JP2017085706A - 電動車両の制御装置、及び、電動車両の制御方法 - Google Patents

電動車両の制御装置、及び、電動車両の制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ギアバックラッシュの不感帯において車両モデルと実際の車両状態との間に生じるモデル化誤差の影響を抑制し、外乱トルクを正確に推定することを目的とする。
【解決手段】車両情報に基づいてモータトルク指令値を設定し、駆動輪につながるモータのトルクを制御する電動車両の制御方法であって、ドライバのアクセル操作量を検出し、モータの回転速度に比例する車両パラメータを検出し、モータトルク指令値を入力して、モータトルクが車両の駆動軸に伝達されないギアバックラッシュの不感帯特性を含むモータトルクからモータの回転速度までの非線形な伝達特性モデルを用いてモータに作用する外乱トルクを推定する。そして、アクセル操作量が低下して電動車両が停車間際になると、車両パラメータの低下とともにモータのトルクを外乱トルクに収束させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、電動車両の制御装置、及び、電動車両の制御方法に関する。
従来、電動機の回生制動力を任意に設定し得る設定手段を設け、設定手段によって設定された回生制動力で電動機の回生を行う電気自動車用回生ブレーキ制御装置が知られている(特許文献1参照)。
特開2011−172323号公報
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、設定手段によって設定された回生制動力が大きい場合には、設定された回生制動力で電気自動車が減速して、速度がゼロになったときに、車体の前後方向に振動(加速度振動)が発生するという問題を有している。
この問題に対して、本願発明者らは、モータトルクからモータ回転速度までの線形な伝達特性に基づき構成された車両モデルを用いて、モータ回転速度の低下とともにモータトルクを調整し、モータトルクを概ね勾配抵抗となる外乱トルク推定値に収束させる停止制御を実行することで、平坦路、登坂路、降坂路によらず、加速度振動の無い滑らかな減速を停車間際で実現し、なおかつ、停車状態を保持することを検討している。
しかしながら、車両が登坂路において減速し停車する場面では、モータトルクが負から正に変化するため、ギアバックラッシュによりモータトルクが駆動輪に伝達されない区間(不感帯)が発生する。前述の外乱トルク推定値は、線形な伝達特性に基づき構成された車両モデルを用いて算出されるため、上記不感帯において車両モデルと実際の車両状態との間にモデル化誤差が生じ、外乱トルクを正確に推定できない課題がある。
本発明は、上記不感帯において車両モデルと実際の車両状態との間に生じるモデル化誤差の影響を抑制し、外乱トルクを正確に推定することを目的とする。
本発明による電動車両の制御方法は、車両情報に基づいてモータトルク指令値を設定し、駆動輪につながるモータのトルクを制御する電動車両の制御方法であって、ドライバのアクセル操作量を検出し、モータの回転速度に比例する車両パラメータを検出し、モータトルク指令値を入力して、モータトルクが車両の駆動軸に伝達されないギアバックラッシュの不感帯特性を含むモータトルクからモータの回転速度までの非線形な伝達特性モデルを用いて、モータに作用する外乱トルクを推定する。そして、アクセル操作量が低下して電動車両が停車間際になると、車両パラメータの低下とともにモータのトルクを外乱トルクに収束させる。
本発明によれば、線形な伝達特性に基づき構成された車両モデルに加えて、ギアバックラッシュの不感帯特性を含むモータトルクからモータ回転速度までの非線形な伝達特性モデルを用いて外乱トルクを推定する。これにより、線形な伝達特性に基づき構成された車両モデルと実際の車両状態との間に生じるモデル化誤差の影響を抑制し、外乱トルクを正確に推定することができる。
図1は、第1の実施形態における電動車両の制御装置を備えた電気自動車の主要構成を示すブロック図である。 図2は、モータコントローラによって行われる処理の流れを示すフローチャートである。 図3は、アクセル開度−トルクテーブルの一例を示す図である。 図4は、車両の駆動力伝達系をモデル化した図である。 図5は、停止制御処理を実現するためのブロック図である。 図6は、モータ回転速度F/Bトルク設定器の詳細を説明するための図である。 図7は、第1実施形態の外乱トルク推定器による外乱トルク推定値の算出を実現するためのブロック図である。 図8は、第1実施形態の駆動軸ねじり角推定器による駆動軸ねじり角推定値の算出を実現するためのブロック図である。 図9は、第2実施形態の外乱トルク推定器による外乱トルク推定値の算出を実現するためのブロック図である。 図10は、第2実施形態の駆動軸ねじり角推定器による駆動軸ねじり角推定値の算出を実現するためのブロック図である。 図11は、第1実施形態および第2実施形態の電動車両の制御装置による制御結果を説明するための図である。
−第1実施形態−
図1は、第1実施形態における制御装置を備えた電動車両の主要構成を示すブロック図である。なお、電動車両とは、車両の駆動源の一部または全部として電動モータを備え、電動モータの駆動力により走行可能な自動車のことであり、電気自動車や、ハイブリッド自動車が含まれる。
モータコントローラ2には、車速V、アクセル開度θ、電動モータ4の回転子位相α、電動モータ4の電流iu、iv、iw等の車両状態を示す信号がデジタル信号として入力される。モータコントローラ2は、入力された信号に基づいて電動モータ4を制御するためのPWM信号を生成する。また、生成したPWM信号に応じてインバータ3の駆動信号を生成する。
