JP2017087182A - 生物処理担体の処理方法及び有機性排水の生物処理方法 - Google Patents

生物処理担体の処理方法及び有機性排水の生物処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】担体表面への嫌気性微生物の付着性を高めることができる担体処理方法と、この方法で処理された担体を用いる有機性排水の生物処理方法とを提供する。【解決手段】流動床担体方式の嫌気性生物処理装置に用いられる担体に対し、嫌気性生物処理装置の起動時又は起動前に嫌気性微生物の付着性を向上させるための処理を施す担体処理方法であって、嫌気性微生物の存在下で担体と下記A又はBの凝集剤水溶液とを接触させることを特徴とする嫌気性生物処理担体の処理方法。凝集剤水溶液A:カチオン系高分子凝集剤の水溶液凝集剤水溶液B:無機凝集剤及び両性高分子凝集剤の水溶液【選択図】図1

Description

本発明は、生物処理担体への嫌気性微生物の付着性を向上させるための処理方法と、この方法で処理された担体を用いる有機性排水の生物処理方法に関する。
UASB法に代表される嫌気性処理方法は、嫌気性細菌を自己造粒化させてグラニュールとよばれる微生物の塊を形成させ、これを槽内に高い濃度で保持することで、高い槽負荷を達成しようとする方法である。しかし、この方法は、グラニュールを造粒するのが困難である条件、例えば難分解性有機物を含む排水、グラニュールを解体させ得る物質、例えば硫黄を多く含む排水やCODCr3,000mg/L以下の希薄排水に対しては、その適用が困難であった。
グラニュールの強度を高めるために、グラニュール表面を高分子凝集剤で被覆することが特許文献1,2に記載されている。しかし、この方法は常に高濃度、例えば150mg/Lの高分子凝集剤を利用するため、薬品コストが、運転費用の多くの割合、例えば20%〜50%を占めてしまう。
グラニュール法の適用が困難な排水に対しては、流動床式嫌気処理法と呼ばれる、槽内に嫌気性細菌を保持するための担体を添加し、嫌気性細菌を担体に保持させる方法が有効である。
流動床式嫌気処理装置の有機物除去性能、すなわち容積負荷は、担体に付着した菌体の総量、特に酸生成菌と比較して増殖が遅いとされているメタン菌の総量に依存する。
担体に対する菌体の付着速度を増加させるためには、担体に対する菌体の初期付着量をできるだけ増加させることが効果的である。
通常、菌体は通水の継続とともに担体に付着し、それにともない容積負荷が上昇する。しかし、装置の立ち上げ時は、担体に付着する菌体が少ないため、数カ月間、例えば少なくとも3ヵ月間は容積負荷が低い。
一般的に使用されている担体、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルクロライドなどの表面はマイナスに帯電しているため、菌体表面が同じくマイナスに帯電している嫌気性微生物は、担体表面に付着しにくい。
流動床式嫌気処理装置の立ち上げ速度を向上させるために、UASBリアクター等から採取したグラニュールを装置内に添加し、立ち上げ期間を短縮する方法が実施されている。ただし、排水種によっては、添加したグラニュールが速やかに解体し、槽外に流出するため、担体に対して十分な菌体を付着させるためには、例えば槽内容積に対して少なくとも20%程度の大量のグラニュールを添加するか、グラニュールを繰り返し槽内に添加する必要があった。また、このような方法でも、排水種や水面積負荷によっては、汚泥の流出によって、立ち上げが困難である場合があった。また、上記方法をもってしても依然として担体への菌体付着に長時間を要していた。
特開昭62−279887号公報 特開平3−254895号公報
本発明は、担体表面への嫌気性微生物の付着性を高めることができる担体処理方法と、この方法で処理された担体を用いる有機性排水の生物処理方法とを提供することを目的とする。
本発明者は、担体への菌体付着の律速となるのは初期段階であり、担体に所定濃度以上(例えば300mg−VSS/L以上好ましくは600mg−VSS/L以上)の菌体が生えるまでに1ヶ月前後もしくはそれ以上を要するケースもあることから、担体処理の初期に凝集剤を用いて担体に菌体を強制的に付着させ、担体と菌体との接触時間が長くなるようにしてその後菌体が短時間で担体に生えるように促すことを見出した。またこのとき、用いる凝集剤は、担体や菌体の表面電荷が影響していると推定され、好ましく使用できる凝集剤種が限定されることを見出した。
本発明はかかる知見に基づくものであり、その要旨は以下の通りである。
[1] 流動床担体方式の嫌気性生物処理装置に用いられる担体に対し、嫌気性生物処理装置の起動時又は起動前に嫌気性微生物の付着性を向上させるための処理を施す生物担体の処理方法であって、嫌気性微生物の存在下で担体と下記A又はBの凝集剤水溶液とを接触させることを特徴とする生物処理担体の処理方法。
