JP2017132951A - 6価クロム処理剤を用いた革または革製品の製造方法および6価クロム処理剤を用いた革または革製品 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、本発明の目的は、革の製造過程において、外観を変化させずに6価クロム処理剤により革を処理できる革の製造方法を提供することにある。
本発明の革の製造方法は、クロムなめし工程と仕上げ工程とを含む。
クロムなめし工程は、皮に対してクロムなめしを行って革を得る工程である。この工程に用いる皮としては、特に限定されず、牛皮、羊皮、やぎ皮、豚皮、馬皮、シカ皮、カンガルー皮、ダチョウ皮、トリ皮、魚の皮などが挙げられる。さらに、カメ目ウミガメ科に属するウミガメ、トカゲ亜目オオトカゲ科に属するオオトカゲ、トカゲ亜目テーイッド科に属するデグー、ヘビ亜目ボア科に属するアミメニシキヘビ、インドニシキヘビ、ヘビ亜目ウミヘビ科に属するウミヘビ、エラブウミヘビ、ヘビ亜目ヘビ科に属するミズヘビ、ワニ目クロコダイル科に属するニューニギアワニ、ワニ目アリゲーター科に属するミシシッピーワニ、カイマンなどの爬虫類の皮が挙げられる。また、クロムなめしは、通常の方法により行うことができる。
以下に、基準量確定工程および6価クロム処理工程についてさらに詳しく説明する。
基準量確定工程では、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物を濃度a(質量%)で含む6価クロム処理剤を用いる。
6価クロム処理剤は、6価クロム還元化合物と溶媒とを含む。
上記6価クロム処理剤に含まれる6価クロム還元化合物は、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る化合物である。
このような6価クロム還元化合物として、特許文献1に記載されたアスコルビン酸の他、本発明者が提案した化合物(国際出願PCT/JP2015/71509(国際出願日:平成27年7月29日))が挙げられる。以下に、本発明者が提案した6価クロム還元化合物について説明する。
6価クロム還元化合物は、有害な6価クロムに作用して、無害な化合物に化学変化をさせる有機化合物である。この化合物はたとえば6価のクロムを還元して3価のクロムとして無害化ができる。
6価クロム還元化合物として含まれる有機化合物(A)および(B)は、6価クロムの処理機能がありこれを無害化する基本性能はもとより、これで処理した革または革製品が皮膚に触れた状態で、肌荒れ等の影響を及ぼさないことと、有毒性を有しないものである。また、(A)および(B)は、それぞれの還元性によっても互いに分解を引き起こさず、また、反応せず互いに干渉し得ない化合物であることが、好ましい。該有機化合物としては、上記化学式(1)に示される基本骨格を有する化合物が好ましく、C、H、Oの原子からなる安定なものが好ましい。
有機化合物(A)は、上記化学式(1)に示される構造およびたとえば下記化学式(15)に示すヒドロキシフェニル基を有する。該官能基を有することで、革中において、即効性もあり、長く安定して滞留し、長期にわたり還元作用を有し、耐熱性に優れる。それゆえ、長期にわたり、6価クロムの生成が抑制される。また、革に含まれることで、汗や雨などの水分によっても分解されにくい。このような優れた効果を有する理由については定かではないが、なめしによって、通常、皮の主成分であるコラーゲンは化学的に架橋され安定化されている。有機化合物(A)が有するヒドロキシフェニル基が、特に、該コラーゲンとの相互作用が高いため長く保持される一方で、該コラーゲンに完全に取り込まれず、海島構造の島部分のようになり、還元性を有するほどの自由度をもって取り込まれているためと推測している。有機化合物(A)としては、革に用いるため、安全性が高く、環境への負荷が少ない化合物が好ましい。
有機化合物(A)としては、たとえば、上記化学式(2)〜(12)および(14)、
フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、2−ナフチルフェノール、3−ナフチルフェノール、4−ナフチルフェノール、4−トリチルフェノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、4−tert−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−tert−ブチル−5−メチルフェノール、チモール、イソチモール、1−ナフトール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、7−メトキシ−2−ナフトール、
