JP2017118038A - 波長可変レーザ - Google Patents

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Abstract

【課題】 発振波長を制御可能で小型な波長可変レーザを提供すること。【解決手段】二つの反射鏡を有する共振器と、前記共振器内に設けられた複屈折性のレーザ媒質と、前記レーザ媒質を励起するための励起光の偏光状態を制御する偏光制御手段と、前記レーザ媒質及び前記偏光制御手段の少なくともいずれか一方を変位可能に構成されている駆動制御手段と、を有する波長可変レーザであって、前記駆動制御手段は、前記レーザ媒質を通過する励起光の光路長が変わるように、前記レーザ媒質と前記偏光制御手段の相対的な位置関係を変えることが可能に構成されている波長可変レーザ。【選択図】 図6

Description

本発明は、小型な構成とすることが可能な波長可変レーザに関する。
高出力なレーザ光の生成には、固体のレーザ結晶を利得媒体に用いた固体レーザが、重要な役割を果たしている。固体レーザの発振波長の制御(波長可変)は、レーザに設けられた波長制御手段により行われることが一般的である。特許文献1には、レーザの共振器外部に設けられた波長制御手段により発振波長の制御を行う固体レーザを用いた波長可変レーザが開示されている。また、特許文献2には、共振器内部に波長制御手段としてエタロン素子を設けこれを制御することにより発振波長を制御する、固体レーザを用いた波長可変レーザが開示されている。
特開平5−226749号公報 特開平8−186316号公報
しかしながら、これら先行技術文献で提案されている波長可変レーザには以下のような課題が存在する。
特許文献1では、レーザ共振器の外部に波長制御手段を設けているため、レーザ発振するための共振器とは別に、射出される光の波長を制御するための副共振器を設ける必要があるため、システムが複雑化したり、大型になってしまう。
また、特許文献2では、レーザ共振器内部に波長制御手段が設けられる構成であるが、レーザ発振させるためのレーザ結晶とは別に波長制御手段が設けられている構成であるため、共振器自体を大型化してしまう。
このように従来の固体レーザでは、波長制御手段を具備した上で、小型化することは困難であった。
本発明に係る波長可変レーザは、二つの反射鏡を有する共振器と、前記共振器内に設けられた複屈折性のレーザ媒質と、前記レーザ媒質を励起するための励起光の偏光状態を制御する偏光制御手段と、前記レーザ媒質及び前記偏光制御手段の少なくともいずれか一方を変位可能に構成されている駆動制御手段と、を有する波長可変レーザであって、前記駆動制御手段は、前記レーザ媒質を通過する励起光の光路長が変わるように、前記レーザ媒質と前記偏光制御手段の相対的な位置関係を変えることが可能に構成されていることを特徴とする。
本発明は、射出する光の波長を変えることが可能で、小型な波長可変レーザを提供するものである。
共振器内の光軸とレーザ媒質の結晶軸の位置関係の説明図である。 共振器内の光軸とレーザ媒質の結晶軸の位置関係の説明図である。 長さ5ミリメートルの複屈折結晶における偏光が規定された光の透過率の、波長および光学軸と偏光方向のずれ角度θ依存性を表す図である。 レーザ媒質の光学軸と偏光方向のずれ角度が45度の場合の、複屈折結晶における偏光が規定された光の透過率の、波長および結晶の長さ依存性を表す図である。 レーザ媒質の形状の一例を説明する模式図である。 本発明の実施例1に係る波長可変レーザについて説明する図である。 本発明の実施例1に係る波長可変レーザにおける射出する光の波長制御について説明するためのグラフである。 本発明の実施例2におけるレーザ媒質の説明図である。 本発明の実施例3におけるレーザ媒質の説明図である。 本発明の実施例3に係る波長可変レーザにおける発振波長のスイッチングについて説明するための図である。
以下、本発明の実施形態に係る波長可変レーザについて詳細に説明する。
