以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同じ構成要素には同じ符号を用いて、重複する説明を省略する。本発明に係る装置は、計測イメージング装置として使用することもできるし、通信装置として使用することもできる。以下においては、主として、波動が超音波等の音波であるときには音圧又は粒子速度、力学的な波として圧縮波(縦波)又はずり波、衝撃波、表面波等を対象とするときには応力波又は歪波、電磁波を対象とするときには電界又は磁場、熱波を対象とするときには温度又は熱束の透過波や屈折波、反射波、散乱波(前方散乱波又は後方散乱波等)のイメージ信号を生成する場合について説明する。
<<第1の実施形態>>
まず、本発明の第1の実施形態に係る計測イメージング装置又は通信装置の構成を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る計測イメージング装置又は通信装置の構成例を示す代表的なブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る計測イメージング装置(又は通信装置)は、送信トランスデューサ(又はアプリケータ)10と、受信トランスデューサ(又は受信センサー)20と、装置本体30と、入力装置40と、出力装置(又は表示装置)50と、外部記憶装置60とを備えている。
図2は、図1に示す装置本体の構成例を詳しく示す代表的なブロック図である。装置本体30は、主として、送信ユニット31と、受信ユニット32と、デジタル信号処理ユニット33と、制御ユニット34とを備えている。ここで、受信ユニット32がデジタル信号処理ユニット33を含んでも良い。なお、図1及び図2は、適度に簡略化したブロック図であり、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の詳細は以下の通りである。一例として、上記の装置間や装置本体30内のユニット間や各ユニット内においては、有線技術又は無線技術を基礎として適切に通信が行われるものであり、離れた場所に設置されても良い。装置本体30とは、それらの様な複数のユニットから構成されるものであり、便宜上、その様に呼ぶ。
<送信トランスデユーサ>
図2に示す送信トランスデューサ(又はアプリケータ)10は、装置本体30内の送信ユニット31から供給される駆動信号により波動を発生して送信する。本実施形態においては、送信トランスデューサ10の複数の送信開口素子10aがアレイを構成している。
図3は、送信トランスデューサにおける複数の送信開口素子の配置例を示す模式図である。図3(a1)は、1次元アレイ状に密に配列化された複数の送信開口素子10aを示しており、図3(b1)は、1次元状に疎に存在する複数の送信開口素子10aを示している。図3(a2)は、2次元アレイ状に密に配列化された複数の送信開口素子10aを示しており、図3(b2)は、2次元状に疎に存在する複数の送信開口素子10aを示している。図3(a3)は、3次元アレイ状に密に配列化された複数の送信開口素子10aを示しており、図3(b3)は、3次元状に疎に存在する複数の送信開口素子10aを示している。
各々の送信開口素子10aは、矩形、円形、六角形、又は、その他の開口形状を有しており、また、フラット、凹型、凸型と様々であり、アレイは、1次元、2次元、又は、3次元状のものがある。1つの送信開口素子10aの指向性は、生成する波動の周波数や帯域幅、及び、その送信開口素子10aの開口の形状で決まり、通常、2次元以上の空間で表されるが、少なくとも直交する2方向に指向性を持つ様にいわゆる開口が直交する2方向を向いているものを1素子と勘定することがあるし、直交する3方向に指向性を持つ様にいわゆる開口が直交する3方向に向いているものを1素子と勘定することもある。独立した3方向より多くの方向に指向性を持つ様に開口が3方向より多くの方向を向いている開口をもつ素子も存在する。それらが位置により異なり、混在することもある。
送信開口素子10aは、空間的に密又は疎(離れた位置)に存在する場合があるが、特段、1次元〜3次元のアレイ型と区別することなく、本実施形態を説明する。開口素子アレイは、リニア型(素子の並びがフラット)、コンベックス(凸型の円弧状の並び)、フォーカス型(凹型の円弧状の並び)、円形型(例えば、医用超音波等でIVUSに使用される)、球状、凸型又は凹型の球殻状、その他の形状で凸型又は凹型に並ぶもの等、波動を伝搬させる対象(通信対象)や観察対象に対して、様々な様態が取られ、これらに限られるものではない。これらの開口素子アレイを適切に駆動して、上記の平面波等の波面が横方向に広く拡がる波の送波やステアリング、開口面合成や固定送信フォーカス等が行われ、1つのビームや生成された波面を持つ送信波が実現される。
電子走査に関しては、後に詳述する通り、1つの送信ビーム又は波面を持つ送信波を生成するべく、図2に示す送信ユニット31が備える複数の送信チャンネルが生成する独立した駆動信号により、その駆動信号の数と同じ数の送信開口素子10aを独立に駆動できる。1つの送信ビーム又は波面を持つ送信波を生成するために使用される送信開口素子アレイを、送信有効開口とも称する。また、全開口素子を纏めて称する物理開口素子アレイと区別し、この同時に駆動される送信開口素子10aにより実現される送信開口を、送信サブ開口素子アレイ、又は、単に送信サブ開口とも称することがある。
波動を伝搬させる対象(通信対象)が広い場合や関心領域全体を一度に観察するべく、物理開口素子アレイにある全開口素子数の送信チャンネル数を備え、常時、それらの全てを使用することもあるが、装置を安価にするべく、電子的に送信チャンネルをスイッチングして送信サブ開口素子アレイを推移させたり(電子走査)、又は、物理開口素子アレイを機械走査すること(機械的走査)により、最小限の送信チャンネル数を用いて関心領域全体に波動が送信されることもある。波動を伝搬させる対象(通信対象)が広い場合や観察対象のサイズが大きい場合には、電子走査と機械走査とが共に実施されることもある。
セクタスキャンが行われる場合には、空間的に固定された上記の様な型の開口素子アレイが電子的に駆動されて走査される(電子走査)、又は、開口素子アレイそのものが機械的に走査される(機械走査)、又は、両者が共に実施されることがある。古典的な開口面合成では、開口素子アレイの1素子毎に電子的に駆動する電子走査、又は、1開口素子の機械走査を通じ、異なる位置において送信して送信開口アレイを構成するため、電子走査においては、送信ユニット31が、物理開口アレイの素子数だけの送信チャンネル数を備えることがあるが、スイッチングデバイスを使用するとその送信チャンネル数を減じることができ、機械走査と同様に必ず少なくとも1チャンネルを必要とする。偏波を送信する場合には、少なくとも、一度に駆動する素子数に偏波の数だけ乗じたチャンネル数が、送信ユニット31に必要である。
<受信トランスデューサ>
図2に示す受信トランスデューサ(又は受信センサー)20は、送信トランスデューサ10を兼ねることもあるが、送信トランスデューサ10とは別に使用されて受信専用のアレイ型センサーであっても良い。従って、受信トランスデューサ20は、送信トランスデューサ10とは別の位置に設定されることもある。また、受信トランスデューサ20が送信トランスデューサ10の生成する波動とは異なる波動を感知するものであることもある。その様な受信トランスデューサ20が送信トランスデューサ10と同一の位置に設置されたり、一体を成している場合もある。
本実施形態における受信トランスデューサ20は、送信トランスデューサ10と同様に、少なくとも1つ以上の受信開口素子20aがアレイを構成しており、各素子が受信した信号は、独立な状態で、装置本体30内の受信ユニット32(図2)に伝送される。送信開口素子10aと同様に、受信開口素子20aは、矩形、円形、六角形、又は、その他の開口形状を有しており、また、フラット、凹型、凸型と様々であり、アレイは、1次元、2次元、又は、3次元状のものがある。1つの受信開口素子20aの指向性は、受信する波動の周波数や帯域幅、及び、その受信開口素子20aの開口の形状で決まり、複数の開口を備えるものを1素子と勘定することもある。1素子における開口の数が位置により異なり、混在することもある。また、受信開口素子20aが空間的に密又は疎(離れた位置)に存在する場合もあり、ここでは、アレイ型と区別しない(図3の送信アレイの例を参照)。
開口素子アレイは、送信トランスデューサ10のそれと同様に、リニア型(素子の並びがフラット)、コンベックス(凸型の円弧状の並び)、フォーカス型(凹型の円弧状の並び)、円形型(例えば、医用超音波等でIVUSに使用される)、球状、凸型又は凹型の球殻状、その他の形で凸型又は凹型に並ぶもの等、波動を伝搬させる対象(通信対象)や観察対象に対して、様々な様態が取られ、これらに限られるものではない。これらの開口素子アレイを用いて波動を受信して、上記の平面波等の波面が横方向に広く拡がる波の受波やステアリング、開口面合成や固定受信フォーカスやダイナミックフォーカス等が行われ、1つのビームや生成された波面を持つ受信波が実現される。
トランスデューサ開口(素子)は、空間的に密でなく、疎(離れた位置)に存在する場合もあり、また、計測対象を機械的に走査して送信又は受信を行うこともあり、一般的にアレイ型と称さないトランスデューサを用いる場合においても同様に受信信号が処理されることがあるが、本願においては、それらを特段に区別することなく、アレイ型デバイスを使用する場合について重点的に述べながら本発明を説明する。例えば、陸地の離れた位置に、レーダー開口がある場合に、各レーダーがアレイを構成している場合もあれば、そうでない場合もある。
衛星や飛行機に搭載のレーダーのみならず、トランスデューサで計測対象を機械走査することがあり、そのような場合においても、トランスデューサがアレイを構成している場合もあれば、そうでない場合もあり、空間的に連続的に高密度に、若しくは、離れた位置において空間的に疎に、信号を送信又は受信することもある。従って、古典的な開口面合成(1開口素子による送信)だけでなく、送信ビームフォーミングを行いながら、信号を受信することもある。開口素子が1次元状に存在することもあるし、2次元又は3次元空間において存在することもある。また、電子的な走査を行いながら機械的な走査を行うこともある。
電子走査に関しては、後に詳述する通り、1つの受信ビーム又は生成された波面を持つ受信波を実現するべく、受信ユニット32が備える受信チャンネル数の独立した受信信号を開口素子において一度に受信することができる(受信有効開口が決まる)。受信有効開口は、送信有効開口と異なることもある。全開口素子を纏めて称する物理開口素子アレイと区別し、この同時に使用される受信開口素子20aにより実現される受信開口を受信サブ開口素子アレイ、又は、単に受信サブ開口とも称することがある。
波動を伝搬させる対象(通信対象)が広い場合や関心領域全体を一度に観察するべく、物理開口素子アレイに設けられた全開口素子数の受信チャンネル数を受信ユニット32が備え、常時、それらの全てを使用することもあるが、装置を安価にするべく、電子的に受信チャンネルをスイッチングして受信サブ開口素子アレイを推移させたり(電子走査)、又は、物理開口素子アレイを機械走査すること(機械的走査)により、最小限の受信チャンネル数を用いて関心領域全体から到来する波動が受信されることもある。
波動を伝搬させる対象(通信対象)が広い場合や観察対象のサイズが大きい場合には、電子走査と機械走査とが共に実施されることもある。セクタスキャンが行われる場合には、空間的に固定された上記の様な型の開口素子アレイが電子的に駆動されて、送信と受信を交互に繰り返しながら走査されたり(電子走査)、又は、開口素子アレイそのものが機械的に走査されたり(機械走査)、又は、両者が共に実施されることがある。また、古典的な開口面合成においては、送信に関し、上記の通り、開口素子アレイの1素子毎に電子的に駆動する電子走査、又は、1開口素子の機械走査を通じて、異なる位置において送信して送信開口アレイを構成するため、電子走査においては物理開口アレイの素子数だけの送信チャンネル数を送信ユニット31が備えることがあるが、スイッチングデバイスを使用することにより機械走査と同様に必ず少なくとも1チャンネルを必要とする。
一方、その際の受信に関しては、アクティブな送信素子と同一の素子のみで受信する型のモノスタティック型では、受信ユニット32が受信チャンネルを送信チャンネルと同様に備えれば良い。また、アクティブな送信素子を含む周囲の複数の素子で受信を行うことの多いマルチスタティック型では、電子走査では物理開口アレイの素子数だけの受信チャンネル数を受信ユニット32が備えることがあるが、スイッチングデバイスを使用することにより、電子走査と機械走査の両者において、少なくとも受信有効開口の素子数だけの受信チャンネル数を受信ユニット32が備えれば良い。偏波を受信する場合には、少なくとも、受信素子数に偏波の数だけ乗じたチャンネル数が受信ユニット32に必要である。
<トランスデューサの具体例>
トランスデューサ10又は20としては、電磁波、光、力学的な振動、音波、又は、熱波等の任意波動を生成又は受信できる様々なものがある。例えば、トランスデューサ10は、任意波動を計測対象に送信すると共に、計測対象内において反射された反射波や後方散乱された散乱波等を受信できることがある(トランスデューサ20を兼ねる)。例えば、任意波動が超音波である場合に、駆動信号に従って超音波を送信すると共に、超音波を受信して受信信号を生成する超音波トランスデューサを用いることができる。応用に合わせて、超音波素子(PZT(Pb(lead) zirconate titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)や高分子圧電素子等)は異なり、トランスデューサの構造が異なることは良く知られている。
医療応用において、血流計測では歴史的に狭帯域の超音波を使用することが行われてきたが、本願の発明者は、近年において実用化された軟組織の変位や歪(静的な場合を含む)、ずり波伝搬(速度)の計測の場合を含め、(エコー)イメージング用の広帯域トランスデューサを使用することを世界に先駆けて実現してきた。HIFU治療も然りで、連続波が使用されることもあるが、本願の発明者は、高分解能な治療を実現すべく、高周波型や広帯域型のデバイスを用いたアプリケータの開発も行っている。強力超音波を使用する場合には、加熱効果を来さない範囲で組織を刺激し、上記の如く計測対象内に力源を生成することもあり、(エコー)イメージング用のトランスデューサが使用されることもある。加熱治療や力源生成、そして、(エコー)イメージングが同時に行われることもある。その他の波動源やトランスデューサにおいても然りである。
デジタル信号処理ユニット33において、力源は、時間的に又は空間的に、複数個を対象内に生成でき、ずり波の重ね合わせにより、ずり波の伝搬方向を制御することができ、(粘)ずり弾性率やその伝搬速度の非等方性を計測することができる。ほぼ同時に生成されたずり波は物理的に重なっているため、超音波の変位計計測を通じたずり波の観測後、スペクトル解析の下で、ずり波が分離されることがある。また、物理的に重なっていない場合には、各々の力源が生成したずり波を、超音波信号を解析して観測し、その結果を重ね合わせ、伝搬方向、伝搬速度、伝搬方向の(粘)ずり弾性率が求められることもあるが、各々の力源が生成されたときの超音波信号を重ね合わせて解析し、ずり波の重ね合わせを観測してそれらが求められることもある。熱源を生成して熱波や熱物性を観測する場合も同様である。以下、他にも様々な処理が行われる。
熱源や力源、音圧の形状は、送受信のアポダイゼーションや遅延(ディレイ)、放射強度で調整でき、それらを生成したときの透過波又は反射波を検出して、それらを最適化することにより、所望する熱源や力源、音圧を実現することができる。ハイドロホンを用いて信号が高感度にそれらの形状が観測されることもあるし、検出器で捉えた信号に関して自己相関関数を求め、その形状が推定されることもあり、これらの処理を基に、線形又は非線形の最適化が行われる。ずり波や熱波の伝搬方向が最適化されることもある。それらの各々の場合、力学的特性や熱物性の推定結果が用いられることが望ましい。
例えば、凹型アプリケータが使用される場合には、焦点位置に高強度の超音波を収束させることができ、横方向に広帯域となる。しかし、音圧形状は焦点位置から足を引く様な分布を成すため、反射波又は透過波を受信した後に求めたスペクトルを加工(フィルタリングや重み付け等)することにより、音圧形状を楕円形に加工することができる(特許文献7)。波動又はビームの各方向のスペクトル成分は、周波数領域において同じ方向にスペクトルとして確認されることを応用すれば良い。その結果、イメージングの質が向上したり、変位計測の精度が向上する。
波動パラメータやビームフォーミングパラメータとして、送信フォーカシング有りの場合のフォーカス位置、送信フォーカシング無しの場合の平面波や円筒波や球面波等、偏向角度(偏向無しの零度の時を含む)、アポダーゼーション有り又は無し、Fナンバー、送信超音波周波数又は送信帯域、受信周波数又は受信帯域、パルス形状、ビーム形状が異なる等が異なる複数の波動やビームの送信又は受信を行った場合の受信信号を重ね合わせ、一回の送信と受信による波動生成やビームフォーミングでは生成できない新しい特徴を持つ波動又はビームを生成する場合(例えば、波動又はビームを交差させて重ね合わせて横方向変調や広帯域化させた場合、マルチフォーカス等の場合)においても、同処理を施して同効果が得られることがある。尚、重ね合わせは、同時刻に実時間において行われることもあるし、対象の同一の時相において異なる時刻において受信されたものに関して行われることもある。各々が受信ビームフォーミングされて重ね合わせされることもあるし、受信ビームフォーミングの行われていないものが重ね合されて受信ビームフォーミングされることもある。
単独の波動又はビーム、又は、それらの複数の波動又はビームの重ね合わせから得られた受信信号が、周波数領域において重み付けされて広帯域化され、超解像が行われることがある(高分解能化)。段落0009に記載の方法等が併用されることもあり、観測された波動に、ビーム特性の反転(inversion)として周波数応答の共役又は逆数が施されることがある。また、観測された波動の共役又は周波数応答の共役が施されることがある(これらは、検波処理であり、前者により包絡線の二乗が得られ、後者により自己スペクトラム、すなわち、自己相関関数が得られる)。ビームフォーミング(開口面合成を含む)されたものに超解像が施されることもあるし、受信ビームフォーミング前又はビームフォーミングが全く行われていないもの(開口面合成用送受信信号)に超解像処理を施した上でビームフォーミングが行われることがある。
また、変位(ベクトル)計測においては、変位成分を高精度化させるためには、その変位成分方向の周波数を高くすればよい。高分解能化も要する場合には広帯域化する必要がある。例えば、低周波スペクトルを捨てて高周波化し、変位計測を高精度化させることができる。計算量も低減できる。複数の波動又はビームを物理的に生成する場合や、信号処理によりスペクトルを分割して複数の波動又はビームを生成することもあり、over-determinedシステムを構成して、高精度な変位計測等が行われることもある。イメージングには、包絡線検波や二乗検波、絶対値検波が施されるが、検波後の複数の波動又はビームを重ね合わせることにより、スッペクルを低減でき、鏡面反射を強調させることができる。
尚、これらの処理は、超音波を用いるときや医療においてのみならず、電磁波が使用される場合や様々な分野においても、同様に実施可能である。例えば、超音波を用いて可聴音波を観測する(つまり、ドプラ効果)、電磁波や光を用いて音波や熱波を観測する、又、それらを用いて地震波を観測すること等が可能であり、連動して、関連する物性(分布)を観測することも可能である。
トランスデューサには接触型と非接触型があり、その都度、整合材を介す(超音波の場合には、ジェルや水等)、又は、予め整合材がトランスデューサに組み込んであるもの(超音波の場合には、整合層)を使用し、計測体対象に対して各波動のインピーダンスマッチングが適切に行われている状態で使用される。パワーや搬送周波数、帯域(広帯域又は狭帯域化、軸方向の空間分解能を決める)、波形の形状、素子の大きさ(横方向の空間分解能を決める)、指向性等が、開口素子レベルとアレイ性能の両面において設計されたものが使用される(詳細は略)。超音波トランスデューサとして、PZTやPVDFが積層されて、送信音響パワーと広帯域性の両者を兼ね備えたもの等、複合的なものもある。
駆動信号によって強制振動させる場合においては、その駆動信号により、生成される超音波の周波数や帯域が調整されたり、符号化されることもある(受信に関しては、トランスデューサの帯域内の信号に対して、アナログ又はデジタルのフィルタを用いて帯域を選択することもある)。周波数や感度等の特性の異なる開口素子が並べられている場合もある。医療用超音波トランスデューサは、元より、それらは、ハンディーであり、使い勝手がよいものであったが、最近では、ノンケーブル型のトランスデューサが、ハンディーサイズの装置本体と共に使用される様になった。周波数の低い音(例えば、可聴音)であれば、スピーカーやマイクロフォンがある。他の波動のトランスデューサも同様な観点で実現されることがあるが、その限りではない。
あるいは、トランスデューサ10として、任意波動を生成する送信用トランスデューサと、トランスデューサ20として、任意波動を受信する受信用トランスデューサ(センサー)とが用いられても良い。その場合に、送信用トランスデューサは、任意波動を計測対象に送信すると共に、センサーは、計測対象内において反射された反射波又は後方散乱された散乱波、又は、計測対象内を透過した透過波や屈折波、前方散乱等を受信することができる。
例えば、任意波動が熱波である場合に、太陽光や照明、生体内の代謝等の故意に生じさせることのない熱源が使用されることもあるが、赤外加温器やヒータ―等の比較的定常なものや、また、駆動信号に従って制御されることが多い加熱用の超音波を送信する超音波トランスデューサ(計測対象内に力源を生成することもある)や電磁波トランスデューサ、レーザー等も使用される。また、熱波を受信して受信信号を生成する赤外線センサー、焦電センサー、マイクロ波やテラヘルツ波の検出器、光ファイバー等の温度センサー、超音波トランスデューサ(超音波の音速や体積変化等の温度依存性を用いて温度変化を検出)、又は、核磁気共鳴信号検出器(核磁気共鳴のケミカルシフトを用いて温度を検出)を用いることができる。各波動に関し、適切に受信できるトランスデューサが使用される。
光学デジタルカメラやマンモグラフィーには、CCD(電荷結合素子)技術が使用されており、集積回路とセンサー本体とが一体となっている場合がある。また、超音波2次元アレイにおいても、同技術が応用されており、実時間の3次元イメージングが可能になっている。X線の検出には、シンチレータとフォトカプラの組み合わせが使用されるが、波動として観測できる様になって久しい。高周波信号をデジタル信号として取り込むに当たり、前処理にアナログ的に検波又は変調を行い、低周波数にしてAD変換してメモリや記憶装置(記憶媒体)に格納することは有効である。時には、デジタル検波されることもある。これらが、送信器や受信器と共に、チップや基板によって一体化されることがある。
その他、例えば、陸地の離れた位置にレーダーがある場合等の様に、各開口がアレイを構成している場合もあるし、その限りではない場合もある。開口が機械的に走査されて、広い指向性が得られることもある。開口が、空間的に連続的に高密度に、また、離れた位置において空間的に疎に、また、等間隔に等の、ある規則性の下に、また、物理的な制約下において変則的に、設置されることもある。その他、海洋中や建物、又は、屋内等のように、波動を伝搬させる対象(通信対象)や観察位置に対して位置が固定されている場合もある。それらは波動の送信又は受信の専用開口であることがある。また、各開口が両者を兼ねることもあるが、自ら送信した波動の応答を受信するのみとは限らず、他の開口の送信した波動を受信することもある。医療や生物の観察においては、光音響(Photoacoustic)と称されて、レーザー照射により生成される超音波が観測されることもある(複数の波動のトランスデューサが一体化されていることもある)。本発明によれば、超音波診断装置とOCTの併用によるPhotoacousticsを、例えば、動脈と静脈の区別のみならず、各々における血流速度の計測を行うこともできる(超解像を実施することもできる)。また、病変に親和性のある磁性体を造影剤として静脈注射し、患部に超音波等の振動を与え、電磁波を観測することもできる。電波を使用して様々な移動体と通信することもある。
地震波(地震計)や脳磁(SQUIDアレイ)、脳波、神経回路網(電極アレイ)、電波(アンテナ)、レーダー等のパッシブな観測に使用されるトランスデューサ(アレイ)にも、様々なものがあり、波動源の観測に使用されることがある。到来する波動の伝搬方向を多次元スペクトル解析に基づいて求めたり(本願の発明者の過去の業績)、さらに、本願発明の装置においては、異なる位置に備えられた複数のトランスデューサ又は受信有効開口を使用して、伝搬時間に関する情報が得られない場合(通常、複数位置において波動が観測された時間から波動源の位置等を割り出す)においても、幾何学的に波動源の位置等を割り出すことが可能である。波動がパルス波やバースト波ではなく、連続波でも観測できる。如何なる処理を通じてでも、波動の到来方向がわかった場合において、その方向に、各種ビームをステアリング及びフォーカシングを行い、詳細に観測することも行える。それらの処理において、常に、可能性の高い方向を重点的に、ステアリング角度を変えながら受信ビームフォーミングを行って、得られる像又は結像、空間分解能、コントラスト、信号強度等を観測する、又は、多次元スペクトル解析を通じ、波源の方向を特定することもできる。従って、本願発明の装置で使用されるトランスデューサには、ステアリングにも使用され、電子走査、機械走査、又は、両走査を行う機構が備えられている場合もある。
本願発明の有効性を実証できるトランスデューサとして、比較的に身近である典型的なトランスデューサや、特殊なものを幾つか列挙したが、本願発明において使用されるものとしては、応用を含めて、それらに限られるものではなく、電磁波、光、力学的な振動、音波、又は、熱波等の任意波動を生成又は受信できる様々なものを使用できる。
<ビームフォーミング>
同時、又は、波動を伝搬させる対象(通信対象)や観察対象の状態が同一又は略同一である同時相、又は、別の時刻若しくは別の時相において、各開口において、1つ以上のビームフォーミング、又は、送信若しくは受信が行われることもある。また、同様にして、開口の1つの組み合わせで、1つ以上のビームフォーミング、又は、送信若しくは受信が行われることもある。また、同様にして、開口の複数の組み合わせの各々が、1つ以上のビームフォーミング、又は、送信若しくは受信を行うこともある。また、それらにおいて、ビームフォーミングや受信の結果が複数得られる場合を含め、それらを用いた線形又は非線形の演算を通じて新たなデータが生成されることもある。処理される受信信号が、元々より重なっているときと重ねて処理するときがある。
また、例えば、衛星や飛行機に搭載のレーダー等の様に空間的に移動するものにおいては、搭載される開口がアレイを構成している場合もあれば、そうでない場合もあり、また、機械走査されて広い指向性が得られることもあり、また、空間的に連続的に高密度に、若しくは、離れた位置において空間的に疎に、若しくは、等間隔である等のとある規則性の下、若しくは、必要に応じて変則的に、送信と受信が行われることもある。移動物体は、その他に、車や船、電車、潜水艦、移動ロボット等、様々である。その他、流通されるもの等、生き物等、規則的又は無作為に移動するものである場合もある。そのような場合には、移動可能な通信機が使用される。RFID(Radio Frequency Identification)タグやICカード等が使用されることもある。
その際には、古典的な開口面合成(1開口素子毎の送信に基づく開口面合成)が行われるだけでなく、送信ビームフォーミングを生成しながら、受信ビームフォーミングが行われることもある。また、電子走査を行いながら機械走査が規則的に又は変則的に行われることもあり、空間的に広い範囲に適切に波動を伝搬させたり(通信)、空間的に広い範囲が適切に観察されることもある。無論、多次元アレイを使用することにより、電子走査のみで、空間的に広い範囲に適切に波動を伝搬させたり(通信)、空間的に広い範囲が適切に観察されることもある(物理開口が大きくなるだけでなく、多方向のステアリングも可能になる)。
搭載される開口は、波動の送信と受信のための両開口を兼ねることもあるが、自ら送信した波動の応答を受信するのみとは限らず、他の任意の開口の送信した波動を受信することもある。また、複数の移動物体が開口を備えている場合もあり、同時、又は、波動を伝搬させる対象(通信対象)や観察対象の状態が同一又は略同一である同時相、又は、別の時刻若しくは別の時相において、各開口において1つ以上のビームフォーミング、又は、送信若しくは受信が行われることもある。
また、同様にして、開口の1つの組み合わせで1つ以上のビームフォーミング、又は、送信若しくは受信が行われることもある。さらに、同様にして、開口の複数の組み合わせの各々が1つ以上のビームフォーミング、又は、送信若しくは受信を行うこともある。また、それらにおいて、ビームフォーミングや受信の結果が、複数得られる場合を含め、それらを用いた線形又は非線形の演算を通じて新たなデータが生成されることもある。上記において、波動を伝搬させる対象(通信対象)や観察対象に対して、移動物体の開口と固定された開口の組み合わせが使用されることもある。
この様に、本実施形態では、複数の送信開口素子10aと複数の受信開口素子20aとが存在し(1つの開口素子が、送信開口素子10aと受信開口素子20aとを兼ねることもある)、アクティブにビームフォーミングが行われる。このアクティブビームフォーミングにおいて、高速フーリエ変換を通じて任意のビームフォーミングを、高速に補間近似を行わずにデジタル処理によって実現することができる。また、実質的に、任意のフォーカシングと任意のステアリングとを、任意開口形状を有するトランスデューサアレイデバイスを用いて実施することができる。
送信は、各開口素子の方向を重視するために、一般的に、物理開口素子アレイの形状で決まる直交座標系において行われるが(仮想音源は別途説明する)、本発明の特徴は、最終的な表示座標系において直接的に波動を表す信号を生成するべく、補間近似処理を行うことなく受信デジタルビームフォーミングを行うことが中心であり、派生的に、送信ビームフォーミングにおける座標系において受信デジタルビームフォーミングを行うことにもある。また、仮想源や仮想受信器等が使用されることもあり、物理開口素子アレイの場合と同様にビームフォーミングが行われる。
<送信ユニット>
次に、装置本体30が備える送信ユニット31(図2)について説明する。送信ユニット31は、複数の送信チャンネルの送信器31aを含んでいる。1つのビームフォーミングを行うに当たり使用する開口素子に異なる駆動信号を送るための回線数が送信チャンネル数である。例えば、下記の如く、この送信チャンネルの形態は様々なものがある。各送信開口素子10aにおいて生成される波動の周波数、帯域幅、波形、及び、指向性は、送信開口素子10aと送信ユニット31とで決まる。
インパルス信号を送信開口素子10aに印加すると、送信開口素子10aの形状(厚みや開口の大きさや形)と材料(超音波素子の代表的なものにシングルクリスタル)とで決まる波動が生成されるが、送信ユニット31において生成されて周波数と帯域幅、波形(符号化されていることもある)を持つ駆動信号で送信開口素子10aを強制的に励起することにより、生成される波動の周波数、帯域幅、波形、指向性が調整される。その生成される駆動信号の特性は、制御ユニット34による制御の下でパラメータとして設定される。使用されるトランスデューサを制御ユニット34が認識して、推奨する設定が自動的に行われることもあるが、入力装置40を用いた設定又は調整も可能である。
通常、1つのビームフォーミングを行うに当たり、異なるディレイを掛けた駆動信号により複数の開口素子を駆動するために、送信ユニット31はアナログ又はデジタルのディレイパターンを搭載しており、操作者が入力装置40を用いて選択できる送信フォーカス位置やステアリング方向等を実現するディレイパターンが使用されることがある。それらのパターンがプログラマブルであり、目的に応じて、使用するパターンや選択可能なパターンがCD−ROM、フロッピーディスク、又は、MO等の様々な媒体を通じてインストールされることもある。プログラムを起動して入力装置40よりインターラクティブにパターンを選択できる場合もあるし、ディレイ(パターン)値を直接に入力したり、その他、データの記録されたファイルを読み込ませて設定する場合等、様々な場合がある。特に、アナログディレイの場合に、使用するディレイ値がアナログ的又はデジタル的に変更される場合もあるし、ディレイ回路又はパターンそのものが別のものに付け替えられるか別に切り替えられることもある。
装置本体30(図2)において、制御ユニット34から複数チャンネルの送信器31aに、対応する送信開口素子10aを駆動する駆動信号(符号化されている場合がある)を生成させる指令信号が伝送される。それらの指令信号は、1フレーム分のビームフォーミングを開始するための指令信号を基に生成されることがある。送信ディレイがデジタルである場合に、例えば、最初に駆動する送信開口素子のための送信器31aに送られる指令信号をトリガーとしてデジタルディレイが掛けられ、各送信器31aに指令信号が送られることがある。デジタルディレイにはデジタル回路のディレイデバイスが使用されることもある。
また、最初に駆動する素子のために送信器31aにおいて生成された駆動信号そのものにアナログディレイが掛けられ、各開口素子に伝送されることもある。同期を必要としないアナログディレイが使用されるこの場合においては、送信器31aは少なくとも1機で複数の送信開口素子10aを駆動できる。従って、送信アナログディレイは、送信器31aの前後又は内部、又は、制御ユニット34内に設けられ、一方、送信デジタルディレイは、送信器31aの内部又は前、又は、制御ユニット34内に設けられることがある。
アナログ回路若しくはアナログデバイス、又は、デジタル回路若しくはデジタルデバイスの切り替えにより、パターンが選択されることもあるが、それらのディレイデバイスのディレイが、制御ユニット34による制御の下で変更される場合もあるし、インストールや入力設定等を通じてプログラマブルであることもある。また、制御ユニット34内にディレイデバイスが設けられていることもある。さらに、制御ユニット34が以下の如く計算機等により構成されている場合には、ソフト制御の下でディレイの掛けられた指令信号が制御ユニット34から直接に出力されることもある。
制御ユニット34やデジタルディレイは、汎用の計算処理能力を備えるデバイスや計算機、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphical Processing Unit)、若しくは、マイクロプロセッサ等、又は、専用のデジタル回路、若しくは、専用デバイスであっても良い。それらは高性能(マルチコア等)であることが望ましく、アナログデバイスや、AD変換器32b、メモリ32c、及び/又は、送信又は受信ビームフォーミング処理を行うデジタル信号処理ユニット33をも担うことがある。
また、デバイス間の通信回数や通信線路容量、配線、若しくは、広帯域な無線通信は重要であり、特に、本発明においては、それらの機能デバイスが1つのチップや基板に適切に装着される場合(脱着可能な場合)がある。その他に、1つのチップや基板にそれらが直接的に実装されること(積層を含む)もある。並列処理が行われることもある。デバイスが脱着不可能なものであると、計算機が制御ユニット34も兼ねるときにおいて、通常のプログラム制御の下で得られるセキュリティに比べて格段に高いセキュリティ性能を獲得することもできる。その反面、現行の法律では処理内容の開示が求められることが増えるであろう。
制御ソフトウェアやディレイ値が直接にコーディング又は入力されるものやインストールされるものもある。デジタルディレイの掛け方はこれらに限られない。送信ディレイにおいてこのデジタルディレイを実施すると、アナログディレイとは異なり、デジタル制御信号を発生するためのクロック周波数で決まる誤差を必ず生じるので、精度の点では送信ディレイはアナログディレイの方が良い。基本的には、コストをかけて高クロック周波数を使用して誤差を低減する。一方、アナログディレイはアナログ的に変更可能であるし、デジタル制御可能なプログラマブルにすることも可能である。しかしながら、デジタルディレイに比べて自由度が低く、コストを下げる場合においては、アナログ回路として搭載されたディレイパターンを切り替えて使用することもある。
尚、送信アポダイゼーションは、開口素子の駆動信号のエネルギーや時間的に変化する波形(符号化されていることもある)の振幅の時間変化によって行われる。開口素子の駆動信号の波動への変換効率(変換能)の校正データに基づいて、駆動信号が調節される。別の目的で、校正することだけを目的に駆動信号の調節が実施されることもある。制御ユニット34から送信器31aに送られる指令信号は、送信器31aが生成する駆動信号の波形や位相の情報を時系列として表すものであっても良いし、送信器31aが認識して所定の駆動信号を生成できる符号化されたものであっても良いし、有効開口内の駆動する各開口素子の位置に対して所定の駆動信号を生成する送信器31aに単に送信の指令を下すものであっても良い。
また、ディレイと同様に、有効開口内の駆動する各開口素子の位置に対して所定の駆動信号を生成する様に送信器31aがプログラマブルであることがあり、様々な形態を取り得る。駆動信号の生成には、電源や増幅器が使用されるが、電力又はエネルギー供給量の異なる電源や増幅度の異なる増幅器が、切り換えられて使用されたり、1つの駆動信号を生成するために同時に使用されたり、また、送信ディレイパターンと同様に上記の如く直接的に設定されたりプログラマブルであることがある。ディレイとアポダーゼーションは、送信ユニット内において、同じか異なる階層レベルにおいて同じか異なる形態で実現されたものが実施されうるものである。
送信有効開口内の開口素子を駆動するための送信チャンネルは、シフトレジスタやマルチプレクサ等のスイッチングデバイスを通じて切り替えられ、別の位置の有効開口が使用されてビームフォーミングを行いながら関心領域が走査されることがある。また、ディレイ素子のディレイ値が可変であるものがあるし、ディレイパターン(ディレイ素子群)が切り換えられることもある。さらに、1つの有効開口において複数方向へのステアリングが行われることもあるし、適宜、開口位置や有効開口幅を変えながら、さらには、複数方向にステアリングが行われることもある。
高圧信号をスイッチングする場合においては、専用のスイッチングデバイスが使用される。また、アポダイゼーション素子のアポダイゼーション値が送信時間方向や開口素子のアレイ方向に可変であるものがあるし、アポダイゼーションパターン(アポダイゼーション素子群)が切り換えられることもあり、開口位置やレンジ方向、又は、ステアリング方向に依存してビーム形状が調整されることがある。詳細には、アポダイゼーション値が零の送信素子はアクティブではなくオフであることを意味し、アポダイゼーションは有効素子のスイッチをも担い、有効開口幅をも決め得るものである(開口素子アレイ方向のアポダイゼーションの関数が矩形(rectangular)窓であればスイッチはオンであり、一定値でないときは重みの掛かったオンである)。
また、ディレイパターンやアポダイゼーションパターンに関し、装置本体30が複数のパターンを備える場合や、プログラマブルである場合があり、送信対象からの応答や次に説明する受信ユニット32によるビームフォーミングの結果に基づいて、後に説明する装置本体30内のデジタル信号処理ユニット33(図2)において、伝搬過程の媒体における波動の減衰や散乱(前方散乱又は後方散乱等)、透過、反射、屈折、又は、音速の周波数分散や空間分布等が計算され、各開口から送信する波動のディレイや強度、ビームや波面のステアリング方向、アポダイゼーションパターン等が最適化されることがある。
尚、古典的な開口面合成には、1開口素子による送信において行われるモノスタティック型とマルチスタティック型とがあり、アクティブな送信開口素子10aが、上記の如くして、スイッチング又はアポダイゼーションの下で切り替えられる。全送信素子が送信器31aを含む送信チャンネルを備えている場合もある。開口面合成においては、十分な強度又はエネルギーの波動を生成する必要があり、送信アポダイゼーション関数そのものが必ずしも重要であるとは限らない。実質的には、通常、開口面合成は、整相加算器において受信アポダイゼーションと同時に実施されるし、本発明においては、デジタル信号処理ユニット33において、受信アポダイゼーションと同時に実施されることが多い。以上、本実施形態の代表的な送信ユニットについて説明したが、送信ビームフォーミングの可能なものであれば、任意のものを使用でき、記載されている限りではない。
<受信ユニット及びデジタル信号処理ユニット>
次に、装置本体30が備える受信ユニット32及びデジタル信号処理ユニット33(図2)について説明する。受信ユニット32は、複数の受信チャンネルの受信器32aと、AD変換器32bと、メモリ(又は記憶装置又は記憶媒体)32cとを含んでいる。各受信開口素子において生成される受信信号の周波数、帯域幅、波形、指向性は、受信開口素子20aと受信ユニット32で決まる。波動が受信開口に到来すると、受信開口素子20aの形状(厚みや開口の大きさや形)と材料(超音波素子の代表的なものにシングルクリスタル)とで決まる受信信号が生成されるが、受信ユニット32におけるフィルタリング処理(アナログ増幅器が兼ねることもある)により生成される受信信号の周波数と帯域幅、指向性が調整される。その生成される受信信号は、制御ユニット34による制御の下で設定されるフィルタのパラメータ(周波数や帯域幅等の周波数特性)に基づいて実質的に調整される。使用されるトランスデューサを制御ユニット34が認識して、推奨する設定が自動的に行われることもあるが、入力装置40を用いた設定又は調整も可能である。
通常のデジタル受信ユニット又はデジタル受信装置は、この様な機能を備え、さらに、整相加算機能を備える。即ち、デジタル受信ユニット又はデジタル受信装置におけるDAS処理は、複数の受信信号に整相処理を施して、整相処理が施された複数の受信信号を加算するものである。整相処理としては、複数の受信開口の受信チャンネルにおいて受信信号をAD変換して、基本的には読み書きを高速に行えるメモリ、記憶装置、又は、記憶媒体等に格納し、関心領域内の各関心位置に関して整相するべく、格納先から読み出した受信信号に空間領域において補間近似処理を交えて高速にディレイを掛けるものと、多くの時間を要するが、格納先から読み出した受信信号に周波数領域において複素指数関数を乗ずる位相回転によりナイキスト(Nyquist)定理に基づいてディレイを高精度に掛けるもの(本願の発明者の過去の発明)とがある。また、格納先においては、各受信開口の受信信号が受信ディレイに応じた位置に格納される場合もあり、それらの受信信号を読み出して加算したり、又は、それらに上記の処理をさらに施して加算することもある。
図4は、整相加算処理を実現する整相加算器を搭載する受信ユニット又は受信装置の典型的な構成とその周辺装置を示すブロック図である。図4に示す受信ユニット(又は受信装置)35は、複数の受信チャンネルの受信器35aと、AD変換器35bと、メモリ(又は記憶装置又は記憶媒体)35cとに加えて、整相加算処理を行う整相加算器35dと、生成されたイメージ信号をデジタル信号処理する他データ生成部35eとを備えている。例えば、他データ生成部35eは、画像表示データを生成したり、高次の計算により、例えば、ドプラ(Doppler)法に基づいて変位を計算したり、温度を計算したり等、対象に対して解析を行う。
この整相加算処理を関心領域内の各位置において実施することにより、ダイナミックフォーカシングが行われる。本来、ダイナミックフォーカシングは、有効開口において受信したレンジ方向において使う用語(term)であったが、実のところ、本発明によって実施される受信デジタルビームフォーミングにおいては、その限りではない。図2に示す本発明の実施形態における受信ユニット32は、整相加算(DAS)処理を行う演算過程がその名称の表す上記の演算処理とは異なる高速且つ近似処理を必要としない高精度なデジタルビームフォーミングを行うものである。従って、本発明の実施形態においては、図4に示す整相加算器35dの代わりに、図2に示すデジタル信号処理ユニット33が用いられる。デジタル信号処理ユニット33においては、イメージ信号を基に上記の様な他のデータが生成されることもある。
通常の整相加算器も本発明の実施形態におけるデジタル信号処理ユニット33によって同様に実現することが可能であるが、特に、本発明の実施形態における受信ユニット32の特徴は、高速且つ高精度な処理を実現するべく、通常は受信開口素子20aにおいて生成される受信信号をアナログ的な増幅又は減衰によるレベル調整やアナログフィルタリング(プグラマブルであり、制御ユニット34を通じて設定される周波数特性やパラメータ下で動作する)等のアナログデバイスを使用して信号強度の確保やノイズの低減を行うことに加え、アナログ信号処理がデジタル信号処理よりも高速である利点を生かして、必要に応じて線形又は特に非線形のアナログ信号処理を行うデバイスを有効的に使用することを含み、それらの処理を通じて得られた信号をAD変換し、その結果として得られるデジタル信号を読み書きの高速なメモリ(又は記憶装置又は記憶媒体)32cに格納する。
また、搭載されるデジタル信号処理ユニット33として、汎用の計算処理能力を備えるデバイスや計算機、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphical Processing Unit)、若しくは、マイクロプロセッサ等が使用され、又は、専用の計算機や専用のデジタル回路、若しくは、専用デバイスが使用されて、格納されているデジタル信号に対して本発明のデジタルの波動信号処理が施される。
それらのアナログデバイスや、AD変換器32b、メモリ(又は記憶装置又は記憶媒体)32c、及び、デジタル信号処理ユニット33(マルチコア等)を担うデバイスが高性能であることは重要であるが、デバイス間の通信回数や通信線路容量、配線、若しくは、広帯域な無線通信は重要であり、特に、本発明においては、それらの機能デバイスが1つのチップや基板に適切に装着される場合(脱着可能な場合)があり、その他に、1つのチップや基板にそれらが直接的に実装されること(積層を含む)もある。並列処理が行われることもある。
デバイスが脱着不可能なものであると、計算機が制御ユニット34も兼ねるときにおいて通常のプログラム制御の下で得られるセキュリティに比べて格段に高いセキュリティ性能を獲得することもできる。その反面、現行の法律では処理内容の開示が求められることが増えるであろう。また、そのデジタル信号処理ユニット33が、他ユニットに指令信号を送りそれらを制御する制御ユニット34を兼ねることもある。
本発明に実施される受信ユニット32において、受信トランスデューサ(又は受信センサー)20において生成される受信信号のサンプリング(AD変換)をAD変換器32bに開始させるトリガー信号(即ち、AD変換を開始してメモリ(又は記憶装置又は記憶媒体)32cにデジタル信号を格納することを開始する取り込み開始の指令信号)は、通常の受信ユニットにおいて用いられるトリガー信号と同様である。例えば、駆動する送信開口素子10aへの送信信号を送信器31aが生成する様に制御ユニット34が発生するいずれかの指令信号が使用されることがあり、有効開口の複数の受信開口素子20aにおいて受波する場合においては、最初に駆動する素子のための指令信号か、最後に駆動する素子のための指令信号か、又は、別の素子を駆動するための指令信号が使用され、適宜、所定のデジタルディレイを掛けてAD変換が開始されることもある。
それらの指令信号は、1フレーム分のビームフォーミングを開始するための指令信号を基に生成されることがある。つまり、送信トリガー信号の発生回数をカウントし、所定の数、又は、適宜、入力装置40等から入力されて設定される等のプログラマブルなパラメータであることのある数に達したことがハードウェア又は制御プログラムにおいて確認されると、新しいフレームの生成を開始する指令信号が発生されることがある。その数は、他パラメータと同様に、CD−ROMやフロッピ―ディスク、又は、MO等の様々な媒体を通じてインストールされることもある。プログラムを起動して入力装置40からインターラクティブに選択できる場合もあるし、数値を直接に入力したり、その他、データの記録されたファイルを読み込ませて設定する場合等、様々な場合がある。その数は、ディップスイッチ等を使用して定めることも可能である。受信ディレイのパターンの数が大きいことが必要とされない場合には、受信信号に対して搭載されたアナログディレイパターンを掛けたものがAD変換されることもある。
高速に受信ダイナミックフォーカシングを実現するべく、本願の発明者の過去の発明である周波数領域において信号に複素指数関数の積を施してナイキスト(Nyquist)定理に基づく方法を使用せずに通常の高速な受信デジタルディレイを掛けると、AD変換のサンプリング間隔で決まる誤差を生じるため、コストをかけてAD変換器32bのサンプリング周波数を十分に高くするか、又は、高精度なデジタルディレイ(位相回転処理)による低速ビームフォーミングを行うしかなかった。これに対し、本発明によれば、上記の如く、受信信号を同期してデジタルサンプリングすれば、その種の近似誤差を生じることなく、しかも、高速な受信デジタルビームフォーミングを実施することができる。そのような受信デジタルビームフォーミングは、本願の発明者の過去の発明である周波数領域において複素指数関数の積を演算する方法に比べ、格段に高速でもある。
本発明においても、通常においても、1つのビームフォーミングを行うに当たり使用する受信開口素子20aにおいて受波した信号を受信ユニット32に送るための回線数が受信チャンネル数である。その点で、受信ユニット32は以下の通りであり、受信チャンネルの形態も様々なものがある。即ち、通常のビームフォーミングを1回行うに当たり、複数の受信開口素子20aにおいて生成される信号に異なるディレイを掛けるべく、受信ユニット32は、上記の如くアナログ又はデジタルのディレイパターンを搭載しており、操作者が入力装置40を用いて選択できる受信フォーカス位置やステアリング方向等を実現するディレイパターンが使用されることがある。
それらのパターンがプログラマブルであり、目的に応じて、使用するパターンや選択可能なパターンがCD−ROMやフロッピ―ディスク、又は、MO等の様々な媒体を通じてインストールされることもある。プログラムを起動して入力装置40よりインターラクティブにパターンを選択できる場合もあるし、ディレイ(パターン)値を直接に入力したり、その他、データの記録されたファイルを読み込ませて設定する場合等、様々な場合がある。特に、アナログディレイの場合には、使用するディレイ値がアナログ的に、又は、デジタル的に変更される場合もあるし、ディレイ回路又はパターンそのものが別のものに付け替えられるか、又は、別に切り替えられることもある。
また、受信ディレイがデジタルである場合には、各受信チャンネルのメモリ(又は記憶装置又は記憶媒体)32cに格納されている受信信号が読み出されて整相(加算)される。本実施形態の装置においては、デジタル信号処理ユニット33においてデジタル受信信号にディレイを掛けるか、デジタル回路のディレイデバイスにデジタル受信信号を通過させるか、又は、AD変換器32b及びメモリ(又は記憶装置又は記憶媒体)32cをオンにするための制御ユニット34からの取り込み開始の指令信号にディレイを掛けることができる。従って、デジタルディレイは、AD変換器32bの内部以降であれば任意位置において、又は、制御ユニット34において掛けることができる。
また、アナログディレイの場合には、受信開口素子20aにおいて受信信号を生成した後であれば任意の位置において、又は、制御ユニット34においてディレイを掛けることができる。アナログディレイパターンが使用される場合には、受信器32aは少なくとも1機で複数の開口素子の受信信号を受信できる。従って、受信信号の格納先には、各受信開口の受信信号が受信ディレイに応じた位置に格納されている場合があるし、受信ディレイが全く掛けられていないこともあり、それらを読み出して、デジタル信号処理ユニット33において後述のデジタル波動信号処理が実施されることがある(デジタル信号処理ユニット33は、通常の整相加算処理も実施できることがある)。
アナログ回路若しくはアナログデバイス、又は、デジタル回路若しくはデジタルデバイスの切り替えにより、パターンが選択されることもある。また、それらのディレイデバイスのディレイが、制御ユニット34による制御の下で変更される場合や、インストールや入力設定等を通じてプログラマブルであることもある。さらに、制御ユニット34内にディレイデバイスが設けられていることもあり、制御ユニット34が上記の如く計算機等により構成されている場合には、ソフト制御の下でディレイの掛けられた指令信号が制御ユニット34より直接に出力されることもある。
制御ユニット34やデジタルディレイは、汎用の計算処理能力を備えるデバイスや計算機、PLD、FPGA、DSP、GPU、若しくは、マイクロプロセッサ等、又は、専用のデジタル回路、若しくは、専用デバイスであっても良い。それらは高性能(マルチコア等)であることが望ましく、アナログデバイスや、AD変換器32b、メモリ32c、及び/又は、送信又は受信ビームフォーミング処理を行うデジタル信号処理ユニット33をも担うことがある。
また、デバイス間の通信回数や通信線路容量、配線、若しくは、広帯域な無線通信は重要であり、特に、本発明においては、それらの機能デバイスが1つのチップや基板に適切に装着される場合(脱着可能な場合)がある。その他に、1つのチップや基板にそれらが直接的に実装されること(積層を含む)もある。並列処理が行われることもある。デバイスが脱着不可能なものであると、計算機が制御ユニット34も兼ねるときにおいて、通常のプログラム制御の下で得られるセキュリティに比べて格段に高いセキュリティ性能を獲得することもできる。その反面、現行の法律では処理内容の開示が求められることが増えるであろう。制御ソフトウェアやディレイ値が、直接にコーディング又は入力されるものや、インストールされるものもある。デジタルディレイの掛け方はこれらに限られない。
本実施形態においては、装置本体30の制御ユニット34(図2)から送られてくる上記のトリガー信号を基に、AD変換の開始を指令するトリガー信号(指令信号)が、各受信チャンネルのAD変換器32bに供給される。この指令信号に従って、各チャンネルの受信アナログ信号のAD変換及びデジタル化された信号のメモリ(又は記憶装置又は記憶媒体)32cへの格納が開始される。送信ユニット31、受信ユニット32、及び、デジタル信号処理ユニット33は、1フレーム分の受信信号が全て格納されるまで、制御ユニット34による制御の下で、送信開口位置や送信有効開口幅、又は、送信ステアリング方向等を変えながら、さらに、波動やビームを送信する毎に受信開口位置や受信有効開口幅、又は、受信ステアリング方向等を変えながら、送信からデジタル信号を格納するまでの処理を繰り返し行い、1フレーム分の受信信号が格納される毎に、その受信信号群に対して本発明において使用されるデジタルの波動信号処理方法、即ち、デジタルビームフォーミング方法を施してコヒーレントな信号を生成する。
従って、本発明における装置が上記のアナログやデジタルのディレイを搭載しているとしても、必ずしも、ビームフォーミングのためのディレイとして使用されるとは限らず、メモリ、記憶装置、又は、記憶媒体を節約して有効に利用すると共にアクセス時間を短縮するべく、受信信号のAD変換及びそれらのメモリ(又は記憶装置又は記憶媒体)32cへの格納を開始するタイミングを遅らせるために使用される場合もある。ビームフォーミングにおける受信ディレイは、必ず、デジタル信号処理ユニット33で実施されるデジタル波動信号処理が主であり、本発明において、その節約とアクセス時間の短縮化の意味は大きい。また、送信時に物理的なビームフォーミング(例えば、計算機や専用デバイス等を用いたソフト的なビームフォーミングにおいて行うものとは別の、計算機や専用デバイス等を用いた物理的な処理であって、送信時又は受信時のそのときにおいて行うことのあるフォーカシングやステアリング、アポダイゼーション等の処理)を行わない古典的な開口面合成を行う場合には、送信ディレイは、デジタル波動信号処理において受信ディレイと同一のタイミングで掛けられる。
以上のことから、本発明において、受信ユニット32は、必ず、各受信チャンネルにおいて、独立した、アナログ又はデジタルのディレイ、受信器32a、AD変換器32b、及び、メモリ(又は記憶装置又は記憶媒体)32cを備え、必要に応じて、アナログ的な増幅又は減衰によるレベル調整やアナログフィルタ、その他のアナログ演算デバイスを備えるものである。即ち、本発明の装置において、受信ディレイによってこのデジタルディレイを実施するに当たり、ビームフォーミングのためのディレイを掛けない限りは、アナログディレイと同じく、クロック周波数に依存する様な誤差は生じない。
つまり、送信のデジタルディレイではクロック周波数で決まる誤差を必ず生じるため、コストをかけて高クロック周波数を使用して誤差を低減する必要があるが、受信のデジタルディレイではその様なことは必要がない。受信ディレイにデジタルディレイを使用すると、精度を低下させることなく、また、ディレイパターンの設定の自由度も高く、送信ディレイにアナログディレイを使用すると、精度が良く、クロック周波数を低くできる。アナログディレイは、アナログ的に変更可能であるし、デジタル制御可能なプログラマブルにすることも可能である。しかしながら、アナログディレイは、デジタルディレイに比べて自由度が低く、コストを下げる場合においては、アナログ回路として搭載されたディレイパターンを切り替えて使用するか、適切なものに付け替えて使用することもある。送信ディレイパターンの設定に高い自由度を要する場合には、高クロックでデジタルディレイを稼働させることが必要となる。
以下において、本発明のビームフォーミングそのものにより生成されるコヒーレント信号をイメージ信号と称する。受信有効開口素子やそれらの位置は、送信有効開口素子と同様に制御される(後述)。尚、このデジタルビームフォーミングは、1フレーム分の受信信号が格納される毎に行われるとは限らず、例えば、有効開口幅やそれ以外の所定数、又は、適宜、入力装置40等から入力されて設定される等のハードウェアのチャンネル数かプログラマブルなパラメータであることのある数の受信信号が格納されたタイミング毎に行われることもある(上記の様に様々な入力手段がある)。また、部分的にビームフォーミングされて生成されるイメージ信号を合成して、1フレームのイメージ信号とすることもある。
その場合に、走査方向に連続した位置において処理される受信信号がオーバーラップしたものであることがあり、それらの受信信号を合成する際には、単なる重ね合わせが行われる場合(周波数領域で重ね合わせされて逆フーリエ変換されることもある)や、適切に重み付けされて重ね合わせされる場合もあれば、単に接続される場合もある。格納された受信信号の数は、受信信号の取り込みのためのトリガー信号(制御ユニット34から届く指令信号)をカウントしてハードウェア又は制御プログラム内で確認することができるし、上記の通り、1フレーム毎に制御ユニット34が生成する1フレームのデジタル波動信号処理を開始させる指令信号を同様にして確認することができ、適切に1フレームのイメージ信号が連続的に生成される。
実現できる最高のフレームレートは、実施するビームフォーミング形態に依存し、基本的に、波動の伝搬速度で決まるが、実際の応用上においては、1フレームのイメージ信号をデジタル計算するのに要する時間で決まる。従って、上記の部分的にイメージ信号を生成する処理を並列処理により実施することは有用である。また、上記の如く、本願の発明者が過去に開発した多方向開口面合成や、1つの送信ビームに対して複数位置における受信ビームや複数方向の受信ビームを生成すること、また、マルチフォーカスを実施することは有用であり、それらを高速に実施するために、並列処理を行うことは有用である。いずれも、上記の送信と受信を行うことを基礎として、1フレーム分又は部分的にビームフォーミングするための受信信号を格納し、後に詳述する本発明におけるデジタル波動信号処理を実施すれば良い。また、実時間でイメージ信号を生成できない場合には、フレームレートを下げる場合もあるし、オフラインで処理されることもある。
尚、受信アポダイゼーションは、各開口素子の受信チャンネルにおいて受信信号に対して重み付けを行うものであり、レンジ方向に関して可変であることがある。アナログ的に可変にすることも不可能ではないが、デジタル的に可変にすることは容易である。通常の受信ユニットにおいては、整相加算を行う際に、各位置や各レンジ位置等において実施され、可変であることが多いが、本発明における装置では、デジタル信号処理ユニット33において実施されることになる。一方、可変でないアポダイゼーションが実施されることは稀であるが、その場合には、開口素子によって生成した受信信号にアナログ的な増幅又は減衰によるレベル調整を行う際にアポダイゼーションが行われる。
アポダイゼーションとは別の意味であるが、開口素子の駆動信号の波動への変換効率(変換能)の校正データに基づいて、少なくともレベル校正が行われることもあるし、レベル校正と同時にアポダイゼーションも行われることがある。それらの処理を目的にすることもあるし、受信アナログ信号の波形のダイナミックレンジを非線形的に拡大したり圧縮することもあり、各受信チャンネルにおいて、非線形素子等、他のアナログデバイスが使用されることもある。それらの増幅器等を含み、使用されるアナログデバイスがプログラマブルであることもあり、その設定方法は、様々な形態を取り得る。他のパラメータと同様に、各種入力装置を使用して直接的に設定されることもある。通常、ディレイとアポダーゼーションは、受信ユニット32内において、同じか異なる階層レベルにおいて同じか異なる形態で実現されたものが実施されるものであるが、通常は整相加算器において、本発明においてはデジタル信号処理ユニット33において、自由度高く実施され得るものである。
