JP2017124109A - 医療用アクセスデバイス - Google Patents
医療用アクセスデバイス Download PDFInfo
- Publication number
- JP2017124109A JP2017124109A JP2016006427A JP2016006427A JP2017124109A JP 2017124109 A JP2017124109 A JP 2017124109A JP 2016006427 A JP2016006427 A JP 2016006427A JP 2016006427 A JP2016006427 A JP 2016006427A JP 2017124109 A JP2017124109 A JP 2017124109A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- access device
- medical access
- needle
- sheath
- medical
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Infusion, Injection, And Reservoir Apparatuses (AREA)
- Media Introduction/Drainage Providing Device (AREA)
Abstract
【課題】生体内に挿入される医療用デバイスを治療対象部位に対して所望の向き及び位置に容易に配置して、治療対象部位に対して効率的に処置を行うことができる医療用アクセスデバイスを提供する。
【解決手段】医療用アクセスデバイス60Aは、挿通孔66を有する中空筒状のポート部62と、挿通孔66に挿通可能であり、医療用デバイスが挿通可能な挿通路65を内部に有するチューブ状に形成されたシース部64とを備える。ポート部62は、ポート部62に対するシース部64の角度を調整可能であり且つ調整した角度でシース部64を固定できるように構成されている。
【選択図】図6
【解決手段】医療用アクセスデバイス60Aは、挿通孔66を有する中空筒状のポート部62と、挿通孔66に挿通可能であり、医療用デバイスが挿通可能な挿通路65を内部に有するチューブ状に形成されたシース部64とを備える。ポート部62は、ポート部62に対するシース部64の角度を調整可能であり且つ調整した角度でシース部64を固定できるように構成されている。
【選択図】図6
Description
本発明は、医療用アクセスデバイスに関する。
様々な原因(例えば、虚血性心臓病、拡張型心筋症等)により心臓のポンプ機能が障害され全身の組織代謝に必要な血液量を駆出できない状態は、一般に、心不全と呼ばれている。従来、心不全を治療する方法としては、(a)複数枚の細胞(心筋)シートを心筋の壊死部周辺に貼付する方法、(b)経血管(静脈・動脈)的に幹細胞等のバイオマテリアル(心筋再生材)を心筋に注入する方法、(c)経心室的にあるいは開胸して、直接的に心筋にバイオマテリアルを注入する方法が知られている。
心不全を治療する他の方法として、下記特許文献1では、メッシュ状のジャケットを心臓に被せて固定することで、拡張期における最大調整容積を超える心臓の周方向拡張を拘束する方法が提案されている。この場合、特許文献1によれば、メッシュ状のジャケットは、最小限の侵襲性処置で使い、小さい直径の管に通す、としている。
例えば、特許文献1のように、生体内の治療対象部位に低侵襲でアプローチする場合、効率的に処置を施すためには、患者体内に挿入されて処置に使用される医療用デバイスを治療対象部位に対して所望の向き及び位置に容易に配置できることが望ましい。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、生体内に挿入される医療用デバイスを治療対象部位に対して所望の向き及び位置に容易に配置して、治療対象部位に対して効率的に処置を行うことができる医療用アクセスデバイスを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明の医療用アクセスデバイスは、生体に固定可能であり、軸方向に貫通した挿通孔を有する中空筒状のポート部と、前記ポート部よりも長尺であり、前記挿通孔に挿通可能であり、医療用デバイスが挿通可能な挿通路を内部に有するチューブ状に形成されたシース部と、を備え、前記ポート部は、前記ポート部に対する前記シース部の角度を調整可能であり且つ調整した角度で前記シース部を固定できるように構成されていることを特徴とする。
上記の構成を採用した本発明の医療用アクセスデバイスによれば、生体に固定したポート部に対するシース部の角度を調整し、これにより、シース部の先端部の向きと治療対象部位との距離を所望の適正状態に設定することができる。従って、シース部を介して生体内に挿入される医療用デバイスを所望の向き及び位置に容易に配置して、治療対象部位に対して効率的に処置を行うことができる。
上記の医療用アクセスデバイスにおいて、前記ポート部は、前記挿通孔の中心から前記シース部の中心をずらした状態で前記シース部を保持することにより、前記ポート部に対して斜めに前記シース部を固定可能な少なくとも1つの保持ユニットを有していてもよい。
この構成により、ポート部に対してシース部を斜めに保持し、シース部を所望の角度に容易に調整し固定することができる。
上記の医療用アクセスデバイスにおいて、前記保持ユニットは、前記ポート部の軸方向に複数配置されていてもよい。
この構成により、より大きい角度調整範囲が得られる。
上記の医療用アクセスデバイスにおいて、前記保持ユニットは、前記挿通孔を形成する筒状部材と、前記筒状部材に設けられた複数の押圧部材とを有し、前記複数の押圧部材は、前記筒状部材の内周面からの突出高さを調整可能であり、前記シース部の外側面を押圧可能に構成されていてもよい。
この構成により、簡易な構造で確実に、ポート部に対するシース部の角度を調整することができる。
上記の医療用アクセスデバイスにおいて、前記押圧部材は、ネジであってもよい。
この構成により、ネジを回すだけで簡単に、ポート部に対するシース部の角度を調整することができる。
上記の医療用アクセスデバイスにおいて、前記押圧部材は、バルーンであってもよい。
この構成により、バルーンの大きさを変えるだけで簡単に、ポート部に対するシース部の角度を調整することができる。
上記の医療用アクセスデバイスにおいて、前記ポート部は、前記生体に対する固定安定化手段としての雄ネジ部を有していてもよい。
この構成により、生体に対するポート部の安定性を向上できる。
上記の医療用アクセスデバイスにおいて、前記シース部は、湾曲形状に変形可能であり且つ変形状態を保持可能な可変形部を先端領域に有していてもよい。
この構成により、生体におけるポート部の配置位置の自由度を向上できる。
上記の医療用アクセスデバイスにおいて、患者に取付け可能なアタッチメントをさらに備え、前記アタッチメントは、前記患者に装着して固定可能に構成された固定部と、前記固定部から突出し前記ポート部が嵌合可能な中空状の嵌合部とを有していてもよい。
