JP2017115090A - 銀インク組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】付着させたときに滲みを抑制できる基材として、従来よりも幅広い材質の基材を用いることが可能な銀インク組成物の提供。【解決手段】有機銀化合物が配合されてなる液状の銀インク組成物であって、フィルム状の基材の表面に、前記基材の表面上1cmの高さから、50μLの常温の前記銀インク組成物を滴下し、乾燥させたときの乾燥物の最大径が30mm以下となる、銀インク組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、銀インク組成物に関する。
金属銀又は反応によって金属銀を形成する金属銀の形成材料が配合されてなる銀インク組成物は、目的とする基材上に付着させ、必要に応じて加熱(焼成)する手法により、金属銀層を形成するのに有用である。
このような銀インク組成物としては、金属銀の形成材料として、β−ケトカルボン酸銀を用いたものが開示されている(特許文献1参照)。前記銀インク組成物は、β−ケトカルボン酸銀と、孤立電子対を有する化合物と、が配合されてなり、β−ケトカルボン酸銀以外の金属銀の形成材料や、金属銀自体が配合されてなる他の銀インク組成物よりも、高純度の金属銀を速やかに形成できることから、極めて有用性が高い。
さらに、カルボン酸銀を用いた銀インク組成物で、インクジェット印刷法での利用に好適なものとしては、カルボン酸銀、炭素数2〜10の脂肪族第一級アミン又は第二級アミン、アセチレンアルコール類、及び炭素数6〜20の炭化水素が配合されてなり、27℃における粘度が40mPa・s以下である銀インク組成物(特許文献2参照)、カルボン酸銀、炭素数2〜10の脂肪族第一級アミン又は第二級アミン、アセチレンアルコール類、及び炭素数6〜14の炭化水素が配合されてなり、動的表面張力が56mN/m以下である銀インク組成物(特許文献3参照)が開示されている。
特開2009−114232号公報 特開2013−173917号公報 特開2013−173918号公報
しかし、特許文献1〜3に記載のものをはじめとする従来の銀インク組成物は、用いる基材の材質によっては、基材に付着させたときに滲みが生じ易いという問題点があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、付着させたときに滲みを抑制できる基材として、従来よりも幅広い材質の基材を用いることが可能な銀インク組成物を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、有機銀化合物が配合されてなる液状の銀インク組成物であって、フィルム状の基材の表面に、前記基材の表面上1cmの高さから、50μLの常温の前記銀インク組成物を滴下し、乾燥させたときの乾燥物の最大径が30mm以下となる、銀インク組成物を提供する。
本発明の銀インク組成物は、1分子内に孤立電子対を有する原子を2個以上含む化合物(A)、又は環状アルカンが配合されてなるものであり、前記化合物(A)は、常温で液状であり、かつ炭素数25以下のアミン化合物、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩、前記アミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩、及びアセチレンアルコールのいずれにも該当せず、前記環状アルカンは、常温で液状であるものが好ましい。
本発明の銀インク組成物は、気泡周波数が0.1Hzの場合の最大泡圧法による静的表面張力が24.0mN/m以上であり、かつ気泡周波数が10Hzの場合の最大泡圧法による動的表面張力が41.5mN/m以上であるものが好ましい。
本発明によれば、付着させたときに滲みを抑制できる基材として、従来よりも幅広い材質の基材を用いることが可能な銀インク組成物が提供される。
本発明の銀インク組成物の評価方法における、銀インク組成物の滴下方法を説明するための模式図である。 本発明の銀インク組成物の評価方法において形成された、銀インク組成物の乾燥物の一例を示す模式図である。 実施例6の銀インク組成物について、インクジェット印刷性を評価したときの評価結果を示す撮像データである。
<銀インク組成物>
本発明の銀インク組成物は、有機銀化合物が配合されてなる液状の銀インク組成物であって、フィルム状の基材の表面に、前記基材の表面上1cmの高さから、50μLの常温の前記銀インク組成物を滴下し、乾燥させたときの乾燥物の最大径が30mm以下となる。
本発明の銀インク組成物は、フィルム状の基材(本明細書においては、単に「基材」と称することもある)の表面に、前記基材の表面上1cmの高さから、50μL滴下したときに、前記基材上での滲みが抑制される。そして、このような滲みが抑制された状態で、前記基材上で銀インク組成物が乾燥することにより、得られる乾燥物の最大径は30mm以下となる。本発明の銀インク組成物は、上記のような条件に限らず、種々の条件で種々の基材に付着させたときに、このような滲みの抑制効果が得られ、例えば、インクジェット印刷法での利用に好適なものである。
前記有機銀化合物は、有機化合物の骨格中に銀原子又は銀イオンを有し、後述する加熱処理を行ったときに、分解等の構造変化によって金属銀を生じるものである。
前記有機銀化合物で好ましいものとしては、例えば、有機化合物の銀塩、有機化合物の銀錯体等が挙げられ、有機化合物の銀塩であることがより好ましく、有機酸の銀塩であることがさらに好ましく、式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀であることが特に好ましい。
本発明の銀インク組成物において、前記有機銀化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
前記銀インク組成物において、前記有機銀化合物に由来する銀の含有量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。このような範囲であることで、形成された金属銀は品質により優れたものとなる。前記銀の含有量の上限値は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、取り扱い性等を考慮すると25質量%であることが好ましい。
なお、本明細書において、「有機銀化合物に由来する銀」とは、特に断りの無い限り、銀インク組成物の製造時に配合された前記有機銀化合物中の銀を意味し、配合後に引き続き有機銀化合物を構成している銀と、配合後に有機銀化合物が分解して生じた分解物中の銀及び銀自体と、の両方を含む概念とする。
前記基材はフィルム状であり、織布、不織布等の布状の構造を有しない非布状であって、繊維状のものを主たる構成要素とはしない。
前記基材の材質は、フィルムの形成に好適なものであればよく、合成樹脂を含有するものが挙げられ、例えば、合成樹脂からなるもの、合成樹脂を主成分とするもの、合成樹脂及びセラミックスなるもの、合成樹脂及びセラミックスを主成分とするもの等が挙げられる。
合成樹脂を主成分とする基材は、合成樹脂の含有量が90質量%以上であることが好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、99質量%以上等のいずれかであってもよい。
同様に、合成樹脂及びセラミックスを主成分とする基材は、合成樹脂及びセラミックスの総含有量が90質量%以上であることが好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、99質量%以上等のいずれかであってもよい。
前記基材を構成する合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリアリレート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。
前記基材を構成するセラミックスとしては、例えば、ガラス、シリコン等が挙げられる。
2種以上の材質を併用した前記基材としては、例えば、ポリカーボネート/ABS樹脂アロイ、ポリブチレンナフタレート/ABS樹脂アロイ等のポリマーアロイからなる基材;前記ポリマーアロイを主成分とする基材;ガラスエポキシ樹脂からなる基材;ガラスエポキシ樹脂を主成分とする基材等が挙げられる。
前記基材は、例えば、顔料等の公知の添加剤を含有するものでもよい。
前記基材の厚さは、特に限定されず、例えば、後述する積層体における基材の厚さと同様であってもよい。
基材へ付着させたときの銀インク組成物の滲みの程度を評価するためには、上記のように、フィルム状の基材の表面に、この基材の表面上1cmの高さから、50μLの常温の銀インク組成物を滴下し、滴下後の基材上の銀インク組成物を乾燥させて、この乾燥物の最大径を測定すればよい。
なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜30℃の温度等が挙げられる。
上述のように、銀インク組成物の滲みの程度を評価するときには、例えば、基材の表面に対して、銀インク組成物の全量を一度にまとめて滴下するなど、銀インク組成物の全量を短時間で滴下することが好ましく、銀インク組成物の全量を3秒以内で滴下することがより好ましい。このようにすることで、銀インク組成物の滲みの程度を高精度に評価できる。
図1は、上述の銀インク組成物の評価方法における、銀インク組成物の滴下方法を説明するための模式図である。
ここに示すように、銀インク組成物3は、例えば、マイクロピペット、シリンジ、又はこれらと同等の機能を有する、微量の液状物を目的とする箇所に滴下するための滴下手段2を用いて、基材1の表面1aに滴下できる。滴下手段2は、滴下対象である液状物を放出するための開口部2aを有しており、この開口部2aの、基材1の表面1aからの高さHが1cmとなるように、滴下手段2を配置すればよい。
基材1は、その表面1aが、滴下手段2から滴下される銀インク組成物3の滴下方向(すなわち、鉛直方向)と直交する方向(すなわち、水平方向)を向くように、配置することが好ましい。
なお、ここに示す基材及び滴下手段の配置形態は、銀インク組成物の滴下時に採用できる一例に過ぎない。基材の表面に、この基材の表面上1cmの高さから、50μLの銀インク組成物を滴下でき、基材の表面に滴下された銀インク組成物の位置が安定する限り、基材及び滴下手段の配置形態は、ここに示すものに限定されない。
図2は、上述の銀インク組成物の評価方法において、基材上で形成された銀インク組成物の乾燥物の一例を示す模式図であり、基材の表面の上方から前記乾燥物を見下ろしたときの図である。なお、図2において、図1に示すものと同じ構成要素には、図1の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
銀インク組成物の乾燥物3’を上方から見下ろしたとき、その形状が、例えば、左側に示すように円形である場合には、その円の直径を乾燥物3’の最大径Dとすればよい。また、銀インク組成物の乾燥物3’の前記形状が、例えば、右側に示すように円形以外の形状である場合には、乾燥物3’の周縁部3b’上に位置する、異なる2点を結ぶ線分(有限直線)の最大値を、乾燥物3’の最大径Dとすればよい。
なお、ここに示す銀インク組成物の乾燥物の形状は、一例に過ぎず、乾燥物の前記形状は、銀インク組成物の性状等に依存して、種々の形状となり得る。
また、上述の銀インク組成物の評価方法においては、銀インク組成物の乾燥物の前記形状から、銀インク組成物が基材上への滴下時に、基材上ではねたと判断できる場合には、このような乾燥物は評価しないものとする。
上述の銀インク組成物の評価方法においては、銀インク組成物を滴下した後の基材を静置して、滴下後の前記基材上の銀インク組成物の動きを停止させて、安定させてから、銀インク組成物を乾燥させることが好ましい。このようにすることで、銀インク組成物の滲みの程度を高精度に評価できる。ここで、「基材上の銀インク組成物の動き」とは、例えば、銀インク組成物が基材表面で広がる動き等が挙げられ、この場合、基材上で銀インク組成物の盛り上がりの高さが低くなることもある。
このような目的で、銀インク組成物の動きを停止させて、安定させる時間は、通常、10分以上あれば十分であり、例えば、10〜15分とすることができる。
上述の銀インク組成物の評価方法において、基材の表面に滴下した銀インク組成物の乾燥条件は、特に限定されず、少なくとも、常圧下で気化可能な成分の大半又はすべてが気化によって除去された状態の乾燥物が得られるように、適宜調節すればよい。例えば、銀インク組成物の乾燥は、加熱して行ってもよいし、常温で行ってもよく、大気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下でおこなってもよい。また、銀インク組成物の乾燥は、常圧下、減圧下及び加圧下のいずれで行ってもよい。
銀インク組成物の乾燥は、前記有機銀化合物から金属銀を形成する条件でおこなってもよい。すなわち、上述の銀インク組成物の評価方法においては、乾燥によって、滴下した銀インク組成物から上述の気化可能な成分を除去するだけでなく、前記有機銀化合物を分解させて金属銀の形成まで行ってもよい。例えば、有機銀化合物として金属銀を形成し易いカルボン酸銀を用いた場合には、後述するように、加熱温度が低い乾燥条件でも、容易に金属銀を形成できる。
このような金属銀の形成を伴う乾燥条件としては、例えば、後述する銀インク組成物の加熱(焼成)処理の条件、例えば、加熱温度を好ましくは60〜370℃とし、加熱時間を好ましくは1分〜24時間とする条件が挙げられる。
ただし、ここでの乾燥は、金属銀の形成ではなく、気化可能な成分の除去が目的であるため、より穏やかな乾燥条件を適用してもよく、例えば、加熱温度を好ましくは75〜105℃とし、加熱時間を好ましくは5〜40としてもよい。このような乾燥条件でも、前記有機銀化合物から金属銀を十分に形成できることがある。
基材上の前記銀インク組成物の乾燥物は、上述のように、少なくとも、常圧下で気化可能な成分の大半又はすべてが気化によって除去された状態であればよく、前記有機銀化合物から形成された金属銀を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。
