JP2017078651A - バルブシート用肉盛層の品質判定方法 - Google Patents

バルブシート用肉盛層の品質判定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】バルブシート用肉盛層の品質をより適切に判定すること。
【解決手段】本発明のバルブシート用肉盛層の品質判定方法は、シリンダヘッド粗形材において、ポート12の燃焼室11側の開口端に円環状に形成されたザグリ溝に、金属粉を供給しつつ、レーザビームを照射して肉盛層13を形成するステップと、肉盛層13の引張り試験片を切り出すステップと、引張り試験片の引張り試験を行うステップと、引張り試験の結果が基準値を満たしているか否かを判定するステップと、を備える。そして、引張り試験片を切り出すステップにおいて、引張り試験片の平行部に、肉盛層13における始端部と終端部とがオーバーラップするオーバーラップ部130を含むように、引張り試験片を切り出す。
【選択図】図2

Description

本発明は、バルブシート用肉盛層の品質判定方法に関する。
エンジンのシリンダヘッドには、燃焼室や燃焼室に通じる吸気ポート/排気ポートが設けられている。そして、吸気ポート/排気ポートの燃焼室側の開口端周縁には、バルブの背面が当接するバルブシートが設けられている。バルブシートとバルブとが当接することにより、燃焼室の気密性が保持される。
バルブシートは、高温環境下においてバルブが繰り返し当接するため、耐熱性や耐摩耗性が要求される。そのため、バルブシートは、シリンダヘッド粗形材の吸気ポート/排気ポートの開口端周縁に、機械加工により円環状のザグリ溝を形成し、このザグリ溝に肉盛層(クラッド層)を形成することにより得られる。
バルブシート用肉盛層を形成する方法としては、ザグリ溝に金属粉を供給しつつ、レーザビームを照射して肉盛層を形成する方法(いわゆるレーザクラッド法)がある。また、この方法の場合、肉盛層の形成を開始する始端部では、金属粉の供給量が少ないため、肉盛層の形成を終了する終端部は、始端部にオーバーラップさせる必要がある。
しかし、始端部が未溶着の状態、又は、シリンダヘッド粗形材の母材が始端部に溶け込んだ状態で、始端部に終端部をオーバーラップさせると、空孔や割れ等の不良が発生することがある。このような不良の発生を抑制するために、特許文献1に開示されたレーザクラッド加工方法においては、始端部の形状を計測し、計測した形状を終端部の加工条件にフィードバックしている。
特開2009−045638号公報
ところで、特許文献1に開示されたレーザクラッド加工方法の場合、始端部の形状を計測した時点では、始端部が健全であったとしても、始端部に終端部をオーバーラップさせる際に始端部に割れ等が発生することがある。しかし、始端部は、終端部に覆われているため、このような始端部の割れ等を検出することができなかった。
このように、特許文献1に開示されたレーザクラッド加工方法は、バブルシート用肉盛層における始端部と終端部とがオーバーラップするオーバーラップ部の割れ等の不良を検出することができず、バブルシート用肉盛層の品質を適切に判定することができないという問題があった。
本発明は、上述のような問題を解決するためになされたものであり、バブルシート用肉盛層の品質をより適切に判定することができるバブルシート用肉盛層の品質判定方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、バルブシート用肉盛層の品質判定方法は、
シリンダヘッド粗形材において、ポートの燃焼室側の開口端に円環状に形成されたザグリ溝に、金属粉を供給しつつ、レーザビームを照射して肉盛層を形成するステップと、
前記肉盛層の引張り試験片を切り出すステップと、
前記引張り試験片の引張り試験を行うステップと、
前記引張り試験の結果が基準値を満たしているか否かを判定するステップと、を備え、
前記引張り試験片を切り出すステップにおいて、
前記引張り試験片の平行部に、前記肉盛層における始端部と終端部とがオーバーラップするオーバーラップ部を含むように、前記引張り試験片を切り出す。
上述した態様によれば、バルブシート用肉盛層の品質をより適切に判定することができるという効果が得られる。