この構成により、患者に対してポート部を安定的に固定することができる。
上記の医療用アクセスデバイスにおいて、前記嵌合部は、前記固定部から傾斜して突出していてもよい。
この構成により、ポートの固定部位と治療対象部位の向きとが同軸にない場合でも、ポート部に固定された医療用デバイスを治療対象部位に対してより同軸に近づけることが可能となる。なお、固定部と嵌合部との間に、角度を変えることができる継ぎ手、例えばボールジョイント構造を設けることにより、嵌合部に対する、固定部の角度を調整可能としてもよい。
上記の医療用アクセスデバイスにおいて、前記医療用デバイスは、心臓用治療デバイスであってもよい。
この構成により、心臓治療をより効率的に行うことができる。
本発明の医療用アクセスデバイスによれば、生体内に挿入される医療用デバイスを治療対象部位に対して所望の向き及び位置に容易に配置して、治療対象部位に対して効率的に処置を行うことができる。
以下、本発明について好適な複数の実施形態及び変形例を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
図1において、心臓用治療デバイス10Aは、心不全を治療するために用いられる医療機器である。この心臓用治療デバイス10Aは、心不全の状態に陥った患者の体内に挿入されて心臓2にアプローチし、心臓2の心筋4に、幹細胞、薬剤等の心筋4の再生・改善のための生物学的生理活性物質(以下、心筋再生材という)を注入するように構成されている(図9参照)。心筋再生材としては、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、組織幹細胞、体性幹細胞、iPS細胞、等の細胞系の物質、コラーゲン、ヒアルロン酸、等の細胞外マトリックス系の物質、及びキトサン、アルギン酸、合成ペプチド、等の生分解性物質、ポリエチレングリコール、イソプロピルアクリルアミド、等の合成物系の物質、等が挙げられる。
図1に示すように、心臓用治療デバイス10Aは、チューブ状の外側シャフト12と、外側シャフト12の内側で軸方向に相対変位可能に配置された駆動シャフト14を構成する複数のチューブ体16と、駆動シャフト14の先端部に設けられた把持機構部18と、外側シャフト12内に挿通された吸着機構20とを備える。
外側シャフト12は、心臓用治療デバイス10Aの胴体部を構成する細径で長尺な部材であり、軸方向に延在する中空部13を有し、例えば、中空円筒形状に形成されている。中空部13の先端は、外側シャフト12の先端面にて開口しており、先端開口部13aを形成している。中空部13の基端は、外側シャフト12の基端に設けられた基端固定部材24によって閉じられている。
また、外側シャフト12の基端領域には、複数のスリット26が周方向に間隔を置いて形成されている。各スリット26は、外側シャフト12の内外面を貫通し且つ軸方向に延在する長孔状の開口である。
外側シャフト12は、弾性変形可能な可撓性を有する部材であるのがよい。外側シャフト12の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、チタン合金等の金属材料や、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、超高密度ポリエチレン(HDPE)等の樹脂材料や、カーボン材料が挙げられる。
駆動シャフト14を構成する複数のチューブ体16は、周方向に並列して配置されるとともに相互に連結されており、軸方向に一体的に移動可能となっている。各チューブ体16の基端部は、外側に屈曲して、外側シャフト12に形成されたスリット26を介して外部に突出している。従って、複数のチューブ体16は、スリット26の範囲内において、外側シャフト12に沿って軸方向に変位可能となっている。
図2に示すように、把持機構部18は、外側シャフト12の先端から露出可能であり、外側シャフト12内に収縮状態で収納可能である。また、把持機構部18は、外側シャフト12の先端からの露出に伴って拡張し、心臓2を覆う心膜6の外表面に接触して外表面を少なくとも部分的に囲んで把持するように構成されている。なお、図示の便宜上、図2では、仮想線で心膜6を示している。他の図においても同様である。
さらに、把持機構部18は、心筋再生材を心筋4に注入するための針22(図4A等参照)を把持機構部18から心臓2に向けて突出させることが可能に構成されている。特に心臓用治療デバイス10Aでは、把持機構部18は、針22を挿通可能な通路28(図1参照)を有する中空体からなり、針22を複数の異なる位置から突出させることが可能に構成されている。
図1〜図3において、把持機構部18は、周方向に並列された複数本(図示例では、5本)の中空状のアーム部30を有する。アーム部30は、上述したチューブ体16の先端側領域によって構成されている。各アーム部30は、針22が挿通可能な通路28と、心臓2に向けて針22を突出させるための複数の開口部32を有する。通路28は、アーム部30の中空部(内腔)である。複数の開口部32は、アーム部30の長手方向に間隔を置いて設けられている。
複数の開口部32の長手方向(軸方向)は、アーム部30における心膜6に接する側(把持機構部18の内側)に設けられている。図1において、複数の開口部32は等間隔に且つ周方向の同一位相に形成されている。なお、複数の開口部32は、不等間隔に形成されてもよく、例えば、アーム部30の先端側に向かって間隔が短くなるように配置されてもよく、あるいは、アーム部30の先端側に向かって間隔が長くなるように配置されてもよい。複数の開口部32は、一部が周方向に位相をずらして配置されてもよく、例えば、ジグザグ状に配置されてもよい。
また、開口部32の長手方向(軸方向)に垂直な断面形状は、特に限定されず、例えば、アーム部30の管壁に対して、垂直(図1)あるいは、末端側に傾斜していてもよく、また、針22が、目的部位に確実に穿刺するよう管壁外側に向かって縮径してもよく、あるいは目的部位を広く選択できるように管壁外側に向かって拡径してもよい。
アーム部30の長手方向(軸方向)に垂直な断面形状は、特に限定されず、例えば、円形状、楕円形状、あるいは四角形状(長方形状)に形成される。X線造影下で把持機構部18を視認できるように、各アーム部30の先端には、X線不透過材料からなる造影マーカ31が設けられている(図1及び図2参照)。造影マーカ31は、アーム部30の先端以外の箇所に設けられてもよい。
また、エコー(超音波)下で手技を行うことも想定されるが、その場合にはX線不透過材料からなる造影マーカ31ではなく、エコー下で造影することが可能な発泡材料等のマーカが設けられていればよい。現在、診断を除いてはそれほど多くの適用例は無いが、MRI下での手技が行えるようになった場合にはMRI用の造影マーカを設けてもよい。
