JP2017135352A - 貫通配線基板、その作製方法、電子デバイス及びその作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】貫通配線基板を作製する際に、貫通配線と貫通孔の隙間を低減することができる技術を提供する。【解決手段】貫通配線2を有する貫通配線基板の作製方法では、基板1の第一の面1aから該第一の面の反対側に位置する第二の面1bに到達する貫通孔13を形成し、第一の面側の貫通孔の開口近傍の内壁に金属層2sを形成する。貫通孔の内部に導電性材料2を充填して貫通配線を形成する。更に第一の面に素子部30を形成することができる。【選択図】図1
Description
本発明は、貫通配線基板、それを有する電子デバイス、それらの作製方法などに関する。
電子デバイスの小型化、高速化及び多機能化などの高機能化のため、デバイスを構成するチップ間、または基板表面の素子と基板裏面の配線間を最短距離で電気的に接続できる貫通配線が用いられている。電子デバイスの形成方法には、素子を形成する前に貫通配線を形成するビア・ファースト(via first)方式と、素子を形成した後に貫通配線を形成するビア・ラスト(via last)方式がある。ビア・ファースト方式は、貫通孔の内壁を含む基板表面に高品質な絶縁膜を高温で成膜でき、高い絶縁耐圧を必要とする電子デバイスに向いている。
貫通配線の形成方法には、基板の両主面間を貫通する貫通孔を形成し、貫通孔の中に金属を代表とする導電性材料を充填してから、基板の両主面側から導電性材料の端面を研磨して平坦化する方法がある。研磨の際、貫通孔の付近において、応力によって導電性材料が塑性変形し、導電性材料と貫通孔内壁との間に隙間ができてしまうことがある。隙間の大きさは、導電性材料と貫通孔内壁との密着性が高いほど小さくなる。また、隙間の大きさは、導電性材料の研磨量が少ないほど小さくなる。導電性材料からなる貫通配線と貫通孔内壁との間に隙間があると、様々な問題が起きる。例えば、素子を構成する薄膜を形成する際、隙間の部分において薄膜が不連続になったり、膜厚が不均一になったり、応力が変化したりすることがある。 特に、貫通配線と素子電極間を接続するための配線電極と貫通配線との電気的な接続が困難になることがある。
また、薄膜を所望の形状に加工するためのフォトリソグラフィー工程にも問題は発生し得る。例えば、フォトレジストを塗布する際、前記隙間の近傍においてレジストに割れ目が生じたり、厚さが不均一になったりすることがある。この状態でレジストをマスクとして薄膜を加工すると、前記隙間の近傍において、本来は保護すべき薄膜の部分や貫通配線の端面が損傷を受けてしまう恐れがある。よって、貫通配線と貫通孔内壁との間の隙間を極力減らすことが要求されることがある。そのためには、導電性材料の充填後の研磨量を少なくすることが有効である。また、導電性材料と貫通孔内壁との間の密着性を向上させることが有効である。
他方、ビア・ファースト方式において、素子部を形成するために最高温度が数百度程度の昇温工程が必要とされる場合がある。その場合、貫通配線と基板との熱膨張の差による素子への影響を考慮する必要があることがある。例えば、基板がシリコンで、貫通配線がCuである場合である。この場合、Cuの熱膨張係数がシリコンの6倍以上であるため、素子を形成するための昇降温時に、貫通配線が貫通孔の内壁に対して相対的に伸縮または滑動する傾向がある。このような動きが制限なく発生する場合、昇温時、貫通配線の端面が基板の表面より突出し、素子を構成する薄膜の永久変形、破損などを引き起こす恐れがある。また、降温時、貫通配線は復元しようとして薄膜を引張り、その端面付近で薄膜の永久変形や破損、または応力増加を引き起こす恐れがある。このような薄膜の永久変形や破損、応力増加などは、素子の不良品化や素子の性能バラつきの原因になる。
素子の性能低下を避けるために、貫通配線の付近に素子を配置しなくすることができるが、そうした場合、素子の集積度が低下する。よって、素子のある基板面側において、温度変化による貫通配線と基板との相対的な動きを抑制する必要があることがある。一方、貫通孔の内壁の全表面に貫通孔の内壁と密着性の高いシード層を形成して、貫通配線を強く固定しようとする場合、昇降温時に、貫通配線と貫通孔内壁との間に大きいな応力が発生し、貫通孔の内壁を破損する恐れがある。例えば、貫通孔の内壁に絶縁膜や拡散防止膜が形成された場合、前述の応力で絶縁膜や拡散防止膜にひび割れなどの破損が発生する恐れがある。
特許文献1は、貫通孔の両側の開口の付近に金属層を設け、貫通配線と貫通孔の内壁との密着性を向上する技術を開示している。このような金属層によって、貫通孔の両側の開口の付近において貫通配線が拘束され、貫通配線を構成する導電性材料の端面平坦化の研磨において貫通配線と貫通孔の内壁との間の隙間が低減できる。また、温度変化による貫通配線と基板間の相対的な動きを抑制する効果もある。
しかし、特許文献1の方式では、ビア・ファーストの素子形成プロセスの熱工程において、貫通配線は、金属層のない中央部において貫通孔の内壁に対して比較的に動きやすいが、貫通孔の両側の開口付近で金属層により拘束されている。その結果、貫通孔の金属層のある部分に熱応力が集中し、該部分の貫通孔の内壁が破損されやすくなる恐れが生じる。
本発明の一側面の電子デバイスの作製方法は次の特徴を有する。即ち、貫通配線を有する基板に素子部を設けた電子デバイスの作製方法であって、基板の第一の面から該第一の面の反対側に位置する第二の面に到達する貫通孔を形成する工程と、前記第一の面の側において前記貫通孔の開口近傍の内壁に金属層を形成する工程と、前記貫通孔に導電性材料を充填し、前記貫通配線を形成する工程と、前記第一の面の側に前記素子部を形成する工程と、を含む。また、本発明の一側面の貫通配線を有する基板の作製方法は次の特徴を有する。即ち、基板の第一の面から該第一の面の反対側に位置する第二の面に到達する貫通孔を形成する工程と、前記第一の面の側において前記貫通孔の開口近傍の内壁に金属層を形成する工程と、前記貫通孔に導電性材料を充填し、貫通配線を形成する工程と、を含む。
また、本発明の一側面の電子デバイスは次の特徴を有する。即ち、貫通配線を有する基板上に素子部を設けた電子デバイスであって、前記基板の第一の面から該第一の面の反対側に位置する第二の面に到達する貫通孔と、前記貫通孔の内部を充填する導電性材料で形成された貫通配線と、前記第一の面に設けられた素子部と、を有し、前記第一の面の側において前記貫通孔の開口近傍の内壁に金属層が形成されている。また、本発明の一側面の貫通配線を有する貫通配線基板は次の特徴を有する。即ち、基板の第一の面から該第一の面の反対側に位置する第二の面に到達する貫通孔と、前記貫通孔の内部を充填する導電性材料で形成された貫通配線と、を有し、前記第一の面の側において前記貫通孔の開口近傍の内壁に金属層が形成されている。