インバータ3は、相ごとに備えられた2個のスイッチング素子(例えば、IGBTやMOS−FET等のパワー半導体素子)をオン/オフすることにより、バッテリ1から供給される直流の電流を交流に変換し、電動モータ4に所望の電流を流す。
電動モータ(三相交流モータ)4は、インバータ3から供給される交流電流により駆動力を発生し、減速機5および駆動軸8を介して、左右の駆動輪9a、9bに駆動力を伝達する。また、電動モータ4は、車両の走行時に駆動輪9a、9bに連れ回されて回転するときに、回生駆動力を発生させることで、車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。この場合、インバータ3は、電動モータ4の回生運転時に発生する交流電流を直流電流に変換して、バッテリ1に供給する。
電流センサ7は、電動モータ4に流れる3相交流電流iu、iv、iwを検出する。ただし、3相交流電流iu、iv、iwの和は0であるため、任意の2相の電流を検出して、残りの1相の電流は演算により求めてもよい。
回転センサ6は、例えば、レゾルバやエンコーダであり、モータ4の回転速度に比例する車両パラメータとして、モータ4の回転子位相αを検出する。
図2は、モータコントローラ2によって行われる処理の流れを示すフローチャートである。ステップS201からステップS205に係る処理は、車両システムが起動している間、一定の間隔で常時実行される。
ステップS201では、車両状態を示す信号がモータコントローラ2に入力される。ここでは、車速V(km/h)、アクセル開度θ(%)、電動モータ4の回転子位相α(rad)、電動モータ4の回転速度Nm(rpm)、電動モータ4に流れる三相交流電流iu、iv、iw、および、バッテリ1の直流電圧値Vdc(V)が入力される。
車速V(km/h)は、図示しない車速センサや、他のコントローラより通信にて取得される。または、モータコントローラ2は、回転子機械角速度ωmにタイヤ動半径rを乗算し、ファイナルギアのギア比で除算することにより車速v(m/s)を求め、3600/1000を乗算することで単位変換して、車速V(km/h)を求める。
モータコントローラ2は、アクセル開度θ(%)を、図示しないアクセル開度センサ(アクセル操作量検出部)から取得する。なお、アクセル開度θ(%)は、図示しない車両コントローラ等の他のコントローラから取得するようにしても良い。
電動モータ4の回転子位相α(rad)は、回転センサ6から取得される。電動モータ4の回転速度Nm(rpm)は、回転子角速度ω(電気角)を電動モータの極対数pで除算して、電動モータ4の機械的な角速度であるモータ回転速度ωm(rad/s)を求め、求めたモータ回転速度ωmに60/(2π)を乗算することによって求められる。回転子角速度ωは、回転子位相αを微分することによって求められる。
電動モータ4に流れる電流iu、iv、iw(A)は、電流センサ7から取得される。
直流電流値Vdc(V)は、バッテリ1とインバータ3間の直流電源ラインに設けられた電圧センサ(不図示)により検出する。なお、直流電圧値Vdc(V)は、バッテリコントローラ(不図示)から送信される信号により検出するようにしてもよい。
ステップS202では、モータコントローラ2が基本目標トルクとしての第1のトルク目標値Tm1*を設定する。具体的には、モータコントローラ2は、ステップS201で入力されたアクセル開度θ及び車速Vに基づいて、図3に示すアクセル開度−トルクテーブルを参照することにより、第1のトルク目標値Tm1*を設定する。ただし、アクセル開度−トルクテーブルは一例であり、図3に示すものに限定されるものではない。
ステップS203では、モータコントローラ2は、電動車両が停止するように制御する停止制御処理を行う。具体的には、電動車両の停車間際を判断し、停車間際以前は、ステップS202で算出した第1のトルク目標値Tm1*を第3のトルク目標値Tm3*に設定し、停車間際以降は、モータ回転速度の低下とともに、後述する外乱トルク推定値Tdに収束する第2のトルク目標値Tm2*を第3のトルク目標値Tm3*に設定する。この第2のトルク目標値Tm2*は、登坂路では正トルク、降坂路では負トルク、平坦路では概ねゼロである。これにより、路面の勾配に関わらず、停車状態を維持することができる。また、停車状態では、第3のトルク目標値Tm3*は、外乱トルク推定値Tdと一致する(Tm3*=Td)。そして、第3のトルク目標値Tm3*は、モータ4に所望のモータトルクを発生させるためのモータトルク指令値Tm*として、続くステップS204に係る電流指令値算出処理に用いられる。停止制御処理の詳細については、後述する。
ステップS204では、ステップS203で算出したモータトルク指令値Tm*、モータ回転速度ωmおよび直流電圧値Vdcに基づいて、d軸電流目標値id*、q軸電流目標値iq*を求める。例えば、モータトルク指令値、モータ回転速度、および直流電圧値と、d軸電流目標値およびq軸電流目標値との関係を定めたテーブルを予め用意しておいて、このテーブルを参照することにより、d軸電流目標値id*、q軸電流目標値iq*を求める。
ステップS205では、d軸電流idおよびq軸電流iqをそれぞれ、ステップS205で求めたd軸電流目標値id*およびq軸電流目標値iq*と一致させるための電流制御を行う。このため、まず初めに、ステップS201で入力された三相交流電流値iu、iv、iwと、モータ4の回転子位相αとに基づいて、d軸電流idおよびq軸電流iqを求める。続いて、d軸、q軸電流指令値id*、iq*と、d軸、q軸電流id、iqとの偏差から、d軸、q軸電圧指令値vd、vqを算出する。なお、算出したd軸、q軸電圧指令値vd、vqに対して、d−q直交座標軸間の干渉電圧を相殺するために必要な非干渉電圧を加算するようにしてもよい。
