図1は、本実施形態の一眼レフデジタルカメラ1を示す斜視図である。また、図2は、本実施形態のカメラ1を示す要部構成図である。本実施形態のデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラ本体2とレンズ鏡筒3から構成され、これらカメラ本体2とレンズ鏡筒3とが着脱可能に結合されている。
レンズ鏡筒3は、カメラ本体2に着脱可能な交換レンズである。図2に示すように、レンズ鏡筒3には、レンズ31,32,33,34および絞り35を含む撮影光学系が内蔵されている。
レンズ33は、フォーカスレンズであり、光軸L1方向に移動することで、撮影光学系の焦点距離を調節可能となっている。フォーカスレンズ33は、レンズ鏡筒3の光軸L1に沿って移動可能に設けられ、フォーカスレンズ用エンコーダ332によってその位置が検出されつつフォーカスレンズ駆動モータ331によってその位置が調節される。
フォーカスレンズ駆動モータ331は、たとえば超音波モータであり、レンズ制御部36から出力される電気信号(パルス)に応じて、フォーカスレンズ33を駆動する。具体的には、フォーカスレンズ駆動モータ331によるフォーカスレンズ33の駆動速度は、パルス/秒で表され、単位時間当たりのパルス数が多いほど、フォーカスレンズ33の駆動速度は速くなる。なお、本実施形態では、カメラ本体2のカメラ制御部21により、フォーカスレンズ33の駆動指示速度(単位:パルス/秒)がレンズ鏡筒3に送信され、レンズ制御部36は、カメラ本体2から送信された駆動指示速度(単位:パルス/秒)に応じたパルス信号を、フォーカスレンズ駆動モータ331に出力することで、フォーカスレンズ33を、カメラ本体2から送信された駆動指示速度(単位:パルス/秒)で駆動させる。
また、レンズ32は、ズームレンズであり、光軸L1方向に移動することで、撮影光学系の焦点距離を調節可能となっている。ズームレンズ32も、上述したフォーカスレンズ33と同様に、ズームレンズ用エンコーダ322によってその位置が検出されつつズームレンズ駆動モータ321によってその位置が調節される。ズームレンズ32の位置は、操作部28に設けられたズームボタンを操作することにより、あるいは、カメラ鏡筒3に設けられたズーム環(不図示)を操作することにより調節される。
絞り35は、上記撮影光学系を通過して撮像素子22に至る光束の光量を制限するとともにボケ量を調整するために、光軸L1を中心にした開口径が調節可能に構成されている。絞り35による開口径の調節は、たとえば自動露出モードにおいて演算された適切な開口径が、カメラ制御部21からレンズ制御部36を介して送出されることにより行われる。また、カメラ本体2に設けられた操作部28によるマニュアル操作により、設定された開口径がカメラ制御部21からレンズ制御部36に入力される。絞り35の開口径は図示しない絞り開口センサにより検出され、レンズ制御部36で現在の開口径が認識される。
レンズメモリ37は、像面移動係数Kを記憶している。像面移動係数Kとは、フォーカスレンズ33の駆動量と像面の移動量との対応関係を示す値であり、たとえば、フォーカスレンズ33の駆動量と像面の移動量との比である。本実施例において、像面移動係数は、たとえば、下記式(1)により求められ、像面移動係数Kが小さくなるほど、フォーカスレンズ33の駆動に伴う像面の移動量は大きくなる。
像面移動係数K=(フォーカスレンズ33の駆動量/像面の移動量) ・・・(1)
また、本実施形態のカメラ1においては、フォーカスレンズ33の駆動量が同じ場合であっても、フォーカスレンズ33のレンズ位置によっては、像面の移動量が異なるものとなる。同様に、フォーカスレンズ33の駆動量が同じ場合であっても、ズームレンズ32のレンズ位置、すなわち、焦点距離によっては、像面の移動量が異なるものとなる。すなわち、像面移動係数Kは、フォーカスレンズ33の光軸方向におけるレンズ位置、さらには、ズームレンズ32の光軸方向におけるレンズ位置に応じて変化するものであり、本実施形態において、レンズ制御部36は、フォーカスレンズ33のレンズ位置ごと、およびズームレンズ32のレンズ位置ごとに、像面移動係数Kを記憶している。
また、像面移動係数Kは、たとえば、像面移動係数K=(像面の移動量/フォーカスレンズ33の駆動量)のように定義をすることもできる。この場合、像面移動係数Kが大きくなるほど、フォーカスレンズ33の駆動に伴う像面の移動量は大きくなる。
ここで、図3に、ズームレンズ32のレンズ位置(焦点距離)およびフォーカスレンズ33のレンズ位置(撮影距離)と、像面移動係数Kとの関係を示すテーブルを示す。図3に示すテーブルにおいては、ズームレンズ32の駆動領域を、ワイド端からテレ端に向かって順に、「f1」〜「f9」の9つの領域に分けるとともに、フォーカスレンズ33の駆動領域を至近端から無限遠端に向かって順に、「D1」〜「D9」の9つの領域に分けて、各レンズ位置に対応する像面移動係数Kが記憶されている。たとえば、ズームレンズ32のレンズ位置(焦点距離)が「f1」にあり、フォーカスレンズ33のレンズ位置(撮影距離)が「D1」にある場合に、像面移動係数Kは「K11」となる。なお、 図3に示すテーブルは、各レンズの駆動領域をそれぞれ9つの領域に分けるような態様を例示したが、その数は特に限定されず、任意に設定することができる。
次に、図3を用いて、最小像面移動係数Kminおよび最大像面移動係数Kmaxについて説明する。
最小像面移動係数Kminとは、像面移動係数Kの最小値に対応する値である。例えば、 図3において、「K11」=「100」、「K12」=「200」、「K13」=「300」、「K14」=「400」、「K15」=「500」、「K16」=「600」、「K17」=「700」、「K18」=「800」、「K19」=「900」であったとき、最小の値である「K11」=「100」が最小像面移動係数Kminであり、最大の値である「K19」=「900」が最大像面移動係数Kmaxである。
最小像面移動係数Kminは、通常、ズームレンズ32の現在のレンズ位置に応じて変化する。また、最小像面移動係数Kminは、ズームレンズ32の現在のレンズ位置が変化しなければ、通常、フォーカスレンズ33の現在のレンズ位置が変化しても一定値(固定値)である。つまり、最小像面移動係数Kminは、通常、ズームレンズ32のレンズ位置(焦点距離)に応じて定まる固定値(一定値)であって、フォーカスレンズ33のレンズ位置(撮影距離)には依存しない値である。
たとえば、図3において、灰色で示した「K11」、「K21」、「K31」、「K41」、「K52」、「K62」、「K72」、「K82」、「K91」は、ズームレンズ32の各レンズ位置(焦点距離)における、像面移動係数Kのうち、最小となる値を示す最小像面移動係数Kminである。すなわち、ズームレンズ32のレンズ位置(焦点距離)が「f1」にある場合には、「D1」〜「D9」のうち、フォーカスレンズ33のレンズ位置(撮影距離)が「D1」にある場合の像面移動係数Kである「K11」が、最小の値を示す最小像面移動係数Kminとなる。したがって、フォーカスレンズ33のレンズ位置(撮影距離)が「D1」にある場合の像面移動係数Kである「K11」は、フォーカスレンズ33のレンズ位置(撮影距離)が「D1」〜「D9」にある場合の像面移動係数Kである「K11」〜「K19」の中で、最も小さな値を示すものとなる。また、同様に、ズームレンズ32のレンズ位置(焦点距離)が「f2」である場合も、フォーカスレンズ33のレンズ位置(撮影距離)が「D1」にある場合の像面移動係数Kである「K21」が、「D1」〜「D9」にある場合の像面移動係数Kである「K21」〜「K29」の中で、最も小さな値を示すものとなる。すなわち、「K21」が最小像面移動係数Kminとなる。以下、同様に、ズームレンズ32の各レンズ位置(焦点距離)が「f3」〜「f9」である場合でも、灰色で示した「K31」、「K41」、「K52」、「K62」、「K72」、「K82」、「K91」が、それぞれ最小像面移動係数Kminとなる。
同様に、最大像面移動係数Kmaxとは、像面移動係数Kの最大値に対応する値である。最大像面移動係数Kmaxは、通常、ズームレンズ32の現在のレンズ位置に応じて変化する。また、最大像面移動係数Kmaxは、通常、ズームレンズ32の現在のレンズ位置が変化しなければフォーカスレンズ33の現在のレンズ位置が変化しても一定値(固定値)である。たとえば、図3において、ハッチングを施して示した「K19」、「K29」、「K39」、「K49」、「K59」、「K69」、「K79」、「K89」、「K99」は、ズームレンズ32の各レンズ位置(焦点距離)における、像面移動係数Kのうち、最大となる値を示す最大像面移動係数Kmaxである。
このように、レンズメモリ37は、図3に示すように、ズームレンズ32のレンズ位置(焦点距離)、およびフォーカスレンズ33のレンズ位置(撮影距離)に対応する像面移動係数Kと、ズームレンズ32のレンズ位置(焦点距離)ごとに、像面移動係数Kのうち最小となる値を示す最小像面移動係数Kminと、ズームレンズ32のレンズ位置(焦点距離)ごとに、像面移動係数Kのうち最大となる値を示す最大像面移動係数Kmaxとを記憶している。
また、レンズメモリ37は、像面移動係数Kのうち最小となる値を示す最小像面移動係数Kminの代わりに、最小像面移動係数Kminの近傍の値である最小像面移動係数Kmin'をレンズメモリ37に記憶していてもよい。たとえば、最小像面移動係数Kminの値が102.345という桁数の大きい数字であった場合、102.345の近傍の値である100を最小像面移動係数Kmin'として記憶することができる。レンズメモリ37に100(最小像面移動係数Kmin')を記憶する場合、レンズメモリ37に102.345(最小像面移動係数Kmin)を記憶する場合と比較して、メモリの記憶容量を節約できるとともに、カメラボディ2への送信時に送信データの容量を抑えることができるからである。
また、たとえば、最小像面移動係数Kminの値が100という数字であった場合、後述するガタ詰め制御、静音制御(クリップ動作)、レンズ速度制御等の制御の安定性を考慮して、100の近傍の値である98を最小像面移動係数Kmin'として記憶することができる。たとえば、制御の安定性を考慮する場合には、実際の値(最小像面移動係数Kmin)の80%〜120%の範囲で最小像面移動係数Kmin'を設定することが好ましい。
一方、カメラ本体2は、被写体からの光束を撮像素子22、ファインダ235、測光センサ237および焦点検出モジュール261へ導くためのミラー系220を備える。このミラー系220は、回転軸223を中心にして被写体の観察位置と撮像位置との間で所定角度だけ回転するクイックリターンミラー221と、このクイックリターンミラー221に軸支されてクイックリターンミラー221の回動に合わせて回転するサブミラー222とを備える。図1においては、ミラー系220が被写体の観察位置にある状態を実線で示し、被写体の撮像位置にある状態を二点鎖線で示す。
ミラー系220は、被写体の観察位置にある状態では光軸L1の光路上に挿入される一方で、被写体の撮像位置にある状態では光軸L1の光路から退避するように回転する。
クイックリターンミラー221はハーフミラーで構成され、被写体の観察位置にある状態では、被写体からの光束(光軸L1)の一部の光束(光軸L2,L3)を当該クイックリターンミラー221で反射してファインダ235および測光センサ237に導き、一部の光束(光軸L4)を透過させてサブミラー222へ導く。これに対して、サブミラー222は全反射ミラーで構成され、クイックリターンミラー221を透過した光束(光軸L4)を焦点検出モジュール261へ導く。
したがって、ミラー系220が観察位置にある場合は、被写体からの光束(光軸L1)はファインダ235、測光センサ237および焦点検出モジュール261へ導かれ、撮影者により被写体が観察されるとともに、露出演算やフォーカスレンズ33の焦点調節状態の検出が実行される。そして、撮影者がレリーズボタンを全押しするとミラー系220が撮影位置に回動し、被写体からの光束(光軸L1)は全て撮像素子22へ導かれ、撮影した画像データをメモリ24に保存する。
クイックリターンミラー221で反射された被写体からの光束(光軸L2)は、撮像素子22と光学的に等価な面に配置された焦点板231に結像し、ペンタプリズム233と接眼レンズ234とを介して観察可能になっている。このとき、透過型液晶表示器232は、焦点板231上の被写体像に焦点検出エリアマークなどを重畳して表示するとともに、被写体像外のエリアにシャッター速度、絞り値、撮影枚数などの撮影に関する情報を表示する。これにより、撮影者は、撮影準備状態において、ファインダ235を通して被写体およびその背景ならびに撮影関連情報などを観察することができる。
測光センサ237は、二次元カラーCCDイメージセンサなどで構成され、撮影の際の露出値を演算するため、撮影画面を複数の領域に分割して領域ごとの輝度に応じた測光信号を出力する。測光センサ237で検出された信号はカメラ制御部21へ出力され、自動露出制御に用いられる。
撮像素子22は、カメラ本体2の、被写体からの光束の光軸L1上であって、レンズ31,32,33,34を含む撮影光学系の予定焦点面に設けられ、その前面にシャッター23が設けられている。この撮像素子22は、複数の光電変換素子が二次元に配置されたものであって、二次元CCDイメージセンサ、MOSセンサまたはCIDなどのデバイスから構成することができる。撮像素子22で光電変換された画像信号は、カメラ制御部21で画像処理されたのち、記録媒体であるカメラメモリ24に記録される。なお、カメラメモリ24は着脱可能なカード型メモリや内蔵型メモリの何れをも用いることができる。