本発明によれば、基板の第一の面側において、貫通孔の開口近傍内壁に該内壁と密着する金属層が形成され、貫通配線がより強く拘束される。一方、第一の面の反対側の基板の第二の面側において、貫通配線がより自由である。これにより、貫通配線を作製する際に、貫通配線と貫通孔の隙間を低減することができる。また、貫通孔内壁の破損の恐れが低減される。
本発明の一側面では、素子を形成する基板面側において、貫通配線の動きを拘束し、貫通配線の端面平坦化の研磨において、貫通配線と貫通孔内壁との間の隙間を低減する。研磨の例としては、後述のCMP以外に、機械研磨、切削などが可能である。現状では、仕上げ研磨がCMPになることが多い。一方、素子を形成しない基板面側では、例えば、貫通配線の端面平坦化の研磨量を低減させることによって、貫通配線と貫通孔内壁との間の隙間を低減させる。これと共に、素子を形成しない基板面側において、貫通配線を過度に強く固定せず、熱工程で貫通配線と貫通孔内壁間の相対的な動きが或る程度できるようにして、熱応力を開放する。「貫通配線を強く固定せず」とは、ここでは、例えば、そのまま単純に貫通配線を形成することである。そして、素子が形成されてから、例えば、素子を形成しない基板面側に比較的に低い温度で電極パッドを形成する。
この様にする為に、本発明の一側面では、基板の第一の面から該第一の面の反対側に位置する第二の面に到達する貫通孔を形成し、第一の面の側において貫通孔の開口近傍の内壁に金属層を形成し、こうした貫通孔に導電性材料を充填して貫通配線を形成する。
以下、本発明の実施形態及び実施例について図を用いて説明する。ただし、本発明はこうした実施形態や実施例には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
(第1の実施形態)
図1を用いて、本発明の貫通配線基板ないし電子デバイスの作製方法の第1の実施形態を説明する。図1(A)〜(F)は本実施形態を説明するための断面図である。電子デバイスの作製において、1枚の基板上に同時に複数の貫通配線、または複数の素子を形成することが一般的であるが、図1では、簡潔にして見やすくするために、2つの貫通配線と1つの素子だけを示している。
図1を用いて、本発明の貫通配線基板ないし電子デバイスの作製方法の第1の実施形態を説明する。図1(A)〜(F)は本実施形態を説明するための断面図である。電子デバイスの作製において、1枚の基板上に同時に複数の貫通配線、または複数の素子を形成することが一般的であるが、図1では、簡潔にして見やすくするために、2つの貫通配線と1つの素子だけを示している。
まず、図1(A)のように、基板1を用意する。基板1は、ガラスのような絶縁材料、またはSiのような半導体材料から構成されている。基板1は、第一の面1a及び第一の面の反対側に位置する第二の面1bを有する。基板1の第一の面1a及び第二の面1bは、共に平坦で鏡面に研磨されている。基板1の厚さは、例えば、50μm〜1000μmである。
次に、図1(B)のように、基板1に貫通孔13を形成する。貫通孔13は、基板1の第一の面1aから第二の面1bに到達し、基板1を貫通する。貫通孔13の数、配置、開口の形状とサイズなどは、用途に応じて、フォトレジストパターンで規定する。貫通孔13の開口は、例えば、円形状であり、直径が20μm〜100μmである。貫通孔13の配置は、例えば、配列分布であり、横方向の周期が200μmで縦方向の周期が2mmである。貫通孔13を形成した後、必要に応じて、貫通孔13の内壁13aに絶縁膜や、金属拡散を防止する拡散防止膜(バリア層とも呼ぶ)を形成する。絶縁膜と拡散防止膜の両方を形成してもよい。また、貫通孔の内壁13aにおいて、後の工程で基準以上の電界集中が生じないように、必要に応じて、内壁13aの平滑化加工を行ってもよい。
次に、図1(C)のように、第一の面1a側の貫通孔の開口近傍の内壁に金属層2sを形成する。金属層2sは、第一の面1aの上に形成されなくても良い。貫通孔の近辺のみなら、第一の面1aの上に金属層が形成されてもよい。しかし、余り広い範囲に形成すると、後に形成する素子等の邪魔になることがある。また、電気めっきで貫通孔に導電性材料を充填する場合、めっきが金属層に達してから、金属層上でもめっき成長が起き、無駄なめっき部が発生することにもなり易い。この結果、無駄なめっき部の除去に手間が必要となることがある。貫通孔の内壁13a側において、金属層2sは、内壁13aと十分な密着性を持つ。また、貫通配線2(図1(E)参照)側において、金属層2sは、貫通配線2と十分な密着性を持つ。こうした条件を満たせば、金属層2sは、金属の単層膜であってもよいし、複数種の金属を積層した多層膜であってもよい。また、後述する図1(D)のように、めっき法で貫通孔の内部に導電性材料2を充填する場合、金属層2sは、使用するめっき液に対して十分な耐性があることが望ましい。金属層2sは、例えば、Ti、Cr、Ta、Mo、W、Pd、Pt、Cu、Auなどの単金属または合金によって構成される。金属層2sは、スパッタリング、真空蒸着を含む金属の成膜方法で形成することができる。金属層2sを形成するとき、第一の面1a側にマスクを配置して、金属層2sが主に貫通孔の内壁13aに形成されるようにできる。マスクとして、基板1の第一の面1a上に形成されるドライフィルムレジストのパターンが好適である。また、マスクとして、基板1の第一の面1a側に密着して配置するステンシルマスクもある。
金属層2sは、第一の面1aから貫通孔の内部、hの距離まで形成される。距離hは、以下の2つの観点から設計される。まず、金属層2sは、貫通配線2の端面2−1a、2−2aを研磨で形成する工程(図1(E)参照)において、第一の面1a側の貫通配線2の動きを十分に拘束して、研磨応力による貫通配線と貫通孔内壁との間の隙間を低減できる。そのために、例えば、hは3μm以上であることが好適である。そして、金属層2sは、素子部30を形成する工程(図1(F)参照)で、第一の面1a側の貫通配線2の動きを十分に拘束すると共に、貫通孔13の内部において貫通配線2と貫通孔内壁13aとが相対的に動けるようにして熱応力を開放させる。そのため、距離hは、貫通孔の長さLに対して、例えば、Lの1/5以下であることが好適である。
