JP2017079262A - BiTe系熱電変換材料及びその製造方法 - Google Patents

BiTe系熱電変換材料及びその製造方法 Download PDF

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慎介 広納
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智也 小暮
盾哉 村井
Tateya Murai
盾哉 村井
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朋治 片岡
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Hidenari Yamamoto
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Yoshinori Okawachi
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Abstract

【課題】優れた電気特性及び十分に低減された熱伝導率を有する熱電変換材料及びその製造方法を提供する。【解決手段】母相材料の結晶格子中のTe−Te結合間に有機炭素化合物の成分を有するBiTe系熱電変換材料であって、母相材料の組成における理論c軸長から0.1〜0.5%増加したc軸長を有する、上記BiTe系熱電変換材料。【選択図】図2

Description

本発明は、熱電変換材料及びその製造方法、及びそれを用いた熱電変換素子に関する。
近年、地球温暖化問題から二酸化炭素排出量を削減するために、化石燃料から得られるエネルギーの割合を低減する技術への関心が益々増大しており、そのような技術の1つとして未利用廃熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換し得る熱電変換材料及びそれを用いた熱電変換素子が挙げられる。熱電変換材料とは、火力発電のように熱を一旦運動エネルギーに変換しそれから電気エネルギーに変換する2段階の工程を必要とせず、熱から直接に電気エネルギーに変換することを可能とする材料である。
熱から電気エネルギーへの変換は熱電変換材料から成形したバルク体の両端の温度差を利用して行われる。この温度差によって電圧が生じる現象はゼーベックにより発見されたのでゼーベック効果と呼ばれている。この熱電変換材料の性能は、次式で求められる性能指数Zで表される。
Z=ασ/κ(=Pf/κ) (κ=κel+κph
ここで、αは熱電変換材料のゼーベック係数、σは熱電変換材料の伝導率、κは熱電変換材料の熱伝導率、κelはキャリア熱伝導率、κphは格子熱伝導率である。ασの項をまとめて出力因子Pfという。そして、Zは温度の逆数の次元を有し、この性能指数Zに絶対温度Tを乗じて得られるZTは無次元の値となる。そしてこのZTを無次元性能指数と呼び、熱電変換材料の性能を表す指標として用いられている。よって、熱電変換材料の性能向上には上記の式から明らかなように、より低い熱伝導率κが求められる。
従来技術においては、第3元素を置換した固溶体化や母相中における第2相の複合化等が行われてきた。前者については、化合物への元素置換による元素の重量差や原子半径差、格子歪等の導入により、格子熱伝導率の低減や電気特性の向上の効果が得られることが知られているが、元素置換により化合物自体の組成変化が生じるため、熱伝導率κ、電気伝導度σ、ゼーベック係数αを独立して制御することは困難であり、熱電性能ZTを大幅に向上させることは難しいという問題があった。また第2相を複合化させることでフォノン散乱を増大させ、熱伝導率を低減させることが試みられているが、第2相の適切なサイズや種類、量について複雑な制御が必要であり、このような制御ができなければ電気特性が低下する問題があった。
例えば特許文献1には、結晶粒内及び結晶粒界相にナノサイズのフォノン散乱粒子を分散させたナノコンポジット熱電変換材料が記載されている。また特許文献1には、フォノン散乱粒子が分散した複合体を形成し、焼結して多結晶マトリックス中にフォノン散乱粒子が分散した焼結体を形成し、熱処理することにより結晶粒界の低融点相のみを溶融させ、溶融相中に近傍のフォノン散乱粒子を取り込ませて粒界相とすることも記載されている。