本実施形態に係る波長可変レーザは、二つの反射鏡を有する共振器と、共振器内に設けられた複屈折性のレーザ媒質を有する。また、波長可変レーザから射出する光の波長を変えるための制御機構として、レーザ媒質を励起するための励起光の偏光状態を制御する偏光制御手段と、レーザ媒質及び偏光制御手段の少なくともいずれか一方を変位可能に構成されている駆動制御手段とを有する。
射出する光の波長を変えるために、駆動制御手段は、レーザ媒質を通過する励起光の光路長が変わるように、レーザ媒質と偏光制御手段の相対的な位置関係を変えることが可能に構成されている。
このように、本実施形態に係る波長可変レーザは、射出する光の波長を制御するために、レーザ媒質または偏光制御手段の少なくともいずれか一方を変位すればよい。そのため、従来のように、レーザ発振させるための共振器以外に、波長可変のための共振器を別途設ける必要はないため、レーザのシステムは簡素になり、また小型にできる。
なお、レーザ媒質の光学軸が、共振器中を往復する光のレーザ媒質中での光軸に垂直であることが好ましい。
また、駆動制御手段は、レーザ媒質を共振器の光軸に対して垂直な方向に並進運動させることで、射出される光の波長を変えることが可能に構成されていることが好ましい。なぜなら、並進運動は変位制御が容易だからである。なお、偏光制御手段を並進運動させることで射出する光の波長を変える構成であっても良い。
次にレーザ媒質の形状の例について述べる。本実施形態において、共振器中を往復する光の経路上の、レーザ結晶の二つの対向する端面のうちの一方の第一の端面が、共振器内を往復する光の光軸に垂直な平面内に設けられていることが好ましい。それに加えて、レーザ結晶の二つの端面のうちの他方の第二の端面が、光軸に対して垂直でない平坦状または曲面状である構成、又は、第二の端面が、前記垂直な平面に対して傾斜している構成であることが好ましい(図5(b))。
さらに、第二の端面を含む平面と、光軸とのなす角がブリュースター角であることが特に好ましい(図5(c))。なお、第一の端面を含む平面及び第二の端面を含む平面と、共振器内の光軸とが、ブリュースター角をなし、かつ、第一の端面を含む平面と第二の端面を含む平面とが平行でない構成であってもよい(図5(d))。
また、共振器中を往復する光の光路上の、レーザ結晶の有する二つの端のうちの一方の第一の端面が、前記往復する光の光軸に垂直な平面内に設けられ、かつ、他方の第二の端面が、複数の平面がステップ状に形成されていてもよい(図5(a))。
なお別の言い方をすれば、本実施形態に係る波長可変レーザは小型で波長制御可能な固体レーザであり、以下の各要素を有する。すなわち、二つの反射鏡よりなる共振器と、その中に配された複屈折性のレーザ媒質とを有する。さらに、偏光制御手段と、駆動制御手段とを有する。そして、偏光制御手段が、レーザ媒質の利得波長帯域内の波長を有し、共振器中で往復する光の偏光を制御するものである。そして、レーザ媒質の光学軸が、共振器中を往復する光の光軸に平行ではない。具体的には、レーザ媒質中の、共振器中を往復する光の光軸に垂直な断面において、レーザ媒質の光学軸を断面へ射影した方向と、前記偏光制御手段により透過が最も許容される偏光方向がなす角度が、0度より大きい。加えて、90度より小さくなるように構成されている。また、共振器中を往復する光の光軸上のレーザ媒質の長さが、レーザ媒質を往復する光の通過する部分の違いにより異なるように、レーザ媒質が形成されている。そして、駆動制御手段が、共振器中を往復する光のレーザ媒質中の光軸に対する、レーザ媒質の相対的な位置を駆動制御するものである。偏光制御手段により透過が許容される偏光の光がレーザ媒質を透過する際の透過率スペクトルにおいて、所望の波長に透過率ピークを呈するように、駆動制御手段により前記共振器中で共振する光の波長を制御し、レーザ発振波長を制御する。
固体レーザの最も基本的な構成は、レーザ媒質である固体レーザ結晶と、これを挟むように配置された二つの反射鏡よりなる共振器とからなるものである。従来の固体レーザでは、波長制御手段は、共振器内または外に、レーザ媒質とは別に配置されていた。それに対し、本実施形態における固体レーザでは、複屈折性の固体レーザ結晶をレーザ媒質として、レーザ媒質自体を波長制御手段として機能させることにより、レーザ媒質とは別には波長制御手段を必要としないものである。
