JP2017098163A - 多層膜の評価方法 - Google Patents

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Yosuke Azuma
遥介 東
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Yutaka Fujiwara
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永次 ▲高▼橋
永次 ▲高▼橋
Eiji Takahashi
弘幸 松▲崎▼
Hiroyuki Matsuzaki
弘幸 松▲崎▼
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Abstract

【課題】多層膜において各層の変化を非破壊で評価する方法を提供すること。【解決手段】本発明は、2つ以上の層からなる多層膜の評価方法であって、当該2つ以上の層を2つ以上の群に分けたそれぞれの参照用単層または多層膜で過渡吸収プロファイルを取得した場合に当該2つ以上の層を2つ以上の群に区別する測定条件における評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルを取得する工程と、取得した当該評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルを、別の、多層膜の過渡吸収プロファイルと比較する工程とを含む。【選択図】なし

Description

本発明は過渡吸収分光法を用いた有機多層膜の分析方法に関する。
様々な種類の半導体を積層した多層膜が、EL(エレクトロルミネセンス)および薄膜太陽電池等に幅広く利用されている。特に、有機半導体を用いたデバイスが近年活発に研究されている。しかしながら、一般的に、有機半導体には、無機半導体と比較して劣化しやすいという短所が存在する。有機デバイスにおける有機半導体膜の劣化の評価には様々な方法が利用されているが、従来の方法では特性劣化の原因を推定することが難しく、ショートやダークスポットの発生等の明らかな劣化部分の評価が主であった。
一方、ダークスポット等以外の部分における有機多層膜の劣化の評価方法の開発が、今までに幾つか試みられている。例えば、特許文献1には、電流−電圧特性から係数を求めることで、有機EL素子の劣化を電気的に評価する方法が記載されている。また、特許文献2には、有機膜に由来するラマン散乱の信号強度比と、デバイスの劣化状態の相関を利用し、有機EL素子の劣化を評価する方法が記載されている。
特開2000−348861号公報(2000年12月15日公開) 特開2011−19866号公報(2011年10月6日公開)
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、有機膜に起因する劣化であるか、回路または配線異常に起因するものかを特定することが困難である。また、特許文献2に記載の方法は、多層膜を構成する複数の層のうちの何れに起因しているかを特定することができないという問題がある。
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、多層膜において各層の変化を非破壊で評価する方法を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明は以下のものを提供する。
(1)2つ以上の層からなる多層膜の評価方法であって、上記2つ以上の層を2つ以上の群に分けたそれぞれの参照用単層または多層膜で過渡吸収プロファイルを取得した場合に上記2つ以上の層を2つ以上の群に区別する測定条件における評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルを取得する工程と、取得した上記評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルを、別の、多層膜の過渡吸収プロファイルと比較する工程とを含む、評価方法。
(2)取得した上記評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルにおける結果を、上記参照用単層または多層膜の過渡吸収プロファイルに基づいて、上記2つ以上の層のうちの少なくとも1つの層に帰属させる、(1)に記載の評価方法。
(3)上記測定条件は、励起光の波長、プローブ光の波長、および経過時間のうちの少なくとも1つである、(1)または(2)に記載の評価方法。
(4)上記評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルの取得は、上記評価対象の多層膜の一方の面からプローブ光を入射させ、上記評価対象の多層膜の他方の面から出射したプローブ光を検出することで行われる、(1)〜(3)の何れかに記載の評価方法。
(5)上記評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルの取得は、上記評価対象の多層膜の一方の面からプローブ光を入射させ、上記評価対象の多層膜の他方の面を覆う光反射性材料に反射されて上記評価対象の多層膜の一方の面から出射したプローブ光を検出することで行われる、(1)〜(3)の何れかに記載の評価方法。
(6)上記評価対象の多層膜は、有機材料からなる、(1)〜(5)の何れかに記載の評価方法。
(7)上記評価対象の多層膜は、3つ以上の層からなる、(1)〜(6)の何れかに記載の評価方法。
