以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る粘着剤層付き偏光板10は、偏光子21と、偏光子21の一方の面側(図1では上側)に積層された第1の保護層22と、偏光子21の他方の面側(図1では下側)に積層された第2の保護層23と、第2の保護層23における偏光子21側の面とは反対の面側(図1では下側)に積層された粘着剤層1とを備えて構成される。本実施形態では、第1の保護層22、偏光子21および第2の保護層23の積層体が偏光板2を構成する。なお、図示はしないが、粘着剤層1における偏光板2側とは反対側の面には、粘着剤層付き偏光板10が使用されるまで、剥離シートが積層されていてもよい。
上記粘着剤層1は、重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造含有モノマー(a1)、芳香環含有モノマー(a2)、オキシアルキレン基含有モノマー(a3)、および水酸基含有モノマー(a4)を含有し、水酸基価が5mgKOH/g以上、20mgKOH/g以下であり、酸価が5mgKOH/g以下であり、重量平均分子量が130万以上、300万以下である(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、イソシアネート系架橋剤(B)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)から得られた、ゲル分率が60%以上、89%以下である粘着剤から構成される。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
また、上記第2の保護層23は、シクロオレフィン系樹脂またはトリアセチルセルロースからなり、偏光子21の厚さは、1μm以上、20μm以下であり、第2の保護層23の厚さは、5μm以上、30μm以下であり、偏光子21の厚さに対する第2の保護層23の厚さの比は、1.0以上、5.0以下である。
上記の要件を満たす粘着剤層付き偏光板10は、偏光板2が従来品に比べて薄膜化されており、ディスプレイパネルを薄型にすることが可能である。これにもかかわらず、当該粘着剤層付き偏光板10をディスプレイパネルに適用したときに、当該粘着剤層付き偏光板10は、耐久性に優れ、高温条件下、湿熱条件下またはヒートショック下においても、浮きや剥がれが発生することが抑制される。また、上記粘着剤層付き偏光板10を使用したディスプレイパネルは、高温条件下でも反り難く、かつ熱ムラが生じ難く、さらには帯電防止性にも優れる。
1.粘着剤層
(1)物性
前述した通り、本実施形態における粘着剤層1を構成するための粘着性組成物Pが含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の水酸基価は5mgKOH/g以上、20mgKOH/g以下であり、酸価は5mgKOH/g以下であり、重量平均分子量は130万以上、300万以下である。また、粘着性組成物Pから得られる粘着剤のゲル分率は、60%以上、89%以下である。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の水酸基価が5mgKOH/g未満であると、架橋点が少なすぎて凝集力が低下し、得られる粘着剤が優れた耐久性を発揮しない。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の水酸基価が20mgKOH/gを超えると、架橋点が多すぎて、得られる粘着剤が柔軟でなくなり、応力緩和性が低下し、それにより、高温条件下でディスプレイパネルに反りが生じたり、熱ムラが発生したりする。
上記の観点から、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の水酸基価の下限値は、8mgKOH/g以上であることが好ましく、特に10mgKOH/g以上であることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の水酸基価の上限値は、18mgKOH/g以下であることが好ましく、特に16mgKOH/g以下であることが好ましい。
一方、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の酸価が5mgKOH/g以下であると、粘着剤の貼付対象が、酸により不具合が生じるもの、例えばスズドープ酸化インジウム(ITO)等の透明導電膜や金属膜などである場合にも、酸によるそれらの不具合を抑制することができる。特に、貼付対象が透明導電膜である場合には、当該透明導電膜を腐食させたり、当該透明導電膜の抵抗値を変化させることを抑制することができる。
上記の観点から、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の酸価の上限値は、2mgKOH/g以下であることが好ましく、特に1mgKOH/g以下であることが好ましい。なお、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の酸価の下限値は、小さいほど好ましいため、0mgKOH/gであることが特に好ましい。
ここで、本明細書における水酸基価および酸価は、基本的には(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の配合割合から導き出される理論値とし、当該理論値が導き出せない場合には、JIS K0070に基づいて測定した値とする。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量が130万未満であると、本実施形態における粘着剤層1の耐久性が悪化する。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量が300万を超えると、本実施形態における粘着剤層1の応力緩和性が低下し、高温条件下でディスプレイパネルに反りが生じたり、熱ムラが発生したりする。
上記の観点から、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量の下限値は、150万以上であることが好ましく、特に160万以上であることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量の上限値は、250万以下であることが好ましく、特に190万以下であることが好ましい。
ここで、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
また、粘着剤層1を構成する粘着剤のゲル分率が60%未満であると、当該粘着剤の耐久性が悪化する。一方、粘着剤層1を構成する粘着剤のゲル分率が89%を超えると、粘着剤層1の応力緩和性が低下し、高温条件下でディスプレイパネルに反りが生じたり、熱ムラが発生したりする。
上記の観点から、粘着剤層1を構成する粘着剤のゲル分率の下限値は、65%以上であることが好ましく、特に70%以上であることが好ましい。また、粘着剤層1を構成する粘着剤のゲル分率の上限値は、85%以下であることが好ましく、特に78%以下であることが好ましい。なお、粘着剤のゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
本実施形態における粘着剤層1は、ヘイズ値(JIS K7136:2000に準じて測定した値)が、2%以下であることが好ましく、特に1%以下であることが好ましい。ヘイズ値が2%以下であると、透明性が非常に高く、光学用途として好適なものとなる。
(2)(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造含有モノマー(a1)、芳香環含有モノマー(a2)、オキシアルキレン基含有モノマー(a3)、および水酸基含有モノマー(a4)を含有する。これらのモノマーのうち、特に脂環式構造含有モノマー(a1)および芳香環含有モノマー(a2)を含有することにより、得られる粘着剤は、適切な凝集力と応力緩和性とを併せ持つことができるとともに、偏光板や透明導電膜に対する密着性が高くなるため、ディスプレイパネルに使用した際に、優れた耐久性、反り抑制性および耐熱ムラ性を発揮することができる。
また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、オキシアルキレン基含有モノマー(a3)を含有することにより、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)、ひいては得られる粘着剤の親水性が向上し、粘着剤層1が優れた帯電防止性を発揮する。そのため、本実施形態に係る粘着剤層付き偏光板10の粘着剤層1から剥離シートを剥離する時などに、静電気が発生し難くなる。したがって、例えば、剥離シートを剥離した粘着剤層付き偏光板10を液晶セルに貼合したときに、液晶分子の配向に乱れが生じることを抑制することができ、また、静電気によって埃や塵が吸引されることも抑制することができる。