凝集剤水溶液A:カチオン系高分子凝集剤の水溶液
凝集剤水溶液B:無機凝集剤及び両性高分子凝集剤の水溶液
[2] [1]において、前記嫌気性微生物を前記凝集剤を介して前記担体に300mg−VSS/L以上付着させることを特徴とする生物処理担体の処理方法。
[3] [1]又は[2]において、前記嫌気性微生物が、種グラニュール又はその破砕物であることを特徴とする生物処理担体の処理方法。
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、
前記担体及び水を容器に収容し、該容器内に凝集剤を添加する方法であって、該水の量が、該担体の見掛け体積に対して40〜100体積%であることを特徴とする生物処理担体の処理方法。
[5] [4]において、
前記凝集剤水溶液が凝集剤水溶液Aである場合、前記担体との接触時のカチオン系高分子凝集剤濃度が25〜250mg/Lであり、
前記凝集剤水溶液が凝集剤水溶液Bである場合、前記担体との接触時の無機凝集剤濃度が25〜250mg/Lであり、両性高分子凝集剤濃度が25〜250mg/Lであることを特徴とする生物処理担体の処理方法。
[6] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、
処理前の担体を生物処理装置に収容した後、前記凝集剤水溶液を該生物処理装置にLV0.5〜20m/hで通水することを特徴とする生物処理担体の処理方法。
[7] [6]において、凝集剤がカチオン系高分子凝集剤の場合、前記凝集剤水溶液の濃度が3〜30mg/Lであり、凝集剤が無機凝集剤と両性高分子凝集剤の場合、前記凝集剤水溶液の無機凝集剤の濃度は250〜1000mg/Lであり、両性高分子凝集剤の濃度は3〜30mg/Lであることを特徴とする生物処理担体の処理方法。
[8] [1]ないし[7]のいずれかに記載の生物処理担体の処理方法で処理された担体を用いて有機性排水を嫌気性生物処理する有機性排水の生物処理方法。
一般的に用いられている担体の表面はマイナスに帯電しており、嫌気性微生物の表面もマイナスに帯電している。担体とカチオン系高分子凝集剤、または、無機凝集剤および両性高分子凝集剤の水溶液を接触させることにより、荷電が中和され、担体への嫌気性微生物の付着性を向上させることができるものと推定される。
また、担体、嫌気性微生物と凝集剤を接触させる条件を最適化することにより、担体への付着性をさらに向上させることができる。これにより、流動床式嫌気性生物処理装置の立ち上げ速度を向上させることができる。
実施例の説明図である。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の生物処理担体の処理方法では、担体と下記A又はBの凝集剤水溶液とを接触させることによって担体に凝集剤を介して嫌気性微生物を付着させ、担体への嫌気性微生物の付着性を向上させる。
凝集剤水溶液A:カチオン系高分子凝集剤の水溶液
凝集剤水溶液B:無機凝集剤及び両性高分子凝集剤の水溶液
担体の形状は、球状、ペレット状、中空筒状、糸状、板状等任意であり、大きさも0.1〜10mm程度の径で良い。また、担体の材料は、高分子系や無機系が知られており、これらは一般に負に帯電していることが知られている。
高分子系としては例えば、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、PVC(ポリ塩化ビニール)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、フッ素化高分子、ニトロセルロース、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック材料や、アクリルアミド/メチレンビスアクリルアミドゲル、ポリエチレングリコール(PEG)プレポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリルアミド、ポリビニルホルマール、光硬化性樹脂、カラギーナン、アルギン酸ソーダ等をゲル化した高分子ゲル材料、などが挙げられる。
また、無機系としては例えば、活性炭、ゼオライト、セラミック、多孔質ガラス、ケイ酸カルシウム、シリカ、鹿沼土、などが挙げられる。
カチオン系高分子凝集剤としては、ポリエチレンイミン、エチレンジアミンエピクロルヒドリン重縮合物、ポリアルキレンポリアミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドやジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの四級アンモニウム塩を構成モノマーとする重合体等が挙げられる。カチオン系高分子凝集剤の重量平均分子量は、例えば500,000〜30,000,000の範囲である。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
