以下、図面を参照して、実施形態に係る超音波診断装置及び画像処理プログラムを説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101と、入力装置102と、ディスプレイ103と、心電計104とを有する。超音波プローブ101、入力装置102、ディスプレイ103、及び心電計104は、装置本体100と通信可能に接続される。
超音波プローブ101は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、装置本体100が有する送受信回路110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ101は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ101は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ101は、装置本体100と着脱自在に接続される。
超音波プローブ101から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ101が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
第1の実施形態では、超音波により被検体Pを2次元で走査する超音波プローブ101が用いられる。例えば、超音波プローブ101は、複数の圧電振動子が一列に配列された1Dアレイプローブである。1Dアレイプローブは、例えば、セクタ型超音波プローブ、リニア型超音波プローブ、コンベックス型超音波プローブ等である。ただし、第1の実施形態において、超音波プローブ101は、例えば、超音波により被検体Pを2次元で走査するとともに、被検体Pを3次元で走査することが可能なメカニカル4Dプローブや2Dアレイプローブであっても良い。メカニカル4Dプローブは、一列に配列された複数の圧電振動子により2次元走査が可能であるとともに、一列に配列された複数の圧電振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで3次元走査が可能である。また、2Dアレイプローブは、マトリックス状に配置された複数の圧電振動子により3次元走査が可能であるとともに、超音波を集束して送受信することで2次元走査が可能である。なお、2Dアレイプローブは、複数断面の2次元走査を同時に行なうことも可能である。
入力装置102は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等を有し、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体100に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
ディスプレイ103は、超音波診断装置1の操作者が入力装置102を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像データ等を表示したりする。また、ディスプレイ103は、装置本体100の処理状況を操作者に通知するために、各種のメッセージを表示する。また、ディスプレイ103は、スピーカーを有し、音声を出力することもできる。例えば、ディスプレイ103のスピーカーは、装置本体100の処理状況を操作者に通知するために、ビープ音などの所定の音声を出力する。
心電計104は、2次元走査される被検体Pの生体信号として、被検体Pの心電波形(Electrocardiogram:ECG)を取得する。心電計104は、取得した心電波形を装置本体100に送信する。なお、本実施形態では、被検体Pの心臓の心時相に関する情報を取得する手段の一つとして、心電計104を用いる場合を説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置1は、後述する2次元スペックルトラッキング(2D Speckle Tracking:2DT)により算出される心筋内腔容積が最小となる時間を収縮末期時間(ESt)として取得することで、被検体Pの心臓の心時相に関する情報を取得してもよい。また、超音波診断装置1は、心音図の第II音(第二音)の時間若しくはスペクトラムドプラによる心臓の駆出血流の計測により求まる大動脈弁閉鎖(Aortic Valve Close:AVC)時間を取得することで、被検体Pの心臓の心時相に関する情報を取得してもよい。
装置本体100は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する装置である。図1に示す装置本体100は、超音波プローブ101が受信した2次元の反射波データに基づいて2次元の超音波画像データを生成可能な装置である。
装置本体100は、図1に示すように、送受信回路110と、Bモード処理回路120と、ドプラ処理回路130と、画像生成回路140と、画像メモリ150と、内部記憶回路160と、処理回路170とを有する。
送受信回路110は、パルス発生器、送信遅延部、パルサ等を有し、超音波プローブ101に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延部は、超音波プローブ101から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
なお、送受信回路110は、後述する処理回路170の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
また、送受信回路110は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延部、加算器等を有し、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延部は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延部によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
送受信回路110は、被検体Pを2次元走査する場合、超音波プローブ101から2次元の超音波ビームを送信させる。そして、送受信回路110は、超音波プローブ101が受信した2次元の反射波信号から2次元の反射波データを生成する。
ここで、送受信回路110からの出力信号の形態は、RF(Radio Frequency)信号と呼ばれる位相情報が含まれる信号である場合や、包絡線検波処理後の振幅情報である場合等、種々の形態が選択可能である。
Bモード処理回路120は、送受信回路110から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
ドプラ処理回路130は、送受信回路110から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
なお、図1に例示するBモード処理回路120及びドプラ処理回路130は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理回路120は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、ドプラ処理回路130は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。
画像生成回路140は、Bモード処理回路120及びドプラ処理回路130が生成したデータから超音波画像データを生成する。すなわち、画像生成回路140は、Bモード処理回路120が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度で表した2次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成回路140は、ドプラ処理回路130が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表す2次元ドプラ画像データを生成する。2次元ドプラ画像データは、速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらを組み合わせた画像である。また、画像生成回路140は、Bモード処理回路120が生成した1走査線上のBモードデータの時系列データから、Mモード画像データを生成することも可能である。また、画像生成回路140は、ドプラ処理回路130が生成したドプラデータから、血流や組織の速度情報を時系列に沿ってプロットしたドプラ波形を生成することも可能である。
