以下、添付図面を参照して、超音波診断装置の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。図1に例示するように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、モニタ2と、入力装置3と、心電計4と、装置本体10とを有する。
超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体10が有する送受信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される。
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
第1の実施形態では、超音波により被検体Pを2次元で走査する超音波プローブ1が用いられる。例えば、超音波プローブ1は、複数の圧電振動子が一列に配列された1Dアレイプローブである。ただし、第1の実施形態において、超音波プローブ1は、例えば、超音波により被検体Pを2次元で走査するとともに、被検体Pを3次元で走査することが可能なメカニカル4Dプローブや2Dアレイプローブであっても良い。メカニカル4Dプローブは、一列に配列された複数の圧電振動子により2次元走査が可能であるとともに、一列に配列された複数の圧電振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで3次元走査が可能である。また、2Dアレイプローブは、マトリックス状に配置された複数の圧電振動子により3次元走査が可能であるとともに、超音波を集束して送信することで2次元走査が可能である。なお、2Dアレイプローブは、複数断面の2次元走査を同時に行なうことも可能である。
入力装置3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等を有し、超音波診断装置の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して受け付けた各種設定要求を転送する。なお、第1の実施形態に係る入力装置3が操作者から受け付ける設定情報については、後に詳述する。
モニタ2は、超音波診断装置の操作者が入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像等を表示したりする。また、モニタ2は、装置本体10の処理状況を操作者に通知するために、各種のメッセージを表示する。また、モニタ2は、スピーカーを有し、音声を出力することもできる。例えば、モニタ2のスピーカーは、装置本体10の処理状況を操作者に通知するために、ビープ音などの所定の音声を出力する。
心電計4は、2次元走査される被検体Pの生体信号として、被検体Pの心電波形(ECG: Electrocardiogram)を取得する。心電計4は、取得した心電波形を装置本体10に送信する。
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する装置である。図1に示す装置本体10は、超音波プローブ1が受信した2次元の反射波データに基づいて2次元の超音波画像データを生成可能な装置である。
装置本体10は、図1に示すように、送受信部11と、Bモード処理部12と、ドプラ処理部13と、画像生成部14と、画像メモリ15と、内部記憶部16と、画像処理部17と、制御部18とを有する。
送受信部11は、パルス発生器、送信遅延部、パルサ等を有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延部は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
なお、送受信部11は、後述する制御部18の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
また、送受信部11は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延部、加算器等を有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延部は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延部によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
送受信部11は、被検体Pを2次元走査する場合、超音波プローブ1から2次元の超音波ビームを送信させる。そして、送受信部11は、超音波プローブ1が受信した2次元の反射波信号から2次元の反射波データを生成する。
ここで、送受信部11からの出力信号の形態は、RF(Radio Frequency)信号と呼ばれる位相情報が含まれる信号である場合や、包絡線検波処理後の振幅情報である場合等、種々の形態が選択可能である。
Bモード処理部12は、送受信部11から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
ドプラ処理部13は、送受信部11から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
なお、図1に例示するBモード処理部12及びドプラ処理部13は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理部12は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、ドプラ処理部13は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。
画像生成部14は、Bモード処理部12及びドプラ処理部13が生成したデータから超音波画像データを生成する。すなわち、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度で表した2次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表す2次元ドプラ画像データを生成する。2次元ドプラ画像データは、速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらを組み合わせた画像である。また、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成した1走査線上のBモードデータの時系列データから、Mモード画像データを生成することも可能である。また、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成したドプラデータから、血流や組織の速度情報を時系列に沿ってプロットしたドプラ波形を生成することも可能である。
ここで、画像生成部14は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成部14は、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成部14は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成部14は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成部14が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。画像生成部14は、スキャンコンバート処理前の2次元超音波画像データである「2次元Bモードデータや2次元ドプラデータ」から、表示用の2次元超音波画像データである「2次元のBモード画像データや2次元ドプラ画像データ」を生成する。
画像メモリ15は、画像生成部14が生成した表示用の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ15は、Bモード処理部12やドプラ処理部13が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ15が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成部14を経由して表示用の超音波画像データとなる。
なお、画像生成部14は、超音波画像データと当該超音波画像データを生成するために行なわれた超音波走査の時間とを、心電計4から送信された心電波形に対応付けて画像メモリ15に格納する。後述する画像処理部17や制御部18は、画像メモリ15に格納されたデータを参照することで、超音波画像データを生成するために行なわれた超音波走査時の心時相を取得することができる。
内部記憶部16は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、内部記憶部16は、必要に応じて、画像メモリ15が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、内部記憶部16が記憶するデータは、図示しないインターフェースを経由して、外部装置へ転送することができる。なお、外部装置は、例えば、画像診断を行なう医師が使用するPC(Personal Computer)や、CDやDVD等の記憶媒体、プリンター等である。
