JP2017131158A - 心臓の肉眼観察可能なモデル動物及びその作製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】心疾患治療用デバイスの開発や医療訓練に用いられる、心臓可視化用モデル動物であって、手術中及び手術後の致死率が低く、生存時間を延長できるモデル動物の作製方法を提供する。【解決手段】剣状突起の脇に形成した開口部を通じて、胸膜を心膜から剥離する工程;内胸静脈及び内胸動脈の頭部側をそれぞれ結紮した後、前記内胸静脈及び内胸動脈のそれぞれの腹側を結紮して、前記内胸静脈及び内胸動脈を止血する工程;及び第5肋骨から第2肋骨までを、各肋骨の肋間動脈及び肋間静脈を止血しつつ、切除する工程を含むモデル動物の作製方法。前記作製方法により、胸壁の一部が切除されていて、体内で拍動している心臓を肉眼で観察できるモデル動物。好ましくは前記動物が豚であるモデル動物。【選択図】図7

Description

本発明は、体内で拍動している状態の心臓を実際に肉眼で観察することができるモデル動物及びその作製方法に関し、特にモデル動物の寿命が従来よりも延長されたもので、且つ当該モデル動物の作製に要する時間を短縮できるモデル動物の作製方法に関する。
心臓の構造を視覚化する技術としては、超音波スキャンや心臓超音波、経胸壁心エコー図(TTE)のように、心臓の二次元断面を画像化するイメージング技術が知られている。
心臓ペースメーカのリード植込み等の心臓外科手術に関しては、このような二次元画像に基づき、実際の心臓及び血管の状態をイメージしながら行われる。
二次元透視画像から心臓の拍動状態や血管の三次元の状態をイメージすることは熟練を要することから、例えば、特表2014−528333号公報(特許文献1)では、モデルの一部分をレンダリングすることで、断面画像を形成し、医者が解剖学的構造の心的イメージを形成し、これらのイメージング画像を3D情報に変換することが提案されている。
一方、心臓外科手術の現場では、若手医師の医療用訓練の観点から、精度の高い心臓シミュレータの開発が求められている。かかる要求に応じて、例えば、特表2015−507225号公報(特許文献2)に、外科的処置をトレーニングするためのシミュレータとして、空気圧で加圧されたチャンバを使用して心室と心房の収縮を生成する、人間の心臓のポンピング作用を複製したシステムが提案されている。
このような人工心臓シミュレータを用いるドライラボは、ブタ等の動物の心臓を使って手わざを習得するウエットラボと比べて、低コストであり、どのような環境下でも手技の習得に適用できるという点で優れている。
しかしながら、実際の開胸手術では、筋肉の切除や血管の移動などに伴い、施術している心臓の位置が、開胸手術前の本来あるべき位置からずれる場合がある。また体外に取り出した心臓と体内で拍動している状態の心臓とでは、心臓のサイズ、外形が変化することもある。
このため、二次元透視画像と実際に施術している心臓とが合致しない場合があり、透視画像から施術している心臓状態をイメージすることはさらに困難となり、熟練を要する。また、心臓ペースメーカ、植込み型除細動器やステントのように、心臓に疾患治療用デバイスを装着したときの心臓の拍動の様子、血管の変化等を観察したい場合には、人工心臓モデルを用いた医療用システム及び医療装置では、不十分である。
このような理由から、外科手術中の心臓の拍動状態や血管に対する影響、あるいは植込み型除細動器やステント等の心臓疾患治療用デバイスを装着した場合の当該デバイスの動作の確認を、体内で拍動している状態の心臓で、且つ肉眼で観察したいという要望が強い。
実際に体内で拍動している心臓の状態を観察するモデルとしては、モデル動物の作製がある。