ここで、後述する帯電防止剤(C)は、一般的には低分子量成分であり、その添加量が多過ぎると、得られる粘着剤の凝集力が低下し、耐久性が悪化する傾向がある。粘着剤の凝集力を向上させるためには、架橋剤(B)の添加量を多くすればよいが、それにより、粘着剤層が硬くなり過ぎて、得られるディスプレイパネルが反り易くなってしまうおそれがある。また、帯電防止剤(C)の添加量が多過ぎると、粘着剤層のシクロオレフィン系樹脂またはトリアセチルセルロース(第2の保護層)に対する密着性が低下するおそれもある。これに対し、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、オキシアルキレン基含有モノマー(a3)を含有することにより、帯電防止剤(C)の添加量を少なくして、上記のような問題を防止することができ、かつ、優れた帯電防止性を得ることができる。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、上記の脂環式構造含有モノマー(a1)、芳香環含有モノマー(a2)、オキシアルキレン基含有モノマー(a3)および水酸基含有モノマー(a4)の他に、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。また、所望により、他のモノマーを含有してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することで、好ましい粘着性を発現することができる。アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸n−ブチルまたは(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを0質量%以上含有することが好ましく、当該モノマー単位によって粘着性を付与する観点から、特に30質量%以上含有することが好ましく、さらには45質量%以上含有することが好ましい。また、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを90質量%以下含有することが好ましく、特に80質量%以下含有することが好ましく、さらには70質量%以下含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量を90質量%以下とすることにより、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)中に他のモノマー成分を所望量導入することができる。
脂環式構造含有モノマー(a1)における脂環式構造の炭素環は、飽和構造のものであってもよいし、不飽和結合を一部に有するものであってもよい。また、脂環式構造は、単環の脂環式構造であってもよいし、二環、三環等の多環の脂環式構造であってもよい。得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の相互間の距離を適切にし、粘着剤に応力緩和性を付与する観点から、上記脂環式構造は、多環の脂環式構造(多環構造)であることが好ましい。さらに、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と他の成分との相溶性を考慮して、上記多環構造は、二環から四環であることが特に好ましい。また、上記と同様に応力緩和性を付与する観点から、脂環式構造の炭素数(環を形成している部分の全ての炭素数をいい、複数の環が独立して存在する場合には、その合計の炭素数をいう)は、通常5以上であることが好ましく、7以上であることが特に好ましい。一方、脂環式構造の炭素数の上限は特に制限されないが、上記と同様に相溶性の観点から、15以下であることが好ましく、10以下であることが特に好ましい。
脂環式構造としては、例えば、シクロヘキシル骨格、ジシクロペンタジエン骨格、アダマンタン骨格、イソボルニル骨格、シクロアルカン骨格(シクロヘプタン骨格、シクロオクタン骨格、シクロノナン骨格、シクロデカン骨格、シクロウンデカン骨格、シクロドデカン骨格等)、シクロアルケン骨格(シクロヘプテン骨格、シクロオクテン骨格等)、ノルボルネン骨格、ノルボルナジエン骨格、キュバン骨格、バスケタン骨格、ハウサン骨格、スピロ骨格などを含むものが挙げられ、中でも、より優れた耐久性を発揮する、ジシクロペンタジエン骨格(脂環式構造の炭素数:10)、アダマンタン骨格(脂環式構造の炭素数:10)またはイソボルニル骨格(脂環式構造の炭素数:7)を含むものが好ましく、特にイソボルニル骨格を含むものが好ましい。
上記脂環式構造含有モノマー(a1)としては、上記の骨格を含む(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が挙げられ、中でも、より優れた耐久性を発揮する、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチルまたは(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましく、特に(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、得られる粘着剤が優れた耐久性、反り抑制性及び耐熱ムラ性を発揮する観点から、当該重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造含有モノマー(a1)を1質量%以上、20質量%以下含有することが好ましい。さらに、上記観点に加えて、得られる粘着剤が優れたリワーク性を発揮する観点から、脂環式構造含有モノマー(a1)を2質量%以上含有することがより好ましく、3質量%以上含有することが特に好ましい。また、同観点から、脂環式構造含有モノマー(a1)を15質量%以下含有することがより好ましく、9質量%以下含有することが特に好ましい。
芳香環含有モノマー(a2)としては、芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニル環、フルオレン環等が挙げられ、中でもベンゼン環が好ましい。
芳香環含有モノマー(a2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−フェニルエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシブチル、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でも、凝集力向上の点から(メタ)アクリル酸2−フェニルエチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、芳香環含有モノマー(a2)を1質量%以上含有することが好ましく、特に3質量%以上含有することが好ましく、さらには12質量以上%含有することが好ましい。また、芳香環含有モノマー(a2)を30質量%以下含有することが好ましく、特に25質量%以下含有することが好ましく、さらには22質量%以下含有することが好ましい。芳香環含有モノマー(a2)の含有量が上記の範囲にあることで、得られる粘着剤が優れた耐久性、反り抑制性および耐熱ムラ性を発揮することができる。
オキシアルキレン基含有モノマー(a3)とは、アルキレンオキサイド単位を少なくとも1つ以上有し、かつ、脂環式構造および芳香環を含有しないモノマーをいう。オキシアルキレン基含有モノマー(a3)としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシエステルが好ましく挙げられる。さらには、末端アルコキシ基のポリエチレングリコール鎖、あるいはポリプロピレングリコール鎖等のポリアルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリル酸アルコキシエステルも好ましく挙げることができる。これらの中でも、脂環式構造含有モノマー(a1)および芳香環含有モノマー(a2)による作用、特に耐久性を効果的に発揮させることのできる(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルが特に好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、オキシアルキレン基含有モノマー(a3)を0.5質量%以上含有することが好ましく、特に1質量%以上含有することが好ましく、さらには5質量以上%含有することが好ましく、12質量%以上含有することが最も好ましい。また、オキシアルキレン基含有モノマー(a3)を90質量%以下含有することが好ましく、特に50質量%以下含有することが好ましく、さらには25質量%以下含有することが好ましい。オキシアルキレン基含有モノマー(a3)の含有量が上記の範囲にあることで、得られる粘着剤が、優れた耐久性、反り抑制性および耐熱ムラ性を維持しつつ、優れた帯電防止性を発揮することができる。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として水酸基含有モノマー(a4)を含有する。水酸基は、イソシアネート系架橋剤(B)のイソシアネート基と反応性が高く、それらの反応によって、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)はイソシアネート系架橋剤(B)により架橋される。この架橋構造により、得られる粘着剤は、耐久性に優れたものとなる。
水酸基含有モノマー(a4)としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられ、中でも、イソシアネート系架橋剤(B)との反応性の点から(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルまたは(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが好ましく、特に(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマー(a4)を0.5質量%以上含有することが好ましく、特に1質量%以上含有することが好ましく、さらには2質量%以上含有することが好ましい。また、水酸基含有モノマー(a4)を10質量%以下含有することが好ましく、特に5質量%以下含有することが好ましく、さらには4質量%以下含有することが好ましい。水酸基含有モノマー(a4)の含有量が上記の範囲にあることで、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の水酸基価が前述した範囲に入り易くなり、優れた耐久性、反り抑制性および耐熱ムラ性を効果的に発揮することができる。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、酸価を前述した範囲とするためにも、当該重合体を構成するモノマー単位としてカルボキシル基含有モノマーを含有しないことが好ましく、含有するとしても、0.5質量%以下の含有量で含有することが好ましく、特に0.1質量%以下の含有量で含有することが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、前述したモノマー以外の他のモノマーを含有してもよい。当該他のモノマーとしては、上記水酸基含有モノマー(a4)の水酸基とイソシアネート系架橋剤(B)との反応を妨げないためにも、イソシアネート系架橋剤(B)と反応性を有する官能基を含まないモノマーが好ましい。
