JP2017112365A - スピントロニクスデバイス及びこれを用いた記憶装置 - Google Patents

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和也 安藤
Kazuya Ando
和也 安藤
裕康 中山
Hiroyasu Nakayama
裕康 中山
隆治 田代
Takaharu Tashiro
隆治 田代
勇作 桑原
Yusaku Kuwabara
勇作 桑原
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Abstract

【課題】低消費電力でより安定且つ高速で動作可能な新規なスピントロニクスデバイス及びこれを用いた記憶装置を提供する。【解決手段】常磁性体層13と、常磁性体層13の表面に形成され、常磁性体層13の表面電場を変調する自己組織化単分子膜14とを備える。また、常磁性体層13と、常磁性体層13の表面に形成され、常磁性体層13の表面電場を変調する自己組織化単分子膜14とを備える記憶素子を複数個配列して記憶装置を構成する。【選択図】図1

Description

本発明は、スピントロニクスデバイス及びこれを用いた記憶装置に関する。
近年、電子のスピンの自由度を利用したスピントロニクスが注目を集めており、省エネルギーなスピントロニクスデバイスを実現するために、スピン流を用いた磁化の制御手法に関する研究が進められている。例えば、強磁性金属層と常磁性金属層との界面において、常磁性金属層で生成されたスピン流を利用した強磁性金属層の磁気的状態の制御手法が提案されている(特許文献1参照。)。
国際公開第2008/123023号公報
低消費電力でより安定且つ高速で動作するスピントロニクスデバイスの実現には、物質中のスピン軌道相互作用に由来する電流−スピン流変換効率の増大が必要不可欠であり、様々な物質群における物質探索が進められている。
本発明は、低消費電力でより安定且つ高速で動作可能な新規なスピントロニクスデバイス及びこれを用いた記憶装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、(a)常磁性体層と、(b)常磁性体層の表面に形成され、常磁性体層の表面電場を変調する自己組織化単分子膜とを備えるスピントロニクスデバイスであることを要旨とする。
本発明の他の態様は、(a)常磁性体層と、(b)常磁性体層の表面に形成され、常磁性体層の表面電場を変調する自己組織化単分子膜とを備える記憶素子を複数個配列した記憶装置であることを要旨とする。
本発明によれば、低消費電力でより安定且つ高速で動作可能な新規なスピントロニクスデバイス及びこれを用いた記憶装置を提供することができる。
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係るスピントロニクスデバイスの一例を示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A方向から見た断面図である。 図2(a)は、1−オクタデカンチオールの分子構造を示し、図2(b)は、2−(ヘプタデカフルオロオクチル)エタンチオールの分子構造を示す。 常磁性体層表面に自己組織化単分子膜が吸着する様子を説明するための概略図である。 正スピンホール効果を説明するための概略図である。 図5(a)及び図5(b)は、ラシュバ効果を説明するための概略図である。 図6(a)及び図6(b)は、スピン流の電気的検出方法を説明するための概略図である。 図7(a)及び図7(b)は、スピン流の電気的検出結果を表すグラフである。 図8(a)は、スピンホール効果を介した磁気緩和変調の測定方法を説明するための概略図であり、図8(b)は、スピンホール効果を介した磁気緩和変調の測定結果を表すグラフである。 スピンホール効果を介した磁気緩和変調の原理を説明するための概略図でる。 図10(a)は、電流の向きによるピーク間線幅の差の電流の絶対強度依存性を表すグラフであり、図10(b)は、電流の向きによるピーク間高さの差の電流の絶対強度依存性を表すグラフである。 図11(a)は、電流の向きによるピーク間線幅の差の電流の絶対強度依存性を表すグラフであり、図11(b)は、電流の向きによるピーク間高さの差の電流の絶対強度依存性を表すグラフである。 本発明の第1の実施形態の第1の実施例に係る試料に印加する電流値と、磁気共鳴信号のピーク間線幅を正規化した値との関係を表すグラフである。 