<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態の電界検出装置1について説明する。
先ず、この電界検出装置1に関連して、事前に作製された電界検出装置100の構成について、図1〜図3を参照して説明する。図1は、電界検出装置100の構成を示す図である。図2は、電界検出装置100の電気光学結晶に光が入射して反射した戻り光が出射していく様子を説明するための図である。図3は、電気光学結晶の屈折率が変化する場合の態様を説明するための図である。
この電界検出装置100は、マッハツェンダ干渉計として構成されている。図1に示すように、電界検出装置100は、入力導波路11と、3dbカプラ20a,20bと、3つのアーム導波路30,31,32と、2つの出力導波路51,52とを備える。これらの構成要素11,20a,20b,30〜32,51,52は、基板に形成された平面光波回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)101上に形成されている。図1の例では、平面光波回路101は、例えば石英系材料が用いられる。
カプラ20aは、1入力2出力の2分岐型カプラであり、カプラ20bは、2入力1出力型カプラである。
レンズ40と光結合する電気光学結晶41は、第1のアーム導波路30からの光をレンズ40を介して入射し、後述する電気光学結晶の端面41aで反射させた戻り光をレンズ40を介して、第3のアーム導波路32へ出射するように構成されている。
レンズ40は、例えば、主に半径方向に屈折率分布をもつ円筒状のGRIN(Gradient Index Rod Lenses)レンズであり、コリメートと呼ばれる光学調整を得るために用いられている。図1では、コリメート光(平行光)を電気光学結晶41に入射したほうが、より低損失となるため、レンズ40が備えられているが、必ずしもレンズ40を備える必要はない(後述する実施形態についても同様)。
図1の例では、レンズ40は、例えば、直径が1mmで、レンズ長が2.63mmの1/4ピッチとなるように形成されている。なお、ピッチは、光の正弦波の1周期に対するレンズの長さの割合を表している。1/4ピッチは、正弦波の1/4の長さに等しく、点光源からの光をレンズの表面でコリメート光を得ることができる。
電気光学結晶41は、例えば閃亜鉛鉱型構造を有する結晶である。例えば、この結晶は、100面を上面に持つZnTe結晶である。電気光学結晶41は、例えば、1辺の長さが1mmの立方体構造を有する。
図1において、平面光波回路101は、以下のような手順で作製することができる。先ず、厚さ1mmの石英基板上に、光の伝搬するコア層となるガラスを成膜する。コア層は、GeO2をドーパントとして用いて屈折率が石英の屈折率より高くなるように設定している。コア層の厚さは、6μmである。コア層の屈折率は、コア層の曲げ半径が2mmとなるように調整している。
次に、標準的なフォトリソグラフィー技術およびリアクティブイオンエッチングを用いて、所望の光導波路回路が得られるように上記コア層のパターン化および加工を行った。
その後、FHD(flame-hydrolysis-deposit)法を用いて、オーバークラッドとなるガラスの堆積および透明化を行う。オーバークラッドの厚さは、20μmである。
図2に示すように、電気光学結晶41では、(0-11)面で第1のアーム導波路30からの光を入射してから(01−1)面で反射させた戻り光を第3のアーム導波路32へ出射させるようにしている。電気光学結晶41では、(0−11)面には誘電体多層膜からなる無反射(AR:Anti Reflection)コート41aが施され、その逆の(01−1)面には高反射(HR:High Reflection)コート41bが施されている。
電気光学結晶41内では、印加電界に応じて屈折率が変化する。例えば図3に示した例で説明する。電気光学結晶41の(100)面に垂直な方向に電界Eが加えられ、(0-11)方向から光d1が入射する場合、電気光学結晶41の屈折率は大きくなるが、このときの屈折率nは、下記式(1)で表されることが知られている。
式(1)において、n0は電界が印加されていないときの屈折率、r41はこの結晶41の電気光学(EO)係数を示す。