一方、前記銀インク組成物の乾燥物は、純度が高い金属銀とすることが可能であり、その金属銀の比率を、前記乾燥物が見かけ上金属銀だけからなるとみなし得る程度に十分に高くすることが可能である。より具体的には、前記乾燥物の金属銀の比率を、好ましくは99質量%以上とすることができ、前記金属銀の比率の上限値は、例えば、99.9質量%、99.8質量%、99.7質量%、99.6質量%、99.5質量%、99.4質量%、99.3質量%、99.2質量%及び99.1質量%のいずれかとすることができる。
前記乾燥物が金属銀を含有する場合、その波長700nmの光の反射率を、好ましくは85%以上、より好ましくは86.5%以上、さらに好ましくは88%以上とすることができる。一方、前記乾燥物の、波長700nmの光の反射率の上限値は、特に限定されないが、例えば、98%とすることができる。
本発明において、前記乾燥物の最大径は30mm以下であればよい。そして、前記乾燥物の最大径の下限値は特に限定されないが、例えば、12mmとすることができる。
本発明において、前記乾燥物の厚さは、特に限定されないが、例えば、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下とすることができる。一方、前記乾燥物の厚さは、典型的には、乾燥物の縁に近付くに従って薄くなり、0μmより厚ければよい。
本発明の銀インク組成物は、液状であり、少なくとも常温で液状であることが好ましい。
本発明の銀インク組成物の、常温で振動式粘度計を用いて測定された粘度は、4.0〜20mPa・sであることが好ましく、4.3〜18mPa・sであることがより好ましく、4.5〜16mPa・sであることが特に好ましい。
本発明の銀インク組成物の、気泡周波数が0.1Hzの場合の最大泡圧法による静的表面張力は、24.0mN/m以上であることが好ましく、24.0〜28mN/mであることがより好ましく、24.0〜27.6mN/mであることがさらに好ましく、24.0〜27.2mN/mであることが特に好ましい。また、本発明の銀インク組成物の前記静的表面張力の下限値は、例えば、25.0mN/m、25.5mN/m等とすることも可能である。
本発明の銀インク組成物の、気泡周波数が10Hzの場合の最大泡圧法による動的表面張力は、41.5mN/m以上であることが好ましく、41.5〜48mN/mであることがより好ましく、41.5〜47.6mN/mであることがさらに好ましく、41.5〜47.2mN/mであることが特に好ましい。また、本発明の銀インク組成物の前記動的表面張力の下限値は、例えば、42.0mN/m、42.5mN/m等とすることも可能である。
本発明の銀インク組成物は、前記静的表面張力及び動的表面張力が、ともに上述の数値範囲を満たすものが好ましい。このような銀インク組成物としては、例えば、前記静的表面張力が24.0mN/m以上であり、かつ前記動的表面張力が41.5mN/m以上であるものが好ましく、例えば、前記静的表面張力が25.0mN/m以上であり、かつ前記動的表面張力が42.0mN/m以上であるものでもよく、前記静的表面張力が25.5mN/m以上であり、かつ前記動的表面張力が42.5mN/m以上であるものでもよい。
本発明の銀インク組成物においては、有機銀化合物等の配合成分が互いに相互作用して、又は、配合後に安定性が低いことで、一部の成分は分解し、配合成分同士、配合成分の分解物同士、若しくは配合成分と配合成分の分解物とが反応する可能性がある。また、配合成分や配合成分の分解物がそのまま存在することもある。すなわち、本発明の銀インク組成物は、多種類の成分を含有して複雑な組成となり、含有成分の特定も困難である。本発明の銀インク組成物がこのように複雑な組成を有し、安定性が低い成分を含有することは、例えば、各種クロマトグラフィーによる分析データが複雑となり、分析データの再現性が低いことで、確認できる。
しかし、本発明の銀インク組成物は、上述のような優れた滲みの抑制効果を有する。
次に、銀インク組成物の配合成分について、詳細に説明する。
[カルボン酸銀]
前記カルボン酸銀は、式「−COOAg」で表される基を有していれば特に限定されない。例えば、式「−COOAg」で表される基の数は1個のみでもよいし、2個以上でもよい。また、カルボン酸銀中の式「−COOAg」で表される基の位置も特に限定されない。
前記カルボン酸銀は、下記一般式(1)で表わされるβ−ケトカルボン酸銀(以下、「β−ケトカルボン酸銀(1)」と略記することがある)及び下記一般式(4)で表されるカルボン酸銀(以下、「カルボン酸銀(4)」と略記することがある)からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
なお、本明細書においては、単なる「カルボン酸銀」との記載は、特に断りの無い限り、「β−ケトカルボン酸銀(1)」及び「カルボン酸銀(4)」だけではなく、これらを包括する、「式「−COOAg」で表される基を有するカルボン酸銀」を意味するものとする。
(式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY −」、「CY −」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」、「(RO)CY−」若しくは「R−C(=O)−CY −」で表される基であり;
はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;Rは炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり;R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり;
はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基であり;
は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
(式中、Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基又は式「−C(=O)−OAg」で表される基であり、前記脂肪族炭化水素基がメチレン基を有する場合、1個以上の該メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。)
(β−ケトカルボン酸銀(1))
β−ケトカルボン酸銀(1)は、前記一般式(1)で表される。
式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R−CY −」、「CY −」、「R−CHY−」、「RO−」、「RN−」、「(RO)CY−」若しくは「R−C(=O)−CY −」で表される基である。
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでもよい。そして、前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜6であることがより好ましい。Rにおける好ましい前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
Rにおける直鎖状又は分枝鎖状の前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、1−プロピルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、1,1−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、5,5−ジメチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
Rにおける環状の前記アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。
Rにおける前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基(エテニル基、−CH=CH)、アリル基(2−プロペニル基、−CH−CH=CH)、1−プロペニル基(−CH=CH−CH)、イソプロペニル基(−C(CH)=CH)、1−ブテニル基(−CH=CH−CH−CH)、2−ブテニル基(−CH−CH=CH−CH)、3−ブテニル基(−CH−CH−CH=CH)、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が二重結合(C=C)に置換された基が挙げられる。
Rにおける前記アルキニル基としては、例えば、エチニル基(−C≡CH)、プロパルギル基(−CH−C≡CH)等の、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C−C)が三重結合(C≡C)に置換された基が挙げられる。
Rにおける炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。また、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての置換基が同一であってもよいし、すべての置換基が異なっていてもよく、一部の置換基のみが異なっていてもよい。
Rにおけるフェニル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、例えば、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基(−OH)、シアノ基(−C≡N)、フェノキシ基(−O−C)等が挙げられ、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
置換基である前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるYは、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子である。そして、一般式「R−CY −」、「CY −」及び「R−C(=O)−CY −」においては、それぞれ複数個のYは、互いに同一でも異なっていてもよい。
RにおけるRは、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基(C−)であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるRは、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、例えば、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるRは、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であり、例えば、炭素数が1〜16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。すなわち、R及びRは、互いに同一でも異なっていてもよく、例えば、炭素数が1〜18である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるRは、炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であり、Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
Rは、上記の中でも、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、一般式「R−C(=O)−CY −」で表される基、水酸基又はフェニル基であることが好ましい。そして、Rは、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、水酸基又は式「AgO−」で表される基であることが好ましい。
一般式(1)において、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基(C−CH−)、シアノ基、N−フタロイル−3−アミノプロピル基、2−エトキシビニル基(C−O−CH=CH−)、又は一般式「RO−」、「RS−」、「R−C(=O)−」若しくは「R−C(=O)−O−」で表される基である。
における炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、例えば、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
におけるフェニル基及びベンジル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよく、好ましい前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ基(−NO)等が挙げられ、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
におけるRは、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、チエニル基(CS−)、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基(ビフェニル基、C−C−)である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜10である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。また、Rにおけるフェニル基及びジフェニル基の前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が挙げられ、置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