(8)多層膜の劣化を評価するためのものである、(1)〜(7)の何れかに記載の評価方法。
本発明は、多層膜において各層の変化を非破壊で評価することができるという効果を奏する。
本発明の実施例における各単層膜の吸収スペクトルを示す図である。 本発明の実施例における各単層膜の過渡吸収スペクトルおよび過渡吸光度の時間プロファイルを示す図である。 本発明の実施例における多層膜の近赤外領域における過渡吸収スペクトルを示す図である。 本発明の実施例における多層膜の過渡吸光度の時間プロファイルを示す図である。 本発明の実施例における多層膜の吸収スペクトルを示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
(本発明の概要)
本発明に係る評価方法は、2つ以上の層からなる多層膜の評価方法であって、当該2つ以上の層を2つ以上の群に分けたそれぞれの参照用単層または多層膜で過渡吸収プロファイルを取得した場合に当該2つ以上の層を2つ以上の群に区別する測定条件における評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルを取得する工程を含むことを特徴の1つとする。さらに、本発明に係る評価方法は、取得した上記評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルを、別の、多層膜の過渡吸収プロファイルと比較する工程を含むことを特徴の1つとする。
(多層膜)
本発明において評価対象となるのは、2つ以上の層からなる多層膜である。すなわち、2つ以上の層が積層された多層膜である。多層膜を構成する各層の材料は特に限定されない。有機材料であってもよいし、無機材料であってもよい。また、1つの層に複数の種類の材料が含まれていてもよい。各層には、可視〜近赤外光(特に多層膜の過渡吸収プロファイルを取得する際に用いる励起光の波長およびプローブ光の波長)における吸光度が非常に高い材料を含まないことが望ましい。多層膜の層の数は2つ以上であれば特に限定されないが、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10つ、または11つ以上であり得る。本発明では、後述の実施例で示されるように、3つ以上の層からなる多層膜であっても、各層の変化を良好に評価することができる。
多層膜における各層の厚さは、特に限定されないが、一例において、1nm〜100μmであり、5nm〜500nmであることが好ましく、50nm〜100nmであることがより好ましい。多層膜全体の厚さは、特に限定されないが、一例において、50nm〜500μmであり、100nm〜500nmであることが好ましく、100nm〜300nmであることがより好ましい。
多層膜は、片面または両面が光透過性材料で覆われていてもよい。光透過性材料としては、ガラス、プラスチックフィルム等が挙げられる。また、多層膜は、片面が光反射性材料で覆われていてもよい。光反射性材料としては、アルミニウム板、銅板、銀板、金板等の金属板、ナノペースト層等が挙げられる。なお、本明細書において、「光透過性材料」とは、例えば、400〜1400nmの波長の光を少なくとも一部(好ましくは全部)透過させる材料を指し、より具体的な一例では、多層膜の評価に利用する波長のプローブ光を少なくとも一部(好ましくは全部)透過させる材料を指す。本明細書において、「光反射性材料」とは、例えば、400〜1400nmの波長の光を少なくとも一部(好ましくは全部)反射させる材料を指し、より具体的な一例では、多層膜の評価に利用する波長のプローブ光を少なくとも一部(好ましくは全部)反射させる材料を指す。本明細書において、多層膜を覆う光透過性材料および光反射性材料は、多層膜の構成要素ではない。多層膜に光透過性材料および/または光反射性材料を設ける理由は特に限定されないが、例えば、多層膜が搭載されるデバイスにおいてこれら材料が設けられている場合もあり得るし、多層膜が薄く、扱いを容易にするためにこれら材料が設けられている場合もあり得る。例えば、光反射性材料である金属は、有機エレクトロニクスにおける電極であり得る。光透過性材料および光反射性材料は、多層膜の面の一部を覆っていてもよいし、多層膜の面の全部を覆っていてもよい。また、光透過性材料および光反射性材料は、多層膜に接触して直接覆っていてもよいし、別の部材を介して間接的に覆っていてもよい。
多層膜の作製方法の一例は、次のとおりである。まず、評価対象である多層膜の各層の材料を順番にガラス板に積層蒸着する。次いで、当該ガラス板と反対側に別のガラス板を設け、積層した多層膜を2枚のガラス板で封止する。積層蒸着は、例えば、公知の方法で行うことができる。
多層膜の作製方法の別の一例は、次のとおりである。まず、評価対象である多層膜の各層の材料を順番にガラス板に積層蒸着する。次いで、当該ガラス板と反対側に金属板を設け、積層した多層膜を1枚のガラス板と1枚の金属板とで封止する。
多層膜の用途は特に限定されない。
多層膜は、例えば、電極を備えるデバイスに含まれるものであり得る。あるいは、多層膜は、例えば、電極を備えない研究用素子に含まれるものであり得る。また、多層膜は、例えば、EL(エレクトロルミネセンス)、薄膜太陽電池、トランジスタ、電子ペーパー等の表示デバイス、センサー等の素子またはデバイスに搭載されるものであり得る。また、多層膜は、例えば、塗装用材料が積層したものであり得る。
(参照用単層または多層膜)