なお、図3に示した電気光学結晶41において、上述した(0-11)方向に代えて、(0-1-1)方向から光d2が入射しても、式(1)で示した屈折率の符号が異なるだけであり、電界強度の変化に応じて与えられる屈折率nは、式(1)のものと同じである。
また、図3において、(100)面に対して水平な方向に電界Eが加えられているのであれば、電界強度の変化によって、屈折率の変化が誘起されない(001)方向、(00-1)方向、(010)方向、および(0-10)方向でない限り、他の角度からの方向から電界が印加されても電界の検出は可能である。ただし、効率が低下するため、(0-11)方向あるいは(0-1-1)方向に水平、またはそれに近い角度を有する方向から光を入射することが好ましい。
図1の例では、電気光学結晶41の長さは、L(図1では、例えば、1mm)であり、電気光学結晶41を入射した光が反射する(つまり、電気光学結晶を往復する)ことを考えると、2Lの長さに渡って、上述した屈折率は変化する。このことから、電気光学結晶41内の位相の変化量は、下記式(2)で与えられる。
このとき、マッハ・チェンダー干渉計としての電界検出装置100の出力は、下記式(3)で与えられる。
式(3)において、φ0は、電界が印加されていないときの初期位相を示す。
このように、電界検出装置100は最終的には、電界強度の大きさに応じた光の強度を検出することができる。しかしながら、上述した電界検出装置100では、外気温度が変化すると、上下2つのアーム(上側アーム導波路30,32と、下側アーム導波路31)間の位相差が変化する。これは、ガラス材で形成されているアーム導波路30〜32と電気光学結晶41の各屈折率が温度依存性や膨張係数により変動し、それに伴って光路長も変動するからである。
しかも、その変動する程度は、上述したように、検出を行おうとする電界強度による位相変化よりも、位相の桁数が6桁も上の程度で変化する。このため、大きなノイズ成分の変動の中、微弱な電界変動による検出成分を検出することになる。また、初期位相φ0も、温度とともに変化してしまうため、光強度の変化が、電界強度の変化によるものか、温度の変化によるものかの判別がしにくい。そのため、高精度で測定することが困難となり、かつ安定的な測定ができない。
しかしながら、後述する本実施形態の電界検出装置1は、外気温度が変化しても安定した測定を高精度に行うように構成されている。
以下、第1実施形態の電界検出装置1について説明する。図4は、かかる電界検出装置1の構成例を示す図である。
この電界検出装置1は、図1に示した電界検出装置100と異なり、上側のアーム導波路30,32側と、下側のアーム導波路31,33側に、それぞれ、電気光学結晶41,43を備える。それ以外の構成は、図1に示したものとほぼ同様である。本実施形態の以下の説明では、特に記述しない限り、図1に示した電界検出装置100の説明で用いた符号等をそのまま用いる。
図4に示すように、電界検出装置1は、入力導波路11と、3dbカプラ20a,20bと、第1、第2、第3および第4のアーム導波路30,31,32,33と、出力導波路51,52とを備える。これらの構成要素11,20a,20b,30〜33,51,52は、基板に形成された平面光波回路(PLC)101上に形成されている。
なお、上側のアーム導波路30,32(以下、「上アーム」ともいう。)の全長は、下側のアーム導波路31,33(以下、「下アーム」ともいう。)の全長と等しくなるように設定されている。
本実施形態の電界検出装置1は、図1に示したものと同様に、電気光学結晶41を備えるが、それに加えて、電気光学結晶43も備える。この実施形態では、電気光学結晶41,43は、例えば閃亜鉛鉱型構造を有する結晶である。例えば、この結晶は、(100)面を上面に持つZnTe結晶である。電気光学結晶41,43は、例えば、1辺の長さが1mmの立方体構造を有する。
なお、電気光学結晶41,43は、研磨時に、光路長が同じになるように、垂直軸(図3の電界Eのベクトル方向)を中心に面を90度回転させ、隣接した電気光学結晶41,43を一度に研磨することで、電気光学結晶41,43の長さを揃えてある。
電気光学結晶41では、第1のアーム導波路30からの光がレンズ40を介して入射し、電気光学結晶の端面41aで反射した戻り光がレンズ40を介して、第3のアーム導波路32へ出射する。例えば、電気光学結晶41では、(100)面に垂直な方向に電界Eが加えられ、(0-11)方向から光が入射するようになっている。
