JP2017099366A - 動物による食害防止支柱 - Google Patents

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真司 原
Shinji Hara
真司 原
純大 井上
Sumihiro Inoue
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Abstract

【課題】定植後の樹木苗等の苗に対する動物による食害を、より簡便かつ効果的に防ぐための資材及び方法を与える。
【解決手段】植物苗に対する動物による食害を防ぐための資材であって、
(1)2つ以上の保護部、及び
(2)該保護部を据え付けるための支柱を具備し、
前記2つ以上の保護部は前記支柱における相互に異なる高さの位置に据え付けられている、資材。
【選択図】図1

Description

本発明は定植後の樹木苗等の苗に対する動物による食害を防ぐための資材及び方法に関する。
野外では、定植後の樹木苗等の苗に対するシカ、イノシシ、ウサギ、野鼠等の動物による食害から苗を保護する必要がある。かかる必要性を充足することを指向した技術についての報告がなされている。
かかる技術として、
(a)樹脂等からなる筒で苗を覆うことにより、苗を保護するもの(特許文献1〜5)、及び
(b)苗の頂端部にピンを付けて、苗の先端部を保護する(非特許文献1)、
といったものがある。
実登3009585号公報 特開2013−42720号公報 特開平11−9119号公報 特許第3343736号公報 実登3104682号公報
TS-HOLZ社ホームページ(アドレス:http://www.ts-holz.com/)
しかしながら従来技術である筒状の資材を用いる場合には、以下のような問題がある:
・該筒状の資材は地表面から苗木を保護しようとする高さ程度の長さを有するものなければならない。シカの被害を防ぐことを企図する場合には大型(約1.4m程度)で、しかも重量が大きくなる。このような大型重量物が対象となるため、運搬作業は重労働にならざるを得ない。しかも運搬作業は設置の際と回収の際との2回行われるため、作業負担は倍加される。
・苗の植栽後に筒を設置するが、苗の上から苗を傷つけないように筒をかぶせるため作業が行いにくく、設置に相当の時間を要する。
・筒を被せられた後の苗は筒内から枝を出すことができず、また風の影響を受けずに育っているため重心が高くなり、筒を回収した後に苗が倒れやすい。
・樹木苗においては、筒内に落葉・落枝や舞い込んだ埃により、幹から気中根が発生することがある。気中根が発生してしまうと、幹の材としての価値が低下につながる。
また、苗の頂端部にピンを付けて苗の先端部を保護する方法においては、苗の成長に応じてピンを付け替える必要があるが、伸長成長が盛んな時期には、短期間でピン以上の長さ成長し、食害を受ける可能性があるといった問題がある。
したがって、本発明は、定植後の樹木苗等の苗に対する動物による食害を、より簡便かつ効果的に防ぐための支柱を含む資材及び方法を与えることを目的とする。
本発明者らは、上記課題の解決を指向して資材について研究を行ったところ、驚くべきことに筒を用いないより軽量で設置が簡易な資材により動物による食害を防ぐことができる可能性があることを見出し、さらに研究を進めた結果本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、少なくとも以下の発明に関する:
[1]植物苗に対する動物による食害を防ぐための資材であって、
(1)植物苗への動物の接近を妨げて植物苗を保護する、2つ以上の保護部、及び
(2)該2つ以上の保護部を据え付けるための支柱を具備し、
前記2つ以上の保護部は前記支柱における相互に異なる高さの位置に据え付けられている、資材。
[2]各保護部が、支柱の中心付近から略水平方向に放射状に延伸する、略等しい角度間隔で据え付けられた4つ以上の棘を備える、[1]に記載の資材。
[3]保護部が3つ、4つ又は5つ据え付けられている、[1]又は[2]に記載の資材。
[4]保護部のうち、最も低位にある保護部が地表面から10〜30cmの位置にあり、一つの保護部とその直上にある保護部との鉛直方向の間隔が10cm〜20cmである、[1]〜[3]のいずれかに記載の資材。
