JP2017136014A - M2様マクロファージ組成物の製造方法、およびm2様マクロファージ組成物原料 - Google Patents
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Abstract
【課題】M2様マクロファージ組成物原料およびM2様マクロファージ組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態に従うM2様マクロファージ組成物の製造方法は、マクロファージ原料細胞をマクロファージコロニー刺激因子および5mg/mL以上の濃度の高分子量ヒアルロン酸を含む培地中で培養することにより、M2様マクロファージ組成物を得ることを含む。
【選択図】 なし
【解決手段】本実施形態に従うM2様マクロファージ組成物の製造方法は、マクロファージ原料細胞をマクロファージコロニー刺激因子および5mg/mL以上の濃度の高分子量ヒアルロン酸を含む培地中で培養することにより、M2様マクロファージ組成物を得ることを含む。
【選択図】 なし
Description
本発明は、M2様マクロファージ組成物の製造方法、およびM2様マクロファージ組成物原料に関する。
生体の創傷治癒の過程では、炎症性のM1マクロファージの出現と、それに続く、創傷治癒性のM2マクロファージの出現が必須であると考えられている(非特許文献1)。糖尿病における創傷や慢性静脈性下腿潰瘍においては、M2へのサブクラス変換に障害があり、創傷治癒が阻害されるとの報告がある(非特許文献2、非特許文献3)。
Lucas T, Waisman A, Ranjan R, Roes J, Krieg T, Mueller W, Roers A, Eming SA., "Differential roles of macrophages in diverse phases of skin repair.", J Immunol. 2010 Apr 1;184(7):3964-77.
Okizaki S, Ito Y, Hosono K, Oba K, Ohkubo H, Amano H, Shichiri M, Majima M., " Suppressed recruitment of alternatively activated macrophages reduces TGF-β1 and impairs wound healing in streptozotocin-induced diabetic mice.e", Biomed Pharmacother. 2015 Mar;70:317-25.
Sindrilaru A, Peters T, Wieschalka S, Baican C, Baican A, Peter H, Hainzl A, Schatz S, Qi Y, Schlecht A, Weiss JM, Wlaschek M, Sunderkoetter C, Scharffetter-Kochanek K., " An unrestrained proinflammatory M1 macrophage population induced by iron impairs wound healing in humans and mice.", J Clin Invest. 2011 Mar;121(3):985-97.
上記の状況に鑑み、本願発明の目的は、M2様マクロファージ組成物の製造方法、およびM2様マクロファージ組成物原料を提供することである。
本実施形態に従うM2様マクロファージ組成物の製造方法は、マクロファージ原料細胞をマクロファージコロニー刺激因子および5mg/mL以上の濃度の高分子量ヒアルロン酸を含む培地中で培養することにより、M2様マクロファージ組成物を得ることを含む。
本発明によれば、M2様マクロファージ組成物の製造方法、およびM2様マクロファージ組成物原料が提供される。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
実施形態に従うM2様マクロファージ組成物の製造方法は、マクロファージ原料細胞をマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)および5mg/mL以上の濃度の高分子量ヒアルロン酸を含む培地中で培養することにより、M2様マクロファージ組成物を得ることを含む。