ここで、画像生成回路140は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成回路140は、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成回路140は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成回路140は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成回路140が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。画像生成回路140は、スキャンコンバート処理前の2次元超音波画像データである「2次元Bモードデータや2次元ドプラデータ」から、表示用の2次元超音波画像データである「2次元のBモード画像データや2次元ドプラ画像データ」を生成する。
画像メモリ150は、画像生成回路140が生成した表示用の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ150は、Bモード処理回路120やドプラ処理回路130が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ150が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成回路140を経由して表示用の超音波画像データとなる。
なお、画像生成回路140は、超音波画像データと、当該超音波画像データを生成するために行なわれた超音波走査の時間とを、心電計104から送信された心電波形に対応付けて画像メモリ150に格納する。後述する処理回路170は、画像メモリ150に格納されたデータを参照することで、超音波画像データを生成するために行なわれた超音波走査時の心時相を取得することができる。
内部記憶回路160は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、内部記憶回路160は、必要に応じて、画像メモリ150が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、内部記憶回路160が記憶するデータは、図示しないインターフェースを経由して、外部装置へ転送することができる。なお、外部装置は、例えば、画像診断を行なう医師が使用するPC(Personal Computer)や、CDやDVD等の記憶媒体、プリンター等である。
処理回路170は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。具体的には、処理回路170は、入力装置102を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶回路160から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路110、Bモード処理回路120、ドプラ処理回路130、及び画像生成回路140の処理を制御する。また、処理回路170は、画像メモリ150や内部記憶回路160が記憶する表示用の超音波画像データをディスプレイ103にて表示するように制御する。
また、処理回路170は、解析情報生成機能171と、表示画像生成機能172と、表示制御機能173とを実行する。なお、処理回路170が実行する解析情報生成機能171、表示画像生成機能172、及び表示制御機能173の処理内容については、後述する。
ここで、例えば、図1に示す処理回路170の構成要素である解析情報生成機能171、表示画像生成機能172、及び表示制御機能173が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で内部記憶回路160に記録されている。処理回路170は、各プログラムを内部記憶回路160から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路170は、図1の処理回路170内に示された各機能を有することとなる。
なお、本実施形態においては、単一の処理回路170にて、以下に説明する各処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは内部記憶回路160に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、内部記憶回路160にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、個別に収集された複数断面の画像データの時相を合わせて極座標表示画像(以下、ポーラーマップ(Polar-map)とも称する)を表示することができる。例えば、超音波診断装置1は、被検体Pの心臓を通る複数断面それぞれを少なくとも1心拍以上の期間にわたって超音波走査することで、複数断面の超音波画像データを個別に収集する。そして、超音波診断装置1は、個別に収集した複数断面の超音波画像データの時相を合わせることにより、心臓の壁運動の経時的変化に関する情報をポーラーマップ上に表示することができる。
図2は、第1の実施形態に係る複数断面の超音波走査について説明するための図である。図2において、横軸は時間に対応する。図2に示すように、例えば、操作者は、セクタ型の超音波プローブ101を用いて、心尖部アプローチにより異なる3断面それぞれの超音波画像データを個別に収集する。具体的には、まず、操作者は、心臓の長軸像の一つである心尖四腔像(A4C像:Apical Four Chamber View)を時系列に沿って収集するために、1心拍以上の期間にわたってA4C面の超音波走査を行う(1回目の超音波走査)。これにより、画像生成回路140は、1心拍以上の期間の時系列に沿った複数のA4C面の2次元Bモード画像データ(動画像データ)を生成し、画像メモリ150に格納する。また、操作者は、心臓の長軸像の一つである心尖二腔像(A2C像:Apical Two Chamber View)を時系列に沿って収集するために、1心拍以上の期間にわたってA2C面の超音波走査を行う(2回目の超音波走査)。これにより、画像生成回路140は、1心拍以上の期間の時系列に沿った複数のA2C面の2次元Bモード画像データを生成し、画像メモリ150に格納する。また、操作者は、心臓の長軸像の一つである心尖三腔像(A3C像:Apical Three Chamber View)を時系列に沿って収集するために、1心拍以上の期間にわたってA3C面の超音波走査を行う(3回目の超音波走査)。これにより、画像生成回路140は、1心拍以上の期間の時系列に沿った複数のA3C面の2次元Bモード画像データを生成し、画像メモリ150に格納する。なお、A3C像は、心尖長軸像(Apical Long Axis View:A-LAX)とも呼ばれる。
このように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、異なる時間帯において複数断面それぞれの超音波走査を順に実行することにより、時系列に沿った複数の超音波画像データ(超音波画像データ群)を断面ごとに個別に収集する。
ここで、図2に示したように、異なる時間帯で個別に複数断面の超音波画像データが収集される場合には、収集された各断面の超音波画像データに含まれる心時相は、被検体の心拍の揺らぎにより変化してしまう。例えば、1回目の超音波走査が行われた時間帯における1心拍の長さと、2回目の超音波走査が行われた時間帯における1心拍の長さは、心拍の揺らぎにより変化してしまう。
また、個別に複数断面の超音波画像データが収集される場合には、各断面の超音波走査が同一のフレームレートで実行されるとも限らない。例えば、収集する断面の視野深度を深くする場合や走査画角を広げる場合には、フレームレートを下げざるを得ない場合がある。つまり、個別に複数断面の超音波画像データが収集される場合には、各断面のフレームレートが変化し得るために、各断面の超音波画像データ群の時間間隔は、フレームレートの変化に応じて異なってしまう。
そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、個別に収集された複数断面の画像データの時相を合わせてポーラーマップを表示するために、以下に説明する処理回路170の各機能を実行する。
解析情報生成機能171は、被検体Pの心臓を通る複数断面それぞれを少なくとも1心拍以上の期間にわたって超音波走査することで収集された各断面の画像データに対して2次元のパターンマッチングを含む追跡処理を行って、各断面における被検体Pの心臓の壁運動を解析した解析情報を生成する。例えば、解析情報生成機能171は、異なる時間帯に収集された各断面の画像データから、各断面の解析情報を生成する。なお、解析情報生成機能171は、解析情報生成部の一例である。