以上の2つの観点を綜合して、距離hは次の範囲に入ることが望ましい。すなわち、3μm≦h≦(1/5)Lである。距離hは、金属層2sの形成工程において制御できる。一例として、真空蒸着法で金属層2sを形成する場合、次のようにする。貫通孔13の深さ方向(第一の面1aの法線とほぼ一致する方向)が、蒸着源と第一の面1aの中心(基板の中心)を結ぶ直線と、所望の角度をなすように基板1を配置する。前記角度は、距離hと、蒸着源と第一の面1aの中心を結ぶ線分の長さから簡単に求められる。また、金属層2sを、第一の面1a側の貫通孔13の開口から深さhの部分までの貫通孔の内壁13a部分にほぼムラなく形成するために、成膜時、第一の面1aの法線を軸に基板1を回転させることが好適である。この法線は、第一の面に垂直にすれば良く、立つ箇所は問わない。上記のような金属層2sをもつ貫通孔を形成した基板1を、貫通基板1sと呼ぶ。
次に、図1(D)のように、貫通基板1sの貫通孔13(図1(B)参照)の内部に貫通配線2を構成する導電性材料2(2−1と2−2を含む)を形成する。この工程において、貫通基板1sをシード基板50sと貼り合わせ、電気めっきにより貫通孔13の内部に導電性材料を充填する。
シード基板50sは、SUSを代表とする金属基板50の主面50aに、中間層51とシード膜52を積層して形成される。中間層51は、めっき工程において主面50aから剥がれることがなければ、弱いほど望ましい。中間層51の材料としては、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)等が挙げられる。中間層51の厚さは1nm〜100nmの範囲とすることが望ましい。中間層51の形成方法としては、真空蒸着などが挙げられる。シード膜52は、電気めっき処理の際のシード膜という観点で、伝導率が高い金属膜とするのが好適である。より望ましくは、シード膜52の主成分は、導電性材料2の主成分と同じとするのが良い。シード膜52の厚さは10nm〜200nmの範囲とすることが望ましい。シード膜52の形成方法としては、真空蒸着やスパッタリングなどが挙げられる。
貫通基板1sとシード基板50sとは、水や有機溶剤に溶解する接着用物質を介して貼り合わせられる。貼り合わせる際、貫通基板1sの孔が位置する面(第2の面1b)とシード膜52とを接触させる。また、貫通基板1sとシード基板50sとの間に空隙がないことが望ましい。接着用物質の厚さ制御によって、貫通基板1sとシード基板50sとの間隔を制御できる。この間隔は、狭すぎると、第2の面1b側の貫通孔の開口付近のめっき不良が起きやすい。一方、この間隔が広すぎると、例えば、第2の面1b側のめっき終端2c−2が大きくなり、図1(E)の平坦化工程で研磨量が多くなって、研磨応力による貫通配線の塑性変形が増えてしまう。よって、貫通基板1sとシード基板50sとの間隔は、1μm〜10μm程度が望ましい。
貼り合わせ後、貫通孔13の底部にある接着用物質を除去して、シード膜52が露出するようにする。貫通孔13の底部にある接着用物質の除去は、例えば、純水に浸漬することによって達成できる。そして、貫通孔13の底部に露出するシード膜52の部分を起点にめっき処理(電気めっき)し、貫通孔13の内部に導電性材料2(2−1と2−2を含む)を充填する。めっきは、例えば、Cuの電気めっきである。電気めっきする際、接触した貫通基板1sとシード基板50sをめっき液に浸漬し、貫通孔13の底部に露出するシード膜52の部分が金属板からなる陽極と対向するように配置する。そして、シード膜52を含むシード基板50sに通電する。めっきは、すべての貫通孔13において、導電性材料2のめっき終端2c−1が貫通基板1sの第1の面1aより突出するまで行う。各貫通孔間のめっきバラつきを考慮して、導電性材料2のめっき終端2c−1が基板の第一の面1aより10μm〜200μm程度高くなるようにめっきすることがある。めっき後、中間層51と基板50の界面にて、めっきした導電性材料2(2−1と2−2を含む)をシード基板50sより分離する。このとき、導電性材料2は貫通基板1sの貫通孔13内に残る。ここで、中間層51は剥離層の役割を果たしている。
一般的に、めっき法で貫通孔の内部へ充填しやすい導電性材料(例えば、Cu、Ni)は、貫通孔の内壁(Si、Siの酸化物、ガラス等)との密着力が弱い。図1(C)のように第一の面1a側の貫通孔の開口近傍内壁に形成した金属層2sは、貫通孔の内壁13aと十分な密着性を持つと共に、貫通配線2(図1(E)参照)と接する側において、貫通配線2を構成する導電性材料とも十分な密着性を持つ。これによって、以上のように貫通孔13内に充填される導電性材料2は、第一の面1a側の貫通孔13の開口から深さhの部分までの貫通孔の内壁13a部分において、金属層2sを介して、貫通孔の内壁13aと密着できる。その結果、この部分において、導電性材料2(または貫通配線2)は貫通孔の内壁13aに拘束される。導電性材料の貫通孔内部への充填法としては、めっき法以外に、流し込み、挿し込み、CVDなどがある。これらの方法を用いる場合、第一の面1a側から導電性材料を充填することもできる。
次に、図1(E)のように、導電性材料2のめっき終端2c−1、2c−2をそれぞれ平坦化し、貫通配線2を完成する。平坦化は、例えば、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechenical Polishing)で行う。平坦化によって、貫通配線2の一方の端面2−1a、2−2aは平坦化され、貫通基板1sの第一の面1aとほぼ同じ高さになる。また、貫通配線2の他方の端面2−1b、2−2bも平坦化され、貫通基板1sの第二の面1bとほぼ同じ高さになる。平坦化研磨において、第1の面1a側では、貫通孔の開口近傍の内壁に金属層2sが形成され、金属層2sのある部分において、貫通配線2の表面が強く拘束されているので、研磨応力により貫通配線と貫通孔内壁との間に生じる隙間が低減される。一方、第2の面1b側では、研磨量が少ないので、研磨応力により貫通配線と貫通孔内壁との間に生じる隙間が小さい。上記のように貫通配線を形成した基板1は、貫通配線基板3と呼ぶ。
次に、図1(F)のように、貫通配線基板3の第一の面1a上に、素子部30を形成する。素子部30は、電極(第一の電極4と第二の電極6を含む)部分と他の部分35を含む。電極は、金属材料から構成される。第一の電極4は貫通配線の端面2−1a(図1(E)参照)と電気的に接続され、第二の電極6は貫通配線の端面2−2a(図1(E)参照)と電気的に接続される。素子部30は、例えば、各種のMEMS(Micro Electro Mechenical System)素子である。より具体的な例として、ピエゾ型トランスデューサや、静電容量型トランスデューサ(CMUT:Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer)がある。素子部30の構造は、電子デバイスの仕様に合わせて設計される。