また、電気光学結晶43では、第2のアーム導波路31からの光がレンズ42を介して入射し、電気光学結晶の端面43aで反射した戻り光がレンズ42を介して、第4のアーム導波路33へ出射する。例えば、電気光学結晶43では、(100)面に垂直な方向に電界Eが加えられ、(0−1−1)方向から光が入射するようになっている。レンズ42も、例えば、GRINレンズであり、コリメートと呼ばれる光学調整を得るために用いられている。
電気光学結晶43は、(0−1−1)面には誘電体多層膜からなる無反射(AR)コート43aが施され、(011)面には高反射(HR)コート43bが施されている。
本実施形態の電界検出装置1では、上側のアーム導波路30,32の長さと下側のアーム導波路31,33の長さは等しい。また、レンズ40および電気光学結晶41中の光の伝搬方向に沿った長さ(厚さ)と、レンズ42および電気光学結晶43中の光の伝搬方向に沿った長さ(厚さ)は等しい。このため、仮に、外気温度が変化し、アーム導波路30〜32の屈折率と電気光学結晶41,43の屈折率が、温度依存性や膨張係数により変化したとしても、上側のアーム導波路30,32と下側アーム導波路31,33との関係では、その変化量は同じになるため、外気温度の変化による位相差は生じない。すなわち、本実施形態の電界検出装置1は、温度変化による位相変化のキャンセルをすることができる。
一方、上述したように、2つの電気光学結晶41,43の向きを90度回転させた状態で配置されるので、電界変化による位相変化Δφは、上アームと下アームとの間で電界Eが印加された場合の位相変動量は、下記式(4)で与えられる。
式(4)に示した位相変動量は、上述した式(2)に示したものの2倍の値になっている。すなわち、本実施形態の電界検出装置1では、図1に示したものと比べて、検出感度を2倍にすることもできる。
したがって、本実施形態の電界検出装置1では、温度変化による位相変化をキャンセルすることに加えて、感度の向上も実現することができる。
[評価システム]
図5は、電界検出装置1の検出結果を評価するために用いられる評価システム2を例示している。
図5において、評価システム2では、光源60として、例えばC帯用のチューナブルレーザを用いる。光源60から偏波保持ファイバ61を介して伝搬する光は、電界検出装置1でTE偏光の状態で入射する。図5の例では、電界検出装置1は、2つの平板81a,81bを有する電界印加装置2内に設置されている。電界印加装置2は、平板81a,81bに電圧を加える電圧源70と、同期信号sを生成するファンクションジェネレータ71とを含む。
電界検出装置1の2つの出力ポート(出力導波路51,52)の出力は、2芯シングルモードファイバ62を介して、EO変換装置63に入力する。EO変換装置63では、上述した出力ポート(出力導波路51,52)からの信号強度(光強度)の差動受信を行い、それらを増幅するロックインアンプ64にて検出する。この検出結果は、後述する図6に示してある。
図6(a)は、前述した電界印加装置によって電界検出装置1に印加された電界強度と信号強度(光強度)の振幅との検出結果S1が示してある。図6(a)では、比較のため、図1に示した電界検出装置100での検出結果S2も示してある。図6(a)から、検出結果S1の信号強度は、検出結果S2のものよりも約2倍の割合で増加していることがわかった。すなわち、本実施形態の電界検出装置1は、図1に示したものよりも、約2倍の検出感度を有する。
図6(b)は、信号強度の時間的安定度を示す検出結果S3が示してある。図6(b)では、比較のため、図1に示した電界検出装置100での時間的安定度を示す検出結果S4も示してある。検出結果S3をみると、信号強度はほぼ一定になり安定していた。一方、検出結果S4では、若干ではあるが、信号強度が変動した。これは、大気の温度のゆらぎによるものであり、温度変化により動作点が変動し信号強度が安定しなかったものと考えられる。
以上説明したように、本実施形態の電界検出装置1は、入力導波路11と、出力導波路51,52と、入力導波路11と出力導波路51,52との間に設けられた複数のアーム導波路30〜33と、アーム導波路30〜33の各々の光路に対応して設けられ、各光路を伝搬する光信号を入射して反射させる複数の電気光学結晶41,43とを含む。ここで、電気光学結晶41,43は、温度に対する屈折率の変化が生じないように予め結晶の向きが異なるように配置されている。これにより、測定時の温度が変化しても安定した測定を高精度に行うことができる。