参照用単層または多層膜は、評価対象の多層膜を構成する2つ以上の層を2つ以上の群に分けて構成された膜である。すなわち、参照用単層または多層膜は、評価対象の多層膜を構成する2つ以上の層の一部の層からなる単層または多層膜である。「2つ以上の層を2つ以上の群に分けたそれぞれの参照用単層または多層膜」とは、評価対象の多層膜を構成する2つ以上の層を2つ以上の群に分け、1つの層からなる群では単層膜、2つ以上の層からなる群では多層膜としたものを指す。例えば、評価対象の多層膜が4つの層(層A〜D)からなる場合、「2つ以上の層を2つ以上の群に分けたそれぞれの参照用単層または多層膜」は、例えば、層Aからなる単層膜と層Bからなる単層膜と層Cからなる単層膜と層Dからなる単層膜との組み合わせ、あるいは層Aおよび層Bからなる多層膜と層Cおよび層Dからなる多層膜との組み合わせ、あるいは層Aからなる単層膜と層Bからなる単層膜と層Cおよび層Dからなる多層膜との組み合わせ、層Aからなる単層膜と層Bおよび層Cおよび層Dからなる多層膜との組み合わせ等であり得る。これらの単層または多層膜は、本発明に係る評価方法における評価対象ではなく、評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルを取得する測定条件を決定する際等に用いられる参照用である。
参照用単層膜は、評価対象の多層膜の対応する各層と同じ材料であれば、特に限定されない。単層膜の厚さは、特に限定されないが、一例において、10nm〜100μmであり、50nm〜500nmであることが好ましく、50nm〜100nmであることがより好ましい。一例において、参照用単層膜の厚さは、過渡吸光度の強度比較の観点から、評価対象の多層膜における対応する層の厚さと同一であることが好ましい。
参照用多層膜は、評価対象の多層膜の対応する各層と同じ材料であれば、特に限定されない。多層膜の厚さは、特に限定されないが、一例において、10nm〜500μmであり、50nm〜500nmであることが好ましく、50nm〜300nmであることがより好ましい。一例において、参照用多層膜の厚さは、過渡吸光度の強度比較の観点から、評価対象の多層膜における対応する層の厚さと同一であることが好ましい。
参照用単層または多層膜の片面または両面は、光透過性材料で覆われていてもよい。また、参照用単層または多層膜の片面は、光反射性材料で覆われていてもよい。光透過性材料および光反射性材料の説明ならびに覆い方の説明は上述のとおりである。評価対象の多層膜が光透過性材料および/または光反射性材料で覆われていている場合、より高い精度で評価する観点から、参照用単層または多層膜も同じ光透過性材料および/または光反射性材料で覆われていていることが好ましい。
参照用単層膜の作製方法の一例は、次のとおりである。まず、単層膜の材料をガラス板に蒸着する。次いで、当該ガラス板と反対側に別のガラス板を設け、参照用単層膜を2枚のガラス板で封止する。蒸着は、例えば、公知の方法で行うことができる。
参照用単層膜の作製方法の別の一例は、次のとおりである。まず、参照用単層膜の材料をガラス板に積層蒸着する。次いで、当該ガラス板と反対側に金属板を設け、参照用単層膜を1枚のガラス板と1枚の金属板とで封止する。
参照用多層膜の作製方法の一例は、上述の評価対象の多層膜と同様であり、参照用多層膜の各層の材料を順番に積層蒸着すればよい。
2つ以上の多層膜を比較する目的である場合(例えば、劣化試験)には、対照の多層膜と同じ条件(例えば、温度条件、圧力条件、印加条件、応力条件、光劣化条件等)に参照用単層または多層膜をおくことが好ましい。
(測定装置)
本発明の評価方法を実施するために用いられる装置は、過渡吸収分光法による過渡吸収スペクトルを取得する装置(過渡吸収分光装置)である。過渡吸収分光法は、励起状態分子や反応によって生成するラジカル等の瞬間的に生成した中間体の吸収スペクトルを実時間で計測する手法である。過渡吸収分光法は、パルス光を照射して光励起した物質にプローブ光を照射し、透過した光の強度の時間的変化を測定することによって、過渡吸収スペクトルの時間的変化を測定するものである。本発明の評価方法を実施するために用いられる過渡吸収分光装置は、特に限定されないが、ナノ秒オーダーの時間領域における過渡吸収を測定できるものであることが好ましい。
一実施形態において、本発明で用いる過渡吸収分光装置は、励起光源、プローブ光源、分光器、ディレイパルス発生器、および光検出器から主に構成される。
励起光源としては、半導体レーザー、固体レーザー、気体レーザー、色素レーザー、エキシマレーザー、自由電子レーザー等の短パルスレーザーの他に、キセノンフラッシュランプ、パルス放電、放電プラズマ等を使用することができるが、パルス幅が短く、強度、指向性、単色性が高い等の点からレーザーが好ましい。これらレーザーとしては具体的には、Nd:YAGレーザー、アルゴンイオンレーザー、XeClエキシマレーザー、窒素レーザー等が挙げられ、測定条件に応じて決定すればよい。より好ましい一例では、励起光源は、サブナノ秒パルスレーザーであり、パルス幅150ピコ秒以下のパルスレーザー光を発生させるものであることが好ましい。サブナノ秒パルスレーザーはさらに、所望の波長のレーザー光を選択するために、高調波発生ユニットおよび波長セパラターを備えていてもよい。発振するレーザーの強度は、多層膜を構成する材料に応じて決めればよいが、例えば0.01〜1mJ/cmの範囲とすればよい。
プローブ光源としては、吸収スペクトル測定に使用される光源が挙げられ、具体的には、キセノンフラッシュランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、レーザー(複数波長のレーザー)等が挙げられる。