実施の形態1にかかるシリンダヘッドの燃焼室周辺を例示する図である。 実施の形態1にかかるシリンダヘッドのポート周辺を例示する図である。 図2のA−A’に沿った断面を例示する断面図である。 実施の形態1にかかるシリンダヘッドから切り出した引張り試験片を例示する図である。 実施の形態1にかかる引張り試験機を例示する正面図である。 実施の形態1にかかる引張り試験機を例示する側面図である。 実施の形態1にかかる引張り試験片の伸びの導出方法を例示する図である。 実施の形態1にかかるバルブシート用の肉盛層の品質の判定方法を例示する図である。 本実施の形態2にかかるシリンダヘッドから切り出す引張り試験片の評価部の断面部位を例示する図である。 実施の形態2にかかるシリンダヘッドから切り出す引張り試験片の評価部の位相部位を例示する図である。 実施の形態2にかかるシリンダヘッドから引張り試験片の仕上げ前形状を切り出す方法を例示する図である。
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
(1)実施の形態1
以下、本実施の形態1にかかるバルブシート用肉盛層の品質判定方法における各工程を順番に説明する。
最初に、図1を参照して、シリンダヘッドのバルブシート用の肉盛層13を形成する工程を説明する。図1は、本実施の形態1にかかるシリンダヘッドの燃焼室11周辺を例示する図である。
まず、シリンダヘッド粗形材10の構成について説明する。シリンダヘッド粗形材10は、例えば、アルミニウム合金などからなる鋳物である。図1に示されるように、シリンダヘッド粗形材10は、複数の燃焼室11を備えている。各燃焼室11は、吸気ポート及び排気ポートを含む複数のポート12を備えている。当然のことながら、燃焼室11及びポート12の個数は、限定されるものではなく、車種ごとに適宜決定されるものである。
シリンダヘッド粗形材10において、ポート12の燃焼室11側の開口端には、機械加工によって円環状のザグリ溝を形成する。そして、円環状のザグリ溝に沿って、金属粉をザグリ溝に周方向に順次供給しつつ、ザグリ溝に供給された金属粉にレーザビームを照射する。ザグリ溝に供給された金属粉は、レーザビームによって溶融し、その溶融した金属粉が凝固することで、バルブシート用の肉盛層13が形成される。
また、肉盛層13の形成を開始する始端部131(後述の図3参照)では、金属粉の供給量が少ない。そのため、肉盛層13の形成を終了する終端部132(後述の図3参照)は、始端部131における金属粉の少ない供給量を補うために、始端部131にオーバーラップするように、始端部131の上から重ね合わせて形成される。以下、始端部131と終端部132とがオーバーラップした部分を、オーバーラップ部130(後述の図2参照)と称す。
続いて、図2〜図4を参照して、前工程で肉盛層13が形成されたシリンダヘッドから引張り試験用の引張り試験片20を切り出す工程を説明する。図2は、本実施の形態1にかかるシリンダヘッドのポート12周辺を例示する図である。図3は、図2のA−A’に沿った断面を例示する断面図である。図4は、本実施の形態1にかかるシリンダヘッドから切り出した引張り試験片20を例示する図である。
上述したように、始端部131が未溶着の状態、又は、シリンダヘッド粗形材10の母材であるアルミニウムが始端部131に溶け込んだ状態で、終端部132をオーバーラップさせると、空孔や割れ等の不良が発生することがある。
また、始端部131を形成した時点では、始端部131が健全な状態であったとしても、終端部132をオーバーラップさせる際に始端部131に割れ等が発生することがある。特に、シリンダヘッド粗形材10の母材であるアルミニウムの溶け込みによる始端部131の割れについては、終端部132をオーバーラップさせる際に発生しやすい。その理由を以下に示す。
始端部131へのアルミニウムの溶け込みが過多であると、始端部131は合金化が進み、極めて脆く割れやすい状態となる。終端部132をオーバーラップさせる際に、急冷凝固による熱収縮の影響が始端部131におよぶため、始端部131を形成した時点では割れが生じていなくても、熱収縮の影響で始端部131に割れが発生することがある。
始端部131へのアルミニウムの溶け込みが過多であることは、始端部131の外形形状には現れない(健全な状態にある形状と同じ形状になっている)場合がある。そのため、特許文献1のように、始端部131の形状を計測するだけでは、オーバーラップ部130が割れやすい品質であるか否かの判定ができない。
そこで、本実施の形態1においては、図2〜図4に示されるように、シリンダヘッドから引張り試験用の肉盛層13の引張り試験片20を切り出す際に、引張り試験片20における強度を評価される評価部20a(中央の細径の平行部)が、オーバーラップ部130を含むように、引張り試験片20を切り出す。