1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、
1,3,6,8−テトラヒドロキシナフタレン等のテトラヒドロキシナフタレン、
3−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸メチル、9−ヒドロキシアントラセン、1−ヒドロキシピレン、1−ヒドロキシフェナントレン、9−ヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールフルオレン、フェノールフタレイン、
2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2',3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、
カテコール系タンニン、ピロガロール系タンニン、五倍子タンニン、没食子酸タンニン、フロロタンニンなどのタンニン類、
アントシアニン、ルチン、クエルセチン、フィセチン、ダイゼイン、ヘスペレチン、ヘスピリジン、クリシン、フラボノー、ヘスペレチンなどのフラボノイド類、
カテキン、ガロカテキン、カテキンガラート、エピカテキン、エピカロカテキン、エピカテキンガレート、エピカロカテキンガレート、プロシアニジン、テアフラビンなどのカテキン類、
クルクミン、リグナン、
ロドデンドロール[4−(p−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノール]、
アセチルロドデンドロール、ヘキサノイルロドデンドロール、オクタノイルロドデンドロール、ドデカノイルロドデンドロール、テトラデカノイルロドデンドロール、ヘキサデカノイルロドデンドロール、オクタデカノイルロドデンドロール、4−(3−アセトキシブチル)フェニルアセテート、4−(3−プロパノイルオキシブチル)フェニルプロパノエート、4−(3−オクタノイルオキシブチル)フェニルオクタノエート、4−(3−パルミトイルオキシブチル)フェニルパルミテート等のアシル化ロドデンドロール、
4−(3−メトキシブチル)フェノール、4−(3−エトキシブチル)フェノール、4−(3−オクチルオキシブチル)フェノール等のロドデンドロールアルキルエーテル体、
ロドデンドロール−D−グルコシド(αまたはβ体)、ロドデンドロール−D−ガラクトシド(αまたはβ体)、ロドデンドロール−D−キシロシド(αまたはβ体)、ロドデンドロール−D−マルトシド(αまたはβ体)等のロドデンドロール配糖体等、
αトコフェロール、βトコフェロール、γトコフェロール、δトコフェロールなどを挙げることができる。
有機化合物(B)は、上記化学式(1)に示される構造を有するが、たとえば上記化学式(15)に示すヒドロキシフェニル基を有さない。該ヒドロキシフェニル基を含まないことで、革中に浸透し難くなるが、化学式(1)に示される構造を有するので、革の表面にある6価クロムを3価クロムに好適に還元させ、無毒化させることができる。そのため、該化合物(B)を用いることで、汗や雨などの水分に溶解した6価クロムイオンの環境への溶出およびヒトへの曝露を即効性良く抑制できる。該有機化合物(B)としては、たとえば、ヘテロ環を有する化合物がある。ヘテロ環としてはフラン、クロメン、イソクロメン、キサンテンなどがある。この様な誘導体としては、たとえば上記化学式(13)に示した構造の化合物やその誘導体、エリソルビン酸やその誘導体、4−ヒドロキシフラン−2(5H)−オンが有る。このような化合物は6価クロムの除去機能を有する。
本発明において、上記有機化合物(B)が、アスコルビン酸およびエリソルビン酸から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、アスコルビン酸であることがより好ましい。該化合物は、分解し易いため長期にわたり効果を実現できず、革からブリードし易いが、ヒト(皮膚)に対して低刺激性であり安全性に優れ、還元力も高く、即効性も高い。そのため、該化合物(B)を含む処理剤を革に接触させることで、6価クロムイオンの環境への溶出およびヒトへの曝露を効果的かつ未然に防ぐことができる。また、特に表面を迅速に無毒化処理できるため、肌荒れやアレルギーなどの発症を好適に抑制することができる。該化合物(B)は、有機化合物(A)とも反応せず相溶しなく、該化合物(A)によって分解されないので、該処理液に好適に混合することができる。また、還元力が強いため、該化合物を含むことで、有機化合物(A)による褐色化や色落ちを防止できる。さらに分解性が高いため、色つきがし難く、革の色味や風合いを損なうことがないため、好ましい。