がチエニル基又はジフェニル基である場合、これらの、Xにおいて隣接する基又は原子(酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基)との結合位置は、特に限定されない。例えば、チエニル基は、2−チエニル基及び3−チエニル基のいずれでもよい。
一般式(1)において、2個のXは、2個のカルボニル基で挟まれた炭素原子と二重結合を介して1個の基として結合していてもよく、このようなものとしては、例えば、式「=CH−C−NO」で表される基等が挙げられる。
は、上記の中でも、水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基、ベンジル基、又は一般式「R−C(=O)−」で表される基であることが好ましく、少なくとも一方のXが水素原子であることが好ましい。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、2−メチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CH)−C(=O)−OAg)、アセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−エチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CHCH)−C(=O)−OAg)、プロピオニル酢酸銀(CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、イソブチリル酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、ピバロイル酢酸銀((CHC−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、カプロイル酢酸銀(CH(CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−n−ブチルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CHCHCHCH)−C(=O)−OAg)、2−ベンジルアセト酢酸銀(CH−C(=O)−CH(CH)−C(=O)−OAg)、ベンゾイル酢酸銀(C−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、ピバロイルアセト酢酸銀((CHC−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、イソブチリルアセト酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)、2−アセチルピバロイル酢酸銀((CHC−C(=O)−CH(−C(=O)−CH)−C(=O)−OAg)、2−アセチルイソブチリル酢酸銀((CHCH−C(=O)−CH(−C(=O)−CH)−C(=O)−OAg)、又はアセトンジカルボン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)であることが好ましい。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。原料や不純物が少ない程、例えば、形成された金属銀同士の接触が良好となり、導通が容易となり、抵抗率が低下する。
β−ケトカルボン酸銀(1)は、後述するように、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、好ましくは60〜210℃、より好ましくは60〜200℃という低温で分解し、金属銀を形成することが可能である。そして、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。還元剤については後ほど説明する。
本発明において、β−ケトカルボン酸銀(1)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
(カルボン酸銀(4))
カルボン酸銀(4)は、前記一般式(4)で表される。
式中、Rは炭素数1〜19の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基(−COOH)又は式「−C(=O)−OAg」で表される基である。
における前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。ただし、Rにおける前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜15であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
における前記脂肪族炭化水素基がメチレン基(−CH−)を有する場合、1個以上の該メチレン基はカルボニル基で置換されていてもよい。カルボニル基で置換されていてもよいメチレン基の数及び位置は特に限定されず、すべてのメチレン基がカルボニル基で置換されていてもよい。ここで「メチレン基」とは、単独の式「−CH−」で表される基だけでなく、式「−CH−」で表される基が複数個連なったアルキレン基中の1個の式「−CH−」で表される基も含むものとする。
カルボン酸銀(4)は、ピルビン酸銀(CH−C(=O)−C(=O)−OAg)、酢酸銀(CH−C(=O)−OAg)、酪酸銀(CH−(CH−C(=O)−OAg)、イソ酪酸銀((CHCH−C(=O)−OAg)、2−エチルへキサン酸銀(CH−(CH−CH(CHCH)−C(=O)−OAg)、ネオデカン酸銀(CH−(CH−C(CH−C(=O)−OAg)、シュウ酸銀(AgO−C(=O)−C(=O)−OAg)、又はマロン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)であることが好ましい。また、上記のシュウ酸銀(AgO−C(=O)−C(=O)−OAg)及びマロン酸銀(AgO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)の2個の式「−COOAg」で表される基のうち、1個が式「−COOH」で表される基となったもの(HO−C(=O)−C(=O)−OAg、HO−C(=O)−CH−C(=O)−OAg)も好ましい。
カルボン酸銀(4)も、β−ケトカルボン酸銀(1)と同様に、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理により形成された導電体(金属銀)において、残存する原料や不純物の濃度をより低減できる。そして、還元剤と併用することで、より低温で分解して金属銀を形成する。
本発明において、カルボン酸銀(4)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
前記カルボン酸銀は、2−メチルアセト酢酸銀、アセト酢酸銀、2−エチルアセト酢酸銀、プロピオニル酢酸銀、イソブチリル酢酸銀、ピバロイル酢酸銀、カプロイル酢酸銀、2−n−ブチルアセト酢酸銀、2−ベンジルアセト酢酸銀、ベンゾイル酢酸銀、ピバロイルアセト酢酸銀、イソブチリルアセト酢酸銀、アセトンジカルボン酸銀、ピルビン酸銀、酢酸銀、酪酸銀、イソ酪酸銀、2−エチルへキサン酸銀、ネオデカン酸銀、シュウ酸銀及びマロン酸銀からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
そして、これらカルボン酸銀の中でも、2−メチルアセト酢酸銀及びアセト酢酸銀は、後述する含窒素化合物(なかでもアミン化合物)との相溶性に優れ、銀インク組成物の高濃度化に、特に適したものとして挙げられる。
[希釈剤]
前記銀インク組成物は、希釈剤として、1分子内に孤立電子対を有する原子を2個以上含む化合物(A)、又は環状アルカンが配合されてなるものが好ましい。
前記化合物(A)は、常温で液状であり、かつ炭素数25以下のアミン化合物、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩、前記アミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩、及びアセチレンアルコールのいずれにも該当しないものである。
また、前記環状アルカンは、常温で液状のものである。
(化合物(A))
前記化合物(A)は、1分子内に孤立電子対を有する原子を2個以上含む、常温で液状のものである。ただし、後述する「含窒素化合物」に該当する、炭素数25以下のアミン化合物、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩、及び前記アミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩 並びに、後述する「アセチレンアルコール」、のいずれにも該当しないものである。これら「含窒素化合物」又は「アセチレンアルコール」に該当する化合物については、後ほど「含窒素化合物」、「アセチレンアルコール」のところで詳細に説明する。
化合物(A)は、上述の条件を満たすものであれば特に限定されない。
化合物(A)は、1分子内に孤立電子対を有する原子を2〜5個含むものが好ましく、2〜4個含むものがより好ましい。
化合物(A)における、孤立電子対を有する原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子等が挙げられ、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子であることが好ましく、酸素原子又は窒素原子であることがより好ましい。
化合物(A)における、孤立電子対を有する原子のうち、酸素原子は、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はエーテル結合(ただし、アルコキシ基又はアリールオキシ基に含まれるものを除く。)を構成していることが好ましい。
化合物(A)における、孤立電子対を有する原子のうち、窒素原子は、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、又は式「−NH−」で表される基(ただし、窒素原子に結合している未確定の2個の基のうちの一方は、水素原子、アルキル基及びアリール基のいずれにも該当しない基である。)を構成していることが好ましい。
化合物(A)における、孤立電子対を有する原子のうち、硫黄原子は、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基又はスルフィド結合(ただし、硫黄原子に結合している未確定の2個の基のうちの一方は、水素原子、アルキル基及びアリール基のいずれにも該当しない基である。)を構成していることが好ましい。
化合物(A)が、1分子内に含む孤立電子対を有する2個以上の原子は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、化合物(A)1分子中の孤立電子対を有する2個以上の原子は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。そして、化合物(A)1分子中の孤立電子対を有する2個以上の原子の組み合わせは、特に限定されない。
化合物(A)は、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、エーテル結合(ただし、アルコキシ基又はアリールオキシ基に含まれるものを除く。)、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、式「−NH−」で表される基(ただし、窒素原子に結合している未確定の2個の基のうちの一方は、水素原子、アルキル基及びアリール基のいずれにも該当しない基である。)、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、及びスルフィド結合(ただし、硫黄原子に結合している未確定の2個の基のうちの一方は、水素原子、アルキル基及びアリール基のいずれにも該当しない基である。)からなる群より選択される1種以上を合計で2個以上有するものが好ましく、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、エーテル結合(ただし、アルコキシ基又はアリールオキシ基に含まれるものを除く。)、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、及び式「−NH−」で表される基(ただし、窒素原子に結合している未確定の2個の基のうちの一方は、水素原子、アルキル基及びアリール基のいずれにも該当しない基である。)からなる群より選択される1種以上を合計で2個以上有するものがより好ましい。
化合物(A)でさらに好ましいものとしては、アミノアルコール(アミノ基を有するアルコール)、モノアルキルアミノアルコール(モノアルキルアミノ基を有するアルコール)、ジアルキルアミノアルコール(ジアルキルアミノ基を有するアルコール)、モノアリールアミノアルコール(モノアリールアミノ基を有するアルコール)、ジアリールアミノアルコール(ジアリールアミノ基を有するアルコール)、アルキルアリールアミノアルコール(アルキルアリールアミノ基を有するアルコール)、アルコキシアルコール(アルコキシ基を有するアルコール)、アリールオキシアルコール(アリールオキシ基を有するアルコール)、アルコキシエーテル(アルコキシ基を有するエーテル)、アリールオキシエーテル(アリールオキシ基を有するエーテル)、ジアルコキシアルカン(アルコキシ基を2個有するアルカン)、ジアリールオキシアルカン(アリールオキシ基を2個有するアルカン)、アルコキシアリールオキシアルカン(アルコキシ基及びアリールオキシ基を有するアルカン)等が挙げられる。
上述のモノアルキルアミノアルコール、ジアルキルアミノアルコール及びアルキルアリールアミノアルコールの窒素原子に結合している前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよい。