具体的には、シリンダーヘッドに肉盛層13を形成した後、肉盛層13をバルブシート形状に仕上げ加工される前のシリンダーヘッドから、引張り試験片20の評価部20aが、オーバーラップ部130を含み、肉盛層13の母材であるクラッド材(銅など)のみで構成されるように、引張り試験片20の仕上げ前形状(略円柱形状)を切り出す。このとき、シリンダーヘッドの縦壁及び底板からの寸法を導出しておくことで、正確な位置から引張り試験片20の仕上げ前形状を切り出すことができる。そして、引張り試験片20の仕上げ前形状の中央を細径化することで、引張り試験片20の形状に加工する。
図4に示されるように、引張り試験片20は、評価部20aの両端に、引張り試験片20を引張り試験機に取り付けるための太径の試験機取り付け部20bを設けた形状となる。評価部20aは、上述のように、オーバーラップ部130を含み、肉盛層13の母材であるクラッド材のみで構成されるように、切り出される。そのため、評価部20aは、クラッド材のみで構成される。一方、試験機取り付け部20bは、シリンダヘッド粗形材10の母材とクラッド材との複合金属で構成される。
続いて、図5〜図7を参照して、前工程でシリンダヘッドから切り出した引張り試験片20の引っ張り試験を行う工程を説明する。図5及び図6は、本実施の形態1にかかる引張り試験機30を例示する図であり、図5は正面図、図6は図5を矢印Aの方向から見たA視側面図である。図7は、本実施の形態1にかかる引張り試験片20の伸びの導出方法を例示する図である。
図5及び図6に示されるように、本実施の形態1にかかる引張り試験機30においては、引張り試験片20の評価部20aの近傍両端に、引張り試験片20の伸びを測定するためのセンサーターゲット31を取り付ける。引張り試験機30に引張り試験片20を上下から固定し、サーボモーター32で引張り試験片20を引き上げる。そして、下部にあるロードセル33で引張り試験片20の引っ張り荷重を測定すると共に、ギャップセンサー34で引張り試験片20の評価部20aの両端の距離の変化を測定する。
図7の上図に示されるように、図7中の右上のセンサーターゲット31の下面の下側のギャップをギャップセンサー34で測定し、この測定値を引張り試験片20の評価部20aの上端部分の距離の変化とする。また、図7中の左下のセンサーターゲット31の下面の下側のギャップをギャップセンサー34で測定し、この測定値を引張り試験片20の評価部20aの下端部分の距離の変化とする。そして、引張り試験片20の評価部20aの両端の距離の変化を用いて、図7の下図に示されるように、図7中の右上のセンサーターゲット31の下面と左下のセンサーターゲット31の下面との間の距離を、引張り試験片20の伸びとして測定する。
引張り試験片20の引っ張り荷重及び伸びの測定は、引張り試験片20をサーボモーター32で徐々に引き上げながら継続して行い、引張り試験片20が破断した時点で測定を終了する。これにより、引張り試験片20が破断するまでの間の引っ張り荷重及び伸びの測定データを、時系列で得ることができる。
続いて、図8を参照して、前工程で行った引っ張り試験の試験結果を基に、バルブシート用の肉盛層13の品質を判定する工程を説明する。図8は、本実施の形態1にかかるバルブシート用の肉盛層13の品質を判定する方法を例示する図である。
まず、引張り試験片20の引っ張り荷重及び伸びの測定データを、引張り試験片20の評価部20aの断面積及び長さでそれぞれ除算することで、応力及び歪に換算する。そして、応力及び歪をそれぞれ縦軸及び横軸に置くことで、図8に示されるような応力−歪線図を得る。図8において、応力及び歪の規定値は、引張り試験片20の評価部20aの部位に応じた値となっており(詳細は後述の実施の形態2において述べる)、応力の規定値及び歪の規定値を共に超えた範囲が良品範囲となっている。そして、引張り試験片20が破断した時の応力及び歪を示す破断点が、良品範囲に存在するか否かを判定する。もし破断点が良品範囲に存在すれば、引張り試験の試験結果が基準値を満たす(OK)と判定し、破断点が良品範囲に存在しなければ、引張り試験の試験結果が基準値を満たさない(NG)と判定する。
引張り試験の試験結果がOKの場合は、バルブシート用の肉盛層13は品質がOKと判定する。また、同一条件で製造された一連のバルブシート用の肉盛層13も品質がOKと判定する。
上述したように本実施の形態1によれば、引張り試験片20の評価部20aに、肉盛層13における始端部131と終端部132とがオーバーラップするオーバーラップ部130を含むように、シリンダヘッドから肉盛層13の引張り試験片20を切り出す。
これにより、引張り試験において、オーバーラップ部130の強度を測定することができることから、オーバーラップ部130の割れ等の不良を検出することができるため、バルブシート用の肉盛層13の品質をより適切に判定することができる。