まず、解析情報生成機能171は、所定の複数断面それぞれを少なくとも1心拍以上の期間に超音波走査することで収集された複数の2次元超音波画像データ群を取得する。例えば、解析情報生成機能171は、1心拍区間の時系列に沿った複数のA4C面の2次元超音波画像データ群(A4C像群)を取得する。また、解析情報生成機能171は、1心拍区間の時系列に沿った複数のA2C面の2次元超音波画像データ群(A2C像群)を取得する。また、解析情報生成機能171は、1心拍区間の時系列に沿った複数のA3C面の2次元超音波画像データ群(A3C像群)を取得する。ここで、解析情報生成機能171は、心電計104により得られた心電波形から、特徴波(例えば、R波やP波)となる心時相を検出して、検出した心時相を各断面の超音波画像データ群の超音波走査の時間と対応付けて取得する。
そして、解析情報生成機能171は、所定区間に渡って2次元のパターンマッチングを含む追跡処理を行なって、複数の2次元超音波画像データ群それぞれに含まれる所定部位の内腔及び外腔の輪郭位置の時系列データを取得する。すなわち、解析情報生成機能171は、2次元の動画データに対して、2次元スペックルトラッキング(2D Speckle Tracking:2DT)処理を行う。スペックルトラッキング法は、パターンマッチング処理と共に、例えば、オプティカルフロー法や種々の時空間補間処理を併用することで、正確な動きを推定する方法である。
ここで、解析情報生成機能171は、所定部位として心臓の心室及び心房の少なくとも1つの輪郭位置を取得する。すなわち、2DT処理の対象となる部位は、右心房の内腔、右心房の外腔、右心室の内腔、右心室の外腔、左心房の内腔、左心房の外腔、左心室の内腔及び左心室の外腔から、操作者が選択した1つ又は複数の部位となる。以下では、2DT処理の対象となる部位として、左心室の内腔及び左心室の外腔が選択された場合について説明する。
例えば、入力装置102は、操作者から、追跡点の設定要求を受け付ける。追跡点の設定要求が転送された処理回路170は、動画データの第1フレーム(開始フレーム)である初期時相の2次元超音波画像データを画像メモリ150から読み出して、ディスプレイ103に表示させる。具体的には、処理回路170は、初期時相として動画データの第1フレーム(開始フレーム)を用い、第1フレームのA4C像、A2C像、及びA3C像を画像メモリ150から読み出して、ディスプレイ103に表示させる。
図3は、第1の実施形態に係る解析情報生成機能171の処理を説明するための図である。図3には、A4C像群のうち第1フレームの超音波画像データに設定された追跡点を例示する。
図3に示すように、操作者は、A4C面の初期時相の2次元超音波画像データを参照して、2DTを行う追跡点を設定する。例えば、操作者は、初期時相の2次元超音波画像データにおいて、左心室の内膜及び左心室の外膜を、入力装置102のマウスを用いてトレースする。解析情報生成機能171は、トレースされた内膜面及び外膜面から2次元的な2つの境界面を、初期時相の2つの輪郭(初期輪郭)として再構成する。そして、解析情報生成機能171は、図3に示すように、初期時相の内膜面輪郭及び外膜面輪郭それぞれにおいて、複数の追跡点を設定する。解析情報生成機能171は、初期時相のフレームで設定された複数の追跡点それぞれに対して、テンプレートデータを設定する。テンプレートデータは、追跡点を中心とする複数のピクセルから構成される。
そして、解析情報生成機能171は、2つのフレーム間でテンプレートデータのスペックルパターンと最も一致する領域を探索することで、テンプレートデータが次のフレームでどの位置に移動したかを追跡する。かかる追跡処理により、解析情報生成機能171は、初期時相の2次元超音波画像データ以外の2次元超音波画像データ群での各追跡点の位置を取得する。
これにより、解析情報生成機能171は、複数断面それぞれの超音波画像データ群について、左心室の内膜面及び外膜面を含む輪郭位置の時系列データを取得する。例えば、解析情報生成機能171は、A4C像に含まれる左心室の輪郭位置の時系列データと、A2C像に含まれる左心室の輪郭位置の時系列データと、A3C像に含まれる左心室の輪郭位置の時系列データとを取得する。
そして、解析情報生成機能171は、取得した各断面の超音波画像データ群における左心室の輪郭位置の時系列データから、被検体Pの心臓の心臓壁の歪みを表すストレイン(strain)値を生成する。例えば、解析情報生成機能171は、複数断面それぞれについて、歪み計測用に予め設定された方向における2点間の追跡点ペアの長さの時系列変化を求め、これをストレイン値として生成する。具体的には、解析情報生成機能171は、A4C像について、予め設定された方向における2点間の追跡点ペアの長さの時系列変化を求め、A4C像のストレイン値として生成する。また、解析情報生成機能171は、A2C像について、予め設定された方向における2点間の追跡点ペアの長さの時系列変化を求め、A2C像のストレイン値として生成する。また、解析情報生成機能171は、A3C像について、予め設定された方向における2点間の追跡点ペアの長さの時系列変化を求め、A3C像のストレイン値として生成する。ここで、予め設定された方向としては、輪郭の接線方向と内外膜間の壁厚方向の2種類が好適である。なお、各断面におけるストレイン値は、ある時相(初期時相、或いはR波の時相)を基準とする時間変化を表し、時間変化曲線として出力されるのが好適である。
なお、上記の例では、解析情報としてストレイン値が生成される場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、解析情報生成機能171は、ストレイン値が所定の閾値に到達する到達時間値を、解析情報として生成してもよい。また、解析情報生成機能171は、ストレイン値や到達時間値に限らず、追跡された内膜面の輪郭位置を用いて、Modified Simpson法、ディスク総和法(Simpson法)、Area Length法等に基づいて、容積に関する情報を生成してもよい。
また、初期輪郭の設定は、上述したように、操作者が用手的に行なう場合に限定されるものではない。例えば、初期輪郭の設定は、以下に説明するように自動的に行なわれる場合であっても良い。例えば、解析情報生成機能171は、操作者が初期時相の画像データにおいて指定した弁輪部位の位置と心尖部位の位置とから、初期輪郭の位置を推定する。或いは、例えば、解析情報生成機能171は、操作者からの情報を受け付けることなく、初期時相の画像データから初期輪郭の位置を推定する。これらの自動推定では、画像の輝度情報を用いた境界推定技術や、予め「心臓の形状情報」として登録された形状辞書と画像の特徴とを識別器で比較照合して境界を推定する境界推定技術が用いられる。
表示画像生成機能172は、各断面の解析情報の時相を合わせ、時相を合わせた各断面の解析情報を所定の極座標系にマッピングすることで、極座標表示画像(ポーラーマップ)を生成する。例えば、表示画像生成機能172は、所定の心時相(例えばR波時相)を基準として、異なる時間帯の各断面の解析情報の時相を合わせる。なお、表示画像生成機能172は、表示画像生成部の一例である。
図4は、第1の実施形態に係る表示画像生成機能172の処理を説明するための図である。図4には、A4C面、A2C面、及びA3C面それぞれの時相を合わせる場合における表示画像生成機能172の処理を例示する。図4において、横軸は時間t(動画データのフレーム)に対応する。また、図4において、A4C像の動画データのフレーム間隔が「dT1」であり、A2C像の動画データのフレーム間隔が「dT2」であり、A3C像の動画データのフレーム間隔が「dT3」であるとして例示する。なお、本例ではdT3<dT2<dT1の場合を示した。
図4に示すように、表示画像生成機能172は、例えば、R波時相(所定の心時相)に合わせて、A4C像の時系列データの開始点と、A2C像の時系列データの開始点と、A3C像の時系列データの開始点とを揃える(図4の下図参照)。そして、表示画像生成機能172は、揃えた開始点(R波時相)を基準時相として、各断面におけるストレイン値が所定の閾値に到達する到達時間値を算出する。ここで、到達時間値は、ある位置(サンプル点)のストレイン値が所定閾値に一旦到達した時点で心筋収縮が開始(Activation)されたものと見なし、その到達時間値に応じた画素値(輝度値)を表示する技術「Activation Imaging:AI」の指標となる値である。このため、到達時間値は、「AI値」とも呼ばれる。一例を挙げると、AI値は、局所的な長軸方向のストレイン値(Longitudinal Strain:LS)が、各点の1心周期内におけるピーク値に対して30%のレベルに到達する時間[msec]として定義される。なお、基準時相とは、到達時間値を算出する際に基準(時間ゼロ)となる時相を表す。