画像処理部17は、コンピュータ支援診断(Computer-Aided Diagnosis:CAD)を行なうために、装置本体10に設置される。画像処理部17は、画像メモリ15に格納された超音波画像データを取得して、診断支援のための画像処理を行なう。そして、画像処理部17は、画像処理結果を、画像メモリ15や内部記憶部16に格納する。なお、画像処理部17が行なう処理については、後に詳述する。
制御部18は、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、制御部18は、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部16から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信部11、Bモード処理部12、ドプラ処理部13、画像生成部14及び画像処理部17の処理を制御する。また、制御部18は、画像メモリ15や内部記憶部16が記憶する表示用の超音波画像データをモニタ2にて表示するように制御する。また、制御部18は、画像処理部17の処理結果をモニタ2に表示するように制御したり、外部装置に出力したりするように制御する。また、制御部18は、画像処理部17の処理結果に基づいて、所定の音声をモニタ2のスピーカーから出力するように制御する。
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、2次元超音波画像データを用いて容積情報の計測を行なう。例えば、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、被検体Pの心臓を含む断面を超音波走査することで生成された2次元超音波画像データを用いて、心臓の容積情報の計測を行なう。
従来、心エコー検査では、心臓の容積情報の推定は、簡便性の理由から、主に、Mモード法を用いて行なわれていたが、Mモード法により推定された容積情報には、誤差が含まれる場合があった。そこで、精度良く容積情報を推定できる方法として、2次元超音波画像データ(2次元Bモード画像データ)を用いた方法が知られている。以下、2次元超音波画像データを用いた容積情報の推定方法について説明する。
「Area−Length法」や「ディスク総和法(Simpson法)」は、1断面の2次元超音波画像データに描出された2次元の輪郭から、3次元的な内腔形状を推定して、容積情報を精度良く推定する方法として知られている。図2は、ディスク総和法(Simpson法)を説明するための図である。
ディスク総和法(Simpson法)を行なう場合、従来の超音波診断装置は、例えば、操作者がA4C像に描出された左心室内腔の輪郭をトレースした情報から、内腔領域(内腔の輪郭位置)の設定を受け付け、設定された内腔領域の長軸を検出する。或いは、操作者は、長軸を指定するための2点を設定する。そして、従来の超音波診断装置は、例えば、図2に示すように、A4C像で設定された左心室の内腔領域を左心室の長軸(図中のLを参照)に垂直な20個のディスクに等分する。そして、従来の超音波診断装置は、i番目のディスクが内膜面と交差する2点の距離(図中のaiを参照)を算出する。そして、従来の超音波診断装置は、図2に示すように、i番目のディスクにおける内腔の3次元形状を直径「ai」の円柱のスライスとして近似する。そして、従来の超音波診断装置は、以下の式(1)により、20個の円柱の体積の総和を、内腔容積を近似した容積情報として算出する。なお、式(1)では、長軸長を「L」として示している。
また、「Area−Length法」は、例えば、左心室を回転楕円体として仮定し、左室長軸(L)を含む左室内腔面積と左室内腔長軸長との計測結果から、左室内腔短軸長を算出して、内腔容積の近似値を算出する方法である。「Area−Length法」を行なう場合、従来の超音波装置は、例えば、操作者のトレース結果から、左室内腔面積と左室内腔長軸長「L」とを用いて、「8×(内腔面積)2/(3×π×L)」として内腔容積を近似した容積情報を算出する。
また、「Area−Length法」や「ディスク総和法(Simpson法)」より更に、精度良く容積情報を推定する方法として、「ディスク総和法(Simpson法)」の修飾法である「modified−Simpson法」が知られている。図3は、modified−Simpson法を説明するための図である。
「modified−Simpson法」では、例えば、A4C面及びA2C面の2断面それぞれの2次元走査を行なうことで収集されたA4C像及びA2C像が用いられる。「modified−Simpson法」を行なう場合、従来の超音波診断装置は、例えば、操作者がA4C像に描出された左心室内腔の輪郭をトレースした情報から、内腔領域(内腔の輪郭位置)の設定を受け付け、設定された内腔領域の長軸を検出する。また、従来の超音波診断装置は、例えば、操作者がA2C像に描出された左心室内腔の輪郭をトレースすることで、内腔領域(内腔の輪郭位置)の設定を受け付け、設定された内腔領域の長軸を検出する。或いは、操作者は、各断面で、長軸を指定するための2点を設定する。そして、従来の超音波診断装置は、例えば、A4C像及びA2C像それぞれを長軸に垂直な20個のディスクに等分する。そして、従来の超音波診断装置は、例えば、図3に示すように、A4C面のi番目のディスクが内膜面と交差する2点の距離(図中のaiを参照)と、A2C面のi番目のディスクが内膜面と交差する2点の距離(図中のbiを参照)とを算出する。そして、従来の超音波診断装置は、i番目のディスクの内腔の3次元形状を、「ai」及び「bi」から推定される長径及び短径を有する楕円体のスライスとして近似する。そして、従来の超音波診断装置は、以下の式(2)により、20個の円柱の体積の総和を、内腔容積を近似した容積情報として算出する。なお、式(2)では、A4C像の長軸長とA2C像の長軸長とから算出した代表値(例えば、最大値、又は、平均値)を「L」として示している。
また、「Area−Length法」についても、異なる2断面(例えばA4C像とA2C像)の計測結果を用いて、内腔容積の推定精度を高める方法(biplane Area−Length法)が報告されている。「biplane Area−Length法」では、「8×(断面1の内腔面積)×(断面2の内腔面積)/(3×π×L)、ただしLは、断面1と断面2とで長い方の長軸長」として内腔容積を近似した容積情報を算出する。以下では、2断面を用いる例として、「modified−Simpson法」を代表して説明する。
「modified−Simpson法」では、2断面の長軸長の誤差が20%以上の場合、再測定する必要がある。しかし、2断面の長軸長の誤差が10%以内であれば、「modified−Simpson法」を用いた容積情報の計測精度は、局所壁運動異常のある症例の場合(例えば、内腔形状が複雑な症例の場合)であっても、実用上充分な精度であることが知られている。
ここで、心室や心房の容積情報としては、内腔容積や、外腔容積及び内腔容積から求められる心筋容積、心筋容積から求められる心筋重量等がある。また、特に、心疾患の診断を行なう際に重要となる容積情報としては、例えば、心室や心房のポンプとしての機能を示す指標値である駆出率(左室の場合は、「Ejection Fraction」、左房の場合は、「Empty Fraction」:共にEF)がある。EFは、拡張末期(End Diastole:ED)の内腔容積と、収縮末期(End Systole:ES)の内腔容積とにより定義される値である。
上記の容積情報を「modified−Simpson法」により計測する場合、操作者が手動で行なう処理は、以下の5つのステップとなる。
まず、操作者は、例えば、A4C像の2次元超音波画像データを時系列に沿って収集し、その後、A2C像の2次元超音波画像データを時系列に沿って収集する。これにより、操作者は、A4C像の動画データ(以下、A4C像群)とA2C像の動画データ(以下、A2C像群)とを取得する(第1ステップ)。
そして、操作者は、A4C像群から、EDのA4C像を選択し、選択したEDのA4C像に描出された内腔(心筋内膜)をトレースする(第2ステップ)。なお、操作者は、外腔容積も容積情報として取得したい場合は、EDのA4C像に描出された外腔(心筋外膜)もトレースする。
そして、操作者は、A4C像群から、ES時相のA4C像を選択し、選択したES時相のA4C像に描出された内腔をトレースする(第3ステップ)。なお、操作者は、外腔容積も容積情報として取得したい場合は、ES時相のA4C像に描出された外腔もトレースする。
そして、操作者は、A2C像群から、EDのA2C像を選択し、選択したEDのA2C像に描出された内腔をトレースする(第4ステップ)。なお、操作者は、外腔容積も容積情報として取得したい場合は、EDのA2C像に描出された外腔もトレースする。
そして、操作者は、A2C像群から、ESのA2C像を選択し、選択したESのA2C像に描出された内腔をトレースする(第5ステップ)。なお、操作者は、外腔容積も容積情報として取得したい場合は、ESのA2C像に描出された外腔もトレースする。
