JP2017104017A - 低電解質野菜の栽培方法、低電解質野菜、養液栽培用肥料および養液栽培用培養液 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1〜3には、収穫後のレタス中に含まれるカリウム量が約100mg/100g(約1000ppm)〜約200mg/100g(約2000ppm)となるようにレタスを栽培することができる方法が開示されている。
また、低電解質野菜の栽培方法に用いられる養液栽培用培養液、および低電解質野菜の栽培方法に用いられる養液栽培用肥料を提供することを目的とする。
第1発明の低電解質野菜の栽培方法は、養液栽培で野菜を栽培する方法であって、栽培ベッドに定植した前記野菜の苗を、カリウムおよびカルシウムを実質的に含有しない脱電荷質培養液を用いた脱電荷質栽培工程により栽培することを特徴とする。
第2発明の低電解質野菜の栽培方法は、第1発明において、前記脱電解質培養液は、窒素濃度が、35mg/l〜75mg/lとなるように調整したものであることを特徴とする。
第3発明の低電解質野菜の栽培方法は、第1または第2発明において、前記脱電荷質栽培工程に先立って、成苗工程により、前記野菜の苗をある程度の大きさに栽培する方法であり、前記成苗工程は、窒素と、リンと、カリウムと、カルシウムと、マグネシウムと、を主成分とする成苗用培養液を用いて前記野菜の苗を栽培することを特徴とする。
第4発明の低電解質野菜の栽培方法は、第3発明において、前記成苗工程の栽培期間を、前記脱電荷質栽培工程の栽培期間で除した値の栽培期間比が、1.0よりも小さくなるように調整することを特徴とする。
第5発明の低電解質野菜の栽培方法は、第1、第2、第3発明または第4発明において、前記野菜が、レタスであり、前記脱電解質栽培工程の栽培期間が、14日間〜21日間であることを特徴とする。
第6発明の低電解質野菜の栽培方法は、第3、第4発明または5発明において、前記野菜が、レタスであり、前記成苗工程の栽培期間が、7日間〜21日間であることを特徴とする。
(野菜)
第7発明の低電解質野菜は、第1発明乃至第6発明のいずれかに記載の方法で栽培された野菜であり、該野菜は、カリウム含有量が60mg/100g以下となるように調整されたものであることを特徴とする。
第8発明の低電解質野菜は、第7発明において、前記野菜は、カルシウム含有量が30mg/100g以下となるように調整されたものであることを特徴とする。
(肥料)
第9発明の養液栽培用肥料は、第1発明乃至第6発明のいずれかに記載の脱電荷質培養液に用いられる肥料であり、該肥料は、窒素と、リンと、マグネシウムと、を主成分とするものであり、カリウムおよびカルシウムを実質的に有しないように調整したものであることを特徴とする。
第10発明の養液栽培用肥料は、第9発明において、前記肥料は、前記主成分の窒素が、前記主成分の合計質量に対して、3質量%〜35質量%となるように配合したものであることを特徴とする。
(培養液)
第11発明の養液栽培用培養液は、第1発明乃至第6発明のいずれかに記載の脱電荷質培養液に用いられる培養液であり、該培養液は、カリウムおよびカルシウムを実質的に含有しないものであることを特徴とする。
第12発明の養液栽培用培養液は、第11発明において、前記培養液は、窒素濃度が、35mg/l〜75mg/lとなるように調整したものであることを特徴とする。
第2発明によれば、窒素濃度が所定の濃度となるように調整されているので、かかる培養液を用いて野菜を栽培すれば、かかる野菜の大きさが適切な大きさとなるように栽培することができる。
第3発明によれば、成苗工程により苗をある程度の大きさとなるように栽培するので、ある程度のストレスに対応できる苗を栽培することができる。このため、かかる苗をより適切に栽培することができる。すると、次工程におけるストレスにより適切に対応可能な苗を栽培することができる。
第4発明によれば、栽培期間比が所定の値となるように調整することにより、カリウムの含有量が、従来の栽培方法で栽培された野菜に比べて非常に低い含有量の野菜を適切に栽培することができる。
第5発明によれば、カリウムの含有量が低いレタスを確実に栽培することができる。