本発明の第1の実施形態の第2の実施例に係る大気中光電子分光測定装置の概略図である。 本発明の第1の実施形態の第2の実施例に係る試料の仕事関数の測定結果を表すグラフである。 本発明の第2の実施形態に係る記憶装置の一例を示す概略図である。 本発明の第2の実施形態に係る記憶素子の一例を示す断面図である。 図17(a)は、本発明の第2の実施形態に係る記憶素子の磁化が平行状態である場合を示す断面図であり、図17(b)は、本発明の第2の実施形態に係る記憶素子の磁化が反平行状態である場合を示す断面図である。 本発明のその他の実施形態に係るスピントロニクスデバイスの一例を示す断面図である。
次に、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を貼付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。また、以下に示す第1及び第2の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
また、本明細書において、「上側」「下側」等の「上」「下」の定義は、図示した断面図上の単なる表現上の問題であって、例えば、スピントロニクスデバイスの方位を反時計回りに90°変えて観察すれば「上」「下」の称呼は、「左」「右」になり、180°変えて観察すれば「上」「下」の称呼の関係は逆になることは勿論である。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るスピントロニクスデバイスは、図1に示すように、支持基板11と、支持基板11の表面に配置された強磁性体層12と、強磁性体層12の表面に配置された常磁性体層13と、常磁性体層13の表面に自発的に単分子層として規則的に化学吸着し、常磁性体層13の表面電場を変調する自己組織化単分子膜(self assembled monolayer;SAM)14とを備える。
支持基板11としては、例えばシリコン(Si)基板やサファイヤ基板、酸化マグネシウム(MgO)基板、ガラス基板等が使用可能である。強磁性体層12の材料としては、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ガドリニウム(Gd)、ツンデレビウム(Td)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)若しくはツリウム(TM)等の単体金属、パーマロイ(Fe−Ni)、コバルト鉄ボロン(CoFeB)、Fe−Co、ネオジウム鉄ボロン(NdFe14B)、Fe−Ni−Co−アルミニウム(Al)若しくはサマリウムコバルト(SMCo)等の合金、イットリウム鉄ガーネット(YIG)、又は四酸化三鉄(Fe)若しくはγ−Fe等の酸化鉄等が使用可能である。
常磁性体層13の厚さは例えば1nm〜2nm程度である。常磁性体層13の材料としては、より強いスピン軌道相互作用を有する金属が好ましい。常磁性体層13の材料としては、例えば白金(Pt)、タンタル(Ta)又はタングステン(W)等が使用可能である。
自己組織化単分子膜14の厚さは例えば1nm〜3nm程度であり、自己組織化単分子膜14を構成する分子層の厚さを変えることにより適宜調整可能である。自己組織化単分子膜14の材料としては、チオール基(R−SH)又はジスルフィド基(R−S−S−R´)等を含む有機硫黄(S)化合物、有機セレン分子(R−SeH)を含む有機セレン(Se)化合物、有機テルル分子(R−TeH)を含む有機テルル(Te)化合物、イソニトリル(R−NC)を含むニトリル化合物又はモノアルキルシラン(R−SiH)を含むシラン化合物等が挙げられる。チオール基を含むS化合物としては、例えば図2(a)に示す一般式で表される1−オクタデカンチオール(SH−C1837)や、図2(b)に示す一般式で表される2−(ヘプタデカフルオロオクチル)エタンチオール(SH−C1017)が挙げられる。
例えば、自己組織化単分子膜14がチオール基を含む場合には、図3に示すように、チオール基が常磁性体層13を構成する金属と強く結合する。自己組織化単分子膜14を構成する炭素鎖の間隔Wはファンデルワールス力Fにより制御されて、自発的に炭素鎖が規則正しく単分子層として配列され、集積する。