また、カメラ制御部21は、撮像素子22から読み出した画素データに基づき、コントラスト検出方式による撮影光学系の焦点調節状態の検出(以下、適宜、「コントラストAF」とする。)を行う。たとえば、カメラ制御部21は、撮像素子22の出力を読み出し、読み出した出力に基づき、焦点評価値の演算を行う。この焦点評価値は、たとえば撮像素子22からの出力の高周波成分を、高周波透過フィルタを用いて抽出することで求めることができる。また、遮断周波数が異なる2つの高周波透過フィルタを用いて高周波成分を抽出することでも求めることができる。
そして、カメラ制御部21は、レンズ制御部36に駆動信号を送出してフォーカスレンズ33を所定のサンプリング間隔(距離)で駆動させ、それぞれの位置における焦点評価値を求め、該焦点評価値が最大となるフォーカスレンズ33の位置を合焦位置として求める、コントラスト検出方式による焦点検出を実行する。なお、この合焦位置は、たとえば、フォーカスレンズ33を駆動させながら焦点評価値を算出した場合に、焦点評価値が、2回上昇した後、さらに、2回下降して推移した場合に、これらの焦点評価値を用いて、内挿法などの演算を行うことで求めることができる。
コントラスト検出方式による焦点検出では、焦点評価値のサンプリング間隔は、フォーカスレンズ33の駆動速度が速くなるほど大きくなり、フォーカスレンズ33の駆動速度が所定速度を越えた場合には、焦点評価値のサンプリング間隔が大きくなり過ぎてしまい、合焦位置を適切に検出することができなくなってしまう。これは、焦点評価値のサンプリング間隔が大きくなるほど、合焦位置のばらつきが大きくなり合焦精度が低下する場合があるためである。そのため、カメラ制御部21は、フォーカスレンズ33を駆動させた際の像面の移動速度が、合焦位置を適切に検出することができる速度となるように、フォーカスレンズ33を駆動させる。たとえば、カメラ制御部21は、焦点評価値を検出するためにフォーカスレンズ33を駆動させる探索制御において、合焦位置を適切に検出することができるサンプリング間隔の像面移動速度のうち最大の像面駆動速度となるように、フォーカスレンズ33を駆動させる。探索制御とは、たとえば、ウォブリング、所定位置の近傍のみを探索する近傍サーチ(近傍スキャン)、フォーカスレンズ33の全駆動範囲を探索する全域サーチ(全域スキャン)を含む。
また、カメラ制御部21は、レリーズスイッチの半押しをトリガとして探索制御を開始する場合にはフォーカスレンズ33を高速で駆動させ、レリーズスイッチの半押し以外の条件をトリガとして探索制御を開始する場合にはフォーカスレンズ33を低速で駆動させてもよい。このように制御することにより、レリーズスイッチの半押しがされたときに高速にコントラストAFを行い、レリーズスイッチの半押しがされていないときにはスルー画の見栄えが好適なコントラストAFを行うことができるからである。
さらに、カメラ制御部21は、静止画撮影モードにおける探索制御において、フォーカスレンズ33を高速で駆動させ、動画撮影モードにおける探索制御において、フォーカスレンズ33を低速で駆動させるように制御してもよい。このように制御することにより、静止画撮影モードでは高速にコントラストAFを行い、動画撮影モードでは動画の見栄えが好適なコントラストAFを行うことができるからである。
また、静止画撮影モードおよび動画撮影モードの少なくとも一方において、スポーツ撮影モードにおいては高速にコントラストAFを行い、風景撮影モードにおいては低速にコントラストAFを行ってもよい。さらに、焦点距離、撮影距離、絞り値等に応じて、探索制御におけるフォーカスレンズ33の駆動速度を変化させてもよい。
また、本実施形態では、位相差検出方式による焦点検出を行うこともできる。具体的には、カメラ本体2は、焦点検出モジュール261を備えており、焦点検出モジュール261は、撮像光学系の予定焦点面近傍に配置されたマイクロレンズと、このマイクロレンズに対して配置された光電変換素子とを有する画素が複数配列された、一対のラインセンサ(不図示)を有している。そして、フォーカスレンズ33の射出瞳の異なる一対の領域を通る一対の光束を、一対のラインセンサに配列された各画素で受光することで、一対の像信号を取得することができる。そして、一対のラインセンサで取得した一対の像信号の位相ずれを、周知の相関演算によって求めることにより焦点調節状態を検出する位相差検出方式による焦点検出を行うことができる。
操作部28は、シャッターレリーズボタン、動画撮影開始スイッチなどの撮影者がカメラ1の各種動作モードを設定するための入力スイッチであり、静止画撮影モード/動画撮影モードの切換、オートフォーカスモード/マニュアルフォーカスモードの切換、さらには、オートフォーカスモードの中でも、AF−Sモード/AF−Fモードの切換が行えるようになっている。この操作部28により設定された各種モードはカメラ制御部21へ送出され、当該カメラ制御部21によりカメラ1全体の動作が制御される。また、シャッターレリーズボタンは、ボタンの半押しでONとなる第1スイッチSW1と、ボタンの全押しでONとなる第2スイッチSW2とを含む。
ここで、AF−Sモードとは、シャッターレリーズボタンの半押しがされた場合に、焦点検出結果に基づき、フォーカスレンズ33を駆動させた後は、一度調節したフォーカスレンズ33の位置を固定し、そのフォーカスレンズ位置で撮影するモードである。なお、AF−Sモードは、静止画撮影に適したモードであり、通常、静止画撮影を行う際に選択される。また、AF−Fモードとは、シャッターレリーズボタンの操作の有無に関係なく、焦点検出結果に基づきフォーカスレンズ33を駆動し、その後、焦点状態の検出を繰り返し行い、焦点状態が変化した場合には、フォーカスレンズ33のスキャン駆動を行なうモードである。なお、AF−Fモードは、動画撮影に適したモードであり、通常、動画撮影を行なう際に選択される。
また、本実施形態においては、オートフォーカスモードを切換えるためのスイッチとして、ワンショットモード/コンティニュアスモードを切換えるためのスイッチを備えているような構成としてもよい。そして、この場合においては、撮影者によりワンショットモードが選択された場合には、AF−Sモードに設定され、また、撮影者によりコンティニュアスモードが選択された場合には、AF−Fモードに設定されるような構成とすることができる。
次いで、カメラ本体2とレンズ鏡筒3との間のデータの通信方法について説明する。
カメラ本体2には、レンズ鏡筒3が着脱可能に取り付けられるボディ側マウント部201が設けられている。また、図1に示すように、ボディ側マウント部201の近傍(ボディ側マウント部201の内面側)の位置には、ボディ側マウント部201の内面側に突出する接続部202が設けられている。この接続部202には複数の電気接点が設けられている。
一方、レンズ鏡筒3は、カメラ本体2に着脱可能な交換レンズであり、レンズ鏡筒3には、カメラ本体2に着脱可能に取り付けられるレンズ側マウント部301が設けられている。また、図1に示すように、レンズ側マウント部301の近傍(レンズ側マウント部301の内面側)の位置には、レンズ側マウント部301の内面側に突出する接続部302が設けられている。この接続部302には複数の電気接点が設けられている。
そして、カメラ本体2にレンズ鏡筒3が装着されると、ボディ側マウント部201に設けられた接続部202の電気接点と、レンズ側マウント部301に設けられた接続部302の電気接点とが、電気的かつ物理的に接続される。これにより、接続部202,302を介して、カメラ本体2からレンズ鏡筒3への電力供給や、カメラ本体2とレンズ鏡筒3とのデータ通信が可能となる。
図4は接続部202,302の詳細を示す模式図である。なお、図4において接続部202がボディ側マウント部201の右側に配置されているのは、実際のマウント構造に倣ったものである。すなわち、本実施形態の接続部202は、ボディ側マウント部201のマウント面よりも奥まった場所(図4においてボディ側マウント部201よりも右側の場所)に配置されている。同様に、接続部302がレンズ側マウント部301の右側に配置されているのは、本実施形態の接続部302がレンズ側マウント部301のマウント面よりも突出した場所に配置されていることを表している。接続部202と接続部302とがこのように配置されることで、ボディ側マウント部201のマウント面とレンズ側マウント部301のマウント面とを接触させて、カメラ本体2とレンズ鏡筒3とをマウント結合させた場合に、接続部202と接続部302とが接続され、これにより、両方の接続部202,302に設けられている電気接点同士が接続する。
図4に示すように、接続部202にはBP1〜BP12の12個の電気接点が存在する。またレンズ3側の接続部302には、カメラ本体2側の12個の電気接点にそれぞれ対応するLP1〜LP12の12個の電気接点が存在する。
電気接点BP1および電気接点BP2は、カメラ本体2内の第1電源回路230に接続されている。第1電源回路230は、電気接点BP1および電気接点LP1を介して、レンズ鏡筒3内の各部(ただし、レンズ駆動モータ321,331などの消費電力が比較的大きい回路を除く)に動作電圧を供給する。電気接点BP1および電気接点LP1を介して、第1電源回路230により供給される電圧値は、特に限定されず、たとえば3〜4Vの電圧値(標準的には、この電圧幅の中間にある3.5V近傍の電圧値)とすることができる。この場合、カメラ本体側2からレンズ鏡筒側3に供給される電流値は、電源オン状態において、約数10mA〜数100mAの範囲内の電流値となる。また、電気接点BP2および電気接点LP2は、電気接点BP1および電気接点LP1を介して供給される上記動作電圧に対応する接地端子である。
電気接点BP3〜BP6は、カメラ側第1通信部291に接続されており、これら電気接点BP3〜BP6に対応して、電気接点LP3〜LP6が、レンズ側第1通信部381に接続されている。そして、カメラ側第1通信部291とレンズ側第1通信部381とは、これらの電気接点を用いて互いに信号の送受信を行う。なお、カメラ側第1通信部291とレンズ側第1通信部381とが行う通信の内容については、後に詳述する。
電気接点BP7〜BP10は、カメラ側第2通信部292に接続されており、これら電気接点BP7〜BP10に対応して、電気接点LP7〜LP10が、レンズ側第2通信部382に接続されている。そして、カメラ側第2通信部292とレンズ側第2通信部382とは、これらの電気接点を用いて互いに信号の送受信を行う。なお、カメラ側第2通信部292とレンズ側第2通信部382とが行う通信の内容については、後に詳述する。
電気接点BP11および電気接点BP12は、カメラ本体2内の第2電源回路240に接続されている。第2電源回路240は、電気接点BP11および電気接点LP11を介して、レンズ駆動モータ321,331などの消費電力が比較的大きい回路に動作電圧を供給する。第2電源回路230により供給される電圧値は、特に限定されないが、第2電源回路240により供給される電圧値の最大値は、第1電源回路230により供給される電圧値の最大値の数倍程度とすることができる。また、この場合、第2電源回路240からレンズ鏡筒3側に供給される電流値は、電源オン状態において、約数10mA〜数Aの範囲内の電流値となる。また、電気接点BP12および電気接点LP12は、電気接点BP11および電気接点LP11を介して供給される上記動作電圧に対応する接地端子である。
なお、図4に示すカメラ本体2側の第1通信部291および第2通信部292は、図1に示すカメラ送受信部29を構成し、図4に示すレンズ鏡筒3側の第1通信部381および第2通信部382は、図1に示すレンズ送受信部38を構成する。
次に、カメラ側第1通信部291とレンズ側第1通信部381との通信(以下、コマンドデータ通信という)について説明する。レンズ制御部36は、電気接点BP3およびLP3から構成される信号線CLKと、電気接点BP4およびLP4から構成される信号線BDATと、電気接点BP5およびLP5から構成される信号線LDATと、電気接点BP6およびLP6から構成される信号線RDYとを介して、カメラ側第1通信部291からレンズ側第1通信部381への制御データの送信と、レンズ側第1通信部381からカメラ側第1通信部291への応答データの送信とを、並行して、所定の周期(たとえば、16ミリ秒間隔)で行う、コマンドデータ通信を行う。
図5は、コマンドデータ通信の一例を示すタイミングチャートである。カメラ制御部21およびカメラ側第1通信部291は、コマンドデータ通信の開始時(T1)に、まず、信号線RDYの信号レベルを確認する。ここで、信号線RDYの信号レベルはレンズ側第1通信部381の通信可否を表しており、通信不可の場合には、レンズ制御部36およびレンズ側第1通信部381により、H(High)レベルの信号が出力される。カメラ側第1通信部291は、信号線RDYがHレベルである場合には、レンズ鏡筒3との通信を行わず、または、通信中である場合にも、次の処理を実行しない。
一方、信号線RDYがL(LOW)レベルである場合、カメラ制御部21およびカメラ側第1通信部291は、信号線CLKを用いて、クロック信号401をレンズ側第1通信部291に送信する。また、カメラ制御部21およびカメラ側第1通信部291は、このクロック信号401に同期して、信号線BDATを用いて、制御データであるカメラ側コマンドパケット信号402をレンズ側第1通信部291に送信する。また、クロック信号401が出力されると、レンズ制御部36およびレンズ側第1通信部381は、このクロック信号401に同期して、信号線LDATを用いて、応答データであるレンズ側コマンドパケット信号403を送信する。
レンズ制御部36およびレンズ側第1通信部291は、レンズ側コマンドパケット信号403の送信完了に応じて、信号線RDYの信号レベルをLレベルからHレベルに変更する(T2)。そして、レンズ制御部36は、時刻T2までに受信したボディ側コマンドパケット信号402の内容に応じて、第1制御処理404を開始する。