図1に示すように、駆動シャフト14(複数のチューブ体16)が外側シャフト12に対する可動範囲の基端側位置(後退位置)に位置しており、把持機構部18を構成する複数のアーム部30が外側シャフト12内に収納されているとき、複数のアーム部30は外側シャフト12によって拡張が規制されて収縮状態になっている。すなわち、複数のアーム部30は、外側シャフト12により径方向内側に押え付けられることで、外側シャフト12の中心側に寄せられており、これにより、把持機構部18が縮径(収縮)している。従って、把持機構部18が収縮状態のとき、患者の体内に挿入される心臓用治療デバイス10Aの外径は小さく、低侵襲な挿入が可能となる。
一方、駆動シャフト14が外側シャフト12に対する可動範囲の先端側位置(進出位置)へと移動し、把持機構部18を構成する複数のアーム部30が外側シャフト12から露出すると、図2のように、把持機構部18は自動的に拡張する。すなわち、外側シャフト12からの露出に伴って、複数のアーム部30は、弾性復元力によって径方向外側に変形し、これにより把持機構部18が拡張(自己拡張)する。
図2及び図3のように、図示例の把持機構部18の場合、5本のアーム部30により心臓2の周囲の約半周分を囲むように構成されている。なお、把持機構部18を構成するアーム部30の本数、及び心臓2を囲む範囲は、図示例に限られない。従って、把持機構部18は、心臓2の略全周を囲むようにアーム部30の本数及び配置が設定されてもよい。
把持機構部18の拡張時における複数のアーム部30は、心臓2(心膜6に覆われた心臓2)の外形形状に適合するような湾曲形状を呈する。これにより、把持機構部18は、好適に心臓2を把持することができる。
把持機構部18が拡張した状態から、駆動シャフト14を後退位置に移動させることにより把持機構部18を外側シャフト12内に引き込む。そうすると、複数のアーム部30は、外側シャフト12によって、弾性復元力に抗して径方向内側(外側シャフト12の中心側)に変形させられる。これにより、把持機構部18は、再び収縮状態に至る。
このように複数のアーム部30は、外側シャフト12からの露出に伴って弾性復元力によって拡張することにより、心臓2を把持できる大きさまで展開できるような適度の弾性をもつ部材である。アーム部30の構成材料としては、Ni−Ti合金等の超弾性合金や、PEEK等の高弾性樹脂材料等が挙げられる。なお、チューブ体16のうち、アーム部30を構成する先端側領域と、当該先端側領域よりも基端側の領域とは、互いに材料が異なる別部材により構成されてもよい。
図4A及び図4Bのように、把持機構部18は、アーム部30内に形成された通路28に針22を挿通するとともに、開口部32から針22を突出させることにより、針22を心筋4に穿刺することができる。針22の穿刺においては、例えば、カテーテル34の先端に中空状の針22が接続された針付きカテーテル36と、この針付きカテーテル36を挿通させることが可能な外側カテーテル38とが用いられる。針22は、自然状態で湾曲形状を呈するように、予め湾曲が付けられている。
この場合、針付きカテーテル36が外側カテーテル38内に挿通された状態(二重カテーテル状態)且つ針22が外側カテーテル38内に収納された状態で、針付きカテーテル36と外側カテーテル38との組立体(以下、「針組立体40」という)を、チューブ体16(図1参照)の基端側から挿入する。そして、図4Aのように、当該針組立体40の先端部を、アーム部30内の通路28まで移動させるとともに、針22を突出させる箇所として選択した開口部32よりも若干基端側に配置する。
次に、図4Bのように、外側カテーテル38に対して針付きカテーテル36を前進させると、針22は本来の湾曲形状に戻りつつ外側カテーテル38から突出する。このため、針22は、開口部32から突出して、心膜6を貫通し、心筋4に刺さる。
なお、把持機構部18に挿通してアーム部30の開口部32から突出させる針22を備えた針機構としては、二重カテーテルの形態を有する上述した針組立体40に限定されない。他の針機構として、図5に示すような構成の針付きカテーテル36aが採用されてもよい。図5において、カテーテル42の先端に針22が設けられている。針22の基端部には突起44が設けられるとともに、突起44には、カテーテル42の基端側まで延在する操作ワイヤ46が接続されている。
このように構成された針付きカテーテル36aでは、ユーザが手元側で操作ワイヤ46を引っ張ると、図5の仮想線で示すように針22の向きを変えることができる。従って、この針付きカテーテル36aによっても、図4A及び図4Bの針組立体40と同様に、アーム部30に設けられた開口部32から針22を突出させて、心筋4を穿刺することができる。
なお、穿刺の際に、アーム部30のうち開口部32を囲む壁部分に突起44を当接させることにより、すなわち突起44をストッパとして機能させることにより、開口部32からの針22の突出長さ(心筋4に対する穿刺深さ)を規制してもよい。
図1において、吸着機構20は、外側シャフト12内に挿通された吸引チューブ48と、吸引チューブ48の先端に接続された吸着パッド50とを有する。吸引チューブ48の基端側領域は、外側シャフト12の基端部に設けられた基端固定部材24の内周部に固定されるとともに、基端固定部材24から基端方向に突出している。吸引チューブ48の基端部は、図示しない真空発生機構(真空ポンプ等)に接続可能となっている。
吸引チューブ48の外径は、外側シャフト12の内径よりも小さい。従って、吸引チューブ48の外周面と、外側シャフト12の内周面との間には、軸方向に延在する中空円筒形状の空間52が形成されている。把持機構部18(複数のアーム部30)が外側シャフト12内に収納されている状態で、把持機構部18は、上記空間52、すなわち吸引チューブ48の周囲に配置されている。
吸引チューブ48は、外側シャフト12と同様に可撓性を有するとよい。吸引チューブ48の構成材料としては、例えば、外側シャフト12の構成材料として例示したものが挙げられる。
吸着パッド50は、例えばゴム材等の軟質材料によって構成されており、吸引チューブ48の内腔と連通する内腔を有する。
図2に示すように、この心臓用治療デバイス10Aは、さらに、心膜6の外表面に対する把持機構部18の固定を促進する固定促進機構54を備える。図2において、固定促進機構54は、把持機構部18に接続された紐状部材56の形態を有し、紐状部材56で複数のアーム部30を締め付けることにより、複数のアーム部30を心膜6に押し付けるように構成されている。
紐状部材56は、例えば、糸、ワイヤ等である。紐状部材56の一端は、1つのアーム部30(図示例では、先端部近傍)に固定されている。紐状部材56の他の部分は、螺旋を描くように、当該一端が固定されたアーム部30を含む全てのアーム部30に摺動可能に挿通されている。紐状部材56のさらに他の部分56aは、外側シャフト12内に挿通されるとともに、外側シャフト12の基端側領域において外部へと引き出されている。引き出された紐状部材56は、ユーザにより操作可能となっている。
図6に示す医療用アクセスデバイス60Aは、医療用デバイスを生体内に挿入して生体内の治療対象部位(臓器、組織)へのアプローチを可能とするデバイスであり、例えば、上述した心臓用治療デバイス10Aの使用に際して適用することができる。また、医療用アクセスデバイス60Aは、他の構成の心臓用治療デバイスや、心臓2以外の生体組織の治療のためのデバイスにも適用することができる。
