JP2017127200A - 核酸導入促進剤 - Google Patents

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JP2017127200A JP2016006937A JP2016006937A JP2017127200A JP 2017127200 A JP2017127200 A JP 2017127200A JP 2016006937 A JP2016006937 A JP 2016006937A JP 2016006937 A JP2016006937 A JP 2016006937A JP 2017127200 A JP2017127200 A JP 2017127200A
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惠 土屋
泰 平岡
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泰 平岡
英知 小川
Hidetomo Ogawa
英知 小川
徳子 原口
Noriko Haraguchi
徳子 原口
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Abstract

【課題】細胞内へ効率的に核酸を導入する手段の提供。【解決手段】p62の発現抑制剤を含む、核酸導入促進剤。【選択図】なし

Description

細胞内に効率的に核酸を導入し発現させるための技術等が開示される。
遺伝子治療薬の多くは細胞内に遺伝子を運びこむベクターとして主にウイルスベクターを使用している。ウイルスベクターは、ウイルスの感染機構を利用しているため、細胞内に遺伝子を導入し、発現させる効率が比較的高い特徴を有する。しかし、ウイルスベクターは導入効率が高い半面、染色体へのランダムな遺伝子挿入によるガン化の危険性が問題視されている。より高い特異性及び明確な作用点を持つ非ウイルスベクター又は短い核酸断片を用いた核酸医療は、その安全性、特異性の高さ、及び化学合成が容易であること等の利点を有するが、膜透過性に乏しく、臓器又は細胞の種類によって取り込み効率に差がある。その為、特に全身投与で治療に用いる場合には高価な核酸が大量に必要となる場合がある。
細胞内へ効率的に核酸を導入する手段、導入した核酸を細胞内で効率的に発現させる手段、又はこれらの手段を用いた核酸療法等を提供することを1つの課題とする。
p62タンパク質の発現を低減することにより、効率的に細胞内に核酸を導入及び発現させることが可能であることが見出された。このような知見に更なる検討を重ね、下記に代表される発明が提供される。
項1.
p62の発現抑制剤を含む、核酸導入促進剤。
項2.
p62の発現抑制剤が、p62特異的siRNA、p62特異的miRNA、及びp62特異的アンチセンス核酸から成る群より選択される少なくとも1種である、項1に記載の核酸導入促進剤。
項3.
核酸を導入する前に、細胞又は生体に投与される、項1又は2に記載の核酸導入促進剤。
項4.
p62の発現抑制剤及び核酸を含む、核酸導入剤。
項5.
p62の発現抑制剤が、p62特異的siRNA、p62特異的miRNA、及びp62特異的アンチセンス核酸から成る群より選択される少なくとも1種である、項4に記載の核酸導入剤。
項6.
核酸が、ベクターに組み込まれている、項4又は5に記載の核酸導入剤。
項7.
更に、核酸導入試薬を含む、項4〜6のいずれかに記載の核酸導入剤。
項8.
核酸医薬である、項4〜7のいずれかに記載の核酸導入剤。
項9.
p62の発現抑制剤及び核酸を含む、細胞又は生体への核酸導入キット。
項10.
p62の発現抑制剤がp62特異的siRNA、p62特異的miRNA、及びp62特異的アンチセンス核酸から成る群より選択される少なくとも1種である、項9に記載の核酸導入キット。
項11.
p62の発現抑制剤と核酸が別個の容器に収容されている、項9又は10に記載の核酸導入キット。
項12.
p62の発現量を低減させることを含む、核酸導入方法。
項13.
p62の発現量を低減させることが、核酸の導入前に行われる、項12に記載の核酸導入方法。
項14.
p62の発現量を低減させることが、p62特異的siRNA、p62特異的miRNA、及びp62特異的アンチセンス核酸から成る群より選択される少なくとも1種を投与することにより行われる、項12又は13に記載の核酸導入方法。
項15.
p62の発現量を低減させることが、核酸医薬を必要とする被検体に対して行われる、項12〜14のいずれかに記載の方法。
項16.