かかる他のモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド等の非架橋性のアクリルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
ここで、粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、粘着性組成物Pは、脂環式構造含有モノマー(a1)、芳香環含有モノマー(a2)または水酸基含有モノマー(a4)を構成モノマー単位として含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体をさらに含有してもよい。
(3)イソシアネート系架橋剤(B)
イソシアネート系架橋剤(B)は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が有する水酸基(水酸基含有モノマー(a4)由来)との反応性に優れるという利点がある。
イソシアネート系架橋剤(B)は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなどの他、それらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体(以上まとめて「変性体」という場合がある。)などが挙げられる。これらの中でも、得られる粘着剤の耐久性の観点から、芳香環を有する化合物、すなわち芳香族ポリイソシアネート又はその変性体が好ましく、芳香環に有機基(例えば、アルキレン鎖が好ましく挙げられ、炭素数1〜4のアルキレン鎖が特に好ましく挙げられる。)を介して結合されたイソシアネート基を有するポリイソシアネート又はその変性体が特に好ましい。具体的には、キシリレンジイソシアネート又はその変性体がさらに好ましく、トリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが最も好ましい。上記イソシアネート系架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
粘着性組成物P中におけるイソシアネート系架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、特に5質量部以下であることが好ましく、さらには0.4質量部以下であることが好ましい。イソシアネート系架橋剤(B)の含有量が上記範囲にあることで、粘着剤のゲル分率が前述した範囲に入り易く、耐久性、反り抑制性および耐熱ムラ性に優れた粘着剤が得られ易くなる。
(4)帯電防止剤(C)
粘着性組成物Pは、帯電防止剤(C)をさらに含有することが好ましい。帯電防止剤(C)を含有すると、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を構成するオキシアルキレン基含有モノマー(a3)との相互作用により、得られる粘着剤(粘着剤層)の帯電防止性がより優れたものとなる。
帯電防止剤(C)としては、得られる粘着剤に帯電防止性を付与することができるものであればよく、例えば、イオン性化合物、ノニオン性化合物等が挙げられるが、中でもイオン性化合物が好ましい。イオン性化合物は、室温で液体であってもよいし、固体であってもよいが、耐久条件に曝されても安定した帯電防止性を発現しやすいという観点から、室温で固体のものが好ましい。ここで、本明細書におけるイオン性化合物とは、陽イオンと陰イオンとが主として静電気引力によって結び付いてなる化合物をいう。
イオン性化合物としては、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、含リンオニウム塩、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が好ましく、得られる粘着剤が耐久性に優れる観点から、特に含窒素オニウム塩またはアルカリ金属塩が好ましく、さらには含窒素オニウム塩が好ましい。含窒素オニウム塩は、含窒素複素環カチオンとその対アニオンとから構成されるイオン性化合物であることが好ましい。
含窒素複素環カチオンの含窒素複素環骨格としては、ピリジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、トリアゾール環、インドール環等が好ましく、中でもピリジン環が好ましい。また、アルカリ金属塩の陽イオンとしては、リチウムイオン、カリウムイオンまたはナトリウムイオンが好ましく、リチウムイオンまたはカリウムイオンが特に好ましい。
一方、上記イオン性化合物を構成するアニオンとしては、ハロゲン化リン酸アニオンまたはスルホニルイミド系アニオンが好ましく挙げられる。ハロゲン化リン酸アニオンとしては、ヘキサフルオロホスフェートなどが好ましく挙げられる。また、スルホニルイミド系アニオンとしては、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドまたはビス(フルオロスルホニル)イミドなどが好ましく挙げられる。
上記帯電防止剤(C)の具体例としては、N−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−ヘキシル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−オクチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−オクチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−ドデシルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−テトラデシルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−ヘキサデシルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−ドデシル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−テトラデシル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−デシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−エチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−へキシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−へキシル−3−メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ブチル−3,4−ジメチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、カリウムビス(フルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)との相溶性の観点から、N−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−ヘキシル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−オクチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−デシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、またはカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドが好ましい。以上の帯電防止剤(C)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘着性組成物P中における帯電防止剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、特に0.5質量部以上であることが好ましく、さらには1質量部以上であることが好ましく、3.5質量部以上であることが最も好ましい。また、当該含有量は、15質量部以下であることが好ましく、特に10質量部以下であることが好ましく、さらには5質量部以下であることが好ましい。帯電防止剤(C)の含有量が上記範囲内にあることで、帯電防止性を効果的に発揮することができるとともに、光学特性や耐久性、反り抑制性などの物性の低下を防止することができる。なお、粘着性組成物Pでは、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、オキシアルキレン基含有モノマー(a3)を含有することにより、帯電防止剤(C)の含有量が上記のように比較的少なくても、得られる粘着剤において、優れた帯電防止性が発揮され、かつ、シクロオレフィン系樹脂またはトリアセチルセルロース(第2の保護層)に対する密着性が高く、耐久性および反り抑制性が優れたものとなる。
(5)シランカップリング剤(D)