以下、本実施形態に係る構成要素の各々について詳細に説明する。
(複屈折性のレーザ媒質)
本実施形態において複屈折性の材料とは、異常光と常光に対する屈折率の差である複屈折率が10−4以上である媒質である。例えば、アレキサンドライト結晶(Cr:BeAl)、チタンサファイア結晶(Ti:Al)、LiCAF結晶(Cr:LiCaAl1.0−xCrxF)、Nd:YVO結晶、Nd:GdVOなどが挙げられる。
光学軸とは、光学異方性の複屈折結晶において、屈折率が一定になり、偏光していない光を入射しても複屈折が発生しない、もしくは最小となる方向のことである。例えば、チタンサファイア結晶ではc軸、空間群Pnmaで定義されたアレキサンドライト結晶ではb軸、Nd:YVO結晶ではc軸、Nd:GdVO結晶ではc軸、空間群P31cで定義されるLiCaF結晶ではc軸が、光学軸となる。
(偏光制御手段)
本実施形態における波長可変レーザは、レーザ媒質の利得波長域内の波長を有し共振器中で往復する光の偏光を規定するための偏光制御手段を設けるものである。
レーザ媒質の励起光の導入により励起された部分では、レーザ媒質の利得波長帯域に相当する波長の光が放出され、そのうち共振器と共振する光が共振器中を往復する。共振器内を往復する光を本明細書中では共振光と称する。本実施形態では、共振光の偏光を規定するために、偏光規定手段が設けられており、レーザ媒質から放出される光のうち共振器中を往復できる偏光が規定されている。偏光規定手段としては、偏光板やブリュースターウィンドウなどが挙げられる。
(結晶軸)
本実施形態における波長可変レーザにおけるレーザ媒質の光学軸は、共振器中を往復する共振光の、レーザ媒質中での光軸に平行とはならないように構成されているものである。
本発明の明細書中では、レーザ媒質中の共振光が伝搬する方向をz軸とし、偏光制御手段により規定される共振光の偏光方向をx方向とする(図1)。本実施形態におけるレーザ媒質の配置は、z方向と光学軸が平行でない。
また、本実施形態における波長可変レーザは、レーザ媒質中の共振光の光軸に垂直な断面において、レーザ媒質の光学軸を前記断面へ射影した方向と、前記偏光制御手段により透過が最も許容される偏光の電場方向がなす角度が、0度より大きい。それに加えて、90度より小さくなるように構成されている。図1のように、101をレーザ媒質の光学軸、その他の結晶軸を102と103とすることができる。そして、共振光の伝搬方向に垂直な断面、つまりxy面へ光学軸を射影した方向104が、共振光の偏光方向つまりx方向となす角θが、0度より大きく、90度より小さくなるように構成されている。
このように複屈折性結晶の光学軸が内部を伝搬する光の偏光方向と異なる場合、複屈折性に起因する異常光と常光の伝搬速度の違いから、複屈折性結晶を透過した光の偏光は変化することが知られている。簡単のために、結晶の光学軸をa軸、規定された偏光方向をx方向、他の結晶軸をb軸、c軸、c軸がz軸と一致する場合について図2を用いて説明する。この場合図2では、複屈折性結晶201の光学軸であるa軸のxy面への射影成分はa軸そのものとなり、その角度はθである。共振光の偏光はx方向に規定されているので複屈折性結晶に入射する偏光方向を(1,0)と表する。複屈折性結晶のz方向における共振光の光軸上の長さをLとすると、結晶中を距離Lだけ伝搬した光の、規定された偏光方向の強度Iは、ジョーンズベクトルを用いた解析から、式(1)のように表現することができる。

ここで、Γはレターデーションを位相に変換した項で、

と表せて、このときnとnはそれぞれ異常光つまり光学軸方向の偏光、常光つまりここではb軸方向の偏光の光に対する屈折率、λは光の波長を表す。図3は、Lが5ミリメートルの仮想的な複屈折結晶を想定した場合についての計算結果で、複屈折結晶の出射端でのx方向に規定された偏光の光の、入射光強度を1とした時の強度I透過率を表す。nとnはそれぞれ、1.51と1.50とした。横軸に波長λ(m)、縦軸に角度θ(°)を示す。グラフ中の濃淡は、透過率の高低を表し、白い部分ほど高く、黒い部分ほど低い。複屈折性が最も強く現れるθ=45°においてIの波長依存性が顕著であり、およそ波長510nmの波長に透過率のピークが見られる。つまり、光学軸を規定された偏光方向とずらしておくことで、共振器中を伝搬する光の波長を選択することができることが分かる。本実施形態における波長可変レーザは、レーザ媒質である固体レーザ結晶自体が複屈折性を有するものであり、上記の波長選択の機能をレーザ媒質が兼ね備えるものである。図3で示した波長帯域に、レーザ媒質の利得波長帯域がある場合、幅のある利得波長帯域の中で、選択的に510nmの波長での発振を起こすことが可能である。