窒素原子に結合している、直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基は、炭素数が1〜8であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、4−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、1−プロピルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、1,1−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、5,5−ジメチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、2−プロピルペンチル基等が挙げられる。
窒素原子に結合している環状の前記アルキル基は、炭素数が3〜8であることが好ましく、このようなアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
上述のアルコキシアルコール、アルコキシエーテル、ジアルコキシアルカン及びアルコキシアリールオキシアルカンにおけるアルコキシ基としては、例えば、上述の窒素原子に結合している、直鎖状、分岐鎖状又は環状の前記アルキル基が酸素原子に結合してなる一価の基等が挙げられる。
上述のモノアリールアミノアルコール、ジアリールアミノアルコール及びアルキルアリールアミノアルコールの窒素原子に結合している前記アリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよい。
窒素原子に結合している前記アリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基(ジメチルフェニル基)等が挙げられ、これらアリール基の1個以上の水素原子が、さらにこれらアリール基や、窒素原子に結合しているものとして挙げた前記アルキル基で置換されたものも挙げられる。
窒素原子に結合している前記アリール基は、置換基を有する場合には、その置換基も含めて炭素数が6〜16であることが好ましい。
上述のアリールオキシアルコール、アリールオキシエーテル、ジアリールオキシアルカン及びアルコキシアリールオキシアルカンにおけるアリールオキシ基としては、例えば、上述の窒素原子に結合している前記アリール基が酸素原子に結合してなる一価の基等が挙げられる。
上述のジアルキルアミノアルコールにおける、窒素原子に結合している2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
上述のジアルコキシアルカンにおける2個のアルコキシ基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
上述のジアリールアミノアルコールにおける、窒素原子に結合している2個のアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
上述のジアリールオキシアルカンにおける2個のアリールオキシ基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
上述のアルコキシエーテル及びジアルコキシアルカンは、その分子中の2個の酸素原子の間にあるアルキレン基が直鎖状であるものが好ましい。
これまでに説明したものの中でも、化合物(A)で特に好ましいものとしては、アミノアルコール、モノアルキルアミノアルコール、ジアルキルアミノアルコール、モノアリールアミノアルコール、ジアリールアミノアルコール、アルキルアリールアミノアルコール、アルコキシアルコール、アリールオキシアルコール、アルコキシエーテル、アリールオキシエーテルが挙げられる。
本発明において、化合物(A)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
(環状アルカン)
前記環状アルカンは、常温で液状のものであれば、特に限定されない。
環状アルカンは、単環状及び多環状のいずれでもよい。
単環状の環状アルカンとしては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン等が挙げられる。また、単環状の環状アルカンとしては、例えば、ここで例示した環状アルカンの1個以上の水素原子がアルキル基で置換されてなるものも挙げられ、置換されるアルキル基としては、上述の化合物(A)の窒素原子に結合している前記アルキル基と同様のものが挙げられる。
多環状の環状アルカンとしては、例えば、デカヒドロナフタレン(デカリン)や、その1個以上の水素原子がアルキル基で置換されてなるものが挙げられる。ここで、置換されるアルキル基は、単環状の環状アルカンの場合と同様のものである。
本発明において、環状アルカンは、炭素数が3〜14であることが好ましい。
本発明において、環状アルカンは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
本発明において、前記希釈剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。すなわち、本発明においては、希釈剤として、化合物(A)のみを用いてもよいし、環状アルカンのみを用いてもよく、化合物(A)及び環状アルカンを併用してもよい。そして、化合物(A)及び環状アルカンを併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
銀インク組成物において、配合成分の総量に対する、前記希釈剤の配合量(すなわち、化合物(A)及び環状アルカンの総配合量)の割合は、10〜60質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、13〜35質量%であることがさらに好ましく、16〜30質量%であることが特に好ましい。希釈剤の前記配合量の割合が前記下限値以上であることで、銀インク組成物を種々の基材に付着させたときの滲みの抑制効果がより高くなる。また、希釈剤の前記配合量の割合が前記上限値以下であることで、導電性が高い金属銀の形成がより容易となる。
[含窒素化合物]
前記銀インク組成物は、前記有機銀化合物以外に、さらに含窒素化合物が配合されてなるものが好ましい。
前記含窒素化合物は、炭素数25以下のアミン化合物(以下、「アミン化合物」と略記することがある)、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩(以下、「第4級アンモニウム塩」と略記することがある)、アンモニア、炭素数25以下のアミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アミン化合物由来のアンモニウム塩」と略記することがある)、及びアンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩(以下、「アンモニア由来のアンモニウム塩」と略記することがある)からなる群から選択される1種以上のものである。すなわち、配合される含窒素化合物は、1種のみでよいし、2種以上でもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
(アミン化合物、第4級アンモニウム塩)
前記アミン化合物は、炭素数が1〜25であり、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれでもよい。また、前記第4級アンモニウム塩は、炭素数が4〜25である。前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、鎖状及び環状のいずれでもよい。また、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子(例えば、第1級アミンのアミノ基(−NH)を構成する窒素原子)の数は1個でもよいし、2個以上でもよい。
前記第1級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいモノアルキルアミン、モノアリールアミン、モノ(ヘテロアリール)アミン、ジアミン等が挙げられる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、Rにおける前記アルキル基と同様のものが挙げられ、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。
好ましい前記モノアルキルアミンとして、具体的には、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−ヘプチルアミン(2−アミノヘプタン)、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミン等が挙げられる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられ、炭素数が6〜10であることが好ましい。
前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、芳香族環骨格を構成する原子として、ヘテロ原子を有するものであり、前記ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ホウ素原子等が挙げられる。また、芳香族環骨格を構成する前記へテロ原子の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。2個以上である場合、これらへテロ原子は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、これらへテロ原子は、すべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけ異なっていてもよい。
前記ヘテロアリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されないが、3〜12員環であることが好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜4個有する単環状のものとしては、例えば、ピロリル基、ピロリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペラジニル基等が挙げられ、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1個有する単環状のものとしては、例えば、フラニル基等が挙げられ、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1個有する単環状のものとしては、例えば、チエニル基等が挙げられ、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、例えば、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、モルホリニル基等が挙げられ、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する単環状のものとしては、例えば、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チアゾリジニル基等が挙げられ、3〜8員環であることが好ましく、5〜6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1〜5個有する多環状のものとしては、例えば、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基等が挙げられ、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜3個有する多環状のものとしては、例えば、ジチアナフタレニル基、ベンゾチオフェニル基等が挙げられ、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、例えば、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基等が挙げられ、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1〜2個及び窒素原子を1〜3個有する多環状のものとしては、例えば、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基等が挙げられ、7〜12員環であることが好ましく、9〜10員環であることがより好ましい。
前記ジアミンは、アミノ基を2個有していればよく、2個のアミノ基の位置関係は特に限定されない。好ましい前記ジアミンとしては、例えば、前記モノアルキルアミン、モノアリールアミン又はモノ(ヘテロアリール)アミンにおいて、アミノ基(−NH)を構成する水素原子以外の1個の水素原子が、アミノ基で置換されたもの等が挙げられる。
前記ジアミンは炭素数が1〜10であることが好ましく、より好ましいものとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン等が挙げられる。
前記第2級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジ(ヘテロアリール)アミン等が挙げられる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
好ましい前記ジアルキルアミンとして、具体的には、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン等が挙げられる。
前記ジアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。また、ジアリールアミン一分子中の2個のアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基と同様であり、6〜12員環であることが好ましい。また、ジ(ヘテロアリール)アミン一分子中の2個のヘテロアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記第3級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいトリアルキルアミン、ジアルキルモノアリールアミン等が挙げられる。