図6において、医療用アクセスデバイス60Aは、生体の胴体(胸部や腹部)に固定可能に構成されたポート部62と、ポート部62に挿通されて固定されるシース部64とを備える。ポート部62は、軸方向に貫通した挿通孔66を有する中空筒状に形成されている。また、ポート部62は、挿通孔66の中心からシース部64の中心をずらした状態でシース部64を保持することにより、ポート部62に対して斜めにシース部64を固定可能に構成された少なくとも1つの保持ユニット68を有する。
具体的に、図6に示すポート部62は、軸方向に連結された2つの保持ユニット68a、68bを有する。各保持ユニット68a、68bは、挿通孔66を形成する筒状部材70(70a、70b)と、筒状部材70に設けられた複数の押圧部材72とを有する。2つの筒状部材70は、挿通孔66を中心に互いに相対回転可能に接続されている。
複数の押圧部材72は、ポート部62の挿通孔66を形成する内周面からの突出長さを調整可能でありシース部64の外側面を押圧可能に構成されている。図6の構成例において、各押圧部材72は、筒状部材70に螺合したネジ74であり、各ネジ74の先端がシース部64の外側面に当接する。
図7において、筒状部材70において90°間隔で形成されたネジ穴71に、4つのネジ74が螺合している。すなわち、4つのネジ74が90°間隔で配置されている。筒状部材70において、各ネジ74の挿通孔66への突出長さ(筒状部材70の内周面からの突出長さ)を調整することで、挿通孔66内でのシース部64の位置を任意の位置に設定することができる。
例えば、筒状部材70においてネジ74の突出長さを全て同じにすると、シース部64の中心は挿通孔66の中心に配置される。また、一部のネジ74の突出長さを相対的に長くし、他の一部のネジ74の突出長さを相対的に短くすると、シース部64の中心は挿通孔66の中心からずれた位置に配置される。
なお、1つの保持ユニット68を構成するネジ74(押圧部材72)の個数は、3個でもよく、あるいは5個以上でもよい。
図6に示すように、シース部64は、ポート部62よりも長尺である。シース部64の外径は、ポート部62に形成された挿通孔66の直径よりも小さく、これにより、シース部64は、挿通孔66に挿通可能である。また、シース部64は、医療用デバイス(心臓用治療デバイス10A)が挿通可能な挿通路65を内部に有するチューブ状に形成されている。シース部64の構成材料としては、例えば、上述した外側シャフト12の構成材料として例示した材料が挙げられる。
さらに、シース部64は、湾曲形状に変形可能であり且つ変形状態を保持可能な可変形部76を先端領域に有する。可変形部76は、種々の形態を採り得る。可変形部76は、例えば、互いに傾動可能に軸方向に接続された複数の関節部材78を有し、互いに隣接する関節部材78の一方が他方に対して傾くことで、可変形部76が全体として湾曲形状を呈するように構成されてもよい。この場合、関節部材78同士の摩擦抵抗が、可変形部76の形状保持力を提供する。
上記のように構成された医療用アクセスデバイス60Aにおいて、例えば、次のように操作すると、ポート部62に対してシース部64を傾斜させた状態で固定することができる。図8Aのように、各筒状部材70において複数のネジ74の挿通孔66への突出長さを調整することにより、ポート部62に挿通されたシース部64の中心を、挿通孔66の中心から同じ方向にずらす(シース部64を挿通孔66内で片側に寄せる)。
次に、筒状部材70a、70bの一方に対して他方を相対回転させる。具体的に、例えば、図8Bのように、基端側の筒状部材70bに対して先端側の筒状部材70aを回転させると、挿通孔66の直径方向に関して、先端側の保持ユニット68aと基端側の保持ユニット68bとでシース部64を異なる位置で保持することになる。これにより、ポート部62に対してシース部64が傾斜した状態で固定される。この場合、ポート部62に対するシース部64の傾斜角度は、筒状部材70a、70bの一方に対する他方の相対回転位置の調整によって、調整することができる。
次に、上述した心臓用治療デバイス10A及び医療用アクセスデバイス60Aを用いて心筋4に心筋再生材を注入する方法(心臓治療方法)の一例を説明する。
図9のように、患者Pの胴体の適宜の箇所を小さく切開し、切開した箇所にポート部62の先端部を挿入して取り付ける。この場合、ポート部62を取り付ける箇所は、患者Pの心臓2の心尖部2aの正面に位置する肋骨間である必要はなく、例えば、心尖部2aの正面からずれた位置の肋骨間や、みぞおち又はその付近等であってもよい。
ポート部62を患者Pに取り付けた後、ポート部62の挿通孔66にシース部64を挿入し、シース部64の先端部を心臓2に近づけてその心尖部2aに対向させ、ポート部62にシース部64を固定する。このとき、図9のように、心尖部2aの正面位置からずれた箇所に取り付けたポート部62にシース部64を挿入する場合であっても、ポート部62に対してシース部64を傾斜させて固定することで、シース部64の先端部を心尖部2aの近くに配置することができる。また、ポート部62へのシース部64の挿入前に、シース部64の先端領域に設けられた可変形部76を予め湾曲させておくことにより、シース部64の先端部を心尖部2aの正面位置に対向させることができる。
次に、シース部64の基端開口から、外側シャフト12内に把持機構部18を収納した状態の心臓用治療デバイス10Aを、シース部64内へと挿入し、心臓2の心尖部2aに対向する位置に、心臓用治療デバイス10Aの先端部を配置する(配置ステップ)。この場合、心臓用治療デバイス10Aの可撓性を有する先端領域は、図9のように、シース部64の湾曲した可変形部76に追従して弾性変形することにより、シース部64の先端開口から露出した吸着パッド50は心尖部2aに対向する。
次に、心臓用治療デバイス10Aをさらに前進させ、吸着パッド50を心尖部2aに接触させる。そして、吸引チューブ48の基端部に接続された図示しない真空発生機構により吸引チューブ48内を真空引きすることにより、吸着パッド50に心尖部2aを吸着させる(吸着ステップ)。
次に、駆動シャフト14を外側シャフト12に対して前進させて、把持機構部18により、心膜6の外側から心臓2を把持する(把持ステップ)。具体的には、把持ステップでは、図2のように、把持機構部18を心臓2に向けて前進させつつ拡張させ、心臓2を覆う心膜6の外表面に把持機構部18を接触させ、把持機構部18により心膜6の上から心臓2を少なくとも部分的に囲んで把持する。
上述したように、心臓用治療デバイス10Aには固定促進機構54として紐状部材56が設けられている。そこで、把持機構部18が心膜6の上から心臓2を囲んだ後、心臓用治療デバイス10Aの手元側で紐状部材56を引っ張ることにより、把持機構部18の複数のアーム部30を締め付ける(固定促進ステップ)。これにより、複数のアーム部30が心膜6の外表面に押し付けられ、把持機構部18がしっかりと心膜6の上から心臓2を把持する。