上述した5つのステップを受け付けた後、従来の超音波診断装置は、「modified−Simpson法」を行なって、容積情報の計測結果(推定結果)を出力する。しかし、上述した5つのステップを操作者が手動で行なうことは、煩雑な処理であり、操作者の手間が増す。このため、「modified−Simpson法」は、実際の臨床現場では浸透していない。また、「biplane Area−Length法」においても上述した5つのステップが操作者により手動で行なわれることから、「biplane Area−Length法」も、操作者にとって簡易に容積情報を取得できる方法ではなかった。
そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、容積情報の高精度な計測結果を簡易に取得するために、以下に説明する画像処理部17の処理を行なう。
図4は、第1の実施形態に係る画像処理部の構成例を示すブロック図である。図4に例示するように、第1の実施形態に係る画像処理部17は、画像取得部17aと、輪郭位置取得部17bと、容積情報算出部17cと、検出部17dとを有する。
第1の実施形態では、まず、操作者は、超音波プローブ1を用いて、所定の複数断面それぞれを少なくとも1心拍以上の所定区間で超音波走査する。例えば、操作者は、心臓の長軸像であるA4C像を時系列に沿って収集するために、心尖部アプローチにより、A4C面を1心拍以上の所定区間で超音波走査する。これにより、画像生成部14は、所定区間の時系列に沿った複数のA4C面の2次元超音波画像データを生成し、画像メモリ15に格納する。また、操作者は、心臓の長軸像であるA2C像を時系列に沿って収集するために、心尖部アプローチにより、A2C面を1心拍以上の所定区間で超音波走査する。これにより、画像生成部14は、所定区間の時系列に沿った複数のA2C面の2次元超音波画像データ(A2C像)を生成し、画像メモリ15に格納する。なお、第1の実施形態に係る2次元超音波画像データは、2次元Bモード画像データである。
そして、画像取得部17aは、所定の複数断面それぞれを少なくとも1心拍以上の所定区間で超音波走査することで生成された複数の2次元超音波画像データ群を取得する。図5は、第1の実施形態に係る画像取得部を説明するための図である。画像取得部17aは、例えば、図3に示すように、1心拍区間の時系列に沿った複数のA4C面の2次元超音波画像データ(A4C像群)と、1心拍区間の時系列に沿った複数のA2C面の2次元超音波画像データ(A2C像群)とを取得する。ここで、画像取得部17aは、心電計4により得られた心電波形から、特徴波(例えば、R波やP波)となる時相を検出して、1心拍区間のA4C像群と、1心拍区間のA2C像群とを取得する。
そして、図4に示す輪郭位置取得部17bは、所定区間に渡って2次元のパターンマッチングを含む追跡処理を行なって、複数の2次元超音波画像データ群それぞれに含まれる所定部位の内腔及び外腔の少なくとも1つの輪郭位置の時系列データを取得する。すなわち、輪郭位置取得部17bは、2次元の動画データに対して、2次元スペックルトラッキング(2D Speckle Tracking:2DT)処理を行なう。スペックルトラッキング法は、パターンマッチング処理と共に、例えば、オプティカルフロー法や種々の時空間補間処理を併用することで、正確な動きを推定する方法である。また、スペックルトラッキング法には、パターンマッチング処理を行なわずに、動きを推定する方法もある。
ここで、輪郭位置取得部17bは、所定部位として心臓の心室及び心房の少なくとも1つの輪郭位置を取得する。すなわち、2DT処理の対象となる部位は、右心房の内腔、右心房の外腔、右心室の内腔、右心室の外腔、左心房の内腔、左心房の外腔、左心室の内腔及び左心室の外腔から、操作者が選択した1つ又は複数の部位となる。以下では、2DT処理の対象となる部位として、左心室の内腔及び左心室の外腔が選択された場合について説明する。
例えば、入力装置3は、操作者から、追跡点の設定要求を受け付ける。追跡点の設定要求が転送された制御部18は、初期時相の2次元超音波画像データを画像メモリ15から読み出して、モニタ2に表示させる。
具体的には、制御部18は、初期時相としてEDを用い、EDのA4C像及びEDのA2C像を画像メモリ15から読み出して、モニタ2に表示させる。例えば、制御部18は、A4C像の動画データの中で、R波時相のA4C像をEDのA4C像として選択する。また、例えば、制御部18は、A2C像の動画データの中で、R波時相のA2C像をEDのA2C像として選択する。
或いは、制御部18は、初期時相としてESを用い、ESのA4C像及びESのA2C像を画像メモリ15から読み出して、モニタ2に表示させても良い。初期時相としてESを用いる場合、制御部18は、予め格納されたテーブルを参照して、A4C像の動画データからESのA4C像を選択し、A2C像の動画データからESのA2C像を選択する。例えば、内部記憶部16は、ES時相の2次元超音波画像データを推定するためのテーブルとして、基準時相(例えば、R波時相)からESとなるまでの経過時間が、心拍数に応じて対応付けられたテーブルを記憶する。制御部18は、被検体Pの心電波形から心拍数を算出し、算出した心拍数に対応する経過時間を取得する。そして、制御部18は、取得した経過時間に該当する2次元超音波画像データを動画データから選択し、選択した2次元超音波画像データをESの2次元超音波画像データとしてモニタ2に表示させる。
なお、初期時相のデータ選択処理は、制御部18以外に、例えば、画像取得部17aや輪郭位置取得部17bが行なう場合であっても良い。また、初期時相として、動画データの第1フレームを用いる場合であっても良い。
図6は、2次元スペックルトラッキングの一例を説明するための図である。操作者は、図6に例示する初期時相の2次元超音波画像データを参照して、2DTを行なう追跡点を設定する。例えば、操作者は、初期時相の2次元超音波画像データにおいて、左心室の内膜及び左心室の外膜を、入力装置3のマウスを用いてトレースする。輪郭位置取得部17bは、トレースされた内膜面及び外膜面から2次元的な2つの境界面を、初期時相の2つの輪郭(初期輪郭)として再構成する。そして、輪郭位置取得部17bは、図6に例示するように、初期時相の内膜面及び外膜面それぞれにおいて、ペアとなる複数の追跡点を設定する。輪郭位置取得部17bは、初期時相のフレームで設定された複数の追跡点それぞれに対して、テンプレートデータを設定する。テンプレートデータは、追跡点を中心とする複数のピクセルから構成される。
そして、輪郭位置取得部17bは、2つのフレーム間でテンプレートデータのスペックルパターンと最も一致する領域を探索することで、テンプレートデータが次のフレームでどの位置に移動したかを追跡する。かかる追跡処理により、輪郭位置取得部17bは、初期時相の2次元超音波画像データ以外の2次元超音波画像データ群での各追跡点の位置を取得する。
これにより、輪郭位置取得部17bは、例えば、A4C像に含まれる左心室内腔の輪郭位置の時系列データと、A4C像に含まれる左心室外腔の輪郭位置の時系列データとを取得する。また、輪郭位置取得部17bは、例えば、A2C像に含まれる左心室内腔の輪郭位置の時系列データと、A2C像に含まれる左心室外腔の輪郭位置の時系列データとを取得する。輪郭位置取得部17bが上記の2DT処理を行なうことで、上述した従来の第3ステップ及び第5ステップ、又は、上述した従来の第2ステップ及び第4ステップが自動化される。
なお、初期輪郭の設定は、上述したように、操作者が用手的に行なう場合に限定されるものではない。例えば、初期輪郭の設定は、以下に説明するように自動的に行なわれる場合であっても良い。例えば、輪郭位置取得部17bは、操作者が初期時相の画像データにおいて指定した弁輪部位の位置と心尖部位の位置とから、初期輪郭の位置を推定する。或いは、例えば、輪郭位置取得部17bは、操作者からの情報を受け付けることなく、初期時相の画像データから初期輪郭の位置を推定する。これらの自動推定では、画像の輝度情報を用いた境界推定技術や、予め「心臓の形状情報」として登録された形状辞書と画像の特徴とを識別器で比較照合して境界を推定する境界推定技術が用いられる。初期輪郭の自動設定が行われる場合、上述した従来の第2ステップ〜第5ステップが自動化される。
図4に示す容積情報算出部17cは、複数の2次元超音波画像データ群それぞれから取得された複数の輪郭位置の時系列データに基づいて、所定部位の容積情報を算出する。具体的には、容積情報算出部17cは、複数断面の2次元画像データから容積を推定するディスク総和法の修飾法である「modified−Simpson法」を用いて容積情報を算出する。図7は、第1の実施形態に係る容積情報算出部が算出する容積情報の一例を示す図である。
第1の実施形態に係る容積情報算出部17cは、図7に示すように、容積情報として、拡張末期容積「EDV(mL)」の数値情報、収縮末期容積「ESV(mL)」の数値情報、駆出率「EF(%)」の数値情報、心筋容積(mL)の数値情報、心筋重量(g)の数値情報及びMass−Index(g/m2)の数値情報の少なくとも1つを算出する。
例えば、容積情報算出部17cは、A4C像における左心室内腔の輪郭位置の時系列データにおけるEDの輪郭位置と、A2C像における左心室内腔の輪郭位置の時系列データにおけるEDの輪郭位置とから、上述した「modified−Simpson法」により、左心室のEDVを算出する。また、容積情報算出部17cは、A4C像における左心室内腔の輪郭位置の時系列データにおけるESの輪郭位置と、A2C像における左心室内腔の輪郭位置の時系列データにおけるESの輪郭位置とから、上述した「modified−Simpson法」により、左心室のESVを算出する。そして、容積情報算出部17cは、左心室のEDVと左心室のESVとから、左室駆出率を算出する。