核酸の投与を必要とする患者に項1〜3のいずれかの核酸導入促進剤を用いて核酸を投与することを含む、核酸療法。
次の効果の1つ以上が発揮される:細胞内への効率的な核酸の導入、細胞内での効率的な核酸の発現、細胞内での核酸の安定的な発現、安全性に優れた細胞内への核酸導入、効率的な核酸療法、安全性に優れた核酸療法。
p62遺伝子欠損マウス繊維芽細胞及び野生型マウス繊維芽細胞にGFPをコードするDNAを導入した結果を示す。上段は発現したGFP量を示し、下段は視野内の細胞数を示す。 p62遺伝子欠損マウス繊維芽細胞及び野生型マウス繊維芽細胞にGFPをコードするDNAを導入した結果をウエスタンブロットで調べた結果を示す。p62遺伝子欠損マウス繊維芽細胞においてGFPの発現量が有意に高く、p62の発現が抑えられていることが示されている。GAPDHはコントロールである。 p62遺伝子欠損マウス繊維芽細胞でp62タンパク質を発現させることによる、核酸導入効率への影響を調べた結果が示される。上段は発現したGFP量を示し、下段は視野内の細胞数を示す。 p62遺伝子欠損マウス繊維芽細胞でp62タンパク質を発現させることによる、核酸導入効率への影響をウエスタンブロットで調べた結果を示す。p62遺伝子欠損マウス繊維芽細胞でp62タンパク質を強制発現させることにより、GFPをコードするDNAの発現レベルが低下したことが示されている。 p62遺伝子欠損マウス繊維芽細胞及び野生型マウス繊維芽細胞にβガラクトシダーゼをコードするDNAを導入した結果をβガラクトシダーゼ活性で測定した結果を示す。縦軸はβガラクトシダーゼ活性を示し、横軸は導入した核酸プラスミド量を示す。 p62特異的siRNAを用いて野生型細胞におけるp62タンパク質の発現を抑制し、それによる核酸導入効率への影響を調べた結果を示す。p62特異的siRNAによって細胞内のp62タンパク質の発現が抑制され、それによりGFPをコードする核酸の導入/発現レベルが上昇することが示される。 核酸導入試薬として、Lipofectamine 2000、Lipofectamine 3000、RNAiMAX、及びScreenFect Aを用いてp62特異的siRNAを野生型細胞に導入し、p62タンパク質の発現が抑制されることを調べた結果を示す。 マウス由来ES細胞(mESC)、ヒト由来HEK293細胞、及びU2OS細胞を用いてp62特異的siRNAによるp62タンパク質の発現抑制効果を確認した結果を示す。 ウイルス感染による核酸導入の場合も、p62タンパク質の発現を抑制することにより、その導入効率が向上することを確認した結果を示す。 ウイルス感染による核酸導入の場合も、p62タンパク質の発現を抑制することにより、その導入効率が向上することをウエスタンブロットで確認した結果を示す。
1.p62の発現抑制剤を含む、核酸導入促進剤
核酸導入促進剤は、p62の発現抑制剤を含むことが望ましい。p62とは、SQSTM1とも呼ばれる、ユビキチン結合領域とLC3結合領域を有するタンパク質であり、ユビキチン化されたタンパク質をオートファゴソームへと運ぶ役割を果たす。p62の発現抑制剤は、p62の発現を抑制できる物質であれば任意であり特に制限されない。例えば、p62の発現抑制剤は、p62の発現を抑制する可能な低分子化合物であってもよい。
一実施形態において、p62の発現抑制剤は、p62特異的siRNA、p62特異的miRNA、及びp62特異的アンチセンス核酸から成る群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。p62特異的siRNAは、p62をコードする遺伝子の発現を特異的に抑制する二本鎖RNA分子である限り特に制限されない。一実施形態において、siRNAは、例えば、18塩基以上、19塩基以上、20塩基以上、又は21塩基以上の長さであることが好ましい。siRNAは、例えば、25塩基以下、24塩基以下、23塩基以下、又は22塩基以下の長さであることが好ましい。ここに記載するsiRNAの長さの上限値及び下限値は任意に組み合わせることが想定される。例えば、下限が18塩基であり、上限が25塩基、24塩基、23塩基、又は22塩基である長さ、下限が19塩基であり、上限が25塩基、24塩基、23塩基、又は22塩基である長さ、下限が20塩基であり、上限が25塩基、24塩基、23塩基、又は22塩基である長さ、下限が21塩基であり、上限が25塩基、24塩基、23塩基、又は22塩基である長さが想定される。
siRNAは、shRNA(small hairpin RNA)であっても良い。shRNAは、その一部がステムループ構造を形成するように設計することができる。例えば、shRNAは、ある領域の配列を配列aとし、配列aに対する相補鎖を配列bとすると、配列a、スペーサー、配列bの順になるようにこれらの配列が一本のRNA鎖に存在するようにし、全体で45〜60塩基の長さとなるように設計することができる。配列aは、標的となるp62をコードする塩基配列の一部の領域の配列であり、標的領域は特に限定されず、任意の領域を候補にすることが可能である。そして配列aの長さは19〜25塩基、好ましくは19〜21塩基である。
一実施形態において、p62特異的siRNA(特異的shRNAを含む)は、下記のいずれかの塩基配列を有することが好ましい。
CUUGUAGUUGCAUCACGUATT(配列番号1)
GCAUUGAGGUUGACAUUGATT(配列番号2)
GUGAUGAGGAGCUGACAAUTT(配列番号3)
CAUCUUCCGCAUCUACAUUTT(配列番号4)
CCAAUGUCAAUUUCCUGAATT(配列番号5)
一実施形態において、p62特異的siRNAは、配列番号1〜5のいずれか、配列番号1〜4のいずれか、配列番号1〜3のいずれか、配列番号1又は2、或いは配列番号1の塩基配列を有することが好ましい。
p62特異的siRNAは、5’又は3’末端に、付加的な塩基を有していてもよい。該付加的塩基の長さは、通常2〜4塩基程度である。該付加的塩基は、DNAでもRNAでもよいが、DNAを用いると核酸の安定性を向上させることができる場合がある。このような付加的塩基の配列としては、例えばug-3’、uu-3’、tg-3’、tt-3’、ggg-3’、guuu-3’、gttt-3’、ttttt-3’、uuuuu-3’などの配列が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