一般的なマクロファージ原料細胞は、未分化マクロファージおよび/またはマクロファージ前駆細胞であり得る。未分化マクロファージは、例えば、サブクラスへ分化していないマクロファージまたは非活性型マクロファージなどであり得る。マクロファージ前駆細胞は、例えば、単球などであり得る。また、マクロファージ原料細胞は、後述するような、脾臓細胞から調製されたものであり得る。
マクロファージ原料細胞は、治療対象起源であり得る。例えば、マクロファージ原料細胞は、M2様マクロファージ組成物の製造に先駆けて、M2様マクロファージ組成物により治療されるべき対象から採取され得る。
治療対象起源のマクロファージ原料細胞は、言い換えれば、自家由来のマクロファージ原料細胞である。マクロファージ原料細胞は、自家由来であってもよく、他家由来であってもよい。他家由来のマクロファージ原料細胞が使用される場合には、例えば、それは、治療対象と適合するマクロファージ原料細胞であることが好ましい。治療対象と適合する他家由来のマクロファージ原料細胞とは、治療対象に対して望まない影響、例えば、悪影響を及ぼさないものであり得る。そのような他家由来のマクロファージ原料細胞であるか否かの判断は、それ自体公知の基準に従い、例えば、免疫に関する専門知識を有する者が行うことが可能である。そのような判断は、例えば、M2様マクロファージ組成物の製造前若しくは後、またはM2様マクロファージ組成物の使用前に、治療対象の血液型または血球の型と照合することにより行われ得る。
対象または対象以外の起源動物若しくは起源組織若しくは起源臓器からのマクロファージ原料細胞を採取する方法は、それ自体公知の何れかの手段が使用され得る。例えば、それは、採血、脾臓からの細胞採取または骨髄からの細胞採取などであり得る。
治療対象は、哺乳類であってよく、例えば、ヒト、サル、ネコ、イヌ、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ラット、マウスおよびウサギなどであり得るが、これらに限定されるものではない。
脾臓細胞を出発物質として、上述のようなマクロファージ原料細胞を得て、それを用いてM2様マクロファージ組成物が製造されてもよい。また、脾臓細胞を出発物質として、M2様マクロファージ組成物が製造されてもよい。脾臓細胞は、治療対象を基準として、自家由来であっても他家由来であってもよい。
脾臓細胞を出発物質として用いて、M2様マクロファージ組成物を製造する方法は、例えば、脾臓細胞を一次培養してマクロファージ原料細胞を得ること、および一次培養により得られたマクロファージ原料細胞をM−CSFと5mg/mL以上の濃度の高分子量ヒアルロン酸とを含む培地中で二次培養し、これによりM2様マクロファージ組成物を得ることを含み得る。前記一次培養は、例えば、脾臓細胞をM−CSFの存在下で培養することにより行われ得る。
このような方法により用いられる脾臓細胞は、治療対象起源であり得る。例えば、出発物質としての脾臓細胞は、M2様マクロファージ組成物の製造に先駆けて、M2様マクロファージ組成物により治療されるべき対象から採取され得る。脾臓細胞の採取方法は、それ自身公知の何れかの方法により行われ得る。
マクロファージ原料細胞の培養に使用される基礎培地は、一般的にマクロファージを培養するために使用される何れの基礎培地であり得る。出発物質としての脾臓細胞を培養するための基礎培地は、一般的に脾臓細胞を培養するために使用される何れの基礎培地であってもよい。例えば、マクロファージ原料細胞および/または脾臓細胞の培養に使用され得る基礎培地は、例えば、DMEM、MEM、α−MEMおよびRPMI1640等であり得る。あるいは、培養されるマクロファージ原料細胞および脾臓細胞の起源となる動物種に応じてより適切な培地が選択されてもよい。
M2様マクロファージ組成物の製造方法において使用される培地は、基礎培地中に更に血清を含み得る。血清は、例えば、ウシ胎仔血清(FBS)などのウシ血清、ウマ血清、ヒト血清などであってもよい。しかしながら、血清を含まない無血清培地を基礎培地として使用してもよい。
マクロファージ原料細胞を培養するための培地および脾臓細胞を一次培養するための培地に含まれ得るM−CSFの濃度は、例えば、培地中に10ng/ml〜100ng/ml、例えば、10ng/ml〜100ng/mlであり得るが、この範囲に限定されない。