また、容積情報算出部17cは、A4C像における左心室外腔の輪郭位置の時系列データにおけるEDの輪郭位置と、A2C像における左心室外腔の輪郭位置の時系列データにおけるEDの輪郭位置とから、上述した「modified−Simpson法」により、左心室のEDの外腔容積を算出する。そして、容積情報算出部17cは、左心室のEDの外腔容積からEDVを差し引くことで、心筋容積を算出する。ここで、心筋容積は、心拍にともない変化するが、心筋容積の時間にともなう変化の度合いは少ないことから、外腔容積の算出用の時相として、例えば、ED等の特定の心時相を用いることができる。なお、外腔容積の算出用の時相は、ED以外の時相(例えば、ES)を用いても良い。
また、容積情報算出部17cは、「心筋容積(mL)」に平均的な心筋密度値(例えば、1.05g/mL)を乗算することで「心筋重量(g)」を算出する。また、容積情報算出部17cは、「心筋重量(g)」を「体表面積(BSA)(m2)」で規格化することで「Mass−Index(g/m2)」を算出する。なお、第1の実施形態に係る容積情報算出部17cは、「Area−Length法」の修飾法である「biplane Area−Length法」により上記の容積情報を算出しても良い。
ここで、容積情報算出部17cは、ED時相の輪郭位置を、上述したように、R波時相の輪郭位置を選択することで、取得することができる。一方、容積情報算出部17cは、ES時相の輪郭位置の選択を、上述したテーブルから取得した経過時間を用いて行なっても良いが、容積情報の算出精度を向上させるために、以下で説明する2つの選択方法を行なうことが好適である。
第1の選択方法は、操作者が収縮末期の時相の設定を行なう方法である。すなわち、入力装置3は、収縮末期の時相の設定を受け付ける。そして、容積情報算出部17cは、入力装置3が受け付けた設定情報に基づいて、複数の輪郭位置の時系列データそれぞれから収縮末期時相の輪郭位置を選択する。
具体的には、第1の選択方法では、操作者は、被検体Pの大動脈弁が閉鎖する時間(AVC時間)を設定する。AVC時間は、R波を基準とし、R波から第II音となるまでの経過時間を心音図から計測することで取得できる。或いは、AVC時間は、ドプラ波形から、駆出の終了時間を計測することで取得できる。容積情報算出部17cは、AVC時間の最寄りの時相(例えば、AVC時間の直前の時相)の輪郭位置を、ES時相の輪郭位置として選択する。第1の実施形態は、第1の選択方法を用いる場合であっても良いが、第1の選択方法は、AVC時間を取得するために、別途計測が必要となる。
これに対して、第2の選択方法は、図4に示す検出部17dを用いてES時相を自動的に検出することで、ES時相の輪郭位置を自動的に選択する方法である。図4に示す検出部17dは、複数の輪郭位置の時系列データそれぞれから、容積情報が最小又は最大となる時相を収縮末期時相として検出する。例えば、心房が所定部位である場合、検出部17dは、複数の輪郭位置の時系列データそれぞれから、容積情報が最大となる時相を収縮末期時相として検出する。また、心室が所定部位である場合、検出部17dは、複数の輪郭位置の時系列データそれぞれから、容積情報が最小となる時相を収縮末期時相として検出する。図8は、第1の実施形態に係る検出部を説明するための図である。
一例として、検出部17dは、上述した「Area−Length法」や「ディスク総和法」を用いて、1断面の輪郭位置の時系列データから、容積の時系列データを算出する。例えば、検出部17dは、A4C像の動画データから輪郭位置取得部17bが取得した輪郭位置の時系列データを用いて、左心室内腔容積の時系列データを算出する。また、検出部17dは、A2C像の動画データから輪郭位置取得部17bが取得した輪郭位置の時系列データを用いて、左心室内腔容積の時系列データを算出する。そして、検出部17dは、図8に例示するように、左心室内腔容積の時系列データ(図中の破線の時間変化曲線を参照)において左心室内腔容積が最小となる時相を、ES時相として検出する。なお、検出部17dは、容積情報として、輪郭位置の時系列データから内腔面積の時系列データを算出し、内腔面積の時系列データを用いて、収縮末期時相を検出しても良い。また、1断面の輪郭位置の時系列データを用いた容積情報算出処理は、容積情報算出部17cが行なっても良い。
そして、第2の選択方法では、容積情報算出部17cは、検出部17dが収縮末期時相として検出した時相に基づいて、複数の輪郭位置の時系列データそれぞれから収縮末期時相の輪郭位置を選択する。
第1の実施形態では、容積情報算出部17cは、第1の選択方法、又は、第2の選択方法により収縮末期時相として特定された時相の輪郭位置を選択する。そして、容積情報算出部17cは、収縮末期時相の輪郭位置として選択した輪郭位置を用いて、収縮末期時相に基づく容積情報(例えば、収縮末期容積や、収縮末期容積及び拡張末期容積に基づく駆出率等)を算出する。
そして、制御部18は、容積情報算出部17cが算出した容積情報を出力するように制御する。例えば、制御部18は、容積情報をモニタ2に表示するように制御する。或いは、制御部18は、容積情報を外部装置に出力するように制御する。
次に、図9を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図9は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理の一例を説明するためのフローチャートである。なお、図9では、初期輪郭が操作者により設定され、検出部17dを用いた第2の選択方法が実行される場合のフローチャートを示している。
図9に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、処理対象となる複数断面それぞれの2次元超音波画像データ群が指定され、容積情報の算出要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、容積情報の算出要求を受け付けない場合(ステップS101否定)、超音波診断装置は、容積情報の算出要求を受け付けるまで待機する。
一方、容積情報の算出要求を受け付けた場合(ステップS101肯定)、画像取得部17aは、指定された複数断面(断面数=N)の2次元超音波画像データ群を取得する(ステップS102)。そして、制御部18は、「s=1」と設定し(ステップS103)、輪郭位置取得部17bは、断面sの2次元超音波画像データ群を選択する(ステップS104)。そして、輪郭位置取得部17bは、断面sの初期輪郭が設定されたか否かを判定する(ステップS105)。ここで、断面sの初期輪郭が設定されない場合(ステップS105否定)、輪郭位置取得部17bは、初期輪郭が設定されるまで待機する。
一方、初期輪郭が設定された場合(ステップS105肯定)、輪郭位置取得部17bは、解析区間(ts≦t≦te)を設定し、2DT処理を行なう(ステップS106)。例えば、輪郭位置取得部17bは、1心拍区間の断面sの2次元超音波画像データ群を対象として、2DT処理を行なう。これにより、輪郭位置取得部17bは、断面sの輪郭位置の時系列データP(s,t)を取得し、内部記憶部16に格納する(ステップS107)。
そして、輪郭位置取得部17bは、「s=N」であるか否かを判定する(ステップS108)。ここで、「s」が「N」でない場合(ステップS108否定)、輪郭位置取得部17bは、「s=s+1」と設定し(ステップS109)、ステップS104に戻って、断面sの2次元超音波画像データ群を選択する。
一方、「s=N」である場合(ステップS108肯定)、検出部17dは、P(1,t)〜P(N,t)それぞれのES時相を検出する(ステップS110)。そして、容積情報算出部17cは、P(1,t)〜P(N,t)から、「modified−Simpson法」又は「biplane Area−Length法」により、容積情報を算出し(ステップS111)、制御部18は、容積情報を出力するように制御して(ステップS112)、処理を終了する。
上述したように、第1の実施形態では、2DT処理を用いて、少なくとも1心拍区間に渡る複数断面の動画像データそれぞれから、例えば、内膜及び外膜それぞれの輪郭位置の時系列データを自動的に取得する。そして、第1の実施形態では、自動的に取得された輪郭位置の時系列データを用いて、「modified−Simpson法」又は「biplane Area−Length法」により、高精度な容積情報(例えば、EFや心筋重量等)を算出することができる。従って、第1の実施形態によれば、容積情報の高精度な計測結果を簡易に取得することができる。
また、第1の実施形態では、第2の選択方法により、ES時相を自動検出することで、容積情報の算出処理における簡便性をより向上させるとともに、計測時の検者依存性を自動検出により軽減することで、容積情報の算出の再現性を向上させることができる。
なお、第1の実施形態は、以下に説明する2つの変形例を行なっても良い。以下、図10、図11A及び図11Bを用いて第1の実施形態に係る変形例について説明する。図10は、第1の実施形態に係る第1の変形例を説明するための図であり、図11A及び図11Bは、第1の実施形態に係る第2の変形例を説明するための図である。