たとえば、受信したボディ側コマンドパケット信号402が、レンズ鏡筒3側の特定のデータを要求する内容であった場合、レンズ制御部36は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402の内容を解析するとともに、要求された特定データを生成する処理を実行する。さらに、レンズ制御部36は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402に含まれているチェックサムデータを用いて、コマンドパケット信号402の通信にエラーがないか否かをデータバイト数から簡易的にチェックする通信エラーチェック処理をも実行する。この第1制御処理404で生成された特定データの信号は、レンズ側データパケット信号407としてカメラ本体2側に出力される(T3)。なお、この場合においてコマンドパケット信号402の後でカメラ本体2側から出力されるカメラ側データパケット信号406は、レンズ側にとっては特に意味をなさないダミーデータ (チェックサムデータは含む)となっている。この場合には、レンズ制御部36は、第2制御処理408として、カメラ側データパケット信号406に含まれるチェックサムデータを用いた、上述の如き通信エラーチェック処理を実行する(T4)。
また、たとえば、カメラ側コマンドパケット信号402が、フォーカスレンズ33の駆動指示であり、カメラ側データパケット信号406がフォーカスレンズ33の駆動速度および駆動量であった場合、レンズ制御部36は、第1制御処理404として、コマンドパケット信号402の内容を解析するとともに、その内容を理解したことを表す確認信号を生成する(T2)。この第1制御処理404で生成された確認信号は、レンズ側データパケット信号407としてカメラ本体2に出力される(T3)。またレンズ制御部36は、第2制御処理408として、カメラ側データパケット信号406の内容の解析を実行するとともに、カメラ側データパケット信号406に含まれるチェックサムデータを用いて通信エラーチェック処理を実行する(T4)。そして、第2制御処理408の完了後、レンズ制御部36は、受信したカメラ側コマンドパケット信号406、すなわち、フォーカスレンズ33の駆動速度および駆動量に基づいて、フォーカスレンズ駆動モータ331を駆動させることで、フォーカスレンズ33を、受信した駆動速度で、受信した駆動量だけ駆動させる(T5)。
また、レンズ制御部36は、第2制御処理408が完了すると、レンズ側第1通信部291に第2制御処理408の完了を通知する。これにより、レンズ制御部36は、信号線RDYにLレベルの信号を出力する(T5)。
上述した時刻T1〜T5の間に行われた通信が、1回のコマンドデータ通信である。上述のように、1回のコマンドデータ通信では、カメラ制御部21およびカメラ側第1通信部291により、カメラ側コマンドパケット信号402およびカメラ側テータパケット信号406がそれぞれ1つずつ送信される。このように、本実施形態では、カメラ本体2からレンズ鏡筒3に送信される制御データは、処理の都合上2つに分割されて送信されているが、カメラ側コマンドパケット信号402およびカメラ側データパケット信号406は2つ合わせて1つの制御データを構成するものである。
同様に、1回のコマンドデータ通信では、レンズ制御部36およびレンズ側第1通信部381によりレンズ側コマンドパケット信号403およびレンズ側データパケット信号407がそれぞれ1つずつ送信される。このように、レンズ鏡筒3からカメラ本体2に送信される応答データも2つに分割されているが、レンズ側コマンドパケット信号403とレンズ側データパケット信号407とも2つ合わせて1つの応答データを構成する。
次に、カメラ側第2通信部292とレンズ側第2通信部382との通信(以下、ホットライン通信という)について説明する。図4に戻り、レンズ制御部36は、電気接点BP7およびLP7から構成される信号線HREQ、電気接点BP8およびLP8から構成される信号線HANS、電気接点BP9およびLP9から構成される信号線HCLK、電気接点BP10およびLP10から構成される信号線HDATを介して、コマンドデータ通信よりも短い周期(たとえば1ミリ秒間隔)で通信を行うホットライン通信を行う。
たとえば、本実施形態では、ホットライン通信により、レンズ鏡筒3のレンズ情報が、レンズ鏡筒3からカメラ本体2に送信される。なお、ホットライン通信により送信されるレンズ情報には、フォーカスレンズ33のレンズ位置、ズームレンズ32のレンズ位置、現在位置像面移動係数Kcur、最小像面移動係数Kmin、および最大像面移動係数Kmaxが含まれる。ここで、現在位置像面移動係数Kcurとは、現在のズームレンズ32のレンズ位置(焦点距離)および現在のフォーカスレンズ33のレンズ位置(撮影距離)に対応した像面移動係数Kである。本実施形態において、レンズ制御部36は、レンズメモリ37に記憶された、レンズ位置(ズームレンズ位置およびフォーカスレンズ位置)と像面移動係数Kとの関係を示すテーブルを参照することで、ズームレンズ32の現在のレンズ位置およびフォーカスレンズ33の現在のレンズ位置に対応する現在位置像面移動係数Kcurを求めることができる。たとえば、図3に示す例において、ズームレンズ32のレンズ位置(焦点距離)が「f1」にあり、フォーカスレンズ33のレンズ位置(撮影距離)が「D4」にある場合、レンズ制御部36は、ホットライン通信により、現在位置像面移動係数Kcurとして「K14」を、最小像面移動係数Kminとして「K11」を、最大像面移動係数Kmaxとして「K19」をカメラ制御部21に送信する。
ここで、図6は、ホットライン通信の一例を示すタイミングチャートである。図6(a)は、ホットライン通信が所定周期Tn毎に繰り返し実行されている様子を示す図である。また、繰り返し実行されるホットライン通信のうち、ある1回の通信の期間Txを拡大した様子を図6(b)に示す。以下、図6(b)のタイミングチャートに基づいて、フォーカスレンズ33のレンズ位置をホットライン通信で通信する場面を説明する。
カメラ制御部21およびカメラ側第2通信部292は、まず、ホットライン通信による通信を開始するために、信号線HREQにLレベルの信号を出力する(T6)。そして、レンズ側第2通信部382は、この信号が電気接点LP7に入力されたことを、レンズ制御部36に通知する。レンズ制御部36は、この通知に応じて、レンズ位置データを生成する生成処理501の実行を開始する。生成処理501とは、レンズ制御部36がフォーカスレンズ用エンコーダ332にフォーカスレンズ33の位置を検出させ、検出結果を表すレンズ位置データを生成する処理である。
レンズ制御部36が生成処理501を実行完了すると、レンズ制御部36およびレンズ側第2通信部382は信号線HANSにLレベルの信号を出力する(T7)。そして、カメラ制御部21およびカメラ側第2通信部292は、この信号が電気接点BP8に入力されると、電気接点BP9から信号線HCLKに、クロック信号502を出力する。
レンズ制御部36およびレンズ側第2通信部382は、このクロック信号502に同期して、電気接点LP10から信号線HDATに、レンズ位置データを表すレンズ位置データ信号503を出力する。そして、レンズ位置データ信号503の送信が完了すると、レンズ制御部36およびレンズ側第2通信部382は電気接点LP8から信号線HANSにHレベルの信号を出力する(T8)。そして、カメラ側第2通信部292は、この信号が電気接点BP8に入力されると、電気接点LP7から信号線HREQに、Hレベルの信号を出力する(T9)。
なお、コマンドデータ通信とホットライン通信は、同時に、あるいは、並行して実行することが可能である。
次いで、図7を参照して、本実施形態に係るカメラ1の動作例を説明する。図7は、本実施形態に係るカメラ1の動作を示すフローチャートである。なお、以下の動作は、カメラ1の電源がオンされることにより開始される。
まず、ステップS101においては、カメラボディ2がレンズ鏡筒3を識別するための通信を行う。レンズ鏡筒の種類に応じて通信可能な通信形式が異なるからである。そして、ステップS102に進み、ステップS102では、カメラ制御部21は、レンズ鏡筒3が所定の第1種別の通信形式に対応したレンズであるか否かの判断を行う。その結果、第1種別の通信形式に対応したレンズであると判断した場合に、ステップS103に進む。一方、カメラ制御部21は、レンズ鏡筒3が、所定の第1種別の通信形式に対応していないレンズであると判断した場合には、ステップS112に進む。また、カメラ制御部21は、レンズ鏡筒3が、第1種別の通信形式とは異なる第2種別の通信形式に対応しているレンズであると判断した場合、ステップS112に進むようにしてもよい。さらに、カメラ制御部21は、レンズ鏡筒3が第1種別および第2種別の通信形式に対応しているレンズであると判断した場合、ステップS103に進むようにしてもよい。
次に、ステップS103において、撮影者により操作部28に備えられたライブビュー撮影オン/オフスイッチをオンに操作がされたか否かの判定を行い、ライブビュー撮影オンとされると、ミラー系220が被写体の撮影位置になり、被写体からの光束が、撮像素子22に導かれる。
ステップS104では、カメラボディ2とレンズ鏡筒3との間でホットライン通信が開始される。ホットライン通信においては、上述したように、カメラ制御部21およびカメラ側第2通信部292により、信号線HREQに出力されたLレベルの信号(要求信号)を、レンズ制御部36が受信すると、レンズ情報をカメラ制御部21に送信し、このようなレンズ情報の送信が繰り返し行われる。なお、レンズ情報とは、たとえば、フォーカスレンズ33のレンズ位置、ズームレンズ32のレンズ位置、現在位置像面移動係数Kcur、最小像面移動係数Kmin、および最大像面移動係数Kmaxの各情報が含まれる。ホットライン通信は、ステップS104以降、繰返し行われる。ホットライン通信は、たとえば、電源スイッチがオフされるまで繰り返し行われる。この際において、現在位置像面移動係数Kcur、最小像面移動係数Kmin、および最大像面移動係数Kmaxについては、現在位置像面移動係数Kcur、最小像面移動係数Kmin、最大像面移動係数Kmaxの順番に送信することが好ましい。
なお、レンズ制御部36は、レンズ情報をカメラ制御部21に送信する際には、レンズメモリ37に記憶された各レンズ位置と像面移動係数Kとの関係を示すテーブル(図3参照)を参照して、ズームレンズ32の現在のレンズ位置およびフォーカスレンズ33の現在のレンズ位置に対応する現在位置像面移動係数Kcur、ならびに、ズームレンズ32の現在のレンズ位置に対応する最大像面移動係数Kmax、および最小像面移動係数Kminを取得し、取得した現在位置像面移動係数Kcur、最大像面移動係数Kmax、および最小像面移動係数Kminをカメラ制御部21に送信する。
ステップS105では、撮影者により操作部28に備えられたレリーズボタンの半押し操作(第1スイッチSW1のオン)、あるいは、AF起動操作等が行われた否かの判定を行い、これらの動作が行われた場合に、ステップS106に進む(以下の実施例では半押し操作がされた場合について詳細に説明する)。
次いで、ステップS106では、カメラ制御部21はコントラスト検出方式による焦点検出を行うためにレンズ制御部36にスキャン駆動指令(スキャン駆動の開始指示)を送信する。レンズ制御部36に対するスキャン駆動指令(スキャン駆動時の駆動速度の指示、または、駆動位置の指示)は、フォーカスレンズ33の駆動速度で与えてもよいし、像面移動速度で与えてもよいし、目標駆動位置等で与えてもよい。
そして、ステップS107では、カメラ制御部21により、ステップS104で取得した最小像面移動係数Kminに基づいて、スキャン動作におけるフォーカスレンズ33の駆動速度である、スキャン駆動速度Vを決定する処理が行われる。ここで、スキャン動作とは、フォーカスレンズ駆動モータ331により、フォーカスレンズ33を、このステップS107で決定するスキャン駆動速度Vで駆動させながら、カメラ制御部21により、コントラスト検出方式による焦点評価値の算出を、所定の間隔で同時に行い、これにより、コントラスト検出方式による合焦位置の検出を、所定の間隔で実行する動作である。
また、このスキャン動作においては、コントラスト検出方式により合焦位置を検出する際には、カメラ制御部21は、フォーカスレンズ33をスキャン駆動させながら、所定のサンプリング間隔で、焦点評価値を算出し、算出した焦点評価値がピークとなるレンズ位置を、合焦位置として検出する。具体的には、カメラ制御部21は、フォーカスレンズ33をスキャン駆動させることで、光学系による像面を光軸方向に移動させ、これにより、異なる像面において焦点評価値を算出し、これら焦点評価値がピークとなるレンズ位置を、合焦位置として検出する。しかしその一方で、像面の移動速度を速くし過ぎると、焦点評価値を算出する像面の間隔が大きくなり過ぎてしまい、合焦位置を適切に検出することができなくなってしまう場合がある。特に、フォーカスレンズ33の駆動量に対する像面の移動量を示す像面移動係数Kは、フォーカスレンズ33の光軸方向におけるレンズ位置に応じて変化するものであるため、フォーカスレンズ33を一定の速度で駆動させた場合でも、フォーカスレンズ33のレンズ位置によっては、像面の移動速度が速くなり過ぎてしまい、そのため、焦点評価値を算出する像面の間隔が大きくなり過ぎて、合焦位置を適切に検出することができなくなってしまう場合がある。
そこで、本実施形態において、カメラ制御部21は、ステップS104で取得した最小像面移動係数Kminに基づいて、フォーカスレンズ33のスキャン駆動を行う際におけるスキャン駆動速度Vを算出する。カメラ制御部21は、最小像面移動係数Kminを用いて、コントラスト検出方式により合焦位置を適切に検出することができるような駆動速度であり、かつ、最大の駆動速度となるようにスキャン駆動速度Vを算出する。