(波長制御方法)
また、本実施形態における波長可変レーザは、上記のように発振波長を選択するだけでなく、発振波長を制御、例えば波長掃引することができる。図4は、図2に示す結晶軸の設定において、図3と同様に、レーザ媒質の出射端でのIつまり強度1のx偏光の入射光の透過率を示す図であるが、横軸に波長λ(m)、縦軸にレーザ媒質のz方向における長さL(m)を設定したものである。θは45°とした。図4中の波線で示すように、Lが5.07ミリメートルとLが5.035ミリメートルの場合のIの強度ピークは、それぞれ509.6nmおよび512nmであり、レーザ媒質の長さLの違いにより、共振光の波長λ、つまり発振波長が異なることが分かる。これは、レーザ媒質の長さLを変化させることで、発振波長を制御できることに相当する。
このような発振波長の制御をレーザ媒質自体により行うために、本実施形態における波長可変レーザは、レーザ媒質中の共振光の伝搬距離が、レーザ媒質の共振光が通過する部分の違いにより異なるように形成されている。また、本実施形態ではレーザ媒質と共振光の光軸を相対的に制御するための駆動制御手段を具備している。そして、レーザ媒質を共振光の光軸に対して相対的に駆動制御して、共振光が通過するレーザ媒質の長さLを変化させることにより、発振波長制御を行うことが可能である。
(結晶形状)
図5は本実施形態におけるレーザ媒質の形状に関する、いくつかの例を示すものである。共振光の経路上のレーザ媒質の二つの端のうち一方(第一の端面)501が、共振光の光軸に対して垂直な平面である場合、もう一方の端(第二の端面)を1枚の平面ではない構造とすることにより、上記を達成することができる(図5(a)〜(c))。図5(a)は、平面で構成される第一の端面501に対して、いくつかの平面がステップ状に形成された第二の端面502を有するものである。図中で示すように、共振光の通過する部分の違いにより、共振光の光軸上のレーザ媒質の長さがそれぞれL、L、Lと異なるように形成されたレーザ媒質の例である。つまり、レーザの発振波長を三つの離散化した波長に制御することができる。図5(b)は、第一の端面501に対して、平行ではなく角度φ傾いた平面形状を有する第二の端面503により構成されるレーザ媒質を表す例である。この例では、共振光の光軸をx方向に連続的に変化させることにより、共振光の光軸上のレーザ媒質の長さを連続的に変化させることができる。つまり、この例では発振波長を連続的に制御することが可能である。この例では、必ずしも第二の端面が平面である必要はなく、局面でもよい。また、ステップや傾斜の方向は、x方向に限定するものではない。
(ブリュースターカット)
また本実施形態では、図5(c)のように、第二の端面をブリュースターカットした平面として構成することもできる。共振器中を往復する共振光がレーザ媒質の端面において、ブリュースター角の入射角で結晶に入射し、この端面からブリュースター角の出射角で出射するように共振器を構成した場合について説明する。この場合、結晶中を伝搬する共振光の光軸とこの端における面のなす角度がブリュースター角となるため、この端面はブリュースターカットされているものとして説明する。図5(c)のように、第二の端面504がzx平面内で傾斜を設けたブリュースターカットされた平面である場合、共振光はこの平面をブリュースター角θで出入りする。そのため、透過が許容される光の偏光はp偏光つまり図5(c)中のzx平面に平行な偏光だけとなる。このことにより、図5(a)と図5(b)の例では、共振光の偏光の制御のためにレーザ媒質とは別に偏光制御手段が必要であるが、第二の端面そのものが偏光制御手段の機能を兼ね備える。