JP2017082245A - 粘着剤組成物及び粘着フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外の2種類以上の(メタ)アクリレートのモノマーを、共重合させて得られたアクリル系ポリマーの合計100gに対して、下記の一般式CH2=C(R1)−COO−(R2−O)n−R3(式中、R1は水素原子又はメチル基を、R2は炭素数2〜4のアルキレン基を、R3は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基をそれぞれ示し、nは1〜23の整数を示す。)で表されるポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートから選択されたポリアルキレンオキサイド鎖を有するビニルモノマーの合計を0.1〜20モルとする割合で含有してなり、アクリル系ポリマーと、ポリアルキレンオキサイド鎖を有するビニルモノマーと、光重合開始剤と、架橋剤とを含む。
【選択図】なし
Description
さらに、本発明に係わる粘着剤組成物は、光学部材の他に、電気部材、及び電子回路部材などを貼合わせる電気絶縁材料として使用できる。又、本発明に係わる粘着フィルムは、電気絶縁性を有したタッチパネル用フィルム、電子ペーパー用フィル、及びディスプレイ用フィルムとして使用できる。
特許文献1には、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルムに微細空洞を含有させた電気絶縁材料の、一方の面に発泡型粘着剤層が積層された電気絶縁部材が記載されている。
また、特許文献2には、絶縁材料の誘電率が2.5以下となるように、ガラス、シリカなどの微小空球体(マイクロバルーン)を含有させた粘着剤を使用した粘着フィルムが記載されている。
また、特許文献3には、ポリオレフィン系樹脂に、シリカを含有させて無機質含有微多孔膜からなる電線用絶縁フィルムが記載されている。
また、低誘電率の絶縁用粘着フィルムとして、基材に、低誘電率の液晶ポリマーを使用することが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
また、特許文献5には、周波数100kHzにおける比誘電率が3.5以下の粘着剤層を得るため、炭素数10〜18のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを30〜99.5重量%および環状窒素含有モノマーを0.5〜50重量%を含むモノマー成分を重合することにより得られた(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤層とすることが提案されている。
しかし、静電容量式のタッチパネルは、電磁界の変化を感知するセンサであることからノイズの影響を受け易く、接触した位置の誤認識を防ぐために、その積層構造の中に低誘電率膜を積層することや、静電容量センサの配線ラインに低誘電率の部材を設けることが提案されている(例えば、特許文献6、7参照)。
特許文献8については、後述する。
また、特許文献5に係わる粘着剤は、比誘電率が周波数100kHzで3.5以下の優れた絶縁性を有するが、現在のタッチパネルの主流な駆動周波数である1MHz前後での比誘電率は記載されていない。
また、特許文献6、7には、静電容量式のタッチパネルの誤認識を防ぐために、その積層構造の中に低誘電率膜を積層することや、静電容量センサの配線ラインに低比誘電率の部材を設けることが記載されているが、使用する低誘電率の部材の製造方法は、具体的に示されていない。
被着体表面に印刷層などによる段差があると、粘着フィルムがその段差に追従できず、生じた浮きによって気泡を巻き込んでしまい、粘着フィルムと被着体との間に隙間が生じるという問題があった。この問題を解決するために、従来から様々な取り組みが行なわれている。上記の要求事項および問題を克服した粘着フィルムの製造方法、粘着剤組成物及び粘着フィルムが必要とされている。
この印刷段差への追従性を向上させる方法としては、特許文献8に係わる粘着フィルムのように、粘着剤層の貯蔵弾性率を低くする方法が知られている。しかし、粘着剤層の貯蔵弾性率を低くすると、粘着剤層が変形を起こし易くなり、被着体を長期間に渡り固定し、粘着剤層の形状を保持することができなくなる可能性がある。
そのため、本発明に係わる粘着フィルムは、熱硬化させた後であって、紫外線の照射によって架橋させる前の粘着フィルムの形態で使用し、印刷段差を有する被着体に貼り合わせた後で、光照射することにより最終的に架橋させた粘着剤層とすることができる。
また、印刷段差を有していない被着体に対しては、加熱及び光照射して共重合及び架橋させた粘着剤層を有する粘着フィルムの形態で使用することができる。
工程(1):ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外の、2種類以上の(メタ)アクリレートのモノマーを共重合させてアクリル系ポリマーを得る工程と、
工程(2):前記アクリル系ポリマーの合計100gに対して、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの化合物群から選択された1種又は2種以上のポリアルキレンオキサイド鎖を有するビニルモノマーの合計を0.1〜20モルとする割合で、前記アクリル系ポリマーと、前記ポリアルキレンオキサイド鎖を有するビニルモノマーと、光重合開始剤と、架橋剤とを含む粘着剤組成物を調製する工程と、