例えば、循環器系や臓器移植等の医学研究、あるいは循環器系疾患の医薬品開発、薬効の有効性確認などにおいて、ヒトに近い動物である霊長類動物、特にブタ、イヌ、サルといった中型・大型哺乳動物を用いた、より臨床病態に近い病態モデル及びその作製方法が提案されている(例えば、特開2002―209473号公報、WO2006/030737)。
特表2014−528333号公報 特表2015−507225号公報 特開2002―209473号公報 WO2006/030737号公報
しかしながら、上記特許文献3,4で提案されている心疾患モデルの作製方法は、開胸、動脈の結紮または同等の侵襲性の高い処置が施されているため、モデル動物の致死率が高く、病態モデルのばらつきが大きいという問題がある。心疾患治療用デバイスの開発や医療訓練用には、ばらつきが少なく、致死率が低いモデル動物の作製方法の開発がのぞまれている。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、開胸を伴う手術により作製される心臓可視化用モデル動物であって、手術中及び手術後においても致死率が低減し、生存時間を延長できるモデル動物の作製方法を提供することにある。
開胸したモデル動物の生存時間が短くなる主な原因は、大量出血による血圧低下である。胸骨の内側にある動脈、静脈は、肋骨や肋間筋のために見えにくくなっているため、開胸手術に際して、動脈、静脈を切断してしまうことがあり、これが大量出血をもたらす。
これらの血管を傷つけずに肋骨を切断除去する作業は容易ではなく、血管位置を確認しながらの肋骨の切断は時間を要するため、開胸したモデル動物の作製を困難なものとしている。
本発明者らは、出血の危険を減らすために、開胸術式について種々検討し、従来とは全く異なる開胸術式を見出し、致死率が低い本発明のモデル動物の作製方法を完成した。また、本発明のモデル動物の作製方法により、生存時間が従来よりも長く、しかも手術前後で心臓の位置ずれや形状変化がほとんどなく、且つ心臓の拍動状態を肉眼で観察できるモデル動物を完成した。
本発明のモデル動物の作製方法は、体内で拍動している心臓を肉眼で観察できるモデル動物の作製方法であって、
剣状突起の脇に形成した開口部を通じて、胸膜を心膜から剥離する工程;
内胸静脈及び内胸動脈の頭部側をそれぞれ結紮した後、前記内胸静脈及び内胸動脈のそれぞれの腹側を結紮して、前記内胸静脈及び内胸動脈を止血する工程;及び
第5肋骨から第2肋骨までを、各肋骨の肋間動脈及び肋間静脈を止血しつつ、切除する工程を含む。
前記胸膜を心膜から剥離する工程において、内胸静脈及び内胸動脈を、胸膜とともに胸骨から遠ざけることが好ましい。
また、第5肋骨から第2肋骨の胸肋関節を切離しながら、胸膜を剥離していくことが好ましい。
内胸静脈及び内胸動脈の結紮は、内胸静脈及び内胸動脈を露出確認して行う。
本発明のモデル動物の作製方法では、前記肋骨の切除は、肋骨体内側から行うことができる。
本発明のモデル動物は、胸壁の少なくとも一部が切除されていて、体内で拍動している心臓を肉眼で観察できるモデル動物であって、第1肋骨から第5肋骨が胸骨から切断除去されていて、胸膜は心膜から剥離されていて、内胸静脈及び内胸動脈が結紮されていることを特徴とする。
本発明のモデル動物は、心臓位置が開胸前とほぼ同じであり、第2肋骨から第5肋骨は、胸肋関節から切除されていることが好ましい。前記動物は、ブタであることが好ましい。
本発明のモデル動物の作製方法によれば、大量出血の危険を招くことなく、開胸を行うことができる。そして、このような致死率が低い低侵襲性の手術により、手術前とほぼ同様の状態で拍動している心臓を可視化できるモデル動物を提供できる。
本発明のモデル動物は、開胸による心臓への影響がほとんどないので、従来の開胸モデル動物と比べて寿命が長い。
