JP2017106915A - T細胞の活性化を体液から捉える方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 様々な疾病の発症や軽重に深く関連する、生体におけるT細胞又はその亜群の活性化データを、体液成分を用いて特異的に検出する手段を提供すること。【解決手段】体液検体試料における、T細胞マーカー陽性、かつ、Th1由来の細胞外小胞においてTh2由来の細胞外小胞よりも多く含有されている蛋白質に対して陽性、の細胞外小胞を定量することによる、Th1及び細胞傷害性T細胞の活性化データの取得方法を提供することにより、上記の課題を解決することを見出した。【選択図】 なし
Description
本発明は、特定生体成分に関するデータ取得方法に関する発明である。より具体的には、がん、感染症、自己免疫疾患等の発症に関与しているT細胞の活性化や抑制状態を確認することが可能な、特定生体成分に関するデータ取得方法に関する発明である。
T細胞は免疫応答において中心的な役割を果たすリンパ球であり、CD4陽性のヘルパーT細胞と、CD8陽性の細胞傷害性T細胞(以下、細胞傷害性T細胞をCTLともいう)に大別される。ヘルパーT細胞は多様な免疫応答を惹起するエフェクター細胞群と免疫応答に抑制的に働く細胞群に分けられ、エフェクター細胞群はさらに機能的にTh1、Th2、Th17等に分類される。Th1はIFNγやTNFα等の炎症生サイトカインを分泌しCTL活性化に代表される細胞性免疫を亢進させる。Th2はIL−4、IL−5、IL−13等を分泌して液性免疫を惹起するとともに好酸球等の活性化を誘導し寄生虫感染に防御的に働く。一方、環境抗原等に応答するTh2はアレルギー発症の原因になる。Th17はIL−17の分泌を介して好中球性炎症を惹起し細菌感染症の排除に働いているが、自己免疫疾患への関与が示唆されている。CTLはパーフォリン、グランザイム、グラニュライシン等の細胞傷害物質の分泌や細胞膜のFasL等を介して標的細胞を傷害し、体内におけるT細胞による細胞傷害機構の主要な担い手である。CTLはさらにTc1、Tc2、Tc17等に分類され、それぞれTh1、Th2、Th17と同様のサイトカインを分泌する。生体では、CTLの細胞傷害機能の主体はTc1が担っていると考えられている(非特許文献1、2)。
上記の多様なT細胞亜群のうち、体内における主要なポピュレーションを占めるTh1及びCTL(Tc1)[以下、Th1/CTL(Tc1)とも表現する]の活性化はウイ
ルス感染細胞の排除やがん細胞に対する生体防御で特に重要である。Th1/CTL(Tc1)の活性化が何らかの原因で抑制されると、ウイルス感染症の重症化や遷延化、がん細胞の増殖を許すことが分かっている。一方、体内でのTh1/CTL(Tc1)の反応が自己の正常抗原に向かった場合は、自己免疫疾患等の発症原因となる(非特許文献1、3)。
ルス感染細胞の排除やがん細胞に対する生体防御で特に重要である。Th1/CTL(Tc1)の活性化が何らかの原因で抑制されると、ウイルス感染症の重症化や遷延化、がん細胞の増殖を許すことが分かっている。一方、体内でのTh1/CTL(Tc1)の反応が自己の正常抗原に向かった場合は、自己免疫疾患等の発症原因となる(非特許文献1、3)。
これらの知見に基づき、生物学的製剤を中心として、T細胞を標的とする治療薬の開発が進み、自己免疫疾患やがんの治療成績が大きく向上した。例えば、樹状細胞のCD80/CD86に結合してT細胞の活性化を抑制する作用のあるabataceptは、関節リウマチ等の自己免疫疾患で使用され、TNF阻害剤等に勝るとも劣らない治療成績を挙げている(非特許文献4)。一方、がんの組織においては、CTLA−4やPD−1等の抑制性分子からのシグナルによりTh1やCTLの活性化が抑制された状態にあることが分かっている(非特許文献5)が、近年、これらの抑制性分子を阻害して免疫応答を復活させる作用を狙ったいわゆる免疫チェックポイント阻害剤の開発が進んでいる。例えば、坑CTLA−4抗体や坑PD−1抗体等の抗体医薬が臨床に供され、悪性黒色腫、肺がん、腎細胞がん、ホジキン白血病等で目覚しい坑がん効果を示している(非特許文献6、7)。
このように自己免疫疾患やがんの領域においては、T細胞、特にTh1/CTL(Tc1)の活性化や抑制状態を制御することを目的とした治療法が重要な地位を占めるようになってきている。これらの治療薬は自己免疫疾患やがんに留まらず、慢性感染症等の領域での検討も始まっている。しかしながら、T細胞選択的な作用薬は患者によって効果に個人差があり、治療無効例も決して少なくないことから、患者の感受性を予測するための指標や治療効果を早期に精度よく判断できる指標が求められている(非特許文献8−10)。
上述した、がん、自己免疫疾患のようなTh1/CTL(Tc1)が関与する病態では、Th1/CTL(Tc1)の活性化や抑制の状態を特異的に調べる検査が、治療方針や治療効果の指標として有用であると考えられる。この検査の一つとしてフローサイトメーターを用いた末梢血リンパ球解析法があるが、末梢血におけるT細胞亜群の解析結果は必ずしも疾患局所におけるT細胞亜群の活性化を反映しないことが分かっている(非特許文献11)。また、フローサイトメーター法は煩雑な手技を要し、検体は全血であることが多く、血清のように長期保存ができないという欠点がある。
このため、T細胞あるいはその亜群の活性化を血清等の体液で調べる方法が盛んに研究されている。しかしながら、現在まで、体液成分としてT細胞に特異的な指標は認められない。例えば、一般にT細胞全体の活性化の指標に用いられる可溶性IL−2受容体はT細胞以外にもB細胞や単球等から分泌されることが分かっておりT細胞選択的とはいえない。また、CTLの指標とされる可溶性CD8は、CD8陽性のNK細胞、樹状細胞、胸腺上皮細胞からの分泌も否定できないため、やはりCTL選択的とはいえない。さらに、Th1、Tc1が産生するサイトカインの代表であるIFNγもTh1、Tc1のみならずNK細胞からも産生される(非特許文献1)。
また、ヘルパーT細胞の亜群であるTh1、Th2、Th17あるいは制御性T細胞等に選択的な液性因子の探索も盛んに行われてきたが、未だに臨床的に有用なものは見つかっていない。これらの事実は、単一の可溶性分子でもってT細胞あるいはその亜群の活性化を特異的に検出することは困難であることを物語っている。
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本発明は、上記のように様々な疾病の発症や軽重に深く関連する、生体におけるT細胞又はその亜群の活性化データを、体液成分を用いて特異的に検出する手段の提供を課題とするものである。
本発明者は、上記の課題の解決のために、単一の分子に頼るのではなく複数の分子を手がかりにして、T細胞あるいはその亜群の活性化を特異的に検出することを可能にする体液成分を検討した。
まず、この目的に適う体液中成分として細胞外小胞(extracellular vesicles)に着目した。細胞外小胞は、細胞の活性化やアポトーシスあるいは脱殻(shedding)等で細胞から放出される様々なサイズを持った膜構造体の総称であり、比較的小型の細胞外小胞であるエキソソームを含む概念である。エキソソームは様々な細胞種から分泌される直径30−150nmの微小胞体である。エキソソームは、エキソサイトーシスの経路を介して能動的に細胞外へ放出され体内を循環することが知られている。従って、生体局所の細胞の活性化も、体液中のエキソソーム等の細胞外小胞に反映される可能性が高いと考えた。免疫系の細胞では、樹状細胞、マクロファージ、肥満細胞、B細胞、T細胞等からのエキソソーム分泌の報告がある。エキソソームは、由来する細胞を特徴付ける蛋白質や核酸を膜表面あるいは小胞内に保持していることが分かっており、この特徴を利用してがんの診断等への応用が検討されている(例えば、Mathivanan S, et al., J Proteomics. 2010; 73(10); 1907-1920)。