分光器は、試料を透過した透過プローブ光または試料の一方の面を覆う光反射性材料に反射された反射プローブ光を分光することができるものであれば特に限定はないが、具体的には、回折格子分光器、プリズム分光器、フーリエ変換型分光器、分光フィルタ等が挙げられる。
光検出器は、試料を透過した透過プローブ光または試料の一方の面を覆う光反射性材料に反射された反射プローブ光を検出できるものであれば特に限定はないが、具体的には、フォトダイオード等が挙げられる。光検出器は分光器から出力された出力光を光電変換する。これがオシロスコープ上に表示され、オシロスコープ(例えば、高速オシロスコープ)においてデジタル変換され、オシロスコープに接続されたコンピュータの制御部でデータ処理される。
一実施形態において、多層膜の片面に光反射性材料が積層されていない場合には、多層膜の過渡吸収プロファイルの取得は、多層膜の一方の面からプローブ光を入射させ、多層膜の他方の面から出射したプローブ光を検出することで行われる。一実施形態において、多層膜の片面に光反射性材料が積層されている場合には、多層膜の過渡吸収プロファイルの取得は、多層膜の一方の面からプローブ光を入射させ、多層膜の他方の面を覆う光反射性材料に反射されて多層膜の一方の面から出射したプローブ光を検出することで行われる。一実施形態において、多層膜の最も外側の層の一方が可視〜近赤外光(特に多層膜の過渡吸収プロファイルを取得する際に用いる励起光の波長およびプローブ光の波長)における吸光度が非常に高い材料から構成される場合には、多層膜の過渡吸収プロファイルの取得は、当該層と反対側の層からプローブ光を入射させ、吸光度が非常に高い材料から構成される層に反射されて反対側の層から出射したプローブ光を検出することで行われてもよい。
(参照用単層または多層膜の過渡吸収プロファイルに基づく測定条件)
本発明に係る評価方法では、評価対象の多層膜を構成する2つ以上の層を2つ以上の群に分けたそれぞれの参照用単層または多層膜で過渡吸収プロファイルを取得した場合に当該2つ以上の層を2つ以上の群に区別する測定条件(「測定条件X」とする)における評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルを取得する。すなわち、「測定条件X」とは、実際に多層膜の過渡吸収プロファイルを取得する測定条件を指す。また、本明細書において、「過渡吸収プロファイルを取得する」とは、実際に過渡吸収分光測定を行って過渡吸収プロファイルを得ることを指す。
過渡吸収プロファイルは、励起光の波長、プローブ光の波長、経過時間、およびプローブ光の吸光度の差分(ΔAbsまたはΔOD)を含む。本明細書において、「経過時間」とは、励起光を照射した後の経過時間である。より具体的には、「過渡吸収プロファイル」は、ある励起光の波長、あるプローブ光の波長、およびある経過時間における、プローブ光の吸光度の差分、あるいは、ある励起光の波長、あるプローブ光の波長、およびある経過時間における、プローブ光の吸光度の差分の集合(例えば、スペクトル等)である。
一実施形態において、評価対象の多層膜の一部の層のみを励起させる励起光の波長を、測定条件Xとして含む。当該励起光の波長は、例えば、400〜1400nmの範囲内であり得る。一実施形態において、ある経過時間において評価対象の多層膜の一部の層のみで吸収が確認されるプローブ光の波長を、測定条件Xとして含む。当該プローブ光の波長は、例えば、400〜1400nmの範囲内であり得る。一実施形態において、あるプローブ光の波長において評価対象の多層膜の一部の層のみで吸収が確認される経過時間を、測定条件Xとして含む。経過時間は、例えば、−50〜150ナノ秒の間の任意の瞬間または期間であり得る。また、一実施形態において、上記に挙げたもののうちの複数の組み合わせを測定条件Xとして含み得る。そのため、一実施形態において、励起光の波長、プローブ光の波長、および経過時間のうちの少なくとも1つに着目して、測定条件Xが決定され得る。
本発明の評価方法において、測定条件Xは、評価対象の多層膜を構成する2つ以上の層を2つ以上の群に分けたそれぞれの参照用単層または多層膜の過渡吸収プロファイルに基づいて予め決定されたものを利用してもよいし、評価対象の多層膜を構成する2つ以上の層を2つ以上の群に分けたそれぞれの参照用単層または多層膜の過渡吸収プロファイルに基づいて決定してもよい。予め決定されたものを利用する場面としては、例えば、同じ構成の多層膜について以前にも評価を行ったことがある場合に、以前の評価に際して決定した測定条件Xを援用する場面が想定される。
本発明に係る評価方法の一実施形態は、評価対象の多層膜を構成する2つ以上の層を2つ以上の群に分けたそれぞれの参照用単層または多層膜の過渡吸収プロファイルに基づいて測定条件Xを決定する測定条件決定工程を含む。2つ以上の層を2つ以上の群に区別する測定条件が複数ある場合、そのうちの少なくとも1つを測定条件Xとして決定すればよい。すなわち、実際の過渡吸収分光測定では、2つ以上の層を2つ以上の群に区別する測定条件のうちの少なくとも1つを測定条件において評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルを取得すればよい。例えば、3つの層からなる評価対象の多層膜において、400nmの励起光の波長を用いても、700nmの励起光の波長を用いても、2つ以上の層を2つ以上の群に区別することができる場合には、実際の評価対象の多層膜の過渡吸収分光測定では何れか一方の波長で励起させた場合の過渡吸収プロファイルを取得すればよい。より正確に評価する観点からは、当該複数の測定条件を採用することが好ましい。