第6発明によれば、レタスの大きさをより適切な大きさとなるように栽培することができる。
(野菜)
第7発明によれば、カリウムの含有量が非常に低い野菜を供給することができる。このため、かかる野菜を、腎臓に障害がある人の食事療法用の生野菜として供給することができるようになるので、かかる人の食生活を充実したものにすることができる。
第8発明によれば、カルシウムの含有量が低い野菜を供給することができる。このため、かかる野菜を低カルシウム食が必要とされている一部の甲状腺機能障害を有する人の治療食用の生野菜として供給することができるので、かかる人の食生活を充実したものにすることができる。
(肥料)
第9発明によれば、肥料がカリウムおよびカルシウムを配合していないので、所定の栽培時期にかかる肥料を用いて野菜を栽培すれば、カリウムおよびカルシムの含有量が低い野菜を栽培することができる。このため、かかる野菜を、腎臓や一部の甲状腺機能に障害を有する人の食事療法用の生野菜として採用することが可能となる。すると、このような疾患を有する人の食生活を充実したものにすることができる。
第10発明によれば、窒素量が所定の濃度となるように配合しているので、かかる肥料を用いて野菜を栽培すれば、かかる野菜の大きさが適切な大きさとなるように栽培することができる。
(培養液)
第11発明によれば、カリウムおよびカルシウムを実質的に含有していないので、かかる培養液を用いて野菜を栽培すれば、カリウムおよびカルシムの含有量が低い野菜を栽培することができる。このため、かかる野菜を、腎臓や一部の甲状腺機能に障害を有する人の食事療法用の生野菜として採用することが可能となる。すると、このような疾患を有する人の食生活を充実したものにすることができる。
第12発明によれば、窒素濃度が所定の濃度となるように調整されているので、かかる培養液を用いて野菜を栽培すれば、かかる野菜の大きさが適切な大きさとなるように栽培することができる。
とくに、カリウムにおいては、従来の低カリウムの野菜を栽培する方法に比べて、カリウム含有量を大幅に低減した野菜を栽培できるようにしたことに特徴を有している。
本発明の低電解質野菜の栽培方法(以下、単に本栽培方法という)は、成苗工程と、脱電荷質栽培工程と、を備えた栽培方法である。
以下では、本栽培方法の各工程を詳細に説明する前に、各工程の概略について説明する。
まず、本栽培方法の成苗工程の概略について説明する。
本栽培方法の成苗工程は、野菜の成長に必要とされる主要元素(例えば、窒素、リン、カリウム、やカルシウム等)を含有した培養液が入った水耕栽培用の栽培ベッドにリーフレタスの苗(例えば、本葉が2〜3枚程度で、重量が1g程度の幼苗)を定植し、かかる苗がある程度の大きさ(例えば、本葉が5〜6枚程度であり、重量が20g〜30g程度の大きさの成苗)になるまで栽培する工程である。
なお、成苗工程で使用する培養液中に含まれる主要元素は、野菜の成長に必要とされているものであれば、とくに限定されない。詳細は後述する。
ついで、成苗工程によってある程度の大きさまで栽培したリーフレタスを本栽培方法の脱電荷質栽培工程により栽培する。
この脱電荷質栽培工程では、実質的にカリウムおよびカルシウムを含有しない培養液を使用してリーフレタスを栽培する。つまり、脱電荷質栽培工程では、リーフレタスに対してカリウムおよびカルシウムを供給することなく栽培する工程である。言い換えれば、脱電荷質栽培工程でリーフレタスを栽培することにより、成苗工程においてリーフレタスが体内に吸収したカリウムおよびカルシウムを消費させることができる。詳細は後述する。
このため、従来、腎臓に重度の障害があり、生の野菜を全く食することができなかった人でも、本栽培方法で栽培したリーフレタスであれば、サラダとして生で食することができるようになる。すると、本栽培方法で栽培したリーフレタスを市場に供給することによって、このような人たちの食生活を豊かにすることができるようになる。つまり、かかるリーフレタスを供給することによって、腎臓に障害を有する人の食事療法用の生野菜として採用することが可能となるので、このような疾患を有する人の食生活を充実したものにすることができるようになる。
