JP2017131158A - 心臓の肉眼観察可能なモデル動物及びその作製方法 - Google Patents
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Abstract
Description
心臓ペースメーカのリード植込み等の心臓外科手術に関しては、このような二次元画像に基づき、実際の心臓及び血管の状態をイメージしながら行われる。
このような人工心臓シミュレータを用いるドライラボは、ブタ等の動物の心臓を使って手わざを習得するウエットラボと比べて、低コストであり、どのような環境下でも手技の習得に適用できるという点で優れている。
例えば、循環器系や臓器移植等の医学研究、あるいは循環器系疾患の医薬品開発、薬効の有効性確認などにおいて、ヒトに近い動物である霊長類動物、特にブタ、イヌ、サルといった中型・大型哺乳動物を用いた、より臨床病態に近い病態モデル及びその作製方法が提案されている(例えば、特開2002―209473号公報、WO2006/030737)。
これらの血管を傷つけずに肋骨を切断除去する作業は容易ではなく、血管位置を確認しながらの肋骨の切断は時間を要するため、開胸したモデル動物の作製を困難なものとしている。
剣状突起の脇に形成した開口部を通じて、胸膜を心膜から剥離する工程;
内胸静脈及び内胸動脈の頭部側をそれぞれ結紮した後、前記内胸静脈及び内胸動脈のそれぞれの腹側を結紮して、前記内胸静脈及び内胸動脈を止血する工程;及び
第5肋骨から第2肋骨までを、各肋骨の肋間動脈及び肋間静脈を止血しつつ、切除する工程を含む。
また、第5肋骨から第2肋骨の胸肋関節を切離しながら、胸膜を剥離していくことが好ましい。
本発明のモデル動物の作製方法では、前記肋骨の切除は、肋骨体内側から行うことができる。
本発明のモデル動物は、開胸による心臓への影響がほとんどないので、従来の開胸モデル動物と比べて寿命が長い。
本発明のモデル動物の作製方法は、
剣状突起の脇に形成した開口部を通じて、胸膜を心膜から剥離する工程;
内胸静脈及び内胸動脈の頭部側をそれぞれ結紮した後、前記内胸静脈及び内胸動脈のそれぞれの腹側を結紮して、前記内胸静脈及び内胸動脈を止血する工程;及び
第5肋骨から第2肋骨までを、各肋骨の肋間動脈及び肋間静脈を止血しつつ、切除する工程を含むことを特徴とする。
図1は、胸部の主な血管を説明するための模式図であり、図2は、心臓、肋骨、内胸動脈、内胸静脈の位置関係を説明するための胸部水平方向の切断図である。
肋骨は、図1に示すように、肋軟骨と称される第1肋骨1から第7肋骨7までは、胸骨に関節している。具体的には、第1肋骨1は胸骨柄に連結し、第2肋骨2、第3肋骨3、第4肋骨4、第5肋骨5、第6肋骨6、第7肋骨7は、胸骨体に直接連結している。第8〜第10肋骨は、助軟骨に連結している。これらの肋骨は、肋間筋等の筋肉(図示せず)に覆われ、内胸動脈、内胸静脈は、これらの筋肉内に埋設されたような状態となっている。
すなわち、図1に示すように、内胸動脈は腕頭動脈(鎖骨下動脈)を介して胸部大動脈に、内胸静脈は、上大静脈に連結している。また、各肋骨には、それぞれ肋間動脈、肋間静脈が走行し、肋間動脈は、胸部大動脈及び内胸動脈とつながり、肋間静脈は、内胸静脈、上大静脈につながっている。
内胸動脈には、胸大動脈及び肋間動脈からの血液が供給され、肋間静脈は、内胸静脈に連結していて、内胸静脈の血液の一部を上大静脈に送り込んでいる。従って、内胸動脈、内胸静脈が切断された場合、大出血の原因となる。
本発明のモデル動物の作製方法が適用される動物としては、イヌ、ブタ、サルなどの中型哺乳類が挙げられ、好ましくはブタである。ブタの心臓がヒトの心臓のサイズとほぼ等しいからである。
胸膜の剥離は、心臓から遠ざかるように、すなわち胸膜を肺側に押しやるように行う。心膜と胸膜の剥離は、基端となる部分があれば、指などで剥離していくことができる。
胸腔内を観察しやすくした後、内胸動脈、内胸静脈を処理する(ステップ#3)。
胸膜が心膜から剥離され、肺側へ押しやられることに伴って、肋骨、肋間筋で見えにくくなっていた内胸動脈、内胸静脈が、胸膜に伴って肺側へ移動させられ、胸骨から引き離される。第1肋骨側より胸腔内を観察すると、肋骨から離間した内胸動脈、内胸静脈を確認することができる。この部位の内胸動脈、内胸静脈は、腕頭動脈(鎖骨下動脈)、下行大静脈(上大静脈)との連結起点近傍である。従って、ここで内胸動脈、内胸静脈を結紮切離することで、腕頭動脈(鎖骨下動脈)からの内胸動脈への血液の流入、内胸静脈からの上大静脈への血液流入を遮断できる。
胸壁除去部を決定し、腹直筋後鞘を用指的に剥離する。腹直筋は、第5〜第7肋骨あたりから恥骨までまっすぐに走行している筋肉であり、内胸動脈、内胸静脈は、腹直筋の間を走っているため、胸膜に付随して肺側へおしやられていた内胸静脈、内胸動脈が、腹直筋の引っ張り出しに伴って肋骨表面に露出するようになる。このようにして内胸動脈、内胸静脈の腹部端を確認できたら、これを結紮切離する。
尚、腹直筋の切離、腹部側の内胸動脈、内胸静脈の確認、結紮操作にあたっては、乳静脈が入り組んでいる場合があるので、これらの切断、出血に注意する。