次に、駆動シャフト14を介して、把持機構部18内に形成された通路28に針22を挿通させる(針挿通ステップ)。この場合、上述した針組立体40(図4A)又は針付きカテーテル36a(図5)をチューブ体16の基端側から挿入し、針組立体40又は針付きカテーテル36aをチューブ体16内で前進させることにより、針22をアーム部30の通路28内に到達させる。
次に、図4Bのように、心膜6の外表面に接触している把持機構部18から針22を突出させることにより、心臓2の心筋4に針22を穿刺する(穿刺ステップ)。具体的に、穿刺ステップでは、アーム部30に形成された開口部32から針22を突出させることにより、針22を心筋4に穿刺する。このとき、針22は心膜6を貫通する。この場合、心筋4への針22の穿刺深さは、例えば、3.00mm〜8.00mmである。
次に、針22を介して心筋再生材を心筋4に注入する(注入ステップ)。具体的には、針付きカテーテル36、36aの基端部に接続されたシリンジ等のインジェクタを操作して針付きカテーテル36、36aに心筋再生材を供給し、心筋4に穿刺された針22から心筋再生材を吐出させる。注入後、針22を後退させて心筋4から抜去する。
穿刺の際、針22は、穿刺の際の心筋4からの反作用又は心筋再生材注入時の反作用によって、一旦押し戻されるが管壁及び固定促進機構54によって、反作用に抗して心筋穿刺と、心筋再生材注入がサポートされる。
そして、把持機構部18に形成された他の開口部32においても穿刺ステップ及び注入ステップを順次行う。すなわち、開口部32を変えて上記の穿刺ステップ及び注入ステップを複数回行うことにより、心筋4の複数個所に心筋再生材を注入する。これにより、広範囲に亘って心筋再生材を心筋4に注入することができる。
以上説明したように、心臓用治療デバイス10Aによれば、把持機構部18を外側シャフト12内に収納した状態で心臓用治療デバイス10Aを患者の体内に挿入し、そして把持機構部18を拡張させて心膜6の上から心臓2を把持し、把持機構部18から針22を突出して心筋4を穿刺し、心筋4に心筋再生材を注入することができる。
従って、より低侵襲・短時間で治療することができ、リアルタイムで狙った部位に正確にアプローチして、効率的に心臓2の治療を行うことができる。また、この心臓用治療デバイス10Aによれば、心膜6の外表面側から心膜6及び心筋4に細い針22を刺すだけであるため、合併症の発生リスクも低減することができる。
また、心臓用治療デバイス10Aでは、把持機構部18は、針22を複数の異なる位置から突出させることが可能に構成されている。この構成により、針22を突出させる位置を変えることで、心筋4の異なる複数個所に対して心筋再生材を注入でき、より効率的に治療を行うことができる。
さらに、心臓用治療デバイス10Aでは、把持機構部18は、針22を挿通可能な通路28を有する中空体からなり、把持機構部18には、通路28に連通し、針22を突出させるための少なくとも1つの開口部32が形成されている。この構成により、心臓用治療デバイス10Aとは別デバイスとして構成された針付きカテーテル36を心臓用治療デバイス10Aに挿入し、針付きカテーテル36の先端部に設けられた針22を、把持機構部18に設けられた開口部32から突出させることにより、心筋4に針22を確実且つ簡単に穿刺することができる。
特に、開口部32は、把持機構部18の延在方向に間隔を置いて複数設けられている。この構成により、開口部32を選択することによって針22を突出させる位置を簡単に変えることができる。従って、心筋4の異なる複数個所に対して心筋再生材を注入でき、より効率的に治療を行うことができる。
しかも、心臓用治療デバイス10Aでは、把持機構部18は、駆動シャフト14から延出する複数のアーム部30を有し、複数のアーム部30の各々が通路28及び開口部32を有する。この構成により、所望の範囲に心筋再生材を注入することができ、治療効果を高めることができる。
心臓用治療デバイス10Aは、心膜6の外表面に対する把持機構部18の固定を促進する固定促進機構54をさらに備えるため、より確実且つ正確に針22を心筋4に穿刺することができる。特に、固定促進機構54は、把持機構部18に接続された紐状部材56を有するため、簡易な機構で把持機構部18を心膜6(心臓2)に対して固定することができ、治療効果を高めることができる。
上記のように構成された医療用アクセスデバイス60Aによれば、角度調整固定機構部により、生体に固定したポート部62に対するシース部64の角度を調整し、これにより、シース部64の先端部の向きと心臓2との距離を所望の適正状態に設定することができる。従って、シース部64を介して生体内に挿入される医療用デバイスを所望の向き及び位置に容易に配置して、治療対象部位に対して効率的に処置を行うことができる。
また、医療用アクセスデバイス60Aでは、ポート部62は、挿通孔66の中心からシース部64の中心をずらした状態でシース部64を保持することにより、ポート部62に対して斜めにシース部64を固定可能な少なくとも1つの保持ユニット68を有する。この構成により、ポート部62に対してシース部64を斜めに保持し、シース部64を所望の角度に容易に調整し固定することができる。
さらに、保持ユニット68は、ポート部62の軸方向に複数配置されているため、より大きい角度調整範囲が得られる。
しかも、保持ユニット68は、ポート部62の挿通孔66を形成する内周面からの突出高さを調整可能でありシース部64の外側面を押圧可能に構成された押圧部材72を周方向に複数有する。この構成により、簡易な構造で確実に、ポート部62に対するシース部64の角度を調整することができる。特に、押圧部材72はネジ74であるため、ネジ74を回すだけで簡単に、ポート部62に対するシース部64の角度を調整することができる。
医療用アクセスデバイス60Aでは、シース部64は、湾曲形状に変形可能であり且つ変形状態を保持可能な可変形部76を先端領域に有するため、生体におけるポート部62の配置位置の自由度を向上できる。
また、上記の例のように、医療用アクセスデバイス60Aに挿通して使用される医療用デバイスが心臓用治療デバイス10Aであると、心臓治療をより効率的に行うことができる。
なお、患者Pへのポート部62の取付けに際しては、患者Pに対してポート部62をより安定的に固定するために、図10のように、患者Pに固定しやすいアタッチメント79を患者Pに取り付けた後、当該アタッチメント79にポート部62を固定するようにしてもよい。アタッチメント79は、患者Pに装着して固定可能に構成された固定部79aと、固定部79aから突出しポート部62が嵌合可能な中空状の嵌合部79bとを有する。
固定部79aは、アタッチメント79のベース部を構成している。固定部79aの外周部には、当患者Pの皮膚が入り込むように形成された溝部79cが設けられている。溝部79cは、固定部79aの外周部を周方向に一周している。固定部79aは、患者Pの体表に対して固定部79aの厚さ方向が垂直になるように固定することができる。
図10において、嵌合部79bは、固定部79aから傾斜して突出している。従って、嵌合部79b及びその内腔は、患者Pへの固定部位に対して傾斜する。固定部79aに対する嵌合部79b(軸線a)の傾斜角度θは、例えば、15〜75°であり、好ましくは30〜60°に設定される。図10では、θは45°である。