無機凝集剤としては、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄などの鉄系凝集剤、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムなどのアルミニウム系凝集剤などを用いることができる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
両性高分子凝集剤としては、例えばアニオン性のモノマー成分とカチオン性のモノマー成分の共重合体、アニオン性のモノマー成分、カチオン性のモノマー成分及びノニオン性のモノマー成分の共重合体、あるいはアニオン性のモノマー成分とノニオン性のモノマー成分の共重合体のマンニッヒ変性物又はホフマン分解物などを挙げることができる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
ここでアニオン性のモノマー成分としては、例えばアクリル酸(AA)、アクリル酸ナトリウム(NaA)、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウムなどを挙げることができる。
カチオン性のモノマーの成分としては、例えばジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(DAM),ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、及びそれらの四級化物などを挙げることができる。四級化物としては、具体的にはジメチルアミノエチルアクリレート四級化物(DAA)などを挙げることができる。また、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドの塩酸塩(DAPAAm)を用いても良い。
ノニオン性のモノマー成分としては、例えばアクリルアミド(AAm)、メタアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができる。
また、これらの共重合体として、具体的にはDAA/AA/AAm共重合体、DAM/AA/AAm共重合体、DAPAAm/AA/AAm共重合体、DAA/AA共重合体、NaA/AAm共重合体のマンニッヒ変性物などを挙げることができる。
本発明の一態様では、容器に担体及び水を収容し(水量は好ましくは担体の見掛けの体積に対する体積割合で100%以下、例えば40〜100%、好ましくは40〜80%、特に好ましくは40〜60%)、これに対し、カチオン系高分子凝集剤又は無機凝集剤と両性高分子凝集剤とを添加して均一になるよう混合する。凝集剤は水溶液の形態にて添加することが好ましい。
凝集剤添加後の水中における好ましい凝集剤濃度は次の通りである。
凝集剤としてカチオン系高分子凝集剤を添加した場合、25mg/L以上、例えば25〜300mg/L、特に25〜250mg/Lとりわけ100〜250mg/Lが好ましい。
凝集剤として無機凝集剤と両性高分子凝集剤とを添加した場合、無機凝集剤は25mg/L以上、例えば25〜250mg/Lが好ましく、両性高分子凝集剤は25mg/L以上、例えば25〜300mg/L、特に25〜250mg/Lとりわけ100〜250mg/Lが好ましい。
その後、嫌気性微生物の好ましくは種グラニュール又はその破砕物の含有液を添加して、少なくとも5分間混合する。水中の嫌気性微生物濃度は5000〜100000mg−VSS/L、特に10000〜50000mg−VSS/L程度が好ましい。混合時間を長くしても特に問題はないが、処理の短縮化の観点から20日以内程度とするのが好ましい。混合中、または混合後に種グラニュール又はその破砕物を補充してもよい。また、本態様では、嫌気性微生物の添加を凝集剤添加の後に行ったが、添加順は特に限定されず、担体と凝集剤と嫌気性微生物とが混合状態になればよい。
なお、混合の強度を高くしすぎると、凝集体同士が剪断力で崩れてしまう恐れがあるので、ある程度緩い混合が好ましく、例えば、撹拌による混合の場合、撹拌強度G値は2.9〜5sec−1程度が好ましい。
この処理により、担体に嫌気性微生物が付着するので、担体を容器から取り出し、嫌気性処理槽又はカラムに収容し、有機性排水を通水して有機性排水の嫌気性生物処理を行う。
本発明の別の一態様では、カラム内に担体及び水を収容し、凝集剤と嫌気性微生物の混合液を該カラムに通水する。混合液中の嫌気性微生物濃度は5000〜100000mg−VSS/L特に10000〜50000mg−VSS/L程度が好ましい。
混合液中の凝集剤の好ましい濃度は次の通りである。
カチオン系高分子凝集剤の場合、3〜30mg/Lが好ましく、無機凝集剤と両性高分子凝集剤の場合、無機凝集剤は、250mg/L以上、例えば250〜1000mg/Lが好ましく、両性高分子凝集剤は、3〜30mg/Lが好ましい。