粘着性組成物Pは、さらにシランカップリング剤(D)を含有することが好ましく、得られる粘着剤に優れた耐久性を付与する観点から、特にエポキシ基含有シランカップリング剤(D1)および/またはメルカプト基含有シランカップリング剤(D2)を含有することが好ましく、さらにはエポキシ基含有シランカップリング剤(D1)およびメルカプト基含有シランカップリング剤(D2)の両者を含有することが好ましい。
エポキシ基含有シランカップリング剤(D1)としては、分子内にエポキシ基(エポキシ基を含む有機基)を少なくとも1個、アルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、粘着剤成分との相溶性がよく、かつ光透過性を有するもの、例えば実質上透明なものが好適である。
エポキシ基含有シランカップリング剤(D1)の具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等の3−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、メチルトリ(グリシジル)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等の2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシランなどが挙げられる。中でも、耐久性をより向上させる観点から、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが好ましく、特に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
メルカプト基含有シランカップリング剤(D2)としては、分子内にメルカプト基(メルカプト基を含む有機基)を少なくとも1個、アルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、粘着剤成分との相溶性がよく、かつ光透過性を有するもの、例えば実質上透明なものが好適である。
メルカプト基含有シランカップリング剤(D2)の具体例としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有低分子型シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有シラン化合物と、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有シラン化合物との共縮合物などのメルカプト基含有オリゴマー型シランカップリング剤などが挙げられる。中でも、耐久性とリワーク性とを両立させる観点から、メルカプト基含有オリゴマー型シランカップリング剤が好ましく、特にメルカプト基含有シラン化合物とアルキル基含有シラン化合物との共縮合物が好ましく、さらには3−メルカプトプロピルトリメトキシシランとメチルトリエトキシシランとの共縮合物が好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤(D)としては、上記エポキシ基含有シランカップリング剤(D1)およびメルカプト基含有シランカップリング剤(D2)の他に、必要に応じて、例えば、アクリロイル系シランカップリング剤、水酸基系シランカップリング剤、カルボキシル基系シランカップリング剤、アミノ基系シランカップリング剤、アミド基系シランカップリング剤、イソシアネート基系シランカップリング剤等を併用してもよい。
粘着性組成物P中におけるシランカップリング剤(D)の合計含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.1質量部以上であることが好ましく、さらには0.2質量部以上であることが好ましい。また、当該合計含有量は、5質量部以下であることが好ましく、特に2質量部以下であることが好ましく、さらには1質量部以下であることが好ましい。
また、粘着性組成物P中におけるエポキシ基含有シランカップリング剤(D1)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.005質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、2.5質量部以下であることが好ましく、特に1質量部以下であることが好ましく、さらには0.5質量部以下であることが好ましい。一方、粘着性組成物P中におけるメルカプト基含有シランカップリング剤(D2)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.005質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、2.5質量部以下であることが好ましく、特に1質量部以下であることが好ましく、さらには0.5質量部以下であることが好ましい。
(6)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば、分散剤(例えば、アルキレングリコールジアルキルエーテル)、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。なお、粘着性組成物Pは、粘着剤層中に、そのまま、あるいは反応した状態で、残存する各種成分の混合物を表すものであって、乾燥工程等で除去される成分、例えば、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pに含まれない。
(7)粘着性組成物・粘着剤の製造
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、イソシアネート系架橋剤(B)と、所望により、帯電防止剤(C)、シランカップリング剤(D)、添加剤等とを混合することで製造することができる。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、重合体を構成するモノマー単位の混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法等により行うことができる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
なお、上記重合工程において、2−メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の溶液に、イソシアネート系架橋剤(B)、および所望により帯電防止剤(C)、シランカップリング剤(D)、添加剤、希釈溶剤等を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。
粘着性組成物Pを希釈して塗布溶液とするための希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10〜40質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
本実施形態における粘着剤層1を構成する粘着剤は、粘着性組成物Pから得られるものであり、具体的には粘着性組成物Pを架橋してなるものである。粘着性組成物Pの架橋は、加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、粘着性組成物Pの希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
加熱処理を行う場合、加熱温度は、50〜150℃であることが好ましく、特に70〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、30秒〜10分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1〜2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、所定の物性を備えた粘着剤層1が形成される。
上記の加熱処理(及び養生)により、イソシアネート系架橋剤(B)によって(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が架橋し、三次元網目構造が形成される。
(8)粘着剤層の厚さ
粘着剤層1の厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることがさらに好ましい。また、当該厚さは、100μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、特に、当該粘着剤層1によって優れた耐久性、反り抑制性および耐熱ムラ性を発揮させる観点から、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。
2.偏光板
(1)構成
本実施形態における偏光板2は、図1に示すように、第1の保護層22、偏光子21および第2の保護層23をその順で積層した構成を有する。偏光板2は、かかる構成を有することにより、機械強度や耐薬品性に優れたものとなる。なお、図示はしないが、偏光子21と第1の保護層22との間および/または偏光子21と第2の保護層23との間には、接着剤層が介在していてもよい。
(2)偏光子
偏光子21は、二色性色素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなることが好ましい。
偏光子21を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルおよびこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%、好ましくは98〜100モル%の範囲である。ポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000、好ましくは1,500〜5,000の範囲である。