そして、ステップS108では、ステップS107で決定したスキャン駆動速度Vで、スキャン動作が開始される。具体的には、カメラ制御部21は、レンズ制御部36にスキャン駆動開始指令を送出し、レンズ制御部36は、カメラ制御部21からの指令に基づき、フォーカスレンズ駆動モータ331を駆動させ、フォーカスレンズ33を、ステップS107で決定したスキャン駆動速度Vでスキャン駆動させる。そして、カメラ制御部21は、スキャン駆動速度Vでフォーカスレンズ33を駆動させながら、所定間隔で、撮像素子22の撮像画素から画素出力の読み出しを行い、これに基づき、焦点評価値を算出し、これにより、異なるフォーカスレンズ位置における焦点評価値を取得することで、コントラスト検出方式により合焦位置の検出を行う。
次に、ステップS109において、カメラ制御部21は後述する異常判定処理を行った後、ステップS110において、カメラ制御部21は焦点評価値のピーク値が検出できたか否か(合焦位置が検出できたか否か)を判断する。焦点評価値のピーク値が検出できなかったときはステップS108に戻り、焦点評価値のピーク値が検出できるか、あるいは、フォーカスレンズ33が所定の駆動端まで駆動するまで、ステップS108〜S110の動作を繰り返し行う。一方、焦点評価値のピーク値が検出できたときはステップS111に進む。
焦点評価値のピーク値が検出できたときはステップS111に進み、ステップS111では、カメラ制御部21は焦点評価値のピーク値に対応する位置に合焦駆動させるための指令をレンズ制御部36に送信する。レンズ制御部36は受信した指令に従ってフォーカスレンズ33の駆動制御を行う。
次いで、ステップS112に進み、ステップS112では、カメラ制御部21はフォーカスレンズ33が焦点評価値のピーク値に対応する位置に到達した旨の判断を行い、撮影者によりシャッターレリーズボタンの全押し操作(第2スイッチSW2のオン)がされたとき静止画の撮影制御を行う。撮影制御が終了した後は、再びステップS104に戻る。
次いで、図8、図9を用いて、異常判定処理(図7のステップS109の処理)の詳細な説明を行う。
まず、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態における異常判定処理を示すフローチャートである。図8に示すステップS201では、カメラ制御部21により、今回処理において取得した最小像面移動係数Kminである今回取得最小像面移動係数Kmin_0と、前回処理において取得した最小像面移動係数Kminである前回取得最小像面移動係数Kmin_1とを比較し、これらが同じ値であるか、あるいは異なる値であるかの判断を行う。すなわち、ステップS201においては、繰り返し取得している最小像面移動係数Kminが変化したか否かの判断を行う。今回取得最小像面移動係数Kmin_0と、前回取得最小像面移動係数Kmin_1とが同じ値である場合、すなわち、繰り返し取得している最小像面移動係数Kminが変化してないと判定した場合には、異常が発生していないと判断し、ステップS203に進み、異常フラグ=0(異常なし)に設定し、異常判定処理を終了し、 図7のステップS110に進む。一方、今回取得最小像面移動係数Kmin_0と、前回取得最小像面移動係数Kmin_1とが異なる値である場合、すなわち、繰り返し取得している最小像面移動係数Kminが変化したと判定した場合には、ステップS202に進む。
ステップS202では、カメラ制御部21によりズームレンズ32の駆動操作がされたか否かの判定が行われる。なお、ズームレンズ32の駆動操作がされたか否かの判定は、たとえば、操作部28によりズームレンズ32の駆動操作がされたことを検出する方法を採用してもよいし、あるいは、レンズ鏡筒3から送信されるレンズ情報中に含まれるズームレンズ32のレンズ位置の情報に基づいて判定する方法を採用してもよい。
そして、ズームレンズ32の駆動操作がされたと判断されたときは、ズームレンズ32の駆動により、最小像面移動係数Kminが変化したと判定し、そのため、異常が発生していないと判定し、ステップS203に進み、異常フラグ=0(異常なし)に設定し、異常判定処理を終了し、図7のステップS110に進む。たとえば、 図3に示す例において、ズームレンズ32のレンズ位置(焦点距離)が「f1」にある場合には、最小像面移動係数Kminは「K11」となる一方で、ズームレンズ32が駆動し、ズームレンズ32のレンズ位置(焦点距離)が「f2」となった場合には、最小像面移動係数Kminは「K11」から「K12」に変化することとなる。そのため、本実施形態においては、最小像面移動係数Kminが変化した場合でも、ズームレンズ32の駆動が検出された場合には、最小像面移動係数Kminの変化は、ズームレンズ32の駆動によるものと判断し、異常が発生していないと判定する。
一方、ステップS202において、ズームレンズ32の駆動操作がされなかったと判断されたときは、ズームレンズ32の駆動とは無関係に、最小像面移動係数Kminが変化したと判定し、そのため、通信異常、回路異常、記憶部(メモリ)の異常、電源異常等の何らかの異常が発生したと判定し、ステップS204に進み、異常フラグ=1(異常あり)に設定し、異常判定処理を終了し、図7のステップS110に進む。上述したように、最小像面移動係数Kminは、通常、ズームレンズ32の現在のレンズ位置に応じて変化するものであり、最小像面移動係数Kminは、ズームレンズ32のレンズ位置が変化しなければ、通常、フォーカスレンズ33の現在のレンズ位置が変化しても一定値(固定値)となる性質を有するものである。これに対し、たとえば、ズームレンズ32のレンズ位置が変化していないにもかかわらず、最小像面移動係数Kminが変化した場合には、通信異常、回路異常、記憶部(メモリ)の異常、電源異常等の何らかの異常が発生しているものと判断することができ、そのため、本実施形態においては、このような場合に、異常が発生していると判定し、異常フラグ=1(異常あり)に設定する。
すなわち、図9に示す一場面例を参照し、たとえば、図9(a)に示す「異常がないとき」には、スキャン駆動指令に基づいて、フォーカスレンズ33の駆動が行われ、フォーカスレンズ33が駆動することにより、時刻t1、t2、t3、t4と、現在位置像面移動係数Kcurが変化する場合においても、焦点距離が変化しない場合(すなわち、ズームレンズ32のレンズ位置が変化しない場合)には、最小像面移動係数Kmin=100と一定値を示し、最小像面移動係数Kminは、通常、変化しないものである。すなわち、最小像面移動係数Kminは、フォーカスレンズ33の駆動量と像面の移動量との対応関係を示す像面移動係数Kのうち、最小のものであるため、通常、焦点距離に依存するものであり、そのため、焦点距離が変化しない場合(すなわち、ズームレンズ32のレンズ位置が変化しない場合)には、 図9(a)に示すように一定な値となる。
これに対し、 図9(b)に示す「異常時」の例のように、たとえば、時刻t1、t2、t3においては、最小像面移動係数Kmin=100であり一定値を示していたものの、焦点距離が変化していないにもかかわらず(焦点距離=50で不変であるにもかかわらず)、時刻t4において、最小像面移動係数Kminが100から80に変化したような場合には、本実施形態においては、通信異常、回路異常、記憶部(メモリ)の異常、電源異常等の何らかの異常が発生していると判定し、異常フラグ=1(異常あり)に設定するものである。
そして、本実施形態においては、何らかの異常が発生していると判定され、異常フラグ=1に設定された場合には、カメラ制御部21は、異常処理を実行する。異常処理としては、たとえば、電子ビューファインダ26等で合焦表示を行うことを禁止する処理を行うことなどが挙げられる。特に、異常フラグ=1に設定された場合は、通信異常、回路異常、記憶部(メモリ)の異常、電源異常等が生じている可能性があり、焦点検出の信頼性を保証し得ない場合も多い。このため、信頼性の低い「合焦表示」をしないために合焦表示の禁止等の異常処理をすることが好ましい。そして、この場合には、ステップS203において、異常フラグ=1に設定され、これにより、合焦表示が禁止されている場合には、ステップS111でフォーカスレンズ33が合焦位置に到達した場合でも合焦表示はされないことになる。
また、異常フラグ=1に設定された場合は、たとえば、合焦表示を行うことを禁止する処理を行う代わりに、あるいは、合焦表示を行うことを禁止する処理とともに、フォーカスレンズ33を、至近端から無限遠端まで駆動させる全域サーチを行うことも好ましい。全域サーチを行うことで、異常の原因が解消されたことを確認できる場合があるためである。特に、この場合においては、通常時の駆動速度である第1駆動速度よりも十分に遅い第2駆動速度で至近端から無限遠端までフォーカスレンズ33を駆動させる全域サーチを行うことがさらに好ましく、このように、十分に遅い第2駆動速度で行うことで、より安全な全域サーチが可能となる。
さらに、異常フラグ=1に設定された場合には、合焦表示を行うことを禁止する処理、または、十分に遅い第2駆動速度で、全域サーチを行う処理に代えて、あるいは、これらの処理と共に、コントラスト検出方式による焦点検出を禁止するような処理を行ってもよい。また、この場合には、コントラスト検出方式による焦点検出に加えて、位相差検出方式による焦点検出も禁止するような処理を行ってもよい。特に、異常フラグ=1に設定され、通信異常等の何らかの異常が発生していると考えられる場合には、コントラスト検出方式による焦点検出、さらには、位相差検出方式による焦点検出を行っても、良好な焦点検出結果が得られない可能性が高いため、そのため、このような場合には、コントラスト検出方式による焦点検出、さらには、位相差検出方式による焦点検出を禁止する処理を行うことが望ましい。
あるいは、異常フラグ=1に設定された場合には、フォーカスレンズ32を駆動端、たとえば、至近端に移動させるような処理を行ってもよく、このような処理を行うことで、得られるスルー画像のボケ量を大きなものとすることができ、これにより、撮影者に何らかの異常が発生していることを報知するような態様とすることができる。また、異常フラグ=1に設定された場合には、フォーカスレンズ32を至近端ではなく、無限遠端に移動させるような処理を行ってもよい。
また、本実施形態においては、一度、異常フラグ=1に設定された場合には、通信異常等の何らかの異常が発生していると考えられるため、電源がオフとされるまで、あるいは、レンズ鏡筒3が交換されるまで、異常フラグをリセットせずに、「異常フラグ=1」に設定したままとすることが望ましい。特に、図8のステップS203において、異常フラグ=1に設定されている場合には焦点検出の信頼性を保証し得ないので、無駄なフォーカスレンズ33の駆動を回避するために、カメラ制御部21はステップS110でピーク値が検出できたか否かにかかわらずフォーカスレンズ33の駆動を禁止する処理をしてもよい。この場合、電源がオフとされるまで、あるいは、レンズ鏡筒3が交換されるまで、フォーカスレンズ33の駆動を禁止することが好ましい。
また、たとえば、 図7のステップS109において、異常フラグ=1に設定されている場合には、カメラ制御部21はステップS110でピーク値が検出できたか否かにかかわらず十分に遅い第2駆動速度で、全域サーチを行う処理、位相差検出方式による焦点検出及びコントラスト検出方式による焦点検出の少なくとも一方を禁止する処理、カメラの電源をOFFにする処理、異常が生じた旨の警告表示等を行ってもよい。さらに、たとえば、 図8のステップS203において、異常フラグ=1に設定されている場合には焦点検出の信頼性を保証し得ないので、カメラ制御部21はステップS110でピーク値が検出できてもステップS111の合焦駆動を行わない処理をしてもよい。
一方、ステップS102において、レンズ鏡筒3が、所定の第1種別の通信形式に対応していないレンズであると判断した場合には、ステップS113に進み、ステップS113〜S121の処理を実行する。なお、ステップS113〜S121においては、カメラボディ2とレンズ鏡筒3との間におけるホットライン通信により、レンズ情報の送信を繰り返し実行する際に、レンズ情報として、最小像面移動係数Kmin、および最大像面移動係数Kmaxの情報を含まない情報の送信を行うようにする点(ステップS114)、および、スキャン動作におけるフォーカスレンズ33の駆動速度である、スキャン駆動速度Vを決定する際に、最小像面移動係数Kminまたは補正最小像面移動係数Kmin_xに代えて、レンズ情報に含まれる現在位置像面移動係数Kcurを用いる点(ステップS117)、異常判定処理を行わない点以外は、上述したステップS103〜S112と同様の処理が実行される。
《第2実施形態》
次いで、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、 図1に示すカメラ1において、以下に説明するように動作する以外は、上述した第1実施形態と同様の構成を有するものである。
すなわち、第2実施形態においては、上述した第1実施形態において、図7に示すフローチャートにおいて、ステップS110で、コントラスト検出方式により合焦位置が検出できた場合に、ステップS111において、コントラスト検出方式の結果に基づいて合焦駆動を行う際に、ガタ詰め駆動を行うか否かを判断し、該判断に基づいて、合焦駆動を行う際におけるフォーカスレンズ33の駆動形式を異ならせることを特徴とするものであり、この点において、上述した第1実施形態と異なる以外は、同様である。