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態である電界検出装置1Aについて説明する。なお、この電界検出装置1Aの構成は、図4に示したものとほぼ同一である。本実施形態の以下の説明では、特に記述しない限り、第1実施形態の説明で用いた符号等をそのまま用いる。
図7は、本実施形態の電界検出装置1Aの一例を示す模式図である。
この電界検出装置1Aは、第1実施形態の電界検出装置1の電気光学結晶41,43を、PLC101の同一面に配置している点に特徴がある。
他の構成は、第1実施形態の電界検出装置1と同様である。すなわち、電界検出装置1Aは、入力導波路11と、3dbカプラ20a,20bと、4つのアーム導波路30,31,32,33と、2つの出力導波路51,52とを備える。これらの構成要素11,20a,20b,30〜33,51,52は、基板に形成されたPLC101上に形成されている。
また、電気光学結晶41では、第1のアーム導波路30からの光がレンズ40を介して入射し、電気光学結晶の端面41aで反射した戻り光がレンズ40を介して、第3のアーム導波路32へ出射する。例えば、電気光学結晶41では、(100)面に垂直な方向に電界Eが加えられ、(0−11)方向から光が入射するようになっている。電気光学結晶43では、第2のアーム導波路31からの光がレンズ42を介して入射し、電気光学結晶の端面43aで反射した戻り光がレンズ42を介して、第4のアーム導波路33へ出射する。例えば、電気光学結晶43では、(100)面に垂直な方向に電界Eが加えられ、(0-1−1)方向から光が入射するようになっている。
なお、電界検出装置1Aでも、第1実施形態の電界検出装置1と同様の作製方法で作製することが可能である。
この電界検出装置1Aでは、第1実施形態のものと同様の検出結果(図6(a)および図6(b))を得た。そのため、電界検出装置1Aについても、検出感度を高めるとともに信号強度の時間的安定度を向上させることができる。
また、この電界検出装置1Aでは、電気光学結晶41,43がPLC101の同一面に配置されている。そのため、ファイバをPLC101のチップ片側にのみ接続すればよい。すなわち、チップ面積が小さくなる。
一方、第1実施形態の電界検出装置1では、電気光学結晶41,43がPLC101の両側に配置されているため、ファイバをPLC101のチップ両側に接続する必要がある。すなわち、チップ面積が大きくなる。このことは、電界検出装置1のモジュールサイズが増大することになる。また、それに加えて、部材のコストが増加したり、組み立てコストが増加したりする。
したがって、本実施形態の電界検出装置1Aは、第1実施形態の電界検出装置1に比べ、小型化が実現できる。また、部材のコストや組み立てコストを削減することができる。
さらに、本実施形態の電界検出装置1Aでは、電気光学結晶41,43間の距離が第1実施形態の電界検出装置1よりも短くなるため、空間分解能を向上させることができる。空間分解能は、2つの電気光学結晶間の距離に対応する。
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態である電界検出装置1Bについて説明する。なお、この電界検出装置1Bの構成は、図4に示したものとほぼ同一である。本実施形態の以下の説明では、特に記述しない限り、第1実施形態の説明で用いた符号等をそのまま用いる。
図8は、本実施形態の電界検出装置1Bの一例を示す模式図である。
この電界検出装置1Bは、第1実施形態のレンズ40,42をそれぞれ調芯するための各調芯用導波路56,57を備えた点が、第1実施形態の電界検出装置1と異なる。
他の構成は、第1実施形態の電界検出装置1と同様である。すなわち、電界検出装置1Bは、入力導波路11と、3dbカプラ20a,20bと、アーム導波路30,31,32,33と、出力導波路51,52とを備える。これらの構成要素11,20a,20b,30〜33,51,52は、基板に形成されたPLC101上に形成されている。