そのため、レーザ媒質とは別の偏光制御手段を具備する必要がなく、ブリュースターカットされた端における面には無反射コーティングが必要ないため、本実施形態ではさらにレーザを小型化、簡素化することができる。図5(c)のレーザ媒質は、第一の端面に対して第二の端面が傾斜した平面であるので、図5(b)のレーザ媒質の例と同様に、発振波長を連続的に制御することができる。なお、第二の端面が、複数の平面がステップ状に形成されていてもよく、第二の端面が、第二の端面を貫く光と垂直でない平面または曲面であってもよい。また、第一の端面と第二の端面の両方がブリュースターカットされていてもよい。
図5(a)から図5(c)は、第一の端面を、共振光の光軸に垂直な平面とした例である。ただし、レーザ媒質の共振光の光軸上の長さを変化させられる限り、本実施形態における波長可変レーザのレーザ媒質の第一の端面も、第二の端面と同様に、傾斜やステップ構造を有するものでもよい。第一の端面が共振光の光軸に垂直な平面ではない場合の一つの例として、第一および第二の端面をブリュースターカットされた平面として本実施形態においてレーザ媒質を構成することが可能である。第一および第二の端面がブリュースターカットされた平面505、506である場合について図5(d)に示す。レーザ媒質をx軸に対して左右対称な形状となるようにすることにより、共振光の光軸507上のレーザ媒質の長さを連続的に変化させることが可能である。また、第一と第二の両端面がブリュースターカットされていることにより、無反射コーティングなどが必要なく、また両端面での透過、反射率の波長依存性を無視することができる。
以上のような簡素な構成により、本実施形態における波長可変レーザは、駆動制御手段によりレーザ媒質と共振光の光軸を相対的に駆動、制御することにより、発振波長の制御、変化を行うことができる。
(実施例1)
本発明の実施例1としての波長可変レーザについて図6を用いて説明する。半導体レーザからのレーザ媒質605中で集光された波長635nm、x偏光のレーザ光を励起光601として用いた。そして、635nmの波長の光が透過可能でおよそ720nmから900nmの波長の光に対して99.9パーセント以上の反射率を有する曲率半径50ミリメートルの凹面反射鏡をポンプミラー602として用いた。また、およそ720nmから850nmの波長の光に対して、98パーセントの反射率および2パーセントの透過率を有する曲率半径50ミリメートルの反射鏡をアウトプットカプラー603として用いた。ポンプミラー602とアウトプットカプラー603を対向して配置することにより、共振器長60ミリメートルの共振器609が形成されている。共振器609中に配置されたレーザ媒質としてアレキサンドライト結晶(Cr:BeAl)605を用いた。また、アレキサンドライト結晶から放出されて上記共振器中で共振する共振光の偏光を規定する偏光板604、アレキサンドライト結晶を共振光の光軸に対して駆動制御するため駆動制御手段としての駆動制御ステージ606が設けられた。これらを合わせて小型波長制御可能な固体レーザが構成される。なお、本実施例では、レーザ媒質605の位置を変えることで波長可変する例を示しているが、レーザ媒質605と偏光板604の相対的な位置を変えることで、波長可変出来る構成であれば限定されない。すなわち、偏光板604の位置を変える駆動制御手段を設け、これを用いることで、波長可変する構成であってもよい。
図6(a)において、偏光板604により規定される偏光方向はx方向であり、x方向の偏光の光のみが共振器中の伝搬を許容される。励起光601の伝搬方向はz軸方向に平行であり、これに対してアレキサンドライト結晶605の第一の端面607は垂直な平面に設けられている。アレキサンドライト結晶605はxy平面内で一辺が5ミリメートルの正方形で、図6(b)に示すように、結晶のc軸とz方向は平行である。また、b軸とa軸がそれぞれx軸およびy軸と30度をなすようにアレキサンドライト結晶605を配置することで、x偏光の光に対して大きな複屈折性を発現させることができる。図6(c)は、yz平面内で見たアレキサンドライト結晶605を示す図である。