本発明者は、培養Th1、Th2由来のエキソソームを精製し、Th1/CTL(Tc1)の活性化を特徴付けるエキソソーム蛋白質をプロテオミクスの手法で探索した。この過程で、Th1由来エキソソームとTh2由来エキソソームの間で、顕著に含量の異なる蛋白質を多数見出した。それらの中から、膜蛋白質に絞って検討した結果、HLA−DRが、Th2由来エキソソームに比べてTh1由来エキソソームに優勢に保持されていることを確認し、これを特定のエキソソームを含む細胞外小胞の検出の第1のマーカーとすることに想到した。
他方でHLA−DRは、T細胞以外に、樹状細胞、B細胞、単球においても発現しており、これらの細胞から分泌されるエキソソームを含む細胞外小胞にもHLA−DRが表出していると考えられる。このため、体液中のHLA−DR陽性の細胞外小胞に対して、さらにT細胞選択性を付加して検出するための第2のマーカーを組み合わせることを見出した。後述するように、このT細胞選択性の第2のマーカーとしてCD3ε鎖等のTCR/CD3複合体の構成物等が挙げられる。TCR/CD3複合体の構成物の中ではCD3ε鎖が抗原として利用し易く、抗体もCD3ε鎖を認識するものが多く市販されている。
上記の発想と共に、本発明者はさらに培養Th1、Th2細胞自身においてもHLA−DRがTh1に優勢に発現することを確認した。従来、HLA−DRは活性化T細胞で発現が亢進することが知られていたが、Th1とTh2の間で発現が異なることについては報告がない。
次に本発明者は、末梢血単核球からCD4陽性のヘルパーT細胞及びCD8陽性のCTLを精製し、in vitroで固相化抗CD3ε鎖抗体と坑CD28抗体による刺激、非刺激、の条件下に培養し、その培養上清についてCD3ε鎖陽性かつHLA−DR陽性のエキソソームを測定した。この結果、CD3ε鎖陽性かつHLA−DR陽性のエキソソームは、非刺激細胞からは殆ど分泌されないが、刺激により活性化した場合、ヘルパーT細胞のみならずCTLからも多量に分泌されることを確認した。このことはT細胞マーカー陽性、かつ、HLA−DR等の「Th1由来の細胞外小胞においてTh2由来の細胞外小胞よりも多く含有されている蛋白質」に対して陽性のエキソソームの値は、Th1/CTL(Tc1)の数ではなくて、活性化を反映することが明らかになった。
本発明者はこのようにして、T細胞マーカー陽性、かつ、Th1由来の細胞外小胞においてTh2由来の細胞外小胞よりも多く含有されている蛋白質が陽性、の細胞外小胞の測定により、Th1/CTL(Tc1)の活性化データを取得することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、体液検体試料における、T細胞マーカー陽性、かつ、Th1由来の細胞外小胞においてTh2由来の細胞外小胞よりも多く含有されている蛋白質(以下、Th1優勢蛋白質ともいう)に対して陽性、の細胞外小胞を定量することによる、Th1及び細胞傷害性T細胞(Th1/CTL(Tc1))の活性化データの取得方法(以下、本発明のデータ取得方法ともいう)を提供する。
本発明のデータ取得方法は、例えば、「体液検体試料における、T細胞マーカー陽性、かつ、Th1優勢蛋白質が陽性の細胞外小胞を定量することによる、検体提供者のTh1/CTL(Tc1)の活性化状態の確認方法」、としても表現され得る。
本発明のデータ取得方法の定量対象である細胞外小胞は、上述した通りであり、エキソソームを含む概念である。定量対象となる細胞外小胞の大きさは、直径(投影された細胞小胞像の平均直径)0.25μm以下であることが好適である。この0.25μm以下の細胞外小胞に、エキソソームは含まれる。
体液検体試料とは、検体提供者から採取した体液検体を、必要に応じて細胞外小胞の定量測定に適した状態とするための手段を施した試料を意味するものである。ただし、当該手段を行わない体液検体そのものも、細胞外小胞の定量測定を行う対象であれば、体液検体試料に含まれる。
体液検体は、血液検体が好ましい。当該血液検体としては、血清検体、血漿検体、全血検体等が挙げられるが、これらの中でも血清検体又は血漿検体が好ましく、さらに血清検体は血液検体の中で最も好ましい。これらの体液検体に対して、必要に応じた抗凝固処理、防腐処理、安定化処理等を行うことができる。
T細胞マーカーは、T細胞の存在を特異的に示し、エキソソーム等の細胞外小胞の表面に認められる分子であれば特に限定されず、例えば、TCR/CD3複合体のうち、T細胞受容体(TCR)を構成するα鎖やβ鎖、CD3複合体を構成するγ鎖、δ鎖、ε鎖、ζ鎖等が挙げられる。これらのうち、CD3ε鎖は、一つのTCR/CD3複合体に2つの分子が含まれ、かつ、細胞表面に存在し、多型性が比較的少なく、TCRのような蛋白質多様性がないという理由から免疫測定法の標的に適しており、本発明のT細胞マーカーとして用いることが好ましい。
Th1優勢蛋白質は、Th1由来の細胞外小胞においてTh2由来の細胞外小胞よりも多く含有されている蛋白質であれば特に限定されず、HLA−DR、ST2L、IL−12受容体β2鎖、Tim−3、Pim−1、Pim−2、CXCR3、FasL等が挙げられる。これらの中でHLA−DRは、エキソソーム表面での発現レベルが比較的高いという理由で免疫測定に適している。HLA−DRのマーカーとしてはα鎖を用いることが好ましい。
定量は、免疫測定法、例えば、上記T細胞マーカーに対して特異的な抗体、及び、HLA−DR等のTh1優勢蛋白質に対して特異的な抗体と、体液検体中のエキソソームとの間の抗原抗体反応に基づくシグナルを検出することにより行われるのが好適である。抗体は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。
具体的な免疫測定法としては、例えば、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法、AlphaLISA(LOCI)法、免疫クロマトグラフィー法等が挙げられる。
本発明のデータ取得方法を疾患血清に適用した結果、T細胞マーカー陽性かつTh1優勢蛋白質陽性のエキソソームは、Th1/CTL(Tc1)が亢進することが周知の疾患であるEBウイルス感染症で、健常者に比べて有意に高値を示すことを確認した。EBウイルスは腫瘍ウイルスであり、EBウイルスにより腫瘍化したB細胞に対する抗腫瘍免疫、すなわちTh1/CTL(Tc1)の活性化を反映した結果と判断された。一方、Th2が亢進しTh1が低下することが分かっている典型的な疾患であるアトピー性皮膚炎では健常者に比べて有意に低い値であった。また、免疫が関与しない疾患である変形性関節炎では健常者と同等の値であった。さらに、Th1の亢進が認められる場合と認められない場合がある関節リウマチでは、Th1が低値を示す検体から高値を示す検体まで幅広く分布していた。これらの結果はいずれも、T細胞マーカー陽性かつTh1優勢蛋白質陽性の細胞外小胞の血中レベルが、生体におけるTh1/CTL(Tc1)の活性化のレベルを反映していることを示している。また、関節リウマチの病態は多様であり、Th1/CTL(Tc1)の亢進する症例とそうではない症例が存在すること、従ってT細胞マーカー陽性かつTh1優勢蛋白質陽性の細胞外小胞のレベルを測定することで、関節リウマチの特定の病形、例えばT細胞を標的とした治療薬が効きやすい病形、を選別できることを示している。