肋骨下縁より、胸腔を観察し、横隔膜レベルを確認する。これにより、頭側で前鋸筋を含めて下部肋骨(第5、第6肋骨)の助軟骨を電気メス等で離断する。
肋骨の離断は、肋間動脈、肋間静脈を止血しながら行う。肋間動静脈の止血は、原則的には結紮により行う。
胸壁の皮膚は、トリミングし、胸腔開口部縁を可及的に覆うように縫着しておくことが好ましい。また、胸膜は、肺を覆う膜として残しておいてもよいし、切除してもよい。切除した場合、心臓とともに、肺も目視で観察することができる。
作製しようとするモデルの使用目的に応じて、胸壁切除の側(右又は左)、両側を決めればよい。
また、胸膜を心膜から剥離した後に肋骨の切除を行っているので、心膜を含む心臓に対する開胸手術の影響はほとんどなく、モデル動物を作製することができる。
したがって、作製されたモデル動物において、心臓につながっている血管(冠状動脈、肺動静脈、上行大動脈、下大静脈、上大静脈)、心臓自体は、開胸手術に伴う影響をほとんど受けずに済むので、心臓位置、心臓形状は、開胸前の本来あるべき位置、形状を保持したままで拍動することができる。
例えば、血圧上昇剤等の薬剤で抑制していたが、本発明の作製方法では、これらの薬剤使用量を不要にすることができる。
尚、以上のような開胸手術中、手術後には、体液の蒸発により血圧が下がる場合があるので、その場合には適宜補液を行う。
本発明のモデル動物は、心臓を体内に存在するときと同様の状態の心臓を、肉眼で観察するためのモデル動物である。本発明のモデル動物は、上記本発明の作製方法から好ましく作製される。
図7では、胸壁の右側が切除されていて、心臓の右側(右心房、右心室)、右肺を肉眼で観察することができる。
本発明のモデル動物は、以下のような特徴を有している。
(i) 第1から第5肋骨が胸骨から切断除去されている。すなわち胸骨に連結して残っている肋骨は、第6肋骨、第7肋骨である。尚、第8肋骨〜第10肋骨は、第6,第7肋骨に結合して残されている。
第2肋骨から第5肋骨は、胸肋関節から外されていることが好ましいが、これに限定しない。
(iii)内胸静脈及び内胸動脈が起始部、停止部近傍で結紮されている。
本発明のモデル動物では、多くの心臓インターベンションで用いられるレントゲン透視で得られる二次元の透視画像と、肉眼で観察できる実際の3次元の心臓とを同時に観察することが可能であることから、医療従事者が、二次元画像から実際の心臓の拍動状態などをイメージするトレーニング用ツールとして用いることができる。
一方、心筋梗塞や狭心症の治療のためのステント装着等のカテーテル治療は、冠状動脈、上行大動脈といった左心房、左心室側で行われることが多い。従って、心臓にステントを取り付けてバルーンで膨らませる等のトレーニングには、左側の心臓を確認できるように、左側胸壁を除去したモデル動物が好ましく用いられる。また、心臓再同期療法で用いられる左心室リードは左室表面に留置されるため、左側が開胸されたモデル動物の使用は好ましい。
2 第2肋骨
3 第3肋骨
4 第4肋骨
5 第5肋骨
6 第6肋骨
7 第7肋骨
Claims (10)
- 体内で拍動している心臓を肉眼で観察できるモデル動物の作製方法であって、
剣状突起の脇に形成した開口部を通じて、胸膜を心膜から剥離する工程;
内胸静脈及び内胸動脈の頭部側をそれぞれ結紮した後、前記内胸静脈及び内胸動脈のそれぞれの腹側を結紮して、前記内胸静脈及び内胸動脈を止血する工程;及び
第5肋骨から第2肋骨までを、各肋骨の肋間動脈及び肋間静脈を止血しつつ、切除する工程;
を含むモデル動物の作製方法。 - 前記胸膜を心膜から剥離する工程において、内胸静脈及び内胸動脈を、胸膜とともに胸骨から遠ざけることを特徴とする請求項1に記載のモデル動物の作製方法。
- 第5肋骨から第2肋骨の胸肋関節を切離しながら、胸膜を剥離していく請求項2に記載のモデル動物の作製方法。
- 内胸静脈及び内胸動脈の頭部側の結紮は、第1肋骨の胸骨近傍の軟骨切離により内胸静脈及び内胸動脈を露出させて行う請求項1〜3のいずれか1項に記載のモデル動物の作製方法。
- 内胸静脈及び内胸動脈の腹側の結紮は、腹直筋の引張り出しにより前記内胸静脈及び内胸動脈を露出させて行う請求項1〜4のいずれか1項に記載のモデル動物の作製方法。
- 前記肋骨の切除は、肋骨体内側から行う請求項1〜5のいずれか1項に記載のモデル動物の作製方法。
- 胸壁の少なくとも一部が切除されていて、体内で拍動している心臓を肉眼で観察できるモデル動物であって、
第1肋骨から第5肋骨が胸骨から切断除去されていて、
胸膜は心膜から剥離されていて
内胸静脈及び内胸動脈が結紮されているモデル動物。 - 心臓位置が、開胸前とほぼ同じである請求項7に記載のモデル動物。
- 第2肋骨から第5肋骨は、胸肋関節から切除されている請求項7又は8に記載のモデル動物。
- 前記動物は、ブタである請求項7〜9のいずれか1項に記載のモデル動物。
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