次に、d軸、q軸電圧指令値vd、vqと、モータ4の回転子位相αから、三相交流電圧指令値vu、vv、vwを求める。そして、求めた三相交流電圧指令値vu、vv、vwと直流電圧値Vdcから、PWM信号tu(%)、tv(%)、tw(%)を求める。このようにして求めたPWM信号tu、tv、twにより、インバータ3のスイッチング素子を開閉することによって、モータ4をモータトルク指令値Tm*で指示された所望のトルクで駆動することができる。
ここで、ステップS203で行われる停止制御処理の詳細について説明する前に、本実施形態における電動車両の制御装置の、モータトルクTmからモータ回転速度ωmまでの車両モデルを構成する伝達特性Gp(s)について説明する。
図4は、車両の駆動力伝達系をモデル化した図であり、同図における各パラメータは、以下に示すとおりである。
m:電動モータのイナーシャ
w:駆動輪のイナーシャ(1軸分)
M:車体重量
d:駆動系のねじり剛性
t:タイヤと路面の摩擦に関する係数
al:オーバーオールギヤ比
r:タイヤの荷重半径
ωm:モータ回転速度
m:モータトルク
d:駆動輪トルク
F:駆動力(2軸分)
V:車体速度
ωw:駆動輪の角速度
θ:駆動軸のねじり角
バックラッシュによる不感帯を線形関数と飽和関数の差分で表現すると、図4より以下の運動方程式(1)〜(6)を導くことができる。
ただし、式(4)におけるSat(θ)は、飽和関数であり、次式(7)により定義される。
式(7)中のθBLは、モータ4から駆動軸8までのオーバーオールのギアバックラッシュ量(不感帯幅)である。
上記式(1)〜(6)をラプラス変換して、トルク指令値からモータ回転速度までの伝達特性を求めると、次式(8)で表せる。
式(8)において、Gp(s)を含む右辺第1項は、ギアバックラッシュの不感帯特性を含まない線形な伝達特性モデルを表し、第2項は、ギアバックラッシュ補償用として機能する伝達特性Gps(s)と飽和関数とからなる非線形な伝達特性モデルを表す。Gp(s)と、Gps(s)は、それぞれ以下式(9)、(10)で表される。
ただし、式(9)、(10)中のb3、b2、b1、b0、c2、c1は、それぞれ次式(11)で表される。
式(9)を整理すると、Gp(s)は、次式(12)のように表すことができる。一般的な車両では、式(12)の伝達関数の極と零点を調べると、1つの極と1つの零点は極めて近い値を示す。これは、式(12)のαとβが極めて近い値を示すことに相当する。ただし、以下式中のζpは、駆動軸ねじり振動系の減衰係数であり、ωpは駆動軸ねじり振動系の固有振動周波数である。
従って、式(12)における極零相殺(α=βと近似)を行うことにより、次式(13)に示すように、(2次)/(3次)の伝達特性Gp(s)を構成する。
続いて、モータコントローラ2で実行される停止制御処理の詳細について、図5を参照して説明する。
図5は、停止制御処理を実現するためのブロック図である。本実施形態における停止制御処理は、モータ回転速度F/Bトルク設定器501と、外乱トルク推定器502と、減算器503と、トルク比較器504と、制振制御演算器505とを用いて行われる。以下、それぞれの構成の詳細を説明する。
モータ回転速度F/Bトルク設定器501は、検出されたモータ回転速度ωmに基づいて、モータ回転速度フィードバックトルク(以下、モータ回転速度F/Bトルクと呼ぶ)Tωを算出する。詳細は図6を用いて説明する。
図6は、モータ回転速度ωmに基づいて、モータ回転速度F/BトルクTωを算出する方法を説明するための図である。モータ回転速度F/Bトルク設定器501は、乗算器601を備え、モータ回転速度ωmにゲインKvrefを乗算することにより、モータ回転速度F/BトルクTωを算出する。ただし、Kvrefは、電動車両の停止間際に電動車両を停止させるのに必要な負(マイナス)の値であり、例えば、実験データ等により適宜設定される。モータ回転速度F/BトルクTωは、モータ回転速度ωmが大きいほど、大きい制動力が得られるトルクとして設定される。
なお、モータ回転速度F/Bトルク設定器501は、モータ回転速度ωmにゲインKvrefを乗算することにより、モータ回転速度F/BトルクTωを算出するものとして説明したが、モータ回転速度ωmに対する回生トルクを定めた回生トルクテーブルや、モータ回転速度ωmの減衰率を予め記憶した減衰率テーブル等を用いて、モータ回転速度F/BトルクTωを算出してもよい。
図5に戻って説明を続ける。外乱トルク推定器502は、検出されたモータ回転速度ωmと、第3のトルク目標値Tm3*とに基づいて、外乱トルク推定値Tdを算出する。外乱トルク推定器502の詳細は、後述する。
減算器503は、モータ回転速度F/Bトルク設定器501によって算出されたモータ回転速度F/BトルクTωと、外乱トルク推定器502によって算出された外乱トルク推定値Tdとの偏差を演算して、第2のトルク目標値Tm2*を算出する。モータ回転速度ωmが低下して0に近づくと、モータ回転速度F/BトルクTωも0に近づくため、第2のトルク目標値Tm2*は、モータ回転速度ωmの低下に応じて、外乱トルク推定値Tdに収束していく。
トルク比較器504は、第1のトルク目標値Tm1*と第2のトルク目標値Tm2*の大きさを比較し、値が大きい方のトルク目標値を第3のトルク目標値Tm3*に設定する。車両の走行中、第2のトルク目標値Tm2*は第1のトルク目標値Tm1*よりも小さく、車両が減速して停車間際(車速が所定車速以下)になると、第1のトルク目標値Tm1*よりも大きくなる。従って、トルク比較器504は、第1のトルク目標値Tm1*が第2のトルク目標値Tm2*より大きければ、停車間際以前と判断して、第1のトルク目標値Tm1*を第3のトルク目標値Tm3*として設定する。また、トルク比較器504は、第2のトルク目標値Tm2*が第1のトルク目標値Tm1*より大きくなると、停車間際と判断して、第3のトルク目標値Tm3*を第1のトルク目標値Tm1*から第2のトルク目標値Tm2*に切り替える。なお、停車状態を維持するため、第2のトルク目標値Tm2*は、登坂路では正トルク、降坂路では負トルク、平坦路では概ねゼロに収束する。