マクロファージ原料細胞を培養するための培地に含まれ得る高分子量ヒアルロン酸は、例えば、分子量約150万〜390万、または分子量約50万〜600万のヒアルロン酸であり得る。また、ヒアルロン酸の培地中の濃度は、例えば、5mg/mL以上、例えば、5mg/mL〜9mg/mLであり得る。
マクロファージ原料細胞および脾臓細胞の培養は、37℃、5%CO2のインキュベータ内で行われ得る。例えば、マクロファージ原料細胞の培養は2日〜14日間に亘り行われればよく、例えば、3、7、10または14日間に亘り行われ得る。脾臓細胞の培養は2日〜7日間に亘り行われ、例えば、6日間行われ得る。マクロファージ原料細胞の培養および脾臓細胞の培養においては、2〜3日に一度、新鮮な培地を用いて培地交換が行われ得る。
M2様マクロファージ組成物に含まれるマクロファージの数は、例えば1×104個〜1×106個、5×104個〜1×106個、1×105個〜1×106個、約1×105個であり得る。
本実施形態に従うM2様マクロファージ組成物に含まれるマクロファージは、M2マクロファージを含む。M2様マクロファージ組成物に含まれるM2マクロファージの数は、例えば1×104個〜1×106個、5×104個〜1×106個、1×105個〜1×106個、約1×105個であり得る。
このようなM2様マクロファージ組成物に含まれるマクロファージの細胞数は従来の方法によって製造される生細胞数よりも多い。それにより、本実施形態に従うマクロファージの製造方法は、従来よりも多くの生細胞が得られる。また、実施形態によれば、簡便な工程でM2様マクロファージ組成物を得ることが可能である。
更なる実施形態において、本実施形態に従うM2様マクロファージ組成物は、M2様マクロファージ組成物原料を用いて製造されうる。M2様マクロファージ組成物原料は、マクロファージ原料細胞、並びにM−CSFおよび5mg/mL以上の濃度の高分子量ヒアルロン酸を含む培地を含む。M2様マクロファージ組成物原料の培地は、さらに、血清を含み得る。M2様マクロファージ組成物原料に含まれ得る、マクロファージ原料細胞、M−CSF、5mg/mL以上の濃度の高分子量ヒアルロン酸、培地および血清は、それぞれ上述したものと同様のものであり得る。M2様マクロファージ組成物原料に含まれるマクロファージ原料細胞は、脾臓細胞であってもよい。
M2様マクロファージ組成物原料を用いてM2様マクロファージ組成物を製造する場合、M2様マクロファージ組成物原料が、上述と同様の方法で培養されてM2様マクロファージ組成物が得られ得る。
上述の製造方法により得られたM2様マクロファージ組成物も本発明の実施形態として提供される。以下に、M2様マクロファージ組成物の特徴について説明する。
マクロファージから一般的に発現されるTNF−α、TGF−β、Dectin−1およびVEGF(血管内皮細胞増殖因子)は、マクロファージのサブタイプのマーカーとして用いられ得る。当該マーカーは、公知のマクロファージのサブタイプM2、即ち、M2a、M2b、M2cおよびM2d、並びに公知のサブタイプM1において発現が確認されるマーカーである。
M2様マクロファージ組成物に含まれるマクロファージ群は、TGF−βおよびDectin−1の発現量が少なく、VEGFの発現量が多いという特徴を有する。
TNF−αは、腫瘍壊死因子であり、炎症を発生させる因子として知られている。これは、間接リウマチ、糖尿病などの疾患をもつ対象においてその発現が確認されている。TGF−βは、腫瘍増殖因子であり、骨芽細胞の増殖およびコラーゲンなどの結合組織の合成および増殖を促進する因子として知られている。これらのTNF−αは炎症性因子として知られ、それに対してTGF−βは、抗炎症性因子として知られている。Dectin−1は、免疫を高め、腫瘍などの悪性因子を攻撃するβグルカンのレセプターであり、真菌の防御因子として働く物質であることが知られている。VEGFは、血管内皮細胞増殖因子として知られ、血管形成に関与する糖蛋白質である。
表1に示されるように、M1マクロファージでは、TNF−αの発現量が多く、Dectin−1の発現量が少ない。M2a、M2b、M2cマクロファージでは、TNF−αおよびVEGFの発現量が少なく、Dectin−1の発現量が多い。M2dマクロファージは、Dectin−1の発現量が少なく、VEGFの発現量が多い。