本発明により、Th1/CTL(Tc1)が介在する疾患における、病態の把握、治療法の選択、治療効果の判定に有用なデータを取得することができる。
本発明のデータ取得方法の好適な態様として、上述したT細胞マーカー抗原及びTh1優勢蛋白質の両者を同時に保有する細胞外小胞の定量を、免疫測定法で行う態様が挙げられる。すなわち、T細胞マーカーに対して特異的な抗体、及び、HLA−DR等のTh1優勢蛋白質に対して特異的な抗体と、体液検体試料中の細胞外小胞との間の抗原抗体反応に基づくシグナルを検出することにより行われる態様である。さらに好適には、試料である体液検体中の細胞外小胞を、T細胞マーカー抗原に対して特異的な抗体と、Th1優勢蛋白質に対して特異的な別の抗体を用いて、サンドイッチする工程を含む態様(以下、サンドイッチ法ともいう)が挙げられる。
上述したようにT細胞マーカーとしては、TCR/CD3複合体の構成要素であり、エキソソーム等の細胞外小胞の表面に表出している分子が好適であり、分子多型が少なく、2つの分子を複合体内に含むことから、CD3ε鎖がT細胞マーカー抗原として特に好適である。
またTh1優勢蛋白質のうち、HLA−DRは、α鎖とβ鎖という二つのサブユニットから構成されるが、β鎖には分子多形が多いことから抗体のHLA−DR抗原としてはα鎖が好ましい。
細胞外小胞の定量対象である体液検体試料は、エキソソーム等の細胞外小胞を基礎的に含有する体液であれば特に限定されず、上述したように、血清、血漿、全血等の血液検体であることが好適であり、特に、血清又は血漿が好適である。これ以外にも、尿、汗、唾液、母乳、精液、リンパ液、脳脊髄液、涙液等が体液検体試料の由来体液として挙げられる。
本発明の測定に供する体液検体試料は、体液をそのまま測定に用いることができる場合もあるが、必要に応じて濃縮や精製のステップを前処理として行ってもよい。試料中のエキソソーム等の細胞外小胞を濃縮・精製する手段としては超遠心による濃縮・精製が古典的な方法であるが、近年多数の報告がある共沈法あるいは分子篩等の原理に基づく方法を用いてもよい。これらの原理を用いた市販の試薬としてはExoQuick Exosome Precipitation Solution(SBI社)、Total Exosome Isolation(ThermoFisher社)、Exosome Isolation Kit(タカラバイオ社)等が例示される。
細胞外小胞は生体において凝集した形態で存在する場合が報告されている。このため測定に先立って軽めの超音波処理等で凝集をほぐす操作を加えることが好ましい。
また、大型の細胞外小体を除外するのであれば、例えば、体液検体試料を、好ましくはポアサイズ0.25μm以下程度のフィルターでろ過する方法が簡便である。なお、後述するAlphaLISA法による測定では、原理的に約0.2μmを超えるサイズの粒子は反応に関与しないので、このような前処理を行う必要性に乏しく、効率的である。
上記したサンドイッチ法等の免疫測定法に用いる2種類の抗体(抗T細胞マーカー抗体、抗Th1優勢蛋白質抗体)は、市販品を用いることもできるが、常法に従い製造することが可能である。抗原は、抗T細胞マーカー抗体の場合にはCD3ε鎖等を、抗Th1優勢蛋白質抗体の場合にはHLA−DRα鎖等を、特に好適に用いることができるが、これら以外を抗原として用いる場合にも、製造方法は実質的に同一である。
前述したように、用いる抗体はモノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であってもよいが、特異性を担保するためには、定量工程の全部又は一部として、モノクローナル抗体を用いることが好適である。
抗体の製造方法は、常法に従って行うことが可能である。抗体を作るための抗原としては、上記好適例であるCD3ε鎖及びHLA−DRα鎖の場合には、これらの抗原蛋白質の全部又は一部のペプチドを用いることができるが、より親和性の高い抗体を得るためには、天然のCD3ε鎖及びHLA−DRα鎖の立体構造を保持した抗原を用いることが望ましい。この目的には、精製したTh1由来エキソソームやCTL由来エキソソームを用いることができる。また、免疫する動物種と同じ種に由来する細胞あるいは細胞株に目的の蛋白質を強制発現させたものを免疫に使用することもできる。さらには、免疫動物に目的の蛋白質を発現する発現ベクターを注入する遺伝子免疫法もこの目的に適している。また、市販のMembraneProTM Functional Protein Expression Systems(ThermoFisher社)に示されるように、目的の蛋白質あるいはその一部をウイルス様粒子上に発現したものを免疫に使用することもできる。
所望の抗体が、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であるにかかわらず、免疫は一般的方法により、例えば、免疫対象動物に静脈内、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内等で投与することにより行うことができる。免疫対象動物は特に限定されるものではなく、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ等を広く用いることができる。
CD3ε鎖又はHLA−DRα鎖、さらにその他の抗原に対するポリクローナル抗体は、当該抗原蛋白質の全部又は一部を免疫抗原として、免疫した動物に由来する免疫血清から製造することができる。
CD3ε鎖又はHLA−DRα鎖さらにその他の抗原に対するモノクローナル抗体は、免疫した動物の免疫細胞と動物の骨髄腫細胞とのハイブリドーマを作出し、これにより目的の分子を認識する抗体を産生するクローンを選択し、このクローンを培養することにより製造することができる。また、免疫される動物は特に限定されるものではなく、前述した通りに、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ等を広く用いることができるが、モノクローナル抗体を製造する場合には、細胞融合に用いる骨髄腫細胞との適合性を考慮して選択することが望ましい。モノクローナル抗体を調製する場合、公知のモノクローナル抗体調製方法、例えば、安藤民衛、千葉 丈、共著、「単クローン抗体実験操作入門」講談社(1991年)や、Ed Harlow and David Lane,“Antibodies: A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988に従い調製することができる。
このようにして得られるポリクローナル抗体ないしモノクローナル抗体は、CD3ε鎖又はHLA−DRα鎖等の抗原に特異反応性を有する抗体である。
これらの抗体に、必要に応じて、酵素標識処理、蛍光標識処理、ビオチン標識処理、金コロイド粒子標識処理、アイソトープ標識処理等を、常法に従い行うことができる。
CD3ε鎖等のT細胞マーカー陽性、かつ、HLA−DRα鎖等のTh1優勢蛋白質陽性の細胞外小体の定量検出は、上述した2種類の抗体を用いて、抗原抗体反応を利用する検出手段を用いて行う。具体的には、例えば、酵素免疫測定(ELISA)法、ラジオイムノアッセイ(RIA)法、免疫クロマトグラフィー法、フローサイトメトリー法、Luminex技術に代表される蛍光ビーズマイクロアレイ法、テックス凝集比濁法、免疫電顕法、標識抗体を用いたナノトラッキング法、Siemens社のAlphaScreenに代表されるLOCI(Luminescent OxygenChanneling Immunoassay)法等を試料の種類や測定の用途に応じて使用することができる。