受信有効開口内の各開口素子の受信チャンネルは、シフトレジスタやマルチプレクサ等のスイッチングデバイスを通じて切り替えられ、別の位置の有効開口が使用されてビームフォーミングを行いながら関心領域が走査されることがある。また、ディレイ素子のディレイ値が可変であることがあるし、ディレイパターン(ディレイ素子群)が切り換えられることもある。さらに、1つの有効開口において複数方向へのステアリングが行われることもあるし、適宜、開口位置や有効開口幅を変えながら、さらには、複数方向へステアリングも行われることもあり、単にメモリ、記憶装置、又は、記憶媒体を節約してアクセス時間を短縮することもある。頻繁に使用するデータを、適宜、読み書きの容易な小規模なメモリに格納する効果も大きい。
本発明において、その節約とアクセス時間の短縮化の意味は大きい。アポダイゼーションパターンを構成するアポダイゼーション素子群が切り換えられることもある。開口位置やレンジ方向、ステアリング方向に依存してビーム形状が調整されることもある。詳細には、アポダイゼーション値が零の受信素子はアクティブではなくオフであることを意味し、アポダイゼーションは有効素子のスイッチをも担い、有効開口幅をも決め得るものである(開口素子アレイ方向のアポダイゼーションの関数が矩形(rectangular)窓であればスイッチはオンであり、一定値でないときは重みの掛かったオンである)。従って、アポダイゼーション素子は、スイッチと同レベルのものである。
また、ディレイパターンやアポダイゼーションパターンが、複数のパターンを備える場合や、プログラマブルである場合に、送信対象からの応答やビームフォーミングの結果に基づいて、装置本体30内のデジタル信号処理ユニット33において、伝搬過程の媒体における波動の減衰や散乱(前方散乱や後方散乱等)、透過、反射、屈折、又は、音速の周波数分散や空間分布等が計算され、各開口から送信して各開口において受信する波動のディレイや強度、ビームや波面のステアリング方向、又は、アポダイゼーションパターン等が、最適化されることがある。
尚、古典的な開口面合成においては、全受信素子が受信器32aを含む受信チャンネルを備えている場合もある。通常、開口面合成は、整相加算器において受信アポダイゼーションと同時に実施されるし、本発明においては、デジタル信号処理ユニット33において、開口面合成が受信アポダイゼーションと同時に実施されることもある。
また、上記の送信ユニット31や受信ユニット32においてパラメータとなる超音波周波数や帯域幅、符号、ディレイパターン、アポダイゼーションパターン、信号処理を目的としたアナログデバイス、有効開口幅、フォーカス位置、ステアリング方向、及び、ビームフォーミングを実施する上で必要とする送信と受信の各々の回数等は、ユニット内の各機能デバイスにCD−ROMやDVD、フロッピ―ディスク、又は、MO等の様々な媒体を通じてインストールされることもある。
プログラムを起動して入力装置40からインターラクティブにそれらを選択できる場合もあるし、数値を直接に入力したり、入力装置40の操作パネルでそれらを選択したり、その他、データが記録されたファイルを読み込ませて設定する場合等、様々な場合がある。ディップスイッチ等を使用してそれらを定めることも可能である。ユニットの取り換えや切り替えによる場合もある。また、計測対象を選択したり、使用するトランスデューサを装置に装着すると、それらを認識して、推奨されたパラメータの下で装置が自動的に動作することもある。その後の調整も可能である。また、通常の受信ユニットの機能デバイスを搭載しておくと、適宜、本発明の装置を使用して得られるイメージ画像と、通常の整相加算を通じた特に補間近似を含む処理により得られるイメージ画像とを比較することが可能である。
<入力装置>
入力装置40は、例えば、上記の如く各種パラメータ値を設定するために使用される。入力装置40そのものとしては、キーボード、マウス、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、又は、トラックボール等の様々なものがあり、それらに限られるものではない。汎用メモリ、USBメモリ、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、フロッピーディスク、又は、MO等の記憶媒体からオペレーションシステム(OS)やデバイスソフトウェアをインストールしたり、バージョンアップしたり、各種パラメータ値を設定したり、更新したりすることもある。記憶媒体からデータを読み取れる各種デバイスを入力装置40が備えているか、又は、入力装置40がインターフェースを備えて、各種デバイスが必要に応じて装着して使用される。
入力装置40は、本実施形態に係る装置の各種動作モードのパラメータを設定するだけでなく、動作モードの制御や切り替えにも使用される。操作者がヒトである場合には、それらの入力装置40は、いわゆる、マン・マシン・インターフェースにもなるが、必ずしもヒトにより制御されるとは限らない。上記の如く、パラメータ値やデータ、又は、制御信号を、他装置から各種規格及びコネクタを通じて受信して、あるいは、有線又は無線通信(即ち、少なくとも受信機能を持つ通信機器)を通じて受信して、同効果が得られること等もあり、上記の例に限られるものでもない。専用か通常のネットワークが使用されることもある。
それらの入力されたデータは、装置内部又は外部のメモリ、記憶装置、又は、記憶媒体に格納され、装置内の機能デバイスは、その格納されたデータを参照して動作する。あるいは、装置内の機能デバイスが専用のメモリを搭載している場合には、それにデータが書き込まれて動作設定がソフト的に決められるか、若しくは更新され、又は、ハード的に設定されるか、若しくは変更されることもある。装置内の計算機能が動作して、入力されたデータを基に、時に装置のリソースを勘案し、最適化された設定パラメータが算出されて使用されることもある。動作するモードが指令によって定められることもある。また、計測対象の波動(波動の種類や特徴、強度、周波数、帯域幅、又は、符号等)や、伝搬する対象や媒体(伝搬速度、波動に関わる物性値、減衰、前方散乱、後方散乱、透過、反射、屈折等、又は、それらの周波数分散等)に関する付加情報が与えられ、適切に受信信号がアナログ処理又はデジタル処理されることもある。
<出力装置>
出力装置50として代表的なものは表示装置であるが、表示装置は、生成されたイメージ信号を表示するだけでなく、その他、イメージ信号を基に計測された様々な結果を数値やイメージ等として表示するのに使用される。イメージ信号は、計算処理により画像表示又は動画又は静止画のフォーマットに変換(スキャンコンバート)されるが、グラフィックアクセレータが使用されることもある。輝度画像(グレー画像)又はカラー画像が表示され、輝度やカラーの表す意味が目盛り(bar)やロゴ表示されることがある。その他、結果は、鳥瞰図で表示されたり、グラフ表示されることもあるし、結果の表示方法はそれらに限られない。
結果が表示される際には、各動作モードと共に、その動作モードが稼働している際の各種パラメータ値やパターン(名)が適切にロゴ又は文字として同時に表示されることもある。また、操作者又は他の装置から入力される計測対象に関する補足情報や各種のデータが表示されることもある。また、表示装置は、入力装置40を用いて各パラメータ値やパターンを設定する際に使用されるGUI(Graphical User Interface)を表示するために使用されることもあり、また、タッチコマンドスクリーンを使用することにより描出されるイメージの任意位置や任意範囲を指定して拡大表示させたり、各種の数値を表示させたりする際にも使用されて、入力装置40の一端を担うこともある。
表示装置としては、CRT、液晶、又は、LEDを用いたもの等の様々なものが使用されるが、その他、専用の3次元表示装置等が使用される等、それらに限られない。また、出力データは、直接的にヒトが解釈や読影して使用するものとは限らず、装置本体(計算機)が所定の校正データや計算に基づいて出力データを理解してその結果を表示することもあるし(例えば、受信信号のスペクトル解析から計測対象の組成や構造を理解する等)、出力データが他装置に出力されて他装置で解釈され、さらには同装置(例えば、ロボット等)又は別の装置が出力データを応用することもある。
1つの装置が複数種類の波動を受信してイメージ信号を生成し、データマイニングや統合(fusion)等が行われることもあるし、別の装置を使用してその種の処理が行われることもある。生成されたイメージ信号の特徴(強度、周波数、帯域幅、又は、符号等)が解析されることもある。このように、本実施形態に係る装置で得られたデータは、他装置において使用されることがあり、実質的に、少なくとも送信機能を持つ通信機器も出力装置50の1つとなることがある。専用又は通常のネットワークが使用されることもある。
<記憶装置>
生成されたイメージ信号やイメージ信号を基に計測された様々な結果(数値やイメージ等)は、出力装置50にもなる装置内部又は外部のメモリ、記憶装置、又は、記憶媒体に格納される。ここでは、それらを「記憶装置」として、表示装置から区別する。図2等には、外部記憶装置60も示されている。イメージ信号を格納する際には、動作モードや設定パラメータ値、操作者又は他の装置から入力される対象に関する補足情報、又は、各種のデータが、イメージ信号と共に格納されることがある。記憶装置としては、汎用又は特殊なメモリ、USBメモリ、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−R(W)、DVD−R(W)、ビデオレコーダ、又は、画像データ取り込み装置等が使用されるが、記憶装置はそれらに限られない。記憶装置は、格納するデータ量や書き込みや読み出し時間等を含め、その応用に合わせて適切に使用される。
過去に格納したイメージ信号やその他のデータを記憶装置から読み出して再生することもあるが、主たるところとしては、記憶装置は、OSやデバイスソフトウェア、又は、設定パラメータが格納されるためのものとして重要である。各機能デバイスが専用の記憶装置を備えていることもある。脱着できる記憶装置は、他の装置で使用されることもある。
装置本体30は、記憶装置に格納されたイメージ信号を読み出して高次のデジタル信号処理を施し、イメージ信号の再合成(線形処理や非線形処理による周波数変調や広帯域化、又は、マルチフォーカス等々)、イメージ信号の画像処理(超解像や強調、平滑化、分離、抽出、又は、CG化等)、対象の変位や変形、又は、その他の様々な時間変化等々、各種の計測を行い、イメージや計測結果を出力することもあり、それらが表示装置に表示されることもある。
また、それらの格納される計測結果には、波動の減衰や散乱(前方散乱や後方散乱等)、透過、反射、屈折が含まれ、それらが読み出され、イメージ信号を生成する各種パラメータの最適化に使用され、記憶装置に格納されて使用されることもある。最適化は、制御ユニット34又はデジタル信号処理ユニット33に備えられる計算機能により行われる。
<制御ユニット>
制御ユニット34は、装置全体の動作を制御する。制御ユニット34は、各種計算機や専用デジタル回路等で構成され、デジタル信号処理ユニット33を兼ねることもある。基本的には、制御ユニット34は、入力装置40を介して入力された各種要求に応じて、記憶装置から読み込んだ各種制御プログラムや各種データに基づき、波動の送受信及び波動デジタル信号処理を行ってイメージ信号を生成するように、送信ユニット31、受信ユニット32、及び、デジタル信号処理ユニット33を制御する。
制御ユニット34が専用のデジタル回路で構成されている場合には、パラメータは可変であることもあるが、スイッチングして動作を切り替える場合を含め、決まった動作のみを実現できる場合がある。制御ユニット34として計算機を使用する場合には、バージョンアップを行う場合等を含めて、自由度が高い。制御ユニット34の基本は、送信と受信の開口素子数(各々のチャンネル数)や生成するビーム数、フレーム数(指定せずに停止させない限り動作を継続するものもある)、及び、フレームレート等に応じて、送信ユニット31及び受信ユニット32に繰り返し周波数や送受信位置情報等を提供することで、走査制御とイメージ信号の生成制御を行うことにあるが、上記の各種動作を実現させるべく、そのための制御も行う。また、様々なインターフェースが備えられ、様々なデバイスが連動して使用されることもある。
本実施形態に係る装置は、一般的なネットワークやセンサーネットワーク等のデバイスの1つとして使用されることがあり、ネットワークシステムの制御装置により制御されることがあり、また、ネットワークデバイスを制御する制御装置として使用されることもあり、ローカルに構成されたネットワークを制御する制御装置となることもある。そのためのインターフェースが備えられていることもある。
<ビームフォーミング方法>
次に、図2に示す装置本体30のデジタル信号処理ユニット33において実施される、複数の送受信開口素子(アレイ状になったものを含む)を使用する場合のデジタルフーリエ変換を通じた有用な高速なデジタルビームフォーミング方法について説明する。デジタル信号処理においては、適宜、計算過程において生成される途中データや繰り返し使用するデータが記憶装置や備え付けのメモリに格納されることがあり、また、同時相において複数のイメージ信号を生成する場合においても、記憶装置が効率良く使用される。小規模サイズのメモリが重宝することもある。
生成されたイメージ信号は、表示装置等の出力装置50に動画又は静止画として表示されたり、ハードディスク等の記録媒体を使用する外部記憶装置60に格納されることもある。尚、デジタル信号処理ユニット33が計算機である場合において、様々な言語を使用でき、アセンブラは有用であるが、特に、C言語やフォートラン(Fortran)等の高級言語プログラムの下で計算機を動作させる場合においては、コンパイル時に最適化や並列処理化を施して、高速な演算を実現することもある。マトラブ(MatLab)や各種の制御ソフトウェア、グラフィックインターフェースを備えたもの等、汎用性のものが使用されることもあるし、特殊なものが使用されることもある。
以下においては、一例として、波動が超音波である場合を通じて、本願発明の装置において使用されるビームフォーミング方法について説明する。本実施形態において使用され得るビームフォーミング方法は、次の方法(1)〜(7)であり、方法(7)においては、各種のビームフォーミング法に加えて、デジタル信号処理ユニット33において生成される代表的な観測データについて開示する。
方法(1)は、送信方向を偏向(ステアリング)する場合を含む平面波の送波及び/又は受信時の受信ビームフォーミングにおいて、フーリエ空間における波数マッチングを行うに当り、これまで必要とされてきた補間近似処理を要さない方法である。方法(1)は、偏向を実施した場合の波数マッチングにおいて、深さ方向と横方向とにおける波数マッチングを、偏向角度の余弦と正弦に関する複素指数関数を分けて受信信号に掛けることによって行う発明を含み、古典的なモノスタティック型の開口面合成と同様に計測結果が高精度化される。さらに、方法(2)として、モノスタティック型開口面合成による偏向ダイナミックフォーカシングの高速デジタル処理を開示する。
さらに、方法(3)として、マルチスタティック型開口面合成の高速デジタル処理を開示する。偏向を行うデジタルモノスタティック型開口面合成は、生成されるイメージ信号の多次元スペクトルの重心(中心)又は瞬時周波数が、偏向角度と搬送周波数とを用いて理想的に表されるもの(後述の通り、波数ベクトルが搬送周波数に偏向角度の正弦と余弦をかけたものを成分とする)となる様に、方法(1)と同様に波数マッチングを行うことにより、補間近似を要さずに高精度に実現できる。一方、マルチスタティック型開口面合成は、送信位置に対して複数個存在する受信位置の同一位置において受信したエコー信号を含むエコーデータフレームを受信素子の数だけ生成し、周波数領域において、各々のエコーデータフレームに上記のモノスタティック型のデジタル開口面合成処理を施し、それらの処理結果を重ね合わせたものを逆フーリエ変換して高精度に実現する。結果的に、方法(3)は、受信開口のチャンネル数と等しい回数のデジタル開口面合成処理でエコーデータを生成でき、いわゆる低空間分解能イメージ信号フレームを生成して重ね合わせて高空間分解能イメージ信号フレームを生成する従来のDAS(Delay and Summation)法よりも格段に高速である。
ちなみに、DAS法には、整相を空間領域において補間近似処理を交えて受信信号に高速に遅延(delay)を掛けるものと、周波数領域において遅延(delay)を高精度に掛けて実現するもの(本願の発明者の過去の実績)とがあり、空間領域において受信信号を加算(summation)する。前者は、高速であるが精度が低く、後者は、精度が高いが至極低速である。
方法(4)として、方法(1)や方法(3)のビームフォーミングを基礎として、送信固定フォーカス時におけるデジタルダイナミックフォーカス受信を高精度に行う方法を開示する。方法(5)として、コンベックスやセクタスキャン、又は、IVUSへの応用のために、極座標系において送受信したエコーデータに関してもヤコビ(Jacobi)演算を通じた処理を行い、補間近似処理なしに高精度に表示系のデカルト(Cartesian)座標系において直接的にエコーデータを生成できることを開示する。
また、方法(6)として、マイグレーション処理においても、本発明を用いて同様に補間近似処理を施さずに高精度に且つ高速に処理できることを開示する。方法(1)〜方法(5)の全てのビームフォーミング処理をマイグレーション処理に基づいて実施できる。最後に、方法(7)として、これらのビームフォーミングを基礎とする応用について開示する。これらにより、フォーカシングとステアリングを基礎とする任意のビームフォーミングを実施できるこことを実証できる。
方法(1):平面波送信及び/又は平面波受信のビームフォーミング
(i)平面波送波時のエコー信号(イメージ信号)
図5は、偏向平面波の送波の模式図である。平面波送波とは、リニアアレイ型トランスデューサにおいて全ての素子で同時に超音波を放射し、平面波を放射する方法である。波数がkであり、式(0)によって表される波数ベクトルの平面波を送波したときに(xは走査方向、yは深さ方向であり、受信有効開口素子アレイの位置をy座標の零とするデカルト直交座標系において)、位置(x,y)の音圧場は、式(1)によって表される。
ここで、A(k)は、送波したパルスの周波数スペクトルであり、式(2)の関係がある。
深さy = yiに反射係数f(x,yi)の散乱体があるとき、この散乱体からのエコー信号は、式(3)によって表される。
この式の角スペクトルは、式(4)によって表される。
探触子の周波数応答をT(k)とすると、角スペクトルの原理に基づき、深さy = yiからのエコー信号の開口面(y = 0)における角スペクトルは、式(5)によって表される。
従って、それぞれの深さからの角スペクトルを加算することにより、式(6)によって表されるエコー信号の角スペクトルが得られる。
よって、式(7)及び式(8)として波数マッチングを行うことにより、この逆フーリエ変換により、エコー信号(イメージ信号)は、式(9)として表せる。
送信と受信とを逆に考えると、任意の送信ビームフォーミング(例えば、偏向平面波、偏向された固定フォーカシングビーム、開口面合成に基づくステアリングダイナミックフォーカシング、偏向していない波やビーム等、他に様々)を計測対象物に対して行った場合に、計測対象物から到来した波動を偏向角度θ(零度である場合を含む)の平面波として受波した状況を実現できる。この考え方は、これまでに開示されていない。この様に考えると、任意のステアリング角度(零度又は非零度)の任意のビームや任意の波の送信時に、同一又は異なるステアリング角度θ(零度又は非零度)で波動を受信することが可能である。さらに、任意の波動源や、任意の送信有効開口アレイ(例えば、受信有効開口アレイと同一又は受信有効開口アレイとは別の任意形状で任意方向の開口を持つもの、別の位置に存在するもの、又は、同一の物理開口にはあるが異なる位置の有効開口等)から送信される任意の波動を対象にして、受信開口で定める座標系において受信ビームフォーミングを行うことができる。
尚、平面波の送信時に偏向角度α(零度である場合を含む)にて物理的にステアリングを行って、方法(1)の偏向角度θ(零度である場合を含む)のステアリングをソフト的に施すと、偏向角度(α+θ)(最終的に生成される送信偏向角度はその平均)にて平面波をステアリングしたものとなる。このソフト的なステアリング(偏向角度θ)は、物理的な送信ステアリング(偏向角度α)を補強したり、純粋に平面波送波のステアリングをソフト的に実現するものであると考えることもできるし、平面波で受信ステアリングを行ったものと考えることもできる。
また、方法(1)において、送信時に、物理的な偏向角度α、又は、ソフト的な偏向角度θ、又は、両偏向角度α+θにて平面波をステアリングし、受信時にステアリング角度φにてダイナミックフォーカシングする場合には、方法(2)に記載のソフト的なステアリングを行えばよく、後述する(最終的に生成される偏向角度は送信偏向角度と受信偏向角度の平均である)。この場合、そのソフト的なステアリング(偏向角度θ)は、物理的な送信ステアリング(偏向角度α)を補強したり、純粋に平面波送波のステアリングをソフト的に実現するものと考えることもできるし、受信ダイナミックフォーカシング(偏向角度φが零度である場合を含む)に加えてソフト的に平面波で受信ステアリングを行ったものと考えることもできる。
これらの場合において、ソフト的な送信と受信とを逆に考えることができる。ソフト的な偏向平面波送信(偏向角度が零度である場合を含む)と受信偏向ダイナミックフォーカシング(偏向角度が零度である場合を含む)を入れ替えても処理は同一(等価)である。送信ビームフォーミングされて生成された信号を、物理的に偏向平面波(偏向角度が零度である場合を含む)で受波してビームフォーミングされたものと解釈することも可能である。通常、偏向有り無しに関わらず、物理的に送信ダイナミックフォーカシングを行うことは合理的ではないが、物理的に偏向平面波で受波したものとして解釈することもできる。
また、本法を用いて、任意の送信ビームフォーミング(例えば、偏向平面波、偏向された固定フォーカシングビーム、開口面合成に基づくステアリングダイナミックフォーカシング、偏向していない波やビーム等、他に様々)を実施できる。つまり、送信に平面波を用いた同処理により、物理的にビームフォーミングして生成された任意の波又はビーム(例えば、上記の例等)を扱うことが可能である。つまり、如何なる送信を行った場合でも、受信ビームフォーミング(ダイナミックフォーカシング等)を行える。それも、複数の送信を行った場合において、一度に処理できる。また、送信偏向角度(零度である場合を含む)に加えて、ソフト的に、送信又は受信における、平面波又はダイナミックフォーカシングのステアリング(ステアリング角度は零度である場合を含む)を施すことが可能である(最終的に生成される偏向角度は送信偏向角度と受信偏向角度の平均である)。また、上記の如く、送信と受信を逆に考えることも可能であり、様々な組み合わせのビームフォーミングが可能である。送信と受信の各々においてビームフォーミングを行い、ソフト的に、送受信共に平面波処理されることもある。後述の2次元アレイを用いた3次元ビームフォーミングにおいても同様である。
J.-y. Luらによって開示されている計算方法(非特許文献3、4)は、上記の理論に基づき、まず、受信信号を時間と空間に関して高速2次元フーリエ変換し、R(kx,k)を計算し、次に、式(7)により波数マッチングを行い、高速2次元逆フーリエ変換を行う(段落0352にも記載してある)。波数マッチングは、線形補間近似や最も近傍のデータそのもので近似することを通じて行われており、精度を得るために受信信号をオーバーサンプリングすることが求められる。高次の補間近似が行われることもあるし、sinc関数が用いられることもある。3次元の場合には、同様にして、高速3次元フーリエ変換と高速3次元逆フーリエ変換が用いられる。本発明は、波数マッチングを補間近似することなく行うことを1つの特徴としているが、段落0190〜0194に記載の如くに様々なビームフォーミングに応用する場合において、補間近似処理を行って高速に近似解を求めることがあることも特徴としている。
(ii)本発明による平面波の送信及び/又は受信時のエコー信号(イメージ信号)の計算手順
以下に、偏向角度θを有する平面波を送信及び/又は受信する場合について説明する。本発明において、波数のマッチングは、受信信号を空間(横方向)に関してフーリエ変換する前段階で、複素指数関数(式(9a))を掛けて、まず横方向に実施し、深さy方向に関しては、深さy方向に分解能を持たせるべく上記の横方向のマッチング処理を除いた複素指数関数(式(9b))を掛けると同時に、複素指数関数(式(9c))を掛けて行われる。無論、偏向角度θは、非零度だけでなく、零度のときでも使用できる。この処理は、先行技術文献には開示されていない。
図6は、偏向平面波送波時のデジタル信号処理を示すフローチャートである。計算手順は以下の通りである。まず、ステップS11において、式(10)に示すように、受信信号を時間tに関してフーリエ変換する(FFTがよい)。
但し、ωが角周波数(角振動数)、cが音速であるときに、波数k=ω/cである。これより、解析信号を得る。ここでは、上記の説明に合わせて、フーリエ変換として複素指数関数の核の符号が正である処理を示しているが、通常のフーリエ変換と同様に複素指数関数の核の符号を負として計算することも可能である。いずれにせよ、後に計算する逆フーリエ変換においては、必ず符号がフーリエ変換時とは逆の複素指数関数が使用される。他の方法(2)〜(7)においても、同様である。
次に、ステップS12において、偏向のための波数kxに対してマッチング処理を施し、式(10)に式(11)を掛け、ステップS13において、受信信号を横方向xに関してフーリエ変換(FFTがよい)することにより、式(12)が得られる。尚、時間tに関する高速フーリエ変換の結果(10)と複素指数関数(11)の積の計算には、直接に計算結果を生成する専用の高速フーリエ変換が有用である。
ちなみに、式(12)の結果は、直接に計算することでも得られる。
この2回のフーリエ変換により、受信信号は平面波成分に分解される。各平面波が任意の深さyに作る角スペクトルは、上記の通り、式(13)を掛けて位相をずらすことで求められる。
さらに、ステップS14において、式(14)を同時に掛けることで波数kyに対してマッチング処理を同時に行う。
ステップS15において、各深さyの角スペクトルを計算する。つまり、式(15)を掛けることにより、式(16)が得られる。
各平面波成分が深さyに作る音圧場は、これを横方向xに関して逆フーリエ変換(IFFT)することにより、式(17)として求まる。
これを複数の波数k成分(又は、周波数成分)を足し合わせることにより、イメージ信号が得られる。
ここで、波数k(又は、周波数)と空間周波数kxの積分は、順序を入れ替えることができる。従って、ステップS16において角スペクトルの波数k成分を足し合わせ、ステップS17において横方向の波数kxに関して逆フーリエ変換(IFFT)を行っても、ステップS18においてイメージ信号が得られる。この場合には、1回の逆フーリエ変換で計算ができ、計算がより高速である。他の方法(1)〜(6)についても同様である。偏向のための波数のマッチングは、式(11)及び式(14)によって行われる。周波数領域において補間近似を通じて波数マッチングする方法(非特許文献3、4)と異なり、本発明は、近似処理を行わないため、高精度に計算できる。物理的にも、数学的にも、最初のフーリエ変換時に波数マッチングを行うこともできるし、最後の逆フーリエ変換時に波数マッチングを行うことも可能である。他の方法(1)〜(6)についても同様である。
また、2次元開口素子アレイを用いて、任意方向に位置する波動源から計測対象物に向けて任意の波動が送信されて、計測対象物から到来する波動を平面波として受信して3次元の波動デジタル信号処理を行う場合には、例えば、平坦な受信開口素子アレイの開口の向きによって定まる軸方向y及びこれに直交する横方向x及びzの座標を用いるデカルト直交座標系(x,y,z)において、平面波として受信する方向と軸方向とが成す零度又は非零度の偏向角度が仰角θ及び方位角ψを用いて表される場合において、フーリエ変換は深さy方向と横方向xとzに関する3次元フーリエ変換が行われるが、上記の2次元の波動デジタル信号処理を行う場合と同様に、受信信号の3次元フーリエ変換R'(kx,k,kz)に対して、
と表される波数マッチングが以下の如くに補間近似せずに行われる。尚、2次元の場合と同様に、段落0190〜0194に記載の如くに様々なビームフォーミングに応用するに当たり、波数マッチングを式(7')と式(8')に従って補間近似処理を行って高速に行うことはあり、その場合、F(kx',ky',kz')が3次元逆フーリエ変換される。
波数マッチングにおいて補間近似処理をしない場合、まず、受信信号を軸方向yに関してフーリエ変換したものに波動の波数k及び虚数単位iを用いて表される複素指数関数(C21)を掛けることにより横方向x及びzに関する波数マッチングを行い、
さらに、その積を、軸方向yに関して分解能を持たせるべく横方向x及びzに関してフーリエ変換して得られた角スペクトルに、横方向x及びzに行われた波数マッチングの効果を除いて実施できる複素指数関数(C22)を掛けると同時に、複素指数関数(C23)を掛けることにより軸方向に関する波数マッチングを行い、ここで、横方向の波数がkx及びkzで表され、
補間近似処理を行うことなく波数マッチングを行うことによって、直接的にデカルト座標系においてイメージ信号を生成することができる。即ち、各平面波成分が深さyに作る音圧場は、これを横方向xとzに関する2次元逆フーリエ変換(IFFT)を行い、複数の波数k成分(又は、周波数成分)を足し合わせることにより、イメージ信号を得る。無論、偏向角度が零度(即ち、仰角θ及び方位角ψが零度)やいずれかの少なくとも1つの角度が零度のときにも使用できる。
尚、上記の計算においては、送信信号で決まる帯域か、受信信号のSN比を勘案して定められる帯域内の信号成分のみが計算対象となる。例えば、式(10)を基に解析信号を生成する際に、必要な帯域内の信号だけが生成されて格納されることがある(ダウンサンプリングに該当する)。本発明の方法又は装置においては、波数マッチングを行う際に補間近似処理を行わないが、エコー信号を深さ方向や横方向にオーバーサンプリングすることによって、混入するノイズに対して頑強となる効果がある。他の方法(1)〜(6)でも同様である。
また、式(13)〜(15)や式(C22)、式(C23)において、計算する深さy方向の位置座標や範囲、その座標の間隔等を定めることにより、任意の深さ位置や任意の深さ方向の範囲の、又は、深さ方向に任意の間隔や任意の密度の、イメージ信号を補間近似処理を行うことなく生成できる(段落0206に記載のダウンサンプリングの有無に関係なしに、アップサンプリングでき、そのダウンサンプリングは、ナイキスト定理が満足される範囲で有効である。但し、故意に、高周波の信号成分を帯域外処理(フィルタリングアウト)することはある。また、段落0206に記載のダウンサンプリングの有無に関係なしに、ナイキスト定理が満足される範囲ではダウンサンプリングも可能である)。また、式(17)等の横方向の逆フーリエ変換において、計算する横x方向の位置座標や範囲を定めることにより(必要に応じて、本願の発明者の過去の発明である複素指数関数の乗算を用いた位相回転によるアナログ的な空間のシフティングを施す)、任意の横方向の位置や任意の横方向の範囲のイメージ信号を補間近似処理を行うことなく生成でき、また、同逆フーリエ変換において、高周波帯域の周波数座標を除いて横方向に狭帯域化させたり(空間的に低密度化)、角スペクトルの零詰め処理によって横方向に広帯域化させること(空間的に高密度化)を通じて、横方向に任意の間隔や任意の密度のイメージ信号を、補間近似を行うことなく生成できる。
この様にして、所望する任意の位置や範囲、間隔、密度で、イメージ信号を生成できる。つまり、受信信号のサンプリング間隔よりも短く、また、受信開口素子の間隔よりもピッチの短い間隔で、イメージ信号を生成することもできる。また、各々の方向に関して、イメージ信号の間隔を粗くすることもできる(但し、ナイキスト(Nyquist)定理は満足されなければいけない)。尚、式(7)と(8)、又は、式(7')と(8')に従って波数マッチングを補間近似を通じて行う場合に高精度化するためには、計算量が増えることを代償に、適切なオーバーサンプリングの下で処理する必要がある。その場合、補間近似処理を行わない場合に任意位置の信号を選択的に生成できるのとは異なり、フーリ変換のデータ数が増えることには注意が必要である。他の方法(1)〜(6)においても同様である。
コンベックス型トランスデューサやセクタスキャン、又は、IVUSにおいて、極座標の半径r方向に送信又は受信をして角度θ方向に広い波(円筒波)を生成する場合(図7)や、他の開口形状において、後方に設置する仮想源を用いて同ビームフォーミング(円筒波)を行う場合(図8A(a)〜(c)を参照、特許文献7や非特許文献8等)には、上記の方法において、デカルト座標(x,y)を極座標(r,θ)に読み替えて処理をすれば良く、極座標(r,θ)においてイメージ信号を生成することができる。球座標系における球面波に関しても同様である。また、図8B(d)〜(f)に示すが、上記の様な極座標系で表される物理開口素子アレイや任意の開口形状の物理開口を用いて、任意距離位置において、送信又は受信、又は、両者の平面波を生成し、同様にしてビームフォーミングを行うこともある。その距離位置に、仮想的なリニア型開口アレイ(又は、平面波)を生成したことと等価であり、その距離位置を零とすると、仮想的に、リニア型開口アレイを用いた場合に該当する。距離位置は、物理開口の前方以外に、後方にも設定でき、それらの位置に、仮想的なリニア型開口アレイ(又は、平面波)を生成することもできる。仮想的なリニア型開口アレイは、仮想源ではなく、仮想受信器として使用されることもあるし、仮想源を兼ねることもある。
図7は、極座標(r,θ)において角度θ方向に広い波を半径r方向に送波又は受波する場合(円筒波送波)の模式図である。図7(a)は、コンベックス型開口素子アレイを用いた円筒波送波を示しており、図7(b)は、セクタ型開口素子アレイを用いた円筒波送波を示しており、図7(c)は、IVUS(円形型)開口素子アレイを用いた円筒波送波を示している。尚、図7(b)には、開口が円弧状のものが示されている、開口が平坦なものが使用されてセクタスキャンが行われることもある。また、これらの開口を使用されて、フォーカスビームが生成されることもある。
図8Aは、任意の開口形状の物理開口の後方に設置された仮想源を用いて極座標系(r,θ)の角度θ方向に広い波を半径r方向に送波する場合(円筒波送波)の模式図である。図8A(a)は、リニア型開口素子アレイを用いた円筒波送波を示しており、図8A(b)は、コンベックス型開口素子アレイを用いた円筒波送波を示しており、図8A(c)は、その他の任意開口素子アレイを用いた円筒波送波を示している。受波が同様に行われることもある。また、図8B(d)〜(f)は、極座標系で表される物理開口素子アレイや任意の開口形状の物理開口を用いて、任意距離位置において、送信平面波を生成する場合を示している(図中はコンベックス型開口素子アレイを物理的に用いた場合)。その距離位置を零とすると、仮想的に、リニア型開口アレイを用いた場合に該当する(図8B(d))。距離位置は、物理開口の後方(図8B(e))以外に、前方(図8B(f))にも設定でき、それらの位置に、仮想的なリニア型開口アレイ(又は、平面波)を生成することもできる。受波が同様に行われることもある。図8B(g)は、特殊な場合として、例えば、リニアアレイ型トランスデューサを物理的に用いる場合において、物理開口後方の仮想源を用いて円筒波を生成する場合を応用し、任意距離位置に、横方向に拡がった、平面波、又は、仮想的にリニアアレイ型トランスデューサを生成した場合の模式図である。受波が同様に行われることもある。仮想的なリニアアレイ型トランスデューサは、仮想源ではなく、仮想受信器として使用されることもあるし、仮想源を兼ねることもある。
送信フォーカスする場合には、非特許文献6に報告があり、同様に、極座標(r,θ)において結果が得られる。例えば、広いFOVが得られる効果がある。非特許文献6とは別の方法として、本発明の1つの特徴として、本方法(1)をこれらに用い、さらに、これらの極座標系(r,θ)の座標位置においてもステアリング角度を持つステアリングビームを生成することが可能であり、以下の方法(2)〜(4)及び(6)を用いる場合にも同様であり、それらにおいて、デカルト座標(x,y)を極座標(r,θ)に読み替えて処理をすればよい。但し、これらのビームフォーミングを行った場合には、表示系のデカルト座標系の座標位置における信号値を得るべく、補間処理を行う必要が有り、周波数領域における複素指数関数の積による位相の回転を用いた厳密な補間処理を、時間をかけて行うか、又は、近似誤差を伴うが短時間の処理として補間近似処理が施される。球座標においても同様である。
また、極座標系においてビームフォーミングを行うこれらの場合において、変位計測を行うこともでき、例えば、半径r方向又は角度θ方向の変位成分の計測を行うことができ、若しくは、両方向の変位成分から成る変位ベクトルを計測することができる。但し、計測後に表示系のデカルト座標系の座標位置における計測結果を得るべく、補間処理を行う必要が有り、エコー信号の補間時と同様に、周波数領域における複素指数関数の積による位相の回転を用いた厳密な補間処理を、時間をかけて行うか、又は、近似誤差を伴うが短時間の処理として補間近似処理が施される。球座標系においても同様である。
変位計測の結果から、微分フィルタを用いた偏微分処理により、歪や歪速度(テンソル)、速度(ベクトル)、加速度(ベクトル)が求められ、さらに、力学的な特性(例えば、体積弾性率やずり弾性率(例えば、非特許文献7)、その他、非等方性媒体の弾性率テンソル等)、温度等が演算を通じて求められることがある。補間近似を実施する場合には、近似処理を施してデカルト座標系でそれらの計算を行うと計算時間を短縮化できることが多いが、極座標系において演算を実施して結果を得、それを補間近似して表示すると良く、誤差の伝搬を小さくできる。つまり、変位計測後の処理過程において生じる誤差としては、最後の表示データを得る際の補間近似のみとなる(同一の変位データから複数の表示データを得る場合はある)。
尚、上記の如く、補間処理を通じて、エコー信号をデカルト座標系にて表し、変位計測および一連の計測を実施することもできる。補間処理において近似処理を行うと誤差を生じるが、全体に要する演算量は少なくて済む。その他のエコー信号の処理に基づく計測を行う場合においても、上記の如く、処理できる。2次元アレイを用いた3次元ビームフォーミングにおいても同様である。
また、上記のいずれに関しても、極座標系以外の任意の直交座標系を対象として、同様な処理が可能である。
一方、同じく、コンベックス型トランスデューサやセクタスキャン、又は、IVUS等において、極座標(r,θ)において角度θ方向に広い波を半径r方向に送波又は受波(円筒波)する場合(図7)と、任意の開口形状の物理開口の後方に設置された仮想源を用いて図7と同一の極座標系(r,θ)の角度θ方向に広い波を半径r方向に送波(円筒波)する場合(図8A(a)〜(c)を参照)とにおいて、直接にデカルト座標においてイメージ信号を生成する方法は、それぞれ、方法(5)及び方法(5−1)、(5−1')等として説明される。また、上記の様な極座標系で表される物理開口素子アレイや任意の開口形状の物理開口を用いて、任意距離位置において、送信又は受信、又は、両者の平面波を生成し、同様にしてビームフォーミングを行うこともあり、デカルト座標系において、イメージ信号が生成されることがある(図8B(d)〜(f)を参照)。その距離位置に、仮想的なリニア型開口アレイ(又は、平面波)を生成したことと等価であり、その距離位置を零とすると、仮想的に、リニア型開口アレイを用いた場合に該当する。距離位置は、物理開口の後方以外に、前方にも設定でき、それらの位置に、仮想的なリニア型開口アレイ(又は、平面波)を生成することもできる。仮想的なリニア型開口アレイは、仮想源ではなく、仮想受信器として使用されることもあるし、仮想源を兼ねることもある。同様に、ビームフォーミング方法は、方法(5)及び方法(5−1)、(5−1')等として説明される。これらの場合には、エコー信号のイメージング及び変位計測等を、一貫して、同一のデカルト座標系において実施できる。極座標系においても同様である。この様な場合において、エコー信号や計測値をデカルト座標系から極座標系に補間処理を通じて変換することも同様に可能である。2次元アレイを用いた3次元ビームフォーミングにおいても同様である。送信フォーカシングが行われることもある。
また、上記のいずれに関しても、極座標系以外の任意の直交座標系を対象として、同様な処理が可能である。また、仮想源や仮想受信器は、上記の通り、物理開口の後方に設置されるとは限らず、開口の前方に設置されることもあり、物理開口の形状に依らずに、任意に設置されうるものである(特許文献7、非特許文献8)。このように、本発明は、上記に限られるものではない。また、これらのビームフォーミングにおける波数マッチングにおいて、補間近似処理を行って、高速に近似解を求めることもある。また、いずれも、本方法(1)〜(7)において、同様にして、処理されることがある。
また、本方法(1)〜(7)においては、受信信号に対し、送信又は受信、又は、両方のアポダーゼーション処理は、線形処理であるがゆえに様々なタイミングで実施できる。つまり、受信時にハード的に行うか、又は、受信後においてソフト的に様々なタイミングで実施できる。送信時に物理的にアポダイゼーションされることがあることは上記の通りである(以下、同様)。
尚、当然のことであるが、エコー信号ではなく、透過波を受信してビームフォーミングする場合には、座標yは、往復距離の半分(伝搬時間tを用いてct/2と表される)ではなく、受信開口素子アレイで決まる座標系において、開口素子からの距離(ct)である。
次に、開口面合成を行う場合について説明する。開口面合成にはモノスタティック型とマルチスタティック型がある。
方法(2):モノスタティック型開口面合成
図9は、モノスタティック型開口面合成の模式図である。モノスタティック型開口面合成は、アレイの1つの素子から超音波を放射し、その素子自身でエコーを受信するものである。開口面合成においても、図6の手順で波数マッチングを行うことにより、エコー信号(イメージ信号)を計算できる。
モノスタティック型開口面合成では送受信を同一の素子で行うため、送信時の散乱体への音の伝播経路と、受信時の散乱体の反射音の伝播経路は同じである。よって、受信有効開口素子アレイの位置を軸方向y座標の零とするデカルト直交座標系において、ステアリングを実施しないとき(θが零度)は、式(18a)に示すように、波数kを2倍とし(反射波のとき、s=2、以下、同様)、式(7)と式(8)で表される波数のマッチングを行う。透過波の場合には波数2kではなく、kを用いる(s=1、以下、同様)。
また、ステアリング角度θが非零度のときは、超音波信号の搬送周波数ω0を用いて表される波数k0(=ω0/c)を持つ波数ベクトル(0,k0)に対し、波数ベクトル(sk0sinθ,sk0cosθ)を多次元スペクトルの重心(中心)又は瞬時周波数として持つイメージ信号を生成するべくスペクトルのシフティングを行うビームフォーミングを行う(図10参照)。即ち、式(7)と式(8)において、式(18b)と表される波数マッチングを行う。
信号処理は、方法(1)と同様に行われ、特に、波数マッチングは、受信信号を空間(横方向)に関してフーリエ変換する前段階において、複素指数関数(式(9a))の代わりに超音波信号の搬送周波数ω0を用いて表される複素指数関数(式(19a))を掛けて、まず横方向に実施し、深さy方向に関しては、深さy方向に分解能を持たせるべく、複素指数関数(式(9b))の代わりに横方向のマッチング処理(式(19a))を除いた複素指数関数(式(19b))を掛けると同時に、複素指数関数(式(9c))の代わりに複素指数関数(式(19c))を掛けて行われる。無論、偏向角度が零度のときにも使用できる。この処理は、先行技術文献には開示されていない。
また、例えば、エコー法(反射法)においては、送信ビームと受信ビームの偏向角度が異なる場合があり、その場合においては、送信ビームと受信ビームの各々の偏向角度をθtとθrとすると、式(7)と式(8)において、s=2の下で、式(18c)と表される波数マッチングを行う。
信号処理は、上記の送信ビームと受信ビームの偏向角度が等しい場合と同様に行われ、特に、波数マッチングは、受信信号を空間(横方向)に関してフーリエ変換する前段階において、複素指数関数(式(19a))の代わりに超音波信号の搬送周波数ω0を用いて表される複素指数関数(式(19d))を掛けて、まず横方向に実施し、深さy方向に関しては、深さy方向に分解能を持たせるべく、複素指数関数(式(19b))の代わりに横方向のマッチング処理(式(19d))を除いた複素指数関数(式(19e))を掛けると同時に、複素指数関数(式(19c))の代わりに複素指数関数(式(19f))を掛けて行われる。無論、偏向角度θtやθrが零度のときにも使用できる。この処理も、先行技術文献には開示されていない。
式(19a)〜(19c)と、式(19d)〜(19f)とにより、受信信号の2次元フーリエ変換R'(kx,k)に対し、式(7)と(8)の如くに、式(18b)と式(18c)の波数マッチングの各々を補間近似せずに行った状況を実現できる。これに対し、補間近似処理を行ってビームフォーミングを高速に行うことはあり、その場合、F(kx',ky')が2次元逆フーリエ変換される。式(18b)と式(18c)において、偏向角度を零度とした場合の式(18a)に対応する近似的な波数マッチング処理を含め、これらの近似処理も先行技術文献には開示されていない。
また、2次元開口素子アレイを用いて3次元の波動デジタル信号処理を行う場合には、例えば、平坦な受信開口素子アレイの開口の向きによって定まる軸方向y(受信有効開口素子アレイの位置のy座標を零とする)及びこれに直交する横方向x及びzの座標を用いるデカルト直交座標系(x,y,z)において、生成されるビームの方向と軸とが成す零度又は非零度の偏向角度が仰角θ及び方位角ψを用いて表される場合において、フーリエ変換は深さy方向と横方向xとzに関する3次元フーリエ変換を行い(軸方向y及び横方向x及びzの波数をそれぞれky、kx、及び、kzとする波数領域(kx,ky,kz)を考える)、上記の2次元の波動デジタル信号処理を行う場合と同様に、以下の如く処理される。
まず、波動の搬送周波数ω0を用いて表される波数k0(=ω0/c)を有する波数ベクトル(0,0,k0)に対し、波数ベクトル(sk0sinθcosψ,sk0cosθ,sk0sinθsinψ)を多次元スペクトルの重心(中心)又は瞬時周波数とするイメージ信号を生成するべくスペクトルのシフティングを伴う送信及び受信のダイナミックフォーカシングを行うべく、受信信号を軸方向yに関してフーリエ変換したものに、送信開口素子のy座標が零のときに値が2であり送信開口素子のy座標が非零のときに値が1であるパラメータs、波動の重心(中心)周波数k0、及び、虚数単位iを用いて表される複素指数関数(C41)を掛けることにより、横方向x及びzに関する波数マッチングを行い、
さらに、その積を、軸方向yに関して分解能を持たせるべく横方向x及びzに関してフーリエ変換して得られる角スペクトルに、横方向x及びzに行われた波数マッチングの効果を除いて実施できる複素指数関数(C42)を掛けると同時に、複素指数関数(C43)を掛けることにより軸方向に関する波数マッチングを行い、
補間近似処理を行うことなく波数マッチングを行うことによって、直接的にデカルト座標系においてイメージ信号を生成することができる。即ち、各平面波成分が深さyに作る音圧場は、これを横方向xとzに関する2次元逆フーリエ変換を行い、複数の周波数k成分を足し合わせることにより、イメージ信号を得る。無論、偏向角度が零度(即ち、仰角θ及び方位角ψが零度)やいずれかの少なくとも1つの角度が零度のときも計算できる。
これにより、受信信号の3次元フーリエ変換R'(kx,k,kz)に対し、式(7')と(8')の如くに、以下の波数マッチング[式(C44)]を行った状況を実現できる。上記は、この波数マッチングを補間近似せずに行うものであるが、式(C44)に従って、補間近似処理を行って高速に行うことはあり、その場合、F(kx',ky',kz')が3次元逆フーリエ変換される。この処理も、先行技術文献には開示されていない。
また、例えば、エコー法(反射法)においては、送信ビームと受信ビームの偏向角度が異なる場合があり、その場合において、各々の偏向角度が、(仰角,方位角)=(θt,ψt)と(θr,ψr)を用いて表されるとすると、信号処理は、s=2の下で、上記の送信ビームと受信ビームの偏向角度が等しい場合と同様に行われ、特に、波数マッチングは、受信信号を空間(横方向)に関してフーリエ変換する前段階において、複素指数関数(式(C41))の代わりに超音波信号の搬送周波数ω0を用いて表される複素指数関数(式(D41))を掛けて、まず横方向に実施し、深さy方向に関しては、深さy方向に分解能を持たせるべく、複素指数関数(式(C42))の代わりに横方向のマッチング処理(式(D41))を除いた複素指数関数(式(D42))を掛けると同時に、複素指数関数(式(C43))の代わりに複素指数関数(式(D43))を掛けて行われる。無論、送信ビームと受信ビームの偏向角度が零度(即ち、θt、ψt、θr、及び、ψrが零度)のときにも使用できる。この処理も、先行技術文献には開示されていない。
尚、送信と受信の両ビームフォーミングがソフト的に行われる開口面合成において、それらの送信と受信を入れ替えてビームフォーミングしても同処理である。
これにより、受信信号の3次元フーリエ変換R'(kx,k,kz)に対し、式(7')と(8')の如くに、以下の波数マッチング[式(D44)]を行った状況を実現できる。上記は、この波数マッチングを補間近似せずに行うものであるが、式(D44)に従って、補間近似処理を行って高速に行うことはあり、その場合、F(kx',ky',kz')が3次元逆フーリエ変換される。この処理も、先行技術文献には開示されていない。
開口面合成は、開口面合成用に収集したエコー信号(本方法(2)のモノスタティックだけでなく、方法(3)のマルチスタティックにおいても)を用いて任意のビームフォーミングを生成できる(実のところ、それらのデータに方法(1)や(4)〜(7)に記載の処理を施してもイメージ信号は生成できる)。方法(1)の平面波の処理においても、符号を用いることで、開口面合成処理を施すことができる。つまり、コーディングした平面波送波時の受信信号に対してデコーディングして開口面合成用の信号を得ることができる。
また、方法(1)において記載した通り、ダイナミックフォーカシングにおいて、ステアリングを行うことも可能である。方法(1)において、平面波の送信時に偏向角度α(零度である場合を含む)にて物理的にステアリングを行って、方法(1)の偏向角度θ(零度である場合を含む)のステアリングを施すと、ステアリング角度(α+θ)(最終的に生成されるステアリング角度はその平均)にて平面波をステアリングしたものと解釈できる。従って、方法(1)において、送信時に偏向角度α、又は、θ、又は、α+θにて平面波をステアリングし、受信時にステアリング角度φ(零度である場合を含む)にてダイナミックフォーカシングする場合には、本法(2)に記載の受信ステアリングを行えばよく、最終的に生成されるステアリング角度は送信偏向角度と受信偏向角度の平均である。尚、このソフト的な平面波のステアリング(偏向角度θ)は、方法(1)において記載した通り、物理的な送信ステアリング(偏向角度α)を補強したり、純粋に平面波送波のステアリングをソフト的に実現するものと考えることもできるし、受信ダイナミックフォーカシング(偏向角度φが零度である場合を含む)に加えてソフト的に平面波で受信ステアリングを行ったものと考えることもできる。
すなわち、2次元の場合には、(9a)と(19a)、(9b)と(19b)、(9c)と(19c)を各々にて組み合わせた、(F41)、(F42)、(F43)を使用して同様に処理すれば良い。
また、3次元の場合、すなわち、物理的に平面波を仰角αと方位角βの偏向角度(α,β)でステアリング送波したとき、又は、いずれかの少なくとも1つの角度が零度である場合において、ソフト的に、平面波を偏向角度(θ1とψ1)にてステアリングして偏向角度(θ2,ψ2)にてステアリングダイナミックフォーカシングを行う場合(いずれかの少なくとも1つの角度が零度である場合を含む)、(C21)と(C41)、(C22)と(C42)、(C23)と(C43)を各々にて組み合わせた(G41)、(G42)、(G43)を使用して同様に処理すれば良く、最終的に送信偏向角度と受信偏向角度の平均の偏向角度を生成できる。
ソフト的な送信と受信のビームフォーミングは入れ替えても処理は同じであり、入れ替えたビームフォーミングを行ったものと等価であることは方法(1)にて触れた通りである。つまり、これらの場合においても、ソフト的な送信と受信のビームフォーミングを逆に考えることができ、また、任意の物理的な送信ビームフォーミング(例えば、偏向平面波、偏向された固定フォーカシングビーム、開口面合成に基づくステアリングダイナミックフォーカシング、偏向していない波やビーム等、他に様々)において、ソフト的に、様々な組み合わせのビームフォーミングが可能である。物理的に生成した任意の波又はビーム(例えば、上記の例等)のステアリング角度(零度である場合を含む)に加えて、ソフト的に、送信又は受信における、平面波又はダイナミックフォーカシングのステアリング(ステアリング角度は零度であるを含む)を施すことが可能である。このソフト的な平面波のステアリングは、特に、物理的な送信ステアリングを補強したり、物理的に送信された任意の波動又はビームを純粋にステアリングさせるものと考えることもできるし、受信ダイナミックフォーカシング(偏向角度φが零度である場合を含む)に加えてソフト的に受信ステアリングを行ったものと考えることもできる。2次元アレイを用いた3次元ビームフォーミングにおいても同様である。その他にも、方法(1)に記載した通りである。
2次元の場合の式(F41)、(F42)、(F43)と、3次元の場合の式(G41)、(G42)、(G43)とを用いたビームフォーミングにおける波数マッチングを補間近似を通じて行い、高速に結果を得ることもある。
2次元の場合には、受信信号の2次元フーリエ変換R'(kx,k)に対し、式(7)と(8)と共に、式(18b)又は式(18c)の波数マッチングを補間近似を通じて行い[式(F44)]、F(kx',ky')が2次元逆フーリエ変換される。この近似処理も先行技術文献には開示されていない。
また、3次元の場合には、受信信号の3次元フーリエ変換R'(kx,k,kz)に対し、式(7')と(8')と共に、式(C44)又は式(D44)の波数マッチングを補間近似を通じて行い[式(G44)]、F(kx',ky',kz')が3次元逆フーリエ変換される。この処理も、先行技術文献には開示されていない。
また、コンベックス型トランスデューサやセクタスキャン、又は、IVUS等において、極座標(r,θ)において角度θ方向に広い波を半径r方向に送波又は受波(円筒波)する場合(図7)や、任意の開口形状の物理開口の後方に設置された仮想源を用いて図7と同一の極座標系(r,θ)の角度θ方向に広い波を半径r方向に送波(円筒波)する場合(図8A(a)〜(c)を参照)や、その極座標系において開口面合成用に収集したエコー信号に対して、方法(1)と同様に、デカルト座標(x,y)を極座標(r,θ)に読み替えて処理をすれば良く、デカルト座標系(x,y)や極座標(r,θ)においてイメージ信号を生成することができる。また、上記の様な極座標系で表される物理開口素子アレイや任意の開口形状の物理開口を用いて任意距離位置において送信又は受信の平面波を生成し、同様にビームフォーミングすることもある(図8B(d)〜(f)を参照)。その距離位置に、仮想的なリニア型開口アレイ(又は、平面波)を生成したことと等価であり、その距離位置を零とすると、仮想的に、リニア型開口アレイを用いた場合に該当する。距離位置は、物理開口の後方以外に、前方にも設定でき、それらの位置に、仮想的なリニア型開口アレイ(又は、平面波)を生成することもできる。仮想的なリニア型開口アレイは、仮想源ではなく、仮想受信器として使用されることもあるし、仮想源を兼ねることもある。他の送信ビームフォーミングを行った場合や、それらを球座標系において実施した場合においても同様である。一方、同じく、コンベックス型トランスデューサやセクタスキャン、又は、IVUS等を用いた場合や、任意の開口形状の物理開口の後方に設置された仮想源を用いた場合とにおいて、方法(5)に従って、直接にデカルト座標においてイメージ信号を生成することができる。また、上記の様な極座標系で表される物理開口素子アレイや任意の開口形状の物理開口を用いて任意距離位置において送信又は受信の平面波を生成し、同様にビームフォーミングすることもある(図8B(d)〜(f)を参照)。その距離位置に、仮想的なリニア型開口アレイ(又は、平面波)を生成したことと等価であり、その距離位置を零とすると、仮想的に、リニア型開口アレイを用いた場合に該当する。距離位置は、物理開口の後方以外に、前方にも設定でき、それらの位置に、仮想的なリニア型開口アレイ(又は、平面波)を生成することもできる。仮想的なリニア型開口アレイは、仮想源ではなく、仮想受信器として使用されることもあるし、仮想源を兼ねることもある。これらの場合、エコー信号のイメージング及び変位計測等を、一貫して、同一のデカルト座標系において実施できる。極座標系においても同様である。これらにおいて、方法(1)と同様に、任意の直交座標系において、又は、任意の直交座標系に変換して、同様に処理できる。これらにおいて、送信フォーカシングが行われることもある。また、仮想源や仮想受信器は、上記の通り、物理開口の後方に設置されるとは限らず、開口の前方に設置されることもあり、物理開口の形状に依らずに、任意に設置されうるものである(特許文献7、非特許文献8)。このように、本発明は、上記に限られるものではない。また、これらのビームフォーミングにおける波数マッチングにおいて、補間近似処理を行って、高速に近似解を求めることもある。
また、受信信号に対し、送信又は受信、又は、両方のアポダーゼーション処理は、線形処理であるがゆえに様々なタイミングで実施できる(受信時にハード的に、又は、受信後にソフト的に)。送信時に物理的にアポダイゼーションされることがあることは上記の通りである。尚、式(7)や式(7')を用いて波数マッチングを補間近似を通じて行う場合において高精度化する場合には、計算量が増えることを代償に、適切なオーバーサンプリングの下で処理する必要がある。その場合、補間近似処理を行わない場合に任意位置の信号を選択的に生成できるのとは異なり、フーリ変換のデータ数が増えることには注意が必要である。これらの処理は、方法(1)と同様に行え、他の方法(3)〜(7)においても同様にして行われる。
方法(3):マルチスタティック型開口面合成
図11は、マルチスタティック型開口面合成の模式図である。マルチスタティック型開口面合成は、アレイの1素子から超音波を放射し、エコーをその素子周辺の複数の素子で受信する方法である。1回の放射ごとに低分解能イメージ信号が得られ、複数に得られる低分解能イメージ信号を重ね合わせることにより高分解能のイメージ信号を生成する。この低分解能エコー信号を生成するべく、本発明を用いることもある。
上記の通り、通常は、各素子の放射毎に受信したエコー信号から低分解能エコー信号を生成し、それらを重ね合わせるのが従来の方法である。これに対し、本発明では、送受信位置の関係が同一の信号から成る信号群を1つのセットとして、1セット毎にデジタルのモノスタティック型開口面合成を施し、本方法(3)により複数に得られるそれらの低分解能イメージ信号を重ね合わせて処理を終える。実際には、線形処理である重ね合わせは横方向の逆フーリエ変換処理の前の周波数領域において実施でき、その方が高速であり、また、その重ね合わせを行うための横方向の位置合わせも、重ね合わせする際に、横方向のシフティング処理を行うための複素指数関数を掛けて横方向に位相を回転させることにより高速に行い、補間近似することなく、イメージ信号を生成できる。逆フーリエ変換は、高速逆フーリエ変換を1度実施すればよい。また、各々の低分解能エコー信号を生成するべく、横方向の逆フーリエ変換を施す際に、同時に横方向のシフティング処理を行うための複素指数関数を掛けて横方向に位相を回転させ、空間領域で重ね合わせることもできる。その場合、専用の高速逆フーリエ変換を実施してもよい。
但し、重要なことは、モノスタティック型開口面合成処理のプログラムを応用するに当たり、s=2の時、y=0の受信位置とy=0の送信位置のx方向の距離をΔxとすると、関心点の距離y(座標y)に対し、Δxだけ離れた位置で受信するまでの伝播経路の換算距離y'を計算して使用することであり、偏向角度が零度の時は、式(20a)によって表される換算距離を計算することである。また、s=1の時、y座標y=0の受信位置と非零y座標y=Yの送信位置のx方向の距離をΔxとすると、関心点の距離y(座標y)に対し、偏向角度が零度の時は、式(20b)によって表される換算距離を計算することである(送信位置と受信位置のy座標は逆に考えても良い)。
偏向角度がθ(零度を含む)の場合には、少なくとも受信のダイナミックフォーカシング(s=2のときは、送信のダイナミックフォーカシングも実現できる)が施されたビームを生成するマルチスタティックな開口面合成を行うビームフォーミング方法として、送信有効開口素子アレイ内の複数の送信開口素子の1つずつから波動を送信し、計測対象物から到来する波動を、異なる位置における複数の受信開口素子の少なくとも1つによって受信して受信信号を生成し(1つである場合も、本願発明の装置では処理可能である)、その送信開口素子は、波動が、計測対象物における少なくとも反射若しくは後方散乱によって生成されたもの(s=2)、又は、計測対象物における少なくとも透過、前方散乱、若しくは、屈折により生成されたもの(s=1)となる様に、受信信号を生成する受信開口素子のx座標に寄らずに任意のx座標を有し、さらに、零のy座標を有する、受信有効開口素子アレイ内のいずれかの受信開口素子を兼ねるか、又は、いずれの受信開口素子とも異なる複数の送信開口素子の1つずつ、又は、非零の一定のy座標を有する、受信有効開口素子アレイと対向する位置にある送信有効開口素子アレイ内の複数の送信開口素子の1つずつのことである(s=1のとき、送信位置と受信位置のy座標は逆に考えても良い)。