siRNAは、3'末端に突出部配列(オーバーハング)を有していてもよく、具体的には、dTdT(dTはデオキシリボ核酸を表わす)を付加したものが挙げられる。また、末端付加がない平滑末端(ブラントエンド)であってもよい。siRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖が異なる塩基数であってもよく、例えば、アンチセンス鎖が3'末端及び5'末端に突出部配列(オーバーハング)を有している「aiRNA」を挙げることができる。典型的なaiRNAは、アンチセンス鎖が21塩基からなり、センス鎖が15塩基からなり、アンチセンス鎖の両端で各々3塩基のオーバーハング構造をとる。
p62特異的siRNAの標的配列の位置は特に制限されるわけではないが、一実施形態において、5’-UTR及び開始コドンから約50塩基まで、並びに3’-UTR以外の領域から標的配列を選択することが望ましい。選択された標的配列の候補群について、標的以外のmRNAにおいて16-17塩基の連続した配列に相同性がないかどうかを、BLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)等のホモロジー検索ソフトを用いて調べ、選択した標的配列の特異性を確認することが好ましい。特異性が確認された標的配列について、AA(もしくはNA)以降の19-21塩基にTTもしくはUUの3’末端オーバーハングを有するセンス鎖と、該19−21塩基に相補的な配列及びTTもしくはUUの3’末端オーバーハングを有するアンチセンス鎖とからなる2本鎖RNAをsiRNAとして設計してもよい。また、siRNAの前駆体であるショートヘアピンRNA(shRNA)は、ループ構造を形成しうる任意のリンカー配列(例えば、5-25塩基程度)を適宜選択し、上記センス鎖とアンチセンス鎖とを該リンカー配列を介して連結することにより設計することができる。
siRNA及び/又はshRNAの配列は、種々のwebサイト上に無料で提供される検索ソフトを用いて検索が可能である。このようなサイトとしては、例えば、以下を挙げることができる。
Ambionが提供するsiRNA Target Finder
(http://www.ambion.com/jp/techlib/misc/siRNA_finder.html)
pSilencer(登録商標)Expression Vector用インサートデザインツール
(http://www.ambion.com/jp/techlib/misc/psilencer_converter.html)
RNAi Codexが提供するGeneSeer
(http://codex.cshl.edu/scripts/newsearchhairpin.cgi)。
siRNAを構成するリボヌクレオチド分子は、安定性、及び比活性などを向上させるために、修飾を受けていてもよい。具体的には、siRNAを構成するヌクレオチド分子の一部を、天然型のDNAや、安定性(化学的および/または対酵素)や比活性(RNAとの親和性)を向上させるために、種々の化学修飾を施したRNAに置換することができる。例えば、ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、siRNAを構成する各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各ヌクレオチドの糖(リボース)の2’位の水酸基を、-OR(R=CH3(2’-O-Me)、CH2CH2OCH3(2’-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CN等)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。
siRNAは、mRNA上の標的配列のセンス鎖及びアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中、約90〜約95℃で約1分程度変性させた後、約30〜約70℃で約1〜約8時間アニーリングさせることにより調製することができる。また、siRNAの前駆体となるショートヘアピンRNA(shRNA)を合成し、これを、ダイサー(dicer)を用いて切断することにより調製することもできる。
生体内でp62遺伝子のmRNAに対するsiRNAを生成し得るようにデザインされた核酸を核酸導入促進剤として利用することもできる。そのような核酸としては、上記したshRNAやsiRNAを発現するように構築された発現ベクターなどが挙げられる。shRNAは、mRNA上の標的配列のセンス鎖およびアンチセンス鎖を適当なループ構造を形成しうる長さ(例えば5〜25塩基程度)のスペーサー配列を間に挿入して連結した塩基配列を含むオリゴRNAをデザインし、これをDNA/RNA自動合成機で合成することにより調製することができる。shRNAを発現するベクターには、タンデムタイプとステムループ(ヘアピン)タイプとがある。前者はsiRNAのセンス鎖の発現カセットとアンチセンス鎖の発現カセットをタンデムに連結したもので、細胞内で各鎖が発現してアニーリングすることにより2本鎖のsiRNA(dsRNA)を形成する。一方、後者はshRNAの発現カセットをベクターに挿入したもので、細胞内でshRNAが発現しdicerによるプロセシングを受けてdsRNAを形成する。プロモーターとしては、polII系プロモーター(例えば、CMV前初期プロモーター)を使用することもできるが、短いRNAの転写を正確に行わせるために、polIII系プロモーターを使用するのが一般的である。polIII系プロモーターとしては、マウスおよびヒトのU6-snRNAプロモーター、ヒトH1-RNase P RNAプロモーター、ヒトバリン-tRNAプロモーターなどが挙げられる。また、転写終結シグナルとして4個以上Tが連続した配列を用いることができる。
このようにして構築したsiRNA又はshRNA発現カセットを、プラスミドベクター又はウイルスベクターに挿入することができる。このようなベクターとしては、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、センダイウイルスなどのウイルスベクターや、動物細胞発現プラスミドなどを挙げることができる。
p62特異的miRNAは、p62をコードする遺伝子の翻訳を阻害する限り任意である。例えば、miRNA(マイクロRNA)は、siRNAのように標的mRNAを切断するのではなく、標的の3’非翻訳領域(UTR)に対合してその翻訳を阻害してもよい。miRNAは、pri-miRNA(primary miRNA)、pre-miRNA、及び成熟miRNAのいずれでもよい。miRNAの長さは特に制限されず、pri-miRNAの長さは通常数百〜数千塩基であり、pre-miRNAの長さは通常50〜80塩基であり、成熟miRNAの長さは通常18〜30塩基である。一実施形態において、p62特異的miRNAは、好ましくはpre-miRNA又は成熟miRNAであり、より好ましくは成熟miRNAである。このようなp62特異的miRNAは、公知の手法で合成してもよく、合成RNAを提供する会社から購入してもよい。