前記トリアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、トリアルキルアミン一分子中の3個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、3個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
好ましい前記トリアルキルアミンとして、具体的には、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3〜7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルモノアリールアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6〜10であることが好ましい。
本発明において、前記第4級アンモニウム塩としては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいハロゲン化テトラアルキルアンモニウム等が挙げられる。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1〜19であることが好ましい。また、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム一分子中の4個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、4個のアルキル基は、すべてが同じでもよいし、すべてが異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを構成するハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
好ましい前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムとして、具体的には、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
ここまでは、主に鎖状のアミン化合物及び第4級有機アンモニウム塩について説明したが、前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩は、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子が環骨格構造(複素環骨格構造)の一部であるようなヘテロ環化合物であってもよい。すなわち、前記アミン化合物は環状アミンでもよく、前記第4級アンモニウム塩は環状アンモニウム塩でもよい。この時の環(アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子を含む環)構造は、単環状及び多環状のいずれでもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されず、脂肪族環及び芳香族環のいずれでもよい。
環状アミンであれば、好ましいものとして、例えば、ピリジン等が挙げられる。
前記第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム塩において、「置換基で置換されていてもよい水素原子」とは、アミン部位又はアンモニウム塩部位を構成する窒素原子に結合している水素原子以外の水素原子である。この時の置換基の数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよく、前記水素原子のすべてが置換基で置換されていてもよい。置換基の数が複数の場合には、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、複数個の置換基はすべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけが異なっていてもよい。また、置換基の位置も特に限定されない。
前記アミン化合物及び第4級アンモニウム塩における前記置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、トリフルオロメチル基(−CF)等が挙げられる。ここで、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、前記アルキル基は、置換基としてアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は置換基として好ましくは炭素数が1〜5のアルキル基を有する、炭素数が3〜7の環状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するモノアルキルアミンとして、具体的には、例えば、2−フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
また、置換基である前記アリール基及びアルキル基は、さらに1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよく、このようなハロゲン原子で置換された置換基を有するモノアルキルアミンとしては、例えば、2−ブロモベンジルアミン等が挙げられる。ここで、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記モノアリールアミンを構成するアリール基が置換基を有する場合、前記アリール基は、置換基としてハロゲン原子を有する、炭素数が6〜10のアリール基が好ましく、このような置換基を有するモノアリールアミンとして、具体的には、ブロモフェニルアミン等が挙げられる。ここで、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、前記アルキル基は、置換基として水酸基又はアリール基を有する、炭素数が1〜9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するジアルキルアミンとして、具体的には、ジエタノールアミン、N−メチルベンジルアミン等が挙げられる。
前記アミン化合物は、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−へキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−アミノペンタン、3−メチルブチルアミン、2−ヘプチルアミン、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、2−フェニルエチルアミン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、N−メチル−n−ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、N−メチルベンジルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン又はN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンであることが好ましい。
そして、これらアミン化合物の中でも、2−エチルヘキシルアミンは、前記カルボン酸銀との相溶性に優れ、銀インク組成物の高濃度化に特に適しており、さらに金属銀からなる層の表面粗さの低減に特に適したものとして挙げられる。
(アミン化合物由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩は、前記アミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩であり、前記酸は、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸でもよいし、酢酸等の有機酸でもよく、酸の種類は特に限定されない。
前記アミン化合物由来のアンモニウム塩としては、例えば、n−プロピルアミン塩酸塩、N−メチル−n−ヘキシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩等が挙げられるが、これらに限定されない。
(アンモニア由来のアンモニウム塩)
本発明において、前記アンモニア由来のアンモニウム塩は、アンモニアが酸と反応してなるアンモニウム塩であり、ここで酸としては、例えば、前記アミン化合物由来のアンモニウム塩の場合と同じものが挙げられる。
前記アンモニア由来のアンモニウム塩としては、例えば、塩化アンモニウム等が挙げられるが、これに限定されない。
本発明においては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩は、それぞれ1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
そして、前記含窒素化合物としては、前記アミン化合物、第4級アンモニウム塩、アミン化合物由来のアンモニウム塩及びアンモニア由来のアンモニウム塩からなる群から選択される1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
銀インク組成物において、前記含窒素化合物の配合量は、前記有機銀化合物の配合量1モルあたり0.3〜15モルであることが好ましく、0.3〜5モルであることがより好ましい。前記含窒素化合物の前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物は安定性がより向上し、金属銀の品質がより向上する。さらに、高温による加熱処理を行わなくても、より安定して金属銀を形成できる。
[アセチレンアルコール]
銀インク組成物は、前記有機銀化合物以外に、さらにアセチレンアルコールが配合されてなるものでもよい。
前記アセチレンアルコールは、炭素原子間の三重結合(C≡C)を有するアルコールであり、下記一般式(2)で表されるアセチレンアルコール(以下、「アセチレンアルコール(2)」と略記することがある)であることが好ましい。
(式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。)
(アセチレンアルコール(2))
アセチレンアルコール(2)は、前記一般式(2)で表される。
式中、R’及びR’’は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基である。
R’及びR’’における炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれでもよい。R’及びR’’における前記アルキル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基と同様のものが挙げられる。
R’及びR’’におけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基としては、例えば、炭素数が1〜16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、該脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、シアノ基、フェノキシ基等が挙げられ、Rにおけるフェニル基の水素原子が置換されていてもよい前記置換基と同様である。そして、置換基の数及び位置は特に限定されず、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
R’及びR’’は、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
好ましいアセチレンアルコール(2)としては、例えば、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール等が挙げられる。
前記アセチレンアルコールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
アセチレンアルコールを用いる場合、銀インク組成物において、アセチレンアルコールの配合量は、前記有機銀化合物の配合量1モルあたり0.03〜0.7モルであることが好ましく、0.04〜0.3モルであることがより好ましい。アセチレンアルコールの前記配合量がこのような範囲であることで、銀インク組成物の安定性がより向上する。
[その他の成分]
前記銀インク組成物は、前記有機銀化合物、希釈剤、含窒素化合物及びアセチレンアルコール以外の、その他の成分が配合されてなるものでもよい。
銀インク組成物における前記その他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されず、配合成分の種類や量に応じて任意に選択できる。
銀インク組成物における前記その他の成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
銀インク組成物において、配合成分の総量に対する前記その他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0質量、すなわちその他の成分を配合しなくても、銀インク組成物は十分にその効果を発現する。
銀インク組成物は、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部又は全ての成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
本発明の銀インク組成物で特に好ましいものとしては、例えば、前記有機銀化合物、希釈剤、含窒素化合物及びアセチレンアルコールが配合されてなるものが挙げられる。
[銀インク組成物の製造方法]