実施形態に従うマクロファージ組成物に含まれるマクロファージ群には、M1マクロファージ、M2a、M2bもしくはM2cマクロファージ、M2dマクロファージ、またはその他のマクロファージが何れかの組み合わせで混合して含まれ得る。そして4つの蛋白質の発現量の特徴は、上述のM1マクロファージ、M2a、M2bもしくはM2cマクロファージの何れとも異なっているように見える。Dectin−1の値が低く、VEGF値が高い点は、実施形態に従うマクロファージ組成物は、M2dクラスのマクロファージと類似しているように見える。ここでは、このような実施形態に従うマクロファージ組成物を「M2様マクロファージ」と称している。
従来では、創傷治癒効果を有するM2マクロファージ組成物はなく、創傷治癒においてM2マクロファージの誘導剤が提案されているのみである。このような誘導剤を用いた治療は、間接的にM2マクロファージを利用し得る治療である。そのため、M2マクロファージの効果を有効に利用しにくいと考えられる。これに対して実施形態のマクロファージ組成物では、目的とするマクロファージ自身を直接に用いることができるので、創傷治癒の目的や効果に応じて適切な治療が可能となる。従って、より効率的な効果が期待できる。また、実施形態のマクロファージ組成物は、製造において複雑な操作を必要とせず、簡便に製造することができるため、利便性に優れる。簡便に得られることから、M2様マクロファージ組成物は、M2マクロファージの基礎研究においても有用である。
実施形態に従うマクロファージ組成物は、創傷治癒を促進する効果を有し得る。従って、創傷部位に適用する医薬組成物として使用され得る。
M2様マクロファージ組成物は、上述のように得られたマクロファージ群をゲルに分散することによって製造されてもよい。
このような組成物は、マクロファージとそれを含むゲルとを含む。使用され得るゲルは、マクロファージを担持し得る担体であればよい。また当該ゲルは、ゲル中のマクロファージが治療部位へ遊走可能な程度の軟性または流動性を有する。そのようなゲルの例は、例えば、高分子ゲルであればよく、ヒアルロン酸ゲル、コラーゲンゲル、寒天ゲルおよびゼラチンゲルなどであり得る。
また、高分子ゲルが、ヒアルロン酸ゲル以外である場合には、マクロファージと共にヒアルロン酸を含有してもよい。その場合、ヒアルロン酸濃度は、例えば、5mg/mL〜9mg/mLであり得る。
高分子量ヒアルロン酸の分子量は、分子量約50万〜600万であってもよい。
実施形態に従う組成物は、マクロファージおよびゲルに加えて、更なる成分を含んでもよい。更なる成分の例は、医薬組成物を維持するための成分、例えば、防腐剤、安定化剤、pH調整剤などであってもよい。当該組成物は、更に第2の活性成分などを含んでもよい。第2の活性成分は、マクロファージの創傷治癒効果を妨げることのなく、創傷治癒を促進する第2の薬理効果を有する成分または創傷部を保護する成分であり得る。例えば、第2の活性成分は、抗菌剤、ヒアルロン酸ゲル、基礎培地、血清、抗生物質、M−CSFなどであってもよい。
また、マクロファージを含有するゲルは、被覆材、例えば、ガーゼ、フィルム、シートおよびテープなどの医療用布、不織布、樹脂および紙などの医療用として用いられる面状体に塗布されて提供されてもよい。
当該マクロファージの適用は、ゲルに含有された状態で創傷部位に塗布されればよい。また、マクロファージ含有のゲルを塗布した部位を更に被覆材で覆ってもよい。或いはマクロファージ含有ゲルは、被覆材に塗布された状態で患部に適用されてもよい。
治療に使われるマクロファージは、他家マクロファージであっても、自家マクロファージであってもよい。
実施形態に従うマクロファージにより治療され得る疾患は、創傷、例えば、外傷、褥瘡、治療や疾患に伴う難治性創傷、例えば、糖尿病性潰瘍、静脈鬱滞性潰瘍、動脈性潰瘍、虚血性潰瘍、膠原病に伴う潰瘍、放射線潰瘍、壊疽治療に伴う潰瘍などを含む。実施形態のマクロファージによれば、例えば、M1マクロファージによる炎症遷延による難治性創傷の治癒を促進することが可能である。
[例]
例1.ヒアルロン酸の有無による生細胞率の比較と、TNF−α、TGF−β、Dectin−1、VEGFの発現量の比較
C57BL/6マウス(オス、6週〜8週)を頸椎脱臼により安楽死させ、背部皮膚を切開して脾臓を採取した。この脾臓をリン酸塩緩衝液(PBS)中において、Cell strainerを用いて濾過し、回収したPBSを遠心して脾臓細胞ペレットを得た。
例1.ヒアルロン酸の有無による生細胞率の比較と、TNF−α、TGF−β、Dectin−1、VEGFの発現量の比較