このように、上記化学式(1)に示される基本骨格を分子中に含む化合物であれば6価クロムを無害化し除去することができる。
6価クロム還元化合物として、下記式(A−i)で表される化合物(A−i)およびタンニン(A−ii)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、下記式(A−i)で表される化合物(A−i)と、タンニン(A−ii)とを組み合わせて用いることがより好ましい。
R11〜R18は、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、または下記式(a−i)で表される基を表す。ここで、R19は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
R16とR17とは相互に一体となって5員環または6員環を形成していてもよく、該環を構成する原子としては炭素原子の他に酸素原子が含まれていてもよい。また、該環は置換基として炭素数1〜16のアルキル基を有していてもよい。炭素数1〜16のアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
6価クロム還元化合物として、化合物(A−i)、タンニン(A−ii)とともに、さらに下記式(B−i)で表される化合物(B−i)および下記式(B−ii)で表される化合物(B−ii)から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
6価クロム還元化合物を含む処理剤は、たとえば、6価クロム還元化合物を、水、炭素原子数1〜3のアルコール(プロパノール、イソプロパノール(IPA)、メタノールおよびエタノール)、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサン、ヘプタンなどの単独有機溶媒、水と該有機溶媒との混合溶媒あるいは有機溶媒を複数種混合した揮発性有機溶媒に溶解させ処理液とすることが好ましい。溶媒としては、水、炭素原子数1〜3のアルコール、ヘキサンおよびヘプタンから選ばれる少なくとも1種以上の溶媒を用いることが好ましく、2種以上の溶媒を用いると好適な処理液を得ることができるため、より好ましい。トルエンなどの炭化水素系溶媒は、革に対して浸透性に優れるが、ヒトに対して有害であることが多いので、出来れば、使用を避けた方がよい。
6価クロム処理剤は、6価クロム還元化合物をたとえば濃度a質量%で含むが、濃度a(質量%)は、好ましくは0.01〜10.0質量%の範囲から選択する。
6価クロム処理剤は、本発明の効果が得られる限り特に限定されないが、革に対して迅速に浸透させ、無害化させる観点から、25℃における動粘度が、0.001(cSt)以上5(cSt)未満であることが好ましく、0.01(cSt)以上4.5(cSt)以下であることがより好ましく、0.05(cSt)以上4.3(cSt)以下であることがさらに好ましく、0.1(cSt)以上4.0(cSt)以下であることがさらにより好ましい。なお、動粘度は上記成分をたとえば上記の量で用いることで調整できる。特開2008−272552号公報には、アスコルビン酸を含み、粘度が5cP以上となる増粘剤によって増粘されている6価クロム汚染土壌用処理剤(水溶液)についての記載がある。該公報に記載の通り、処理剤の粘度が5cP未満であると、土壌への浸透性が高すぎて土壌中に万遍なく浸透しないため、5cP未満の処理剤は、土壌中の6価クロムの処理目的に使用することができない。革中の主成分であるコラーゲンは、化学的に架橋され安定化させているため、粘度が5cP以上となる処理剤では、革に対して、浸透しないおそれがある。
仕上げ工程で仕上げ処理された革について、該仕上げ処理された革の銀面の裏面に、上記6価クロム還元化合物を濃度a(質量%)で含む6価クロム処理剤を塗布し、仕上げ処理された銀面に6価クロム処理剤がしみ出しはじめるまでの6価クロム処理剤の基準量A(たとえば革の所定の面積あたりの量)を求める。
基準量Aは、革1m2あたりの重さ(gなど)、体積(mLなど)として実際の値を求めてもよいが、これに対応する値が求められる場合は、必ずしも上記のような実際の値を求めなくてもよい。たとえば、スプレーの場合は、所定の面積を有する革の処理面にむらなく均一な量が付着するよう処理剤をスプレーし、6価クロム処理剤がしみ出しはじめるまでのスプレー時間を測定する。スプレーから吐出される処理剤の量はスプレー時間に比例するため、上記スプレー時間を上記所定の面積あたりの基準量Aとできる。