特許文献1によれば、結晶粒内だけでなく結晶粒界相にもフォノン散乱粒子を分散させたことにより、フォノン散乱効果が大幅に高まるので、熱伝導率が大きく低下し、それによって極めて高い熱電変換性能が得られるとされている。しかしながら、フォノン散乱粒子の存在により、フォノンだけではなくキャリアも散乱するために電気伝導率が低下するおそれがあった。
また特許文献2には、ユニットセルにおいてc軸に垂直な方向に形成される21層の面のそれぞれに原子が配置される組成式BiTe等の合金によって構成されるBiTe系熱電材料が記載されている。特許文献2によれば、c軸に垂直な方向に15層の面が形成されるBiTeよりも多層の面を含むユニットセルとなる組成式BiTe等の合金で熱電材料を形成させることにより、従来のBiTeよりも大きなユニットセルの合金が得られ、これにより格子熱伝導率を改善することが可能になるとされている。特許文献2によれば、BiTe等においては隣り合う面の双方がTe面となることはなく、ファンデルワールス力によって結合した部分がないためBiTeよりも機械加工に対する強度の高い熱電材料が得られるとされている。
しかしながら、上述したような理由により、熱電変換材料において電気特性を低下させずに熱伝導率を大幅に低減させることが困難であり、十分に性能を向上させることができなかった。
したがって、優れた電気特性及び十分に低減された熱伝導率を有する熱電変換材料、及びそのような熱電変換材料の製造方法が求められていた。
特開2012−182476号公報 特開2010−135455号公報
本発明は、優れた電気特性及び十分に低減された熱伝導率を有する熱電変換材料、及びそのような熱電変換材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、BiTe系熱電材料において、母相材料の結晶格子中のTe−Te結合間に有機炭素化合物の成分を配置させてc軸格子を変化させることにより、大幅に熱伝導率が低減できることを見出した。また本発明者らは、適切な温度で熱処理を行うことにより、Te−Te結合間に有機炭素化合物の成分を固溶させることができることを見出した。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)母相材料の結晶格子中のTe−Te結合間に有機炭素化合物の成分を有するBiTe系熱電変換材料であって、
母相材料の組成における理論c軸長から0.1〜0.5%増加したc軸長を有する、上記BiTe系熱電変換材料。
(2)次の工程:
(a)母相材料を構成する元素の前駆体を含有する溶液を還元剤で処理する工程、
(b)工程(a)で得られた溶液と有機炭素化合物とを混合して複合粒子を得る工程、及び
(c)工程(b)で得られた複合粒子を、不活性雰囲気下、250〜400℃にて熱処理する工程
を含む、BiTe系熱電変換材料の製造方法。
(3)上記(1)に記載のBiTe系熱電変換材料を用いた熱電変換素子。
本発明のBiTe系熱電変換材料によれば、電気特性を低下させることなく、熱伝導率を大幅に低減させることが可能となる。本発明のBiTe系熱電変換材料の製造方法によれば、簡易な工程で本発明のBiTe系熱電変換材料を製造することが可能となる。
図1は、本発明の熱電変換材料及び本発明の熱電変換材料の製造方法の一実施形態の説明図である。 図2(a)は、実施例1−2及び比較例1−7の熱電変換材料の母相材料の組成とc軸長との関係を示すグラフであり、図2(b)は、実施例1−2及び比較例1−7の熱電変換材料におけるc軸長増加割合と格子熱伝導率との関係を示すグラフである。 図3(a)は、実施例1の熱電変換材料(焼結後)の走査透過型電子顕微鏡(STEM)のBF像である。図3(b)は、比較例6の熱電変換材料(焼結後)のSTEM−BF像である。
本発明のBiTe系熱電変換材料(以下、本発明の熱電変換材料ともいう)は、母相材料の結晶格子中のTe−Te結合間に有機炭素化合物の成分を有すること、及び母相材料の結晶組成における理論c軸長から0.1〜0.5%増加したc軸長を有することを特徴とする。