例えば、緊急を要する感染症等の検査に使用する場合は、ベッドサイドの検査に向いた免疫クロマトグラフィー法が好適である。それほど緊急を要しないが感度や正確性が求められる場合はELISA法やAlphaLISA法の使用が適している。ELISA法の範疇に入るが、従来の可視光ではなくて、蛍光や化学発光等を検出に利用した免疫測定法であるFEIA(fluorescence enzyme immunoassay)法、CLEIA(chemiluminescence enzyme immunoassay)法、ECLIA(electrochemiluminescence immunoassay)法等も同様の目的に好適である。
Th1/CTL(Tc1)の活性化が観察される感染症としてはウイルス感染症、結核等の細胞内微生物による感染症が挙げられるが、細菌感染症では、Th1/CTL(Tc1)の亢進は少ない。従って、感染症を疑う疾患において、本発明のデータ取得方法をプロカルシトニン等の細菌感染症の指標と組み合わせて行うことで、ウイルス感染症と細菌感染症との鑑別が可能になる。
Th1/CTL(Tc1)が亢進する自己免疫疾患としては、クローン病等の炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬、炎症性皮膚疾患、糖尿病等が挙げられる。わが国で罹患者が多い自己免疫疾患である関節リウマチにおいては、Th1が亢進する症例とそうでない症例が報告されている。これらの自己免疫疾患では、本発明のデータ取得方法を用いることで、T細胞選択的な治療に感受性のある患者を選択するうえで重要な情報を得ることが可能であり、また治療の効果をT細胞レベルでモニターすることが可能になる。
一方、がんの領域では、抗CTLA−4抗体や抗PD−1抗体等の免疫チェックポイント阻害剤の効果予測に重要な情報を与えることができる。これらの免疫チェックポイント阻害剤は、がんを標的としたTh1/CTL(Tc1)応答を獲得しているにも拘わらず、がんの組織環境で強い免疫抑制を受けているような患者において効果的であると考えられている。従って、本発明のデータ取得方法で、がん患者におけるTh1/CTL(Tc1)のレベルを調べ、健常者あるいは他のがん患者におけるレベルと比較したときに、相対的に高いレベルを示す患者ほど免疫チェックポイント阻害剤が効きやすいと考えられる。もちろん、免疫チェックポイント阻害剤に拘わらず、がんワクチン療法、養子免疫療法、遺伝子改変T細胞移入療法、活性化リンパ球移入療法等の、近年発展しているがん免疫療法一般においてTh1/CTL(Tc1)の活性化は治療効果に繋がることから、本発明のデータ取得方法は、広くがん免疫療法の効果の予測やモニターに有用である。
さらに自己免疫疾患等において免疫抑制治療を受けている患者において、その患者の免疫能が感染症のリスクを伴うほど過度の抑制状態に陥っていないかどうかをモニターする、感染症のリスク管理の用途に使用できる。
本発明においては、上記のデータ取得方法を行うためのキットを提供する。すなわち本発明は、上記の検出を行うための要素を含むキットを提供する発明でもある。これらのキットの要素は、具体的な検出方式や、グレード等に応じて選択可能であるが、CD3ε鎖等のT細胞マーカーに対する抗体、及び、HLA−DRα鎖等のTh1優勢蛋白質に対する抗体は、最低限のキットの要素として挙げられる。これらの抗体は、必要に応じてモノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であっても良く、標識抗体であっても、非標識抗体であっても良く、固相に固定化された固定化抗体であっても、非固定化抗体であっても良い。その他、検出に用いる希釈液や緩衝液等が、キットの要素として挙げられる。
以下、本発明を実施例により、具体的に説明するが、この実施例により、本発明の技術的範囲は限定されない。本実施例で使用した抗体は特に記載しない限り全てモノクローナル抗体である。
1.ヒトTh1、Th2の調製
健常者のヘパリン加静脈血よりFicoll−Paque(GEヘルスケア社)を用いて末梢血単核球(PBMC)を分離し、CD14及びCD45ROに対する磁気ビーズ(Miltenyi Biotec社)を用いたネガチブセレクションの後にCD4に対する磁気ビーズ(Miltenyi Biotec社)を用いたポジチブセレクションを行い、CD4陽性CD45RO陰性のナイーブCD4T細胞を得た。次に、ナイーブCD4T細胞を10%牛退治血清添加RPMI1640倍地(Gibco社)中に106細胞/mLの細胞密度で37℃、5%CO2下に培養し、固相化抗CD3ε鎖抗体OKT3(BioLegend社)及び抗CD28抗体CD28.2(日本BD社)0.3−1μg/mLで刺激した。Th1を誘導する場合は、この培養にIL−12(R&D Systems社)10ng/mL及び抗IL−4抗体3007(R&D Systems社)10μg/mLを添加し、一方、Th2の誘導にはIL−4(R&D Systems社)100ng/mL及び抗IL−12抗体24910(R&D Systems社)10μg/mLと抗IFNγ抗体25718(R&D Systems社)10μg/mLを添加した。刺激した培養には3日後にIL−2(イムネース、塩野義社)100units/mLを添加して増殖を促進させた。このようにして得た培養10日から14日の増殖が停止した時期の細胞を回収し、上記と同様に固相化抗CD3ε鎖抗体と抗CD28抗体及びIL−12(Th1の場合)とIL−4(Th2の場合)を添加して2次刺激を行い、培養をさらに拡大した。この2次刺激培養の場合は、IL−2を最初から添加し、抗サイトカイン抗体は添加しなかった。
健常者のヘパリン加静脈血よりFicoll−Paque(GEヘルスケア社)を用いて末梢血単核球(PBMC)を分離し、CD14及びCD45ROに対する磁気ビーズ(Miltenyi Biotec社)を用いたネガチブセレクションの後にCD4に対する磁気ビーズ(Miltenyi Biotec社)を用いたポジチブセレクションを行い、CD4陽性CD45RO陰性のナイーブCD4T細胞を得た。次に、ナイーブCD4T細胞を10%牛退治血清添加RPMI1640倍地(Gibco社)中に106細胞/mLの細胞密度で37℃、5%CO2下に培養し、固相化抗CD3ε鎖抗体OKT3(BioLegend社)及び抗CD28抗体CD28.2(日本BD社)0.3−1μg/mLで刺激した。Th1を誘導する場合は、この培養にIL−12(R&D Systems社)10ng/mL及び抗IL−4抗体3007(R&D Systems社)10μg/mLを添加し、一方、Th2の誘導にはIL−4(R&D Systems社)100ng/mL及び抗IL−12抗体24910(R&D Systems社)10μg/mLと抗IFNγ抗体25718(R&D Systems社)10μg/mLを添加した。刺激した培養には3日後にIL−2(イムネース、塩野義社)100units/mLを添加して増殖を促進させた。このようにして得た培養10日から14日の増殖が停止した時期の細胞を回収し、上記と同様に固相化抗CD3ε鎖抗体と抗CD28抗体及びIL−12(Th1の場合)とIL−4(Th2の場合)を添加して2次刺激を行い、培養をさらに拡大した。この2次刺激培養の場合は、IL−2を最初から添加し、抗サイトカイン抗体は添加しなかった。
2.Th1、Th2培養上清からのエキソソームの分離精製