(2)実施の形態2
実施の形態1は、シリンダヘッドから、肉盛層13のオーバーラップ部130を評価部20aとして含む引張り試験片20を切り出していた。
本実施の形態2は、シリンダヘッドから、実施の形態1と同様の引張り試験片20を切り出す以外に、肉盛層13の別部位や肉盛層13の周辺部位を評価部20aとして含む引張り試験片20を切り出し、バルブシート用の肉盛層13及びその周辺の品質を判定するものである。なお、本実施の形態2においては、シリンダヘッド粗形材10は、3つの燃焼室11のそれぞれにポート12を4つずつ備えるものとしている。
本実施の形態2においては、シリンダヘッドから切り出す引張り試験片20の評価部20aの部位を、断面部位及び位相部位で表す。以下、図9及び図10を参照して、断面部位及び位相部位を説明する。図9は、本実施の形態2にかかるシリンダヘッドから切り出す引張り試験片20の評価部20aの断面部位を例示する図である。図10は、本実施の形態2にかかるシリンダヘッドから切り出す引張り試験片20の評価部20aの位相部位を例示する図である。
図9に示されるように、断面部位は、シリンダヘッドの断面(図9は、図2のA−A’に沿った断面に相当)における部位を表す。本実施の形態2においては、断面部位は、以下の3つのいずれかとする。
断面部位A:断面部位Aは、肉盛層13の断面に相当する。そのため、断面部位Aは、クラッド材のみで構成された部位となる。
断面部位B:断面部位Bは、シリンダヘッド粗形材10と肉盛層13との界面部分の断面に相当する。そのため、断面部位Bは、肉盛層13がシリンダヘッド粗形材10の母材であるアルミニウムと溶着した部位となる。
断面部位C:断面部位Cは、肉盛層13近傍のシリンダヘッド粗形材10の断面に相当する。そのため、断面部位Cは、シリンダヘッド粗形材10の母材であるアルミニウムが肉盛層13の熱で軟化した部位となる。
図10に示されるように、位相部位は、円環状のバルブシートの周方向における部位を表す。本実施の形態2においては、位相部位は、0°、60°、120°、180°、240°、300°の6つのうちのいずれかとする。
上記の6つの位相部位は、肉盛層13のオーバーラップ部130に相当する位相部位(位相部位I)と、肉盛層13のオーバーラップ部130以外の部分(以下、一般部と称す)に相当する位相部位と、のいすれかに分類される。また、一般部に相当する位相部位はさらに、シリンダヘッド粗形材10の熱容量が大きな位相部位(位相部位II)と、シリンダヘッド粗形材10の熱容量が小さな位相部位(位相部位III)と、のいすれかに分類される。各燃焼室11において、上記の位相部位I,II,IIIが、どのバルブシートのどの位相部位に相当するかは、車種毎のシリンダヘッドの設計形状に応じて異なる。例えば、ある車種の場合、各燃焼室11において、上記の位相部位I,II,IIIに相当する位相部位は以下の通りである。
位相部位I:位相部位Iは、各バルブシートの0°に相当する。
位相部位II:位相部位IIは、右上のバルブシートの60°、120°、240°と左上のバルブシートの300°に相当する。
位相部位III:位相部位IIIは、左上のバルブシートの60°、120°、180°、240°と右上のバルブシートの300°に相当する。
本実施の形態2においては、表1に示されるような断面部位A,B,Cと位相部位位I,II,IIIとの組で表される部位を評価部20aとして含む6つの引張り試験片20を、シリンダヘッドから切り出す。すなわち、6つの引張り試験片20は以下の通りである。
1つ目の引張り試験片20:評価部20aの部位が、断面部位Aでかつ位相部位Iの部位である。この引張り試験片20は、実施の形態1において切り出した引張り試験片20に相当し、始端部131と終端部132との間に未溶着による亀裂が発生していること等を検査するために切り出される。
2つ目の引張り試験片20:評価部20aの部位が、断面部位Aでかつ位相部位IIIの部位である。この引張り試験片20は、金属粉の硬質粒子の粗大化による亀裂が発生していること等を検査するために切り出される。
3つ目の引張り試験片20:評価部20aの部位が、断面部位Bでかつ位相部位Iの部位である。この引張り試験片20は、シリンダヘッド粗形材10と肉盛層13との界面が未溶着であること等を検査するために切り出される。
4つ目の引張り試験片20:評価部20aの部位が、断面部位Bでかつ位相部位IIの部位である。この引張り試験片20は、シリンダヘッド粗形材10と肉盛層13との界面が未溶着であること等を検査するために切り出される。