本発明の熱電変換材料は、結晶粒において、キャリア伝導方向と平行なTe−Te結合面に有機炭素化合物の成分が配置されているためにフォノンのみが効率的に散乱され、電気特性の低下が抑制されたまま格子熱伝導率が十分に低減されている。本発明の熱電変換材料において、有機炭素化合物の成分によるフォノンの散乱により、熱伝導率が十分に低減されている一方で、Te−Te結合はキャリア伝導方向と平行であるためキャリアの散乱を促進することがなく、電気特性を維持することができる。理論に拘泥されるものではないが、このような所望の特性は、有機炭素化合物の成分がTe−Te結合面等に規則的に固溶しているためにキャリア伝導方向でのキャリア散乱の影響が少なくなるためと考えられる。
ここで「Te−Te結合」とは、単位格子においてc軸に沿って並ぶ隣り合うTe面間の結合を意味する。当該Te面はファンデルワールス力によって結合しているため、他の面間の結合よりも結合力が弱い。そして「Te−Te結合間に有機炭素化合物の成分を有する」ことは、有機炭素化合物の成分が母相材料の結晶格子中のTe−Te結合に原子レベルで取り込まれて、固溶された状態にあることを意味し、XRDのピーク位置(θ)から求めたc軸長から確認することができる。有機炭素化合物の成分が結晶粒内に取り込まれている場合にはc軸長の伸びが生じる。また例えば図3(b)のSTEM写真に示すように、炭素成分が粒内結晶粒外に偏析する場合には、炭素成分が原子レベルで取り込まれておらず、Te−Te結合間に有機炭素化合物の成分を有するとはいえない。この場合、0.1重量%以上の炭素元素を含有しても、c軸長の伸びは生じない。
上記有機炭素化合物の成分は、熱電変換材料の製造方法において後述する有機炭素化合物を構成する元素のうち少なくとも1種を意味し、実質的には炭素元素を意味する。本発明の熱電変換材料において、Te−Te結合に存在するすべての有機炭素化合物の成分のうち、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上が炭素原子である。
本発明の熱電変換材料の母相材料はBiTe系熱電変換材料であり、BiTe系としては、例えば(Bi、Sb)(Te、Se)系、BiTe系、(Bi、Sb)Te系、Bi(Te、Se)系等を挙げることができる。
上記母相材料の組成としては、所望の母相材料の結晶系の理論組成からのずれが10mol%以内であってよく、例えばBiTe系において、BiTeに対して0.5〜3.0mol%、好ましくは0.8〜1.7mol%のBiSeを含む場合が挙げられる。上記母相材料の組成は、下記「4.焼結体の元素組成の測定」に記載される方法を用いて測定することができる。
本発明の熱電変換材料は、電気特性の低下を抑制し、かつ格子熱伝導率を十分に低下させる観点から、母相材料の結晶組成における理論c軸長から好ましくは0.2〜0.4%増加したc軸長を有する。c軸長が0.5%を超えて増加すると電気特性が低下するため0.5%以下であることが望ましい。ここで、「理論c軸長」は、JCPDSカード記載の文献値を使用し、必要に応じてベガード則を用いて算出することができる。具体的には下記「5.理論c軸長の決定及びc軸伸び率の算出」に記載される方法を用いて決定することができる。尚、ベガード則においては合金の格子定数と組成元素の濃度には比例関係が成り立つ。
本発明の熱電変換材料は、熱電変換材料(焼結後)に対して、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.16重量%以上、特に好ましくは0.25重量%以上の炭素元素を含有する。本発明の熱電変換材料は、熱電変換材料(焼結後)に対して、好ましくは0.1〜0.5重量%の炭素元素を含有する。熱電変換材料(焼結後)中の炭素元素の量は、下記「4.焼結体の元素組成の測定」に記載される方法を用いて測定することができる。
本発明の熱電変換材料は、母相材料の結晶格子中のTe−Te結合間に優先的に有機炭素化合物の成分を固溶させる観点から、次の工程:(a)母相材料を構成する元素の前駆体を含有する溶液を還元剤で処理する工程、(b)工程(a)で得られた溶液と有機炭素化合物とを混合して複合粒子を得る工程、及び(c)工程(b)で得られた複合粒子を250〜400℃にて熱処理する工程を含む方法により製造されることが好ましい。工程(a)から(c)の好ましい態様及び実施形態等は、後述の本発明の熱電変換材料の製造方法についての対応する記載を引用するものとする。