工程(3):事前に準備した離型フィルムの片面に、前記粘着剤組成物を塗布した後、加熱して共重合させて、周波数1MHzにおける比誘電率が3.5以下である粘着剤層を形成し、離型フィルム/前記粘着剤層/離型フィルムの構成を有する、粘着フィルムを作製する工程と、
を順に経ることを特徴とする粘着フィルムの製造方法を提供する。
工程(1):ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外の、2種類以上の(メタ)アクリレートのモノマーを共重合させてアクリル系ポリマーを得る工程と、
工程(2):前記アクリル系ポリマーの合計100gに対して、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの化合物群から選択された1種又は2種以上のポリアルキレンオキサイド鎖を有するビニルモノマーの合計を0.1〜20モルとする割合で、前記アクリル系ポリマーと、前記ポリアルキレンオキサイド鎖を有するビニルモノマーと、光重合開始剤と、架橋剤とを含む粘着剤組成物を調製する工程と、
工程(3):事前に準備した基材フィルムの片面に、前記粘着剤組成物を塗布した後、加熱して共重合させて、周波数1MHzにおける比誘電率が3.5以下である粘着剤層を形成し、粘着フィルムを作製する工程と、
を順に経ることを特徴とする粘着フィルムの製造方法を提供する。
CH2=C(R1)−COO−(R2−O)n−R3 (1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基を、R2は炭素数2〜4のアルキレン基を、R3は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基をそれぞれ示し、nは1〜23の整数を示す)で表されることが好ましい。
CH2=C(R1)−COO−(R2−O)n−R3 (1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基を、R2は炭素数2〜4のアルキレン基を、R3は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基をそれぞれ示し、nは1〜23の整数を示す)で表されることが好ましい。
本発明の粘着フィルムの製造方法は、次の工程(1)〜(3)、
工程(1):ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外の、2種類以上の(メタ)アクリレートのモノマーを共重合させてアクリル系ポリマーを得る工程と、
工程(2):前記アクリル系ポリマーの合計100gに対して、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの化合物群から選択された1種又は2種以上のポリアルキレンオキサイド鎖を有するビニルモノマーの合計を0.1〜20モルとする割合で、前記アクリル系ポリマーと、前記ポリアルキレンオキサイド鎖を有するビニルモノマーと、光重合開始剤と、架橋剤とを含む粘着剤組成物を調製する工程と、
工程(3):事前に準備したフィルムの片面に、前記粘着剤組成物を塗布した後、加熱して共重合させて、周波数1MHzにおける比誘電率が3.5以下である粘着剤層を形成し、粘着フィルムを作製する工程と、
を順に経ることを特徴とする。ここで、工程(3)に用いるフィルムは、基材フィルムでもよく、離型フィルムでもよい。
(1)本発明に係わる粘着剤層は、アクリル系ポリマーとポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとを含有した粘着剤組成物を共重合及び架橋したものである。共重合及び架橋後のアクリル系共重合体は、側鎖として、多数のポリアルキレンオキサイド鎖(ここでは、「ひげ」と略称する)が長く伸びている。このため、アクリル系共重合体(ポリマー)は、長さ方向にのみに長く伸びているのではなくて、長さ方向と直交する横幅方向にも長く伸びている「ひげ」の効果で、太さのある形状となっている。いわば、高周波の電荷が印加されても分極し難い団子状の構造をしていることが、比誘電率を低減させる。
(2)また、アクリル系共重合体(ポリマー)の側鎖として伸びている、多数の「ひげ」が干渉し合うことによって、アクリル系共重合体(ポリマー)の骨格部がお互いに接近するのを妨げ、アクリル系共重合体を架橋させた粘着剤層に、多数の空気層からなる微細な空隙を発生させて、比誘電率を低減させる。
式(1)で表されるポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートは、CH2=C(R1)―CO―で表される(メタ)アクリロイル基を、1分子に1つ有する、単官能(メタ)アクリレートである。アルキレンオキサイド鎖の一つの末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物、又は、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖、ブチレンオキサイド鎖などがランダムもしくはブロックで結合した、アルキレンオキサイド鎖の一つの末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物のいずれでもよい。