p62特異的アンチセンス核酸とは、p62をコードする遺伝子のmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸であって、該mRNAと特異的かつ安定した二重鎖を形成して結合することにより、p62タンパク質合成を抑制する機能を有する核酸である。アンチセンス核酸はDNA、RNA、DNA/RNAキメラのいずれでもよい。アンチセンス核酸がDNAの場合、標的RNAとアンチセンスDNAとによって形成されるRNA:DNAハイブリッドは、内在性RNase Hに認識されて標的RNAの選択的な分解を引き起こす。したがって、RNase Hによる分解を指向するアンチセンスDNAの場合、標的配列は、mRNA中の配列だけでなく、p62遺伝子の初期翻訳産物におけるイントロン領域の配列であってもよい。イントロン配列は、ゲノム配列と、p62遺伝子のcDNA塩基配列とをBLAST、FASTA等のホモロジー検索プログラムを用いて比較することにより、決定することができる。
p62特異的アンチセンス核酸の標的領域は、該アンチセンス核酸がハイブリダイズすることにより、結果としてp62タンパク質への翻訳が阻害されるものであればその長さは制限されない。p62特異的アンチセンス核酸は、p62をコードするmRNAの全配列であっても部分配列であってもよい。合成の容易さや抗原性、細胞内移行性の問題等を考慮すれば、約10〜約40塩基、特に約15〜約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましいが、これらに限定されない。具体的には、p62遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端非翻訳領域、翻訳開始コドン、タンパク質コード領域、ORF翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域または3’端ヘアピンループなどをアンチセンス核酸の好ましい標的領域として選択しうるが、それらに限定されない。
p62特異的アンチセンス核酸は、p62遺伝子のmRNAや初期転写産物とハイブリダイズしてタンパク質への翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAであるこれらの遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、RNAへの転写を阻害し得るもの(アンチジーン)であってもよい。
p62特異的アンチセンス核酸を構成するヌクレオチド分子は、天然型のDNAもしくはRNAでもよいが、安定性(化学的および/または対酵素)や比活性(RNAとの親和性)を向上させるために、種々の化学修飾を含んでもよい。例えば、ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、アンチセンス核酸を構成する各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各ヌクレオチドの糖(リボース)の2’位の水酸基を、-OR(R=CH3(2’-O-Me)、CH2CH2OCH3(2’-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、又はCH2CH2CN等)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換等を施してもよい。
一実施形態において、p62の発現抑制剤は、p62特異的リボザイムであってもよい。「リボザイム」とは、狭義には、核酸を切断する酵素活性を有するRNAを意味するが、本書では配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する。リボザイム核酸として最も汎用性の高いものは、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。このタイプのリボザイム核酸は、RNAのみを基質とするので、ゲノムDNAを攻撃することがないという利点を有する。p62遺伝子のmRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、RNAヘリカーゼと特異的に結合し得るウイルス核酸由来のRNAモチーフを連結したハイブリッドリボザイムを用いることにより、標的配列を一本鎖にすることができる[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98(10): 5572-5577 (2001)]。さらに、リボザイムを、それをコードするDNAを含む発現ベクターの形態で使用する場合には、転写産物の細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる[Nucleic Acids Res., 29(13): 2780-2788 (2001)]。
p62特異的siRNA、p62特異的miRNA、及びp62特異的アンチセンス核酸等は、p62遺伝子のcDNA配列もしくはゲノミックDNA配列に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的配列を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。また、上記した各種修飾を含むアンチセンス核酸も、いずれも自体公知の手法により、化学的に合成することができる。
細胞内のp62タンパク質の発現を低減/抑制することにより、該細胞(ドナー細胞)に効率的に核酸を導入することができる。導入される核酸の種類は任意であり、目的に応じて適宜選択することができる。導入される核酸と外来性の核酸である。ここで「外来性の核酸」とは、ドナー細胞に外部から導入された核酸を意味する。従って、ドナー細胞に内在する核酸と同一の核酸であっても、外部から新たに導入されたものである限り、「外来性の核酸」に含まれる。また、外部から導入された核酸が細胞内でプロセシングを受けて生成した核酸や、外部から発現ベクターの形態で導入された核酸の転写産物も、「外来性の核酸」に含まれる。