本発明の熱電変換材料は、好ましくは0.50W/mk以下、さらに好ましくは0.35W/mk以下、特に好ましくは0.25W/mk以下の格子熱伝導率を有する。本発明の熱電変換材料は、好ましくは0.1〜0.50W/mk、さらに好ましくは0.1〜0.40W/mk、特に好ましくは0.1〜0.35W/mkの格子熱伝導率を有する。
本発明の熱電変換材料は、好ましくは2×10〜2×10S/m、さらに好ましくは3×10〜2×10S/mの電気伝導率を有する。
本発明は、BiTe系熱電変換材料の製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)にも関する。本発明の製造方法は、本発明の熱電変換材料の製造に適している。
本発明の製造方法は、次の工程:(a)母相材料を構成する元素の前駆体を含有する溶液を還元剤で処理する工程、(b)工程(a)で得られた溶液と有機炭素化合物とを混合して複合粒子を得る工程、及び(c)工程(b)で得られた複合粒子を250〜400℃にて熱処理する工程を含む。工程(a)及び(b)で得られた母相材料を構成する元素及び有機炭素化合物を含む複合粒子に対し、工程(c)の熱処理により、Bi、Te及びSe等の複合粒子を合金化(結晶化)させるとともに、有機炭素化合物の成分を格子内に固溶させる。理論に拘泥されるものではないが、Te−Te結合はファンデルワールス力による結合であり他の結合に比べて結合強度が弱いため、有機炭素化合物の成分がTe−Te結合間に優先的に固溶し、c軸格子長が増加した熱電変換材料が得られると考えられる。
上記工程(a)において母相材料を構成する元素の前駆体を含有する溶液を還元剤で処理する。これにより、母相材料を構成する元素のナノ複合粒子が得られる(図1参照)。工程(a)において使用する母相材料は、本発明の熱電変換材料についての対応する記載を引用し、母相材料を構成する元素の前駆体としては、上記元素の塩、好ましくはハロゲン化物(例えば塩化物、フッ化物及び臭素化物)、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられ、特に好ましくは塩化物、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。
上記工程(a)において使用する溶媒としては、元素の前駆体が溶解することができる限り特に制限されないが、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール及びオクタノールの中から選ばれる1種又は2種以上の混合物が挙げられ、これらの中で、後工程での溶媒除去の観点から、エタノール及びメタノール等が好ましい。
上記工程(a)において使用する還元剤は、母相材料を構成する元素の前駆体を還元し得るものであれば特に制限はなく、例えば第三級ホスフィン、第二級ホスフィン及び第一級ホスフィン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、ヒドロキシフェニル化合物、水素、水素化物、ボラン、アルデヒド、還元性ハロゲン化物、多官能性還元体等が挙げられ、その中でも水素化ホウ素アルカリ、例えば水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム等の物質の1種類以上が挙げられる。
上記工程(b)において、工程(a)で得られた溶液と有機炭素化合物とを混合して複合粒子を得る。
上記工程(b)において使用する有機炭素化合物は、炭素骨格を主骨格とする有機化合物を意味する。有機炭素化合物は、工程(c)おける熱処理によりガス化しない、すなわち融点が高いものが好ましい(例えば300℃以上)。また均一に複合化するために、液体の有機炭素化合物を使用することが望ましい。母材原料を構成する元素との複合化を促進させる観点から、母材原料を構成する元素(金属)と吸着しやすい官能基(例えばメルカプト基やアミノ基等)を持つ化合物を使用することも好ましい。
上記工程(b)において混合する有機炭素化合物の量は、母相材料に対して0.5〜20重量%であってよく、例えば、工程(a)において用いた母相材料を構成する元素の前駆体の合計に対して、好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1.0〜5.0重量%である。