嵌合部79bの内周面には雌ネジ部79dが形成されており、一方、ポート部62の外周部には雄ネジ部63が形成されている。従って、ポート部62を嵌合部79bに螺合することにより、ポート部62をアタッチメント79に固定することができる。
ところで、ポート部62は、患者Pの体表に対して垂直に固定するのが最も適しているが、ポート部62の固定部位と心尖部2aとが同軸にあるとは限らない。同軸であれば、最短距離で心臓用治療デバイス10Aを接近させ、且つ狙い通りの位置で心臓2を覆うことができる。そこで、上記のように構成されたアタッチメント79を用いると、アタッチメント79の固定部79aの厚さ方向は患者Pの体表に対して垂直であるが、嵌合部79b及びポート部62は体表に対して傾斜する。これにより、ポート部62に固定された心臓用治療デバイス10Aを心尖部2aに対してより同軸に近づけることが可能となる。
なお、嵌合部79bが固定部79aから垂直に突出していてもよく、この場合でも、患者Pに対してポート部62を安定的に固定することが可能である。又は、固定部79aと嵌合部79bとの間に、角度を変えることができる継ぎ手、例えばボールジョイント構造を設けることにより、嵌合部79bに対する、固定部79aの角度を調整可能としてもよい。
次に、上述した心臓用治療デバイス10A及び医療用アクセスデバイス60Aを部分的に改変したいくつかの変形例について、心臓用治療デバイス10A及び医療用アクセスデバイス60Aと異なる部分を中心に説明する。
図11に示す心臓用治療デバイス10Bにおいて、把持機構部18aは、外側シャフト12から露出することによって拡張し、心膜6の上から心臓2を把持している。この把持機構部18aは、周方向に蛇行する波形状に湾曲形成された複数のアーム部80を有する。心臓2の拍動における収縮時の動きは、単純な収縮ではなく、捻るような動きを伴っている。このように複数のアーム部80が波形状を有することにより、把持機構部18aが心膜6の上から心臓2を把持しているときに、心臓2の拍動にアーム部80が追従しやすい。従って、心筋4への針22の穿刺をより確実に行うことができる。心臓用治療デバイス10Bの他の部分は、心臓用治療デバイス10Aと同様に構成されている。
図12に示す心臓用治療デバイス10Cにおいて、把持機構部18bは、外側シャフト12から露出することによって拡張し、心膜6の上から心臓2を把持している。この把持機構部18bは、螺旋状に形成されており、針22(図4A等参照)を突出させるための複数の開口部32が螺旋に沿って間隔をおいて形成されている。また、把持機構部18bには、複数の造影マーカ82が螺旋に沿って間隔を置いて設けられている。把持機構部18bは外側シャフト12内に縮径状態で収納可能に構成されている。
この心臓用治療デバイス10Cは、心膜6の外表面に対する把持機構部18bの固定を促進する固定促進機構54をさらに備える。固定促進機構54は、把持機構部18bに接続された紐状部材56を有しており、紐状部材56で把持機構部18bを締め付けることにより、把持機構部18bを心膜6に押し付けるように構成されている。この場合、紐状部材56の一端は、螺旋状の把持機構部18bの先端部に固定されている。紐状部材56の他の部分は、把持機構部18bの螺旋形状に沿って間隔を置いた複数個所において、把持機構部18bに摺動可能に挿通されている。紐状部材56のさらに他の部分56aは、外側シャフト12内に挿通されるとともに、心臓用治療デバイス10Cの基端側まで延在し、ユーザが操作可能になっている。
図13に示す心臓用治療デバイス10Dにおいて、把持機構部18は、外側シャフト12から露出することによって拡張し、心膜6の上から心臓2を把持している。この心臓用治療デバイス10Dは、心膜6の外表面に対する把持機構部18の固定を促進する固定促進機構54として、複数のアーム部30の間に設けられた複数の膜状弾性部材84を備える。これらの膜状弾性部材84は、例えば、ゴム材等の弾力的伸縮性をもつ素材により構成されており、把持機構部18を収縮させる方向に付勢する。
図14に示す心臓用治療デバイス10Eにおいて、把持機構部18は、外側シャフト12から露出することによって拡張し、心膜6の上から心臓2を把持している。この心臓用治療デバイス10Eは、心膜6の外表面に対する把持機構部18の固定を促進する固定促進機構54として、弾性変形可能な少なくとも1つの固定リングを有する固定促進機構86を備える。
具体的に、図14に示す固定促進機構86は、弾性的に拡径可能な先端側固定リング88(第1リング)及び基端側固定リング90(第2リング)と、先端側固定リング88及び基端側固定リング90を支持し把持機構部18及び外側シャフト12に対して軸方向に相対移動可能な支持部材92とを有する。
先端側固定リング88は、螺旋状(コイル状)に形成されており、支持部材92に固定されている。また、先端側固定リング88は、把持機構部18(複数のアーム部30)の先端側領域を1周以上取り巻いて、把持機構部18を締め付けるように構成されている。基端側固定リング90は、一部が開いたリング状(C字状)に形成されており、支持部材92に固定され、把持機構部18の基端側領域を締め付けるように構成されている。なお、基端側固定リング90は螺旋状に形成されてもよい。支持部材92は、外側シャフト12内に挿通されて心臓用治療デバイス10Eの基端側まで延在しており、ユーザにより軸方向に操作可能となっている。
先端側固定リング88及び基端側固定リング90は、外側シャフト12内に収納可能である。外側シャフト12内に先端側固定リング88が収納されているとき、先端側固定リング88は縮径している。外側シャフト12から把持機構部18を露出させて把持機構部18により心膜6の上から心臓2を把持した後、支持部材92を前進させると、先端側固定リング88及び基端側固定リング90が外側シャフト12から露出する。
外側シャフト12から露出する先端側固定リング88は、複数のアーム部30の外面に沿って先端側に移動しつつ、弾性変形を伴って拡径する。このため、先端側固定リング88は、把持機構部18を弾性的に締め付けて、心膜6に複数のアーム部30を押し付ける。これにより、把持機構部18を心臓2に対して良好に固定することができる。一方、基端側固定リング90は、支持部材92の前進に伴って、把持機構部18の基端側領域を締め付けるため、把持機構部18を心臓2に対して一層良好に固定することができる。
なお、先端側固定リング88及び基端側固定リング90は、リボン状(細長い板状)の長尺部材を螺旋状に巻いて形成されたものであってもよく、あるいは、コイル状の長尺部材を螺旋状に巻いて形成されたものであってもよい。図11に示す心臓用治療デバイス10Bにおいて、紐状部材56に代えて、図14に示す固定促進機構86が設けられてもよい。
図15に示すように、固定促進機構54の他の形態は、アーム部30の長手方向に沿って取り付けられた複数の吸盤94(吸着部材)を有していてもよい。この場合、これらの吸盤94は、図示しない真空発生機構に接続されており、真空発生機構により真空引きされることにより、心膜6に吸着する。なお、これらの吸盤94は、図13に示した膜状弾性部材84に取り付けられてもよい。