CH2=C(R1)−COO−(R2−O)n−R3 (1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基を、R2は炭素数2〜4のアルキレン基を、R3は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基をそれぞれ示し、nは1〜23の整数を示す)で表されることが好ましい。
ポリプロピレンオキサイド鎖を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのモノマーとしては、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等を挙げられる。
ポリブチレンオキサイド鎖を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのモノマーとしては、メトキシポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
さらに、ポリエチレンオキサイド鎖と、ポリプロピレンオキサイド鎖の両方を有するポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのモノマーとしては、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
例えば、新中村化学工業株式会社の商品名としては、NKエステルAM30G(メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリアルキレンオキサイド鎖の繰り返し数:n=3)、NKエステルM40G(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、n=4)、NKエステルAM90G(メトキシポリエチレングリコールアクリレート、n=9)、NKエステルM90G(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、n=9)、NKエステルAM130G(メトキシポリエチレングリコールアクリレート、n=13)、NKエステルAM230G(メトキシポリエチレングリコールアクリレート、n=23)などが挙げられる。
また、共栄社化学株式会社の商品名としては、ライトアクリレートMTG−A(メトキシトリエチレングリコールアクリレート,n=3)、ライトアクリレート130A(メトキシポリエチレングリコールアクリレート、n=9)などが挙げられる。
また、日油株式会社の商品名としては、ブレンマーAE−200(ポリエチレングリコールアクリレート、n=4.5)、ブレンマーAE−350(ポリエチレングリコールアクリレート、n=8)、ブレンマーAE−400(ポリエチレングリコールアクリレート、n=10)、ブレンマーPE−200(ポリエチレングリコールメタクリレート、n=4.5)、ブレンマーPE−350(ポリエチレングリコールメタクリレート、n=8)、ブレンマーAP400(ポリプロピレングリコールアクリレート、n=6)、ブレンマーAP550(ポリプロピレングリコールアクリレート、n=9)、ブレンマーPP−500(ポリプロピレングリコールメタクリレート、n=9)、ブレンマーPP−800(ポリプロピレングリコールメタクリレート、n=13)、ブレンマーPP−1000(ポリプロピレングリコールメタクリレート、n=16)、ブレンマーAME−400(メトキシポリエチレングリコールアクリレート、n=9)、ブレンマーPME−200(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、n=4)、ブレンマーPME−400(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、n=9)、ブレンマーPME−1000(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、n=23)などが挙げられる。
また、大阪有機化学工業株式会社の商品名としては、MPE400A(メトキシポリエチレングリコールアクリレート、n=約7)、MPE550A(メトキシポリエチレングリコールアクリレート、n=約9)などが挙げられる。
また、粘着剤組成物のアクリル系モノマーの全体(これを100gとする)に占める、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの含有割合は、0.1〜20モルの範囲であれば、熱硬化させた後であって、紫外線照射により架橋させる前の粘着剤層の、30℃における貯蔵弾性率(単位Pa)をK1と表記するとき、K1が2×104〜1×105Paの範囲の粘着剤層が得られる。
その結果、印刷段差への追従性と優れた形状保持性とを有する粘着剤層及び粘着フィルムが得られる。粘着剤層の形状保持性が優れるなら、粘着剤層の両側の被着体同士の間(または、基材フィルムと被着体との間)で、被着体の貼合状態(本来の位置関係)を保持することができる。そして、粘着剤層の貼合により製造したデバイスの形状も保持できる。また、K1が1×105Paを超えてしまうと、貼合時に粘着剤層が変形し難いため印刷段差への追従性がなく、印刷段差の部分に隙間が生じる。
また、紫外線照射により架橋させた後の粘着剤層の、30℃での貯蔵弾性率(単位Pa)をK2と表記するとき、K2が3×105Paよりも小さいと、粘着剤層が変形を起こしやすくなり、被着体を長期間に渡り固定したり、粘着剤層の形状を保持したりすることができない。