第1の変形例では、輪郭位置情報取得部17bは、複数の2次元超音波画像データ群それぞれに対して連続する複数心拍区間に渡って追跡処理を行なうことで、当該複数の2次元超音波画像データ群それぞれの複数心拍の輪郭位置の時系列データを取得する。
そして、第1の変形例では、容積情報算出部17cは、複数の2次元超音波画像データ群それぞれの複数心拍の輪郭位置の時系列データから複数心拍の容積情報を算出し、更に、当該算出した複数心拍の容積情報を平均した平均容積情報を算出する。そして、第1の変形例では、制御部18は、平均容積情報を出力するように制御する。
例えば、容積情報算出部17cは、図10に例示するように、3心拍分のEFとして、EF(心拍1)、EF(心拍2)及びEF(心拍3)を算出する。更に、容積情報算出部17cは、図10に例示するように、EF(心拍1)、EF(心拍2)及びEF(心拍3)を平均することで平均EFを算出する。
すなわち、上記の2DT処理は、連続する複数心拍の区間でも行なうことができる。本変形例では、複数心拍の2DT処理結果から、複数心拍の容積情報を算出し、更に、複数心拍の容積情報を平均することで、安定した容積情報を簡易に取得することができる。
第2の変形例は、A4C像とA2C像の2断面の輪郭情報を用いる「modified−Simpson法」を応用して、更に、心尖部長軸像(apical long-axis view、以下、A3C像)の輪郭情報を加えた3断面の輪郭情報から容積を推定するものである。
第2の変形例では、操作者は、A4C面、A2C面及びA3C面それぞれを1心拍以上の所定区間で超音波走査する。そして、画像取得部17aは、図11Aに示すように、1心拍以上の時系列に沿った複数のA4C像の動画データと、1心拍以上の時系列に沿った複数のA3C像の動画データと、1心拍以上の時系列に沿った複数のA2C像の動画データとを取得する。
そして、輪郭位置取得部17bは、A4C像の輪郭位置の時系列データ、A2C像の輪郭位置の時系列データ及びA3C像の輪郭位置の時系列データを取得する。そして、容積情報算出部17cは、A4C像の輪郭位置と、A2C像の輪郭位置と、A3C像の輪郭位置とに基づいて、A4C像、A3C像、及びA2C像それぞれを長軸に垂直な20個のディスクに等分する。そして、容積情報算出部17cは、A4C像のi番目のディスクが内膜面と交差する2点の位置と、A3C像のi番目のディスクが内膜面と交差する2点の位置と、A2C像のi番目のディスクが内膜面と交差する2点の位置とを取得する。
そして、容積情報算出部17cは、取得した6つの点の位置から、i番目のディスクの内腔形状を、例えば、「Spline補間」により決定する(図11Bに示す破線の閉曲線を参照)。そして、容積情報算出部17cは、i番目のディスクにおける内腔の3次元形状を、Spline閉曲線を上面及び下面とする柱体のスライスとして近似する。容積情報算出部17cは、以下の式(3)により、20個の柱体の体積の総和を、内腔容積を近似した容積情報として算出する。なお、式(3)では、i番目のディスクにおけるSpline閉曲線の面積を「Ai」として示している。また、式(3)では、A4C像の長軸長とA2C像の長軸長とA3C像の長軸長から算出した代表値(例えば、最大値、又は、平均値)を「L」として示している。
本変形例では、3断面の輪郭位置を用いた容積情報が容積情報算出部17cにより算出され、出力される。本変形例では、処理対象となる断面が1つ増すことで、画像処理部17の処理数が増える。しかし、本変形例では、走査断面を1つ加えるといった比較的簡便な処理を追加するだけで、複雑な心臓の形状を伴う症例における容積計測の精度を向上させることができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した自動的な処理で生じ得る容積情報の算出精度が低下する要因となる情報を、操作者に報知する場合について、図12を用いて説明する。図12は、第2の実施形態に係る検出部を説明するための図である。
なお、第2の実施形態に係る画像処理部17は、図4に例示した第1の実施形態に係る画像処理部17と同様の構成を有する。すなわち、第4の実施形態に係る画像処理部17は、第1の実施形態及び変形例それぞれで説明した処理を行なう画像取得部17a、輪郭位置取得部17b、容積情報算出部17c及び検出部17dを有する。しかし、第2の実施形態では、検出部17dは、ES時相の検出とともに、更に、以下の3つの検出処理を行なう。
第1の実施形態では、検出部17dは、第2の選択方法として、2DT処理から取得された輪郭位置の時系列データから、ES時相の自動検出処理を行なった。しかし、2DT処理における追跡ミスにより、検出部17dにより行なわれる時相検出処理には、誤りが生じる場合がある。そこで、第2の実施形態に係る検出部17dは、図12に示すように、更に、複数の輪郭位置の時系列データそれぞれで検出した収縮末期時相の差異である時相差異(ES時相の差異)を検出する。
そして、制御部18は、時相差異を表示させる表示制御処理、及び、時相差異が所定の値を超えた場合に通知を行なわせる通知制御処理の少なくとも1つを行なう。例えば、制御部18は、検出部17dが検出した時相差異をモニタ2に表示させ、更に、時相差異が所定の上限値を超える場合は、再追跡処理や、ES時相の修正を促すために、モニタ2のスピーカーからビープ音を出力させる。或いは、制御部18は、時相差異が所定の上限値を超える場合は、再追跡処理や、ES時相の修正を促すためメッセージをモニタ2に表示させる。例えば、制御部18は、「A4C像のES時相とA2C像のES時相との差異(誤差)を、A4C像のES時相及びA2C像のES時相の最大値で除算した値」が所定の設定値(例えば、10%)を超える場合、通知制御処理を行なう。
また、第2の実施形態に係る検出部17dは、第1の選択方法を行なう場合であっても、第2の選択方法を行なう場合であっても、複数の2次元超音波画像データ群の間で、1心拍区間の差異である区間差異を検出する。例えば、第2の実施形態に係る検出部17dは、図12に示すように、A4C像の動画データのRR間隔と、A2C像の動画データのRR間隔との差異を検出する。そして、時相差異が検出された場合と同様に、制御部18は、区間差異を表示させる表示制御処理、及び、区間差異が所定の値を超えた場合に通知を行なわせる通知制御処理の少なくとも1つを行なう。例えば、制御部18は、「A4C像のRR間隔とA2C像のRR間隔との差異(誤差)を、A4C像のRR間隔及びA2C像のRR間隔の最大値で除算した値」が所定の設定値(例えば、5%)を超える場合、通知制御処理を行なう。
また、第2の実施形態に係る検出部17dは、第1の選択方法を行なう場合であっても、第2の選択方法を行なう場合であっても、複数の2次元超音波画像データ群の間で、ディスク総和法の修飾法(modified−Simpson法)で用いられる長軸長の差異である長軸差異を、複数の輪郭位置の時系列データを用いて検出する。例えば、検出部17dは、ED時相のA4C像の長軸長とED時相のA2C像の長軸長との差異を検出する。そして、時相差異及び区間差異が検出された場合と同様に、制御部18は、長軸差異を表示させる表示制御処理、及び、長軸差異が所定の値を超えた場合に通知を行なわせる通知制御処理の少なくとも1つを行なう。例えば、制御部18は、「A4C像の長軸長とA2C像の長軸長との差異(誤差)を、A4C像の長軸長及びA2C像の長軸長の最大値で除算した値」が所定の設定値(例えば、10%)を超える場合、通知制御処理を行なう。
更に、第2の実施形態では、検出部17dにより検出されたES時相を操作者が修正可能とするために、以下の処理が行なわれる。すなわち、入力装置3は、検出部17dが各輪郭位置の時系列データで検出した収縮末期時相を参照した操作者から当該収縮末期時相の変更を受け付ける。そして、容積情報算出部17cは、入力装置3が受け付けた変更後の収縮末期時相に基づいて、容積情報を再算出する。
例えば、制御部18は、ES時相の修正を促すためメッセージを参照した操作者から修正を行なうためのデータ表示要求を受け付けた場合、各断面でES時相として検出された時相及び当該時相の前後の複数フレームの2次元超音波画像データをモニタ2に表示させる。操作者は、表示された各断面の複数フレームを参照して、自身がES時相として適切であると判断したフレームを、入力装置3を用いて選択することで、修正指示を入力する。なお、操作者は、表示された各断面の複数フレームを参照して、ES時相として検出された時相がES時相として適切であると判断した場合、修正を行なわない旨の指示を入力する。
次に、図13及び図14を用いて、第2の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図13は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の容積情報算出処理の一例を説明するためのフローチャートである。また、図14は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の容積情報再算出処理の一例を説明するためのフローチャートである。なお、図13では、初期輪郭が操作者により設定され、検出部17dを用いた第2の選択方法が実行される場合のフローチャートを示している。