例えば、表示画像生成機能172は、A4C像の輪郭を構成する各点におけるストレイン値が各点の1心周期内におけるピーク値に対して30%のレベルに到達する到達時間値AI1(t)を、R波時相を基準時相として算出する。また、表示画像生成機能172は、A2C像の輪郭を構成する各点におけるストレイン値が各点の1心周期内におけるピーク値に対して30%のレベルに到達する到達時間値AI2(t)を、R波時相を基準時相として算出する。また、表示画像生成機能172は、A3C像の輪郭を構成する各点におけるストレイン値が各点の1心周期内におけるピーク値に対して30%のレベルに到達する到達時間値AI3(t)を、R波時相を基準時相として算出する。なお、tは、各断面の動画データの時間(フレーム)に対応する。
そして、表示画像生成機能172は、時間tとして所定の時相tdを選択する。ここで、時相tdは、到達時間値を検出する時間定義域、つまり、到達時間値の検出において動画データのうち開始点からどの時相までの画像データを用いるかを示す情報であり、最終フレームが選択されるように予めプリセットされている。この結果、表示画像生成機能172は、時間tとして、A4C像の最終フレームtd1と、A2C像の最終フレームtd2と、A3C像の最終フレームtd3とをそれぞれ選択する。これにより、表示画像生成機能172は、A4C像の到達時間値AI1(td1)と、A2C像の到達時間値AI2(td2)と、A3C像の到達時間値AI3(td3)とを算出する。そして、表示画像生成機能172は、算出した各断面の到達時間値AI1(td1),AI2(td2),AI3(td3)を用いて、ポーラーマップを生成する。
図5は、第1の実施形態に係る表示画像生成機能172の処理を説明するための図である。図5には、A4C面、A2C面、A3C面の3断面の到達時間値AI1(td1),AI2(td2),AI3(td3)を合成して、ポーラーマップを生成する場合を例示する。ここで、ポーラーマップとは、左心室の表面に設定された各位置(画素)の心機能情報を、心尖部を極として2次元の平面上に展開表示した表示形態であり、Bull‘s Eye plotとも呼ばれる。例えば、アメリカ心エコー図学会などにより推奨される分画としては、例えば、前壁(ant)、前壁中隔(ant-sept)、中隔(sept)、下壁(inf)、後壁(post)、側壁(lat)の方向に16個~17個のセグメントに分画する表示形態が挙げられる。
ここで、A4C像における各点は、ポーラーマップ上では中隔(sept)及び側壁(lat)を通る直線上の点に対応する。また、A2C像における各点は、ポーラーマップ上では前壁(ant)及び下壁(inf)を通る直線上の点に対応する。また、A3C像における各点は、ポーラーマップ上では前壁中隔(ant-sept)及び後壁(post)を通る直線上の点に対応する。そこで、表示画像生成機能172は、複数断面それぞれの心機能情報(解析情報)を用いて、対応する長軸方向の位置同士(マップの所定半径)の点で(マップの円周方向へ)空間的補間処理を行うことにより、ポーラーマップ(合成ポーラーマップ)を生成する。
図5に示すように、表示画像生成機能172は、A4C面とA2C面との間の各点の到達時間値を、A4C像の到達時間値AI1(td1)とA2C像の到達時間値AI2(td2)とを用いた円周方向の補間処理により算出する。また、表示画像生成機能172は、A4C面とA3C面との間の各点の到達時間値を、A4C像の到達時間値AI1(td1)とA3C像の到達時間値AI3(td3)とを用いた円周方向の補間処理により算出する。また、表示画像生成機能172は、A2C面とA3C面との間の各点の到達時間値を、A2C像の到達時間値AI2(td2)とA3C像の到達時間値AI3(td3)とを用いた円周方向の補間処理により算出する。そして、表示画像生成機能172は、算出した各点の到達時間値に応じた画素値を割り当てることにより、合成ポーラーマップを生成する。
このように、表示画像生成機能172は、複数断面それぞれの到達時間値を用いて、ポーラーマップを生成する。なお、上記の説明では、到達時間値を検出する時間定義域の時相tdとして最終フレームが選択される場合を説明したが、これに限らず、任意の時相tdが選択されてもよい。ただし、各点の確定した到達時間値を算出するためには、時相tdとして1心周期経過後に相当する最終フレームを選択するのが好適である。
表示制御機能173は、極座標表示画像を表示する。例えば、表示制御機能173は、表示画像生成機能172によって生成されたポーラーマップをディスプレイ103に表示させる。なお、表示制御機能173は、表示制御部の一例である。
図6は、第1の実施形態に係る表示制御機能173の処理を説明するための図である。図6には、表示制御機能173の処理によりディスプレイ103に表示される表示画面を例示する。図6において、ポーラーマップの下側に図示される[msec]は到達時間値に対応する画素値(輝度値)を示す。また、[Threshold]は、到達時間値の算出に用いたピーク値に対する閾値を示し、図6では大凡30%に指定されている。
図6に示すように、表示制御機能173は、表示画像生成機能172によって生成されたポーラーマップを、静止画としてディスプレイ103に表示させる(図6右上参照)。また、表示制御機能173は、ポーラーマップの各セグメント上に、各セグメントにおける到達時間値[msec]の平均値を数値にて表示する。
また、表示制御機能173は、複数断面それぞれの間における心拍のばらつきの指標値を表示する。例えば、表示制御機能173は、心拍数の断面間での差異を算出し、算出した差異をディスプレイ103に表示する。すなわち、表示制御機能173は、複数断面間における心周期の違いを表す指標値「HR_ERROR」を表示する。
例えば、表示制御機能173は、下記の式(1)を用いて、心拍数の断面間での差異を算出する。式(1)において、δHRは、心拍数の断面間での差異[%]を表す。また、最大HRは、各断面の動画データの心拍数(HR)のうち最大の心拍数を表す。また、最小HRは、各断面の動画データの心拍数(HR)のうち最小の心拍数を表す。
δHR=100*(最大HR-最小HR)/最大HR ・・・(1)
そして、表示制御機能173は、算出したδHRを「HR_ERROR」としてディスプレイ103上に表示する。図6に示す例では、表示制御機能173は、HR_ERROR「10%」をディスプレイ103上に表示する(図6右下参照)。
なお、「HR_ERROR」は、δHRに限らず、例えば、収縮末期時間の断面間での差異を用いてもよい。収縮末期時間の断面間での差異δEStは、下記の式(2)によって表される。式(2)において、δEStは、収縮末期時間の断面間での差異[%]を表す。また、最大EStは、各断面の動画データの収縮末期時間(ESt)のうち最大の収縮末期時間を表す。また、最小EStは、各断面の動画データの収縮末期時間(ESt)のうち最小の収縮末期時間を表す。
δESt=100*(最大ESt-最小ESt)/最大ESt ・・・(2)
更に、表示制御機能173は、「HR_ERROR」が予め定められた閾値を超えた場合に、閾値を超えた旨を示す情報を操作者に提示してもよい。例えば、表示制御機能173は、δHRが所定の閾値(例えば20%)を超えた場合に、ポーラーマップ上の各セグメントに表示される到達時間値の数値に、所定の標識を付加して表示する。例えば、表示制御機能173は、数値「XXX」に記号「^」を付加して、「^XXX」としてセグメントに表示する。若しくは、表示制御機能173は、数値「XXX」を通常の表示色とは異なる表示色で表示してもよい。
すなわち、表示制御機能173は、各断面の収集期間における心周期の違いを表す指標値(例えば、δHR又はδESt)を表示する。ここで、表示制御機能173は、算出された指標値を常時表示しても良いし、指標値が閾値を超えた場合に、指標値を表示しても良い。また、表示制御機能173は、指標値が閾値を超えた場合に、指標値が閾値を超えた旨を示す情報(上記の記号「^」、エラーメッセージ、若しくは通知音など)を通知しても良いし、指標値を強調表示(異なる色、太字など)しても良い。
また、表示制御機能173は、各断面で得られたストレイン値の時間変化曲線(Time Curve Analysis:TCA)を表示してもよい。例えば、表示制御機能173は、A4C像におけるストレイン値の時間変化曲線をディスプレイ103に表示する(図6左上グラフ参照)。また、表示制御機能173は、A2C像におけるストレイン値の時間変化曲線(図6左下グラフ参照)、及び、A3C像におけるストレイン値の時間変化曲線(図6左中央グラフ参照)についても同様に、ディスプレイ103に表示する。