[5]最上位の保護部が地表面から60〜180cmの位置にある[1]〜[4]のいずれかに記載の資材。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の資材を用いる、植物苗に対する動物による食害を防ぐ方法。
[7]植物苗がスギ、ヒノキ又はカラマツの苗であり、シカによる食害を防ぐための、[6]に記載の方法。
本発明によれば、定植後の樹木苗等の苗に対する動物による食害を、より簡便かつ効果的に防ぐことができる。
より具体的には、本発明の方法においては筒を用いず、よりコンパクトで運搬及び設置が容易な部材を用いるため、運搬・設置の手間が大幅に軽減され従事者は重労働から解放される。
また、頂端部への部材の移動が不要であるため、ピンを用いる方法におけるピンを移動する手間がかかる問題点も解消される。
さらに本発明によれば、設置における作業効率が著しく向上するため、設置に要するコストを大幅に軽減することもできる。
さらにまた本発明によれば、本資材を設置後も苗は外気に晒されるので、筒を用いる場合に生じる、資材を撤収した後に苗が倒れたり気中根が発生するといった問題も生じない。
本発明の資材の一例を示す、斜め方向からの写真図である。 本発明の資材の一例の全体を示す写真図である。図示の関係上、資材はほぼ水平方向に置いてある。巻尺はスケールを示す目安にすぎないものであって、本発明の資材の構成要素ではない。 スギ苗に設置された本発明の資材の一例を示す写真図である。巻尺はスケールを示す目安にすぎないものであって、本発明の資材の構成要素ではない。 本発明の資材における保護部の例の平面図である。 本発明の資材の使用方法の例を示す模式図である。
以下に本発明についてさらに詳細に説明する。
資材
前記のとおり、本発明は以下の資材に関する:
植物苗に対する動物による食害を防ぐための資材であって、
(1)植物苗への動物の接近を妨げて植物苗を保護する、2つ以上の保護部、及び
(2)該2つ以上の保護部を据え付けるための支柱を具備し、
前記2つ以上の保護部は前記支柱における相互に異なる高さの位置に据え付けられている、資材(図1及び2)。
本発明の資材をスギ苗を保護するために設置した例を図3に示す。
本発明の資材が用いられる、食害を軽減すべき対象となる動物は、典型的には偶蹄類(シカ、カモシカ、イノシシ等)及び/又はげっ歯類(ウサギ、ネズミ等)である。本発明の資材のうち、シカ及びカモシカによる食害を軽減できるものは好ましい。
以下に本発明の資材の各部材(保護部及び支柱)について、適宜図面を参照しながら説明する。
(ア)保護部
保護部2は、植物苗への動物の接近を妨げて植物苗を保護する部位である(図1及び2)。保護部は本発明の資材1の1つあたり少なくとも2つ必要であり、対象とする動物の種類に応じてその個数を改変してよい。
保護部の大きさを、その周縁部が、苗の保護するべき箇所全体に届く大きさにすることは好ましい。例えば図3に示すように、苗の各部のうち頂部を保護する場合や頂部及び頂部近傍を中心に保護する場合には、これらの部位が水平方向に広がっている範囲全体をカバーするような大きさの保護部2を用いることは好ましい。また、苗全体を保護する場合、保護部の最小部位の幅は約24cm〜約50cmとすることは好ましい。
保護部の支柱2への据え付けは、保護部の中心付近を支柱2に通すことにより行ってよい(図1及び2)。最上部に位置する保護部を、苗が、保護が必要な大きさ以上に成長した際に苗の頂部が到達する高さのやや上方付近の高さに据え付けることは、苗の頂芽に対する食害を確実に防ぐことができるため好ましい。当該高さは、例えばシカを対象とする場合には約60cm〜約180cmである。
最も低位に位置する保護部の位置は限定されず、例えば約10cm〜約30cmとしてよい。小型の動物を対象とする場合には比較的低く、中型〜大型の動物を対象とする場合にはより高めにすることは好ましい。当該高さは、例えばシカを対象とする場合には約20cm〜約30cmである。
各保護部の鉛直方向の間隔はとくに限定されず、例えば約10cm〜約20cmとしてよい。また、各保護部の鉛直方向の間隔は、各部位について同一でなくてもよい。
本発明の資材1つあたりの保護部の個数は2つ以上であれば限定されない。当該個数は、小動物(ウサギ及びネズミ等)を対象とする場合は2つであってよく、中型又は大型の動物(シカ、カモシカ又及びイノシシ等)を対象とする場合は鉛直方向に広い範囲を保護する必要があるため、3つ以上6つ以下、すなわち3つ、4つ、5つ又は6つであることは好ましい。