図13に示すように、第2の実施形態に係る超音波診断装置は、処理対象となる複数断面それぞれの2次元超音波画像データ群が指定され、容積情報の算出要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS201)。ここで、容積情報の算出要求を受け付けない場合(ステップS201否定)、超音波診断装置は、容積情報の算出要求を受け付けるまで待機する。
一方、容積情報の算出要求を受け付けた場合(ステップS201肯定)、画像取得部17aは、指定された複数断面(断面数=N)の2次元超音波画像データ群を取得する(ステップS202)。そして、制御部18は、「s=1」と設定し(ステップS203)、輪郭位置取得部17bは、断面sの2次元超音波画像データ群を選択する(ステップS104)。そして、輪郭位置取得部17bは、断面sの初期輪郭が設定されたか否かを判定する(ステップS205)。ここで、断面sの初期輪郭が設定されない場合(ステップS205否定)、輪郭位置取得部17bは、初期輪郭が設定されるまで待機する。
一方、初期輪郭が設定された場合(ステップS205肯定)、輪郭位置取得部17bは、解析区間(ts≦t≦te)を設定する(ステップS206)。そして、検出部17dは、s>1の場合、解析区間の差異(区間差異)を検出し、モニタ2は、制御部18の制御により、複数断面間の解析区間の差異を表示する(ステップS207)。なお、解析区間の差異が所定の上限値を越える場合、制御部18の制御により、モニタ2は、別の動画データを用いた解析を促すメッセージ等を表示する。なお、操作者は、上限値を越えたことを示すメッセージ等の通知が出力された場合、容積情報の算出処理を中断しても良い。
そして、輪郭位置取得部17bは、2DT処理を行ない、断面sの輪郭位置の時系列データP(s,t)を取得する(ステップS208)。そして、検出部17dは、P(s,t)を用いて、ES時相の検出及び長軸長の検出を行なう。そして、検出部17dは、s>1の場合、ES時相の差異及び長軸長の差異を検出し、モニタ2は、制御部18の制御により、ES時相の差異及び長軸長の差異を表示する(ステップS209)。なお、ES時相の差異、又は、長軸長の差異が所定の上限値を越える場合、制御部18の制御により、モニタ2は、ES時相の修正や、再解析を促すメッセージ等を表示する。なお、操作者は、上限値を越えたことを示すメッセージ等の通知が出力された場合、容積情報の算出処理を中断しても良い。
そして、輪郭位置取得部17bは、P(s,t)を内部記憶部16に格納する(ステップS210)。そして、輪郭位置取得部17bは、「s=N」であるか否かを判定する(ステップS211)。ここで、「s」が「N」でない場合(ステップS211否定)、輪郭位置取得部17bは、「s=s+1」と設定し(ステップS212)、ステップS204に戻って、断面sの2次元超音波画像データ群を選択する。
一方、「s=N」である場合(ステップS211肯定)、検出部17dが検出したP(1,t)〜P(N,t)それぞれのES時相を用いて、容積情報算出部17cは、P(1,t)〜P(N,t)から、容積情報を算出し(ステップS213)、制御部18は、容積情報を出力するように制御して(ステップS214)、処理を終了する。
そして、図14に示すように、第2の実施形態に係る超音波診断装置は、ES時相の修正を促すためメッセージを参照した操作者からES時相修正のためのデータ表示要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS301)。ここで、データ表示要求を受け付けない場合(ステップS301否定)、第2の実施形態に係る超音波診断装置は、処理を終了する。
一方、データ表示要求を受け付けた場合(ステップS301肯定)、制御部18の制御により、モニタ2は、各断面でES時相として検出された時相及び当該時相の前後の複数フレームの2次元超音波画像データを表示する(ステップS302)。そして、制御部18は、ES時相の修正指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS303)。ここで、ES時相の修正指示を受け付けない場合(ステップS303否定)、制御部18は、操作者から修正を行なわない旨の指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS304)。ここで、修正を行なわない旨の指示を受け付けた場合(ステップS304肯定)、制御部18は、処理を終了する。
一方、修正を行なわない旨の指示を受け付けない場合(ステップS304否定)、制御部18は、ステップS303に戻って、ES時相の修正指示を受け付けたか否かを判定する。
そして、ES時相の修正指示を受け付けた場合(ステップS303肯定)、容積情報算出部17cは、修正されたES時相に基づいて、容積情報を再算出する(ステップS305)。そして、制御部18は、再算出された容積情報を出力し(ステップS306)、処理を終了する。
上述したように、第2の実施形態では、追跡ミスにより自動的なES時相選択に誤りが生じ得ることから、ES時相の自動検出に伴う複数断面間での誤差を操作者にフィードバックする。すなわち、第2の実施形態では、ES時相の差異を表示して追跡結果(すなわち、容積情報の算出結果)の信頼度を担保すると共に、時相差異が所定の上限値を超える場合には、例えば、ES時相の修正を促すメッセージ(又は、再追跡を促すメッセージ)を通知することができる。
また、第2の実施形態では、動画データ間の1心拍区間の差異の程度を表示して、解析対象となる画像データの妥当性を担保すると共に、区間差異が所定の上限値を超える場合には、例えば、別の動画データを用いた解析を促すメッセージを通知することができる。
区間差異に関する通知を行なうことで、解析に用いる動画像データの選択時に、操作者がビューワーで表示された同一患者の複数の動画像のデータ候補から所望のデータを指定する作業時の誤りを軽減することができる。具体的には、ストレスエコーで得られた一連の動画像データでは、負荷状態が異なることで、心拍数が異なるデータが多数混在する。或いは、心房細動症例では、RR区間の変動が大きいために、断面の異なる複数の動画像データの心拍区間が、ばらついた状態で多数ビューワーに表示される。このようなケースにおいて、本実施形態で説明した区間差異の通知により、データ指定における作業の誤りを軽減することができる。
また、上述したように、「modified−Simpson法」では左室長軸長の誤差の程度が、容積情報の信頼性を担保するうえで、重要である。そこで、第2の実施形態では、動画データ間の長軸長の差異の程度を表示して、解析対象となる画像データの妥当性を担保すると共に、長軸差異が所定の上限値を超える場合には、例えば、再解析や別の動画データを用いた解析を促すメッセージを通知することができる。
このように、第2の実施形態では、容積情報の算出精度が低下する要因となる各種の差異情報を検出して出力することで、容積情報の算出精度を更に向上させることができる。
なお、第2の実施形態は、容積情報の算出精度が低下する要因が生じることを回避するために、以下の変形例が行なわれる場合であっても良い。図15は、第2の実施形態に係る変形例を説明するための図である。
本変形例に係る画像取得部17aは、複数の2次元超音波画像データ群それぞれから、1心拍区間が略一致する2次元超音波画像データ群を取得する。例えば、図15に示すように、2DT処理を行なった1心拍区間のA4C像の動画データのRR間隔が「T(A4C)」であったとする。また、例えば、図15に示すように、A4C像の動画データが3心拍区間の動画データであったとする。かかる場合、画像取得部17aは、図15に示すように、3心拍区間のA2C像の動画データから、1心拍区間ごとに3つのRR間隔「T1(A2C),T2(A2C),T3(A2C)」を算出する。そして、画像取得部17aは、図15に示すように、例えば、「T(A4C)」との差異が最小となる「T2(A2C)」の1心拍区間のA2C像の動画データを、輪郭位置取得部17bに出力する。
なお、本変形例では、画像取得部17aは、例えば、複数心拍期間のA4C像の動画データ及び複数心拍期間のA2C像の動画データそれぞれから、RR間隔が略一致する1心拍期間の動画データを取得して、輪郭位置取得部17bに出力しても良い。或いは、画像取得部17aは、例えば、複数心拍期間のA4C像の動画データ及び複数心拍期間のA2C像の動画データそれぞれから、RR間隔が略一致する3心拍期間の動画データを取得して、輪郭位置取得部17bに出力しても良い。かかる場合、容積情報算出部17cは、第1の実施形態に係る第1の変形例で説明したように、A4C像の3心拍期間の輪郭位置の時系列データと、A2C像の3心拍期間の輪郭位置の時系列データとから、平均容積情報を算出する。或いは、画像取得部17aは、例えば、複数心拍期間のA4C像の動画データ及び複数心拍期間のA2C像の動画データそれぞれから、RR間隔が略一致する1心拍期間の動画データのペアを複数取得して、輪郭位置取得部17bに出力しても良い。かかる場合、容積情報算出部17cは、ペアごとに、容積情報を算出する。
本変形例を行なうことで、解析対象となる動画データの選択処理を自動化することができ、容積情報の算出に必要となる操作者の負担を更に軽減することができる。なお、上述した第2の実施形態及び変形例で説明した処理は、「modified−Simpson法」ではなく、「biplane Area−Length法」により容積情報を算出する場合であっても適用可能である。