素子30の形成において、数百℃の加熱が必要な場合がある。昇降温によって、温度の変化量に比例して、貫通孔の内壁13(図1(B)参照)に対する貫通配線2の相対的な動きが生じる。素子30のある基板の第一の面1a側のh部分において、貫通孔の内壁に形成された金属層2sによって、貫通配線2の表面が強く拘束されている。一方、素子30のない基板の第二の面1b側において、金属層2sは形成されておらず、貫通配線2の表面は比較的に自由である。よって、昇降温におる貫通配線2の相対的な動きは、素子30のある第一の面1a側において小さく、素子30のない第二の面1b側に集中する。その結果、第一の面1a側の貫通配線の端面(2−1aと2−2aを含む。図1(E)参照)は、第一の面1a側への突出量が小さく、素子を構成する薄膜(第一の電極4、第二の電極6、その他の部分35を含む)は永久変形または破損される恐れが低減する。また、貫通配線の端面の近傍においても、素子を構成する薄膜の膜厚及び膜応力の均一性が良い。一方、第二の面1b側における貫通配線の端面(2−1bと2−2bを含む)の相対的な動きは大きいが、その表面にはまだ薄膜が形成されていないので、問題がない。更に、貫通配線2と貫通孔の内壁13aとの間の応力が第二の面1b側に開放されることによって、貫通孔の内壁は破損される恐れが低減する。
更に、貫通配線基板3の第二の面1b側に電極パッド(11と12を含む)を形成する。電極パッド11は貫通配線2の端面2−1b(図1(E)参照)と接続され、電極パッド12は貫通配線2の端面2−2b(図1(E)参照)と接続される。電極パッド11、12は、金属を主材料によって構成される。例えば、電極パッド11、12は、密着層としたTi薄膜とその上に形成されるAl薄膜とによって構成される。電極パッド11、12の形成方法として、例えば、金属のスパッタ成膜、フォトリソグラフィーを含むエッチングマスクの形成、及び金属のエッチングを含む方法がある。これらの工程では、基板の最高温度が100℃程度で、昇降温による貫通孔の内壁13a(図1(B)参照)に対する貫通配線2の相対的な動きが小さい。よって、電極パッド11、12を構成する金属薄膜の永久変形または破損は小さい。また、金属薄膜は比較的に高い展延性を持つので、電極パッド11、12の応力による永久変形または破損が更に低減できる。また、これらの工程の昇降温は、素子30を構成する薄膜(第一の電極4、第二の電極6、その他の部分35を含む)の永久変形または破損を引き起こす恐れも低い。
次に、図示しないが、図1(A)〜(F)の工程によって作製された電子デバイス(素子部30、貫通配線基板3及び電極パッド11、12を含む)を制御回路と接続する。接続は、電極パッド11、12を介して行う。接続の方法として、金属直接接合や、バンプ接合や、ACF(Anisotropic Conductive Film)圧着や、ワイヤボンディングなどの方法がある。
以上の作製方法を用いれば、図1(F)に示した電子デバイスを作製できる。この作製方法によれば、貫通配線の端面の平坦化のための研磨による貫通配線と貫通孔内壁との間の隙間が低減されている。よって、基板の第一の面1a側に素子を形成する際、貫通配線の付近において、素子を構成する薄膜の変形や応力が低減できる。また、素子のある第一の面側に形成された金属層2sの拘束効果によって、ビア・ファースト法で基板の第一の面側に素子を形成しても、素子のある第一の面側の貫通配線の端面は昇降温に伴う伸縮量が低減される。よって、その周辺で素子を構成する薄膜などが永久変形または破損する恐れが低くなる。その結果、貫通配線の近傍においても、素子を構成する薄膜の膜厚及び膜応力の均一性などが良い。また、貫通孔の内壁及びその上に形成された薄膜などが永久変形または破損する恐れが低く、素子の集積度の向上や、電子デバイスの電気的な信頼性の向上が実現できる。
以下、より具体的な実施例を説明する。
(第1の実施例)
図2の断面図を用いて、本発明の貫通配線基板ないし電子デバイスの作製方法の第1の実施例を説明する。見やすくするため、図2でも2つの貫通配線及び1つの素子のみが示されている。
(第1の実施例)
図2の断面図を用いて、本発明の貫通配線基板ないし電子デバイスの作製方法の第1の実施例を説明する。見やすくするため、図2でも2つの貫通配線及び1つの素子のみが示されている。
まず、図2(A)のように、基板1を用意する。基板1として、Si基板を用いる。基板1は、第一の面1aと第二の面1bを有し、この2つの面がミラー研磨され、表面粗さRaはRa≦2nmである。基板1の抵抗率は約0.01Ω・cmである。基板1の厚さは約300μmである。
次に、図2(B)のように、基板1の第一の面1aから第二の面1bに到達する貫通孔13を形成する。貫通孔13は、ほぼ円柱形状であり、基板1の第一の面1aと第二の面1bにおける開口の直径は約50μmである。貫通孔13は、400μmの周期で基板1の中において配列されている。貫通孔13の加工は、ボッシュ(Bosch)プロセスを採用したSiの深堀反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)技術を用いて行う。RIEの後、貫通孔13の内壁13aを平滑化する。平滑化は、Siからなる基板1の表面の熱酸化と熱酸化膜の除去によって行われる。平滑化によって、貫通孔の内壁13aの算術平均粗さRaはRa<0.1μmになるようにする。
次に、図2(C)のように、基板1の第一の面1aと第二の面1b、及び貫通孔13の内壁13a(図2(B)参照)を含む基板1の表面上に、絶縁膜14を形成する。絶縁膜14として、厚さ約1μmのSiの熱酸化膜を用いる。Siの熱酸化膜は、図2(B)で形成した貫通孔13を有する基板1を酸素雰囲気中で約1000℃の加熱処理することによって形成される。基板が絶縁性でない場合、絶縁膜は殆ど必要であり、拡散防止膜の必要性は基板の材料に依存する。基板がSiである場合、絶縁膜が十分に厚くなければ、拡散防止膜が必要となる。本実施例では、拡散防止膜を形成しないのは、絶縁膜(Siの熱酸化膜)が十分に厚いからである。