制振制御演算器505は、トルク比較器504から出力される第3のトルク目標値Tm3*に対して、駆動力伝達系のねじり振動を抑制する制振制御を施して、制振制御後の第3のトルク目標値Tm3*(以下、単に第3のトルク目標値Tm3*と呼ぶ)を出力する。制振制御は、例えば、国際公開番号WO2013/157315号公報に記載された制振制御を適用する。
次に、本発明に特徴的な外乱トルク推定器502の詳細について、図7を参照して説明する。
図7は、モータ回転速度ωmと、第3のトルク目標値Tm3*とに基づいて、外乱トルク推定値Tdを算出する方法を説明するためのブロック図である。外乱トルク推定器502は、制御ブロック701と、駆動軸ねじり角推定器702と、リミッタ703と制御ブロック704とで構成される非線形な伝達特性モデル710と、加算器705と、減算器706と、制御ブロック707とを備える。
制御ブロック701は、上記式(13)で表されるGp(s)なる線形な伝達特性を有するフィルタとしての機能を担っており、第3のトルク目標値Tm3*に対してフィルタリング処理を施すことにより、第1のモータ回転速度推定値を算出する。算出した第1のモータ回転速度推定値は、加算器705へ出力される。
駆動軸ねじり角推定器702は、第3のトルク目標値Tm3*に基づいて、駆動軸ねじり角推定値θdを算出する。駆動軸ねじり角推定器702の詳細は、図8を参照して説明する。
図8は、第3のトルク目標値Tm3*に基づいて、駆動軸ねじり角推定値θdを算出する方法を説明するためのブロック図である。図8に示すブロック図は、以下に説明する式(16)に基づいて導出される。
まず、上記式(1)〜(6)をラプラス変換すると、駆動軸ねじり角速度ωm/N−ωwは、次式(14)で表される。なお、Nはファイナルギア比を表す。
ただし、式(14)中のHw(s)は、次式(15)で表される。
上記式(4)、(6)、(14)より、次式(16)が得られる。
式(16)から、図8で示すブロック図が導出される。図8は、式(16)に基づいて構成された、ギアバックラッシュの不感帯特性を含む、モータトルクから駆動軸ねじり角までの特性をモデル化した車両モデル810を表したものである。なお、式(16)中のTmは、第3のトルク目標値Tm3*に対応し、式(4)に基づく(θ−Sat(θ))は、リミッタ801に対応する。これにより、駆動軸ねじり角推定器702は、第3のトルク目標値Tm3*に基づいて、駆動軸ねじり角推定値θdを算出することができる。
図7に戻って説明を続ける。駆動軸ねじり角推定器702から出力される駆動軸ねじり角推定値は、非線形な伝達特性モデル710に入力される。伝達特性モデル710は、リミッタ703と、上記式(10)で表されるGps(s)なる伝達特性を有する制御ブロック704とで構成される。
リミッタ703では、上記式(7)に基づいて、駆動軸ねじり角推定値θdから、駆動軸ねじり角推定値リミット値が算出される。算出された値は、制御ブロック704に出力される。
制御ブロック704は、上記式(10)で表されるGps(s)なる伝達特性を有するフィルタとしての機能を担っている。Gps(s)は、不感帯特性を補償するように構成されたギアバックアッシュ補償用フィルタとして機能する。制御ブロック704は、リミッタ703からの出力である駆動軸ねじり角推定値リミット値に基づいて、ギアバックラッシュの不感帯特性を補償するためのモータ回転速度補正値を算出する。
加算器705は、線形な伝達特性を有する制御ブロック701の出力である第1のモータ回転速度推定値と、非線形な伝達特性モデル710の出力であるモータ回転速度補正値とを加算して、第2のモータ回転速度推定値を算出する。
これにより、線形な伝達特性Gp(s)を用いて算出される第1のモータ回転速度推定値が、非線形な伝達特性モデル710を用いて算出されたモータ回転速度補正値によって補正される。第1のモータ回転速度推定値がこのように補正されることで、線形な伝達特性有するGp(s)を用いて算出される第1のモータ回転速度推定値から、非線形な特性を有するギアバックラッシュの不感帯特性が補償される。これにより、車両がギアバックラッシュ区間を跨ぐ区間が生じても、第3のトルク目標値Tm3*から、モータ回転速度を適切に推定することができる。
ただし、非線形な伝達特性モデル710は、上述の構成に限らず、リミッタ703を用いずに、駆動軸ねじり角推定器702が備えるリミッタ801(図8参照)と、制御ブロック704とで構成されても良い。その場合は、リミッタ801から出力される駆動軸ねじり角推定値リミット値は、リミッタ703を介さずに、制御ブロック704へ直接入力される。
減算器706は、モータ回転速度ωmと、第2のモータ回転速度推定値との差分を演算して、モータ回転速度偏差を算出する。
制御ブロック707は、ローパスフィルタH(s)と、下記式(17)に基づき構成される伝達特性Gr(s)の逆系とから構成されるフィルタとしての機能を担っており、モータ回転速度偏差に対してフィルタリング処理を施すことにより、外乱トルク推定値を算出する。
伝達特性Gr(s)は、第3のトルク目標値Tm3*の算出において、図5で示す制振制御演算器505を併用する際に用いられる車両応答である。Gr(s)は、上記式(13)で表されるGp(s)と、制振制御演算器505を構成する制振制御アルゴリズムにより、次式(17)で表される。
ただし、式(17)中のζrは、駆動軸ねじり振動系の規範減衰係数を表す。
なお、第3のトルク目標値Tm3*の算出において制振制御を併用しない場合は、制振制御との干渉を考慮する必要がないので、制御ブロック707は、伝達特性Gr(s)に代えて、上記式(13)で表される伝達特性Gp(s)を用いて構成される。また、制振制御を併用しない場合は、図5で示すトルク比較器504の出力を第3のトルク目標値Tm3*とする。