上記工程(c)において、工程(b)で得られた複合粒子を、例えば窒素や希ガス等の不活性雰囲気下、250〜400℃にて熱処理する。これにより、Bi、Te及びSe等の複合粒子を合金化(結晶化)させるとともに、有機炭素化合物の成分を格子内に固溶させることができる。この観点から、熱処理は、好ましくは280〜400℃、特に好ましくは300〜370℃で行う。熱処理の温度が低い場合には合金化が進行しにくいため、炭素成分が格子内に取り込まれない恐れがある。また高温で熱処理した場合は結晶形成のタイミングでうまく炭素成分が結晶格子内に取り込まれずc軸長が増加しない恐れがある(図3(b)参照)。同様の観点から、熱処理は、好ましくは5〜20時間、特に好ましくは5〜15時間行う。
上記工程(b)の後、かつ上記工程(c)の前に、工程(c−1)として、工程(b)で得られた複合粒子を含む溶液中で一次合金化処理として200〜300℃で低温熱処理を行ってもよい。
上記工程(c−1)としては、低温で合金化を促進させる観点から、ソルボサーマル反応させる方法が好ましい。本明細書において、「ソルボサーマル反応」は、有機溶媒中において、高温及び高圧下で複数の原料物質を反応させて、反応生成物を得る処理を意味する。ソルボサーマル反応させる温度として好ましい範囲としては、上記の範囲が適用できる。ソルボサーマル反応させる圧力は、0〜20MPaの範囲であることが好ましく、0.5〜15MPaの範囲であることがより好ましい。また、ソルボサーマル反応させる時間は、1〜24時間の範囲であることが好ましく、5〜24時間の範囲であることがより好ましく、8〜12時間の範囲であることがさらに好ましい。ソルボサーマル反応に使用される反応容器及び/又は反応制御装置等の手段は特に限定されない。本工程においては、オートクレーブのような当該技術分野でソルボサーマル反応に通常使用される装置を、反応容器及び反応制御装置として用いることができる。例えば、200〜250℃の範囲の温度でソルボサーマル反応させる場合、フッ素樹脂(例えばテフロン(登録商標))のような比較的安価な樹脂を用いたオートクレーブ装置を使用すればよく、250℃超かつ300℃以下の温度でソルボサーマル反応させる場合、ニッケル合金(例えばハステロイ(登録商標))のような耐熱・耐食合金を用いたオートクレーブ装置を使用すればよい。上記手段を用いることにより、特別な装置を準備することなく本工程のソルボサーマル反応を実施することができる。ソルボサーマル反応に使用される有機溶媒としては、例えば、エタノール若しくはメタノール又はそれらの混合物であることが好ましく、エタノール若しくはメタノール又はそれらの混合物であることが好ましい。
上記工程(b)又は工程(c−1)の後、かつ上記工程(c)の前に、複合粒子を含む溶液を乾燥させる工程(c−2)を含むことが好ましい。乾燥方法としては、密閉容器中での不活性ガスフローが挙げられる。
本発明の製造方法により得られる熱電変換材料は、通常は、微細粒径の粒子の形態であり、典型的には、ナノ粒子の形態である。一般に、約100nm超の平均粒径を有する合金粒子はサブマイクロ粒子と分類され、約100nm以下の平均粒径を有する合金粒子はナノ粒子と分類される。上記熱電変換材料は、通常は、300nm以下の平均粒径を有し、典型的には、200nm以下の平均粒径を有する。上記熱電変換材料は、通常は、50nm以上の平均粒径を有し、典型的には、70nm以上の平均粒径を有する。本発明の熱電変換材料は、上記平均粒径を有する微細粒径の粒子(以下、「一次粒子」とも記載する)を焼結等することによって得られるバルク体の形態であってもよい。
本発明の製造方法は、場合により、構成元素を含有する熱電変換材料を焼結する、焼結工程(d)を含むことができる。本工程により、上記熱電変換材料の一次粒子が凝集したバルク体の形態の熱電変換材料を形成させることができる。本工程において、上記熱電変換材料を焼結する手段は特に限定されない。例えば、放電プラズマ焼結(SPS焼結)法又はホットプレス法のような当該技術分野で通常使用される焼結手段を適用することができる。本工程は、SPS焼結法を用いて実施することが好ましい。上記手段によって上記熱電変換材料の一次粒子を焼結することにより、該一次粒子が凝集したバルク体の形態の熱電変換材料を形成させることができる。例えば、熱電変換材料を350℃〜400℃、50〜100MPaで10〜30分間SPS焼結(放電プラズマ焼結:Spark Plasma Sintering)することによって、熱電変換材料バルク体を得ることができる。SPS焼結は、パンチ(上部、下部)、電極(上部、下部)、ダイ及び加圧装置を備えたSPS焼結機を用いて行うことができる。また、焼結の際に、焼結機の焼結チャンバのみを外気から隔離して不活性の焼結雰囲気にしてもよくあるいはシステム全体をハウジングで囲んで不活性雰囲気にしてもよい。