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、容積情報として、容積の時間変化曲線を算出する場合について、説明する。
第3の実施形態に係る画像処理部17は、図4に例示した第1の実施形態に係る画像処理部17と同様の構成を有する。すなわち、第3の実施形態に係る画像処理部17は、第1の実施形態及び変形例や、第2の実施形態及び変形例それぞれで説明した処理を行なう画像取得部17a、輪郭位置取得部17b、容積情報算出部17c及び検出部17dを有する。ただし、第3の実施形態では、容積情報算出部17cは、複数の輪郭位置の時系列データから、EDVや、ESV、EF、心筋重量等の他、更に、容積情報の時系列データ(容積情報の時間変化曲線)を算出する。なお、容積情報算出部17cは、「modified−Simpson法」又は「biplane Area−Length法」により容積情報の時系列データを算出する。そして、制御部18は、容積情報の時間変化曲線を出力させる。
例えば、容積情報算出部17cは、複数の輪郭位置の時系列データから、左心室内腔容積の時間変化曲線を算出する。或いは、例えば、容積情報算出部17cは、複数の輪郭位置の時系列データから、心筋重量の時間変化曲線を算出する。ここで、心筋重量の値は、心筋の非圧縮性仮定が成り立つ場合には心周期内での時間的変化は小さいので、拡張末期時相での値で代表するのが好適である。しかし、第3の実施形態では、容積情報の時系列データの算出及び出力することから、詳細な心筋重量の解析の用途として心筋重量の時間変化曲線を出力しても良い。
ただし、容積情報算出部17cは、上記の容積情報の時間変化曲線を算出する場合、少なくとも1心拍の全心時相で容積の値を算出する必要がある。ここで、2Dアレイプローブを用いて同時に複数の断面(例えば、A4C像とA2C像)を走査することで、複数断面の動画像データを同時に収集する場合、容積情報算出部17cは、各動画像データから、同一心時相での容積の値を演算することができる。しかし、1Dアレイプローブを用いて異なる時期に収集された複数の動画像データを用いると、各動画像データには、同一心時相の画像データが含まれない場合がある。すなわち、心拍の揺らぎにより1心拍時間は、複数の動画像データ間で変化する。また、断面を変えた動画像データでは、走査画角等の条件が変わり得るために、複数の動画像データ間でフレームレート設定が異なる場合も起こる。そこで、第3の実施形態では、これらの時間的な変動要因を考慮して、ある心時相での輪郭情報から容積の値を算出するにあたり、動画像データ群における1つの画像データの時相と同一の時相となる他の画像データの輪郭位置を、時間的に補間して与えてから容積を算出することが必要となる。
そこで、第3の実施形態では、輪郭位置取得部17bは、容積情報の時間変化情報が算出される場合、時間的補間処理を行なって、複数の輪郭位置の時系列データそれぞれを、略同一時相の輪郭位置を有する同期した時系列データに補正する。補間方法としては、以下に説明する2つの補間方法がある。図16及び図17は、第3の実施形態に係る輪郭位置取得部を説明するための図である。
まず、第1の補間方法について、図16を用いて説明する。なお、図16に示す一例では、A4C像の動画データのフレーム間隔が「dT1」であり、A2C像の動画データのフレーム間隔が「dT2(dT2<dT1)」であるとして示している(図16の上図を参照)。
第1の補間方法を行なう場合、輪郭位置取得部17bは、例えば、図16の下図に示すように、基準時相であるR波時相に合わせて、A4C像の輪郭位置の時系列データとA2C像の輪郭位置の時系列データとの開始点を揃える。なお、基準時相としては、心房収縮の起点となるP波時相が設定される場合であっても良い。
例えば、輪郭位置取得部17bは、フレーム間隔が長いA4C像の輪郭位置の時系列データを補間対象とする。そして、輪郭位置取得部17bは、「dT2」間隔で取得したA2C像の輪郭位置と同一時相(R波時相からの同一の経過時間)のA4C像の輪郭位置を、当該時相(当該経過時間)の近傍にて取得したA4C像の輪郭位置を用いて、補間処理により算出する(図16の下図に示す破線の丸枠を参照)。図16の下図に示す一例では、輪郭位置取得部17bは、2つの白抜き丸の時相で取得した2つの輪郭位置から、1つの黒丸の時相における輪郭位置を、補間処理により算出している。これより、輪郭位置取得部17bは、A2C像の輪郭位置の時系列データと同様に時間分解能が「dT2」となるA4C像の輪郭位置の時系列データを生成する。これにより、輪郭位置取得部17bは、A4C像の輪郭位置の時系列データとA2C像の輪郭位置の時系列データとを同期した時系列データとする。
一方、第2の補間方法を行なう場合、輪郭位置取得部17bは、A4C像の輪郭位置の時系列データ及びA2C像の輪郭位置の時系列データそれぞれの基準時相間の間隔を相対的に合わせる。例えば、第2の補間方法では、図17に示すように、A4C像の輪郭位置の時系列データを、A4C像収集時の被検体PのRR間隔を100%とする時系列データとする。また、例えば、第2の補間方法では、図17に示すように、A2C像の輪郭位置の時系列データを、A2C像収集時の被検体PのRR間隔を100%とする時系列データとする。そして、輪郭位置取得部17bは、100%とした基準時相間の期間を所定の間隔で分割した複数の相対的経過時間(例えば、5%、10%、15%、20%等)を設定する。
そして、輪郭位置取得部17bは、A4C像の輪郭位置の時系列データにおいては、各相対的経過時間の輪郭位置を、当該相対的経過時間それぞれの近傍にて取得したA4C像の輪郭位置を用いて補間処理により算出する。また、輪郭位置取得部17bは、A2C像の輪郭位置の時系列データにおいては、各相対的経過時間の輪郭位置を、当該相対的経過時間それぞれの近傍にて取得したA2C像の輪郭位置を用いて補間処理により算出する。
そして、輪郭位置取得部17bは、相対的経過時間(%)を絶対時間(ミリ秒)に変換するために、相対的経過時間(%)に「A4C像収集時のRR間隔/100」、又は、「A2C像収集時のRR間隔/100」を乗算する。或いは、輪郭位置取得部17bは、相対的経過時間(%)に「(A4C像収集時のRR間隔とA2C像収集時のRR間隔との平均値)/100」を乗算する。これにより、輪郭位置取得部17bは、A4C像の輪郭位置の時系列データとA2C像の輪郭位置の時系列データとを同期した時系列データとする。
これにより、容積情報算出部17cは、例えば、同一時相での内腔容積や、同一時相での心筋重量を算出することができる。
次に、図18を用いて、第3の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図18は、第3の実施形態に係る超音波診断装置の処理の一例を説明するためのフローチャートである。なお、図18では、第1の実施形態や第2の実施形態で説明した処理により、複数断面全ての輪郭位置の時系列データが取得されたことを契機に行なわれる処理を示している。
図18に示すように、第3の実施形態に係る超音波診断装置は、P(1,t)〜P(N,t)が取得されたか否かを判定する(ステップS401)。ここで、P(1,t)〜P(N,t)が全て取得されていない場合(ステップS401否定)、超音波診断装置は、複数断面全ての輪郭位置の時系列データが取得されるまで待機する。
一方、P(1,t)〜P(N,t)が全て取得された場合(ステップS401肯定)、輪郭位置取得部17bは、第1の補間方法又は第2の補間方法により、補間処理を行なう(ステップS402)。そして、容積情報算出部17cは、検出部17dが検出したP(1,t)〜P(N,t)それぞれのES時相を用いて、P(1,t)〜P(N,t)から、容積情報の時系列データV(t)を算出する(ステップS403)。そして、制御部18は、容積情報の時系列データV(t)を出力するように制御して(ステップS404)、処理を終了する。
上述したように、第3の実施形態では、輪郭位置の補間処理を行なうことで、容積情報の時系列データを、精度良く算出することができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、複数断面の輪郭位置の時系列データを用いて、更に、壁運動情報を算出する場合について、図19及び図20等を用いて説明する。図19は、第4の実施形態に係る画像処理部の構成例を示すブロック図であり、図20は、第4の実施形態で出力される情報の一例を示す図である。
第4の実施形態に係る画像処理部17は、図19に例示するように、図4に例示した第1の実施形態に係る画像処理部17と比較して、更に、壁運動情報算出部17eを有する。すなわち、第4の実施形態に係る画像処理部17は、第1〜第3の実施形態及び変形例それぞれで説明した処理を行なう画像取得部17a、輪郭位置取得部17b、容積情報算出部17c及び検出部17dを有し、壁運動情報算出部17eを有する。
一般的に、2DT処理では、心筋の歪み(ストレイン、strain)等の情報が壁運動情報として求められる。また、かかる壁運動情報は、時間変化曲線として出力されることが好適である。第4の実施形態では、第1〜第3の実施形態で説明したように、2DT処理により輪郭位置を追跡可能な構成を用いて、容積情報とともに、壁運動情報を同時に得て、同時に出力する。