5つ目の引張り試験片20:評価部20aの部位が、断面部位Cでかつ位相部位Iの部位である。この引張り試験片20は、シリンダヘッド粗形材10の母材であるアルミニウムが肉盛層13の熱で軟化していること等を検査するために切り出される。
6つ目の引張り試験片20:評価部20aの部位が、断面部位Cでかつ位相部位IIの部位である。この引張り試験片20は、シリンダヘッド粗形材10の母材であるアルミニウムが肉盛層13の熱で軟化していること等を検査するために切り出される。
以下、本実施の形態2にかかるバルブシート用肉盛層の品質判定方法における各工程を説明する。
まず、実施の形態1と同様に、バルブシート用の肉盛層13を形成する。このとき、図11に示されるように、加工基準穴14により、肉盛層13の位置が位置決めされる。
続いて、肉盛層13をバルブシート形状に仕上げ加工される前のシリンダーヘッドから、上記の6つの引張り試験片20の仕上げ前形状20Xを切り出す。このときも、加工基準穴14により、6つの仕上げ前形状20Xの部位が位置決めされる。また、図9に示されるように、シリンダーヘッドの縦壁及び底板からの寸法を導出しておくことで、正確な位置から仕上げ前形状20Xを切り出すことができる。なお、図11には、6つの仕上げ前形状20Xが示されているが、これらの部位は一例であって、表1に示される評価部20aの部位を含む別の部位から仕上げ前形状20Xを切り出しても良い。
以降、実施の形態1と同様に、6つの仕上げ前形状20Xを、図4に示されるような引張り試験片20の形状にそれぞれ加工し、6つの引張り試験片20のそれぞれの引張り試験を行う。
その後、6つの引張り試験片20のそれぞれの引張り試験の試験結果が基準値を満たすか否かを判定する。ただし、6つの引張り試験片20は、それぞれ評価部20aの部位が異なる。そのため、表2に示されるように、断面部位A,B,Cと位相部位0°,60°,120°,180°,240°,300°との組で表される部位ごとに、その部位にかかる応力及び歪を各種耐久試験結果などより定め、それらに保証寿命に基づく一定の安全率を乗じた規定値を定めておく。
そして、図8に示される応力−歪線図において、引張り試験片20の評価部20aの部位に応じた規定値を適用して、その引張り試験片20の引張り試験の試験結果が基準値を満たすか否かを判定する。基準値を満たすか否かの判定方法は、実施の形態1と同様である。
6つの引張り試験片20の引張り試験の試験結果が全てOKの場合は、バルブシート用の肉盛層13及びその周辺は品質がOKと判定する。また、同一条件で製造された一連のバルブシート用の肉盛層13及びその周辺も品質がOKと判定する。
上述したように本実施の形態2によれば、肉盛層13のオーバーラップ部130を評価部20aとして含む引張り試験片20を切り出す他、肉盛層13の別部位や肉盛層13の周辺部位を評価部20aとして含む引張り試験片20を切り出す。
これにより、引張り試験において、オーバーラップ部130の他、肉盛層13の別部位や周辺部位の割れ等の不良を検出することができるため、バルブシート用の肉盛層13及びその周辺の品質をより適切に判定することができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施の形態2で述べた、加工基準穴14を基準とした、肉盛層13及び仕上げ前形状20Xの部位の位置決めは、実施の形態1で行われるものとしても良い。また、実施の形態2における断面部位及び位相部位は一例であって、これには限定されない。
10 シリンダヘッド粗形材
11 燃焼室
12 ポート
13 肉盛層
130 オーバーラップ部
131 始端部
132 終端部
14 加工基準穴
20 引張り試験片
20a 評価部
20b 試験機取り付け部
20X 仕上げ前形状
30 引張り試験機
31 センサーターゲット
32 サーボモーター
33 ロードセル
34 ギャップセンサー

Claims (1)

  1. シリンダヘッド粗形材において、ポートの燃焼室側の開口端に円環状に形成されたザグリ溝に、金属粉を供給しつつ、レーザビームを照射して肉盛層を形成するステップと、
    前記肉盛層の引張り試験片を切り出すステップと、
    前記引張り試験片の引張り試験を行うステップと、
    前記引張り試験の結果が基準値を満たしているか否かを判定するステップと、を備え、
    前記引張り試験片を切り出すステップにおいて、
    前記引張り試験片の平行部に、前記肉盛層における始端部と終端部とがオーバーラップするオーバーラップ部を含むように、前記引張り試験片を切り出す、
    バルブシート用肉盛層の品質判定方法。
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