本発明は熱電変換素子にも関する。本発明の熱電変換素子は、本発明の熱電変換材料及び本発明の製造方法により得られた熱電変換材料を用いて得られる。本発明の熱電変換素子は、熱電変換材料を用いて、それ自体公知の方法によって、N型ナノコンポジット熱電変換材料、P型ナノコンポジット熱電変換材料、電極及び絶縁性基板を組み立てることによって得ることができる。
本発明は熱電変換素子にも関する。本発明の熱電変換素子は、本発明の熱電変換材料を用いて、それ自体公知の方法によって、N型ナノコンポジット熱電変換材料、P型ナノコンポジット熱電変換材料、電極及び絶縁性基板を組み立てることによって得ることができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。
実施例1−2及び比較例1−7
[I:熱電変換材料の製造]
[実施例1]
(1)熱電変換材料を構成する元素の塩である塩化ビスマス、塩化テルル及び塩化セレンを表1に示す量で含むエタノール溶液中(エタノール:1800ml)に還元剤(10gのNaBHをエタノール1800mlのエタノールに溶解させたもの)を含む溶液を滴下し、熱電変換材料の原料粒子を還元析出させ、原料ナノ複合粒子(Bi,Te,Se)を作製した。
(2)作製した原料複合ナノ粒子を含む溶液中に表1に示す量の有機炭素化合物を添加した。
(3)上記(2)により得られた複合粒子を乾燥後、Arガス雰囲気下、表1に示す条件下で10時間熱処理を行った。
(4)上記(3)で得られた粉末を350℃、70MPaにて20分間焼結することによりバルク化して焼結体を得た。
[実施例2]
工程(1)及び(2)において配合する各原料を下の表1に記載される量とし、及び工程(3)において熱処理を下の表1に示す条件下で行った以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
[比較例1]
工程(1)及び(2)において配合する各原料を下の表1に記載される量とし、及び工程(3)において熱処理を下の表1に示す条件下で行った以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
[比較例2]
工程(1)及び(2)において配合する各原料を下の表1に記載される量とし、工程(3)を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
[比較例3]
工程(1)及び(2)において配合する各原料を下の表1に記載される量とし、工程(3)を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
[比較例4]
工程(1)及び(2)において配合する各原料を下の表1に記載される量とし、工程(3)を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
[比較例5]
工程(1)及び(2)において配合する各原料を下の表1に記載される量とし、工程(3)を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
[比較例6]
工程(1)及び(2)において配合する各原料を下の表1に記載される量とし、及び工程(3)において熱処理を下の表1に示す条件下で行った以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
[比較例7]
工程(1)及び(2)において配合する各原料を下の表1に記載される量とし、工程(3)を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして焼結体を得た。
Figure 2017079262
[II:分析及び結果]
上記手順によって得られた実施例1−2及び比較例1−7の焼結体について、組成の決定、炭素含有率の測定、c軸長の測定及び格子熱伝導率の評価を行った。
<1.XRD試料作製>
直径15mm×2〜3mmの焼結体をアイソメリットによる8〜12mm×2〜4mmに切り出した。