図16に示す心臓用治療デバイス10Fにおいて、把持機構部18cは、外側シャフト12から露出することによって拡張し、心膜6の上から心臓2を把持している。把持機構部18cは、レール状に構成された複数のアーム部95と、各アーム部95にスライド可能に支持されたスライド部材96と、各スライド部材96に可動に設けられた針22とを有する。
具体的に、各アーム部95は、互いに平行に延在する2本のレール部98と、レール部98の先端同士をつなぐ先端連結部100とを有する。スライド部材96は、アーム部95の2本のレール部98に跨るように配置され、アーム部95の長手方向に沿ってスライド可能に構成されている。針22は、スライド部材96に支持されており、スライド部材96と一体的に移動可能である。
針22は、アーム部95の先端方向を向く収納状態(図16)と、アーム部95及びスライド部材96から心臓2側に突出する突出状態(図17)とに動作可能に構成されている。各針22には、送給チューブ102が接続されている。送給チューブ102は、外側シャフト12内に挿通されている。送給チューブ102の基端部は、外側シャフト12の基端側で外部に導出されており、心筋再生材が充填された図示しない送給機構に接続可能となっている。
上記のように構成された心臓用治療デバイス10Fの使用においては、心臓用治療デバイス10Aを使用する場合と同様に、外側シャフト12から把持機構部18cを露出させることにより把持機構部18cを自己拡張させ、拡張した把持機構部18cにより心膜6の上から心臓2を把持する。次に、各アーム部95においてスライド部材96を移動し、所望の位置で針22を突出させることにより針22を心筋4に穿刺する。そして、送給チューブ102を介して針22へと心筋再生材を供給することにより、心筋再生材を心筋4に注入する。
このように、心臓用治療デバイス10Fによれば、把持機構部18cが、収納状態と突出状態とに動作可動に構成された針22を備えるため、心筋4への針22の穿刺をより迅速に行うことができ、手技時間の一層の短縮化が図られる。また、把持機構部18cはスライド部材96を備え、スライド部材96に針22が設けられているため、スライド部材96の可動範囲内において、心筋4への針22の穿刺位置を無段階で調整することができ、治療効果を一層高めることができる。
図18Aに示す医療用アクセスデバイス60Bにおいて、ポート部62aは、生体に対する固定安定化手段としての雄ネジ部104を有する。ポート部62aを生体(患者)の切開部に挿入する際、雄ネジ部104が切開部の組織に食い込むことにより、生体に対するポート部62aの取付け状態がより安定する。また、ポート部62aでは、保持ユニット68が軸方向に1つだけ設けられている。
保持ユニット68よりも先端側の内周部には、径方向内側に突出した縮径支持部106が設けられており、この縮径支持部106が設けられた箇所では、シース部64は、ポート部62aの略中心で支持される。従って、保持ユニット68を構成するネジ74の挿通孔66への突出長さを調整することで、縮径支持部106を支点として、ポート部62aに対してシース部64を傾斜させることができる。
また、保持ユニット68は、軸方向に3つ以上設けられてもよい。図18Bに示す医療用アクセスデバイス60Cにおいて、ポート部62bは、軸方向に配置された3つの保持ユニット68(68a〜68c)を有する。互いに隣接する保持ユニット68は、相対回転可能に接続されている。なお、図18Aのポート部62aと異なり、図18Bのポート部62bには、縮径支持部106が設けられていない。
図19に示す医療用アクセスデバイス60Dにおいて、ポート部62cは、シース部64を押圧する押圧部材72として、作動流体(空気、水、造影剤等)の給排に伴って拡張及び収縮可能なバルーン108を有する。筒状部材70には、周方向に間隔を置いて複数の流体ポート110が形成されているとともに、挿通孔66に複数のバルーン108が配置されている。
複数のバルーン108は個別に流体ポート110に接続されている。また、各流体ポート110には、流体供給機構112(例えば、手動式の送気ポンプ、流量、圧力制御可能なコンプレッサと電磁弁、送液ポンプ)が接続されている。このように、複数のバルーン108を有する保持ユニット68によれば、バルーン108の大きさを変えるだけで簡単に、ポート部62cに対するシース部64の角度を調整することができる。
図20Aに示すように、針22の外周面には、塞栓材として、膨潤可能な接着剤114がコーティングされていてもよい。図20Bのように、心膜6及び心筋4への針22の穿刺に伴って、心膜6における針22の貫通部分に接着剤114が入り込む。接着剤114は体液(血液等)との接触によって膨らむことで針22との接着力が弱くなり、針22から抜けやすい状態となる。また、接着剤114は、体液との接触によって膨らんだ際、針22よりも生体組織に対して高い接着性を有するものが用いられる。
このため、図20Cのように、心筋4及び心膜6から針22を抜去する際、接着剤114が針22から取れて心膜6の貫通部分に残されたままとなる。これにより、心膜6における針22に刺された箇所を閉塞することができる。このような接着剤114としては、例えば、キトサン−カテコール、アルギン酸−カテコール、ヒアルロン酸カテコール等の生分解性を有する物質が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、非生分解性の物質を用いてもよい。さらに、心膜の孔を一時的にふさげるものであってもよく、軟膏、ゲル等であってもよい
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
10A〜10F…心臓用治療デバイス 12…外側シャフト
14…駆動シャフト 18、18a〜18c…把持機構部
20…吸着機構 22…針
28…通路 30、80、95…アーム部
32…開口部 54、86…固定促進機構
60A〜60D…医療用アクセスデバイス
62、62a、62b、62c…ポート部 64…シース部
66…挿通孔
68、68a、68b、68c…保持ユニット
72…押圧部材 74…ネジ
96…スライド部材 108…バルーン
14…駆動シャフト 18、18a〜18c…把持機構部
20…吸着機構 22…針
28…通路 30、80、95…アーム部
32…開口部 54、86…固定促進機構
60A〜60D…医療用アクセスデバイス
62、62a、62b、62c…ポート部 64…シース部
66…挿通孔
68、68a、68b、68c…保持ユニット
72…押圧部材 74…ネジ
96…スライド部材 108…バルーン
Claims (10)
- 生体に固定可能であり、軸方向に貫通した挿通孔を有する中空筒状のポート部と、
前記ポート部よりも長尺であり、前記挿通孔に挿通可能であり、医療用デバイスが挿通可能な挿通路を内部に有するチューブ状に形成されたシース部と、を備え、