また、表示制御機能173は、各種のパラメータを数値として表示可能である。例えば、表示制御機能173は、上述した「HR_ERROR」以外にも、「GLPS_A3C」、「GLPS_A4C」、「GLPS_A2C」、「GLPS_Avg」、「ES」、「AVC」、「HR_A3C」等のパラメータを表示する(図6右下参照)。ここで、「GLPS」は、各断面におけるglobalなPSS値を表す。つまり、「GLPS_A3C」は、A3C面におけるglobalなストレイン値が所定期間で有するピーク値である。また、「GLPS_A4C」は、A4C面におけるglobalなストレイン値が所定期間で有するピーク値である。また、「GLPS_A2C」は、A2C面におけるglobalなストレイン値が所定期間で有するピーク値である。また、「GLPS_Ave」は、「GLPS_A3C」、「GLPS_A4C」、及び「GLPS_A2C」の平均値である。また、「ES」は、各断面での内腔容積が最小となる時間の平均値を収縮末期時間として示したものである。また、「AVC」は、大動脈弁閉鎖時間である。また、「HR_A3C」は、A3C面における心拍数である。
図7は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理手順を示すフローチャートである。図7に示す処理手順は、例えば、被検体Pの撮像を開始する旨の指示を操作者から受け付けた場合に開始される。
ステップS101において、撮像が開始したか否かを判定する。例えば、入力装置102は、被検体Pの撮像を開始する旨の指示を操作者から受け付け、受け付けた指示を処理回路170へ送る。処理回路170は、入力装置102により転送された指示を受け付けると、撮像が開始したと判定し(ステップS101肯定)、ステップS102以降の処理を開始する。なお、撮像が開始していない場合には(ステップS101否定)、ステップS102以降の処理は開始されず、処理回路170の各処理機能は待機状態である。
ステップS101が肯定されると、ステップS102において、画像生成回路140は、各断面において2次元の超音波画像データ群を生成する。例えば、画像生成回路140は、A4C面、A2C面、及びA3C面の3断面それぞれに対応する時系列に沿った複数の超音波画像データを生成する。なお、A4C面、A2C面、及びA3C面の超音波走査は、異なる時間帯において実行される。また、A4C面、A2C面、及びA3C面の超音波走査が実行される場合、断面数N=3である。
ステップS103において、処理回路170は、「s=1」と設定する。例えば、解析情報生成機能171は、断面s=1として、A4C面の超音波画像データ群を設定する。
ステップS104において、解析情報生成機能171は、断面sの超音波画像データ群に対して初期輪郭を設定する。例えば、解析情報生成機能171は、A4C面の第1フレームの2次元超音波画像データに対して、内膜面及び外膜面を表す複数の追跡点を設定する。
ステップS105において、解析情報生成機能171は、2DT処理を実行する。例えば、解析情報生成機能171は、2つのフレーム間でテンプレートデータのスペックルパターンと最も一致する領域を探索することで、テンプレートデータが次のフレームでどの位置に移動したかを追跡する。
ステップS106において、解析情報生成機能171は、断面sの輪郭位置の時系列データを生成する。例えば、解析情報生成機能171は、A4C像に含まれる左心室の輪郭位置の時系列データを生成する。
ステップS107において、解析情報生成機能171は、「s=N」であるか否かを判定する。ここで、「s」が「N」でない場合には(ステップS107否定)、解析情報生成機能171は、ステップS108の処理へ移行する。一方、「s」が「N」である場合には(ステップS107肯定)、解析情報生成機能171は、ステップS109の処理へ移行する。
ステップS107が否定されると、ステップS108において、解析情報生成機能171は、「s=s+1」を設定し、ステップS104の処理へ移行する。つまり、解析情報生成機能171は、2DT処理を未処理の断面があると判定し、次の断面の2DT処理へ移行する。
ステップS107が肯定されると、ステップS109において、表示画像生成機能172は、R波を基準として、各断面の到達時間値を算出する。例えば、表示画像生成機能172は、A4C像の各点におけるストレイン値が各点の1心周期内におけるピーク値に対して30%のレベルに到達する到達時間値を、R波時相を基準時相として算出する。また、表示画像生成機能172は、A2C像及びA3C像についても同様に、各点におけるストレイン値が各点の1心周期内におけるピーク値に対して30%のレベルに到達する到達時間値を、R波時相を基準時相として算出する。
ステップS110において、表示画像生成機能172は、任意の時相の到達時間値を用いて、合成ポーラーマップを生成する。例えば、表示画像生成機能172は、各断面間の各点の到達時間値を、各断面の到達時間値を用いた円周方向の補間処理により算出する。そして、表示画像生成機能172は、算出した各点の到達時間値に応じた画素値を割り当てることにより、合成ポーラーマップを生成する。
ステップS111において、表示制御機能173は、断面間の心拍差異を算出する。例えば、表示制御機能173は、複数断面間における心周期の違いを表す指標値として、心拍数の断面間での差異δHR[%](心拍差異)を算出する。
ステップS112において、表示制御機能173は、時間差異とともに、合成ポーラーマップを表示する。例えば、表示制御機能173は、表示画像生成機能172により生成された合成ポーラーマップをディスプレイ103に表示するとともに、算出したδHR[%]を「HR_ERROR」として表示する。
上述してきたように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1において、解析情報生成機能171は、被検体Pの心臓を通る複数断面それぞれを少なくとも1心拍以上の期間にわたって超音波走査することで収集された各断面の画像データに対して2次元のパターンマッチングを含む追跡処理を行って、各断面における心臓の壁運動を解析した解析情報を生成する。そして、表示画像生成機能172は、各断面の解析情報の時相を合わせ、時相を合わせた各断面の解析情報を所定の極座標系にマッピングすることで、ポーラーマップを生成する。表示制御機能173は、生成されたポーラーマップを表示する。これによれば、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、個別に収集された複数断面の画像データの時相を合わせてポーラーマップを表示することができる。
例えば、従来、異なる時間帯に収集された複数断面に基づいて合成ポーラーマップを表示する場合には、時間に依存しない指標値を定義することで、収集時間の違いや心時相の違いを考慮せずに各断面の解析結果を合成し、合成ポーラーマップとして表示していた。このような表示形態では、本来、各断面の解析結果としては壁運動の経時的変化に関する情報(時間情報)が得られているにも関わらず、各断面の解析結果を合成する過程で時間情報が失われてしまっていた。つまり、従来の技術では、異なる時間帯に収集された複数断面の解析結果から、時間情報に基づく合成ポーラーマップを表示することはできなかった。
これに対して、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、異なる時間帯に収集された複数断面の解析情報の時相を合わせた上で、各断面の解析情報を合成し、合成ポーラーマップを生成する。具体的には、超音波診断装置1は、各断面の解析情報の基準時相をR波時相で合わせた上で、到達時間値を算出し、算出した到達時間値に基づく合成ポーラーマップを生成する。このため、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、個別に収集された複数断面の画像データであっても、壁運動の経時的変化に関する時間情報を失うことなく、合成ポーラーマップ上に反映させることが可能となる。具体的には、超音波診断装置1は、異なる時間帯に収集された複数断面の解析情報の1心拍の長さやフレームレートが異なっていたとしても、合成ポーラーマップを生成し、表示することが可能となる。
また、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、複数断面それぞれの間における時間のばらつきが小さい場合には、各断面間の時相は実質的に合致すると見なして、R波時相を基準に各断面の到達時間値を求める。これによれば、超音波診断装置1は、簡易な構成で壁運動の経時的変化に関する時間情報を失うことなく、合成ポーラーマップを表示することができる。