また、本発明に係わる粘着剤層において、粘着剤組成物に含有させる、アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、アクリル系モノマーの合計100重量部に対して、95.5〜25重量部であることが好ましい。
なかでも、粘着剤の凝集力を調整するために、必要に応じて、活性水素を有しないアミド基を有するビニルモノマーや、活性水素を有しないアミノ基を有するビニルモノマー等の含窒素モノマーを含有することができる。ここで、「活性水素」とは、炭素以外の、例えば酸素や窒素などの原子に結合している水素原子を意味する。
また、本発明に係わる粘着剤層において、粘着剤組成物に含有させるアミド基を有するビニルモノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルカプロラクタムなどが特に好適に使用される。
また、本発明に係わる粘着剤層において、粘着剤組成物に含有させるヒドロキシル基含有モノマーは、得られる粘着剤層が透明導電性フィルムのITO表面などの腐食し易い被着体に対する腐食性に影響を与えるとされる、カルボキシル基含有モノマーの含有量を減らすための共重合性モノマーとして使用できる。そのため、ヒドロキシル基含有モノマーは、粘着剤層の粘着力を向上させ、且つ、腐食性を低減させることに役立てることができる。
また、本発明に係わる粘着剤層において、粘着剤組成物に含有させるカルボキシル基含有モノマーは、粘着剤層に対して必要な凝集力を付与させることができる。このため、粘着剤層が、被着体との大きな粘着力を求められている用途に対しては、カルボキシル基含有モノマーの含有割合を加減することによって、粘着力を調整できる。
前記官能基含有共重合性モノマーは、アクリル系モノマー成分の合計100重量部に対して、接着力および凝集力の維持の点から0.5重量%以上であるのが好ましい。一方、前記官能基含有共重合性モノマーが多くなりすぎると、粘着剤が固くなり、接着力が低下する場合があり、また、粘着剤組成物の粘度が高くなりすぎたり、ゲル化する場合があることから、前記官能基含有共重合性モノマーは、アクリル系モノマー成分の合計100重量部に対して、15重量%以下であるのが好ましい。
ポリマーAのモノマー組成は、ポリマーAの100重量部に対して、(メタ)アクリル酸エステルモノマーや(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド類などのアクリル系モノマーを50〜100重量部含むことが好ましい。
架橋剤を用いてアクリル系共重合体を架橋する場合、アクリル系共重合体が、架橋剤と架橋反応可能な官能基(架橋剤の種類にもよるが、ヒドロキシル基やカルボキシル基など)を有することが好ましく、また、これらの官能基を側鎖に有するモノマーを含有することが好ましい。また、粘着剤組成物が、アクリル系モノマーの合計100重量部に対して、架橋剤を0.01〜5重量部を、含有することが好ましい。
本発明に係わる粘着剤層を、電子・電気機器の高周波化に対応した、低誘電率の電気絶縁材料として使用する場合、前記粘着剤層の、周波数1MHzにおける比誘電率が、3.5以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましい。
粘着フィルム用粘着剤層を構成する、共重合及び架橋させてなる粘着剤組成物において、全てのモノマーの合計量100重量部のうち、アルキル(メタ)アクリレートの化合物群の合計が50重量部以上であることが好ましい。極性の低いアルキル(メタ)アクリレートの割合を多くすることにより、比誘電率をより低くすることができる。
また、誤動作防止を重視する場合には、従来の粘着剤層を本発明の粘着剤層に置き換えることにより、タッチパネルの応答速度や感度向上が期待できる。
また、本発明に係わる粘着剤層の粘着力は、被着体に貼り合わせる目的に応じて、粘着剤の組成を調製することにより粘着力を加減調整できるが、一般的には、0.1〜20N/25mm程度である。
粘着剤層の形成に用いる基材フィルムや、粘着面を保護する離型フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。
基材フィルムには、樹脂フィルムの粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。
1つの粘着剤層の両面に、それぞれ離型フィルムの離型処理が施された面を合わせることで、「離型フィルム/粘着剤層/離型フィルム」の構成とすることもできる。この場合、両側の離型フィルムを、順次、あるいは同時に剥離して粘着面を表出することにより、光学フィルム等の光学部材と貼合可能になる。光学フィルムとしては、カバーガラス、ITOガラス、ITOフィルム、導電性高分子による透明導電性フィルム、ナノ銀ワイヤーによる透明導電性フィルム、カーボンナノチューブによる透明導電性フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、紫外線吸収フィルム、光学補償フィルム、等が挙げられる。
また、本発明の粘着フィルムは、タッチパネル用の各種光学フィルム、偏光板を主とする液晶表示装置の周辺部材用の各種光学フィルム、電子ペーパー用の各種光学フィルム、有機EL用の各種光学フィルム等の貼り合せに用いることができる。
また、これらの光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤層が積層されてなる粘着剤層付き光学フィルムとすることができる。具体的には、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「離型フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」等の構成が挙げられる。