すなわち、ステアリングを行う場合には、上記の送信素子と受信素子との位置が同一の組み合わせより生成されるモノスタティック型開口面合成用データ群の各々に、方法(2)に記載のステアリング処理を施し、同様に処理すれば良い。送信と受信のステアリング角度が異なる場合も同様である。但し、偏向角度が非零度の時も、モノスタティック型開口面合成処理のプログラムを応用するに当たり、上記の偏向角度が零度の時と同様に、関心点の距離y(座標y)に対し、s=2の時は式(20a)、s=1の時は式(20b)によって表される換算距離を用いる。従って、方法(1)や(2)と同様に、偏向可能なプログラムにおいて、偏向角度を零度又は非零度に設定して、処理すれば良い。
また、送信には、方法(1)の平面波を送波した場合も処理できるし、その他、固定フォーカシング等の任意の送信ビームフォーミングを行った場合も処理できる。
また、別の方法として、送信位置と受信位置との間の横方向座標における距離Δxが等しい受信信号を並べて得られる受信信号群の各々に対して、送信と受信の開口素子のy座標が零(s=2)のときに、偏角θと送信と受信の開口の位置を含む関心点のy座標と距離Δxとを用いて表される送信開口素子と関心点と受信開口素子との間を結ぶ直線距離の半分の距離(式(20c))、又は、送信開口素子のy座標が非零(s=1、送信位置と受信位置のy座標は逆に考えても良い)のときに、偏角θと関心点のy座標と送信開口素子のy=Y座標と距離Δxとを用いて表される送信開口素子と関心点と受信開口素子との間の距離(式(20d))を用いて、上記のモノスタティック開口面合成において偏向角度を設定して得られるイメージ信号の各々を周波数領域において横方向の位置に関して補正し、それらを重ね合わせて補間近似処理を行うことなくイメージ信号を生成することができる。深さ方向の空間分解能は低下するが、大きなステアリング角度を生成できる。
また、2次元開口素子アレイを用いて3次元の波動デジタル信号処理を行う場合には、例えば、平坦な受信開口素子アレイの開口の向きによって定まる軸方向y及びこれに直交する横方向x及びzの座標を用いるデカルト直交座標系において、同様に処理することができ、生成されるビーム方向と軸方向とが成す零度又は非零度の偏向角度が仰角θ及び方位角ψを用いて表される場合において、送信有効開口素子アレイ内の複数の送信開口素子の1つずつから波動を送信し、計測対象物から到来する波動を、異なる位置における複数の受信開口素子の少なくとも1つによって受信して受信信号を生成し、その送信開口素子は、波動が、計測対象物における少なくとも反射若しくは後方散乱によって生成されたもの(s=2)、又は、計測対象物における少なくとも透過、前方散乱、若しくは、屈折により生成されたもの(s=1)となる様に、受信信号を生成する受信開口素子のx座標及びz座標に寄らずに任意のx座標及びz座標を有し、さらに、零のy座標を有する、受信有効開口素子アレイ内のいずれかの受信開口素子を兼ねるか、又は、いずれの受信開口素子とも異なる複数の送信開口素子の1つずつ、又は、非零の一定のy座標を有する、受信有効開口素子アレイと対向する位置にある送信有効開口素子アレイ内の複数の送信開口素子の1つずつのことである(s=1のとき、送信位置と受信位置のy座標は逆に考えても良い)。偏向角度が零度(ステアリング無し)の時も、非零度(ステアリング有り)の時も、上記の1次元開口素子アレイを用いた2次元の波動デジタル信号処理と同様に、送信素子と受信素子との位置が同一の組み合わせより生成されるモノスタティック型開口面合成用データ群の各々に、方法(2)に記載のステアリング有り又は無しの処理を施し、同様に処理すれば良い。送信と受信のステアリング角度が異なる場合も同様である。但し、重要なことは、偏向角度が零度(ステアリング無し)の時も非零度(ステアリング有り)の時も、モノスタティック型開口面合成処理のプログラムを応用するに当たり、s=2の時は、y=0の受信位置とy=0の送信位置のx方向(横方向)の距離をΔx、z方向(エレベーション方向)の距離をΔzとすると、2方向にΔxとΔzだけ離れた位置で受信するまでの伝播経路の換算距離y'を計算して使用することであり、式(20e)によって表される換算距離を計算することである。また、s=1の時は、y座標y=0の受信位置と非零y座標y=Yの送信位置のx方向の距離をΔx、z方向の距離をΔzとすると、式(20f)によって表される換算距離を計算することである(送信位置と受信位置のy座標は逆に考えても良い)。
また、送信には、方法(1)の平面波を送波した場合も処理できるし、その他、固定フォーカシング等の任意の送信ビームフォーミングを行った場合も処理できる。
また、別の方法として、送信位置と受信位置との間の横方向のx座標及びz座標における距離Δx及びΔzが等しい受信信号を並べて得られる受信信号群の各々に対して、送信と受信の開口素子のy座標が零(s=2)のときに、仰角θ及び方位角ψと送信と受信の開口位置を含む関心点のy座標と距離Δx及びΔzとを用いて表される送信開口素子と関心点と受信開口素子との間を結ぶ直線距離の半分の距離、又は、送信開口素子のy座標が非零(s=1、送信位置と受信位置のy座標は逆に考えても良い)のときに、仰角θ及び方位角ψと関心点のy座標と送信開口素子のy座標と距離Δx及びΔzとを用いて表される送信開口素子と関心点と受信開口素子との間の距離を用いて、上記のモノスタティック型開口面合成において偏向角度を設定して得られるイメージ信号の各々を周波数領域において横方向の位置に関して補正し、それらを重ね合わせて補間近似処理を行うことなくイメージ信号を生成できる。深さ方向の空間分解能は低下するが、大きなステアリング角度を生成できる。
また、未知の波動源又はそれが生成する波動の伝搬を表すイメージ信号を生成するべく(いわゆる、パッシブモード)、推定される未知波動源のy座標を送信開口素子のy座標に設定して、ビームフォーミングを行うと良い。試行錯誤的にy座標を変えながら、観測してみることも有効である。例えば、結像されるとか、空間分解能が高くなるとか、信号強度が強くなる、コントラストが増加するとか等の効果が得られるとよく、これらを判定基準として、一連の処理を自動的に行うことも可能である。
後述の通り、波動源位置又は送信開口素子に関する情報として、受信開口素子に対する位置、存在する位置の方向若しくは距離、開口の方向、又は、生成される波動の伝搬方向が与えられることがある。また、任意の波動源によって波動が生成された時刻が与えられることもある。他装置によって観測されることもあるし、波動源から、その受信信号そのものか、それよりも高速に伝搬する波動が発せられて伝えられること等がある。
受信信号に対して、多次元スペクトルの重心(中心)周波数又は瞬時周波数を求め、こりより、波動源の存在する方向又は波動の伝搬方向を求め、送信又は受信の偏向角度を調整して、ビームフォーミングが行われることもある。また、ビームフォーミングされたイメージ信号に対して、多次元スペクトルの重心(中心)周波数又は瞬時周波数を求め、これより、波動源の存在する方向又は波動の伝搬方向を求め、送信又は受信の偏向角度を調整して、ビームフォーミングが行われることがある。これらの処理を複数の受信開口又は受信有効開口において実施し、幾何学的に波動源の存在する位置又は方向を求めることもできる。これらの処理は有用であり、他のビームフォーミングに応用されることもある。
方法(2)のモノスタティック型開口面合成において説明した通り、本方法(3)のマルチスタティック型開口面合成においても、開口面合成用に収集したエコー信号を用いて任意のビームフォーミングを生成できる(実のところ、それらのデータに方法(1)や(4)〜(7)に記載の処理を施してもイメージ信号は生成できる)。モノスタティック型に比べてデータ量が豊富であることが有効であることがあるが、計算量は増大する。方法(1)の平面波の処理においても、符号を用いることで、開口面合成処理を施すことができる。また、コンベックス型トランスデューサやセクタスキャン、又は、IVUS等において、極座標(r,θ)において角度θ方向に広い波を半径r方向に送波又は受波(円筒波)する場合(図7)や、任意の開口形状の物理開口の後方に設置された仮想源を用いて図7と同一の極座標系(r,θ)の角度θ方向に広い波を半径r方向に送波(円筒波)する場合(図8A(a)〜(c)を参照)や、その極座標系において開口面合成用に収集したエコー信号に対して、方法(1)と同様に、デカルト座標(x,y)を極座標(r,θ)に読み替えて処理をすれば良く、デカルト座標系(x,y)や極座標(r,θ)においてイメージ信号を生成することができる。他の送信ビームフォーミングを行った場合や、それらを球座標系において実施した場合においても同様である。一方、同じく、コンベックス型トランスデューサやセクタスキャン、又は、IVUS等において、方法(5)に従って、直接にデカルト座標においてイメージ信号を生成することができる。その場合、エコー信号のイメージング及び変位計測等を、一貫して、同一のデカルト座標系において実施できる。これらにおいて、方法(1)と同様に、任意の直交座標系において、又は、任意の直交座標系に変換して、同様に処理できる。その他、方法(1)の段落0209〜0220等と、方法(2)の段落0238等に記載のビームフォーミングを同様にして行うことができ、例えば、仮想源や仮想受信機等を、物理開口の形状に依らずに、任意に設置できる(特許文献7、非特許文献8)。また、本発明は、その限りでは無い(以下、同様)。
また、上記の如く、深さ方向の空間分解能は低下するが、大きなステアリング角度を生成するべく、別の方法として偏向することが可能であるが、その場合にも、送信ビームフォーミングと受信ビームフォーミングのステアリング角度が異なる場合を同様に処理できる。送信開口素子と受信開口素子との横方向の距離、送信ステアリング角度と受信ステアリング角度、及び、透過型の場合には送信開口素子と受信素子との距離も用いて換算距離を計算すればよい。
方法(3)におけるいずれのステアリングも、基本的には、ソフト的に実施するものである。また、送信時にアポダーゼーションを実施することもあるし、実施しないこともある。また、受信アポダーゼーション処理も線形処理であるがゆえに様々なタイミングで実施できるが(ハード的に、又は、ソフト的に)、ソフト的に実施する場合には、例えば、生成する低分解能エコー信号の数を決める有効開口幅等に依存する計算量を加味して適切なタイミングで容易に実施可能である。例えば、低分解能エコー信号の生成を開始するための各セットを重み付けするか、又は、生成された低分解能信号に周波数領域又は空間領域においてアポダーゼーションできる。
また、方法(2)のモノスタティック開口面合成を応用するに当たり、波数マッチングを上記の補間近似を通じて高速に行うことがある。補間近似には、線形補間近似や最も近傍のデータそのもので近似することが行われることもあるし、高次の補間近似が行われることもあるし、sinc関数が用いられることもある。その補間近似を通じた波数マッチングを高精度化する場合には、計算量が増えることを代償に、適切なオーバーサンプリングの下で処理する必要がある。その場合、補間近似処理を行わない場合に任意位置の信号を選択的に生成できるのとは異なり、フーリ変換のデータ数が増えることには注意が必要である。
また、段落0241、0245、0248に記載されている、重ね合わせを行うための横方向の位置合わせにおいて、横方向のシフティング処理を行うための複素指数関数を掛けて横方向に位相を回転させる代わりに、より高速な処理を実現するべく、補間近似を通じて空間的なシフティング処理が行われることもある。補間近似には、線形補間近似や最も近傍のデータそのもので近似することが行われることもあるし、高次の補間近似が行われることもあるし、sinc関数が用いられることもある。この場合においても、その補間近似の精度を向上させる場合には、計算量が増えることを代償として、適切なオーバーサンプリングの下で処理する必要がある。
方法(4):固定フォーカシング
図12は、リニア型アレイを用いた固定フォーカシングの模式図である。固定フォーカシングとは、1点をフォーカス点とし、フォーカス点に同時に超音波が到達する様に、各素子に遅延を与える方法である。アレイ型トランスデューサの物理開口の一部又は全てを有効開口として受信して、計測対象が走査される。無論、ステアリングを行うこともある。送信と受信のステアリング角度が異なることもある。
固定フォーカシングは、イメージ信号の生成を、方法(1):平面波送信時のビームフォーミング、又は、方法(3):マルチスタティック型開口面合成、又は、方法(1)の平面波送信のビームフォーミングと方法(2)又は方法(3)の受信ダイナミックフォーカシングを組み合わせた方法により行う。その場合に、以下の3通りの方法がある。
(i)有効開口幅において得られた各受信信号を重ね合わせに対して、1回のイメージ信号生成処理を施す。
(ii)1回の送信毎の受信信号を用いていわゆる通常の低分解能イメージ信号を生成して、それらを重ね合わせる。
(iii)マルチスタティック型開口面合成と同様に、送受信の位置関係が同じものをセットにしてイメージ信号を生成して、それらを重ね合わせる。
コンベックス型トランスデューサやセクタスキャン、又は、IVUSにおいて極座標の半径r方向に送信及び受信を行う場合や、任意の開口形状において後方に設置する仮想源を用いてビームフォーミングを行う場合には、デカルト座標(x,y)を極座標(r,θ)に読み替えて処理をすれば良く、極座標(r,θ)においてイメージ信号を生成することができる。そのイメージの生成後に補間近似を必要とすることがあることは上記の通りである。球座標系を使用する送信と受信においても同様である。送信フォーカスする場合に近似処理を交えて行う処理の報告(非特許文献6)があり、同様に、極座標(r,θ)において結果が得られる。本願の発明者は、それらの極座標系や球座標系、また、任意の直交曲線座標系における送信又は受信のビームフォーミングの結果として、デカルト座標系において直接的にイメージ信号を生成する方法(5)、(5−1)、(5−1')、及び、(5−2)も発明した。その場合には、透過信号や反射信号、散乱信号、減衰信号等のイメージング及び変位計測等を、一貫して、同一のデカルト座標系において実施できる。これらにおいて、方法(1)と同様に、任意の直交座標系において、又は、任意の直交座標系に変換して、同様に処理できる。その他、方法(1)の段落0209〜0220等と、方法(2)の段落0238等に記載のビームフォーミングを同様にして行うことができ、例えば、仮想源や仮想受信機等を、物理開口の形状に依らずに、任意に設置できる(特許文献7、非特許文献8)。また、本発明は、その限りでは無い(以下、同様)。また、上記の如く、偏向することが可能であるが、物理的な送信ビームフォーミングとソフト的な受信ビームフォーミングの偏向角度が異なる場合も処理できる。ソフト的に送信ステアリングを施すこともできる。その場合に、偏向角度が他の偏向角度と異なる場合もある。受信時に物理的にビームフォーミングすることもできる。送信と受信を逆に解釈することもできる。送信時にアポダイゼーションされることもあるし、受信信号に対し、受信アポダーゼーション処理を行うこともある(受信時にハード的に、又は、受信後にソフト的に)。アポダイゼーションをソフト的に実施する場合には、方法(1)又は方法(3)に従って行う。平面波送信のビームフォーミングと方法(2)又は方法(3)の受信ダイナミックフォーカシングを組み合わせた方法を用いた場合も、同様にアポダイゼーションが行われる。
尚、平面波処理を行う方法(1)を用いる方法(4)の如何なる処理も、理論的に、そして、実際に、任意の物理的送信、又は、受信のビームフォーミングを行うことが可能であり、上記の如く処理すると、様々な組み合わせのビームフォーミングを実施できる(例えば、計算機や専用デバイス等を用いたソフト的なビームフォーミングにおいて行うものとは別の、計算機や専用デバイス等を用いた物理的な送信時と受信時のそれらのときにおいて行うことのあるフォーカシングやステアリング、アポダイゼーション等の処理を伴うものの各々又は両者を平面波送信と受信処理することができる。又は、上記の如く、送信と受信を逆に捉えて処理できる)。例えば、段落0107、0110、0363、0365、0366等に記載の、複数ビームの同時送信に関し、それらの複数のビームが、物理的に偏向有り又は無しにおいて、それらのビームが干渉する場合や干渉しない場合を含み、又は、対象の同時相において異なるタイミングでそれらのフォーカスビームフォーミングを行った場合、又は、それらの両受信信号が混在する場合において、物理的フォーカス(サブ開口幅、距離や深さ、位置等)が同一であるか異なるかに依らず、また、物理的な送信偏向角度が同一であるか異なるかに依らず、方法(4)の上記の処理は有効であり、特に、(i)の有効開口幅において得られた各受信信号の重ね合わせに対して1回のイメージ信号生成処理を施す方法を用いれば、高フレームレートを実現するものである。方法(4)においては、必ずしも波動が干渉しない位置(段落0030、0362等に記載)でビームフォーミングを行う必要は無く、オーバーラップするサブ開口を同時に用いる場合等、波動が干渉する場合でも、同処理で高フレームレートを実現できる。その際、実施する複数のフォーカスビームに施すソフト的な送信偏向角度と受信偏向角度との各々が同一であれば、上記の処理を行えば良い。その他、対象の同時相において、複数位置のフォーカシングや送信ダイナミックフォーカシングを行う場合等の複数回の送信を行う場合においても、受信信号の重ね合わせに同様に処理できる。対象の同時相において受信した受信信号群に関し、送信素子の位置やタイミングを基に時間が揃えられた状態の受信信号の重ね合わせであれば、その全てに本処理を施すことができる。
また、複数のフォーカスビームに施すソフト的な送信偏向角度と受信偏向角度とのいずれかが異なるものを含む場合には、同一のものに分け、同一のもの毎に同処理を施し、最終結果を求めるべく周波数領域における重ね合わせを施せば良い。1つの物理的な送信ビーム(偏向有り、又は、無し)に対して、複数の偏向受信ビーム(偏向角度0°も含む)を生成することもあり、同様に、処理される。異なる複数の物理的な偏向が行われる場合も、同一のものに分けて、各々の処理結果を得る場合があるし、分けずに、処理することもある。分けた場合には、空間領域又は周波数領域で重ね合わせが行われることがある。
物理的に多方向に送信した場合には、各々の送信偏向角度に対してソフト的に固有の送信と受信の偏向を施すことがあり、その場合には、送信ビームを周波数領域で分離するか、又は、独立成分分析(参考文献としては、比較的に古書であるTe-Won Lee, Independent Component Analysis: Theory and Applications, Springer, 1998等を初め多くの文献がある)等の分離処理を施し、処理することがある。アナログデバイスが使用されることもある。例として、各々の物理的な偏向角度と同一にソフト的な送信や受信の偏向角度を設定することがある。信号分離には、他にも記載してある(例えば、段落0368)。
ここでは、様々な固定フォーカシング処理を対象として、本法を実施することを記載したが、本法は、これらに限られず、他の送信ビームフォーミングが実施された場合にも使用できる。フォーカシング有り(有効開口に対して異なるフォーカス位置を複数個実現するマルチフォーカス)又は無し、偏向有り(異なる偏向角度を持つ複数のステアリング)又は無し、アポダーゼーション有り(位置毎に異なる場合を含む)又は無し、Fナンバー、送信超音波周波数又は送信帯域が異なる、受信周波数又は受信帯域、パルス形状が異なる、ビーム形状が異なる等、波動や超音波パラメータの異なる複数の送信又は受信を行う場合においても、同様に処理でき、それらを固定した1つのビームフォーミングでは生成できない新しい特徴を持ったビームフォーミングを実施できる。例えば、重ね合わせにより、複数のフォーカスを獲得することや、深さ方向にも横方向にも広帯域化(高分解能化)できることは公知であるが、これらの処理を高速に実施できる。高調波を得るべく、いわゆるパルス・インバージョン(Pulse inversion)法(超音波パラメータとして極性が異なるパルスを放射する)等を用いる場合には、受信信号を重ね合わせ、同様に、高速に処理できる。無論、ビームフォーミングを行った後に、受信信号を重ね合わせることもできる。2つ以上の複数のビームの受信信号を重ね合わせることもある。
上記の送信と受信を逆に考えることを基礎として、上記の処理を同時受信ビームフォーミングに施すこともある。また、上記の処理を送受信の両方に施すこともある。
尚、複数のビームフォーミングに分けて処理される場合には、並列処理されることがある。上記の偏向角度等の各種の波動や超音波パラメータや関心領域の位置等で、複数のビームフォーミングに分けられることがある。イメージングや計測、治療等、1つの受信信号が多目的に使用されることがあり、情報量の多い、例えば、高精度、高分解能である、透過信号や反射信号、散乱信号、減衰信号等をビームフォーミングにより生成してフィルタリング等の後処理により目的に合わせた信号が生成されることもあるが、目的に合わせて、適切なビームフォーミングが行われ、それらが並列処理されることもある。
固定フォーカスビーム等の任意のビームの他、任意の波(ビームフォーミングされていない波を含む)の送信時のビームフォーミング、複数のビームや波の送信時の重ね合わせ処理、及び、同時の複数ビームや波の送信時の処理を実施できる。つまり、単数又は複数の如何なる送信が行われた場合においても、受信ビームフォーミング(ダイナミックフォーカシング等)を一度に行える。複数のビームフォーミングは、多方向開口面合成法を用いて行われる場合もあり、その場合も同様にして高速に行われる。また、本発明は、それらの限りでは無い。
尚、本発明の特徴の1つには、波数マッチングにおいて、補間近似処理を行わないことにあるが、上記の方法(1)〜(3)に記載の方法を応用する本方法(4)でも、方法(1)〜(3)の場合と同様に波数マッチングにおいて補間近似処理を行うことがあり、それらに記載されている近似的な波数マッチングが行われて、高速にビームフォーミングが行われることがある。高精度に近似的な波数マッチングを行うには、計算量が増えることを代償として、受信信号を適切にオーバーサンプリングする必要がある。その場合、補間近似処理を行わない場合に任意位置の信号を選択的に生成できるのとは異なり、フーリ変換のデータ数が増えることには注意が必要である。
方法(5):極座標系におけるイメージ信号生成
方法(5)は、コンベックスアレイやセクタスキャン、IVUS等の2次元極座標系(r,θ)で超音波円筒波(の一部)を送信又は受信した場合のデカルト座標系におけるイメージ信号の生成法である(図7を参照)。方法(1)〜(4)、(6)を実施できる。
以下に、フーリエ変換の極座標表示について説明する。2次元フーリエ変換は、式(22)によって表される。
極座標系における受信エコー信号は、f(r,θ)と表されるので、式(23)が成立する。
従って、ヤコビ(Jacobi)演算を通じて、式(24)が得られる。この様にして、極座標系において表される波動をデカルト座標系において平面波成分(kx,ky)に分解できる。任意の直交曲線座標において表される波動も同様に、デカルト座標系において平面波成分(kx,ky)に分解できる。
方法(5−1):円筒波送波又は受信のイメージ信号生成
図13は、円筒波送波時のデジタル信号処理を示すフローチャートである。式(24)より、開口上の角度θ方向のフーリエ変換は、式(25)によって表される。
ここで、r0はコンベックス探触子の曲率半径であり、x0とy0はコンベックス探触子のアレイ素子位置を表すx軸とy軸の座標である。ステップS21において、受信信号を時間tに関してフーリエ変換し、ステップS22において、受信信号を角度θに関してフーリエ変換(FFT)することにより、極座標系において受信した信号をデカルト座標系において平面波成分(kx,ky)に分解できる。
従って、例えば、これに、式(26)によって表される波数マッチングを施し(ステップS23)、空間(x,y)に関して逆フーリエ変換することにより、イメージ信号を生成することができる。
さらに、ステップS24において、2次元スペクトルに以下の複素指数関数を掛け、各深さyの角スペクトルが計算される。
若しくは、ステップ23とステップ24とを逆にして演算しても良い。
若しくは、式(26a)と式(26b)を用いずに、方法(5)に順当に従い、以下の複素指数関数を掛け、波数マッチングを行うと共に、各深さ位置yの角スペクトルを求めても良い。
さらに、例えば、ステップS25において角スペクトルの周波数成分kを足し合わせ、ステップS26において横方向の波数kxに関して逆フーリエ変換(IFFT)を行うことにより、ステップS27においてイメージ信号が得られる。純粋に2次元逆フーリエ変換を施しても良い。
尚、ステアリングを行う場合には、方法(1)に従い、偏向角度θを用いた式(9a)〜(9c)に従って、x方向及びy方向の波数マッチングを行うと共に空間分解能を得れば良い。尚、後に記載の通り、極座標系(r,θ)にて計算を行う場合においては、極座標系においてステアリング角度(半径方向と成す角度)を設け、同様にして、ステアリングすることもできる。物理的なステアリングを実施することもできるし、送信又は受信、又は、送受信のソフト的なステアリングを実施することもできるし、物理的なステアリングとソフト的なステアリングを組み合わせて実施することも可能であるのは、方法(1)等、他の方法の如くである。
この方法は、極座標系(r,θ)の信号からデカルト座標系(x,y)のイメージ信号を得るに当り、波数マッチングと座標系の変換に補間処理を要さず、高速かつ高精度なビームフォーミングを行うものである。リニアアレイ型トランスデューサにおける平面波送波と同様に、円筒波を極座標系において偏向することもできる。送信ビームフォーミングと受信ビームフォーミングのステアリング角度が異なる場合等も同様に処理できる。ソフト的なステアリングを施すこともできる。アポダイゼーションも同様に実施できる。円筒波の場合、2次元極座標系と直交するz軸方向の異なる位置(即ち、円筒座標系(r,θ,z)におけるz軸)において、上記の送信を同時に行って受信するか、同一の時相ではあるが異なる時刻に上記の送信を行って受信したものを重ね合わせ、上記の処理を行うこともある。z軸方向には、アナログデバイス(レンズ)により、フォーカスされている場合もあるし、本願発明のデジタル信号処理により、任意の処理を行うことも可能である。波動の伝搬方向が中心方向にある場合も同様に計算できる(例えば、HIFU治療や対象物を囲む円形ベースのアレイトランスデューサによる各種イメージングやCT等に有用である)。無論、それらにおいて、受信のみのビームフォーミングが行われることもあり、同様に処理される。尚、極座標(r,θ)にて表される受信信号に対し、方法(1)のデカルト座標(x,y)を極座標(r,θ)に読み替えた処理を行うこともでき、極座標(r,θ)においてイメージ信号を生成できることは上記の通りであり、その後の処理にて、補間近似を行うことになる。これらにおいて、同様に、ステアリングを行うこともできる。方法(2)〜(4)、(6)も同様に実施できる。
また、受信信号がデカルト座標(x,y)のデジタル信号として表されるとき、式(22)とは逆に、f(x,y)を半径rと角度θに関してフーリエ変換して処理をし、結局のところ、極座標系(r,θ)においてイメージ信号を生成するか、又は、各方法を用いて、デカルト座標系(x,y)においてイメージ信号を生成することもできる。ステアリングおよびアポダイゼーションも同様に行われることがある。
また、図8B(d)〜(f)に示すように、上記の様な極座標系で表される物理開口素子アレイや任意の開口形状の物理開口を用いて、任意距離位置において、送信又は受信、又は、両者の平面波を生成し、同様にしてビームフォーミングを行うこともあり、デカルト座標系又は極座標系、又は、物理開口形状に合わせて設定される直交曲座標系において、イメージ信号が生成されることがある。その距離位置に、仮想的なリニア型開口アレイ(又は、平面波)を生成したことと等価であり、その距離位置を零とすると、仮想的に、リニア型開口アレイを用いた場合に該当する。距離位置は、物理開口の後方以外に、前方にも設定でき、それらの位置に、仮想的なリニア型開口アレイ(又は、平面波)を生成することもできる。平面波はステアリングされたり、仮想的リニア型開口が傾けられる(仮想的にメカニカルステアリングされる)こともある。無論、必要に応じて、物理的な開口はメカニカルステアリングされる。それらの平面波を送信するのみ、又は、受信するのみの場合には、各々、円筒波を送信及び受信する場合を基礎とし、時として、他のビームフォーミングが行われることもある。
方法(5−1'):仮想源と他の任意形状の開口アレイを用いたイメージ信号生成
円形開口アレイだけでなく、リニアアレイ型トランスデューサ等の任意開口形状から波動を送信する場合において、後方に設置された仮想源を用いて円筒波の一部を生成する場合(図8A(a)〜(c)を参照)について説明する。
(i)モノスタティック開口面合成用に取得した受信信号を用いる場合には、各素子において送受信してメモリ等に格納された受信信号に対して、必要があれば、フーリエ変換に複素指数関数を乗算し、仮想源から発せられた波動の応答を極座標(r,θ)にて表されるデジタル受信信号とし、その上で、方法(5)に従う、又は、方法(5−1)を用いれば、直接的に(x,y)座標系においてイメージ信号を生成できる。また、同じく、受信した信号を極座標(r,θ)のデジタル信号として表し、方法(1)のデカルト座標(x,y)を極座標(r,θ)に読み替えた処理を行うこともでき、極座標(r,θ)においてイメージ信号を生成することもできる。無論、方法(2)のモノスタティック処理も極座標系(r,θ)において可能である。
(ii)また、マルチスタティック開口面合成用に取得した受信信号を用いる場合には、各素子において送信して周囲の素子で受信してメモリ等に格納された受信信号に対して、必要があれば、フーリエ変換に複素指数関数を乗算し、仮想源から発せられた波動の応答を極座標(r,θ)にて表されるデジタル受信信号とし、方法(3)のマルチスタティック開口面合成を実施できる。別の処理としては、方法(5)に従う、又は、そのデジタル受信信号を各受信素子において重ね合わせ、その上で、方法(5−1)を用いれば、直接的に(x,y)座標系においてイメージ信号を生成できる。また、同じく、そのデジタル受信信号を各受信素子において重ね合わせ、その上で、方法(1)のデカルト座標(x,y)を極座標(r,θ)に読み替えた処理を行うこともでき、極座標(r,θ)においてイメージ信号を生成することもできる。無論、重ね合わせせずに、方法(3)のマルチスタティック処理も極座標系(r,θ)において実施できる。
(iii)これらの処理において、物理開口アレイによって受信した信号を極座標系(r,θ)のデジタル信号に書き換える処理を省くために、元よりサンプリングが極座標系(r,θ)において行われる様に送信又は受信のディレイパターンを用いて、各開口素子より送信し、受信サンプリングされることがある。そして、方法(5−1)や、方法(5)に基づく方法(2)や方法(3)に基づき、直接的に(x,y)座標系においてイメージ信号を生成できる。また、同じく、受信した信号を極座標(r,θ)のデジタル信号として表し、方法(1)〜(3)のデカルト座標(x,y)を極座標(r,θ)に読み替えた処理を行うこともでき、極座標(r,θ)においてイメージ信号を生成することもできる。
(iv)また、同じく、任意開口形状において後方に設置された仮想源を用いて円筒波の一部を生成する場合(図8A(a)〜(c)を参照)の上記(i)〜(iii)において、各素子によって受信してメモリ等に格納された受信信号のフーリエ変換に複素指数関数を乗算して、受信信号をデカルト座標(x,y)のデジタル信号として表す(但し、時間を要する)か補間近似を行い、方法(5−1)における式(22)とは逆に、f(x,y)を半径rと角度θに関してフーリエ変換して処理をし、結局のところ、極座標系(r,θ)においてイメージ信号を生成するか、又は、各方法を用いて、デカルト座標系(x,y)においてイメージ信号を生成することもできる。開口形状に合わせて設定された直交曲線座標系(曲座標系)においても、同様にして、イメージ信号を生成できる。
(i)〜(iv)において、その他、方法(5−1)に記載した様々なビームフォーミング等を実施できる。
尚、方法(1)等に記載されている通り、任意の開口(リニアアレイ型トランスデューサの開口やその他、メカニカルスキャンにより得られる疑似的なアレイ開口)の後方に設定された仮想源(図8A(a)〜(c)を参照)を用いて円筒波を送信する場合(送信ディレイを用いる)は、平面波送信の場合と同様に各素子にてコーディングを施して送信し、そして、受信された受信信号をデコーディングして開口面合成用の受信信号群を生成し、上記の処理により、直接的に、デカルト座標系や極座標系等の任意の直交曲線座標系において、イメージ信号を生成することができる。また、仮想源ではなく、仮想受信器が設定されることもあるし、仮想受信器が仮想源を兼ねることもある。
また、方法(1)等に記載されている、任意の同開口(リニアアレイ型トランスデューサの開口やその他、メカニカルスキャンにより得られる疑似的なアレイ開口)の後方に設定された仮想源(図8A(a)〜(c)を参照)を用いて円筒波を送信した場合(送信ディレイを用いる)において、上記の方法を用いて以下のことが可能である。
(A)リニアアレイ型トランスデューサやメカニカルスキャンにより得られたデカルト座標系(x,y)で表されている受信信号に対して、直接的に方法(1)そのものを施し、デカルト座標系にてイメージ信号を得る。
(B)リニアアレイ型トランスデューサやメカニカルスキャンにより、各受信位置にて受信された信号に対して、y方向の(高速)フーリエ変換により求まる周波数応答に複素指数関数を乗じてy方向に空間的にシフティングし、仮想源を原点とする極座標系(r,θ)において、受信位置で決まるθの下で半径r方向の位置座標に補正し、方法(5)又は方法(5−1)を施し、デカルト座標系(x,y)又は極座標系(r,θ)にてイメージ信号を得る。複素指数関数を用いた空間的なシフティングではなく、r座標系における信号値の零詰めによる近似的な空間シフティングが行われることもあるが、精度を向上させる場合には、適切にオーバーサンプリングを行う必要があり、高サンプリングレートのAD変換器や多くのメモリが必要とされ、フーリエ変換前においてはデータ数が増加することに注意する必要がある。
(C)リニアアレイ型トランスデューサやメカニカルスキャンによる疑似のリニアアレイ開口とは別の任意開口形状において受信された信号に対し、方法(5)又は方法(5−1)を施し、同様にして、デカルト座標系(x,y)、又は、極座標系(r,θ)、開口形状に合わせて設定された直交曲線座標系(曲座標系)においても、同様にして、イメージ信号を生成できる。
(D)仮想源ではなく、仮想受信器が使用されることもあるし、仮想受信器が仮想源を兼ねることもある。
これらの方法(5−1')の結果として、例えば、別の型のトランスデューサや別のメカニカルスキャンを用いて、図7に示される様なコンベックス型やセクタ型トランスデューサ(対応するメカニカルスキャンの図は略)を用いた場合のイメージ信号を、デカルト座標系(x,y)、又は、極座標系(r,θ)、開口形状に合わせて設定された直交曲線座標系(曲座標系)において生成できる。
この他、逆に、物理的に別の型のトランスデューサを用いて、リニア型トランスデューサを仮想的に用いた場合(例えば、物理的にコンベックス型トランスデューサを用いた場合の図8B(d)〜(f)を参照、仮想源又は仮想受信器が物理開口の位置又は後方、又は、前方にある場合)のイメージ信号を、同様にして、デカルト座標系(x,y)、又は、極座標系(r,θ)、開口形状に合わせて設定された直交曲線座標系(曲座標系)において生成することもできる。
また、特殊な場合として、例えば、リニアアレイ型トランスデューサを物理的に用いる場合において、物理開口後方の仮想源又は仮想受信器を用いて円筒波を生成する場合を応用し、任意距離位置に、横方向に拡がった、平面波、又は、仮想的にリニアアレイ型トランスデューサを生成した場合(図8B(g))のイメージ信号も生成できる。
これらにおいて、生成される送信又は受信する波動はステアリングされたり、仮想的に開口が傾けられる(仮想的にメカニカルステアリングされる)こともある。無論、必要に応じて、物理的な開口はメカニカルステアリングされる。
方法(5−2):固定フォーカス時のイメージ信号生成
図14は、コンベックス型アレイを用いた固定フォーカシングの模式図である。コンベックスアレイにおいても、図14に示すように固定フォーカシングを行うことができる。図14(a)及び(b)の各々は、例として、固定フォーカシングの位置が、各有効開口から等距離の場合と、コンベックス型アレイから任意距離位置に設定された場合の模式図である。リニアアレイ型のとき(方法(4))と同様に、円筒波送波時と同じ計算処理でイメージ信号を生成することができる。即ち、方法(1)又は方法(3)の処理を基礎として、以下の3通りの方法がある。
(i)有効開口幅において得られた各受信信号を重ね合わせに対して1回のイメージ信号生成処理を施す。
(ii)1回の送信毎の受信信号を用いていわゆる通常の低分解能イメージ信号を生成して、それらを重ね合わせる。
(iii)マルチスタティック型開口面合成と同様に、送受信の位置関係が同じものをセットにしてイメージ信号を生成して、それらを重ね合わせる。
上記の如くして、デカルト座標系において直接にイメージ信号を生成できるが、極座標系の座標軸を用いて方法(4)を実施し、極座標系においてイメージ信号を生成できることも然りである。同様に偏向やアポダーゼーションも実施できる。z軸方向に関しては、(5−1)と同様に処理できる。
また、受信信号がデカルト座標(x,y)のデジタル信号として表されるとき、f(x,y)を半径rと角度θに関してフーリエ変換して処理をし、結局のところ、極座標系(r,θ)においてイメージ信号を生成するか、又は、各方法を用いて、デカルト座標系(x,y)においてイメージ信号を生成することもできる。ステアリングおよびアポダイゼーション、z軸方向の処理も同様に行われることがある。
尚、ステアリングを行う場合も、方法(4)に従って、x方向及びy方向の波数マッチングを行うと共に空間分解能を得れば良い。尚、後に記載の通り、極座標系(r,θ)にて計算を行う場合においては、極座標系においてステアリング角度(半径方向と成す角度)を設け、同様にして、ステアリングすることもできる。物理的なステアリングを実施することもできるし、送信又は受信、又は、送受信のソフト的なステアリングを実施することもできるし、物理的なステアリングとソフト的なステアリングを組み合わせて実施することも可能であるのは、方法(1)等、他の方法の如くである。
また、仮想源や仮想受信器を用いる場合には、方法(5―1')にて記載されている物理的な開口等を用いて仮想的な開口をその位置又は前後に実現し、上記の送信固定フォーカシングを行うことができる。例えば、リニア型アレイトランスデューサを仮想的に実現することがある。その他、任意の開口形状のトランスデューサを実現することもある。デカルト座標系又は極座標系、又は、物理開口形状に合わせて設定される直交曲座標系において、イメージ信号が生成される。物理的なステアリングを実施することもできるし、送信又は受信、又は、送受信のソフト的なステアリングを実施することもできるし、物理的なステアリングとソフト的なステアリングを組み合わせて実施することも可能であるのは、方法(1)等、他の方法の如くである。これらにおいて、生成される送信又は受信する波動はステアリングされたり、仮想的に開口が傾けられる(仮想的にメカニカルステアリングされる)こともある。無論、必要に応じて、物理的な開口はメカニカルステアリングされる。
以上の如くして、方法(1)〜(4)のビームフォーミングを実施できるが、それらに限られずに、任意のビームフォーミングに適応させて、同効果を得ることができる。特に、方法(4)を用いる場合には、送信固定フォーカスビームの他に、如何なる送信ビーム又は波動を対象としても受信ビームフォーミングを実施できる。無論、複数の異なるビーム又は波動の同時送信時における一括受信信号や各々の送信に対する受信信号の重ね合わせのビームフォーミングも同様に実施できる。
方法(5−3):球座標系における受信時のイメージ信号生成
球核状の波動開口素子アレイを使用する場合には、3次元のデジタル波動信号処理を行うこととなるが、例えば、受信開口素子アレイがそうである場合、波動の受信は、球座標系(r,θ,ψ)において行われるため、受信された波動の受信信号はf(r,θ,ψ)と表される。この場合も、ヤコビ(Jacobi)演算を通じて、2次元の極座標系(r,θ)の場合と同様に、様々なビームフォーミングを実施できる。
具体的には、受信された波動をデカルト座標系(x,y,z)において平面波に分解するべく受信信号f(r,θ,ψ)に対して行う3次元フーリエ変換により、デカルト座標系(x,y,z)の波数領域又は周波数領域(kx,ky,kz)において表される式(27)を、x=rsinθcosψ、y=rcosθ及びz=rsinθsinψを用いたヤコビ(Jacobi)演算により、式(28)のように計算し、補間近似処理を行うことなく直接的にデカルト座標系においてイメージ信号を生成することができる。無論、方法(1)〜(4)、(6)のビームフォーミングを実施できるが、それらに限られず、任意のビームフォーミングに適応して使用し、同効果が得られる。特に、方法(4)を用いる場合には、2次元の場合と同様に、送信固定フォーカスビームの他に、全ての送信ビーム又は波動を対象として受信ビームフォーミングを実施できる。無論、複数の異なるビーム又は波動の同時送信時における一括受信信号や各々の送信に対する受信信号の重ね合わせのビームフォーミングも同様に実施できる。また、仮想源や仮想受信器を用いる場合やステアリングを行う場合等も、全て、2次元の場合と同様に実施することができ、デカルト座標系又は球座標系、又は、物理開口形状に合わせて設定される直交曲座標系において、イメージ信号を生成できる。
方法(5"): デカルト座標系にて送信又は受信した場合の任意直交曲線座標系におけるイメージ信号生成
上記の一連の方法とは逆に、デカルト座標系において、送信又は受信を行って得られる受信信号から、補間近似を行うことなく2次元極座標系又は球座標系によって表されるイメージ信号を直接的に得ることも可能であり、同様な計算により実現できる。例えば、受信信号がf(x,y,z)と表されるときに、rとθ、ψ方向にフーリエ変換して、デカルト座標系における平面波に該当する円形波や球面波に受信信号を分解する計算を、ヤコビ演算を通じて行えばよい。これらの方法は、FOVを変える場合にも使用されることがある(例えば、広くできる場合もある)。Jacobi演算を用いて、同様に、任意の直交座標系においてイメージ信号を生成できるし、任意の座標系にて送信又は受信した場合においても同様に任意の直交座標系においてイメージ信号を生成することができる。方法(5)に記載の他の方法と同様に、如何なる送信ビームや波動も処理でき、ステアリングも同様に実施でき、さらに、仮想源や仮想受信器も用いることができる。
尚、方法(5)の特徴の1つは、波数マッチングにおいて補間近似処理を行うことなく、任意の座標系においてビームフォーミングを行うことにあるが、方法(5)を応用して方法(1)〜方法(4)、方法(6)、方法(7)に記載のビームフォーミングを任意の座標系において実施するに当たり、波数マッチングにおいて補間近似処理を行うことがあり、それらの各々に記載されている近似的な波数マッチングが行われて、高速にビームフォーミングが行われることがある。高精度に近似的な波数マッチングを行うには、計算量が増えることを代償として、受信信号を適切にオーバーサンプリングする必要がある。その場合、補間近似処理を行わない場合に任意位置の信号を選択的に生成できるのとは異なり、フーリ変換のデータ数が増えることには注意が必要である。
方法(6):マイグレーション法
マイグレーション処理においても、本発明の装置においては、波数マッチングにおいて補間近似処理を行うことなく処理することが可能である。マイグレーションの式(以下の式(M6'))そのものは、良く知られており、式の導出も良く知られているので、式の導出については、ここでは割愛する。
非特許文献12には、1素子送信による1素子受信を基礎とする通常のマイグレーション処理(即ち、方法(2)のモノスタティック型開口面合成用の送受信データを用いた偏向しない処理に該当)を基礎として、ステアリング無しと有りの場合の平面波送波及び/又は受信の場合(方法(1)に該当する処理)において、任意の同一の位置を対象として、任意の送信開口素子から波動が生成されてその送信開口素子を兼ねる受信開口素子によって波動を受信するまでの時間である伝搬時間がその通常のマイグレーションの場合と異なることから、伝搬速度とその対象位置の座標を読み替え(以下の式(M1))、同一の形(式(M6))で表される値を計算する方法が開示されている。
しかしながら、他の方法(2)〜(5)の処理に関しては、非特許文献12に開示されていない(方法(2)においてステアリングを行う場合は、開示されていない)。さらに、式(M6')を計算する上で、従来は、波数マッチングを行う際に補間近似が行われてきた(式(M4)及び式(M4'))が、本発明の装置においては、補間近似をせずに高精度に波数マッチングが行われる(式(M7)及び式(M7'))。
横方向をx軸、深さ方向をy軸とする2次元座標をとり、時間の座標をtとする。具体的には、その通常のマイグレーションでは、任意開口素子位置(x,0)と任意位置(xs,ys)の間を波動が往復するのに要する伝搬時間は、式(M0)によって表される。
これに対し、ステアリング角度がθ(0°を含む)の平面波送波においては、伝搬時間は、式(M0')によって表される。
従って、方法(1)の偏向平面波送波時にマイグレーション法に基づいて行う計算においては、搬速度cと対象の位置を表す座標系(xs,ys)の各々を式(M1)と読み替えて、通常のマイグレーションの式が計算される(式(M4)及び式(M5))。
纏めれば、方法(1)〜(5)の内で、方法(2)のモノスタティック型開口面合成用の送受信データを用いた偏向しない処理を行う通常のマイグレーション以外は、全て同様にしてマイグレーション処理できる。例えば、方法(1)の偏向平面波送波時(0°も含む)のマイグレーションの計算手順を主として説明する。
図15は、偏向平面波を送信した場合のマイグレーション処理を示すフローチャートである。受信信号が、r(x,y,t)と表されるとき、開口素子アレイ位置における受信信号は、r(x,y=0,t)と表される。
まず、式(M2)に示すように、受信信号を時間tと横方向xに関する2次元フーリエ変換する(2次元高速フーリエ変換が良い)。
ここで、k=ω/cであり、波数kと角周波数(角振動数)ωは比例定数1/cで関係付けられ、1対1対応であり、kの代わりにωを用いて表したり計算できる。
上記のように、特殊な2次元高速フーリエ変換法を使用することもできるが、一般的(popular)な方法としては、まず、ステップS31において、受信信号に対し、横方向座標xにおいて、時間tに関する高速フーリエ変換(FFT)を行って解析信号のスペクトルを得る。その上で、帯域k内の各周波数座標において、横方向xに関する高速フーリエ変換を行えば良い(2次元スぺクトルの各々を式(M2)に従って計算するよりは高速である)。
平面波を偏向送波しない場合には、上記の計算で良いが、偏向する場合には、トリミングをせねばならず、そのためには、ステップS32において、トリミングのために、上記の時間tに関する高速フーリエ変換後のR'(x,0,k)に複素指数関数(M3)を掛ける(方法(1)における複素指数関数(11)と同様に、時間tに関する高速フーリエ変換と複素指数関数の掛け算の演算は一度に直接に計算することもできるし、そのような計算が可能な専用の高速フーリエ変換も有用である)。
その上で、ステップS33において、受信信号に対し、横方向xに関して高速フーリエ変換(FFT)が施される。その結果を、ここでは、R''(kx,0,k)と表すことにする。ちなみに、トリミングを行える様にプログラムされていても、偏向せずに平面波を送波する場合(ステアリング角度0°)を処理できる。
通常は、次に、波数マッチング(又は、マッピング)が行われる。ビームフォーミングが、通常のマイグレーション(方法(2)のステアリング無しのとき)以外の方法(1)〜(5)の場合には、伝搬速度cと座標系(xs,ys)を上記の式(M1)の如く、各々のビームフォーミングのための伝搬速度(E1)と座標系(E2)に読み替えて処理することになる。
通常のマイグレーション(方法(2)のステアリング無しのとき)以外の方法(方法(1)を含む)の場合において計算された2次元フーリエ変換R''(kx,0,k)に対して、又は、通常のマイグレーションにおいて計算された上記のR(kx,0,k)に対して、補間近似(周波数座標の最も近い所の角スペクトルを使用する、バイリニア(bi-linear)補間等)を通じて、それぞれ、式(M4)又は式(M4')で表される波数マッチングが行われる。
但し、受信信号が反射信号の場合には、s = 2であり、透過信号の場合には、s = 1である。
但し、式(M4)と式(M4')の波数マッチングにおいて補間近似しない場合には、各々の式中の但し書きに表される深さ方向の波数が使用されるが、補間近似を行う場合における各々の深さ方向の波数は、角周波数ωを伝搬速度cと式(E1)にて除したものである。以下、同様である。
このように波数マッチングが施されて、次の関数(M4'')が求められる。
さらに、関数(M4'')を用いて、次の式(M5)又は式(M5')が求められる。
式(M5)又は(M5')に対して、式(M6)又は式(M6')によって表されるように、波数kx及び波数(E3)に関する2次元逆フーリエ変換を施すことにより、イメージ信号f(x,y)が生成される。
式(M6)及び式(M6')の計算における2次元逆フーリエ変換は、高速2次元逆フーリエ変換(IFFT)を施せば良く、特殊な高速2次元逆フーリエ変換を使用することもできるが、一般的(popular)な方法としては、式(M6)及び式(M6')の各々において、まず、信号帯域内の一方の波数kxに対し、他方の波数(E3)に関する高速逆フーリエ変換を行い、その上で、生成された空間座標yの各座標に対し、(信号帯域内の)波数kxに関する高速逆フーリエ変換を行えば良い(2次元のイメージ信号の各々を式(M6)又は式(M6')に従って計算するよりは高速である)。
非特許文献12には、式中においてySを用いる式(M6)は開示されておらず、ySでなくyを用いて計算し、計算後に、座標の補正を行うことが開示されている。座標の補正は、近似処理を行うか、本願の発明者の過去の発明である複素指数関数の乗算に基づく時間を掛けて近似処理せずに行う。式(M6)は、偏向角度が0°の時にも使用することができる。
本発明の装置においては、波数マッチングを2次元逆フーリエ変換と共に、又は、深さ方向の逆フーリエ変換と共に、補間近似することなく実施する。つまり、通常のマイグレーション法(方法(2)のステアリング無しのとき)以外の方法(方法(1)を含む)の場合において計算された2次元フーリエ変換R''(kx,0,k)に対して、又は、通常のマイグレーション法において計算された上記のR(kx,0,k)に対して、式(M7)又は式(M7')によって表されるように、まず、帯域内のそれぞれのkxに対してkに関する積分を行って、深さ方向の波数(E3)の波数マッチングと逆フーリエ変換(IFFT)とを同時に行い(ステップS34)、その後に、横(x)方向の高速逆フーリエ変換を行う。
非特許文献12には、式中においてySを用いる式(M7)は開示されていない。式(M7)は、偏向角度が0°のときにも使用できる。方法(1)〜(6)と同様、スペクトルの周波数k成分を足し合わせた上で、横方向の波数kxに関する逆フーリエ変換(IFFT)を行い、1回の逆フーリエ変換で計算ができ、計算が高速である。
さらに、通常のマイグレーション(方法(2)のステアリング無しのときと対応する処理)と異なる場合には、式(M6)や式(M7)を計算する過程において、横(x)方向の位置の補正を行うことができる。例えば、方法(1)の偏向平面波を送波したときは、まず、ステップS34において、上記の如く、波数(E3)に関する計算を行い、ステップS35において、位置補正のために、各々の結果として求まる関数(M8)に対して、複素指数関数(M9)を掛け、その後、ステップS36において、横方向の波数kxに関する高速逆フーリエ変換(IFFT)を行う。あるいは、横方向の波数kxに関する逆フーリエ変換の複素指数関数と共に式(M9)を掛けて計算するか、それ専用の高速逆フーリエ変換を実施しても良い。式(M9)は、偏向角度が0°のときにも使用できる。以上により、ステップS37において、イメージ信号f(x,y)が生成される。
纏めると、式(M6)、式(M7)、又は、式(M7')を使用して、新しい処理を行うことができ、補間近似による誤差を除き、高速に、イメージ信号f(x,y)を生成できる。
尚、式(M9)を乗じずに近似処理無しに同結果を得る場合には、式(M4)に代わる次式(N4)を用いて、式(M6)又は式(M7)を計算すれば良い。
すなわち、波数マッチングにおいて、補間近似しない場合には、式中の但し書きに表される深さ方向の波数が使用されるが、補間近似を行う場合における深さ方向の波数は、角周波数ωを伝搬速度(E1)にて除したものである。
この式中に表される深さ方向の波数の式は、方法(1)における式(13)に類似しているが、方法(1)において、式(13)〜式(15)中のkx-ksinθの-ksinθを用いずに(零として)計算した場合に同じ結果を得る場合には、方法(6)において式(M9)を乗じて逆フーリエ変換を行う場合と同様に、段落0202又は0203に記載の処理を行う前に、式(16)に式(M9)を乗じれば良い。但し、方法(6)で実現される平面波の偏向は、あくまで、近似計算の下で実現されるものであり、従って、方法(6)において式(N4)と式(M7)を用いた場合には全くに近似処理無しにて高精度化されるが、方法(1)において式(M9)を用いると精度は低下する。また、最後の逆フーリエ変換を2次元高速逆フーリエ変換で実施する場合(後述の通り、3次元の場合には3次元高速逆フーリエ変換)には、それらの処理を行うと、計算速度は、方法(6)では高速化されるが、方法(1)では遅くなる(段落0203に記載の処理は高速である)。
また、これらの改変された方法(1)や方法(6)の各々において、波数マッチングにおいて補間近似処理を行う場合において、式(M9)と(N4)とを用いて同じ結果を得る場合には、補間近似の式は対応して変化する(段落0352の(A)と(B)の各々に記載)。
また、これらの改変された方法(1)や方法(6)の各々において、波数マッチングにおいて補間近似処理を行う場合において、上記の式(11)と(M3)とを用いる場合(偏向角度データθを用いる)と、式(11)と(M3)とを用いない場合(偏向角度θを零とする)とにおいて同結果を得る場合も、補間近似の式は対応して変化する(用いない場合を段落0352の(A')と(B')の各々に記載)。
平面波送波を用いる場合のビームフォーミングは、本願明細書に記載の通り、様々なビームフォーミングに応用されるが、それらの応用において本段落に記載の処理が代わりに使用されることもある。注意すべきこととして、方法(6)を応用して送信フォーカシングされたもの等の任意の送信ビームフォーミングが行われたものに対して受信ダイナミックフォーカシングを行う場合には、後述の通り、角周波数ωと換算伝搬速度(E1)とを用いて表される波数[式(M13)]を用いて表される(M3'')を式(M3)の代わりに用いるため、補間近似式中の-ksinθtの波数kには、代わりに式(M13)を使用する必要がある。
方法(1)と方法(6)との各々において、本段落に記載の方法が組み合わされて実施されることもある。例えば、方法(1)にて補間近似を行うJ.-y. Luらの方法(段落0195参照、式は段落0352の(C')に記載)と同様に、方法(6)において、波数マッチングを全て補間近似を通じて行い、最初の2次元フーリエ変換と最後の2次元逆フーリエ変換を高速2次元フーリエ変換で実施することが可能である(段落0352の(D')に記載。後述の通り、3次元の場合には3次元高速フーリエ変換)。これらの各々において、式(11)を用いる場合(偏向角度データθを用いる)と式(M3)を用いる場合もある(段落0352の(C)と(D)の各々に記載)。無論、偏向しない場合にも使用できる。
上記の通り、方法(1)と方法(6)とを基礎とする平面波送波は、様々なビームフォーミングに応用される。
ここでは、マイグレーション法を用いて、方法(1)のステアリング有りと無しの平面波送波時のビームフォーミングを波数マッチングにおいて補間近似無しに高速に実施することを主として説明したが、本発明の他の方法(2)(ステアリングを行う場合を含むモノスタティック開口面合成法)、方法(3)(ステアリング有り又は無しのマルチスタティック法)、方法(4)(ステアリング有り又は無しの送信固定フォーカス)、及び、方法(5)(極座標系や任意の直交曲線座標系におけるビームフォーミング)の各々において記載されている全てのビームフォーミングを同様に実施できる。送信と受信において、偏向角度が異なる場合も同様に処理できる。アポダイゼーションも同様に行われることがある。
3次元の場合も同様に処理できる。2次元開口素子アレイを用いて得られる受信信号が、r(x,y,z,t)と表されるとき、開口素子アレイ位置(y=0)における受信信号は、r(x,y=0,z,t)と表される。
まず、式(M'2)に示すように、受信信号を時間tと横方向xとエレベーション方向zに関する3次元フーリエ変換する(3次元高速フーリエ変換が良い)。
ここで、k=ω/cである。
一般的には、受信信号に対し、各位置座標(x,0,z)において、時間tに関する高速フーリエ変換(FFT)を行って解析信号のスペクトルR(x,0,z,k)が得られる。その上で、帯域k内の各周波数座標において、横方向xとエレベーション方向zに関する高速フーリエ変換を行い、R(kx,0,kz,k)が得られる(3次元スぺクトルの各々を式(M'2)に従って計算するよりは高速である)。
平面波を偏向送波しない場合には、上記の計算で良いが、平面波として送信する方向と軸方向とが成す零度又は非零度の偏向角度が仰角θ及び方位角ψを用いて表される場合には、トリミングをせねばならず、そのために、上記の時間tに関する高速フーリエ変換後のR'(x,0,z,k)に複素指数関数(M'3)を掛ける(時間tに関する高速フーリエ変換と複素指数関数の掛け算の演算は一度に直接に計算することもできるし、そのような計算が可能な専用の高速フーリエ変換も有用である)。
その上で、受信信号に対し、横方向xに関して高速フーリエ変換(FFT)が施される。その結果を、R''(kx,0,z,k)とする。ちなみに、トリミングを行える様にプログラムされていても、偏向せずに平面波を送波する場合(ステアリング角度0°)を処理できる。
次に、波数マッチング(又は、マッピング)を行う。ビームフォーミングが、通常のマイグレーション(方法(2)のステアリング無しのとき)以外の方法(1)〜(5)の場合には、伝搬速度cと座標系(xs,ys,zs)を各々のビームフォーミングのための伝搬速度(E'1)と座標系(E'2)に読み替えて処理する。
通常のマイグレーション(方法(2)のステアリング無しのとき)以外の方法(方法(1)を含む)の場合において計算された3次元フーリエ変換R''(kx,0,z,k)に対して、又は、通常のマイグレーションにおいて計算された上記のR(kx,0,z,k)に対して、補間近似(周波数座標の最も近い所の角スペクトルを使用する、バイリニア(bi-linear)補間等)を通じて、それぞれ、式(M'4)又は式(M'4')で表される波数マッチングが行われる。
但し、受信信号が反射信号の場合には、s = 2であり、透過信号の場合には、s = 1である。
但し、式(M'4)と式(M'4')の波数マッチングにおいて補間近似しない場合には、各々の式中の但し書きに表される深さ方向の波数が使用されるが、補間近似を行う場合における各々の深さ方向の波数は、角周波数ωを伝搬速度cと式(E'1)にて除したものである。以下、同様である。
このように波数マッチングが施されて、次の関数(M'4'')が求められる。
さらに、関数(M'4'')を用いて、次の式(M'5)又は式(M'5')が求められる。
式(M'5)又は(M'5')に対して、式(M'6)又は式(M'6')によって表されるように、波数kx及びkz、3次元の場合の波数(E'3)に関する3次元逆フーリエ変換を施すことにより、イメージ信号f(x,y,z)が生成される。
式(M'6)及び式(M'6')の計算における3次元逆フーリエ変換は、高速3次元逆フーリエ変換(IFFT)を施せば良く、特殊な高速3次元逆フーリエ変換を使用することもできるが、一般的(popular)な方法としては、式(M'6)及び式(M'6')の各々において、まず、信号帯域内の二方の波数kxとkzに対し、もう一方の波数(E'3)に関する高速逆フーリエ変換を行い、その上で、生成された空間座標yの各座標に対し、(信号帯域内の)波数kxとkzに関する高速逆フーリエ変換を行えば良い(3次元のイメージ信号の各々を式(M'6)又は式(M'6')に従って計算するよりは高速である)。
本発明の装置においては、波数マッチングを3次元逆フーリエ変換と共に、又は、深さ方向の逆フーリエ変換と共に、補間近似することなく実施する。つまり、通常のマイグレーション法(方法(2)のステアリング無しのとき)以外の方法(方法(1)を含む)の場合において計算された3次元フーリエ変換R''(kx,0, kz,k)に対して、又は、通常のマイグレーション法において計算された上記のR(kx,0, kz,k)に対して、式(M'7)又は式(M'7')によって表されるように、まず、帯域内のそれぞれの(kx,kz)対してkに関する積分を行って、深さ方向の波数(E'3)の波数マッチングと逆フーリエ変換(IFFT)とを同時に行い、その後に、横(x)方向とエレベーション(z)方向の高速逆フーリエ変換を行う。
非特許文献12には、式中においてySを用いる式(M'6)や(M'7)は開示されていない。両式は、偏向角度が0°のときにも使用できる。方法(1)〜(6)と同様、スペクトルの周波数k成分を足し合わせた上で、横方向とエレベーション方向の波数kxとkzに関する逆フーリエ変換(IFFT)を行い、1度の逆フーリエ変換で計算ができ、計算が高速である。
さらに、通常のマイグレーション(方法(2)のステアリング無しのときと対応する処理)と異なる場合には、式(M'6)や式(M'7)を計算する過程において、横(x)方向とエレベーション方向(z)の位置の補正を行うことができる。例えば、方法(1)の偏向平面波を送波したときは、まず、上記の如く、波数(E'3)に関する計算を行い、位置補正のために、各々の結果として求まる関数(M'8)に対して、複素指数関数を掛け、その後、横方向とエレベーション方向の波数kxとkzに関する高速逆フーリエ変換(IFFT)を行う。