本栽培方法の成苗工程は、上述したように野菜の成長に必要とされる主要元素を含む培養液を用いてリーフレタスを栽培する工程である。
窒素を含む化合物としては、Ca(NO3)2・4H2O、KNO3などの硝酸体窒素化合物、リンを含む化合物としては、NH4H2PO4などのリン酸化合物、カリウムを含む化合物としては、KNO3などのカリウム塩、カルシウムを含む化合物としては、Ca(NO3)2・4H2Oなどのカルシウム塩、マグネシウムを含む化合物としては、MgSO4・7H2Oなどのマグネシウム塩、を挙げることができるが、上記元素を含有するものであれば、上記化合物に限定されないのは言うまでもない。
例えば、成苗用原液肥料を250倍に希釈した場合、成苗培養液に含まれる各元素濃度は、例えば、窒素(98.6mg/l)、リン(42mg/l)、カリウム(192.9mg/l)、カルシウム(92mg/l)およびマグネシウム(24mg/l)となるように調整することができる。
つぎに、本栽培方法の脱電荷質栽培工程について説明する。
このため、従来の栽培方法では、培養液からカルシウムを除去するということは全く想定されない方法である。
したがって、脱電解質用混合肥料中の窒素の配合割合は、上記のごとき範囲内となるように調整するのが好ましい。
なお、窒素を含む化合物は、上述したように3種類の化合物を混合したものを使用してもよいし、それぞれを単独で使用してもよいし、もちろん上述した化合物以外の上記機能を有する化合物を使用してもよい。
例えば、ある脱電荷質用原液肥料を165倍に希釈すれば、窒素、リン、そしてマグネシウムがそれぞれ、71.3mg/l、72mg/l、152.4mg/l、含まれた脱電荷質培養液を調製することができる。
したがって、リーフレタスが適切な大きさ(例えば、市場で求められる程度のサイズ)となるように栽培しつつ、外観上の品質を維持する上では、電荷質培養液中の窒素濃度が上記の範囲内となるように調整するのが好ましい。
そして、N/R比の値を約0.7以下となるように調整すれば、カリウム含有量が約85mg/100g以下のリーフレタスを栽培することができ、N/R比の値を約0.6以下となるように調整すれば、カリウム含有量が約60mg/100g以下のリーフレタスを栽培することができる。
さらに、N/R比の値を約0.55以下となるように調整すれば、カリウム含有量が約50mg/100g以下のリーフレタスを栽培することができる。
しかも、N/R比を調整することによって、リーフレタス中のカリウムの含有量を調整できるので、供給先に応じた(例えば、腎臓の障害が重い人用と軽い人用)リーフレタスを栽培することができるようになる。つまり、リーフレタスの品質(とくに成分品質)の自由度をより向上させることができる。
成苗工程によりある程度の大きさまで栽培されたリーフレタスの苗(成苗)は、定植したての苗(幼苗)に比べて、ある程度のストレスに対して耐性を有するようになる。このため、次工程(脱電解質栽培工程)において、ストレス(カリウムおよびカルシウムが供給されない環境下)を付与した場合であっても、適切に対応することができる。具体的には、このようなストレス環境下で栽培しても、通常の栽培工程と同様に株を大きくすることができる。
つまり、脱電解質栽培工程に先立って、成苗工程により栽培ベッドに定植したリーフレタスの幼苗を栽培すれば、脱電解質栽培工程に耐え得る成苗を栽培することができるのである。
したがって、リーフレタスの苗をある程度の大きさまで成長させるという観点から、栽培期間Nの日数は、上記範囲内とするのが好ましい。
このため、脱電解質栽培工程の栽培期間Rは、リーフレタスの成長を考慮した場合、リーフレタスの成長が停滞する期間よりも短くするのが好ましい。
例えば、リーフレタス等の野菜を粉砕等した粉砕物を所定の溶媒を用いて抽出した後、各種分析機器を用いればリーフレタス等の野菜中に存在する所望の成分を測定することができるが、かかる方法に限定されないのは言うまでもない。
また、分析機器として、例えば、分光光度計や、各種クロマトグラフなどを用いれば、成分濃度等をより精度よく測定することが可能となる。