以上の処理により外乱トルク推定値を算出することにより、登坂路における停止間際に車両がギアバックラッシュを跨ぐシーンにおいても、ギアバックラッシュの不感帯特性を補償して、外乱トルク推定値を算出することができるので、外乱トルク推定値の変動を抑制し、車両を滑らかに停止させることができる。
以上、第1実施形態の電動車両の制御装置は、車両情報に基づいてモータトルク指令値を設定し、駆動輪9a、9bにつながるモータ4のトルクを制御する電動車両の制御方法を実現する制御装置であって、ドライバのアクセル操作量を検出し、モータ回転速度ωmに比例する車両パラメータを検出し、第3のトルク目標値Tm3*を入力して、モータトルクが車両の駆動軸に伝達されないギアバックラッシュの不感帯特性を含むモータトルクからモータ4の回転速度までの非線形な伝達特性モデル710を用いて、モータに作用する外乱トルク推定値を推定する。そして、アクセル操作量が低下して電動車両が停車間際になると、車両パラメータの低下とともにモータ4のトルクを外乱トルクに収束させる。
これにより、例えば登坂路における停止間際にモータトルクが負から正に変化する場面においても外乱トルク推定値を正確に算出することができるので、車両モデルと実車との間のモデル化誤差の影響による外乱トルク推定値の変動を抑制し、外乱トルク推定値の変動に起因する加速度ショックを抑制することができる。
また、第1実施形態の電動車両の制御装置は、モータトルク指令値としての第3のトルク目標値Tm3*に基づいて駆動軸ねじり角推定値θdを算出し、第3のトルク目標値Tm3*を入力して、不感帯特性を含まないモータトルクからモータ4の回転速度までの線形な伝達特性モデルGp(s)を用いて、第1のモータ回転速度推定値を算出し、駆動軸ねじり角推定値θdを入力して、上下限値を制限するリミッタ703と、ギアバックラッシュを補償するバックラッシュ補償用フィルタGps(s)とで構成される非線形な伝達特性モデル710を用いて、モータ回転速度補正値を算出する。そして、第1のモータ回転速度推定値をモータ回転速度補正値により補正した第2のモータ回転速度推定値とモータ回転速度ωmとに基づいて、第2のモータ回転速度偏差を算出する。そして、モータ回転速度偏差に対して、伝達特性Gp(s)の逆モデル1/Gp(s)と、ローパスフィルタH(s)とで構成されるフィルタを用いたフィルタリング処理を施すことによって外乱トルク推定値を算出する。
これにより、線形のバックラッシュ補償用フィルタとして機能するGps(s)と飽和関数とで構成される非線形な伝達特性モデルでギアバックラッシュの不感帯特性を模擬することができるので、バックラッシュがある場合と、バックラッシュが無い場合とで制御を切り替える必要がなく、ギアバックラッシュの不感帯特性を補償することができる。すなわち、車両状態に応じた複雑な条件分岐を要さずに、演算式のみでギアバックラッシュを補償することができる。
また、第1実施形態の電動車両の制御装置は、モータトルクからモータ回転速度ωmまでの駆動力伝達系のねじり振動を抑制する制振制御(制振制御演算器505)を施すことにより第3のトルク目標値Tm3*が算出され、第3のトルク目標値Tm3*に基づいて外乱トルクが推定される場合は、モータトルク指令値としての第3のトルク目標値Tm3*に基づいて駆動軸ねじり角推定値を算出し、第3のトルク目標値Tm3*を入力して、不感帯特性を含まないモータトルクからモータ4の回転速度までの線形な伝達特性モデルGp(s)を用いて、第1のモータ回転速度推定値を算出し、駆動軸ねじり角推定値θdを入力して、上下限値を制限するリミッタ703と、ギアバックラッシュを補償するバックラッシュ補償用フィルタGps(s)とで構成される非線形な伝達特性モデル710を用いて、モータ回転速度補正値を算出する。そして、第1のモータ回転速度推定値をモータ回転速度補正値により補正した第2のモータ回転速度推定値とモータ回転速度ωmとに基づいて、第2のモータ回転速度偏差を算出する。そして、伝達特性Gp(s)と、モータトルク指令値からモータ回転速度までの駆動力伝達系のねじり振動を抑制する制振制御のアルゴリズムとから導かれる伝達特性Gr(s)の逆モデル1/Gr(s)と、ローパスフィルタH(s)とで構成されるフィルタを用いたフィルタリング処理を施すことによって外乱トルクを推定する。
これにより、外乱トルク推定値の算出において、第3のトルク目標値Tm3*の算出における制振制御が考慮されるので、当該制振制御に干渉することなく、外乱トルク推定値を適切に推定することができる。
また、第1実施形態の電動車両の制御装置によれば、リミッタ703、801の上下限値は、ギアバックラッシュの不感帯幅に基づいて算出される。これにより、ギアバックラッシュに対する補償量を算出することができる。
また、第1実施形態の電動車両の制御装置によれば、駆動軸ねじり角推定値は、モータトルク指令値を入力して、ギアバックラッシュの不感帯特性を含む、モータトルクから駆動軸ねじり角速度までの特性をモデル化した車両モデル810を用いて算出される。これにより、駆動輪9a、9bの回転速度を検出するセンサ等を用いることなく、駆動軸ねじり角推定値を算出することができる。
−第2実施形態−
第2実施形態は、第1実施形態とは、図7を参照して説明した外乱トルク推定器502の構成が異なる。以下、第2実施形態における外乱トルク推定器502の詳細について、図9および図10を参照して説明する。
図9は、モータ回転速度ωmと、第3のトルク目標値Tm3*とに基づいて、外乱トルク推定値Tdを算出する方法を説明するためのブロック図である。本実施形態の外乱トルク推定器502は、制御ブロック901と、駆動軸ねじり角推定器902と、リミッタ903と制御ブロック904とで構成される非線形な伝達特性モデル910と、加算器905と、減算器906と、制御ブロック907とを備える。