纏めると、式(M'6)、式(M'6')、式(M'7)、又は、式(M'7')を使用して、新しい処理を行うことができ、補間近似による誤差を除き、高速に、イメージ信号f(x,y,z)を生成できる。
尚、2次元の場合の式(M9)に該当する複素指数関数を乗じずに近似処理無しに同結果を得る場合には、式(M'4)の代わりに、次式(N'4)を用いて、式(M6)又は式(M7)を計算すれば良い。
すなわち、波数マッチングにおいて、補間近似しない場合には、式中の但し書きに表される深さ方向の波数が使用されるが、補間近似を行う場合における深さ方向の波数は、角周波数ωを伝搬速度(E'1)にて除したものである。
この式中に表される深さ方向の波数の式は、方法(1)における式(C22)に類似しているが、方法(1)において、式(C22)と式(C23)中のkx-ksinθcosψとkz-ksinθsinψの-ksinθcosψと-ksinθsinψを用いずに(零として)計算した場合に同じ結果を得る場合には、方法(6)において2次元の場合の式(M9)に該当する複素指数関数を乗じて逆フーリエ変換を行う場合と同様に、段落0205に記載の処理を行う中で乗じれば良い。但し、方法(6)で実現される平面波の偏向は、あくまで、近似計算の下で実現されるものであり、従って、2次元の場合と同様に、方法(6)において式(N'4)と式(M7)を用いた場合には全くに近似処理無しにて高精度化されるが、方法(1)において2次元の場合の式(M9)に該当する複素指数関数を用いると精度は低下する。また、最後の逆フーリエ変換を3次元高速逆フーリエ変換で実施する場合には、それらの処理を行うと、2次元の場合と同様に、計算速度は、方法(6)では高速化されるが、方法(1)では遅くなる(段落0203に記載の処理は高速である)。
また、これらの改変された方法(1)や方法(6)の各々において、波数マッチングにおいて補間近似処理を行う場合において、2次元の場合の式(M9)に該当する複素指数関数と式(N'4)とを用いて同じ結果を得る場合には、2次元の場合と同様に、補間近似の式は対応して変化する(段落0352の(A)と(B)の各々に記載)。
また、これらの改変された方法(1)や方法(6)の各々において、波数マッチングにおいて補間近似処理を行う場合において、上記の式(C21)と(M'3)とを用いる場合(偏向角度データθとψを用いる)と、式(C21)と(M'3)とを用いない場合(全ての偏向角度θとφを零とする)とにおいて同結果を得る場合も、2次元の場合と同様に、補間近似の式は対応して変化する(用いない場合を段落0352の(A')と(B')の各々に記載)。
平面波送波を用いる場合のビームフォーミングは、本願明細書に記載の通り、様々なビームフォーミングに応用されるが、それらの応用において本段落に記載の処理が代わりに使用されることもある。2次元の場合と同様にして注意すべきこととして、方法(6)を応用して送信フォーカシングされたもの等の任意の送信ビームフォーミングが行われたものに対して受信ダイナミックフォーカシングを行う場合には、後述の通り、角周波数ωと換算伝搬速度(E'1)とを用いて表される波数[式(M'13)]を用いて表される(M'3'')を式(M'3)の代わりに用いるため、補間近似式中の-ksinθ1(cosψ1x+sinψ1z)の波数kには、代わりに式(M'13)を使用する必要がある。
方法(1)と方法(6)との各々において、本段落に記載の方法が組み合わされて実施されることもある。例えば、方法(1)にて補間近似を行うJ.-y. Luらの方法(段落0195参照、式は段落0352の(C')に記載)と同様に、方法(6)において、波数マッチングを全て補間近似を通じて行い、最初の3次元フーリエ変換と最後の3次元逆フーリエ変換を高速フーリエ変換で実施することが可能である(段落0352の(D')に記載)。これらの各々において、式(C21)を用いる場合(偏向角度データθを用いる)と式(M'3)を用いる場合もある(段落0352の(C')と(D')の各々に記載)。無論、偏向しない場合にも使用できる。
上記の通り、方法(1)と方法(6)とを基礎とする平面波送波は、様々なビームフォーミングに応用される。
このマイグレーション法においても、方法(2)や方法(3)の方法と同様にして、波数マッチングにおいて補間近似処理を行わずに、モノスタティックやマルチスタティックの開口面合成を実施できる。
モノスタティック開口面合成の場合、ソフト的な送信偏向角度と受信角度の各々をθtとθrとすると、式(M3)の代わりに、超音波角周波数ω0と伝搬速度cを用いて表される波数
を用いて表される
を同様に用い、通常のマイグレーション処理の波数マッチングにおいて補間処理を要しない場合の式(M7')において、
但し、受信信号が反射信号の場合には、s = 2であり、透過信号の場合には、s = 1である。
とすれば良い。
また、3次元の場合において、送信ビームと受信ビームの偏向角度の各々が、(仰角,方位角)=(θt,ψt)と(θr,ψr)を用いて表されるとすると、波数マッチングは、方法(2)と同様に、超音波信号の搬送周波数ω0を用いて表される複素指数関数(式(D41))を掛けて、まず横方向に実施し、深さy方向に関しては、深さy方向に分解能を持たせるべく、横方向のマッチング処理(式(D41))を除いた複素指数関数(式(D42))を掛けると同時に、複素指数関数(式(D43))を掛けて行われる。すなわち、2次元の場合の式(M3')の代わりに式(D41)を用い、式(M11)の代わりに式(D42)と式(D43)の積を用いる。
この様に、方法(2)とこれに基づく方法(3)に該当する本発明におけるマイグレーション処理は、方法(2)と方法(3)と等価である。
これらの場合にも、通常のマイグレーション処理と同様に、波数マッチングにおいて補間処理を行って高速逆フーリエ変換を実施することは可能であり、その場合には、方法(2)とこれに基づく方法(3)とは等価ではなく、式(M3')を用いた上記の処理等の後、補間処理を共なう波数マッチングである式(M4')の代わりに、式(M11)に基づいて、
但し、受信信号が反射信号の場合には、s = 2であり、透過信号の場合には、s = 1である。また、波数マッチングにおいて補間近似しない場合には、式中の但し書きに表される深さ方向の波数が使用されるが、補間近似を行う場合の深さ方向の波数は、角周波数ωを伝搬速度cにて除したものである。以下、同様である。
と表される式(M4'')を求め、(M4''')の同kyを用いて表される式(M5')の2次元逆フーリエ変換[式(M6')]を実施するか、又は、式(M4')の代わりに、
但し、受信信号が反射信号の場合には、s = 2であり、透過信号の場合には、s = 1である。また、波数マッチングにおいて補間近似しない場合には、式中の但し書きに表される深さ方向の波数が使用されるが、補間近似を行う場合の深さ方向の波数は、角周波数ωを伝搬速度cにて除したものである。以下、同様である。
と表される補間処理を共なう波数マッチングを行って式(M4'')を求め、(M4'''')の同kyを用いて表される式(M5')に、
を乗算したものの2次元逆フーリエ変換[式(M6')に該当]を実施すれば良い。
また、この場合も、マルチスタティック開口面合成は、方法(2)を応用して方法(3)を実現したときと全くに同様にして、方法(2)の代わりに、このマイグレーション法よるモノスタティック開口面合成法を応用して実現できる。
3次元の場合も同様に処理できる。つまり、3次元の場合の式(M'3')を用いた処理等の後、補間処理を共なう波数マッチングである式(M'4')の代わりに、式(D42)と式(D43)の積[2次元の時の(M11)に該当]に基づいて、
但し、受信信号が反射信号の場合には、s = 2であり、透過信号の場合には、s = 1である。また、波数マッチングにおいて補間近似しない場合には、式中の但し書きに表される深さ方向の波数が使用されるが、補間近似を行う場合の深さ方向の波数は、角周波数ωを伝搬速度cにて除したものである。以下、同様である。
と表される式(M'4'')を求め、(M'4''')の同kyを用いて表される式(M'5')の3次元逆フーリエ変換[式(M'6')]を実施するか、又は、式(M'4')の代わりに、
但し、受信信号が反射信号の場合には、s = 2であり、透過信号の場合には、s = 1である。また、波数マッチングにおいて補間近似しない場合には、式中の但し書きに表される深さ方向の波数が使用されるが、補間近似を行う場合の深さ方向の波数は、角周波数ωを伝搬速度cにて除したものである。以下、同様である。
と表される補間処理を共なう波数マッチングを行って式(M'4'')を求め、(M'4'''')の同kyを用いて表される式(M'5')に、
を乗算したものの3次元逆フーリエ変換[式(M'6')に該当]を実施すれば良い。
この場合も、マルチスタティック開口面合成は、方法(2)を応用して方法(3)を実現したときと全くに同様にして、方法(2)の代わりに、このマイグレーション法よるモノスタティック開口面合成法を応用して実現できる。
これらのマイグレーション法に基づき、方法(2)と(3)に記載の全てのビームフォーミングを同様に実施できる。
また、方法(1)に該当する上記平面波送信時のマイグレーション処理[式(M7)等]を用いて、波数マッチングにおいて補間近似を行うことなく、方法(4)の固定フォーカスビーム等の任意のビームの他、任意の波(ビームフォーミングされていない波を含む)の送信時のビームフォーミング、複数のビームや波の送信時の重ね合わせ処理、同時の複数ビームや波の送信時の処理を実施できる。複数のビームフォーミングが行われることは、多方向開口面合成法を用いて行われる場合もあり、その場合も同様にして高速に行われる。また、それらの限りでは無い。それらの場合においては、方法(1)を用いたときと同様にして、方法(2)との組み合わせとして、任意の送信ビームフォーミングに対して受信の偏向ダイナミックフォーカシングを実施できる。
フォーカスビームの物理的な送信偏向角度がAであるときに、ソフト的な送信偏向角度と受信角度の各々をθ(=θt)とθrとすると、式(M3)の代わりに、角周波数ωと換算伝搬速度(E1)を用いて表される波数
を用いて表される
を同様に用い、また、平面波の物理的な送信偏向角度がAであるときに、ソフト的な送信偏向角度と受信角度の各々をθ(=θt)とθrとすると、式(M3)の代わりに、
を同様に用い、式(M7)において、
とすれば良い。
また、3次元の場合も同様に処理できる。フォーカスビームの物理的な送信偏向角度が仰角Aと方位角Bで表されるとき(いずれかの少なくとも1つの角度が零度である場合を含む)に、ソフト的な送信偏向角度(仰角θ1と方位角ψ1)にてステアリングして偏向角度(仰角θ2,方位角ψ2)にてステアリングダイナミックフォーカシングを行う場合(いずれかの少なくとも1つの角度が零度である場合を含む)、式(M'3)の代わりに、角周波数ωと換算伝搬速度(E'1)を用いて表される波数
を用いて表される
を同様に用い、また、平面波の物理的な送信偏向角度が仰角Aと方位角Bで表されるとき(いずれかの少なくとも1つの角度が零度である場合を含む)、ソフト的な送信偏向角度(仰角θ1と方位角ψ1)にてステアリングして偏向角度(仰角θ2,方位角ψ2)にてステアリングダイナミックフォーカシングを行う場合(いずれかの少なくとも1つの角度が零度である場合を含む)、式(M'3)の代わりに、
を同様に用い、式(M'7)において、
とすれば良い。
この場合にも、通常のマイグレーション処理と同様に、波数マッチングにおいて補間処理を行って高速逆フーリエ変換を実施することは可能であり、その場合には、
補間処理を共なう波数マッチングである式(M4)の代わりに、式(M11''')に基づいて、
但し、波数マッチングにおいて補間近似しない場合には、式中の但し書きに表される深さ方向の波数が使用されるが、補間近似を行う場合の深さ方向の波数は、角周波数ωを換算伝搬速度(E1)にて除したものである。以下、同様である。
と表される式(M4'')を求め、(M4''''')の同kyを用いて表される式(M5)の2次元逆フーリエ変換[式(M6)]を実施するか、又は、式(M4)の代わりに、
但し、波数マッチングにおいて補間近似しない場合には、式中の但し書きに表される深さ方向の波数が使用されるが、補間近似を行う場合の深さ方向の波数は、角周波数ωを換算伝搬速度(E1)にて除したものである。以下、同様である。
と表される補間処理を共なう波数マッチングを行って式(M4'')を求め、(M4'''''')の同kyを用いて表される式(M5)に、
を乗算したものの2次元逆フーリエ変換[式(M6)に該当]を実施すれば良い。
尚、上記において、式(M3'')と(M3''')を入れ替えて各々を処理すると、ソフト的な送信ステアリングを行った場合(θtが非零の場合)に結像位置がずれるエラーを生じる。また、これらの処理において、超音波周波数に対応する波数である式(M10)の代わりに、超音波角周波数ω0と換算伝搬速度(E1)を用いて表される波数
を用いると、ソフト的な受信ステアリングを行った場合(θrが非零の場合)には、生成される偏向角度が式(M10)を用いた時よりも大きく生成される誤差(偏向角度20°を実現する際に、1、2°程度)を生じるが、結像は得られる。
また、3次元の場合も同様に処理できる。つまり、3次元の場合の式(M'3'')を用いた処理等の後、補間処理を共なう波数マッチングである式(M'4)の代わりに、式(M'11''')に基づいて、
但し、波数マッチングにおいて補間近似しない場合には、式中の但し書きに表される深さ方向の波数が使用されるが、補間近似を行う場合の深さ方向の波数は、角周波数ωを換算伝搬速度(E'1)にて除したものである。以下、同様である。
と表される式(M'4'')を求め、(M'4''''')の同kyを用いて表される式(M'5)の3次元逆フーリエ変換[式(M'6)]を実施するか、又は、式(M'4)の代わりに、
但し、波数マッチングにおいて補間近似しない場合には、式中の但し書きに表される深さ方向の波数が使用されるが、補間近似を行う場合の深さ方向の波数は、角周波数ωを換算伝搬速度(E'1)にて除したものである。以下、同様である。
と表される補間処理を共なう波数マッチングを行って式(M'4'')を求め、(M'4'''''')の同kyを用いて表される式(M'5)に、
を乗算したものの2次元逆フーリエ変換[式(M'6)に該当]を実施すれば良い。
尚、上記において、式(M'3'')と(M'3''')を入れ替えて各々を処理すると、ソフト的な送信ステアリングを行った場合(偏向角度が非零の場合)に結像位置がずれるエラーを生じる。また、これらの処理において、超音波周波数に対応する波数である式(M'10)の代わりに、超音波角周波数ω0と換算伝搬速度(E'1)を用いて表される波数
を用いると、ソフト的な受信ステアリングを行った場合(偏向角度が非零の場合)には、生成される偏向角度が式(M'10)を用いた時よりも大きく生成される誤差を生じるが、結像は得られる。
また、この場合に、段落0314に記載の式(N4)に基づくマイグレーション方法を用いる場合には、フォーカスビームの物理的な送信偏向角度がAであるときに、ソフト的な送信偏向角度と受信角度の各々をθ(=θt)とθrとすると、式(M3)の代わりに、角周波数ωと換算伝搬速度(E1)を用いて表される波数(M13)を用いて表される(M3'')を同様に用い、また、平面波の物理的な送信偏向角度がAであるときに、ソフト的な送信偏向角度と受信角度の各々をθ(=θt)とθrとすると、式(M3)の代わりに、(M3''')を同様に用い、式(M6)又は(M7)において、式(N4)の代わりに、次式(N4')を同様に用いれば良い。
但し、波数マッチングにおいて補間近似しない場合には、式中の但し書きに表される深さ方向の波数が使用され、補間近似を行う場合の深さ方向の波数は、角周波数ωを換算伝搬速度(E1)にて除したものである。以下、同様である。
また、3次元の場合(段落0329に記載の式(N'4)に基づくマイグレーション方法を用いる場合)も同様に処理できる。フォーカスビームの物理的な送信偏向角度が仰角Aと方位角Bで表されるとき(いずれかの少なくとも1つの角度が零度である場合を含む)に、ソフト的な送信偏向角度(仰角θ1と方位角ψ1)にてステアリングして偏向角度(仰角θ2,方位角ψ2)にてステアリングダイナミックフォーカシングを行う場合(いずれかの少なくとも1つの角度が零度である場合を含む)、式(M'3)の代わりに、角周波数ωと換算伝搬速度(E'1)を用いて表される波数(M'13)を用いて表される式(M'3'')を同様に用い、また、平面波の物理的な送信偏向角度が仰角Aと方位角Bで表されるとき(いずれかの少なくとも1つの角度が零度である場合を含む)、ソフト的な送信偏向角度(仰角θ1と方位角ψ1)にてステアリングして偏向角度(仰角θ2,方位角ψ2)にてステアリングダイナミックフォーカシングを行う場合(いずれかの少なくとも1つの角度が零度である場合を含む)、式(M'3)の代わりに、式(M'3''')を同様に用い、式(M'6)又は(M'7)において、式(N'4)の代わりに、次式(N'4')を同様に用いれば良い。
但し、波数マッチングにおいて補間近似しない場合には、式中の但し書きに表される深さ方向の波数が使用され、補間近似を行う場合の深さ方向の波数は、角周波数ωを換算伝搬速度(E'1)にて除したものである。以下、同様である。
この様に、これらのマイグレーション法に基づくビームフォーミングも、段落0314や0329に記載の方法と同様にして、波数マッチングにおいて補間近似処理を行う、又は、行わずに実施できる。
また、方法(1)に関して段落0314や0329に記載されている処理を、方法(1)と方法(2)の組み合わせ(段落0233〜0236に記載の方法(1)において受信偏向ダイナミックフォーカシングを行う場合)においても同様に実施できる。つまり、2次元の場合、式(F42)と式(F43)中の偏向角度θを零として計算した場合に同じ結果を得る場合には、方法(6)において式(M9)を乗じて逆フーリエ変換を行う場合と同様に、段落0202又は0203に記載の処理を行う前に、式(16)に該当する式に式(M9)を乗じれば良い。また、3次元の場合、式(G22)と式(G23)中の全ての偏向角度θとφを零として計算した場合に同じ結果を得る場合には、方法(6)において2次元の場合の式(M9)に該当する複素指数関数を乗じて逆フーリエ変換を行う場合と同様に、段落0205に記載の処理を行う中で乗じれば良い。
これらのビームフォーミングにおいても、段落0314や0329に記載の通り、波数マッチングにおいて補間処理を行う、又は、行わずに実施できる。他、同段落に記載の通りである。
これらのマイグレーション法に基づき、方法(4)に記載の全てのビームフォーミングを同様に実施できる。
また、方法(5)に記載の如く、極座標系等のデカルト座標系以外の直交座標系において送受信を行った場合も、全くに同様にして、式(M6)、式(M6')、式(M7)、式(M7')にヤコビ演算を施したものを計算して上記のビームフォーミングを実施して、デカルト座標系において直接的に結果を得ることができる。また、3次元の場合も、全くに同様にして、式(M'6)、式(M'6')、式(M'7)、式(M'7')にヤコビ演算を施して同様に処理できる。その他にも、方法(5)に記載の全てのビームフォーミングを同様に実施できる。
尚、本発明の目的の1つは、フーリエ変換を基礎として、高速に且つ高精度なビームフォーミングを実現することにあるが、上記の方法(1)〜(6)を用いた補間近似を行わない処理は、いずれも、様々な形の補間近似を交えた処理に改変して使用することが可能であり、精度は低下するものの、高速化して使用されることがある。横方向、エレベーション方向、深さ方向の3方向の内の、少なくとも1方向又は2方向、全3方向の波数マッチングを近似して行うか、また、複素指数関数の乗算を用いるか等において、方法を改変して使用することが可能である。近似を多く行うと高速化できるが、精度は低下する。これまでの説明において、既に説明済みのものもある。本段落では、2次元と3次元の各々の場合に関し、段落0314と0329に記載した(A)、(A')、(B)、(B')、(C)、(C')、(D)、(D')の8つの場合について、補間近似式を示す。
例えば、方法(6)のマイグレーション法にて平面波のステアリングを行う場合も同様に処理でき、全方向の波数マッチングを補間近似する((D')に該当)と、方法(1)にて補間近似処理を行うJ.-y. Luらの方法(段落0195参照、(C')に該当)と同様に、マイグレーションを用いた場合において計算は最速となる。しかし、精度はマイグレーションの中で最も低い。一方、J.-y. Luらの方法(段落0195参照、(C')に該当)において、例えば、フーリエ変換前に横方向の波数マッチングのみを行うと高精度化されるが、計算速度は低下する((C)に該当)。他、(A)、(A')、(B)、(B')の場合も含め、以下に2次元の場合(段落0314)の補間処理(式)を示す(3次元の場合(段落0329)も同様に表され、略)。尚、(A)、(A')、(C)、(C')に関しては、式(7)と(8)に従って表してある。また、(B')および(D')においては、横方向に関する逆フーリエ変換は、kxではなく、kx'に関して行われる。
波数マッチングにおいて補間近似を行う場合の深さ方向の波数kyは、角周波数ωを伝搬速度cにて除したものであるが、補間近似しない場合に上記の如く処理できる。
波数マッチングにおいて補間近似を行う場合の深さ方向の波数kyは、角周波数ωを伝搬速度cにて除したものであるが、補間近似しない場合に上記の如く処理できる。
但し、波数マッチングにおいて補間近似しない場合には、式中の但し書きに表される深さ方向の波数が使用されるが、補間近似を行う場合の深さ方向の波数は、角周波数ωを換算伝搬速度(E1)にて除したものである。
但し、波数マッチングにおいて補間近似しない場合には、式中の但し書きに表される深さ方向の波数が使用されるが、補間近似を行う場合の深さ方向の波数は、角周波数ωを換算伝搬速度(E1)にて除したものである。
波数マッチングにおいて補間近似を行う場合の深さ方向の波数kyは、角周波数ωを伝搬速度cにて除したものであるが、補間近似しない場合に上記の如く処理できる。
波数マッチングにおいて補間近似を行う場合の深さ方向の波数kyは、角周波数ωを伝搬速度cにて除したものであるが、本発明の1つである、補間近似しない場合には、方法(1)に従って、上記の如く処理できる。
但し、本発明の1つである、波数マッチングにおいて補間近似しない場合(方法(6)の1つ)は、式中の但し書きに表される深さ方向の波数が使用されるが、補間近似を行う場合の深さ方向の波数は、角周波数ωを換算伝搬速度(E1)にて除したものである。
但し、波数マッチングにおいて補間近似しない場合には、式中の但し書きに表される深さ方向の波数が使用されるが、補間近似を行う場合の深さ方向の波数は、角周波数ωを換算伝搬速度(E1)にて除したものである。
これらにおいても、受信ビームフォーミングにおいて、方法(2)が併用されることがある。
最初の多次元フーリエ変換と多次元逆フーリエ変換を高速に実施することは重要であり、適切に各種の高速フーリエ変換アルゴリズムを使用できる。また、本明細書に記載されているビームフォーミング[方法(1)〜方法(6)等]以外のものも全て、同様に、補間近似処理無し又はその近似処理を通じた処理により実現できる。補間近似処理を行う場合において高精度化するべく、サンプリング周波数を高くすることがあるが、補間近似処理を行わない場合に任意位置の信号を生成できるのとは異なり、フーリ変換のデータ数が増えることには注意が必要である。但し、補間近似処理を行わない場合も、適度にオーバーサンプリングを行い、信号を高SN比化して処理する状況を実現することは重要である。
この様な中で、マイグレーション処理に基づいた場合[方法(6)]においても、方法(1)〜(5)に記載のビームフォーミング(複数の異なるビーム又は波動の同時送信時における一括受信信号や各々の送信に対する受信信号の重ね合わせのビームフォーミングや、仮想源や仮想受信機を用いる場合等を含む)を、補間近似を行う場合と、行わない場合とにおいて、実施できる。
方法(7):その他
尚、上記の方法(1)〜(6)は、主として、1次元アレイを用いた場合について説明したが、2次元アレイ又は3次元アレイの場合には、上記の如くして、各々において、他の1つ又は他の2つの軸方向に、横方向に関して行った処理を同様に施せば良い。これらは、直交曲座標系を含む全ての直交座標系で実施できる。即ち、単純に、上記の方法(1)〜(6)を、より高次の次元に拡張すれば良い。また、方法(1)〜(6)及びここに記載する方法(7)の処理中において、横方向又は縦方向の直流成分や低周波成分が生成されることがあり、その場合には、最後の逆フーリエ変換前の段階でスペクトルの零詰め処理を行うと良い。デジタル信号処理を開始するに当たり、前処理として、直流を切るべく、アナログ処理又はデジタル処理が行われるが、角スペクトルにおいてスぺクトルが零詰めされることもある。
また、非特許文献9等にある他のフーリエ変換を用いたビームフォーミングにおいても、方法(1)〜(7)の中で開示した方法を用いることも可能であり、同効果を得ることができる。
例えば、非特許文献9の2.4節には、波動方程式の一般解(グリーン関数)を用いて任意のビームや波動を計算する方法が開示されている。そこでは、解析的に計算する例として、球面波や円筒波、平面波が扱われている。グリーン関数を用いる特徴として、求める信号は、周波数領域において、分母に、
を持つ。その方法を用いて、円筒座標系や球座標系、他の如何なる直交座標系においても、グリーン関数を用いて演算可能である。
つまり、方法(1)〜(7)の中で開示した方法又は数式(波数マッチングにおいて補間近似を行わない場合と行う場合)において、求める信号のスペクトルが、分母に式(GR1)又は(GR2)を持つ状況において演算すれば良い。方法(1)〜(7)に記載の方法や数式は、その他の様々な方法やビームフォーミングに応用できる。
また、グリーン関数を用いるこれらの場合において、点源を考えることができることから、物理開口の前後に設定される仮想源(特許文献7や非特許文献8)を表すのに適している。その場合、次段落にて述べる物理開口(素子)の実際の放射パターンに対する処理は重要である。
また、本方法(1)〜(7)は、例えば、非特許文献9の3.2節に記載のある開口(素子)の放射パターンを加味した演算を応用することができる。その際には、物理的又はソフト的なアポダイゼーションにより、適切に信号強度が補正されて、信号処理されることもある。本明細書に数多く記載されている通り、例えば、ISARや非線形処理、アダプティブビームフォーミング(非特許文献10)等を始めとし、その他、様々な処理を施し、高分解能化(特に、伝搬方向と直交する方向)やサイドローブを抑圧することによる高コントラスト化が行われることがある。非特許文献11等にあるコヒーレントファクター等も適用できる。また、それらに限られるものでも無く、アポダイゼーション(複素信号を用いてディレイを兼ねることもある)が適切に行われる。尚、アポダイゼーションは、伝搬方向のみならず走査方向にも可変である場合を含む。
また、方法(1)〜(7)は、様々な位置の送信又は受信の開口を用いた場合やその他の様々なビームフォーミングを行う場合にも用いることができる。例えば、非特許文献9に、豊富に、例が提示されている。例えば、7.3節にあるGeophysical Imaging(例えば、式7.9〜式7.12の形に注目)や、いわゆるX線CT(Computed Tomography)等の記載があり、これらの他、天体観測等にも、本方法(1)〜(7)を使用できる。非特許文献9の7.2節に記載のある透過イメージングの場合に開示されている図7.3及び式7.5〜式7.9も注目に値する。これらにおいて、波数マッチング等を含め、補間近似処理を行うことなく、処理できる(それらにおいて、補間近似処理を行うことはある)。
また、本方法(1)〜(7)は、所定のバイプレーンやマルチプルプレーン、所望する任意方向に拡がるプレーン若しくは断層面(それらにおいて、プレーンや断層面等の平坦とは限らず、曲面であることもある)、又は、面では無く線上(線は直線又は曲線)のイメージ信号を、選択的に、直接的に、生成できる特徴を持つ。例えば、3次元又は2次元のイメージ信号を基に像を提示することができる中で、それらのイメージ信号を基に像を提示することもあるし、単独に、それらの像を提示することも可能である。また、信号処理において、補間近似を通じて、それらのイメージ信号や像が提示されることもある。また、それらにおいて、イメージ信号や像を基に計測された変位や歪、温度等、計測データが、単独に表示されることもあるし、それらの像に重畳されて表示されることもある。
本明細書にて複数回、記載している通り、アポダイゼーションは、様々な方法で決められて実施されうるものである。非特許文献10等に記載されている様々なアダプティブビームフォーミングやミニマム バリアンス ビームフォーミング、Capon法等々がある。これらにおいて、共分散行列を正則化する際、正則化の程度を調整するパラメータ(正則化パラメータ)は、各位置の信号のSN比等に基づき、各位置に適切に決めることのできるものであり、空間的に異形(variant)にして処理することが可能である。また、変則的に、正則化オペレーターに単位行列を用いるのではなく、勾配作用素やラプラシアン等々の他の正定値のオペレーターを使用することも可能である。イメージ信号を高分解能化(特に、伝搬方向と直交する方向)することができ、サイドローブを抑圧することによる高コントラスト化を行うことも可能である。また、独立成分分析(独立信号分離)においても、同様にして共分散行列を正則化することは有効である。これらの正則化法はこれまでに開示されていない。若しくは、両処理において、特異値分解や固有値分解に基づき、ランクを下げて、処理を安定化することも行われている。ビームフォーミングにおける他の方法でも同様に、これらの処理は有効である。他に記載している通り、MIMO(Multiple-input and Multiple-output:送信側及び受信側において複数のアンテナを組み合わせて送受信信号の帯域を広げる無線通信技術)やSIMO(Single-input and Multiple-output:送信側において1つのアンテナを用い、受信側において複数のアンテナを用いて受信信号の帯域を広げる無線通信技術)を用いることも有効である。また、本願発明者は、以前より、包絡線検波の他に絶対値検波や冪乗検波を好んで使用しているが、非特許文献11等にあるコヒーレンスファクターは有効である。絶対値検波や冪乗検波は、波動の波打ちを可視化する場合に有効である。絶対値を取ったり、冪乗を施すと、特に次数が高い場合に、高い周波数成分を持つこととなるが、波動の振幅そのものに輝度を割り当てたり、カラーを割り当てて表示することもある(これらは、バイアスを加える検波と捉えることもできる)。非特許文献10には、他の様々なアダプティブビームフォーミングが記載されているし、本明細書にも、MUSIC(Multiple Signal Classification:受信信号の相関行列の固有値又は固有ベクトルを用いる無線通信技術)等々の様々な処理を記載してある。また、有効な処理はその限りでは無く、他にも様々なものがある。この様な様々な処理を、ビームフォーミングの前処理、処理中、処理後に行うことができ、アポダイゼーションのレベルで実施することも可能である。その際には、相関処理を基礎とした時空間的な位置合わせを施した上で処理することは極めて有効である。
また、本発明においては、特に、rfデータを取得した時間方向(距離方向)に積分処理(演算)を行い、信号のSN比を向上させることがある。この積分処理も、アナログ処理(いわゆる積分器)やデジタル処理(積分器又は積分演算)により行われる。
また、上記においては、アポダーゼーション処理には演算量が少なく容易である重み値との積を計算することについて説明したが、本発明はこの限りではなく、線形システムにおいて空間領域と周波数領域とにおける積と畳み込み積分とが双対の関係に基づき、畳み込み積分が行われることがある。それぞれの深さ位置毎において、又は、それぞれの開口素子からの等距離毎において、適切にアポダーゼーションすることが可能である。
方法(1)〜(6)を用いて本実施形態に係る装置によって生成される多方向の偏向ビームや平面波を重ね合わせる処理により、上記の横方向変調信号(イメージ信号)や、横方向に広帯域化されて横方向に高分解能化された信号(イメージ信号)が生成されることがある。単独送信の場合と同様にして、物理的又はソフト的、又は、両者のステアリングが各々において行われることがあるし、全てに、同一のそれらのステアリングが施される場合も有る。受信ビームフォーミングはソフト的に行うことを中心に記載したが、必要に応じて、受信ディレイや受信アポダイゼーションを用いた受信ビームフォーミングを、物理的に、単独又は併用して実施することもある。一方、送信ビームフォーミングは物理的に実施することを中心に記載したが、例えば、平面波を送信したり、複数のビームや波動を送信する等して、高速フレームレートを得ることができる一方、開口面合成を行うべく、一素子ずつに送信を行うこともある(多方向開口面合成を行うことも可能であり、平面波や円筒波、球面波等をコーディング送信し、デコーディングして開口面合成を行うことも可能である)。ソフト的には送信と受信を逆に考えることや実施することが可能であることも上記の通りである。平面波はフォーカスビームに比べ、より深い位置まで波が到達する(エコーも比較して深い位置から得られる)が、変位を計測すること等を目的とした場合の波動又はビームとしてのSN比は比較して低い。そもそも横方向の分解能も比較して低い。一方、多方向の平面波を重ね合わせた場合、位置に依らず、ほぼ等しい横方向分解能が得られる。これに対し、フォーカスビームを使用する場合には、フォーカス位置において複数方向のビームを交差させることは有効であるが、高い横方向分解能を複数に位置で得ようとする場合には、マルチフォーカシングを行うこととなる。何れにせよ、複数の波動又はビームを同時送信した場合の受信信号や、対象が同時相でも異なる時間に送信して受信されたものを重ね合わせたものに関して、高速にビームフォーミングを成し遂げることができる。また、搬送周波数の異なる波動を複数個使用して、軸方向に広帯域化されて軸方向に高分解能化された信号(イメージ信号)が生成されることもある。それらの場合に、スペクトルが重なる様に広帯域化されて高分解能化されることがある。これらの複数のビームも同時に並列的に生成されることがあるし、計測対象が同一の時相であるが、異なる時刻に生成されることもある。多方向の波動は、上記の多方向開口面合成によって生成されることもある。
尚、偏向角度を大きくした場合に、反射体や強散乱体の結像位置が空間的にずれることがある。例えば、偏向角度を開口素子正面に対して、平面波を、偏向角度を小刻み(例えば、1°ずつ)に±45°まで変化させて送信してビームフォーミングした信号を重ね合わせると、正面方向に開口面合成した場合を模擬でき、横方向には偏向角度±45°に相当する帯域までは得られない(重ね合わせ時に信号が相殺される)。正面方向のビームフォーミングを角スペクトルとして平面波に分解した場合を考えると当然のことである。時空間又は周波数空間における重ね合わせによる横方向の広帯域化を行う場合には、偏向平面波送信の場合に限らず、他の偏向ビームフォーミングを行った場合も、スペクトルが周波数空間にて重ならないものを重ね合わせる必要があるが、そこに、その結像位置が空間的にずれる原因がある。従って、偏向角度の大きい信号を重ね合わせる場合には、ビームフォーミングの際の送信時、又は、受信ビームフォーミング前の受信信号、受信ビームフォーミング中、ビームフォーミング後のいずれか少なくとも1つの時点にて、信号の位置補正を行う必要を生じることがある。これらの信号のスペクトル加工や非線形処理による超解像を行う場合において、重ね合わせ処理(重ね合わせのスペクトル加工や非線形処理、又は、スペクトル加工や非線形処理の重ね合わせ等)を併用する場合には、位置のずれが結果に齎す影響(位置の誤差等)は顕著となり、その様な位置補正は重要となることが有る。この他、換算伝搬速度の周波数依存性等も位置ずれを齎す要因であり、また、異なる周波数の信号を重ね合わせる場合においても同問題を生じることがあり、同様に処理されることがある。位置補正に関しては、段落0369等にも記載してある。動き補償や位相収差補正の様々な信号処理技術を使用できる。また、信号強度補正については、段落0663等にも記載してある。尚、弱散乱信号のビームフォーミング成分やスペックル成分に関しては、それらの決定的な信号とは異なり、本願の発明者が発明した散乱体等を想定した仮想音源や仮想受信器(特許文献7、非特許文献8)を用いた実験を通じて確認されている通り、位置補正処理を行うこと無く、イメージングや変位計測に使用できる(例えば、変位計測には平面波送信とガウス型アポダイゼーションの併用が有効であり、フォーカシング時には2乗関数等の冪乗型アポダイゼーションが有効であり、後者は、単独ビームフォーミングにおいても高分解能である)。
また、マルチフォーカス(ビーム伝搬方向の複数個所に送信フォーカスを形成する通常のマルチフォーカスに限らず、横方向を含めて、任意の複数の位置に送信フォーカスを取ることを含む)を形成するべく異なる位置にフォーカスした波動を複数個送波して受信ビームフォーミングを行う処理が行われることがある。また、1つの送信ビームに対して複数位置における受信ビームや複数方向の受信ビームを生成する処理が行われることがある。また、ステアリング角度の異なる複数方向への送信に基づくビームフォーミングが行われることがある。他には、干渉の少ない離れた位置におけるビームフォーミングや、送信と受信を行うことを基礎として1フレーム内にて分割されたそれぞれの部分においてビームフォーミングを行うことがあり、それらの複数のビームフォーミングを並列に処理すること等の並列ビームフォーミングを行い、各々において、複数のビームフォーミングの結果が得られた関心領域内の各位置においてそれらの結果を重ね合わせる処理が行われることがある。方法(4)そのものは、関心領域内を伝搬した波動であれば、干渉した波動の受信信号に対しても処理が可能であるという特徴を有し、これを生かして、高フレームレートを実現できるものである(方法(4)は、如何なる送信ビームや波動、単数又は複数の送信に対しても受信ビームフォーミングが可能である)。また、各種信号分離処理を施した上で、適切な信号成分を用いてビームフォーミングが行われることもある。干渉の程度に依存して、関心領域外の波動を除くことなく、処理することもある。
その他、波動の送信又は受信の開口は各々の専用開口であることがあるが、両者を兼ねることもあり、自ら送信した波動の応答を受信するのみとは限らず、他の開口より送信された波動を受信することもあり、やはり、並列処理される場合を含み、生成されたビームフォーミングの結果が重ね合わせされることがある。纏めてみれば、上記の重ね合わせは、同時、又は、波動を伝搬させる対象(通信対象)や観察対象の状態が同一又は略同一である同時相、又は、別の時刻、又は、別の時相において、各開口において1つ以上のビームフォーミング、又は、送信又は受信が行われることもあり、また、同様にして、開口の1つの組み合わせで1つ以上のビームフォーミング、又は、送信又は受信が行われることもある。また、同様にして、開口の複数の組み合わせの各々が1つ以上のビームフォーミング、又は、送信又は受信を行うこともある。また、それらにおいて、ビームフォーミング、又は、送信又は受信の結果が複数得られる場合において、それらの重ね合わせの演算を通じて新たなデータが生成されることがある。
それらの重ね合わせ処理は、線形処理であるため、上記の方法(1)〜(6)の計算過程において、周波数領域で同一の周波数を持つ複数の複素スペクトル信号を重ね合わせることもでき、その場合には、重ね合わされた複素スペクトルを一度に逆フーリエ変換すれば良く、複数のビームフォーミングされた波動の生成後に空間領域で上記の如く重ね合わせる場合に、重ね合わせる波動の数だけの逆フーリエ変換を必要とするよりも、高速に処理を完了することができる。到来波等、これに限られないが、角スペクトルの状態で重ね合わされたものが、例えば、単一の方向や複数の方向に処理されることもある。処理そのものとしては、複数の波動を空間領域で重ね合わせてフーリエ変換を行い、重ね合わされた角スペクトルを求めると良い(フーリエ変換は一度で済む効果がある)。対象物の存在する位置等を確認できることがある。
また、上記において、複数のビームフォーミングされた(少なくとも、所定の送信ディレイが掛けられ、さらに、送信アポダイゼーションが掛けられることもある)波動を送信する場合(方法(1)〜(6)の内、方法(2)及び(3)の開口面合成は除く別の方法)においては、物理的に同時に送信を行った場合に(送信される各波動の有効開口アレイ内の最初に励起される開口素子が同一時刻に励起される)、それぞれの受信信号は重なった状態でメモリ又は記憶装置(記憶媒体)に格納されているので、各方法に従って、1つのフレームのイメージ信号の生成処理を施せばよい(1フレームを分割してそれぞれの部分で処理する並列処理を行うことはある)。
これに対し、ビームフォーミングを異なる時刻で複数回行う上記の別の場合においては、各受信開口素子のチャンネルにおいて、有効開口アレイ内の最初に励起される開口素子から送信されるタイミングを把握できる本実施形態に係る装置においては、デジタル信号処理ユニットにおいて、同時に複数の波動を送信したときの受信信号と同じ信号を得るべく複数の受信信号を適切に重ね合わせて、同様に処理することもできる(この場合も、1フレームを分割してそれぞれの部分で処理する並列処理を行うことがある)。これらの場合においては、実質的に、最初のフーリエ変換は1回で済む(それぞれの部分で分割して処理する場合はある)。
この様なアクティブの場合には、開口面合成(方法(2)及び(3))を除くビームフォーミングにおいて、さらに、高速にビームフォーミングを完了できる。但し、方法(2)及び(3)用に収集された開口面合成用受信信号に必要に応じて送信のビームフォーミング(必要に応じて送信ディレイ又は送信アポダイゼーションが掛けられる)が施されて重ね合わせた上で処理され、同様に処理されることがある。ちなみに、送信ディレイをかけずに、受信信号を重ね合わせると、この場合、ステアリングせずに平面波送波したときの受信信号を生成できる。開口面合成処理においても、分割並列処理を行って、高速化されることがあるが、特に、本願の発明者の過去の発明である多方向開口面合成を行う場合には、1つの時相において収集された信号から、複数方向のビームを生成でき、本願発明の装置又は方法において処理する場合においては、各方向の偏向角度の下で、1回のフーリエ変換にて得られた同一の角スペクトルデータを用いた計算を行い、最終的に、各々の偏向角度に関して得られた多次元スペクトルの逆フーリエ変換を複数回実施することなく、それらの多次元スペクトルを重ね合わせて、1回の逆フーリエ変換により高速に最終的なイメージ信号を生成することができる(分割処理を行うことはある)。しかし、開口面合成にせよ、受信の固定フォーカシングや他のビームフォーミングにおいても、パッシブな処理に行う場合には、上記の通り、重ね合わされた受信信号(すなわち、1つの角スペクトル)に対して、例えば、単一方向又は複数の異なる方向に処理を行うことは有効である。
また、これらの処理において得られ複数の波動の重ね合わせが得られる場合においては、例えば、伝搬方向や周波数、又は、帯域が異なるものであれば、スペクトルを分離して処理することも有効であり、その他に、符号化、MIMO、SIMO、MUSIC、独立信号分離(独立成分分析)、主成分分析、符号、又は、パラメトリックな方法等を用いてデジタル信号ユニットにおいて分離することができる。尚、重ね合わせ処理は、それら以外においても有効となることがある(例えば、同時相において複数個得られた信号を用いることにより、SN比が向上する等)。
独立信号分離(独立成分分析)は、例えば、鏡面反射信号と散乱信号を分離するのに有効であり、同鏡面反射信号を含むものに対し、二つ以上のフレーム間において、独立した散乱信号を持つ状態か、独立した散乱信号が混入した状態を実現して処理を行うと、共通して存在する鏡面反射信号を効果的に分離することができる。血流等の組織変位を計測する場合の血管等からの高強度の信号を検出・分離(除去)したり、血流領域の範囲を特定(検出)したりすることを自動化するために有用である。他にも、臓器や腫瘍等の境界の検出や抽出に有用であり、同様に、鏡面反射(組織)の検出、分離(除去)、特徴的な領域の範囲を特定(検出)することができる。同時に、混入した独立した散乱信号を分離することも可能であり、フレーム間の信号の和(つまり、加算平均)や差の各々からそれらに該当する信号を検出するよりも、独立成分分析(独立成分分離)を用いた方が、鏡面反射信号の検出能および混入信号の分離能が高い。検波(包絡線検波、二乗検波、絶対値検波等)した上で処理した方が、それらの能力は高い。このことは、視覚的に確認できるに留まらず、決定的又は確率統計的に定量的に評価して確認できる。また、変位や歪等の計測を応用し、並進、回転、変形等に関して動き補償(並進、回転、伸縮)を施して、位置合わせを行って処理すると、それらの能力が向上する((例えば、3MHz周波数のシミュレーションで、相互相関ベースの変位計測を行った場合、散乱信号の標準偏差が1.0のときに0.1〜0.5の鏡面反射率分布も、同程度の強度の散乱信号が混入しても、動き補償できる)。空間分解能のある処理が望ましい。尚、変位等の計測は、検波前に行った方が精度が高いが、検波後において行われることもある。また、検波前において各種計測方法を用いて高精度に変位計測を行った場合には、オーバーサンプリング又はアップサンプリングを通じて行われることのある時空間領域におけるブロックマッチング(位相マッチング)、又は、周波数領域における位相回転に基づく位相マッチングによる動き補償は有効である。独立した信号は、医用超音波トランスデューサであれば、トランスデューサを傾けて別の角度から同一位置の鏡面反射信号を拾うとか、ステアリング処理に基づいて別のサブ開口を用いて信号を拾えばよく、また、スキャン面をずらして同一の鏡面反射信号源(同一の構造や組成の連なり)からの鏡面反射信号を含む信号を収集することも有効である(計測手技)。対象の動き(スキャン面がずれるとか他組織からの信号が混入する)や変形(ノイズを含んだ状態と考えられる)を積極的に応用することも可能であり、上記の如く、鏡面反射信号を含む信号を収集すれば良い。また、医用超音波以外の超音波(ソナー等)や電磁波を使用する場合においても同様にして、センサーや信号源、検出器の動き(手ぶれやそれらの保持器の擾乱等を含む)、波動又はビームのステアリング、対象の動きや変形を応用して、反射波又は透過波を収集して処理すれば良い。回路において生じるノイズが混入して効果を齎したり、積極的に発生させたアナログ又はデジタル(プログラムによるソフト的なものを含む)のノイズを混入させることもある。尚、これらの処理は、鏡面反射信号と散乱信号の分離にのみならず、信号間に有る共通信号と混入信号において、同効果を得るために使用することもでき、応用範囲はこれに限られるものではない。信号の時空間のずれは変位や歪によるものとも限らず、媒体そのものの持つ不均質な伝搬速度や媒体の擾乱や条件変化(例えば、圧や温度変化等々)に伴う伝搬速度の変化等にもより、また、純粋に信号解析において処理されることがある。フレーム信号について述べたが、ビームフォーミング(開口面合成を含む)されたものに施されることもあるし、受信ビームフォーミング前又はビームフォーミングが全く行われていないもの(開口面合成用送受信信号)に処理を施した上でビームフォーミングが行われることがある。つまり、ビームフォーミングの前、中、後の少なくともいずれかにおいて行われることがある。各々の場合において、超解像が併用されることがある。上記の動き補償処理は、時空間のずれを補正する他、例えば、フォーカシングビームや平面波の送信時の信号を比較参照した時(例えば、超解像において)のずれ等の補正にも有効である。また、ビームフォーミング前又はビームフォーミング中において行われることのある上記の動き補償処理は、DAS処理におけるDelay(ディレイ:遅延)処理を兼ねることがある。また、検波(絶対値検波、二乗検波、包絡線検波等々)や後に詳述する線形又は非線形処理を通じた高分解能化も、同様に、ビームフォーミング(開口面合成を含む)されたものに施されることもあるし、受信ビームフォーミング前又はビームフォーミングが全く行われていないもの(開口面合成用送受信信号)に処理を施した上でビームフォーミングが行われることがある。つまり、ビームフォーミングの前、中、後の少なくともいずれかにおいて行われることがある。それらの処理において広帯域化を行う場合には、必要に応じて、時空間においてオーバーサンプリング又はアップサンプリングが行われるか、周波数領域においてスペクトルの零詰めを通じた広帯域化が行われる(逆フーリエ変換を行えば、オーバーサンプリング又はアップサンプリングの結果が得られる)。
信号分離は、若しくは、冪乗演算による高周波化且つ広帯域化(次数が1より大きいとき)、又は、低周波化且つ狭帯域化(次数が1より小さいとき)処理を行った上で、周波数領域において、高精度に行われることがある。分離後の信号の復元も使用した冪乗次数の逆数乗をすればよく、容易である。
一方で、方法(1)〜(6)において、スペクトルを周波数分割して、1フレームのイメージ信号を生成するべくメモリ又は記憶装置(記憶媒体)に格納した受信信号に対して、波数マッチング後に表される周波数領域においてスペクトルが分割された状況で処理された波動を複数個得ることが行われることもある。角スペクトルの状態で分割され、各々が処理されることもある。何れにおいても、信号成分の帯域を限定して処理すれば良い。複数の波動が重なっている場合においても、スペクトルを同様に周波数分割することもある。これらのスペクトルの周波数分割により、新たな波動パラメータ(周波数や帯域、伝搬方向等)を持つ物理的には疑似の波動が生成されたことに該当する。分割されたそれらのスペクトルが並列処理されることもある。重ね合わせ処理も新たな波動パラメータを生成する処理であるが、空間領域で重ね合わされて角スペクトルが重なったものである場合もあるし、逆フーリエ変換前にスペクトルが重ね合わせされる場合もある。しかし、必要があれば、フーリエ変換後の角スペクトルを重ね合わせる、又は、逆フーリエ変換後の信号を重ね合わせることもある。尚、フーリエ変換の可逆性(フーリエ変換と逆フーリエ変換)を応用し、生成された信号から受信ビームフォーミング前(開口面合成の場合は送受信ビームフォーミング前)の信号に戻し、他のビームフォーミングが行われることもある(例えば、送信又は受信のステアリング角度が別のものや、一つの送信に対してステアリング角度の異なる複数の波動等)。
超解像処理として、以下に、スペクトルの重み付け処理、非線形処理、位相回転を除いた瞬時位相のイメージングを記載するが、本フーリエビームフォーミングの他に、DAS処理の下で処理されることもある。例えば、平面波や円形波、円筒波、球面波等の横方向に広く拡がった波の送信時においては、高速イメージングが可能であることは上記の通りであるが、他の場合を含めて、上記の如く送信又は受信のステアリング角度の異なる波動を複数個生成して重ね合せし、横方向に広帯域化した上でそれらの超解像処理を施すことは、それらの効果を増強させることができて有効である。平面波等の重ね合わせは、位相に関しては深さ位置に依らないフォーカシングを行った場合を実現し、上記のスペクトルの重み付け処理に基づく、例えば、ガウス関数を用いたアポダイゼーションを行った場合において、矩形波や冪乗関数を用いたアポダーゼーションに基づく開口面合成を用いた高分解能イメージングをターゲットとしてそのスペクトル強度に補償することは有効である。いわば、その重ね合せは、フーリエイメージングにおける平面波分離に基づくAngularスペクトルの計算の逆を計算していることに該当する。フォーカスや開口面合成を行ったものが重ね合せ処理されることもある。重ね合わせするステアリング角度を調整することは重要であり、角度差が小さいと横方向にスペクトル強度を相対的に見ただけでは広帯域化されていない(その相対的にスペクトル強度の低い広帯域化されなかった帯域のSN比はある、特に開口面合成処理時)が、ある程度の角度差を設けて重ねるとスペクトル強度がある状況にて広帯域化される。角度差の小さいときのその相対的にスペクトル強度の低い帯域については、例えば、そのスペクトルの重み付け処理は有効である。位相の異なるものの重ね合わせであるために、信号の強度は低いので、必要に応じて、倍精度の計算処理(ビームフォーミングや超解像処理等)を行う必要がある。一方、ある程度の角度差がある場合は、少ない波動又はビームで容易に広帯域な信号が得られる。それらにおいて、波動のエネルギーを正規化して重ね合わせることも有効である。同様にして、他の二つの超解像も有効となる。無論、フォーカス位置や超音波周波数の異なる波動を重ね合わせて行う重ね合せ処理も超解像の方法として有効である。各々の波動に超解像を施して得られる結果を重ね合せることもできるが、重ね合せして処理した方が処理量が少なく、効果も高い。重ね合せにおける位相補償(音速の不均質性を補償すること)は重要である。
また、いわゆるCompressedセンシングが行われることもある。同様にして、DAS処理において行われることもある。上記の3つの超解像と同様に、複数の波動の重ね合わせに対して施されることもある。上記の3つの超解像の方が計算量が少なくて済むが、Compressedセンシングを含め、それらの組み合せが処理されることもある。
ここで、本発明において実施されることのあるDAS処理の例を幾つか纏めておく。
・通常のデジタル診断装置にて行われるDAS処理(方法D1)
受信ダイナミックフォーカシングを行うべく、AD(Analogue-to-Digital)変換処理後の各チャンネルのメモリに格納されている超音波信号の読み出しにおいて、各チャンネルの各受信素子位置と各関心点との距離で決まるデジタル受信の時刻を意味するアドレスのメモリからその格納されている信号を読み出す(すなわち、Delay)。そして、有効開口幅内のそれらの信号を加算する(Summation)。この方法によると、Delayにおいて受信信号のサンプリング周波数で決まる誤差を生じるため、ナイキスト定理に基づいてサンプリングすることは当然であるが、極力、高い周波数でサンプリングする。高速である特徴を持つ。
・方法D1を高精度化したDAS処理(方法D2)
方法D1に基づいてDAS処理を行う中で、Delay処理を高精度化するために、Hilbert変換に基づいて計算される受信信号の解析信号a(t)に対し、複素指数関数を掛け、位相回転を行うDelayを掛けることにより、サンプリング時間間隔よりも短い時間内t0の精度を得て、加算処理する。
a(t-t0)=a(t)exp[-jω0(t)t0]
ここで、ω0(t)は、超音波公称周波数、または、重心(中心)周波数、瞬時周波数の内のいずれかである。方法D1よりも精度が高いが、サンプリグされた位置の周波数ω0(t)を用いたあくまでも近似処理である。減衰や散乱等の周波数変調の影響を受ける。方法D1と同様に、サンプリング周波数は高い方が良い。高速性を備えている。
・理論的に最も高精度なDAS処理(方法D3)
本発明者が過去に発明した方法であるが、関心点位置の信号を含む局所信号のスペクトルA(ω)に周波数領域において複素指数関数を掛け、その局所信号の位相を回転させてDelayを行う。
A'(ω)=A(ω)exp[jωt0]
サンプリング定理を満足する補間処理であり、理論的には最も精度が高いが、計算時間を要する。
・フーリエビームフォーミング(方法D4)
本発明の根幹たるビームフォーミングである。受信信号の多次元周波数領域において、デジタル波数マッピングを行う方法であり、高速フーリエ変換を行い、方法D3と同等の精度を格段に高速に計算できる。他に報告されている通常のフーリエイメージング法と異なる特徴として、そのデジタル波数マッピングにおいて補間近似処理を要さないが、より高速化するべく、補間近処理を行うことも可能である。但し、その場合、アーチファクトを生じ、その精度の低下を低減するべく、サンプリング周波数を高くすることが求められる。
これらの処理において生成される複数の波動を用い、デジタル信号ユニットにおいて、任意方向に移動する変位ベクトル(多次元自己相関法や多次元自己ドプラ法等(非特許文献13)を使用して変位ベクトル成分に関する連立方程式を解くという方法で、本願の発明者の過去の発明)や通常の1方向の変位が高精度に計測される(求める変位成分の数よりも多くの方程式を導出し、過剰決定(over-determined)的なシステムにおいて、最小二乗法や計算結果の平均値、波動が重なって高周波且つ広帯域である状態で精度の高い結果を得る等、特許文献5)。生成される波動ひとつひとつから、方程式が1つずつ導出される。1つの波動に通常のドプラ法が施されることもある。ひとつひとつの波動は、波動が重なったものであることもあるし、スペクトルが周波数分割又はスペクトルが加工されたものであることもある。ひとつひとつの波動は、高周波数であることが望ましく、低周波スペクトルを除去したものが使用されることもあり、また、高空間分解能も必要とされる場合には広帯域であることが望ましい(非特許文献14)。その分割と加工には、スペクトルを重み付けできる窓が使用されることもある。変位(ベクトル)からは、空間又は時間に関する微分フィルタを用いた偏微分処理により、歪(テンソル)、歪速度(テンソル)、速度(ベクトル)、加速度(ベクトル)が得られる。これらは、(粘)ずり弾性率や粘性、平均垂直応力、密度等を求めるために使用できる。この他に、変位(ベクトル)を計測する方法として、本願の発明者の過去の発明である、多次元クロススペクトル位相勾配法(ブロックマッチング法の1つ、特許文献6や非特許文献15等を参照)やデジタルデモジュレーション法(特許文献7)があり、同様に、歪等の計測も可能である。また、これらを用いると、ずり波や低周波振動の波の伝搬を計測することもできる。(粘)ずり弾性率、ずり波の伝搬速度、伝搬方向、ずり波の変位、周波数、位相、振動振幅、振動速度、振動加速度等を計測できる。これらは、分布としても求めることができる。
この変位計測を高精度化するために、本願の発明者は過去に正則化を施すことを発明した。処罰項の正則化パラメータを決めるべく、例えば、a posterioriに、計測された変位(ベクトル)のばらつきを(局所)定常過程の下で推定して用いる(特許文献6)ことや、a prioriに、波動又はビームの特性等を用いて、Ziv−Zakai Lower Bound (ZZLB、例えば、非特許文献16に表されるばらつき)を用いること等を発明した(例えば、非特許文献17、18)。
本発明では、これらのばらつきやZZLBを、上記の如く導出されるドプラ方程式を連立する際に、各方程式の信頼度を調節するべく、重み付けするために使用する(信頼度が高いものは重く、信頼度の低いものは低く設定する)。すなわち、関心領域内の各位置において、上記のひとつひとつの波動又はビームからそれらの値を求め、その各位置において対応する各波動又は各ビームから導出されるドプラ方程式の各々を重み付けして連立方程式を解く。最小二乗法を用いて、Weighted Least Squares Solusion(WLSQS)を、a posteriori又はa prioriに求めることができる。
上記の導出されるドプラ方程式の連立方程式が、
但し、uは関心点又は関心点を含む局所領域の未知変位ベクトル又はその分布、bはフレーム間に生じた関心点又は関心点に関する局所領域の位相変化又はその分布を表すベクトル、Aは対応して並べられた各関心点又は各関心点に関する局所領域の周波数成分又はその分布からなるマトリクスであり、Aとbの成分は、時間方向や空間方向に移動平均処理されていることがある。また、デモジュレーションされている場合には、搬送周波数を持つ2方向又は1方向の変位成分のみを未知とする状態のドプラ方程式が連立された状態にある。
と表されるとき、ばらつきやZZLBの逆数を用いて、そのもの、又は、そのべき乗、又は、その分布を表すマトリクスWを用いて重み付けして解く。
詳細には、1つの関心点又は局所領域に注目すると、波動又はビームp(=1〜N)の内の1つから導出されたドプラ方程式1つ(又は、複数、すなわち、クロススペクトル位相勾配法を用いた場合には、局所領域で求められるクロススペクトラムに対して信号帯域内の位相スペクトラムに関して成立する式を連立した式の数、また、多次元自己相関法や多次元ドプラ法に基づいてブロックマッチングを行う場合には、局所領域内の位置において成立する式を連立した式の数)に対し、その関心点又は局所領域で計算されたZZLBの逆数値Wpはその関心点又は局所領域におけるそのビーム方向の変位のZZLBの逆数であるから、例えば、その関心点又は局所領域の未知変位が3次元ベクトルu = (Ux,Uy,Uz)Tであるときは、
但し、Axp、Ayp、Azp(p=1〜N)は、x、y、z方向の周波数成分であり、式(A1)又は式(A2)のマトリクスAの成分であり、また、bp(p=1〜N)は、フレーム間の位相変化であり、同式のベクトルbの成分であり、Wpは式(A2)のマトリクスWの対角成分である。クロススペクトル位相勾配法(ブロックマッチング法の1つ)を用いる場合と、多次元自己相関法や多次元ドプラ法に基づいてブロックマッチングを行った場合においては、連立された方程式の全てにWpが掛かる(すなわち、1つのpにおいて、複数の方程式が連立され、それらの全てにWpが掛かる)。
例えば、非特許文献16に記載のZZLBに従って、Cramer-Rao Lower Bound (CRLB)が成立するとき、その二乗である分散は、
但し、Tは多次元自己相関法や多次元ドプラ法のときは周波数や位相変化を求める際の移動平均幅であり、多次元クロススペクトラム位相勾配法や多次元自己相関法、多次元ドプラ法にてブロックマッチングを行うときは変位計測の局所領域のビーム方向の長さであり、また、f0bはビーム方向の超音波周波数、Bbはビーム方向のRectangular帯域幅であり、SNRcはエコーのSN比であるSNReと相関SN比であるSNRρ(変位や対象の変形に伴って波形が歪むことにより相関性が低下して生じるノイズ成分に対する信号比)
但し、ρはフレーム間で局所クロススペクトルを求めた際の相関値、又は、移動平均幅の長さにて局所に求められた相関値である。
との結合(Combined)SN比
である。
従って、ばらつきは、例えば、特許文献17に記載の通り、T、f0b、Bb、SNRc、SNRe、SNRρ、ρを計測して用い、推定すれば良い。f0bは、非特許文献19に記載されている通り、瞬時周波数又は第1次モーメント(重心、つまり、重み付きの平均値)を求めれば良く、また、Bbは第2次の中心モーメントの平方根を求めれば推定できる。
多次元信号の場合において、ビーム方向の周波数軸と直交する2軸(すなわち、3次元)又は1軸方向(2次元)も含めて計算されることもあり、例えば、信号が3次元の場合、