p62の発現抑制剤は、核酸導入試薬を用いて細胞に導入されることが好ましい。核酸導入試薬とは、一般にトランスフェクション試薬、又は核酸導入試薬として知られる試薬である。具体的な核酸導入試薬としては、例えば次のものを挙げることができるがこれらに制限されない。ポリマー系核酸導入試薬;jetPRIME(PPU社)、jetPEI(PPU 社)、jetPEI-HUVEC(PPU 社):脂質系核酸導入試薬;Lipofectamine 3000(Invitrogen社)、Lipofectamine 2000(Invitrogen社)、Lipofectamine LTX(Invitrogen社)、Invivofectamine 2.0(Invitrogen社)、Lipofectamine RNAiMAX(Invitrogen社)、ScreenFect (和光純薬社)、 INTERFERin(PPU 社)、INTERFERin HTS(PPU 社)、Lullaby(OZB 社)、GeneSilencer Reagent(GTS 社)、LipoMag Kit(OZB 社)、GenePORTER Gold Transfection Reagent(GTS 社);DreamFect Gold(OZB 社)、DreamFect(OZB 社)、EcoTransfect(OZB 社)、GenePORTER 3000(GTS 社)、GenePORTER 1/2(GTS 社)、GenePORTER H(GTS 社)、RmesFect(OZB 社):磁気粒子系核酸導入試薬;SilenceMag(OZB 社)、FluoMag-S(OZB 社)、PolyMag Neo(OZB 社)、PolyMag(OZB 社)、CombiMag(OZB 社)、FluoMag-P/FuloMag-C(OZB 社)、Magnetofectamine Kit(OZB 社)。
p62の発現抑制剤は、その種類に応じて任意の手法で細胞に導入することができる。p62の発現抑制剤を細胞内に導入する手法としては、例えば、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、マイクロインジェクション法、及びウイルスベクター法等を挙げることができる。
核酸は外来性である限り特に制限はない。一実施形態において、核酸は、タンパク質をコードする核酸であり、他の実施形態において核酸は非コード核酸である。ここで非コード核酸とは、タンパク質をコードしない核酸を意味し、天然の核酸であるか、人為的に製造されたものであるかを問わない。非コード核酸は、機能を有するものであることが好ましく、該核酸が導入される標的細胞内で、特定の遺伝子(標的遺伝子)の発現を阻害する機能を有することが好ましい。例えば、核酸は、siRNA、miRNA、アンチセンス核酸、又はリボザイムであり得る。上述のp62特異的siRNA、p62特異的miRNA、p62特異的アンチセンス核酸、及びp62特異的リボザイムに関する説明は、導入する核酸としてのsiRNA、miRNA、アンチセンス核酸、及びリボザイムにも該当する。一実施形態において、核酸は4〜10kbp程度のプラスミドDNAであることが好ましい。
核酸導入促進剤の使用形態は特に制限されず任意である。通常、核酸導入促進剤は、それを細胞に投与して使用される。核酸導入促進剤を細胞に投与するタイミングは特に制限されず、例えば、導入する核酸と同時又は導入する核酸を投与するよりも前に細胞に投与される。予めp62の発現が抑制された状態を作成しておくという観点から、核酸を投与する前に核酸導入促進剤を細胞に投与することが好ましい。核酸導入促進剤の細胞への投与は、インビボでもインビトロでもよい。導入される核酸は、その種類に応じて任意のベクターに組み込まれていてもよい。
一実施形態において、核酸導入促進剤によってその導入が促進される核酸は、核酸導入試薬を用いて細胞に導入されることが好ましい。核酸の導入に用いられる核酸導入試薬は任意であり核酸の種類及びサイズ等に応じて適宜選択することができる。具体的な核酸導入試薬としては、例えば、p62の発現抑制剤を細胞内に導入するための核酸導入試薬として記載したもの等を挙げることができる。
核酸導入促進剤によって核酸が導入される細胞の種類は、任意であり特に制限されない。目的に応じて種々の細胞から任意に選択することができる。例えば、細胞は動物、又は植物に由来し得る。細胞は、成熟細胞又は幹細胞であり得る。幹細胞は、胚性幹細胞、体性幹細胞(例えば、造血幹細胞、間葉系幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、及び皮膚幹細胞等)、又は人工幹細胞(例えば、iPS細胞)であり得る。細胞は、正常細胞又は癌細胞に由来し得る。一実施形態において好ましい細胞はiPS細胞又はES細胞である。
2.核酸導入剤
核酸導入剤は、p62の発現抑制剤及び核酸を含むことが好ましい。ここで、「p62の発現抑制剤」及び「核酸」は、上記1.で説明したものが使用できる。一実施形態において、核酸導入剤は、上述のp62の発現抑制剤を細胞内に導入するための核酸導入試薬及び/又は核酸を細胞内に導入するための核酸導入試薬を更に含むことが好ましい。一実施形態において、核酸導入試薬は核酸医薬として使用することができる。核酸医薬として使用する場合の核酸導入試薬(即ち、p62の発現抑制剤及び核酸)の投与量は、治療する疾患の種類、疾患の重篤度、患者の状態、体重、及び患者の年齢等に応じて設定することができる。
3.核酸導入剤キット
細胞又は生体への核酸導入キットは、p62の発現抑制剤及び核酸を含むことが好ましい。ここで、「p62の発現抑制剤」及び「核酸」は、上記1.で説明したものが使用できる。一実施形態において、核酸導入キットは、上述のp62の発現抑制剤を細胞内に導入するための核酸導入試薬及び/又は核酸を細胞内に導入するための核酸導入試薬を更に含むことが好ましい。一実施形態において、核酸導入キットは、p62の発現抑制剤及び核酸を別個の容器に収容した状態で含むことが好ましい。核酸導入キットが核酸導入試薬を含む場合は、核酸導入試薬もp62の発現抑制剤及び核酸とは別個の容器に収容されていることが好ましい。核酸導入キットは更に他の任意の試薬及び/又は説明書等を含むことができる。
5.核酸導入方法
核酸導入方法は、p62の発現を低減されることを含むことが好ましい。p62の発現を低減されることは、上述のp62の発現抑制剤を用いて行うことができる。p62の発現抑制剤及び導入する核酸は、上記1.で説明したものが使用できる。
以下、実施例により本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