なお、基準量確定工程で用いる革は、通常革製品の原料としては利用せず、基準量Aを求めるためのみに使用する。基準量確定工程で用いる革としては、6価クロム処理工程で用いる革と、繊維の太さや密度などの性状ができるだけ近い革であることが好ましい。
6価クロム処理工程では、基準量確定工程で求めた基準量Aを利用して、仕上げ工程で仕上げ処理された革について、下記方法(i)または(ii)のように処理を行う。
塗布は、基準量確定工程と同様にスプレー、ロールコーター等によって行われる。
塗布は、基準量確定工程と同様にスプレー、ロールコーター等によって行われる。
ここで、方法(i)においては、スプレー時間以外の処理条件は、基準量確定工程と同じであり、方法(ii)においては、スプレー時間および処理剤中の6価クロム還元化合物の濃度以外の処理条件は、基準量確定工程と同じである。
本発明の革は、クロムなめしされており、かつ仕上げ処理された革であって、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物を含み、該6価クロム還元化合物の量が、該革の仕上げ処理された銀面の裏面から、仕上げ処理された銀面に向かって少なくなる量で含まれている。本発明の革においては、仕上げ処理によって施された革の外観がそのまま保持されている。本発明の革は、たとえば上述した革の製造方法によって得られる。
本発明の革製品の製造方法は、上述した革の製造方法により革を製造し、次いで該革を加工する加工工程を含む。上記革製品の製造方法においては、革の製造過程で仕上げ処理によって施された革の外観がそのまま保持されている。
[1]
皮に対してクロムなめしを行って革を得るクロムなめし工程と、該革の銀面に仕上げ処理を行う仕上げ工程とを含む革の製造方法であって、さらに、仕上げ工程で仕上げ処理された革について、該仕上げ処理された革の銀面の裏面に、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物を濃度a(質量%)で含む6価クロム処理剤を塗布して、仕上げ処理された銀面に6価クロム処理剤がしみ出しはじめるまでの6価クロム処理剤の基準量Aを求める基準量確定工程と、仕上げ工程で仕上げ処理された革について、(i)仕上げ処理された革の銀面の裏面に、濃度a(質量%)で6価クロム還元化合物を含む6価クロム処理剤を、上記基準量A未満の量で2回以上塗布するか(塗布量の合計は上記基準量A以上である。)、(ii)仕上げ処理された革の銀面の裏面に、濃度a(質量%)を超える濃度で6価クロム還元化合物を含む6価クロム処理剤を、上記基準量A未満の量で1回以上塗布する、6価クロム処理工程とを含むことを特徴とする革の製造方法。
6価クロム処理工程とを含むことを特徴とする革の製造方法。
前記6価クロム還元化合物が、6価クロムと作用して3価に還元性を有する化学式(1)に示される構造およびヒドロキシフェニル基を有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない、有機化合物(A)であることを特徴とする[1]に記載の革の製造方法。
前記有機化合物(A)が、6価クロムと作用して3価に還元性を有する化学式(1)に示される構造と、ジヒドロキシフェニル基またはトリヒドロキシフェニル基とを有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない化合物であることを特徴とする[2]に記載の革の製造方法。
前記有機化合物(A)が、6価クロムと作用して3価に還元性を有する化学式(1)に示される構造と、1,2,3−トリヒドロキシフェニル基を有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない化合物であることを特徴とする[3]に記載の革の製造方法。
前記有機化合物(A)が、
(i)没食子酸のエステルと、
(ii)タンニン酸およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物と
であることを特徴とする[4]に記載の革の製造方法。
前記化合物(ii)がタンニン酸であることを特徴とする[5]に記載の革の製造方法。
前記6価クロム還元化合物が、さらに、6価クロムと作用して3価に還元性を有する前記化学式(1)に示される構造を有し、かつ、ヒドロキシフェニル基、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない、有機化合物(B)を含むことを特徴とする[2]〜[6]のいずれかに記載の革の製造方法。
前記有機化合物(B)が、アスコルビン酸、アスコルビン酸の誘導体、エリソルビン酸およびエリソルビン酸の誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする[7]に記載の革の製造方法。