次に、図2(D)のように、第一の面1a側の貫通孔の開口近傍の内壁に金属層2sを形成する。金属層2sは、電子ビーム蒸着法を用いて、TiとCuを順番に積層することによって形成される。Tiは、厚さが約10nmで、貫通孔13の内壁13a(図2(B)参照)に形成される絶縁膜14の部分14aと高い密着性を持つ。Cuは、厚さが約100nmである。金属層2sを形成するとき、基板1の第一の面1a側にドライフィルムレジストのパターン(図示なし)を形成する。ドライフィルムレジストは、貫通孔13の開口に対応する位置に、貫通孔13とほぼ同じ形状、同じ大きさの開口パターンを有する。また、ドライフィルムレジストのパターンを設けた基板1を、第一の面1aの法線が蒸着源と第一の面1aの中心を結ぶ直線と所望の角度をなすように配置する。また、成膜時、基板1を第一の面1aの法線を軸に自転させる。形成された金属層2sは、第一の面1a側の貫通孔13の開口からの深さhが約20μmである。こうして、貫通孔の内壁に金属層2sを形成した貫通基板1sが作製される。
次に、図2(E)のように、電気めっきにより、貫通孔13(図2(D)参照)の内部に導電性材料2(2−1と2−2を含む)を充填する。導電性材料2は、主成分がCuであり、硫酸銅溶液を用いた電気めっきによって、形成される。この工程において、貫通基板1sをシード基板50sと貼り合わせ、貫通孔13の底部に露出するシード基板50s上のシード膜52の部分を起点にめっき処理する。シード基板50sは、SUS基板50の主面50aに、中間層51とシード膜52を積層して形成される。中間層51は、厚さが約10nmのAuの薄膜で、電子ビーム蒸着法によってSUS基板50の主面50aに形成される。シード膜52は、厚さが約50nmのCuの薄膜で、電子ビーム蒸着法によって中間層51の上に形成される。
貫通基板1sとシード基板50sとは、非イオン性界面活性剤を接着層として貼り合わせる。非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンラウリルエーテルブリッジ35を用いる。用いる非イオン性界面活性剤は、水またはアセトン等の有機溶剤に溶解し、約40℃の融点を有する。非イオン性界面活性剤は、アセトン等の有機溶剤に溶解した状態で、スピンコート法でシード基板50sに塗布する。塗布条件を制御して、シード基板50sに形成した非イオン性界面活性剤の膜厚を約5μmにする。
貫通基板1sとシード基板50sを接着した後、接着した貫通基板1sとシード基板50sを水の中に短時間5秒浸漬し、貫通孔13の底部にある界面活性剤の部分を除去し、該部分にシード膜52を部分的に露出させる。
そして、貫通孔13の底部に露出するシード膜52の部分を起点に電気めっき処理し、貫通孔13の内部に導電性材料2(2−1と2−2を含む)を充填する。電気めっきする際、接触した貫通基板1sとシード基板50sをめっき液に浸漬し、貫通孔13の底部に露出するシード膜52の部分が金属板からなる陽極と対向するように配置する。そして、シード膜52を含むシード基板50sに通電する。めっきは、すべての貫通孔13において、導電性材料2のめっき終端2c−1が貫通基板1sの第1の面1aより突出するまで行う。めっきは、各貫通孔間のめっきバラつきを考慮して、導電性材料2のめっき終端2c−1が基板の第一の面1aより最大100μm程度突出するまで行う。めっき後、中間層51と基板50の界面にて、めっきした導電性材料2(2−1と2−2を含む)をシード基板50sより分離する。このとき、導電性材料2は貫通基板1sの貫通孔13内に残る。
次に、図2(F)のように、導電性材料2のめっき終端2c−1、2c−2をそれぞれ平坦化し、貫通配線2を完成する。平坦化は、CMPで行う。平坦化によって、貫通配線2の一方の端面2−1a、2−2aは平坦化され、貫通基板1sの第一の面1aとほぼ同じ高さになる。また、貫通配線2の他方の端面2−1b、2−2bも平坦化され、貫通基板1sの第二の面1bとほぼ同じ高さになる。上記のように、貫通配線を形成した貫通配線基板3が作製される。
次に、図2(G)のように、素子部30は、電極(第一の電極4と第二の電極6を含む)部分と他の部分35を含む。電極は、金属材料から構成される。第一の電極4は貫通配線の端面2−1a(図2(F)参照)と電気的に接続され、第二の電極6は貫通配線の端面2−2a(図2(F)参照)と電気的に接続される。素子部30は、CMUTである。素子部30の形成工程において、最高基板温度は300℃程度である。更に、貫通配線基板3の第二の面1b側に電極パッド(11と12を含む)を形成する。電極パッド11は貫通配線2の端面2−1b(図2(F)参照)と接続され、電極パッド12は貫通配線2の端面2−2b(図2(F)参照)と接続される。電極パッド11、12は、50nm厚のTi薄膜とその上に形成される500nm厚のAl薄膜によって構成される。電極パッド11、12は、被覆性の良いスパッタ成膜で形成される。電極パッド11、12の形成工程において、最高基板温度は100℃程度である。素子部は、静電容量型トランスデューサ、圧電型トランスデューサなどである。
次に、図示しないが、図2(A)〜(G)の工程によって作製された電子デバイス(素子部30、貫通配線基板3及び電極パッド11、12を含む)を制御回路と接続する。接続は、電極パッド11、12を介して行う。接続の方法として、ACF圧着法を用いる。第1の実施例でも、第1の実施形態の作製方法と同様な効果が得られる。
(第2の実施例)
図3の平面図と図4の断面図を用いて、本発明の電子デバイスの作製方法の第2の実施例を説明する。この実施例では、ビア・ファースト法で貫通配線基板上にCMUTを形成する作製方法の一例を説明する。
図3の平面図と図4の断面図を用いて、本発明の電子デバイスの作製方法の第2の実施例を説明する。この実施例では、ビア・ファースト法で貫通配線基板上にCMUTを形成する作製方法の一例を説明する。
CMUTは、振動膜の振動を用いて超音波などの音響波を送信、受信することができ、特に液中において優れた広帯域特性を容易に得ることができる静電容量型トランスデューサである。実用上、図5の平面図に示すように、1つのCMUTデバイスで、次のようにしている。すなわち、2次元アレイ状に配置される複数の振動膜(セルとも呼ぶ)31を1つのエレメント32とし、複数のエレメント32を基板上に並べて素子部30を構成し、所望の性能を実現している。各エレメント32を独立に制御するためには、それぞれのエレメントに対応して配線部を形成する。作製工程の説明に用いる図4のセルの構造は、図3のA−B断面で示すものである。説明を簡単化するため、図4において、CMUTの1つのセル(1つの振動膜)と1対の貫通配線のみが示されている。