下記の試験では、以下の実験手段/方法を用いた。
細胞培養
全ての実験には石井哲郎氏(筑波大学)より提供された、野生型MEF細胞(mouse embryonic fibroblast:MEF細胞)およびp62遺伝子欠損MEF細胞(p62KOMEF細胞:Komatsu, M. et al. Homeostatic levels of p62 control cytoplasmic inclusion body formation in autophagy-deficient mice., Cell, 131, 1149-1163 (2007))を使用した。細胞には10% 牛胎児血清および1×ペニシリン・ストレプトマイシン・グルタミン(Wako)を加えたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM, Sigma-Aldrich)を用い、5%CO2、37℃の恒温器で培養を行った。栄養飢餓環境は、細胞を血清を除いたDMEMで一度洗い、さらに血清を除いたDMEMで4時間培養して創出した。
DNA遺伝子導入
細胞を35mmまたは100mm 細胞培養用dishに撒き、12時間後に抗生物質を除いた血清入りDMEMに置き換え遺伝子導入を行った。遺伝子導入試薬としてLipofectamine 2000 (Thermo Fisher Scientific Inc.)を使用した。DNA(プラスミド)およびLipofectamine 2000をそれぞれ250μl Opti-MEM I Reduced Serum Medium (Thermo Fisher Scientific Inc.) にて希釈し、これらを合わせて室温で20分間インキュベートさせたのち全量を細胞に添加した。35mm dishを用いた試験では2μgのDNAを用い、100mm dishを用いた試験では10μgのDNAを用いた。37℃、5%CO2で 6時間培養ののち、抗生物質・血清入り培地に交換し、更に30時間培養を行った。GFP蛍光シグナルを蛍光倒立顕微鏡(Leica DM IL LED)にて観察したのち、細胞をLDS sample buffer (Thermo Fisher Scientific Inc.) 200μlで回収しウエスタンブロット解析を行った。
β-ガラクトシダーゼ アッセイ
遺伝子導入した細胞を48時間培養ののち、タンパク抽出液(200mM KCl, 1mM EDTA, 1% TritonX100, proteinase inhibitor)200μLを加え、室温で10分間震盪後回収し、細胞抽出液を作製した。10μl を96-well plate へ移し、SensoLyte ONPG β-Galactosidase assay kit (AnaSpec, Inc.)にてβ-ガラクトシダーゼ活性を測定した。測定には各ウェルあたり90μl のsubstrate solutionを加え混和したのち、37℃の恒温器に30分間静置した。stop solution.50μlにて反応を停止させ吸光度波長420nmで測定を行った。
siRNA遺伝子導入
細胞は35mm細胞培養用dishに撒き、12時間後に抗生物質を除いた血清入りDMEMに置き換え遺伝子導入を行った。遺伝子導入試薬としてLipofectamine 3000 (Thermo Fisher Scientific Inc.)を使用した。RNA100pmolおよびLipofectamine 3000 5μlをそれぞれ125μl Opti-MEM I Reduced Serum Mediumにて希釈し、これらを合わせて室温で5分間インキュベートさせたのち全量を細胞に添加し37℃、5%CO2 で培養を行った。
試験例1:p62タンパク発現による核酸導入効率への影響
p62は選択的オートファジーレセプターとして働くタンパク質で、ウイルスの感染に関与することが知られている。そこで、外来核酸に対する細胞応答の観点から、リポフェクション法で導入したプラスミド DNAに対してp62が細胞内で影響を与えるかを検討した。はじめにp62遺伝子欠損マウス繊維芽細胞(p62KOMEF細胞)を用いて野生型マウス繊維芽細胞(MEF細胞)との遺伝子導入効率の差を検討した。MEF細胞およびp62KOMEF細胞を1×105個/35mm dishに撒いた。12時間後に60%の細胞密度の状態で、抗生物質を除いた血清入りDMEMに変え、GFP発現ベクター(pCMX-AFAP)2μgをLipofectamine 2000 4μlにて遺伝子導入を行った。6時間後に培養液を抗生物質及び血清入りのDMEMにかえ、さらに30時間後にGFPの発現を蛍光顕微鏡にて観察した。その結果、図1に示す通り、p62KOMEF細胞及び野生型MEF細胞の数に有意な違いはないにもかかわらず(下段)、p62KOMEF細胞では、MEF細胞(野生型)に比べ有意に高いGFP発現が認められた(上段)。
試験例2:p62タンパク発現による核酸導入効率への影響の確認1
試験例1で得られた結果が観察した視野に依存しないことを証明するために、観察した細胞を回収しタンパク量の比較を行った。図1に示される細胞を顕微鏡観察後、LDS sample buffer 200μlで回収し、p62およびGFPのタンパク量をウエスタンブロットにて比較した。各レーンに泳動した総タンパク量の指標としてハウスキーピング遺伝子GAPDHのタンパク量を示した。その結果、図2に示す通り、MEF細胞に比べ、p62KOMEF細胞でより多くのGFPタンパク質の発現が認められた。これらの結果から、p62KOMEF細胞では著しく遺伝子導入効率が上昇していることが判明した。
試験例3:p62タンパク発現による核酸導入効率への影響の確認2
試験例1及び2で確認した遺伝子導入効率の上昇がp62タンパク質に依存するかを調べるために、p62タンパク質をp62KOMEF細胞に強制発現させ、その遺伝子導入効率への影響を調べた。p62KOMEF細胞を0.6×10個/100mm dishに撒いた。12時間後に60%の細胞密度の状態で抗生物質を除いた血清入りDMEMに変え、ヒト野生型p62発現ベクター (pcDNA3-p62 WT) 10μgおよびpuromycin耐性遺伝子発現ベクター(pBabe-puro) 2μgをLipofectamine 2000 20μlにて遺伝子導入を行った。6時間後に培養液を抗生物質・血清・puromycin (最終濃度 3μg/ml)入りのDMEMに替え、5日間puromycinによる薬剤選択を行った。選択された細胞およびp62KOMEF細胞を1×105個/35mm dish で撒き、60%の細胞密度の状態で抗生剤を除いた血清入りDMEMに変え、 pCMX-AFAP 0.5μgをLipofectamine 2000 4μlにて遺伝子導入を行った。6時間後に培養液を抗生剤・血清入りのDMEMにかえ、30時間後にGFPの発現を蛍光顕微鏡にて観察した。その結果、図3に示す通り、細胞にp62タンパク質を発現させると、細胞の遺伝子導入効率が低下することが確認された。