保護部の形状、大きさ、厚み、強度、色等は、植物苗への動物の接近を妨げて植物苗を保護することができ、かつ苗の生育を阻害しないものであれば限定されない。
保護部についての上記各要素のうち、形状としては中心から放射状に、略水平方向に延伸する3つ以上の棘(突起)を有する形状及び多角形又はこれらに近似する形状が挙げられる。これらのうち、中心から放射状に延伸する4つ以上の棘を有する形状は好ましく、図4にその例を示した。このように隣接する棘同士が略等しい角度をなすように各棘を配置することは好ましい。また、各保護部の配置を、棘が鉛直方向の同じ位置にないようにする(縦方向に整列していない)ように配置することは好ましい(図1)。
なお、放射状に延伸する棘は、必ずしも全周に存在していなくてもよく、例えば半周程度にのみ存在するものであってよい。放射状に延伸する棘を有する保護部により苗全体を保護する場合、棘の長さは約12cm〜約25cmとすることは好ましい。
保護部の強度及び厚みは、保護が必要な期間に亘り、動物や風雨等の自然現象により加えられる物理的な力、あるいは化学的な作用(紫外線等)に耐えるものが好ましい。強度に関連する素材として、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂やポリ乳酸、酢酸セルロース及びポリ酢酸セルロース等の生分解性プラスチックは好ましい。生分解性プラスチックとして、耐候剤を含有せしめて形状が保持される期間を5年程度にしたものはより好ましい。耐候剤として紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が挙げられ、紫外線吸収剤としてベンゾフェノン類を、紫外線散乱剤として酸化チタン及び酸化亜鉛等を用いてよい。
また、保護部の色は限定されないところ、対象とする動物を忌避する効果を有する色の存在が明らかである場合には、当該色を採用することは好ましい。
(イ)支柱
本発明の資材に用いられる支柱2(図1〜3)は、保護部を据え付け、固定する部位である。
支柱の長さ、太さ、強度及び材質は、保護部を据え付け固定することが可能であり、保護部と一体として植物苗への動物の接近を妨げて植物苗を保護する効果を奏するものであれば限定されない。
支柱の長さは、地中に埋め込まれる長さ(約10cm〜約50cm)及び最上位の保護部が据え付けられる地表面からの高さを勘案して適宜決定してよい。例えばシカを対象とする場合には、支柱の長さは約70cm〜約220cmである。運搬のしやすさの観点からは、支柱の長さとして約70cm〜約180cmは好ましい。
支柱の太さは、保護部を据え付ける際の簡便性や設置の容易さ及び設置後の安定性等を勘案して適宜決定してよい。支柱の太さ(最大径)は、例えば約0.8cm〜約1.5cmである。
支柱の材質の例として、ポリプロピレン、ポリエチレン、スチール及び木などが挙げられる。
また支柱の形状は限定されない。支柱の形状として、細長棒状は保護部の据え付けが容易であり、また苗の生育を阻害しないため好ましい。支柱の形状は材質固有の強度により許容されれば管状であってよく、例えば鋼管であってよい。
(ウ)適用範囲
本発明の資材が適用される植物種は限定されず、例として木本性及び草本性の植物が挙げられる。
木本性の植物として、スギ、ヒノキ、クロマツ、カラマツ、エゾマツ等の針葉樹、ミズキ、サクラ、シイ、カシ、カエデ、コナラ、ハンノキ、ヤナギ、キョウチクトウ、バラ等の広葉樹、その他主として海外で植林される樹種であるアカシア、ユーカリ等が例示される。
草本性の植物として、ベゴニア、ゼラニウム、カーネーション、キク等の花卉類、トマト、キュウリ、セイジ等の野菜類が例示される。
本発明の資材が適用される場所もとくに限定されず、山林、畑、果樹園及び公園等が挙げられる。
本発明の資材のうち、山林に定植されたスギ、ヒノキ及びカラマツといった樹木の苗に対する、シカ、カモシカ及びイノシシ等の偶蹄類ならびに/又はウサギ及びネズミ等のげっ歯類による食害を軽減できるものは好ましい。
本発明の方法
本発明の方法について、以下に説明する。
本発明の方法においては基本的に上記本発明の資材が用いられる。その手順は、下記A及びBの工程からなる:
A.保護対象である苗の直近の部位(例えば半径約3cm〜約5cm以内の地表面)に、支柱を差し込んで設置する。
B.支柱に、保護部を挿入して据え付ける。
上記工程A及びBは、相互に前後してもよい。すなわち、支柱に、保護部を挿入して据え付け上記本発明の資材の形態とした後に、支柱を地表面に差し込んで設置してもよい。
支柱(本発明の資材)を地表面に差し込んで設置した後、支柱は苗と結び付けてもよい。
保護部の周縁部を、苗の保護するべき箇所全体が周縁部(棘を有する場合はその先端部)が届く範囲内に収まるようにすることは好ましい。
また、保護部を、苗の保護するべき部位の高さに応じて据え付けることは好ましい。鉛直方向に広い範囲を保護する場合(中型〜大型の動物から保護する場合)には、3つ以上の保護部を据え付けることは好ましい。さらに、苗の将来的な成長を考慮して、設置時点の苗の高さよりも高い位置まで保護部を据え付けてもよい。
保護部は、支柱と一体でなくてもよく、相互に分離可能であってよい。保護部と支柱とが分離可能な場合、苗が成長し苗の先端部分(頂芽)のみを保護するステージに達した際、又は苗の先端部分の食害を重点として防ぐ場合に、苗の将来的な成長を勘案して、苗の下部に据え付けられているもはや必要でなくなった保護部を、取り外して最上部に移動して据え付けえることができる(図5)。
以下に本発明について実施例によりさらに詳細に説明する。本発明は、いかなる意味においても当該実施例に限定されるものではない。
本発明の資材の例として、保護部が棘を有する部材からなるものを図1〜3に示した。
本実施例において、棘の本数は保護部あたり6本であり、保護部の間の間隔は15cmである。
支柱として、市販の農業用の支柱を用いた。
(試験例)
・試験地
宮崎県東臼杵郡のスギ林
・試験日
2015年12月〜2016年8月又は9月
・保護部の設置
(1)長さ180cmの農業用の支柱1本に、プラスチックで作製した保護部(棘を6本ずつ備える)を4つ据え付けた。
(2)一番下の段の保護部は、地上から約25cmの高さに設置する(苗の高さは約30cm)。
(3)各保護部の間隔は15cmにして設置する(それぞれの地表面からのおよその距離は、25cm、40cm、55cm及び70cmとなる)。
(4)本発明の資材を設置する苗木の本数は合計25本とし、保護を行わない苗木の本数も25本とする。
(5)2x2mの間隔で50本のスギ苗を植栽した後、本発明の資材を上記(3)のように設置する。
・調査
各苗に対する食害(主としてシカによる)の程度を、試験開始約3ヵ月後から、約1月〜2月間隔で目視により調査する。調査結果を踏まえることにより、本発明の資材の効果が確認される。
本発明によれば、定植後の樹木苗等の苗に対する動物による食害を、より簡便かつ効果的に防ぐことができる。したがって、本発明は育苗産業及びその関連産業の発展に寄与するところ大である。
1・・・本発明の資材
2・・・保護部
3・・・支柱
4・・・苗

Claims (7)

  1. 植物苗に対する動物による食害を防ぐための資材であって、
    (1)植物苗への動物の接近を妨げて植物苗を保護する、2つ以上の保護部、及び
    (2)該2つ以上の保護部を据え付けるための支柱を具備し、
    前記2つ以上の保護部は前記支柱における相互に異なる高さの位置に据え付けられている、資材。
  2. 各保護部が、支柱の中心付近から略水平方向に放射状に延伸する、略等しい角度間隔で据え付けられた4つ以上の棘を備える、請求項1に記載の資材。
  3. 保護部が3つ、4つ又は5つ据え付けられている、請求項1又は2に記載の資材。
  4. 保護部のうち、最も低位にある保護部が地表面から10〜30cmの位置にあり、一つの保護部とその直上にある保護部との鉛直方向の間隔が10cm〜20cmである、請求項1〜3のいずれかに記載の資材。
  5. 最上位の保護部が地表面から60〜180cmの位置にある請求項1〜4のいずれかに記載の資材。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の資材を用いる、植物苗に対する動物による食害を防ぐ方法。
  7. 植物苗がスギ、ヒノキ又はカラマツの苗であり、シカによる食害を防ぐための、請求項6に記載の方法。
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