本発明の第1の実施形態に係るスピントロニクスデバイスは、スピン角運動量の流れであるスピン流を利用して動作する。スピン流は磁化と相互作用する性質を有し、原理的にジュール熱を伴わない。
ここで、スピンホール効果について説明する。正スピンホール効果は、図4に示すように、常磁性体層13等のスピン軌道相互作用を有する物質中に電流Jcが流れると、スピン軌道相互作用の効果でアップスピンの電子e1とダウンスピンの電子e2が矢印で示すように分離して曲がり、電流Jcの流れる方向と直交する方向にスピン流Jsが流れる現象である。更に、スピンホール効果と逆の現象として、スピン流Jsが流れると起電力が発生し、スピン流Jsの流れる方向と直交する方向に電流Jcが流れる逆スピンホール効果も知られている。
スピン軌道相互作用HSOは、式(1)で与えられる。
Figure 2017112365
ここで、ηSOはスピン注入効率、σはパウリ行列ベクトル、∇Vimp(r)はポテンシャル勾配、pは電子の運動量である。スピン軌道相互作用HSOを介したスピン流Jから電流Jへの変換は、式(2)で表すことができる。
Figure 2017112365
次に、ラシュバ効果について説明する。ラシュバ効果は、2次元電子系に電界を印加した際に生じるスピン軌道相互作用のことである。図5(a)に示すように、常磁性体層13表面に電場Eを印加すると、常磁性体層13表面において、ポテンシャル勾配(電界)∇V中を電子が運動し、電子の運動量
Figure 2017112365
が発生する方向と直交する方向に実効的な磁場∇V×pが発生する。ここで、
Figure 2017112365
で、hはプランク定数であり、kは面内での波数ベクトルである。
図5(b)に示すように、常磁性体層13上に自己組織化単分子膜14が形成されている場合、常磁性体層13と自己組織化単分子膜14の界面において、ラシュバ効果によりスピン蓄積18が生じる。ラシュバ効果を考慮すると、スピン軌道相互作用HSOは、式(3)で与えられる。
Figure 2017112365
ここで、pは電子の運動量、mは自由電子の質量、cは光速、σはパウリ行列ベクトル、Eは電場である。即ち、スピン軌道相互作用HSOの大きさは電場Eによって制御可能である。本発明の第1の実施形態に係るスピントロニクスデバイスにおいては、図1に示すように常磁性体層13上に自己組織化単分子膜14を形成し、このラシュバ効果を利用して電場Eを制御することで、スピンホール効果と同様のトルクを発生させることができる。
次に、逆スピンホール効果を利用したスピン流の検出方法の一例を説明する。図6(a)に示すように、Ptからなる常磁性体層13と、Ni81Fe19からなる強磁性体層12とを積層した試料を作製して、常磁性体層13の両端に電位差計17を接続する。そして、強磁性体層12に固有の磁気共鳴周波数近傍のマイクロ波を強磁性体層12に印加することにより磁場Hを発生させる。
図6(b)に示すように、強磁性体層12の磁化Mが歳差運動し、常磁性体層13中のスピンの向きσは磁場Hと平行な方向となり、磁場Hと直交する方向にスピン流Jsが流れる。そして、逆スピンホール効果により、スピン流Jsの方向と直交する方向に電場EISHEが発生するので、常磁性体層13の両端において電位差が発生する。この電位差を電位差計17により検出することにより、スピン流の有無を検出可能である。
図7(a)は逆スピンホール効果による電流Iの磁場Hでの微分値を示し、図7(b)は、電位差計17により検出した電位差Vを示す。図7(a)において、Pt/Ni81Fe19の積層構造の試料のデータと併せてNi81Fe19の単層構造のデータも示すが、Pt/Ni81Fe19の積層構造の試料の強磁性共鳴(FMR)信号のピーク間線幅Wが、Ni81Fe19の単層構造の試料よりも広がっている。図7(b)に示すように、Pt/Ni81Fe19の積層構造の試料の実験値とローレンツ力の理論値とは略一致する。図7(a)及び図7(b)に示した測定結果から、Pt/Ni81Fe19の積層構造の試料においてスピン流が検出されたことが分かる。
次に、スピンホール効果を介した磁気緩和変調について説明する。図8(a)に示すように、Ptからなる常磁性体層13と、Ni81Fe19からなる強磁性体層12とを積層した試料を作製する。そして、強磁性体層12に磁気共鳴周波数近傍のマイクロ波を印加しながら、常磁性体層13に電流Jcを磁場方向と垂直(θ=90°)及び平行(θ=0°)のそれぞれの方向において双方向に流したときの強磁性共鳴(FMR)信号のピーク間線幅をそれぞれ測定した。