銀インク組成物は、前記有機銀化合物、及び前記有機銀化合物以外の成分を配合することで得られる。各成分の配合後は、得られたものをそのまま銀インク組成物としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作を行って得られたものを銀インク組成物としてもよい。本発明においては、特に前記有機銀化合物としてβ−ケトカルボン酸銀(1)を用いた場合、上記の各成分の配合時において、導電性を阻害する不純物が生成しないか、又はこのような不純物の生成量を極めて少量に抑制できるため、精製操作を行っていない銀インク組成物を用いても、十分な導電性を有する金属銀が得られる。
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
銀インク組成物において、溶解していない成分を均一に分散させる場合には、例えば、上記の三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を用いて分散させる方法を適用するのが好ましい。
配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、−5〜60℃であることが好ましい。そして、配合時の温度は、配合成分の種類及び量に応じて、配合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節するとよい。
また、配合時間も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、1分〜36時間であることが好ましい。
本発明の銀インク組成物の中でも、上述の特に好ましいものとして挙げた、前記有機銀化合物、希釈剤、含窒素化合物及びアセチレンアルコールが配合されてなるものは、以下に示す製造方法(i)又は製造方法(ii)で製造することが好ましい。このような製造方法で得られた本発明の銀インク組成物は、種々の基材に付着させたときの滲みの抑制効果がより高くなる。
(製造方法(i))
本発明の銀インク組成物の製造方法である製造方法(i)は、前記有機銀化合物、含窒素化合物及びアセチレンアルコールを配合して組成物(以下、「中間組成物(i)」と略記することがある)を調製する工程(以下、「中間組成物(i)調製工程」と略記することがある)と、前記組成物及び希釈剤を配合して、銀インク組成物を調製する工程(以下、「銀インク組成物(i)調製工程」と略記することがある)と、を有する。
なお、本明細書において単なる「銀インク組成物」との記載は、特に断りのない限り、以下で説明する銀インク組成物(i)及び銀インク組成物(ii)に限定されず、本発明の銀インク組成物全般を意味するものとする。
・中間組成物調製工程(i)
前記中間組成物(i)調製工程においては、前記有機銀化合物、含窒素化合物及びアセチレンアルコールを配合して、中間組成物(i)を調製する。中間組成物(i)は、それ自体が金属銀を容易に形成可能な銀インク組成物に相当するが、後述するように、さらに希釈剤の配合対象である場合には、特に中間組成物(i)と称する。
中間組成物(i)調製工程においては、前記有機銀化合物、含窒素化合物及びアセチレンアルコール以外の成分(以下、「任意成分(S11)」と略記することがある)を配合してもよく、このような任意成分(S11)としては、例えば、前記銀インク組成物におけるその他の成分、前記希釈剤等が挙げられる。
中間組成物(i)調製工程において配合する、前記有機銀化合物、含窒素化合物、アセチレンアルコール及び任意成分(S11)は、いずれも、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
中間組成物(i)調製工程において、任意成分(S11)を配合する場合には、その配合量は、目的とする銀インク組成物(i)における任意成分(S11)の最終的な配合量を超えないように調節する。
ただし、中間組成物(i)調製工程において、前記希釈剤を配合する場合には、その配合量は少ないほど好ましく、本工程において、配合成分の総量に対する、前記希釈剤の配合量の割合は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。そして、中間組成物(i)調製工程においては、前記希釈剤を配合しないことが特に好ましい。
一方、中間組成物(i)調製工程において、前記希釈剤以外の任意成分(S11)、すなわち、前記その他の成分を配合する場合には、配合成分の総量に対する、前記その他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
本工程での中間組成物(i)の調製方法は、配合成分が上記のものに限定される点以外は、上述の銀インク組成物の製造方法と同じとすることができる。例えば、各成分の添加方法、混合方法、配合時の温度及び配合時間を、上述の銀インク組成物の製造方法の場合と同様として、中間組成物(i)を調製できる。
そして、各成分の配合後は、得られたものをそのまま中間組成物(i)としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作を行って得られたものを中間組成物(i)としてもよい。
前記中間組成物(i)は、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部又は全ての成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
・銀インク組成物(i)調製工程
前記銀インク組成物(i)調製工程においては、前記中間組成物(i)及び希釈剤を配合して、銀インク組成物(i)を調製する。中間組成物(i)が希釈剤で希釈されてなる銀インク組成物(i)は、本発明の銀インク組成物であり、上述のように、種々の基材に付着させたときの滲みの抑制効果がより高くなる。
銀インク組成物(i)調製工程においては、前記中間組成物(i)及び希釈剤以外の成分(以下、「任意成分(S12)」と略記することがある)を配合してもよく、このような任意成分(S12)としては、例えば、前記銀インク組成物におけるその他の成分、前記有機銀化合物、含窒素化合物、アセチレンアルコール等が挙げられる。
銀インク組成物(i)調製工程において配合する、前記中間組成物(i)、希釈剤及び任意成分(S12)は、いずれも、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
銀インク組成物(i)調製工程において、任意成分(S12)を配合する場合には、その配合量は、目的とする銀インク組成物(i)における任意成分(S12)の最終的な配合量を超えないように調節する。
ただし、銀インク組成物(i)調製工程において、前記有機銀化合物、含窒素化合物又はアセチレンアルコールを配合する場合には、その配合量は少ないほど好ましい。すなわち、本工程において、配合成分の総量に対する、前記有機銀化合物の配合量の割合は、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。そして、銀インク組成物(i)調製工程においては、前記有機銀化合物を配合しないことが特に好ましい。
同様に、本工程において、配合成分の総量に対する、前記含窒素化合物の配合量の割合は、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。そして、銀インク組成物(i)調製工程においては、前記含窒素化合物を配合しないことが特に好ましい。
同様に、本工程において、配合成分の総量に対する、前記アセチレンアルコールの配合量の割合は、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。そして、銀インク組成物(i)調製工程においては、前記アセチレンアルコールを配合しないことが特に好ましい。
一方、銀インク組成物(i)調製工程において、前記有機銀化合物、含窒素化合物及びアセチレンアルコール以外の任意成分(S12)、すなわち、前記その他の成分を配合する場合には、配合成分の総量に対する、前記その他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
本工程での銀インク組成物(i)の調製方法は、配合成分が異なる点以外は、上述の銀インク組成物の製造方法と同じとすることができる。例えば、各成分の添加方法、混合方法、配合時の温度及び配合時間を、上述の銀インク組成物の製造方法の場合と同様として、銀インク組成物(i)を調製できる。
そして、各成分の配合後は、得られたものをそのまま銀インク組成物(i)としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作を行って得られたものを銀インク組成物(i)としてもよい。
銀インク組成物(i)が、前記その他の成分が配合されてなるものである場合、上述のように前記その他の成分は、中間組成物(i)調製工程及び銀インク組成物(i)調製工程のいずれで配合してもよいし、両方で配合してもよい。ただし、前記その他の成分は、中間組成物(i)調製工程で配合することが好ましい。
(製造方法(ii))
本発明の銀インク組成物の製造方法である製造方法(ii)は、前記含窒素化合物、アセチレンアルコール及び希釈剤を配合して組成物(以下、「中間組成物(ii)」と略記することがある)を調製する工程(以下、「中間組成物(ii)調製工程」と略記することがある)と、前記組成物及び有機銀化合物を配合して、銀インク組成物を調製する工程(以下、「銀インク組成物(ii)調製工程」と略記することがある)と、を有する。
・中間組成物調製工程(ii)
前記中間組成物(ii)調製工程においては、前記含窒素化合物、アセチレンアルコール及び希釈剤を配合して、中間組成物(ii)を調製する。
中間組成物(ii)調製工程においては、前記含窒素化合物、アセチレンアルコール及び希釈剤以外の成分(以下、「任意成分(S21)」と略記することがある)を配合してもよく、このような任意成分(S21)としては、例えば、前記銀インク組成物におけるその他の成分、前記有機銀化合物等が挙げられる。
中間組成物(ii)調製工程において配合する、前記含窒素化合物、アセチレンアルコール、希釈剤及び任意成分(S21)は、いずれも、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
中間組成物(ii)調製工程において、任意成分(S21)を配合する場合には、その配合量は、目的とする銀インク組成物(ii)における任意成分(S21)の最終的な配合量を超えないように調節する。
ただし、中間組成物(ii)調製工程において、前記有機銀化合物を配合する場合には、その配合量は少ないほど好ましく、本工程において、配合成分の総量に対する、前記有機銀化合物の配合量の割合は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。そして、中間組成物(ii)調製工程においては、前記有機銀化合物を配合しないことが特に好ましい。
一方、中間組成物(ii)調製工程において、前記有機銀化合物以外の任意成分(S21)、すなわち、前記その他の成分を配合する場合には、配合成分の総量に対する、前記その他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
本工程での中間組成物(ii)の調製方法は、配合成分が上記のものに限定される点以外は、上述の銀インク組成物の製造方法と同じとすることができる。例えば、各成分の添加方法、混合方法、配合時の温度及び配合時間を、上述の銀インク組成物の製造方法の場合と同様として、中間組成物(ii)を調製できる。
そして、各成分の配合後は、得られたものをそのまま中間組成物(ii)としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作を行って得られたものを中間組成物(ii)としてもよい。
前記中間組成物(ii)は、配合成分がすべて溶解していてもよいし、一部又は全ての成分が溶解せずに分散した状態であってもよいが、配合成分がすべて溶解していることが好ましく、溶解していない成分は均一に分散していることが好ましい。
・銀インク組成物(ii)調製工程
前記銀インク組成物(ii)調製工程においては、前記中間組成物(ii)及び有機銀化合物を配合して、銀インク組成物(ii)を調製する。希釈剤で希釈されてなる銀インク組成物(ii)は、本発明の銀インク組成物であり、上述のように、種々の基材に付着させたときの滲みの抑制効果がより高くなる。
銀インク組成物(ii)調製工程においては、前記中間組成物(ii)及び有機銀化合物以外の成分(以下、「任意成分(S22)」と略記することがある)を配合してもよく、このような任意成分(S22)としては、例えば、前記銀インク組成物におけるその他の成分、前記希釈剤、含窒素化合物、アセチレンアルコール等が挙げられる。
銀インク組成物(ii)調製工程において配合する、前記中間組成物(ii)、有機銀化合物及び任意成分(S22)は、いずれも、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、その組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
銀インク組成物(ii)調製工程において、任意成分(S22)を配合する場合には、その配合量は、目的とする銀インク組成物(ii)における任意成分(S22)の最終的な配合量を超えないように調節する。
ただし、銀インク組成物(ii)調製工程において、前記希釈剤、含窒素化合物又はアセチレンアルコールを配合する場合には、その配合量は少ないほど好ましい。すなわち、本工程において、配合成分の総量に対する、前記希釈剤の配合量の割合は、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。そして、銀インク組成物(ii)調製工程においては、前記希釈剤を配合しないことが特に好ましい。
同様に、本工程において、配合成分の総量に対する、前記含窒素化合物の配合量の割合は、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。そして、銀インク組成物(ii)調製工程においては、前記含窒素化合物を配合しないことが特に好ましい。