一方、エコーのSN比SNRe、は、対象物又は校正ファントムを対象として繰り返しエコーを収集して統計的に推定することができる。対象やその状態、計測の経験等に基づき、先験的に典型値を用いて決めてしまう場合もある。一方、相関SN比SNRρは各関心点において局所的に評価される相関値ρを用いて推定できる。これらの求め方は、これらに限られるものでは無い。また、いずれかの値が欠如して、ばらつきを絶対的には推定できない場合には、典型値を用いたりすることもできるが、正則化パラメータを設定する場合には、可能な範囲で表されたばらつきに未定の比例定数を掛け、この比例定数を変えながら得られる結果の良し悪しから最良の状況の結果が得られることもある(正則化について、例えば、特許文献6、非特許文献17や18)。
ここで、ビーム方向の第1次モーメントや第2次の中心モーメントが直接的に推定されずに各方向のそれらが推定される場合(例えば、信号が3次元の場合において、x軸方向の第1次モーメントf0xと第2次の中心モーメントBxは、
や、ZZLBとは別の方法が用いられる場合において、ビーム方向変位のばらつきが直接的に推定されずに変位ベクトルの各成分のばらつきが推定される場合には、以下の如く推定できる。つまり、それらの変位成分の計測誤差の確率過程が独立である仮定の下で、ビーム方向変位への誤差の伝搬を考えれば良い。例えば、3次元変位ベクトルの変位の平均値とばらつきの各々が、(mx,σx)、(my,σy)、(mz,σz)と推定されたとき、ビーム方向の変位の平均値mbeamとばらつきσbeamの各々は、以下の如く推定できる。
また、式(A4)〜式(A6)に記載のパラメータ(T、f0b、Bb、SNRc、SNRe、SNRρ)が各方向毎に与えられ、各方向の変位の平均f0x、f0y、f0zとばらつきσCRLBx、σCRLBy、σCRLBzが、各々、推定されたときは、ビーム方向の変位のばらつきσCRLBは、式(A8)に従って、
と推定できる。
関心位置の未知変位が2次元ベクトルu = (Ux,Uy)である場合も同様に導出される(未知変位が1つであり、とある一方向の変位Uやビーム方向の変位Uである場合には、得られる推定値そのものが使用される)。
関心点又は関心点に関する局所領域の個々において変位を求める場合には、その位置において成立する重み付きドプラ方程式(A3)[p=1〜N]を連立して成立する式(A2)を解く。波動又はビームの数(すなわち、式の数)Nは、未知変位成分の数以上である必要がある。但し、上記のブロックマッチングを行う場合には、上記の如く、1つの波動又はビームpから方程式(A3)の複数個が成立する。従って、他の変位計測法を用いる場合に比べて、少ない波動又はビームの数で計測が行われることもある。
また、同時に、正則化も施す場合には、関心領域内の複数箇所の関心点又は関心点に関する局所領域にて成立する式(A3)を全て連立し、未知ベクトルuが変位成分分布であるときの式(A2)を得、正則化された重み付き最小二乗解が求められることもある(Regularized Weighted Least Squares Solusion:RWLSQS)。その際の正則化パラメータに、ばらつきやZZLBが使用されることがある(ばらつきに比例する値、べき乗に比例する値等)。正則化については、例えば、特許文献6等に詳しい。上記ひとつひとつの波動の伝搬方向やビーム方向の変位のばらつきが全ての方向の変位の正則化パラメータに使用されることがあるし、ひとつひとつの波動やビームにおいて推定された各方向の変位のばらつきが各々の方向の変位の正則化パラメータに使用されることもある。例えば、未知3次元変位ベクトル(Ux,Uy,Uz)Tの分布として、x、y、z方向の各変位成分Ux、Uy、Uzの分布であるUx、Uy、Uzを部分ベクトルとする未知ベクトルu= (Ux,Uy,Uz)Tを求める場合において、ビーム方向の変位のばらつきWp(p=1〜N)を対角成分に持つマトリクスW、又は、各方向の変位のばらつきWpx、Wpy、Wpz[p=1〜N]の各々を対角成分に持つマトリクスWx、Wy、Wzを用いると、最小二乗化される誤差エネルギーE(u)とその解uは、以下の如く表される。
また、ばらつきやZZLBは、選択されたドプラ方程式を連立して求まる変位成分の計測結果に関して平均処理を施す場合もあり、その場合の重み付けに使用されることもある。ビーム方向の変位のばらつきの逆数Wp(p=1〜N)、又は、各方向の変位のばらつきの逆数(Wpx,Wpy,Wpz)[p=1〜N]を用いて、重み付きの平均が求められることがある。
尚、ばらつきは、定常過程やZZLB以外に、非定常過程の下でアンサンブル平均に基づいて求められることもあり、校正ファントムを用いて求められることもあるし、計測対象そのものから求めることもある。以上の様にして、正則化パラメータや重み付きマトリクスは決められるが、その他、対象やその状態、計測の経験等に基づき、先験的に典型値を用いて決めてしまう場合もある。また、この限りでは無い。
この様に、重み値や正則化パラメータは、空間分解能を持つ状態で高精度に設定できるが、変形が小さい場合や、計算量を低減する場合には、局所領域よりも広い領域(例えば、関心領域全体等)を対象とし、ばらつきを推定し、波動又はビーム毎に大局的に設定されて処理されることもある。計測そのものを可能にせしめるためと計測精度の高精度化には、本願の発明者が過去に発明した位相マッチング法(特許文献6、非特許文献15)が必要とされるが、計測の高精度化には他に報告のある伸縮法等が有用である。
また、Wpとして、ウィーナーフィルタを応用することもできる。時空間領域において、信号そのものに直接的に重み付けを施した上で、信号のイメージング又は変位計測を行う。信号は検波前又は検波後の信号r(x,y,z)である。
尚、ノイズ信号n(x,y,z)は、対象物又は校正ファントムを対象として繰り返しエコーを収集して統計的に推定することができる。例えば、ばらつきを用いることができ、定常過程を仮定して局所的に加算平均で推定する場合やアンサンブル平均で推定することもある。対象やその状態、計測の経験等に基づき、先験的に典型値を用いて決めてしまう場合もある。また、この限りでは無い。また、イメージングのために信号r(x,y,z)を検波するべく、包絡線検波、二乗検波、絶対値検波を行うときに、式(A12)や式(A13)を各位置にて掛けることもある。また、解析信号の共役を解析信号に掛けてパワースペクトルを求めて自己関数を求める場合にも同様にして重み付けすることができる。尚、解析信号を用いる変位計測法である自己相関法やドプラ法、その他、クロススペクトラム位相勾配法や相互相関法(解析信号を使用しない場合もある)等を用いる前の信号の前処理としても使用できる。
信号が2次元又は1次元の場合も、式(A12)や式(A13)のr(x,y,z)とn(x,y,z)の代わりに、各々、r(x,y)とn(x,y)、r(x)とn(x)を用いて同様に処理できる。また、各々のビーム又は各々のビームで走査して得られた関心領域において、大局的に式(A12)や式(A13)が求められて使用されることもある。式(A12)や式(A13)の代わりに、式(A4)〜式(A6)も同様に、直接的にエコーの重み付けに使用されることがある。
また、特に、多次元クロススペクトル位相勾配法(特許文献6、非特許文献15)を用いる場合には、時空間領域のみならず、周波数領域においてもウィーナーフィルタを応用することができる。上記の通り、ひとつひとつの波動又はビームに関し、同一の条件下で取得される変形又は変位の前後の信号間のクロススぺクトラムHp(ωx,ωy,ωz)[p = 1〜N]の周波数領域(ωx,ωy,ωz)における位相スペクトラムθ(ωx,ωy,ωz)の勾配(3次元未知変位ベクトル)を、最小二乗法を用いて求めるに当たり、
但し、PWpn(ωx,ωy,ωz)とPWps(ωx,ωy,ωz)は、各々、ノイズと信号のパワースペクトラムであり、PWps(ωx,ωy,ωz)には代わりにクロススペクトルの大きさの二乗(||Hp(ωx,ωy,ωz)||2)が使用されることがある。qは任意の正値である。
と表される重み付けを行って最小二乗化する。例えば、特許文献6の式(1)〜(14')には、重み付けにクロススペクトルの大きさの二乗(||Hp(ωx,ωy,ωz)||2)そのものが使用された場合の記載があるが、その重みの代わりにWp(ωx,ωy,ωz)が使用されることがあるわけである(別にビーム方向の変位のばらつきやZZLBが使用されることが有ることは上記の通りである)。尚、最小二乗化は、p=1〜NのN個の波動又はビームの各々に関して評価されて、各関心位置において一度に最小二乗化される。
尚、ノイズのパワースペクトラムPWpn(ωx,ωy,ωz)は、対象物又は校正ファントムを対象として繰り返しエコーを収集して統計的に推定することができる。対象やその状態、計測の経験等に基づき、先験的に典型値を用いて決めてしまう場合もある。また、この限りでは無い。
その他、式(A12)や(A13)の中にて表されるn(x,y,z)/r(x,y,z)や、式(A12')や式(A13')の中にて表されるPWpn(ωx,ωy,ωz)/PWps(ωx,ωy,ωz)は、上記のエコーのSN比SNReの逆数、又は、SNReと相関SN比であるSNRρとの結合(Combined)SN比の逆数を基に設定されることもある。また、空間分解能が有る状態か、各々のビーム又は各々のビームで走査して得られた関心領域において、大局的に式(A12')や式(A13')が求められ、式(A12)や式(A13)、式(A4)〜式(A6)と同様に、直接的にエコーの重み付けに使用されることがある(イメージング又は変位計測)。また、イメージングのために信号r(x,y,z)を検波(包絡線検波、二乗検波、絶対値検波等)する際に、式(A12)や式(A13)が使用されることがあるが、その場合には、式中の最初のスペクトルHp(ωx,ωy,ωz)[但し、局所信号又は関心領域に及ぶ信号のスペクトル]の二乗ノルムは使用しなくても良い。また、局所スペクトルHp(ωx,ωy,ωz)の共役をスペクトルHp(ωx,ωy,ωz)に掛けてパワースペクトルを求めて自己相関関数信号を求める場合も同様である。
未知変位が2次元ベクトルu = (Ux,Uy)や未知変位がビーム方向のU(1つ)である場合には、式(A12')と式(A13')においてH(ωx,ωy,ωz)の代わりに、同じく、変形又は変位前後の信号間のクロススぺクトラムH(ωx,ωy)とH(ωx)に関する各々のウィーナーフィルタを用いて同様に表される重みを用いることができる。
さらに、正則化を施す場合には、式(10)や式(10')に従い、同様に、上記のばらつき等が使用されて正則化パラメータが設定されることがある。
クロススペクトラム位相勾配法や他のブロックマッチング法を用いる場合には、単独に1つの波動又はビームを用いて2方向以上の変位ベクトルを求めることもでき、また、単独に1つの波動又はビームが使用されても、over-determinedシステムを構成することができる。
また、上記のいずれの変位計測を行う場合でも、over-determinedシステムにせずに計測を行うことも可能であり、その場合にも、上記の重み付けや正則化が行われることもある。
尚、観測された波動を基に対象の動きを検出、イメージする様々な技法もあり、例えば、医用超音波の分野では、血流や組織の変位や変形に関して、平均速度や分散等を基に、速度情報、動きの有無、複雑さ等を表示できるものがある。積極的に造影剤(マイクロバブル)が使用され、血管内や心腔内の血液からの波動の強度を増強した状態で計測イメージングが行われることもある。形態学的な観測だけでなく、機能計測にも有効となることがある。自己発散(self-emanating)型の造影剤には、PET(陽電子放射型断層撮影法)で使用される放射性同位体が典型的な例であり、発生数のカウントに基づく観測が行われる。これは第2の実施形態のパッシブな装置で対象となるタイプのものであるが、例えば、磁性体(癌病変等のターゲットに親和性があることがある)を静脈注射し、そこに力学的振動を加えて磁場を発生させることもある。従って、送信トランスデューサにより力学的に刺激し、その応答として電磁波を受信トランスデューサで観測することになる。また、上記の光音響(photoacoustic)等も可能である。例えば、代表的なPET造影剤である18FDG(18F-フルオロデオキシグルコース、グルコースにポジトロン放出各種を標識)は、癌細胞が正常な細胞よりも多く(3から20倍)のブドウ糖を摂取する性質を応用し、全身を対象として癌の早期発見に使用されているが、これにPhotoacoustics(光音響)を応用し、超音波を受信して癌を早期発見できる(メタボリックトラッピングによる集積機序が有り、グルコースと同様に細胞膜のグルコーストランスポータを介して細胞膜に取り込まれ、酵素ヘキソキナーゼにより代謝されるが、グルコースと異なり、解糖系に進まずに細胞内に留まる。)。PETと併用されることもあるが、超音波検査がPETとは別に行われることもある。処理そのものは、レーザー照射のタイミングに基づくトリガーを用いた到来超音波(透過波)に対する受信ビームフォーミングを基本とする。陽電子がβ?崩壊により陽電子放出核種(ポジトロン核種)から放出され、電子と引き寄せ合い、数mm移動後に電子と結合して消滅し、その際に、ほぼ正反対方向に放出される2本の光子(γ線、すなわち、消滅放射線)を観測すること等により空間分解能は低いが、生成される超音波を観測できる部位においては、比較して、高分解能に観測できるという利点がある。早期発見にも適しているし、集積の有無によって疾患の有無を観測したり、その他、その程度をphotocoustic信号の強度から観測して、悪性度や進行度等を判断することも可能である(悪性腫瘍細胞では糖代謝が亢進しており、高集積)。その他、例えば、脳は人体で最も糖代謝が盛んであり、アルツハイマー型認知症は早期から代謝異常を伴う。また、心筋は、虚血が進行すると糖代謝が亢進する(陽性)が、壊死すると糖代謝は行われない。それらの観測にもPhotoacousticを使用できる。脳の場合には開頭することがあり、腹部の深部臓器の疾患を対象とする場合は、開腹したり、腹穴鏡やカテーテル等を用いる等、疾患の近傍でレーザー照射や超音波の検出が行われることもある。これらにおいて、造影剤の光吸収周波数特性が明らかにされて公知となっているものが多い中、照射レーザーおよび生成される超音波信号の周波数分散が積極的に用いられることもあり、また、必ずしもイメージングが行われるとは限らず、数値に基づく定量的な観測のみが行われることもある。前記の通り、グルコース濃度を観測対象とし、血糖値の観測やイメージングにも応用できる。また、PET造影剤には、糖分の他に、酸素、水、アミノ酸、核酸、神経伝達物質等にポジトロン放出各種を標識したもの(13C-メチオニン、13C-酢酸、13C-コリン、13C-メチルスピペロン、13N-アンモニア、15O-水、15O-酸素ガス、18F-フルオロドーバ等)が実用化されており、それらやPhotoacoustics用に開発されたもの等、別に開発される各種造影剤にも使用できる。これらのPhotoacousticsにおいては、造影剤を使用する場合と使用しない場合において、血液や尿、体液を対象にしてドプラ計測(ベクトル計測を含む)が行われることもあるし、また、軟組織や硬組織を含めて臓器の変位や変形、粘弾性や熱力学的特性が観測されることもある。
また、波動を最後の逆フーリエ変換前に分離して検波(二乗検波や包絡線検波等)するか、最後の逆フーリエ変換後に分離して同検波するか、又は、元より分離されているものをフーリエ変換前後で検波すること(非特許文献1)が可能であり、各々の波動の強度分布を表す画像化を行うか、又は、それらの検波によりインコヒーレント信号になったものを重ね合わせて、決定的(deterministic)な信号(例えば、反射信号やスペキュラー信号)を強調し、確率的(stochastic)な信号(例えば、散乱信号やスペックル信号)を低減して、対象や媒体の構造の空間的な変化を効果的に描出することが行われる(本願の発明者の過去の発明)。
波動が重なっているコヒーレント信号を検波し、その強度分布の画像化を行うこともある。また、検波していないコヒーレント信号を画像化して、波打ちそのものを画像化することもあるし、信号の強度(振幅)の画像と共に得られる位相分布の画像を提示することも可能である。単一の波動に関しても同様に画像されることがある。
表示方法は、グレー画像やカラー画像が一般的(popular)であるが、その際に、定量性が求められる場合には、表示されている輝度や色に対応する数値がバー表示されることもある。その他、鳥瞰図等で表示されることもあり、CGを併用して表示されることもある。それらは静止画又は動画として表示されることがあるし、動画はフリーズして表示されることもあるし、それらが実時間で表示されることもあるし、オフラインで処理されて表示されることもある。記憶装置(又は記憶媒体)に格納されている波動データ又は画像データが読みだされて表示されることもある。任意数値の経時的な変化がグラフとして表示されることもある。
その他、例えば、マイクロ波や赤外線、又は、テラヘルツ帯域の信号を使用して、計測対象の温度分布を観測すること等も可能である。輻射しているものに送波した波動が変調を受け、これを検出する(尚、第2の実施形態に係るパッシブ型の装置においても、輻射される波動そのものから対象の温度分布の計測が行われることもある)。他の波動と同様、連続波でなく、パルス波やバースト波、ビームフォーミングを用いると空間分解能を得ることができ、赤外線は、主として対象の表面の温度分布を観測する場合に使用されるが(対象の表面のみに制約されると考える場合も有る)、マイクロ波やテラヘルツを用いると、対象の内部の温度分布をも観測することができる。これらの観測された物理量や化学量を基に、逆問題的なアプローチ等の高次の処理が実施されて、粘弾性率や弾性率、粘性、熱物性、電気物性(導電率や誘電率)、透磁率、波動の伝搬速度(光速や音速等)、減衰、散乱(前方散乱や後方散乱等)、透過、反射、屈折、又は、波動源等が、周波数分散を含めて求められることがある。医療応用においては、超音波やMRIを使用する場合を含め、癌病変や加温・加熱治療中、それらの治療や外科術の後の炎症部分の温度や熱物性に加え、粘弾性率の観測やモニタリングが行われることもある。また、体温観測(朝、昼、夜、代謝、成長、老化、食前後、喫煙前後、末梢系への負荷、電気生理的な神経制御を含む等)、様々な臓器における運動負荷等も、同様にして、観測されることがある。医療応用に限られるものでも無く、他の有機体や無機体、混合して構成されるものが観測対象となることもあり、診断、修復、応用等において、様々な観測やモニタリングが連動して実施されることがある。テラヘルツの応用は、それらの計測のみならず、他の波動と同様に、透過波や反射波等のイメーングに使用でき、ドプラ計測等にも応用できる。特徴的に、X線と同様、無機物の観測にも応用できる。他の波動も有機体と無機物の観測に使用されることもるが、他の波動と同時に使用して、Fusionすることも可能である。
計測された変位や温度等の物理量も、同様に画像表示されることがあるが、同時に得られる形態学的画像に重畳されて表示されることもある。これらの分布を表す画像には定量性が求められることが多く、表示されている輝度や色に対応する数値がバー表示されることもある。その他、鳥瞰図等で表示されることもあるし、CGが併用されて表示されることもある。それらは静止画又は動画として表示されることがあるし、動画はフリーズして表示されることもあるし、それらが実時間で表示されることもあるし、オフラインで処理されて表示されることもある。記憶装置(又は記憶媒体)に格納されている波動データ又は画像データが読みだされて表示されることもある。任意数値の経時的な変化がグラフとして表示されることもある。
また、他装置から、入力装置を通じて観察対象である波動に関する付加情報が提供されることがあり、また、他物理量や化学量の観測データが提供されることもあり、デジタル信号処理ユニットにおいて、上記の処理の他に、データマイニングや独立信号分離(独立成分分析)、主成分分析、符号、多次元スペクトル解析、MIMO、SIMO、MUSICによる信号分離、パラメトリックな方法による対象の同定に基づく信号分離、これらの方法を併用することのある超解像、又は、ISAR(Inverse synthetic aperture)等の高次の処理が行われることがある。つまり、ビームフォーミング(開口面合成を含む)されたものに超解像が施されることもあるし、受信ビームフォーミング前又はビームフォーミングが全く行われていないもの(開口面合成用送受信信号)に超解像処理を施した上でビームフォーミングが行われることがあるが、各々の場合において、それらの方法が併用されることがある。
第2の実施形態に係るパッシブ型の装置においても、これらの処理が行われるので、そこで詳述することにするが、パッシブ装置の場合と異なり、本実施形態に係るアクティブ型の装置では、波動を送信して走査するため、受波した受信信号において関心のある位置を特定できることが大きく異なり、また、送信フォーカス又はマルチフォーカスを行えば、それらのフォーカス位置の状態や機能、そこに波動源があれば波動源に関する情報で高分解能に波動を変調して復調してそれらを理解し、また、平面波(フラットなアレイ)や円筒波(リング状のアレイ)、球面波(球殻状のアレイ)に類する波動を使用すれば、高いフレームレートで高速にそれらを捉えることも可能である。
通信を行う上では、送信トランスデューサから、通信先の位置を絞って、省エネと通信のセキュリティを向上させることができる。観察を行うに当たっては、計測系を構成する上で自由度が高い。また、それらのシステム論に基づく処理においては、生成する点拡がり関数を同定したり、また、目的に合わせて調整したりすることも容易である。送信トランスデューサや受信トランスデューサ(送信トランスデューサを兼ねることもある)の各々を複数使用することも可能であるし、送信と受信の対象となる波動が同種の物であることも異なることもあるし、時として、同期して稼働する複数のトランスデューサ専用の装置本体が複数台使用することもあるし、また、第2の実施形態に係るパッシブ型の装置が併用されることもあるし、それらが、それらを制御する装置を含む他の装置と、専用又は通常のネットワークを通じて結ばれていることもあるし、装置本体がネットワークの制御機能を有することがある。
各種観測データを基に、材料や構造物の製造する装置、治療や修復するための装置、応用する装置(ロボット等)などの装置が連動して稼働することもあるが、それらに限られない。尚、これらの波動を用いた計測や高次の計算処理は、脱着可能な記憶装置(記憶媒体)に格納された波動データ等を用いて、別装置で実施されることもあるし、それらのデータが同タイプの記憶装置(記憶媒体)に格納されて、別の装置で使用されることもある。
尚、受信してメモリ又は記憶装置(記憶媒体)に格納されている受信信号において、対象や媒体において生成される高調波成分を含んでいる場合に、ビームフォーミング処理を行う前に基本波や高調波(第2高調波だけのときもあればさらに高次の成分を無視することなく複数の高調波を扱うときもある)を分離してビームフォーミング処理(通常の整相加算)することもあるし、ビームフォーミングが実施された後に分離されることがある。その分離方法には、周波数領域において、スペクトルを分離するものがあるが、帯域が重なることがあり、いわゆる、医用超音波ではパルス・インバージョン法と呼ばれる同時相において極性が逆の波動を生成し、本実施形態に係る装置において、各々の送信に対する受信信号をビームフォーミング前又は後で重ね合わせすると、第2次高調波成分を抽出できると共に、基本波も得ることができる。
その他、多項式を用いて分離する方法も知られており、本実施形態に係る装置では、波動伝搬方向の1次元処理、もしくは横方向に変調されている場合や波動の伝搬方向が厳密には各位置において変化することを加味して多次元処理することが可能であり、ビームフォーミングの前又は後において実施できる。但し、分離してからビームフォーミングを行う場合において、基本波や高調波の各々のビームフォーミングを行う場合には、各々のビームフォーミング処理を行うことになるので、計算時間を要し、従って、並列処理が行われることもあるが、ビームフォーミング後の分離の方が、処理が高速である。
一方、各送信開口から送信される波動が符号化されているときは、ビームフォーミングを行うに当たり、各受信開口素子によって受信した受信信号に対して、どの送信開口素子から送信されて生成された波動成分であるかをマッチドフィルタに基づく信号検出により分離し、受信のダイナミックフォーカシングだけでなく送信のダイナミックフォーカシングをも行うことがあり、これは広く知られている。これは、平面波送波による高速送信においても有効であるし、フォーカスビームやステアリングを行っている場合においても有効である。
また、複数の波動又はビームを同時に送信する場合において、例えば、上記の複数の異なる周波数や複数の異なる伝搬方向を持つ波動等を、各々を符号化(coding)したものとして送波し、受信信号を同様に復号化(decoding)して、それらの各々の波動や送信ビームにより生じた受信信号に分離することにより、分離能を向上させることがある。これは、例えば、帯域が重なる波動や屈折や反射、透過、散乱等により伝搬方向が同一となる場合等において効果がある。分離する波を別のコード(code)で符号化する基本的な考え方に基づく。物理的なパラメータが同一である下で単純に符号化することもある。
これらにおいて、連立方程式を解くことも可能であるが、処理が高速であり、マッチドフィルタの効果も得られる。対象や媒体に適したコード(code)も開発されている。しかしながら、使用する素子数が増えると、コード長が長くなり、信号のエネルギーは大きくなり、これを有効利用することは重要であるが、その反面、例えば、対象や媒体が変形する場合には精度が低下して適さなないこと等が知られており、チャープ信号圧縮においても同様の問題を生じる。
通信においては、各送信開口素子から送信される波動に情報を符号化したもので符号化(coding)して送波し(ビームフォーミングとしては、例えば、平面波や円筒波、又は、球面波を使用して広く伝える場合や、複数位置であることのあるフォーカシングを行い、それらの位置における精度を保証し、また、局所又は特定の対象と通信するべくセキュリティを確保したり、省エネ化することもある)、受信信号に対してビームフォーミングを行った上で復号化(decoding)される。本実施形態に係る装置における符号化の応用は、それらに限られるものではないが、デジタル信号処理ユニット(メモリ内臓型もある)やメモリや記憶装置(記憶媒体)において、これらの処理が行われる。
また、本実施形態に係る装置により観測される、又は、他より提供される、物理量(変位、速度、加速度、歪、歪速度等の大きさや方向、温度等)や化学量、又は、付加情報、また、逆問題的なアプローチ等の上記の高次の処理が実施されて得られる、波動に関連する粘弾性率や弾性率、粘性、熱物性、電気物性(導電率や誘電率)、透磁率、波動の伝搬速度(光速や音速等)、減衰、散乱、透過、反射、屈折、波動源、材料、構造、又は、それらの周波数分散等を基に、常時又は適宜、又は、決まった時間間隔で、ビームフォーミングパラメータ(送信強度、送信と受信のアポダイゼーション、送信と受信のディレイ、ステアリング角度、送信と受信の各々の時間間隔(スキャンレート)、フレームレート、走査線数、有効開口の数や形状と大きさと向きと位置、開口素子の形状や大きさや向き、物理開口の向き、又は、偏波モード等)が最適化されることがある。それにより、例えば、空間的に一様なクオリティー(空間分解能やコントラスト、スキャンレート等)を持つ、また、あるターゲットが(形や材料、構造、動きの特徴、温度、湿度等に基づいて)検出された位置やそれに関連する位置に高いクオリティー(空間分解能やコントラスト、スキャンレート等)を持つ、対象の動きや組成、構造に合わせて散乱波(前方散乱波又は後方散乱波)や透過波、反射波、又は、屈折波を適切に捉えたり、重点的に広い方向から観測する等、最適化ビームフォーミングが行われる。
波動の伝搬速度は媒体の物性で決まるが、その物性は圧や温度、湿度等の環境条件によって変化し、また、媒体中で物性が不均質であることも多く、従って、伝搬速度は不均質である。伝搬速度は実時間で計測されることもあり、また、環境条件に対する校正データに基づき、観測される環境条件より、伝搬速度を求めることもできる。本実施形態に係る装置は、伝搬速度の不均質性を補正する位相収差補正ユニットをさらに備えており、実質的に、送信時に上記の各チャンネルの送信ディレイそのものか補正専用のディレイを調節して位相収差補正を行える。また、受信後においては、その送信及び/又は受信の伝搬経路における伝搬速度の不均質性を補正するべく、上記デジタル信号ユニットにおいて、周波数領域における複素指数関数の乗算による補正が可能である。若しくは、上記のフーリエ変換と逆フーリエ変換の計算において、直接に補正を施すことも可能である。計測された伝搬速度の信頼性は、計測対象そのものか、計測対象の近傍に存在するか設置した参照物を対象としてイメージング信号を生成し、結像の状態、空間分解能、信号強度、コントラスト等を指標として確認でき、これを基に、さらに、調整されることもある。後述のパッシブである第2の実施形態においても、受信後に、送信及び/又は受信の位相収差補正が行われることがある。
波動は、減衰や散乱、透過、反射、屈折等の影響を受けながら伝搬して拡がるものであり、基本的には、伝搬距離にも伴い、波動の強度は弱くなる。従って、本実施形態に係る装置では、例えば、ランバートの法則に基づいて、ビームフォーミングの前又は後の信号に対して減衰の補正を行う機能が搭載されていたり、操作者が入力装置より減衰の補正を各位置や各距離において調整できる機能が備えられていることがあるが、上記の如く、対象に適応して最適な補正をビームフォーミング処理の前又は後において行う機能を備えることもある。これらの処理において、自由度は低いが、処理の高速性を重視して、デジタル処理ではなく、アナログデバイスや回路によるアナログ処理が行われることがある。
上記の処理において、重ね合わせとスペクトル周波数分割は、線形処理であったが、上記の方法(1)〜(6)のビームフォーミングによる波動の生成又は生成後において、非線形の処理を施し、別の波動パラメータを持つ信号を生成することが行われる。ビームフォーミングの過程において、受信信号がアナログ信号であるときにはアナログ回路(ダイオードやトランジスタ、増幅器、専用非線形回路等)を用いたアナログ信号処理に基づき、デジタル信号であるときにはデジタル信号処理ユニットを用いたデジタル信号処理に基づき、受信信号にべき乗演算や乗算演算、その他の非線形処理が施されることがある。周波数領域において、スペクトルに対して非線形処理が施されることもある。
その他、DASの変形として、本願の発明者の発明であるDAM(Delay and Multiplication)処理を本発明の装置において周波数領域において実施することがある。時空間領域におけるべき乗や乗算等の積の計算は、周波数領域では畳み込み積分で計算できる。信号を高周波化したり、広帯域化したり、高調波を模擬したり、ステアリングされた波動に関しては、少なくとも任意の1方向から全方向に検波した信号を得ることができ、例えば、その結果として得られる波動の画像を生成できるし、通常の1方向の変位計測法を用いて、変位ベクトルの計測が可能であることがある。
また、仮想源を用いたイメージング信号の生成も可能である。仮想源については、過去に物理開口の手前に仮想源を設置するものや送信焦点位置に仮想源を設置するものが報告されており、また、本願の発明者は、仮想源のみならず検出器を任意位置に設置することや、波動の物理的な源や検出器を適切な散乱体や回折格子の任意位置に設置できること等を報告しており(特許文献7、非特許文献8)、本発明は、上記の如く、それらの仮想源や仮想検出器においても実施できる。高空間分解能化や視野領域(FOV)を広くすることが可能である。また、1素子以上の開口を用いた送信(ビームフォーミングした場合としていない場合、開口面合成用送受信)により得られた受信信号に対して、送信又は受信、又は、送受信のビームフォーミングを行う場合において、複数の波動パラメータ、複数のビームフォーミングパラメータ、及び、複数のトランスデューサのパラメータ(素子の形や大きさ、配置、数、有効開口幅、素子材料等々)の内の少なくとも1つのパラメータを異なるものとすることにより、異なる特徴を持ったビーム又は波動を複数個生成でき(同一の受信信号から複数個得ることも含む)、優決定(Over-determined)システムを構成できるが、仮想源や仮想受信器の位置や、分布(形状や大きさ等)を変えることによっても、同様に、優決定(Over-determined)システムを構成できる。この場合も、同一の受信信号から、異なる特徴を持った複数個のビーム又は波動が生成されることがある。優決定システムの特徴である、それらのコヒーレントな重ね合わせによる高SN比化及び高分解能化や、それらの検波を通じたインコヒーレントな重ね合わせによるスペックル低減等は、イメージングに有効である場合もあるし、また、変位計測や温度計測等の各種計測の精度を向上させる効果が得られる。仮想源や仮想受信器と共に、複数の波動パラメータ、複数のビームフォーミングパラメータ、及び、複数のトランスデューサのパラメータの内の少なくとも1つのパラメータを異なるものとすることもある(例えば、電気電子工学的又はメカニカルに物理的に、又は、ソフト的に、ステアリング角度を変える等)。
任意の波動源によって、波動が、受信開口素子アレイで決まる座標系を任意位置を中心として回転させたり、空間的にシフティングして表される座標系(例えば、送信開口の軸と横の座標で決まる座標であり、受信開口で決まるものとは異なる)において生成される場合に、受信信号に座標の補正をかけた上で、ビームフォーミングが行われることがある。例えば、上記の2次元のデカルト座標系(x,y)を原点を中心としてθだけ回転させた状態においてイメージング信号を直接に生成したい場合には、最初の時間方向のフーリエ変換により得られる解析信号に対して、式(29)を乗じて計算を進めればよく、波数ベクトル(kx,√(k2-kx2))及び座標(x,y)の回転とヤコビアンの計算を行うよりも、本発明により達成される高速性を失うことなく、高速にイメージ信号を生成できる。
但し、反射波の場合には、s=2であり、透過波の場合には、s=1である。実質的に、送信分の補正であれば、s=1によって実施すればよい。空間的なシフティング(並進)も周波数領域において、複素指数関数を掛けて実施できる。上記の波数ベクトル(kx,√(k2-kx2))及び座標(x,y)の回転とヤコビアンの計算を行う方法は、受信開口素子アレイで決まる座標系への変換を伴う送信ビームフォーミング(s=1)を行うものであり、その状況の下で、受信ビームフォーミング(s=1)は行われ、低速である。
本実施形態に係るアクティブ型の装置においては、後に説明する第2の実施形態に係るパッシブ型の装置においても同様であるが、アナログデバイスとして、その他、トランスデューサや装置本体に組み込まれることもある、レンズや反射体(鏡)、散乱体、偏向器、偏光器、偏波器、吸収体(減衰器)、乗算器、共役器、位相遅延デバイス、加算器、微分器、積分器、整合器、フィルタ(空間又は時間、周波数)、回折格子、分光器、コリメータ、スプリッター、方向性結合器、又は、非線形媒体、波動の増幅器等の特殊なデバイスが併用されることがある。この他、光を対象とする場合には、偏光フィルタ、NDフィルタ、遮蔽物、光導波路、光ファイバー、光カー効果デバイス、非線形光ファイバー、光混合光ファイバー、変調用光ファイバー、光閉じ込めデバイス、光メモリ、分散シフト光ファイバー、バンドパスフィルタ、時間の反転器、又は、光学的マスク等による符号化等、また、それらを光制御(波長変換・スイッチング・ルーチング)するべく、光ノード技術、光クロスコネクト(OXC)、光分岐挿入多重(OADM)、光多重・分離装置、又は、光スイッチ素子が使用され、デバイスそのものが光伝達網や光ネットワークであることもある。この限りでは無い。ビームフォーミングにおいて、それらは、装置と共に、人義的に、又は、自然に、又は、上記の様な仕組みの下で同様に最適に、制御されるものである。周波数領域において、スペクトルに対して非線形処理が施されることもある。
また、その様な組み合わせの下で、本発明に係る装置は、波動を用いる通常の装置においても使用される。医療用の装置としては、例えば、超音波診断装置(反射・エコー法と透過型等がある)、X線CT(減衰効果を増強する造影剤が使用されることがある)、X線レントゲン、アンギオグラフィー、マンモグラフィー、MRI(Magnetic resonance Imaging、造影剤が使用されることがある)、OCT(Optical Coherent Tomography)、PET(Positron Emission Tomography、第2の実施形態に該当)、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)、内視鏡(カプセル型もある)、腹腔鏡、各種センシング機能を装備したカテーテル、テラヘルツイメージング装置、各種顕微鏡、各種放射線治療装置(治療効果増進のために化学療法を併用することがある)、SQUID計、脳波計、心電図計、及び、HIFU(High Intensity Focus Ultrasound)等が該当する。中でも、核磁気共鳴画像装置は、元よりデジタル装置であり、その素質(capability)を含め、応用範囲は非常に広い。例えば、本願発明者が取り組んでいる電磁波観測や逆問題までを使用すると、電流分布や電気物性再構成(計測)、変位や力学波の伝搬の観測、力学的特性の再構成(計測)、温度分布や熱波の観測、及び、熱物性の再構成(計測)の全てに応用することもできる。これらに関しては、核磁気共鳴画像装置の他に、超音波等を用いた取り組みも行っている。また、他の取り組みとしては、例えば、OCTにおいては、吸収スペクトルの計測を行い、赤外分光法に基づき、例えば、皮膚の基底細胞癌、血液中の酸素やグルコース濃度のイメージングを行うことが可能になる。通常のNear InfraRed(NIR)への応用も可能であるが、いわゆるNIRに基づく再構成に比べて高空間分解能にその分布を捉えることが可能になる。また、それらにおいて、OCTやレーザー装置に超音波センサー装置(顕微鏡も可)を併用し、フォトアコースティックイメージングを行うこともあるし、応用は、それらに限られない。また、レーザーやOCT装置を使用して、力学的な刺激を与えない場合の組織のゆらぎを高感度に捉えてイメージングすることもある。また、レーザー光によるもの等を含むあらゆる(力学的な)刺激に対する応答が、イメージングの対象とされることがある(光を用いて生じさせた動態の光を用いた観測等を含む)。その他のイメージングにおいては、化学センサー等が使用されることもある。波動の組み合わせに関しては、これらに限られるものでは無く、また、物理センサーの他に、化学センサー等の別のセンサーが併用されることもある。また、本発明に係る装置は、各種のレーダー、ソナー、及び、光学系装置等においても使用される。波動は、パルス波やバースト波に限らず、連続波が使用されることもある。また、自由度の高いデジタル処理を動作時間の速い専用のアナログ回路によって実現して使用することもあり、その逆もある。資源探査や非破壊検査、通信の分野等、各分野において各種の装置が存在し、それらにおいても、本発明に係る装置は使用される。本願発明の装置は、装置として、また、動作モード(例えば、イメージングモード、ドプラモード、計測モード、通信モード等)に関して、通常の装置において使用されうるものであり、また、それらや上記のものに限られるものではない。
上記の複数の固定フォーカシングビームやマルチフォーカシング、その他、平面波等の、任意のビームや波動を同時に物理的に送信した場合、関心領域に対して広い範囲に一度に送信できると高フレームレートを実現できる。同一の有効開口から複数方向に同時に送信される場合もあれば、異なる有効開口から同一方向又は異なる方向に同時に送信される場合もある。その様なステアリング角度やフォーカス位置等がそれらにおいて同一又は異なる場合の他、超音波周波数や帯域幅(ビーム方向や波動の伝搬方向、それらと直交する方向)、パルス形状、波数、開口形状やアポダイゼーション等によるビーム形状等のビームフォーミングパラメータや、素子形状や大きさ、配列状況等のトランスデューサのパラメータが同一又は異なるものが同時に送信されることもある。
物理的な複数送信において、それらのパラメータが異なるときに、以下を代表的な場合として考えることができる。
(A1)全てに同一のソフト的なステアリングを施す場合。
(A2)異なる複数のソフト的なステアリングを施す場合(例えば、異なる送信ステアリング角度毎に同一のステアリングをソフト的に施す場合等)。
また、それらのパラメータが同一であるときに、以下を代表的な場合として考えることができる。
(B1)ソフト的なステアリングを施す場合。
(B2)複数のソフト的なステアリングを施す場合。
ただし、それらを複合して実施することもある。伝搬過程における障害物や、散乱や減衰の影響(周波数に依存する場合を含む)により、いわゆる、アダプティブビームフォーミングが行われることもある。その際に、ソフト的な送信と受信のステアリングやアポダイゼーションの組み合わせとして同一のものが実施される場合には、それらが重ね合わせされた状態において一度に処理される。また、組み合わせが異なるものを含む場合には、実施される組み合わせが同一のもの毎に重ね合わせされた状態において各々が一度に処理され、最後の逆フーリエ変換前に重ね合わせされる。
(A1)及び(B1)の場合には、各送信超音波に対するエコー信号の重ね合せとして受信される受信エコー信号に対して、1回のソフト的な処理を施せる。
(A2)の場合には、ソフト的に同一の処理を施すエコー信号に分類し、同一のソフト的なステアリングを施すもの毎に重ね合わせ、各々にそのソフト的な処理を1回ずつ施し、最後の逆フーリエ変換の前に、それらを重ね合わせる。尚、信号の分離は、上記の各種方法を使用すれば良く、また、それらに限られるものでは無い。
(B2)の場合には、全ての重ね合わせの角スペクトルに対して複数の異なるソフト的な処理を施し、最後の逆フーリエ変換の前に、それらを重ね合わせる。
また、それらのビームや波動が物理的に同時には送信されない場合において、対象の時相が同一であるか、又は、その仮定の下で、複数の送受信が行われた場合には、上記の同時送信の場合に従って処理されることがある。また、ソフト的な送信と受信のステアリングやアポダイゼーションの組み合わせが同一のものが実施される場合には、それらが重ね合わせされて一度に処理され、組み合わせが異なるものを含む場合には、実施される組み合わせが同一のもの毎に重ね合わせされて各々が一度に処理され、最後の逆フーリエ変換前に重ね合わせされる。同時送信されたものと同時には送信されなかったものとが、上記の同条件又は仮定の下で、同様に処理されることもある。尚、物理送信におけるそれらのパラメータは、予め既知である場合もあるし、ビームや波動が解析されて、使用されることがある。尚、後述のパッシブ型の場合においても、然りである。
複数のビームや波動の同時又は同時では無い送信を行うことにより、高フレームレートや同一又は複数箇所のフォーカシングを実現できる他、重ね合わせ処理を含む同処理に基づき、新しいパラメータを持つビームや波動を生成でき(例えば、広帯域化による高分解能化等)、また、スペクトルの周波数分割処理も交えて、同じく、新しいパラメータを持つビームや波動を生成でき、また、それらによって生成されたビームや波動をパラメータの異なるものに分離して、各々が使用される場合もある(例えば、生成されたビーム方向や波動の伝搬方向の変位の計測や変位ベクトル計測)。重ね合わせされた状態のものやスペクトル周波数分割されたもの、分離されたものに後述の非線形又は線形処理に基づく広帯域化が行われることもある。また、重ね合わせやスペクトル周波数分割されたもの、分離されたもの、非線形や線形処理の施されたもの等が、変位計測等に使用されることがある。それらの各々が検波されてイメージングされることもあるし、検波されたそれらが重ね合されてイメージングされることもある(例えば、スペックルを低減できる)。応用は、これらに限られず、上記の如く多様であり、また、それらに限られるものでは無い。
<シミュレーション結果>
以下、主として、波動が超音波である場合に、上記のビームフォーミング方法(1)〜(7)について、実行可能性をシミュレーションによって確認した結果を示す(平面波送波やステアリング時のモノスタティック型開口面合成、マルチスタティック型開口面合成、固定フォーカシングによるイメージ信号の生成、極座標系における送受信時のデカルト座標系におけるイメージ信号生成に加え、マイグレーション法の結果)。
図16は、シミュレーションにおいて用いられた数値ファントムを示す図である。ここでは、無エコー且つ無減衰媒体中において深さ30mmに2.5mm間隔で存在する5個の点散乱体を含む数値ファントムを扱った。エコー信号の生成には、Field II(非特許文献20を参照)を用いた。ここでは、深さ方向をz軸、横方向をx軸としている。
平面波送波とマイグレーション法、モノスタティック型開口面合成では、1次元リニアアレイ型トランスデューサ(128素子、素子幅0.1mm、間隙0.025mm、スライス方向の厚み5mm)を用いた。固定フォーカシングとマルチスタティック型開口面合成では、1次元リニアアレイ型トランスデューサ(256素子、素子幅0.1mm、間隙0.025mm、スライス方向の厚み5mm、有効開口幅33〜129素子)を用いた。極座標系における送受信には、コンベックス型トランスデューサ(128素子、素子幅0.1mm、間隙0.025mm、スライス方向の厚み5mm、曲率半径30mm)を用いた。放射する超音波パルスの中心周波数は3MHzとし、その音圧波形を図17に示す。偏向角度は、正面の深さ方向に対して定義し、以下においては、「θ」と表すことにする。
(1)偏向平面波の送波
偏向角度θ=0°、5°、10°、15°の偏向平面波を送波したときのシミュレーション結果を図18A(各々、(a)〜(d))に示す。また、偏向角度がθ=0°のときに波数マッチングにおいて補間近似を行ったときのシミュレーション結果を図18Bに示す。これらは、同一角度で受信を行った結果である。図18A及び図18Bにおいて、横軸は、横方向(Lateral x)の位置[mm]を表しており、縦軸は、深さ(Depth)z[mm]を表している。図18Aに示すように、結像したエコー画像が得られ、さらに、偏向されたことも確認できる。いずれも、周波数領域において、100MHzから10MHzにダウンサンプリング(段落0206、0207)し、サンプリング周波数25MHzに該当する間隔でイメージ信号を生成した結果である(他も同様)。
一方、偏向角度がθ=0°のときに波数マッチングにおいて補間近似を行い、図18B(e)は、近傍のスペクトルに置き換えた場合において、サンプリング周波数が100MHz(左)と25MHz(右)であるときの結果を示し、図18B(f)は、スペクトルに線形補間近似を施した場合において、サンプリング周波数が100MHz(左)と25MHz(右)であるときの結果を示す。サンプリング周波数が高く、線形補間近似を行った方が像は安定したが、補間近似を行わなかった場合の図18A(a)には及ばなかった。偏向角度を非零度にすると、さらに、不安定な結果となった。
生成されたイメージ信号のスペクトルより、得られた偏向角度を算出した結果を図19及び図20に示す。この評価のために、数値ファントム内の散乱体を増やし、0〜40mmの深さにランダムに300個の散乱体を配置した。各散乱体の反射係数は−1〜1のランダム値にした。設定した偏向角度に寄らず、0.5〜0.8度の誤差が確認された。誤差は、生成された波動に対しての散乱体の位置に依存したものである。散乱体を多くすると精度は向上する(略)。
異なる偏向角度で得られた画像を複数重ね合わせた結果を図21に示す。偏向角度は1°間隔で設定し、1波(0°)、11波(−5°〜5°)、21波(−10°〜10°)、41波(−20°〜20°)をそれぞれ重ね合わせた。図22は、生成されたイメージ信号から推定された点拡がり関数の横方向の分布をプロットした図である。図22において、横軸は横方向(Lateral x)の位置[mm]を表しており、縦軸は輝度(Brightness)の相対値を表している。図22に示すように、重ね合わせの数が多いほど分解能が向上することを確認できる。
マイグレーション法[方法(6)を同偏向平面波送波時のビームフォーミングに応用]
本発明によるマイグレーション法でイメージ信号を生成した結果を図23に示す。偏向角度は、図18Aと同様に、θ=0°、5°、10°、15°とした。波数マッチングにおいて、補間近似した場合の結果は略すが、像は不安定であった。
(2)偏向モノスタティック型開口面合成
方法(2)のモノスタティック型開口面合成による偏向時のシミュレーション結果を図24に示す。図18Aと同様に、偏向角度をθ=0°、5°、10°、15°とした。図24に示すように、結像し、偏向されていることを確認できる。
(3)マルチスタティック型開口面合成
方法(3)のマルチスタティック型開口面合成によるシミュレーション結果を図25に示す。図25(a)は、受信素子を送信素子と等しくして受信した信号のみ(即ち、1セット)を用いて生成された低分解能画像を示す(つまり、モノスタティック型と同じ)。図25(b)は、送信位置の素子に加えて左右16素子を受信に用いた合計33セットの結果を重ね合わせた結果を示す。図25(c)及び(d)は、それぞれ、65セット(送信素子の左右32素子)を重ね合わせた結果、及び、129セット(送信素子の左右64素子)を重ね合わせた結果を示す。図25に示すように、結像されたことを確認できる。また、それぞれの点拡がり関数をプロットした結果を図26に示す。図25及び図26より、重ね合わせた数が多いほどサイドローブが抑圧されており、高分解能であることも確認できる。
(4)固定フォーカシング
固定フォーカシング送信の結果を図27に示す。ここでは、方法(1)を用いた。図27(a)は、各送信有効開口において受信したエコー信号を重ね合わせ、1回のエコー信号の生成処理を施した結果を示す。図27(b)は、それぞれの有効開口幅毎に低分解能なエコー信号を生成して重ね合わせた結果を示す。図27(c)は、マルチスタティック開口面合成と同様に送受信で同じ位置関係のものをセットとしてエコー信号を生成して重ね合わせた結果を示す。図27に示すように、いずれにおいても結像され、特に違いは見られない。方法(1)は、他の2つの方法に比べ、演算が高速であり、有効である。また、方法(1)の結果は、理想的に複数又は全てのビームを同時に送信した際の受信信号を用いても、受信ビームフォーミングが可能であることを示している(干渉のある送信ビームに対する受信信号も処理でき、高速フレームレートを実現できる)。この処理は、固定フォーカシング送信に限らず、全ての種類の波動の複数送信(異なる波動の組み合せも含む)時においても、実施できる。つまり、複数の波動が異なる送信ビームフォーミングの施されたものを含む場合や、ビームフォーミング有りと無しとを含む場合や、種類の異なる波動(電磁波や力学波、熱波等)を含む場合もあるし、非線形処理や検波処理、超解像やアダプティブビームフォーミング、ミニマムバリアンス処理、又は、信号分離等々、加工の施されたものを含む場合もある。ビームフォーミング中において、それらの処理が行われることもある。無論、各々の送信に対する受信信号が重ね合わせ処理されることもある。これらの場合の波数マッチングにおいても、補間近似処理が行われることがある。
(5)極座標系における送受信のデカルト座標系におけるイメージ信号の生成
(5−1)円筒波送波
コンベックスアレイの全素子から超音波を同時に放射して円筒波を送波したときのエコー信号を周波数領域で処理した結果を図28(a)に示す。実際のところ、(5−1')内に記載した通り、送信と受信において、深さ30mmの位置に平面波又は仮想的なリニアアレイを生成している。図28(a)に示すように、散乱体が結像されたことを確認できる。
(5−1')リニアアレイを用いた円筒波送波
次に、リニアアレイとその後方の位置に設定した仮想音源(図8A(a))を用いて円筒波を送波したときのエコー信号を生成した結果を示す。図28(b)は、仮想音源を後方30mmの位置にして方法(5−1')内に記載の方法(1)を用いた結果を示しており、図28(c)は、仮想音源を後方60mmの位置にして方法(5−1')内に記載の方法(2)を用いた結果を示している。散乱体が結像されたことを確認できる。
また、リニアアレイ型トランスデューサを用いる場合において、方法(5−1')内に記載の方法(1)を用い、物理開口後方30mmの位置の仮想源を用いて円筒波を生成する場合を応用し、30mmの距離位置に、横方向に拡がった、平面波、又は、仮想的にリニアアレイ型トランスデューサを生成した場合(図8B(g))の結果を図28(d)に示す。
(5−2)固定フォーカシング
コンベックスアレイを用いて、各素子から距離30mmを固定フォーカシング(図14(a))した際の受信信号を処理した結果を図29(a)及び29(b)に示す。図29(a)は、各有効送信開口において得られる受信信号を重ね合わせ、1回のエコー信号生成処理を施した結果を示しており、図29(b)は、それぞれの送信毎に低分解能画像を生成して重ね合わせた結果を示している。マルチスタティック開口面合成と同様に送受信で同じ位置関係のものをセットとしてエコー信号を生成して重ね合わせた結果は略すが、これらの3つの演算は、(4)のときと同様に、ほぼ同一の結果を齎した。また、図29(c)は、深さ30mmを固定フォーカシング(図14(b))した際の受信信号に1回のエコー信号生成処理を施した結果を示している。散乱体は良好に結像された。
これらの結果は、(4)と同様に得られたものであり、理想的に複数又は全てのビームを同時に送信した際の受信信号を用いても、受信ビームフォーミングが可能であることを示している(干渉のある送信ビームに対する受信信号も処理でき、高速フレームレートを実現できる)。この処理は、これらの固定フォーカシング送信に限らず、全ての種類の波動の複数送信(異なる波動の組み合せも含む)時においても、実施できる。つまり、複数の波動が異なる送信ビームフォーミングの施されたものを含む場合や、ビームフォーミング有りと無しを含む場合や、種類の異なる波動(電磁波や力学波、熱波等)を含む場合もあるし、非線形処理や検波処理、超解像やアダプティブビームフォーミング、ミニマムバリアンス処理、又は、信号分離等々、加工の施されたものを含む場合もある。ビームフォーミング中において、それらの処理が行われることもある。無論、各々の送信に対する受信信号が重ね合わせ処理されることもある。これらの場合の波数マッチングにおいても、補間近似処理が行われることがある。
以上のシミュレーションにおいて実施した本発明によるデジタルフーリエ変換を用いたビームフォーミングは、複素指数関数の乗算とヤコビ(Jacobi)演算を適切に使用することを基礎として、任意直交座標系における任意ビームフォーミング処理を補間近似なしに高精度に実現できることを実証した。いずれのビームフォーミングもDAS(Delay and Summation)法を用いて実現できるが、本発明によるビームフォーミングは、波数マッチングと横方向のフーリエ変換の違いにより高速化され、1次元アレイのときに、汎用のPCを使用した場合には、計算時間が100倍以上にも優位に高速である。開口素子が2次元又は3次元分布、2次元又は3次元のアレイを構成している場合には、上記の方法をさらに多次元化すれば良く、1次元の場合に比べてさらに多くの処理を要するという問題を解決し、その高速性はさらに有効となる。また、偏向角度の異なる平面波送波時の重ね合わせ等が有効になる実施例も記載した。高分解能化され、また、サイドローブが抑圧されて高コントラスト化される効果等を高速に得られる。
上記の例において、任意のアレイ型開口面形状において、任意のフォーカス(フォーカスなしを含む)とステアリングを実施できることが確認され、任意直交座標系における任意ビームフォーミング処理を補間近似なしに高速に且つ高精度に実現できることが確認された。生成されるイメージ信号を基礎とした変位計測等の高次の計測結果を得る時間も短縮化され、その計測精度が向上する効果も得られる。尚、本発明においては、方法(1)〜(7)に記載の如く、任意のビームフォーミングの波数マッチングにおいて補間近似処理を行うことがあり、より高速にビームフォーミングが行われることがある。高精度に近似的な波数マッチングを行うには、計算量が増えることを代償として、受信信号を適切にオーバーサンプリングする必要がある。その場合、補間近似処理を行わない場合に任意位置の信号を選択的に生成できるのとは異なり、フーリ変換のデータ数が増えることには注意が必要である。
以上、第1の実施形態における代表的なトランスデューサ、受信センサー、送信ユニットと受信ユニット、制御ユニット、出力装置、及び、外部記憶装置等を使用した例を説明した。方法(1)〜(7)のビームフォーミングが可能であったことは、任意直交座標系において、フォーカシングとステアリングを基礎とする任意のビームフォーミングを実施できることを実証したことになり、本発明の装置を使用して実現できるビームフォーミングや応用はその他に記載されたものを含めてもその限りではない。
<<第2の実施形態>>
次に、本発明の第2の実施形態に係る計測イメージング装置又は通信装置の構成を説明する。図1は、第1の実施形態に係る装置がアクティブ型であるときの構成例を示す代表的なブロック図であり、図2は、その装置本体の構成例を詳しく示す代表的なブロック図であるが、第2の実施形態では、パッシブ型の装置が使用され、従って、第2の実施形態に係る装置は、図1において、少なくとも、送信用のトランスデューサは備えず、さらに、制御ユニットから送信トランスデューサに駆動信号を送るための有線又は無線の経路を備えていないものである。
第1の実施形態に係るアクティブ型の装置の場合には、図1及び図2を代表的な構成として、詳細な装置やユニットの構成例を説明したが、アクティブ型の装置は、任意開口形状の送信と受信トランスデューサアレイデバイス(トランスデューサは送信と受信の両方に使用されることもある)を必ず用いるものであるのに対し、パッシブ型の装置は、それらにおいて、任意開口形状の送信トランスデューサアレイデバイスを使用しない。
つまり、第2の実施形態に係る装置の基本構成は、受信トランスデューサ(又は受信センサー)20と、装置本体30と、入力装置40と、出力装置(又は表示装置)50と、外部記憶装置60とを備える。装置本体30は、主として、受信ユニット32と、デジタル信号処理ユニット33と、制御ユニット34と、図示しない記憶ユニット(メモリ又は記憶装置又は記憶媒体)とを備える。さらに、装置本体30は、送信ユニット31を備えても良い。これらの構成要素についての第1の実施形態における説明は、第2の実施形態にも適用される。
第1の実施形態と同様に、これらの各装置や装置本体30内の各ユニットは、離れた場所に設置され得るものである。装置本体30とは、それらの様な複数のユニットから構成されるものであり、便宜上、その様に呼ぶ。また、第1の実施形態と同様に、受信トランスデューサ20を機械的に走査して受信を行うこともある。一般的にアレイ型と称さない場合においても同様に処理されることがある。
しかしながら、第2の実施形態に係る装置は、第1の実施形態に係る装置とは異なり、波動が生成されたタイミングを感知するべく、以下に詳細に説明するが如くに、任意波動源から到来した観察対象の波動そのものを受波してタイミング信号を生成するか、別の過程を経て生成されるタイミング信号を有線又は無線通信を通じて制御ユニットが感知し、受信ユニットのデータの取り込み(各受信チャンネルにおけるAD変換とメモリへの書き込み)を開始するためのトリガー信号として使用されることがある。
波動が生成されたタイミングを知らせるタイミング信号を制御ユニットが感知する方法として、波動源から到来する波動そのものがタイミング信号として使用される場合に、本実施形態に係る装置の受信トランスデューサ(又は受信センサー)20の受信開口素子20aにより受信される受信信号そのものが使用されるか、又は、装置本体30に備えられることもある専用受信装置によって受信されるタイミング信号が使用される。
この場合に、受信開口素子20a(全素子の場合もあるが、物理開口において、端部又は中央位置にある素子等が疎らに使用されることもある)又は専用受信装置(受信チャンネルが少なくとも複数であることがある)によって受信される信号が、時間的に継続的に検出され、例えば、上記の様な各種の入力手段を通じて、受信信号の信号強度や周波数、帯域、又は、符号等に関する情報が、制御ユニット34そのもの(内臓メモリ)やアナログ判定回路(この場合には、ソフト的にもハード的にも可変でなく、ハード的に固定のものもある)に設定される。あるいは、波動が生成されるタイミングの感知は、受信開口素子20a又は専用受信装置によって受信される信号を、メモリ又は記憶装置(記憶媒体)に記録された、閾値や値、観察対象の波動の特徴に関するデータベース等の判別データと照合することに基づく。
受信信号をアナログ的に判別する場合には、備えられる専用のアナログ回路によって判別をし、観察対象の信号と判断された場合においてのみ、データ取り込みのためのトリガー信号が生成され、受信信号がAD変換されてメモリや記憶装置(記憶媒体)に格納され、ビームフォーミング処理が行われることがある。
受信信号をデジタル的に判別する場合には、受信信号が時間的に継続的にAD変換されてメモリや記憶装置(記憶媒体)に格納され、常時又は随時(入力装置を通じて指令があった際等)、所定の時間間隔(入力装置を通じて設定される等)において、その格納された信号をデジタル信号処理ユニット33が読み出して同判別データとの照合を基に判別をし、観察対象の信号と判断された場合においてのみ、ビームフォーミング処理を行うことがある。
メモリや記憶装置(記憶媒体)の記憶容量は有限であるため、デジタル的に判別する場合において、所定(入力装置を通じて設定される等)の時間内に観察対象の波動の信号が観測されなかった場合には、メモリのアドレスが初期化される様になっている。また、省エネの点では効率的でないが、随時、ビームフォーミングを行い、ビームフォーミングによって精度の高くなったイメージ信号を基に、同判別データを使用して、波動信号を判別することもある。通常の通信目的の波動が観察対象である場合においても、処理は同様である。
また、専用受信装置は、他の装置のユニットとは離れた、例えば、計測対象である波動源近くの位置や、そのタイミング信号の受信環境の良い位置等の別の位置に設置されることもあり、受信開口で受波する波動よりも高速に伝搬する波動(タイミング信号となる波動)が使用され、その専用受信装置を介して装置本体内の制御ユニットにそのタイミング信号が伝えられることがある。中継局を使用することのある専用の回線(有線又は無線)が使用されることもある。この場合には、そのタイミング信号をトリガー信号として、受信信号の取り込み(AD変換とメモリや記憶装置や記憶媒体への格納)とビームフォーミングとを行う。