図8(b)において、Pt/Ni81Fe19の積層構造の試料のデータと併せて、Ni81Fe19の単層構造のデータも示すが、Pt/Ni81Fe19の積層体の試料の強磁性共鳴(FMR)信号のピーク間線幅Wが、Ni81Fe19の単層構造の試料よりも広がっており、Pt/Ni81Fe19の積層構造の試料においてスピン流が検出されたことが分かる。
図9を用いて、スピンホール効果を介した磁気緩和変調の原理を説明する。図9に示すように、磁化Mは歳差運動し、スピントルクTspinが発生するとともに、スピントルクTspinとは逆向きに緩和トルクTdampingが発生する。常磁性体層13中に電流Jcを流すと、スピンホール効果により、電流Jcに直交する方向にスピン流Jsが発生して強磁性体層12に注入される。このとき、スピン流Jsにおけるスピンの向きσは電流Jc及びスピン流Jsの双方に対して直交する向きとなり、強磁性体層12の磁化Mの方向を変換するように作用して、磁気緩和が変調される。
図10(a)の縦軸に示すW(Jc)は、電流Jcを流した場合の強磁性共鳴(FMR)信号のピーク間線幅であり、W(−Jc)は、逆方向に電流Jcを流した場合の強磁性共鳴(FMR)信号のピーク間線幅である。このW(Jc)は、スピン注入したときの緩和パラメータαと比例関係にあるので、W(Jc)−W(−Jc)のグラフから緩和パラメータαの変化を求めることができる。図10(b)の縦軸に示すS(Jc)は、電流Jcを流した場合の強磁性共鳴(FMR)信号のピーク間の高さであり、S(−Jc)は、逆方向に電流Jcを流した場合の強磁性共鳴(FMR)信号のピーク間の高さである。
図10(a)及び図10(b)から、電流方向が磁場方向と垂直な場合(θ=90°)には、電流の向きによる差があり、電流の方向に対して非対称性を示していることから、Ni81Fe19からなる強磁性体層12の磁気緩和が変調を受けたことが分かる。一方、電流方向が磁場方向と平行な場合(θ=0°)には、電流の向きによる差はほとんどなく、電流の方向に対して対称性を示していることから、Ni81Fe19からなる強磁性体層12の磁気緩和が変調を受けていないことが分かる。
更に、Ptよりもスピンホール効果の小さいCuからなる常磁性体層13と、Ni81Fe19からなる強磁性体層12とを積層した試料と、Ni81Fe19からなる強磁性体層12の単層構造の試料を作製し、磁場方向と垂直方向(θ=90°)に電流を流し、マイクロ波を印加した結果を図11(a)及び図11(b)に示す。図11(a)及び図11(b)に示すように、Cu/Ni81Fe19の積層構造の試料及びNi81Fe19の単層構造の試料のいずれも、Ni81Fe19の磁気緩和の変調は起こらなかった。
<第1の実施例>
本発明の第1の実施の形態に係るスピントロニクスデバイスの第1の実施例として、厚さ8nmのNiFeからなる強磁性体層12と、厚さ2nmのPtからなる常磁性体層13と、2−(ヘプタデカフルオロオクチル)エタンチオールからなる自己組織化単分子膜14とを積層した試料を作製した。更に、NiFeからなる強磁性体層12と、Ptからなる常磁性体層13とを積層し、常磁性体層13上には自己組織化単分子膜14を形成していない点が第1の実施例とは異なる比較例を作製した。そして、磁気共鳴周波数近傍のマイクロ波を印加して、第1の実施例及び比較例の常磁性体層13に電流を流したときの強磁性共鳴(FMR)信号のピーク間線幅Wをそれぞれ測定した。
図12に測定結果を示す。図12の横軸は電流値Iを示し、縦軸は、強磁性共鳴(FMR)信号のピーク間線幅Wを、電流を流さないときのピーク間線幅を基準として正規化した値を示す。図12に示すように、第1の実施例の測定結果を示す直線の傾きが比較例よりも2倍程度大きくなり、第1の実施例においては、常磁性体層13上に自己組織化単分子膜14を形成することにより、磁気緩和変調効果が比較例に対して2倍程度増大したことが分かる。
<第2の実施例>