カラムへの混合液の通水は一過式で行ってもよく、循環通水でもよい。通水は上向流でもよく下向流でもよい。ただし、混合液のカラムへの通水は、好ましくは上向流にて行い、好ましくは循環通水する。上向流のLVは0.5m/h以上特に0.5〜20m/hとりわけ2〜20m/h程度が好ましい。系を均一に混合するために、LVを0.5m/h以上とすることが好ましい。ただし、LVが大きすぎると担体と嫌気性微生物の接触時間が短くなり、また剪断力が大きくなりかえって付着性が下がるので、LVを20m/h以下とすることが好ましい。通水時間は少なくとも30分間が必要で、長くとも20日以内程度とするのが好ましい。
この処理により担体に嫌気性微生物が付着するので、その後カラムへ有機性排水を通水し、有機性排水の嫌気性生物処理を行う。
以下、実施例及び比較例について説明する。以下の実施例及び比較例で用いた担体、凝集剤及び種グラニュールは次の通りである。
担体:直径約2mm、高さ約3mmの円柱形状のポリプロピレン製のもの(沈降速度300m/h)
カチオン系高分子凝集剤:栗田工業製クリファームPC−892
両性高分子凝集剤:栗田工業製クリフューチャーPF−512
無機凝集剤:塩化第二鉄
種グラニュール:ビール工場排水を処理しているUASBリアクター内のグラニュールを1.0mmの金属製ふるいですり潰したもの(濃度50000mg−VSS/L)
[実施例1(No.1〜6)]
担体10mLを50mLのビーカーに収容し、表1に示す所定濃度のカチオン系高分子凝集剤の水溶液4mLをビーカーに注入した後、スターラーで均一になるまで撹拌した。
その後、種グラニュール2.5gを撹拌しながら添加し、さらに10秒撹拌した。
ビーカー内の担体への種グラニュールの担体への付着状況の観察結果を表1に示す。
なお、付着状況の評価結果は、○:著しく良、△:良、×:不良である。
担体の種グラニュールの付着量については、以下のように算出した。
試験後の担体を10粒採取し、100℃のNaOH水溶液に10分間浸漬してタンパク質を溶出させ、次いでブラッドフォード法によりタンパク質濃度を定量し、これをグラニュール付着量とした。
Figure 2017087182
表1の通り、カチオン系高分子凝集剤の添加後濃度が10mg/L(No.2)では、ブランク(No.1)に対して付着性の向上はわずかであったが、25mg/L以上(No.3〜6)であれば、グラニュールの付着性が十分に向上することが認められた。特に100mg/L以上(No.5,6)であれば、グラニュール付着量が1000mg−VSS/L程度まで向上するため著しく良好であることが認められた。
[実施例2(No.21〜30)]
まず、予備試験として実施例1において、カチオン系高分子凝集剤の代りに無機凝集剤を表2に示す濃度及び添加量にて添加したこと以外は実施例1と同様にして試験を行った。種グラニュールのフロック形成状況の観察結果を表2に示す。
Figure 2017087182
表2の通り、無機凝集剤濃度が250mg/L以上のNo.22〜25では、細かいフロックが形成されると共に、これらが沈降し、上澄み液が透明になった。
そこで、無機凝集剤の添加後濃度を250mg/Lとして以下の試験を行った。
凝集剤として無機凝集剤及び両性高分子凝集剤を用いた。実施例1と同じく50mLのビーカーに担体10mLを収容し、濃度250mg/Lの無機凝集剤水溶液を4mL添加し、カセイソーダによってpH7に調整した。
次いで、表3に示す濃度の両性高分子凝集剤水溶液を添加し、均一になるまで撹拌した。その後、実施例1と同一条件で種グラニュールを添加してさらに10秒撹拌した。種グラニュールの担体への付着状況の観察結果を表3に示す。
なお、付着状況の評価結果については実体顕微鏡で判定し、担体表面の半分以上が付着物で覆われていれば○、少しでも種グラニュールが付着していれば△、全く付着していなければ×で評価した。
Figure 2017087182
表3の通り、両性高分子凝集剤の添加後濃度が10mg/L(No.26)では、無凝集(表1のNo.1)に対して付着性の向上が不十分であったが、25mg/L以上(No.27〜30)であれば、グラニュールの付着性が十分に向上することが認められ、特に100mg/L以上(No.29,30)であれば、グラニュール付着性が著しく良好になることが認められた。
[実施例3(No.31〜37)]
実施例1において、容器内への収容水量とカチオン系高分子凝集剤の濃度を表4の通りとし、撹拌強度G値=2.9sec−1としたこと以外は同様の試験を行った(種グラニュール投入量も実施例1と同じく2.5gである)。結果を表4に示す。
また、担体へのグラニュール付着量を測定し、結果を表4に示した。担体へのグラニュール付着量の測定方法は実施例1と同様である。
Figure 2017087182