本発明に係る評価方法の一実施形態は、多層膜を構成する2つ以上の層を2つ以上の群に分けたそれぞれの参照用単層または多層膜で取得された過渡吸収プロファイルを用意する参照用膜プロファイル用意工程を含む。参照用膜プロファイル用意工程において、過渡吸収プロファイルは、予め取得されたものを利用してもよいし、参照用単層または多層膜の過渡吸収プロファイルを取得してもよい。また、多層膜を構成する2つ以上の層のうちの一部については予め取得されたものを利用してもよいし、残りについては参照用単層または多層膜の過渡吸収プロファイルを取得してもよい。予め取得されたものを利用する場面としては、例えば、複数の参照用単層または多層膜の過渡吸収プロファイルのライブラリーが存在する場合に、当該ライブラリーにおける、必要となる参照用単層または多層膜の過渡吸収プロファイルを利用する場面が想定される。
参照用膜プロファイル用意工程の一実施形態は、多層膜を構成する2つ以上の層を2つ以上の群に分けたうちの少なくとも一部の群のそれぞれについての参照用単層または多層膜の過渡吸収プロファイルを取得する参照用膜プロファイル取得工程を含む。参照用膜プロファイル取得工程の一例は次のとおりである。まず、各参照用単層または多層膜の吸収スペクトルを測定し、少なくとも1つの群で吸収される波長を各参照用単層または多層膜の過渡吸収分光測定における励起光の波長として選択する。次いで、当該波長の励起光を用いて各参照用単層または多層膜の過渡吸収分光測定を行う。参照用単層または多層膜の過渡吸収分光測定は、一定の範囲の波長におけるプローブ光について、一定の経過時間行う。参照用単層または多層膜の過渡吸収分光測定は、例えば、上述の過渡吸収分光装置を用いて行うことができる。
参照用膜プロファイル取得工程および測定条件決定工程の具体的な一例を説明する。ここでは、4つの層A〜Dからなり且つ80℃における熱処理が施された多層膜αを評価対象とし、熱処理による劣化を評価する。また、ここでは、4つの層A〜Dを4つの群に分けた参照用単層膜の過渡吸収プロファイルを取得する。
まず、4つの層A〜Dのそれぞれについての単層膜の吸収スペクトルを測定する。このとき、各単層膜は、熱処理が施されていないことが好ましい。すなわち、対照となる多層膜(4つの層A〜Dからなり且つ熱処理が施されていない多層膜;多層膜β)と同じ条件(熱処理条件)の単層膜を用いることが好ましい。単層膜の吸収スペクトルの測定の結果、2つの層AおよびBについては単層膜で350〜400nmの吸収のみを示し、2つの層CおよびDについては600〜700nmの吸収のみを示したと仮定すると、350〜400nmの範囲内の波長(例えば、370nm)の励起光と、600〜700nmの範囲内の波長(例えば、650nm)の励起光との両方について、4つ全ての単層膜の過渡吸収分光測定を行う。これにより、各単層膜について、励起光の波長、プローブ光の波長、経過時間、およびプローブ光の吸光度の差分に関連付けられた過渡吸収プロファイルが取得できる。
次いで、370nmの励起光を用いて得られた4つ全ての単層膜の過渡吸収プロファイル同士を比較して、1つの層のみでプローブ光の吸収が観測される条件を探す。例えば、370nmの励起光を用いた場合に0.6ナノ秒の経過時間において1000〜1200nmのプローブ光を吸収するのが層Aのみであったとすると、測定条件Xの1つとして、「370nmの波長の励起光/0.6ナノ秒の経過時間/1000〜1200nmのプローブ光」という測定条件(測定条件Aとする)を決定できる。測定条件Aは、層A〜Dを層Aと層B〜Dとに区別する測定条件である。また、370nmの励起光を用いた場合に1350nmのプローブ光を30〜60ナノ秒の経過時間において吸収するのが層Bのみであったとすると、測定条件Xの1つとして、「370nmの波長の励起光/30〜60ナノ秒の経過時間/1350nmのプローブ光」という測定条件(測定条件Bとする)を決定できる。なお、プローブ光および経過時間は何れも一定の範囲である必要はなく、例えば、650nmの励起光を用いた場合に1.2ナノ秒の経過時間において1000〜1300nmのプローブ光を吸収するのが層Cのみであったとすると、測定条件Xの1つとして、「650nmの波長の励起光/1.2ナノ秒の経過時間/1150nmのプローブ光」という測定条件(測定条件Cとする)を決定してもよい。同様にして層Dの単層膜の過渡吸収プロファイルに基づく測定条件を決定する。層Dについては、例えば、測定条件Xの1つとして、「650nmの波長の励起光/20ナノ秒の経過時間/1150nmのプローブ光」という測定条件(測定条件Dとする)を決定する。
(評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルの取得)
本発明では、2つ以上の層を2つ以上の群に分けたそれぞれの参照用単層または多層膜で過渡吸収プロファイルを取得した場合に当該2つ以上の層を2つ以上の群に区別する測定条件における評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルを取得する。すなわち、本発明は、2つ以上の層を2つ以上の群に分けたそれぞれの参照用単層または多層膜で過渡吸収プロファイルを取得した場合に当該2つ以上の層を2つ以上の群に区別する測定条件における評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルを取得する対象多層膜プロファイル取得工程を含む。測定条件Xが複数ある場合には、取得する評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルは複数であり得る。