<2.X線回析測定>
装置の機種:リガク製 水平型X線回析装置
条件:走査速度2°/分、サンプリング幅0.02°、測定角度5〜90°
<3.XRDによるc軸長の測定>
+hk+k=0となる面指数(h、k、l、m)からのピーク位置(2θ°)を用いて下記の式(I)からcの値を算出した。c値の算出には少なくとも2種類の面指数からの2θ°値を用いて式(I)の左辺と右辺のズレが最小となるc値を最小二乗法により決定した。
Figure 2017079262
<4.焼結体の元素組成の測定>
(1)BiTeに対するBiSeの量(mol%)
焼結体のICP分析により測定した。
装置:島津製作所製 ICPS−8000
(2)炭素含有量
焼結体に対する炭素の含有量をC−S系により定量分析した。
装置:Leco社製 CS−844
<5.理論c軸長の決定及びc軸伸び率の算出>
(1)理論c軸長の決定
ベガード側を基にして近似式(II)を用いて計算した。
Figure 2017079262
(2)c軸伸び率の算出
上記3において算出したc軸長、上記5(1)で決定した理論c軸長から、下記式(III)によりc軸伸び率[%]を算出した。
Figure 2017079262
<6.格子熱伝導率の測定>
定常法熱伝導率評価法及びフラッシュ法(非定常法)(ネッチ社製フラッシュ法熱伝導率測定装置)による。
格子熱伝導率は、全体の熱伝導率からキャリア熱伝導率(Kel)を差し引いて算出した。Kel=LσT(L:ローレンツ数、σ:電気伝導率(=1/比抵抗)、T:絶対温度)。
分析結果を表2に示す。
Figure 2017079262
表2より、実施例1−2の焼結体は、熱処理を行わなかった比較例2−4の焼結体に対してc軸伸び率が高いことがわかる。
また実施例1−2の焼結体は、450℃以上の高温で熱処理して得られた比較例6の焼結体と比較して、c軸伸び率が高いことがわかる。これは工程(3)の熱処理を適切な温度で行うことにより、結晶形成のタイミングでうまく炭素成分が結晶格子内に取り込まれた結果と考えられる。一方、450℃以上の高温で熱処理した場合は結晶形成のタイミングでうまく炭素成分が結晶格子内に取り込まれずc軸長が増加しない。
実施例1−2及び比較例1−7の焼結体における元素組成とc軸長との関係を図2(a)に示す。図2(a)より、適切な温度の処理が行われなかった比較例1−7の焼結体においてはBiTeに対するBiSeの量(mol%)がc軸長と相関関係を有するのに対し、実施例1及び2の焼結体はこの相関関係から予測されるよりも長いc軸長を有することがわかる。
実施例1−2及び比較例1−7の焼結体におけるc軸長増加割合と格子熱伝導率κphとの関係を図2(b)に示す。図2(b)より、比較例1−7の焼結体と比較して、c軸長増加割合の高い実施例1及び2の焼結体は顕著に低減された格子熱伝導率を有することがわかる。
実施例1及び比較例6の焼結体のSTEM−BF像をそれぞれ図3(a)及び図3(b)に示す。図3(a)及び図3(b)より、高温で熱処理を行った比較例6の焼結体においては、粒内に取り込まれず結晶粒外に偏析している炭素成分が観察されるのに対し、適切な熱処理を行った実施例1の焼結体においてはそのような炭素成分が観察されない。
本発明の熱電変換材料を用いた熱電変換素子は、自動車の排熱や地熱を用いた発電及び人工衛星用の電源に利用することができる。また、本発明の熱電変換材料を用いた熱電変換素子は、電化製品及び自動車等の温度調節素子に利用することができる。

Claims (3)

  1. 母相材料の結晶格子中のTe−Te結合間に有機炭素化合物の成分を有するBiTe系熱電変換材料であって、
    母相材料の組成における理論c軸長から0.1〜0.5%増加したc軸長を有する、上記BiTe系熱電変換材料。
  2. 次の工程:
    (a)母相材料を構成する元素の前駆体を含有する溶液を還元剤で処理する工程、
    (b)工程(a)で得られた溶液と有機炭素化合物とを混合して複合粒子を得る工程、及び
    (c)工程(b)で得られた複合粒子を、不活性雰囲気下、250〜400℃にて熱処理する工程
    を含む、BiTe系熱電変換材料の製造方法。
  3. 請求項1に記載のBiTe系熱電変換材料を用いた熱電変換素子。
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