また、電気光学結晶41では、第1のアーム導波路30からの光がレンズ40を介して入射し、電気光学結晶の端面41bで反射した戻り光がレンズ40を介して、第3のアーム導波路32へ出射する。例えば、電気光学結晶41では、(100)面に垂直な方向に電界Eが加えられ、(0−11)方向から光が入射するようになっている。電気光学結晶43では、第2のアーム導波路31からの光がレンズ42を介して入射し、電気光学結晶の端面43aで反射した戻り光がレンズ42を介して、第4のアーム導波路33へ出射する。例えば、電気光学結晶43では、(100)面に垂直な方向に電界Eが加えられ、(0−1−1)方向から光が入射するようになっている。
本実施形態の電界検出装置1Bでは、図8中の実線の円で示すように、2つの導波路32,56が交差するとともに、2つの導波路33,57が交差している。そのため、一般的に、交差損失が該当する箇所で生じることになるが、本実施形態の電界検出装置1Bでは、調芯用導波路56,57を干渉路としての電界検出装置1Bのレイアウト上、対称損失となるように交差させている。これにより、交差損失によるアンバランスが解消し、消光比が大きく得られる。
なお、干渉計では、2つのアーム導波路の損失のアンバランスにより消光比が劣化し得るため、2つのアーム導波路で損失が同じになるように、ダミーの交差を設けて等損にすることのが好ましい。
次に、レンズ40,42のアライメント方法について、図9を参照して説明する。
図9は、調芯用導波路57からの光信号b1がレンズ中央軸oの位置から入射される場合について示している。図9に示す例では、電気光学結晶の端面41bで反射して戻る戻り光b2は、入射時と同じ中央軸oの位置に戻ってきている。
なお、図9において、d1,d2=100μmとして設定されているが、d1,d2は同じ値にする必要はない。また、d1,d2は、レンズ40,42の半径より小さければよく、100μm以外の値に設定することができる。
上述したレンズ特性を利用して、レンズ40,42の位置合わせを実施する。以下、この位置合わせの方法について、図10を参照して説明する。
図10(a)は、戻り光の強度が最大になるようにするための方法を説明するために例示している。このとき、石英からなる導波路に、ファイバを接続し光をレンズ40,42に導入する。PLC101の端面にレンズ40,42を微動台に固定し、位置合わせを実施する。この場合、ファイバへの反射光d2の強度が最大になるように、レンズ40,42の位置決めを行う。
図10(b)は、アーム導波路30〜33を配置するための方法を説明するために例示している。例えば、中央oからd1離れた位置に設けられた入力導波路としての第1のアーム導波路30からレンズ40に入光する場合、上述したように、レンズ40は、中心の位置を原点として対称に集光する特性がある。そのため、出力導波路としての第3のアーム導波路32は、その集光する位置に設ければ良い。このとき、d1=d2となる。アーム導波路31,33についても同様の方法で配置する。
しかし、2つの導波路30,32をレンズ40を介して結合状態を得るこは、難しい場合もある。そこで、2つの導波路30,32の他に、アライメント用の導波路を設けておき、このアライメント用の導波路に光を伝搬して図10(a)で説明した方法でレンズ40の位置合わせをして固定する。
図10(c)は、かかるアライメント用の導波路2を利用する場合の方法を説明するために例示している。この場合、レンズ40の特性上、d1=d2となる位置に導波路2を設計しておけば、中央oの位置が確定した時点で、導波路30と、導波路32との光結合を得ることが可能となる。
なお、d1とd2の関係は、必ずしもd1=d2である必要はない。例えば、レンズ40に接続する電気光学結晶41が、例えば図10(d)に示す特定の角度θ傾けて固定される場合、d2は、θの関数となる。この関係は、光線追跡等の算術により取り付ける角度に応じて、d2は決定することができる。この場合、レンズ端、および電気光学結晶41の両端での光反射による検出感度の低下を抑制することができる。これにより、より高感度の検出が実現できる。
図10(d)の場合も、図10(c)に示したアライメント用の導波路2を用意して、これに光を入射して図10(a)で説明した方法でレンズ40の位置合わせをすれば、図10(d)に示したd1の位置から入力した光は、θにより決定されたd2の位置にフォーカスする。そのため、導波路30,32の光結合を実現できる。アーム導波路31,33についても同様の方法で光結合を実現することができる。