制御ブロック901は、上記式(13)で表されるGp(s)なる線形な伝達特性を有するフィルタとしての機能を担っており、第3のトルク目標値Tm3*に対してフィルタリング処理を施すことにより、第1のモータ回転速度推定値を算出する。算出した第1のモータ回転速度推定値は、加算器905へ出力される。
駆動軸ねじり角推定器902は、第3のトルク目標値Tm3*と、外乱トルク推定値とに基づいて、駆動軸ねじり角推定値θdを算出する。駆動軸ねじり角推定器902の詳細は、図10を参照して説明する。
図10は、第3のトルク目標値Tm3*と外乱トルク推定値とに基づいて、駆動軸ねじり角推定値θdを算出する方法を説明するためのブロック図である。以下、駆動軸ねじり角推定値θdを算出するために行われる具体的な処理について説明する。
ギアバックラッシュによる不感帯を線形関数と飽和関数の差分で表現した運動方程式(1)〜(6)に対して、主に勾配外乱を示す車体駆動力外乱Fdvと、ブレーキ制動や、ころがり摩擦等の外乱を示す駆動輪外乱Fdwとを車両に作用する外乱として考慮すると、車両の運動方程式は、以下式(18)〜(23)で表される。
ただし、式(19)中のFdvは車体駆動力外乱を表し、式(20)中のFdwは、2輪分の駆動輪外乱を表す。
式(18)〜(23)をラプラス変換して、車体駆動力外乱Fdvと駆動輪外乱Fdwとが考慮された、モータトルク指令値Tmからモータ回転速度ωmまでの伝達特性を求めると、次式(24)で表される。
ただし、式(24)中の関数、Gp(s)、Gps(S)、Gdw1(s)、Gdv1(2)は、それぞれ、以下式(25)〜(28)で表される。
ただし、式(27)中のd11、式(28)中のd10は、次式(29)の通りである。
式(24)、(27)、(28)より、外乱トルクに関する項をdと置いて整理すると、次式(30)のように表される。
次に、駆動軸ねじり角θを算出する。式(18)〜(23)をラプラス変換して、駆動軸ねじり角の伝達関数を算出すると、次式(31)で表される。
ただし、式(31)中のd21、d20は次式(32)の通りである。
また、式(30)より、式(31)は、外乱トルクに関する項をdに置き換えて、次式(33)のように変形することができる。
式(33)中のGd´(s)は、次式(34)の通りである。
式(34)は、分子次数(3次)が分母次数(1次)よりも大きく、いわゆる非プロパーな伝達関数である。したがって、非プロパーを解消するため、Gd´(s)に対して、ローパスフィルタGL(s)=ωn 2/(s2+2ωns+ωn 2)を施す処理を行うことにより、次式(35)のとおり、3次/3次のプロパーな伝達関数を構成する。
ただし、ωnは、ローパスフィルタGL(s)のカットオフ周波数である。
式(21)、(33)、(35)から、次式(36)を得ることができる。
そして、式(36)から、図10のブロック図が導出される。図10は、ギアバックラッシュの不感帯特性を含む、モータトルクから駆動軸ねじり角までの特性をモデル化した車両モデル1010と、車両モデル1010に入力される外乱トルク推定値とをブロック図で表したものである。これにより、駆動軸ねじり角推定器902は、第3のトルク目標値Tm3*と、外乱トルク推定値とに基づいて、駆動軸ねじり角推定値θdを算出することができる。
図9に戻って説明を続ける。駆動軸ねじり角推定器902から出力される駆動軸ねじり角推定値は、非線形な伝達特性モデル910に入力される。伝達特性モデル910は、リミッタ903と、上記式(10)で表されるGps(s)なる伝達特性を有する制御ブロック904とで構成される。
リミッタ903では、上記式(7)に基づいて、駆動軸ねじり角推定値θdから、駆動軸ねじり角推定値リミット値が算出される。算出された値は、制御ブロック904に出力される。
制御ブロック904は、上記式(10)で表されるGps(s)なる伝達特性を有するフィルタとしての機能を担っており、ギアバックラッシュ補償用フィルタとして機能する。制御ブロック904は、リミッタ903からの出力である駆動軸ねじり角推定値リミット値に基づいて、ギアバックラッシュの不感帯特性を補償するためのモータ回転速度補正値を算出する。
加算器905は、線形な伝達特性を有する制御ブロック901の出力である第1のモータ回転速度推定値と、非線形な伝達特性を有する伝達特性モデル910の出力であるモータ回転速度補正値とを加算して、第2のモータ回転速度推定値を算出する。
これにより、線形な伝達特性を有する伝達特性Gp(s)を用いて算出される第1のモータ回転速度推定値が、非線形な伝達特性モデル910を用いて算出されたモータ回転速度補正値により補正される。第1のモータ回転速度推定値がこのように補正されることで、線形な伝達特性を有するGp(s)を用いて算出される第1のモータ回転速度推定値から、非線形な特性を有するギアバックラッシュの不感帯特性が補償される。
さらに、式(36)中においてGd(s)・dが加算されていることから示されるように、駆動軸ねじり角推定器902には、外乱トルク推定値がフィードバック入力される。これにより、車両モデル1010が外乱トルク推定値により補正され、勾配等の外乱によって生じる駆動軸ねじり角の誤差を補償することができる。これにより、駆動軸ねじり角推定値をより正確に推定することができるので、車両がギアバックラッシュ区間を跨ぐ区間が生じても、第3のトルク目標値Tm3*と、外乱トルク推定値とに基づいて、モータ回転速度を正確に推定することができる。
ただし、非線形な伝達特性モデル910は、上述の構成に限らず、リミッタ903を用いずに、図10のリミッタ1001と、制御ブロック904とで構成されても良い。その場合は、リミッタ1001から出力される駆動軸ねじり角推定値リミット値は、リミッタ903を介さずに、制御ブロック904へ直接出力される。