胸部の主な血管を説明するための模式図である。 心臓、肋骨、内胸動脈、内胸静脈の位置関係を説明するための胸部水平方向の切断図である。 本発明のモデル動物の作製方法の一実施形態を説明するためのフロー図である。 切開工程を説明するための図である。 胸肋関節切離後の状態を示した模式図である。 胸肋関節切離後の状態を説明するための胸部の水平方向の断面図である。 本発明のモデル動物の一実施形態の胸部部分を表した模式図である。 本発明のモデル動物の他の実施形態の胸部部分を表した模式図である。
〔モデル動物の作製方法〕
本発明のモデル動物の作製方法は、
剣状突起の脇に形成した開口部を通じて、胸膜を心膜から剥離する工程;
内胸静脈及び内胸動脈の頭部側をそれぞれ結紮した後、前記内胸静脈及び内胸動脈のそれぞれの腹側を結紮して、前記内胸静脈及び内胸動脈を止血する工程;及び
第5肋骨から第2肋骨までを、各肋骨の肋間動脈及び肋間静脈を止血しつつ、切除する工程を含むことを特徴とする。
具体的術式を説明する前に、図1及び図2に基づき、胸部の血管について説明する。
図1は、胸部の主な血管を説明するための模式図であり、図2は、心臓、肋骨、内胸動脈、内胸静脈の位置関係を説明するための胸部水平方向の切断図である。
図2に示すように、心臓は、肋骨により保護されている。
肋骨は、図1に示すように、肋軟骨と称される第1肋骨1から第7肋骨7までは、胸骨に関節している。具体的には、第1肋骨1は胸骨柄に連結し、第2肋骨2、第3肋骨3、第4肋骨4、第5肋骨5、第6肋骨6、第7肋骨7は、胸骨体に直接連結している。第8〜第10肋骨は、助軟骨に連結している。これらの肋骨は、肋間筋等の筋肉(図示せず)に覆われ、内胸動脈、内胸静脈は、これらの筋肉内に埋設されたような状態となっている。
ところで、心臓を可視化できるモデルを作製するためには、心臓該当位置にある肋骨の一部を切除する必要があるが、肋骨の切除においては、内胸動脈、内胸静脈を傷つけないことが重要である。
すなわち、図1に示すように、内胸動脈は腕頭動脈(鎖骨下動脈)を介して胸部大動脈に、内胸静脈は、上大静脈に連結している。また、各肋骨には、それぞれ肋間動脈、肋間静脈が走行し、肋間動脈は、胸部大動脈及び内胸動脈とつながり、肋間静脈は、内胸静脈、上大静脈につながっている。
内胸動脈には、胸大動脈及び肋間動脈からの血液が供給され、肋間静脈は、内胸静脈に連結していて、内胸静脈の血液の一部を上大静脈に送り込んでいる。従って、内胸動脈、内胸静脈が切断された場合、大出血の原因となる。
本発明のモデル作製方法では、大出血を招くことなく、内胸動脈、内胸静脈、肋間動脈、肋間静脈を処理するところに特徴がある。すなわち、まず、内胸動脈、内胸静脈の腕頭動脈(鎖骨下動脈)と上大静脈との連結基点である頭部側を結紮し(図中の「×」印部分)、内胸動脈に流入する血液流を遮断した後、内胸動脈、内胸静脈の腹側端を結紮切離する。内胸動脈、内胸静脈の切断による大量出血を防止した後は、開胸、肋骨切除に際して、各肋間動脈、肋間静脈を処理すればよいので、開胸操作が簡便になる。
以下、本発明の作製方法の一実施形態を、図3のフローチャートに基づき説明する。
本発明のモデル動物の作製方法が適用される動物としては、イヌ、ブタ、サルなどの中型哺乳類が挙げられ、好ましくはブタである。ブタの心臓がヒトの心臓のサイズとほぼ等しいからである。
開胸に際して、はじめに剣状突起の脇部分を切開する(ステップ#1)。図4は、ブタが仰向けに伏した状態で、剣状突起の脇部分を切開した状態を示している。切開部から剣状突起を確認することができる。
従来より行われている開胸手術では、胸骨に沿って、あるいは人体の開胸手術では低侵襲という点で肋間を切開するのが通常である。本発明の方法では、はじめに胸骨下方の先端部である剣状突起の脇部分を切開するところに特徴がある。
図2に示すように、剣状突起のあたりでは、心臓を包んでいる心膜と肺を包み込んで保護している胸膜との間を剥離し、指が通る程度の小さなスペースSを作成する。剣状突起脇を切開して、そのスペースに指を通し、そこを基端に、胸膜を心膜から剥離していく(ステップ#2)。