図11は、レンズ40を調芯するために用いられるシステム構成を示してある。
このシステムでは、パワーメータ86と、レーザ87と、サーキュレータ88とを備える。調芯時は、調芯器にPLC101を設置しておく。そして、調心用導波路57に、レーザ87により1.55μmのレーザ光をシングルモードファイバを介して入射させ、導波路57の調芯作業を行った後、PLC101に光を入射させる。
その後、3軸稼働するステージを用いて、治具によりレンズ40のアクティブ調芯を行う。このとき、入力用ファイバにサーキュレータ88を接続し、レーザ(LS:Laser)87から光d1を入射したときの戻り光d2の強度が最大になるようにレンズ40を動かす。戻り光d2の強度は、パワーメータ86により検出される。戻り光の強度が最大になったときのレンズ40の位置でレンズ40を固定する。固定する方法として、例えば、UV接着剤を塗布するとともにUV照射が用いられる。レンズ42についても同様に固定される。
なお、調心用導波路57を用いた調心後に、本実施形態の電界検出装置1Bにおけるアーム導波路30側から光を入射して、このレンズ40の挿入による損失増加を計算した。その結果、1箇所あたりの挿入損失は、約1dBであった。
本実施形態の電界検出装置1Bによると、アライメント用の導波路56,57を有することにより、上述したレンズ40,42の位置決めを実現することができる。また、組立スループットの向上、さらにはコスト削減の効果が得られる。
<第4実施形態>
以下、本発明の第4実施形態である電界検出装置1Cについて説明する。
前述の第1〜第3実施形態では、電界検出装置が等長マッハチェンダー干渉計である場合を例示してきた。しかしながら、アーム導波路からなる干渉計路間に位相差を設けるようにしてもよい。
先ず、この電界検出装置1Cを実現するために電界検出装置の動作点について説明する。
図12は、かかる動作点を説明するための図であって、(a)は理想的な場合、(b)はそれ以外の場合を例示している。図12(a)および図12(b)において、横軸は電界強度、縦軸は光出力を示す。
図12(a)に示した例で説明すると、理想的な動作点は、電界が印加されていない場合(E=0の場合)に、電界検出装置1Cの2出力(実線および破線)の初期位相はともにπ/4のときである。
図12(a)において、電界強度がわずかに変化したとしても、光強度の変化量が最大になる点が動作点になるのが好ましい。
例えば、図12(b)のように、動作点が設定された場合、電界強度が変化しても、光強度の変化量が少なくなり、位相変化の検出感度が劣化することになる。つまり、電界検出装置1Cにおいて、最大の感度を得るためには、初期位相がπ/4のときに動作点が設定される必要がある。
次に、前述の第1〜第3実施形態の電界検出装置において、電気光学結晶41,43の長さLと、設計値とがわずかにずれた場合を考える。これは、電気光学結晶41,43の研磨誤差等から生じ得る。2つの電気光学結晶を同時に研磨すること等を行えば、各電気光学結晶の研磨厚を揃えることができるが、作製上、必ずしも同時にできるとは限らない。例えば、2つの電気光学結晶41,43のうちの一つは、別のバッチで研磨したものになる可能性もある。以下では、そのような電気光学結晶の厚さの違いによる影響について考察する。
この場合、電気光学結晶として、例えばInPを用い、そのInPの屈折率を3.16程度とする。例えば、1.55μmの波長に対して、電気光学結晶の長さが設計値よりも0.123μmずれた場合、このずれは、屈折率が3.16の電気光学結晶では、λ/4の波長に相当する長さになる。電気光学結晶内で光が往復して伝搬することを考えれば、結局、上記ずれは、λ/2の長さとなる。
つまり、数ミリの電気光学結晶長と設計値とが0.123μmずれることは、電界検出装置の出力はOFFであるのにもかかわらず、欲しいポートの出力が製造誤差によりONになることを意味する。
一般に、電気光学結晶の厚さの誤差や電気光学結晶を固定するための接着剤の厚さ等により、電界検出装置の干渉状態は、設計どおりの状態にはならない。むしろ、電界検出装置において、設計通りに等長動作をさせることは不可能に近く、設計通りに動作点を設定するのは難しい。
上記の観点から、本実施形態の電界検出装置1Cでは、干渉計に予め位相差を設けるようにしている。