前記6価クロム還元化合物が、下記式(A−i)で表される化合物(A−i)およびタンニン(A−ii)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]に記載の革の製造方法。
前記6価クロム還元化合物が、さらに下記式(B−i)で表される化合物(B−i)および下記式(B−ii)で表される化合物(B−ii)から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする[9]に記載の革の製造方法。
クロムなめしされており、かつ仕上げ処理された革であって、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物を含み、該6価クロム還元化合物の量が、該革の仕上げ処理された銀面の裏面から、仕上げ処理された銀面に向かって少なくなる量で含まれていることを特徴とする革。
[12]
前記6価クロム還元化合物が、6価クロムと作用して3価に還元性を有する化学式(1)に示される構造およびヒドロキシフェニル基を有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない、有機化合物(A)であることを特徴とする[11]に記載の革。
前記有機化合物(A)が、6価クロムと作用して3価に還元性を有する化学式(1)に示される構造と、ジヒドロキシフェニル基またはトリヒドロキシフェニル基とを有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない化合物であることを特徴とする[12]に記載の革。
前記有機化合物(A)が、6価クロムと作用して3価に還元性を有する化学式(1)に示される構造と、1,2,3−トリヒドロキシフェニル基を有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない化合物であることを特徴とする[13]に記載の革。
前記有機化合物(A)が、
(i)没食子酸のエステルと、
(ii)タンニン酸およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物と
であることを特徴とする[14]に記載の革。
前記化合物(ii)がタンニン酸であることを特徴とする[15]に記載の革。
[17]
前記6価クロム還元化合物が、さらに、6価クロムと作用して3価に還元性を有する前記化学式(1)に示される構造を有し、かつ、ヒドロキシフェニル基、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない、有機化合物(B)を含むことを特徴とする[12]〜[16]のいずれかに記載の革。
前記有機化合物(B)が、アスコルビン酸、アスコルビン酸の誘導体、エリソルビン酸およびエリソルビン酸の誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする[17]に記載の革。
前記6価クロム還元化合物が、下記式(A−i)で表される化合物(A−i)およびタンニン(A−ii)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[11]に記載の革。
前記6価クロム還元化合物が、さらに下記式(B−i)で表される化合物(B−i)および下記式(B−ii)で表される化合物(B−ii)から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする[19]に記載の革。
[1]〜[10]のいずれかに記載の革の製造方法により革を製造し、次いで該革を加工する加工工程を含むことを特徴とする革製品の製造方法。
[11]〜[20]のいずれかに記載の革を含むことを特徴とする革製品。
上記革製品の製造方法または革製品においては、革の製造過程で仕上げ処理によって施された革の外観がそのまま保持されている。
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。
クロムなめしおよび銀面へのグレージング処理を行ったワニの革シートを用意した。この革について、ISO17075:2008−02の手法で求めた6価クロムの含有量は、8ppmであった。また、革について全クロムの含有率を蛍光X線分析器(エネルギー分散型蛍光X線分析装置、日本電子株式会社製JSX−3202EV ELEMENT ANALYZER)で分析したところ、7141ppmであった。なお、基準試料として、日本電子株式会社製 JSX3000シリーズ 基準試料1、JSX3000シリーズ 基準試料2およびJSX3000シリーズ エネルギー校正基準試料を用いた。測定は、日本電子株式会社資料QuickManual(番号EY07007−J00、J00 EY07007G、2007年8月版)に基づき、JSX starterにつづき PlasticD3により実施した。