また、本発明の装置が波動を受波した後に、波動が生成されたタイミング信号が届くこともある。つまり、伝搬速度が遅い、若しくは、その様な仕組みが使用されることもあるが、結果的にその様になることもある。その様な場合に対応するためには、常時、継続的に受信信号の取り込みを行って、メモリや記憶装置(記憶媒体)に格納されている受信信号を時間を遡って読み出し、ビームフォーミングを行う。その場合に、タイミング信号には、他の観察者や観察装置により得られた波動に関する情報が中継局等において付加情報として付加されて、付加情報が付加されたタイミング信号が伝送されて、専用受信装置によって付加情報を含む情報が読み取られ、本発明の装置だけでなく、他の装置において使用されることもある。尚、使用される回線は、専用の回線には限られず、通常のネットワークが使用されることもある。通常の通信目的の波動が観察対象である場合においても、同様なタイミング信号が使用されることもある。付加情報がタイミング信号とは別の波動又は信号で伝えられることもある。
また、観察対象の波動の生成と共に、その生成前か、生成時、又は、生成後に、受信開口素子で受波する波動よりも高速又は低速に伝搬する波動(タイミング信号となる波動)が波動源において生成されて、その専用受信装置や専用回線が同様に設置されて使用されることもある。その場合に、タイミング信号となる波動には、観察対象の波動に関する情報が付加されることがあるし、他の観察者や観察装置により得られた波動に関する情報が中継局等によって付加されて伝送され、専用受信装置によって付加情報を含む情報が読み取られ、本発明の装置や他の装置によって使用されることもある。尚、使用される回線は、専用の回線には限られず、通常のネットワークが使用されることもある。通常の通信目的の波動が観察対象である場合においても、同様なタイミング信号が使用されることもある。付加情報がタイミング信号とは別の波動又は信号で伝えられることもある。
これらの専用受信装置としては、タイミング信号を感知する、又は、付加情報を読み取ることのできる専用感知装置が使用されるわけであるが、任意の観察者、又は、任意の観察装置(観察対象の波動に関する任意のアクティブ型又はパッシブ型の観察装置又はそれに類する観測装置等、その他、その波動が生成される予兆となる、又は、その波動に伴って同時に生成される、又は、波動生成後の別の現象や波動に関する任意のアクティブ型又はパッシブ型の観察装置又はそれに類する観測装置等)が使用される。変則的に、専用受信装置がタイミング信号を受信するのみで、付加情報の読み取りそのものは、専用装置又は装置本体内の制御ユニットを介してデジタル信号処理ユニットで行われることもある。
本発明のアクティブ型又はパッシブ型の装置そのものが感知装置として使用される場合においても、同様に、デジタル信号処理ユニット33によって付加情報が読み取られることがある。備えられる感知装置によりタイミング信号が生成される場合もある。いつ何時に、又は、何処で、又は、いつ何時に何処で、波動が生成されるか分からない場合において、データの取り込み動作及びビームフォーミング処理の高効率化や、電力の節約、メモリや記憶装置(記憶媒体)の節約に重要である。制御ユニット34の持つクロック信号を基に、データの取り込みとビームフォーミングが行われる。波動源がデジタルである場合には、同期が取れる方が良く、観察対象の波動のディジタル受信を基礎として、高クロック周波数及び高サンプリング周波数で装置が稼働することがある。タイミング信号がアナログ信号である場合も同様であるが、タイミング信号がデジタル信号である場合には、装置本体で同期が取られることがある。
観察対象は、自己発散的(self-emanating)な波動源によって生成された波動そのものであり、波動源の特徴(強さやどの種の源であるか等)や位置、波動源として活動した時刻等が観測されることがある。また、装置がアクティブ型であるときと同様に、波動のスペクトルから対象の温度(分布)や変位、速度、加速度、歪、又は、歪速度等の分布が求められることがある。また、伝搬過程における媒体の特性(伝搬速度、波動に関わる物性値、減衰、散乱、透過、反射、屈折等、又は、それらの周波数分散等)が観測され、観測対象や媒体の構造や組成等が明らかにされることもある。例えば、放射性物質(PETにおける同位体等々)、非零の熱力学的温度を持つ物質、地震源、神経活動、天体観測、天候、到来物、移動物体、移動通信機器を含む通信機器、物理的又は化学的な刺激に対して反応するもの、電気源、磁気源、放射源、又は、各種エネルギー源等が観測され、観測対象はこれらに限られない。
複数の異なる種類の波動の受信トランスデューサや受信センサーを使用して、マルチフィジックス又はマルチケノミクスを通じ、計測結果の統合(Fusion)やデータマイニングが行われることもる。多機能や多くの物性に基づいて機能するもの、又は、周囲に対して別の様態にて影響を与えるもの等に対し、対象の全体(ヒトの場合には全身)や局所の挙動を多面的に観測し、新たに、若しくは、詳細に、対象の全体(ヒトの場合には全身)や局所の挙動を理解することも行われる。例えば、生物において短時間に、又は、長時間に渡って行われる様々な神経制御(体温、血流量、代謝等々)、生物への短時間の、又は、長時間に渡って与えられる影響(放射線被爆、栄養摂取)等を観測し、長寿化や延命に寄与する人工臓器や培養組織、それらのハイブリット、薬、又は、サプリメント等の開発や、それらの動作のモニタリングに使用できる。生物の持つ様々なセンサーの代替となるものやそれらを補足するもの、又は、新たなセンサーを備える場合を含む。生物を対象とする場合、小型化されてウェラブルであることや生物に馴染みやすい形態や素材が求められることもある。処理内容も様々であり、例えば、力学的な波動として、同時に複数の圧縮波やずり波などが到来した場合に、モードや周波数、帯域、符号、伝搬方向等を用いてアナログの専用デバイスを使用するか、又は、デジタル信号処理ユニットを使用して、第1の実施形態と同様に波動を分離した上で、ビームフォーミングが行われることがある。電磁波の波動源が複数存在する場合には、それらの特徴が異なる複数の電磁波が重畳している場合があり、同様に、分離されることがある。若しくは、ビームフォーミングによる整相加算効果により、複数の波動が到来する場合においても、精度の高いイメージ信号が生成される場合がある(例えば、媒体が散乱媒体である場合等)。
無論、ビームフォーミングが行われた後に、同処理に基づいて信号が分離されることもある。整相加算の効果を得るためには、波動の到来方向や、波動源の位置を求めることが必要であり、その方向にステアリングしたり、その位置にフォーカシングしたりすることがある。受信において、ダイナミックフォーカシングの他に、固定のフォーカシングも有用である。それらを求めるために、受信開口素子アレイによって受信した波動の多次元スペクトルの重心(中心)周波数や瞬時周波数、帯域、いわゆるMIMO、SIMO、MUSIC、独立成分分析、符号、又は、各種パラメトリックな方法等が使用されることもある。ビームフォーミングを行った上で同処理が行われることもあるが、その他に、特に、複数位置においてビームフォーミングを行った上で、幾何学的な情報を使用して波動が観測されることもある。処理方法は、これらに限られるものではなく、例えば、逆問題的アプローチの下で実施されること等もある。
例えば、到来する波動の伝搬方向を受信信号の多次元スペクトル解析に基づいて求めたり(本願の発明者の過去の業績)、さらに、本願発明の装置においては、異なる位置に備えられた複数のトランスデューサ又は受信有効開口を使用して、伝搬時間に関する情報が得られない場合(通常、複数位置において波動が観測された時間から波動源の位置や距離を割り出す)においても、幾何学的に波動源の位置や距離を割り出すことが可能である。波動がパルス波やバースト波ではなく連続波でも観測できる。如何なる処理を通じてでも、波動の到来方向が分かった場合において、その方向に、受信ビームをステアリング及びフォーカシングを行い(モノスタティック型やマルチスタティック型の開口面合成)、詳細に観測することも行える。必要に応じ、第1の実施形態のアクティブ型にして、送信ビームフォーミングも行うことがある。それらの処理において、常に、可能性の高い方向を重点的に、ステアリング角度を変えながら受信ビームフォーミングを行って、得られる像又は結像、空間分解能、コントラスト、信号強度等を観測する、又は、多次元スペクトル解析を通じ、波源の方向を特定することもできる。自動制御されることもある。
超解像により、イメージ信号の高分解能化を行うことがある。段落0009、0404にも記載がある。波動源や、計測対象や媒体内の散乱や反射体の大きさや強度、位置等の計測が容易になることがある。物理的に生成される波動場により帯域は必ず制限されるが、代表的な超解像は、これを逆フィルタリングにより広帯域化して、オリジナル(original)の信号源又は信号としてそれらを復元するものである。また、通常、波動は周波数依存性のある減衰の影響を受けたり、焦点の合っていない場合もあるし、波動源が移動体であることもあるし、介在する媒体に擾乱を生じることもある。これらを補正するべく、超解像が実施されることもある。
また、1つのイメージ信号を生成するために必要とする送信及び/又は受信を行っている間に計測対象等が移動することがあり、動き補償を行う必要があることがある。点拡がり関数が未知であることが多く、その場合には、上記の信号分離処理(特に、ブラインド・セパレーション)を併用する場合も含めて、ブラインド・デコンボリューションが行われることがある。段落0404に記載の方法等が知られている。何かしらの方法で、点拡がり関数を評価し、理想的にはコヒーレントな点拡がり関数を得ることが望ましいが、インコヒーレント信号から求められる場合を含めてスペクトル分布形状や帯域が求まっても逆フィルタリングは可能である。
観測したいときに、点拡がり関数を求めることができない場合には、例えば、観測できるときに点拡がり関数を評価してデータベースとして保有しておくと良い。逆フィルタリングを行う1つの有効な方法としては、所望する点拡がり関数やエコー分布等の信号分布のスペクトル分布(無論、スペクトル強度の分布)と同一になる様に、観測されたスペクトルを重み付けることが可能である。所望する点拡がり関数やエコー分布等の信号分布のスペクトル分布は、解析的又はシミュレーション、最適化等を通じて設定される場合があるし、計測対象に対して理想的なパラメータの下でビームフォーミングを行い、それも、一度の計測で済ませることがあるし、複数回の計測の下でアンサンブル平均が施されることもあるし、また、計測対象物のファントム(校正用ファントム)を用いて同様にして求められることもある。例えば、冪乗関数型のアポダイゼーションを用いて固定フォーカシング又は開口面合成(非特許文献15)を行って所望する高分解能な点拡がり関数又はエコー分布等の信号分布を得、高速送受信の可能な平面波送信をガウス型アポダイゼーションを用いて行って得られる低分解能信号(非特許文献15)を高分解能化することがある。後者は高速な動きやずり波伝搬の高精度な計測に適しており、その計測と高分解能な超音波イメージングを同時に実現できる。若しくは、信号そのもののパワースペクトルを用いて、inversionすることも可能である。波数マッチング前の角スペクトルか、波数マッチング後のスペクトルに、それらの処理を施すことができる。即ち、所望する点拡がり関数やエコー分布等の信号分布の角スペクトル若しくはスペクトル又は受信信号の角スペクトル若しくはスペクトルを用いて、超解像を施すことができる。尚、重み付けにおいて、零値や小さいスペクトルで割る場合には、注意が必要であり、特に、受信信号に含まれる各種のノイズを増幅することは有効ではなく、上記の如く、正則化(高周波成分の過度な増幅を抑圧する)やウィーナーフィルタ(信号雑音比の低い周波数成分の増幅を抑える)、特異値分解(小さい特異値やスペクトルを捨てて、対応する周波数の信号成分は使用しない)等が有効である。
上記のデジタル波動信号処理における方法(1)〜(7)の過程においても、逆フィルタリングを行うことが可能である。イメージ信号が高分解能化され、定量性(数値)に関しても効果が得られることもあるが、画像として表示した場合においても同効果が得られることがある。ボケ画像が復元されたり、ピントが合ったりする効果が得られる。逆フィルタリングは、インコヒーレント信号に対して実施されることもあるし、コヒーレント信号の状態で施されると効果的であり、特に、物性分布の空間的な変化等を理解できることがある。重ね合わせされているものやスペクトルが周波数分割されているものに超解像が施されることもある。超解像の応用は、これらに限られない。
また、新しい超解像を実施することもできる。1つは後述の非線形処理に基づくものであり、もう1つは、ここに記載する瞬時位相をイメージングするものである。
いま、単独の波動又はビームを用いて得られた関心領域内の伝搬方向(座標軸t)の位置座標sの信号を
であり、t=0は、t軸方向の基準位置、すなわち、波動源の位置(t=0)を表し、δθ(t)は、位置座標tにおいて反射や散乱により生じる位相変化を表す。
とすると、これより、伝搬方向tの瞬時角周波数ω(t)と、瞬時位相θ(t)等を求めてイメージングする。伝搬方向tは、ステアリングせずに正面方向を向いている場合もあるし、ステアリングして偏向角度を持つ場合もあり、関心領域が3次元であるときも、又、2次元、1次元であるときもある。非特許文献19にある通り、波動又はビームの伝搬方向を空間分解能を持つ状態で計測でき(スペクトルの重心や瞬時周波数を用いる)、同時に、その方向の周波数も計測でき、後の示される周波数の空間積分処理において設定される積分路の方向(接線方向)の周波数を高精度に求めて計算できる。例えば、積分路は、送信時に設定した波動又はビームのステアリング方向(角度)、又は、生成された波動又はビームにおいて、同様に、但し、大局的に推定されるステアリング方向(角度)に直線状に取ることができる。尚、処理を簡単に済ませるべく、公称周波数や同時に大局的に推定されるその方向の周波数を使用することもできる。空間分解能を持つ状態で推定される伝搬方向に積分を行うことは、周波数分布の補間処理を伴い、不可能ではないが、実用的ではない。
ちなみに、A(s)は振幅であり、位置座標t=sにおける反射強度や散乱強度を表す。例えば、式(30−1)の直交検波を通じた包絡線検波(IQ信号の二乗の和の平方根)により求まる。もしくは、フーリ変換を用いたヒルベルト変換を通じて、
を生成し、式(30−1)と式(31)の二乗の和の平方根によっても求まる(特許文献7や非特許文献14)。後者は、特にデジタル信号処理に適している。
式(30)と式(31)を用いて、複素解析信号(特許文献6や非特許文献7)で表示し、
と表せる。
瞬時位相θ(s)を求めるべく、まず、瞬時角周波数を求める。常套手段としては、特許文献6や非特許文献7に記載の方法で、位置座標t=sにおいて、次のサンプリング位置座標t=s+Δsにおける瞬時周波数が等しく、瞬時位相は等しくないことを想定し(δθ(t)は、ランダムな散乱強度や反射率で決まる位相変化(すなわち、ランダム)であり、tに対してランダム的に大きく変化する)、
であると仮定すると、その位置座標t=s+Δsにおける信号は、
と表されて、式(32)と式(35)との共役積を求めると、式(33)と式(34)の仮定の下で、
と表され、従って、位置座標t=sにおける瞬時周波数は、
と推定される。
特許文献6や非特許文献7に記載されている通り、実際には、信号r(s)にはノイズが混入するし、式(33)や式(34)の仮定の下で推定することとして、s軸方向やこれと直交する2方向又は1方向に含めて移動平均処理が施され、高精度化されることがある。この移動平均処理は、式(36)に対して施されて式(37)に従って求められる場合
と、式(37)そのものに施される場合
とがあるが、変位(ベクトル)計測には、式(38−1)の方が精度が高いことが確認されている。
これらの移動平均の施された瞬時周波数を用いて、各位座標において、瞬時周波数に関して検波すれば良い。瞬時周波数の推定値はアンバイアスであり、デジタル信号処理の場合には、式(32)に対して、
を乗算することにより、瞬時位相θ(s)がランダムな散乱強度や反射率で決まる位相変化の積算値(すなわち、ランダム)である仮定の下で、その推定値
が得られる。
尚、式(38−1)と式(38−2)により求められる瞬時周波数に移動平均を施したものの代わりに、スペクトルの第1次モーメント(重心、つまり、重み付きの平均値)より求まる重心周波数(×2π)を用いても良い。式は、式(S1)に示してある。
上記の観測信号を表す式中のt = 0は、t軸方向の基準位置、すなわち、波動源位置を表す。これに対し、式(39)中の基準位置t = t'も、t'= 0(波動源位置)とすることがあり、その場合に位置座標t=sの分布として求まるθ'(s)は、反射や散乱により生じる位相変化の積分値で表される瞬時位相[式(30−2)]そのものの推定値である。瞬時周波数は平均化されたものであり、求まるθ'(s)はその状況で求められた推定値である。
また、移動平均処理の影響やスペクトルを求める際の窓長の影響で、瞬時周波数が波動源位置(t=0)からt=s'(非零であり、sとも等しくない)まで求まらない場合には、t'=0として、公称角周波数又は予め測定/推定した角周波数ω0を用いて、
として式(39)を用いることとなる。若しくは、t'= s'(非零、しかし、sとは等しくない)として、式(39)を用いる場合も有り、その場合、推定値θ'(s)には、以下のバイアスエラーが生じることになる。
しかし、式(30−2)と式(34)に基づき、サンプリングΔs間隔での瞬時位相の変化量であるΔθ(s)を推定する場合には、そのバイアスは問題とならない。推定結果は、
として求まる。式(36)に対して、ω(s)Δsを核とする複素指数関数との共役積を求めても良い。尚、上記の式(34)、(36)、(43)等において、位相の引き算を前方差分を用いて求める場合を記載したが、その代わりに、後方差分を行うことも可能である。また、式(37)、式(38−1)、式(38−2)において、位相の微分の計算を上記の位相の差分をサンプリング間隔で割る近似で行ったが、高域遮断周波数を持つ微分フィルタを用いて微分処理を行うこともある。また、式(39)の瞬時周波数の推定値の積分には、台形則を初めとする公知の様々な積分演算を実施できる。
尚、式(40)で表される位相回転を含まない瞬時位相[式(30−2)]の推定結果を得るべく、上記に依らずに、式(32)で表される解析信号の虚数部/実数部にarctan(正接の逆関数)を施して、式(30−1)中の余弦の角(すなわち、位相回転を含む瞬時位相)を求め、式(42)においてs'=sとして瞬時周波数の移動平均又はスペクトルの第1次モーメントの積分演算により求まる位相回転を用いて直接的に減算することもできる。但し、arctanの直接の演算結果は、−π〜πの結果となるため、その結果をアンラッピングした上で減算処理を行う必要がある。位相回転を含む瞬時位相は単調増加であるため、アンラッピングは、arctanの結果が負のときに2πを整数m倍したものを足せば良い。但し、mはビーム方向又は波動の伝搬方向に観測されたarctanの結果が負となった回数である。尚、上記の場合と同様に、式(41)を使用する場合もあるし、式(42)により表されるバイアスエラーを生じることもある。また、バイアスエラーを含まないサンプリング間隔Δsの瞬時位相の変化量であるΔθ(s)を推定するべく、式(43)とは別に、Δsだけ隔てた位置にて推定された位相回転を含まない瞬時位相の推定値との差を直接的に引き算により計算することもできる。
式(40)又は式(43)を用いて表される位相に関する画像は広帯域化されており、超解像の一種である。それらの位相そのものを表示することもできるし、余弦や正弦関数を掛けて表示することもできるし、さらに、包絡線で重み付けして表示することもできる。ちなみに、式(40)の位相を求めた複素解析信号の実部と虚部の各々の二乗の和の平方根は、包絡線信号と同一である。従って、二乗検波や絶対値検波、理想的には波打ち(信号値の符号、位相)を壊さずにそのままに画像化すると良い(グレー画像やカラー画像で表示できる)。主として、反射や散乱で決まる信号強度と位相や位相変化を表す画像となる。一方、求められた瞬時周波数を画像化すると、減衰の影響などを表す画像となる(同じく、グレーやカラー表示できる)。尚、上記のヒルベルト変換は、フーリエ変換に基づいて行うこと(非特許文献13)を記載したが、無論、本来のヒルベルト変換の計算をしても良い。また、信号にノイズが混入している場合は精度が低下するが、対象の実時間信号に対して微分処理を施して、位相が90°進んだ信号を生成し、-1を乗じて虚数成分を計算することもできる(微分処理によって角周波数が乗ざれた分は、元の実時間信号に対して余弦又は正弦信号の逆関数を施して求まる位相を近隣の位置における同計算結果(位相)との差分(いわゆる前方差分、後方差分、中心差分等を用いて1と−1を乗じて加算、又は、引き算)を計算してそれらの位置の距離で割ったもの(差分近似)で補正すればよく、差分近似ではなく、微分フィルタが施されることもある)。
例えば、式(30−1)で表される任意の信号に関して微分処理を施す場合、振幅A(s)の空間微分(空間(s)的な変化)が瞬時周波数ω(s)に比べて小さい場合やその仮定をし、また、式(30−1)とその微分の結果に関して、偏微分方向を含む多次元において、又は、その偏微分方向に移動平均を施すことにより、以下の様に近似する。
それらの信号自身に対して移動平均処理は行われない場合もある。ω(s)は、上記の計算の他、例えば、以下の如く推定することができる。式(30−1')をさらに微分し、上記の条件や仮定、処理の下、さらには、ω(s)の空間微分も小さい場合やその仮定をし、以下の様に近似する。
その際に、それらの信号自身に対して移動平均処理は行われない場合もある。式(30−1'')を式(30−1)で割り、-1を乗じれば、ω2(s)を推定できる。しかし、ω2(s)のその推定結果が負値となることがあり、偏微分方向sを含む多次元において、又は、その偏微分方向sの近傍の正値に置き換えられたり、近傍の正値のみを使用して補間近似したり、メディアンフィルタが掛けられたり、移動平均処理されたり、これらの組み合わせが施されることがある。メディアンフィルタは、特に、突発的に生じる大きな推定エラーを除去できる効果がある。また、正値に対して平方根を施して得られるω(s)に、メディアンフィルタや移動平均処理が施されることもある。これらの処理を通じて、ω(s)が求められることがある。式(30−1')をω(s)で除して-1を乗じることにより、式(30−1)の解析信号の虚数成分が得られる(つまり、解析信号が求まる)。この2階微分は、式(30―1)に微分フィルタや差分近似を2回施して求めても良いし、2階の微分フィルタや2階の差分近似(いわゆる中央差分を用いて、1、−2、1を乗じて加算したものをそれらの位置の距離の二乗で除する)を施して得ても良い。この他、微分には、例えば、アナログ回路にてオペアンプを使用した微分フィルタを使用しても良いし、デジタル回路またはデジタル信号処理において、微分フィルタや差分近似に基づく微分計算をしても良い。これらの微分処理は一種の高域通過型フィルタリングであるため、高域遮断周波数を設けて処理したり、微分処理の結果に対して移動平均処理を施すことがある。また、上記のω(s)には、計算を簡単にするべく、代わりに、公称周波数や大局的に推定される周波数(スペクトルの第1次モーメント等)を使用することもできる。本検波処理は、他の検波処理よりも格段に高速である。この処理は、r(s)の包絡線イメージング(解析信号の大きさを求めれば良い)や、変位や速度、加速度、歪、歪率、温度等の計測にも使用できる。これらの計測を行う場合、複数の波動やビームを用いたり、スペクトルの周波数分割等を通じて得られた複数の疑似の波動やビームを用い、それらの各々から導出されるドプラ方程式を連立して連立方程式を得ることがある(over-determinedシステム)が、その場合、式(30−1)は、それらの各々の波動やビーム、疑似の波動やビームを表し、各々の解析信号が同様にして求められて使用される。
また、信号が多次元信号であり、搬送周波数が複数の直交座標軸方向に存在する場合(横方向変調)も同様に瞬時位相を推定できる。非特許文献19にある通り、波動又はビームの伝搬方向を空間分解能を持つ状態で計測でき(スペクトルの重心や瞬時周波数を用いる)、同時に、その方向の周波数も計測でき、後の示される周波数の空間積分処理において設定される積分路の方向(接線方向)の周波数を高精度に求めて計算できる。上記の1次元信号の場合においては、例として、積分路を、送信時に設定した波動又はビームのステアリング方向(角度)、又は、生成された波動又はビームにおいて、同様に、但し、大局的に推定されるステアリング方向(角度)に直線状に取ることを記載したが、この多次元の場合、積分路はその次元空間において理論的には任意に取れる。しかし、実際に積分の計算を行う上では、積分路をビームフォーミングの行われた座標系に適した状態で設定することは重要であり、直線や弧を描くものやそれらを連結したもの等が使用されることが多い。また、処理を簡単に済ませるべく、公称周波数や同時に大局的に推定される周波数を使用することもできる(積分路に投影する)。空間分解能を持つ状態で推定される伝搬方向に積分を行うことは、周波数分布の補間処理を伴い、不可能ではないが、実用的ではない。いま、関心領域内の信号を
とすると、これより、各方向(t1,t2,t3)の瞬時角周波数[ω1(t1,t2,t3), ω2(t1,t2,t3), ω3(t1,t2,t3)]と、瞬時位相θ(t1,t2,t3)等を求めてイメージングする。関心領域が2次元のときは、
と表される。以下の3次元の時と同様に処理される。
ちなみに、A(s1,s2,s3)は振幅であり、位置座標(s1,s2,s3)における反射強度や散乱強度を表す。例えば、式(30'−1)の直交検波を通じた包絡線検波(IQ信号の二乗の和の平方根)により求まる。もしくは、フーリ変換を用いたヒルベルト変換を通じて、
を生成し、式(30'−1)と式(31')の二乗の和の平方根によっても求まる(特許文献7や非特許文献14)。後者は、特にデジタル信号処理に適している。
式(30')と式(31')を用いて、複素解析信号(特許文献6や非特許文献7)で表示し、
と表せる。
瞬時位相θ(s1,s2,s3)を求めるべく、まず、瞬時角周波数を求める。常套手段としては、特許文献6や非特許文献7に記載の方法で、位置座標(s1,s2,s3)において、例えば、t1方向の次のサンプリング位置座標(s1+Δs1,s2,s3)における瞬時周波数が等しく、瞬時位相は等しくないことを想定し(δθ(t1,t2,t3)は、ランダムな散乱強度や反射率で決まる位相変化(すなわち、ランダム)であり、(t1,t2,t3)に対してランダム的に大きく変化する)、
であると仮定すると、その位置座標(s1+Δs1,s2,s3)における信号は、
と表されて、式(32')と式(35')との共役積を求めると、式(33')と式(34')の仮定の下で、
と表され、従って、位置座標(s1,s2,s3)におけるs1方向の瞬時周波数ω1(s1,s2,s3)は、
と推定される。
特許文献6や非特許文献7に記載されている通り、実際には、信号r(s1,s2,s3)にはノイズが混入するし、式(33')や式(34')の仮定の下で推定することとして、s1軸方向やこれと直交する2方向又は1方向を含めて移動平均処理が施され、高精度化されることがある。この移動平均処理は、式(36')に対して施されて式(37')に従って求められる場合
と、ω1(s1,s2,s3)そのものに施される場合
とがあるが、変位(ベクトル)計測には、式(38'―1)の方が精度が高いことが確認されている。s2やs3の方向の瞬時周波数もR2(s1,s2,s3)やR3(s1,s2,s3)を求めることを通じて同様に求められる。
これらの移動平均の施された瞬時周波数を用いて、各位座標において、瞬時周波数に関して検波すれば良い。瞬時周波数の推定値はアンバイアスであり、デジタル信号処理の場合には、式(32')に対して、
を乗算することにより、瞬時位相θ(s1,s2,s3)がランダムな散乱強度や反射率で決まる位相変化の積算値(すなわち、ランダム)である仮定の下で、その推定値
が得られる。
尚、式(38'−1)と式(38'−2)により求められる瞬時周波数に移動平均を施したものの代わりに、スペクトルの第1次モーメント(重心、つまり、重み付きの平均値)より求まる重心周波数(×2π)を用いても良い。3次元の直交座標系の1つの軸、x軸方向の重心の式は、式(S1'')に示してある。他の方向も同様に求まり、2次元においても求まる。
上記の観測信号を表す式の積分路cは、瞬時位相を零とする位置を基準位置と考える始点0から関心点(s1,s2,s3)までの任意の線路である。0は、波動源の位置を表す。これに対し、式(39')中の積分路c'の始点も0(波動源位置)とすることがあり、その場合に位置座標(t1,t2,t3)=(s1,s2,s3)の分布として求まるθ'(s1,s2,s3)は、反射や散乱により生じる位相変化の積分値で表される瞬時位相[式(30'−2)]そのものの推定値である。瞬時周波数は平均化されたものであり、求まるθ'(s1,s2,s3)はその状況で求められた推定値である。
また、移動平均処理の影響やスペクトルを求める際の窓長の影響で、瞬時周波数が波動源位置0から(t1,t2,t3)=(s1',s2',s3')(波動源位置ではなく、(s1,s2,s3)とも等しくない)まで求まらない場合には、積分路c'の始点を0として、公称角周波数又は予め測定/推定した各方向の角周波数(ω01,ω02,ω03)を用いて、
として式(39')を用いることとなる。若しくは、積分路c'の始点を(t1,t2,t3)=(s1',s2',s3')(波動源位置0ではなく、(s1,s2,s3)とも等しくない)として、式(39')を用いる場合も有り、その場合、推定値θ'(s1,s2,s3)には、以下のバイアスエラーが生じることになる。
しかし、例えば、式(30'−2)と式(34')に基づき、サンプリングΔs1間隔でt1軸方向の瞬時位相の変化量であるΔθ1(s1,s2,s3)を推定する場合には、そのバイアスは問題とならない。推定結果は、
として求まる。式(36')に対して、ω1(s1,s2,s3)Δs1を核とする複素指数関数との共役積を求めても良い。その他、t2やt3の方向の位相変化の推定値Δθ2'(s1,s2,s3)Δθ3'(s1,s2,s3)も各方向のサンプリング間隔Δs2とΔs3にて求めることができる。尚、上記の式(34')、(36')、(43')等において、位相の引き算を前方差分を用いて求める場合を記載したが、その代わりに、後方差分を行うことも可能である。また、式(37')、式(38'−1)、式(38'−2)において、位相の微分の計算を上記の位相の差分をサンプリング間隔で割る近似で行ったが、高域遮断周波数を持つ微分フィルタを用いて微分処理を行うこともある。また、式(39')の瞬時周波数の推定値の積分には、台形則を初めとする公知の様々な積分演算を実施できる。尚、式(40')で表される位相回転を含まない瞬時位相[式(30'−2)]の推定結果を得るべく、上記に依らずに、式(32')で表される解析信号の虚数部/実数部にarctan(正接の逆関数)を施して、式(30'−1)中の余弦の核(すなわち、位相回転を含む瞬時位相)を求め、式(42')において(s1',s2',s3')= (s1,s2,s3)として瞬時周波数の移動平均又はスペクトルの第1次モーメントの積分演算により求まる位相回転を用いて直接的に減算することもできる。但し、arctanの直接の演算結果は、−π〜πの結果となるため、その結果をアンラッピングした上で減算処理を行う必要がある。位相回転を含む瞬時位相は単調増加であるため、アンラッピングは、arctanの結果が負のときに2πを整数m倍したものを足せば良い。但し、mはビーム方向又は波動の伝搬方向に観測されたarctanの結果が負となった回数である。尚、上記の場合と同様に、式(41')を使用する場合もあるし、式(42')により表されるバイアスエラーを生じることもある。また、バイアスエラーを含まない、t1方向のサンプリング間隔Δs1の瞬時位相の変化量であるΔθ1(s1,s2,s3)を推定するべく、式(43')とは別に、t1方向にΔs1だけ隔てた位置にて推定された位相回転を含まない瞬時位相の推定値との差を直接的に引き算により計算することもできる。同様にして、t2やt3の方向のサンプリング間隔Δs2とΔs3の瞬時位相の変化量の推定値Δθ2'(s1,s2,s3)Δθ3'(s1,s2,s3)も求めることができる。
式(40')又は式(43')を用いて表される位相に関する画像は広帯域化されており、超解像の一種である。それらの位相そのものを表示することもできるし、余弦や正弦関数を掛けて表示することもできるし、さらに、包絡線で重み付けして表示することもできる。ちなみに、式(40')の位相を求めた複素解析信号の実部と虚部の各々の二乗の和の平方根は、包絡線信号と同一である。従って、二乗検波や絶対値検波、理想的には波打ち(信号値の符号、位相)を壊さずにそのままに画像化すると良い(グレー画像やカラー画像で表示できる)。尚、上記のヒルベルト変換は、フーリエ変換に基づいて行うこと(非特許文献13)を記載したが、無論、1次元のときと同様に、本来のヒルベルト変換の計算を応用しても良い。また、信号にノイズが混入している場合は精度が低下するが、1次元のときと同様に、対象の実時間信号に対して微分処理を施して、位相が90°進んだ信号を生成し、-1を乗じて虚数成分を計算することもできる(微分処理によって角周波数が乗ざれた分は、元の実時間信号に対して余弦又は正弦信号の逆関数を施して求まる位相を近隣の位置における同計算結果(位相)との差分(いわゆる前方差分、後方差分、中心差分等)を計算してそれらの位置の距離で割ったもの(差分近似)で補正すればよく、差分近似ではなく、微分フィルタが施されることもある)。
例えば、式(30'−1)等で表される任意の信号に関して偏微分処理を施す場合、s1からs3の内の1つの方向に関して偏微分を施す。振幅A(s1,s2,s3)の空間偏微分(空間的な変化)がその偏微分方向の瞬時周波数ω1(s1,s2,s3)又はω2(s1,s2,s3)、ω3(s1,s2,s3)に比べて小さい場合やその仮定をし、また、式(30'−1)とその偏微分の結果に関して、偏微分方向を含む多次元において、又は、その偏微分方向に移動平均を施すことにより、以下の様に近似する。例えば、s1方向に偏微分した場合は以下の通りである。
それらの信号自身に対して移動平均処理は行われない場合もある。例えば、横方向変調の場合、方向に依ってはその方向の瞬時周波数が他の方向の瞬時周波数よりも低いことが有り、その様な場合は、偏微分の方向をその方向に取ることも可能であるが、ステアリングした方向であるとすると、信号のサンプリング間隔が粗いことが有り、近似計算を行うに当たり注意を要する。ω1(s1,s2,s3)は、上記の計算の他、例えば、以下の如く推定することができる。式(30'−1')を同一方向にさらに偏微分し、上記の条件や仮定、処理の下、さらには、ω1(s1,s2,s3)の空間微分も小さい場合やその仮定をし、以下の様に近似する。
その際に、それらの信号自身に対して移動平均処理は行われない場合もある。式(30'−1'')を式(30'−1)で割り、-1を乗じれば、ω1 2(s1,s2,s3)を推定できる。しかし、ω1 2(s1,s2,s3)のその推定結果が負値となることがあり、偏微分方向を含む多次元において、又は、その偏微分方向s1の近傍の正値に置き換えられたり、近傍の正値のみを使用して補間近似したり、メディアンフィルタが掛けられたり、移動平均処理されたり、これらの組み合わせが施されることがある。メディアンフィルタは、特に、突発的に生じる大きな推定エラーを除去できる効果がある。また、正値に対して平方根を施して得られるω1(s1,s2,s3)に、メディアンフィルタや移動平均処理が施されることもある。これらの処理を通じて、ω1(s1,s2,s3)が求められることがある。式(30'−1')をω1(s1,s2,s3)で除して-1を乗じることにより、式(30'−1)の解析信号の虚数成分が得られる(つまり、解析信号が求まる)。この2階微分は、式(30'―1)に微分フィルタや差分近似を2回施して求めても良いし、2階の微分フィルタや2階の差分近似(いわゆる中央差分)を施して得ても良い。s1以外のs2やs3の各々の方向に偏微分した場合も、同様にして、ω2(s1,s2,s3)とω3(s1,s2,s3)が求まり、解析信号が求まるが、上記の通り、偏微分の方向を適切に選ぶことが望ましい。この他、微分には、例えば、アナログ回路にてオペアンプを使用した微分フィルタを使用しても良いし、デジタル回路またはデジタル信号処理において、微分フィルタや差分近似に基づく微分計算をしても良い。これらの微分処理は一種の高域通過型フィルタリングであるため、高域遮断周波数を設けて処理したり、微分処理の結果に対して移動平均処理を施すことがある。また、上記のω1(s1,s2,s3)等の瞬時周波数には、計算を簡単にするべく、代わりに、公称周波数や大局的に推定される周波数(スペクトルの第1次モーメント等)を使用することもできる。本検波処理は、他の検波処理よりも格段に高速である。この処理は、r(s1,s2,s3)の包絡線イメージング(解析信号の大きさを求めれば良い)や、変位(ベクトル)や速度(ベクトル)、加速度(ベクトル)、歪(テンソル)、歪率(テンソル)等の計測にも使用できる。ベクトルやテンソルの計測を行う場合は、複数の波動やビームを用いたり、スペクトルの周波数分割等を通じて得られた複数の疑似の波動やビームを用い、それらの各々から導出されるドプラ方程式を連立して連立方程式を得る(横方向変調やover-determinedシステム)が、その場合、式(30'−1)は、それらの各々の波動やビーム、疑似の波動やビームを表し、各々の解析信号が同様にして求められて使用される。その他、同様にして、温度等の計測に使用されることもある。
本法を用いた場合は、主として、反射や散乱で決まる信号強度と位相や位相変化を表す画像となる。一方、求められた瞬時周波数を画像化すると、減衰の影響などを表す画像となる(同じく、グレーやカラー表示できる)。尚、上記の瞬時位相の存在は、ドプラ法に基づく上記の組織変位計測法や古典的な計測方法を単独に実施した場合には、微小変位といえども、何れの計測精度をも劣化させるものであったが、本願の発明者はフレーム間の位相マッチング法を開発してこれを克服した(例えば、非特許文献15)。他に報告のある組織変形を表す信号を伸縮させる方法も有効であることがあるが、前者の位相マッチング法は、組織変位や歪の計測等における高強度且つランダムな信号を対象とした場合の計測には欠かせない。通常、血流は狭帯域信号を用いて計測されるが、本方法によれば高分解能計測が可能となり、高精度な粘性計測等を拓くものである。多次元ベクトルやテンソルの計測も可能である。
また、上記の包絡線検波は、生成されたイメージ信号に対して行うのが常套的手段であるが、周波数領域において、角スペクトル又はスペクトルの共役積による演算や、それも、加算処理前の各波数(周波数)成分に関するそれらの演算も有用である(本発明における非線形処理の1つ)。また、振幅の検波のために、上記の他に、二乗検波や絶対値検波等を施すこともある。尚、ビームフォーミング(即ち、ディレイやアポダイゼーションが掛けられ実現されるフォーカスや偏向)が行われて得られたイメージ信号からフーリエ変換を通じて得られるものはスペクトルであるが、さらに、ビームフォーミングを施すに至った場合、軸方向と少なくとも1つの横方向にフーリエ変換されたものは、角スペクトルである。即ち、イメージ信号が生成された後に、さらに、ビームフォーミング処理が施されることがある。また、本処理や他の処理(後に詳細に記したスペクトルの重み加工や信号への非線形処理、逆フィルタリング等、その他)を含め、超解像処理の施されたものが上記のコヒーレント加算に使用されることがあるし、上記のインコヒーレント加算に使用されることもある。加算の対象は、異なる、又は、同一の信号(それらはビームフォーミング前又は後)に他の処理の施された信号、又は、それらの生信号等が対象となる。コヒーレント加算は、広帯域化(高分解能化)や高SN比化に適している一方で、インコヒーレント加算は、スペックルの低減や高SN比化に適している。スペックルの低減においては、空間分解能の低下を伴うこともあるが、超解像を交えた処理は、それが問題とならずに、高空間分解能な結果を齎すことがある。インコヒーレント加算は、基本的には、何かしらの検波(冪乗検波を含む)が施されて正値にされたものに対して施されるわけだが、上記の包絡検波以外の検波処理は、検波信号にコヒーレンス性が残る処理である(少なくとも、波の振動がわかる)。包絡線検波も有用であるが、この様なコヒーレンス性の残る検波は、特に、空間分解能を損じない検波処理として有用である。これと比較して、包絡線検波によれば、空間分解能が低下しやすいことがある。
動作するモードが装置に入力される指令(信号)によって定められることもある。また、観察対象の波動(波動の種類や特徴、強度、周波数、帯域幅、又は、符号等)や伝搬する媒体(伝搬速度、波動に関わる物性値、減衰、散乱、透過、反射、屈折、又は、それらの周波数分散等)に関する付加情報が与えられ、適切に受信信号がアナログ処理又はデジタル処理されることもある。生成されたイメージ信号の特徴(強度、周波数、帯域幅、又は、符号等)が解析されることもある。本実施形態に係る装置で得られたデータは、他の装置において使用されることがある。本実施形態に係る装置は、ネットワークデバイスの1つとして使用されることがあり、ネットワークシステムの制御装置により制御されることがあり、また、ネットワークデバイスを制御する制御装置として使用されることもあり、ローカルに構成されたネットワークを制御する制御装置となることもある。
本実施形態に係るパッシブ型の装置をアクティブ型の装置として使用する場合においては、送信トランスデューサ(又はアプリケータ)10を装置本体30の送信ユニット31に接続し、送信器31aがアナログ装置でトリガー信号の入力端子を持つ場合には、制御ユニット34によってトリガー信号を生成して印加するか、又は、送信器31aがデジタル装置で外部クロック信号に従って動作するモードがあれば、装置本体30内のいずれかから、又は、制御ユニット34からクロック信号を与えるか、又は、装置本体30が送信器31aのクロック信号で動作するかのいずれかの機構が設けられることがある。送信器31aがデジタル装置である場合においては、これらの内のいずれかの機構により、送信と受信のクロック信号が同期される。このことは、複数回の送信に基づいて、1つのイメージ信号を生成する場合に重要となる。同期を取れない場合には、クロック周波数やサンプリング周波数が高い状況において、誤差が低減されることがある。
以上により、高速フーリエ変換を通じて、任意のビームフォーミングを、高速に補間近似を行わずにデジタル処理によって実現できる。実質的に、任意のフォーカシングと任意のステアリング(偏向)を、任意開口形状のトランスデューサアレイデバイスを用いて実施できる。尚、本発明においては、方法(1)〜(7)に記載の如く、任意のビームフォーミングの波数マッチングにおいて補間近似処理を行うことがあり、より高速にビームフォーミングが行われることがある。高精度に近似的な波数マッチングを行うには、計算量が増えることを代償として、受信信号を適切にオーバーサンプリングする必要がある。その場合、補間近似処理を行わない場合に任意位置の信号を選択的に生成できるのとは異なり、フーリ変換のデータ数が増えることには注意が必要である。第2の実施形態は、装置として、また、動作モード(例えば、イメージングモード、ドプラモード、計測モード、通信モード等)に関して、通常の装置において使用され得るものであり、また、それらや上記のものに限られるものではない。
以上の第1及び第2の実施形態において、電磁波や、音波(圧縮波)やずり波、衝撃波、表面波等を含む振動波(力学的波)、又は、熱波等の波動を対象として、送信又は受信のフォーカシングや送信又は受信のステアリング、送信又は受信のアポダイゼーションの有無に依らず、送受信の座標系とビームフォーミングされた信号を生成する座標系が異なる場合を含め、任意のビームフォーミングをデジタル処理に基づいて補間近似を行うことなく高精度に且つ高速に実施できる。ビームフォーミングされた信号を画像表示する際のフレームレートが向上するだけでなく、画質に関して高い空間分解能と高いコントラストを得ることができ、さらに、ビームフォーミングされた信号を用いて変位や変形、又は、温度等を計測すれば、計測精度も向上する。尚、本発明においては、方法(1)〜(7)に記載の如く、任意のビームフォーミングの波数マッチングにおいて補間近似処理を行うことがあり、より高速にビームフォーミングが行われることがある。高精度に近似的な波数マッチングを行うには、計算量が増えることを代償として、受信信号を適切にオーバーサンプリングする必要がある。その場合、補間近似処理を行わない場合に任意位置の信号を選択的に生成できるのとは異なり、フーリ変換のデータ数が増えることには注意が必要である。高速にビームフォーミングされた波動又はビームの重ね合わせ処理やスペクトル周波数分割、また、未受信ビームフォーミングの受信信号が重ね合わせされたりやスペクトル周波数分割されている状況における高速ビームフォーミングは様々な応用を実現する。本発明の応用は、この限りではない。処理の高速性は、多次元アレイを用いた多次元イメージングにおいて絶大な効果を奏する。尚、上記の計算アルゴリズムにおいて実施するフーリエ変換又は逆フーリエ変換処理には、専用の高速フーリエ変換又は高速逆フーリエ変換を実施することを含め、高速フーリエ変換を実施することが望ましい。また、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、当該技術分野において通常の知識を有する者によって、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。
計測対象は、有機物、無機物、固体、液体、気体、レオロジーに従うもの、生き物、天体、地球、環境等、様々であり、応用範囲は極めて広い。非破壊的検査、診断、資源探査、材料や構造物の生成や製造、物理的又は化学的な様々な修復や治療のモニタリング、明らかにした機能や物性等を応用すること等に貢献し、それらにおいては被測定対象に大きな擾乱を来さず、非侵襲的、低侵襲的、非観血的である条件が課された中で精度が求められることがある。理想的に対象を原位置でのありのままの状態(in situ)において観測できる場合がある。また、波動そのものの作用により対象に治療や修復を実施することもあり、その際の対象からの応答に対してビームフォーミングを実施してその状況が観測されることもある。また、衛星通信、レーダー、ソナー等においてビームフォーミングを実施し、省エネの下、情報的に安全な環境を実現し、正確な通信も可能である。アドホックな通信機器やモバイルを含む通常の通信においても、本発明は有効である。また、センサーネットワークにも応用できる。対象が動的である場合には実時間性が求められるが、本発明に依れば、デジタルビームフォーミングを短時間に高速に高精度に完了することが可能である。
<<第3の実施形態>>
電磁波、光、力学的な振動、音波、又は、熱波等の波動においては、その周波数、帯域幅、強度、又は、モードにより、波動としての挙動が異なる。これまでに多くの各種波動のトランスデューサが開発され、それらの波動の透過波、反射波、又は、散乱波等を用いるイメージングが行われている。例えば、非破壊検査や医療やソナーにおいて、音波の中でも高い周波数を有する超音波が使用されることは良く知られている。また、レーダーにおいても、観測対象に合わせて適切な周波数の電磁波(マイクロ波、テラヘルツ波、赤外線、可視光、又は、X線等の放射線等)が使用される。他の波動においても同様である。
それらの波動を用いるイメージングにおいては、通常、直交検波や包絡線検波や二乗検波を通じて得られる振幅データの分布が、グレー画像やカラー画像として、1次元、2次元、又は、3次元で表示される。また、それらの波動を使用するドプラ計測においては、生のコヒーレント信号が処理される(超音波ドプラ、レーダードプラ、レーザードプラ等)。さらに、画像計測の分野では、検波を通じてインコヒーレントにした信号を用いて動きの観測が行われることも良く知られている(相互相関処理やオプティカルフロー等)。医用超音波やソナーにおいては、物理的に生成されるハーモニックや和音や差音を用いたイメージングも行われる。
この様な中で、本願発明者は、ヒト組織の癌病変や硬化症等の病変を鑑別診断するための超音波イメージング技法の開発をしている。本願発明者は、エコーイメージングの高分解能化や組織変位の高精度計測イメージング等と共に、HIFU(High Intensity Focus Ultrasound:高強度焦点超音波)治療の高分解能化や高効率化を行っており、強力超音波放射時のエコーの受信に基づくそれらのイメージングも行っている。それらのイメージングは、適切なビームフォーミングを行うことを基礎としており、適切な検波方法や組織変位計測方法が必要となる。
例えば、本願発明者は、ビームフォーミング法として、交差ビームを用いた横方向変調法、スペクトル周波数分割法、多くの交差ビームを使用する方法、及び、優決定(Over-determined)システム法等、また、特に多次元信号の検波方法として、直交検波や包絡線検波の他に二乗検波等、また、変位ベクトル計測法として、多次元自己相関法、多次元ドプラ法、多次元クロススペクトラム位相勾配法、及び、位相マッチング法等を考案し、その他、変位や歪計測に基づいて(粘)ずり弾性率分布や熱物性分布を再構成イメージングする技法を報告している(非特許文献13及び29を参照)。その中には、既に臨床において使用されているものもある。本願発明者の最近の報告は、ITEC(International Tissue Elasticity Conference)、IEEE Trans.on UFFC、超音波研究会、及び、アコースティックイメージング研究会等に多い。
本願発明者は、これらに関連して、非線形イメージングに注目している。医用超音波においては、現在、超音波の伝搬過程における物理的作用の結果に基づく非線形イメージング(いわゆる、ハーモニックイメージング)が行われている。以下においては、特に、非線形超音波の診断と治療への応用について述べる。
ハーモニックイメージングは、音圧強度の大きい波成分の伝搬速度が大きい(通常、高強度の音圧に対して体積弾性率が大きいためと説明される)ことを要因として、伝搬中に生成される高調波成分をイメージングするものである。このハーモニックイメージングにおいては、超音波伝搬における非線形効果を増強するべく、コントラスト剤(超音波造影剤)を使用することがある。
毛細管(Capillary)の血流イメージングが可能であること等、その有効性が臨床において認知されて既に長い歴史がある(非特許文献21を参照)。非線形成分(高調波成分)を用いたドプラ計測も可能であり、近く、この様な場合において本願発明者の実現した多次元ベクトル計測を行った報告を行う。非特許文献22においては、いわゆるパルス・インバージョン法が用いられ、基本波との分離が行われている。
また、組織イメージングは、血流イメージングに先行して行われた歴史があり、当初は、高調波はフィルタリングにより分離されていたが(非特許文献23を参照)、現在は、上記のパルス・インバージョン法により分離される。送波信号が広帯域である場合には、基本波と高調波の帯域が被るので、フィルタリング法には限界があった。その他、冪乗項からなる多次元乗多項式において、最小自乗法に基づいて、各次元項で表される基本波と高調波に分離する報告がある(非特許文献24を参照)。
最近では、超音波顕微鏡(非特許文献25を参照)や、放射圧イメージング(非特許文献26を参照)において、ハーモニック成分や和音を応用する報告がある。また、その非線形伝搬と熱吸収には深い関わりがあり、HIFUは、キャビテーション(Cavitation)を生じさせる場合を含めて、高強度の超音波を焦点位置に集中させて使用される(非特許文献27等を参照)。また、超音波からずり波にエネルギー(やモード)が変換されるとき(例えば、軟組織と骨間の音響インピーダンスが大きく変化する境界に音波が斜めに入射する場合や散乱によってずりを生じるとき)には、その生成された高周波のずり波が、発生位置近傍内の伝搬中に、組織に吸収され易い(Girke)。
HIFU治療において非線形効果を増強することを目的に使用されるコントラスト剤(非特許文献28等を参照)は、これらの点においても有効と考える。本願発明者は、癌病変の治療に関し、血液を凝固させて栄養動脈(feeding artery)を閉塞させる効果について17年前に世界に先駆けて言及しており、この効果も得られるものと考えている。最近では、臨床診断用の探触子と同程度の周波数帯域を有するアプリケータを安価に入手できる様になったが、本願発明者は、専用のコントラスト剤を開発する必要があると考えている。本願発明者は、少なくとも壊れやすい特性と壊れにくい特性とを共に魅力的な特性と考えているが、直近では、診断用の同特性のものや幾種類かを混合して使用することが可能である。
波動は伝搬する間に減衰の影響を受け、従って、伝搬距離が進むにつれて波動のエネルギーは小さくなる。また、拡散する波動においては、拡散の影響も受ける。この様な中で、透過波、反射波、又は、散乱波が、インピーダンスの変化、反射体、又は、散乱体の存在を反映し、それらのイメージングやドプラ計測に使用される。それらのメージングにおいては、可能な限り、又は、必要とされる範囲内で、信号が高周波数の成分を含み、且つ、広帯域であることが望ましく、また、ドプラ計測においても同様である。
しかしながら、通常は、高周波数の信号成分は減衰の影響を強く受け、伝搬距離が進むにつれて、そのエネルギーは失われ、信号は低周波化され、そして、狭帯域となって行く。即ち、信号源から遠い位置のイメージングは、信号対雑音比(Signal-to-Noise Ratio:SN比)が低くなり、空間分解能も低くなるような影響を受ける。ドプラ計測においては、その精度が低下する。減衰によるそれらの影響を低減することは、工学的な意味において極めて重要である。
また、単一の信号源では実現できない高周波の信号を生成できると、より高分解能なイメージングと高精度なドプラ計測が可能となる。単純に高周波数の信号を生成できても良い。通常、減衰の影響は高周波成分に強く、例えば、減衰の影響を受けやすい顕微鏡では、高い周波数で極力深部まで観測できると良い。また、低周波数のイメージングや低周波数の信号を用いた計測ができても良い。また、単一の信号源では実現できない低周波数の信号を生成できても良い。例えば、対象の深部を低周波数で変形させることができる。医用超音波画像、核磁気共鳴画像、OCT、レーザー応用においては、複数の信号源を用いて深部組織を低周波数で変形させることが行われる(Tissue Elasticity)。
例えば、多方向から振動を加えてその周波数よりも低周波数の振動波を生成したり、また、複数の超音波ビームをそれらの焦点位置等において交差させ、そこに低周波数の力源を実現して低周波数の振動波を生成させたりし、それらの生成された振動波が超音波(縦波)である場合があるし、また、それらの生成された振動波がずり波(横波)である場合には超音波で観測されることがある。それらの生成される波動の伝搬方向を調整できても良い。これらの信号を理論的に又は演算を基礎として実現できると、生成される波動を制御することもできて良い。さらに、通常の直交検波及び包絡線検波、二乗検波の処理に代わる、短時間に容易に実施できる検波方法も重要である。
そこで、上記の点に鑑み、本発明の第2の目的は、計測対象内から伝搬して来る任意波動において一般的に相対的に強度の弱い高周波数の成分や失われた高周波の成分を増強したり新たに生成したりして、空間分解能や計測精度を向上させることが可能なイメージング装置を提供することである。また、イメージング装置は、計測対象内の非線形の効果を増強したり、模擬したり、計測対象内において非線形効果がない場合においては新たに生成したり、又は、仮想的に実現してイメージングを行っても良い。また、本発明の第3の目的は、単一の波動源では実現できない高周波の信号を生成することである。さらに、本発明の第4の目的は、短時間に容易に実施できる検波方法を実現することである。
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係るイメージング装置は、計測対象内から伝搬して来る任意波動に対し、(i)伝搬経路の任意位置において非線形デバイスを用いて非線形処理を施した上でトランスデューサによって受信して受信信号を生成する処理、(ii)トランスデューサによって受信してアナログの受信信号を生成し、アナログの受信信号にアナログの非線形処理を施す処理、及び、(iii)トランスデューサによって受信してアナログの受信信号を生成し、アナログの受信信号をデジタルサンプリングして得られるデジタルの受信信号にデジタルの非線形処理を施す処理の内の少なくとも1つを施す非線形受信処理部と、非線形受信処理部によって得られる受信信号に基づいて、計測対象の画像を表す画像信号を生成する画像信号生成部とを備える。
本発明の1つの観点によれば、計測対象内から伝搬して来る任意波動において減衰の影響が問題とならない周波数の信号に対して非線形処理を施すことにより、一般的に相対的に強度の弱い高周波数の成分や失われた高周波数の成分を増強したり新たに生成したりして、空間分解能や計測精度を向上させることが可能となる。また、電磁波、光、力学的な振動、音波、又は、熱波等の任意波動の信号源より到来した波動や、それらの信号源から発せられた波動の透過波、反射波、又は、散乱波をトランスデューサによって検出して得られるコヒーレント信号に対し、波動伝搬中における乗算や冪乗の効果や、それらのアナログ演算やデジタル演算を含む処理によって、計測対象内の非線形効果を増強することができる。若しくは、同様の効果を模擬したり、新たに生成したり、又は、仮想的に実現することができる。
例えば、コヒーレント信号を用いたイメージングやドプラ計測において、元の信号を用いたイメージングに比べて、高周波成分を含む広帯域な信号を利用して高分解能イメージングを実現し、また、元の信号を用いたドプラ計測に比べて高精度な変位、速度、加速度、歪、又は、歪率の計測を実現することができる。また、インコヒーレント信号に対しても、同様の課題に対して同様の処理が施される。ハードウェアとしては、通常のデバイスを使用することができる。無論、アナログ処理(回路)の方がデジタル処理(回路)よりも高速である。高次計算を含む計算を行う場合や自由度が広い点において、計算機や演算機能を有するデバイス(FPGAやDSP等)を使用することができる。
特に、波動伝搬過程における減衰の影響に頑強で、単一の信号源では実現できない高周波成分を生成することも可能であり、高分解能なイメージングと、高精度なドプラ計測が可能となる。また、単一の信号源では物理的に実現できない高周波の信号を生成することも可能である。100MHzの超音波トランスデューサを複数台使用すると、物理的にその台数倍の高い超音波を生成でき、通常のトランスデューサでは生成することのできない高周波数を実現できる。また、単純に高周波数の信号を生成できても良い。本発明によれば、そのような高周波数を演算によっても実現することができる。従って、物理的に実現できない高周波な波動や信号も生成することができる。同様にして、低周波数のイメージングや低周波数の信号を用いた計測を実現できる。また、単一の信号源では物理的に実現できない低周波数の信号を生成することも可能である。これらの信号を理論的に又は演算を基礎として実現し、生成される波動を制御することもできる。
例えば、超音波顕微鏡において、数百MHzの高周波超音波(信号)を応用して、音源で決まる周波数よりも高い周波数の超音波を生成し、且つ、その超音波が減衰に対して頑強であることから、通常よりも高分解能なイメージングと高精度なドプラ計測が可能な超音波顕微鏡を実現することができる。また、低周波数のイメージングや低周波数の信号を用いた計測もできる。また、組織の変形能を計測する場合においては、例えば、対象の深部を低周波数で変形させることができる。医用超音波画像、核磁気共鳴画像、OCT、レーザー応用等において、複数の信号源を用いて深部組織を低周波数で変形させることが行われる。他のイメージング装置やドプラ装置においても同様である。その他、加温、加熱、冷却、冷凍、溶接、加熱治療、洗浄、又は、修復等の効果も向上し、その際の高分解能化も可能である。各種検波後のインコヒーレント信号においても同様の効果が得られる。
また、信号処理の技術的な面においては、直交検波及び包絡線検波の処理を容易にできる。例えば、偏向ビームや偏向された波動に本発明を適用すると、全座標軸に関して直交検波したIQ信号が得られるので、包絡線検波が容易になる。また、交差ビームに本発明を施すと、各座標軸に直交検波したIQ信号が得られるので、各方向に通常のドプラ信号処理を施すことのみで、変位ベクトル、速度ベクトル、加速度ベクトル、歪テンソル、又は、歪率テンソルの計測が可能となる。無論、画像化において、検波処理として二乗検波を行うこともできる。
電磁波、光、力学的な振動、音波、又は、熱波等の任意波動の信号源より到来した波や、それらの信号源より発せられた波動の透過波、反射波、又は、散乱波をトランスデューサによって検出して得られるコヒーレント信号を用いたイメージングやドプラ計測は、レーダー、ソナー、非破壊検査、又は、診断等において、各媒体を対象として適切な周波数を用いて広く行われている。また、信号源より発せられた波動は、加温、加熱、冷却、冷凍、溶接、加熱治療、洗浄、又は、修復等にも応用されている。さらに、最近においては、インコヒーレント信号を用いた動き等の画像計測が行われる様になり、画像処理や信号処理を基礎として様々なイメージングや計測が行われている。本発明は、これら全てにおいて効果を奏するものであり、本発明の利用可能性及び市場可能性は非常に高い。
図30は、本発明の第3の実施形態に係るイメージング装置の構成例を示すブロック図である。このイメージング装置は、計測対象から到来する電磁波、光、力学的な振動、音波、又は、熱波等の任意波動に基づいて、計測対象を撮像したり、又は、計測対象における変位等の物理量を非破壊で計測する装置である。
図30に示すように、イメージング装置は、少なくとも1つのトランスデューサ110と、イメージング装置本体120とを含んでいる。トランスデューサ110は、電磁波、光、力学的な振動、音波、又は、熱波等の任意波動を生成及び受信できるものであっても良い。その場合に、トランスデューサ110は、任意波動を計測対象1に送信すると共に、計測対象1内において反射された反射波又は散乱された散乱波等を受信することができる。例えば、任意波動が超音波である場合に、駆動信号に従って超音波を送信すると共に、超音波を受信して受信信号を生成する超音波トランスデューサを用いることができる。応用に合わせて、超音波素子(PZTや高分子圧電素子等)は異なり、トランスデューサの構造が異なることは良く知られている。