なお、上述した方法では、成苗工程と脱電解質栽培工程を順に行う場合について説明したが、成苗工程を行わず、定植後のリーフレタスの苗を脱電解質栽培工程により栽培してもよい。この場合、栽培工程を少なくできるので、作業性を向上させることが可能となる。しかも、リーフレタス中のカリウム含有量が非常に低いリーフレタスを栽培することができる(図2参照)。一方、先行して成苗工程でリーフレタスの苗を栽培した場合に比べて、収穫時のリーフレタスの重量が小さくなる傾向にあるので、所望の大きさのリーフレタスを栽培する場合には、成苗工程を採用するのが好ましい。
遷移栽培工程としては、例えば、成苗工程と脱電解質栽培工程の両者間のほぼ中間濃度の培養液の栽培する工程としてもよいし、単なる水のみで栽培する工程であってもよい。また、収穫直前の栽培工程としては、例えば、数日間水だけで栽培する工程としてもよい。
実験2では、脱電解質栽培工程用の培養液の窒素濃度と野菜中のカリウム含有量との関係を確認した。
実験3では、成苗工程の栽培期間と脱電荷質栽培工程の栽培期間との関係を確認した。
実験1では、脱電解質栽培工程用の培養液のカリウムの濃度を低下させただけの栽培方法では野菜中のカリウム含有量が所望の値よりも低下しないことが確認できた。
実験では、リーフレタス(横浜植木株式会社製、品種;ノーチップ)を使用した。
リーフレタスは、播種した後、14日間栽培して、本葉が2枚〜3枚、重量が約1gに生育した苗を栽培ベッドに定植して実験に供した。なお、リーフレタスの重量は、根を含む新鮮重量gで評価した。
主要元素として、窒素(硝酸カリウムと硝酸カルシウムの混合物を2.465kg)、リン(リン酸アンモニウム1.05kg)、カリウム(硝酸カリウム4.823kg)、カルシウム(硝酸カルシウム2.3kg)、およびマグネシウム(硫酸マグネシウム0.6kg)を配合したものに100Lの水を加えて溶解または懸濁して、成苗工程用の原液肥料を調製した。
この成苗工程用の原液肥料中の主要元素濃度は、窒素(26.15g/L)、リン(10.5g/L)、カリウム(48.23g/L)、カルシウム(23.0g/L)、およびマグネシウム(6.0g/L)であった。
そして、この成苗工程用の原液肥料を水で250倍に希釈して成苗工程用の培養液を調製した。
この成苗工程用の培養液中の主要元素濃度は、窒素(98.6mg/L)、リン(42mg/L)、カリウム(192.9mg/L)、カルシウム(92mg/L)、およびマグネシウム(24mg/L)であった。
この原液肥料A中の主要元素濃度は、窒素(4.6g/L)、リン(12g/L)、カリウム(3.6g/L)、カルシウム(0g/L)およびマグネシウム(44.8g/L)であった。
そして、この原液肥料Aを水で100倍に希釈して脱電荷質栽培工程用の培養液aを調製した。
この培養液a中の主要元素濃度は、窒素(46mg/L)、リン(120mg/L)、カリウム(36mg/L)、カルシウム(0mg/L)およびマグネシウム(448mg/L)であった。つまり、培養液a中のカリウム濃度が、成苗工程用の培養液中のカリウム濃度の約5分の1となるように調整した。
一方、培養液bは、カリウムおよびカルシウムを配合しない以外は、培養液aと同様に操作して以下のように調製した。
培養液b:窒素(9.9mg/L)、リン(54mg/L)、およびマグネシウム(228.6mg/L)であった。
試験が終了したリーフレタスを根ごと採取したのち、純水で洗浄後、可食部を分析に供した。なお、可食部中のカリウムおよびカルシウムの分析は、食品表示基準(原子吸光光度法)に準拠して行った。
また、可食部中のカリウムおよびカルシウムの含有量は、可食部100g当りに含まれるカリウムおよびカルシウムの質量mgで算出した。
培養液aで栽培したリーフレタス中のカリウム含有量は、200mg/100gであった。また、培養液bで栽培したリーフレタス中のカリウム含有量は、平均163mg/100g(最も低いもので120mg/100g)であった。
実験2では、脱電解質栽培工程用の培養液の窒素濃度を調整することにより、野菜中のカリウム含有量を調整することができることが確認できた。
なお、本実験の培養液bは(実験1)で調製した培養液bを使用した。つまり、実験2では、培養液中の窒素濃度が培養液bから培養液hの順に徐々に濃度が高くなるように調製した。