革製品の原料としないしっぽに近い部分(直径8cm)の革について、銀面の裏面に対して上記処理剤をスプレーしたところ、スプレー開始から5秒で銀面にしみ出しはじめた。したがって、基準量Aは5秒であった。なお、革の処理面にむらなく均一な量が付着するよう処理剤をスプレーした。
基準量確定工程に用いたワニ革について、革製品の原料とする腹部分(直径8cm、厚さ1.5mm)を切り抜いた。銀面の裏面に対して、スプレー時間以外の条件は基準量確定工程と同一にして、処理剤を2.5秒スプレーした。この革を乾燥させたのち、もう一度、銀面の裏面に対して、スプレー時間以外の条件は基準量確定工程と同一にして、処理剤を2.5秒スプレーした。なお、革の処理面にむらなく均一な量が付着するよう処理剤をスプレーした。
水とIPAとを50:50(重量%比)で混合し、水性溶媒を調製した。塩化鉄(III)5gを上記水性溶媒95gに溶解し、5質量%の濃度で塩化鉄(III)が含まれる検査液を作製した。
実施例1−1と同様にして、基準量確定工程までを行った。
(6価クロム処理工程、方法(ii)(y=2の場合))
水およびIPA(50質量%:50質量%)の混合溶液に対して、化学式(3)で示される化合物0.5g、化学式(4)で示される化合物2.5gおよび化学式(13)で示される化合物2.0gを混合して溶解し、6価クロム処理剤を得た。ここで、処理剤の全量が250gとなるように混合溶液を用いた。このようにして、基準量確定工程で用いた処理剤に対して2倍の濃度で6価クロム還元化合物を含む6価クロム処理剤を得た。
化学式(3)で示される化合物0.5g、化学式(4)で示される化合物2.5g、化学式(13)で示される化合物2.0gの代わりに、化学式(3)で示される化合物1.5gおよび化学式(4)で示される化合物3.5gを用いたほかは、実施例1−1と同様に基準量確定工程および6価クロム処理工程を行い、6価クロム処理剤による処理を行った革を得た。
化学式(3)で示される化合物0.5g、化学式(4)で示される化合物2.5g、化学式(13)で示される化合物2.0gの代わりに、化学式(3)で示される化合物1.5gおよび化学式(4)で示される化合物3.5gを用いたほかは、実施例1−2と同様に基準量確定工程および6価クロム処理工程を行い、6価クロム処理剤による処理を行った革を得た。
混合溶液の代わりにエタノールを用い、化学式(3)で示される化合物0.5g、化学式(4)で示される化合物2.5g、化学式(13)で示される化合物2.0gの代わりに、化学式(4)で示される化合物15gを用いたほかは、実施例1−1と同様に基準量確定工程および6価クロム処理工程を行い、6価クロム処理剤による処理を行った革を得た。
混合溶液の代わりにエタノールを用い、化学式(3)で示される化合物0.5g、化学式(4)で示される化合物2.5g、化学式(13)で示される化合物2.0gの代わりに、化学式(4)で示される化合物15gを用いたほかは、実施例1−2と同様に基準量確定工程および6価クロム処理工程を行い、6価クロム処理剤による処理を行った革を得た。
Claims (22)
- 皮に対してクロムなめしを行って革を得るクロムなめし工程と、該革の銀面に仕上げ処理を行う仕上げ工程とを含む革の製造方法であって、
さらに、仕上げ工程で仕上げ処理された革について、該仕上げ処理された革の銀面の裏面に、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物を濃度a(質量%)で含む6価クロム処理剤を塗布して、仕上げ処理された銀面に6価クロム処理剤がしみ出しはじめるまでの6価クロム処理剤の基準量Aを求める基準量確定工程と、
仕上げ工程で仕上げ処理された革について、(i)仕上げ処理された革の銀面の裏面に、濃度a(質量%)で6価クロム還元化合物を含む6価クロム処理剤を、上記基準量A未満の量で2回以上塗布するか(塗布量の合計は上記基準量A以上である。)、(ii)仕上げ処理された革の銀面の裏面に、濃度a(質量%)を超える濃度で6価クロム還元化合物を含む6価クロム処理剤を、上記基準量A未満の量で1回以上塗布する、6価クロム処理工程とを含むことを特徴とする革の製造方法。 - 前記有機化合物(A)が、6価クロムと作用して3価に還元性を有する化学式(1)に示される構造と、ジヒドロキシフェニル基またはトリヒドロキシフェニル基とを有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない化合物であることを特徴とする請求項2に記載の革の製造方法。