上記のような偏光子21は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色して、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程を経ることにより、好ましく製造される。
一軸延伸は、二色性色素による染色の前に行ってもよいし、二色性色素による染色と同時に行ってもよいし、二色性色素による染色の後に行ってもよい。一軸延伸を二色性色素による染色後に行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。またもちろん、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸するには、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤により膨潤した状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常4〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色するには、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬すればよい。二色性色素として、具体的にはヨウ素または二色性有機染料が用いられる。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は通常、水100質量部あたり0.01〜0.5質量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は通常、水100質量部あたり0.5〜10質量部程度である。この水溶液の温度は、通常20〜40℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常30〜300秒程度である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は通常、水100質量部あたり2〜15質量部程度、好ましくは5〜12質量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有するのが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は通常、水100質量部あたり2〜20質量部程度、好ましくは5〜15質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常100〜1,200秒程度、好ましくは150〜600秒程度、さらに好ましくは200〜400秒程度である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上、好ましくは50〜85℃である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗後は乾燥処理が施されて、偏光子21が得られる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常2〜120秒程度である。その後に行われる乾燥処理は通常、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行われる。乾燥温度は、通常40〜100℃である。また、乾燥処理の時間は、通常120〜600秒程度である。
本実施形態における偏光子21の厚さは、1μm以上、20μm以下であり、通常の偏光子よりも薄膜となっている。偏光子21の厚さが1μm未満では、十分な偏光性能を発揮することができない。また、偏光子21の厚さが20μmを超えると、粘着剤層1による反り抑制効果・耐熱ムラ効果を超えて、ディスプレイパネルに反りや熱ムラが発生する。かかる観点から、偏光子21の厚さは、3μm以上であることが好ましく、特に5μm以上であることが好ましい。また、偏光子21の厚さは、18μm以下であることが好ましく、特に15μm以下であることが好ましい。
(3)保護層
第1の保護層22は、透明樹脂フィルムからなることが好ましい。第1の保護層22を構成する透明樹脂フィルムは、延伸されていないフィルム、または、一軸若しくは二軸延伸されたフィルムのいずれであってもよい。
透明樹脂フィルムの主成分は、好ましくは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、非晶性ポリオレフィン系樹脂およびセルロース系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である。
第1の保護層22に用いられる非晶性ポリオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィン系樹脂が好ましい。シクロオレフィン系樹脂としては、例えば、シクロペンタジエンとオレフィン類とからディールス・アルダー反応によって得られるノルボルネンまたはその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;ジシクロペンタジエンとオレフィン類またはメタクリル酸エステル類とからディールス・アルダー反応によって得られるテトラシクロドデセンまたはその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;ノルボルネン、テトラシクロドデセンおよびそれらの誘導体類、並びに、その他の環状ポリオレフィンモノマーから選択される2種以上を用いて同様に開環メタセシス共重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂;ノルボルネン、テトラシクロドデセンまたはそれらの誘導体に、ビニル基を有する芳香族化合物等を付加共重合させて得られる樹脂等が挙げられる。市販されている非晶性ポリオレフィン系樹脂の例を挙げると、JSR(株)の“アートン”、日本ゼオン(株)の“ZEONEX”および“ZEONOR”、三井化学(株)の“APO”および“アペル”などがある。非晶性ポリオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとする際、製膜には、溶剤キャスト法、溶融押出法など、公知の方法が適宜に用いられる。
セルロース系樹脂としては、セルロースにおける水酸基の少なくとも一部が酢酸エステル化されている樹脂であり、一部が酢酸エステル化され、一部が他の酸でエステル化されている混合エステルであってもよい。セルロース系樹脂は、好ましくはセルロースエステル系樹脂であり、より好ましくはアセチルセルロース系樹脂である。アセチルセルロース系樹脂の具体例として、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどを挙げることができる。このようなアセチルセルロース系樹脂からなるフィルムの市販品としては、例えば、富士フイルム(株)製の“フジタックTD80”、“フジタックTD80UF”および“フジタックTD80UZ”、コニカミノルタオプト(株)製の“KC8UX2M”、“KC2UA”、および“KC8UY”などが挙げられる。
光学補償機能が付与されたセルロース系樹脂フィルムを用いることもできる。かかる光学補償フィルムとして例えば、セルロース系樹脂に位相差調整機能を有する化合物を含有させたフィルム、セルロース系樹脂の表面に位相差調整機能を有する化合物が塗布されたもの、セルロース系樹脂を一軸または二軸に延伸して得られるフィルムなどが挙げられる。市販されているセルロース系樹脂の光学補償フィルムの例を挙げると、富士フイルム(株)製の“ワイドビューフィルム WV BZ 438”および“ワイドビューフィルム WV EA”、コニカミノルタオプト(株)製の“KC4FR−1”および“KC4HR−1”などがある。
第1の保護層22は、上記の中でもセルロース系樹脂からなることが好ましく、セルロースエステル系樹脂からなることがより好ましく、アセチルセルロース系樹脂からなることが特に好ましく、トリアセチルセルロースからなることがさらに好ましい。第1の保護層22がトリアセチルセルロースからなることにより、得られるディスプレイパネルは、高温条件下でより反り難く、さらには熱ムラがより生じ難い。
第1の保護層22の厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。第1の保護層22の厚さが5μm以上であると、偏光子21を十分に保護することができる。また、第1の保護層22の厚さは、120μm以下であることが好ましく、85μm以下であることが特に好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。第1の保護層22の厚さが120μm以下であると、粘着剤層1による反り抑制効果・耐熱ムラ効果が十分に発揮される。
さらに、偏光子21の厚さに対する第1の保護層22の厚さの比は、1.0以上であることが好ましく、特に1.4以上であることが好ましく、さらには1.6以上であることが好ましい。また、当該比は、6.0以下であることが好ましく、特に4.0以下であることが好ましく、さらには3.8以下であることが好ましい。この比が上記範囲内にあることにより、粘着剤層1による反り抑制効果・耐熱ムラ効果が十分に発揮される。
一方、本実施形態における第2の保護層23は、シクロオレフィン系樹脂またはトリアセチルセルロースからなり、通常は、シクロオレフィン系樹脂またはトリアセチルセルロースを主成分とする透明樹脂フィルムからなる。この透明樹脂フィルムは、延伸されていないフィルム、または、一軸若しくは二軸延伸されたフィルムのいずれであってもよい。
粘着剤層1に隣接する第2の保護層23は、光学等方性に優れるシクロオレフィン系樹脂またはトリアセチルセルロースからなる。これにより、得られる偏光板2は、光学性能の低下を最小限に抑えることができる。さらに、光学性能を維持しながら薄膜化を図る観点から、第2の保護層23は、シクロオレフィン系樹脂からなることがより好ましい。