同様に、本工程において、配合成分の総量に対する、前記アセチレンアルコールの配合量の割合は、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。そして、銀インク組成物(ii)調製工程においては、前記アセチレンアルコールを配合しないことが特に好ましい。
一方、銀インク組成物(ii)調製工程において、前記希釈剤、含窒素化合物及びアセチレンアルコール以外の任意成分(S22)、すなわち、前記その他の成分を配合する場合には、配合成分の総量に対する、前記その他の成分の配合量の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
本工程での銀インク組成物(ii)の調製方法は、配合成分が異なる点以外は、上述の銀インク組成物の製造方法と同じとすることができる。例えば、各成分の添加方法、混合方法、配合時の温度及び配合時間を、上述の銀インク組成物の製造方法の場合と同様として、銀インク組成物(ii)を調製できる。
そして、各成分の配合後は、得られたものをそのまま銀インク組成物(ii)としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作を行って得られたものを銀インク組成物(ii)としてもよい。
銀インク組成物(ii)が、前記その他の成分が配合されてなるものである場合、上述のように前記その他の成分は、中間組成物(ii)調製工程及び銀インク組成物(ii)調製工程のいずれで配合してもよいし、両方で配合してもよい。ただし、前記その他の成分は、中間組成物(ii)調製工程で配合することが好ましい。
<金属銀及びその製造方法>
金属銀は、例えば、本発明の銀インク組成物を基材等の目的とする箇所に付着させ、乾燥処理や加熱(焼成)処理等の固化処理を適宜選択して行うことで形成できる。
銀インク組成物は、例えば、印刷法、塗布法、浸漬法等の公知の方法で基材上に付着させることができる。
前記印刷法としては、例えば、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディップ式印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、ジェットディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等が挙げられる。
前記塗布法としては、例えば、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター等の各種コーターや、ワイヤーバー等を用いる方法が挙げられる。
なかでも、本発明の銀インク組成物は、印刷法での適用に好適なものであり、インクジェット式印刷法での適用により好適なものである。
基材上での金属銀の形成量は、付着させる銀インク組成物の量、又は銀インク組成物における前記有機銀化合物の配合量を調節することで調節できる。
銀インク組成物を乾燥処理する場合には、公知の方法で行えばよく、例えば、常圧下、減圧下及び送風条件下のいずれで行ってもよく、大気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれでおこなってもよい。そして、乾燥温度も特に限定されず、加熱乾燥及び常温乾燥のいずれでもよい。加熱処理が不要な場合の好ましい乾燥方法としては、例えば、18〜30℃で大気下において乾燥させる方法が挙げられる。
銀インク組成物を加熱(焼成)処理する場合、その条件は、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよい。通常は、加熱温度が60〜370℃であることが好ましく、70〜280℃であることがより好ましい。加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、1分〜24時間であることが好ましく、1分〜12時間であることがより好ましい。前記有機銀化合物の中でも前記カルボン酸銀、特にβ−ケトカルボン酸銀(1)は、例えば、酸化銀等の金属銀の形成材料とは異なり、当該分野で公知の還元剤等を使用しなくても、低温で分解する。そして、このような分解温度を反映して、前記銀インク組成物は、上記のように、従来のものより極めて低温で金属銀を形成できる。
銀インク組成物を耐熱性が低い基材に付着させて加熱(焼成)処理する場合には、加熱温度は130℃未満であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
銀インク組成物の加熱処理の方法は、特に限定されず、例えば、電気炉による加熱、感熱方式の熱ヘッドによる加熱、遠赤外線照射による加熱、高熱ガスの吹き付けによる加熱等で行うことができる。また、銀インク組成物の加熱処理は、大気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、加湿条件下で行ってもよい。そして、常圧下、減圧下及び加圧下のいずれで行ってもよい。
本明細書において「加湿」とは、特に断りのない限り、湿度を人為的に増大させることを意味し、好ましくは相対湿度を5%以上とすることである。加熱処理時には、処理温度が高いことによって、処理環境での湿度が極めて低くなるため、5%という相対湿度は、明らかに人為的に増大されたものであるといえる。
銀インク組成物の加熱処理を加湿条件下で行う場合の相対湿度は、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが特に好ましく、90%以上であってもよいし、100%であってもよい。そして、加湿条件下での加熱処理は、100℃以上に加熱した高圧水蒸気の吹き付けにより行ってもよい。このように加湿条件下で加熱処理することにより、短時間でより高純度の金属銀を形成できる。
銀インク組成物の加熱処理は、二段階で行ってもよい。例えば、一段階目の加熱処理では、金属銀の形成ではなく銀インク組成物の乾燥を主に行い、二段階目の加熱処理で、金属銀の形成を最後まで行う方法が挙げられる。
一段階目の加熱処理において、加熱温度は、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよいが、60〜110℃であることが好ましく、70〜90℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、5秒〜12時間であることが好ましく、30秒〜2時間であることがより好ましい。
二段階目の加熱処理において、加熱温度は、金属銀が良好に形成されるように、銀インク組成物の配合成分の種類に応じて適宜調節すればよいが、60〜280℃であることが好ましく、70〜260℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて調節すればよいが、通常は、1分〜12時間であることが好ましく、1分〜10時間であることがより好ましい。
銀インク組成物を耐熱性が低い基材に付着させて加熱(焼成)処理する場合には、一段階目及び二段階目の加熱処理における加熱温度は、130℃未満であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
ここまでで説明した銀インク組成物の加熱処理は、いずれも気相中で行うものであるが、銀インク組成物の加熱処理を二段階で行う場合、二段階目の加熱処理は、気相中ではなく液相中で行ってもよい。一段階目の加熱処理を経て、完全に又はある程度乾燥した銀インク組成物は、加熱した液体と接触させることで、その形状を損なうことなく、二段階目の加熱処理を行うことができる。そして、銀インク組成物の、一段階目の加熱処理を行った後の二段階目の液相中での加熱処理は、加熱した液体に銀インク組成物を浸漬することで行うことが好ましい。この液相中での加熱処理における加熱温度及び加熱時間は、先に説明した二段階目の加熱処理における加熱温度及び加熱時間と同じである。
上記の加熱した液体は湯(加熱した水)であることが好ましく、二段階目の加熱処理は、一段階目の加熱処理を行った銀インク組成物を湯中に浸漬すること、すなわち湯煎によって行うことが好ましい。
二段階目の加熱処理を液相中で行った場合には、この加熱処理によって形成された金属銀を、さらに乾燥させればよい。
銀インク組成物の二段階目の加熱処理を液相中で行う場合、銀インク組成物の一段階目の加熱処理は、非加湿条件下で行うことが好ましい。
なお、本明細書において「非加湿」とは、上述の「加湿」を行わないこと、すなわち、湿度を人為的に増大させないことを意味し、好ましくは相対湿度を5%未満とすることである。
加湿条件下での加熱処理を採用する場合、銀インク組成物の加熱処理は、一段階目の加熱処理において、非加湿条件下で、上述のように金属銀の形成ではなく銀インク組成物の乾燥を主に行い、二段階目の加熱処理において、加湿条件下で、上述のように金属銀の形成を最後まで行う、二段階の方法で行うことが特に好ましい。
二段階目の加熱処理を加湿条件下で行う場合、一段階目の非加湿条件下での加熱処理時の加熱温度は、60〜110℃であることが好ましく、70〜90℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、5秒〜1時間であることが好ましく、30秒〜30分であることがより好ましく、30秒〜10分であることが特に好ましい。
一段階目の非加湿条件下での加熱処理に次いで行う、二段階目の加湿条件下での加熱処理時の加熱温度は、60〜140℃であることが好ましく、70〜130℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、1分〜2時間であることが好ましく、1分〜1時間であることがより好ましく、1分〜30分であることが特に好ましい。
銀インク組成物を耐熱性が低い基材に付着させて加熱(焼成)処理する場合には、一段階目の非加湿条件下での加熱処理及び二段階目の加湿条件下での加熱処理における加熱温度は、いずれも130℃未満であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
本発明の銀インク組成物を用いて、金属銀を形成して得られた処理物は、金属銀を主成分とするものであり、金属銀の比率が、見かけ上金属銀だけからなるとみなし得る程度に十分に高く、前記処理物中の金属銀の比率を、好ましくは99質量%以上とすることができる。そして、前記金属銀の比率の上限値は、例えば、99.9質量%、99.8質量%、99.7質量%、99.6質量%、99.5質量%、99.4質量%、99.3質量%、99.2質量%及び99.1質量%のいずれかとすることができる。
<積層体>
本発明の銀インク組成物は、基材上での滲みが抑制されるため、微細な金属銀のパターンの形成に好適である。例えば、基材上に前記銀インク組成物を用いて金属銀のパターンを形成してなる積層体は、各種電子機器、透明導電膜等を構成するのに好適である。
ここで、前記積層体の「基材」の材質としては、上述の乾燥物の最大径の測定対象である「フィルム状の基材」の材質と同じものが挙げられる。また、前記積層体の「基材」の材質としては、例えば、合成樹脂及びセラミックス以外の成分を主成分とするものも挙げられ、合成樹脂及びセラミックスを含有しないものであってもよく、目的に応じて任意に選択できる。
また、同様の積層体は、金属銀のパターンを装飾用又は加飾用として用いる各種製品を構成するのにも好適である。さらに、基材上に、前記銀インク組成物を用いて金属銀からなる層(銀層)を形成してなる積層体は、銀層表面を鏡面用として用いる各種製品を構成するのにも好適である。
前記積層体において、前記基材の厚さは、10〜5000μmであることが好ましく、50〜3000μmであることがより好ましい。
前記積層体においては、金属銀が形成されている基材に、さらに任意の基材が1層以上積層されていてもよい。この場合の任意の基材の材質は特に限定されず、金属銀が形成されている基材と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
そして、積層されている任意の基材が2層以上である場合、これら2層以上の任意の基材は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。そして、2層以上の任意の基材が互いに異なる場合、これら基材の組み合わせは特に限定されない。
なお、ここで「基材が異なる」とは、基材の材質及び厚さの少なくとも一方が互いに異なることを意味する。
上記のように前記積層体が任意の基材を備えている場合には、すべての基材、すなわち金属銀が形成されている基材と任意の基材との合計の厚さが、上記の好ましい基材の厚さとなるようにするとよい。
前記任意の基材の材質で、好ましいものとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド(PA)、ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリアリレート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
また、前記任意の基材の材質としては、上記以外にも、ガラス、シリコン等のセラミックスや、紙が挙げられる。
また、前記任意の基材は、ガラスエポキシ樹脂、ポリマーアロイ等の、2種以上の材質を併用したものでもよい。
また、前記基材は、例えば、顔料等の公知の添加剤を含有するものでもよい。
前記積層体における銀層の厚さは、目的に応じて任意に設定できるが、例えば、3nm〜10μmであることが好ましく、4nm〜5μmであることがより好ましい。銀層の厚さが前記下限値以上であることで、銀層を備えることの効果をより向上させることができ、さらに、銀層の構造をより安定して維持できる。また、銀層の厚さが前記上限値以下であることで、積層体をより薄層化できる。
銀層は、単層からなるものでもよいし、二層以上の複数層からなるものでもよい。銀層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、前記基材の場合と同様に構成できる。例えば、複数層からなる銀層は、各層の合計の厚さが、上記の好ましい銀層の厚さとなるようにするとよい。