本発明の第1の実施の形態に係るスピントロニクスデバイスの第2の実施例として、常磁性体層13上に自己組織化単分子膜14が設けられた実施例A,B,Cを作製した。実施例Aとして、Ptからなる常磁性体層13と、1−オクタデカンチオール(ODT)からなる自己組織化単分子膜14とを積層した試料を作製した。実施例Bとして、Ptからなる常磁性体層13と、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオール(PFDT)からなる自己組織化単分子膜14とを積層した試料を作製した。実施例Cとして、Ptからなる常磁性体層13と、4−(ジメチルアミノ)ベンゼンチオール(DABT)からなる自己組織化単分子膜14とを積層した試料を作製した。更に、実施例A,B,Cと比較するため、比較例Aとして、Ptからなる常磁性体層13の単層構造の試料を用意した。更に、比較例Bとして、Ptからなる常磁性体層13の単層構造をエタノールに浸漬させた試料を用意した。
そして、大気中光電子分光測定装置を用いて、大気中光電子分光測定法により実施例A,B,C及び比較例A,Bの表面の仕事関数を測定した。仕事関数はスピン流変換効率(ラシュバ効果)と相関があり、仕事関数が大きいほど電流−スピン流の相互変換効率が高くなる。したがって、自己組織化単分子膜14の材料を、常磁性体層13と自己組織化単分子膜14との積層構造に対して大気中光電子分光法により測定される仕事関数が、常磁性体層13単体に対して大気中光電子分光法により測定される仕事関数よりも大きくなる材料から選択することにより、自己組織化単分子膜14の材料としてスピン流変換効率の高い良好な材料を採用することができる。
大気中光電子分光測定装置は、例えば図13に示すように、重水素ランプ1、分光器2、光ファイバ3、ステージ4、オープンカウンタ5、及び制御装置6を備える。大気中光電子分光測定法では、実施例A,B,C及び比較例A,Bに対応する試料7がステージ4に載置される。そして、重水素ランプ1から発生した紫外線が、分光器2で分光(波長選択)され、エネルギー走査範囲4eV〜6eVで、光ファイバ3を介して大気中で試料7の表面に照射される。紫外線のエネルギーが所定値以上となると、光電効果により試料7の表面から光電子8が放出される。この光電子8をオープンカウンタ5が計数し、計数結果に基づいて制御装置6により試料7の表面の仕事関数が演算される。第2の実施例では、大気中光電子分光測定装置として、理研計器株式会社製のAC−2を使用した。
図14に、大気中光電子分光測定法による測定結果を示す。図14において、各種プロットは測定値であり、破線はプロットを近似線で結んだものである。図14の横軸は励起エネルギーを示し、縦軸は単位光量子当りの光電子収率の0.5乗を示す。プロファイルの立ち上がり部分の励起エネルギー(光電子の放出が始まるエネルギー)が仕事関数に相当する。実施例Bでは、比較例A,Bに対して仕事関数が増大していることが分かる。一方、実施例A,Cでは、比較例A,Bに対して仕事関数が減少していることが分かる。したがって、Ptからなる常磁性体層13に積層する自己組織化単分子膜14としては、実施例Bで用いた1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオール(PFDT)が、スピン流変換効率の高い良好な材料であることが分かる。
以上説明したように、本発明の第1の実施形態に係るスピントロニクスデバイスによれば、常磁性体層13上に自己組織化単分子膜14を形成することにより、自己組織化単分子膜14と常磁性体層13との界面においてラシュバ効果によりスピン蓄積18が生じ、常磁性体層13の表面の電場が変調される。この結果、電流−スピン流の相互変換効率を向上させることができ、省電力化を図ることができる。例えば、自己組織化単分子膜14を形成しない場合と比較して2倍以上のスピン軌道トルクを実現可能となる。
本発明の実施形態に係るスピントロニクスデバイスの製造方法の一例としては、支持基板11上に、スパッタ法、めっき法、有機金属塗布熱分解(MOD)法、ゾル−ゲル法、液相エピタキシャル成長(LPE)法、エアロゾルデポジション(AD)法等により強磁性体層12及び常磁性体層13を順次積層した積層体を作製する。そして、例えばチオール誘導体をエタノール等の溶媒に溶解させたチオール溶液中に、積層体を数分間〜数時間程度浸漬することにより、常磁性体層13上にチオール基を化学吸着させて自己組織化単分子膜14を形成する。チオール誘導体の温度、浸漬時間、浸漬温度、溶媒の種類等は適宜設定可能である。この結果、図1に示したスピントロニクスデバイスが完成する。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態においては、スピントロニクスデバイスを適用した記憶装置(磁気ランダムアクセスメモリ)を説明する。本発明の第2の実施形態に係る記憶装置は、図15に示すように、行方向(x方向)及び列方向(y方向)にマトリクス状に配置された記憶素子(メモリセル)Mij,Mi,(j+1),M(i+1),j,M(i+1),(j+1)を有する(i=1〜n,j=1〜m)。なお、説明の便宜上、図15ではn×mマトリクス中の2×2に配列された記憶素子Mij,Mi,(j+1),M(i+1),j,M(i+1),(j+1)を示しているが、実際にはn,m=10〜10等の多数の記憶素子が配列される。
