Histolab Products AB, Gothenburg, Sweden)中で切片をマウントしてカバーグラスで覆った。
明視野顕微鏡(Leica DMRE)において、色素原単一標識A1Mを可視化してデジタル文書化した。Leicaデジタルカメラ(DFC 500)を用いてデジタル画像を採集した。描画に使用する画像を、カラーバランス、明度及びコントラストについて補正した。
結果
生体内分布
図1は、注射10、20、40及び60分後並びに4及び24時間後での125I-A1Mのエキソビボ生体内分布を示す。125I-A1Mについて、腎臓における高取込みが観察され、ピーク値は注射10分後であった。注射した非標識A1Mのサイズ分布を、血清中及び可溶した腎臓において、SDS-PAGE及びウェスタンブロッティングにより調べた。図2に示すとおり、A1Mは、腎臓及び血清で、常に、約25kDaの見かけ分子質量を有する均質なバンドとして、及び約50kDaの微量なバンドとして移動する。強バンドは、22.6kDaの理論分子質量を有する単量体A1Mを表し、後者は二量体形態を表す蓋然性が最も高い。最高量は10分後に観察され、これにより図1下パネルに示される125I-標識A1Mの動力学が支持される。これら結果は、血液及び腎臓に見出されるA1Mがインタクトで完全長であること及びしたがって分解は無視し得ることを示している。
SPECT/CT画像分析
125I-A1Mについて定量SPECT/CT分析を行ない、 腎臓での活性分布を描画した。図5のSPECT/CT画像は腎臓での高取込みを証明する。125I-A1M(図6C及び6D)は腎皮質に局在するようである。甲状腺での125I-A1Mの微かな取込みもまた観察することができる。
IHC顕微鏡分析(図6)は、注入したA1Mが主に腎皮質に局在し、免疫反応性は髄質及び集合管に向かって徐々に低減することを示している。A1Mの強力な免疫染色は、主に、近位管構造及び糸球体サブセットで観察することができる。

Claims (16)

  1. ネフロパシーの予防に使用するためのα-1-ミクログロブリン。
  2. ネフロパシーの治療に使用するためのα-1-ミクログロブリン。
  3. ネフロパシーが医用造影剤の使用により誘導されるか又は引き起こされる、請求項1又は2に記載の使用のためのα-1-ミクログロブリン。
  4. 医用造影剤により誘導されるか又は引き起こされる腎臓関連副作用の予防及び/又は治療に使用するためのα-1-ミクログロブリン。
  5. 医用造影剤により誘導されるか又は引き起こされる酸化ストレスの予防及び/又は治療に使用するためのα-1-ミクログロブリン。
  6. 造影剤を伴う検査を受ける人であって、以下の危険因子:
    ・年齢 > 75歳
    ・CKD(慢性腎疾患)
    ・真性糖尿病
    ・高血圧
    ・メタボリックシンドローム
    ・貧血
    ・多発性骨髄腫
    ・低アルブミン血症
    ・腎移植
    ・下記のものにより証明される血液量減少及び有効循環量低下:
    *鬱血性心不全(CHF)
    *40%未満の駆出率(EF)
    *低血圧
    *動脈内バルーンカウンターパルセイション
    のうちの1つ又はそれより多くの危険因子を有する人における請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用のためのα-1-ミクログロブリン。
  7. 造影剤を伴う検査を受ける人であって、以下の危険因子:
    ・CKD
    ・真性糖尿病
    のうちの1つ又はそれより多くの危険因子を有する人における請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用のためのα-1-ミクログロブリン。
  8. α-1-ミクログロブリンが、医用造影剤を伴う検査を受ける人に、遅くとも検査が始まる24時間前に投与される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用のためのα-1-ミクログロブリン。
  9. α-1-ミクログロブリンが、造影剤を伴う検査を受ける人に、せいぜい検査が始まる1時間前に、造影剤の投与より遅くならずに投与される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用のためのα-1-ミクログロブリン。
  10. α-1-ミクログロブリンが、造影剤を伴う検査を受ける人に、腎機能の信頼できるマーカーが腎臓に対する損傷を示し次第投与される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用のためのα-1-ミクログロブリン。
  11. α-1-ミクログロブリンが、造影剤を伴う検査を受ける人に、医用造影剤の投与後約12時間から約48時間までの期間に投与される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用のためのα-1-ミクログロブリン。
  12. i)α-1-ミクログロブリン、及び
    ii)医用造影剤
    を含んでなるキット。
  13. α-1-ミクログロブリンが医薬組成物の形態である、請求項12に記載のキット。
  14. 使用指示書を更に含んでなる、請求項12又は13に記載のキット。
  15. α-1-ミクログロブリンが配列番号1又は2に対して少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用のためのα-1-ミクログロブリン又は請求項12〜14のいずれか1項に記載のキット。
  16. α-1-ミクログロブリンが
    Y22 (チロシン、22位、塩基対64〜66)
    C34 (システイン、34位、塩基対100〜102)
    K69 (リジン、69位、塩基対205〜207)
    K92 (リジン、92位、塩基対274〜276)
    K118 (リジン、118位、塩基対352〜354)
    K130 (リジン、130位、塩基対388〜390)
    Y132 (チロシン、132位、塩基対394〜396)
    L180 (ロイシン、180位、塩基対538〜540)
    I181 (イソロイシン、181位、塩基対541〜543)
    P182 (プロリン、182位、塩基対544〜546)
    R183 (アルギニン、183位、塩基対547〜549)
    (上記アミノ酸残基は、ヒト野生型α-1-ミクログロブリン(配列番号1又は配列番号3)中の位置に相当する)
    を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用のためのα-1-ミクログロブリン又は請求項12〜14のいずれか1項に記載のキット。
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