本実施例のCMUTは、図4(K)に示すように、素子部30は貫通配線基板3の第一の面1a上に形成され、電極パッド(11と12と24を含む)は貫通配線基板3の第二の面1b上に形成される。貫通配線2(2−1と2−2を含む)は、貫通配線基板3の第一の面1a側で素子部30と、貫通配線基板3の第二の面1b側で電極パッド11、12とそれぞれ電気的に接続されている。素子部30は、第一の電極4、この第一の電極4と間隙5を挟んで設けられた第二の電極6、及び第二の電極6の上下に配設された絶縁膜(7と8と19を含む)で構成され振動可能な振動膜9を含むセルを有する。第一の電極4は、貫通配線2−1を介して、電極パッド11と接続されている。第二の電極6は、貫通配線2−2を介して、電極パッド12と接続されている。素子部30が形成される貫通配線基板3の第一の面1a側において、貫通孔の開口近傍の内壁に金属層2sが形成されている。
まず、図4(A)のように、貫通配線基板3を用意する。貫通配線基板3は、第1の実施例の図2(A)〜(F)で説明した方法で作製する。基板1は、Si基板である。基板1は、第一の面1aと第二の面1bを有し、この2つの面がミラー研磨され、表面粗さRa≦2nmである。基板1の抵抗率は約0.01Ω・cmである。基板1の厚さは約300μmである。貫通孔13は、直径が50μmであり、横方向の周期が400μmで、縦方向の周期が2mmの配列で形成されている。貫通孔13の内壁に、絶縁膜として、厚さ約1μmのSiの熱酸化膜14が形成されている。更に、第一の面1a側において、絶縁膜14が形成された貫通孔の開口近傍の内壁に金属層2sが形成されている。形成された金属層2sは、第一の面1a側の貫通孔13の開口からの深さhが約20μmである(図2(D)参照)。
貫通孔13(図2(D)参照)の中に、Cuを主材料とする貫通配線2(2−1と2−2を含む)を電気めっきによって形成する。貫通配線2の端面(2−1a、2−1bと2−2a、2−2bを含む)は、CMPによって平坦化されている。平坦化後、基板の第一の面1a側において、貫通配線の端面2−1a、2−2aは、第一の面1a側の熱酸化膜14の表面とほぼ同じ高さになる。また、第二の面1b側において、貫通配線の端面2−1b、2−2bは、第二の面1b側の熱酸化膜14の表面とほぼ同じ高さになる。貫通配線2は、CMUTの1つのエレメント32(図3参照)に対して2つ形成されている。
次に、図4(B)のように、基板1の第一の面1a側に第一の電極4を形成する。第一の電極4は、振動膜9(図4(K)参照)を駆動するための電極の1つである。第一の電極4は、Siの熱酸化膜14の上に形成されるので、基板1と絶縁されている。第一の電極4は、セルの振動膜9の振動部分(図4(K)の間隙5に対応する部分)の下部に位置し、振動膜9の振動部分より周囲に延伸している。第一の電極4は、同じエレメント中の各セルに関して、導通するように形成されている。第一の電極4は、厚さが約10nmのTi薄膜と厚さが約50nmのW薄膜とを積層して構成される。第一の電極4は、金属の成膜、フォトリソグラフィーを含むエッチングマスクの形成、及び金属のエッチングを含む方法によって形成される。
次に、図4(C)のように、絶縁膜16のパターンを形成する。絶縁膜16は、第一の電極4の表面を覆い、その役割の1つは第一の電極4の絶縁保護膜として働く。絶縁膜16は、200nm厚のSi酸化物の薄膜である。Si酸化物の薄膜は、約300℃の基板温度でCVD法によって形成される。Si酸化物の成膜後、絶縁膜16に、開口16a、16b、16cを形成する。開口16a、16b、16cは、フォトリソグラフィーを含むエッチングマスク形成と反応性イオンエッチングを含むドライエッチングとを含む方法で形成される。
次に、図4(D)のように、犠牲層17を形成する。犠牲層17は、セルの間隙5を形成するためのもので、Crによって構成される。犠牲層17の厚さと形状は、必要なCMUT特性によって決まる。まず、200nm厚のCr膜を電子ビーム蒸着法で基板1の第一の面1aに形成する。そして、フォトリソグラフィーとウェットエッチングとを含む方法でCr膜を所望の形状に加工する。犠牲層17は、直径が約30μm、高さが約200nmの円柱状構造を有し、図4(H)で形成されるエッチホール18に繋がる。
次に、図4(E)のように、絶縁膜7を形成する。絶縁膜7は、図4(F)で形成される第二の電極6の下表面に接し、その役割の1つは第二の電極6の絶縁保護膜として働く。絶縁膜7は、400nm厚のSi窒化物である。Si窒化物の薄膜は、約300℃の基板温度でPE−CVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)によって成膜される。成膜時、成膜ガスの流量等を制御して、絶縁膜7となるSi窒化物の膜が0.1GPa程度の引張り応力を有するようにする。
次に、図4(F)のように、第二の電極6を形成する。第二の電極6は、振動膜9(図4(K)参照)の上において第一の電極4と対向して形成され、振動膜9を駆動するための電極の1つである。第二の電極6は、10nmのTi膜と100nmのAlNd合金膜とをこの順番に積層して形成される。第二の電極6は、金属のスパッタ成膜、フォトリソグラフィーを含むエッチングマスクの形成、及び金属のエッチングを含む方法によって形成される。第二の電極6は、CMUTの製造が完成した時点で、0.4GPa以下の引張り応力を有するように成膜条件を調整する。第二の電極6は、同じエレメント中の各セルに関して、導通するように形成される。
次に、図4(G)のように、絶縁膜8を形成する。絶縁膜8は、第二の電極6の上表面を覆い、その役割の1つは第二の電極6の絶縁保護膜として働く。絶縁膜8は、絶縁膜7と同様な構成を持ち、絶縁膜7と同様な方法で形成される。
次に、図4(H)のように、エッチホール18を形成して犠牲層17を除去する。エッチホール18は、フォトリソグラフィーと反応性イオンエッチングとを含む方法によって形成される。そして、エッチホール18を介して、エッチング液の導入によってCrの犠牲層17(図4(G)を参照)を除去する。これによって、犠牲層17と同じ形状の間隙5が形成される。
次に、図4(I)のように、薄膜19を形成する。薄膜19は、エッチホール18を封止すると共に、絶縁膜7、第二の電極6、及び絶縁膜8と共に、間隙5の上部で振動可能な振動膜9を構成する。薄膜19は、800nm厚のSi窒化物である。薄膜19は、絶縁膜7と同様、約300℃の基板温度でPE−CVDによって成膜される。このように形成された振動膜9は、全体で0.7GPa程度の引張り応力を有し、スティッキングあるいは座屈がなく、破壊しにくい構造になっている。また、振動膜9は、必要なCMUT特性によって、その構成(材料、厚さ、応力を含む)が設計される。ここで記述した振動膜9の構成は、作製方法を説明するための一例に過ぎない。