減算器906は、モータ回転速度ωmと、第2のモータ回転速度推定値との差分を演算して、モータ回転速度偏差を算出する。
制御ブロック907は、H(s)/Gp(s)なる伝達特性を有するフィルタとしての機能を担っており、モータ回転速度偏差に対してフィルタリング処理を施すことにより、外乱トルク推定値を算出する。
伝達特性Gp(s)は、上述の通り、上記式(13)で表される線形な伝達特性を有するフィルタである。ローパスフィルタH(s)は、ローパスフィルタH(s)の分母次数と分子次数との差分が伝達特性Gp(s)の分母次数と分子次数との差分以上となるように設定される。ただし、本実施形態においては、モータトルクからモータ回転速度までの駆動力伝達系のねじり振動を抑制する制振制御(図5、制振制御演算器505を参照)を適用することによりモータトルク指令値が算出されている。このため、ローパスフィルタH(s)のカットオフ周波数を、駆動軸ねじり振動系の固有周波数よりも小さい値に設定する。これにより、制振制御に干渉することになく、ギアバックラッシュの不感帯特性が補償された外乱トルク推定値を適切に推定することができる。
以上の処理によって外乱トルク推定値を算出することにより、登坂路における停止間際に車両がギアバックラッシュを跨ぐ場面においても、外乱トルク推定値の変動を抑制し、車両を滑らかに停止させることができる。
以上、第2実施形態の電動車両の制御装置は、モータトルクからモータ回転速度ωmまでの駆動力伝達系のねじり振動を抑制する制振制御(制振制御演算器505)を施すことにより第3のトルク目標値Tm3*を算出し、第3のトルク目標値Tm3*に基づいて外乱トルクが推定される場合は、ローパスフィルタH(s)のカットオフ周波数を、駆動力伝達系のねじり振動の固有周波数よりも低く設定する。
これにより、第3のトルク目標値Tm3*の算出に係る制振制御に干渉することなく、外乱トルク推定値を適切に推定することができる。
また、第2実施形態の電動車両の制御装置によれば、駆動軸ねじり角推定値の算出に用いられる車両モデル1010は、外乱トルク推定値に応じて補正される。これにより、駆動軸ねじり角の推定に際して、勾配等の外乱によって生じる駆動軸ねじり角の推定誤差を補償することが可能となり、駆動軸ねじり角を正確に推定することができるので、外乱トルク推定値をより正確に算出することができる。
ここで、車両が、登坂路において停止制御を実施する場面において、上述した第1実施形態および第2実施形態を電動車両に適用した場合の制御結果を、従来例による制御結果との比較に基づいて説明する。
図11は、車両が登坂路において停止制御を実施した場合のタイムチャートである。図11は、上から順に、モータ回転速度、モータトルク指令値、車両前後加速度、外乱トルク推定値を表している。図11(a)は従来例、図11(b)は第1実施形態、図11(c)は、第2実施形態に係る制御結果である。
時刻t0では、図2のステップS202で算出した第1のトルク目標値Tm1*により減速する。
時刻t1では、図5で示すトルク比較器504において、第2のトルク目標値Tm2*が第1のトルク目標値Tm1*を上回ることで車両が停車間際と判断され、最終トルク目標値としての第3のトルク目標値が、第1のトルク目標値Tm1*から第2のトルク目標値Tm2*に切り替わる。
時刻t2の直前では、モータトルク指令値が負から正に変化するため、ギアバックラッシュを跨ぐ区間が発生する。
この時、従来例による制御(図11(a))では、線形な伝達特性Gp(s)を用いて外乱トルク推定値が算出されるため、非線形な特性を有するギアバックラッシュの不感帯特性を適切に補償することができず、伝達特性Gp(s)で構成される車両モデルと実車との間にモデル化誤差が生じる。そのため、外乱トルク推定値が振動的に変動してしまう。結果、外乱トルク推定値の変動に応じてモータトルク指令値が変動してしまい、車両前後加速度の振動に伴う加速度ショックが発生している。
他方、第一実施形態による制御(図11(b))では、リミッタ703と、伝達特性Gps(s)とで構成される非線形な伝達特性モデル710を用いて外乱トルク推定値を算出するため、ギアバックラッシュの不感帯特性が補償され、伝達特性Gp(s)で構成される車両モデルと実車との間のモデル化誤差の影響が低減される。結果、外乱トルク推定値の変動が低減されるため、モータトルク指令値の変動も低減されるので、車両前後加速度の振動を抑制することができる。
第2実施形態による制御(図11(c))では、リミッタ903と、伝達特性Gps(s)とで構成される非線形な伝達特性モデル910を用いるのに加えて、駆動軸ねじり角推定器902に外乱トルク推定値をフィードバックさせ、勾配外乱によって生じる駆動軸ねじり角の誤差を補償することで駆動軸ねじり角推定値をより正確に推定する。そして、この駆動軸ねじり角推定値に基づいて、外乱トルク推定値が算出される。このため、伝達特性Gp(s)で構成される車用モデルと実車との間のモデル化誤差の影響を完全に補償できている。結果、外乱トルク推定値の変動が抑制され、モータトルク指令値の変動も抑制されるため、車両前後加速度の振動を伴わない滑らかな停車を実現することができる。
時刻t3では、モータトルク指令値は外乱トルク推定値に、モータ回転速度はゼロに漸近的に収束し、加速度振動の無い、滑らかな停車を行う。
そして、時刻t3以降は、停車状態が保持される。
以上、第1実施形態と、第2実施形態とで一態様を例示した本発明を電動車両に適用することで、車両がギアのバックラッシュシーンを跨ぐシーンにおいても、車両を滑らかに減速ないし停車させることができる。