例えば、「光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」のように、離型フィルムで保護された粘着剤層を有する場合、離型フィルムを剥がして、「光学フィルム/粘着剤層」のように粘着剤層を表出させ、他の光学フィルムと貼合することにより、粘着剤層が層間の貼合に用いられた「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」のような構成が得られる。
本発明の粘着フィルムは、粘着剤層の熱硬化をさせた後であって、紫外線を照射する前に、粘着剤層の片面又は両面の離型フィルムを剥がして表出させた粘着剤層を、印刷段差を有する被着体(光学部材等)と貼合し、その後、紫外線を照射することにより、粘着剤層を架橋して使用することができる。これにより、粘着剤層付き光学部材を製造することができる。
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に、ブチルアクリレート63g、メチルアクリレート32g、2−ヒドロキシエチルアクリレート5gとともに溶剤(酢酸エチル)を加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを2時間かけて滴下させ、加熱して反応させ、重量平均分子量23万の、実施例1に用いるアクリル系ポリマー溶液を得た。
上記のとおり製造した実施例1のアクリル系ポリマー溶液に対して、エチレングリコールジメタクリレート(1G)を0.026モル、イソシアネート系架橋剤である架橋剤Aを0.84g、アルキルフェノン系光重合開始剤である添加剤Dを0.03gを加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物をシリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる離型フィルムの上に、乾燥後の厚さが50μmとなるように塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去した。そして、40℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、加熱して共重合させることにより、前記粘着剤組成物が熱硬化して、離型フィルム/粘着剤層/離型フィルムの構成を有する、実施例1の粘着フィルムを得た。
[実施例2〜9及び比較例1〜4]
モノマー及び添加剤の組成を各々、表1、3、4の記載のようにする以外は、上記の実施例1の粘着フィルムと同様にして、実施例2〜9及び比較例1〜4の粘着フィルムを得た。表1、3、4の「モノマー組成」は、「アクリル系粘着剤」100gを構成するモノマーの内訳である。なお、表1〜4に記載された測定結果と試験結果については、後述する。
アクリル系粘着剤(1)100gの製造に用いたモノマーの量は、BA63g(0.4915モル)、MA32g(0.3717モル)、HEA5g(0.0430モル)であり、これらモノマーの合計は、0.906モルである。
アクリル系粘着剤(2)100gの製造に用いたモノマーの量は、2EHA97g(0.5264モル)、HEA3g(0.0258モル)であり、これらモノマーの合計は、0.552モルである。
アクリル系粘着剤(3)100gの製造に用いたモノマーの量は、2EHA95g(0.5155モル)、4HBA5g(0.0438モル)であり、これらモノマーの合計は、0.559モルである。
実施例1〜9及び比較例1〜4における粘着フィルムから、離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、粘着剤層を表出させ、PETフィルムの片面に粘着剤層を転写した。このサンプルを、LCRメーター(ヒューレットパッカード社製、型式:4284A)を用いて、粘着剤層の比誘電率を測定した。
比較例1、2、4の粘着フィルムは、低比誘電率による優れた絶縁性能を有していなかった。
比較例3の粘着フィルムは、低比誘電率による優れた絶縁性能を有していた。
熱硬化をさせた後であって、紫外線を照射する前の、実施例2、実施例5、比較例1における粘着フィルムから、軽剥離面側の離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がし、大気圧環境下でPETフィルム(厚み100μm)に貼合した。貼合にはクライムプロダクツ(株)製の貼合装置(製品名SE320)を使用した。
このサンプルから、重剥離面側の離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がし、得られたPETフィルム付きの粘着剤層を、被着体(スクリーン印刷で厚さ10μm程度・15μm程度の印刷段差をそれぞれ形成した、印刷と反対面にハードコート処理のされたPETフィルム)と、大気圧環境下で貼合した。貼合後に、各サンプルのうち、粘着剤層が被着体の印刷段差に貼合された部分の外観を目視にて確認し、気泡が確認できるものを(×)、確認できないものを(○)と評価した。