表4の通り、水量(担体体積比)が40%のとき(No.32)に、最も顕著に菌体が付着し、40〜100%(No.32〜35)であれば担体への付着は十分に促進されることが確認された。一方、No.36,37の通り、水量(担体体積比)が100%を超えると凝集フロックは良好に形成されるものの、担体への接触効率が低いため、自己造粒やフロック同士での塊状化が起こり、担体への付着促進が不十分であった。なお、No.31のように水量(担体体積比)が30%では水量が足りず、ポンプでの移送が困難であった。
[実施例4(No.41〜44)]
図1(a)のように、内径5cm、高さ約50cmの1Lカラムに担体を400mL(体積比で40%)投入し、その後表5に示す所定濃度のカチオン系高分子凝集剤水溶液をLV=7m/hで5分間で一過式にて通水した(第1次通水)(ただし、No.44ではこの第1次通水を行わず、水道水の通水を行った。)。その後、種グラニュール分散液(グラニュール濃度約50000mg−VSS/L)を上向流にて5分間、LV=7m/hで通水した(第2次通水)。
その後、図1(b)の通り、凝集剤・グラニュール混合液(カチオン系高分子凝集剤濃度、種グラニュール濃度は上記と同条件)を上向流にてLV=7m/hで30分、循環通水した(第3次通水)。担体へのグラニュール付着状況の観察結果及びグラニュール付着量の測定結果を表5に示す。
Figure 2017087182
表5の通り、カチオン系高分子凝集剤を添加したNo.41〜43では担体へのグラニュール付着量は300mg−VSS/Lであったが、第1次通水(カチオン系高分子凝集剤水溶液通水)を行わず、水道水の通水を行ったNo.44ではグラニュールは担体にほとんど付着しなかった。
[実施例5(No.51〜58)]
実施例4のNo.43の条件において、第3次通水のLVと通水時間のみを変更した試験を実施した。結果を表6に示す。
本実施例は、通水時間ごとの担体への付着状況を評価したものであり、グラニュール付着量が300mg−VSS/Lに達したものは○、未達のものは×で評価した。
Figure 2017087182
表6の通り、LVが低いNo.51,52では、菌体の担体への付着が促進されたものの、菌体が十分に付着するまで1日以上を要することが認められた。一方、No.53〜57であれば、菌体の担体への付着は十分に促進されることが確認された。ただし、LVが過度に高いNo.58は、かえって付着性が下がった。担体と菌体との接触時間が短くなることや剪断力が大きくなることが原因と推定される。

Claims (8)

  1. 流動床担体方式の嫌気性生物処理装置に用いられる担体に対し、嫌気性生物処理装置の起動時又は起動前に嫌気性微生物の付着性を向上させるための処理を施す生物担体の処理方法であって、
    嫌気性微生物の存在下で担体と下記A又はBの凝集剤水溶液とを接触させることを特徴とする生物処理担体の処理方法。
    凝集剤水溶液A:カチオン系高分子凝集剤の水溶液
    凝集剤水溶液B:無機凝集剤及び両性高分子凝集剤の水溶液
  2. 請求項1において、前記嫌気性微生物を前記凝集剤を介して前記担体に300mg−VSS/L以上付着させることを特徴とする生物処理担体の処理方法。
  3. 請求項1又は2において、前記嫌気性微生物が、種グラニュール又はその破砕物であることを特徴とする生物処理担体の処理方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、
    前記担体及び水を容器に収容し、該容器内に凝集剤を添加する方法であって、該水の量が、該担体の見掛け体積に対して40〜100体積%であることを特徴とする生物処理担体の処理方法。
  5. 請求項4において、
    前記凝集剤水溶液が凝集剤水溶液Aである場合、前記担体との接触時のカチオン系高分子凝集剤濃度が25〜250mg/Lであり、
    前記凝集剤水溶液が凝集剤水溶液Bである場合、前記担体との接触時の無機凝集剤濃度が25〜250mg/Lであり、両性高分子凝集剤濃度が25〜250mg/Lであることを特徴とする生物処理担体の処理方法。
  6. 請求項1ないし3のいずれか1項において、処理前の担体を生物処理装置に収容した後、前記凝集剤水溶液を該生物処理装置にLV0.5〜20m/hで通水することを特徴とする生物処理担体の処理方法。
  7. 請求項6において、凝集剤がカチオン系高分子凝集剤の場合、前記凝集剤水溶液の濃度が3〜30mg/Lであり、凝集剤が無機凝集剤と両性高分子凝集剤の場合、前記凝集剤水溶液の無機凝集剤の濃度は250〜1000mg/Lであり、両性高分子凝集剤の濃度は3〜30mg/Lであることを特徴とする生物処理担体の処理方法。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の生物処理担体の処理方法で処理された担体を用いて有機性排水を嫌気性生物処理する有機性排水の生物処理方法。
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