上記1のようにして得たTh1及びTh2の2次刺激培養10日−14日目の細胞を無血清RPMI1640倍地で洗浄し、2%のエキソソームフリー牛胎児血清添加Hybridoma−SFM培地(Gibco社)中で、106細胞/mLの細胞密度で3次刺激を行った。3次刺激培養における刺激条件は1次刺激の場合と同じであるがIL−4は10ng/mL、IL−12は5ng/mLを添加し、IL−2は最初から培養に添加した。ここで記載したエキソソームフリー牛胎児血清は、牛胎児血清を100,000xgで16時間超遠心をした上澄みを用いた。上記の培養3−4日目に低速遠心で培養上清を回収した。回収した培養上清から以下の工程を経てエキソソームを精製した。まず、10,000xgで30分の遠心で遠心上清を得た。この培養上清を0.22μmのフィルター(Millipore社)に通し、そのろ液を142,700xgで2時間超遠心し、30%蔗糖を含むPBS/重水のクッション中にエキソソームを回収した。ここでPBS/重水とは重水(和光純薬)にて調製したPBSを示す。30%蔗糖/PBS/重水中のエキソソームはPBSにて2回超遠心(142,700xgで2時間)にて洗浄し、30%蔗糖/PBS/重水中に回収した。次に0−60%蔗糖密度勾配/PBS/重水に重層し142,700xgで16時間超遠心分画を行った。各分画についてウエスタンブロッティングにてエキソソームマーカーであるLAMP−1、LAMP−2の存在を確認し、エキソソームマーカー陽性の分画をプールしてエキソソーム標品とした(図1)。
上記1のようにして得たTh1及びTh2の2次刺激培養10日−14日目の細胞を無血清RPMI1640倍地で洗浄し、2%のエキソソームフリー牛胎児血清添加Hybridoma−SFM培地(Gibco社)中で、106細胞/mLの細胞密度で3次刺激を行った。3次刺激培養における刺激条件は1次刺激の場合と同じであるがIL−4は10ng/mL、IL−12は5ng/mLを添加し、IL−2は最初から培養に添加した。ここで記載したエキソソームフリー牛胎児血清は、牛胎児血清を100,000xgで16時間超遠心をした上澄みを用いた。上記の培養3−4日目に低速遠心で培養上清を回収した。回収した培養上清から以下の工程を経てエキソソームを精製した。まず、10,000xgで30分の遠心で遠心上清を得た。この培養上清を0.22μmのフィルター(Millipore社)に通し、そのろ液を142,700xgで2時間超遠心し、30%蔗糖を含むPBS/重水のクッション中にエキソソームを回収した。ここでPBS/重水とは重水(和光純薬)にて調製したPBSを示す。30%蔗糖/PBS/重水中のエキソソームはPBSにて2回超遠心(142,700xgで2時間)にて洗浄し、30%蔗糖/PBS/重水中に回収した。次に0−60%蔗糖密度勾配/PBS/重水に重層し142,700xgで16時間超遠心分画を行った。各分画についてウエスタンブロッティングにてエキソソームマーカーであるLAMP−1、LAMP−2の存在を確認し、エキソソームマーカー陽性の分画をプールしてエキソソーム標品とした(図1)。
3.Th1、Th2エキソソームのプロテオミクス解析
同一ドナー由来のTh1エキソソーム及びTh2エキソソーム標品を1ペアとして蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動(2D−DIGE)にて解析した。2D−DIGEの方法は試薬メーカーのガイドブックである「2−D Electrophoresis using immobilized pH gradients」(アマシャム・ファルマシア社)や「ReadyStrip IPG Strip Instruction Manual」(BIO−RAD社)、及び研究機関のガイドブックである老人研・二次元電気泳動マニュアル http://proteome.tmig.or.jp/2D/J_2DEmethod.htmlやDIGE道場 http://www.gelifesciences.co.jp/technologies/ettan_dige/dojo_top.htmlを参考にした。Th1エキソソーム及びTh2エキソソームの蛋白質標識にはIC3−Osu(DOJINDO社)及びIC5−Osu(DOJINDO社)を用いた。二次元電気泳動後のゲル中の蛍光標識蛋白質の検出はTYPHOON 9400(GEヘルスケア社)を用いた。2D−DIGEの結果、Th1エキソソームとTh2エキソソームの間で蛋白量に差の見られたスポットについては質量分析(nano LC−MS/MS、日本バイオサービス社)にて蛋白質を同定した。その1例を図2に示す。図2は2D−DIGE解析を行った同一ポリアクリルアミドゲルの一部についてTh1由来エキソソーム蛋白質のスポット画像(上段パネル)とTh2由来エキソソーム蛋白質のスポット画像(下段パネル)を並べて示す。破線サークルで示したHLA−DRα1(分子量28,607、等電点4.91)(左パネル)及びHLA−DRβ1(分子量29,826、等電点7.67)(右パネル)が、Th2由来エキソソームに比べてTh1由来エキソソームに優勢に含まれていることを示している。
同一ドナー由来のTh1エキソソーム及びTh2エキソソーム標品を1ペアとして蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動(2D−DIGE)にて解析した。2D−DIGEの方法は試薬メーカーのガイドブックである「2−D Electrophoresis using immobilized pH gradients」(アマシャム・ファルマシア社)や「ReadyStrip IPG Strip Instruction Manual」(BIO−RAD社)、及び研究機関のガイドブックである老人研・二次元電気泳動マニュアル http://proteome.tmig.or.jp/2D/J_2DEmethod.htmlやDIGE道場 http://www.gelifesciences.co.jp/technologies/ettan_dige/dojo_top.htmlを参考にした。Th1エキソソーム及びTh2エキソソームの蛋白質標識にはIC3−Osu(DOJINDO社)及びIC5−Osu(DOJINDO社)を用いた。二次元電気泳動後のゲル中の蛍光標識蛋白質の検出はTYPHOON 9400(GEヘルスケア社)を用いた。2D−DIGEの結果、Th1エキソソームとTh2エキソソームの間で蛋白量に差の見られたスポットについては質量分析(nano LC−MS/MS、日本バイオサービス社)にて蛋白質を同定した。その1例を図2に示す。図2は2D−DIGE解析を行った同一ポリアクリルアミドゲルの一部についてTh1由来エキソソーム蛋白質のスポット画像(上段パネル)とTh2由来エキソソーム蛋白質のスポット画像(下段パネル)を並べて示す。破線サークルで示したHLA−DRα1(分子量28,607、等電点4.91)(左パネル)及びHLA−DRβ1(分子量29,826、等電点7.67)(右パネル)が、Th2由来エキソソームに比べてTh1由来エキソソームに優勢に含まれていることを示している。
4.Th1、Th2細胞におけるHLA−DRの発現
同一ドナー由来のTh1、Th2細胞について2次刺激3日後の細胞表面抗原の発現をフローサイトメトリーで調べた。細胞をいずれもPE標識した抗CD3ε鎖抗体(日本BD社)、抗CD4抗体(日本BD社)、抗CD40L抗体(日本BD社)、抗CD43抗体(ebioscience社)、抗CD63抗体(日本BD社)、抗HLA−DRα鎖抗体(日本BD社)、対照マウスIgG1(日本BD社)及び対照マウスIgG2a(日本BD社)のそれぞれで室温20分間染色し、フローサイトメーターFACSVerse(日本BD社)にて解析した結果を図3に示す。CD3、CD4、CD40L、CD43、CD63の発現はTh1、Th2の両者で差が認められなかったが、HLA−DRの発現はTh1で優勢であった(図3)。この結果は細胞表面の抗原の発現を比較したものでありTh1、Th2のそれぞれから分泌されるエキソソームを直接比較したものではないが、細胞表面での発現の違いは細胞内部で形成されるエキソソームの表面の違いにも反映されると思われることからHLA−DRがTh1エキソソームに優勢に含まれていることを示唆する結果である。図3の各パネル内の数字は平均蛍光強度を示す。