図13は、電界検出装置1Cの構成例を示す図である。なお、この電界検出装置1Cの構成は、図7に示したものとほぼ同一である。本実施形態の以下の説明では、特に記述しない限り、第2実施形態の説明で用いた符号等をそのまま用いる。
図13において、第2実施形態と同様に、電界検出装置1Cは、入力導波路11と、3dbカプラ20a,20bと、アーム導波路30,31,32,33と、出力導波路51,52とを備える。これらの構成要素11,20a,20b,30〜33,51,52は、基板に形成されたPLC101上に形成されている。
また、電気光学結晶41では、第1のアーム導波路30からの光がレンズ40を介して入射し、電気光学結晶の端面41aで反射した戻り光がレンズ40を介して、第3のアーム導波路32へ出射する。例えば、電気光学結晶41では、(100)面に垂直な方向に電界Eが加えられ、(0−11)方向から光が入射するようになっている。電気光学結晶43では、第2のアーム導波路31からの光がレンズ42を介して入射し、電気光学結晶の端面43aで反射した戻り光がレンズ42を介して、第4のアーム導波路33へ出射する。例えば、電気光学結晶43では、(100)面に垂直な方向に電界Eが加えられ、(0−1−1)方向から光が入射するようになっている。
一方、第2実施形態と異なり、電界検出装置1Cでは、アーム導波路30は、複数の溝301(例えば、10箇所の溝301)を有する。溝301は、アサーマル化(温度無依存化)を実現するために形成されている。溝301の幅は、例えば、12.5μmである。溝301の中は、樹脂(シリコーンを主成分とする樹脂)が充填されている。
本実施形態の電界検出装置1Cにおいて、温度特性を評価したところ、温度に応じてスペクトルが変化しなかった。この点で、電界検出装置1Cによれば、アサーマル化が実現される。
なお、マッハチェンダー干渉計をアサーマル化(温度無依存化)する手法については、国際公開WO2010/079761や特開2012-014151号に開示されている。これらの例では、N個の分割溝を形成し、i番目の分割溝の長さをdLiとすると、dLiは、温度による変動がなくなるように設計されている。すなわち、分割溝に充填される材料の屈折率についての温度依存性は、下記式(6)を満たすようにしてある。
以下、上述した溝301の構成について詳述する。
1.55μm帯の波長は、1.6nmの透過光のスペクトル間隔(FSR:Free Spectral Range)に相当する。本実施形態では、通信で用いられるC帯用のチューナブルレーザが光源60(図5)として用いられることになるので、C帯の30nmの間に、19個程度の山が含まれることになる。
光路長差は、ガラスからなる埋め込み導波路において、約500μm程度になる。図14(a)は、理想的なスペクトルの特性を例示している。
図14(a)に示した状態において、例えば、長さがわずかに異なる2つの電気光学結晶を干渉路内に設けると、FSRがずれることになる(場合によっては、広がる、または狭まる)が、光強度が最大から最小まで変化する様子を観測することができる。
この場合、動作点として、プローブ光の波長を選択することにより、初期位相が、図12(a)に示したπ/4の位置に設定することができる。この場合、電界検出装置の出力は、図14(b)の出力1に示すようになる。
一方、上述した溝301により位相差を設けず、2つの干渉路を等長に設計した場合に、図14(c)に示すような位相差(波長λ0,λ1)が発生したときは、電界検出装置の出力は、図14(b)の出力2に示すようになる。すなわち、電界検出装置の出力2は、動作波長を変更しても、3dB点に設定することができなくなる。つまり、光源60として波長可変レーザを用いたとしても、この可変範囲に、動作点が得られない場合があり得る。
上記のように、干渉路に位相差をあらかじめ設定しておくことにより、実装時や電気光学結晶の研磨時の誤差等により動作点が変動したとしても、電界検出装置が用いるプローブ光の波長を変更することにより、動作点を調整することができる。
しかしながら、上述した位相差を設けることにより、仮に、2つの干渉路間で温度が変化した場合に、干渉路間の位相差が変化する。ここで、2つの干渉路の長さの違いをΔL、波長をλとすると、温度がΔT変動したときに上記ΔLで生じる位相差Δφは、下記式(5)で表される。