第2の保護層23を構成するシクロオレフィン系樹脂としては、第1の保護層22にて例示したシクロオレフィン系樹脂を使用することができる。中でも、ジシクロペンタジエン系樹脂が好ましい。かかるシクロオレフィン系樹脂の市販品としては、日本ゼオン(株)の“ZEONOR”が特に好ましい。
第2の保護層23を構成するトリアセチルセルロースの市販品としては、コニカミノルタオプト(株)製の“KC2UA”が特に好ましい。
なお、第1の保護層22および第2の保護層23は、同じ種類の材料(透明樹脂フィルム)からなってもよいし、異なる種類の材料(透明樹脂フィルム)からなってもよい。
本実施形態における第2の保護層23の厚さは、5μm以上、30μm以下である。第2の保護層23の厚さが5μm未満であると、偏光板2の製造工程における第2の保護層23の取り扱い性などに難点を生じるとともに、偏光子21を保護する能力も低下する。第2の保護層23の厚さが30μmを超えると、得られる偏光板2の薄膜化の要請に応えることができなくなる。かかる観点から、第2の保護層23の厚さは、10μm以上であることが好ましく、特に12μm以上であることが好ましい。また、同観点から、第2の保護層23の厚さは、25μm以下であることが好ましく、特に24μm以下であることが好ましい。
さらに、偏光子21の厚さに対する第2の保護層23の厚さの比は、1.0以上、5.0以下である。この比が1.0未満であると、偏光子21の熱収縮に対する保持機能が不十分となり、この比が5.0を超えると、偏光板2の薄膜化に対応できないものとなる。かかる観点から、偏光子21の厚さに対する第2の保護層23の厚さの比は、1.3以上であることが好ましく、特に1.5以上であることが好ましい。また、同観点から、当該比は、4.0以下であることが好ましく、特に3.6以下であることが好ましい。
さらに、偏光子21の厚さに対する第1の保護層22および第2の保護層23の合計の厚さの比は、偏光子21の熱収縮を防止する観点から、3.0以上であることが好ましい。なお、上限は特に制限されないが、偏光板2の薄膜化の要請を勘案すると、8.0以下程度であることが好ましい。
なお、第1の保護層22および第2の保護層23(以下まとめて「保護層22,23」という場合がある。)は、紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤を含有する保護層を液晶セルの視認側に配置することで、液晶セルを紫外線による劣化から保護できるためである。
また、保護層22,23は、偏光子21への貼合に先立って、貼合面に、ケン化処理、コロナ処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理などの易接着処理が施されてもよい。また、保護層22,23の偏光子21への貼合面と反対側の表面には、ハードコート層、反射防止層、防眩層などの各種処理層を有していてもよい。
(4)接着剤層
偏光子21と第1の保護層22との間および/または偏光子21と第2の保護層23との間に介在していてもよい接着剤層を構成する接着剤としては、被着体の種類や目的に応じて、適宜、適切なものを用いることができる。例えば、溶剤型接着剤、エマルション型接着剤、水系接着剤、感圧性接着剤、再湿性接着剤、重縮合型接着剤、無溶剤型接着剤、フィルム状接着剤、ホットメルト型接着剤等が挙げられる。
上記接着剤を構成する1つの好ましい接着剤は水系接着剤であり、その代表例は、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とするものである。水系接着剤となりうる市販のポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば(株)クラレ製の「KL−318」等がある。
上記水系接着剤は、架橋剤を含有することができる。架橋剤としては、アミン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、多価金属塩等が好ましく、特にエポキシ化合物が好ましい。架橋剤の市販品としては、例えば、グリオキザールや、住化ケムテックス(株)から販売されている水溶性エポキシ化合物の水溶液である「スミレーズレジン650(30)」等がある。
他の好ましい接着剤として、活性エネルギー線の照射または加熱により硬化するエポキシ樹脂を含有するエポキシ系樹脂組成物からなる接着剤が挙げられる。当該接着剤を用いる場合、フィルム間の接着は、フィルム間に介在する接着剤層に対して、活性エネルギー線を照射するか、または加熱し、接着剤に含有される硬化性エポキシ樹脂を硬化させることにより行うことができる。活性エネルギー線の照射または加熱によるエポキシ樹脂の硬化は、好ましくはエポキシ樹脂のカチオン重合により行われる。なお、本明細書においてエポキシ樹脂とは、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物を意味する。
耐候性、屈折率、カチオン重合性等の観点から、接着剤である硬化性エポキシ樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂は、分子内に芳香環を含まないエポキシ樹脂であることが好ましい。このようなエポキシ樹脂として、水素化エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が例示できる。
(5)偏光板の製造方法
偏光板2の製造は、通常の方法によって行うことができる。以下、一例として、上記接着剤として水系接着剤を使用した場合の製造方法について説明する。
最初に、偏光子21の貼合面または保護層22,23の貼合面に接着剤層を形成する。接着剤層の形成には、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用できる。また、偏光子21と保護層22,23とを両者の貼合面が内側となるように連続的に供給しながら、その間に接着剤を流延させる方式を採用することもできる。接着剤を塗工したら、必要に応じて加熱処理を施して水分を蒸発させ、接着剤層を乾燥させる。
接着剤層の膜厚は、偏光板2の特性設計により任意に設定できるが、接着剤材料費低減の観点からは、小さい方が好ましく、貼合時の気泡や異物等の欠陥を抑制する観点からは、大きい方が好ましく、密着性、耐久性の観点からは、被着体と接着剤の組合せ毎に決まる最適範囲で実施することが好ましい。接着剤層の膜厚は、一般的には0.005μm以上、好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.03μm以上である。また、当該膜厚は、一般的には10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
偏光子21と保護層22,23とを接着するにあたり、両者の貼合面の一方または双方には、接着剤の塗布層を形成する前に、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理の如き易接着処理が施されてもよい。
上記のようにして接着剤層を形成したら、当該接着剤層を介して、第1の保護層22を偏光子21の一方の面に貼合するとともに、第2の保護層23を偏光子21の他方の面に貼合する。これにより、第1の保護層22、偏光子21および第2の保護層23を積層してなる偏光板2が得られる。
偏光板2の総厚は、15μm以上、170μm以下であることが好ましい。特に、モバイル用途での薄型化要求に対応しつつ偏光性能を維持する観点から、偏光板2の総厚は、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが特に好ましい。また、同観点から、当該総厚は、100μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることが特に好ましい。
3.剥離シート
本実施形態における粘着剤層1の偏光板2とは反対側の面(図1中、下面)には、剥離シートが積層されていてもよい。
剥離シートとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
上記剥離シートの少なくとも一方の面(特に粘着剤層と接する剥離面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
粘着剤層の両面に剥離シートを積層する場合、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
4.粘着剤層付き偏光板の製造方法
粘着剤層付き偏光板10の製造方法の一例としては、最初に、剥離シートの剥離面に、粘着性組成物Pの塗布溶液を塗布し、加熱処理を行って塗膜を形成した後、所望により、その塗膜に別の剥離シート(剥離面が塗膜に接するように)を積層し、粘着シートを得る。上記塗膜は、養生期間が不要な場合は、そのまま粘着剤層となり、養生期間が必要な場合は、養生期間経過後に粘着剤層となる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
上記塗布溶液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
次いで、得られた粘着シートから、一方の剥離シート(軽剥離型剥離シート)を剥離する。そして、露出した粘着剤層に偏光板2の第2の保護層23を重ね合わせ、粘着シートと偏光板2とを圧着する。これにより、上記粘着剤層付き偏光板10(剥離シート付き)が得られる。
粘着剤層付き偏光板10の製造方法の他の例としては、剥離シートの剥離面に、前述した粘着性組成物Pを含む溶液(塗布溶液)を塗布し、加熱処理を行って塗膜を形成した後、その塗膜に偏光板2の第2の保護層23を重ね合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗膜が粘着剤層1となる。これにより、上記粘着剤層付き偏光板10(剥離シート付き)が得られる。