試験例4:タンパク量で観察したp62タンパク発現による核酸導入効率への影響
試験例3で確認した結果が観察した視野に依存しないことを調べるために、観察した細胞を回収しタンパク量の比較を行った。図3に示される細胞を顕微鏡観察後、LDS sample buffer 200μlで回収し、p62およびGFPのタンパク量をウエスタンブロットにて比較した。各レーンに泳動した総タンパク量の指標としてハウスキーピング遺伝子GAPDHのタンパク量を示した。その結果、図4の通り、p62kOMEF細胞にp62タンパク質を発現させると、タンパク質量でみても遺伝子導入効率が低下することが確認された。以上の結果から、MEF細胞の遺伝子導入効率がp62KOMEF細胞と比較して低いのはp62タンパク質の存在が原因であることが確認された。
試験例5:β-ガラクトシダーゼ活性を用いた定量的遺伝子導入効率の検討
試験例1〜4では、GFPの蛍光及びタンパク発現量で遺伝子導入効率の比較を行ってきたが、その差を定量的に比較するためにβガラクトシダーゼ遺伝子を導入し、βガラクトシダーゼ活性を測定した。MEF細胞およびp62KOMEF細胞を1×105個/35mm dish で撒いた。12時間後に60%の細胞密度の状態で抗生物質を除いた血清入りDMEMにかえ、βガラクトシダーゼ発現ベクター(pCMX-β-gal)0 / 0.5 / 2μgを Lipofectamine 2000 4μlにて遺伝子導入を行った。6時間培養したのち抗生物質及び血清入りのDMEMに交換し、42時間後にタンパク抽出液200μLを加え、室温で10分間震盪後回収し、細胞抽出液を作製した。細胞抽出液10μl を96-well plate へ移し、SensoLyte ONPG β-Galactosidase assay kit (AnaSpec, Inc.)にてβ-ガラクトシダーゼ活性を測定した。
その結果、図5に示す通り、MEF細胞に対してプラスミド濃度依存的なβガラクトシダーゼ活性の上昇が見られた。一方、p62KOMEF細胞においては少ないプラスミド濃度においても著しいβガラクトシダーゼ活性の上昇が見られ、GFPの発現のみならずβガラクトシダーゼ活性評価においてもp62KOMEF細胞では遺伝子導入効率が顕著に高いことが明らかとなり、βガラクトシダーゼ活性として10倍以上の差があることを定量的に確認した。また、低濃度のプラスミド量によっても、p62KOMEF細胞ではMEF細胞に比べて強いタンパク量の発現を可能にすることが判明した。
試験例6:siRNAを用いたp62タンパク質発現の低減及び核酸導入
p62が発現している細胞においてp62タンパク質の量を減弱させることで核酸導入効率が上昇するかを検討した。p62タンパク質の量の減弱は、栄養飢餓環境に細胞を置くこと、及びp62特異的siRNAを用いて行った。尚、これまでにp62タンパク質の発現は細胞を飢餓状態にすることで減少することが報告されている(Sahani, M. et al., Expression of the autophagy substrate SQSTM1/p62 is restored during prolonged starvation depending on transcriptional upregulation and autophagy-derived amino acids, Autophagy, 10, 431-441 (2014))。p62特異的siRNAとしては、次の塩基配列を有するものを使用した:CUUGUAGUUGCAUCACGUATT(配列番号1)。
MEF細胞を1×105個/35mm dishに撒いた。12時間後に60%の細胞密度の状態で、抗生物質を除いた血清入りDMEMに変え、p62特異的siRNAおよびコントロールsiRNA (Sigma-Aldrich) 100pmolをLipofectamine 3000 5μlにて遺伝子導入を行った。12時間後に培養液を血清入りまたは血清を除いたDMEMにかえて4時間培養したのち、GFP発現ベクター(pCMX-AFAP)2μgをLipofectamine 2000 4μlにて遺伝子導入を行った。6時間後に培養液を抗生物質及び血清入りのDMEMに替え、30時間後にLDS sample buffer 200μlで回収し、p62およびGFPのタンパク量をウエスタンブロットにて比較した。各レーンに泳動した総タンパク量の指標としてハウスキーピング遺伝子GAPDHのタンパク量を示した。その結果、図6に示す通り、siRNA及び/又は飢餓状態によりp62のタンパク質量を減少させることが可能であり、いずれの手段を用いた場合でもp62が発現しているMEF細胞においても遺伝子導入効率が上昇することが判明した。
試験例7:種々の核酸導入試薬を用いたsiRNAの導入
野生型MEF細胞を1×105個/35mm dishに撒き、12時間後に抗生物質を除いた血清入りDMEMに置き換えた。mouse p62特異的siRNA 100pmolを5種類の核酸導入試薬を用いて核酸を導入した。使用した核酸導入試薬は;Lipofectamine 2000 (L2000: Thermo Fisher Scientific Inc.) 4μl、Lipofectamine 3000 (L3000: Thermo Fisher Scientific Inc.) 5μl、RNAiMAX (Thermo Fisher Scientific Inc.) 5μl、又はScreenFect A (和光純薬株式会社) 5μlである。各核酸導入試薬はそれぞれ推奨されるプロトコールに従って使用した。48時間培養後、細胞をLDS sample buffer 200μlで溶解し回収し、その一部を用いウエスタンブロットにてp62のタンパク量を比較した。各レーンに泳動した総タンパク量の比較としてハウスキーピング遺伝子GAPDHのタンパク量を示した。コントロールとしてcontrol siRNA 100 pmolをL3000 5ul にて遺伝子導入した野生型MEF細胞についても同時に泳動した。
その結果、図7に示す通り、核酸導入試薬としてLipofectamine 2000、Lipofectamine 3000、RNAiMAX、及びScreenFect Aを用いることにより、効率的にp62特異的siRNAを導入し、細胞内で機能させることができることが確認された。