- 前記有機化合物(A)が、6価クロムと作用して3価に還元性を有する化学式(1)に示される構造と、1,2,3−トリヒドロキシフェニル基を有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない化合物であることを特徴とする請求項3に記載の革の製造方法。
- 前記有機化合物(A)が、
(i)没食子酸のエステルと、
(ii)タンニン酸およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物と
であることを特徴とする請求項4に記載の革の製造方法。 - 前記化合物(ii)がタンニン酸であることを特徴とする請求項5に記載の革の製造方法。
- 前記6価クロム還元化合物が、さらに、6価クロムと作用して3価に還元性を有する前記化学式(1)に示される構造を有し、かつ、ヒドロキシフェニル基、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない、有機化合物(B)を含むことを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の革の製造方法。
- 前記有機化合物(B)が、アスコルビン酸、アスコルビン酸の誘導体、エリソルビン酸およびエリソルビン酸の誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項7に記載の革の製造方法。
- 前記6価クロム還元化合物が、下記式(A−i)で表される化合物(A−i)およびタンニン(A−ii)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の革の製造方法。
- クロムなめしされており、かつ仕上げ処理された革であって、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物を含み、該6価クロム還元化合物の量が、該革の仕上げ処理された銀面の裏面から、仕上げ処理された銀面に向かって少なくなる量で含まれていることを特徴とする革。
- 前記有機化合物(A)が、6価クロムと作用して3価に還元性を有する化学式(1)に示される構造と、ジヒドロキシフェニル基またはトリヒドロキシフェニル基とを有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない化合物であることを特徴とする請求項12に記載の革。
- 前記有機化合物(A)が、6価クロムと作用して3価に還元性を有する化学式(1)に示される構造と、1,2,3−トリヒドロキシフェニル基を有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない化合物であることを特徴とする請求項13に記載の革。
- 前記有機化合物(A)が、
(i)没食子酸のエステルと、
(ii)タンニン酸およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物と
であることを特徴とする請求項14に記載の革。 - 前記化合物(ii)がタンニン酸であることを特徴とする請求項15に記載の革。
- 前記6価クロム還元化合物が、さらに、6価クロムと作用して3価に還元性を有する前記化学式(1)に示される構造を有し、かつ、ヒドロキシフェニル基、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない、有機化合物(B)を含むことを特徴とする請求項12〜16のいずれか1項に記載の革。
- 前記有機化合物(B)が、アスコルビン酸、アスコルビン酸の誘導体、エリソルビン酸およびエリソルビン酸の誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項17に記載の革。
- 前記6価クロム還元化合物が、下記式(A−i)で表される化合物(A−i)およびタンニン(A−ii)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項11に記載の革。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の革の製造方法により革を製造し、次いで該革を加工する加工工程を含むことを特徴とする革製品の製造方法。
- 請求項11〜20のいずれか1項に記載の革を含むことを特徴とする革製品。
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