血流計測では歴史的に狭帯域の超音波を使用することが行われてきたが、本願発明者は、近年において実用化された軟組織の変位や歪(静的な場合を含む)、ずり波伝搬(速度)の計測の場合を含め、(エコー)イメージング用の広帯域トランスデューサを使用することを世界に先駆けて実現してきた。HIFU治療も然りで、連続波が使用されることもあるが、本願発明者は、高分解能な治療を実現すべく、広帯域型のデバイスを用いた開発を行っている。強力超音波を使用する場合には、加熱効果を来さない範囲で組織を刺激し、上記の如く計測対象1内に力源を生成することもあり、(エコー)イメージング用のトランスデューサが使用されることもある。加熱治療や力源生成、そして、(エコー)イメージングが同時に行われることもある。その他の波動源やトランスデューサにおいても然りである。トランスデューサには接触型と非接触型があり、各波動のインピーダンスマッチングが適切に行われて使用される。
あるいは、トランスデューサ110として、任意波動を生成する送信用トランスデューサと、任意波動を受信する受信用トランスデューサ(センサー)とが用いられても良い。その場合に、送信用トランスデューサは、任意波動を計測対象1に送信すると共に、センサーは、計測対象1内において反射された反射波又は散乱された散乱波、又は、計測対象1内を透過した透過波等を受信することができる。
例えば、任意波動が熱波である場合に、太陽光や照明、生体内の代謝等の故意に生じさせることのない熱源が使用されることもあるが、赤外加温器やヒータ―等の比較的定常なものや、また、駆動信号に従って制御されることが多い加熱用の超音波を送信する超音波トランスデューサ(計測対象内1に力源を生成することもある)や電磁波トランスデューサ、レーザー等も使用される。また、熱波を受信して受信信号を生成する赤外線センサー、焦電センサー、マイクロ波やテラヘルツ波の検出器、光ファイバー等の温度センサー、超音波トランスデューサ(超音波の音速や体積変化等の温度依存性を用いて温度変化を検出)、又は、核磁気共鳴信号検出器(核磁気共鳴のケミカルシフトを用いて温度を検出)を用いることができる。各波動に関し、適切に受信できるトランスデューサが使用される。
トランスデューサ110は、駆動信号に従って能動的に波動を生成する際に、積極的に高調波を含む波動を生成しても良い。例えば、トランスデューサ110は、波動源又はそれを駆動する送信器121の回路の非線形特性に従って波動を生成する。また、トランスデューサ110は、1つの送信面又は受信面を有しても良く、複数の送信面又は受信面を有しても良い。トランスデューサ110の送信面には、生成された任意波動に対して非線形処理を施す非線形デバイス111が設けられても良い。トランスデューサ110の受信面には、計測対象1内から伝搬して来る任意波動に対して非線形処理を施す非線形デバイス111が設けられても良い。非線形デバイス111は、必ずしもトランスデューサ110の送信面や受信面に接している必要はなく、任意波動の伝搬経路の任意位置に設けられても良い。
また、計測対象1とトランスデューサ110の送信面又は受信面との間に、フィルタ(分光器等)、遮蔽物、増幅器、又は、減衰器等の作用デバイス112が設けられても良い。非線形デバイス111を用いる場合に、作用デバイス112は、非線形デバイス111の前後両側に設けられても良い。トランスデューサ110、非線形デバイス111、及び、作用デバイス112は、分離されている場合と、組み合わせにおいて一体となっている場合とがある。
図30においては、波動源が計測対象1内に設けられる場合も示しており、又は、それが制御部133によって直接的に制御可能である場合がある。また、トランスデューサ110によって生成した波動をレンズ等を用いて集中させたり、又は、複数のトランスデューサ110を用いてフォーカス送信等を行って、波動源を生じさせたりすることがある(力学的な波や熱波の源、又は、力学的な波や電磁波を用いて、例えば造影剤であることのある磁性体等を対象として新たに電磁波を生成したり、又は、波動間の物理的作用や物性への刺激により波動の強さや伝搬方向を制御する場合等を含む)。
無論、計測対象1内に、元より、波動源があることがある(例えば、脳や心臓の電気活動は電流源、心臓は力源となる)。また、波動源を制御可能な場合もあれば、波動源を制御できない場合もあり、計測対象1をin situの状態で観測することもあり、又は、それらの波動源そのものがイメージング対象や計測対象であることもある。あるいは、元より、その様な波動源が、計測対象1外に存在することもあり、同様に扱われ、計測対象となることもある。その様な波動源と計測対象1との間に、非線形デバイス111や作用デバイス112が適切に設けられる場合もある。
さらに、計測対象1内の少なくとも一部に、計測対象1内において非線形効果を得たり、又は、計測対象1内の非線形効果を積極的に増強するために、微小気泡等の造影剤(非線形増強剤)1aが注入されても良い。造影剤1aとしては、計測対象1内の特にターゲットとする病変や流体等に対して親和性を有するものが使用されることがある。この様に、波動を受信するトランスデューサには、複数の波動源により生成された波動が到来することがある。
トランスデューサ110は、有線又は無線によって、イメージング装置本体120から駆動信号を供給され、及び/又は、イメージング装置本体120に受信信号を出力する。無線による場合には、トランスデューサ110内に無線受信器及び/又は無線送信器が設けられ、イメージング装置本体120内にも無線送信器及び無線受信器が設けられる。
イメージング装置本体120は、パートAにおいて、送信器121と、受信器122と、フィルタ/ゲイン調整部123と、非線形素子124と、フィルタ/ゲイン調整部125と、検波器126と、AD(Analogue-to-digital)変換器127と、記憶装置128とを含んでも良い。また、イメージング装置本体120は、パートBにおいて、受信ビームフォーマ129と、演算部130と、画像信号生成部131と、計測部132と、制御部133と、表示装置134と、アナログ表示装置135とを含んでも良い。制御部133は、イメージング装置本体120の各部を制御する。
複数のトランスデューサ110が用いられる場合には、トランスデューサ110の数と同じチャンネル数のパートAが設けられるようにしても良い。後に、それらのトランスデューサ110がアレイを構成する場合についても説明する。図30に示すように、複数チャンネルのパートAが設けられる場合には、複数チャンネルのパートAの記憶装置128から出力される受信信号が、パートBの受信ビームフォーマ129に供給されることもある。あるいは、各々のパートAに縦続的にそれぞれのパートBが接続されて独立に処理されることもあり、その場合には、各チャンネルのパートAの記憶装置128から出力される受信信号が各チャンネルのパートBの受信ビームフォーマ129に供給される。なお、複数のトランスデューサ110は、異なる別の種類の波動に関するものであることがあり、その場合には、異なる種類の波動の非線形効果を同時に観測することがあるし、同一波動における非線形効果ではなくて異なる種類の波動間の非線形効果を観測することがある。
パートAにおいて、送信器121〜検波器126は、アナログ回路によって構成されても良いし、それらの少なくとも一部は、デジタル回路で構成される場合もある。また、パートBにおいて、受信ビームフォーマ129〜制御部133は、デジタル回路によって構成されても良いし、又は、中央演算装置(CPU)と、CPUに各種の処理を行わせるためのソフトウェアを記録した記録媒体とによって構成されても良い。記録媒体としては、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、CD−ROM、又は、DVD−ROM等を用いることができる。なお、受信ビームフォーマ129〜制御部133の少なくとも一部は、アナログ回路で構成される場合もある。
送信器121は、制御部133から供給されるトリガー信号に従って駆動信号を生成するパルサー等の信号発生器を含んでいる。制御部133により、周波数やキャリア周波数、帯域幅、送信信号強度(アポダイゼーション)、又は、パルス波やバースト波等の波形や形状が制御されることがある。制御部133は、トリガー信号のタイミング又は遅延時間をチャンネル毎に設定しても良い。あるいは、制御部133から出力されるトリガー信号のタイミングを全てのチャンネルについて一定にしておき、送信器121が、制御部133によって設定された遅延時間に従ってトリガー信号を遅延させる遅延素子をさらに含んでも良い。
送信器121は、生成した駆動信号をトランスデューサ110に印加することにより、トランスデューサ110に任意波動を生成させる。例えば、送信器121は、送信される波動の強度や生成される高調波の強度を調整するべく、駆動信号の増幅器(アポダイゼーションを兼ね得る)を含み、制御部133によって遅延時間が設定される遅延素子をさらに含んでも良い。高調波を含む駆動信号が生成されて使用されることもある。共振ではなく、アポダイゼーションを行う、又は、強制振動させる場合に、チャープ波を生成する等、様々な波が生成されて使用される。複数チャンネルの送信器121によって生成された駆動信号を複数のトランスデューサ110に印加する場合には、制御部133による遅延時間の設定によって、送信ビームのフォーカシングやステアリング、及び、平面波の送信が可能である(平面波は、伝搬する方向と直交する方向には狭帯域の波であり、広帯域化されると効果的である)。
また、送信器121は、非線形効果が同様に設定される非線形素子(トランジスタやダイオードや非線形回路等のアナログデバイス、又は、非線形演算器等のデジタルデバイス)をさらに含んでも良い。予め用意されている周波数やキャリア周波数、帯域幅、アポダイゼーション、遅延、及び、非線形効果が設定される場合があるが、操作者により制御部133を介してそれらが制御されることもあり、また、演算部130において観測状況に合わせてそれらがアダプティブに決定されて制御されることもある。
複数のトランスデューサ110を駆動する場合には、各チャンネルの送信器の周波数やキャリア周波数、帯域幅、アポダイゼーション、遅延素子、及び、非線形素子が制御されるが、予め用意されているそれらのパターンに設定される場合もあれば、操作者により制御部133を介してそれらのパターンが制御されることもあり、演算部130において観測状況に合わせてそれらのパターンがアダプティブに決定されて設定されることもある。
受信器122は、例えば、受信信号を増幅する増幅器又は減衰させる減衰器(アポダイゼーションやフィルタを兼ね得る)を含み、制御部133によって遅延時間が設定される遅延素子をさらに含んでも良い。また、受信器122は、非線形効果を生む非線形素子(トランジスタやダイオードや非線形回路等のアナログデバイス、又は、非線形演算器等のデジタルデバイス)をさらに含んでも良い。複数のトランスデューサ110によって波動を受信する場合を含め、送信器121のそれらと同様に、それらは設定されることがある。受信器122は、任意波動を受信したトランスデューサ110によって生成される受信信号を増幅して、増幅された受信信号を、フィルタ/ゲイン調整部123及びAD変換器127に出力する。
フィルタ/ゲイン調整部123は、受信信号の周波数帯域を制限するフィルタ、又は、受信信号のゲインを調整する増幅器若しくは減衰器を含んでいる。フィルタ/ゲイン調整部123は、受信信号の周波数帯域又はゲインを調整し、その受信信号を非線形素子124に出力する。
非線形素子124は、例えば、トランジスタやダイオードや非線形回路等のアナログデバイスを含み、受信信号にアナログの非線形処理を施す。この非線形処理は、受信信号に含まれている少なくとも1つの周波数成分信号に対する冪乗演算であっても良いし、受信信号に含まれている複数の周波数成分信号に対する乗算演算であっても良い(ホール効果素子等を使用できる)。
フィルタ/ゲイン調整部125は、受信信号の周波数帯域を制限するフィルタ、又は、受信信号のゲインを調整する増幅器若しくは減衰器を含んでいる。フィルタ/ゲイン調整部125は、受信信号の周波数帯域又はゲインを調整し、その受信信号を検波器126及びAD変換器127に出力する。
上記のフィルタ/ゲイン調整部123及び125と非線形素子124とは、制御部133により、予め用意されているものに設定される場合があるが、操作者により制御部133を介してそれらが制御されることもあり、また、演算部130において観測状況に合わせてアダプティブにそれらが決定されて制御されることもある。複数のトランスデューサ110を駆動する場合には、それらは各チャンネルにおいて独立に制御されるが、予め用意されているパターンに設定される場合もあれば、操作者により制御部133を介してそれらのパターンが制御されることもあり、演算部130において観測状況に合わせてアダプティブにそれらのパターンが決定されて設定されることもある。
検波器126は、例えば、受信ビームフォーミングを行わない場合に、受信信号に包絡線検波処理又は二乗検波処理等を施すことにより、アナログの画像信号を生成する。また、直交検波を通じて、変位計測が行われることがある。アナログ表示装置135は、検波器126によって生成された画像信号や計測結果に基づいて、計測対象1又は波動源の画像を表示する。
AD変換器127は、受信信号にアナログの非線形処理を施す場合に、フィルタ/ゲイン調整部125から出力される受信信号を選択し、受信信号にアナログの非線形処理を施さない場合に、受信器122から出力される受信信号を選択する。AD変換器127は、アナログの受信信号をデジタルサンプリングすることにより、デジタルの受信信号に変換する。AD変換器127によって得られるデジタルの受信信号は、記憶装置128に出力される。記憶装置128は、例えば、RAM等のメモリによって構成され、受信信号を記憶する。
記憶装置128に記憶された受信信号は、受信ビームフォーマ129に供給される。なお、受信ビームフォーマ129によって信号が処理される間、一時的に、処理中の信号を記憶装置128又は外部記憶装置140に格納することがあり、それらの信号は必要に応じて読み出される。単一又は複数のトランスデューサ110が用いられる場合において、受信ビームフォーマ129において、パルス・インバージョン法や多項式フィッティング法等による高調波の分離等が行われることがある(演算部130において同処理が行われることもある)。
また、複数のトランスデューサ110が用いられる場合に、受信ビームフォーマ129は、複数チャンネルの記憶装置128から供給される受信信号に対して、受信ビームフォーミング処理を施す。例えば、受信ビームフォーマ129は、制御部133によって設定される遅延時間に従って複数チャンネルの受信信号を遅延させて整相処理した後に、加算又は乗算の演算を施すことによって受信信号を合成して、焦点が絞り込まれた新たな受信信号を生成する。
あるいは、受信器122が遅延素子を含む場合には、複数チャンネルの受信器122が、制御部133によって設定される遅延時間に従ってそれぞれの受信信号を遅延させても良い。受信ビームフォーマ129は、複数チャンネルの受信信号に加算又は乗算の演算を施すことによって受信信号を合成する。受信ビームフォーミングの際に、受信ビームフォーマ129は、アポダイゼーションを行っても良い。
その他、(多次元)高速フーリエ変換器をイメージング装置本体120に搭載して受信信号のスペクトルを得ることにより、スペクトルの処理に基づいて、フィルタリングやビーム又は波動の特性(周波数やキャリア周波数、帯域幅、いずれかの方向における周波数やキャリア周波数、いずれかの方向における帯域幅、波形、ビーム形状、ステアリング方向、又は、伝搬方向等)を調整しても良い。スペクトル周波数分割(非特許文献29を参照)により、単一の受信信号から複数の受信信号(疑似の複数の異なるビームフォーミングに対応)を得る等して、さらに、これらに非線形処理を施すことがある。非線形処理が施された信号に対して、これらの処理が行われることもある。
このイメージング装置においては、単一又は複数のトランスデューサを用いて生成された上記の複数の波動信号(非線形効果を受けたもの又は受けていないもの)が記憶装置128又は外部記憶装置140に格納され、受信ビームフォーマ129又は演算部130において、それらの結果を読み出して加算(重ね合わせ、線形処理)や乗算(非線形処理)の演算が行われ、これがイメージングや各種計測に使用されることもある。その場合には、適切に整相処理が施される。
演算部130は、主として、受信ビームフォーマ129から出力されるデジタルの受信信号にデジタルの非線形処理を施す。この非線形処理は、受信信号に含まれている少なくとも1つの周波数成分信号に対する冪乗演算であっても良いし、受信信号に含まれている複数の周波数成分信号に対する乗算演算であっても良い。なお、演算部130が受信ビームフォーマ129を兼ねることがあることは上記の通りである。その場合を含め、信号が処理される間、一時的に、処理中の信号を記憶装置128又は外部記憶装置140に格納することがあり、それらの信号は必要に応じて読み出される。
ここで、トランスデューサ110〜作用デバイス112、及び、受信器122〜演算部130は、計測対象1内から伝搬して来る任意波動又はその任意波動を受信して得られる受信信号に対して非線形処理を施す非線形受信処理部を構成している。非線形受信処理部において、非線形デバイス111、非線形素子124、及び、演算部130の内の少なくとも1つが、計測対象1内から伝搬して来る任意波動又はその任意波動を受信して得られる受信信号に対して非線形処理を施す。その他において、非線形効果を得ることがあることは上記の通りである。
即ち、非線形受信処理部は、計測対象1内から伝搬して来る任意波動に対し、(i)伝搬経路の任意位置において非線形デバイス111を用いて非線形処理を施した上でトランスデューサ110によって受信して受信信号を生成する処理を施しても良い。また、非線形受信処理部は、計測対象1内から伝搬して来る任意波動に対し、(ii)トランスデューサ110によって受信してアナログの受信信号を生成し、アナログの受信信号に、例えば、アナログの非線形素子124を用いてアナログの非線形処理を施す処理を施しても良い。また、非線形受信処理部は、計測対象1内から伝搬して来る任意波動に対し、(iii)トランスデューサ110によって受信してアナログの受信信号を生成し、アナログの受信信号をデジタルサンプリングして得られるデジタルの受信信号に、例えば、デジタルの演算部130を用いてデジタルの非線形処理を施しても良い。その他において、非線形効果を得ることがあることは上記の通りである。
画像信号生成部131及び計測部132は、受信信号にデジタルの非線形処理を施す場合に、演算部130から出力される受信信号を選択し、受信信号にデジタルの非線形処理を施さない場合に、受信ビームフォーマ129から出力される受信信号を選択する。
画像信号生成部131は、非線形受信処理部によって得られる受信信号に基づいて、計測対象1の画像を表す画像信号を生成する。あるいは、画像信号生成部131は、非線形処理によって得られる受信信号と共に、非線形処理が施されていない受信信号に基づいて画像信号を生成しても良い。また、画像信号生成部131は、非線形処理を施さない場合に得られる受信信号を選択的に用いて、計測対象1の画像を表す画像信号を生成しても良い。例えば、画像信号生成部131は、受信信号に包絡線検波処理又は二乗検波処理等を施すことにより、画像信号を生成する。表示装置134は、画像信号生成部131によって生成された画像信号に基づいて、計測対象1の画像を表す画像信号を生成する。
計測部132は、非線形処理によって得られる複数の信号の内の少なくとも1つを用いて計測対象1内の変位等を計測する。例えば、計測部132は、力学的又は電磁的波の伝搬を観測するにあたり、自らの波動又は別の波動の任意の波動伝搬によって生じる粒子変位又は粒子速度を計測された変位に基づいて計測する。その場合に、画像信号生成部131は、計測部132によって計測された粒子変位又は粒子速度に基づいて、波動伝搬を表す画像信号を生成する。複数の波動が到来する場合においては、予め波動を分離しておくか、又は、受信後にアナログ処理又はデジタル処理により分離する処理を通じて計測が行われることがある。
あるいは、計測部132は、熱力学的な波動の伝搬を観測するにあたり、トランスデューサ110として、赤外線センサーや焦電センサー、マイクロ波やテラヘルツ波の検出器、光ファイバー等の温度センサー、超音波トランスデューサ(超音波の音速や体積変化等の温度依存性を用いて温度変化を検出)、又は、核磁気共鳴信号検出器(核磁気共鳴のケミカルシフトを用いて温度を検出)とを用いて熱波を計測しても良い。その場合に、画像信号生成部131は、計測部132によって計測された熱波に基づいて、熱力学的な波動の伝搬を表す画像信号を生成する。画像信号生成部131によって生成された画像信号、及び、計測部132によって得られた計測データは、外部記憶装置140に格納することが可能である。
以上において、非線形受信処理部は、計測対象1内から伝搬して来る任意波動に対する非線形処理によって冪乗演算の結果を得るか、又は、非線形処理が冪乗演算であることにより、任意波動に基づいて、和音及び差音、及び、倍音の結果として、非線形処理を施さない場合に得られる受信信号に比べて高周波化又は低周波化された受信信号を得るようにしても良い。また、非線形処理は、乗算演算であっても良い。非線形処理は、高次の非線形処理でも良く、その効果から、主として冪乗演算や乗算演算の結果を得ることが行われることがある。
これにより、受信信号は、任意波動が複数の異なる周波数成分を有する場合に、非線形処理を施さない場合に得られる受信信号に比べて広帯域化されたものとなる。又は、高周波化された受信信号が、非線形処理を施さない場合に得られる受信信号に比べて、高周波化、高空間分解能化、低サイドローブ化、又は、高コントラスト化された高調波信号となる。又は、低周波化された受信信号が、高調波信号を略直交検波して得られる直流を含む帯域の信号となる。画像信号生成部131は、非線形処理によって得られる少なくとも1つの信号に基づいて画像信号を生成する。
あるいは、計測対象1内から伝搬して来る複数の任意波動が、計測対象1内において、伝搬方向、ステアリング角度、周波数、キャリア周波数、パルス形状、ビーム形状、いずれかの方向における周波数やキャリア周波数、又は、帯域幅の内の少なくとも1つが異なる場合において、重なって到来する複数の任意波動に対し、非線形受信処理部が、上記(i)〜(iii)の処理の内の少なくとも1つを施しても良い。画像信号生成部131は、非線形受信処理部によって得られる受信信号に基づいて画像信号を生成する。
ここで、非線形受信処理部が、複数の任意波動の受信前において、複数の任意波動を作用デバイス112としてのアナログ遅延デバイス及びアナログ記憶デバイスの内の少なくとも1つに通過させることにより、複数の任意波動が計測対象1内の各位置において重なったものとなる様にしても良い。いわゆる収差補正である。
また、非線形受信処理部が、計測対象1内から伝搬して来る複数の任意波動の重ね合わせに対する非線形処理によって冪乗演算の結果を得るか、又は、非線形処理が冪乗演算であることにより、複数の任意波動に基づいて、和音及び差音、及び、倍音の結果として、非線形処理を施さない場合に得られる受信信号に比べて高周波化又は低周波化された受信信号を得ても良い。これによっても、上記と同様の効果が得られる。画像信号生成部131は、非線形受信処理部によって得られる少なくとも1つの信号に基づいて画像信号を生成する。
あるいは、計測対象1内から伝搬して来る複数の任意波動が、計測対象1内において、伝搬方向、ステアリング角度、周波数、キャリア周波数、パルス形状、ビーム形状、及び、いずれかの方向における周波数やキャリア周波数、又は、帯域幅の内の少なくとも1つが異なる場合において、重なって到来する複数の任意波動に対し、非線形受信処理部が、上記(i)〜(iii)の処理の内の少なくとも1つを施すと共に、複数の任意波動の受信後の任意の時点において、アナログ又はデジタルのデバイスを用いて、又は、アナログ又はデジタルの信号処理に基づいて、受信信号を複数の信号に分離しても良い。画像信号生成部131は、非線形受信処理部によって分離された複数の信号の内の少なくとも1つに基づいて、上記計測対象の画像を表す画像信号を生成する。非線形演算では、乗算効果を得ることが行われる。また、アナログ又はデジタルの収差補正が行われた上で、それらの信号が再度加算されて、冪乗効果を得ることもある。
あるいは、計測対象1内から伝搬して来る複数の任意波動が、計測対象1内において、伝搬方向、ステアリング角度、周波数、キャリア周波数、パルス形状、ビーム形状、及び、いずれかの方向における周波数やキャリア周波数、又は、帯域幅の内の少なくとも1つが異なる場合において、重ならずに到来する波動、作用デバイス112を用いて遮蔽して重ならない様にされた波動、及び、デバイス(アナログ又はデジタル)やアナログ又はデジタルの信号処理を用いて分離された波動の内の少なくとも1つの波動に対し、非線形受信処理部が、上記(i)〜(iii)の処理の内の少なくとも1つを施しても良い。画像信号生成部131は、非線形受信処理部によって得られる受信信号に基づいて画像信号を生成する。
ここで、非線形受信処理部が、複数の任意波動の受信前において、複数の任意波動を作用デバイス112としてのアナログ遅延デバイス及びアナログ記憶デバイスの内の少なくとも1つに通過させることにより、複数の任意波動が計測対象1内の各位置において重なったものとなる様にしても良い。いわゆる収差補正である。
あるいは、非線形受信処理部が、アナログの受信信号をアナログ遅延デバイス及びアナログ記憶デバイスの内の少なくとも1つに通過させ、又は、デジタルの受信信号にデジタル演算によりディレイを掛け、若しくは、デジタルの受信信号をデジタル記憶デバイスに通過させることにより、複数の任意波動が計測対象1内の各位置において重なったもとなる様にするようにしても良い。
また、非線形受信処理部が、計測対象1内から伝搬して来る複数の任意波動の各々に対する非線形処理によって冪乗演算の結果を得るか、又は、非線形処理が冪乗演算であることにより、複数の任意波動の各々に基づいて、和音及び差音、及び、倍音の結果として、非線形処理を施さない場合に得られる受信信号に比べて高周波化又は低周波化された受信信号を得ても良い。これによっても、上記と同様の効果が得られる。画像信号生成部131は、非線形受信処理部によって得られる少なくとも1つの信号に基づいて画像信号を生成する。
あるいは、非線形受信処理部が、計測対象1内から伝搬して来る複数の任意波動の各々に対する非線形処理によって乗算演算の結果を得るか、又は、非線形処理が乗算演算であることにより、複数の任意波動に基づいて、和音及び差音、又は、倍音の結果として、非線形処理を施さない場合に得られる受信信号に比べて高周波化又は低周波化された受信信号を得ても良い。
これにより、受信信号は、複数の任意波動が複数の異なる周波数成分を有する場合に、非線形処理を施さない場合に得られる受信信号に比べて広帯域化されたものとなる。又は、高周波化又は低周波化された受信信号が、非線形処理を施さない場合に得られる受信信号に比べて、高空間分解能化、低サイドローブ化、又は、高コントラスト化され、少なくとも任意の1方向に略直交検波されて直流を含み、別の少なくとも1方向には高調波の周波数を含む帯域の信号となる。画像信号生成部131は、非線形処理によって得られる少なくとも1つの信号に基づいて画像信号を生成する。
以上において、画像信号生成部131は、非線形処理によって得られる複数の信号の内の少なくとも1つに任意の検波処理を施し、又は、複数の信号を重ね合わせたものに任意の検波処理を施し、又は、複数の信号に任意の検波処理を施した上で複数の信号を重ね合わせることにより、画像信号を生成しても良い。
<<第4の実施形態>>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図31は、本発明の第4の実施形態及びその変形に係るイメージング装置の構成例を示すブロック図である。第4の実施形態及びその変形に係るイメージング装置は、複数のトランスデューサ110又はトランスデューサアレイを駆動して波動を生成するか、又は、それらにより波動を受信してイメージングを行う装置であり(図31にはトランスデューサアレイを示す)、構成要素としては、第3の実施形態における構成要素と同じ性能を有するものを使用できる。
図31(a)に示す第4の実施形態に係るイメージング装置においては、図30に示す第3の実施形態に係るイメージング装置において複数のトランスデューサ110又はトランスデューサアレイを使用する場合と同様に、複数のトランスデューサ110又は素子が複数の送信器121又は受信器122にそれぞれ接続されている。ただし、イメージング装置本体120aにおいて、1つのパートA'内に複数の送信器121又は受信器122が設けられている。
複数のトランスデューサ110又はトランスデューサアレイから出力され、受信器122内の遅延素子を使用して整相されるか、又は、未整相のアナログの受信信号に対して、加算処理部が加算(線形処理)のアナログ処理を施し、又は、乗算処理部が乗算(非線形処理、ホール効果素子等が使用される)のアナログ処理を施す。これにより、受信ビームフォーミングが行われるので、パートBにおいて、受信ビームフォーマ129(図30)は不要となる。
その上で、AD変換器127を通じて得られたデジタルの受信信号が、記憶装置128に格納される。イメージング装置本体120aのパートBは、その受信信号に基づいて、第3の実施形態によって実現できる全ての非線形効果をも得るべく、制御部133が各部を制御することにより、第3の実施形態と同様にイメージングや計測イメージングを行う。なお、図31においては、制御部133から受信器122等への配線は省略されている。
第4の実施形態においても、第3の実施形態における送信器や受信器と同様に、各トランスデューサの駆動信号又は受信信号に対して遅延を与えることができ、送信又は受信のフォーカシングやステアリング等の処理を施すことも可能である。第4の実施形態においては、チャンネル数と同じ数のAD変換器127及び記憶装置128が必要とされる第3の実施形態と比べて、1つのAD変換器127と1つの記憶装置128とを設ければ良いので、装置を簡単化できる。
一方、図31(b)に示す第4の実施形態の変形に係るイメージング装置においては、イメージング装置本体120bのパートA''において、送信遅延素子121a及び受信遅延素子122aが、送信器121及び受信器122の外部に設けられている。図31(b)に示すイメージング装置は、図31(a)に示すイメージング装置とは異なり、受信遅延素子122aにおいて整相されるか、又は、未整相のアナログの受信信号に対して、加算処理部が加算(線形処理)のアナログ処理を施し、又は、乗算処理部が乗算(非線形処理)のアナログ処理を施した後に受信器122で受信する。従って、1つの送信器121と1つの受信器122とを設ければ良いので、装置を格段に簡単化でき、第3の実施形態におけるのと同じ非線形効果を得ることもできる。
図30に示す第3の実施形態に係るイメージング装置、図31(a)に示す第4の実施形態に係るイメージング装置、及び、図31(b)に示す第4の実施形態の変形に係るイメージング装置、又は、その他の型のイメージング装置や、それらの構成要素を同時に使用することもできる。例えば、複数の型の装置を用いて得られたコヒーレント又はインコヒーレントの画像信号や計測結果の各々を表示することもできるし、同時に並べて表示することもできるし、それらを重畳したものや乗算したものを表示することもできる。基本的には、同一の時刻又は同一の時相の受信信号より得られたものを対象とすることができる。同一のイメージング装置においても、同一の時刻又は同一の時相において受信された信号を用いて、複数の画像信号や計測結果が得られる場合において同処理が行われることもある。対象となる信号は、整相後のアナログ信号又はデジタル信号であり、その加算や乗算は、アナログ処理(ホール効果素子等を使用)又はデジタル処理(計算機や演算器等を使用)により実施される。
本発明の第1又は第4の実施形態に係るイメージング装置は、各種デバイスのアナログ演算器、デジタル演算器、計算機、又は、これに類するデバイス(FPGAやDSP等)を用いて、信号に非線形計算を施すことを基礎とする。後に詳述する通り、非線形演算は、冪乗や乗算の効果を得ることが中心であるが、演算そのものは、この限りではなく、他の非線形特性を有する高次の計算であることもある。多項式フィッティング、スペクトル解析、パルス・インバージョン法、数値計算、又は、信号処理等を通じ、それらの効果を抽出したり、分離することができる。信号に対してだけでなく、波動に対しても非線形演算を施すことがあるし、受信前において、波動をデバイス(時間又は空間、又は、それらの周波数のフィルタや分光器等)を用いて抽出したり、分離することもできる。専用デバイスを使用できる可能性がある。
上記のように、このイメージング装置は、任意波動用のトランスデューサ110、送信器121、及び、受信器122を備えると共に、非線形デバイス111、非線形素子124、又は、演算部130を備えるものであり、必要に応じて、データ記憶装置(メモリ、ハードディスク、写真、CD−RW、又は、その他の記録媒体)や表示装置等を備える。汎用のそれらの各デバイスを組み上げて構成することもできるし、非線形デバイス111、非線形素子124、演算部130、又は、その他の非線形デバイスを搭載していない既存の装置に、本発明の非線形処理を行うデバイスを加えて、非線形処理を実施することもできる。
波動源となる送信器121又はトランスデューサ110から送信される波動としては、パルス波、バースト波、又は、位相変調等のコーディングされた波動等が使用されて、空間分解能を有するイメージングや計測が可能である。ただし、空間分解能を必要とせずに計測が可能である場合には、この限りでは無く、連続波が使用されることもある。
生成される波動は、トランスデューサ110における電気信号(駆動信号)から波動への変換特性で決まり、適切に設計されたデバイス及び駆動信号が使用される。例えば、光波の場合には様々な光源(コヒーレント又はインコヒーレント、発光ダイオード(LED)、光混合LED、(可変波長)レーザー、又は、光発振器等)が使用され、音波の場合には音源として電気音響変換器や振動子等が使用される。また、振動波の場合にはアクチュエータベースの振動源が使用され、熱波の場合には熱源等が使用される。このように、本実施形態においては、各種の波動を生成するトランスデューサ110が使用可能である。
使用されるトランスデューサ110は、上記の各種波動を対象とするにあたり、代表的なトランスデューサを含み、また、非線形特性を有するゆえに通常では使用されないトランスデューサを積極的に使用することも可能である。通常、超音波素子においては、高圧をかけると非線形現象により高調波を含む超音波が生成されるが、パルス・インバージョン法により、媒体内で生じた非線形成分を抽出するハーモニックイメージングが行われているし、高調波成分をフィルタリングして除いて基本波帯域の信号のみを使用する場合もある。
本実施形態においても、非線形波動を積極的に生成させて使用することがある。即ち、送信時に非線形特性が現れる場合には、送信波動が高調波を含む状態にあるが、本発明においては、これを有効的に応用することがある。一方、非線形成分を含まない波動を生成して、計測対象物内の非線形現象を探ることも行われる。
また、非線形成分を有する波動においては、高調波にも非線形現象を生じることがある。送波した波動が元より高調波を含む場合や交差する複数の波が存在する場合(周波数やキャリア周波数、パルス形状、ビーム形状、又は、各方向に見た周波数やキャリア周波数、又は、帯域幅も異なる場合がある、即ち、伝搬方向やステアリング角度以外の波動パラメータが異なる)は、後述の通り、受信信号についてパルス・インバージョン法、時空間フィルタリング、スペクトルフィルタリング、若しくは、多項式フィッティングを含めてアナログ処理により、又は、それらや信号処理等のデジタル処理により、分離を図った上で本発明が実施されることもあるし、分離が行われずに本発明が実施されることもある。また、伝搬過程に、障害物等の遮蔽物、フィルタデバイス、又は、分光器(時間又は空間、又は、それらの周波数のもの)、物理的な刺激を与えて媒質の屈折率を変化させる(光学スイッチ)等を使用して、波動を予め分離した状態で各々を受信することもある。各々の波動の源を制御できる場合には、各波動を独立に生成させ、各々を観測することもある。
また、トランスデューサ110において波動を生成した後に、波動が計測対象物に伝搬する前において、波動に対して直接的に非線形現象を生じさせるデバイスを使用することにより、非線形成分を含む波動を計測対象物に伝搬させることもある。また、計測対象内の伝搬後又は伝搬中において、非線形現象を生じさせるデバイスを使用することも可能である。波動又は信号を結合させたり、又は、混合(mix)する等して乗算効果を得ることもある。
例えば、光に関しては、(i)非線形光学素子(例えば、レーザー光の短波長領域への波長変換等に使用される光高調波発生デバイス)、(ii)光混合デバイス、(iii)光パラメトリック発生、誘導ラマン散乱、コヒーレントラマン散乱、誘導ブリュアン散乱、誘導コンプトン散乱、又は、四光波混合等の光パラメトリック効果を生じさせるデバイス、(iv)通常のラマン散乱(自然放出ラマン散乱)等の多光子遷移を生じさせるデバイス、(v)非線形屈折率変化を生じさせるデバイス、及び、(vi)電場依存屈折率変化を生じさせるデバイス等を使用することができる。カプラや光ファイバー等も有効に使用できる。多点観測(多チャネル)もできるし、信号処理を行う上でも適している。
光を使用する場合には、光の発生、制御、又は、測定等についての光エレクトロニクス、非線形光学効果、又は、レーザー工学等の幅広い分野に関連する。通常に使用される光デバイスは、作用デバイス112や非線形デバイス111として使用でき、専用に実現されたものが使用されることもある。これらには、光増幅器(フォトンマルチチューブ等)、吸収体(減衰材)、反射体、鏡、散乱体、コリメータ、(焦点可変)レンズ、偏向器、偏光器、偏光フィルタ、NDフィルタ、偏向ビームスプリッタ―(分離)、遮蔽物、光導波路(フォトニクス結晶を使用したもの等)、光ファイバー、光カー効果デバイス、非線形光ファイバー、光混合光ファイバー、変調用光ファイバー、光閉じ込めデバイス、光メモリ、結合器(カップラ)、方向結合器、分配器、混合分配器、分光器、分散シフト光ファイバー、バンドパスフィルタ、位相共役器(縮退4光波混合やフォトリフラクティブ効果によるもの等)、強誘電半導体の光制御によるスイッチ、位相遅延デバイス、位相補正デバイス、時間の反転器、光スイッチ、又は、光学的マスク等による符号化等を、単独で使用する場合もあれば、併用することもある。また、この限りではない。光制御(波長変換・スイッチング・ルーチング)の下で、光ノード技術、光クロスコネクト(OXC)、光分岐挿入多重(OADM)、光多重・分離装置、又は、光スイッチ素子が使用され、デバイスそのものが光伝達網や光ネットワークを構成している場合もあり、光信号処理が行われることがある。
検出には、CCDカメラ、光ダイオード、混合型の光ダイオード、又は、本願明細書に記載の仮想源(波動源としても)を使用することもできる。光信号処理には、時間や空間フィルタ、相関演算やマッチドフィルタ処理、信号抽出、ヘテロダインやスーパーヘテロダイン(低周波信号を得てAD、復調させることもできる)、及び、ホモダイン等があり、電磁波検出器が使用される場合もある。
また、特に非線形媒質に関して例を揚げると、二硫化炭素、ナトリウム蒸気、シリコンやガリウムヒ素などの半導体、量子井戸、及び、フルオレセインやエリトロシンなどの有機色素等があり、多種多様である。またチタン酸バリウムなどの結晶では、外部からポンプ波を供給することなく4光波混合を行わせる自己ポンプもある。
可視光線、赤外線、マイクロ波やテラヘルツ波、及び、放射線等の他の波動に関しても、各々の汎用デバイスを使用できるが、専用デバイスを実現して使用されることもある。SAWのみならず、振動系と電磁系との関係を有するデバイス等も重宝する。また、非線形デバイスも使用することができる。熱伝導において非線形性を提示するものに、アルミナとジルコニア合成、はんだ、及び、層状コバルト酸化物等様々なものがある。熱は光デバイスに作用し、非線形性を生み出すこともあり、それらの応用を広く考えることも可能になる。
なお、トランスデューサ110は、計測対象に対して、接触型と非接触型があるが、作用デバイスとして、各波動のインピーダンスマッチングデバイスが必要であることがある。装置内のデバイス間や電気回路内においても然りであるが、計測空間において、各デバイス間にマッチングデバイスが使用されることがある。例えば、超音波によって生体組織を観測する場合には、ジェル又は水がマッチング材として使用される。超音波顕微鏡においては、通常、架台の上にて試料を観測することが多いが、アレイ型やメカニカルスキャン型(ハウジングされた中で水等のマッチング材を介して素子又は素子アレイがメカニカルに移動してスキャンする場合等)のものが実現されて使用されることもあり、試料に対して設置が容易であったり(方向を自由に決めることができる等)、ハンディ型にして試料として対象を切り出す(in vitro)ことなく、直接にin situ又はin vivoの状態で観測することを可能にすることもできる。超音波顕微鏡では、焦点位置がレンズ等で決まる固定型のものも多く、特に、その様な素子又は素子アレイが使用される場合に良い方法である。従って、メカニカルスキャンは横方向やエレベーション方向に限られず、伝搬方向にも可動である場合もある。RF波に対しては、アンテナが使用されるし、生体組織電位や磁場の各々の観測には、電解質ジェルと電極、又は、SQUID計等が使用されるが、計測対象の大きさに合わせて、小型化されたものが使用されることがある(顕微鏡など)。微弱な信号は、非線形性を持たない場合があり、その様な場合には、非線形性を疑似的に生成したり、仮想的に生成したりすることがある。非線形信号が微弱で観測できない場合には、非線形性を増強することも行われる。
非線形デバイスが送信器121又はトランスデューサ110と一体化されている場合もあり、また、非線形デバイスを別個に組み上げて使用する場合もある。この様に、非線形デバイスは、高周波化や広帯域化等を行うことを含め、受信後の信号に対してだけでなく、任意位置において非線形デバイスを用いることにより、波動そのものに非線形演算を施すことができる。
また、受動的に波動を観測する場合において、波動源を制御できない場合を含めて、本発明が適用されることもある。各種方法又はデバイスを用いて、信号源位置や到来方向、信号源の強度、信号源の大きさや分布を求めて本発明が適用されることもあるし、本発明が適用されて信号源や波動源の位置や到来方向が求められる場合もある。その際、それらは波動や信号を分離して求められることがあるし、信号や波動の源や到来方向が求められた上で波動や信号が分離されることもあるし、両者が同時に求められることもある。波動源や到来方向が求まると、受信ビームフォーミングの精度が向上する。信号にはアナログ処理又はデジタル処理等の信号処理が施され、波動には、時間又は空間、又は、それらの周波数のフィルタや分光器等を使用できる。
計測対象物を含む媒体を伝搬した波動をトランスデューサにおいて受信するに当たり、送信に使用されたトランスデューサが受信にも使用される場合がある(反射信号を観測する場合)。一方、送信に使用されたトランスデューサとは別のトランスデューサが受信に使用されることもある。その場合に、送信トランスデューサと受信トランスデューサとが近傍位置にある場合(反射信号を観測する場合)や、送信トランスデューサと受信トランスデューサとが異なる位置にある場合(例えば、透過波や屈折波等を観測する場合)もある。
また、トランスデューサ110は単一開口のものが使用されることもあるし、複数のトランスデューサ110を密に隣接した状態でアレイ状(1次元アレイ又は2次元アレイ、3次元アレイ)に並べて使用することもあるし、スパース配列、若しくは、離れた位置に設置されたものが同時に使用されることもある。開口の形状には様々なものがあり(円形、矩形、平型、凹型、及び、凸型等など)、それらの指向性は様々である。複数方向に開口を有する状態で一体となっている素子もあり、同一位置で多方向の指向性を有するものもある。電位や圧、又は、温度等のスカラー計測の他、電磁波や電界ベクトル等のベクトル計測を行うものもある。偏波するものもある。無論、同一の波動に関しても、素子の材料や構造は多様である。また、それらを用いた配置も様々であり、例えば、多方向に開口が向いているもの等もある。
図32は、複数のトランスデューサの配置例を示す模式図である。図32において、(a1)は、1次元アレイ状に密に配列化された複数のトランスデューサ110を示しており、(b1)は、1次元状に疎に存在する複数のトランスデューサ110を示している。(a2)は、2次元アレイ状に密に配列化された複数のトランスデューサ110を示しており、(b2)は、2次元状に疎に存在する複数のトランスデューサ110を示している。(a3)は、3次元アレイ状に密に配列化された複数のトランスデューサ110を示しており、(b3)は、3次元状に疎に存在する複数のトランスデューサ110を示している。
トランスデューサの開口部においてレンズ等を用いてアナログ的にビームが生成されたり、又は、調整されたりすることがあるが、上記の駆動信号によって調整されることもある。また、本実施形態に係るイメージング装置は、最大で6自由度(並進3方向及び回転3方向の自由度)を有する機械走査デバイスを備え、機械走査デバイスが少なくとも1つのトランスデューサ110又は少なくとも1つのトランスデューサアレイを少なくとも1つの方向に機械的に移動させることにより、計測対象1の走査や焦点位置の調整やステアリングが行われることがある。
一方、複数のトランスデューサ110を使用する場合には、駆動するトランスデューサ110の数と等しい数の駆動信号を生成すべく、トランスデューサ110の数と等しいチャンネル数の送信器121が設けられる。又は、遅延素子群を使用して、限られた数の生成信号から複数の駆動信号を生成することにより、所望のビームフォーミング(所望する位置に焦点を形成する、又は、所望する方向にステアリングする)が行われることがある。
通常のアナログ又はデジタルのビームフォーマを使用することもできる。上記のビームフォーミング(受信時のみの場合を含む)を並列処理的に行って、計測対象を走査する際の実時間性を向上させることがある。
また、同一時刻において、複数のトランスデューサ110を駆動して、複数のビームフォーミングを同時に行うこともある。あるいは、送信器121を切り替えて使用する場合を含めて、同時相の信号を受信することが許される時間内において、異なる時刻に異なるトランスデューサ110を用いてビームフォーミングが複数回行われることもある。同一のトランスデューサに機械走査を施し、複数回のビームフォーミングが行われることがある。
各ビームフォーミングにおいては、機械走査を行う場合を含めて、古典的な開口面合成が行われることがあり、通常の遅延加算(Delay-and-Summation)、又は、本発明に基づく遅延乗算(Delay-and-Multiplication)が行われる(いずれも、モノスタティック型又はマルチスタティック型)。送信時において、フォーカシングをせずに、平面波が生成されることもあり、その場合には、広い領域を一度に短時間で観測することも可能である。その際に、平面波がステアリングされることもある。波動が平面波として受波されることがあるし、ダイナミックフォーカシングされることもある(送信時にステアリングしている時は、受信時もステアリングした方が良い)。平面波は、伝搬する方向と直交する方向には狭帯域の波であり、広帯域化されると効果的である。
図33は、1次元トランスデューサアレイを用いた場合における波動の形態を説明するための図である。図33において、(a)は、波動のフォーカシングを示しており、送信時又は受信時において、遅延時間の設定によって定まるフォーカスの位置に絞り込まれた波動ビームが形成される。(b)は、波動のステアリングを示しており、送信時又は受信時において、遅延時間の設定によって定まる方向に偏向された波動ビームが形成される。(c)は、平面波の送信又は受信を示しており、遅延時間の設定によって定まる方向に向けた平面波が形成される。平面波は、伝搬する方向と直交する方向には狭帯域の波であり、広帯域化されると効果的である。
なお、トランスデューサ110による受信前において、波動をアナログ遅延デバイス及びアナログ記憶デバイスの少なくとも1つに通過させることにより、複数の波動が計測対象1内の各位置において重なったものとなる様にすることがある。また、トランスデューサ110による受信後において得られるアナログ信号をアナログ遅延デバイス及びアナログ記憶デバイスの少なくとも1つに通過させたり、又は、受信後に得られるデジタルサンプリングされたデジタル信号にデジタル演算によりディレイを掛けたり、又は、デジタル記憶デバイスに通過させることを通じて、複数の波動が計測対象内の各位置において重なったもとなる様にすることもある。いわゆる位相収差補正を、上記の様に実施したり、上記のビームフォーミングの整相に関連して実施することもある。様々なデバイスがあるが、例えば、光においては、光ファイバーは遅延線にもなるし、光閉じ込めデバイスは遅延デバイスや記憶装置にもなる。
一方、計測対象に関し、計測対象内を伝搬した結果として非線形現象を強く受けた信号を観測することになる場合もあるが、逆に、非線形成分が得られない場合もある。一般に、波動の強度が強いときに非線形現象が観測され易く、強度が弱いときには非線形現象が観測され難い。いずれの場合においても、本発明を実施することができる。受信信号は、適切な信号処理を行う等により、独立した信号に分離されて、本発明が実施されることがある。
信号の分離には、各種波動のアナログデバイス(時間又は空間、又は、それらの周波数のフィルタや分光器等)が使用されることもあり、また、信号処理に基づいて、アナログ処理又はデジタル処理(上記のコーディングに対してデコーデングする処理、スペクトル解析を通じてスペクトルの重心を求める処理、解析信号を求めて瞬時周波数を求める処理、MIMO、SIMO、MUSIC、又は、独立信号分離処理等)されることもある。受動的な場合においては、各種方法又はデバイスを用いて、信号源位置や到来方向、信号源の強度、信号源の大きさや分布を求めて処理されることもあるし、本発明が実施された後に信号源位置や到来方向が求められることがある。ビームフォーミングと同時に信号源位置や到来方向、信号源の強度、信号源の大きさや分布が求められることがある。後に詳述する通り、非線形処理を施して、高調波等にて表した状況において、精度よく信号分離を行うこともある。具体的には、冪乗演算による高周波化且つ広帯域化(次数が1より大きいとき)、又は、低周波化且つ狭帯域化(次数が1より小さいとき)処理を行った上で、周波数領域において、高精度に行われることがある。分離後の信号の復元も使用した冪乗次数の逆数乗すればよく、容易である。
図34は、2次元計測の場合の空間領域及び周波数領域におけるビーム方向や波動の到来方向の角度とスペクトルの重心を示す図である。図34において、(a)は、空間領域において、関心点(x,y)におけるビーム1及びビーム2のビーム方向角度θ1及びθ2を示している。また、(b)は、周波数領域において、ビーム1及びビーム2のスペクトルの重心と、ビーム1の瞬時周波数(fx,fy)とを示している。
基本的には、ビームフォーミングを波動に対してアナログ的に行うか、あるいは、複数のトランスデューサ110を使用する場合においては、ビームフォーミング(フォーカシング又はステアリング)が行われる。上記の通り、信号の分離を行った上で、ビームフォーミングされることもあるが、ビームフォーミング後に信号分離が行われることもある。
また、開口面合成処理を行う場合においては、受信した同一の信号セットから、異なる複数位置のフォーカシング信号や異なる複数方向のステアリング信号を生成できる(Delay-and-Summation、又は、本発明に基づくDelay-and-Multiplication)。また、それらの生成された信号に対して本発明を実施することもできる。送信器121と受信器122とは、一体型であっても良く、分離型であっても良い。
非線形素子124には、様々なものがあり、トランスデューサ110において受信した後の電気的なアナログ信号に対しては、ダイオードやトランジスタを使用することができる。その他、超電導現象を応用するもの等を含め、回路によって信号に非線形現象を施す如何なる非線形素子も使用することができる。また、分布定数系の非線形素子を使用することもできる。波動(信号)の周波数に合わせて、適切なものが使用される。各種増幅器や減衰器を用いて、波動又は信号が適切にゲイン調整されることもある。
非線形演算は、トランスデューサ110において受信する前に、波動に対して直接的に非線形現象を生じさせる非線形デバイスを使用して行われることもある。例えば、光に関しては、上記の(i)非線形光学素子、(ii)光混合デバイス、(iii)光パラメトリック効果、(iv)通常のラマン散乱(自然放出ラマン散乱)等の多光子遷移、(v)非線形屈折率変化、又は、(vi)電場依存屈折率変化等を使用することができる。その他の波動に関しても、同様に、非線形デバイスを使用することができる。それらの非線形デバイスがトランスデューサ110と一体化されている場合もあり、また、非線形デバイスを別個に組み上げて使用されることもある。また、受信時に使用するトランスデューサ110における波動から電気信号への変換時の非線形現象そのものが使用されることもある。
以上のいずれの場合においても、波動そのものにアナログ演算(非線形処理)が施される場合と、受信後の信号にアナログ演算が施される場合があるが、信号のAD変換後において、デジタル演算器や計算機、又は、それに類するデバイス(FPGAやDSP等)を用いて信号に非線形演算が施されることもある。
本発明の一実施形態に係るイメージング装置に関し、アナログ型と称した場合には、演算が上記の如くアナログ処理によるものをいい、例えば、非線形効果を受けたアナログ信号をブラウン管ディスプレイやオシロスコープ(アナログ又はデジタル)等の表示機器によって表示し、必要に応じて写真(アナログ又はデジタル)やホログラフィ等の記憶媒体に記録される。あるいは、AD変換を通じてデジタル化されて、必要に応じてメモリ、ハードディスク、又は、CD−RW等のデジタルデータ記憶媒体に記録され、表示機器を用いて表示が行われることもある。
一方、デジタル型と称した場合には、適切なアナログ処理(ゲイン調整やフィルタリング)後にアナログ信号がAD変換され、信号が記録媒体であるメモリやハードディスク等に蓄えられる場合を含み、デジタル非線形演算処理が施され、必要に応じてデータ記憶装置(上記の写真やデジタル記録媒体等)にデータが格納され、表示装置に表示される。
上記の構成において、計測対象物内の非線形現象が受信信号に含まれることがあり、その場合、上記のアナログ装置又はデジタル装置を用いて、その効果を増強することもできるが、非線形成分を含まない受信信号においては、新たに非線形効果を生成したり、非線形効果を模擬したり、又は、仮想的に実現することが可能である。また、計測対象内において生じた非線形効果(高調波成分)と、信号源において生成された非線形成分(高調波成分)と、非線形演算の効果を分離することが行われることがある。例外的に、非線形演算を施さない場合を含み、前2者の非線形効果(非線形成分)を分離するべく、上記のデバイスや信号処理が使用されることもある。
なお、イメージング装置に関する上記の説明においては、観測する波動に対する変換器(トランスデューサ)を使用する場合について述べたが、例えば、振動波の伝搬は、レーザードプラや光学画像処理に基づいて光学的に観測することもできるし、ヒト組織において周波数の低い振動波として支配的になるずり波の伝搬は、同じく振動波である超音波のドプラ効果を用いて観測することができる。
また、可聴音波や超音波等の音の伝搬を光学的に捉えることも可能である。光学的処理は、一般的にいう電磁波を処理するものであり、X線等の放射線も含まれる。超音波を用いて可聴音波を観測することもある。熱波に関しては、輻射に基づく赤外線カメラ、マイクロ波やテラヘルツ波や超音波の音速変化や対象の体積変化、核磁気共鳴のケミカルシフト、又は、光ファイバーを使用する等によって観測することもできる。これは、コヒーレント信号処理、又は、画像処理等のインコヒーレント処理による。他の波動を使用して関心のある波動の挙動を観測できる事例は、それらに限られず、いずれにしても計測結果はアナログ信号又はデジタル信号となる。従って、本発明は、それらの観測された波動(信号)に対しても実施することができる。ドプラ効果の他、観測対象の波動により媒体の物性が変調されて、センシングに使用する波動が変調されると解釈されることもある。これらにおいて、ドプラ効果や変調を受けた波動を検波する処理は有用である。特に、電磁波は偏波を応用して容易に様々な方向に伝搬する波動を観測することができると共に、容易に様々な方向に持つ構造を捉えることができる。一方、音波も発散(ダイバージェンス)を基礎として、本願明細書に記載の如く、様々な計測を可能とする。輻射計測も重要である。マイクロ波を用いて、温度分布計測の他に、様々なリモートセンシングが行われるが、例えば、散乱や減衰を測り、雨滴や水分、気圧等の分布が測られている。この様な場合にも、本願明細書に記載のビームフォーミングを始めとする様々な処理により高い空間分解能が得られることは有効であり、特に、所望する位置を高速に観測できる効果が得られる。イメージを生成した後の画像処理に依らずに、任意の面や領域、そして、空間を、直接的に、高速に、観測できる効果が得られる。
また、イメージング装置に関する上記の説明において、電磁波、音を含む振動、熱の波動、又は、それらに該当する信号の非線形演算装置について述べたが、異なる種類の物理エネルギー間の非線形効果を増強したり、非線形効果を模擬したり、又は、非線形効果を仮想的に実現すること(つまり、物理的、又は、化学的、又は、生物学的に、非線形効果を生じる場合以外に、非線形効果を生じない場合を含む)も可能であり、その場合には、使用される複数種類の波動に関するデバイスを同時に使用して波動を受信することにより、又は、同時相であれば異なる時刻において受信された信号を基礎として、本発明を実施することもできる。即ち、本発明は、複数種類の波動が同時に発生している場合と、1種類の波動が単独に発生している場合とを扱うことができる。
また、電磁波や音を含む振動や熱の波動において、周波数が異なると各計測対象物(媒体)に依って支配的な挙動は異なり、名称が異なる(種類が異なると考えても良い)。例えば、電磁波に関しては、マイクロ波、テラヘルツ波、X線等の放射線等が存在し、振動に関しては、ヒト軟組織を対象とした場合に、メガHz帯域においてずり波は減衰の影響により波動として伝わらず、超音波が支配的であるが、100Hz等の低周波においては非圧縮性の特徴が強く、ずり波が支配的である。
本発明は、その様な挙動を異にする波動同士の非線形効果を増強したり、非線形効果を模擬したり、又は、仮想的に実現することも可能である。その場合には、複数種類の波動に関するデバイスを同時に使用して波動を受信したり、又は、同時相であれば異なる時刻において受信された信号を基礎として、本発明を実施することもできる。無論、それらの波動の減衰、散乱、又は、反射等の現象が分散特性を有し、受信信号のSN比を考慮して、適切に使用されなければいけないという限界がある。しかしながら、物理的に高周波成分を生成したり、捉えることのできない高周波成分を生成できることを含め、本発明の応用範囲は非常に広い。
なお、計測対象物内の非線形効果を積極的に観測する場合と、本発明による非線形処理を積極的に施す場合とにおいて、両者を切り替えて使用したり、両者を同時に使用したり、積極的な演算を通じて、計測対象物内の非線形効果を解明することが行われることもある。
次に、上記のイメージング装置の構成を用いて、本発明を超音波エコー信号に適用した一実施形態について説明する。超音波伝搬過程における高調波の生成は、乗算又は冪乗によって表される。特に、和音や差音は、伝搬する方向又は周波数が異なる波同士の乗算で表され(非特許文献26を参照)、高調波は、一般的に同一周波数の波の冪乗で表される(非特許文献24を参照)。物理現象として、波の強度が大きいときに生じ易い。また、波の歪は、高強度成分に関して伝搬と共に大きくなる効果があるが、伝搬の間に、基本波に比べて減衰の影響を受け易い。一方で、強度がさほど強くない場合には、波の干渉として、重ね合わせ(和又は差)のみが強く観測され、これを応用したものに、本願発明者の開発した横方向変調法がある(非特許文献13及び29等を参照)。
図35は、横方向変調法に用いる2つの偏向ビームを2次元空間において示す図である。図35において、横軸は横方向位置yを示しており、縦軸は深さ方向位置xを示している。ここでは、代表的な例として、任意の1方向(図中における角度θの方向)にビームフォーミングした場合と、任意の1方向を軸(X軸)として横方向変調を行った場合との2つの場合について、受信ビームフォーミング後の非線形演算の効果を確認する。なお、この計算は、容易に3次元空間に拡張でき、3次元空間においても同様の効果が得られることを確認できる。以下において、「λ」は、超音波の重心周波数に対応する波長である。また、深さ方向における距離x及び横方向における距離yは、原点から送信された超音波がある点において反射されて原点に戻るまでの時間をtとして、時間t/2において超音波が伝搬する距離を表している。
<0>横方向変調:角度θ1及びθ2方向の2つのビーム又は波(平面波等)の重ね合わせ(同時送受信又は各々の送受信の重ね合わせ)
2つのRFエコー信号の重ね合わせ(加算、即ち、和)は、次式によって表される。
A(x,y)cos[2π(2/λ)(xcosθ1+ysinθ1)]
+A'(x,y)cos[2π(2/λ)(xcosθ2+ysinθ2)] ・・・(0')
ここで、反射又は散乱が等しく、A(x,y)=A'(x,y)と仮定すると、2波の伝搬方向の中央の方向のX軸、及び、それと直交するY軸から成る座標(X,Y)において、2つのRFエコー信号の重ね合わせは、次式によって表される。
A(x,y)cos{2π(2/λ)cos[(1/2)(θ2−θ1)X]}
×cos{2π(2/λ)sin[(1/2)(θ2−θ1)Y]} ・・・(0)
このように、(X,Y)座標系において、横方向変調が実現される。2波は異なる周波数でもよい。例えば、以下の<2>や<3>において、これに非線形処理が施される。なお、3次元空間において、横方向変調する場合には、変調する方向が2方向あり、従って、少なくとも3本の交差ビームを生成する必要がある(非特許文献13及び29を参照)。