[電子機器]
電子機器は、例えば、前記積層体を用い、前記基材を筐体(外装材)として備えるように構成でき、前記積層体中の基材で筐体(外装材)の少なくとも一部を構成した点以外は、公知の電子機器と同様の構成とすることができる。例えば、携帯電話機等の通信機器における外装材の平面又は曲面部分を前記基材とし、この外装材(基材)上に金属銀からなる細線を形成し、この細線を回路とすることで、前記積層体を回路基板として用いることができる。そして、例えば、前記積層体に加え、音声入力部、音声出力部、操作スイッチ、表示部等を組み合わせることにより、携帯電話機を構成できる。また、パターニングされた金属銀をアンテナとすることで、前記積層体をアンテナ構造体とすることができ、前記アンテナ構造体を用いた点以外は、公知のデータ受送信体と同様の構成とすることで、新規のデータ受送信体とすることができる。例えば、前記積層体において、基材上に金属銀のパターンと電気的に接続されたICチップを設けてアンテナ部とすることにより、非接触型データ受送信体を構成できる。
[透明導電膜]
透明導電膜は、例えば、前記積層体を用い、金属銀のパターンを極微細配線又は極薄配線として備えるように構成でき、金属銀のパターンを極微細配線又は極薄配線として備えた点以外は、公知の透明導電膜と同様の構成とすることができる。例えば、前記積層体に加え、透明基材等と組合せることにより、タッチパネルや光学ディスプレイを構成できる。
極微細配線の線幅は、1〜20μmであることが好ましく、1.3〜15μmであることがより好ましく、1.5〜13μmであることが特に好ましい。
また、極微細配線の断面形状は、好ましくは楕円の短軸方向のほぼ半分の領域が切り取られた半楕円形状である。
一方、極薄配線の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、7nm〜5μmであることがより好ましく、10nm〜1μmであることが特に好ましい。
極薄配線の断面形状は、前記極微細配線の断面形状と同様である。
前記透明導電膜は、金属銀のパターンがこのような線幅及び厚さの少なくとも一方を満たしていることが好ましい。金属銀のパターンがこのような線幅又は厚さであれば、目視によってその存在が認識困難となるので、透明導電膜として好ましいものとなる。
また、前記積層体においては、本発明の銀インク組成物を用いて金属銀を低温で形成することも可能であり、基材等の材質を幅広く選択できるので、設計の自由度が飛躍的に向上し、電子機器、透明導電膜等をより合理的な構造とすることも可能である。
上記のような電子機器、透明導電膜等は、長期に渡って高い性能を維持することが可能である。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
<銀インク組成物の製造>
[実施例1]
[中間組成物の製造]
容器中で2−エチルヘキシルアミン(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して3.4倍モル量)に、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(エアープロダクツジャパン社製「サーフィノール61」、以下、「SF61」と略記することがある)(後述する2−メチルアセト酢酸銀に対して0.1倍モル量)を添加して、5℃の冷媒によって冷却しながら撹拌した。得られた混合物の温度が6℃となったところで、この混合物に2−メチルアセト酢酸銀を添加して、同じ温度で冷却したまま5分間撹拌した後、冷却を停止して、26℃の条件下でそのまま40分撹拌した。以上により、中間組成物を得た。
各配合成分の種類と配合比を表1に示す。表1に記載の各配合成分の「モル比」とは、該当する配合成分の、有機銀化合物の配合量1モルあたりの配合量(モル数)を意味する。
[銀インク組成物の製造]
表2に示すように、上記で得られた中間組成物(7.5質量部)に対して、23〜25℃の条件下で、化合物(A)として2−ジメチルアミノエタノール(2.5質量部)を添加し、10分撹拌することで、銀インク組成物を得た。
なお、表2に記載の化合物(A)及び環状アルカンの「質量%」とは、銀インク組成物の配合成分の総量に対する、化合物(A)又は環状アルカンの配合量の割合を意味する。また、表2中の配合成分の欄の「−」との記載は、その成分が未配合であることを意味する。
[実施例2〜8、比較例1〜8]
2−ジメチルアミノエタノール(2.5質量部)に代えて、表2に示す希釈剤(2.5質量部)を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で銀インク組成物を製造した。
[実施例9]
中間組成物の使用量を7.5質量部に代えて8.2質量部とし、2−ジメチルアミノエタノール(2.5質量部)に代えて1,2−ジメトキシエタン(1.8質量部)を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で銀インク組成物を製造した。
<銀インク組成物の評価>
上記で得られた銀インク組成物について、下記方法により、滲み、粘度、表面張力、インクジェット印刷性、及び金属銀の光反射率を評価した。なお、インクジェット印刷性は、実施例6でのみ評価した。
[滲み]
基材の表面に、この基材の表面上1cmの高さから、銀インク組成物(50μL)の全量を一度にまとめて3秒以内で滴下し、この銀インク組成物滴下済みの基材を室温下で10分以上放置した後、オーブン内において80℃で約10分加熱乾燥させた。
次いで、基材表面に形成された銀インク組成物の乾燥物の最大径を測定し、滴下した銀インク組成物の滲みの程度を確認した。結果を表3に示す。
なお、いずれの実施例及び比較例の場合も、前記乾燥物の厚さの最大値は2〜13μmであった。
基材としては、以下に示す7種のものを用いた。
(基材)
・ポリエチレンテレフタレート(PET)製基材(東レ社製「ルミラーS10」、厚さ100μm)
・ポリカーボネート(PC)製基材(帝人社製「パンライトPC−1511」、厚さ2mm)
・ポリカーボネート/ABS樹脂(PC/ABS)アロイ製基材(住友ベークライト社製「ロアEFN800−04」、厚さ2mm)
・白色ポリエチレンテレフタレート(PET)製基材(帝人デュポンフィルム社製「U292W」、厚さ188μm)
・ポリイミド(PC)製基材(東レ・デュポン社製「カプトン500H」、厚さ125μm)
・ポリエチレンナフタレート(PEN)製基材(帝人デュポンフィルム社製「テオネックス」、厚さ100μm)
・インクジェット用基材LAGジェット(リンテック社製、厚さ150μm)
[粘度]
銀インク組成物(10g)中に、振動式粘度計(CBC社製「VISCOMATE VM−10A」)のセンサー(振動体)を浸漬し、表3に記載の温度条件下で、銀インク組成物の粘度を測定した。結果を表3に示す。
[表面張力]
銀インク組成物(10g)中に、表面張力計(英弘精機社製「ポータブル表面張力計シータt60」)のセンサーを浸漬し、表3に記載の温度条件下で、気泡周波数を0Hzから10Hzまで変化させて、最大泡圧法により、銀インク組成物の表面張力を測定した。このときの、気泡周波数が0.1Hzの場合の静的表面張力、及び気泡周波数が10Hzの場合の動的表面張力の測定結果を、それぞれ表3に示す。
[インクジェット印刷性]
インクジェット印刷機(コニカミノルタ社製「EB100・XY100」)を用いて、インクジェットヘッド(コニカミノルタ社製「KM512MNX」(14pL))により、銀インク組成物を前記PET製基材上に塗工して、文字を印刷した。このとき、文字を表す領域には印刷を行わず、それ以外の領域をべた印刷することで、所謂白抜き文字を印刷した。
次いで、この印刷物に100℃の熱風を30分吹き付けることで加熱処理を行い、前記基材上に白抜き文字を形成するように膜状の金属銀(厚さ128nm)を形成した。
次いで、マイクロスコープ(キーエンス社製「VHX−600」)を用いて、この金属銀を形成した基材の20倍の撮像データを取得した。結果を図3に示す。図3には、サイズが8ポイント及び9ポイントの文字の撮像データを示している。
[金属銀の光反射率]
(金属銀の製造)
スピンコーター法により、1500rpmで5秒、次いで3000rpmで10秒の回転条件で、上記で得られた銀インク組成物を前記PET製基材(5cm×5cm)上に塗工し、塗膜を形成した。
次いで、この塗膜に100℃の熱風を30分吹き付けることで加熱処理を行い、前記基材上に膜状の金属銀(厚さ50〜200nm)を形成した。
(金属銀の光反射率の測定)
上記で得られた膜状の金属銀について、積分球分光測色計「X−Rite model SP60」を用いて、視野10deg、光源D65、SCIモードの条件で、波長400〜700nmの光の反射率を測定した。波長700nmの光の反射率の測定結果を表3に示す。
上記結果から明らかなように、実施例1〜9の銀インク組成物は、6種の基材(PET製基材、PC製基材、白色PET製基材、PI製基材、PEN製基材、LAGジェット)のいずれの場合も、乾燥物の最大径が30mm未満となっていた。また、PC/ABSアロイ製基材の場合には、前記最大径は15mm(実施例5)、16mm(実施例1、2)、17mm(実施例6、8)、18mm(実施例3、4、7、9)で、やはり30mm以下となっていた。このように、実施例1〜9の銀インク組成物は、付着させたときに滲みを抑制できる基材として、幅広い材質の基材を用いることが可能であった。
実施例1〜9の銀インク組成物は、粘度が4.8〜14.3mPa・sであり、気泡周波数が0.1Hzの場合の静的表面張力が24.2〜26.9mN/mであり、気泡周波数が10Hzの場合の動的表面張力が41.5〜46.8mN/mであって、例えば、インクジェット印刷法での利用に好適な特性を有していた。また、実施例1〜9の銀インク組成物を用いて得られた金属銀は、光の反射率が高く、例えば、波長700nmの光の反射率は88.6〜96.8%であって、好適な特性を有していた。
実施例6の銀インク組成物は、図3に示すように、輪郭が明りょうな白抜き文字を印刷でき、また、べた印刷の領域に形成されている金属銀は、外観上の均一性が高く、インクジェット印刷性に優れることを確認できた。
これに対して、比較例1〜8の銀インク組成物は、いずれも、基材がインクジェット用のLAGジェットの場合、乾燥物の最大径が30mm以下となっており、滲みが抑制されていたが、PET製基材、PC製基材及びPI製基材の場合、乾燥物の最大径が30mmを超えており、滲みが抑制されていなかった。さらに、比較例1、3〜8の銀インク組成物は、いずれも、白色PET製基材及びPEN製基材の場合も、滲みが抑制されていなかった。このように、比較例1〜8の銀インク組成物は、インクジェット用以外の基材に付着させたときの滲みを抑制できず、用いることができる基材の材質が限定されていた。
また、ガラス製基材(松浪硝子工業社製「NEOカバーグラスNo1」、厚さ0.12〜0.17mm)を用いて、上記の基材の場合と同様の方法で、銀インク組成物の滲みの程度を確認した。その結果、前記乾燥物の最大径は、16mm(実施例3、実施例7)、26mm(比較例1)、42mm(比較例3)、27mm(比較例5)、25mm(比較例7)であった。このように、ガラス製基材の場合にも、実施例の銀インク組成物は、比較例の銀インク組成物よりも、付着させたときの滲みの抑制効果が高かった。
比較例1〜8の銀インク組成物は、粘度が3.0〜13.0mPa・sであり、気泡周波数が0.1Hzの場合の静的表面張力が20.2〜24.8mN/mであり、気泡周波数が10Hzの場合の動的表面張力が32.8〜41.4mN/mであって、前記静的表面張力及び動的表面張力が、実施例1〜9の銀インク組成物の場合よりも小さい傾向が見られた。
一方、比較例1〜8の銀インク組成物を用いて得られた金属銀は、光の反射率が高く、例えば、波長700nmの光の反射率は86.5〜96.9%であって、好適な特性を有していた。
なお、実施例1〜9、比較例1〜8の銀インク組成物は、いずれも安定性が高く、21℃で7日静置したあとも、性状に変化は認められなかった。
本発明は、金属銀の微細なパターンの形成に利用可能であり、例えば、配線基板、電磁波シールド、タッチパネル、無線通信機筐体のアンテナ等、基材上に金属銀のパターンを備えた各種電子機器や、金属銀のパターンを装飾用又は加飾用として用いる各種製品等に利用可能である。さらに、本発明は、基材上に銀層を備え、銀層表面を鏡面用として用いる各種製品等に利用可能である。
1・・・基材、1a・・・基材の表面、2・・・滴下手段、2a・・・滴下手段の開口部、3・・・銀インク組成物、3’・・・銀インク組成物の乾燥物、3b’・・・銀インク組成物の乾燥物の周縁部、D・・・銀インク組成物の乾燥物の最大径、H・・・滴下手段の開口部の高さ

Claims (3)

  1. 有機銀化合物が配合されてなる液状の銀インク組成物であって、
    フィルム状の基材の表面に、前記基材の表面上1cmの高さから、50μLの常温の前記銀インク組成物を滴下し、乾燥させたときの乾燥物の最大径が30mm以下となる、銀インク組成物。
  2. 前記銀インク組成物が、1分子内に孤立電子対を有する原子を2個以上含む化合物(A)、又は環状アルカンが配合されてなるものであり、
    前記化合物(A)は、常温で液状であり、かつ炭素数25以下のアミン化合物、炭素数25以下の第4級アンモニウム塩、前記アミン化合物が酸と反応してなるアンモニウム塩、及びアセチレンアルコールのいずれにも該当せず、
    前記環状アルカンは、常温で液状である、請求項1に記載の銀インク組成物。
  3. 前記銀インク組成物の、気泡周波数が0.1Hzの場合の最大泡圧法による静的表面張力が24.0mN/m以上であり、かつ気泡周波数が10Hzの場合の最大泡圧法による動的表面張力が41.5mN/m以上である、請求項1又は2に記載の銀インク組成物。
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