また、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、複数断面それぞれの間における心拍のばらつきの指標値を表示する。このため、超音波診断装置1は、表示される合成ポーラーマップの信頼性を操作者に提示することができる。
(第1の実施形態の変形例)
超音波診断装置1は、合成対象となる全ての断面の解析情報が収集されていなくても、壁運動の解析が完了した断面の解析情報から順に合成ポーラーマップを生成し、壁運動の解析が完了するごとに合成ポーラーマップを適宜更新してもよい。
すなわち、表示画像生成機能172は、複数断面のうち、解析情報生成機能171により壁運動の解析が完了した断面の解析情報に基づくポーラーマップを生成する。また、表示画像生成機能172は、解析情報生成機能171により別の断面の壁運動の解析が新たに完了すると、当該別の断面の解析情報に基づいて、生成済みのポーラーマップを更新する。また、表示制御機能173は、表示画像生成機能172によりポーラーマップが更新されるごとに、更新されたポーラーマップを表示する。
図8は、第1の実施形態の変形例に係る超音波診断装置1の処理手順を示すフローチャートである。図8に示す処理手順において、ステップS201~ステップS206の処理は、図7に示したステップS101~ステップS106の処理と同様であるので、説明を省略する。
ステップS207において、表示画像生成機能172は、R波を基準として、断面sの到達時間値を算出する。例えば、表示画像生成機能172は、A4C像の各点におけるストレイン値が各点の1心周期内におけるピーク値に対して30%のレベルに到達する到達時間値を、R波時相を基準時相として算出する。
ステップS208において、表示画像生成機能172は、断面sの到達時間値を用いて、合成ポーラーマップを生成する。例えば、表示画像生成機能172は、A4C像の各点における到達時間値をポーラーマップに部分的に割り当てる。
ステップS209において、表示制御機能173は、ポーラーマップを表示する。例えば、表示制御機能173は、A4C像の各点における到達時間値が部分的に割り当てられたポーラーマップをディスプレイ103に表示させる。
ステップS210において、表示制御機能173は、「s=N」であるか否かを判定する。ここで、「s」が「N」でない場合には(ステップS210否定)、表示制御機能173は、ステップS211の処理へ移行する。一方、「s」が「N」である場合には(ステップS210肯定)、表示制御機能173は、図8の処理を終了する。
ステップS210が否定されると、ステップS211において、表示制御機能173は、「s=s+1」を設定し、ステップS204の処理へ移行する。つまり、表示制御機能173は、2DT処理を未処理の断面があると判定し、次の断面の2DT処理へ移行する。
図9は、第1の実施形態の変形例に係る超音波診断装置1の処理を説明するための図である。図9には、A4C面、A2C面、及びA3C面のうち、A4C面及びA2C面の解析情報が2DTにより生成された場合に表示される表示画像を例示する。図9において、ポーラーマップの下側に図示される[msec]は到達時間値に対応する画素値(輝度値)を示す。また、[Threshold]は、到達時間値の算出に用いたピーク値に対する閾値を示し、図9では大凡30%に指定されている。
図9に示すように、表示画像生成機能172は、解析情報生成機能171によりA4C面及びA2C面の解析情報に基づくポーラーマップを生成する。具体的には、表示画像生成機能172は、A4C像の各点の到達時間値に応じた画素値を、中隔(sept)及び側壁(lat)の各セグメントに割り当てるとともに、A2C像の各点の到達時間値に応じた画素値を、前壁(ant)及び下壁(inf)の各セグメントに割り当てることで、合成ポーラーマップを生成する。そして、表示制御機能173は、表示画像生成機能172によって生成された、合成ポーラーマップをディスプレイ103に表示させる。なお、図9において、A3C面の解析は完了していないので、ポーラーマップ上の前壁中隔(ant-sept)及び後壁(post)の各点には画素値が割り当てられていない。また、A3C面のストレイン値の時間変化曲線のグラフも空欄のままである。
そして、例えば、解析情報生成機能171により、A3C面の解析が完了すると、表示画像生成機能172は、図9の合成ポーラーマップを更新し、図6に示した合成ポーラーマップを生成する。なお、表示画像生成機能172は、表示画像の他の項目についても、A3C面の解析情報に基づいて生成する。そして、表示制御機能173は、表示画像生成機能172によって更新された合成ポーラーマップをディスプレイ103に表示させる。
このように、超音波診断装置1は、合成対象となる全ての断面の解析情報が収集されていなくても、壁運動の解析が完了した断面の解析情報から順に合成ポーラーマップを生成し、壁運動の解析が完了するごとに合成ポーラーマップを適宜更新することができる。本変形例では、解析が終了した断面と未だ解析を終えていない断面が一目瞭然となるので、次に解析すべき断面が何かを操作者が判断するのを容易にする作用がある。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、断面間の心時相の差異の影響を補正して、より高精度に各断面の解析情報を合成する場合を説明する。
第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、図1に例示した超音波診断装置1と同様の構成を備え、表示画像生成機能172の処理の一部が相違する。そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第1の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については、説明を省略する。
第2の実施形態に係る表示画像生成機能172は、予め決められた2つの心時相間の時間の長さで各断面の解析情報を補正し、補正後の各断面の解析情報を所定の極座標系にマッピングすることで、ポーラーマップを生成する。
例えば、表示画像生成機能172は、まず、各断面の解析情報を補正するための基準となる基準時間Tcを設定する。この基準時間は、各断面の1心周期の時間もしくは収縮期に要する時間(収縮末期時間)を均一にするために設定される時間である。言い換えると、表示画像生成機能172は、各断面の1心周期の時間もしくは収縮末期時間を、基準時間Tcに規格化する。
例えば、表示画像生成機能172は、各断面のうち心拍数HR[bpm]が中央値HRmとなる断面を選択し、選択した断面での1心周期の時間を基準時間Tcとする。例えば、基準時間Tc[msec]は、下記の式(3)により表される。
Tc=1000/(HRm/60) ・・・(3)
そして、表示画像生成機能172は、各断面の解析情報を補正するための補正係数Tkを算出する。補正係数Tkは、下記の式(4)で表される。なお、式(4)において、Tnは、補正の比較対象となる時間を表し、本例では、各断面の1心周期の時間に対応する。
Tk=Tc/Tn ・・・(4)
つまり、A4C面の1心周期の時間をTn1とすると、A4C面の補正係数Tk1は、「Tk1=Tc/Tn1」と表される。また、A2C面の1心周期の時間をTn2とすると、A2C面の補正係数Tk2は、「Tk2=Tc/Tn2」と表される。また、A3C面の1心周期の時間をTn3とすると、A3C面の補正係数Tk3は、「Tk3=Tc/Tn3」と表される。
そして、表示画像生成機能172は、各断面の到達時間値に対して、各断面の補正係数を乗算することで、各断面の到達時間値を補正する。つまり、A4C面の補正後の到達時間値AI1’(td1)は、「AI1’(td1)=Tk1*AI1(td1)」と表される。また、A2C面の補正後の到達時間値AI2’(td2)は、「AI2’(td2)=Tk2*AI2(td2)」と表される。また、A3C面の補正後の到達時間値AI3’(td3)は、「AI3’(td3)=Tk3*AI3(td3)」と表される。なお、表示画像生成機能172が到達時間値AI1(td1),AI2(td2),AI3(td3)を算出する処理は、第1の実施形態で説明した処理と同様である。
そして、表示画像生成機能172は、補正後の到達時間値AI1’(td1),AI2’(td2),AI3’(td3)を用いて、合成ポーラーマップを生成する。
図10は、第2の実施形態に係る超音波診断装置1の処理手順を示すフローチャートである。図10に示す処理手順において、ステップS301~ステップS309の処理は、図7に示したステップS101~ステップS109の処理と同様であるので、説明を省略する。つまり、表示画像生成機能172が、R波を基準として、A4C像の到達時間値AI1(td1)と、A2C像の到達時間値AI2(td2)と、A3C像の到達時間値AI3(td3)とを算出する処理は、第1の実施形態で説明した処理と同様である。