培養液bは、窒素(9.9mg/L)、リン(54mg/L)、およびマグネシウム(228.6mg/L)、
培養液cは、窒素(17.6mg/L)、リン(96mg/L)、およびマグネシウム(203.2mg/L)、
培養液dは、窒素(35.2mg/L)、リン(108mg/L)、およびマグネシウム(228.6mg/L)、
培養液eは、窒素(39.3mg/L)、リン(84mg/L)、およびマグネシウム(177.8mg/L)、
培養液fは、窒素(49.3mg/L)、リン(84mg/L)、およびマグネシウム(177.8mg/L)、
培養液gは、窒素(66.9mg/L)、リン(48mg/L)、およびマグネシウム(101.6mg/L)、
培養液hは、窒素(71.3mg/L)、リン(72mg/L)、およびマグネシウム(152.4mg/L)、となるように調整した。
図1の実線グラフに示すように、脱電荷質栽培工程用の培養液中の窒素濃度を高くすれば、リーフレタスの重量を増加させることができることが確認できた。とくに、窒素濃度を40mg/L以上とすれば、リーフレタスの重量を急激に増加させることができることが確認できた。
一方、図1の破線グラフに示すように、リーフレタスの重量が増加に伴い、リーフレタス中のカリウム含有量も低減することが確認できた。
しかし、リーフレタスの重量増加の停滞(図1では、実線グラフにおいて、リーフレタスの重量が約90g付近)に比例するようにリーフレタス中のカリウム含有量の低下も停滞(図1では、破線グラフにおいて、カリウム含有量約110mg/100g近傍)することが確認できた。
実験3では、成苗工程の栽培期間と脱電荷質栽培工程の栽培期間を調整することによって、所望の重量を維持しつつ、野菜中のカリウム含有量が所定の値よりも低い野菜を栽培することができることが確認できた。
また、生理障害(チップバーン)を発症することなく、野菜中のカルシウム含有量が所定の値よりも低い野菜を栽培することができることが確認できた。
また、本実験の成苗工程で使用した培養液は、(実験1)で調製した通常栽培用の培養液を使用した。
そして、本実験の脱電解質栽培工程用の培養液は、(実験2)で調製した培養液hを使用した。
成苗工程の栽培期間を14日間と固定し、脱電荷質栽培工程の栽培期間を14日間、21日間、25日間と変動させてリーフレタスを栽培した場合、14日間ではカリウム含有量が110mg/100g、21日間ではカリウム含有量が82mg/100g、25日間ではカリウム濃度が85mg/100gであった。
また、リーフレタス中のカルシウム含有量は、脱電荷質栽培工程の栽培期間が14日間では29mg/100g、25日間では29mg/100gであった。
図2のグラフは、X軸をN/R比、Y軸をリーフレタス中のカリウム含有量(mg/100g)として作成した。
N/R比は、成苗工程の栽培期間と脱電荷質栽培工程の栽培期間をそれぞれNとRと定義し、この栽培期間Nの日数を栽培期間Rで除して算出した。
そして、N/R比の値が0.9以下となるように栽培することによって、リーフレタス中のカリウム含有量が約100mg/100gよりも低く、カルシウム含有量が約30mg/100g以下のリーフレタスを栽培することができることが確認できた。つまり、N/R比の値が0.9以下となるように栽培すれば、従来の低カリウム栽培では栽培することができない非常に含有量が低いリーフレタスを栽培できることが確認できた。
とくに、N/R比の値を0.7以下とすることによって、リーフレタス中のカリウム含有量が約85mg/100g以下とすることがき、N/R比の値を0.6以下とすれば、リーフレタス中のカリウム含有量が約60mg/100g以下とすることができ、N/R比の値を0.55以下とすれば、リーフレタス中のカリウム含有量が約50mg/100g以下とすることができることが確認できた。
さらに、成苗工程の栽培期間をゼロとした場合(N/R比がゼロの場合)、カリウムの含有量が従来技術では想定されないリーフレタス(カリウム含有量が約30mg/100g以下)を栽培することができることが確認できた。