行方向に配列された記憶素子Mij,M(i+1),jにはワード線WLがそれぞれ接続され、行方向に配列された記憶素子Mi,(j+1),M(i+1),(j+1)にはワード線WLj+1がそれぞれ接続されている。列方向に配列された記憶素子Mij,Mi,(j+1)にはビット線BLがそれぞれ接続され、列方向に配列された記憶素子M(i+1),j,M(i+1),(j+1)にはビット線BLi+1がそれぞれ接続されている。
各記憶素子Mij,Mi,(j+1),M(i+1),j,M(i+1),(j+1)には選択トランジスタSTij,STi,(j+1),ST(i+1),j,ST(i+1),(j+1)がそれぞれ接続されている。選択トランジスタSTij,STi,(j+1)のゲートには制御線CLがそれぞれ接続され、選択トランジスタST(i+1),j,ST(i+1),(j+1)のゲートには制御線CLi+2がそれぞれ接続されている。ワード線WL,WLj+1、制御線CL,CLi+1、ビット線BL,BLi+1は図示を省略した制御回路に接続される。
記憶素子Mijは、図16に示すように、第1の強磁性体層(固定層)21と、第1の強磁性体層21の表面に配置された非磁性体層22と、非磁性体層22の表面に配置された第2の強磁性体層(可動層)23と、第2の強磁性体層23の表面に配置された常磁性体層24と、常磁性体層24の表面に形成された自己組織化単分子膜25とを備える巨大磁気抵抗(GMR)素子である。常磁性体層24上には、ワード線WLに接続される電極26が配置されている。第1の強磁性体層(固定層)21の裏面には、ビット線BLに接続される電極27が配置されている。
なお、図15に示した他の記憶素子Mi,(j+1),M(i+1),j,M(i+1),(j+1)も、図16に示した記憶素子Mijと同様の構成を有するGMR素子である。また、図15に示した記憶素子Mij,Mi,(j+1),M(i+1),j,M(i+1),(j+1)は、図16に示した記憶素子Mijの第1の強磁性体層21、非磁性体層22及び第2の強磁性体層23の部分を模式的に示している。
図16に示した記憶素子Mijには、第1の強磁性体層21及び第2の強磁性体層23の相対的な磁化の向きに応じた情報が記憶される。第1及び第2の強磁性体層21,23としては、本発明の第1の実施形態に係る強磁性体層12と同様の材料が使用可能である。第1及び第2の強磁性体層21,23としては、互いに異なる材料を使用してもよく、同じ材料を使用してもよい。第1の強磁性体層21は磁化が固定されており、第2の強磁性体層23の磁化は可変である。
非磁性体層22の材料としては、例えば酸化アルミニウム(Al)や酸化マグネシウム(MgO)等の絶縁体が使用可能である。常磁性体層24としては、本発明の第1の実施形態に係る常磁性体層13と同様の材料が使用可能である。自己組織化単分子膜25の材料としては、本発明の第1の実施形態に係る自己組織化単分子膜14と同様の材料が使用可能である。
本発明の第2の実施形態に係る記憶装置の記憶素子Mij,Mi,(j+1),M(i+1),j,M(i+1),(j+1)は、GMR効果を利用して情報を記憶する。書き込み時には、選択された記憶素子(ここでは記憶素子M11とする)に対応したビット線BLとワード線WLに電流を流して有効磁場を発生させ、記憶素子Mijの常磁性体層24にスピン流が発生する。このスピン流が、第2の強磁性体層23の磁化と相互作用し、磁化に対するスピン角運動量の受け渡しが起こる。この結果、第2の強磁性体層23の磁化が反転する。