すなわち、図1に示すフォーカスレンズ33を駆動するためのフォーカスレンズ駆動モータ331は、通常、機械的な駆動伝達機構から構成され、このような駆動伝達機構は、たとえば、図10に示すように、第1の駆動機構500および第2の駆動機構600からなり、第1の駆動機構500が駆動することにより、これに伴い、フォーカスレンズ33側の第2の駆動機構600を駆動させ、これにより、フォーカスレンズ33を、至近側あるいは無限遠側に移動させるような構成を備えている。そして、このような駆動機構においては、通常、歯車の噛み合わせ部の円滑な動作の観点より、ガタ量Gが設けられている。しかしその一方で、コントラスト検出方式においては、その機構上、図11(A)、 図11(B)に示すように、フォーカスレンズ33は、スキャン動作により、一度、合焦位置を通り過ぎた後に、駆動方向を反転させ、合焦位置へと駆動させる必要がある。そして、この場合において、図11(B)のようにガタ詰め駆動をしない場合には、フォーカスレンズ33のレンズ位置が、ガタ量Gだけ合焦位置からずれてしまうという特性がある。そのため、このようなガタ量Gの影響を除去するためには、図11(A)に示すように、フォーカスレンズ33の合焦駆動を行う際に、一度、合焦位置を通り過ぎた後に、再度、駆動方向を反転させて合焦位置へと駆動させるガタ詰め駆動を行う必要が生じてくる。
なお、図11は、本実施形態に係るスキャン動作およびコントラスト検出方式に基づく合焦駆動を行った際における、フォーカスレンズ位置と焦点評価値との関係、およびフォーカスレンズ位置と時間との関係を示す図である。そして、図11(A)は、時間t0において、レンズ位置P0から、無限遠側から至近側に向けてフォーカスレンズ33のスキャン動作を開始した後、時間t1において、フォーカスレンズ33がレンズ位置P1に移動させた時点において、焦点評価値のピーク位置(合焦位置)P2が検出されると、スキャン動作を停止し、ガタ詰め駆動を伴った合焦駆動を行うことで、時間t2において、合焦位置までフォーカスレンズ33を駆動させる態様を示している。一方、図11(B)は、同様に、時間t0において、スキャン動作を開始した後、時間t1において、スキャン動作を停止し、ガタ詰め駆動を伴わずに合焦駆動を行うことで、時間t3において、合焦位置までフォーカスレンズ33を駆動させる態様を示している。
以下に、第2実施形態における動作例を、図12に示すフローチャートにしたがって、説明する。なお、以下の動作は、上述した図7に示すフローチャートにおいて、ステップS110において、コントラスト検出方式により合焦位置が検出された際に、実行される。すなわち、図11(A)、図11(B)に示すように、時間t0からスキャン動作を開始し、時間t1において、フォーカスレンズ33がレンズ位置P1に移動させた時点において、焦点評価値のピーク位置(合焦位置)P2が検出された場合に、時間t1の時点において実行される。
すなわち、コントラスト検出方式により合焦位置が検出されると、まず、ステップS301において、カメラ制御部21により、ズームレンズ32の現在のレンズ位置における、最小像面移動係数Kminの取得が行われる。なお、最小像面移動係数Kminは、上述したカメラ制御部21とレンズ制御部36との間で行われているホットライン通信により、レンズ送受信部39およびカメラ送受信部21を介して、レンズ制御部36から取得することができる。
次いで、ステップS302では、カメラ制御部21により、フォーカスレンズ33の駆動伝達機構のガタ量G(図10参照)の情報の取得が行われる。なお、フォーカスレンズ33の駆動伝達機構のガタ量Gは、たとえば、レンズ鏡筒3に備えられたレンズメモリ37に予め記憶させておき、これを参照することにより取得することができる。すなわち、具体的には、カメラ制御部21から、カメラ送受信部29およびレンズ送受信部38を介して、レンズ制御部36に対して、フォーカスレンズ33の駆動伝達機構のガタ量Gの送信要求を送出し、レンズ制御部36に、レンズメモリ37に記憶されたフォーカスレンズ33の駆動伝達機構のガタ量Gの情報を、送信させることにより取得することができる。あるいは、上述したカメラ制御部21とレンズ制御部36との間で行われているホットライン通信により送受信するレンズ情報に、レンズメモリ37に記憶されたフォーカスレンズ33の駆動伝達機構のガタ量Gの情報を含めるような態様とすることもできる。
次いで、ステップS303では、カメラ制御部21により、上述したステップS301で取得した最小像面移動係数Kmin、および上述したステップS302で取得したフォーカスレンズ33の駆動伝達機構のガタ量Gの情報に基づいて、ガタ量Gに対応する像面移動量IGを算出する。なお、ガタ量Gに対応する像面移動量IGは、ガタ量Gと同じ量だけフォーカスレンズを駆動させた場合における像面の移動量であり、本実施形態では、以下の式にしたがって算出する。
ガタ量Gに対応する像面移動量IG=ガタ量G×最小像面移動係数Kmin
次いで、ステップS304では、カメラ制御部21により、上述したステップS303で算出したガタ量Gに対応する像面移動量IGと、所定像面移動量IPとを比較する処理が行われ、該比較の結果、ガタ量Gに対応する像面移動量IGが、所定像面移動量IP以下であるか否か、すなわち、「ガタ量Gに対応する像面移動量IG」≦「所定像面移動量IP」が成立するか否かの判定が行われる。なお、所定像面移動量IPは、光学系の焦点深度に対応して設定され、通常、焦点深度に対応する像面移動量とされる。また、所定像面移動量IPは、光学系の焦点深度に設定されるものであるため、F値や撮像素子22のセルサイズや、撮影する画像のフォーマットに応じて適宜設定するような態様とすることができる。すなわち、F値が大きいほど、所定像面移動量IPを大きく設定することができる。あるいは、撮像素子22のセルサイズが大きいほど、または、画像フォーマットが小さいほど、所定像面移動量IPを大きく設定することができる。そして、ガタ量Gに対応する像面移動量IGが、所定像面移動量IP以下である場合には、ステップS305に進む。一方、ガタ量Gに対応する像面移動量IGが、所定像面移動量IPよりも大きい場合には、ステップS306に進む。
ステップS305においては、上述したステップS304において、ガタ量Gに対応する像面移動量IGが、所定像面移動量IP以下であると判定されたため、この場合には、ガタ詰め駆動をしない場合でも、駆動後のフォーカスレンズ33のレンズ位置を、光学系の焦点深度内とすることができると判断し、合焦駆動時にガタ詰め駆動を行わないと決定し、該決定に基づき、ガタ詰め駆動を伴わずに合焦駆動を行う。すなわち、合焦駆動を行う際に、直接、合焦位置までフォーカスレンズ33を駆動させるとの決定を行い、該決定に基づき、図11(B)に示すように、ガタ詰め駆動を伴わない合焦駆動を行う。
一方、ステップS306においては、上述したステップS304において、ガタ量Gに対応する像面移動量IGが、所定像面移動量IPより大きいと判定されたため、この場合には、ガタ詰め駆動をしないと、駆動後のフォーカスレンズ33のレンズ位置を、光学系の焦点深度内とすることができないと判断し、合焦駆動時にガタ詰め駆動を行うと決定し、該決定に基づき、ガタ詰め駆動を伴った合焦駆動を行う。すなわち、フォーカスレンズ33を駆動させ、合焦駆動を行う際に、一度、合焦位置を通過させた後、再度、反転駆動させて、合焦位置まで駆動させるとの決定を行い、該決定に基づき、図10(A)に示すように、ガタ詰め駆動を伴った合焦駆動を行う。
第2実施形態においては、上述したように、最小像面移動係数Kmin、およびフォーカスレンズ33の駆動伝達機構のガタ量Gの情報に基づいて、ガタ量Gに対応する像面移動量IGを算出し、算出されたガタ量Gに対応する像面移動量IGが、光学系の焦点深度に対応する所定像面移動量IP以下であるか否かを判定することで、合焦駆動を行う際にガタ詰め駆動を実行するか否かの判定を行うガタ詰め制御を実行する。そして、該判定の結果、ガタ量Gに対応する像面移動量IGが、光学系の焦点深度に対応する所定像面移動量IP以下であり、駆動後のフォーカスレンズ33のレンズ位置を、光学系の焦点深度内とすることができる場合には、ガタ詰め駆動を行わない一方で、ガタ量Gに対応する像面移動量IGが、光学系の焦点深度に対応する所定像面移動量IPより大きく、ガタ詰め駆動を行わないと、駆動後のフォーカスレンズ33のレンズ位置を、光学系の焦点深度内とすることができない場合には、ガタ詰め駆動を行うものである。そのため、本実施形態によれば、ガタ詰め駆動が必要無い場合に、ガタ詰め駆動を行わないことにより、合焦駆動に要する時間を短縮することが可能となり、これにより、合焦動作に係る時間を短縮することができる。また、その一方で、ガタ詰め駆動が必要な場合には、ガタ詰め駆動を行うことにより、合焦精度を良好なものとすることができる。
特に、第2実施形態においては、最小像面移動係数Kminを用いて、フォーカスレンズ33の駆動伝達機構のガタ量Gに対応する像面移動量IGを算出し、これを、光学系の焦点深度に対応する所定像面移動量IPと比較することにより、合焦時のガタ詰め駆動の要否を適切に判断することが可能となる。
なお、上述した第2実施形態に係るガタ詰め制御において、カメラ制御部21は、焦点距離、絞り、被写体距離に応じて、ガタ詰めの要否を判断してもよい。また、カメラ制御部21は、焦点距離、絞り、被写体距離に応じて、ガタ詰めの駆動量を変化させてもよい。たとえば、絞りを所定値よりも絞っている場合(F値が大きい場合)には、絞りを所定値よりも絞っていない場合(F値が小さい場合)よりも、ガタ詰めが不要である旨の判断、または、ガタ詰めの駆動量を小さくするように制御してもよい。さらに、例えば、ワイド側では、テレ側よりも、ガタ詰めが不要である旨の判断、または、ガタ詰めの駆動量を小さくするように制御してもよい。
《第3実施形態》
次いで、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、図1に示すカメラ1において、以下に説明するように動作する以外は、上述した第1実施形態と同様の構成を有するものである。
すなわち、第3実施形態においては、以下に説明するクリップ動作(静音制御)を行うものである。第3実施形態では、コントラスト検出方式による探索制御において、フォーカスレンズ33の像面の移動速度が一定になるように制御する一方で、このようなコントラスト検出方式の探索制御において、フォーカスレンズ33の駆動音を抑制するためのクリップ動作を行うものである。ここで、第3実施形態で行うクリップ動作とは、フォーカスレンズ33の速度が遅くなり静音化の妨げになる場合にフォーカスレンズ33の速度を静音下限レンズ移動速度未満にならないようにクリップする動作である。
第3実施形態では、後述するように、カメラ本体2のカメラ制御部21が、所定の係数(Kc)を用いて、予め定められた静音下限レンズ移動速度V0bとフォーカスレンズの駆動速度V1aとを比較することによりクリップ動作をすべきか否かを判断する。
そして、カメラ制御部21によりクリップ動作が許可された場合、レンズ制御部36は、後述するフォーカスレンズ33の駆動速度V1aが静音下限レンズ移動速度V0b未満とならないように、フォーカスレンズ33の駆動速度を静音下限レンズ移動速度V0bで制限する。以下、図13に示すフローチャートを参照して詳細に説明する。ここで、図13は、第3実施形態に係るクリップ動作(静音制御)を示すフローチャートである。
ステップS401では、レンズ制御部36により、静音下限レンズ移動速度V0bの取得が行われる。静音下限レンズ移動速度V0bはレンズメモリ37に記憶されており、レンズ制御部36は、レンズメモリ37から静音下限レンズ移動速度V0bを取得することができる。
ステップS402では、レンズ制御部36により、フォーカスレンズ33の駆動指示速度の取得が行われる。本実施形態では、コマンドデータ通信により、カメラ制御部21からレンズ制御部36に、フォーカスレンズ33の駆動指示速度が送信されており、これにより、レンズ制御部36は、カメラ制御部21からフォーカスレンズ33の駆動指示速度を取得することができる。
ステップS403では、レンズ制御部36により、ステップS401で取得した静音下限レンズ移動速度V0bと、ステップS402で取得したフォーカスレンズ33の駆動指示速度との比較が行われる。具体的には、レンズ制御部36は、フォーカスレンズ33の駆動指示速度(単位:パルス/秒)が静音下限レンズ移動速度V0b(単位:パルス/秒)未満であるか否かを判断し、フォーカスレンズ33の駆動指示速度が静音下限レンズ移動速度未満である場合には、ステップS404に進み、一方、フォーカスレンズ33の駆動指示速度が静音下限レンズ移動速度V0b以上である場合には、ステップS405に進む。
ステップS404では、カメラ本体2から送信されたフォーカスレンズ33の駆動指示速度が静音下限レンズ移動速度V0b未満であると判断されている。この場合、レンズ制御部36は、フォーカスレンズ33の駆動音を抑制するために、フォーカスレンズ33を静音下限レンズ移動速度V0bで駆動させる。このように、レンズ制御部36は、フォーカスレンズ33の駆動指示速度が静音下限レンズ移動速度V0b未満である場合に、フォーカスレンズ33のレンズ駆動速度V1aを静音下限レンズ移動速度V0bで制限する。
一方、ステップS405では、カメラ本体2から送信されたフォーカスレンズ33の駆動指示速度が静音下限レンズ移動速度V0b以上であると判断されている。この場合、所定値以上のフォーカスレンズ33の駆動音は発生しない(あるいは、駆動音は極めて小さい)ため、レンズ制御部36は、フォーカスレンズ33を、カメラ本体2から送信されたフォーカスレンズ33の駆動指示速度で駆動させる。
ここで、図14は、フォーカスレンズ33のレンズ駆動速度V1aと、静音下限レンズ移動速度V0bとの関係を説明するためのグラフであり、縦軸をレンズ駆動速度、横軸を像面移動係数Kとしたグラフである。 図14において横軸に示すように、像面移動係数Kは、フォーカスレンズ33のレンズ位置に応じて変化するものであり、 図14に示す例においては、至近側ほど像面移動係数Kは小さくなり、無限遠側ほど像面移動係数Kが大きくなるような傾向となっている。これに対し、本実施形態においては、焦点検出動作実行時において、フォーカスレンズ33を駆動させる際には、像面の移動速度が一定となるような速度にて駆動させるため、そのため、図14に示すように、フォーカスレンズ33の実際の駆動速度V1aは、フォーカスレンズ33のレンズ位置に応じて変化することとなる。すなわち、図14に示す例においては、像面の移動速度が一定の速度となるようにフォーカスレンズ33を駆動させた場合、フォーカスレンズ33のレンズ移動速度V1aは至近側ほど遅くなり、無限遠側ほど速くなる。