すなわち、図19に例示する壁運動情報算出部17eは、複数の輪郭位置の時系列データに基づいて、所定部位の壁運動情報を算出する。そして、制御部18は、容積情報及び壁運動情報を出力するように制御する。
具体的には、壁運動情報算出部17eは、壁運動情報として、局所的な歪み(Strain)、局所的な変位(Displacement)、局所的な歪みの時間変化率(Strain Rate)、局所的な変位の時間変化率(Velocity)、全体的な歪み、全体的な変位、全体的な歪みの時間変化率、全体的な変位の時間変化率の少なくとも1つを算出する。なお、壁運動情報算出部17eは、例えば、第1の実施形態で説明した検出部17dが検出したES時相の輪郭位置から、ES時相の壁運動情報を算出する。或いは、壁運動情報算出部17eは、壁運動情報の時系列データを算出する。壁運動情報算出部17eが壁運動情報の時系列データを算出する場合、輪郭位置取得部17bは、第3の実施形態で説明した補間処理により、複数断面それぞれの輪郭位置の時系列データを同期した時系列データに補正する。
例えば、壁運動情報算出部17eは、A4C断面又はA2C断面の内膜及び外膜の2DTの結果から、壁運動情報として局所的な長軸(Longitudinal)方向の歪み(LS)や、局所的な円周(Circumferential)方向の歪み(CS)、局所的な壁厚(Radial)方向の歪み(RS)を算出する。或いは、例えば、壁運動情報算出部17eは、A4C断面及びA2C断面の内膜及び外膜の2DTの結果から、壁運動情報として上記のA4C断面及びA2C断面の局所的な歪みを平均することで、全体的な歪みを算出する。また、壁運動情報算出部17eは、局所的な歪みの時間変化率や、全体的の歪みの時間変化率を算出する。
例えば、壁運動情報算出部17eは、A4C断面又はA2C断面の内膜及び外膜の2DTの結果から、壁運動情報として局所的な長軸方向の変位(LD)や、局所的な壁厚(Radial)方向の変位(RD)を算出する。或いは、例えば、壁運動情報算出部17eは、A4C断面及びA2C断面の内膜及び外膜の2DTの結果から、壁運動情報として上記のA4C断面及びA2C断面の局所的な変位を平均することで、全体的な変位を算出する。また、壁運動情報算出部17eは、局所的な変位の時間変化率(局所的な心筋速度)や、全体的の変位の時間変化率(全体的な心筋速度)を算出する。なお、壁運動情報として変位を用いる場合、壁運動情報算出部17eは、基準時相(例えば、R波)での追跡点の位置に対する、基準位相以外の時相での追跡点の移動距離(Absolute Displacement:AD)を算出しても良い。
なお、壁運動情報算出部17eが算出する壁運動情報の種別は、操作者により指定される。或いは、壁運動情報算出部17eが算出する壁運動情報の種別は、システムに保存されている状態が初期的に設定される。
ここで、制御部18の制御により、容積情報算出部17cは、例えば、図20に示すように、内腔容積(Volume [mL])の時間変化曲線を生成する。また、壁運動情報算出部17eは、例えば、図20に示すように、LS(Strain [%])の時間変化曲線を生成する。更に、例えば、制御部18の制御により、容積情報算出部17c、壁運動情報算出部17e、又は、画像生成部14は、図20に示すように、内腔容積の時間変化曲線とLSの時間変化曲線とを重畳したグラフを生成する。
そして、制御部18は、図20に例示するグラフを、例えば、モニタ2に表示させる。図20に例示するグラフに示される複数断面を用いた容積の計測結果は、主に、局所的な形状変形を伴うことの多い局所壁運動異常のある症例での容積推定精度確保のために用いられる。また、図20に例示するグラフに示される心筋ストレインの計測結果は、虚血性心疾患や非同期性を伴う疾患での壁運動異常の程度を評価するための指標として用いられる。図20に例示するグラフにより、容積情報とストレイン情報とを同時に表示することで、操作者は、容積情報だけを出力する場合と比較して、より詳細な心機能の診断を簡便かつ正確に行なうことができる。
また、第4の実施形態は、例えば、制御部18の制御により、容積情報算出部17c又は壁運動情報算出部17eが、図20に例示するように、同一の心時相で得られた2つの時間変化曲線のグラフから、容積のピーク(極小)時間とストレインのピーク(LSの極小)時間の時間差(図20に例示する「dt」を参照)を算出しても良い。かかる場合、制御部18は、2つのピーク時間の時間差「dt」もグラフと合わせて出力する。図20に例示する容積及び壁運動情報の時間変化曲線やピーク時間の時間差は、治療前や治療後、治療後の定期的な検査それぞれで算出可能である。操作者は、このような結果を治療経過の中で比較することで、治療の効果判定に役立てることができる。
次に、図21を用いて、第4の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図21は、第4の実施形態に係る超音波診断装置の処理の一例を説明するためのフローチャートである。なお、図21では、第1の実施形態や第2の実施形態で説明した処理により、複数断面全ての輪郭位置の時系列データが取得されたことを契機に行なわれる処理を示している。また、図21では、壁運動情報として時系列データが算出される場合について説明している。
図18に示すように、第4の実施形態に係る超音波診断装置は、P(1,t)〜P(N,t)が取得されたか否かを判定する(ステップS501)。ここで、P(1,t)〜P(N,t)が全て取得されていない場合(ステップS501否定)、超音波診断装置は、複数断面全ての輪郭位置の時系列データが取得されるまで待機する。
一方、P(1,t)〜P(N,t)が全て取得された場合(ステップS501肯定)、輪郭位置取得部17bは、第1の補間方法又は第2の補間方法により、補間処理を行なう(ステップS502)。そして、容積情報算出部17cは、検出部17dが検出したP(1,t)〜P(N,t)それぞれのES時相を用いて、P(1,t)〜P(N,t)から、容積情報の時系列データV(t)を算出する(ステップS503)。
また、壁運動情報算出部17eは、検出部17dが検出したP(1,t)〜P(N,t)それぞれのES時相を用いて、P(1,t)〜P(N,t)から、壁運動情報の時系列データS(t)を算出する(ステップS504)。そして、壁運動情報算出部17eは、容積のピーク時間と壁運動情報のピーク時間の時間差を算出する(ステップS505)。
そして、制御部18は、V(t)、S(t)及び時間差を出力するように制御して(ステップS506)、処理を終了する。
上述したように、第4の実施形態では、容積情報とともに、壁運動情報や、容積情報及び壁運動情報から検出可能な情報(時間差)を出力するので、操作者は、心疾患の診断における様々な重要かつ精度の高い情報を、簡易に取得することができる。
なお、第1〜第4の実施形態及び変形例で説明した画像処理方法は、容積情報を算出する対象として、心臓以外の臓器(例えば、肝臓等)や臓器に発生した腫瘍等が用いられる場合であっても適用可能である。この場合には、拍動や呼吸に伴う画像内での腫瘍の移動があっても、2DT処理により自動的に腫瘍の位置を追跡することができる。その結果、腫瘍全体や腫瘍内の特定の部位についての1心拍内や複数心拍における容積変化の状態を位置ずれの影響を受けることがなく正確に評価することができる。
また、第1〜第4の実施形態及び変形例で説明した画像処理方法は、超音波診断装置以外の医用画像診断装置(例えば、X線CT装置、MRI装置等)において、所定の複数断面それぞれを少なくとも1心拍以上の所定区間で撮影した複数の2次元医用画像データ群を用いて行なわれる場合であっても良い。すなわち、2次元X線CT画像データや、2次元MRI画像データにおいてもパターンマッチング処理による2DT処理が可能であることから、第1〜第4の実施形態及び変形例で説明した画像処理方法は、超音波診断装置以外の医用画像診断装置で実行される場合であっても良い。
また、第1〜第4の実施形態及び変形例で説明した画像処理方法は、医用画像診断装置とは独立に設置された画像処理装置で行なわれる場合であっても良い。かかる場合、画像処理装置は、医用画像診断装置、又は、PACSのデータベースや、電子カルテシステムのデータベースから受信した複数の2次元医用画像データ群を受信して上述した画像処理方法を実行する。
また、上述した第1〜第4の実施形態及び変形例で説明した画像処理方法は、あらかじめ用意された画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。この画像処理プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、この画像処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD、USBメモリ及びSDカードメモリ等のFlashメモリ等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって非一時的な記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上、説明したとおり、第1〜第4の実施形態及び変形例によれば、容積情報の高精度な計測結果を簡易に取得することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。