図17(a)に示すように、第1及び第2の強磁性体層21,23の磁化が平行状態にあるとき、第1の強磁性体層21、非磁性体層22及び第2の強磁性体層23を通る縦方向の電流経路は相対的に低抵抗であり、ビット線BLを介して例えば「1」が読み出される。一方、図17(b)に示すように、第2の強磁性体層23の磁化の向きが反転して、第1及び第2の強磁性体層21,23の磁化が反平行状態にあるとき、第1の強磁性体層21、非磁性体層22及び第2の強磁性体層23を通る縦方向の電流経路は相対的に高抵抗であり、ビット線BLを介して例えば「0」が読み出される。
本発明の第2の実施形態に係る記憶装置によれば、第2の強磁性体層23と常磁性体層24を接合することにより、常磁性体層24を流れるスピン流が第2の強磁性体層23の磁化と相互作用し、第2の強磁性体層23の磁化方向を制御できる。この際、常磁性体層24の表面に自己組織化単分子膜25を形成することにより、ラシュバ効果を利用してスピン流を高効率に生成することができ、省エネルギーでの磁化反転が可能となる。
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1及び第2の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、本発明の第1の実施形態においては、支持基板11及び強磁性体層12を有するスピントロニクスデバイスを説明したが、支持基板11及び強磁性体層12は必ずしも有していなくてもよい。例えば図18に示すように、強磁性体層12の磁化反転が不要な用途の場合には、強磁性体層12を有さずに、支持基板11上に常磁性体層13が配置されたスピントロニクスデバイスの構造であってもよい。
本発明は、スピン流の自由度をそれぞれ利用する熱電変換素子、マイクロ波発振器、スピントランジスタ及びMRAMのメモリセル等の種々のスピントロニクスデバイスに利用可能である。
1…重水素ランプ
2…分光器
3…光ファイバ
4…ステージ
5…オープンカウンタ
6…制御装置
7…試料
8…光電子
11…支持基板
12,21,23…強磁性体層
13,24…常磁性体層
14,25…自己組織化単分子膜(SAM)
17…電位差計
18…スピン蓄積
22…非磁性体層
BL,BLi+1…ビット線
CL,CLi+1…制御線
ij,Mi,(j+1),M(i+1),j,M(i+1),(j+1)…メモリセル
STij,STi,(j+1),ST(i+1),j,ST(i+1),(j+1)…選択トランジスタ
WL,WLj+1…ワード線

Claims (7)

  1. 常磁性体層と、
    前記常磁性体層の表面に形成され、前記常磁性体層の表面電場を変調する自己組織化単分子膜と、
    を備えることを特徴とするスピントロニクスデバイス。
  2. 前記常磁性体層の裏面に配置された第1の強磁性体層を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のスピントロニクスデバイス。
  3. 前記第1の強磁性体層の裏面に配置された非磁性体層と、
    前記非磁性体層の裏面に配置された第2の強磁性体層と、
    を更に備え、
    前記第1及び第2の強磁性体層の磁化の向きに応じた情報が記憶されることを特徴とする請求項2に記載のスピントロニクスデバイス。
  4. 前記自己組織化単分子膜の材料は、有機硫黄化合物、有機セレン化合物、有機テルル化合物、ニトリル化合物及びシラン化合物のいずれかから選ばれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスピントロニクスデバイス。
  5. 前記自己組織化単分子膜の材料は、前記自己組織化単分子膜と前記常磁性体層との積層構造に対して大気中光電子分光法により測定される仕事関数が、前記常磁性体層単体に対して大気中光電子分光法により測定される仕事関数よりも大きくなる材料から選ばれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のスピントロニクスデバイス。
  6. 前記常磁性体層の材料は、白金、タンタル及びタングステンのいずれかから選ばれることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスピントロニクスデバイス。
  7. 常磁性体層と、
    前記常磁性体層の表面に形成され、前記常磁性体層の表面電場を変調する自己組織化単分子膜と、
    を備える記憶素子を複数個配列したことを特徴とする記憶装置。
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