その一方で、図14に示すように、フォーカスレンズ33を駆動させた場合に、このような場合における像面移動速度を示すと、図16に示すように、一定なものとなる。なお、 図16は、フォーカスレンズ33の駆動による像面移動速度V1aと、静音下限像面移動速度V0b_maxとの関係を説明するためのグラフであり、縦軸を像面移動速度、横軸を像面移動係数Kとしたグラフである。また、図14、図16中においては、フォーカスレンズ33の実際の駆動速度およびフォーカスレンズ33の駆動による像面移動速度を、ともにV1aで表した。そのため、V1aは、図14に示すように、フォーカスレンズ33の実際の駆動速度である場合には可変となり、図16に示すように、像面移動速度である場合には、一定値となる。
そして、像面の移動速度が一定の速度となるように、フォーカスレンズ33を駆動させた場合に、クリップ動作を行わないと、 図14に示す例のように、フォーカスレンズ33のレンズ駆動速度V1aが、静音下限レンズ移動速度V0b未満となる場合がある。たとえば、最小像面移動係数Kminが得られるフォーカスレンズ33の位置( 図14において最小像面移動係数Kmin=100)において、レンズ移動速度V1aは、静音下限レンズ移動速度V0b未満となってしまう。
特に、レンズ鏡筒3の焦点距離が長い場合や光環境が明るい場合に、フォーカスレンズ33のレンズ移動速度V1aが静音下限レンズ移動速度V0b未満となりやすい。このような場合、レンズ制御部36は、クリップ動作を行うことで、 図14に示すように、フォーカスレンズ33の駆動速度V1aを静音下限レンズ移動速度V0bで制限する(静音下限レンズ移動速度V0bよりも低速にならないように制御する)ことができ(ステップS404)、これにより、フォーカスレンズ33の駆動音を抑制することができる。
次に、図15を参照して、 図13に示すクリップ動作を許可するか、禁止するかを決定するクリップ動作制御処理を説明する。図15は、本実施形態に係るクリップ動作制御処理を示すフローチャートである。なお、以下に説明するクリップ動作制御処理は、たとえばAF−Fモードや動画撮影モードが設定された際に、カメラ本体2により実行される。
まず、ステップS501では、カメラ制御部21により、レンズ情報の取得が行われる。具体的には、カメラ制御部21は、ホットライン通信により、現在像面移動係数Kcur、最小像面移動係数Kmin、最大像面移動係数Kmax、および静音下限レンズ移動速度V0bをレンズ鏡筒3から取得する。
そして、ステップS502では、カメラ制御部21により、静音下限像面移動速度V0b_maxの算出が行われる。静音下限像面移動速度V0b_maxとは、最小像面移動係数Kminが得られるフォーカスレンズ33の位置において、フォーカスレンズ33を、上述した静音下限レンズ移動速度V0bにて駆動させた際における、像面の移動速度である。以下において、静音下限像面移動速度V0b_maxについて詳細に説明する。
まず、 図14に示すように、フォーカスレンズ33の駆動により駆動音が発生するか否かは、フォーカスレンズ33の実際の駆動速度により決定されることとなり、そのため、 図14に示すように、静音下限レンズ移動速度V0bは、レンズ駆動速度で表した場合に、一定の速度となる。その一方で、このような静音下限レンズ移動速度V0bを、像面移動速度で示すと、上述したように、像面移動係数Kは、フォーカスレンズ33のレンズ位置に応じて変化するものであるため、図16に示すように可変となる。なお、図14、 図16中においては、静音下限レンズ移動速度(フォーカスレンズ33の実際の駆動速度の下限値)と、静音下限レンズ移動速度でフォーカスレンズ33を駆動させた場合の像面移動速度を、ともにV0bで表した。そのため、V0bは、図14に示すように、グラフの縦軸がフォーカスレンズ33の実際の駆動速度である場合には一定値(横軸と平行)となり、図16に示すように、グラフの縦軸が像面移動速度である場合には、可変(横軸と平行でない)となる。
そして、本実施形態では、静音下限像面移動速度V0b_maxを、像面の移動速度が一定となるようにフォーカスレンズ33を駆動させた場合に、最小像面移動係数Kminが得られるフォーカスレンズ33の位置(図16に示す例では、像面移動係数K=100)において、フォーカスレンズ33の移動速度が静音下限レンズ移動速度V0bとなる像面移動速度に設定する。すなわち、本実施形態では、静音下限レンズ移動速度にてフォーカスレンズ33を駆動させた際に、最大となる像面移動速度(図16に示す例では、像面移動係数K=100における像面移動速度)を、静音下限像面移動速度V0b_maxとして設定する。
このように、本実施形態では、フォーカスレンズ33のレンズ位置に応じて変化する、静音下限レンズ移動速度V0bに対応する像面移動速度のうち、最大の像面移動速度(像面移動係数が最小となるレンズ位置における像面移動速度)を、静音下限像面移動速度V0b_maxとして算出する。たとえば、図16に示す例において、最小像面移動係数Kminが「100」であるため、像面移動係数が「100」となるフォーカスレンズ33のレンズ位置における像面移動速度を、静音下限像面移動速度V0b_maxとして算出する。
具体的には、カメラ制御部21は、下記式に示すように、静音下限レンズ移動速度V0b(単位:パルス/秒)と最小像面移動係数Kmin(単位:パルス/mm)とに基づいて、静音下限像面移動速度V0b_max(単位:mm/秒)を算出する。
静音下限像面移動速度V0b_max=静音下限レンズ移動速度(フォーカスレンズの実際の駆動速度)V0b/最小像面移動係数Kmin
このように、本実施形態では、最小像面移動係数Kminを用いて、静音下限像面移動速度V0b_maxを算出することで、AF−Fによる焦点検出や動画撮影を開始したタイミングで、静音下限像面移動速度V0b_maxを算出することができる。たとえば、図16に示す例において、AF−Fによる焦点検出または動画撮影をタイミングt1'において開始した場合に、このタイミングt1'において、像面移動係数Kが「100」となるフォーカスレンズ33のレンズ位置における像面移動速度を、静音下限像面移動速度V0b_maxとして算出することができる。
次いで、ステップS503では、カメラ制御部21により、ステップS501で取得した焦点検出用の像面移動速度V1aと、ステップS502で算出した静音下限像面移動速度V0b_maxとの比較が行われる。具体的には、カメラ制御部21は、焦点検出用の像面移動速度V1a(単位:mm/秒)と静音下限像面移動速度V0b_max(単位:mm/秒)とが、下記式を満たすか否かを判断する。
(焦点検出用の像面移動速度V1a×Kc)>静音下限像面移動速度V0b_max
なお、上記式中、係数Kcは1以上の値(Kc≧1)であり、その詳細については後述する。
上記式を満たす場合には、ステップS504に進み、カメラ制御部21により、図13に示すクリップ動作が許可される。すなわち、フォーカスレンズ33の駆動音を抑制するために、図14に示すように、フォーカスレンズ33の駆動速度V1aが静音下限レンズ移動速度V0bに制限される(フォーカスレンズ33の駆動速度V1aが静音下限レンズ移動速度V0bよりも低い速度にならないように探索制御が行われる。)。
一方、上記式を満たさない場合には、ステップS505に進み、図13に示すクリップ動作が禁止される。すなわち、フォーカスレンズ33の駆動速度V1aを静音下限レンズ移動速度V0bで制限せずに(フォーカスレンズ33の駆動速度V1aが静音下限レンズ移動速度V0bよりも低い速度となることを許容し)、合焦位置を適切に検出することができる像面移動速度V1aとなるように、フォーカスレンズ33を駆動させる。
ここで、図14に示すように、クリップ動作を許可して、フォーカスレンズ33の駆動速度を、静音下限レンズ移動速度V0bで制限してしまうと、像面移動係数Kが小さいレンズ位置において像面の移動速度が速くなってしまい、その結果、像面の移動速度が、合焦位置を適切に検出できる像面移動速度よりも速くなり、適切な合焦精度が得られない場合がある。一方、クリップ動作を禁止して、像面の移動速度が合焦位置を適切に検出できる像面移動速度となるように、フォーカスレンズ33を駆動させた場合には、図14に示すように、フォーカスレンズ33の駆動速度V1aが静音下限レンズ移動速度V0b未満となり、所定値以上の駆動音が発生してしまう場合がある。
このように、焦点検出用の像面移動速度V1aが静音下限像面移動速度V0b_max未満となる場合には、合焦位置を適切に検出できる像面移動速度V1aが得られるように、フォーカスレンズ33を静音下限レンズ移動速度V0b未満のレンズ駆動速度で駆動させるか、フォーカスレンズ33の駆動音を抑制するために、フォーカスレンズ33を静音下限レンズ移動速度V0b以上のレンズ駆動速度で駆動させるかが問題となる場合がある。
これに対して、本実施形態では、上記式における係数Kcを、フォーカスレンズ33を静音下限レンズ移動速度V0bで駆動させた場合でも、上記式を満たす場合には、一定の焦点検出精度を確保できる1以上の値として記憶しておく。これにより、カメラ制御部21は、図16に示すように、焦点検出用の像面移動速度V1aが静音下限像面移動速度V0b_max未満となる場合でも、上記式を満たす場合には、一定の焦点検出精度を確保できるものと判断し、フォーカスレンズ33の駆動音の抑制を優先して、フォーカスレンズ33を静音下限レンズ移動速度V0b未満のレンズ駆動速度で駆動させるクリップ動作を許可する。
一方、仮に、焦点検出時の像面移動速度V1a×Kc(但し、Kc≧1)が静音下限像面移動速度V0b_max以下となる場合に、クリップ動作を許可し、フォーカスレンズ33の駆動速度を静音下限レンズ移動速度V0bで制限した場合には、焦点検出用の像面移動速度が速くなり過ぎてしまい、焦点検出精度を確保することができない場合がある。そのため、カメラ制御部21は、上記式を満たさない場合には、焦点検出精度を優先して、図13に示すクリップ動作を禁止する。これにより、焦点検出時に、像面の移動速度を、合焦位置を適切に検出することができる像面移動速度V1aとすることができ、焦点検出を高い精度で行うことができる。
なお、絞り値が大きい(絞り開口が小さい)場合には、被写界深度が深くなるため、合焦位置を適切に検出することができるサンプリング間隔は広くなる。その結果、合焦位置を適切に検出することができる像面移動速度V1aを速くすることができる。そのため、合焦位置を適切に検出することができる像面移動速度V1aが固定の値である場合には、カメラ制御部21は、絞り値が大きいほど、上記式の係数Kcを大きくすることができる。
同様に、ライブビュー画像など画像サイズが小さい場合(画像の圧縮率が高い場合、あるいは画素データの間引き率が高い場合)には、高い焦点検出精度が要求されないため、上記式の係数Kcを大きくすることができる。また、撮像素子22における画素ピッチが広い場合なども、上記式の係数Kcを大きくすることができる。
次に、図17および図18を参照して、クリップ動作の制御についてより詳細に説明する。図17は、焦点検出時の像面の移動速度V1aと、クリップ動作との関係を示す図であり、図18は、フォーカスレンズ33の実際のレンズ駆動速度V1aと、クリップ動作との関係を説明するための図である。
たとえば、上述したように、本実施形態では、レリーズスイッチの半押しをトリガとして探索制御を開始する場合とレリーズスイッチの半押し以外の条件をトリガとして探索制御を開始する場合、静止画撮影モードと動画撮影モード、スポーツ撮影モードと風景撮影モード、あるいは、焦点距離、撮影距離、絞り値等に応じて、探索制御における像面の移動速度が異なる場合がある。図17では、このような異なる3つの像面の移動速度V1a_1,V1a_2,V1a_3を例示している。
具体的には、図17に示す焦点検出時の像面移動速度V1a_1は、焦点状態を適切に検出できる像面の移動速度のうち最大の移動速度であり、上記式の関係を満たす像面の移動速度である。また、焦点検出時の像面移動速度V1a_2は、V1a_1よりも遅い像面の移動速度であるが、タイミングt1'において上記式の関係を満たす像面の移動速度である。一方、焦点検出時の像面移動速度V1a_3は、上記式の関係を満たさない像面の移動速度である。
このように、図17に示す例において、焦点検出時の像面の移動速度がV1a_1およびV1a_2である場合には、タイミングt1において上記式の関係を満たすため、図17に示すクリップ動作が許可される。一方、焦点検出時の像面の移動速度がV1a_3である場合には、上記式の関係を満たさないため、図13に示すクリップ動作は禁止される。
この点について、図18を参照して、具体的に説明する。なお、図18は、図17に示すグラフの縦軸を、像面移動速度からレンズ駆動速度に変更して示した図である。上述したように、フォーカスレンズ33のレンズ駆動速度V1a_1は、上記式(3)の関係を満たすため、クリップ動作が許可される。しかしながら、図18に示すように、最小像面移動係数(K=100)が得られるレンズ位置においても、レンズ駆動速度V1a_1は静音下限レンズ移動速度V0b未満とはならないために、実際には、クリップ動作は行われない。
また、フォーカスレンズ33のレンズ駆動速度V1a_2も、焦点検出の開始タイミングであるタイミングt1'において上記式の関係を満たすため、クリップ動作が許可される。図18に示す例では、フォーカスレンズ33をレンズ駆動速度V1a_2で駆動させた場合に、像面移動係数KがK1となるレンズ位置において、レンズ駆動速度V1a_2が静音下限レンズ移動速度V0b未満となるため、K1よりも像面移動係数Kが小さいレンズ位置において、フォーカスレンズ33のレンズ駆動速度V1a_2が静音下限レンズ移動速度V0bで制限される。