第一の端面607に対して、yz平面内で第二の端面608が1.9度傾いた平面となっており、共振光の光軸610と光軸611はy方向において3mm隔てられている。光軸610上のアレキサンドライト結晶605の長さは3.5ミリメートルであり、光軸611上のアレキサンドライト結晶605の長さは3.6ミリメートルであり、それぞれの長さは100μm異なる。図7は、共振光がアレキサンドライト結晶を通過した場合の、x偏光の光の透過光強度つまり入射光強度を1とした時の透過率の、光軸上のアレキサンドライト結晶の長さと波長依存性を表すグラフである。共振光が通過するアレキサンドライト結晶の長さを3.5ミリメートルから3.6ミリメートルまで連続的に変化させると、x偏光の光の透過率ピークに相当する波長は、およそ755nmから780nmへ連続的に変化することがわかる。これは、本実施例において共振光の光軸を結晶軸に対して610(光路1)から611(光路2)に連続的に変化させることに相当する。光路1と光路2とで、レーザ媒質を通過する励起光の光路長が異なる。本実施例では、駆動制御ステージ606にステッピングモーターが内蔵されており、共振光の光軸を固定したまま、アレキサンドライト結晶605を共振光の光軸に対して相対的に連続的に駆動制御することが可能となっている。アレキサンドライト結晶でレーザを構成した場合、一般的に発振波長は約720nmから820nmほどとされている。しかし、特に発振しやすい750nmから780nm付近の波長帯域において、本実施例の波長可変レーザを用いて、発振波長を連続的に制御することができる。また、本実施例では、アレキサンドライト結晶605そのものが波長制御機能を有するため、別の波長制御手段を配置する必要がなく、小型の波長制御レーザを実現することができる。本実施例における第二の端面の傾斜は1.9度と非常に小さいので、この面における屈折の影響は図中で明示していない。
(実施例2)
本発明の実施例2としての波長可変レーザについて説明する。本実施例は、実施例1と同様の波長可変レーザにおいて、アレキサンドライト結晶の形状とサイズを変えた場合に関するものである。図8に本実施例で用いるアレキサンドライト結晶を示す。本実施例では、第二の端面がブリュースターカットされたアレキサンドライト結晶803を用いる。アレキサンドライト結晶中および第一の端面801と第二の端面802を出入りする共振光の経路を光軸804として示す。アレキサンドライト結晶803中の共振光の伝搬方向はz軸と平行とする。第二の端面802は、zx面内でz軸に対し、ブリュースター角60.1°でカットされた平面となっており、zx面内で面802に対してブリュースター角をなしてアレキサンドライト結晶外の光は突入および出射される。共振光の光軸がy方向においてアレキサンドライト結晶のほぼ中心にあるときのアレキサンドライト結晶の光軸上の長さが3.5ミリメートルとなるように形成されている。つまりアレキサンドライト結晶のy方向の長さは3ミリメートル、zx面内でのz方向に平行な二つの辺の長さはそれぞれ3.5ミリメートルと4.35ミリメートルである。ここで実施例1と同様に、アレキサンドライト結晶の光学軸であるb軸が、x方向と30°をなしているとする。そうすれば、x方向においてアレキサンドライト結晶の中心付近を通る共振光に対して、アレキサンドライト結晶を相対的にy方向におよそ170μm駆動制御すれば、発振波長を750nmから780nmの間で連続的に制御可能である。駆動制御手段としては、ステッピングモーターを内蔵したステージや手動のマイクロメータでもよい。本実施例の場合、ブリュースターカットされた第二の端面を含む平面が、透過できる光の偏光をp偏光に規定するである。そのため、実施例1に必要とされた偏光制御手段としての偏光板などを別に配置する必要がなく、さらに小型な波長制御レーザを実現することができる。
(実施例3)