対象多層膜プロファイル取得工程の具体的な一例を説明する。ここでは、上述した4つの層A〜Dからなる多層膜αが評価対象とする。多層膜αでは、測定条件Xとして4つの測定条件が決定されている。対象多層膜プロファイル取得工程では、これら4つの測定条件における多層膜αの過渡吸収プロファイルを取得する。ここで、過渡吸収分光装置として、照射する励起光は単一の波長であり、プローブ光は一定の範囲の波長であり、一定の経過時間測定することが可能なものを使用すると仮定する。この場合、1回の測定で一定の範囲の波長および一定の経過時間に関連付けられる過渡吸収プロファイルを得ることができる。そのため、励起光の波長が同じ測定条件Aにおける多層膜αの過渡吸収プロファイルと測定条件Bにおける多層膜αの過渡吸収プロファイルとは、1回の測定で取得することができる。例えば、370nmの波長の励起光を照射して、900〜1400nmのプローブ光の吸収を0〜100ナノ秒の経過時間測定する場合、測定条件A、B両方の過渡吸収プロファイルを1回の測定で取得することができる。励起光の波長が同じ測定条件Cと測定条件Dとについても同様である。
なお、過渡吸収プロファイルは、ある励起光の波長、あるプローブ光の波長、およびある経過時間における、プローブ光の吸光度の差分の集合ともいえるので、1回の測定で取得される多層膜の過渡吸収プロファイルには、測定条件Aおよび測定条件Bにおけるプローブ光の吸光度の差分以外のものも含まれ得る。
(評価対象の多層膜の評価)
本発明では、取得した上記評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルを、別の、多層膜の過渡吸収プロファイルと比較する。すなわち、本発明は、取得した上記評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルを、別の、多層膜の過渡吸収プロファイルと比較する比較工程を含む。
「別の、多層膜の過渡吸収プロファイル」としては、例えば、対照の多層膜の過渡吸収プロファイル、および、評価対象である別の多層膜の、過渡吸収プロファイル等が挙げられる。具体的には、例えば、熱による劣化評価を行う場合における、評価対象と同一の多層膜の熱処理前の過渡吸収プロファイルまたは熱処理をしていない評価対象とは別の多層膜の過渡吸収プロファイルが挙げられる。また、熱による劣化評価を行う場合における、別の条件で熱処理した評価対象と同一または別の多層膜の過渡吸収プロファイルが挙げられる。「別の、多層膜の過渡吸収プロファイル」は、予め取得されたものを利用してもよいし、当該多層膜の過渡吸収プロファイルを(新たに)取得してもよい。当該多層膜の過渡吸収プロファイルは、上記で説明した対象多層膜プロファイル取得工程と同様の方法で取得され得る。また、「別の、多層膜の過渡吸収プロファイル」は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。したがって、本発明の評価方法の一実施形態は、上記2つ以上の層を2つ以上の群に分けたそれぞれの参照用単層または多層膜で過渡吸収プロファイルを取得した場合に上記2つ以上の層を2つ以上の群に区別する測定条件における、1つ以上の対照となる多層膜の過渡吸収プロファイルを取得する対照多層膜プロファイル取得工程を含む。
多層膜の過渡吸収プロファイル同士は、同じ、励起光の波長、プローブ光の波長、および経過時間における、プローブ光の吸光度の差分を比較する。一実施形態では、プローブ光の吸光度の差分の有無を判断する。一実施形態では、プローブ光の吸光度の差分の変化量を判断する。
本発明の評価方法の一実施形態では、取得した評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルにおける結果を、参照用単層または多層膜の過渡吸収プロファイルに基づいて、2つ以上の層のうちの少なくとも1つの層に帰属させる。すなわち、本発明の評価方法の一実施形態は、取得した評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルにおける結果を、参照用単層または多層膜の過渡吸収プロファイルに基づいて、2つ以上の層のうちの少なくとも1つの層に帰属させる帰属工程を含む。
「評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルにおける結果を、2つ以上の層のうちの少なくとも1つの層に帰属させる」とは、例えば、評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルにおいて、ある励起波長、あるプローブ波長、ある経過時間における、プローブ光の吸収の変化の有無の結果が、何れの層(1つまたは複数)に起因するものであるかを特定することである。