同一ドナー由来のTh1、Th2細胞について2次刺激3日後の細胞表面抗原の発現をフローサイトメトリーで調べた。細胞をいずれもPE標識した抗CD3ε鎖抗体(日本BD社)、抗CD4抗体(日本BD社)、抗CD40L抗体(日本BD社)、抗CD43抗体(ebioscience社)、抗CD63抗体(日本BD社)、抗HLA−DRα鎖抗体(日本BD社)、対照マウスIgG1(日本BD社)及び対照マウスIgG2a(日本BD社)のそれぞれで室温20分間染色し、フローサイトメーターFACSVerse(日本BD社)にて解析した結果を図3に示す。CD3、CD4、CD40L、CD43、CD63の発現はTh1、Th2の両者で差が認められなかったが、HLA−DRの発現はTh1で優勢であった(図3)。この結果は細胞表面の抗原の発現を比較したものでありTh1、Th2のそれぞれから分泌されるエキソソームを直接比較したものではないが、細胞表面での発現の違いは細胞内部で形成されるエキソソームの表面の違いにも反映されると思われることからHLA−DRがTh1エキソソームに優勢に含まれていることを示唆する結果である。図3の各パネル内の数字は平均蛍光強度を示す。
5.CD3ε鎖陽性かつHLA−DR陽性のエキソソームの検出系の構築
CD3ε鎖陽性かつHLA−DR陽性のエキソソームを測定する目的で、抗CD3ε鎖抗体を補足抗体とし、抗HLA−DRα鎖抗体を検出抗体とした3つの異なるサンドイッチ測定系を構築した。ここで、抗CD3ε鎖抗体としてはOKT3を共通に用いた。
CD3ε鎖陽性かつHLA−DR陽性のエキソソームを測定する目的で、抗CD3ε鎖抗体を補足抗体とし、抗HLA−DRα鎖抗体を検出抗体とした3つの異なるサンドイッチ測定系を構築した。ここで、抗CD3ε鎖抗体としてはOKT3を共通に用いた。
5−1.フローサイトメトリーによる測定系
1.5mLチューブに、後述の反応液で希釈したエキソソーム試料20μL及び抗CD3ε鎖抗体OKT3を結合させた直径6ミクロンのカルボキシル基結合ポリスチレンビーズ(Micromod社)を3x104個(2.5μL)入れ、室温で90分振とうした。反応液は1%BSA、0.2%デキストラン(Sigma社)、0.1% n−octyl−D−glucopyranoside (DOJINDO社) を含むPBSを使用した。OKT3のカルボキシル基結合ポリスチレンビーズへの結合にはEDC(PIERCE社)とSulfo−NHS(PIERCE社)を用い、PIERCE社のマニュアルに従って結合させた。反応後、ビーズを、0.3%BSAを含むPBS(洗浄液)にて2回洗浄し、10%正常マウス血清を含む洗浄液にて10倍に希釈したPE標識抗HLA−DRα鎖抗体MEM−12(abcam社)20μLを加え、室温で60分振とうした。反応後、ビーズを洗浄液にて2回洗浄し、1%ホルマリンを含むPBS250μLに懸濁後にFACSVerse(日本BD社)にてビーズの平均蛍光強度(M.F.I.)を測定した。測定は日本BDのマニュアルに従って行った。Th1由来の精製エキソソームをサンプルとして容量反応曲線を描いた結果を図4に示す。
1.5mLチューブに、後述の反応液で希釈したエキソソーム試料20μL及び抗CD3ε鎖抗体OKT3を結合させた直径6ミクロンのカルボキシル基結合ポリスチレンビーズ(Micromod社)を3x104個(2.5μL)入れ、室温で90分振とうした。反応液は1%BSA、0.2%デキストラン(Sigma社)、0.1% n−octyl−D−glucopyranoside (DOJINDO社) を含むPBSを使用した。OKT3のカルボキシル基結合ポリスチレンビーズへの結合にはEDC(PIERCE社)とSulfo−NHS(PIERCE社)を用い、PIERCE社のマニュアルに従って結合させた。反応後、ビーズを、0.3%BSAを含むPBS(洗浄液)にて2回洗浄し、10%正常マウス血清を含む洗浄液にて10倍に希釈したPE標識抗HLA−DRα鎖抗体MEM−12(abcam社)20μLを加え、室温で60分振とうした。反応後、ビーズを洗浄液にて2回洗浄し、1%ホルマリンを含むPBS250μLに懸濁後にFACSVerse(日本BD社)にてビーズの平均蛍光強度(M.F.I.)を測定した。測定は日本BDのマニュアルに従って行った。Th1由来の精製エキソソームをサンプルとして容量反応曲線を描いた結果を図4に示す。
5−2.AlphaLISAによる測定系
AlphaLISA法による測定はPerkinElmer社のガイドブック「AlphaLISA Assay Development Guide」及び「Alpha Protein−Protein Interaction」に従って行った。1/2 Area plate−96 (PerkinElmer社)の各ウエルにエキソソーム試料を5μL入れ、それに、抗CD3ε鎖抗体OKT3あるいは対照のマウスモノクローナル抗体7H7(自家製のIgG2aモノクローナル抗体)を含む反応液を10μL加え、室温で30分振とうした。次にOKT3を結合させたAlphaLISA Acceptor Beads (PerkinElmer社)(50μg/mL)とビオチン標識抗HLA−DRα鎖抗体L243(Santa Cruz社)(0.75μg/mL)の混合物を10μL加え、室温で1時間振とうした。最後にStreptavidin−coated Donor Beads(PerkinElmer社)(40μg/mL)を25μL加え、遮光下に室温で30分振とうした。全工程を通して反応液は上記5−1フローサイトメーターによる測定系と同じものを使用した。反応後のプレートはEnSpire(PerkinElmer社)で測定し、OKT3抗体存在下の反応の値をバックグラウンドとし、その値を7H7抗体存在下の反応の値から引いたものを正味の値とした。Th1由来の精製エキソソームをサンプルとして容量反応曲線を描いた結果を図5に示す。
AlphaLISA法による測定はPerkinElmer社のガイドブック「AlphaLISA Assay Development Guide」及び「Alpha Protein−Protein Interaction」に従って行った。1/2 Area plate−96 (PerkinElmer社)の各ウエルにエキソソーム試料を5μL入れ、それに、抗CD3ε鎖抗体OKT3あるいは対照のマウスモノクローナル抗体7H7(自家製のIgG2aモノクローナル抗体)を含む反応液を10μL加え、室温で30分振とうした。次にOKT3を結合させたAlphaLISA Acceptor Beads (PerkinElmer社)(50μg/mL)とビオチン標識抗HLA−DRα鎖抗体L243(Santa Cruz社)(0.75μg/mL)の混合物を10μL加え、室温で1時間振とうした。最後にStreptavidin−coated Donor Beads(PerkinElmer社)(40μg/mL)を25μL加え、遮光下に室温で30分振とうした。全工程を通して反応液は上記5−1フローサイトメーターによる測定系と同じものを使用した。反応後のプレートはEnSpire(PerkinElmer社)で測定し、OKT3抗体存在下の反応の値をバックグラウンドとし、その値を7H7抗体存在下の反応の値から引いたものを正味の値とした。Th1由来の精製エキソソームをサンプルとして容量反応曲線を描いた結果を図5に示す。
5−3.ELISAによる測定系