5.粘着剤層付き偏光板の物性
本実施形態に係る粘着剤層付き偏光板10は、耐久性を優れたものとする観点から、無アルカリガラスに対する粘着力が、0.5N/25mm以上であることが好ましく、特に1N/25mm以上であることが好ましく、さらには1.5N/25mm以上であることが好ましい。また、リワーク性を優れたものとする観点から、当該粘着力は、20N/25mm以下であることが好ましく、特に10N/25mm以下であることが好ましく、さらには7N/25mm以下であることが好ましい。なお、ここでいう粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180°引き剥がし法により測定した粘着力をいうが、測定サンプルは25mm幅、100mm長とし、当該測定サンプルを被着体に対し0.5MPa、50℃で20分加圧して貼付した後、常圧、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、剥離速度300mm/minにて測定するものとする。
また、本実施形態に係る粘着剤層付き偏光板10は、上記被着体への貼付から、さらに23℃、50%RHの条件下で14日放置した後の粘着力(貼付14日後の粘着力)が、1N/25mm以上であることが好ましく、特に3N/25mm以上であることが好ましい。また、当該粘着力は、20N/25mm以下であることが好ましく、特に9N/25mm以下であることが好ましい。このように経時による粘着力の上昇が抑制されることで、本実施形態に係る粘着剤層付き偏光板10は、リワーク性にも優れ、液晶セルに貼付した後でも、容易に貼り直すことができる。
本実施形態に係る粘着剤層付き偏光板10における粘着剤層の表面抵抗率は、1.0×1012Ω/sq以下であることが好ましく、特に5.0×1011Ω/sq以下であることが好ましく、さらには1.0×1010Ω/sq以下であることが好ましい。表面抵抗率が上記の値以下であることで、ディスプレイパネルにおいて十分な帯電防止性を発揮することができる。かかる表面抵抗率は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として、オキシアルキレン基含有モノマー(a3)を含有することにより、粘着性組成物P中における帯電防止剤(C)の含有量が比較的少量であっても、達成することが可能となる。なお、粘着剤層の表面抵抗率の測定は、JIS K6911に準じて行うものとし、具体的には後述する試験例に示す通りである。なお、上記表面抵抗率の下限値は、特に制限されないが、耐久性や耐熱ムラ性に悪影響を及ぼさないとの観点から5.0×108Ω/sq程度である。
6.粘着剤層付き偏光板の使用
粘着剤層付き偏光板10を使用することにより、例えば、液晶セルと偏光板とを備えた液晶表示装置を製造することができる。
具体的には、粘着剤層付き偏光板10の粘着剤層1(剥離シートが積層されている場合には、当該剥離シートを剥離して露出した粘着剤層1)を、液晶セルの所望の面に対して重ね合わせ、圧着すればよい。これにより、液晶セルと偏光板2とを備えた液晶表示装置が得られる。
本実施形態に係る粘着剤層付き偏光板10は、耐久性に優れるため、得られた液晶表示装置を高温条件下、湿熱条件下またはヒートショック下においても、粘着剤層1の界面にて浮きや剥がれが発生することが抑制される。例えば、粘着剤層付き偏光板10を貼付したガラス板を85℃の高温条件下や60℃・90%RHの湿熱条件下に250時間おいた場合や、−35℃〜70℃のヒートショック(各30分,200サイクル)を与えた場合にも、浮きや剥がれが発生することが抑制される。
また、本実施形態に係る粘着剤層付き偏光板10は、応力緩和性にも優れるため、得られた液晶表示装置は、高温条件下でも反り難く、さらには熱ムラが生じ難い。例えば、粘着剤層付き偏光板10を貼付したガラス板を高温条件下(例えば、80〜85℃の条件下)に250時間おいた場合でも反り難く、さらには熱ムラが生じ難い。特に、偏光板2が薄膜であっても、液晶表示装置は反り難く、また、液晶セルが高精細なものであっても、熱ムラは生じ難い。
さらに、本実施形態に係る粘着剤層付き偏光板10は、帯電防止性にも優れるため、例えば、粘着剤層1から剥離シートを剥離する時などに、静電気が発生し難くなる。したがって、例えば、剥離シートを剥離した粘着剤層付き偏光板10を液晶セルに貼合したときに、液晶セルに悪影響を与えることを抑制することができる。また、静電気によって埃や塵が粘着剤層付き偏光板10に吸引されることも抑制することができる。
ここで、液晶セルの粘着剤層1との貼合面には、透明導電膜が存在する場合があるが、この場合においても、透明導電膜が腐食したり、透明導電膜の抵抗値が変化したりすることが抑制される。
上記透明導電膜としては、例えば、白金、金、銀、銅等の金属、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化亜鉛、二酸化亜鉛等の酸化物、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛ドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛等の複合酸化物、カルコゲナイド、六ホウ化ランタン、窒化チタン、炭化チタン等の非酸化化合物などからなるものが挙げられる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
1.偏光板の製造
(1)偏光子の作製
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上であるポリビニルアルコールからなる厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、乾式で約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した。その後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の質量比が0.05/5/100の水溶液に、28℃で60秒間浸漬した。続いて、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が8.5/8.5/100の水溶液に、72℃で300秒間浸漬した。次いで、26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光子を得た。この偏光子の厚さは15μmであった。
(2)偏光板の作製
水100質量部に対し、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール((株)クラレ製,商品名「KL−318」)を3質量部溶解し、その水溶液に水溶性エポキシ樹脂であるポリアミドエポキシ系添加剤(田岡化学工業(株)製,商品名「スミレーズレジン 650(30)」,固形分濃度30質量%の水溶液)を1.5質量部添加したエポキシ系接着剤を調製した。当該エポキシ系接着剤を、上記で得られた偏光子の一方の面に塗布した。
上記エポキシ系接着剤の塗布層に対し、第1の保護層として、表面にケン化処理が施された厚さ25μmのトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタオプト(株)製,商品名「KC2UA」)を貼合した。
次に、上記偏光子の他方の面に、上記と同様にしてエポキシ系接着剤を塗布し、当該塗布層に対し、第2の保護層として、厚さ23μmの環状オレフィン系樹脂からなるゼロ位相差フィルム(日本ゼオン(株)製,商品名「ZEONOR」)を貼合した。その後80℃で5分間乾燥することにより、上記第1の保護層および第2の保護層を偏光子に接着させた。接着後、40℃で168時間養生し、第1の保護層(層厚25μm)、偏光子(延伸倍率5倍,層厚15μm)および第2の保護層(層厚23μm)を積層してなる総厚63μmの偏光板を得た。なお、偏光子の厚さに対する第1の保護層の厚さの比は1.67であり、偏光子の厚さに対する第2の保護層の厚さの比は1.53であった。また、偏光子の厚さに対する第1の保護層および第2の保護層の合計の厚さの比は3.2であった。
2.粘着剤層付き偏光板の製造
(1)(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の調製
アクリル酸n−ブチル62質量部、アクリル酸2−メトキシエチル10質量部、アクリル酸イソボルニル5質量部、アクリル酸2−フェニルエチル20質量部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル3質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)160万であった。なお、上記配合より、当該(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の水酸基価は14.49mgKOH/g、酸価は0mgKOH/gと計算される。
(2)粘着性組成物の調製
上記工程(1)で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部と、イソシアネート系架橋剤(B)として、トリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(三井化学社製,商品名「タケネートD110N」)0.2質量部と、帯電防止剤(C)として、N−オクチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(室温で固体のイオン性化合物)5.0質量部と、エポキシ基含有シランカップリング剤(D1)として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製,商品名「KBM403」)0.2質量部と、メルカプト基含有シランカップリング剤(D2)として、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランとメチルトリエトキシシランとの共縮合物(信越化学工業社製,商品名「X−41−1810」,メルカプト当量:450g/モル)0.2質量部とを混合し、十分に撹拌して、酢酸エチルで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