比較工程および帰属工程の具体的な一例を説明する。ここでは、上述した4つの層A〜Dからなる多層膜αが評価対象とする。多層膜αは、対象多層膜プロファイル取得工程において、測定条件A〜Dのそれぞれにおける多層膜の過渡吸収プロファイルが取得されている。また、上述した対照となる多層膜βは、対照多層膜プロファイル取得工程において、測定条件A〜Dのそれぞれにおける多層膜の過渡吸収プロファイルが取得されているとする。比較工程では、多層膜αの過渡吸収プロファイルと多層膜βの過渡吸収プロファイルとを比較する。この際、同じ測定条件における過渡吸収プロファイル同士を比較する。すなわち、例えば、測定条件A(370nmの波長の励起光/0.6ナノ秒の経過時間/1000〜1200nmのプローブ光)における吸光度の差分を多層膜αと多層膜βとで比較する。測定条件B〜Dについても同様に行う。その結果、測定条件Bと測定条件Cにおいて多層膜αでは多層膜βよりも吸光度の差分に増加がしたとする。この場合、測定条件Bは4つの層A〜Dのうち層Bのみがプローブ光を吸収する測定条件である。そのため、多層膜αにおける測定条件Bでの吸光度の差分の増加は層Bに起因すると推定できる。同様に多層膜αにおける測定条件Cでの吸光度の差分の増加は層Cに起因すると推定できる。一方で、吸光度の差分に違いがみられなかった測定条件Aおよび測定条件Dは、それぞれ層Aおよび層Dの特性が反映されていると推定できる。そのため、多層膜αは熱処理によって層Bおよび層Cが変質したが、層Aおよび層Dは変質しなかったと評価することができる。
なお、上記例では、多層膜αは多層膜βとのみ比較したが、熱処理の条件が異なる多層膜γ等と比較してもよい。
また、上記例では、4つの層全てについて測定条件を設けたが、例えば、熱処理における層Aの変質を評価する目的である場合には、測定条件Aにおける多層膜αおよびβの過渡吸収プロファイルのみを取得すればよい。
また、上記例では、4つの層を1層と3層に区別する測定条件を用いたが、4つの層を2層と2層に区別する測定条件を用いてもよい。例えば、370nmの励起光を用いた場合に5ナノ秒の経過時間において700〜800nmのプローブ光を吸収するのが層AおよびBのみであったとすると、測定条件Xの1つとして、「370nmの波長の励起光/5ナノ秒の経過時間/700〜800nmのプローブ光」という測定条件(測定条件Eとする)を決定できる。次いで、測定条件E、測定条件Cおよび測定条件Dにおける多層膜αおよびβの過渡吸収プロファイルをそれぞれ取得する。そして、これらを比較した結果、測定条件Eと測定条件Cにおいて多層膜αでは多層膜βよりも吸光度の差分が増加したとする。この場合、測定条件Eは4つの層A〜Dのうち層AおよびBのみがプローブ光を吸収する測定条件である。そのため、多層膜αにおける測定条件Eでの吸光度の差分の増加は層Aもしくは層Bまたはその両方に起因すると推定できる。そのため、多層膜αは熱処理によって層Aもしくは層Bまたはその両方ならびに層Cが変質したが、層Dは変質しなかったと評価することができる。
また、上記例では、4つの層を4つの群に分けたそれぞれの参照用単層膜で過渡吸収プロファイルを取得したが、上述のように、例えば、層Aからなる単層膜と層Bからなる単層膜と層Cおよび層Dからなる多層膜とで過渡吸収プロファイルを取得してもよい。
また、上記例では、多層膜の劣化を評価するために行われているが、例えば、標準よりも品質の良い多層膜について当該品質の良さをもたらす層を特定するために行われてもよい。
このように本発明の評価方法では、多層膜において各層の変化を非破壊で評価することが可能である。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
(α−NPD単層膜の作製)
2cm角の透明なガラス板上に、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)を膜厚が100nmとなるように蒸着し、反対側も透明なガラス板で封止して測定に供した。ガラス封止後から測定までの間、試料を冷蔵(−10℃)保管し、経時的な劣化を防止した。
(Ir(ppy)/CBP共蒸着単層膜の作製)
2cm角の透明なガラス板上に、トリス[2−フェニルピリジナート−C2,N]イリジウム(III)(Ir(ppy))の濃度が5wt%となるように4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)と共蒸着した膜(Ir(ppy)/CBP共蒸着層)を、膜厚が50nmとなるように蒸着し、反対側も透明なガラス板で封止して測定に供した。ガラス封止後から測定までの間、試料を冷蔵(−10℃)保管し、経時的な劣化を防止した。
(CuPc単層膜の作製)
2cm角の透明なガラス板上に、銅フタロシアニン(CuPc)を、膜厚が100nmとなるように蒸着し、反対側も透明なガラス板で封止して測定に供した。ガラス封止後から測定までの間、試料を冷蔵(−10℃)保管し、経時的な劣化を防止した。
(多層膜の作製)
2cm角の透明なガラス板上に、α−NPD膜、(Ir(ppy))の濃度が5wt%となるようにCBPと共蒸着した膜、および銅フタロシアニン(CuPc)膜を、各層の膜厚が50nmになるよう、上記順番で積層蒸着した。この試料の反対側も透明なガラスで封止して各測定に供した。ガラス封止後から測定までの間、試料を冷蔵(−10℃)保管し、経時的な劣化を防止した。また、劣化検出を目的とした比較対象として、1か月室温(−10℃)保存した試料、50℃で1時間加熱した後に冷蔵保管した試料、および110℃で1時間加熱した後に冷蔵保管した試料をそれぞれ作製した。
(測定装置)
過渡吸収分光測定には、産業技術総合研究所の可視−近赤外過渡吸収分光装置を用いた。この装置はサブナノ秒パルスレーザーの高次高調波を励起光として試料に照射し、ディレイパルス発生器により同期したキセノンフラッシュランプ光をプローブ光として用いる。試料による過渡的な光吸収を、分光器、高速光検出器および高速オシロスコープで検出する仕様である。
また、吸収スペクトルは、島津製作所製の紫外・可視分光分析装置(UV−2450)を用い、積分球(島津製作所製のISR−2200)を利用して測定した。