胸膜の剥離は、心臓から遠ざかるように、すなわち胸膜を肺側に押しやるように行う。心膜と胸膜の剥離は、基端となる部分があれば、指などで剥離していくことができる。
胸膜の剥離は、切開部を、胸骨にそって、胸骨柄側に進めながら行う。第5肋骨から第2肋骨まで順に、胸肋関節を外していくことにより、胸膜を心膜から剥離して、肺側へおしやっていくことができる。
第1肋骨については、胸骨近傍の軟骨部で切離する。このようにして、第5肋骨から第1肋骨まで、胸骨体から切離したことになる。図5は、第1肋骨1〜第5肋骨5が胸骨体から切離された状態を示している。図5では、右側部分の肋骨が切離されている。
なお、胸肋関節の切離、第1肋骨の切離の方法については、特に限定しないが、胸骨頭側の軟骨部分を、電気メスで筋肉より剥離し、骨剪刀で切離することにより行うことができる。切断面は、骨ロウで止血することが好ましい。これらの操作により、胸腔内面が観察しやすくなる。
胸腔内を観察しやすくした後、内胸動脈、内胸静脈を処理する(ステップ#3)。
図6は、肋間関節が切離された肋骨部分の水平方向切断面における心臓、肺、内胸動脈、内胸静脈の位置関係を示す模式図である。
胸膜が心膜から剥離され、肺側へ押しやられることに伴って、肋骨、肋間筋で見えにくくなっていた内胸動脈、内胸静脈が、胸膜に伴って肺側へ移動させられ、胸骨から引き離される。第1肋骨側より胸腔内を観察すると、肋骨から離間した内胸動脈、内胸静脈を確認することができる。この部位の内胸動脈、内胸静脈は、腕頭動脈(鎖骨下動脈)、下行大静脈(上大静脈)との連結起点近傍である。従って、ここで内胸動脈、内胸静脈を結紮切離することで、腕頭動脈(鎖骨下動脈)からの内胸動脈への血液の流入、内胸静脈からの上大静脈への血液流入を遮断できる。
次いで、内胸動脈、内胸静脈の腹部端を結紮切離する(ステップ3の(ii))。
胸壁除去部を決定し、腹直筋後鞘を用指的に剥離する。腹直筋は、第5〜第7肋骨あたりから恥骨までまっすぐに走行している筋肉であり、内胸動脈、内胸静脈は、腹直筋の間を走っているため、胸膜に付随して肺側へおしやられていた内胸静脈、内胸動脈が、腹直筋の引っ張り出しに伴って肋骨表面に露出するようになる。このようにして内胸動脈、内胸静脈の腹部端を確認できたら、これを結紮切離する。
内胸動脈、内胸静脈の結紮切離後は、胸壁への血流路は、肋間動静脈のみが担うことになる。次に、順次、第5肋骨側から肋骨切除、胸壁を除去する(ステップ#4)。決定した胸壁除去部に応じて、腹直筋、前鋸筋、腹横筋といった筋肉を処理する。
尚、腹直筋の切離、腹部側の内胸動脈、内胸静脈の確認、結紮操作にあたっては、乳静脈が入り組んでいる場合があるので、これらの切断、出血に注意する。
図6に示すように、胸肋関節が切離されているので、各肋骨の切断は、肋骨を広げることで、胸腔側(図6中の矢印側)から、行うことができる。
胸壁除去部下縁を電気メスで切開し、腹直筋に続いて、腹横筋を切断することで、前鋸筋に覆われた胸壁を露出できる。
肋骨下縁より、胸腔を観察し、横隔膜レベルを確認する。これにより、頭側で前鋸筋を含めて下部肋骨(第5、第6肋骨)の助軟骨を電気メス等で離断する。
肋骨の離断は、肋間動脈、肋間静脈を止血しながら行う。肋間動静脈の止血は、原則的には結紮により行う。
従来、内胸動脈、内胸静脈が肋間筋肉などで確認しにくくなっていたため、肋骨の切断に際して、内胸動脈、内胸静脈を切断してしまうおそれがあり、これが大出血を招く要因となっていた。本発明の術式では、以上の操作により胸骨近傍を走っている内胸静脈、内胸動脈の結紮処理が終わっているので、大出血のリスクを軽減した状態で、肋骨の切断を行うことができる。
そして、肋骨の切除は、胸腔内を直視確認しながら行うことができる。
以上の操作により、片側の胸壁(図4〜図6では右側)を除去することができる。肋骨切除後、必要に応じて、胸膜処理、体表処理を行う(ステップ#5)。