すなわち、フォーカスレンズ33のレンズ駆動速度V1a_2が静音下限レンズ移動速度V0b未満となるレンズ位置において、クリップ動作が行われ、これにより、焦点検出時の像面の移動速度V1a_2は、それまでの像面の移動速度(探索速度)とは異なる像面の移動速度で、焦点評価値の探索制御を行うこととなる。すなわち、図17に示すように、像面移動係数がK1よりも小さくなるレンズ位置において、焦点検出時の像面の移動速度V1a_2が今までの一定の速度とは異なる速度となる。
また、フォーカスレンズ33のレンズ駆動速度V1a_3は、上記式の関係を満たさないため、クリップ動作が禁止される。そのため、 図18に示す例では、フォーカスレンズ33をレンズ駆動速度V1a_3で駆動させた場合に、像面移動係数KがK2となるレンズ位置において、レンズ駆動速度V1a_3は静音下限レンズ移動速度V0b未満となるが、K2よりも小さい像面移動係数Kが得られるレンズ位置において、クリップ動作が行われず、焦点状態を適切に検出するために、フォーカスレンズ33の駆動速度V1a_3が静音下限レンズ移動速度V0b未満となってもクリップ動作が行われないこととなる。
以上のように、第3実施形態では、静音下限レンズ移動速度V0bでフォーカスレンズ33を駆動させた場合における像面移動速度のうち、最大の像面移動速度を静音下限像面移動速度V0b_maxとして算出し、算出した静音下限像面移動速度V0b_maxと焦点検出時の像面の移動速度V1aとを比較する。そして、焦点検出時の像面の移動速度V1a×Kc(但し、Kc≧1)が静音下限像面移動速度V0b_maxよりも速い場合には、フォーカスレンズ33を静音下限レンズ移動速度V0bで駆動させた場合でも、一定以上の焦点検出精度が得られるものと判断し、図13に示すクリップ動作を許可する。これにより、本実施形態では、焦点検出精度を確保しながら、フォーカスレンズ33の駆動音を抑制することができる。
一方、焦点検出時の像面の移動速度V1a×Kc(但し、Kc≧1)が静音下限像面移動速度V0b_max以下となる場合に、フォーカスレンズ33の駆動速度V1aを静音下限レンズ移動速度V0bで制限した場合には、適切な焦点検出精度が得られない場合がある。そのため、本実施形態では、このような場合には、焦点検出に適した像面移動速度が得られるように、図13に示すクリップ動作を禁止する。これにより、本実施形態では、焦点検出時に合焦位置を適切に検出することができる。
また、本実施形態では、レンズ鏡筒3のレンズメモリ37に最小像面移動係数Kminを予め記憶しており、この最小像面移動係数Kminを用いて、静音下限像面移動速度V0b_maxを算出する。そのため、本実施形態では、たとえば、図10に示すように、動画撮影やAF−Fモードによる焦点検出が開始された時刻t1のタイミングで、焦点検出用の像面移動速度V1a×Kc(但し、Kc≧1)が静音下限像面移動速度V0b_maxを超えるか否かを判断し、クリップ動作を行うか否かを判断することができる。このように、本実施形態では、現在位置像面移動係数Kcurを用いて、クリップ動作を行うか否かを繰り返し判断するのではなく、最小像面移動係数Kminを用いて、動画撮影やAF−Fモードによる焦点検出が開始された最初のタイミングで、クリップ動作を行うか否かを判断することができるため、カメラ本体2の処理負荷を軽減することができる。
なお、上述した実施形態においては、図13に示すクリップ動作制御処理を、カメラ本体2において実行する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、図7に示すクリップ動作制御処理を、レンズ鏡筒3において実行する構成としてもよい。
また、上述した実施形態では、上記式に示すように、像面移動係数Kを、像面移動係数K=(フォーカスレンズ33の駆動量/像面の移動量)で算出する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、下記式に示すように算出する構成としてもよい。
像面移動係数K=(像面の移動量/フォーカスレンズ33の駆動量)
なお、この場合、カメラ制御部21は、静音下限像面移動速度V0b_maxを以下のように算出することができる。すなわち、カメラ制御部21は、下記式に示すように、静音下限レンズ移動速度V0b(単位:パルス/秒)と、ズームレンズ32の各レンズ位置(焦点距離)における像面移動係数Kのうち、最大となる値を示す最大像面移動係数Kmax(単位:パルス/mm)とに基づいて、静音下限像面移動速度V0b_max(単位:mm/秒)を算出することができる。
静音下限像面移動速度V0b_max=静音下限レンズ移動速度V0b/最大像面移動係数Kmax
例えば、像面移動係数Kとして、「像面の移動量/フォーカスレンズ33の駆動量」で算出される値を採用した場合には、値(絶対値)が大きくなるほど、フォーカスレンズが所定値(例えば1mm)駆動した場合の像面の移動量が大きくなる。像面移動係数Kとして、「フォーカスレンズ33の駆動量/像面の移動量」で算出される値を採用した場合には、値(絶対値)が大きくなるほど、フォーカスレンズが所定値(例えば1mm)駆動した場合の像面の移動量が小さくなる。
また、上述した実施形態に加えて、フォーカスレンズ33の駆動音を抑制する静音モードが設定されている場合に、上述したクリップ動作およびクリップ動作制御処理を実行し、静音モードが設定されていない場合には、上述したクリップ動作およびクリップ動作制御処理を実行しない構成としてもよい。また、静音モードが設定されている場合は、フォーカスレンズ33の駆動音の抑制を優先し、図15に示すクリップ動作制御処理を行わずに、図13に示すクリップ動作を常に行う構成としてもよい。
また、上述した実施例においては、像面移動係数K=(フォーカスレンズ33の駆動量/像面の移動量)として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、像面移動係数K=(像面の移動量/フォーカスレンズ33の駆動量)のように定義した場合、最大像面移動係数Kmaxを用いて、上述した実施例と同様にクリップ動作等の制御をすることができる。
《第4実施形態》
次いで、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態では、以下の点において異なる以外は、上述した第1実施形態と同様の構成を有するものである。図19に、第4実施形態において用いられる、ズームレンズ32のレンズ位置(焦点距離)およびフォーカスレンズ33のレンズ位置(撮影距離)と、像面移動係数Kとの関係を示すテーブルを示す。
すなわち、第4実施形態においては、図3に示す最も至近側の領域である「D1」よりも、さらに至近側の領域である「D0」、「X1」、「X2」領域が備えられている。また、同様に、図3に示す最も無限遠側の領域である「D9」よりも、さらに無限遠側の領域である「D10」、「X3」、「X4」領域が備えられている。なお、以下においては、まず、このような、さらに至近側の領域である「D0」、「X1」、「X2」領域、さらに無限遠側の領域である「D10」、「X3」、「X4」領域について説明する。
ここで、図20に示すように、本実施形態においては、フォーカスレンズ33は、図中において一点鎖線で示す光軸L1上を、無限遠方向410および至近方向420に向けて移動可能に構成されている。無限遠方向410のメカ的な端点(機械的な端点)430および至近方向420のメカ的な端点440には不図示のストッパーが設けられ、フォーカスレンズ33の移動を制限する。すなわち、フォーカスレンズ33は無限遠方向410のメカ的な端点430から、至近方向420のメカ的な端点440まで移動可能に構成されている。
ただし、レンズ制御部36が実際にフォーカスレンズ33を駆動させる範囲は、上述のメカ的な端点430からメカ的な端点440までの範囲より小さい。この移動範囲について具体的に述べると、レンズ制御部36は無限遠方向410のメカ的な端点430より内側に設けられた無限ソフトリミット位置450から、至近方向420のメカ的な端点440より内側に設けられた至近ソフトリミット位置460までの範囲でフォーカスレンズ33を駆動する。すなわちレンズ駆動部212は、フォーカスレンズ33を至近側の駆動限界の位置に対応する至近ソフトリミット位置460と無限遠側の駆動限界の位置に対応する無限ソフトリミット位置450との間で駆動する。
無限ソフトリミット位置450は、無限合焦位置470より外側に設けられる。なお無限合焦位置470とは、レンズ31,32,33,34および絞り35を含む撮影光学系が合焦可能な最も無限遠側の位置に対応するフォーカスレンズ33の位置である。無限ソフトリミット位置450をこのような位置に設ける理由は、コントラスト検出方式による焦点検出を行う際に、無限合焦位置470に焦点評価値のピークが存在することがあるためである。すなわち、無限合焦位置470を無限ソフトリミット位置450に一致させてしまうと、無限合焦位置470に存在する焦点評価値のピークをピークとして認識することができないという問題があり、このような問題を避けるため、無限ソフトリミット位置450は、無限合焦位置470より外側に設けられる。同様に、至近ソフトリミット位置460は、至近合焦位置480より外側に設けられる。ここで至近合焦位置480とは、レンズ31,32,33,34および絞り35を含む撮影光学系が合焦可能な最も至近側の位置に対応するフォーカスレンズ33の位置である。
そして、図19に示す「D0」領域は、至近ソフトリミット位置460に対応する位置であり、「X1」、「X2」領域は、至近ソフトリミット位置よりも至近側の領域、例えば、至近方向420のメカ的な端点440に対応する位置、至近ソフトリミット位置と端点440との間の位置等である。また、図19に示す「D10」領域は、無限ソフトリミット位置450に対応する位置であり、「X3」、「X4」領域は、無限ソフトリミット位置よりも無限側の領域、例えば、無限遠方向410のメカ的な端点430に対応する位置、無限ソフトリミット位置と端点430との間の位置等である。
そして、本実施形態においては、これらの領域のうち、至近ソフトリミット位置460に対応する「D0」領域における像面移動係数「K10」、「K20」、・・・「K90」を、最小像面移動係数Kminに設定することができる。同様に、無限ソフトリミット位置450に対応する「D10」領域における像面移動係数「K110」、「K210」、・・・「K910」を、最大像面移動係数Kmaxに設定することができる。
なお、本実施形態においては、「X1」領域における像面移動係数「α11」、「α21」、・・・「α91」の値は、「D0」領域における像面移動係数「K10」、「K20」、・・・「K90」の値よりも小さい。同様に、「X2」領域における像面移動係数「α12」、「α22」、・・・「α92」の値は、「D0」領域における像面移動係数「K10」、「K20」、・・・「K90」の値よりも小さい。また、「X3」領域における像面移動係数「α13」、「α23」、・・・「α93」の値は、「D10」領域における像面移動係数「K110」、「K210」、・・・「K910」の値よりも大きい。「X4」領域における像面移動係数「α14」、「α24」、・・・「α94」の値は、「D10」領域における像面移動係数「K110」、「K210」、・・・「K910」の値よりも大きい。
しかしその一方で、本実施形態においては、「D0」における像面移動係数K(「K10」、「K20」・・・「K90」)が最小像面移動係数Kminに設定され、「D10」における像面移動係数K(「K110」、「K210」・・・「K910」)が最大像面移動係数Kmaxに設定される。特に、「X1」、「X2」、「X3」、「X4」領域は、収差、メカ的機構等の事情により、フォーカスレンズ33を駆動させない、又は、フォーカスレンズ33を駆動させる必要が少ない領域である。このため、「X1」、「X2」、「X3」、「X4」領域に対応する像面移動係数「α11」、「α21」、・・・「α94」を最小像面移動係数Kminや最大像面移動係数Kmaxに設定しても適切なオートフォーカス制御(例えば、フォーカスレンズの速度制御、静音制御、ガタ詰め制御等)に寄与しないからである。
なお、本実施形態では、至近ソフトリミット位置460に対応する「D0」領域における像面移動係数を最小像面移動係数Kminに設定し、無限ソフトリミット位置450に対応する「D10」領域における像面移動係数を最大像面移動係数Kmaxに設定したがこれに限定されるものではない。
例えば、至近ソフトリミット位置よりも至近側の領域「X1」、「X2」、及び、無限ソフトリミット位置よりも無限側の領域「X3」、「X4」に対応する像面移動係数がレンズメモリ37に記憶されていても、コントラストAFの探索範囲(スキャン範囲)に含まれるフォーカスレンズの位置に対応する像面移動係数の中で最も小さい像面移動係数を最小像面移動係数Kminに設定し、コントラストAFの探索範囲に含まれるフォーカスレンズの位置に対応する像面移動係数の中で最も大きい像面移動係数を最大像面移動係数Kmaxに設定してもよい。さらに、至近合焦位置480に対応する像面移動係数を最小像面移動係数Kminに設定し、無限合焦位置470に対応する像面移動係数を最大像面移動係数Kmaxに設定してもよい。
あるいは、本実施形態においては、フォーカスレンズ33を至近ソフトリミット位置460近傍に駆動させたときの像面移動係数Kが最小の値となるように像面移動係数Kが設定してもよい。すなわち、フォーカスレンズ33を至近ソフトリミット位置460から無限ソフトリミット位置450までの何れに移動したときよりも、至近ソフトリミット位置460近傍に駆動させたときの像面移動係数Kが最小の値となるように像面移動係数Kが設定してもよい。