上記式(5)において、dn/dtは、ガラスの屈折率についての温度依存性を示す係数を示す。式(5)に示した位相差Δφが生じると、図14(a)に示したスペクトルが波長軸方向に移動し、結果として、動作点が変動する。
そのため、本実施形態の電界検出装置1Cでは、2つのアーム導波路30,32のうちの長い方のアーム導波路30上に、式(5)に示したdn/dt(ガラスの屈折率についての温度依存性を示す係数)とは符号の異なる負の屈折率の温度依存性(dnr/dt)を持つ材料が充填された複数の溝301が形成される。図13の例では、各溝301は、アーム導波路30のコアを分断するように形成される。
なお、本実施形態では、図13に示した溝301はすべて同じサイズである場合について説明したが、溝301の幅は、上記式(5)を満たせば溝301の各々で異なるように設定することもできる。また、溝301に充填される材料についても、上述した負の屈折率の温度依存性(dnr/dt)を有していれば他の材料を用いることができる。
本実施形態の電界検出装置1Cは、アーム導波路30に溝301が設けられるので、動作点は、光源60(例えば、チューナブルレーザ)の稼働範囲に設けることができる。さらに、溝301には、温度補償のための材料(樹脂)が充填されるので、アサーマル化(温度無依存化)が実現できる。そのため、電界検出装置1Cでは、たとえ温度が変化したとしても、図12(a)に示すようなスペクトル変動がない状態を実現することができる。よって、温度変化に対しても、安定して電界検出が行える。また、高精度に電界検出が行える。
上記各実施形態において、電気光学結晶41,43は、温度に対する屈折率の変化が生じないように結晶の向きが異なるように配置されれば各実施形態で説明した例に限られない。例えば、電気光学結晶41,43は、温度に対する屈折率の変化が生じない(001)、(00−1)、(010)あるいは(0−10)の各結晶面方向、またはその同位方向に光が伝搬しないように配置することもできる。このことに関連して、図15を参照して説明する。 図15(a)は、電界Eが(100)面に対して水平な方向に加えられているときの様子を例示してある。この例では、光が、(0−11)面に入射する場合と、(0−1−1)面に入射する場合が示してある。
例えば、光が上述の(0−11)面(すなわち、図15(a)に示したy方向)に入射する場合、図15(b)に示すように、(0−11)面方向からみたときの屈折率は、e1→e2のように変化する。なお、図15(b)において、e1:電界Eの印加前の屈折率、e2:電界Eの印加前の屈折率、を示す。
一方、例えば、光が上述の(0−1−1)面(すなわち、図15(a)に示したx方向)に入射する場合、図15(c)に示すように、(0−1−1)面方向からみたときの屈折率は、e3→e4のように変化する。なお、図15(c)において、e3:電界Eの印加前の屈折率、e4:電界Eの印加前の屈折率、を示す。
図15(d)は、同図(a)に示した電界Eが電気光学結晶に与えられた場合に光の伝搬方向kに応じて変化する屈折率の様子を示してある。
図15(d)において、図15(b)に示したように、光の伝搬方向kがy方向の場合は、屈折率の変化の符号は正となり、電界印加前よりも大きくなる(e1→e2)。一方、図15(c)に示したように、光の伝搬方向kがx方向の場合は、屈折率の変化の符号は負となり、電界印加前よりも小さくなる(e3→e4)。
このように、光の伝搬方向kが変わることによって、屈折率が変化するが、光の伝搬方向kは、図15(b)および図15(c)で示した例のほかにも考えられる。例えば、光の伝搬方向kが、xまたはy方向に平行でない場合であっても、屈折率の最大変化量が得られないにしても、屈折率は、電界を印加する前後で変化する。この場合、光の伝搬方向kが、後述するある方向(点OIを結ぶ方向)の場合を除き、屈折率は大きくなったり、小さくなったりする。なお、Oは原点、Iは電界印加前の屈折率(同図(d)の実線)と電界印加後の屈折率(同図(d)の破線)の交点を示している。
上記屈折率の変化を鑑み、各実施形態では、干渉計を形成する2本のアーム導波路の少なくとも一方に対して屈折率の変化が正になる方向(負になる方向)に光を伝搬させ、かつ他方に対して屈折率の変化が上記方向とは逆になる方向に光を伝搬させることで、屈折率の変化が全体としてゼロになるように2つの電気光学結晶を配置するようにすればよい。