(実験条件)
過渡吸収分光測定における励起光波長として355nmおよび532nmを用いた。励起光強度は1mJ/cmとした。試料中央をプローブ光が透過するよう設置した。プローブ光のスポットサイズは6mmφとした。
(結果)
各単層膜の吸収スペクトルを図1に示す。この結果によると、355nmで励起した場合は全ての層が励起され、532nmで励起した場合はCuPc層のみが励起されると考えられる。
各単層膜の過渡吸収スペクトルおよび過渡吸光度の時間プロファイルを図2に示す。これらデータは励起波長として355nmを用いている。励起から0.6ナノ秒後の吸収スペクトルを図2(a)に、励起から60ナノ秒後の吸収スペクトルを図2(b)に示す。これらの結果から、500〜800nmの可視領域では、3層の信号が重複してしまい、情報を分離することは困難と考えられる。一方で、900nm〜1400nmの近赤外領域では、CuPc層からの信号は存在せず、α−NPD層およびIr(ppy)/CBP共蒸着層からの信号が検出されると考えられる。図2の(c)に1200nmにおける過渡吸光度の時間プロファイルを示す(横軸の目盛における0が励起光を照射した時刻である)。この結果によると、励起後5ナノ秒以内ではα−NPD層の短寿命種に由来する信号が主に検出されることがわかる。また、励起後5ナノ秒以降はα−NPD層の長寿命種とIr(ppy)/CBP共蒸着層の長寿命種が検出されることがわかる。
上記結果から、本実施例で利用する材料系に対しては、近赤外領域のプローブ光が有効であると考えられる。多層膜試料の近赤外領域における過渡吸収スペクトルを図3に示す。図3の(a)によると、励起から0.6ナノ秒後における過渡吸光度は試料の加熱によって増加することが示された。これは試料の加熱によってα−NPD層が変質した可能性を示唆している。図3の(b)に示した励起から60ナノ秒後における過渡吸収スペクトルでは、冷蔵保存および室温保存による差異も検出された。この信号変化はα−NPD層およびIr(ppy)/CBP共蒸着層に由来すると考えられる。上記考察を基にすると、特に冷蔵保存および室温保存の差異に関してはIr(ppy)/CBP共蒸着層に起因すると考えられる。
また、532nm励起による620nmにおける過渡吸光度の時間プロファイルを図4に示す。この信号はCuPcの基底状態の吸光度の光励起に伴う減衰と回復を示している。110℃の加熱に伴い、この信号が大きく変化していることがわかる。すなわち、CuPc層は110℃の加熱によって変質したと考えられる。
上記検討で用いた試料を紫外・可視分光分析装置(UV−2450)により測定した結果を図5に示す。基底状態の吸光度には、ほぼ変化がないことがわかる。よって、過渡吸収分光法による劣化検出では、基底状態の吸光度と比較して、より敏感に各層の変質を測定できることがわかった。
本発明は、例えば、半導体デバイスに適用される多層膜における劣化試験等に利用することができる。

Claims (8)

  1. 2つ以上の層からなる多層膜の評価方法であって、
    上記2つ以上の層を2つ以上の群に分けたそれぞれの参照用単層または多層膜で過渡吸収プロファイルを取得した場合に上記2つ以上の層を2つ以上の群に区別する測定条件における評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルを取得する工程と、
    取得した上記評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルを、別の、多層膜の過渡吸収プロファイルと比較する工程とを含む、評価方法。
  2. 取得した上記評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルにおける結果を、上記参照用単層または多層膜の過渡吸収プロファイルに基づいて、上記2つ以上の層のうちの少なくとも1つの層に帰属させる、請求項1に記載の評価方法。
  3. 上記測定条件は、励起光の波長、プローブ光の波長、および経過時間のうちの少なくとも1つである、請求項1または2に記載の評価方法。
  4. 上記評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルの取得は、上記評価対象の多層膜の一方の面からプローブ光を入射させ、上記評価対象の多層膜の他方の面から出射したプローブ光を検出することで行われる、請求項1〜3の何れか1項に記載の評価方法。
  5. 上記評価対象の多層膜の過渡吸収プロファイルの取得は、上記評価対象の多層膜の一方の面からプローブ光を入射させ、上記評価対象の多層膜の他方の面を覆う光反射性材料に反射されて上記評価対象の多層膜の一方の面から出射したプローブ光を検出することで行われる、請求項1〜3の何れか1項に記載の評価方法。
  6. 上記評価対象の多層膜は、有機材料からなる、請求項1〜5の何れか1項に記載の評価方法。
  7. 上記評価対象の多層膜は、3つ以上の層からなる、請求項1〜6の何れか1項に記載の評価方法。
  8. 多層膜の劣化を評価するためのものである、請求項1〜7の何れか1項に記載の評価方法。
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JP2019120549A (ja) * 2017-12-28 2019-07-22 本州四国連絡高速道路株式会社 塗膜劣化検出方法

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