C57BL/6マウス(オス、6週〜8週)を頸椎脱臼により安楽死させ、背部皮膚を切開して脾臓を採取した。この脾臓をリン酸塩緩衝液(PBS)中において、Cell strainerを用いて濾過し、回収したPBSを遠心して脾臓細胞ペレットを得た。
得られた細胞ペレットを、DMEMを基礎培地とし、そこに10%FBS、100単位/mlペニシリン、100ug/mlストレプトマイシンを含ませた培地を用いて、37℃、5%CO2存在下で6日に亘り一次培養した。
次に、一次培養で得られた細胞をトリプシンまたはCell dissociationsolution(ミリポア社)を用いて剥離して回収した。得られた培地懸濁液を、遠心し、細胞ペレットを得た。得られた細胞ペレットを5×103個〜10×106細胞/mLの濃度に再懸濁し、細胞培養用プレートに播種した。これを10%FBS、100単位/mlペニシリン、100ug/mlストレプトマイシン、高濃度ヒアルロン酸(5〜6.7mg/ml,分子量150万−390万)に、M−CSF(10−100ng/ml)を含むDMEM培地を用いて、37℃、5%CO2存在下で7日に亘り二次培養した。
二次培養は、上記の培地に細胞を混和させた状態(以下「Mix」と記す)、あるいは付着した細胞の上に上記の培地を加えた状態(以下「Adh」と記す)で行った。対照群として、同様の付着した細胞に、ヒアルロン酸を含まないこと以外は上記と同様の培地を加えて二次培養したもの(以下、「cont」と記す)を用いた。ヒアルロン酸を含んだ培地の乾燥を防ぐため、ヒアルロン酸を除いた上記培地を、上記培地の10−100%量加えた。
上記条件で培養したマクロファージを二次培養開始から7日後に、トリプシンまたはCell dissociation solution(ミリポア社)を用いて剥がした。この細胞から、ISOGEN(ニッポンジーン社)を用いてRNAを抽出した。抽出したRNAは、PrimeScript(タカラバイオ社)を用いてcDNA合成し、リアルタイムRT−PCRでTNF−α、TGF−β、Dectin−1およびVEGFの遺伝子発現量を評価した。この実験を2015年8月18日、2015年8月25日および2015年9月10日に行い、これらの3回の実験結果の平均値を算出した。2015年8月18日に行った実験の二次培養には、細胞培養用プレートとして6ウェルプレートを用いた。他の日に行った実験の二次培養には、細胞培養用プレートとして60mmディッシュを用いた。
図1にcontにおける値を1としたときのMixおよびAdhの相対値を示した。図1に示されるように、MixおよびAdhのTGF−βおよびDectin−1の値は、コントロールより有意に低い値であった。
図2に培養開始時の値を1としたときのcontおよびAdhの相対値を示した。図2に示されるように、AdhのTGF−βおよびDectin−1の値はcontと比べて有意に低かった。contのTGF−βの値は、培養開始時より有意に高かった。
したがって、実施形態に従うマクロファージ組成物製造方法によって、TGF−β(low)、Dectin−1(low)細胞群を製造できることが明らかとなった。
例2.ヒアルロン酸の有無によるマクロファージ生細胞の割合の比較
例1で用いたマクロファージ(cont、Adh、Mix)の二次培養開始から7日後のものをトリプシンまたはCell dissociation solutionを用いて剥がし、フローサイトメトリー(FCM)により細胞数の測定を行った。その結果を表2に示す。表2に、上述した各例の実験に用いたマクロファージの死細胞数(non viable)、全細胞数(all)、生細胞数(viable)、生細胞率(viability)、溶液量、全ウェルまたは全ディッシュの総細胞数(total cells)、1ウェルまたは1ディッシュあたりの細胞数(1wellまたは1dish)、培養0日目の生細胞数に対する培養7日目の生細胞数の割合(7d/0d)、および生細胞率の3回の実験における平均値(平均生細胞率)を示した。