このため、リーフレタスの収穫時における重量を出荷サイズの重量(例えば、100g程度)とする上では、成苗工程を設けることが好ましいことが確認できた。また、その栽培期間は、少なくとも数日間は確保するのが好ましいことが推察された。
つまり、リーフレタスが2倍以上に成長したにも関わらず、成長に伴うリーフレタス中のカリウム含有量の増加を抑制できることが確認できた。
一方、脱電荷質栽培工程の栽培期間を21日間よりも長くしてもリーフレタス中のカリウム含有量の低減率は向上し難いことが確認できた。
成苗工程の栽培期間を7日間とした場合、リーフレタス中のカルシウム濃度を一般のリーフレタス中のカルシウム含有量(58mg/100g(五訂増補日本食品標準成分表参照))に比べて非常に低減させることができることが確認できた。しかも、リーフレタスの外観観察では、チップバーンは全く確認されなかった。
そして、リーフレタスの重量を確保する上では、成苗工程の栽培期間を0日間よりも長くすることが望ましい。
したがって、両者つまり、リーフレタスの重量を確保しつつ、リーフレタス中のカリウム含有量および/またはカルシウム含有量を低減させる上では、成苗工程の栽培期間を0日間よりも長くかつ14日間以下とし、しかも脱電荷質栽培工程の栽培期間を14日間以上21日間よりも短くすることが好ましいことが確認できた。
Claims (12)
- 養液栽培で野菜を栽培する方法であって、
栽培ベッドに定植した前記野菜の苗を、カリウムおよびカルシウムを実質的に含有しない脱電荷質培養液を用いた脱電荷質栽培工程により栽培する
ことを特徴とする低電解質野菜の栽培方法。 - 前記脱電解質培養液は、
窒素濃度が、35mg/l〜75mg/lとなるように調整したものである
ことを特徴とする請求項1記載の低電解質野菜の栽培方法。 - 前記脱電荷質栽培工程に先立って、成苗工程により、前記野菜の苗をある程度の大きさに栽培する方法であり、
前記成苗工程は、
窒素と、リンと、カリウムと、カルシウムと、マグネシウムと、を主成分とする成苗用培養液を用いて前記野菜の苗を栽培する
ことを特徴とする請求項1または2記載の低電解質野菜の栽培方法。 - 前記成苗工程の栽培期間を、前記脱電荷質栽培工程の栽培期間で除した値の栽培期間比が、1.0よりも小さくなるように調整する
ことを特徴とする請求項3記載の低電解質野菜の栽培方法。 - 前記野菜が、レタスであり、
前記脱電解質栽培工程の栽培期間が、14日間〜21日間である
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の低電解質野菜の栽培方法。 - 前記野菜が、レタスであり、
前記成苗工程の栽培期間が、7日間〜21日間である
ことを特徴とする請求項3、4または5記載の低電解質野菜の栽培方法。 - 請求項1〜6記載のいずれかの方法で栽培された野菜であり、
該野菜は、
カリウム含有量が60mg/100g以下となるように調整されたものである
ことを特徴とする低電解質野菜。 - 前記野菜は、
カルシウム含有量が30mg/100g以下となるように調整されたものである
ことを特徴とする請求項7記載の低電荷質野菜。 - 請求項1〜6に記載の脱電荷質培養液に用いられる肥料であり、
該肥料は、
窒素と、リンと、マグネシウムと、を主成分とするものであり、
カリウムおよびカルシウムを実質的に有しないように調整したものである
ことを特徴とする養液栽培用肥料。 - 前記肥料は、
前記主成分の窒素が、前記主成分の合計質量に対して、3質量%〜35質量%となるように配合したものである
ことを特徴とする請求項9記載の養液栽培用肥料。 - 請求項1〜6に記載の脱電荷質培養液に用いられる培養液であり、
該培養液は、
カリウムおよびカルシウムを実質的に含有しないように調整されたものである
ことを特徴とする養液栽培用培養液。 - 前記培養液は、
窒素濃度が、35mg/l〜75mg/lとなるように調整したものである
ことを特徴とする請求項11記載の養液栽培用培養液。
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2015
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