試験例8:種々の細胞におけるp62タンパク質発現の低減
マウス由来MEF細胞に対し、mouse p62特異的siRNA 100pmolおよびそのコントロールsiRNA 100pmolをL3000 5μlにて遺伝子導入を行った。同様にマウス由来ES細胞(mESC)に対し、mouse p62特異的siRNA 100pmolおよびそのコントロールsiRNA 100pmolをRNAiMAX 5μl を用いての遺伝子導入を行った。48時間後にLDS sample buffer 200μlで回収し、その一部を用いウエスタンブロットにてp62のタンパク量を比較した。各レーンに泳動した総タンパク量の比較としてハウスキーピング遺伝子GAPDHのタンパク量を示した。またヒト由来HEK293細胞およびU2OSに対し、human p62特異的siRNA 100pmolおよびそのコントロールsiRNA 100pmolをL3000 5μlにて遺伝子導入を行った。48時間後にLDS sample buffer 200μlで回収し、その一部を用いウエスタンブロットにてp62のタンパク量を比較した。各レーンに泳動した総タンパク量の比較としてハウスキーピング遺伝子GAPDHのタンパク量を示した。その結果、図8に示す通り、細胞の種類に関係なく、p62特異的siRNAによってp62タンパク質の発現が抑制されることが確認された。
試験例9:ウイルス感染による遺伝子導入に対するp62タンパク質の影響
BOSC23細胞(ATCC number: CRL-11270)を100mm細胞培養用dishに撒き、24時間後に抗生物質を除いた血清入りDMEMに置き換え、GFP遺伝子を組み込んだ組換えレトロウイルスベクタープラスミド(pOZ-N)10μgおよび2種類のウイルスパッケージングベクタープラスミド(gag-pol発現ベクタープラスミド2μgおよびenv発現ベクタープラスミド2μg)の遺伝子導入を行った。遺伝子導入試薬としてL2000を使用した。全てのプラスミドを合わせたもの、およびL2000をそれぞれ250μl Opti-MEM I Reduced Serum Medium (Thermo Fisher Scientific Inc.)にて希釈し、これらを合わせて室温で20分間インキュベートさせたのち全量を細胞に添加し37℃、5%CO2 で培養を行った。40時間後に細胞培養液(ウイルス液)を一部とりわけ4℃に保存した。野生型MEF細胞およびp62欠損MEF細胞は35mm細胞培養用dish3枚ずつに撒き、12時間後に最終濃度4μg/ml に調整したPolybrene (Hexadimethrine bromide ; SIGMA)を加えたDMEMに置き換えた。取り分けたウイルス液を0μl, 200μl, 500μl で細胞に添加し37℃、5%CO2 で培養を行った。ウイルス液添加24時間後に、GFP蛍光シグナルを蛍光倒立顕微鏡(Deltavision)にて観察した。視野中の細胞数を確認するため二重鎖DNAを特異的に染色する、2-(4-amidinophenyl)-1H -indole-6-carboxamidine (DAPI; 50ng/ml)で細胞核を染色した。観察したのち、細胞はLDS sample buffer (Thermo Fisher Scientific Inc.) 200μlで回収し、その一部を用いウエスタンブロットにてGFPとp62のタンパク量を比較した。各レーンに泳動した総タンパク量の比較としてハウスキーピング遺伝子GAPDHのタンパク量を示した。
その結果、図9に示す通り、p62欠損MEF細胞は、野生型MEF細胞に比べより多くの細胞にGFP発現が認められた。この視野での細胞数が同程度であることは核染色であるDAPIによる染色像で確認した。これらの結果は、ウイルス感染による遺伝子導入についても、p62タンパク質の発現を抑制することにより、その導入効率が飛躍的に向上することを示す。
試験例10:
試験例9の結果が観察した視野に依存しないことを証明するために図9の細胞を顕微鏡観察後、LDS sample buffer 200μlで回収し、p62およびGFPのタンパク量をウエスタンブロットにて比較した。各レーンに泳動した総タンパク量の比較としてハウスキーピング遺伝子GAPDHのタンパク量を示した。その結果、図10に示す通り、野生型MEF細胞でもウイルス液の添加量依存的にGFPの発現上昇はられるが、それに比べ、p62欠損MEF細胞でより少ない量のウイルス液でより多くのGFPタンパク質の発現が認められた。これらの結果から、p62遺伝子欠損MEF細胞ではレトロウイルスの感染を介した遺伝子導入においてもその効率が上昇していることが判明した。

Claims (11)

  1. p62の発現抑制剤を含む、核酸導入促進剤。
  2. p62の発現抑制剤が、p62特異的siRNA、p62特異的miRNA、及びp62特異的アンチセンス核酸から成る群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の核酸導入促進剤。
  3. 核酸を導入する前に、細胞又は生体に投与される、請求項1又は2に記載の核酸導入促進剤。
  4. p62の発現抑制剤及び核酸を含む、核酸導入剤。
  5. p62の発現抑制剤が、p62特異的siRNA、p62特異的miRNA、及びp62特異的アンチセンス核酸から成る群より選択される少なくとも1種である、請求項4に記載の核酸導入剤。
  6. 核酸が、ベクターに組み込まれている、請求項4又は5に記載の核酸導入剤。
  7. 更に、核酸導入試薬を含む、請求項4〜6のいずれかに記載の核酸導入剤。
  8. 核酸医薬である、請求項4〜7のいずれかに記載の核酸導入剤。
  9. p62の発現抑制剤及び核酸を含む、細胞又は生体への核酸導入キット。
  10. p62の発現抑制剤がp62特異的siRNA、p62特異的miRNA、及びp62特異的アンチセンス核酸から成る群より選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の核酸導入キット。
  11. p62の発現抑制剤と核酸が別個の容器に収容されている、請求項9又は10に記載の核酸導入キット。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2019010150A (ja) * 2017-06-29 2019-01-24 株式会社三洋物産 遊技機

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