ステップS310において、表示画像生成機能172は、1心周期の時間で各断面の到達時間値を補正する。例えば、表示画像生成機能172は、各断面の補正係数Tkを算出し、算出した補正係数Tkを各断面の到達時間値AI(td)に乗算することで、各断面の到達時間値を補正する。
ステップS311において、表示画像生成機能172は、補正後の到達時間値を用いて、合成ポーラーマップを生成する。例えば、表示画像生成機能172は、補正後の到達時間値AI1’(td1),AI2’(td2),AI3’(td3)を用いて、合成ポーラーマップを生成する。
ステップS312において、表示制御機能173は、表示画像生成機能172によって合成された合成ポーラーマップをディスプレイ103に表示する。
このように、第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、断面間の心時相の差異の影響を補正して、より高精度に各断面の解析情報を合成することが可能となる。
なお、上記の例に限らず、例えば、基準時間Tcは、複数断面の心拍数HRの平均値HRaveによって与えられてもよい。この場合、基準時間Tcは、下記の式(5)により表される。
Tc=1000/(HRave/60) ・・・(5)
あるいは、1心周期の時間の代わりに、収縮末期時間として各断面での内腔容積最小時間の平均値としてのES時間や、AVC時間を基準時間Tcとして与えてもよい。この場合、共に各断面での内腔容積最小時間を補正の比較対象となる時間Tnとして与えればよい。
なお、HRの変動は、収縮期に要する時間と拡張期に要する時間が伸び縮みすることで生じるが、AI値が伸び縮みする方向は基本的にこれらの所要時間の変動方向と同一であり、心周期の時間に相関して変化すると考えられる。AI値においては、収縮タイミングを捉えていることから、収縮期に要する時間への相関がより高いと考えられる。したがって、基準時間Tcとしては、ES時間やAVC時間を用いるのが補正精度を高める上で好ましい。
また、第2の実施形態においては、基準時間Tcとして適用可能な値が複数考えられることから、どのような種類の基準時間Tcを選択したのかを示す情報や、基準時間Tcの値若しくは各断面の補正係数Tkの値を表示することで、どの断面の時間値にどの程度の補正が行われているかを示すのが好ましい。
更に、第1の実施形態にて説明したように、合成ポーラーマップの信頼性の指標値として、「HR_ERROR」を表示してもよい。
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、各断面の解析情報の時間間隔が一定の時間間隔となるように補間処理を実行することで、異なる時間帯に収集された複数断面の画像データから合成ポーラーマップの動画像を生成する場合を説明する。
第3の実施形態に係る超音波診断装置1は、図1に例示した超音波診断装置1と同様の構成を備え、表示画像生成機能172及び表示制御機能173の処理の一部が相違する。そこで、第3の実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第1の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については、説明を省略する。
第3の実施形態に係る表示画像生成機能172は、予め決められた2つの心時相間の時間の長さに基づいて、各断面の解析情報の時間間隔が所定の時間間隔となる補間処理を実行し、補間処理後の各断面の解析情報のうち同一時相の解析情報を所定の極座標系にマッピングすることで、ポーラーマップを所定の時間間隔に対応するフレームレートで生成する。なお、解析情報生成機能171は、各断面の解析情報を、各断面のフレームレートに対応する時間間隔で生成している。第3の実施形態に係る表示制御機能173は、所定フレームレートのポーラーマップを動画像として表示する。
図11は、第3の実施形態に係る超音波診断装置1の処理手順を示すフローチャートである。図11に示す処理手順において、ステップS401~ステップS408の処理は、図7に示したステップS101~ステップS108の処理と同様であるので、説明を省略する。
ステップS409において、表示画像生成機能172は、各断面のストレイン値の時系列データが所定の時間間隔になるように、補間処理を実行する。
図12は、第3の実施形態にかかる表示画像生成機能172の補間処理について説明するための図である。図12には、A4C面、A2C面、及びA3C面それぞれの時相を合わせた上で、補間処理を実行する場合における表示画像生成機能172の処理を例示する。図12の上図において、横軸は時間t(動画データのフレーム)に対応する。また、図12の上図において、A4C像の動画データのフレーム間隔が「dT1」であり、A2C像の動画データのフレーム間隔が「dT2」であり、A3C像の動画データのフレーム間隔が「dT3」であるとして例示する。ここで、dT3<dT2<dT1としている。また、図12の下図において、横軸は時間τ(補間処理後の動画データのフレーム)に対応する。また、図12の下図において、補正後の各断面の動画データのフレーム間隔は「dTc」である。更に、補正後の動画データが有する1心周期の時間は「Nc」である。本実施形態では、第2の実施形態で示した基準時間Tcによる補正方法を用いて、断面間の時間の補正を行うのが好適である。この場合、先ずNcを算出する。そして、最終フレームの時間を合わせる観点では、1心周期時間を基に時間の補正を行う。次に、Ncを等分してdTcを決める。他の例としては、断面間で最も平均的なフレーム間隔(中央値となるdT2を選ぶのが好適)を用いて、先ずdTcを得る。次に、dTcを得た断面のデータによる1心周期の時間をNcとして決める方法があげられる。
図12に示すように、例えば、表示画像生成機能172は、各断面の局所的なストレイン値の時間変化曲線S(t)を取得する。具体的には、表示画像生成機能172は、A4C面のストレイン値の時間変化曲線S1(t)と、A2C面のストレイン値の時間変化曲線S2(t)と、A3C面のストレイン値の時間変化曲線S3(t)とを取得する。ここで、時間変化曲線S1(t)の時間間隔はdT1であり、時間変化曲線S2(t)の時間間隔はdT2であり、時間変化曲線S3(t)の時間間隔はdT3である。
そして、表示画像生成機能172は、補間処理により一定となる時間間隔dTc及び1心周期の時間Ncをそれぞれ設定し、各断面のストレイン値の時間変化曲線を各点上で時間方向に補間処理を実行する。これにより、表示画像生成機能172は、各断面の局所的なストレイン値の時間変化曲線が補間されたS’(τ)を生成する。具体的には、表示画像生成機能172は、補間処理後のA4C面の時間変化曲線S1’(τ)と、補間処理後のA2C面の時間変化曲線S2’(τ)と、補間処理後のA3C面の時間変化曲線S3’(τ)とを生成する。ここで、補間処理後の各断面の時間変化曲線S1’(τ),S2’(τ),S3’(τ)の時間間隔はいずれもdTcであり、1心周期の時間はいずれもNcである。
ステップS410において、表示画像生成機能172は、各R波を基準として、補間処理後の各断面のストレイン値の時間変化曲線S1’(τ),S2’(τ),S3’(τ)から、各断面の到達時間値AI1’ ’(τ),AI2’ ’(τ),AI3’ ’(τ)をそれぞれ算出する。
ステップS411において、表示画像生成機能172は、同一時相の到達時間値を用いて、各時相の合成ポーラーマップを生成する。例えば、表示画像生成機能172は、各断面の到達時間値AI1’ ’(τ),AI2’ ’(τ),AI3’ ’(τ)を用いて、合成ポーラーマップの動画像を生成する。
ステップS412において、表示制御機能173は、表示画像生成機能172によって生成された合成ポーラーマップを動画表示する。
このように、第3の実施形態に係る超音波診断装置1は、異なる時間帯に収集された複数断面の画像データから合成ポーラーマップの動画像を表示することが可能となる。
なお、動画像データとしての合成ポーラーマップ上に表示される壁運動指標としては、到達時間値以外にも、例えば、ストレイン値が適用されてもよい。また、補間処理を行う時間変化曲線の入力を変更することで、2DTで提供される任意の物理指標が選択できる。例えば、ストレイン値に限らず、変位(displacement)、及び、これらの時間微分であるストレインレート(strain rate)や速度(velocity)が物理指標として挙げられる。また、例えば、補間処理後のストレイン値の時間変化曲線からPSS値を求め、PSSによる合成ポーラーマップを静止画として表示することも可能である。