本発明は、上述した一実施形態に限定されることはなく、様々な変形や応用が可能である。例えば、上述した説明では、アクセル操作量が減少またはゼロになり、かつ、電動車両が停車間際になると、モータ4の回転速度の低下とともにモータトルク指令値Tm*を外乱トルク推定値Td(またはゼロ)に収束させるものとして説明した。しかし、車輪速や車体速度、ドライブシャフトの回転速度などの速度パラメータは、電動モータ4の回転速度と比例関係にあるため、電動モータ4の回転速度に比例する速度パラメータの低下とともにモータトルク指令値Tm*を外乱トルク推定値Td(またはゼロ)に収束させるようにしてもよい。
2…モータコントローラ(外乱トルク推定部、モータトルク制御部)
4…モータ
6…回転センサ(車両パラメータ検出部)
8…駆動軸
9a、9b…駆動輪

Claims (8)

  1. 車両情報に基づいてモータトルク指令値を設定し、駆動輪につながるモータのトルクを制御する電動車両の制御方法において、
    ドライバのアクセル操作量を検出し、
    前記モータの回転速度に比例する車両パラメータを検出し、
    前記モータトルク指令値を入力して、モータトルクが車両の駆動軸に伝達されないギアバックラッシュの不感帯特性を含むモータトルクから前記モータの回転速度までの非線形な伝達特性モデルを用いて前記モータに作用する外乱トルクを推定し、
    前記アクセル操作量が低下して電動車両が停車間際になると、前記車両パラメータの低下とともに前記モータのトルクを前記外乱トルクに収束させる、
    電動車両の制御方法。
  2. 前記モータトルク指令値に基づいて駆動軸ねじり角推定値を算出し、
    前記モータトルク指令値を入力して、前記不感帯特性を含まないモータトルクから前記モータの回転速度までの線形な伝達特性モデルGp(s)を用いてモータ回転速度推定値を算出し、
    前記駆動軸ねじり角推定値を入力して、上下限値を制限するリミッタと、前記ギアバックラッシュを補償するバックラッシュ補償用フィルタGps(s)とで構成される前記非線形な伝達特性モデルを用いてモータ回転速度補正値を算出し、
    前記モータ回転速度推定値を前記モータ回転速度補正値により補正した補正後モータ回転速度推定値と、前記モータの回転速度の検出値とに基づいて、モータ回転速度偏差を算出し、
    前記モータ回転速度偏差に対して、前記伝達特性モデルGp(s)の逆モデル1/Gp(s)と、ローパスフィルタH(s)とで構成されるフィルタを用いたフィルタリング処理を施すことによって前記外乱トルクを算出する、
    請求項1に記載の電動車両の制御方法。
  3. モータトルクからモータ回転速度までの駆動力伝達系のねじり振動を抑制する制振制御を施すことにより前記モータトルク指令値が算出され、当該モータトルク指令値に基づいて前記外乱トルクが推定される場合は、
    前記モータトルク指令値に基づいて駆動軸ねじり角推定値を算出し、
    前記モータトルク指令値を入力して、前記不感帯特性を含まないモータトルク指令値から前記モータの回転速度までの線形な伝達特性モデルGp(s)を用いてモータ回転速度推定値を算出し、
    前記駆動軸ねじり角推定値を入力して、上下限値を制限するリミッタと、前記ギアバックラッシュを補償するバックラッシュ補償用フィルタGps(s)とで構成される前記非線形な伝達特性モデルを用いてモータ回転速度補正値を算出し、
    前記モータ回転速度推定値を前記モータ回転速度補正値により補正した補正後モータ回転速度推定値と、前記モータの回転速度の検出値とに基づいて、モータ回転速度偏差を算出し、
    前記モータ回転速度偏差に対して、前記伝達特性モデルGp(s)と、モータトルク指令値からモータ回転速度までの駆動力伝達系のねじり振動を抑制する制振制御のアルゴリズムとから導かれる伝達特性Gr(s)の逆モデル1/Gr(s)と、ローパスフィルタH(s)とで構成されるフィルタを用いたフィルタリング処理を施すことによって前記外乱トルクを推定する、
    請求項1に記載の電動車両の制御方法。
  4. モータトルクからモータ回転速度までの駆動力伝達系のねじり振動を抑制する制振制御を施すことにより前記モータトルク指令値が算出され、当該モータトルク指令値に基づいて前記外乱トルクが推定される場合は、
    前記ローパスフィルタH(s)のカットオフ周波数を、前記駆動力伝達系のねじり振動の固有周波数よりも低く設定する、
    請求項2に記載の電動車両の制御方法。
  5. 前記リミッタの上下限値は、前記ギアバックラッシュの不感帯幅に基づいて算出される、
    請求項2から4のいずれか1項に記載の電動車両の制御方法。
  6. 前記駆動軸ねじり角推定値は、前記モータトルク指令値を入力して、前記ギアバックラッシュの不感帯特性を含む、モータトルクから駆動軸ねじり角までの特性をモデル化した車両モデルを用いて算出される、
    請求項2から5のいずれか1項に記載の電動車両の制御方法。
  7. 前記駆動軸ねじり角推定値の算出に用いられる前記車両モデルは、前記外乱トルクに応じて補正される、
    請求項6に記載の電動車両の制御方法。
  8. 車両情報に基づいてモータトルク指令値を設定し、駆動輪につながるモータのトルクを制御する電動車両の制御装置において、
    ドライバのアクセル操作量を検出するアクセル操作量検出部と、
    前記モータの回転速度に比例する車両パラメータを検出する車両パラメータ検出部と、
    前記モータトルク指令値を入力して、モータトルクが車両の駆動軸に伝達されないギアバックラッシュの不感帯特性を含むモータトルクから前記モータの回転速度までの非線形な伝達特性モデルを用いて前記モータに作用する外乱トルクを推定する外乱トルク推定部と、
    前記アクセル操作量が低下して電動車両が停車間際になると、前記車両パラメータの低下とともに前記モータのトルクを前記外乱トルクに収束させるモータトルク制御部と、を備える、
    電動車両の制御装置。
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