ここで、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を100質量部(固形分換算値)とした場合の粘着性組成物の各配合(固形分換算値)を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)]
BA:アクリル酸n−ブチル
MEA:アクリル酸2−メトキシエチル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
PhEA:アクリル酸2−フェニルエチル
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
[イソシアネート系架橋剤(B)]
XDI:トリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(三井化学社製,商品名「タケネートD110N」)
[帯電防止剤(C)]
Pry+PF6−:N−オクチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(室温で固体のイオン性化合物)
K+FSI−:カリウムN,N−ビス(フルオロスルホニル)イミド(室温で固体のイオン性化合物;三菱マテリアル電子化成社製,商品名「K−FSI」)
Pry+FSI−:N−デシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(室温で固体のイオン性化合物)
(3)粘着剤層付き偏光板の作製
得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811,厚さ:38μm)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して、粘着性組成物の塗膜を形成した。
次いで、上記で得られた偏光板を、その第2の保護層の表面と上記塗膜の露出面とが接するように、上記塗膜と貼合し、23℃、50%RHで7日間養生することにより、偏光板上に粘着剤層が形成された、粘着剤層付き偏光板を得た。なお、当該形成された粘着剤層の厚さは20μmであった。
〔実施例2〜9,比較例1〜9〕
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量、架橋剤(B)の配合量、ならびに帯電防止剤(C)の種類および配合量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着剤層付き偏光板を製造した。
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC−8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
〔試験例1〕(ゲル分率の測定)
実施例または比較例にて粘着剤層付き偏光板の作製に使用した光学フィルムに替えて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3801,厚さ:38μm)を使用し、粘着シートを作製した。具体的には、実施例または比較例の製造過程で得られた剥離シート/粘着性組成物の塗膜からなる構成体の露出している塗膜上に、上記剥離シートを剥離処理面側が接するように積層し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生した。これにより、剥離シート(SP−PET3801)/粘着剤層(厚さ:20μm)/剥離シート(SP−PET3811)の構成からなる粘着シートを作製した。
得られた粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表2に示す。
〔試験例2〕(耐久性評価)
実施例および比較例で得られた粘着剤層付き偏光板を裁断し、150mm×200mmの大きさのサンプルを作製した。このサンプルから剥離シートを剥がして、露出した粘着剤層を介して無アルカリガラス(コーニング社製,商品名「Eagle−XG」)に貼付したのち、栗原製作所製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。
その後、下記3通りの耐久条件の環境下に投入し、250時間後に10倍ルーペを用いて、浮きや剥がれの有無を確認した。評価基準は以下の通りである。結果を表2に示す。
◎:浮きや剥がれが確認されなかった。
○:0.5mm以下の大きさの浮きや剥がれが確認された。
△:0.5mm超、1.0mm以下の大きさの浮きや剥がれが確認された。
×:1.0mm超の大きさの浮きや剥がれが確認された。
<耐久条件>
・耐熱:85℃dry
・湿熱:60℃,相対湿度90%RH
・H.S.:−35℃⇔70℃の各30分のヒートショック試験,200サイクル
〔試験例3〕(耐反り性評価)
実施例および比較例で得られた粘着剤層付き偏光板を、縦200mm、横150mmとなるように裁断した。その粘着剤層付き偏光板から剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、縦250mm、横175mm、厚さ0.5mmの無アルカリガラス(コーニング社製,商品名「Eagle−XG」)の中央部に貼り合せて、これをサンプルとした。このサンプルを、85℃、乾燥雰囲気下で、250時間放置した。その後、25℃、50%RHの環境下に取り出し、偏光板側を上にして水平な台の上に置き、サンプルの各角(4点)の台からの反り量(角と台との距離)を測定し、各角の反り量を合計した。その結果に基づき、以下の通り耐反り性を評価した。結果を表2に示す。
◎:反り量の合計が10mm以下
○:反り量の合計が10mm超、15mm以下
△:反り量の合計が15mm超、20mm以下
×:反り量の合計が20mm超
〔試験例4〕(耐熱ムラ性の評価)
実施例および比較例で得られた粘着剤層付き偏光板を、裁断装置(荻野製作所社製スーパーカッター,PN1−600)を用いて200mm×150mmサイズに調整した。剥離シートを剥がして、露出した粘着剤層を介して無アルカリガラス(コーニング社製,イーグルXG)に貼付したのち、栗原製作所製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。なお、上記貼合は、無アルカリガラスの表裏に、粘着剤層付き偏光板を偏光軸がクロスニコル状態(偏光軸:∠45°,∠135°)になるように行った。この状態で、80℃dry環境下にて250時間放置した後、23℃、50%RHの環境下で2時間放置し、これをサンプルとして、以下に示す方法で耐熱ムラ性を評価した。結果を表2に示す。
<評価方法>
上記サンプルをフラットイルミネーター(電通産業社製,HF−SL−A312LC,照度:26,000Lux,輝度:10,000cd)の上に設置し、二次元色彩輝度計(コニカミノルタ社製,CA−2000)にて撮影し、解析ソフトウェア(コニカミノルタ社製,CA−S20w)によって輝度分布画像に変換した。得られたサンプルの輝度分布画像を、図2及び以下に示す評価基準に基づいて評価した。
◎:輝度分布がほぼ均一である
○:四辺の輝度分布に若干の歪みがある
△:四辺の輝度分布に明確な歪みがある
×:四辺の輝度分布に激しい歪みがある。
〔試験例5〕(粘着力測定−リワーク性評価)
実施例および比較例で得られた粘着剤層付き偏光板から、25mm幅、100mm長のサンプルを切り出し、剥離シートを剥がして、露出した粘着剤層を介して無アルカリガラス(コーニング社製,イーグルXG)に貼付したのち、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で粘着力(貼付1日後の粘着力;N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z 0237:2009に準拠して、測定を行った。結果を表2に示す。
さらに、23℃、50%RHの条件下で14日放置してから、上記と同様にして粘着力(貼付14日後の粘着力;N/25mm)を測定した。結果を表2に示す。
上記貼付14日後の粘着力に基づいて、以下の基準によりリワーク性の評価を行った。結果を表2に示す。
◎:貼付14日後の粘着力が8.8N/25mm以下
○:貼付14日後の粘着力が8.8N/25mm超、10N/25mm未満
△:貼付14日後の粘着力が10N/25mm以上、20N/25mm未満
×:貼付14日後の粘着力が20N/25mm以上
〔試験例6〕(粘着剤層の表面抵抗率の測定)
実施例および比較例で得られた粘着剤層付き偏光板を50mm×50mmの大きさに切断し、得られたサンプルを23℃の温度、50%RHの湿度下に24時間放置した。その後、剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層表面について、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製,ハイレスタUP MCP−HT450型)を使用して、JIS K6911に準じて表面抵抗率(Ω/sq)を測定した。結果を表2に示す。
表2から分かるように、実施例で得られた粘着剤層付き偏光板は、耐久性に優れるとともに、高温下でも反り難く、熱ムラも生じ難かった。また、実施例で得られた粘着剤層付き偏光板は、粘着剤層の表面抵抗率が低く、液晶セル等に対する悪影響が小さいものであった。さらに、実施例で得られた粘着剤層付き偏光板は、リワーク性にも優れていた。