また、第3の実施形態では、解析情報生成機能171が、各断面の解析情報を、各断面のフレームレートに対応する時間間隔で生成する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、解析情報生成機能171は、各断面における画像値をフレーム間補間(公知技術)により生成し、生成した画像値を用いた2DT処理により空く断面の解析情報を生成することも可能である。
また、第1の実施形態にて説明したように、合成ポーラーマップの信頼性の指標値として、「HR_ERROR」を表示してもよい。
(第4の実施形態)
また、上記の実施形態では、合成ポーラーマップを表示する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置1は、各断面の解析情報を表す表示画像を表示するとともに、各断面における心拍差異を表示してもよい。
第4の実施形態に係る超音波診断装置1は、図1に例示した超音波診断装置1と同様の構成を備え、表示制御機能173の処理の一部が相違する。そこで、第4の実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第1の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については、説明を省略する。なお、第4の実施形態に係る超音波診断装置1は、表示画像生成機能172を備えていなくても良い。
第4の実施形態に係る表示制御機能173は、各断面の解析情報の時相を合わせ、時相を合わせた各断面の解析情報を表示するとともに、各断面の収集期間における心周期の違いを表す指標値を表示する。
図13は、第4の実施形態に係る表示制御機能173の処理を説明するための図である。図13には、表示制御機能173の処理によりディスプレイ103に表示される表示画面を例示する。
図13に示すように、表示制御機能173は、所定の心時相を基準として、異なる時間帯の各断面の解析情報の時相を合わせる。例えば、表示制御機能173は、各断面で得られたストレイン値の時間変化を、ある時相(例えばR波の時相)で一致させる。そして、表示制御機能173は、ある時相で一致させた状態で、各断面の時間変化曲線(グラフ)を生成する。そして、各断面の時間変化曲線をディスプレイ103に表示させる。例えば、表示制御機能173は、A4Cにおけるストレイン値の時間変化曲線(図13左上グラフ)、A3Cにおけるストレイン値の時間変化曲線(図6左中央グラフ)、及び、A2Cにおけるストレイン値の時間変化曲線(図6左下グラフ)を、ディスプレイ103に表示させる。ここで、A4C、A3C、及びA2Cの各断面の時間変化曲線は、各グラフの時間軸方向がある時相(R波の時相)で一致している。なお、各断面の時間変化曲線についての詳細な説明は、第1の実施形態と同様であるので省略する。
また、表示制御機能173は、各断面の収集期間におけるδHRを表示する。例えば、表示制御機能173は、上述した式(1)を用いて、心周期の違いを表す指標値としてδHRを算出する。そして、表示制御機能173は、算出したδHRを「HR_ERROR」としてディスプレイ103上に表示させる。図13に示す例では、表示制御機能173は、HR_ERROR「10%」をディスプレイ103上に表示させる(図13右表)。
ここで、表示制御機能173は、算出したδHRを常時表示しても良いし、δHRが閾値を超えた場合に、δHRを表示しても良い。また、表示制御機能173は、δHRが閾値を超えた場合に、δHRが閾値を超えた旨を示す情報(上記の記号「^」、エラーメッセージ、若しくは通知音など)を通知しても良いし、δHRを強調表示(異なる色、太字など)しても良い。なお、δHRの算出についての詳細な説明は、第1の実施形態と同様であるので省略する。
このように、表示制御機能173は、例えば、各断面の時間変化曲線を表示するとともに、断面間でのδHRを表示する。なお、上述した表示制御機能173の処理内容はあくまで一例であり、上述した処理内容に限定されるものではない。例えば、表示制御機能173は、心周期の違いを表す指標値として、δHRに限らず、δESt(上述した式(2)により算出)を表示しても良い。
例えば、表示制御機能173は、時間変化曲線に限らず、ある時点(時相)における棒グラフなど、任意のグラフを表示しても良い。また、表示制御機能173は、ストレイン値に限らず、例えば、到達時間値や容積など、任意のパラメータに関するグラフを表示しても良い。また、表示制御機能173は、グラフに限らず、任意のパラメータの数値を表示しても良い。すなわち、表示制御機能173は、各断面の解析情報を、グラフ又は数値として表示することができる。
図14は、第4の実施形態に係る超音波診断装置1の処理手順を示すフローチャートである。図14に示す処理手順において、ステップS501~ステップS508の処理は、図7に示したステップS101~ステップS108の処理と同様であるので、説明を省略する。
ステップS509において、表示制御機能173は、例えば、R波を基準として、各断面のストレイン値の時間変化曲線を生成する。これにより、表示制御機能173は、各グラフの時間軸方向がR波で一致したグラフを、A4C、A3C、及びA2Cの各断面について生成する。
ステップS510において、表示制御機能173は、各断面の収集期間におけるδHRを算出する。
ステップS511において、表示制御機能173は、各断面の時間変化曲線と、断面間のδHRとを表示する。
このように、第4の実施形態に係る超音波診断装置1は、被検体の心臓を通る複数断面それぞれを少なくとも1心拍以上の期間にわたって超音波走査することで収集された各断面の画像データに対して2次元のパターンマッチングを含む追跡処理を行って、各断面における心臓の壁運動を解析した解析情報を生成する。また、超音波診断装置1は、各断面の解析情報の時相を合わせ、時相を合わせた各断面の解析情報を表示するとともに、各断面の収集期間における心周期の違いを表す指標値を表示する。これによれば、第4の実施形態に係る超音波診断装置1は、個別に収集された複数断面の画像データの時相を合わせた解析情報を表示する際に、心周期の違いを表す指標値を表示することができる。
(第4の実施形態の変形例)
なお、第4の実施形態で説明した内容はあくまで一例であり、上記の説明に限定されるものではない。例えば、第4の実施形態に係る超音波診断装置1は、各断面の解析情報、心周期の違いを表す指標値に加え、入力としての各断面の画像データを表示しても良い。
すなわち、第4の実施形態の変形例に係る表示制御機能173は、更に、追跡処理が行われた各断面の画像データを表示する。具体的には、表示制御機能173は、被検体Pの心臓を通る複数断面それぞれを少なくとも1心拍以上の期間にわたって超音波走査することで収集された各断面の画像データを、ディスプレイ103に表示させる。
図15は、第4の実施形態の変形例に係る表示制御機能173の処理を説明するための図である。図15には、表示制御機能173の処理によりディスプレイ103に表示される表示画面を例示する。
図15に示すように、表示制御機能173は、各断面のストレイン値の時間変化曲線と(図15左側グラフ)、δHR(HR_ERROR)とを表示する(図15下表)。また、表示制御機能173は、A4C像、A3C像、及びA2C像を表示させる(図15右図)。ここで、各断面の画像データは、任意の時相の静止画像でも良いし、収集期間に対応する動画像でも良い。
このように、第4の実施形態の変形例に係る超音波診断装置1は、各断面の解析情報、心周期の違いを表す指標値に加え、追跡処理が行われた各断面の画像データを表示することができる。
なお、上述した第1~第3の実施形態にて説明した内容は、心周期の違いを表す指標値を表示する点を除き、第4の実施形態(若しくは第4の実施形態の変形例)においても適用可能である。
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
また、上記の実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
また、上記の実施形態で説明した画像処理方法は、予め用意された画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この画像処理方法は、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この画像処理方法は、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、個別に収集された複数断面の画像データの時相を合わせて極座標表示画像を表示することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。