B&W IsoPlate−96プレート(PerkinElmer社)の各ウエルに抗CD3ε鎖抗体OKT3(5μg/mL、100μL/ウエル)を4℃で一晩固相化した。プレートの各ウエルをPBSにて5回洗浄後、2%BSAを含むPBSで室温2時間ブロックした。各ウエルに上記フローサイトメーターによる測定系と同じ反応液で希釈したエキソソームサンプルを60μL加え、室温で2時間振とうした。2時間反応後に同じ反応液にて希釈したビオチン標識抗HLA−DRα鎖抗体L243(Santa Cruz社)(1.25μg/mL)を20μL加え、室温でさらに1時間振とうした。プレートをPBSにて5回洗浄後、2%BSAを含むPBSで10,000倍に希釈したストレプトアビジン標識パーオキシダーゼ(Vector社)を100μL加え、室温で40分振とうした。PBSにて10回洗浄後、基質液SuperSignal ELISA Femto Maximum sensitivity Substrate(Thermo Scientific社)を50μL加え室温で遮光下に4分間振とうした後にEnSpire(PerkinElmer社)で化学発光を測定した。Th1由来の精製エキソソームをサンプルとして容量反応曲線を描いた結果を図6に示す。
B&W IsoPlate−96プレート(PerkinElmer社)の各ウエルに抗CD3ε鎖抗体OKT3(5μg/mL、100μL/ウエル)を4℃で一晩固相化した。プレートの各ウエルをPBSにて5回洗浄後、2%BSAを含むPBSで室温2時間ブロックした。各ウエルに上記フローサイトメーターによる測定系と同じ反応液で希釈したエキソソームサンプルを60μL加え、室温で2時間振とうした。2時間反応後に同じ反応液にて希釈したビオチン標識抗HLA−DRα鎖抗体L243(Santa Cruz社)(1.25μg/mL)を20μL加え、室温でさらに1時間振とうした。プレートをPBSにて5回洗浄後、2%BSAを含むPBSで10,000倍に希釈したストレプトアビジン標識パーオキシダーゼ(Vector社)を100μL加え、室温で40分振とうした。PBSにて10回洗浄後、基質液SuperSignal ELISA Femto Maximum sensitivity Substrate(Thermo Scientific社)を50μL加え室温で遮光下に4分間振とうした後にEnSpire(PerkinElmer社)で化学発光を測定した。Th1由来の精製エキソソームをサンプルとして容量反応曲線を描いた結果を図6に示す。
6.Th1、Th2細胞培養上清中のCD3ε鎖陽性かつHLA−DR陽性のエキソソームの検出
健常者3名(A、B、C)のPBMCから誘導したTh1、Th2細胞の1次刺激後10日から14日の増殖が止まった時期の細胞を回収し、上記1のごとく2次刺激を行った。ここでは牛胎児血清はエキソソームフリーのものを用いた。2次刺激後3日及び5日目の培養上清を低速遠心で回収し、0.22μmのフィルターを通したろ過液についてphaLISA法でCD3ε鎖陽性かつHLA−DRα鎖陽性のエキソソームのレベルを測定した。AlphaLISAの測定は上記5−2と同様の方法を用いた。図7に示すように、健常者A、B、C由来の3つのTh1、Th2ペアのいずれにおいてもTh2細胞に比べてTh1細胞から優勢に、CD3ε鎖陽性かつHLA−DRα鎖陽性のエキソソームが分泌されることが明らかになった。
健常者3名(A、B、C)のPBMCから誘導したTh1、Th2細胞の1次刺激後10日から14日の増殖が止まった時期の細胞を回収し、上記1のごとく2次刺激を行った。ここでは牛胎児血清はエキソソームフリーのものを用いた。2次刺激後3日及び5日目の培養上清を低速遠心で回収し、0.22μmのフィルターを通したろ過液についてphaLISA法でCD3ε鎖陽性かつHLA−DRα鎖陽性のエキソソームのレベルを測定した。AlphaLISAの測定は上記5−2と同様の方法を用いた。図7に示すように、健常者A、B、C由来の3つのTh1、Th2ペアのいずれにおいてもTh2細胞に比べてTh1細胞から優勢に、CD3ε鎖陽性かつHLA−DRα鎖陽性のエキソソームが分泌されることが明らかになった。
7.末梢血CD4T細胞及びCD8T細胞からのCD3ε鎖陽性かつHLA−DR陽性のエキソソームの分泌
健常者PBMCより磁気ビーズ(Miltenyi Biotec社)を用いてCD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞を分離し、10%エキソソームフリー牛胎児血清添加RPMI1640倍地中で106細胞/mLの細胞密度で培養した。培養の半分については固相化抗CD3ε鎖抗体及び抗CD28抗体とIL−2(200units/mL)で刺激した。刺激及び非刺激の培養から経時的に培養上清を回収し、0.22μmのフィルターを通したろ過液についてAlphaLISA法でCD3ε鎖陽性かつHLA−DRα鎖陽性のエキソソームのレベルを測定した。AlphaLISAの測定は上記5−2と同様に行った。結果を図8に示す。図8に示されるように、CD3ε鎖陽性かつHLA−DRα鎖陽性のエキソソームは活性化していないT細胞からは殆ど分泌されないが、刺激を受け活性化した場合には、CD4T細胞とCD8T細胞の両者から多量に分泌されること、また、CD4陽性T細胞に比べてCD8陽性T細胞からの分泌が優勢であることが分かった。同様の結果は別の健常者由来CD4T細胞、CD8T細胞でも観察された(結果示さず)。
健常者PBMCより磁気ビーズ(Miltenyi Biotec社)を用いてCD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞を分離し、10%エキソソームフリー牛胎児血清添加RPMI1640倍地中で106細胞/mLの細胞密度で培養した。培養の半分については固相化抗CD3ε鎖抗体及び抗CD28抗体とIL−2(200units/mL)で刺激した。刺激及び非刺激の培養から経時的に培養上清を回収し、0.22μmのフィルターを通したろ過液についてAlphaLISA法でCD3ε鎖陽性かつHLA−DRα鎖陽性のエキソソームのレベルを測定した。AlphaLISAの測定は上記5−2と同様に行った。結果を図8に示す。図8に示されるように、CD3ε鎖陽性かつHLA−DRα鎖陽性のエキソソームは活性化していないT細胞からは殆ど分泌されないが、刺激を受け活性化した場合には、CD4T細胞とCD8T細胞の両者から多量に分泌されること、また、CD4陽性T細胞に比べてCD8陽性T細胞からの分泌が優勢であることが分かった。同様の結果は別の健常者由来CD4T細胞、CD8T細胞でも観察された(結果示さず)。
8.末梢血中のIFNγ、IL−4、IL−17産生細胞におけるHLA−DRの発現
健常者(D、E)由来PBMCを10%牛退治血清添加RPMI1640倍地中に106細胞/mLの細胞密度で懸濁し、Phorbol 12−myristate 13−acetate(BIOMOL社)を50ng/mL及びionomycin(Sigma社)を1μg/mL添加し37℃、5%CO2下に培養した。培養1時間後にbrefeldinA(Sigma社)を10μg/mL添加し、サイトカインの分泌を止めた。培養3時間後に細胞を回収し、PE−Cy7標識抗CD3ε鎖抗体(日本BD社)、PerCP標識抗CD4抗体(日本BD社)、PerCP標識抗CD8抗体(日本BD社)、APC標識抗HLA−DRα鎖(日本BD社)抗体で室温20分染色した。細胞を洗浄後に3.7%ホルマリンで5分間固定し、さらにFACS Permiabilizing Solution2(日本BD社)で処理して細胞の透過性を高め、最後に、FITC標識抗IFNγ抗体(日本BD社)、PE標識抗IL−4抗体(日本BD社)あるいはPE標識抗IL−17抗体(日本BD社)で細胞内サイトカインを染色した。細胞はFACSVerseにて解析し、CD3ε鎖陽性かつCD4陽性のリンパ球(CD4T細胞)及びCD3ε鎖陽性かつCD8陽性のリンパ球(CD8T細胞)中のHLA−DRα鎖陽性かつIFNγ陽性の細胞、HLA−DRα鎖陽性かつIL−4陽性の細胞、HLA−DRα鎖陽性かつIL−17陽性の細胞の陽性率を算出した。結果を図9に示す。図9の結果は、健常者末梢血中のT細胞亜群を比較した場合、IFNγを産生するTh1及びTc1がHLA−DR陽性T細胞の主体を占めることを示している。このことはCD3ε鎖陽性かつHLA−DR陽性のエキソソームは、生体においてTh1やTc1から主に分泌されることを示唆している。