<1>θ方向の1ビーム又は1波の冪乗計算
RFエコー信号は、次式によって表される。
A(x,y)cos[2π(2/λ)(xcosθ+ysinθ)]
この場合に、例えば、その二乗は、次式(51)によって表される。
(1/2)A2(x,y)×{1+cos[2π(2・2/λ)(xcosθ+ysinθ)]} ・・・(51)
このように、第2次高調波成分が直流成分と同時に生成され、ベースバンデッド信号も同時に得られる(包絡線信号も直接的に得られる)。計算された二乗エコー信号は、帯域内の異なる周波数同士の積の効果により、基本波のスペクトルよりも帯域幅が広くなり、パルス長とビーム幅が短くなって空間分解能が高い。
さらに分かり易い例として、例えば、深さ方向xの位置におけるRFエコー信号が周波数f1とf2を有するとき、二乗の演算により、二乗エコー信号は、次式で表される。
eI(x;f1,f2)2 =eII(x;0,2f1,2f2,f1+f2,f1-f2)
このように、二乗エコー信号は、直流(周波数0)と、周波数2f1、2f2、f1+f2、f1-f2の信号成分を有することになる。
即ち、冪乗演算により生成されるそれらの信号は、波動が複数の異なる周波数の信号成分を有する場合には非線形演算を施さない場合に受信される波動に比べて其の複数の異なる周波数信号成分を有する方向に関して広帯域化されたものであり、高調波は、非線形演算を施さない場合に受信される波動に比べて、高周波化、又は、高空間分解能化、又は、低サイドローブ化、又は、高コントラスト化の少なくとも1の効果を得た信号であり、直流を含む帯域に生成された信号(ベースバンデッド信号)は高調波を略直交検波した信号であり、非線形演算を通じて得られるこれらの信号の少なくとも1つに基づいて、波動を画像化することができる。
さらに高次の冪乗の計算を行うと、n乗によって基本波のn倍の高周波数の信号成分が得られ、また、空間分解能がさらに高くなる。ベースバンデッド信号は、厳密には、その第2次高調波を直交検波したもの(通常のベースバンド信号)とは異なり、その計算結果は純粋に直流を含むが、その処理の有無に関わらず元のエコー画像に比べて高分解能な画像が簡単に得られる。なお、非線形演算により生じる直流成分は、同時に生成される高周波、低周波、高調波等の強度から求まり、ベースバンデッド信号に含まれるその直流成分は基本的には除く。時に、計算を簡略化して、ベースバンデッド信号の直流を全て除くこともある。この処理により、深さに依存した輝度調整を行うことなく、直流を含む場合に比べ、より深部までイメージングできることがある。
倍角又は分角の定理により、高調波信号や低周波信号は様々な形(正弦波や余弦波の四則演算)で表され、必要なときはデジタル・ヒルベルト(Hilbert)変換(非特許文献13を参照)を通じて計算できる。実測高調波も使用することができる。これらは、任意強度の波に対して、非線形信号を各位置で計算により求めたものであり、伝搬過程において物理的に蓄積されて減衰の影響を受ける非線形成分とは異なり、新しい高調波又は低周波イメージングを実現するものでる。
<2>横方向変調エコー信号の冪乗計算
例えば、式(0)の二乗は、次式(52)によって表される。
A(x,y)2×cos2{2π(2/λ)cos[(1/2)(θ2−θ1)X]}
×cos2{2π(2/λ)sin[(1/2)(θ2−θ1)Y]}
=A(x,y)2×[1+cos{2π(2・2/λ)cos[(1/2)(θ2−θ1)X]}
+cos{2π(2・2/λ)sin[(1/2)(θ2−θ1)Y]}
+cos{2π(2・2/λ)cos[(1/2)(θ2−θ1)X]}
×cos{2π(2・2/λ)sin[(1/2)(θ2−θ1)Y]}] ・・・(52)
このように、直流(上記のベースバンデッド信号)と、異なる一方向には検波された第2次高調波の2つの信号と、第2次高調波の横方向変調信号とが得られる。<1>と同様に、高分解能化も行われる。ベースバンデッド信号や他の高次高調波信号も、<1>と同様に計算できる。
分かり易い例として、位置(x,y)における交差エコー信号が、e1((x,y);(f0,f1))、及び、e2((x,y);(f0,f2))と表され、y方向に対称であるとき、重ね合わせ信号の二乗信号は、次式によって表される。
[e1((x,y);(f0,f1))+e2((x,y);(f0,f2))]2
=e1((x,y);(f0,f1))2+2 e1((x,y);(f0,f1))e2((x,y);(f0,f2))+e2((x,y);(f0,f2))2
=e1'((x,y);(0,0),(2f0,2f1))+e12'((x,y);(2f0,0),(0,2f1),(0,2f2))
+e2'((x,y);(0,0),(2f0,2f2))
このように、重ね合わせ信号の二乗信号は、周波数(0,0)、(2f0,2f1)、(2f0,2f2)、(2f0,0)、(0,2f1)、(0,2f2)の信号成分を有することを理解することができる。
即ち、冪乗演算により生成されるそれらの信号は、線形の重ね合わせされた各々の信号(交差した波動に対応する信号)の高調波信号とベースバンデッド信号(少なくとも1方向の直流を含む帯域の信号)であり、波動が複数の異なる周波数の信号成分を有する場合には非線形演算を施さない場合に受信される波動に比べて其の複数の異なる周波数信号成分を有する方向に関して広帯域化されたものであり、高調波は、非線形演算を施さない場合に受信される対応する波動に比べて、高周波化、又は、高空間分解能化、又は、低サイドローブ化、又は、高コントラスト化の少なくとも1の効果を得た信号であり、ベースバンデッド信号は高調波を各方向又は複数方向に直交検波又は略直交検波した信号であり、それらの信号の少なくとも1つに基づいて、波動を画像化することができる。交差する波動やビームが異なる周波数を有する場合や座標軸に対して対称でない場合に同処理が施されると、多次元空間において、和音や差音が得られるが、同様に、それらはイメージングや計測に用いられる。他のパラメータが異なる状況においてもそれらは作用する。
3次元空間においては、横方向変調は、上記の通り、少なくとも3本の交差ビームを生成する必要があるが、この場合、得られるベースバンデッド信号として、各ビームの高調波を同様にほぼ直交検波した信号(直流を含む近傍の信号)の他、任意の1方向のみ又は任意の2方向に直交検波された信号が得られる。即ち、対称となる軸に対し、対称な方向の周波数の極性が逆であるがため、その和が零になる。全ての波動やビームが座標軸に対して対称に生成されることもあるが、その限りではない。また、周波数や他のパラメータが異なることもある。
<3>横方向変調エコー信号の2波の乗算
例えば、(0')式内の2波は分離して扱えるので、その積を考えるに当たり、分かり易い式を示すために、伝搬方向が、x軸に対して対称な2方向とすると、θ1=−θ2であり、2つのRFエコー信号の乗算(積)は、次式(53)によって表される。
A(x,y)cos[2π(2/λ)(xcosθ1+ysinθ1)]
×A'(x,y)cos[2π(2/λ)(xcosθ1−ysinθ1)]
=A(x,y) A'(x,y)×{cos[2π(2・2/λ)cosθ1x]
+cos[2π(2・2/λ)sinθ1y]} ・・・・(53)
これにより、異なる一方向には検波された第2次高調波の2つの信号が得られる。これらは、式(52)においても得られた信号成分である。
分かり易い例として、位置(x,y)における交差エコー信号が、e1((x,y);(f0,f1))、及び、e2((x,y);(f0,f2))と表され、y方向に対称であるとき、信号の乗算は、次式によって表される。
e1((x,y);(f0,f1))×e2((x,y);(f0,f2))
=e12'((x,y);(2f0,0),(0,2f1),(0,2f2))
このように、信号の乗算は、周波数(2f0,0)、(0,2f1)、(0, 2f2)の信号成分を有することを理解することができる。
即ち、乗算演算により生成される信号は、線形の重ね合わせされた各々の信号(交差した波動に対応する信号)に対してベースバンデッド信号(少なくとも1方向の直流を含む帯域の信号)であり、波動が複数の異なる周波数の信号成分を有する場合には非線形演算を施さない場合に受信される波動に比べて其の複数の異なる周波数信号成分を有する方向に関して広帯域化されたものであり、ベースバンデッド信号は、非線形演算を施さない場合に受信される対応する波動に比べて、高周波化、又は、高空間分解能化、又は、低サイドローブ化、又は、高コントラスト化の少なくとも1の効果を得た高調波信号を各方向又は複数方向に直交検波した信号であり、それらの信号の少なくとも1つに基づいて、波動を画像化することができる。交差する波動やビームが異なる周波数を有する場合や座標軸に対して対称でない場合に同処理が施されると、多次元空間において、和音や差音が得られるが、同様に、それらはイメージングや計測に用いられる。他のパラメータが異なる状況においてもそれらは作用する。
3次元空間においては、横方向変調は、上記の通り、少なくとも3本の交差ビームを生成する必要があるが、この場合、得られるベースバンデッド信号として、任意の1方向のみ又は任意の2方向に直交検波された信号が得られる。即ち、対称となる軸に対し、対称な方向の周波数の極性が逆であるがため、その和が零になる。全ての波動やビームが座標軸に対して対称に生成されることもあるが、その限りではない。また、周波数や他のパラメータが異なることもある。
なお、上記の交差ビームの様に各ビームや波動の伝搬方向やステアリング角度が異なる場合の他、別のパラメータが異なり、例えば、周波数やキャリア周波数、パルス形状、ビーム形状、各方向に見た周波数やキャリア周波数、又は、帯域幅が異なる場合もある。また、横方向変調時の、2次元の時の2つ、3次元の時の4つ(3つであることもある)の交差する波動やビームを生成する場合とは異なり、各々の次元において、より多くの波動又はビームが使用されることがある。特に、平面波や円筒波、球面波を送信した場合には高速な送受信が可能であり、それらの様に複数の波動を用いても、通常のイメージングの場合のビームフォーミングよりも高速である。また、フォーカシングビームを使用した場合も、高速フーリエ変換を用いた高速ビームフォーミングを重ね合わせされた受信信号に対して施すことを可能にしたので、特に同時に複数のビームを送信した場合を含め、同様に高速に処理が可能である(上記の如く、波数マッチングにおいて、補間近似が行われることもある)。非線形処理の安定化のために同パラメータで送受信を複数回行い、重ね合わせることも有効である(加算平均)。また、いわゆるパルス・インバージョン送信を行った場合に受信された信号に対しても、上記のそれらの同処理が可能であり、極性の異なるパルス送信時の受信信号の重ね合わせにより得られる高調波に対して同処理を施すことや、重ね合わせを行う前にそれらの同処理を行うことが可能である。これらの重ね合わせ(つまり、加算)を行ったときは、基本波の周波数の偶数倍の周波数を持つ高調波が得られるが、加算の代わりに引き算を行うと奇数倍の高調波が得られる。これらをイメージングに用いることも重要である(パルス・インバージョンの受信信号の単なる引き算だけでも主として第3次高調波が得られる)。受信時にトランスデューサの帯域や積極的にアナログやデジタルのフィルタを掛けることにより帯域制限されている信号に対し、本発明を用いて高調波信号の重ね合わせが求まった場合には、フィルタリング(アナログ又はデジタル)を行う、又は、様々な重ね合わせや基本波を交えて信号処理(アナログ又はデジタル)を行うことにより、高調波を分離できる。また、パルス・インバージョンでは無く、180°以外の位相差を持つ信号を送波することもあるが、その様な場合にも応用できる。つまり、パラメータの内の少なくとも1つが異なるビーム又は波動においても、重ね合わさった状態、又は、分離された状態、重ね合わせていない状態等において、同非線形効果を得ることもでき、有効に使用されることがある。理論又は演算を通じ、線形効果のみならず、非線形効果により生成される波動やビームを設計し(伝搬方向等の波動やビームのパラメータ)、そして、制御できることを理解できる。
これらの非線形演算により生成される高調波信号や和音や差音、又は、倍音等は、上記の特徴を持って、エコーイメージングの画質を向上させる。通常のハーモニックイメージングにおいて生じる減衰の影響もない。本発明は、仮想的に各位置において非線形成分を生成する、物理的に生じた非線形信号を解釈するためにも有効である。また、本発明は、微弱で観測できない場合にも有効である。さらに、変位計測においては、高周波化は歓迎されるものであり、位相の回転が速くなるので、高精度計測が可能となると期待されるが、以下に示すファントム実験では、空間分解能は高くなるが、そのままで高空間分解能を計測すると、雑音が増加する傾向があった。
この様な場合には、正則化(例えば、非特許文献18を参照)や上記の統計評価を通じた重み付け最小二乗法や平均処理等が有効となる。例えば、<2>及び<3>において得られる異なる一方向には検波された第2次高調波の2つの信号は、通常の一方向変位計測法を用いて各方向の変位計測に使用することができる。異なる時相間に生じた変位又は変位ベクトルを計測するべく、任意の1方向にのみキャリア周波数を持つ信号に対し、関心点の各々において、その時相間に生じた瞬時位相の変化を瞬時周波数、重心周波数、又は、公称周波数等で除して、その方向の変位を計測でき、さらには、異なる方向における計測に基づいて、変位ベクトルを合成できる。過去に、多次元自己相関法(非特許文献13を参照)に比べて計算量を要するものの、通常の1方向変位計測法を用いた変位ベクトル計測を実現するべく、横方向変調エコー信号のデジタル復調法を考案して報告した(解析信号の積と共役積を計算する:非特許文献29等を参照)。本発明によれば、各段に少ないメモリと計算量で横方向変調エコー信号を復調でき、しかも、得られる信号は高調波信号である。また、雑音は、同一のコンディションにおいて同波動を複数個取得できる場合には、受信した生信号又は受信後の非線形処理を施した後において加算平均することができるし、また、受信した生信号又は受信後の非線形処理を施した後において積分処理を施す等して、低減することは有効である。また、冪乗や乗算の代わりに、二乗ノルムや内積を計算することもでき、その場合、その計算の際の信号長さで空間分解能が決まることになる。これらの方法は、変位計測以外のイメージング等においても有効であることがある。
尚、本願発明者が発明した非特許文献29に記載のデジタル復調法は、具体的には、各方向の変位成分のみで決まる位相を導出して、各方向の変位成分を求めるものであり、以下の如く、例えば、2次元変位ベクトル(dx,dy)を計測する場合において、2次元関心領域内のとある点の異なる2時相間における瞬時位相の差が、2つの交差ビーム又は波により生成される独立した2つの単一クォードラント(single quadrant)のスペクトルを用いて、複素自己相関信号expj(fxdx+fydy)とexpj(fxdx−fydy)の位相として表されるため、それらの積や共役積を計算することにより、expj(2fxdx)とexpj(2fydy)を得、各々の方向の瞬時位相の差2fxdxと2fydyを各方向の瞬時周波数2fxと2fyで除することにより、未知変位ベクトル(dx,dy)を得るというものである。また、3次元変位ベクトル(dx,dy,dz)を計測する場合においては、4つ又は少なくとも3つの交差ビーム又は波より得られる複素自己相関信号のexpj(fxdx+fydy+fzdz)、expj(fxdx+fydy−fzdz)、expj(fxdx−fydy+fzdz)、expj(fxdx−fydy−fzdz)の4つ又はその内の少なくとも3つを用いて、同様にして容易に求めることができる。このデジタル復調法、又は、<2>、又は、<3>の非線形計算は、任意の方向に交差する任意の波動の対称軸と其れに直交する方向との各々の方向にキャリア周波数を持つ波動(1方向又は2方向に検波した波動)を生成するものであるので、それらの波動に関する障害物や遮蔽物等が存在する所を避けてその後方にてその様にして波動を交差させることにより、障害物や遮蔽物等の後方に、障害物や遮蔽物等を介しては直接には生成できない任意方向にキャリア周波数を持つ波動を生成でき、通常は困難である障害物や遮蔽物等の後方のイメージングや変位計測を実施できる。例えば、障害物や遮蔽物等を介して深さ方向及び横方向にキャリア周波数を持つ波動を生成した場合は、障害物や遮蔽物等を正面方向から透かした状況を実現したことと等価であり、また、その際には対象の任意方向への動きも計測できる。本イメージング及び変位計測は、障害物や遮蔽物等の正面方向からに限らず、任意方向から実施することが可能である。それらの場合、少なくとも1つのミラーを用いて、反射波を生成して障害物や遮蔽物等の後方を観測することもある。例えば、障害物や遮蔽物の等の正面方向からステアリングした波動を生成し、そのステアリングした方向にてミラーで反射させて、障害物や遮蔽物の後方にて波動を交差させることもあるし、正面方向以外の方向に波動源が存在することもある。ステアリング角度とキャリア周波数は様々な組合わせで使用できるが、複素積や複素共役の効果を得る必要があることを考えると、連立方程式を解く方法はその組み合わせに関して制約されず、計算量も少ない。
尚、これらのデジタル復調法、又は、<2>、又は、<3>の非線形計算においては、各方向の瞬時周波数の2倍の周波数を生じさせるため、ナイキスト定理に基づいて予め帯域幅を広く取ってビームフォーミングしておくか、空間にてビーム数の補間を行うか、周波数領域において信号スペクトル以外のスペクトルを零詰めによる広帯域化(データ補間)を行う必要がある。これらの処理も、一種の信号分離である。若しくは、これらのデジタル復調法、又は、<2>、又は、<3>の非線形計算において、その様に帯域を広くすることなく、処理前の信号に対してナイキスト定理が満足されている状況において、それらの各々の処理を同じく施し、その場合に計算される各々の方向の瞬時位相の差が2fxdx、2fydy、2fzdzであるのに対し、各方向の瞬時周波数fx、fy、fzは元の信号において求め、それらを2倍してそれらの瞬時位相の差を除すればよい。帯域を広くする処理を要さず、計算量も少なく高速であり、メモリが少なくて済む効果がある。尚、上記の瞬時周波数の2倍の代わりに、各波動又は各ビームにおいて推定された各方向の瞬時周波数の和を用いていも良い。広帯域化して処理をすると精度が低下することがあり、広帯域化せずに処理することは、この点においても、有用である。必要に応じて、正則化処理されることがある。
以上においては、超音波イメージング又は超音波計測に本発明を適用した幾つかの例を提示した。本発明によって計算されて生成された信号成分の帯域が他の信号の帯域と重なる場合には、周波数領域では両者を分離することができない。その場合には、パルス・インバージョン法又は多次元項の分離を用いるが、本願発明者は、重畳した状態のスペクトルを扱ったり、分割して処理したりすることを過去に報告している(非特許文献29を参照)。本願発明においては、スペクトルが重畳している場合を含め、波動を精度よく分離する他の方法としては、周波数空間においてそれらが分離される効果を得るべく、重畳した波動に対して非線形処理として冪乗演算を施し、広帯域化されて高調波として表された状況において、周波数空間で分離することがある。また、逆に、高周波信号を低周波化したり、広帯域信号を狭帯域化し、表示したり、扱ったりすることもある。冪乗演算による高周波化且つ広帯域化(次数が1より大きいとき)、又は、低周波化且つ狭帯域化(次数が1より小さいとき)処理を行った上で、周波数領域において、高精度に行われることがある。波動の伝搬方向は、生成された高調波のスペクトルの重心(局所における方向、すなわち、空間分解能がある、又は、巨視的で空間分解能が低い、又は、無い)、若しくは、解析信号から瞬時周波数(空間分解能がある)を求めて、計算できる。実施した冪乗の次数を用いて、その他、元の波動の周波数や帯域幅等の波動のパラメータを逆算して求め、分離した状況で復元できる(分離後の信号の復元も使用した冪乗次数の逆数乗すればよく、容易である。)。その様な場合を含め、信号源位置や到来方向、信号源の強度、信号源の大きさや分布も高精度に計測できる。また、元の信号よりも高い周波数の信号を生成する場合において、計算を行うのに先行して、予め、計算可能な帯域幅を広くしておく必要がある。そのために、スペクトルの零詰めは、近似を伴わずに有効であるが(非特許文献29を参照)、時空間において直接的に補間近似に基づいてサンプリング間隔を短くすることもある。
近年、非線形伝搬を低コストでシミュレーションすることが可能となった。従って、本発明の非線形計算やその様なシミュレーション技術を未ビームフォーミング信号(平面波等)や開口面合成用エコー信号に対して施して非線形信号を生成することも可能である。また、これらを基礎として、実測された非線形信号を逆問題的アプローチに基づいて解析(逆解析)し、組織診断に応用することも可能である。
例えば、超音波を対象とした場合において、生体の組織性状として、音速、体積弾性率、音響インピーダンス、反射、レーリー散乱、後方散乱、多重散乱、又は、減衰等を評価し、診断に応用されることもある。他の波動に関しても、関連する現象や物性値の逆解析が有効となる(光におけるミー散乱、放射線における散乱、又は、コンプトン散乱等)。
また、加熱や加温による治療においては、対象の受熱特性(例えば、強力超音波の音圧に対する特性や、造影剤の効果等)や温度上昇の特性を明らかにすることが必要とされ、一般的な理解が求められる場合や現場で理解することが必要になることがあるが、その様な場合においても非線形計算を含む計算が有効になる。また、治療において、本発明による非線形効果のイメージングに基づいて、その効果を評価して応用することは有用である。その他としては、物理的に非線形効果を受けた受信信号や、分離されたベースバンデッド信号や複数の高調波に、本発明を用いて、エコーイメージングや組織変位計測を行うことも可能である。
本発明は、超音波の他にも、電磁波、光、放射線、力学的な振動、超音波以外の音波、及び、熱波等の任意波動のコヒーレント信号に対して乗算や冪乗等の非線形演算を施すことにより、信号の高周波化、高帯域化、又は、高コントラスト化を行うイメージング装置に関するものである。本発明によれば、高調波信号を増強したり、模擬したり、新たに生成することができる。さらに、高調波信号を仮想的に実現することもできる。
また、通常の検波処理に比べて少ない計算量で、ベースバンド帯域信号と高調波信号の任意方向の検波信号とを同時に得ることもできる。結果的に、例えば、高周波化及び広帯域化、高コントラスト化、又は、サイドローブの抑圧を達成することができ、高SN比の非線形イメージングが可能となる。また、通常の1方向の変位計測法を用いて、少ない計算量で変位ベクトルを容易に計測できる様になる。和音や差音、倍音等を生成するという観点においては、波動やビームの周波数やキャリア周波数、ステアリング方向、又は、伝搬方向等が異なる場合を含めて、高周波信号や低周波信号が得られるわけであり、これらがイメージングや計測に有効に使用されることもある。理論又は演算を通じ、線形効果のみならず、非線形効果により生成される波動やビームを設計し(伝搬方向等の波動やビームのパラメータ)、そして、それらを制御することもできる。
一方、画像計測の分野では、コヒーレント信号に対して各種の検波(単に波形の絶対値を取るもの等を含む)を施すことによってインコヒーレントにした信号(結果表示は画像)を用いて、動きの観測が行われることもよく知られている。相互相関処理、オプティカルフロー、又は、SAD(Sum and Difference)法に準ずる方法等が使用されることがある。また、インコヒーレント信号に本発明を適用しても、広帯域化(高分解能化)することもできる。本発明により得られる上記の高分解能な検波信号も使用することができる。高帯域化を通じてデータが高密度になった状況はそれらの処理に適しており、動きの計測精度も向上する。なお、上記の方法は、コヒーレント信号に適用させることも可能であり、同広帯域化は、精度を向上させるために有効である。即ち、本発明は、任意のコヒーレント信号及びインコヒーレント信号に適用することが可能である。
その他としては、本発明によれば、波動(レーザー、超音波、又は、焦点型強力超音波等)を用いて行われる任意対象の加温、加熱、冷却、冷凍、溶接、修復、医療における癌病変等の加熱、冷凍治療、又は、任意対象(眼鏡等)の洗浄等において、それらの効果を、非線形現象を通じて増強すること、高分解能にすること、また、その効果の予測(例えば、強力超音波を用いた加熱時のべき乗効果や、交差ビームを用いて効果を増強させる場合の加算だけでなく乗算の効果等)を通じてその効果を向上させることが可能となる。
強力超音波を用いた加熱治療等においては、組織の非線形効果により高調波を生成し、高周波であるがゆえ、その熱エネルギーとしての吸収効果が強いので、組織における発熱を簡単に理解し、予測することも可能である。同観点において、高周波信号を送波したり、広帯域信号を送波したり、高調波を送波したり、重畳ビームを生成したり、又は、交差ビームを生成したりすることは治療に有効であり、やはり、その理解と予測が容易に可能である。具体的には、音場をシミュレーションしたり、又は、受信信号を得ることのできるシステムにおいては自己相関関数を評価することを基礎にして音圧形状や点拡がり関数を推定することができ、直接的に高調波信号に関して評価することもできれば、基本波信号に対して非線形演算を施すことも有効である。他の波動に関しても同様である。
また、本発明は、物理的に非線形効果が得られない物理的条件下(例えば、計測対象に対して強度を高くできない場合や高周波ゆえに高い強度が得られない場合等)において非線形効果を得ることにも有効である。逆に、例えば、超音波エコーイメージング、変位計測、又は、治療の際に、マイクロバブル等の造影剤を使用して非線形効果を増強した条件下で本発明を実施することもできる。組織に染み渡った状態で組織を対象とすることもあるが、血管や心腔内の血液を対象とした計測やイメージングにも適している。即ち、本発明は、非線形効果を増強することもできるし、模擬したり、新たに生成することができる。さらに、本発明は、非線形効果を仮想的に実現することもできる。上記に記載した如く、非線形効果を評価することも可能である。造影剤は、加熱治療の効果を増強するために使用されることもある。他の波動に関しても同様である。
また、単一の信号源では実現できない高周波の信号を生成する場合には、より高分解能なイメージングや高精度なドプラ計測が可能となる。通常、減衰の影響は高周波成分に強く、例えば、減衰の影響を受けやすい顕微鏡では、高い周波数で極力深部まで観測できると良い。例えば、100MHzの超音波トランスデューサを複数台使用すると、物理的にその台数倍の高い超音波を生成でき、通常のトランスデューサでは生成することのできない高周波数を実現できる。また、単純には高周波数の信号(和音)を生成できる。本発明によれば、そのような高周波数を演算によっても実現することができる。従って、本発明によれば、物理的に実現できない高周波な波動や信号も生成することができる。同様にして、低周波数のイメージングや低周波数の信号(例えば、差音)を用いた計測を実現することもできる。また、単一の信号源では物理的に実現できない低周波数の信号を生成することも可能である。これらの信号を理論的に又は演算を基礎として実現し、生成される波動を制御することもできる。
以下においては、本発明の効果を立証するために、実験データ、シミュレーション結果、及び、写真等の資料について説明する。これらは、超音波シミュレーションや寒天ファントム実験を通じ、超音波エコーイメージングや計測イメージングを行って本発明の有効性を実証するものである。本発明は、超音波エコー法以外の任意の信号(身近なものでレーザー、光波、OCT、電気、磁場信号、X線等の放射線、及び、熱波等)や異なる信号間にも応用できるものである。これは、生のコヒーレント信号又は信号処理後のインコヒーレント信号において応用される。
非特許文献29に開示されている寒天ファントムの開口面合成用エコーデータ(リニアアレイ型探触子、7.5MHz)に対し、正面方向のビームフォーミングと、横方向に3.5MHzの横方向変調を行った際のそれぞれのエコー信号を用いて、上記<1>〜<3>の処理を行った。
図36は、本発明の一実施形態によるエコー信号のスペクトルの変化を示す図である。図36において、横軸は横方向周波数[MHz]を示しており、縦軸は深さ方向周波数[MHz]を示している。図36において、(a1)及び(a2)は、ステアリング無しの場合において、オリジナルのエコー信号のスペクトル、及び、エコー信号の二乗のスペクトルをそれぞれ示している。(b1)、(b2)、及び、(b3)は、横方向変調時において、オリジナルのエコー信号のスペクトル、1方向ステアリングエコー信号の二乗のスペクトル、及び、横方向変調エコー信号の二乗のスペクトルをそれぞれ示している。(c)は、交差ステアリングビームエコー信号の積のスペクトルを示している。図36から、上記の理論で導出した各信号のスペクトルを確認することができる。いずれのエコー信号においても、二乗又は乗算の結果、第2次高調波のスペクトルが生成され、その帯域幅は元のスペクトルよりも広くなっている。
図37A〜図37Cは、本発明の一実施形態によるエコー信号の自己相関関数の変化を示す図である。ここで、横軸は横方向位置[mm]を示しており、縦軸は正規化された自己相関関数を示している。図37Aは、ステアリング無しの場合において、オリジナルのエコー信号の自己相関関数とエコー信号の二乗による第2次高調波の自己相関関数との比較を示している。図37Bは、横方向変調時において、オリジナルの横方向変調エコー信号の自己相関関数と横方向変調エコー信号の二乗による第2次高調波の自己相関関数との比較を示している。図37Cは、交差ビームエコー信号の積、及び、横方向変調エコー信号の二乗について、横方向成分及び深さ方向成分の自己相関関数を示している。自己相関関数に基づいて、音圧や点拡がり関数の横方向のプロファイルを評価することができる(関心領域の中央の深さ19.1mmの場合)。ここでは省略するが、この2次元エコー信号に対して、2次元の自己相関関数を求めると、音圧や点拡がり関数の2次元分布を推定でき、3次元エコーに対しては3次元自己相関関数を求めると良い。
図38〜図40は、本発明の一実施形態によるBモードエコー画像の変化を示す図である。これらのエコー画像の深さは10.0mm〜28.1mm、であり、横幅は20.7mmである。寒天ファントムにおいては、ずり弾性率が周囲に比べて約3.29倍高い円柱状(直径10mm)のつめものが、深さ19mmを中心として存在する。
図38〜図40において、(a1)、(a2)、及び、(a3)は、ステアリング無しの場合において、オリジナルのエコー信号に基づくエコー画像、ベースバンデッド信号に基づくエコー画像、及び、エコー信号の二乗による第2次高調波に基づくエコー画像をそれぞれ示している。左右に2つの画像がある場合に、左側の画像は包絡線検波によるものであり、右側の画像は二乗検波によるものである。
(b1)、(b2)、(b3)、(b4)、及び、(b5)は、横方向変調時において、オリジナルの横方向変調エコー信号に基づくエコー画像、ベースバンデッド信号に基づくエコー画像、横方向変調エコー信号の二乗による第2次高調波に基づくエコー画像、横方向変調エコー信号の二乗による第2次高調波の横方向成分に基づくエコー画像、及び、横方向変調エコー信号の二乗による第2次高調波の深さ方向成分に基づくエコー画像をそれぞれ示している。
また、(c1)及び(c2)は、交差ビームエコー信号の積による第2次高調波について、横方向成分に基づくエコー画像、及び、深さ方向成分に基づくエコー画像をそれぞれ示している。複数波が存在する場合については、コヒーレント信号の重ね合わせの検波も過去に報告しているが、ここでは、各々の検波信号の重ね合わせの結果が示されている。
図36に示すスペクトルの広帯域化に対応して、図37A〜図37C及び図38〜図40から、空間分解能が高くなったことを確認することができる。ここでは、ベースバンデッドされたデータの直流を切っていない。その直流、又は、必要に応じて、深さ方向や横方向の極低周波数のスペクトルをフィルタリング等により除去すると、縦方向に走行する高又は低輝度の線(縦縞)は完全に除去できる(図示は省略する)。図37A〜図37Cからは、サイドローブが低くなったことを確認できる。これらに対応して、図38〜図40からは、コントラストが大きくなる効果も確認できる(強散乱体等に注目)。元のエコー信号において減衰の補正をしていないので、処理後の信号から得られた画像は、未補正によるコントラストが増大した結果として、元信号の画像に比べて、深い位置の信号強度が浅い位置のそれに比べて極度に低い。
元信号を用いたイメージングにおいては、いわゆる波動の伝搬過程における減衰の補正はコヒーレント信号又は検波後のインコヒーレント信号に対して施されるが、本装置においては、予め元のコヒーレント信号に補正を施した上でコヒーレント信号に非線形処理が施されたり、又は、非線形処理後にコヒーレント信号又はインコヒーレント信号が補正される。補正処理そのものは、通常の補正と同様に、受信ビームフォーミングの前又は後、又は、画像化後において、主に信号強度を基礎として実施されることがある。ランバート(Lambert)の法則に従って、補正が施されることがある。
その場合に、平均的な減衰係数が使用されることがあるが、波動又はビームのパス上の各位置における減衰係数が演算部130において信号処理又は逆解析的に算出され、補正が高精度に実施されることもある。すなわち、アダプティブに、又は、自動的に行われることがある。若しくは、操作者が、生成された画像を見ながら、制御部133を介して、各深さにおいて所定の範囲で強度の調整を行うこともある。計測対象により、選択できるパターンが用意されている場合もある。
受信器122、フィルタ/ゲイン調整部123若しくは125内の増幅器や減衰器、受信ビームフォーマ129内の増幅器や減衰器若しくはデジタル処理、又は、演算部130におけるアナログ処理若しくはデジタル処理により、ゲイン調整は行われる。送信器121において、送信されるビームや波動の強度が調整されることもある。また、作用デバイス112として、増幅器や減衰器が使用され、波動そのものの強度が調整されることもある。造影剤1aは、それらの決定に大きく影響を与えるので注意を要する。
上記の実験における横方向変調エコー信号の二乗計算(<2>)において、異なる一方向に検波された第2次高調波の2つの信号の内の横方向に検波されたスペクトルと第2次高調波のそれが重なったため、本願発明者が目見当でスペクトルを分割した。その結果と、横方向変調エコー信号の2波の乗算(<3>)の結果とを、自己相関関数(図37Cを参照)において比較したが、若干、高調波周波数が低くなったこと以外に違いは無かった。
これらの実験に加えて、多次元自己相関法を用いて、変位ベクトル計測、歪テンソル計測、及び、ずり弾性率再構成を行った。その内の結果として、ここでは、<3>において異なる一方向のみに検波された第2次高調波信号の2つを用いて各方向の変位計測を行った結果を図41に示す。
図41は、本発明の一実施形態によって寒天ファントムにおいて計測された変位ベクトル、歪テンソル、及び、相対的ずり弾性率の画像を示す図である。図41の一部においては、つめものの中央において評価された平均値とばらつき(括弧内)も示されている。同横方向変調エコーデータにデジタル復調を施した結果に比べて雑音が増加する傾向があったが(横方向(y)における歪のばらつきが、3.08×10−3から9.52×10−3に増加)、空間分解能は2倍に高くなり、ずり弾性率再構成に関して正則化を施した結果では、精度が向上した(3.37から3.23に向上)。
尚、ここでは、結果を省略するが、段落0629に記載した通り、多くの波動やビームを生成して、重ね合わせした状況の下で非線形処理を施すことや、重ね合わせていない状況で非線形処理を施した上で重ね合わせすることがある。また、他に記載した通り、ビームフォーミングの行われていない生の受信信号(送信ビームフォーミングのみの場合や開口面合成の場合等)に対して、非線形処理が施されることがある。波動やビームフォーミングのパラメータが同一の下で生成された複数の波動又はビームが処理されることがあるが、異なるパラメータ下にて生成された波動やビームが処理されることもある。
高分解能化に関しては、上記の線形モデルにおける超解像が有効であり、それらの超解像をこの様な複数の波動やビームに用いることもある。すなわち、重ね合わされていない個々の波動又はビームに超解像が施されて重ね合されるか、重ね合わせのされた状態で超解像が施されることもある。両者が混合して処理される場合も有る。同一のパラメータ下において重ね合わせ(加算平均)されてノイズが低減されたものが処理されることもある。オリジナルの信号(高調波である場合を含む)に対して格段に高い空間分解能を実現できる。様々な超解像を記載したが、例えば、段落0361に記載の様に、所望する点拡がり関数やエコー分布等の信号分布のスペクトルをターゲットとして逆フィルタリングする場合、段落0373〜0397に記載の変位計測と共に記載した様に、信号そのもののイメージングのためにウィーナーフィルタを応用して重み付けすることができ、その中でも、例えば、式(A12')や式(A13')にて用いるウィーナーフィルタを基礎とする重み(最初の信号スペクトルの二乗ノルムを除いたもの)を用いた場合には、逆フィルタ
但し、Hp(ωx,ωy,ωz)とG(ωx,ωy,ωz)の各々は、処理対象の信号と目標の信号のスペクトルである。
のノルムに重み付けした
但し、PWpn(ωx,ωy,ωz)とPWps(ωx,ωy,ωz)は、各々、ノイズと信号のパワースペクトラムである。qは任意の正値である。
を用いて処理すれば良い。上記記載の線形モデルにおける他の超解像においても、同様に、ウィーナーフィルタを応用して、雑音の増幅を抑えることが可能である。ウィーナーフィルタを用いずに、(AA1)のノルムそのものを施す場合に、信号スペクトルHp(ωx,ωy,ωz)のノルム(最大ノルムやL2ノルム、L1ノルム等)のε(<1)倍以上のスペクトルを持つ周波数のスペクトルのみの処理が行われる(他の周波数のスペクトルは零にする)こともある。これらにおいて、変則的に、(AA1)のノルムではなく、(AA1)そのものを用いることもあり、位相まで合わせることもある。その場合、Gp(ωx,ωy,ωz)は、計測対象の位相情報を持つことが多い。
その他、これらの重み付け処理は、ブラインド・デコンボリューションにおいて実施されることもある。また、別に求められた点拡がり関数やシステム伝達関数を用いて逆フィルタリングして白色化する場合や、それら点拡がり関数やシステム伝達関数の共役や、式(AA1)の共役を掛ける場合を含め、それらをビームフォーミング前又は後(送信ビームフォーミングのみの状態や開口面合成用に収得した受信信号)において実施する場合においても、これらの重み付け処理は有用である。特に、逆フィルタリングにおいては、正則化が施されることもある。
この様な線形モデルの下で超解像の施された信号に対して、上記の非線形処理が施されることもある。さらに、高分解能化され、さらに、高コントラスト化も実現できる。線形モデルの下で得られた超解像の結果として、オリジナル(高調波である場合を含む、以下、同様)の信号が超解像されたもの、それらの超解像の施された信号が複数存在して重ね合せされたもの、複数のオリジナルを重ね合わせて超解像されたもの、それらが混合して処理されたもの等が処理対象となる。また、オリジナルの信号が複数個存在し、それらの各々が線形モデルの下で超解像され、各々に非線形処理が施されて重ね合わせされることもある。それらが混合して処理されることもある。
また、上記の如く、非線形処理された信号に対して、線形モデルで行われる超解像が施されることもある。高分解能化されるが、コントラストは低下することがある。非線形処理により得られた超解像の結果として、オリジナル(高調波である場合を含む)の信号が超解像されたもの、それらの超解像の施された信号が複数存在して重ね合せされたもの、複数のオリジナルを重ね合わせて超解像されたもの、それらが混合して処理されたもの等が処理対象となる。また、オリジナルの信号が複数個存在し、それらの各々が非線形処理により超解像され、各々に線形モデルで行われる超解像が施されて重ね合わせされることもある。それらが混合して処理されることもある。
尚、同一の関心位置において、これらの非線形処理を複数の信号(ビーム又は波動を表す信号であり、基本波に限られず、高調波であることもある)に施す場合に、開口の指向性や対象における散乱や減衰(周波数に依存する場合を含む)の影響等により、処理前の元の信号そのものの強度が異なると、その違いが強調されることがあり、特に、高次の高調波を生成すると、顕著となることがある。この違いを積極的にイメージングしたり、若しくは、スペクトル画像において定量的に確認することもある(それらの周波数特性が強調されて確認できる場合が有る)。一方で、その違いを低減してイメージングするべく、非線形処理前又は後において、信号のエネルギー又は特定の周波数のスペクトルを重み付けする処理を行い、イメージングすることがある。それらの複数の信号が重ね合わせされてイメージングされることもある。尚、信号のスペクトル又はエネルギーは、関心位置を含む局所領域において評価されることもあるし、関心領域全体で評価されることもある。無論、非線形処理を施すか否やに関わらず、線形の重ね合わせ処理の際に、同様にして重み付けされることもある。
また、伝搬過程の減衰や反射/散乱の影響により、信号強度は距離方向に弱くなるが、例えば、フォーカシング時に比べ、平面波は減衰の程度が弱い。非線形処理を施すと、次数が高いほど、その影響が強調される。従って、上記の如く、非線形処理の前又は後に、信号強度が補正されることがある(非線形処理を行わない場合も、補正されることがある)。検波の前又は後等において処理される。
尚、超解像は、他に様々なものがあり、その内の少なくとも一つの方法が併用され、同一又は別の信号に施されて、コヒーレント加算されて、使用されることがある。また、それらがインコヒーレント加算されることもあり、スペックルが低減されることもある。超解像を通じたインコヒーレント加算は、上記の通り、空間分解能が低下しない場合がある。
また、それらの超解像の各々の処理において、信号の強度やSN比、空間分解能に依存して、空間的に非一様に加算が施されることがある。すなわち、各方法のパラメータが各位置のそれらに依存して可変であることがある。スペクトルを加工する場合は上記の通りであるが、例えば、非線形処理の場合は、冪乗の次数や乗算回数等である。また、コヒーレント信号やインコヒーレント信号の加算を行う場合は、加算数や重み付け値等である。無論、空間的に一様に処理することもある。
尚、非線形処理による高コントラス化の効果として、組織内の散乱体や反射体が際立って良く可視化されることがあり、冪乗の次数や乗算の回数を多くすると、信号強度(グレー画像にしたときは輝度)の高低差が顕著となる効果が得られることがある。例えば、生物組織の壊死後の石灰化を捉えることが容易になったりすることがある。その他、例えば、それらの信号強度に依存してカラーリングし、通常のグレー画像やドプラ画像、パワードプラ画像、又は、造影画像等に重畳して表示することもある。信号分布の強度が補正された上で、処理が施されることもある。例えば、関心領域内から受信した信号(検波前又は後)の強度を空間的に一様にする補正後に非線形処理を施し、散乱強度分布や複数の散乱体の散乱強度、又は、反射強度分布や複数の反射体の反射強度の高低を可視化することがある。反射体や散乱体の数をカウントすることを目的として、処理が施されることもある。フォーカスビームや開口面合成以外に、平面波や球面波、又は、円筒波を用いると、空間分解能は低く、その様な場合においても非線形処理を始めとする様々な超解像は有用であるが、特に、非線形処理を施した場合は、散乱波や反射波がその生成位置において際立って良く可視化されることがある。例えば、それらの交差波を生成した場合には、散乱波としてクロス型の波形が散乱体位置に強調されて表示される。
また、凹型開口HIFUアプリケータ(シミュレーション、周波数5MHz、開口直径12mm、焦点深さ30mm)を用いた場合(単一開口と二開口を用いた場合)の点拡がり関数の冪乗や乗算を計算した。上記の通り、この種の計算は、加熱効果の考察に効果的である。実験データを収集することにより、音圧(点拡がり関数)と高調波の音圧、受熱の関係等を定式化することが可能であり、アプリケータや放射音圧(超音波パラメータ)の設計等を通じて加熱治療の高効率化に役立てることができる。他の波動を用いた場合も同様である。
図42は、凹型HIFUアプリケータを用いた際の本発明の一実施形態による音圧変化を示す図である。図42において、(a1)及び(a2)は、1つの開口の使用時において、オリジナルの信号による音圧の画像、及び、二乗信号の音圧(左は直流を含み、右は高調波のみ)の画像を示している。(b1)及び(b2)は、2つの開口の使用時(交差角度は横方向に対して±5°)において、オリジナルの信号による音圧の画像、及び、乗算信号の音圧(左は直流を含み、右は高調波のみ)の画像をそれぞれ示している。画像は包絡線検波によるものであり、画像サイズは3.8×12.8mm2である。二乗と乗算の各々により得られた第2次高調波成分において、その音圧が所望の領域に集中してコントラストが高くなっていることを確認できる。この様に、基本波の強度(Intensity、すなわち、電力)の評価や生成される高調波(第2次以上の高調波)の音圧分布形状を推定することができる。また、高調波により消費される電力(Intensity)も評価できる。実際に観測される高調波に関しても同様に評価できる。
以上においては、本発明の実施形態に係るイメージング装置に関し、主として、電磁波、音を含む振動、熱の波動、又は、該当する信号の非線形演算装置について述べたが、異なる種類の物理エネルギー間の非線形効果を増強したり、非線形効果を模擬したり、又は、仮想的に実現すること(つまり、物理的、又は、化学的、又は、生物学的に、非線形効果を生じる場合以外に、非線形効果を生じない場合を含む)も可能である。その場合には、使用される波動に関するデバイスを同時に使用して波動を受信したり、又は、同時相であれば異なる時刻において受信された信号を基礎として、本発明を実施することもできる。即ち、本発明は、複数の波動が同時に発生している場合と、波動が単独に発生している場合とを扱うことができる。
また、電磁波、振動、又は、熱において、周波数が異なると各計測対象物(媒体)に依って支配的な挙動は異なり、名称を異とするのは然りであるが(例えば、電磁波に関しては、マイクロ波、テラヘルツ波、X線等の放射線等、振動に関しては、例えば、ヒト軟組織を対象とした場合に、メガHz帯域においてずり波は減衰の影響により波として伝わらず超音波が支配的であるが、100Hz等の低周波においては非圧縮性の特徴が強くずり波が支配的である)、本発明は、その様な挙動を異とするもの同士の非線形効果を増強したり、非線形効果を模擬したり、又は、仮想的に実現することも可能である。
その場合には、使用される波動に関するデバイスを同時に使用して波動を受信したり、又は、同時相であれば異なる時刻において受信された信号を基礎として、本発明を実施することもできる。無論、各波の伝搬速度や減衰、散乱、反射等の現象が分散特性を有し、受信信号のSN比を考慮して、適切に使用されなければいけないという限界がある。しかしながら、物理的に生成したり、又は、捉えることのできない高周波信号や低周波信号を生成できることを含め、本発明の応用範囲は非常に広い。
また、非線形演算や計測対象内の非線形効果を画像化したり、又は、他計測に応用することを記載し、積極的に高調波を計測対象に伝搬させることがあることも記載したが、元の基本波をそれらにおいて積極的に併用することもある。また、優決定(Over-determinedシステム)を構成することもできる。基本波も高調波と同様に処理される。
さらに、非線形演算を通じて得られる複数の信号の内の少なくとも1つに任意検波処理を施したり、又は、基本波を含むことのある複数の信号に任意検波処理を施した上で重ね合わせたり、又は、基本波を含むことのある複数の信号をそのままに重ね合わせたものに任意検波処理を施し、画像化又は変位等のその他の計測が行われることがある。重ね合わせに関し、前者のインコヒーレント加算(インコヒーレントコンパウンディング)はスペックルの低減に有効であり、高周波信号を生成して使用した場合には空間分解能は低下しない。通常のスペックル低減で生じることの多い低空間分解能化が問題とならない。低周波信号を生成して使用した場合は、空間分解能は低下するが有用であることがある。一方、後者のコヒーレント加算(コヒーレントコンパウンディング)は、信号の広帯域化、すなわち、高空間分解能化できる。特に、高周波信号を生成して使用した場合は高周波化でき、低周波信号を生成して使用した場合は低周波化できる。結果的に、イメージングを高空間分解能化でき、また、変位やその他の計測を高精度化できる。上記の如く、複数のビームや波動を生成した場合やスペクトルの周波数分割を通じて得られる信号も非線形処理を含むこれらの処理対象に含まれる。
変位計測は、例えば、上記の通りに応用できる。レーダー、ソナー、その他、環境計測等など、応用範囲は計り知れない。変位の他、例えば、温度を測ることもある。直接に温度センサーを用いて温度センシングを行うこともあれば、波動伝搬特性の温度依存性を検出して、例えば、超音波を用いたときには、温度変化による音速の変化と体積変化を反映した熱歪計測を目的とした信号処理に基づいて温度分布が計測されることもある。核磁気共鳴周波数のケミカルシフトを信号処理に基づいて検出することもある。熱波が観測され、その非線形をイメージングしたり、加熱治療の高効率化に応用することも可能である。
なお、計測対象物内の非線形効果を積極的に観測する場合と、本発明による非線形処理を積極的に施した場合において、両者を切り替えて使用したり、両者を同時に使用したり、積極的な演算を通じて、計測対象物内の非線形効果を解明することが行われることもある。即ち、信号源の非線形性や造影剤、使用するアナログ又はデジタルの非線形演算を駆使することにより、計測対象内の非線形性効果を高精度に計測し、画像化することができる。
上記のイメージングや計測は、適切なビームフォーミングを行うことを基礎としており、適切な検波方法や組織変位計測法等も重要である。本願発明者は、過去に、特に多次元信号の検波方法として、直交検波や包絡線検波の他に二乗検波等、ビームフォーミング法として、交差ビームを用いた横方向変調法(非特許文献13及び29を参照)、スペクトル周波数分割法(非特許文献29を参照)、スペクトルのフィルタリングに依る波動又はビーム形状の調整、多くの交差ビームを使用する方法、及び、優決定(Over-determined)システム法等、また、変位ベクトル計測法として、多次元自己相関法、多次元ドプラ法、多次元クロススペクトラム位相勾配法、及び、位相マッチング法等(非特許文献13及び29を参照)を開発しており、その他、変位や歪計測に基づいて(粘)ずり弾性率分布や熱物性分布を再構成イメージングすることもできる。元の波動や信号のみならず、複数の波動や信号の重ね合わせ、又は、非線形効果により生成された波動やビーム(疑似のものを含むことがある)に対し、スペクトル周波数分割においては疑似の波動やビームを生成することができ、スペクトルのフィルタリングにおいては波動やビームの形状を調整することができる。
基本波を含むことのある複数の信号を重ね合わせて得られる信号、又は、基本波を含むことのある複数の信号の内の少なくとも1つを周波数領域においてスペクトル分割やフィルタリングして得られる信号(非特許文献29を参照)、又は、これらの処理を施していない元の信号、又は、これらを併用して、優決定(Over-determined)システムを構成し、上記の処理により、画像化すしたり、又は、変位等のその他の計測が行われることもある。
以上述べたように、本発明は、任意波動の透過波、反射波、又は、散乱波をセンサーによって検出して得られるコヒーレント信号に対し、波動伝搬中における高強度に対する非線形反応や波が重ね合わさる際の乗算や冪乗等の非線形効果(高調波や和音、差音等の生成)を、例えば、アナログ演算又は計算機を用いたデジタル演算を施すことにより得ることにより、元の信号を用いたイメージングに比べて、高周波且つ広帯域、高コントラスト且つ高空間分解能なイメージングを実現する。高周波化ではなく低周波化されたイメージングを行うこともできる。また、同効果の下で、元の信号を用いたドプラ計測に比べ、高空間分解能且つ高精度に、変位、速度、加速度、歪、又は、歪率の計測を実現するものである。
その波の重ね合わせとは、物理的に、ビームフォーミング中や、ビームフォーミングされた波、ビームフォーミングされていない波等の間において実現されるものを意味する。波の強度が弱いときは線形則で成立する重ね合わせの理が主として観測されるが、強度が強いときは重ね合わせの他に乗算や冪乗等の非線形の影響を受けた信号(即ち、高調波や和音、差音)が観測され、本発明は、この後者の現象に着目するものである。本発明は、これらの波成分や重ね合わされた波の全てに対して、それらの強度に寄らずに使用できることも特徴とする。無論、基本波と人工的に放射された、又は、伝搬中に生成された高調波成分を含む波にも適用される。伝搬中に生成される高調波の例として、例えば、超音波ハーモニック信号等が挙げられる。
これに対し、本発明は、例えば、ビームフォーミング(アポダイゼーション、遅延処理、若しくは、加算処理からなる物理的なもの、又は、計算によるもの)により生成されたビームや、ビームフォーミングが施されていない波そのもの(平面波や開口面合成用の受信信号群等を含む)、透過波、反射波、又は、散乱波等の任意波動に関し、高強度による非線形効果と、同一方向又は異なる方向に伝搬する複数の波動(同一物理量の同一の波で方向のみ異なる、同一物理量の異なるパラメータを有する波、異なる種類の物理量の波)が重なる場合等により生じる乗算や冪乗等の非線形効果を高精度に計測したり、又は、模擬するべく、例えば、信号をトランスデューサにより検出した後に積極的にアナログ演算器やデジタル演算器を用いて信号にそれらの演算を施すものであり、広帯域化された高調波や和音、差音を得ることができる。また、物理的、又は、化学的、又は、生物学的に、非線形効果を生じる場合以外に、その効果を強調したり、非線形効果を観測できない場合や生じない場合において、非線形効果を生み出すことも可能である。また、複数の検波信号を同時に得ることができる。その他、物理作用を受けて生成されたベースバンデッド信号の応用も本発明に含まれる(受信信号からパルス・インバージョン法やフィルタリング法等により求められた高調波を除去したり、また、上記の演算や計算により推定された信号を応用する等)。
本願発明者は、過去に、線形則に基づいて交差波(平面波等)や交差ビームを用いた横方向変調法を開示しているが(深さ方向と横方向にキャリア周波数を有する)、本発明によれば、この横方向変調においても冪乗の効果を得ることができ、また、交差波間の乗算効果を得ることもできる。また、通常は、波の強度を強くすることにより、べき乗効果や積の効果を得ることができるが、本発明によれば、その強度に寄らずに、それらの非線形効果を得ることができる。
また、本発明によれば、通常の直交検波や包絡線検波の代わりに少ない計算量で容易に実施できる新しい検波処理によりベースバンデッド信号を得ることができて、エコーイメージングやドプラ計測において、その効果が得られる。但し、その検波信号は、通常にいうベースバンド信号とは異なり、直流を含むので、そのまま使用されるか、あるいは、アナログ処理又はデジタル処理によって直流を除いてから使用される。その他、物理作用を受けて得られるベースバンデッド信号の応用も、本発明に含まれる。なお、演算により生成されるベースバンド帯域の信号もベースバンデッド信号と称す。
例えば、医用超音波やソナーの分野では、生体内の超音波の伝搬過程における非線形現象(音圧が高い場合、体積弾性率が高く作用するため、音速が速く、波形が歪み、伝搬過程において蓄積される)により生じるハーモニック(高調波)エコーイメージングと称して臨床応用されているが、物理的に生成されるベースバンデッド信号を応用することは開示されていない。その他の非線形現象により物理的に生成されるベースバンデッド信号を応用することも開示されていない。なお、ベースバンド信号、ベースバンデッド信号、及び、包絡線検波又は二乗検波等のなされたインコヒーレント信号も、本発明の処理対象に含まれる。
特に、ドプラ計測に関して、本願発明者は、多次元信号を使用することにより、波の伝搬方向の変位を計測する通常のドプラ計測とは異なり、任意方向の変位ベクトルや速度ベクトル、加速度ベクトル、歪テンソル、又は、歪率テンソルを高精度に計測することを可能にした。本発明によれば、通常の検波とは異なり、多次元信号から任意の1方向に検波した信号(ベースバンデッド信号)を同時に求めることができ、通常の1方向の変位計測法を用いて、少ない計算量で短時間に容易にそれらの計測を行うことも可能である。この場合においても、同時に得られる高調波や上記のベースバンデッド信号を用いたエコーイメージングが可能である。その他、サイドローブの抑圧と、高コントラスト化も可能である。温度計測が行われることも上記の通りである。
基本は、異なる単一周波数の正弦、余弦信号間の乗算を行うと和音と差音を生じること、冪乗計算を施すと信号の周波数が冪乗数だけ倍の高さになること(倍角だけでなく分角も可能)と、複数の周波数成分を有する信号(歪波)においては高周波化されるだけでなく広帯域化されることにある。これに加え、いわゆるサイドローブが抑圧される効果も得られ、コントラストが増加する。これらの効果は、特に強度の強い波動の伝搬中の効果として観測されることが多いが、本発明では、強度に寄らず、任意信号に対してアナログ又はデジタル演算処理を施して非線形効果を増強や模擬したり、又は、新たに生成するものである。仮想的に実現することもできる。空間分解能を有する場合に限らず、連続波においても、同様に、高調波や検波信号を物理的に又は人工的に得ることができる。物理的に生成されるベースバンデッド信号を本発明の下で理解できると、その応用も工学的に有用となる。例えば、変位や変位ベクトル成分の計測が可能であったりする(通常の1次元の変位計測法が使用できる)。また、観測された高調波を用いても変位や変位ベクトル成分の計測が可能であったり(上記の各種の多次元変位ベクトル計測法を使用できる)、優決定(Over-determined)システムを構成することもでき、本発明の非線形処理を用いた場合と同様に、イメージング(高SN比化、高分解能化、スペックル低減等)や変位成分計測(高精度化)等に応用できる。これらの場合において、造影剤を積極的に応用して、非線形効果を増強することも有効である。
その他、本発明は、波動(レーザー、超音波、又は、焦点型強力超音波等)を用いて行われる任意対象の加温、加熱、冷却、冷凍、溶接、修復、医療における癌病変等の加熱、冷凍治療、又は、任意対象(眼鏡など)の洗浄等において、それらの効果を、非線形現象を通じて増強することや、高分解能にすることや、また、その効果の予測(例えば、強力超音波を用いた加熱時のべき乗効果や、交差ビームを用いて効果を増強させる場合の加算による高空間分解能化だけでなく乗算の効果としての高周波化と高空間分解能化等)を通じて、その効果を向上させることが可能となる。これらにおいても、連続波が使用されることもあり、同効果が得られる。
本発明は、物理的に非線形効果の得られない物理的条件下(例えば、計測対象に対して強度を高くできない場合や高周波ゆえに高い強度が得られない場合等)において非線形効果を得ることにも有効であるが、逆に、例えば、超音波エコーイメージング、変位計測、温度計測、又は、治療の際にマイクロバブル等の造影剤を使用して非線形効果を増強した条件下で本発明を実施することも有効である。即ち、本発明は、非線形効果を増強することもできるが、模擬したり、新たに生成したり、仮想的に実現することもできる。また、本発明は、イメージングや変位計測、治療等において、純粋に高分解能化と高精度化、高効率化を目的に実施することもできる。
本発明によれば、ハーモニックイメージングと同様に、高周波化と広帯域化、高コントラスト化、又は、サイドローブを抑圧することができ、高SN比の非線形イメージングが可能となる。その他、メモリや計算を多くに必要とすることなく、アナログ検波又はデジタル検波を同時に行うことができる。
本発明の有効性は、シミュレーションや寒天ファントム実験を通じて、超音波エコーイメージングや計測イメージングを行って実証されている。本発明は、超音波エコー法以外の任意のコヒーレント信号(身近なものでは、光波、OCT、電気、磁場信号、X線等の放射線、及び、熱波等)や、異なる種類のコヒーレント信号間にも応用できるものである。アナログ処理(例えば、センサーを用いた受信信号のエネルギー検出や非線形素子を用いたエネルギー検出等)又はデジタル処理によってインコヒーレント化されたものを含む信号が、コヒーレント信号と共に処理されることもある。
一方、画像計測の分野では、コヒーレント信号に対して各種の検波(物理現象又は通常の信号処理)を通じてインコヒーレント信号(結果表示は画像)にしたものを用いて動きの観測が行われることも良く知られている(相互相関処理やオプティカルフロー等々様々)。インコヒーレント信号に本法を用いると広帯域化(高分解能化)することもできる。本発明により得られる上記の高分解能な検波信号も使用できる。それらの動きの計測精度も向上する。即ち、本発明は、任意のコヒーレント又はインコヒーレント信号に適用される。
上記のコヒーレント信号やインコヒーレント信号を用いたイメージングや動き等計測は、上記の例等を含めて様々な分野で行われ、非常に長い歴史があるが、本発明による非線形効果を用いて、高周波又は低周波を含む広帯域な高分解能且つ高コントラストなイメージングを行うことや、高精度に変位等を計測することは、有効且つ有用である。多次元信号処理ならではの工学的効果のあることを含めて有効である。また、治療等の上記の他の応用において、非線形効果のイメージングに基づいてその効果を評価して応用することも有効且つ有用である。
イメージング装置において、乗算又は冪算を施して高調波成分とベースバンデッド信号(上記の新しい検波信号)を生成し、それらに基づいて画像信号を生成することは、有用であるが、乗算と冪算に限らずに高次の非線形処理を実施した場合においても同効果が得られる。コスト等の兼ね合いで、従来技術と選択的に採用されたり、又は、併用されることがある。
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、当該技術分野において通常の知識を有する者によって、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。