胸壁の皮膚は、トリミングし、胸腔開口部縁を可及的に覆うように縫着しておくことが好ましい。また、胸膜は、肺を覆う膜として残しておいてもよいし、切除してもよい。切除した場合、心臓とともに、肺も目視で観察することができる。
図7は、本発明の作製方法で右側が開胸され、心臓を目視で確認できるモデル動物の胸部部分を示している。
必要に応じて、両側の胸壁を切除する(ステップ#6)。残っている片側の切除は、ステップ#2〜ステップ#5を繰り返すことにより行うことができる。
作製しようとするモデルの使用目的に応じて、胸壁切除の側(右又は左)、両側を決めればよい。
以上のように、本発明の作製方法によれば、内胸静脈、内胸動脈切断のリスクを極力低減した状態で、肋骨を取り除くことができるので、従来よりも肋骨の切除に要した時間を短縮できる。
また、胸膜を心膜から剥離した後に肋骨の切除を行っているので、心膜を含む心臓に対する開胸手術の影響はほとんどなく、モデル動物を作製することができる。
したがって、作製されたモデル動物において、心臓につながっている血管(冠状動脈、肺動静脈、上行大動脈、下大静脈、上大静脈)、心臓自体は、開胸手術に伴う影響をほとんど受けずに済むので、心臓位置、心臓形状は、開胸前の本来あるべき位置、形状を保持したままで拍動することができる。
さらに、開胸手術における出血が少なくて済むので、従来大量出血による血圧低下を、
例えば、血圧上昇剤等の薬剤で抑制していたが、本発明の作製方法では、これらの薬剤使用量を不要にすることができる。
尚、以上のような開胸手術中、手術後には、体液の蒸発により血圧が下がる場合があるので、その場合には適宜補液を行う。
〔モデル動物〕
本発明のモデル動物は、心臓を体内に存在するときと同様の状態の心臓を、肉眼で観察するためのモデル動物である。本発明のモデル動物は、上記本発明の作製方法から好ましく作製される。
図7は、上記本発明の作製方法で右側の胸部を観察できるようにしたモデル動物の胸部部分を示す模式図である。
図7では、胸壁の右側が切除されていて、心臓の右側(右心房、右心室)、右肺を肉眼で観察することができる。
本発明のモデル動物は、以下のような特徴を有している。
(i) 第1から第5肋骨が胸骨から切断除去されている。すなわち胸骨に連結して残っている肋骨は、第6肋骨、第7肋骨である。尚、第8肋骨〜第10肋骨は、第6,第7肋骨に結合して残されている。
第2肋骨から第5肋骨は、胸肋関節から外されていることが好ましいが、これに限定しない。
(ii)胸膜は心膜から剥離されている。剥離された胸膜は、肺の方へ押しやられた状態となっていてもよいし、切離除去されていてもよい。胸膜が切離除去されている場合には、肺を目視で確認することができる。
(iii)内胸静脈及び内胸動脈が起始部、停止部近傍で結紮されている。
心臓位置は、開胸前とほぼ同じ位置にある。心膜も開胸手術において、胸膜からはがされた後は、特段の処置はなされないので、開胸前の状態が実質上保持されている。また、冠動脈も開胸手術に関与しない。従って、本発明のモデル動物は、陽圧換気を続けることで、胸壁、肋骨が切除された状態にあるにも関わらず、切除前の状態とほぼ同じ状態で心臓が拍動している。
このように、本発明のモデル動物は、体内で拍動している状態と実質的に同じ状態の心臓を肉眼で観察できるモデル動物である。かかるモデル動物によれば、X線により得られる透視画像と肉眼で観察できる実際の心臓映像が合致している。
本発明のモデル動物では、多くの心臓インターベンションで用いられるレントゲン透視で得られる二次元の透視画像と、肉眼で観察できる実際の3次元の心臓とを同時に観察することが可能であることから、医療従事者が、二次元画像から実際の心臓の拍動状態などをイメージするトレーニング用ツールとして用いることができる。