健常者(D、E)由来PBMCを10%牛退治血清添加RPMI1640倍地中に106細胞/mLの細胞密度で懸濁し、Phorbol 12−myristate 13−acetate(BIOMOL社)を50ng/mL及びionomycin(Sigma社)を1μg/mL添加し37℃、5%CO2下に培養した。培養1時間後にbrefeldinA(Sigma社)を10μg/mL添加し、サイトカインの分泌を止めた。培養3時間後に細胞を回収し、PE−Cy7標識抗CD3ε鎖抗体(日本BD社)、PerCP標識抗CD4抗体(日本BD社)、PerCP標識抗CD8抗体(日本BD社)、APC標識抗HLA−DRα鎖(日本BD社)抗体で室温20分染色した。細胞を洗浄後に3.7%ホルマリンで5分間固定し、さらにFACS Permiabilizing Solution2(日本BD社)で処理して細胞の透過性を高め、最後に、FITC標識抗IFNγ抗体(日本BD社)、PE標識抗IL−4抗体(日本BD社)あるいはPE標識抗IL−17抗体(日本BD社)で細胞内サイトカインを染色した。細胞はFACSVerseにて解析し、CD3ε鎖陽性かつCD4陽性のリンパ球(CD4T細胞)及びCD3ε鎖陽性かつCD8陽性のリンパ球(CD8T細胞)中のHLA−DRα鎖陽性かつIFNγ陽性の細胞、HLA−DRα鎖陽性かつIL−4陽性の細胞、HLA−DRα鎖陽性かつIL−17陽性の細胞の陽性率を算出した。結果を図9に示す。図9の結果は、健常者末梢血中のT細胞亜群を比較した場合、IFNγを産生するTh1及びTc1がHLA−DR陽性T細胞の主体を占めることを示している。このことはCD3ε鎖陽性かつHLA−DR陽性のエキソソームは、生体においてTh1やTc1から主に分泌されることを示唆している。
9.健常者及び疾患血清におけるCD3ε鎖陽性かつHLA−DR陽性のエキソソームのレベル
EBウイルス感染症(初感染n=8、再活性化n=5)、関節リウマチ(n=20)及び変形性関節炎患者(n=15)の血清は株式会社サンフコから、アトピー性皮膚炎患者血清(n=10)はオーラス・バイオサイエンス株式会社から入手した。これらの血清と健常成人血清(n=20)におけるCD3ε鎖陽性かつHLA−DRα鎖陽性のエキソソームのレベルをAlphaLISA法にて調べた。AlphaLISAの測定は上記5−2と同様に行った。図10に示すように、CD3ε鎖陽性かつHLA−DRα鎖陽性のエキソソームはTh1/CTL(Tc1)が亢進することが知られているEBウイルス感染症で顕著に亢進した。EBウイルスはヒトB細胞を腫瘍化する腫瘍ウイルスであるが、通常の初感染においては、EBウイルスで腫瘍化したB細胞はCTLを中心とした抗腫瘍免疫により効率的に排除される。細胞内に潜伏したEBウイルスは免疫抑制状態になると再活性化し、B細胞の他にT、NK細胞や上皮系細胞の腫瘍化に関わるが、これも同様の抗腫瘍免疫により排除される。図10に示したCD3ε鎖陽性かつHLA−DRα鎖陽性のエキソソームの亢進は、EBウイルスによって腫瘍化したB細胞に対する宿主の抗腫瘍免疫の亢進を反映した結果であると考えられる。
EBウイルス感染症(初感染n=8、再活性化n=5)、関節リウマチ(n=20)及び変形性関節炎患者(n=15)の血清は株式会社サンフコから、アトピー性皮膚炎患者血清(n=10)はオーラス・バイオサイエンス株式会社から入手した。これらの血清と健常成人血清(n=20)におけるCD3ε鎖陽性かつHLA−DRα鎖陽性のエキソソームのレベルをAlphaLISA法にて調べた。AlphaLISAの測定は上記5−2と同様に行った。図10に示すように、CD3ε鎖陽性かつHLA−DRα鎖陽性のエキソソームはTh1/CTL(Tc1)が亢進することが知られているEBウイルス感染症で顕著に亢進した。EBウイルスはヒトB細胞を腫瘍化する腫瘍ウイルスであるが、通常の初感染においては、EBウイルスで腫瘍化したB細胞はCTLを中心とした抗腫瘍免疫により効率的に排除される。細胞内に潜伏したEBウイルスは免疫抑制状態になると再活性化し、B細胞の他にT、NK細胞や上皮系細胞の腫瘍化に関わるが、これも同様の抗腫瘍免疫により排除される。図10に示したCD3ε鎖陽性かつHLA−DRα鎖陽性のエキソソームの亢進は、EBウイルスによって腫瘍化したB細胞に対する宿主の抗腫瘍免疫の亢進を反映した結果であると考えられる。
Th2が亢進することが知られているアトピー性皮膚炎における、CD3ε鎖陽性かつHLA−DRα鎖陽性のエキソソームは、健常者より有意に低値であった(図10)。
免疫が発症に関与しない疾患と考えられている変形性関節炎においては、健常者と同等の値であった。関節リウマチには多様な病形が存在すると考えられており、実際、Th1の活性化に関しては報告により一定しない。CD3ε鎖陽性かつHLA−DRα鎖陽性のエキソソームは、関節リウマチでは低値を示す検体から高値を示す検体まで広く分布しており(図10)、この検査によって関節リウマチのなかでTh1/CTL(Tc1)が亢進するタイプの症例を区別できる可能性が示された。
Claims (10)
- 体液検体試料における、T細胞マーカー陽性、かつ、Th1由来の細胞外小胞においてTh2由来の細胞外小胞よりも多く含有されている蛋白質に対して陽性、の細胞外小胞を定量することによる、Th1及び細胞傷害性T細胞の活性化データの取得方法。
- 細胞外小胞の大きさが0.25μm以下である、請求項1に記載のデータ取得方法。
- 細胞外小胞はエキソソームである、請求項1又は2に記載のデータ取得方法。
- T細胞マーカーはCD3ε鎖である、請求項1−3のいずれか1項に記載のデータの取得方法。
- Th1由来の細胞外小胞においてTh2由来の細胞外小胞よりも多く含有されている蛋白質のマーカーは、HLA−DRα鎖である、請求項1−4のいずれか1項に記載のデータ取得方法。
- 定量は、T細胞マーカーに対して特異的な抗体、及び、Th1由来の細胞外小胞においてTh2由来の細胞外小胞よりも多く含有されている蛋白質に対して特異的な抗体と、体液検体中の細胞外小胞との間の抗原抗体反応に基づくシグナルを検出することにより行われる、請求項1−5のいずれか1項に記載のデータの取得方法。
- 定量は、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法、AlphaLISA(LOCI)法、又は、免疫クロマトグラフィー法、により行われる、請求項6に記載のデータの取得方法。
- 体液検体は血液検体である、請求項1−7のいずれか1項に記載のデータ取得方法。
- 血液検体は、血清検体又は血漿検体である、請求項8に記載のデータ取得方法。
- 請求項1−9のいずれか1項のデータ取得方法を行うための要素を含む、Th1及び細胞傷害性T細胞の活性化データを取得するためのキット。
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