熱硬化をさせた後であって、紫外線を照射する前の、実施例2、実施例5、比較例1の粘着フィルムから、軽剥離面側の離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がし、大気圧環境下でPETフィルム(厚み100μm)に貼合し、形状保持性(ずれ量の測定)の試験のサンプルとした。貼合には、2kgハンドローラーを使用した。この形状保持性試験のサンプルから、重剥離面側の離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がし、得られたPETフィルム付きの粘着剤層を、ガラス板に大気圧環境下で貼合した。貼合後に、各サンプルに紫外線を1500mJ/cm2照射し、粘着剤層を架橋させた。そののち、PETフィルムの片側端部に、1500gの重しを釣り下げ、30℃環境下にて、形状保持性の試験を行った。12時間後に、被着体同士(PETフィルムとガラス板と)の間で、粘着剤層のずれた量をマイクロスコープにて測定した。
「貯蔵弾性率」とは、2℃/分の昇温速度および1Hzの固体剪断モードで粘弾性測定を行ったときの、30℃における粘着剤層の貯蔵弾性率を意味する。
本願明細書では、紫外線照射により架橋させる前と、紫外線照射により架橋させた後での粘着剤層の30℃における貯蔵弾性率を区別するため、紫外線照射により架橋させる前と、紫外線照射により架橋させた後での粘着剤層の、30℃における貯蔵弾性率を、それぞれ、K1、K2と表記する。
また、貯蔵弾性率の測定には、UBM社の動的粘弾性測定装置(製品名 Rheogel−E4000)を使用した。
このことから、印刷段差への追従性と優れた形状保持性とを有する粘着フィルムとしては、K1が1.0×104〜1.0×105Paの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、K1が2.0×104〜1.0×105Paの範囲である。
また、K1が1.0×105Paを超えてしまうと、貼合時に粘着剤層が変形し難いため印刷段差への追従性がなく、印刷段差の部分に気泡が入り隙間が生じる。
一般に、K2が高いほど、粘着フィルムの粘着剤層が変形し難くなり、粘着フィルムの使用時に、被着体を長期間に渡り固定し、粘着剤層の形状を保持することができる。K2が3.0×105Paよりも小さいと、粘着剤層が変形を起こし易くなり、被着体を長期間に渡り固定したり、粘着剤層の形状を保持したりすることができない。
実施例2および実施例5は、K2が3.0×105Pa以上(さらにはK2が4×105Pa以上)であり、紫外線の照射によって架橋させた後(実際の使用時)には、比較例1に比べて、粘着剤層の変形が起こり難い、形状保持性に優れた状態となっている。
よって、K2が3.0×105Pa以上であることが好ましく、K2が4×105Pa以上であることがさらに好ましい。
さらに、本願発明に係わる粘着フィルムは、紫外線照射により架橋する前には粘着剤層の貯蔵弾性率が低いため、デバイス作成時(貼り合わせ時)には、段差がある被着体でも、空気がかみこむことなく、貼り合わせすることができる。
また、本願発明に係わる粘着フィルムは、紫外線照射により架橋した後には、粘着剤層が一般的な粘着フィルムと同等程度の貯蔵弾性率を有しているため、形状保持性に優れており、粘着剤層の変形の問題も起こり難いと考えられる。
Claims (4)
- 光学部材の貼り合わせに用いる粘着フィルム用粘着剤層を構成する粘着剤組成物であって、前記粘着フィルム用粘着剤層の周波数1MHzにおける比誘電率が3.5以下であり、
前記粘着剤組成物が、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外の、アルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミド基、芳香族基のいずれかの基を有する共重合性ビニルモノマーの化合物群から選択された2種類以上の(メタ)アクリレートのモノマーを、共重合させて得られたアクリル系ポリマーの合計100gに対して、下記の一般式(1)
CH2=C(R1)−COO−(R2−O)n−R3 (1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基を、R2は炭素数2〜4のアルキレン基を、R3は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基をそれぞれ示し、nは1〜23の整数を示す。)で表されるポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの化合物群から選択された1種又は2種以上のポリアルキレンオキサイド鎖を有するビニルモノマーの合計を0.1〜20モルとする割合で含有してなり、前記アクリル系ポリマーと、前記ポリアルキレンオキサイド鎖を有するビニルモノマーと、光重合開始剤と、架橋剤とを含む粘着剤組成物。 - 全てのモノマーの合計量100重量部のうち、アルキル(メタ)アクリレートの化合物群の合計が50重量部以上であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
- 離型フィルムの片面に請求項1又は2に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層が形成されてなり、離型フィルム/前記粘着剤層/離型フィルムの構成を有する、粘着フィルム。
- 基材フィルムの片面上に請求項1又は2に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層が形成されてなる、粘着フィルム。
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