特に、心臓ペースメーカ、植込型除細動器のリード(心臓の電気的活動をセンシング回路に伝える導線)は、通常、右心房、右心室にセットされることから、リード挿入のトレーニング用ツールとしては、右側が開胸されたモデル動物が好ましく用いられる。右側胸壁が切除されたモデル動物では、リード挿入時の心臓の影響、拍動変化の様子等を肉眼で観察できるので、透視画像との併用により医師のトレーニング用ツールとして役立つ。
一方、心筋梗塞や狭心症の治療のためのステント装着等のカテーテル治療は、冠状動脈、上行大動脈といった左心房、左心室側で行われることが多い。従って、心臓にステントを取り付けてバルーンで膨らませる等のトレーニングには、左側の心臓を確認できるように、左側胸壁を除去したモデル動物が好ましく用いられる。また、心臓再同期療法で用いられる左心室リードは左室表面に留置されるため、左側が開胸されたモデル動物の使用は好ましい。
さらに、種々の心臓外科手術に対応するために、図8に示すように、胸部の両側が切除されたモデル動物であってもよい。
従来では開胸されたモデル動物は、せいぜい2時間程度で死亡したが、本発明のモデル動物では、開胸手術における心臓に対する影響が極力軽減されていることから、動物の種類にもよるが、ブタの場合6時間以上の生存を確認できた。したがって、複数の医療従事者がトレーニングに携わることができるので、モデル動物としての利用価値が高い。
本発明のモデル動物は、心臓が体内で拍動しているときとほぼ同じ状態を肉眼で観察できるので、二次元透視画像から3次元の実際の心臓状態のイメージトレーニング、心臓ペースメーカのリード植込み、カテーテル手術などのトレーニング用ツール、ステントや除細動器、心臓ペースメーカ―といった心臓治療用機器の動作確認などに好適に用いることができる。また、本発明のモデル動物の作製方法によれば、致死率が低く、効率的に、心臓観察用のモデル動物を作製することができる。
1 第1肋骨
2 第2肋骨
3 第3肋骨
4 第4肋骨
5 第5肋骨
6 第6肋骨
7 第7肋骨

Claims (10)

  1. 体内で拍動している心臓を肉眼で観察できるモデル動物の作製方法であって、
    剣状突起の脇に形成した開口部を通じて、胸膜を心膜から剥離する工程;
    内胸静脈及び内胸動脈の頭部側をそれぞれ結紮した後、前記内胸静脈及び内胸動脈のそれぞれの腹側を結紮して、前記内胸静脈及び内胸動脈を止血する工程;及び
    第5肋骨から第2肋骨までを、各肋骨の肋間動脈及び肋間静脈を止血しつつ、切除する工程;
    を含むモデル動物の作製方法。
  2. 前記胸膜を心膜から剥離する工程において、内胸静脈及び内胸動脈を、胸膜とともに胸骨から遠ざけることを特徴とする請求項1に記載のモデル動物の作製方法。
  3. 第5肋骨から第2肋骨の胸肋関節を切離しながら、胸膜を剥離していく請求項2に記載のモデル動物の作製方法。
  4. 内胸静脈及び内胸動脈の頭部側の結紮は、第1肋骨の胸骨近傍の軟骨切離により内胸静脈及び内胸動脈を露出させて行う請求項1〜3のいずれか1項に記載のモデル動物の作製方法。
  5. 内胸静脈及び内胸動脈の腹側の結紮は、腹直筋の引張り出しにより前記内胸静脈及び内胸動脈を露出させて行う請求項1〜4のいずれか1項に記載のモデル動物の作製方法。
  6. 前記肋骨の切除は、肋骨体内側から行う請求項1〜5のいずれか1項に記載のモデル動物の作製方法。
  7. 胸壁の少なくとも一部が切除されていて、体内で拍動している心臓を肉眼で観察できるモデル動物であって、
    第1肋骨から第5肋骨が胸骨から切断除去されていて、
    胸膜は心膜から剥離されていて
    内胸静脈及び内胸動脈が結紮されているモデル動物。
  8. 心臓位置が、開胸前とほぼ同じである請求項7に記載のモデル動物。
  9. 第2肋骨から第5肋骨は、胸肋関節から切除されている請求項7又は8に記載のモデル動物。
  10. 前記動物は、ブタである請求項7〜9のいずれか1項に記載のモデル動物。
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