同様に、フォーカスレンズ33を無限ソフトリミット位置450近傍に駆動させたときの像面移動係数Kが最大の値となるように像面移動係数Kが設定してもよい。すなわち、フォーカスレンズ33を至近ソフトリミット位置460から無限ソフトリミット位置450までの何れに移動したときよりも、無限ソフトリミット位置450近傍に駆動させたときの像面移動係数Kが最大の値となるように像面移動係数Kが設定してもよい。
《第5実施形態》
次いで、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態では、以下の点において異なる以外は、上述した第1実施形態と同様の構成を有するものである。すなわち、上述した第1実施形態においては、レンズメモリ37に、フォーカスレンズ33の合焦駆動範囲に対応する像面移動係数Kのみを記憶させるような態様を例示したが、第5実施形態では、レンズ鏡筒3のレンズメモリ37には、補正係数K0、K1がさらに記憶されており、レンズ制御部36がレンズメモリ37に記憶された補正係数K0、K1を用いて、最小像面移動係数Kminおよび最大像面移動係数Kmaxを補正してカメラボディに送信する点において相違する。
図21は、レンズ鏡筒3の製造ばらつきの一例を示す図である。たとえば、本実施形態において、レンズ鏡筒3は、光学系の設計及びメカ機構の設計段階において、最小像面移動係数Kminが「100」に設定され、レンズメモリ37には最小像面移動係数Kmin「100」が記憶されている。しかし、レンズ鏡筒3の量産工程においては、量産時の製造誤差等により製造ばらつきが生じ、最小像面移動係数Kminが図21に示すような正規分布を示すこととなる。
そのため、本実施形態では、レンズ鏡筒3の量産工程における最小像面移動係数Kminの正規分布から補正係数K0=「−1」を求め、レンズ鏡筒3のレンズメモリ37に補正係数K0として「−1」を記憶させている。そして、レンズ制御部36は、レンズメモリ37に記憶された最小像面移動係数Kmin(「100」)と、補正係数K0(「−1」)とを用いて、最小像面移動係数Kminを補正(100−1=99)し、補正後の最小像面移動係数Kmin(「99」)をカメラボディ2に送信する。
また、例えば、光学系の設計及びメカ機構の設計段階において、最大像面移動係数Kmaxが「1000」に設定され、レンズメモリ37には最大像面移動係数Kmax「1000」が記憶されている。量産工程における最大像面移動係数Kmaxが正規分布に従って分布しており、正規分布に従って分布した最大像面移動係数Kmaxの平均が「1010」だった場合、レンズ鏡筒3のレンズメモリ37には補正係数K1として「+10」が記憶される。そして、レンズ制御部36は、レンズメモリ37に記憶された最大像面移動係数Kmax(「1000」)と、補正係数K1(「+10」)とを用いて、最大像面移動係数Kmaxを補正(1000+10=1010)し、補正後の最大像面移動係数Kmax(「1010」)をカメラボディ2に送信する。
なお、上述した最小像面移動係数Kmin「100」、最大像面移動係数Kmax「1000」、補正係数K0「−1」、補正係数K1「+10」の各値は例示であり、任意の値を設定できることは言うまでもない。また、最小像面移動係数Kmin及び最大像面移動係数Kmaxの補正は、加減算に限定されるものではなく、積算、除算等の種々の演算を組合せることができることも言うまでもない。
《第6実施形態》
次いで、本発明の第6実施形態について説明する。第6実施形態では、以下の点において異なる以外は、上述した第2実施形態と同様の構成を有するものである。すなわち、第6実施形態においては、レンズ鏡筒3のレンズメモリ37に補正係数K2が記憶されており、レンズ制御部36がレンズメモリ37に記憶された補正係数K2を用いて、最小像面移動係数Kminを補正してカメラボディ2に送信し、レンズ制御部36及びカメラ制御部21は補正された最小像面移動係数Kminを用いてガタ詰め制御を行う点において、上述の第2実施形態と異なる以外は、同様の構成を有するものである。
すなわち、上述したように、第2実施形態では、レンズ制御部36がカメラ制御部21に最小像面移動係数Kmin及びガタ量Gを送信し(図12のステップS301、S302参照)、カメラ制御部21は最小像面移動係数Kmin及びガタ量Gを用いて像面移動量IGを算出する。そして、「像面移動量IG」≦「所定像面移動量IP」が成立するとき、ガタ詰め「不要」と判断し合焦駆動時にガタ詰め駆動を行わない制御を行い、「像面移動量IG」>「所定像面移動量IP」が成立するとき、ガタ詰め「要」と判断し合焦駆動時にガタ詰め駆動を行う制御を行っている。
しかし一方で、レンズ鏡筒3の量産時の製造誤差等により最小像面移動係数Kminがばらついた場合(図21参照)、又は、レンズ鏡筒3のメカ機構の経時変化(レンズを駆動する歯車の磨耗、レンズを保持する部材の磨耗等)により最小像面移動係数Kminが変化した場合、好適なガタ詰め駆動ができなくなるおそれがある。そのため、本実施形態では、最小像面移動係数Kminのばらつきや変化を考慮した補正係数K2をレンズメモリ37に記憶させ、レンズ制御部36は補正係数K2を用いて、最小像面移動係数Kminが補正前よりも大きな値になるように補正してカメラボディ2に送信するものである。
たとえば、本実施形態において、最小像面移動係数Kminとして「100」という値、補正係数K2として「0.9」という値がレンズメモリ37に記憶されている場合、レンズ制御部36は、レンズメモリ37に記憶された最小像面移動係数Kmin(「100」)と、補正係数K2(「0.9」)とを用いて、最小像面移動係数Kminを補正(100×0.9=90)し、補正後の最小像面移動係数Kmin(「90」)をカメラボディ2に送信する。そして、カメラ制御部21は補正された最小像面移動係数Kmin(「90」)及びガタ量Gを用いて像面移動量IGを算出し、「像面移動量IG」≦「所定像面移動量IP」が成立するとき、ガタ詰め「不要」と判断し合焦駆動時にガタ詰め駆動を行わない制御を行い、「像面移動量IG」>「所定像面移動量IP」が成立するとき、ガタ詰め「要」と判断し合焦駆動時にガタ詰め駆動を行う制御を行う。
このように、本実施形態では、補正係数K2を用いることにより、補正前の最小像面移動係数Kmin(「100」)よりも小さい最小像面移動係数Kmin(「90」)を用いてガタ詰めの要否判断を行う。このため、補正前の最小像面移動係数Kmin(「100」)を用いた場合よりもガタ詰め「要」との判断がされ易くなり、製造誤差、経時変化等により最小像面移動係数Kminが変化した場合でも、確実にガタ詰め駆動を行うことができ、確実にピントを合わせることができる、という効果を奏する。
たとえば、製造誤差、経時変化等を考慮して、補正係数K2は、下記条件式を満たすように設定することが好ましい。
補正前の最小像面移動係数Kmin×0.8 ≦ 補正後の最小像面移動係数Kmin < 補正前の最小像面移動係数Kmin
また、補正係数K2は、例えば、下記条件式を満たすように設定することができる。
0.8 ≦ K2 < 1
さらに、本実施形態では、最小像面移動係数Kminを補正するための補正係数K2と同様に、最大像面移動係数Kmaxを補正するための補正係数K3がレンズメモリ37に記憶され、レンズ制御部36は補正係数K3を用いて、最大像面移動係数Kmaxを補正してカメラボディ2に送信するが詳細な説明は省略する。
《第7実施形態》
次いで、本発明の第7実施形態について説明する。第7実施形態では、以下の点において異なる以外は、上述した第3実施形態と同様の構成を有するものである。すなわち、上述した第3実施形態では、レンズメモリ37に記憶された最小像面移動係数Kminを用いて静音制御(クリップ動作)を行う例を説明した。これに対し、第7実施形態においては、レンズ鏡筒3のレンズメモリ37に補正係数K4が記憶されており、レンズ制御部36がレンズメモリ37に記憶された補正係数K4を用いて、最小像面移動係数Kminを補正してカメラボディに送信し、レンズ制御部36及びカメラ制御部21は補正された最小像面移動係数Kminを用いて静音制御を行うものであり、この点において上述した第3実施形態と相違する。
上述したように、第3実施形態では、レンズ制御部36がカメラ制御部21に現在像面移動係数Kcur、最小像面移動係数Kmin、最大像面移動係数Kmax、および静音下限レンズ移動速度V0bを送信し(図15のステップS501参照)、カメラ制御部21は静音下限像面移動速度V0b_maxを演算する(図15のステップS502参照)。そして、カメラ制御部21は、焦点検出用の像面移動速度V1a×Kc > 静音下限像面移動速度V0b_maxが成立するときクリップ動作「許可」と判断し、焦点検出用の像面移動速度V1a×Kc < 静音下限像面移動速度V0b_maxが成立するときクリップ動作「禁止」と判断する。
しかしながら、レンズ鏡筒3の量産時の製造誤差(図21参照)等により最小像面移動係数Kminがばらついた場合、又は、レンズ鏡筒3のメカ機構の経時変化(レンズを駆動する歯車の磨耗、レンズを保持する部材の磨耗等)により最小像面移動係数Kminが変化した場合、好適な静音制御(クリップ動作)ができなくなるおそれがある。このため、本実施形態では、最小像面移動係数Kminのばらつきや変化を考慮した補正係数K4をレンズメモリ37に記憶させている。レンズ制御部36は補正係数K4を用いて、最小像面移動係数Kminが補正前よりも小さな値になるように補正してカメラボディに送信する。
例えば、本実施形態において、最小像面移動係数Kminとして「100」という値、補正係数K4として「0.9」という値がレンズメモリ37に記憶されている場合、レンズ制御部36は、レンズメモリ37に記憶された最小像面移動係数Kmin(「100」)と、補正係数K4(「0.9」)とを用いて、最小像面移動係数Kminを補正(100×0.9=90)し、補正後の最小像面移動係数Kmin(「90」)をカメラボディ2に送信する。そして、カメラ制御部21は補正された最小像面移動係数Kmin(「90」)を用いて、焦点検出用の像面移動速度V1a×Kc < 静音下限像面移動速度V0b_maxが成立するか否かを判断する。
本実施形態では、補正係数K4を用いることにより、補正前の最小像面移動係数Kmin(「100」)よりも小さい最小像面移動係数Kmin(「90」)を用いて焦点検出用の像面移動速度V1a×Kc < 静音下限像面移動速度V0b_maxが成立するか否かを判断するので、補正前の最小像面移動係数Kmin(「100」)を用いた場合よりもクリップ動作「禁止」の判断がされ易くなる。このため、製造誤差、経時変化等により最小像面移動係数Kminが変化した場合でも、過剰なクリップ動作が抑制され、確実にピントを合わせることができる、という格別の効果を奏する。
例えば、製造誤差、経時変化等を考慮して、補正係数K4は、下記条件式を満たすように設定することが好ましい。
補正前の最小像面移動係数Kmin×0.8 ≦ 補正後の最小像面移動係数Kmin < 補正前の最小像面移動係数Kmin
また、補正係数K4は、例えば、下記条件式を満たすように設定することができる。
0.8 ≦ K4 < 1
また、本実施形態では、最小像面移動係数Kminを補正するための補正係数K4と同様に、最大像面移動係数Kmaxを補正するための補正係数K5がレンズメモリ37に記憶され、レンズ制御部36は補正係数K5を用いて、最大像面移動係数Kmaxを補正してカメラボディ2に送信するが詳細な説明は省略する。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。また、上述した各実施形態は、適宜組み合わせて用いることもできる。
たとえば、上述した実施形態においては、焦点距離が変化していない場合(すなわち、ズームレンズ32が駆動していない場合)であり、かつ、最小像面移動係数Kminが変化した場合に、通信異常、回路異常、記憶部(メモリ)の異常、電源異常等の何らかの異常が発生しているものと判定するような態様としたが、焦点距離が変化していない場合であり、最大像面移動係数Kmaxが変化した場合に、何らかの異常が発生しているものと判定するような態様としてもよい。あるいは、焦点距離が変化していない場合であり、最小像面移動係数Kminおよび最大像面移動係数Kmaxの少なくとも一方が変化した場合に、何らかの異常が発生しているものと判定するような態様としてもよい。特に、本実施形態によれば、最小像面移動係数Kmin、または、最大像面移動係数Kmaxを用いた簡単な処理により通信異常等の異常を検出できるので、信頼性の高い焦点調節制御装置を提供できる、という格別の効果を奏することができるものである。
また、上述した実施形態では、図3に示す各レンズ位置と像面移動係数Kとの関係を示すテーブルを、レンズメモリ37に記憶させるような構成としたが、レンズメモリ37ではなく、レンズ制御部36に記憶させるような構成としてもよい。さらに、上述した実施形態では、ズームレンズ32のレンズ位置およびフォーカスレンズ33のレンズ位置と、像面移動係数Kとの関係を示すテーブルを記憶するような構成としたが、このようなテーブルに加えて、環境温度やカメラ1の姿勢を加味したテーブルをさらに備えていてもよい。
なお、上述した実施形態のカメラ1は特に限定されず、たとえば、図22に示すように、本発明を、レンズ交換式のミラーレスカメラ1aに適用してもよい。図22に示す例において、カメラ本体2aは、逐次、撮像素子22により撮像した撮像画像をカメラ制御部21に送出し、液晶駆動回路25を介して観察光学系の電子ビューファインダ(EVF)26に表示する。この場合、カメラ制御部21は、たとえば、撮像素子22の出力を読み出し、読み出した出力に基づき、焦点評価値の演算を行うことで、コントラスト検出方式による撮影光学系の焦点調節状態の検出を行うことができる。また、デジタルビデオカメラ、レンズ一体型のデジタルカメラ、携帯電話用のカメラなどのその他の光学機器に本発明を適用してもよい。