次に、図4(J)のように、電気接続用のコンタクト穴20、21(21aと21bを含む)、22(22aと22bを含む)を形成する。コンタクト穴20は、基板1の第二の面1b側に形成され、第二の面1bを部分的に露出する開口である。コンタクト穴21、22は、基板1の第一の面1a側に形成される。コンタクト穴21aは貫通配線2−2の端面2−2aを部分的に露出する開口で、コンタクト穴21bは第二の電極6の表面を部分的に露出する開口である。コンタクト穴22aは第一の電極4の表面を部分的に露出する開口で、コンタクト穴22bは貫通配線2−1の端面2−1aを部分的に露出する開口である。コンタクト穴20の形成法として、フォトリソグラフィーを含むエッチングマスク形成とバッファードフッ酸(BHF)によるSiの熱酸化物のエッチングとを含む方法を用いる。コンタクト穴21、22の形成法として、フォトリソグラフィーを含むエッチングマスク形成とSi窒化物の反応性イオンエッチングとを含む方法を用いる。コンタクト穴20、21、22の形状は、例えば、直径が10μm程度の円柱形状である。
次に、図4(K)のように、接続配線10、23、電極パッド11、12、24を形成する。接続配線10、23は、基板1の第一の面1a側に形成され、厚さが約10nmのTi膜と厚さが約500nmのAl膜とをこの順に積層して構成される。接続配線10は、コンタクト穴21(21aと21bを含む。図4(J)参照)を介して、第二の電極6と貫通配線2−2の端面2−2aとを電気的に接続する。接続配線23は、コンタクト穴22(22aと22bを含む。図4(J)参照)を介して、第一の電極4と貫通配線2−1の端面2−1aとを電気的に接続する。電極パッド11、12、24は、基板1の第二の面1b側に形成され、厚さが約500nmのAl膜から構成される。電極パッド11は、貫通配線2−1の端面2−1bと接続するように形成される。電極パッド12は、貫通配線2−2の端面2−2bと接続するように形成される。その結果、基板1の第一の面1a側にある第一の電極4は、貫通配線2−1を介して、基板1の第二の面1b側に引出される。同様に、基板1の第一の面1a側にある第二の電極6は、貫通配線2−2を介して、基板1の第二の面1b側に引出される。電極パッド24は、基板1と接続するように形成される。
以上の絶縁膜7、8、19の製造工程において、膜間密着性を向上するために、上層の膜を成膜する前に、下層膜の表面に対してプラズマ処理を施してもよい。このプラズマ処理によって、下層膜の表面が清浄化または活性化される。
次に、図示しないが、図4(A)〜(K)で作製したCMUTを制御回路と接続する。接続は、電極パッド11、12、24を介して行う。接続の方法として、ACFの圧着法を用いる。上述した作製方法によって製造されたCMUTは、1つのエレメント32内において、各セルの第一の電極と第二の電極のうちの少なくとも一方が電気的に接続されている。駆動の際、バイアス電圧を第一の電極4に印加し、信号印加または信号取り出し電極として第二の電極6を用いる。電極パッド24を介して基板1を接地して、信号ノイズを低減することができる。以上の図4(A)〜(K)の工程において、基板の最高温度は300℃程度である。本実施例でも、上記作製方法の実施形態や実施例と同様の効果が得られる。
(第3の実施例)
第3の実施例において、第2の実施例で作製したCMUTの応用例を説明する。第2の実施例で作製したCMUTは、音響波を用いた超音波診断装置、超音波画像形成装置などの被検体情報取得装置で用いることができる。被検体からの音響波をCMUTで受信し、出力される電気信号を用いて、光吸収係数などの被検体の光学特性値を反映した被検体情報や音響インピーダンスの違いを反映した被検体情報などを取得することができる。
第3の実施例において、第2の実施例で作製したCMUTの応用例を説明する。第2の実施例で作製したCMUTは、音響波を用いた超音波診断装置、超音波画像形成装置などの被検体情報取得装置で用いることができる。被検体からの音響波をCMUTで受信し、出力される電気信号を用いて、光吸収係数などの被検体の光学特性値を反映した被検体情報や音響インピーダンスの違いを反映した被検体情報などを取得することができる。
図5(a)は、光音響効果を利用した被検体情報取得装置の実施例を示したものである。光源2010から出射したパルス光は、レンズ、ミラー、光ファイバー等の光学部材2012を介して、被検体2014に照射される。被検体2014の内部にある光吸収体2016は、パルス光のエネルギーを吸収し、音響波である光音響波2018を発生する。プローブ(探触子)2022内の本発明の電気機械変換装置(CMUT)を含むデバイス2020は、光音響波2018を受信して電気信号に変換し、信号処理部2024に出力する。信号処理部2024は、入力された電気信号に対して、A/D変換や増幅等の信号処理を行い、処理した信号をデータ処理部2026へ出力する。データ処理部2026は、入力された信号を用いて被検体情報(光吸収係数などの被検体の光学特性値を反映した特性情報)を画像データとして取得する。ここでは、信号処理部2024とデータ処理部2026を含めて、処理部という。表示部2028は、データ処理部2026から入力された画像データに基づいて、画像を表示する。以上のように、本例の被検体の情報取得装置は、本発明によるデバイスと、光源と、処理部と、を有する。そして、デバイスは、光源から発した光が被検体に照射されることにより発生する光音響波を受信して電気信号に変換し、処理部は、電気信号を用いて被検体の情報を取得する。
図5(b)は、音響波の反射を利用した超音波エコー診断装置等の被検体情報取得装置を示したものである。プローブ(探触子)2122内の本発明の電気機械変換装置(CMUT)を含むデバイス2120から被検体2114へ送信された音響波は、反射体2116により反射される。デバイス2120は、反射された音響波(反射波)2118を受信して電気信号に変換し、信号処理部2124に出力する。信号処理部2124は、入力された電気信号に対して、A/D変換や増幅等の信号処理を行い、処理した信号をデータ処理部2126へ出力する。データ処理部2126は、入力された信号を用いて被検体情報(音響インピーダンスの違いを反映した特性情報)を画像データとして取得する。ここでも、信号処理部2124とデータ処理部2126を含めて、処理部という。表示部2128は、データ処理部2126から入力された画像データに基づいて、画像を表示する。以上のように、本例の被検体の情報取得装置は、本発明のデバイスと、該デバイスが出力する電気信号を用いて被検体の情報を取得する処理部と、を有し、該デバイスは、被検体からの音響波を受信し、電気信号を出力する。