例1で用いたマクロファージ(cont、Adh、Mix)の二次培養開始から7日後のものをトリプシンまたはCell dissociation solutionを用いて剥がし、フローサイトメトリー(FCM)により細胞数の測定を行った。その結果を表2に示す。表2に、上述した各例の実験に用いたマクロファージの死細胞数(non viable)、全細胞数(all)、生細胞数(viable)、生細胞率(viability)、溶液量、全ウェルまたは全ディッシュの総細胞数(total cells)、1ウェルまたは1ディッシュあたりの細胞数(1wellまたは1dish)、培養0日目の生細胞数に対する培養7日目の生細胞数の割合(7d/0d)、および生細胞率の3回の実験における平均値(平均生細胞率)を示した。
図3は、平均生細胞数を表した棒グラフである。MixおよびAdhでは、contよりも得られた生細胞率が有意に高かった。
例3.ヒアルロン酸の有無によるDectin−1およびVEGFの発現評価
例1の2015年8月26日に調製したマクロファージ(Mix、Adhおよびcont)を用いて、Dectin−1およびVEGFの発現評価を行った。各マクロファージの二次培養開始時および二次培養開始7日後に、細胞をトリプシンまたはCell dissociation solutionを用いて剥がした。この細胞を用いて、Dectin−1およびVEGF抗体を用いたフローサイトメトリー(FCM)を行った。
例1の2015年8月26日に調製したマクロファージ(Mix、Adhおよびcont)を用いて、Dectin−1およびVEGFの発現評価を行った。各マクロファージの二次培養開始時および二次培養開始7日後に、細胞をトリプシンまたはCell dissociation solutionを用いて剥がした。この細胞を用いて、Dectin−1およびVEGF抗体を用いたフローサイトメトリー(FCM)を行った。
FCMの結果を図4〜図6に示す。図4がcont、図5がAdh、図6がMixの結果を示している。各図の上段がアイソタイプコントロール、下段が、Dectin−1およびVEGF抗体を用いた二重染色の結果を示している。Dectin−1(−)およびVEGF(+)細胞の割合は(Q1)、Adhで最も高く、46.6%であった。また、Adhにおける細胞数Dectin−1(−)VEGF(+)細胞の数は、contの約3倍であった。
したがって、実施形態に従うマクロファージ組成物製造方法によって、Dectin−1(−)VEGF(+)細胞をより多く製造できることが明らかとなった。
例4.In vivoにおける創傷治癒効果
例1の2015年9月10日に調製したマクロファージ(Mix、Adhおよびcont)を用いてそれらの創傷治癒効果の評価を行った。二次培養開始時および培養開始7日後に、これらの細胞をヒアルロン酸ゲルと混合し、マウスの皮膚損傷部に塗布した。その後、損傷部を上から透明なフィルムを添付したサージット(登録商標)で覆った。これらの損傷部を1日毎に観察し、損傷部の面積を記録した。コントロールとして、ヒアルロン酸のみを塗布した損傷部(HA)および治療を施さない損傷部(None)の観察も行った。その結果を図7に示した。Adhにおける損傷部面積が細胞を付与しないHAと比べて小さくなる傾向にあった。
例1の2015年9月10日に調製したマクロファージ(Mix、Adhおよびcont)を用いてそれらの創傷治癒効果の評価を行った。二次培養開始時および培養開始7日後に、これらの細胞をヒアルロン酸ゲルと混合し、マウスの皮膚損傷部に塗布した。その後、損傷部を上から透明なフィルムを添付したサージット(登録商標)で覆った。これらの損傷部を1日毎に観察し、損傷部の面積を記録した。コントロールとして、ヒアルロン酸のみを塗布した損傷部(HA)および治療を施さない損傷部(None)の観察も行った。その結果を図7に示した。Adhにおける損傷部面積が細胞を付与しないHAと比べて小さくなる傾向にあった。
以上のように、実施形態によれば、M2様マクロファージ組成物を製造方法が提供される。また上述の実験データにより示されるように、実施形態に従う製造方法によれば、得られる生細胞数が多いことが明らかとなった。また、当該製造方法によって得られるM2様マクロファージ組成物によれば、創傷治癒が促進できることが示唆された。
Claims (11)
- マクロファージ原料細胞をマクロファージコロニー刺激因子および5mg/mL以上の濃度の高分子量ヒアルロン酸を含む培地中で培養することにより、M2様マクロファージ組成物を得ることを含むM2様マクロファージ組成物を製造する方法。
- 前記マクロファージ原料細胞が、未分化のマクロファージおよび/またはマクロファージ前駆細胞である請求項1に記載の方法。