本発明の実施例3としての波長可変レーザについて説明する。本実施例は、実施例1のアレキサンドライト結晶の形状を変えた場合の例である。図9は、本実施例に用いるアレキサンドライト結晶をyz面内で描いたものである。本実施例のアレキサンドライト結晶の光学軸であるb軸は、x軸と45°をなして傾いているものである。本実施例の第二の端面は、第一の端面905と平行な面901と902がステップ状に設けられたものであり、共振光の光軸上のアレキサンドライト結晶の長さが異なるように、面901、902が設けられている。面901および面902を通過する場合の共振光の光軸をそれぞれ903、904とし、各場合のアレキサンドライトのz方向における長さは、それぞれ1.21ミリメートルと1.31ミリメートルでありその差は100μmである。光軸803、および804における共振光のx偏光の光の透過率を図10のグラフ中、(a)の実線と(b)の破線として表す。図10から、光軸903におけるx偏光の光の透過率ピークは、波長およそ720nm、光軸904におけるx偏光の光の透過率ピークは、波長およそ790nmであることが分かる。本実施例では、アレキサンドライト結晶に対する共振光の光軸をy方向において903と904とにスイッチングすることにより、発振波長をスイッチングすることができるものである。スイッチングするための駆動制御手段としては、アレキサンドライト結晶の位置をy方向において機械的に変更可能なステージなどを用いることができる。また、ステージを高速に駆動し、発振波長を高速にスイッチングすることができるため、見かけ上二つの波長のレーザ光を得ることが可能である。
601 励起光
602 ポンプミラー(反射鏡)
603 アウトプットカプラー(反射鏡)
604 偏光制御手段
605 複屈折性のレーザ媒質
606 駆動制御手段
607 レーザ媒質の一方の端面(第一の端面)
608 レーザ媒質の他方の端面(第二の端面)
609 共振器

Claims (8)

  1. 二つの反射鏡を有する共振器と、
    前記共振器内に設けられた複屈折性のレーザ媒質と、
    前記レーザ媒質を励起するための励起光の偏光状態を制御する偏光制御手段と、
    前記レーザ媒質及び前記偏光制御手段の少なくともいずれか一方を変位可能に構成されている駆動制御手段と、を有する波長可変レーザであって、
    前記駆動制御手段は、前記レーザ媒質を通過する励起光の光路長が変わるように、前記レーザ媒質と前記偏光制御手段の相対的な位置関係を変えることが可能に構成されている波長可変レーザ。
  2. 前記レーザ媒質の光学軸が、前記共振器中を往復する光の前記レーザ媒質中での光軸に垂直である請求項1に記載の波長可変レーザ。
  3. 前記駆動制御手段は、前記レーザ媒質を前記共振器の光軸に対して垂直な方向に並進運動させることで、射出される光の波長を変えることが可能に構成されている請求項1または2に記載の波長可変レーザ。
  4. 前記共振器中を往復する光の経路上の、前記レーザ結晶の二つの対向する端面のうちの一方の第一の端面が、前記往復する光の光軸に垂直な平面内に設けられ、かつ、他方の第二の端面が、前記光軸に対して垂直でない平坦状または曲面状である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の波長可変レーザ。
  5. 前記共振器中を往復する光の光路上の、前記レーザ結晶の前記第一の端面が、前記往復する光の光軸に垂直な平面内に設けられ、かつ、前記第二の端面が、前記垂直な平面に対して傾斜している請求項1乃至3のいずれか一項に記載の波長可変レーザ。
  6. 前記第二の端面を含む平面と、前記光軸とのなす角がブリュースター角である請求項5に記載の波長可変レーザ。
  7. 前記第一の端面を含む平面及び前記第二の端面を含む平面と、前記光軸とが、ブリュースター角をなし、かつ、前記第一の端面を含む平面と前記第二の端面を含む平面とが平行でない請求項5に記載の波長可変レーザ。
  8. 前記共振器中を往復する光の光路上の、前記レーザ結晶の有する二つの端のうちの一方の第一の端面が、前記往復する光の光軸に垂直な平面内に設けられ、かつ、他方の第二の端面が、複数の平面がステップ状に形成された構成である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の波長可変レーザ。
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