なお、プローブは、機械的に走査するものであっても、医師や技師等のユーザが被検体に対して移動させるもの(ハンドヘルド型)であってもよい。また、図5(b)のように反射波を用いる装置の場合、音響波を送信するプローブは、受信するプローブと別に設けてもよい。さらに、図5(a)と図5(b)の装置の機能の何れも兼ね備えた装置とし、被検体の光学特性値を反映した被検体情報と、音響インピーダンスの違いを反映した被検体情報との何れも取得するようにしてもよい。この場合、図5(a)のデバイス2020が光音響波の受信だけでなく、音響波の送信と反射波の受信を行うようにしてもよい。また、上記の如きCMUTを、外力の大きさを測定する測定装置などでも用いることができる。ここでは、外力を受けるCMUTからの電気信号を用いて、CMUTの表面に印加された外力の大きさを測定する。
1・・基板、1a・・基板の第一の面、1b・・基板の第二の面、13・・貫通孔、2・・導電性材料(貫通配線)、2s・・金属層、30・・素子部、50s・・シード基板
Claims (22)
- 貫通配線を有する基板に素子部を設けた電子デバイスの作製方法であって、
基板の第一の面から該第一の面の反対側に位置する第二の面に到達する貫通孔を形成する工程と、
前記第一の面の側において前記貫通孔の開口近傍の内壁に金属層を形成する工程と、
前記貫通孔に導電性材料を充填し、前記貫通配線を形成する工程と、
前記第一の面に前記素子部を形成する工程と、を含む、
ことを特徴とする作製方法。 - 貫通配線を有する基板の作製方法であって、
基板の第一の面から該第一の面の反対側に位置する第二の面に到達する貫通孔を形成する工程と、
前記第一の面の側において前記貫通孔の開口近傍の内壁に金属層を形成する工程と、
前記貫通孔に導電性材料を充填し、貫通配線を形成する工程と、を含む、
ことを特徴とする作製方法。 - 前記貫通配線を形成する工程において、前記第二の面の側より前記貫通孔の内部に導電性材料を充填し、前記貫通配線を形成する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の作製方法。 - 前記貫通配線を電気めっきにより形成する、
ことを特徴とする請求項3に記載の作製方法。 - 前記貫通配線を形成する工程において、
前記基板の前記第二の面とシード基板に形成されるシード膜とを接着用物質を介して貼り合わせた後、前記貫通孔の底部にある前記接着用物質を除去し、露出した前記貫通孔の底部の前記シード膜を起点に電気めっきにより前記貫通孔の内部に導電性材料を充填する、
ことを特徴とする請求項4に記載の作製方法。 - 前記金属層をスパッタリング又は真空蒸着で形成する、
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の製造方法。 - 前記金属層は、前記第一の面から前記貫通孔の内部、hの距離まで形成され、hは3μm以上である、
ことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の製造方法。 - 前記金属層は、前記第一の面から前記貫通孔の内部、hの距離まで形成され、hは前記貫通孔の長さの1/5以下である、
ことを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の製造方法。 - 前記金属層は、Ti、Cr、Ta、Mo、W、Pd、Pt、Cu、Auのうちの単金属または合金によって構成される、
ことを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の製造方法。 - 前記貫通配線を形成する工程において、前記貫通孔に充填された前記導電性材料を研磨して貫通配線を形成することを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の作製方法。
- 前記貫通配線を形成する工程において、前記導電性材料の研磨を化学機械研磨により行うことを特徴とする請求項10に記載の作製方法。
- 前記貫通孔を形成する工程において、前記第一の面、前記第二の面、及び前記貫通孔の内壁を含む前記基板の表面に、絶縁膜を形成することを特徴とする請求項1から11の何れか1項に記載の作製方法。
- 前記貫通孔を形成する工程において、前記貫通孔の内壁に、金属拡散を防止する拡散防止膜を形成することを特徴とする請求項1から12の何れか1項に記載の作製方法。
- 前記貫通孔を形成する工程において、前記貫通孔の内壁の平滑化加工を行うことを特徴とする請求項1から13の何れか1項に記載の作製方法。
- 前記貫通配線を形成する工程において、前記導電性材料は、Cuを主材料とする導電性材料であることを特徴とする請求項1から14の何れか1項に記載の作製方法。
- 貫通配線を有する基板上に素子部を設けた電子デバイスであって、
前記基板の第一の面から該第一の面の反対側に位置する第二の面に到達する貫通孔と、
前記貫通孔の内部を充填する導電性材料で形成された貫通配線と、
前記第一の面に設けられた素子部と、を有し、
前記第一の面の側において前記貫通孔の開口近傍の内壁に金属層が形成されている、
ことを特徴とする電子デバイス。 - 前記金属層は、前記第一の面から前記貫通孔の内部、hの距離まで形成され、hは3μm以上である、
ことを特徴とする請求項16に記載の電子デバイス。 - 前記金属層は、前記第一の面から前記貫通孔の内部、hの距離まで形成され、hは前記貫通孔の長さの1/5以下である、
ことを特徴とする請求項16又は17に記載の製造方法。 - 前記素子部は静電容量型トランスデューサまたは圧電型トランスデューサであることを特徴とする請求項16から18の何れか1項に記載の電子デバイス。
- 請求項19に記載の電子デバイスと、該電子デバイスが出力する電気信号を用いて被検体の情報を取得する処理部と、を有し、
前記電子デバイスは、前記被検体からの音響波を受信し、前記電気信号に変換することを特徴とする被検体情報取得装置。 - 光源をさらに有し、
前記電子デバイスは、前記光源から出射された光が被検体に照射されることにより発生する光音響波を受信して電気信号に変換し、
前記処理部は、前記電子デバイスからの前記電気信号を用いて被検体の情報を取得することを特徴とする請求項20に記載の被検体情報取得装置。 - 貫通配線を有する貫通配線基板であって、
基板の第一の面から該第一の面の反対側に位置する第二の面に到達する貫通孔と、
前記貫通孔の内部を充填する導電性材料で形成された貫通配線と、を有し、
前記第一の面の側において前記貫通孔の開口近傍の内壁に金属層が形成されている、
ことを特徴とする貫通配線基板。
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