前記ポート部は、前記ポート部に対する前記シース部の角度を調整可能であり且つ調整した角度で前記シース部を固定できるように構成されている、
ことを特徴とする医療用アクセスデバイス。 - 請求項1記載の医療用アクセスデバイスにおいて、
前記ポート部は、前記挿通孔の中心から前記シース部の中心をずらした状態で前記シース部を保持することにより、前記ポート部に対して斜めに前記シース部を固定可能な少なくとも1つの保持ユニットを有する、
ことを特徴とする医療用アクセスデバイス。 - 請求項2記載の医療用アクセスデバイスにおいて、
前記保持ユニットは、前記ポート部の軸方向に複数配置されている、
ことを特徴とする医療用アクセスデバイス。 - 請求項2又は3記載の医療用アクセスデバイスにおいて、
前記保持ユニットは、前記挿通孔を形成する筒状部材と、前記筒状部材に設けられた複数の押圧部材とを有し、
前記複数の押圧部材は、前記筒状部材の内周面からの突出高さを調整可能であり、前記シース部の外側面を押圧可能に構成されている、
ことを特徴とする医療用アクセスデバイス。 - 請求項4記載の医療用アクセスデバイスにおいて、
前記押圧部材は、ネジである、
ことを特徴とする医療用アクセスデバイス。 - 請求項4記載の医療用アクセスデバイスにおいて、
前記押圧部材は、バルーンである、
ことを特徴とする医療用アクセスデバイス。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載の医療用アクセスデバイスにおいて、
前記シース部は、湾曲形状に変形可能であり且つ変形状態を保持可能な可変形部を先端領域に有する、
ことを特徴とする医療用アクセスデバイス。 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載の医療用アクセスデバイスにおいて、
患者に取付け可能なアタッチメントをさらに備え、
前記アタッチメントは、前記患者に装着して固定可能に構成された固定部と、前記固定部から突出し前記ポート部が嵌合可能な中空状の嵌合部とを有する、
ことを特徴とする医療用アクセスデバイス。 - 請求項8記載の医療用アクセスデバイスにおいて、
前記嵌合部は、前記固定部から傾斜して突出している、
ことを特徴とする医療用アクセスデバイス。 - 請求項1〜9のいずれか1項に記載の医療用アクセスデバイスにおいて、
前記医療用デバイスは、心臓用治療デバイスである、
ことを特徴とする医療用アクセスデバイス。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016006427A JP2017124109A (ja) | 2016-01-15 | 2016-01-15 | 医療用アクセスデバイス |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016006427A JP2017124109A (ja) | 2016-01-15 | 2016-01-15 | 医療用アクセスデバイス |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017124109A true JP2017124109A (ja) | 2017-07-20 |
Family
ID=59363384
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016006427A Pending JP2017124109A (ja) | 2016-01-15 | 2016-01-15 | 医療用アクセスデバイス |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2017124109A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN111163703A (zh) * | 2017-10-12 | 2020-05-15 | 克里斯托夫梅斯克两合公司 | 心囊夹持器和用于临时心脏辅助系统的植入的方法 |
-
2016
- 2016-01-15 JP JP2016006427A patent/JP2017124109A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN111163703A (zh) * | 2017-10-12 | 2020-05-15 | 克里斯托夫梅斯克两合公司 | 心囊夹持器和用于临时心脏辅助系统的植入的方法 |
JP2020536673A (ja) * | 2017-10-12 | 2020-12-17 | クリストフ ミートケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト | 心膜把持装置、及び、一時的な心臓補助システムの埋め込み方法 |
JP7237953B2 (ja) | 2017-10-12 | 2023-03-13 | クリストフ ミートケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト | 心膜把持装置 |
US11696779B2 (en) | 2017-10-12 | 2023-07-11 | Christoph Miethke Gmbh & Co Kg | Pericardial gripper and method of implanting a temporary cardiac assist system |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP3007651B1 (en) | Mitral valve spacer | |
US9833316B2 (en) | Trans-apical implant systems, implants and methods | |
US20220096255A1 (en) | Anatomic needle system | |
US7744527B2 (en) | Surgical coring system | |
US20100010520A1 (en) | Tissue fastener | |
EP1628702A1 (en) | Anchoring screw device | |
US20110152915A1 (en) | Hemostatic stabilization system | |
JP2017124109A (ja) | 医療用アクセスデバイス | |
CN109310439A (zh) | 用于暂时封闭血管的非植入装置及其用法 | |
WO2017122432A1 (ja) | 心臓用治療デバイス及び心臓治療方法 | |
CN217525243U (zh) | 一种脑组织自扩张器 | |
US20230102684A1 (en) | Method and apparatus for treating tension pneumothorax using a rapid deployment chest port | |
JP2024033299A (ja) | 医療デバイス |