- 前記マクロファージ原料細胞が治療対象起源であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
- 脾臓細胞を一次培養してマクロファージ原料細胞を得ること、並びに
前記一次培養により得られた前記マクロファージ原料細胞をマクロファージコロニー刺激因子および5mg/mL以上の濃度の高分子量ヒアルロン酸を含む培地中で二次培養し、これによりM2様マクロファージ組成物を得ることを含むM2様マクロファージ組成物を製造する方法。 - 前記マクロファージ原料細胞が、未分化のマクロファージおよび/またはマクロファージ前駆細胞である請求項4に記載の方法。
- 前記脾臓細胞が治療対象起源であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の方法。
- マクロファージ原料細胞をマクロファージコロニー刺激因子および5mg/mL以上の濃度の高分子量ヒアルロン酸を含む培地中で培養し、マクロファージ群を得ること、並びに前記培養により得られた前記マクロファージ群をゲルに分散することにより、M2様マクロファージ組成物を得ること
を含む創傷治癒のための組成物の製造方法。 - 前記マクロファージ原料細胞が治療対象起源であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
- 前記高分子量ヒアルロン酸が、分子量150万〜390万であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
- マクロファージ原料細胞、並びにマクロファージコロニー刺激因子および5mg/mL以上の濃度の高分子量ヒアルロン酸を含む培地を含むM2様マクロファージ組成物原料。
- 前記マクロファージ原料細胞が脾臓細胞、未分化マクロファージ、またはマクロファージ前駆細胞である請求項10に記載の組成物原料。
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CN114642628A (zh) * | 2021-09-10 | 2022-06-21 | 中国科学院大学温州研究院(温州生物材料与工程研究所) | M1型巨噬细胞裂解液基水凝胶及其制备方法与应用 |
WO2023120673A1 (ja) * | 2021-12-22 | 2023-06-29 | 国立大学法人 鹿児島大学 | マクロファージの製造方法、分化誘導剤、分化誘導キット、マクロファージの培養方法、マクロファージの増殖促進剤、マクロファージの増殖促進キット、マクロファージの増殖方法及びマクロファージ |
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2016
- 2016-02-03 JP JP2016018981A patent/JP2017136014A/ja active Pending
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---|---|---|---|---|
CN114642628A (zh) * | 2021-09-10 | 2022-06-21 | 中国科学院大学温州研究院(温州生物材料与工程研究所) | M1型巨噬细胞裂解液基水凝胶及其制备方法与应用 |
CN114642628B (zh) * | 2021-09-10 | 2023-11-14 | 中国科学院大学温州研究院(温州生物材料与工程研究所) | M1型巨噬细胞裂解液基水凝胶及其制备方法与应用 |
WO2023120673A1 (ja) * | 2021-12-22 | 2023-06-29 | 国立大学法人 鹿児島大学 | マクロファージの製造方法、分化誘導剤、分化誘導キット、マクロファージの培養方法、マクロファージの増殖促進剤、マクロファージの増殖促進キット、マクロファージの増殖方法及びマクロファージ |
JP7452918B2 (ja) | 2021-12-22 | 2024-03-19 | 国立大学法人 鹿児島大学 | マクロファージの製造方法、分化誘導剤、分化誘導キット、マクロファージの分化誘導方法、マクロファージの増殖促進剤、マクロファージの増殖促進キット、マクロファージの増殖方法及びマクロファージ |
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